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特開2025-81077硬化性組成物、弱アンカリング液晶配向剤、及び液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025081077
(43)【公開日】2025-05-27
(54)【発明の名称】硬化性組成物、弱アンカリング液晶配向剤、及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20250520BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20250520BHJP
【FI】
G02F1/1337 520
C08F265/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023194591
(22)【出願日】2023-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一世
【テーマコード(参考)】
2H290
4J026
【Fターム(参考)】
2H290AA15
2H290AA73
2H290BD01
2H290BF04
2H290BF13
2H290BF24
2H290BF35
2H290DA01
2H290DA03
4J026AA45
4J026BA27
4J026BA30
4J026BA50
4J026BB03
4J026BB04
4J026DA02
4J026DA08
4J026DA12
4J026DB02
4J026DB09
4J026DB12
4J026DB24
4J026DB25
4J026DB27
4J026DB32
4J026EA09
4J026FA09
4J026GA07
4J026GA09
4J026HA11
4J026HA22
4J026HA32
4J026HA38
4J026HA48
4J026HB11
4J026HB20
4J026HB22
4J026HB32
4J026HB38
4J026HB42
4J026HB45
4J026HB47
4J026HB50
4J026HC11
4J026HC22
4J026HC32
4J026HC38
4J026HC43
4J026HC45
4J026HE01
4J026HE04
(57)【要約】
【課題】比較的低温で安定した弱アンカリング膜を製造できる硬化性組成物などの提供。
【解決手段】 液晶に対して弱アンカリング性を示す構造(A)、光または熱によってラジカルを発生する構造(B)及び発生したラジカルによって硬化反応を起こす構造(C)を含有する硬化性組成物。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶に対して弱アンカリング性を示す構造(A)、光または熱によってラジカルを発生する構造(B)及び発生したラジカルによって硬化反応を起こす構造(C)を含有する硬化性組成物。
【請求項2】
前記構造(A)及び前記構造(B)を有する成分と、前記構造(C)を有する成分を含有するか、
前記構造(A)及び前記構造(C)を有する成分と、前記構造(B)を有する成分を含有するか、または
前記構造(A)、前記構造(B)及び前記構造(C)を有する成分を含有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記構造(C)が下記式(C’)から選ばれる構造(C’)を含有する請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【化1】
(式中、R、及びRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、X、Y、及びZはそれぞれ独立して酸素原子又は硫黄原子を表す。*、*及び*は結合部位を表し、*及び*のどちらか一方は水素原子又は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐アルキル基で置き換えられていてもよい。nは1~5の整数を表す。)
【請求項4】
前記構造(B)が下記式(B’-1)及び式(B’-2)から選ばれる構造(B’)を含有する請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【化2】
(式(B’-1)中、Rは及びRは水素原子又は炭素数1~8の分岐しても良いアルキル基を表す。)
【化3】
(式(B’-2)中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6の分岐しても良いアルキル基を表す。)
【請求項5】
前記構造(A)が下記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)から選ばれるモノマー由来の構造(A’)である請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【化4】
(式(1)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、Xは単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、又はチオエーテル結合を表し、Rは結合基が挿入されていてもよい炭素数1~20のアルキル基を表し、nは1~2の整数である。nが2の場合、2つのX及びRはそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【化5】
(式(2)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、Sは単結合、又は結合基が挿入されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基を表し、Tは下記式(2-T)で表される有機基を表し、nは1~2の整数である。nが2の場合、2つのTは同一であってもよいし、異なっていてもよい。ただし、nが2の場合、Sは結合基が挿入されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基を表す。)
【化6】
(式(2-T)中、*は結合部位を示す。Xは単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、-Si(R)(R)-(R及びRはそれぞれ独立してSiに結合するアルキル基を表す。)、-Si(R)(R)-O-(R及びRはそれぞれ独立してSiに結合するアルキル基を表す。)、及び-N(R)-(RはNに結合する、水素原子又はアルキル基を表す。)から選ばれる結合基であり、Cyは6~20員環の非芳香族の環状基を表す。)
【化7】
(式(3)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、Rは炭素数1~10の直鎖もしくは分岐構造を有する脂肪族炭化水素基を表し、3つのXはそれぞれ独立して水素原子又は下記式(3-X)を表す。ただし、3つのXの少なくとも一つは式(3-X)を表す。)
【化8】
(式(3-X)中、Yは単結合、-O-、-S-又は-N(R)-(RはNに結合する、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)を表し、*は結合部位を示す。R、R、及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【化9】
(式(4)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、R~Rはそれぞれ独立して単結合、又は結合基が挿入されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基を表し、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、X及びXはそれぞれ独立して水素原子、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、RとRとR及びRに結合する炭素原子とは一緒になって環を形成していてもよい。ただし、R、R及びRの合計炭素数は1以上である。)
【請求項6】
前記構造(A)を有する成分を含有し、
前記構造(A)が下記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)から選ばれるモノマー由来の構造(A’)であり、
前記構造(B)が下記式(B’-1)及び式(B’-2)から選ばれる構造(B’)を含有し、
前記構造(C)が下記式(C’)から選ばれる構造(C’)を含有し、
前記構造(A)を有する成分が、下記重合体α-1及び重合体β-1なる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
[重合体α-1]
前記構造(A’)を有するブロックセグメント(Aα)及び前記構造(B’)を有するブロックセグメント(Bα)を有しているか、
前記ブロックセグメント(Aα)及び前記構造(C’)を有するブロックセグメント(Cα)を有しているか、
前記ブロックセグメント(Aα)、前記ブロックセグメント(Bα)及び前記ブロックセグメント(Cα)を有しているか、または
前記ブロックセグメント(Aα)及び前記構造(B’)と前記構造(C’)を有するブロックセグメント(BCα)を有している、
ブロック共重合体。
[重合体β-1]:
幹ポリマーと、前記幹ポリマーの側鎖として前記幹ポリマーに結合した枝ポリマーとを有するグラフト共重合体であって、
前記枝ポリマーが、前記構造(A’)を有し、前記幹ポリマーが、前記構造(B’)を有しているか、
前記枝ポリマーが、前記構造(A’)を有し、前記幹ポリマーが、前記構造(C’)を有しているか、または
前記枝ポリマーが、前記構造(A’)を有し、前記幹ポリマーが、前記構造(B’)及び前記構造(C’)を有している、
グラフト共重合体。
【化10】
(式(1)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、Xは単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、又はチオエーテル結合を表し、Rは結合基が挿入されていてもよい炭素数1~20のアルキル基を表し、nは1~2の整数である。nが2の場合、2つのX及びRはそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【化11】
(式(2)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、Sは単結合、又は結合基が挿入されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基を表し、Tは下記式(2-T)で表される有機基を表し、nは1~2の整数である。nが2の場合、2つのTは同一であってもよいし、異なっていてもよい。ただし、nが2の場合、Sは結合基が挿入されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基を表す。)
【化12】
(式(2-T)中、*は結合部位を示す。Xは単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、-Si(R)(R)-(R及びRはそれぞれ独立してSiに結合するアルキル基を表す。)、-Si(R)(R)-O-(R及びRはそれぞれ独立してSiに結合するアルキル基を表す。)、及び-N(R)-(RはNに結合する、水素原子又はアルキル基を表す。)から選ばれる結合基であり、Cyは6~20員環の非芳香族の環状基を表す。)
【化13】
(式(3)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、Rは炭素数1~10の直鎖もしくは分岐構造を有する脂肪族炭化水素基を表し、3つのXはそれぞれ独立して水素原子又は下記式(3-X)を表す。ただし、3つのXの少なくとも一つは式(3-X)を表す。)
【化14】
(式(3-X)中、Yは単結合、-O-、-S-又は-N(R)-(RはNに結合する、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)を表し、*は結合部位を示す。R、R、及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【化15】
(式(4)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、R~Rはそれぞれ独立して単結合、又は結合基が挿入されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基を表し、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、X及びXはそれぞれ独立して水素原子、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、RとRとR及びRに結合する炭素原子とは一緒になって環を形成していてもよい。ただし、R、R及びRの合計炭素数は1以上である。)
【化16】
(式(B’-1)中、Rは及びRは水素原子又は炭素数1~8の分岐しても良いアルキル基を表す。)
【化17】
(式(B’-2)中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6の分岐しても良いアルキル基を表す。)
【化18】
(式(C’)中、R、及びRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、X、Y、及びZはそれぞれ独立して酸素原子又は硫黄原子を表す。*、*及び*は結合部位を表し、*及び*のどちらか一方は水素原子又は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐アルキル基で置き換えられていてもよい。nは1~5の整数を表す。)
【請求項7】
請求項1または2に記載の硬化性組成物からなる弱アンカリング液晶配向剤。
【請求項8】
請求項7に記載の弱アンカリング液晶配向剤を用いて得られた液晶表示素子。
【請求項9】
横電界液晶表示素子である請求項8に記載の液晶表示素子。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安価で複雑な工程を含まない手法にて、弱アンカリング特性を発現する有機膜(弱アンカリング膜)を製造することが可能な硬化性組成物、及び弱アンカリング液晶配向剤、並びに、それらを用いた、更なる高輝度化、低電圧駆動化を実現するための液晶表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、コンピュータ及びテレビのディスプレイなどには液晶表示素子が広く用いられている。液晶表示素子は薄型、軽量、低消費電力などの特性を有しており、今後はVR(Virtual Reality)や超高精細のディスプレイ等、更なるコンテンツへの応用が期待されている。液晶ディスプレイの表示方式には、TN(Twisted Nematic)方式、IPS(In-Plane Switching)方式、VA(Vertical Alignment)方式など様々な表示方式が提案されているが、すべての表示方式には液晶を所望の配向状態に誘導する膜(液晶配向膜)が使用されている。
【0003】
特にタブレットPCやスマートフォン、スマートTV等のタッチパネルを具備した製品には、タッチしても表示が乱れにくいIPS方式が好まれており、近年ではコントラストや視野角特性を改善するためFFS(Frindge Field Switching)方式を用いた液晶表示素子や光配向法を用いた液晶配向技術が用いられる。
【0004】
しかしながら、FFS方式はIPS方式に比べて基板の製造コストが高いこと、Vcomシフトと呼ばれる特有の表示不良が発生することが課題である。また光配向法は、ラビング配向法に比べ、素子の拡大に適応しやすい点や表示特性を大きく向上できる点にメリットがある一方、原理上の課題(光分解型材料を用いると分解物由来の表示不良光、異性化型であれば配向力不足による焼き付きなど)が挙げられる。これらの課題を解決するために液晶表示素子メーカーや液晶配向膜メーカーは種々工夫を行っているのが現状である。
【0005】
一方で、近年弱アンカリング技術を利用した弱アンカリングIPS方式が提案されている。これは従来のIPS方式に比べてコントラスト比の向上や大幅な低電圧駆動が実現できる(特許文献1参照)。
【0006】
弱アンカリングIPS方式は、片側の基板に強いアンカリングエネルギーを有する液晶配向膜を、もう一方の基板側(横電界を発生する電極を具備)にアンカリングエネルギーを有さない処理を施した薄膜を用いることで作られる。
【0007】
近年では、濃厚ポリマーブラシを基板に直接設けることで弱アンカリング状態を作り出した弱アンカリングIPS方式の技術提案がなされている(特許文献2参照)。この技術によりコントラスト比の大幅な向上や駆動電圧の大幅な低下が実現された。
【0008】
また、別手法として光ラジカル発生可能な液晶配向膜とラジカル重合可能な化合物を用いて、液晶中でUVを照射しラジカル反応をさせることにより弱アンカリング化させ、弱アンカリングIPS方式の技術提案がなされている(特許文献3参照)。この技術により、量産可能な手法によりコントラスト比の向上や大幅な低電圧駆動に加え、高速応答化や焼き付きの低減が実現された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4053530号公報
【特許文献2】特開2013-231757号公報
【特許文献3】特開2018-028621号公報
【特許文献4】国際公開第2019/004433号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
濃厚ポリマーブラシを基板に直接設ける方法(特許文献2)は、基板に反応点を設ける表面処理工程、基板表面の反応点からポリマー成長させる工程を要するため工程が複雑化する点、高度な脱酸素条件を要するため環境を厳密に制御する必要がある点から技術的な難易度が高く、量産化の観点で現実的でない。
【0011】
上記課題を解決すべく基板上に固着部位を有するボトルブラシポリマーを基板上に塗布することで弱アンカリングIPS表示素子を得る方法(特許文献3)も提案されているが、ボトルブラシポリマーを製造するためにはリビングラジカル重合を用いる必要があり、大量供給が難しいという問題がある。加えて、ボトルブラシポリマーは溶媒選択性が乏しく、従来頻繁に使用されるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)やγ-ブチロラクトン(GBL)などへの溶解性が低いなど、通常使用される塗布工程において大きな問題がある。
【0012】
前記特許文献2、3以外の方法として、光ラジカル重合反応とラジカル重合可能な化合物を用いて弱アンカリング化させる方法(特許文献4)も提案されているが、液晶注入時の高真空状態で重合性添加剤が揮発してしまうことや、液晶素子作製後に紫外線照射する工程を要するため液晶組成物に悪影響を与えるなどの課題があると考えられる。
【0013】
本発明者らは、弱アンカリング性を示す材料として、液晶に相溶するブロックセグメントと液晶に不溶または加熱によって不溶化するブロックセグメントを有するブロックコポリマー(WO2022/260048参照)や液晶に相溶する枝ポリマーと液晶に不溶または加熱によって不溶化する幹ポリマーを有するグラフト共重合体(WO2023/048278参照)、これらとポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、可溶性ポリイミドとのポリマーアロイを提案している(PCT/JP2023/33172参照)。これらの材料は、前記弱アンカリング材料の課題であった塗布性や溶媒選択性に優れ、かつシール密着性や機械強度に優れる。
その一方で、該弱アンカリング液晶配向剤は200℃前後の焼成温度を想定した構成となっており、焼成温度が100℃前後やそれ以下の場合は十分な特性が発現しない。
【0014】
このような技術的課題を解決できれば、パネルメーカーとしてもバッテリーの省電力化や画質の向上等にメリットのある弱アンカリングIPS液晶表示素子を簡便且つ歩留まり良く生産することが可能となる。
【0015】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、比較的低温で安定した弱アンカリング膜を製造できる硬化性組成物及び弱アンカリング液晶配向剤の提供、並びにプレチルト角の発生がなく、低電圧駆動と電圧OFF時の高速応答化が同時に実現できる弱アンカリング液晶配向膜と液晶表示素子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記の課題を解決する為、鋭意検討を行った結果、上記の課題を解決出来ることを見出し、以下の要旨を有する本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下を包含する。
【0017】
[1] 液晶に対して弱アンカリング性を示す構造(A)、光または熱によってラジカルを発生する構造(B)及び発生したラジカルによって硬化反応を起こす構造(C)を含有する硬化性組成物。
[2] 前記構造(A)及び前記構造(B)を有する成分と、前記構造(C)を有する成分を含有するか、
前記構造(A)及び前記構造(C)を有する成分と、前記構造(B)を有する成分を含有するか、または
前記構造(A)、前記構造(B)及び前記構造(C)を有する成分を含有する、[1]に記載の硬化性組成物。
[3] 前記構造(C)が下記式(C’)から選ばれる構造(C’)を含有する[1]または[2]に記載の硬化性組成物。
【化1】
(式(C’)中、R、及びRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、X、Y、及びZはそれぞれ独立して酸素原子又は硫黄原子を表す。*、*及び*は結合部位を表し、*及び*のどちらか一方は水素原子又は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐アルキル基で置き換えられていてもよい。nは1~5の整数を表す。)
[4] 前記構造(B)が下記式(B’-1)及び式(B’-2)から選ばれる構造(B’)を含有する[1]から[3]のいずれかに記載の硬化性組成物。
【化2】
(式(B’-1)中、Rは及びRは水素原子又は炭素数1~8の分岐しても良いアルキル基を表す。)
【化3】
(式(B’-2)中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6の分岐しても良いアルキル基を表す。)
[5] 前記構造(A)が下記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)から選ばれるモノマー由来の構造(A’)である[1]から[4]のいずれかに記載の硬化性組成物。
【化4】
(式(1)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、Xは単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、又はチオエーテル結合を表し、Rは結合基が挿入されていてもよい炭素数1~20のアルキル基を表し、nは1~2の整数である。nが2の場合、2つのX及びRはそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【化5】
(式(2)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、Sは単結合、又は結合基が挿入されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基を表し、Tは下記式(2-T)で表される有機基を表し、nは1~2の整数である。nが2の場合、2つのTは同一であってもよいし、異なっていてもよい。ただし、nが2の場合、Sは結合基が挿入されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基を表す。)
【化6】
(式(2-T)中、*は結合部位を示す。Xは単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、-Si(R)(R)-(R及びRはそれぞれ独立してSiに結合するアルキル基を表す。)、-Si(R)(R)-O-(R及びRはそれぞれ独立してSiに結合するアルキル基を表す。)、及び-N(R)-(RはNに結合する、水素原子又はアルキル基を表す。)から選ばれる結合基であり、Cyは6~20員環の非芳香族の環状基を表す。)
【化7】
(式(3)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、Rは炭素数1~10の直鎖もしくは分岐構造を有する脂肪族炭化水素基を表し、3つのXはそれぞれ独立して水素原子又は下記式(3-X)を表す。ただし、3つのXの少なくとも一つは式(3-X)を表す。)
【化8】
(式(3-X)中、Yは単結合、-O-、-S-又は-N(R)-(RはNに結合する、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)を表し、*は結合部位を示す。R、R、及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【化9】
(式(4)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、R~Rはそれぞれ独立して単結合、又は結合基が挿入されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基を表し、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、X及びXはそれぞれ独立して水素原子、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、RとRとR及びRに結合する炭素原子とは一緒になって環を形成していてもよい。ただし、R、R及びRの合計炭素数は1以上である。)
[6] 前記構造(A)を有する成分を含有し、
前記構造(A)が下記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)から選ばれるモノマー由来の構造(A’)であり、
前記構造(B)が下記式(B’-1)及び式(B’-2)から選ばれる構造(B’)を含有し、
前記構造(C)が下記式(C’)から選ばれる構造(C’)を含有し、
前記構造(A)を有する成分が、下記重合体α-1及び重合体β-1からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、[1]または[2]に記載の硬化性組成物。
[重合体α-1]:
前記構造(A’)を有するブロックセグメント(Aα)及び前記構造(B’)を有するブロックセグメント(Bα)を有しているか、
前記ブロックセグメント(Aα)及び前記構造(C’)を有するブロックセグメント(Cα)を有しているか、
前記ブロックセグメント(Aα)、前記ブロックセグメント(Bα)及び前記ブロックセグメント(Cα)を有しているか、または
前記ブロックセグメント(Aα)及び前記構造(B’)と前記構造(C’)を有するブロックセグメント(BCα)を有している、
ブロック共重合体。
[重合体β-1]:
幹ポリマーと、前記幹ポリマーの側鎖として前記幹ポリマーに結合した枝ポリマーとを有するグラフト共重合体であって、
前記枝ポリマーが、前記構造(A’)を有し、前記幹ポリマーが、前記構造(B’)を有しているか、
前記枝ポリマーが、前記構造(A’)を有し、前記幹ポリマーが、前記構造(C’)を有しているか、または
前記枝ポリマーが、前記構造(A’)を有し、前記幹ポリマーが、前記構造(B’)及び前記構造(C’)を有している、
グラフト共重合体。
【化10】
(式(1)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、Xは単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、又はチオエーテル結合を表し、Rは結合基が挿入されていてもよい炭素数1~20のアルキル基を表し、nは1~2の整数である。nが2の場合、2つのX及びRはそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【化11】
(式(2)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、Sは単結合、又は結合基が挿入されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基を表し、Tは下記式(2-T)で表される有機基を表し、nは1~2の整数である。nが2の場合、2つのTは同一であってもよいし、異なっていてもよい。ただし、nが2の場合、Sは結合基が挿入されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基を表す。)
【化12】
(式(2-T)中、*は結合部位を示す。Xは単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、-Si(R)(R)-(R及びRはそれぞれ独立してSiに結合するアルキル基を表す。)、-Si(R)(R)-O-(R及びRはそれぞれ独立してSiに結合するアルキル基を表す。)、及び-N(R)-(RはNに結合する、水素原子又はアルキル基を表す。)から選ばれる結合基であり、Cyは6~20員環の非芳香族の環状基を表す。)
【化13】
(式(3)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、Rは炭素数1~10の直鎖もしくは分岐構造を有する脂肪族炭化水素基を表し、3つのXはそれぞれ独立して水素原子又は下記式(3-X)を表す。ただし、3つのXの少なくとも一つは式(3-X)を表す。)
【化14】
(式(3-X)中、Yは単結合、-O-、-S-又は-N(R)-(RはNに結合する、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)を表し、*は結合部位を示す。R、R、及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【化15】
(式(4)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、R~Rはそれぞれ独立して単結合、又は結合基が挿入されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基を表し、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、X及びXはそれぞれ独立して水素原子、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、RとRとR及びRに結合する炭素原子とは一緒になって環を形成していてもよい。ただし、R、R及びRの合計炭素数は1以上である。)
【化16】
(式(B’-1)中、Rは及びRは水素原子又は炭素数1~8の分岐しても良いアルキル基を表す。)
【化17】
(式(B’-2)中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6の分岐しても良いアルキル基を表す。)
【化18】
(式(C’)中、R、及びRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、X、Y、及びZはそれぞれ独立して酸素原子又は硫黄原子を表す。*、*及び*は結合部位を表し、*及び*のどちらか一方は水素原子又は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐アルキル基で置き換えられていてもよい。nは1~5の整数を表す。)
[7] [1]から[6]のいずれかに記載の硬化性組成物からなる弱アンカリング液晶配向剤。
[8] [7]に記載の弱アンカリング液晶配向剤を用いて得られた液晶表示素子。
[9] 横電界液晶表示素子である[8]に記載の液晶表示素子。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来技術に比べて極めて単純な手法で安定した弱アンカリング液晶配向膜を製造でき、塗布方式に依らず塗布性が良好で、かつ溶剤選択性が広く従来より製造に使用されてきた溶剤を使用できるため、実際の工業化において弱アンカリング横電界液晶表示素子の製造に掛かる工程負荷の低減や歩留まりの改善が可能となる。さらに、100℃程度やそれ以下の低温焼成においても特性悪化しない。また、本発明の材料および手法を用いることで、従来技術に比べて電圧OFF時の高速応答化、焼き付きの低減、低温環境における高いバックライト透過率と低電圧駆動が実現できるため、優れた特性を安定して発現できる材料および横電界液晶表示素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の横電界液晶表示素子の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の横電界液晶表示素子の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(弱アンカリング)
本発明において「弱アンカリング」とは、液晶分子を基板に対して方位角方向または極角方向へ配向規制する力は有しているが、アンカリング強度(すなわち液晶分子の位置を保持する、あるいは液晶分子の配向が変化しても元の状態に戻す、界面弾性エネルギー)が全く無いか、あったとしても液晶同士の分子間力よりも弱いことを意味し、本発明の弱アンカリングにおいては方位角アンカリング強度(A)が10-5[J/m]よりも小さい場合を指す。特許文献4に記載の通り、基材界面に液晶と完全濡れ状態を形成可能な重合体を設け、これと液晶が接することで高分子-液晶混合層が形成し、弱アンカリング状態が発現することが知られている。
【0021】
(弱アンカリング液晶配向膜)
本発明において「弱アンカリング液晶配向膜」とは、液晶と接触することで弱アンカリング状態を形成する膜のことを意味し、固体膜に限定されず固体表面を被覆する液体膜も含まれる。
【0022】
(強アンカリング、強アンカリング液晶配向膜)
本発明において「強アンカリング」とは、液晶分子を一軸配向に配向規制し、外部からエネルギーが与えられても液晶の配向を保持することができる、あるいは液晶分子の配向が変化しても元の位置に戻すことができるアンカリング強度を有することを意味し、本発明の強アンカリングにおいては方位角アンカリング強度(A)が10-4[J/m]よりも大きい場合を指す。また、「強アンカリング液晶配向膜」とは、液晶と接触することで強アンカリング状態を形成する膜のことを意味し、固体膜に限定されず固体表面を被覆する液体膜も含まれる。
【0023】
(弱アンカリング液晶表示素子)
上記で定義された弱アンカリング液晶配向膜と強アンカリング液晶配向膜をそれぞれ電極付き基板に塗布し、対になるように張り合わせることで弱アンカリング液晶表示素子が作製できる。弱アンカリング液晶表示素子は、一方の液晶配向膜の方位角アンカリング強度が限りなく小さいため、弱い電界や外場エネルギーで液晶の配向変化を誘起でき、通常は動かない領域の液晶分子も配向変化させることが可能になることから、特にIPSやFFSのような櫛歯電極を用いたような表示素子においては、電界強度の弱い電極上の液晶分子も駆動可能となるため、対となる配向膜の両方が強アンカリング液晶配向膜で構成された液晶表示素子と比べて高透過率化及び駆動電圧を低電圧化させることができる。
【0024】
方位角アンカリング強度とは、方位角方向に対する液晶分子と液晶配向膜間の界面弾性エネルギーの強度を表す指標である。方位角アンカリング強度を算出する方法としてトルクバランス法や強電場法、Geometry法(外場印加法)やフレデリクス転移法等が用いられる。
【0025】
本発明の硬化性組成物は、構造(A)と、構造(B)と、構造(C)とを含有する。
構造(A)は、液晶に対して弱アンカリング性を示す構造である。
構造(B)は、光または熱によってラジカルを発生する構造である。
構造(C)は、発生したラジカルによって硬化反応を起こす構造である。
【0026】
硬化性組成物は、例えば、構造(A)及び構造(B)を有する成分と、構造(C)を有する成分を含有する。
硬化性組成物は、例えば、構造(A)及び構造(C)を有する成分と、構造(B)を有する成分を含有する。
硬化性組成物は、例えば、構造(A)、構造(B)及び構造(C)を有する成分を含有する。
硬化性組成物は、例えば、構造(A)を有する成分を含有する。そして、構造(A)を有する成分は、例えば、後述する重合体α及び重合体βからなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0027】
(液晶に対して弱アンカリング性を示す構造(A))
本発明の硬化性組成物に含有される、液晶に対して弱アンカリング性を発現する構造(A)は、弱アンカリング性発現に寄与し、硬化性組成物と液晶との接触界面で硬化性組成物-液晶相溶液体層を形成することで弱アンカリング性が発現する。
【0028】
本発明において、液晶に対して弱アンカリング性を示す構造(A)を有する化合物として、下記式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、及び式(4)で表される化合物の少なくともいずれかを用いることが好ましい。
【0029】
一実施形態では、硬化性組成物において、構造(A)は、下記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)から選ばれるモノマー由来の構造(A’)である。
【0030】
硬化性組成物が重合体を含有する場合、構造(A)は重合体中に含有されていることが好ましい。例えば、構造(A)を含む重合体は、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、及び式(4)で表される化合物の少なくともいずれかを含むモノマーを重合して得られる。
【0031】
本出願人は、プレチルト角が発生せず安定的に弱アンカリング横電界液晶表示素子が作製できる液晶組成物に含有されるラジカル重合性化合物であって、弱アンカリングの発生に寄与するラジカル重合性化合物として、下記式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、及び式(4)で表される化合物を見出し、出願している(WO2022/030602、WO2022/071286、WO2022/196565、WO2019/004433。ここに引用されたことによって、これらの公開公報の内容は、全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。)。
【0032】
また、本出願人は、重合体αを含む弱アンカリング液晶配向剤が、従来の手法に比べより簡便かつ安定的に弱アンカリング膜を製造可能であること、及び狭セルギャップ化においてもプレチルト角の発生なく安定的に低電圧駆動と電圧OFF時の高速応答化が同時に実現でき、加えて焼き付きを低減でき、低温環境で高いバックライト透過率と低電圧駆動の両立を実現できる横電界液晶表示素子を提供することを、見出し、出願している(WO2022/260048。ここに引用されたことによって、この公開公報の内容は、全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。)。
【0033】
【化19】
(式(1)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、Xは単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、又はチオエーテル結合を表し、Rは結合基が挿入されていてもよい炭素数1~20のアルキル基を表し、nは1~2の整数である。nが2の場合、2つのX及びRはそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
結合基が挿入されていてもよい炭素数1~20のアルキル基における結合基としては、例えば、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、-Si(R11)(R12)-(R11及びR12はそれぞれ独立してSiに結合するアルキル基を表す。)、-Si(R13)(R14)-O-(R13及びR14はそれぞれ独立してSiに結合するアルキル基を表す。)、-N(R15)-(R15はNに結合する、水素原子又はアルキル基を表す。)が挙げられる。R11~R15におけるアルキル基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。
【0034】
【化20】
(式(2)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、Sは単結合、又は結合基が挿入されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基を表し、Tは下記式(2-T)で表される有機基を表し、nは1~2の整数である。nが2の場合、2つのTは同一であってもよいし、異なっていてもよい。ただし、nが2の場合、Sは結合基が挿入されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基を表す。)
【0035】
【化21】
(式(2-T)中、*は結合部位を示す。Xは単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、-Si(R)(R)-(R及びRはそれぞれ独立してSiに結合するアルキル基を表す。)、-Si(R)(R)-O-(R及びRはそれぞれ独立してSiに結合するアルキル基を表す。)、及び-N(R)-(RはNに結合する、水素原子又はアルキル基を表す。)から選ばれる結合基であり、Cyは6~20員環の非芳香族の環状基を表す。)
【0036】
式(2)中のSにおける飽和炭化水素基とは、飽和炭化水素からn+1個の水素原子が取り除かれてできるn+1価の基を指す(nは、式(2)中のnと同じ整数である)。nが1の場合、飽和炭化水素基は、アルキレン基である。
式(2)中のSにおいて、結合基が挿入されている炭素数1~6の飽和炭化水素基とは、炭素数2~6の飽和炭化水素基内の炭素-炭素間に結合基が挿入されているn+1価の基、又は炭素数1~6の飽和炭化水素基とそれに結合する原子(例えば、炭素原子)との間に結合基が挿入されている2価の基を意味する。
式(2)中のSにおける結合基としては、例えば、炭素-炭素不飽和結合、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-又は-OCO-)、アミド結合(-CONH-又は-NHCO-)などが挙げられる。炭素-炭素不飽和結合としては、例えば、炭素-炭素二重結合などが挙げられるが、炭素-炭素二重結合が挿入されている炭素数1~6の飽和炭化水素基は、その末端にではなく、内部に炭素-炭素二重結合を有する方が好ましい。
nが1の場合、結合基が挿入されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基としては、例えば、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数1~6のオキシアルキレン基などが挙げられる。
炭素数1~6のアルキレン基は、直鎖アルキレン基であってもよいし、分岐アルキレン基であってもよいし、環状アルキレン基であってもよい。
【0037】
式(2-T)のXにおける-Si(R)(R)-のR及びRは、それぞれ独立してSiに結合するアルキル基であり、例えば、炭素数1~6のアルキル基である。
式(2-T)のXにおける-Si(R)(R)-O-のR及びRは、それぞれ独立してSiに結合するアルキル基であり、例えば、炭素数1~6のアルキル基である。
式(2-T)のXにおける-N(R)-のRは、Nに結合する、水素原子又はアルキル基である。アルキル基は、例えば、炭素数1~6のアルキル基である。
【0038】
式(2-T)中、Cyは、6~20員環の非芳香族の環状基であり、8~18員環の非芳香族の環状基が好ましい。なお、Cyは、12~20員環の非芳香族の環状基であってもよい。式(2-T)においてXは、Cyにおいて環を構成する原子に結合している。
非芳香族の環状基における環を構成する原子としては、例えば、炭素原子、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子などが挙げられる。
環を構成する原子-原子間の結合は、単結合であってもよいし、二重結合であってもよいし、三重結合であってもよいが、単結合が好ましい。
非芳香族の環状基における環としては、例えば、環状アルカン、環状エーテル、環状シロキサンなどが挙げられる。環状エーテルとしては、例えば、クラウンエーテルが挙げられる。例えば、12-クラウン-4において、環を構成する原子は、炭素原子及び酸素原子であり、員数は、12である。
環は、単環であってもよいし、多環であってもよい。多環における環の数としては、例えば、2~4が挙げられる。
多環において各環同士の結合の仕方には、例えば、以下の3通りが含まれる。
・1原子の共有:例えば、スピロ環化合物
・2原子の共有:デカリンのように2つの環が2つの原子を共有している場合
・橋かけ構造:ノルボルナンのように、2つの環が3つの原子以上を共有しているとみなせる場合
なお、多環の場合、環を構成する原子の数をもってその員環数とする。例えば、ノルボルナンは7員環である。
環を構成する原子には、水素原子の代わりにハロゲン原子、又は炭素数1~6のアルキル基が結合していてもよい。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子などが挙げられる。
【0039】
【化22】
(式(3)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、Rは炭素数1~10の直鎖もしくは分岐構造を有する脂肪族炭化水素基を表し、3つのXはそれぞれ独立して水素原子又は下記式(3-X)を表す。ただし、3つのXの少なくとも一つは式(3-X)を表す。)
【0040】
【化23】
(式(3-X)中、Yは単結合、-O-、-S-又は-N(R)-(RはNに結合する、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)を表し、*は結合部位を示す。R、R、及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。)
【0041】
式(3)中のRにおける脂肪族炭化水素基の炭素数は1~10であり、炭素数1~8であってもよいし、炭素数1~6であってもよいし、炭素数1~4であってもよい。
【0042】
式(3-X)中のR、R、及びRにおける炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、炭素数1~5のアルキル基であってもよいし、炭素数1~4のアルキル基であってもよい。これらアルキル基は、直鎖構造であってもよいし、分岐構造であってもよい。
【0043】
式(3-X)中のR、R、及びRにおける芳香族炭化水素基は、無置換であってもよいし、水素原子が置換基により置換されていてもよい。
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のハロゲン化アルキル基、炭素数1~4のハロゲン化アルコキシ基などが挙げられる。ハロゲン化アルキル基、およびハロゲン化アルコキシ基におけるハロゲン化は、全ハロゲン化であってもよいし、一部のハロゲン化であってもよい。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子などが挙げられる。
置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
芳香族炭化水素基における置換基の数としては、特に限定されない。
【0044】
式(3)において、式(3-X)は1つ以上であり、1つであってもよいし、2つであってもよいし、3つであってもよい。
式(3)において、3つのXはそれぞれ独立している。そのため、式(3)において、式(3-X)が2つ以上の場合、2つ以上の式(3-X)は、同じ構造であってもよいし、異なる構造であってもよい。
【0045】
式(3-X)において、R、R、およびRの少なくとも一つは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であってもよい。そのため、式(3-X)において、R、R、およびRの一つが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であってもよいし、R、R、およびRの二つが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であってもよし、R、R、およびRの三つが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であってもよい。
【0046】
【化24】
(式(4)中、Mは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、R~Rはそれぞれ独立して単結合、又は結合基が挿入されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基を表し、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、X及びXはそれぞれ独立して水素原子、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表し、RとRとR及びRに結合する炭素原子とは一緒になって環を形成していてもよい。ただし、R、R及びRの合計炭素数は1以上である。)
【0047】
式(4)中のR~Rにおいて、結合基が挿入されている炭素数1~6のアルキレン基とは、炭素数1~6のアルキレン基内の炭素-炭素間に結合基が挿入されている2価の基、又は炭素数1~6のアルキレン基とそれに結合する炭素原子との間に結合基が挿入されている2価の基を意味する。
結合基としては、例えば、炭素-炭素不飽和結合、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-又は-OCO-)、アミド結合(-CONH-又は-NHCO-)などが挙げられる。不飽和結合としては、例えば、炭素-炭素二重結合などが挙げられるが、結合基が挿入されている炭素数1~6のアルキレン基は、その末端にではなく、内部に炭素-炭素二重結合を有する方が好ましい。
結合基が挿入されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基としては、例えば、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数1~6のオキシアルキレン基などが挙げられる。炭素数1~6のオキシアルキレン基における酸素原子は、例えば、式(4)中のM、R、R、及びRに結合する炭素原子と結合する。
炭素数1~6のアルキレン基は、直鎖アルキレン基であってもよいし、分岐アルキレン基であってもよいし、環状アルキレン基であってもよい。
【0048】
式(4)のX及びXにおける置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のハロゲン化アルキル基、炭素数1~4のハロゲン化アルコキシ基などが挙げられる。ハロゲン化アルキル基、およびハロゲン化アルコキシ基におけるハロゲン化は、全ハロゲン化であってもよいし、一部のハロゲン化であってもよい。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子などが挙げられる。
【0049】
式(4)中のRとしては、例えば、単結合、炭素数1~6のアルキレン基などが挙げられる。炭素数1~6のアルキレン基としては、より具体的には炭素数1~6の直鎖アルキレン基が挙げられる。
式(4)中のRとしては、例えば、単結合、炭素数1~6のアルキレン基などが挙げられる。炭素数1~6のアルキレン基としては、より具体的には炭素数1~6の直鎖アルキレン基が挙げられる。
式(4)中のRとしては、例えば、単結合、炭素数1~6のアルキレン基などが挙げられる。炭素数1~6のアルキレン基としては、より具体的には炭素数1~6の直鎖アルキレン基が挙げられる。
式(4)中のXとしては、例えば、水素原子、フェニル基などが挙げられる。
式(4)中のXとしては、例えば、水素原子、フェニル基などが挙げられる。
式(4)中のArは、例えば、フェニル基などが挙げられる。
【0050】
式(4)中のR、RおよびRの合計炭素数は1以上であれば、特に限定されないが、2以上であってもよい。
また、式(4)中のR、R、およびRの合計炭素数は、例えば、18以下であってもよいし、15以下であってもよいし、10以下であってもよい。
また、式(4)中のX及びXが水素原子の場合、R、R、およびRの合計炭素数は1以上であれば、特に限定されないが、2以上であってもよい。
なお、式(4)中のX及びXの少なくともいずれかが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基の場合、R、R、およびRの合計炭素数は0であってもよい。
【0051】
式(4)において、RとRとRおよびRに結合する炭素原子とが一緒になって形成する環としては、例えば、結合基が挿入されていてもよい炭素数3~13の炭化水素環が挙げられる。結合基は、前述のとおりである。
【0052】
上記化合物の構造を用いることで電圧OFF時の高速応答化、焼き付きの低減、低温環境における高いバックライト透過率と低電圧駆動が実現しやすい。
【0053】
(光または熱によってラジカルを発生する構造(B))
本発明の硬化性組成物に含有される、光または熱によってラジカルを発生する構造(B)は、光または熱によってラジカルを発生する機能を有し、前記ラジカルによって硬化反応を起こす構造(C)と組み合わせることで硬化物が得られる。
【0054】
硬化性組成物が重合体を含有する場合、光または熱によってラジカルを発生する構造(B)は重合体中に含有されても良いし、重合体とは別に添加剤として硬化性組成物中に含有されていてもよい。
【0055】
構造(B)は、例えば、下記構造群(P)及び下記構造群(H)から選ばれる構造(B’)を含有する。
硬化性組成物が、構造(B)を有する化合物を添加剤として含有する場合、構造(B)を有する化合物としては、例えば、以下の構造群(P)及び構造群(H)に例示する化学構造の化合物が挙げられる。
硬化性組成物が、構造(B)を有する重合体を含有する場合、重合体は、例えば、以下の構造群(P)及び構造群(H)に例示する化学構造から水素原子を除いた1価の基を構造(B)として有する。
【0056】
光によってラジカルを発生する構造(B)は、可視光または紫外線領域の波長の光を照射することでラジカルが発生する構造のことを言い、光照射によってラジカルが発生する構造であれば特に限定されない。その具体例としては、下記の構造群(P)に挙げる構造が好ましい。
【0057】
(構造群(P))
【化25】
(式中、Rは及びRは水素原子又は炭素数1~8の分岐しても良いアルキル基を表す。)
【0058】
光によってラジカルを発生する構造(B)は、用いる光源に適切な構造を選択する必要がある。光源に対して適切な構造を選択することで、より高い硬化性を実現することができる。
【0059】
熱によってラジカルを発生する構造は、熱エネルギーを与えることでラジカルが発生する構造のことを言い、加熱によってラジカルが発生する構造であれば特に限定されない。その具体例としては、下記の構造群(H)に挙げる構造が好ましい。
【0060】
(構造群(H))
【化26】
(式中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6の分岐しても良いアルキル基を表す。)
【0061】
熱によってラジカルを発生する構造(B)は、固有構造によって分解温度が異なる。従って、ターゲットとする温度に対して適切な構造を選択することで、より高い硬化性を実現することができる。また、分解後のラジカル種の安定性によっては、β開裂や脱炭酸を誘起するため、目的や用途に応じて適切な構造を選択することが望ましい。
【0062】
(発生したラジカルによって硬化反応を起こす構造(C))
本発明の硬化性組成物に含有される、発生したラジカルによって硬化反応を起こす構造(C)は、ラジカルをトリガーとして硬化反応を起こす機能を有し、前記光または熱によってラジカルを発生する構造(B)と組み合わせることで硬化物が得られる。
【0063】
硬化性組成物が重合体を含有する場合、発生したラジカルによって硬化反応を起こす構造(C)は重合体中に含有されても良いし、重合体とは別に添加剤として硬化性組成物中に含有されていてもよい。
【0064】
硬化性組成物が、構造(C)を有する化合物を添加剤として含有する場合、構造(C)を有する化合物としては、例えば、以下の構造群(C)に例示する化学構造の化合物が挙げられる。
硬化性組成物が、構造(C)を有する重合体を含有する場合、重合体は、例えば、以下の構造群(C)に例示する化学構造から水素原子を除いた1価の基を構造(C)として有する。
【0065】
(構造群(C))
【化27】
(式中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6の分岐しても良いアルキル基またはフェニル基を表し、X、Y、及びZはそれぞれ独立して酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【0066】
硬化性組成物が、構造(C)を有する化合物を添加剤として含有する場合、構造(C)を有する化合物は、市販品であってもよい。市販品としては、例えば、ブレンマー(登録商標)ADE-100(ポリエチレングリコールジアクリレート、日油社製)、A-TMMT(ペンタエリスリトールテトラアクリレート、新中村化学社製)、MT-3010(多官能アクリレート、東亞合成社製)、SMP-220AP(多官能アクリレートポリマー、共栄社化学社製)などが挙げられる。
【0067】
液晶に対して弱アンカリング性を示す構造(A)、光または熱によってラジカルを発生する構造(B)、及び発生したラジカルによって硬化反応を起こす構造(C)に結合する重合性基としては、以下の構造が好ましい。ただし、これらに限定されるものではない。
また、構造(C)は下記式から選ばれる構造を含有することが好ましい。
【0068】
【化28】
(式中、R、及びRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、X、Y、及びZはそれぞれ独立して酸素原子又は硫黄原子を表す。*、*及び*は結合部位を表し、*及び*のどちらか一方は水素原子又は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐アルキル基で置き換えられていてもよい。nは1~5の整数を表す。)
【0069】
(重合体α)
重合体αの一実施形態は、弱アンカリング性を示す構造(A)を有するブロックセグメントをブロックセグメント(A)、前記光または熱によってラジカル発生する構造(B)を有するブロックセグメントをブロックセグメント(B)、前記ラジカルによって硬化反応を起こす構造(C)を有するブロックセグメントをブロックセグメント(C)、前記構造(B)と前記構造(C)を有するブロックセグメントをブロックセグメント(BC)としたとき、例えば、以下のブロック共重合体が挙げられる。
・ブロックセグメント(A)及びブロックセグメント(B)を有するブロック共重合体
・ブロックセグメント(A)及びブロックセグメント(C)を有するブロック共重合体、
・ブロックセグメント(A)、ブロックセグメント(B)及びブロックセグメント(C)を有するブロック共重合体
・ブロックセグメント(A)及びブロックセグメント(BC)を有するブロック共重合体
【0070】
重合体αは、例えば、リビング重合によって得られる2種以上のブロックセグメントから成る共重合体であり、少なくとも1つのブロックセグメントは弱アンカリング性を発現するブロックセグメント(A)から成り、少なくとも1つのブロックセグメントは光または熱によってラジカル発生する構造(B)、あるいはラジカルによって硬化反応を起こす構造(C)から成る重合体である。この共重合体がトリブロック共重合体である場合、1つのブロックセグメントは弱アンカリング性を発現するブロックセグメント(A)から成り、1つのブロックセグメントは光または熱によってラジカル発生する構造(B)から成り、1つのブロックセグメントはラジカルによって硬化反応を起こす構造(C)から成る共重合体であってもよい。
【0071】
本発明の硬化性組成物は、光または熱によってラジカル発生する構造(B)及びラジカルによって硬化反応を起こす構造(C)をいずれも含有することで初めて硬化性組成物としての機能を示す。従って、前記重合体αが構造(B)を有するブロックセグメント(B)及び構造(C)を有するブロックセグメント(C)のいずれかが含まれない場合、欠けている要素として重合体αの他に添加剤として使用することで硬化性組成物としての機能を発現することができる。例えば、重合体αがブロックセグメント(A)、(B)、及び(C)全てで構成される場合は、重合体α単体で硬化性組成物として機能するが、重合体αがブロックセグメント(A)及び(B)から構成され、ブロックセグメント(C)を含まない場合は、重合体αに加え構造(C)を含有する化合物を添加剤として使用することで硬化性組成物としての機能を発現する。
【0072】
重合体αにおける弱アンカリング性を示すブロックセグメント(A)は、前記式(1)で表される化合物、前記式(2)で表される化合物、前記式(3)で表される化合物、及び下記式(4)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を、構成成分として含むことが好ましい。
重合体αにおけるブロックセグメント(B)は、前記光または熱によってラジカルを発生する構造(B)を、構成成分として含むことが好ましい。
重合体αにおけるブロックセグメント(C)は、前記ラジカルによって硬化反応を起こす構造(C)を、構成成分として含むことが好ましい。
重合体αにおけるブロックセグメント(BC)は、前記構造(B)と前記構造(C)を、構成成分として含むことが好ましい。
重合体αは、重合体αのうちブロックセグメント(A)が前記式(1)~(4)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種から合成される重合体でありかつ、ブロックセグメント(B)が前記構造(B)から合成され、ブロックセグメント(C)が前記構造(C)から合成され、ブロックセグメント(BC)が前記構造(B)と構造(C)で表される化合物から合成される重合体であることが好ましい。
【0073】
重合体αの一実施形態は、ブロックセグメント(A’)とブロックセグメント(B’)を有するブロック共重合体、ブロックセグメント(A’)とブロックセグメント(C’)を有するブロック共重合体、ブロックセグメント(A’)とブロックセグメント(B’)とブロックセグメント(C’)を有するブロック共重合体、またはブロックセグメント(A’)とブロックセグメント(B’C’)を有するブロック共重合体である。
ブロックセグメント(A’)は、前記式(1)で表される化合物、前記式(2)で表される化合物、前記式(3)で表される化合物、及び前記式(4)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を、構成成分として含むことが好ましい。
重合体αにおけるブロックセグメント(B’)は、前記光または熱によってラジカルを発生する構造を、構成成分として含むことが好ましい。
重合体αにおけるブロックセグメント(C’)は、前記ラジカルによって硬化反応を起こす構造を、構成成分として含むことが好ましい。
重合体αにおけるブロックセグメント(B’C’)は、前記光または熱によってラジカルを発生する構造と、前記ラジカルによって硬化反応を起こす構造とを、構成成分として含むことが好ましい。
【0074】
ブロックセグメント(A)及びブロックセグメント(A’)は主に薄膜状態で液晶に膨潤され、弱アンカリング膜を形成する役割を担う。
【0075】
ブロックセグメント(A)及びブロックセグメント(A’)は好ましくは、前記式(1)で表される化合物、前記式(2)で表される化合物、前記式(3)で表される化合物、及び前記式(4)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を、側鎖構造として含む。
【0076】
重合体αにおけるブロックセグメント(A)の形成に使用される、弱アンカリング性を発現する構造は、以下の構造が好ましい。ただし、これらに限定されるものではない。
重合体αにおけるブロックセグメント(A’)の形成に使用される構造は、以下の構造が好ましい。ただし、これらに限定されるものではない。
【0077】
【化29】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
【0078】
共重合体が有するブロックセグメントは、3種以上であってもよい。
共重合体は、好ましくは、主鎖が分岐せずに直鎖状に伸びた共重合体である。
【0079】
本発明の硬化性組成物の好適な実施形態は以下の通りである。
硬化性組成物は、構造(A)を有する成分を含有する。
構造(A)は、式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)から選ばれるモノマー由来の構造[構造(A’)]である。
構造(B)は、式(B’-1)(構造群(P))及び式(B’-2)(構造群(H))から選ばれる構造[構造(B’)]を含有する。
構造(C)は、式(C’)から選ばれる構造[構造(C’)]を含有する。
構造(A)を有する成分は、下記重合体α-1を含有する。なお、重合体α-1は、重合体αの一例である。
[重合体α-1]:
構造(A’)を有するブロックセグメント(Aα)及び構造(B’)を有するブロックセグメント(Bα)を有しているか、
ブロックセグメント(Aα)及び構造(C’)を有するブロックセグメント(Cα)を有しているか、
ブロックセグメント(Aα)、ブロックセグメント(Bα)及びブロックセグメント(Cα)を有しているか、または
ブロックセグメント(Aα)及び構造(B’)と構造(C’)を有するブロックセグメント(BCα)を有している、
ブロック共重合体。
【0080】
ブロックセグメント(A)及びブロックセグメント(A’)の分子量に応じて弱アンカリング膜の物性が大きく異なるため、分子量の最適化が必要ではないが重要となる。良好な弱アンカリング膜を形成する観点で好ましいブロックセグメント(A)及びブロックセグメント(A’)の分子量は1,000~100,000であり、より好ましくは3,000~50,000である。なお、この分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)である。また、GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比で表される分子量分布PDI(Mw/Mn)は、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.0以下である。
【0081】
ブロックセグメント(A)及びブロックセグメント(A’)は前記式(1)~(4)で表される化合物の単独ポリマーでも良く、複数の化合物を組み合わせて使用することができる。組み合わせる場合、ランダム共重合でも良く、ブロック共重合でも良い。液晶に相溶する化合物種と組み合わせる場合は、組み合わせ方法に依らずその比率は特に限定されない。以下で説明する液晶に不溶化する化合物種と組み合わせる場合は、特性維持の観点で液晶に不溶化する化合物種の好ましい組み合わせ比率は30モル%以下であり、より好ましくは20モル%以下であるが限定はしない。これら組み合わせ方法や組み合わせる化合物種、組み合わせ比率は目的とする物性や表示特性、電気特性等が得られる範囲で使用するのが好ましい。
【0082】
ブロックセグメント(B)及びブロックセグメント(B’)は薄膜状態において光または熱によってラジカルを発生する機能を有し、前記ラジカルによって硬化反応を起こす構造(C)を有するブロックセグメント(C)の硬化反応に寄与するか、または重合体αがブロックセグメント(C)を含まない場合に構造(C)を有する添加剤の硬化反応に寄与する。
【0083】
ブロックセグメント(B)及びブロックセグメント(B’)は好ましくは、前記光または熱によってラジカルを発生する構造で表される化合物を側鎖構造として含む。
【0084】
重合体αにおけるブロックセグメント(B)及びブロックセグメント(B’)の形成に使用される、光によってラジカルを発生する構造は、前記光によってラジカル発生する母核を有し、かつブロック共重合体化するために重合性基を付与した化合物種が好ましく、例えば以下の構造が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0085】
【化30】
(式中、nは、0、1、2又は3である。
Aは単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、又はチオエーテル結合を表し、Bは結合基が挿入されていてもよい炭素数1~20のアルキレン基を表す。Rは水素原子又はメチル基を表す。
Aが2つ以上の時、2つ以上のAは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
Bが2つ以上の時、2つ以上のBは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。)
【0086】
Bにおける結合基としては、例えば、例えば、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、-Si(R11)(R12)-(R11及びR12はそれぞれ独立してSiに結合するアルキル基を表す。)、-Si(R13)(R14)-O-(R13及びR14はそれぞれ独立してSiに結合するアルキル基を表す。)、-N(R15)-(R15はNに結合する、水素原子又はアルキル基を表す。)が挙げられる。
【0087】
光によってラジカルを発生する構造(B)は、用いる光源に適切な構造を選択する必要がある。光源に対して適切な構造を選択することで、より高い硬化性を実現することができる。
【0088】
熱によってラジカルを発生する構造は、前記熱によってラジカル発生する母核を有し、かつブロック共重合体化するために重合性基を付与した化合物種が好ましく、例えば以下の構造が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0089】
【化31】
(式中、nは、0、1、2又は3である。
Aは単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、又はチオエーテル結合を表し、Bは結合基が挿入されていてもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。Rは水素原子又はメチル基を表す。
Aが2つ以上の時、2つ以上のAは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
Bが2つ以上の時、2つ以上のBは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。)
【0090】
Bにおける結合基としては、例えば、例えば、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、-Si(R11)(R12)-(R11及びR12はそれぞれ独立してSiに結合するアルキル基を表す。)、-Si(R13)(R14)-O-(R13及びR14はそれぞれ独立してSiに結合するアルキル基を表す。)、-N(R15)-(R15はNに結合する、水素原子又はアルキル基を表す。)が挙げられる。
【0091】
ブロックセグメント(B)及びブロックセグメント(B’)は、ブロックセグメント(C)及びラジカルによって硬化反応を起こす構造(C)を有する添加剤の少なくともいずれかと組み合わせることにより、硬化性組成物としての安定化を担う。一方で、弱アンカリング膜の物性についてはブロックセグメント(A)が支配的であり、ブロックセグメント(B)は大きく関与しない。従って、ブロックセグメント(B)及びブロックセグメント(B’)によって膜の安定性が補完されていれば良く、膜の安定性が補完できる最適な分子量は用いる化合物種に応じて異なるため特に限定されない。
また、用いる化合物種によってラジカルの発生方法が異なり、光でラジカルを発生する化合物種においては構造によってラジカルが発生する露光波長領域が変わり、熱でラジカルを発生する化合物種においては構造によってラジカルが発生する温度領域が変わる。さらに、重合度によっては硬化性が変化するため、用途や目的に合わせてブロックセグメント(B)及びブロックセグメント(B’)を構成する化合物種とその重合度を制御するのが適切である。
【0092】
ブロックセグメント(B)及びブロックセグメント(B’)の合成には、前記光または熱によってラジカルを発生する構造を含有する化合物を単独で使用してもよく、複数の化合物を組み合わせて使用してもよい。前記の通りブロックセグメント(B)及びブロックセグメント(B’)はあくまで膜の安定性に寄与するブロックセグメントであって、弱アンカリング特性に大きく関与しないため、膜の安定化が補完されていれば組み合わせる化合物種や組み合わせる方法は特に限定されない。
【0093】
ブロックセグメント(C)及びブロックセグメント(C’)は薄膜状態においてラジカルによって硬化反応を起こす機能を有し、前記光または熱によってラジカルを発生する構造(B)を有するブロックセグメント(B)から発生するラジカルを利用して硬化に寄与するか、または重合体αがブロックセグメント(B)を含まない場合に構造(B)を有する添加剤から発生するラジカルを利用して硬化に寄与する。
【0094】
ブロックセグメント(C)及びブロックセグメント(C’)は好ましくは、前記ラジカルによって硬化反応を起こす構造を側鎖構造として含む。
【0095】
ラジカルによって硬化反応を起こす構造は、前記ラジカルによって硬化反応を起こす母核を有し、かつブロック共重合体化するために重合性基を付与した化合物種が好ましく、例えば以下の構造が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0096】
【化32】
(式中、n及びmは、それぞれ独立に、0、1、2又は3である。
Aは単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、又はチオエーテル結合を表し、Bは結合基が挿入されていてもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。
Cは、それぞれ独立に、単結合、フェニレン基又は炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基であり、該フェニレン基及び該炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基の水素原子の一部又は全部が、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~6のアルキルカルボニル基又は炭素数1~5のアルコキシ基に置換されていてもよい。
Dは、それぞれ独立に、単結合、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-N=N-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=CH-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-CH=CH-である。
、及びR、Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐アルキル基を表す。
A、B、C、及びDがそれぞれ2つ以上の時、A、B、C、及びDは、それぞれ、同じであってもよいし、異なっていてもよい。)
【0097】
Bにおける結合基としては、例えば、例えば、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオエーテル結合、-Si(R11)(R12)-(R11及びR12はそれぞれ独立してSiに結合するアルキル基を表す。)、-Si(R13)(R14)-O-(R13及びR14はそれぞれ独立してSiに結合するアルキル基を表す。)、-N(R15)-(R15はNに結合する、水素原子又はアルキル基を表す。)が挙げられる。
【0098】
ブロックセグメント(C)及びブロックセグメント(C’)は、ブロックセグメント(B)及び光または熱によってラジカルを発生する構造(B)を有する添加剤の少なくともいずれかと組み合わせることにより、硬化性組成物としての安定化を担う。一方で、弱アンカリング膜の物性についてはブロックセグメント(A)が支配的であり、ブロックセグメント(C)は大きく関与しない。従って、ブロックセグメント(C)及びブロックセグメント(C’)によって膜の安定性が補完されていれば良く、膜の安定性が補完できる最適な分子量は用いる化合物種に応じて異なるため特に限定されない。
また、用いる化合物種によってラジカル重合反応性が異なり、重合度によっては硬化性が変化するため、用途や目的に合わせてブロックセグメント(C)及びブロックセグメント(C’)を構成する化合物種とその重合度を制御するのが適切である。
【0099】
ブロックセグメント(C)及びブロックセグメント(C’)の合成には、前記ラジカルによって硬化反応を起こす構造を含有する化合物を単独で使用してもよく、複数の化合物を組み合わせて使用してもよい。前記の通りブロックセグメント(C)及びブロックセグメント(C’)はあくまで膜の安定性に寄与するブロックセグメントであって、弱アンカリング特性に大きく関与しないため、膜の安定化が補完されていれば組み合わせる化合物種や組み合わせる方法は特に限定されない。
【0100】
ブロックセグメント(BC)及びブロックセグメント(B’C’)は薄膜状態において薄膜の安定化に寄与する。
【0101】
ブロックセグメント(BC)及びブロックセグメント(B’C’)は好ましくは、前記光または熱によってラジカルを発生する構造と前記ラジカルによって硬化反応を起こす構造で表される化合物を側鎖構造として含む。
【0102】
ブロックセグメント(BC)及びブロックセグメント(B’C’)は、光または熱によってラジカルを発生する構造(B)とラジカルによって硬化反応を起こす構造(C)を同一なブロックセグメントに有しており、ブロックセグメント単独で安定化を担うことができる。一方で、弱アンカリング膜の物性についてはブロックセグメント(A)が支配的であり、ブロックセグメント(BC)は大きく関与しない。従って、ブロックセグメント(BC)及びブロックセグメント(B’C’)によって膜の安定性が補完されていれば良く、膜の安定性が補完できる最適な分子量は用いる化合物種に応じて異なるため特に限定されない。
【0103】
ブロックセグメント(BC)及びブロックセグメント(B’C’)を構成する構造(B)及び構造(C)はランダム共重合でも、グラジエント共重合であっても良い。
【0104】
重合体αの一実施形態は弱アンカリング性発現に寄与するブロックセグメント(A)と膜の硬化性に寄与するブロックセグメント(B)、(C)、または(BC)を有する共重合体であることを特徴とするが、ブロックセグメントの数は限定せず、例えば(A)-(BC)-(A)のように複数のブロックセグメントを有する構成でも良く、このブロックセグメントの数や組み合わせは特に限定はしない。また電気特性を付与するブロックセグメントの導入なども行うことができる。一方で合成のしやすさなどの観点から、ブロックセグメントの数は2~4程度が好ましく、膜の安定性の観点から重合体の終端のブロックセグメントはブロックセグメント(B)、(C)、または(BC)となるのが好ましい。
【0105】
前記の通り、ブロックセグメント(A)が弱アンカリング特性を司り、ブロックセグメント(A)の分子量が特性に大きく影響するため、ブロックセグメント(A)と硬化に寄与するブロックセグメントであるブロックセグメント(B)、(C)、または(BC)との分子量比率は限定されない。
【0106】
重合体αの一実施形態は弱アンカリング性発現に寄与するブロックセグメント(A’)と膜の硬化性に寄与するブロックセグメント(B’)、(C’)、または(B’C’)を有する共重合体であることを特徴とするが、ブロックセグメントの数は限定せず、例えば(A’)-(B’C’)-(A’)のように複数のブロックセグメントを有する構成でも良く、このブロックセグメントの数や組み合わせは特に限定はしない。また電気特性を付与するブロックセグメントの導入なども行うことができる。一方で合成のしやすさなどの観点から、ブロックセグメントの数は2~4程度が好ましく、膜の安定性の観点から重合体の終端のブロックセグメントはブロックセグメント(B’)、(C’)、または(B’C’)となるのが好ましい。
【0107】
前記の通り、ブロックセグメント(A’)が弱アンカリング特性を司り、ブロックセグメント(A’)の分子量が特性に大きく影響するため、ブロックセグメント(A’)と硬化に寄与するブロックセグメントであるブロックセグメント(B’)、(C’)、または(B’C’)との分子量比率は限定されない。
【0108】
重合体αは、例えば、リビング重合によって得ることができる。リビング重合とは重合反応中に連鎖移動反応や停止反応などの副反応が伴わない重合反応であり、分子量分布が狭く、構造が高度に制御されたポリマーを得ることができる。例えば重合活性部位にドーマント種と呼ばれる安定な共有結合種を導入することで活性部位の失活を抑え、連鎖移動反応や停止反応などの副反応を発生させないようにする方法が挙げられる。リビング重合には活性種にラジカルを用いたもの、カチオンを用いたもの、アニオンを用いたものが挙げられ、用いる重合性化合物の構造や性質によって使い分けることが重要である。
本発明の弱アンカリング液晶配向膜に使用される重合体αであるブロックポリマーを得る際、重合法は特に限定する必要は無いが、カチオン重合やアニオン重合は活性種を発生させる際にアルカリ金属や金属錯体、ハロゲン化合物を使用することが多く、液晶ディスプレイにおいては金属等の残渣やハロゲン化合物等の混入は焼き付きや表示不良の要因と成りえるため、極力金属やハロゲン化合物を使用しないラジカル重合の使用が好ましい。リビングラジカル重合としてはニトロキシドをドーマント種として使用するリビングラジカル重合(NMP)や、金属錯体を用いる原子移動ラジカル重合(ATRP)、硫黄化合物をドーマントとして使用する可逆的付加・脱離連鎖移動重合(RAFT)、有機テルル化合物等を用いるリビングラジカル重合(TERP)、ドーマント種にヨウ化アルキル化合物を使用し、リン化合物やアルコール等を触媒として使用する可逆移動触媒重合(RTCP)等があげられ、好ましい重合法としてはNMPやRTCP、RAFT重合等のリビングラジカル重合が挙げられ、特に好ましくはNMP若しくはRAFT重合である。
【0109】
NMPを用いる場合、使用する重合開始剤としては、例えば2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、1,1’-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、過酸化水素等が挙げられる。重合開始剤の使用割合は、使用するモノマー1モル部に対して、通常、0.000001~0.1モル部、好ましくは0.00001~0.01モル部である。ニトロキシドとしては、例えば下記式(N-1)~(N-12)で表される化合物が挙げられる。ニトロキシドの使用割合は、使用するモノマー1モル部に対して、通常、0.000001~0.1モル部、好ましくは0.00001~0.01モル部である。上記重合における反応温度は、好ましくは20~200℃、より好ましくは40~150℃であり、反応時間は、好ましくは1~168時間、より好ましくは8~72時間である。
【0110】
【化33】
【0111】
RTCPを用いる場合、リビング性の発現に寄与する低分子休眠種(ドーマント種)に加え、反応促進の目的でヨウ化物触媒又は、水素化物触媒、及び重合開始剤を用いる必要がある。
使用する重合開始剤としては、例えば2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、1,1’-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、過酸化水素等が挙げられる。重合開始剤の使用割合は、使用するモノマー1モル部に対して、通常、0.000001~0.1モル部、好ましくは0.00001~0.01モル部である。
低分子休眠種(ドーマンント種)としては、例えば下記式(Q-1)~(Q-3)で表される化合物が挙げられる。低分子休眠種の使用割合は、使用するモノマー1モル部に対して、通常、0.000001~0.1モル部、好ましくは0.00001~0.01モル部である。
ヨウ化物触媒としては、例えば下記式(P-1)~(P-4)で表される化合物が挙げられる。ヨウ化物触媒の使用割合は、使用するモノマー1モル部に対して、通常、0.000001~0.1モル部、好ましくは0.00001~0.01モル部である。
水素化物触媒としては、例えば下記式(O-1)~(O-6)で表される化合物が挙げられる。水素化物触媒の使用割合は、使用するモノマー1モル部に対して、0.000001~0.1モル部、好ましくは0.00001~0.01モル部である。通常、上記重合における反応温度は、好ましくは20~200℃、より好ましくは40~150℃であり、反応時間は、好ましくは1~168時間、より好ましくは8~72時間である。
【0112】
【化34】
【0113】
【化35】
【0114】
【化36】
【0115】
RAFT重合を用いる場合、使用する重合開始剤としては、例えば2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、1,1’-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、過酸化水素等が挙げられる。重合開始剤の使用割合は、使用するモノマー1モル部に対して、通常、0.000001~0.1モル部、好ましくは0.00001~0.01モル部である。連鎖移動剤(RAFT剤)としては、トリチオカーボナート、ジチオベンゾアート、ジチオカルバマート、キサンタートが好ましく、具体例としては、下記式(R-1)~(R-24)で表される化合物が挙げられる。連鎖移動剤の使用割合は、使用するモノマー1モル部に対して、通常、0.000001~0.1モル部、好ましくは0.00001~0.01モル部である。上記重合における反応温度は、好ましくは20~200℃、より好ましくは40~150℃であり、反応時間は、好ましくは1~168時間、より好ましくは8~72時間である。
【0116】
【化37】
【化38】
【0117】
RAFT重合においてリビングラジカル性が発現するのは、リビング鎖の大部分がドーマント型(休止型)であるように、成長するラジカル種を可逆的に不活性化できる化合物が存在し、活性鎖とドーマント鎖との間に速い平衡が存在するためである。
【0118】
RAFT重合を用いることで、高分子末端制御、高度な分子量制御や分子量分布制御が可能となる。
【0119】
RAFT重合を用いて、機能性高分子を精密に合成するためには、モノマーの反応性を考慮して適切な連鎖移動剤を選択する必要がある。
【0120】
RAFT重合において、成長末端に存在するRAFT末端を熱的、化学的に改質することで高分子末端を制御できる。熱的に改質する場合、使用したRAFT剤が熱分解する温度以上で加熱することで末端を不飽和炭化水素基に改質できる。また、化学的に改質する場合、第一級アミン、第二級アミンなどに接触させることでアミノリシスを伴い、末端をチオール結合に改質できる。さらに、新たなモノマーおよびラジカル発生剤と接触させることで末端に新たなブロックセグメントを設けることが可能である。
【0121】
RAFT重合において、下記式(eq1)を用いることで分子量制御が可能である。具体的には、数平均分子量(Mn)はモノマーのモル濃度と連鎖移動剤のモル濃度の比に伴い線形的に変化するため分子量制御が可能となる。
【数1】
(上記式(eq1)中、Mn(theor)は重合体の分子量を表し、[Monomer]はモノマーのモル濃度を表し、[CTA]は連鎖移動剤のモル濃度を表し、Mmonomerはモノマーの分子量を表し、conv.は重合転化率を表し、MCTAは連鎖移動剤の分子量を表す。)
【0122】
なお、上記重合により得られる共重合体が反応溶液中に溶解されている場合、該反応溶液をそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれる共重合体を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0123】
ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤(ラジカル熱重合開始剤、ラジカル光重合開始剤)や、可逆的付加-開裂型連鎖移動(RAFT)重合試薬等の公知の化合物を使用することができる。
【0124】
ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド類(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ジアシルパーオキサイド類(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド類(過酸化水素、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド類(ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシケタール類(ジブチルパーオキシシクロヘキサン等)、アルキルパーオキシエステル類(パーオキシネオデカン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシピバリン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシ2-エチルシクロヘキサン酸-tert-アミルエステル等)、過硫酸塩類(過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエチル)アゾビスイソブチロニトリル等)等が挙げられる。ラジカル熱重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0125】
ラジカル光重合開始剤は、ラジカル重合を光照射によって開始する化合物であれば特に限定されない。このようなラジカル光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-エチルアントラキノン、アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-4’-イソプロピルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’-ビス(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’-トリス(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2-(4’-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(2’-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4’-ペンチルオキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、4-[p-N,N-ジ(エトキシカルボニルメチル)]-2,6-ジ(トリクロロメチル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(2’-クロロフェニル)-s-トリアジン、1,3-ビス(トリクロロメチル)-5-(4’-メトキシフェニル)-s-トリアジン、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンゾオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、2-(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、3-(2-メチル-2-ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6-ビス(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-n-ドデシルカルバゾール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、3,3’,4,4’-テトラキス(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラキス(tert-ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ビス(メトキシカルボニル)-4,4’-ビス(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’-ビス(メトキシカルボニル)-4,3’-ビス(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(メトキシカルボニル)-3,3’-ビス(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2-(3-メチル-3H-ベンゾチアゾール-2-イリデン)-1-ナフタレン-2-イル-エタノン、2-(3-メチル-1,3-ベンゾチアゾール-2(3H)-イリデン)-1-(2-ベンゾイル)エタノン等が挙げられる。ラジカル光重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0126】
重合体αの合成に使用される有機溶媒としては、共重合体を構成する化合物種と化学反応しないものでかつラジカル補足しないものであれば良い。例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルカプロラクタム、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジプロピルアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルプロピオンアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、γ-ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、2-エチル-1-ヘキサノール、ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、ピルビン酸ペンチル、ピルビン酸ヘキシル、ピルビン酸-2-エチルヘキシル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸ペンチル、アセト酢酸ヘキシル、アセト酢酸-2-エチルヘキシル、レブリン酸メチル、レブリン酸エチル、レブリン酸プロピル、レブリン酸ブチル、レブリン酸ペンチル、レブリン酸ヘキシル、レブリン酸-2-エチルヘキシル、マロン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、フタル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、コハク酸ジプロピル、グルタル酸ジプロピル、アジピン酸ジプロピル、フタル酸ジプロピル、マレイン酸ジプロピル、マロン酸ジブチル、コハク酸ジブチル、グルタル酸ジブチル、アジピン酸ジブチル、フタル酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、マロン酸ジペンチル、コハク酸ジペンチル、グルタル酸ジペンチル、アジピン酸ジペンチル、フタル酸ジペンチル、マレイン酸ジペンチル、マロン酸ジヘキシル、コハク酸ジヘキシル、グルタル酸ジヘキシル、アジピン酸ジヘキシル、フタル酸ジヘキシル、マレイン酸ジヘキシル、マロン酸ジ-2-エチルヘキシル、コハク酸-2-エチルヘキシル、グルタル酸-2-エチルヘキシル、アジピン酸-2-エチルヘキシル、フタル酸-2-エチルヘキシル、マレイン酸-2-エチルヘキシル等が挙げられる。これらの有機溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0127】
ラジカル重合法としては、特に限定されるものではなく、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈殿重合法、塊状重合法、溶液重合法等を用いることができる。
ラジカル重合反応に用いる有機溶媒としては、生成したポリマーが溶解するものであれば特に限定されない。その具体例としては、上記特定の有機溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0128】
さらに、生成するポリマーを溶解させない溶媒であっても、生成したポリマーが析出しない範囲で、上述した有機溶媒に混合して使用してもよい。
なお、ラジカル重合において有機溶媒中の酸素は重合反応を阻害する原因となるので、有機溶媒は可能な程度に脱気されたものを用いることが好ましい。
なお、上記重合により得られるブロック共重合体が反応溶液中に溶解されている場合、該反応溶液をそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるブロック共重合体を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
ラジカル重合の際の重合温度は、30~150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは50~100℃の範囲である。反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な撹拌が困難となるので、モノマー濃度は、好ましくは5~70質量%、より好ましくは10~50質量%である。また、重合の過程で有機溶媒を追加し、重合濃度に勾配をかけてもよい。
【0129】
上記反応により得られた反応溶液から生成したポリマーは、反応溶液を貧溶媒に投入して沈殿させて回収することができるが、この再沈殿処理は必須ではない。沈殿に用いる貧溶媒としては、メタノール、アセトン、ヘキサン、ヘプタン、ブチルセロソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、水等が挙げられる。貧溶媒に投入して沈殿させた重合体は、濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥させることができる。また、回収した重合体を有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の貧溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素等が挙げられ、これらの中から選ばれる3種以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるため好ましい
【0130】
(重合体β)
重合体βの一実施形態は、弱アンカリング性発現に寄与する枝ポリマーと、光または熱によりラジカル硬化反応を起こす幹ポリマーとを有するグラフト共重合体である。なお、グラフト共重合体は、幹ポリマーによって、光または熱によりラジカル硬化する。
枝ポリマーは、幹ポリマーの側鎖として幹ポリマーに結合している。
そして、重合体βは、例えば、以下のグラフト共重合体である。
・前記枝ポリマーが前記構造(A)を有し、前記幹ポリマーが前記構造(B)を有しているグラフト共重合体
・前記枝ポリマーが前記構造(A)を有し、前記幹ポリマーが前記構造(C)を有しているグラフト共重合体
・前記枝ポリマーが、前記構造(A)を有し、前記幹ポリマーが前記構造(B)及び前記構造(C)を有しているグラフト共重合体
【0131】
グラフト共重合体は、枝分かれ構造を有するポリマーの総称であり、「幹」に対応するポリマーと幹の側鎖として幹に結合した「枝」に対応するポリマーとを同時に有するポリマーを指す。本発明の硬化性組成物及び液晶配向剤の一実施形態には重合体βとしてグラフト共重合体が使用されるが、グラフト共重合体は、弱アンカリング性発現に寄与する枝ポリマーと、光または熱によりラジカル硬化反応を起こす幹ポリマーとを有することを特徴としている。すなわち、弱アンカリング性発現に寄与する枝ポリマーが液晶と相溶し膨潤することにより弱アンカリング状態形成に寄与しつつ、幹ポリマーによってグラフト共重合体が光または熱によりラジカル硬化することで、液晶へのグラフト共重合体の溶出を防ぎ、かつ基板への固着やポリマー同士の架橋、シール成分と架橋することにより、膜硬度やシール密着強度に優れた弱アンカリング液晶表示素子を得ることができる。
【0132】
本発明のグラフト共重合体の一実施形態は、弱アンカリング性を発現する枝ポリマーを有しつつ、光または熱によりラジカル硬化反応を起こす幹ポリマーを有することを特徴としている。なお、グラフト共重合体を液晶に相溶しないように、又は硬化性組成物の機械強度を維持するために、幹ポリマーは光または熱によりラジカル硬化反応を起こす構造となっている。
【0133】
本発明のグラフト共重合体は、弱アンカリング性を発現する枝ポリマーと光または熱によりラジカル硬化反応を起こす幹ポリマーを有するが、これらはフリーラジカル重合によりランダム配列で連結していることが好ましい。これにより、高いシール密着性や溶剤選択性、塗布性が得られる。
【0134】
本出願人は、重合体βを含む弱アンカリング液晶配向剤が、簡便に製造可能であり、塗布性が良好な弱アンカリング液晶配向剤であって、シールとの密着性が良好であり、プレチルト角の発生がなく、低電圧駆動と電圧OFF時の高速応答化が同時に実現できる弱アンカリング液晶配向膜が得られる弱アンカリング液晶配向剤であることを見出し、出願している(WO2023/048278。ここに引用されたことによって、この公開公報の内容は、全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。)。
【0135】
本発明のグラフト共重合体における「枝ポリマー」は主に弱アンカリング特性を発現する役割を担う。
【0136】
弱アンカリング性発現にする枝ポリマーの構造は、液晶に溶解するものであれば特に限定はしないが、例えば、枝ポリマーは、下記式(5)で表されるマクロモノマーに由来することができる。
【0137】
【化39】
(式(5)中、Pは重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基を表し、Qは前記式(1)~(4)で表される化合物の少なくとも1種以上を含むモノマーを重合することによって得られる構造であり、nは1~2の整数である。nが2の場合、2つのQは同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【0138】
枝ポリマーにおいて末端を除いた構造(例えば、式(5)のQの構造)は例えば上記式(1)~(4)で表されるモノマーを1種のみ用いた単独ポリマー構造でも良く、複数のモノマーを組み合わせた共重合体構造でも良い。複数のモノマー同士を組み合わせる場合、ランダム共重合でも良く、ブロック共重合でも良い。上記式(1)~(4)で表されるモノマー同士を組み合わせる場合は、組み合わせ方法に依らずその比率は特に限定されない。これら合成方法や、組み合わせるモノマー、組み合わせ比率は目的とする物性や表示特性、電気特性等が得られる範囲で使用するのが好ましい。
【0139】
上記化合物の構造を用いることで、電圧OFF時の高速応答化、焼き付きの低減、低温環境における高いバックライト透過率と低電圧駆動が実現しやすい。
【0140】
上記式(5)中のPの構造、及びQの形成に使用される重合性化合物の重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基は、前記重合体αにおけるブロックセグメント(A)またはブロックセグメント(B)、ブロックセグメント(C)の形成に用いられる重合性化合物に用いることのできる重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基から選択するとよい。ただし、これらに限定されるものではない。
【0141】
枝ポリマーの合成に使用される前記モノマーは単一成分でも良く、複数のモノマーを組み合わせて使用してもよい。また、以下でも述べる他のラジカル重合反応可能なモノマーを併用してもよい。
【0142】
本発明の硬化性組成物の好適な実施形態は以下の通りである。
硬化性組成物は、構造(A)を有する成分を含有する。
構造(A)は、式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)から選ばれるモノマー由来の構造[構造(A’)]である。
構造(B)は、式(B’-1)(構造群(P))及び式(B’-2)(構造群(H))から選ばれる構造[構造(B’)]を含有する。
構造(C)は、式(C’)から選ばれる構造[構造(C’)]を含有する。
構造(A)を有する成分は、下記重合体β-1を含有する。なお、重合体β-1は、重合体βの一例である。
[重合体β-1]:
幹ポリマーと、幹ポリマーの側鎖として幹ポリマーに結合した枝ポリマーとを有するグラフト共重合体であって、
枝ポリマーが、構造(A’)を有し、幹ポリマーが、構造(B’)を有しているか、
ポリマーが、構造(A’)を有し、幹ポリマーが、構造(C’)を有しているか、または
枝ポリマーが、構造(A’)を有し、幹ポリマーが、構造(B’)及び構造(C’)を有している、
グラフト共重合体。
【0143】
重合体βにおいて、枝ポリマーが弱アンカリング特性発現に大きく関与している。枝ポリマーの分子量に応じて弱アンカリング膜の物性が変化するため、分子量の最適化が重要となる。良好な弱アンカリング膜を形成する観点で好ましい枝ポリマーの分子量は1,000~100,000であり、より好ましくは3,000~50,000であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(PDI)は、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.0以下である。なお、グラフト共重合体が、マクロモノマーを使用したgrafting throuth法により合成される場合、ここでいう分子量は、マクロモノマーの分子量に相当する。
【0144】
本発明のグラフト共重合体における「幹ポリマー」は薄膜状態において主に硬化性組成物としての硬化性や高い機械強度を発現する役割を担う。
【0145】
本発明のグラフト共重合体における幹ポリマーは光または熱によりラジカル硬化反応を起こす化合物に由来するものであれば特に限定しないが、例えば前記ブロック共重合体における光または熱によりラジカル発生する構造(B)とラジカルによって硬化反応を起こす構造(C)を組み合わせることができる。
必ずしも幹ポリマーに前記構造(B)と構造(C)の両方を含む必要はないが、いずれかを含まない場合は前記ブロック共重合体と同様に、欠けている成分と同様の効果を発現する化合物を添加剤として使用する必要がある。例えば、枝ポリマーに構造(A)を含み、枝ポリマーに構造(B)を含むが、構造(C)を含まないグラフト共重合体を硬化性組成物として扱う場合、構造(C)を含む化合物をグラフト共重合体とは別に添加する必要がある。
【0146】
上記化合物の構造を用いることで硬化性組成物としての液晶駆動やバックライトの点灯で発生する熱によって重合体βが液晶に溶出しにくく、不良が生じにくい。
【0147】
「幹ポリマー」は上記化合物の単独ポリマーでも良く、複数の化合物を組み合わせて使用することができる。構造(B)または構造(C)を有する化合物と組み合わせる場合は、組み合わせ方法に依らずその比率は特に限定されない。前記弱アンカリング性を発現する構造(A)と組み合わせる場合は、液晶への溶出抑制や機械強度維持の観点で構造(A)を含む化合物種の好ましい組み合わせ比率は70モル%以下であり、より好ましくは50モル%以下である。ただし、前記の通り「幹ポリマー」はあくまで膜の安定性に寄与するユニットであって、弱アンカリング特性に大きく関与しないため、膜の安定化が補完されていれば組み合わせる化合物種や組み合わせる方法は特に限定されない。
【0148】
「幹ポリマー」の形成に使用される重合性化合物における「重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基」としては、上記重合体αにおけるブロックセグメント(A)、ブロックセグメント(B)、またはブロックセグメント(C)の形成に用いられる重合性化合物に用いることのできる重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基から選択するとよい。ただし、これらに限定されるものではない。
【0149】
「幹ポリマー」は主に薄膜状態における安定化を担い、弱アンカリング膜の物性に大きく関与しない。
「幹ポリマー」によって膜の安定性が補完されていれば良く、膜の安定性が補完できる最適な分子量は用いる化合物種に応じて異なるため特に限定されない。一方で、弱アンカリング液晶配向膜の塗布性、シール密着性や膜強度、良好な弱アンカリング特性をそれぞれ両立するには、「枝ポリマー」と「幹ポリマー」の導入比率なども重要な要素である。例えば弱アンカリング特性には枝ポリマーが重要な役割を担っており、それらの導入割合が多くなると膜の強度が損なわれたり熱硬化等が阻害されたりするため、適切な導入量を考える必要がある。
前記の通り、「幹ポリマー」の導入量や分子量は弱アンカリング特性に影響しない(小さい)ため、前述の特性をそれぞれ両立するには、幹ポリマーの合成に使用される構造(B)または構造(C)を有するモノマーの分子数に対して、枝ポリマーの合成に使用される式(5)で表されるマクロモノマーの分子数比(導入比率)は小さくすることが好ましい。好ましい導入比率(式(5)で表されるマクロモノマー/構造(B)または構造(C)を有するモノマー)としては、0.1/99.9~50/50(モル/モル)であり、より好ましくは0.2/99.8~30/70(モル/モル)である。
【0150】
グラフト共重合体は、得られる塗膜の強度、塗膜形成時の作業性および塗膜の均一性を考慮すると、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量は、2,000~5,000,000が好ましく、5,000~2,000,000がより好ましい。
【0151】
重合体βであるグラフト共重合体の枝ポリマーを形成する原料である式(5)で表されるマクロモノマーは、例えば、リビング重合、連鎖移動重合とポリマー末端修飾反応の組み合わせによって得ることができる。例えば、下記参考文献にて報告されているように、チオグリコール酸を連鎖移動剤として用いたメタクリル酸メチルの連鎖移動重合による片末端にカルボン酸基を有する連鎖移動重合体の合成、これとグリシジルメタクリレートの高分子反応により片末端にメタクリル酸基を有するマクロモノマーを合成できる(Ito, K., Usami, N., Yamashita, Y.: Macromolecules, 13, 216 1980.)。
また、200℃以上の高温での連続塊状重合によって、末端基にラジカル重合性のある不飽和結合を有するポリマーを得ることができることが報告されている(東亞合成研究年報 TREND 2002 第5号)。
【0152】
連鎖移動重合を用いる場合、使用する重合開始剤としては、例えば2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、1,1’-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、過酸化水素等が挙げられる。重合開始剤の使用割合は、使用するモノマー1モル部に対して、通常、0.000001~0.1モル部、好ましくは0.00001~0.01モル部である。連鎖移動剤としては、チオール類を用いることが好ましく、具体例としては、下記式(S-1)~(S-16)で表される化合物が挙げられる。連鎖移動剤の使用割合は、使用するモノマー1モル部に対して、通常、0.000001~0.1モル部、好ましくは0.00001~0.01モル部である。上記重合における反応温度は、好ましくは20~200℃、より好ましくは40~150℃であり、反応時間は、好ましくは1~168時間、より好ましくは8~72時間である。
【0153】
【化40】
(式(S-1)~(S-16)中、Meは、メチル基を表し、Etは、エチル基を表す。)
【0154】
連鎖移動重合を用いることで、高分子末端制御、分子量制御や分子量分布制御が可能となる。
【0155】
連鎖移動重合において、重合体は連鎖移動と成長反応の競争反応によって得られる。連鎖移動重合で得られる重合体の分子量や分子量分布は、[連鎖移動速度定数(kc)/成長速度定数(kp)]で表される連鎖移動定数(Cs)によって決定される。一般に連鎖移動重合はCsが1~60の範囲となる構成が良く、用いるモノマー種や連鎖移動剤種、及び、これらを正しく組み合わせることが重要である。
【0156】
連鎖移動定数(Cs)は用いるモノマーの種類や連鎖移動剤種によって大きく異なるため、正しく選択する必要がある。
【0157】
グラフト共重合体の主な合成方法として、幹ポリマーに直接枝ポリマーを導入するGrafting-to法、マクロ開始剤(重合活性点を有する幹ポリマー)からモノマーを重合し枝ポリマーを延長するGrafting-from法、マクロモノマー(片末端に重合性官能基を有するポリマー)を重合するGrafting-through法、などが挙げられるが、いずれの方法も利用可能であるため、その合成方法は限定しない。
【0158】
グラフト共重合体の製造方法は、特に限定されるものではなく、工業的に扱われている汎用な方法が利用できる。具体的には前記のモノマーを用いて、ラジカル重合、カチオン重合またはアニオン重合により製造することができる。これらの中では、反応制御のしやすさ等の観点からラジカル重合が特に好ましい。
【0159】
ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤(ラジカル熱重合開始剤、ラジカル光重合開始剤)や、可逆的付加-開裂型連鎖移動(RAFT)重合試薬等の公知の化合物を使用することができ、重合体αと同様の化合物を用いることができる。
【0160】
上述したラジカル重合反応においては、ラジカル重合開始剤の比率がモノマーに対して多いと得られる高分子の分子量が小さくなり、少ないと得られる高分子の分子量が大きくなるので、ラジカル開始剤の比率は重合させるモノマーに対して0.1~10モル%が好ましい。また重合時には各種モノマー成分や溶媒、開始剤等を追加することもできる。
【0161】
重合体βの合成に使用される有機溶媒としては、共重合体を構成する化合物種と化学反応しないものでかつラジカル補足しないものであれば良く、重合体αの合成に用いた有機溶剤と同様のものを使用することができる。また、有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0162】
さらに、生成するポリマーを溶解させない溶媒であっても、生成したポリマーが析出しない範囲で、上述した有機溶媒に混合して使用してもよい。
なお、ラジカル重合において有機溶媒中の酸素は重合反応を阻害する原因となるので、有機溶媒は可能な程度に脱気されたものを用いることが好ましい。
なお、上記重合により得られるグラフト共重合体が反応溶液中に溶解されている場合、該反応溶液をそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるグラフト共重合体を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
ラジカル重合の際の重合温度は、30~150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは50~100℃の範囲である。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な撹拌が困難となるので、モノマー濃度は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~40質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することができる。
【0163】
さらに、生成するポリマーを溶解させない溶媒であっても、生成したポリマーが析出しない範囲で、上述した有機溶媒に混合して使用してもよい。
なお、ラジカル重合において有機溶媒中の酸素は重合反応を阻害する原因となるので、有機溶媒は可能な程度に脱気されたものを用いることが好ましい。
なお、上記重合により得られるグラフト共重合体が反応溶液中に溶解されている場合、該反応溶液をそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるグラフト共重合体を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
ラジカル重合の際の重合温度は、30~150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは50~100℃の範囲である。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な撹拌が困難となるので、モノマー濃度は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~40質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することができる。
【0164】
上述したラジカル重合反応においては、ラジカル重合開始剤の比率がモノマーに対して多いと得られる高分子の分子量が小さくなり、少ないと得られる高分子の分子量が大きくなるので、ラジカル開始剤の比率は重合させるモノマーに対して0.1~10モル%が好ましい。また重合時には各種モノマー成分や溶媒、開始剤等を追加することもできる。
【0165】
上記反応により得られた反応溶液から生成したポリマーは、反応溶液を貧溶媒に投入して沈殿させて回収することができるが、この再沈殿処理は必須ではない。沈殿に用いる貧溶媒としては、メタノール、アセトン、ヘキサン、ヘプタン、ブチルセロソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、水等が挙げられる。貧溶媒に投入して沈殿させた重合体は、濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥させることができる。また、回収した重合体を有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の貧溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素等が挙げられ、これらの中から選ばれる3種以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるため好ましい。
【0166】
グラフト共重合体は、得られる塗膜の強度、塗膜形成時の作業性および塗膜の均一性を考慮すると、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量は、2,000~5,000,000が好ましく、5,000~2,000,000がより好ましい。
【0167】
グラフト共重合体は、弱アンカリング性発現に寄与する枝ポリマーと光または熱によりラジカル硬化する幹ポリマーを有するが、これらはフリーラジカル重合によりランダム配列で連結していることを特徴している。これにより、高いシール密着性や溶剤選択性、塗布性が得られる。
【0168】
(硬化性組成物)
本発明の硬化性組成物は、弱アンカリング性を発現し、光または熱によって硬化する硬化性組成物であるため、液晶配向剤として使用することが可能で、例えば、液晶と、液晶配向膜とを有する液晶セルの前記液晶配向膜の形成に用いることができる。特に、光で硬化する構成にすること、100℃以下の低温でラジカル硬化する構成にすることで、焼成が不要、ないしは低温焼成で特性が発現するため、他部材の影響で低温を必要とする液晶配向膜として使用することができる。さらに、光で硬化する構成において、フォトマスクを介して露光部位と非露光部位に対応した硬化部位と非硬化部位を作ることが可能であり、選択的に弱アンカリング性を発現する硬化性組成物をパターニング形成することができる。
液晶配向剤においては、配向膜を構成する、弱アンカリング性を発現する成分以外の複合成分は、単量体でも良く、重合体であっても良い。複合成分として重合体を選択する場合、複数の重合体を混合して使用することができる。また、複合する重合体としてポリアミック酸やポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレア、ポリアクリレート、ポリオルガノシロキサンなどのポリマー成分を含有しても良いし、シランカップリング剤やその他添加剤等を含有していても良い。また、複合する重合体が構造(B)及び構造(C)の少なくともいずれかを有していてもよい。
電気特性や信頼性改善の観点で構造(A)、構造(B)、及び構造(C)の少なくともいずれかを含む重合体(P)とは異なる成分との併用が好ましく、特にポリアミック酸やポリイミド等の併用が好ましい。前記重合体(P)と複合する重合体の複合比率は特に限定しないが、光学特性や工程性の観点で好ましい複合比率(前記重合体(P)と複合成分の合計に対して占める複合成分の割合)は99質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下である。添加剤に関しても添加量は特に限定しない。複合成分として単量体を選択する場合についても、複数の単量体を混合して使用することができる。また、複合する単量体として多官能(メタ)アクリレート、多官能エポキシド、多官能エチレンなど熱的に硬化性を示すものが好ましく、同時に熱酸発生剤や熱塩基発生剤、熱ラジカル発生剤等を併用しても良い。前記重合体(P)と複合する単量体の複合比率は特に限定しないが、光学特性や工程性の観点で好ましい複合比率は99質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下である。
【0169】
複合成分としてポリアミック酸やポリイミドを使用する場合、ポリアミック酸やポリイミドの合成に使用されるジアミン成分としては以下のジアミンを挙げることができる。具体的には、p-フェニレンジアミン、2,3,5,6-テトラメチル-p-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノフェノール、2,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノベンジルアルコール、2,4-ジアミノベンジルアルコール、4,6-ジアミノレゾルシノール、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジアミノビフェニル、2,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’-ジアミノジフェニルメタン、2,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ジアミノジフェニルエーテル、2,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-スルホニルジアニリン、3,3’-スルホニルジアニリン、ビス(4-アミノフェニル)シラン、ビス(3-アミノフェニル)シラン、ジメチル-ビス(4-アミノフェニル)シラン、ジメチル-ビス(3-アミノフェニル)シラン、4,4’-チオジアニリン、3,3’-チオジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、3,3’-ジアミノジフェニルアミン、3,4’-ジアミノジフェニルアミン、2,2’-ジアミノジフェニルアミン、2,3’-ジアミノジフェニルアミン、N-メチル(4,4’-ジアミノジフェニル)アミン、N-メチル(3,3’-ジアミノジフェニル)アミン、N-メチル(3,4’-ジアミノジフェニル)アミン、N-メチル(2,2’-ジアミノジフェニル)アミン、N-メチル(2,3’-ジアミノジフェニル)アミン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、2,2’-ジアミノベンゾフェノン、2,3’-ジアミノベンゾフェノン、1,4-ジアミノナフタレン、1,5-ジアミノナフタレン、1,6-ジアミノナフタレン、1,7-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、2,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,7-ジアミノナフタレン、1,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン、1,2-ビス(3-アミノフェニル)エタン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ブタン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ブタン、ビス(3,5-ジエチル-4-アミノフェニル)メタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’-[1,3-フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’-[1,3-フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、1,4-フェニレンビス[(4-アミノフェニル)メタノン]、1,4-フェニレンビス[(3-アミノフェニル)メタノン]、1,3-フェニレンビス[(4-アミノフェニル)メタノン]、1,3-フェニレンビス[(3-アミノフェニル)メタノン]、1,4-フェニレンビス(4-アミノベンゾエート)、1,4-フェニレンビス(3-アミノベンゾエート)、1,3-フェニレンビス(4-アミノベンゾエート)、1,3-フェニレンビス(3-アミノベンゾエート)、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、ビス(3-アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4-アミノフェニル)イソフタレート、ビス(3-アミノフェニル)イソフタレート、N,N’-(1,4-フェニレン)ビス(4-アミノベンズアミド)、N,N’-(1,3-フェニレン)ビス(4-アミノベンズアミド)、N,N’-(1,4-フェニレン)ビス(3-アミノベンズアミド)、N,N’-(1,3-フェニレン)ビス(3-アミノベンズアミド)、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’-ビス(3-アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)イソフタルアミド、N,N’-ビス(3-アミノフェニル)イソフタルアミド、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2’-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2’-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)プロパン、トランス-1,4-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、3,5-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、ビス(4-アミノフェノキシ)メタン、1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)エタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,5-ビス(3-アミノフェノキシ)ペンタン、1,6-ビス(4-アミノフェノキシ)へキサン、1,6-ビス(3-アミノフェノキシ)へキサン、1,7-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘプタン、1,7-ビス(3-アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8-ビス(4-アミノフェノキシ)オクタン、1,8-ビス(3-アミノフェノキシ)オクタン、1,9-ビス(4-アミノフェノキシ)ノナン、1,9-ビス(3-アミノフェノキシ)ノナン、1,10-ビス(4-アミノフェノキシ)デカン、1,10-ビス(3-アミノフェノキシ)デカン、1,11-ビス(4-アミノフェノキシ)ウンデカン、1,11-ビス(3-アミノフェノキシ)ウンデカン、1,12-ビス(4-アミノフェノキシ)ドデカン、1,12-ビス(3-アミノフェノキシ)ドデカンなどの芳香族ジアミン;ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン;1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノへキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカンなどの脂肪族ジアミン;1,3-ビス[2-(p-アミノフェニル)エチル]ウレア、1,3-ビス[2-(p-アミノフェニル)エチル]-1-tert-ブトキシカルボニルウレア等のウレア構造を有するジアミン;N-p-アミノフェニル-4-p-アミノフェニル(tert-ブトキシカルボニル)アミノメチルピペリジン等の含窒素不飽和複素環構造を有するジアミン;N-tert-ブトキシカルボニル-N-(2-(4-アミノフェニル)エチル)-N-(4-アミノベンジル)アミン等のN-Boc基(Bocはtert-ブトキシカルボニル基を表す)を有するジアミン等が挙げられる。
【0170】
上記のジアミンは、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。
上記のジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸二無水物は特に限定されない。具体的には、ピロメリット酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸、1,2,5,6-アントラセンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン、2,3,4,5-ピリジンテトラカルボン酸、2,6-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ピリジン、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、1,3-ジフェニル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、オキシジフタルテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロヘプタンテトラカルボン酸、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸、3,4-ジカルボキシ-1-シクロへキシルコハク酸、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸、ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸、ビシクロ[4.3.0]ノナン-2,4,7,9-テトラカルボン酸、ビシクロ[4.4.0]デカン-2,4,7,9-テトラカルボン酸、ビシクロ[4.4.0]デカン-2,4,8,10-テトラカルボン酸、トリシクロ[6.3.0.0<2,6>]ウンデカン-3,5,9,11-テトラカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドリナフタレン-1,2-ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロへキサン-1,2-ジカルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.1.0<2,7>]ドデカ-4,5,9,10-テトラカルボン酸、3,5,6-トリカルボキシノルボルナン-2:3,5:6ジカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸等のテトラカルボン酸の二無水物が挙げられる。
【0171】
勿論、テトラカルボン酸二無水物も、1種類又は2種類以上併用してもよい。
【0172】
複合成分としての重合体がポリアミック酸エステルである場合の合成で、上記のジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸ジアルキルエステルの構造は特に限定されないが、その具体例を以下に挙げる。
脂肪族テトラカルボン酸ジエステルの具体的な例としては1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、3,4-ジカルボキシ-1-シクロヘキシルコハク酸ジアルキルエステル、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸ジアルキルエステル、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸ジアルキルエステル、3,3’,4,4’-ジシクロヘキシルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸ジアルキルエステル、シス-3,7-ジブチルシクロオクタ-1,5-ジエン-1,2,5,6-テトラカルボン酸ジアルキルエステル、トリシクロ[4.2.1.0<2,5>]ノナン-3,4,7,8-テトラカルボン酸-3,4:7,8-ジアルキルエステル、ヘキサシクロ[6.6.0.1<2,7>.0<3,6>.1<9,14>.0<10,13>]ヘキサデカン-4,5,11,12-テトラカルボン酸-4,5:11,12-ジアルキルエステル、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボンジアルキルエステルなどが挙げられる。
【0173】
芳香族テトラカルボン酸ジアルキルエステルとしては、ピロメリット酸ジアルキルエステル、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,3’,4-ビフェニルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテルジアルキルエステル、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホンジアルキルエステル、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸ジアルキルエステルなどが挙げられる。
【0174】
複合成分としての重合体がポリウレアである場合の合成で、上記のジアミン成分と反応させるジイソシアネートに関しては、特に限定はせず、入手性等に応じて使用することができる。ジイソシアネートの具体的構造を以下に示す。
【化41】
式中R、およびRは炭素数1~10の脂肪族炭化水素基を表す。
【0175】
式(K-1)~(K-5)に示す脂肪族ジイソシアネートは、反応性は劣るが溶媒溶解性を向上させるメリットがあり、式(K-6)~(K-13)に示すような芳香族ジイソシアネートは反応性に富み耐熱性を向上させる効果があるが、溶媒溶解性を低下させる欠点が挙げられる。汎用性や特性面においては式(K-1)、(K-7)、(K-8)、(K-9)、(K-10)が好ましく、電気特性の観点では式(K-12)、液晶配向性の観点では式(K-13)が好ましい。ジイソシアネートは2種以上を併用して使用することもでき、得たい特性に応じて種々適用するのが好ましい。
【0176】
また、一部のジイソシアネートを上記で説明したテトラカルボン酸二無水物に置き換えることもでき、ポリアミック酸とポリウレアの共重合体のような形で使用しても良く、化学イミド化によってポリイミドとポリウレアの共重合体のような形で使用しても良い。
【0177】
複合成分としての重合体がポリアミドである場合の合成で、反応させるジカルボン酸の構造は特に限定されないが、あえて具体例を以下に挙げれば以下のとおりである。
【0178】
脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、蓚酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ムコン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2-ジメチルグルタル酸、3,3-ジエチルコハク酸、アゼライイン酸、セバシン酸およびスベリン酸等のジカルボン酸を挙げることができる。
脂環式系のジカルボン酸としては、1,1-シクロプロパンジカルボン酸、1,2-シクロプロパンジカルボン酸、1,1-シクロブタンジカルボン酸、1,2-シクロブタンジカルボン酸、1,3-シクロブタンジカルボン酸、3,4-ジフェニル-1,2-シクロブタンジカルボン酸、2,4-ジフェニル-1,3-シクロブタンジカルボン酸、1-シクロブテン-1,2-ジカルボン酸、1-シクロブテン-3,4-ジカルボン酸、1,1-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,1-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-(2-ノルボルネン)ジカルボン酸、ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3-ジカルボン酸、2,5-ジオキソ-1,4-ビシクロ[2.2.2]オクタンジカルボン酸、1,3-アダマンタンジカルボン酸、4,8-ジオキソ-1,3-アダマンタンジカルボン酸、2,6-スピロ[3.3]ヘプタンジカルボン酸、1,3-アダマンタン二酢酸、カンファー酸等を挙げることができる。
芳香族ジカルボン酸としては、o-フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-tert-ブチルイソフタル酸、5-アミノイソフタル酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、2,5-ジメチルテレフタル酸、テトラメチルテレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-アントラセンジカルボン酸、1,4-アントラキノンジカルボン酸、2,5-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、1,5-ビフェニレンジカルボン酸、4,4”-ターフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルプロパンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルヘキサフルオロプロパンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ビベンジルジカルボン酸、4,4’-スチルベンジカルボン酸、4,4’-トランジカルボン酸、4,4’-カルボニル二安息香酸、4,4’-スルホニル二安息香酸、4,4’-ジチオ二安息香酸、p-フェニレン二酢酸、3,3’-p-フェニレンジプロピオン酸、4-カルボキシ桂皮酸、p-フェニレンジアクリル酸、3,3’-[4,4’-(メチレンジ-p-フェニレン)]ジプロピオン酸、4,4’-[4,4’-(オキシジ-p-フェニレン)]ジプロピオン酸、4,4’-[4,4’-(オキシジ-p-フェニレン)]二酪酸、(イソプロピリデンジ-p-フェニレンジオキシ)二酪酸、ビス(p-カルボキシフェニル)ジメチルシラン等のジカルボン酸を挙げることができる。
複素環を含むジカルボン酸としては、1,5-(9-オキソフルオレン)ジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、4,5-チアゾールジカルボン酸、2-フェニル-4,5-チアゾールジカルボン酸、1,2,5-チアジアゾール-3,4-ジカルボン酸、1,2,5-オキサジアゾール-3,4-ジカルボン酸、2,3-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,6-ピリジンジカルボン酸、3,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0179】
上記の各種ジカルボン酸は酸ジハライドあるいは無水物の構造のものであってもよい。これらのジカルボン酸類は、特に直線的な構造のポリアミドを与えることが可能なジカルボン酸類であることが液晶分子の配向性を保つ上から好ましい。これらの中でも、テレフタル酸、イソテレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルプロパンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルヘキサフルオロプロパンジカルボン酸、2,2-ビス(フェニル)プロパンジカルボン酸、4、4”-ターフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ピリジンジカルボン酸またはこれらの酸ジハライド等が好ましく用いられる。これらの化合物には異性体が存在するものもあるが、それらを含む混合物であってもよい。また、2種以上の化合物を併用してもよい。なお、本発明に使用するジカルボン酸類は、上記の例示化合物に限定されるものではない。
【0180】
原料であるジアミン(「ジアミン成分」とも記載する)と原料であるテトラカルボン酸二無水物(「テトラカルボン酸二無水物成分」とも記載する)、テトラカルボン酸ジエステル、ジイソシアネート及びジカルボン酸から選ばれる成分との反応により、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリウレア、ポリアミドを得るにあたっては、公知の合成手法を用いることができる。一般的には、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分、テトラカルボン酸ジエステル、ジイソシアネート及びジカルボン酸から選ばれる一種以上の成分とを、有機溶媒中で反応させる方法である。
【0181】
複合成分としてのポリアクリレートの好ましい態様の一つは、上記で説明した本発明のグラフト共重合体ではないポリアクリレートである。例えば工業的に入手できるラジカル重合反応可能なモノマーを一般的なラジカル発生剤を用いて重合することで得られる重合体である。
【0182】
工業的に入手できるラジカル重合反応可能なモノマーの具体例としては、不飽和カルボン酸、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられる。
【0183】
不飽和カルボン酸の具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
【0184】
アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルアクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルアクリレート、及び、8-エチル-8-トリシクロデシルアクリレート等が挙げられる。グリシジルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、および(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレートなどの環状エーテル基を有するアクリレート化合物も用いることができる。
【0185】
メタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3-メトキシブチルメタクリレート、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルメタクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルメタクリレート、及び、8-エチル-8-トリシクロデシルメタクリレート等が挙げられる。グリシジルメタクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、および(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートなどの環状エーテル基を有するメタクリレート化合物も用いることができる。
【0186】
ビニル化合物としては、例えば、ビニルエーテル、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、及び、プロピルビニルエーテル等が挙げられる。
【0187】
スチレン化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
【0188】
マレイミド化合物としては、例えば、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、及びN-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0189】
上記の工業的に入手できるラジカル重合反応可能なモノマー以外にも、液晶性側鎖構造を有するモノマー(以下液晶性側鎖モノマーと呼ぶ)を用いた側鎖型高分子や、感光性基を有する感光性モノマー(以下光反応性側鎖モノマーと呼ぶ)なども使用することができる。
【0190】
液晶性側鎖モノマーとは、該モノマー由来の高分子が液晶性を発現し、該高分子が側鎖部位にメソゲン基を形成することができるモノマーのことである。
液晶性側鎖モノマーのより具体的な例としては、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネン等のラジカル重合性基からなる群から選択される少なくとも1種から構成された重合性基と、前記「液晶性側鎖の有するメソゲン基」の少なくとも1種を有する側鎖を有する構造であることが好ましい。
【0191】
液晶性側鎖モノマーとしては、下式(LS-1)~(LS-13)より選ばれる液晶性側鎖が、ラジカル重合可能な重合性基に結合したモノマーが好ましい。ラジカル重合可能な重合性基としては、本発明におけるグラフト共重合体の説明で例示した重合可能な不飽和炭化水素基を有する重合性基が挙げられる。
【化42】
【化43】
(式(LS-1)~(LS-12)中、AおよびAは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CH-、-C(=O)-O-、-OC(=O)-、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-CH=CH-C(=O)O-、または-OC(=O)-CH=CH-を表し、R11は、-NO、-CN、ハロゲン原子、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フラニル基、1価窒素含有複素環基、炭素数5~8の1価脂環式炭化水素基、炭素数1~12のアルキル基、または炭素数1~12のアルコキシ基を表し、R12は、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フラニル基、1価窒素含有複素環基、炭素数5~8の1価脂環式炭化水素基、およびこれらを組み合わせて得られる基からなる群から選ばれる基を表し、R11及びR12においてはこれらに結合する水素原子が、-NO、-CN、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基、または炭素数1~5のアルコキシ基で置換されてもよく、R13は、水素原子、-NO、-CN、-CH=C(CN)、-CH=CH-CN、ハロゲン原子、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フラニル基、1価窒素含有複素環基、炭素数5~8の1価脂環式炭化水素基、炭素数1~12のアルキル基、または炭素数1~12のアルコキシ基を表し、Eは、-C(=O)O-、または-OC(=O)-を表し、dは、1~12の整数を表し、k1~k5は、それぞれ独立して、0~2の整数であるが、各式におけるk1~k5の合計は2以上であり、k6およびk7は、それぞれ独立して、0~2の整数であるが、各式においてk6およびk7の合計は1以上であり、m1、m2およびm3は、それぞれ独立して、1~3の整数であり、nは、0または1であり、ZおよびZは、それぞれ独立して、単結合、-C(=O)-、-CHO-、-CH=N-または-CF-を表す。破線は結合手を表す。)
【0192】
光反応性側鎖モノマーでは感光性を有する側鎖が主鎖に結合しており、光反応性側鎖モノマーは光に感応して架橋反応、異性化反応、または光フリース転位を起こすことができる側鎖を有するモノマーである。感光性を有する側鎖の構造は特に限定されないが、光に感応して架橋反応、または光フリース転位を起こす構造が望ましく、架橋反応を起こすものがより望ましい。この場合、熱などの外部ストレスに曝されたとしても、実現された配向制御能を長期間安定に保持することができる。液晶性を発現し得る感光性の側鎖型アクリル重合体膜の構造は、そうした特性を満足するものであれば特に限定されないが、側鎖構造に剛直なメソゲン成分を有することが好ましい。
【0193】
該アクリル重合体の構造は、例えば、主鎖とそれに結合する側鎖を有し、その側鎖が、ビフェニル基、ターフェニル基、フェニルシクロヘキシル基、フェニルベンゾエート基、アゾベンゼン基などのメソゲン成分と、先端部に結合された、光に感応して架橋反応や異性化反応をする感光性基とを有する構造や、主鎖とそれに結合する側鎖を有し、その側鎖がメソゲン成分ともなり、かつ光フリース転位反応をするフェニルベンゾエート基を有する構造とすることができる。
【0194】
所定の温度範囲で液晶性を発現し得る感光性の側鎖型アクリル重合体の構造のより具体的な例としては、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネン等のラジカル重合性基からなる群から選択される少なくとも1種から構成された主鎖と、下記式(31)~(35)の少なくとも1種からなる側鎖を有する構造であることが好ましい。
【化44】
式中、Ar及びArはそれぞれ独立して、ベンゼン環、ナフタレン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、又はピリジン環から2個の水素原子を取り去った2価の有機基を表し、
q1とq2は一方が1でもう一方が0であり、
-YはCH=CH、CH=N、N=CHまたはC-C(ただし、炭素-炭素間の結合は3重結合)を表し、
及びSはそれぞれ独立に単結合、炭素数1~18の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、炭素数5~8のシクロアルキレン基、フェニレン基またはビフェニリレン基を表すか、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレア結合、ウレタン結合、-NR-(Rは水素原子又は炭素数1~18のアルキル基を表す。)、及びカルボニル基又はそれらの組み合わせから選ばれる1種又は2種以上の結合を表すか、或いは該1種又は2種以上の結合を介して、炭素数1~18の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、炭素数5~8のシクロアルキレン基、フェニレン基、ビフェニリレン基又はそれらの組み合わせから選ばれる2~10の部位が結合してなる構造であって、前記Ar及びArは前記結合を介してそれぞれ複数個が連結してなる構造であってもよく、
Rは水素原子、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~8のアルキルアミノ基または炭素数2~16のジアルキルアミノ基を表し、
Ar、Ar、S及びSにおけるベンゼン環および/またはナフタレン環はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基および炭素数2~11のアルコキシカルボニル基から選ばれる同一または相異なる1以上の置換基によって置換されていてもよい。その際、炭素数2~11のアルコキシカルボニル基における炭素数1~10のアルキル基は直鎖状でも分岐状でも環状でも、それらを組み合わせた構造でもよく、該炭素数1~10のアルキル基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0195】
前記ポリアクリレートの製造方法については、特に限定されるものではなく、工業的に扱われている汎用な方法が利用できる。具体的には、液晶性側鎖モノマーや光反応性側鎖モノマーのビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、アニオン重合により製造することができる。これらの中では反応制御のしやすさなどの観点からラジカル重合が特に好ましい。
【0196】
ラジカル重合の重合開始剤としては、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)等の公知のラジカル重合開始剤や、可逆的付加-開裂型連鎖移動(RAFT)重合試薬等の公知の化合物を使用することができる。
【0197】
ラジカル重合法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈殿重合法、塊状重合法、溶液重合法等を用いることができる。
【0198】
所定の温度範囲で液晶性を発現し得る感光性の側鎖型アクリル重合体の重合反応に用いる有機溶媒としては、生成した重合体が溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジプロピルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-ε-カプロラクタム、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジプロピルアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルプロピオンアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、γ-ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、1,4-ジオキサン、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、シクロヘキサン、2-エチル-1-ヘキサノール、ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、ピルビン酸ペンチル、ピルビン酸ヘキシル、ピルビン酸-2-エチルヘキシル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸ペンチル、アセト酢酸ヘキシル、アセト酢酸-2-エチルヘキシル、レブリン酸メチル、レブリン酸エチル、レブリン酸プロピル、レブリン酸ブチル、レブリン酸ペンチル、レブリン酸ヘキシル、レブリン酸-2-エチルヘキシル、マロン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、フタル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、コハク酸ジプロピル、グルタル酸ジプロピル、アジピン酸ジプロピル、フタル酸ジプロピル、マレイン酸ジプロピル、マロン酸ジブチル、コハク酸ジブチル、グルタル酸ジブチル、アジピン酸ジブチル、フタル酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、マロン酸ジペンチル、コハク酸ジペンチル、グルタル酸ジペンチル、アジピン酸ジペンチル、フタル酸ジペンチル、マレイン酸ジペンチル、マロン酸ジヘキシル、コハク酸ジヘキシル、グルタル酸ジヘキシル、アジピン酸ジヘキシル、フタル酸ジヘキシル、マレイン酸ジヘキシル、マロン酸ジ-2-エチルヘキシル、コハク酸-2-エチルヘキシル、グルタル酸-2-エチルヘキシル、アジピン酸-2-エチルヘキシル、フタル酸-2-エチルヘキシル、マレイン酸-2-エチルヘキシル等が挙げられる。
これら有機溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、生成する高分子を溶解させない溶媒であっても、生成した高分子が析出しない範囲で、上述の有機溶媒に混合して使用してもよい。
また、ラジカル重合において有機溶媒中の酸素は重合反応を阻害する原因となるので、有機溶媒は可能な程度に脱気されたものを用いることが好ましい。
【0199】
ラジカル重合の際の重合温度は30~150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは50~100℃である。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な撹拌が困難となるので、モノマー濃度は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することができる。
上述のラジカル重合反応においては、ラジカル重合開始剤の比率がモノマーに対して多いと得られる高分子の分子量が小さくなり、少ないと得られる高分子の分子量が大きくなるので、ラジカル開始剤の比率は重合させるモノマーに対して0.1~10モル%であることが好ましい。また重合時には各種モノマー成分や溶媒、開始剤などを追加することもできる。
【0200】
上述の反応により得られた、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子の反応溶液から、生成した高分子を回収する場合には、反応溶液を貧溶媒に投入して、それら重合体を沈殿させれば良い。沈殿に用いる貧溶媒としては、メタノール、アセトン、ヘキサン、ヘプタン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、水等を挙げることができる。貧溶媒に投入して沈殿させた重合体は、濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の貧溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素等が挙げられ、これらの中から選ばれる3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0201】
所定の温度範囲で液晶性を発現し得る感光性の側鎖型アクリル重合体の分子量は、得られる塗膜の強度、塗膜形成時の作業性、および塗膜の均一性を考慮した場合、GPC法で測定した重量平均分子量が、2,000~1,000,000が好ましく、より好ましくは、5,000~100,000である。
【0202】
液晶配向剤に使用される有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルカプロラクタム、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジプロピルアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルプロピオンアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、γ-ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-ブトキシ-2-プロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、プロピレングリコール-1-モノエチルエーテル-2-アセテート、ジプロピレングリコール、2-(2-エトキシプロポキシ)プロパノール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3,5-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタングリコール、1,3-ヘプタンジオール、1,4-ヘプタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、1,6-ヘプタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,4-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,3-ノナンジオール、1,5-ノナンジオール、1,6-ノナンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,5-デカンジオール、1,8-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、グリセロール、2-エチル-1-ヘキサノール、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、ピルビン酸ペンチル、ピルビン酸ヘキシル、ピルビン酸-2-エチルヘキシル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸ペンチル、アセト酢酸ヘキシル、アセト酢酸-2-エチルヘキシル、レブリン酸メチル、レブリン酸エチル、レブリン酸プロピル、レブリン酸ブチル、レブリン酸ペンチル、レブリン酸ヘキシル、レブリン酸-2-エチルヘキシル、マロン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、フタル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、コハク酸ジプロピル、グルタル酸ジプロピル、アジピン酸ジプロピル、フタル酸ジプロピル、マレイン酸ジプロピル、マロン酸ジブチル、コハク酸ジブチル、グルタル酸ジブチル、アジピン酸ジブチル、フタル酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、マロン酸ジペンチル、コハク酸ジペンチル、グルタル酸ジペンチル、アジピン酸ジペンチル、フタル酸ジペンチル、マレイン酸ジペンチル、マロン酸ジヘキシル、コハク酸ジヘキシル、グルタル酸ジヘキシル、アジピン酸ジヘキシル、フタル酸ジヘキシル、マレイン酸ジヘキシル、マロン酸ジ-2-エチルヘキシル、コハク酸-2-エチルヘキシル、グルタル酸-2-エチルヘキシル、アジピン酸-2-エチルヘキシル、フタル酸-2-エチルヘキシル、マレイン酸-2-エチルヘキシル等が挙げられる。これらの有機溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0203】
また、塗膜の均一性や平滑性を向上させる溶媒を、溶解性が高い有機溶媒に混合して使用すると好ましい。
【0204】
塗膜の均一性や平滑性を向上させる溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-プロピル、乳酸n-ブチル、乳酸イソアミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-ブトキシ-2-プロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、プロピレングリコール-1-モノエチルエーテル-2-アセテート、ジプロピレングリコール、2-(2-エトキシプロポキシ)プロパノール、2-エチル-1-ヘキサノール、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、ピルビン酸ペンチル、ピルビン酸ヘキシル、ピルビン酸-2-エチルヘキシル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸ペンチル、アセト酢酸ヘキシル、アセト酢酸-2-エチルヘキシル、レブリン酸メチル、レブリン酸エチル、レブリン酸プロピル、レブリン酸ブチル、レブリン酸ペンチル、レブリン酸ヘキシル、レブリン酸-2-エチルヘキシル、マロン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、フタル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、コハク酸ジプロピル、グルタル酸ジプロピル、アジピン酸ジプロピル、フタル酸ジプロピル、マレイン酸ジプロピル、マロン酸ジブチル、コハク酸ジブチル、グルタル酸ジブチル、アジピン酸ジブチル、フタル酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、マロン酸ジペンチル、コハク酸ジペンチル、グルタル酸ジペンチル、アジピン酸ジペンチル、フタル酸ジペンチル、マレイン酸ジペンチル、マロン酸ジヘキシル、コハク酸ジヘキシル、グルタル酸ジヘキシル、アジピン酸ジヘキシル、フタル酸ジヘキシル、マレイン酸ジヘキシル、マロン酸ジ-2-エチルヘキシル、コハク酸-2-エチルヘキシル、グルタル酸-2-エチルヘキシル、アジピン酸-2-エチルヘキシル、フタル酸-2-エチルヘキシル、マレイン酸-2-エチルヘキシルなどが挙げられる。これらの溶媒は複数種類を混合してもよい。これらの溶媒を用いる場合は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の5~80質量%であることが好ましく、より好ましくは20~60質量%である。
【0205】
本発明の硬化性組成物には上記以外の成分を含有させてもよい。その例としては、硬化性組成物に含有する組成物を塗布した際の膜厚均一性や表面平滑性を向上させる化合物、硬化性組成物に含有する組成物と基板との密着性を向上させる化合物、硬化性組成物に含有する組成物の膜強度をさらに向上させる化合物などが挙げられる。
【0206】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。より具体的には、例えば、エフトップEF301、EF303、EF352(三菱マテリアル電子化成社製)、メガファックF171、F173、R-30(DIC社製)、フロラードFC430、FC431(スリーエム社製)、アサヒガードAG710(AGC社製)、サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(AGCセイミケミカル社製)などが挙げられる。これらの界面活性剤を使用する場合、その使用割合は、硬化性組成物に含有する組成物に含有される重合体の総量100質量部に対して、好ましくは0.01~2質量部、より好ましくは0.01~1質量部である。
【0207】
硬化性組成物に含有する組成物と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物などが挙げられる。例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(3-トリエトキシシリル)プロピルトリエチレンテトラミン、N-(3-トリメトキシシリル)プロピルトリエチレンテトラミン、10-トリメトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、10-トリエトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、9-トリメトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、9-トリエトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6-テトラグリシジル-2,4-ヘキサンジオール、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3-(N-アリル-N-グリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N,N-ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0208】
また、硬化性組成物の膜強度をさらに上げるためには、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジヒドロキシメチルフェニル)プロパン、テトラ(メトキシメチル)ビスフェノール等のフェノール化合物を添加してもよい。これらの化合物を使用する場合は、弱アンカリング液晶配向剤に含有される重合体の総量100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは1~20質量部である。
さらに、弱アンカリング液晶配向剤に含有する組成物には、上記の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、弱アンカリング液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体や導電物質を添加してもよい。
【0209】
(強アンカリング水平配向膜)
弱アンカリング液晶配向膜が具備された基板の対向側の基板には強アンカリング水平配向膜を設ける必要がある。ここで述べる強アンカリング水平配向膜とは、液晶を水平方向に均一に並べることができ、並んだ液晶を維持する力、すなわち界面アンカリングエネルギーが十分強い液晶配向膜である。
【0210】
強アンカリング水平配向膜は上記で説明したポリアミック酸やポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート等をラビング配向処理や光配向処理等により一軸方向に配向処理を行うことで得られる。
【0211】
強アンカリング水平配向膜は前記で述べたモノマーの組み合わせにより得ることができる。
【0212】
(弱アンカリング液晶配向膜と強アンカリング水平配向膜)
本発明の弱アンカリング液晶配向膜は、上記の硬化性組成物又は弱アンカリング液晶配向剤を用いることで得られる。例えば、本発明に用いる硬化性組成物又は弱アンカリング液晶配向剤を、基板に塗布した後、乾燥・焼成・必要に応じて光照射を行うことで得られる硬化膜を、そのまま弱アンカリング液晶配向膜として用いることもできる。また、この硬化膜をラビングや偏光又は特定の波長の光等を照射、イオンビーム等の処理にて配向処理を行うことができ、液晶充填後の液晶表示素子にUVを照射することも可能である。
【0213】
強アンカリング水平配向膜も同様に、強アンカリング液晶配向剤を、基板に塗布した後、乾燥・焼成を行うことで得られる硬化膜を配向処理することで得ることができる。
【0214】
本発明においては、第一基板が櫛歯電極を有する基板であり、第二基板が対向基板であってもよい。また、本発明においては、第二基板が櫛歯電極を有する基板であり、第一基板が対向基板であってもよい。
【0215】
各液晶配向膜を塗布する基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されないが、基板上に液晶を駆動するための透明電極が形成された基板が好ましい。
【0216】
具体例を挙げると、ガラス板、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリサルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、トリメチルペンテン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、(メタ)アクリロニトリル、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロースなどのプラスチック板などに透明電極が形成された基板を挙げることができる。
【0217】
IPS方式の液晶表示素子に使用できる基板には、標準的なIPS櫛歯電極やPSA(Polymer-Stabilized Alignment)フィッシュボーン電極といった電極パターンやMVA(Multi-domain Vertical Alignment)のような突起パターンでも使用できる。
【0218】
また、TFT(Thin-Film-Transistor)型の素子のような高機能素子においては、液晶駆動のための電極と基板の間にトランジスタの如き素子が形成されたものが用いられる。
【0219】
透過型の液晶表示素子を意図している場合は、上記の如き基板を用いることが一般的であるが、反射型の液晶表示素子を意図している場合では、片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な基板も用いることが可能である。その際、基板に形成された電極には、光を反射するアルミニウムの如き材料を用いることもできる。
【0220】
弱アンカリング液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法、スプレー法、ロールコート法などが挙げられるが、生産性の面から工業的には転写印刷法が広く用いられており、本発明でも好適に用いられる。
【0221】
本発明の硬化性組成物を塗布した後の乾燥の工程は、必ずしも必要とされないが、塗布後から焼成までの時間が基板ごとに一定していない場合、又は塗布後ただちに焼成されない場合には、乾燥工程を含める方が好ましい。この乾燥は、基板の搬送等により塗膜形状が変形しない程度に溶媒が除去されていればよく、その乾燥手段については特に限定されない。乾燥工程の好ましい条件は、温度30~100℃、より好ましくは40~80℃のホットプレート上で、0.5~30分、より好ましくは1~5分乾燥させる方法が挙げられる。
【0222】
本発明の硬化性組成物の焼成工程は、塗布膜内部に存在する溶剤を除去する点と硬化性組成物に含有される構造(B)が熱によりラジカルを発生する構造を含む場合に、塗布膜を硬化する点で必要となる。焼成工程の好ましい条件は、残留溶剤を除去する観点で温度80~200℃、より好ましくは100~150℃のホットプレート又は熱循環オーブンで、1~120分、より好ましくは5~30分焼成する方法が挙げられるが、構造(B)のラジカル発生温度に合わせて温度を決定する必要がある。例えば、構造(B)が100℃で効果的にラジカルを発生する構造である場合、100~120℃が良く、60℃などラジカル発生温度を下回った場合は十分な硬化性が得られないことが予測される。
【0223】
本発明の硬化性組成物の紫外線照射工程は、硬化性組成物に含有される構造(B)が光によりラジカルを発生する構造を含む場合にのみ塗布膜を硬化する点で必要となる。波長は構造(B)のラジカル発生波長に合わせて決定する必要があり、前記熱硬化と同様に構造(B)に対してマッチしていると十分な効果が得られるが、ミスマッチしていると十分な硬化が得られない可能性がある。紫外線露光量についても、構造(B)に合わせて決定することが好ましいが、硬化性組成物全体へ悪影響を与えない点などを加味すると1~10J/cm、より好ましくは1~5J/cmが好ましい。
【0224】
この硬化膜の厚みは必要に応じて選択することができるが、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上の場合、液晶表示素子の信頼性が向上するので好適である。また、硬化膜の厚みが好ましくは300nm以下、より好ましくは150nm以下の場合は、液晶表示素子の消費電力が極端に大きくならないので好適である。
【0225】
以上のようにして弱アンカリング液晶配向膜を有する第一基板又は第二基板、および強アンカリング水平配向膜を有する第二基板または第一基板を得ることができる。一軸配向処理を行う方法としては、光配向法、斜方蒸着法、ラビング配向法、磁場による一軸配向処理等が挙げられる。
【0226】
一方向にラビング処理することによる配向処理を行う場合には、例えば、ラビング布が巻きつけられたラビングローラーを回転させながら、ラビング布と膜とが接触するように基板を移動させる。光配向法を用いる場合には、特定波長の偏光UVを膜全面に照射し、必要に応じて加熱することにより配向処理ができる。
【0227】
櫛歯電極が形成されている基板の場合、液晶の電気的物性によって方向が選択されるが、正の誘電異方性を有する液晶を用いる場合において、ラビング方向は櫛歯電極の延びている方向とほぼ同一の方向とすることが好ましい。
【0228】
[液晶セル]
本発明の液晶セルは、上記の方法により、本発明の液晶配向剤を用いて得られた弱アンカリング液晶配向膜を有する基板(例えば第一基板)と、公知の強アンカリング液晶配向膜を有する基板(例えば第二基板)とを、弱アンカリング液晶配向膜と強アンカリング液晶配向膜とが向かい合うように配置し、スペーサーを挟んで、シール剤で固定し、液晶を注入して封止することにより得られる。その際、用いるスペーサーの大きさは通常1~30μmであるが、好ましくは2~10μmである。また、第一基板のラビング方向と、第二基板のラビング方向とを平行にすることにより、IPS方式やFFS方式に使用することができ、ラビング方向が直交するように配置すれば、TN方式に使用することができる。
【0229】
なお、IPS方式において使用される櫛歯電極基板であるIPS基板は、基材と、基材上に形成され、櫛歯状に配置された複数の線状電極と、基材上に線状電極を覆うように形成された液晶配向膜とを有する。
【0230】
なお、FFS方式において使用される櫛歯電極基板であるFFS基板は、基材と、基材上に形成された面電極と、面電極上に形成された絶縁膜と、絶縁膜上に形成され、櫛歯状に配置された複数の線状電極と、絶縁膜上に線状電極を覆うように形成された液晶配向膜とを有する。
【0231】
(液晶表示素子)
液晶表示素子は、例えば、第一基板、第一基板に対向して、配向膜どうしが向かい合うように配置された第二基板、および第一基板と第二基板との間に充填された液晶を有する。そして、液晶表示素子は本発明の硬化性組成物を塗布成膜し弱を具備した第一基板又は第二基板と、強アンカリング水平配向膜を具備した第二基板又は第一基板を使用して作製される。
【0232】
液晶表示素子は、例えば、液晶セルに必要に応じて反射電極、透明電極、λ/4板、偏光膜、カラーフィルター層等を常法に従って設けることにより反射型液晶表示素子とすることができる。また、液晶セルに必要に応じてバックライト、偏光板、λ/4板、透明電極、偏光膜、カラーフィルター層等を常法に従って設けることにより透過型液晶表示素子とすることができる。
【0233】
図1は、本発明の横電界液晶表示素子の一例を示す概略断面図であり、IPS方式液晶表示素子の例である。
【0234】
図1に例示する横電界液晶表示素子1においては、液晶配向膜2cを具備する櫛歯電極基板2と液晶配向膜4aを具備する対向基板4との間に、液晶3が挟持されている。櫛歯電極基板2は、基材2aと、基材2a上に形成され、櫛歯状に配置された複数の線状電極2bと、基材2a上に線状電極2bを覆うように形成された液晶配向膜2cとを有している。対向基板4は、基材4bと、基材4b上に形成された弱アンカリング液晶配向膜または強アンカリング水平配向膜(液晶配向膜4a)とを有している。液晶配向膜2cは、例えば、本発明の弱アンカリング液晶配向膜または強アンカリング水平配向膜である。対向する基板に具備した液晶配向膜は互いが強アンカリング水平配向膜と弱アンカリング液晶配向膜の組み合わせで作製される。この横電界液晶表示素子1においては、線状電極2bに電圧が印加されると、電気力線Lで示すように線状電極2b間で電界が発生する。
【0235】
図2は、本発明の横電界液晶表示素子の他の例を示す概略断面図であり、FFS方式液晶表示素子の例である。
【0236】
図2に例示する横電界液晶表示素子1においては、液晶配向膜2hを具備する櫛歯電極基板2と液晶配向膜4aを具備する対向基板4との間に、液晶3が挟持されている。櫛歯電極基板2は、基材2dと、基材2d上に形成された面電極2eと、面電極2e上に形成された絶縁膜2fと、絶縁膜2f上に形成され、櫛歯状に配置された複数の線状電極2gと、絶縁膜2f上に線状電極2gを覆うように形成された液晶配向膜2hとを有している。対向基板4は、基材4bと、基材4b上に形成された液晶配向膜4aとを有している。液晶配向膜4aは前記で説明した図1における液晶配向膜4aと同様である。液晶配向膜2hは前記で説明した図1における液晶配向膜2cと同様である。
この横電界液晶表示素子1においては、面電極2eおよび線状電極2gに電圧が印加されると、電気力線Lで示すように面電極2eおよび線状電極2g間で電界が発生する。
【実施例0237】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定して解釈されるものではない。化合物の略号、及び各特性の測定方法は以下の通りである。
【0238】
(弱アンカリング性を発現する構造(A))
【化45】
【0239】
(光や熱でラジカル発生する構造(B))
【化46】
【0240】
(熱架橋性モノマー)
【化47】
【0241】
(ラジカルで硬化反応を起こす構造(C)または構造(C)合成のための原料)
【化48】
・ブレンマー(登録商標)ADE-100:ポリエチレングリコールジアクリレート(日油社製)
・A-TMMT:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学社製)
・MT-3010:多官能アクリレート(東亞合成社製)
・SMP-220AP:多官能アクリレートポリマー(共栄社化学社製)
【0242】
(ラジカルで硬化反応を起こす構造(C)の合成に使用する触媒)
【化49】
【0243】
(RAFT剤)
【化50】
【0244】
(連鎖移動剤)
【化51】
【0245】
(重合体βの合成に必要なマクロモノマーの原料)
【化52】
【0246】
(熱重合開始剤)
【化53】
【0247】
(ジアミン)
【化54】
【0248】
(テトラカルボン酸二無水物)
【化55】
【0249】
(添加剤)
【化56】
【0250】
(溶媒)
THF:テトラヒドロフラン
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
DEAc:N,N-ジエチルアセトアミド
PGMEA:酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
BCA:エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
PB:プロピレングリコールモノブチルエーテル
【0251】
(粘度測定)
ポリアミック酸溶液などの粘度は、E型粘度計TVE-22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL(ミリリットル)、コーンロータTE-1(1°34’、R24)、温度25℃において測定した。
【0252】
(分子量の測定)
ポリイミド前駆体及びポリイミド以外の合成したポリマーの分子量は、常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(CBM-20A)(島津製作所製)、カラム(Shodex(登録商標)KF-804L及びKF-803Lの直列)(昭和電工社製)用いて、以下のようにして測定した。
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
検量線作成用標準サンプル:標準ポリスチレン(分子量;197,000、55,100、12,800、3,950、1,260)(東ソー社製)
【0253】
ポリイミド前駆体及びポリイミドの分子量は、常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC-101)(昭和電工社製)、カラム(GPC KD-803,GPC KD-805の直列)(昭和電工社製)を用いて、以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム一水和物(LiBr・HO)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10mL/L)
流速:1.0mL/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000及び30,000)(東ソー社製)及びポリエチレングリコール(分子量;約12,000、4,000及び1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
【0254】
<単独重合体の合成>
(合成例1-1)
撹拌子及び窒素導入管を備え付けた100mLナスフラスコに、A-1(20.0g,117mmol)、R-3(759mg,1.88mmol)、及びAIBN(15.4mg,0.940mmol)を量り取り、THF(20.9g)を加え、室温で撹拌し溶解させた後、系内を窒素置換し、60℃設定のオイルバスで24時間加熱撹拌した。加熱撹拌後、メタノール(60g)を撹拌しながら反応溶液を静かに注ぎ固体を析出させ、30分間撹拌した。この沈殿物を濾過により分取し、再びメタノール(60g)で30分間スラリー洗浄を計2回行い、固体を50℃で真空乾燥させることにより、単独重合体p(A-1)を得た。数平均分子量(Mn):8,900、重量平均分子量(Mw):9,600であった。
【0255】
(合成例1-2~1-6)
使用する原料(モノマー)の種類、RAFT剤の種類及び仕込み量を下記表1に示したものに置き換えた以外は合成例1-1と同様に実施することで、下記表1に示す単独重合体p(A-2)~p(A-7)を得た。
【0256】
【表1】
【0257】
<ジブロック共重合体の合成>
(合成例2-1)
撹拌子及び窒素導入管を備え付けた100mLナスフラスコに、合成例1-1で得られたp(A-1)(2.28g,0.255mmol)、B-1(2.60g,8.89mmol)、及びAIBN(21.0mg,0.128mmol)を量り取り、THF(5.10g)を加え、室温で撹拌し溶解させた後、系内を窒素置換し、60℃設定のオイルバスで24時間加熱撹拌した。加熱撹拌後、メタノール(60g)を撹拌しながら反応溶液を静かに注ぎ固体を析出させ、30分間撹拌した。この沈殿物を濾過により分取し、再びメタノール(60g)で30分間スラリー洗浄を計2回行い、固体を50℃で真空乾燥させることにより、ブロック共重合体BCP-1を得た。数平均分子量(Mn):17,700、重量平均分子量(Mw):19,100であった。
【0258】
(合成例2-2~2-11)
使用する原料(重合体とモノマー)の種類と仕込み量を下記表2に示したものに置き換えた以外は合成例2-1と同様に実施することで、下記表2に示すブロック共重合体を得た。
【0259】
【表2】
【0260】
<ポリマー反応を用いたジブロック共重合体の合成>
(合成例3-1)
撹拌子及び窒素導入管を備え付けた100mLナスフラスコに、合成例2-9で得られたBCP-9(2.00g)、及びDBU(8.23mg,0.0540mmol)を量り取り、THF(6.62g)を加え、室温で撹拌し溶解させた。その後、C-3(0.838g,5.40mmol)を添加し、50℃設定のオイルバスで4時間加熱撹拌した。加熱撹拌後、メタノール(60g)を撹拌しながら反応溶液を静かに注ぎ固体を析出させ、30分間撹拌した。この沈殿物を濾過により分取し、再びメタノール(60g)で30分間スラリー洗浄を計2回行い、固体を50℃で真空乾燥させることにより、ブロック共重合体BCP-12を得た。数平均分子量(Mn):17,500、重量平均分子量(Mw):21,800であった。
【0261】
(合成例3-2)
撹拌子及び窒素導入管を備え付けた100mLナスフラスコに、合成例2-9で得られたBCP-9(2.00g)、及びDBU(8.23mg,0.0540mmol)を量り取り、THF(6.45g)を加え、室温で撹拌し溶解させた。その後、C-4(0.763g,5.40mmol)を添加し、50℃設定のオイルバスで4時間加熱撹拌した。加熱撹拌後、メタノール(60g)を撹拌しながら反応溶液を静かに注ぎ固体を析出させ、30分間撹拌した。この沈殿物を濾過により分取し、再びメタノール(60g)で30分間スラリー洗浄を計2回行い、固体を50℃で真空乾燥させることにより、ブロック共重合体BCP-13を得た。数平均分子量(Mn):17,000、重量平均分子量(Mw):21,300であった。
【0262】
(合成例3-3)
撹拌子及び窒素導入管を備え付けた100mLナスフラスコに、合成例2-9で得られたBCP-9(2.00g)、及びTEA(0.820g,8.11mmol)を量り取り、THF(5.99g)を加え、室温で撹拌し溶解させた。その後、C-5(0.565g,5.40mmol)を添加し、50℃設定のオイルバスで4時間加熱撹拌した。加熱撹拌後、メタノール(60g)を撹拌しながら反応溶液を静かに注ぎ固体を析出させ、30分間撹拌した。この沈殿物を濾過により分取し、再びメタノール(60g)で30分間スラリー洗浄を計3回行い、固体を50℃で真空乾燥させることにより、ブロック共重合体BCP-14を得た。数平均分子量(Mn):14,900、重量平均分子量(Mw):18,600であった。
【0263】
(合成例3-4)
撹拌子及び窒素導入管を備え付けた100mLナスフラスコに、合成例2-10で得られたBCP-10(2.00g)、及びDBU(10.3mg,0.0676mmol)を量り取り、THF(7.12g)を加え、室温で撹拌し溶解させた。その後、C-3(1.05g,6.76mmol)を添加し、50℃設定のオイルバスで4時間加熱撹拌した。加熱撹拌後、メタノール(60g)を撹拌しながら反応溶液を静かに注ぎ固体を析出させ、30分間撹拌した。この沈殿物を濾過により分取し、再びメタノール(60g)で30分間スラリー洗浄を計2回行い、固体を50℃で真空乾燥させることにより、ブロック共重合体BCP-15を得た。数平均分子量(Mn):26,100、重量平均分子量(Mw):32,600であった。
【0264】
<トリブロック共重合体の合成>
(合成例4-1)
撹拌子及び窒素導入管を備え付けた100mLナスフラスコに、合成例2-1で得られたBCP-1(3.99g,0.225mmol)、C-2(1.10g,8.45mmol)、及びAIBN(18.5mg,0.113mmol)を量り取り、THF(5.10g)を加え、室温で撹拌し溶解させた後、系内を窒素置換し、60℃設定のオイルバスで24時間加熱撹拌した。加熱撹拌後、メタノール(60g)を撹拌しながら反応溶液を静かに注ぎ固体を析出させ、30分間撹拌した。この沈殿物を濾過により分取し、再びメタノール(60g)で30分間スラリー洗浄を計2回行い、固体を50℃で真空乾燥させることにより、トリブロック共重合体TCP-1を得た。数平均分子量(Mn):21,600、重量平均分子量(Mw):25,900であった。
撹拌子及び窒素導入管を備え付けた100mLナスフラスコに、得られたTCP-1(2.00g)、及びDBU(5.04mg,0.0331mmol)を量り取り、THF(5.87g)を加え、室温で撹拌し溶解させた。その後、C-3(0.514g,3.31mmol)を添加し、50℃設定のオイルバスで4時間加熱撹拌した。加熱撹拌後、メタノール(60g)を撹拌しながら反応溶液を静かに注ぎ固体を析出させ、30分間撹拌した。この沈殿物を濾過により分取し、再びメタノール(60g)で30分間スラリー洗浄を計2回行い、固体を50℃で真空乾燥させることにより、トリブロック共重合体TCP-2を得た。数平均分子量(Mn):26,200、重量平均分子量(Mw):32,800であった。
【0265】
<マクロモノマーの合成>
(合成例5-1)
撹拌子及び窒素導入管を備え付けた100mLのナスフラスコに、A-1(10.00g、78.02mmol)、S-4(0.216g、2.341mmol)及びAIBN(0.128g、0.7802mmol)を量り取り、THF(10.3g)を加え、室温で撹拌し溶解させた後、系内を窒素置換し、60℃設定のオイルバスで12時間加熱撹拌した。加熱撹拌後、冷メタノール(30.0g)を撹拌しながら反応溶液を静かに注ぎ固体を析出させ、30分間撹拌した。この沈殿物を濾過により分取し、再び冷メタノール(30.0g)で30分間スラリー洗浄を計2回行い、固体を50℃で真空乾燥させることにより、プレポリマーを得た。Mn:6,000、Mw:9,900であった。
撹拌子及び窒素導入管を備え付けた100mLのナスフラスコに、前記の方法で合成したプレポリマー(10.00g、1.667mmol)、E-1(0.830.829g、5.833mmol)、Hydroquinone(8.1mg)、N,N-dimethyllaurylamine(2.0mg)及びXylene(20.0g)を加え、室温で撹拌し溶解させた後、140℃設定のオイルバスで6時間加熱撹拌した。加熱撹拌後、メタノール(50.0g)を撹拌しながら反応溶液を静かに注ぎ固体を析出させ、30分間撹拌した。この沈殿物を濾過により分取し、再びメタノール(50.0g)で30分間スラリー洗浄を計2回行い、固体を50℃で真空乾燥させることにより、マクロモノマー(mcta1)を得た。Mn:6,100、Mw:9,900であった。
【0266】
<グラフト共重合体の合成>
(合成例6-1)
撹拌子及び窒素導入管を備え付けた100mLナスフラスコに、マクロモノマーmcta1(0.850g,0.142mmol)、B-1(4.10g,14.0mmol)、及びAIBN(69.8mg,0.425mmol)を量り取り、THF(11.7g)を加え、室温で撹拌し溶解させた後、系内を窒素置換し、60℃設定のオイルバスで12時間加熱撹拌した。加熱撹拌後、メタノール(60g)を撹拌しながら反応溶液を静かに注ぎ固体を析出させ、30分間撹拌した。この沈殿物を濾過により分取し、再びメタノール(60g)で30分間スラリー洗浄を計2回行い、固体を50℃で真空乾燥させることにより、グラフト共重合体(GCP-1)を得た。数平均分子量(Mn):90,200、重量平均分子量(Mw):173,200であった。
【0267】
(合成例6-2)
撹拌子及び窒素導入管を備え付けた100mLナスフラスコに、マクロモノマーmcta1(1.55g,0.258mmol)、C-2(3.33g,25.6mmol)、及びAIBN(127mg,0.775mmol)を量り取り、THF(11.7g)を加え、室温で撹拌し溶解させた後、系内を窒素置換し、60℃設定のオイルバスで12時間加熱撹拌した。加熱撹拌後、メタノール(60g)を撹拌しながら反応溶液を静かに注ぎ固体を析出させ、30分間撹拌した。この沈殿物を濾過により分取し、再びメタノール(60g)で30分間スラリー洗浄を計2回行い、固体を50℃で真空乾燥させることにより、グラフト共重合体(GCP-2)を得た。数平均分子量(Mn):52,800、重量平均分子量(Mw):128,800であった。
撹拌子及び窒素導入管を備え付けた100mLナスフラスコに、得られたGCP-2(2.00g)、及びDBU(15.6mg,0.102mmol)を量り取り、THF(8.38g)を加え、室温で撹拌し溶解させた。その後、C-3(1.59g,10.2mmol)を添加し、50℃設定のオイルバスで4時間加熱撹拌した。加熱撹拌後、メタノール(60g)を撹拌しながら反応溶液を静かに注ぎ固体を析出させ、30分間撹拌した。この沈殿物を濾過により分取し、再びメタノール(60g)で30分間スラリー洗浄を計2回行い、固体を50℃で真空乾燥させることにより、グラフト共重合体(GCP-3)を得た。数平均分子量(Mn):88,300、重量平均分子量(Mw):164,000であった。
【0268】
(合成例6-3)
撹拌子及び窒素導入管を備え付けた100mLナスフラスコに、マクロモノマーmcta1(1.45g,0.242mmol)、B-1(0.706g,2.42mmol)、C-2(2.80g,21.5mmol)、及びAIBN(119mg,0.725mmol)を量り取り、THF(11.8g)を加え、室温で撹拌し溶解させた後、系内を窒素置換し、60℃設定のオイルバスで12時間加熱撹拌した。加熱撹拌後、メタノール(60g)を撹拌しながら反応溶液を静かに注ぎ固体を析出させ、30分間撹拌した。この沈殿物を濾過により分取し、再びメタノール(60g)で30分間スラリー洗浄を計2回行い、固体を50℃で真空乾燥させることにより、グラフト共重合体(GCP-4)を得た。数平均分子量(Mn):48,600、重量平均分子量(Mw):130,100であった。
撹拌子及び窒素導入管を備え付けた100mLナスフラスコに、得られたGCP-4(2.00g)、及びDBU(13.8mg,0.0848mmol)を量り取り、THF(7.75g)を加え、室温で撹拌し溶解させた。その後、C-3(1.32g,8.48mmol)を添加し、50℃設定のオイルバスで4時間加熱撹拌した。加熱撹拌後、メタノール(60g)を撹拌しながら反応溶液を静かに注ぎ固体を析出させ、30分間撹拌した。この沈殿物を濾過により分取し、再びメタノール(60g)で30分間スラリー洗浄を計2回行い、固体を50℃で真空乾燥させることにより、グラフト共重合体(GCP-5)を得た。数平均分子量(Mn):69,900、重量平均分子量(Mw):153,700であった。
【0269】
<ポリアミック酸の合成>
(合成例7-1)
メカニカルスターラー及び窒素導入管を備え付けた200mLの四つ口フラスコに、DA-1(1.53g,14.1mmol)、DA-2(5.74g,23.5mmol)、及びDA-3(2.75g,9.40mmol)を量り取り、NMP(80.1g)を加え、窒素雰囲気下で撹拌し溶解させた後、氷浴にて10℃以下を保ちながらTC-1(10.0g,44.7mmol)を加え、窒素雰囲気下室温で18時間反応させることにより、粘度が約1500mPa・s、固形分濃度が20質量%のポリアミック酸(PAA-1)の溶液を得た。このポリアミック酸の分子量は、Mn:14,800、Mw:32,600であった。
(合成例7-2)
メカニカルスターラー及び窒素導入管を備え付けた200mLの四つ口フラスコに、DA-1(2.70g,25.0mmol)、及びDA-4(6.61g,25.0mmol)を量り取り、NMP(81.6g)を加え、窒素雰囲気下で撹拌し溶解させた後、氷浴にて10℃以下を保ちながらTC-1(11.1g,49.5mmol)を加え、窒素雰囲気下室温で18時間反応させることにより、粘度が約640mPa・s、固形分濃度が20質量%のポリアミック酸(PAA-2)の溶液を得た。このポリアミック酸の分子量は、Mn:9,900、Mw:21,300であった。
(合成例7-3)
メカニカルスターラー及び窒素導入管を備え付けた200mLの四つ口フラスコに、DA-1(2.49g,23.0mmol)、及びDA-5(7.60g,23.0mmol)を量り取り、NMP(81.2g)を加え、窒素雰囲気下で撹拌し溶解させた後、氷浴にて10℃以下を保ちながらTC-1(10.2g,45.5mmol)を加え、窒素雰囲気下室温で18時間反応させることにより、粘度が約1500mPa・s、固形分濃度が20質量%のポリアミック酸(PAA-3)の溶液を得た。このポリアミック酸の分子量は、Mn:12,600、Mw:28,100であった。
【0270】
<硬化性組成物の調製>
(調製例1)
撹拌子を備えた15mLのバイアル瓶に、合成例2-1で得られたBCP-1を0.12g、MT-3010を0.48g量り取り、PGMEAを9.40g加え、室温で1時間撹拌することで硬化性組成物(CRM-1)を得た。
硬化性組成物(CRM-1)における各成分(溶媒を除く)の質量%(wt%)を表3に示した。
【0271】
(調製例2~37)
使用する各成分(溶媒を除く)の種類を下記表3に示すものにし、かつ、得られる硬化性組成物における各成分の質量%(wt%)が下記表3に示す質量%(wt%)になるようにしたこと以外は調製例1と同様に実施することで、下記表3に示す硬化性組成物(CRM-2)~(CRM-37)を得た。
【0272】
【表3】
【0273】
(液晶表示素子の作成)
以下に、液晶配向性および電気光学応答を評価するための液晶セルの作製方法を示す。初めに電極付きの基板を準備した。基板は、30mm×35mmの大きさで、厚さが0.7mmの無アルカリガラス基板を用いた。基板上には電極幅が3μm、電極と電極の間隔が6μm、基板の長辺に対して10°の角度となるような櫛歯型パターンを備えたITO(INDIUM-TIN-OXIDE)電極が形成され、画素を形成していた。各画素のサイズは、縦10mmで横約5mmであった。以後IPS基板と呼ぶ。
次に、上記の方法で得られた硬化性組成物(CRM-1~CRM-37)、水平配向用の液晶配向剤(SE-6414、NRB-U973(日産化学社製))をそれぞれ孔径1.0mmのフィルターで濾過した後、準備された上記IPS基板と、対向基板として、裏面にITO膜が成膜されており、かつ高さ3.0μmの柱状のスペーサーを有するガラス基板(以後対向基板と呼ぶ)とにスピンコート法にて塗布・成膜を行った。次いで、80℃のホットプレート上で2分乾燥後、所定の温度で30分焼成し、膜厚100nmの塗膜を得た。なお、硬化性組成物(CRM-1~CRM-37)は以下の方法で膜厚100nmの硬化膜を形成させた。
・構造(B)が光によってラジカルを発生する構造である場合:スピンコート塗布後、70℃で2分間乾燥し、サーマプレシジョン製紫外線露光装置、波長313nmバンドパスフィルターを用い、波長313nm以上の紫外線を3.0J/cm照射し、表4~6に記載の焼成温度で30分間焼成した。なお、焼成にはホットプレートを用いた。
・構造(B)が熱によってラジカルを発生する構造である場合:スピンコート塗布後、70℃で2分間乾燥し、構造(B)に対応する焼成温度で30分間焼成した。なお、焼成にはホットプレートを用いた。
IPS基板上の塗膜においては、櫛歯の方向に添う方向で配向処理を行い、対向基板上の塗膜においては櫛歯電極と直交する方向に配向処理を行った。尚、配向処理においては、SE-6414においてはラビング法を用い、NRB-U973においては光配向法を用い、CRM-1~CRM-37においては配向処理を行わず、焼成後の基板をそのまま用いた。ラビング法では、飯沼ゲージ社製ラビング装置、吉川化工社製ラビング布(YA-20R)、ラビングローラー(径10.0cm)、ステージ送り速度30mm/s、ローラー回転数700rpm、押し込み圧0.3mmにて行った。光配向法では、ウシオ電機社製のUV露光装置を用い、消光比が約26:1の直線偏光UVを、254nmの波長を基準として照射量300mJ/cmになるように偏光UVを照射した後、230℃にて30分加熱することで行い配向処理を行った。
その後、上記2種類の基板を用いて、以下表4及び表5に示す組み合わせにて、それぞれの配向方向が平行になるように組み合わせ、液晶注入口を残して周囲をシールし(シール剤:XN-1500T(三井化学社製))、150℃で60分間の加熱処理を行い、シール剤を硬化させてセルギャップが約3.0μmの空セルを作製した。この空セルに、液晶(MLC-3019(Merck社製))を常温で真空注入した後、注入口を封止して、アンチパラレル配向の液晶セルとした。
得られた液晶セルは、IPS方式液晶表示素子を構成する。その後、得られた液晶セルを120℃で10分加熱処理することで液晶表示素子を得た。
【0274】
(初期配向性の評価)
偏光顕微鏡を用い、偏光板をクロスニコルに設定し、液晶セルの輝度が最も小さくなる状態で固定し、そこから1°液晶セルを回転させ、液晶の配向状態の観察を行った。ムラやドメイン等の配向不良が観察されない場合あるいは非常に軽微な場合は「良好」とし、明確に観察された場合は「不良」と定義して評価を行った。
【0275】
(V-Tカーブの測定と駆動閾値電圧、最大輝度電圧、透過率評価)
光軸が合うように白色LEDバックライトと輝度計をセットし、その間に、輝度が最も小さくなるように偏光板を取り付けた液晶セル(液晶表示素子)をセットし、1V間隔で8Vまで電圧を印加し、電圧における輝度を測定することでV-Tカーブの測定を行った。電圧無印加の状態から電圧を印加し、最大透過輝度の10%の時の電圧値(Vth)の値を見積もった。得られたV-Tカーブから輝度が最大になる電圧(Vmax)の値を見積もった。また、電圧無印加の液晶セルを介して、パラレルニコル時の透過輝度を100%とし、V-Tカーブでの最大透過輝度を比較することにより最大透過率(Tmax)として見積もった。
【0276】
(応答時間(Ton、Toff)の測定)
上記V-Tカーブの測定で使用した装置を用い、輝度計をオシロスコープに接続し、最大輝度になる電圧を印加した際の応答速度(Ton)及び電圧を0Vに戻した際の応答速度(Toff)を測定した。
【0277】
(方位角アンカリング強度(A)の測定)
強アンカリング水平配向膜SE-6414及びNRB-U973の方位角アンカリング強度ASAは、トルクバランス法により別途測定した値を用いた。弱アンカリング液晶配向膜の方位角アンカリング強度A2,WAは上記で作成した液晶セルのV-Tカーブ測定から得られた駆動閾値電圧(Vth)を用いて下記式(eq2)および(eq3)から算出した。なお、方位角アンカリング強度が10-5[J/m]よりも小さい場合を弱アンカリング液晶配向膜とし、10-4[J/m]よりも大きい場合を強アンカリング水平配向膜とする。
【0278】
【数2】
【0279】
【数3】
ここで、Vth,SAは強アンカリング液晶セルの駆動閾値電圧、Vth,WAは弱アンカリング液晶セルの駆動閾値電圧を表し、lは櫛歯電極間距離、dはセルギャップ、Kは液晶のツイスト弾性定数、εは真空における液晶の誘電率、Δεは液晶の誘電率異方性である。
上記式eq3は本来両基板に弱アンカリング液晶配向膜を用いた際の算出式であるため、正確な弱アンカリング液晶配向膜の方位角アンカリング強度は算出できないが、弱アンカリング液晶配向膜の方位角アンカリング強度の近似値として使用している。
【0280】
<光配向を用いたセル特性評価>
(弱アンカリングIPS特性の評価結果)
実施例内容及び評価結果を表4に示す。表4には、IPS基板側の液晶配向膜の方位角アンカリング強度(A)の測定結果も示した。
【0281】
【表4】
【0282】
比較例3の両面に強アンカリング液晶配向膜を形成した構成に比べ、実施例37~38の片面に本発明の硬化性組成物を形成した構成は高透過率化及び低駆動電圧化しており、方位角アンカリングエネルギーは4.6×10-6[J/m]程度であった。これより、本発明の硬化性組成物を用いることで弱アンカリング性が発現し、特許文献4に記載の方法で作製した弱アンカリング液晶配向膜と同等程度の透過率やアンカリングエネルギーを示すことから、十分な弱アンカリング特性が得られていることが分かる。
【0283】
比較例1~2から、従来の弱アンカリング液晶配向剤は標準焼成温度の230℃に比べ、低温の120℃で焼成すると、弱アンカリング性の悪化とこれに伴う配向性の悪化が見られる。これは、膜が十分に硬化せず、セル化後の焼成や評価過程で膜が液晶に溶出していることが原因である。このように、熱硬化を用いて自立膜を得る方法は低温焼成時に十分に硬化しないことが問題であった。その一方で、実施例1~38から、本発明の硬化性組成物は良好な弱アンカリング性が発現しており、低温焼成においても十分な硬化性が得られていることが分かる。これは、熱硬化ではなくラジカル硬化を用いた恩恵であると言える。
【0284】
前記の通り、実施例1~38いずれの硬化性組成物も弱アンカリング性及び低温における硬化性を両立可能であり、硬化性組成物の構成要素の重合体αが弱アンカリング性を発現する構造(A)と光や熱によってラジカルを発生する構造(B)または、構造(A)とラジカルによって硬化反応を起こす構造(C)または、構造(A)と構造(B)と構造(C)、いずれの構成であっても良いと言える。
重合体αに構造(B)または(C)を含有しない場合は、欠けている構造(B)または(C)を含有する添加剤を使用することで硬化性組成物として機能することが分かる。また、この添加剤は必ずしもモノマーである必要はなく、重合体であっても良く、重合体の構成要素の一部として含有されていればよい。
【0285】
実施例23、35より、重合体αやこれを補完する添加剤以外に異なる機能を持たせることを目的として2種類以上の重合体を混合することも可能である。例えば、ポリイミド前駆体からなる重合体を用いることで、機械強度の改善や屈折率の制御、体積抵抗値の制御を行うことが可能である。
【0286】
<ラビング配向を用いたセル特性評価>
(弱アンカリングIPS特性の評価結果)
実施例内容及び評価結果を表5に示す。表5には、IPS基板側の液晶配向膜の方位角アンカリング強度(A)の測定結果も示した。
【0287】
【表5】
【0288】
実施例39~76、比較例4~6より、実施例の構成ではいずれも透過率の向上、駆動電圧の低電圧化が見られ、方位角アンカリングエネルギーは4.6×10-6[J/m]程度であった。これより、本発明の硬化性組成物を用いると配向処理方法に依らず良好な弱アンカリング特性が得られることが分かった。
【0289】
(鉛筆硬度を用いた機械強度評価)
鉛筆硬度評価のサンプルは、以下のように作製した。30mm×40mmのITO基板に、スピンコート塗布にて硬化性組成物を塗布し、以下の所定の方法で硬化することで膜厚100nmの硬化膜を形成させた。この基板の液晶配向膜面を鉛筆硬度試験法(JIS K5400)で測定した。
・構造(B)が光によってラジカルを発生する構造である場合:スピンコート塗布後、70℃で2分間乾燥し、波長313nmの紫外線を3.0J/cm照射し、表6に記載の焼成温度で30分間焼成した。なお、焼成にはホットプレートを用いた。
・構造(B)が熱によってラジカルを発生する構造である場合:スピンコート塗布後、70℃で2分間乾燥し、表6に記載の焼成温度で30分間焼成した。なお、焼成にはホットプレートを用いた。
【0290】
【表6】
【0291】
実施例77~96より、本発明の硬化性組成物を用いると、80~120℃の低温焼成であっても、従来の弱アンカリング液晶配向膜(比較例7)に比べて非常に高硬度であり、さらに硬度には定評のあるポリイミド樹脂からなる液晶配向膜(比較例9)に比べても非常に高い機械強度を示した。これより、本発明の硬化性組成物は弱アンカリング性を有しつつ、非常に高い機械強度を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0292】
本発明によれば、従来技術に比べて極めて単純な手法で安定した弱アンカリング膜を製造できるため、実際の工業化において弱アンカリングIPS製造に掛かる工程負荷の低減や歩留まりの改善が可能となる。また、本発明の材料および手法を用いることで、狭セルギャップ化に伴うプレチルト角の発生を抑制しつつ、従来技術に比べて電圧OFF時の高速応答化、焼き付きの低減、低温環境における高いバックライト透過率と低電圧駆動が実現できるため、優れた特性を安定して発現できる材料および横電界液晶表示素子を提供することができる。
【符号の説明】
【0293】
1 横電界液晶表示素子
2 櫛歯電極基板
2a 基材
2b 線状電極

2c 液晶配向膜
2d 基材
2e 面電極
2f 絶縁膜
2g 線状電極
2h 液晶配向膜
3 液晶
4 対向基板
4a 液晶配向膜
4b 基材
L 電気力線

図1
図2