(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008302
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラム、及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/318 20060101AFI20250109BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20250109BHJP
C23C 16/24 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01L21/318 B
H01L21/31 C
C23C16/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110344
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小出 紘之
(72)【発明者】
【氏名】陶山 なぎさ
(72)【発明者】
【氏名】長橋 知也
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA01
4K030AA02
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA16
4K030AA18
4K030BA29
4K030FA01
4K030FA10
4K030JA05
4K030JA09
4K030JA10
4K030JA11
4K030JA16
5F045AA08
5F045AA15
5F045AB33
5F045AC05
5F045AC07
5F045AC12
5F045AC15
5F045AD07
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AD11
5F045AD12
5F045AD13
5F045AD14
5F045AE15
5F045AE17
5F045AE19
5F045AE21
5F045AE23
5F045DP19
5F045DP28
5F045EE12
5F045EE17
5F045EF03
5F045EF09
5F045EH18
5F045EK06
5F058BA20
5F058BC08
5F058BD10
5F058BF07
5F058BF24
5F058BF27
5F058BF30
5F058BF37
5F058BG02
(57)【要約】
【課題】本開示は、基板上に形成された膜中のSi-Si-Si結合の量(Si置換量)、及びSi-Si結合の量を制御することにより、チャージトラップ特性を向上させることが可能な技術を提供する。
【解決手段】(a)基板に対して、シリコンを含む分解性の処理ガスを供給し、基板上にSi-Si-Si結合を含む層を形成する工程と、(b)基板に対して反応ガスを供給し、Si-Si-Si結合を解離させる工程と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板に対して、シリコンを含む分解性の処理ガスを供給し、前記基板上にSi-Si-Si結合を含む層を形成する工程と、
(b)前記基板に対して反応ガスを供給し、前記Si-Si-Si結合を解離させる工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項2】
前記処理ガスは、Si-Si結合を有する処理ガスである請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
(b)において、前記Si-Si-Si結合をSi-Si結合と、-Si-とに解離させ、
前記Si-Si結合と前記-Si-とを含む層を形成する請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記反応ガスは、窒素元素と水素元素とを含むガスである請求項1又は請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記反応ガスは、窒素元素を含むガスであり、
(b)では、前記Si-Si結合と前記-Si-とを含む層中の前記Si-Si結合におけるSiが、窒素元素と結合し、
前記Siが、前記窒素元素と他のリガンドと結合する請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項6】
(a)を、前記処理ガスの分解を抑制する条件下で行う請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項7】
(a)を、前記基板の温度が、前記処理ガスの分解温度以下となる条件下で行う請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項8】
(a)を、前記処理ガスの流速が、前記反応ガスの流速と比較して速い条件下で行う請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項9】
(a)を、前記処理ガスが前記基板の存在する空間を通過する時間の方が、前記処理ガスが分解する時間よりも短い条件下で行う請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項10】
(a)を、前記処理ガスが分解する条件下で行う請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項11】
(a)を、前記基板が存在する空間内の圧力が、(b)を行う際の前記基板が存在する空間内の圧力と比較し高い条件下で行う請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項12】
(c)(a)と、(b)とを所定回数行い、前記基板上にSiを含む層を形成する請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記処理ガス及び前記反応ガスの供給条件は、前記層の屈折率と、前記層中のSi-Si結合の量とに基づいて設定される請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記処理ガス及び前記反応ガスの供給条件は、前記層の屈折率と、前記層中のSi-Si-Si結合の量と、前記層中のSi-Si結合の量とに基づいて設定される請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記処理ガス及び前記反応ガスの供給条件は、前記層中のSi-Si-Si結合の量が1E+18以下、かつ、前記層中のSi-Si結合の量が2.5E+18以上となるように設定される請求項14に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記処理ガス及び前記反応ガスの供給条件は、前記層の屈折率が、2.0~2.10となるように設定される請求項13に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記処理ガス及び前記反応ガスの供給条件は、前記層の屈折率が、2.02~2.07となるように設定される請求項13に記載の基板処理方法。
【請求項18】
(a)基板に対して、シリコンを含む分解性の処理ガスを供給し、前記基板上にSi-Si-Si結合を含む層を形成する工程と、
(b)前記基板に対して反応ガスを供給し、前記Si-Si-Si結合を解離させる工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項19】
(a)基板に対して、シリコンを含む分解性の処理ガスを供給し、前記基板上にSi-Si-Si結合を含む層を形成させる手順と、
(b)前記基板に対して反応ガスを供給し、前記Si-Si-Si結合を解離させる手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項20】
基板に対してシリコンを含む分解性の処理ガスを供給する処理ガス供給系と、
前記基板に対して反応ガスを供給する反応ガス供給系と、
(a)基板に対してシリコンを含む分解性の処理ガスを供給し、基板上にSi-Si-Si結合を含む層を形成する処理と、
(b)基板に対して反応ガスを供給し、Si-Si-Si結合を解離させる処理と、
を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラム、及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板上にシリコン酸化膜(SiO2)やシリコン窒化膜(Si3N4)などの絶縁膜を形成する工程がある。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板上に形成された膜中のSi-Si-Si結合の量(Si置換量)、及びSi-Si結合の量を制御することにより、チャージトラップ特性を向上させることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、(a)基板に対して、シリコンを含む分解性の処理ガスを供給し、基板上にSi-Si-Si結合を含む層を形成する工程と、(b)基板に対して反応ガスを供給し、Si-Si-Si結合を解離させる工程と、を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、基板上に形成された膜中のSi-Si-Si結合の量(Si置換量)、及びSi-Si結合の量を制御することにより、チャージトラップ特性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施態様に係る基板処理方法に用いられる基板処理装置を示した概略構成図である。
【
図2】本開示の実施態様に係る基板処理方法に用いられる基板処理装置を示し、
図1のA-A線断面図である。
【
図3】本開示の実施態様に係る基板処理方法に用いられる基板処理装置に備えられたコントローラを説明するためのブロック図である。
【
図4】本開示の一態様の基板処理方法(半導体製造方法)におけるフローを示す図である。
【
図5】本開示のSi置換、及びN欠損の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示のについて詳細に説明する。
本開示は、以下の実施形態に何ら制限されない。以下の実施形態は、本開示の目的の範囲内において適宜変更されてもよい。
【0009】
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。 また、本開示中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
本開示において、「工程」との用語は、独立した工程だけでなく、所期の目的が達成される場合には他の工程と明確に区別できない工程も包含する。
【0011】
以下、本開示の一態様について、主に
図1、及び
図2を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面上の各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0012】
<基板処理装置>
図1に示すように、基板処理装置100は、処理炉202を有している。処理炉202には、温度調節部としてヒータ207が配設されている。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0013】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は、例えば、石英(SiO2)又は炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。
反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えば、ステンレス(SUS)等の金属により構成され、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。
マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。
マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、反応管203は垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。処理容器の筒中空部には処理室201が形成されている。処理室201は、複数枚の基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0014】
処理室201内には、上下方向に延びたノズル249a,249bが、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル249a,249bには、ガス供給管232a,232bが、それぞれ接続されている。このように、反応管203には2本のノズル249a,249bと、2本のガス供給管232a,232bとが設けられており、これにより、処理室201内へ複数種類、ここでは2種類のガスを供給することができるように構成されている。
【0015】
ガス供給管232aには、ガス流の上流側から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a、及び開閉弁であるバルブ243a、ガスを一時的に貯留することが可能なように構成された貯留部(ガス溜り)240a、バルブ242aが設けられている。また、ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、不活性ガス供給管232cが接続されている。この不活性ガス供給管232cには、ガス流の上流側から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241c、及び開閉弁であるバルブ243cが設けられている。
【0016】
ガス供給管232aの先端部には、上述のノズル249aが接続されている。ノズル249aは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。ノズル249aはL字型のロングノズルとして構成されている。ノズル249aの側面にはガスを供給するガス供給孔250aが設けられている。ガス供給孔250aは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0017】
貯留部240aは、例えば、通常の配管よりもガス容量の大きなガスタンク又は螺旋配管として構成されている。貯留部240aよりも上流側のバルブ243aおよび下流側のバルブ242aを開閉することにより、ガス供給管232aから供給されるガスの貯留部240a内への充填や、貯留部240a内に充填したガスの処理室201内への供給を行うことができるように構成されている。バルブ242aを閉じ、バルブ243aを開くことにより、MFC241aで流量調整されたガスを、貯留部240a内に充填することができる。貯留部240a内に所定量のガスが充填され、貯留部240a内の圧力が所定の圧力に到達したら、バルブ243aを閉じ、バルブ242aを開くことにより、貯留部240a内に充填された高圧のガスを、ガス供給管232a及びノズル249aを介して処理室201内に一気に(短時間で)供給(フラッシュ供給)することができる。なお、フラッシュ供給の際には、バルブ243aは開いていてもよい。
また、処理室201内へ処理ガスを供給する際に貯留部240aに処理ガスを充填することなく、そのまま処理ガスを処理室201内に供給するようにしてもよい(非フラッシュ供給)。
【0018】
供給管232bには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241b、及び開閉弁であるバルブ243bが設けられている。また、ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、不活性ガス供給管232dが接続されている。不活性ガス供給管232dには、ガス流の上流側から順に、MFC241d、及びバルブ243dが設けられている。
【0019】
ガス供給管232bの先端部には、ノズル249bが接続されている。ノズル249bは、ガス分散空間であるバッファ室237内に設けられている。
【0020】
図2に示すように、バッファ室237は反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。バッファ室237のウエハ200と隣接する壁の端部にはガスを供給するガス供給孔250cが設けられている。ガス供給孔250cは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0021】
ノズル249bは、バッファ室237のガス供給孔250cが設けられた端部と反対側の端部に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。ノズル249bはL字型のロングノズルとして構成されている。ノズル249bの側面にはガスを供給するガス供給孔250bが設けられている。ガス供給孔250bはバッファ室237の中心を向くように開口している。このガス供給孔250bは、バッファ室237のガス供給孔250cと同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
この複数のガス供給孔250bのそれぞれの開口面積は、バッファ室237内と処理室201内の差圧が小さい場合には、上流側(下部)から下流側(上部)まで、それぞれ同一の開口面積で同一の開口ピッチとするとよく、差圧が大きい場合には上流側から下流側に向かって、それぞれ開口面積を大きくするか、開口ピッチを小さくするとよい。
【0022】
ノズル249bのガス供給孔250bのそれぞれの開口面積や開口ピッチを、上流側から下流側にかけて上述のように調節することで、まず、ガス供給孔250bのそれぞれから、流速の差はあるものの、流量がほぼ同量であるガスを噴出させる。そしてこのガス供給孔250bのそれぞれから噴出するガスを、一旦、バッファ室237内に導入し、バッファ室237内においてガスの流速差の均一化を行うことができる。
ノズル249bのガス供給孔250bのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスはバッファ室237内で各ガスの粒子速度が緩和された後、バッファ室237のガス供給孔250cより処理室201内に噴出する。これにより、第2ノズル249bのガス供給孔250bのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスは、バッファ室237のガス供給孔250cのそれぞれより処理室201内に噴出する際には、均一な流量と流速とを有するガスとなる。
【0023】
このように、本実施態様では、反応管203の内壁と、積載された複数のウエハ200の端部と、で定義される円環状の縦長の空間内、つまり、円筒状の空間内に配置したノズル249a,249b及びバッファ室237を経由してガスを搬送している。
【0024】
そして、ノズル249a,249b及びバッファ室237にそれぞれ開口されたガス供給孔250a~250cから、ウエハ200の近傍で初めて処理室201内にガスを噴出させている。また、処理室201内におけるガスの主たる流れを、ウエハ200の表面と平行な方向、即ち、水平方向としている。ウエハ200の表面上を流れた、反応後の残ガスは、後述する排気管231の方向に向かって流れる。但し、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定される。
【0025】
ガス供給管232aからは、(処理ガス)例えば、シリコン(Si)を含むガス(シリコン含有ガス)が、MFC241a、バルブ243a、貯留部240a、バルブ242a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0026】
ガス供給管232bからは、(反応ガス)例えば、窒素(N)を含むガス(窒素含有ガス)が、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。なお、反応ガスは、処理ガスとは分子構造(化学構造)が異なる物質である。
【0027】
ガス供給管232c,232dからは、不活性ガスが、それぞれMFC241c,241d、バルブ243c,243d、ガス供給管232a,232b、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0028】
ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243a、貯留部240a、バルブ242aにより、処理ガス供給系が構成される。
ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、反応ガス供給系が構成される。
ガス供給管232c,232d、MFC241c,241d、バルブ243c,243dにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0029】
図2に示すように、バッファ室237内には、細長い構造を有する2本の棒状電極269,270が、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積層方向に沿って配設されている。棒状電極269,270のそれぞれは、ノズル249bと平行に設けられている。棒状電極269,270のそれぞれは、上部より下部にわたって電極保護管275により覆われることで保護されている。棒状電極269,270のいずれか一方は、整合器272を介して高周波電源273に接続され、他方は、基準電位であるアースに接続されている。整合器272を介して高周波電源273から棒状電極269,270間に高周波(RF)電力を印加することで、棒状電極269,270間のプラズマ生成領域224にプラズマが生成される。主に、棒状電極269,270、電極保護管275によりプラズマ発生器(プラズマ発生部)としてのプラズマ源が構成される。整合器272、高周波電源273をプラズマ源に含めて考えてもよい。プラズマ源は、後述するようにガスをプラズマ状態に活性化(励起)させる活性化機構(励起部)として機能する。なお、ガスをプラズマ状態に活性化しない場合には、プラズマ発生部は設けなくても良い。
【0030】
電極保護管275は、棒状電極269,270のそれぞれをバッファ室237内の雰囲気と隔離した状態でバッファ室237内に挿入できる構造となっている。電極保護管275の内部の酸素濃度が外気(大気)の酸素濃度と同程度であると、電極保護管275内にそれぞれ挿入された棒状電極269,270は、ヒータ207による熱で酸化されてしまう。電極保護管275の内部に窒素(N2)ガスなどの不活性ガスを充填しておくか、不活性ガスパージ機構を用いて電極保護管275の内部を窒素(N2)ガスなどの不活性ガスでパージすることで、電極保護管275の内部の酸素濃度を低減させ、棒状電極269,270の酸化を防止することができる。
【0031】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が接続されている。この排気管231の一端は、処理室201の下端部の排気口に接続されている。また、排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245及び排気バルブ(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)、及びバルブ244を介して、排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の排気及び排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。なお、真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。排気管231は、反応管203に設ける場合に限らず、ノズル249a,294bと同様にマニホールド209に設けてもよい。
【0032】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。
シールキャップ219はマニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219の上面にはマニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通して、後述するボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入及び搬出するように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217、及びボート217に支持されるウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0033】
基板保持具としてのボート217は、複数、例えば、25枚~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される断熱部材218が設けられており、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなるよう構成されている。
【0034】
処理室201内には温度検出器としての温度センサ263が設けられている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル249a、249bと同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0035】
図3に示されるように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えば、タッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0036】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する膜形成等の基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0037】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241d、バルブ242a,243a~243d、貯留部240a、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、整合器272、高周波電源273等に接続されている。
【0038】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、MFC241a~241dによる各種ガスの流量調整動作、バルブ242a,243a~243dの開閉動作、貯留部240aによる処理ガスの貯留動作、APCバルブ244の開閉動作及び圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動及び停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転及び回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、整合器272によるインピーダンス調整動作、高周波電源273の電力供給等を制御するように構成されている。ここで、プロセスレシピは、後述する膜形成工程等の基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。
【0039】
コントローラ121は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、前述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ等)123を用意し、この外部記憶装置123を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施態様のコントローラ121を構成することができる。但し、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置123を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置123を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本開示において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、又はその両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0040】
<基板処理工程>
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程(つまり本開示に係る基板処理方法)として、ウエハ200上に、薄膜を軽視絵する工程の一例について
図4を参照して説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0041】
本開示の基板処理方法(半導体装置の製造方法)では、(a)ウエハ200に対して、シリコンを含む分解性の処理ガスを供給し、ウエハ200上にSi-Si-Si結合を含む層を形成する工程と、(b)ウエハ200に対して反応ガスを供給し、Si-Si-Si結合を解離させる工程と、を行うことで、ウエハ200上にSi-Si結合とSiとを含む層が形成される。
【0042】
上記基板処理方法(半導体装置の製造方法)により、ウエハ200上に形成された層のチャージトラップ特性が向上するのは、層中に含まれるSi-Si結合(N欠損)量を容易に制御できるからであると推測される。
つまり、(a)工程において、N欠損生成のもととなるSi-Si-Si結合(Si置換)を含む層を形成する。
そして、(b)工程において、反応ガスを供給し、Si-Si-Si結合の解離を調整することで、Si-Si結合(N欠損)量を制御することができる。
【0043】
本開示において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体」を意味する場合がある。本開示において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面」を意味する場合がある。本開示において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0044】
本開示において「Si-Si-Si結合」とは、
図5に示すように、1つのケイ素原子に直接ケイ素原子が3つ以上結合していること示す。
図5中の「X」は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アミン、ハロゲン原子、及びダングリングボンド(未結合)の群より選ばれる1種を示す。
また、本開示において「Si-Si-Si結合」を、「Si置換(Si dB defect)と表す場合もある。
本開示において「Si-Si結合」とは、
図5に示すように、1つのケイ素原子に直接ケイ素原子が1つ結合していることを示す。
図5中の「X」は、上記と同様である。
また、本開示において「Si-Si結合」を、「N欠損(Si-H defect)」と表す場合もある。
本開示において、「-Si-」とは、1つのケイ素原子に直接ケイ素原子が結合していないことを示す。また、Siには、
図5に示す様にXが結合している。
【0045】
本開示おいて、「処理温度」とは、ウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、「処理圧力」とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、「処理時間」とは、その処理を継続する時間を意味する。
【0046】
(ウエハチャージ、及びボートロード)
複数のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、ボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。このとき、シールキャップ219は、Oリング220bを介して反応管203の下端を気密に閉塞(シール)した状態となる。
【0047】
(圧力調整、及び温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244が、フィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。
また、処理室201内のウエハ200が所定の温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201が所定の温度となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0048】
(成膜処理)
成膜処理においては、以下の工程1、及び工程2が順次実施される。
【0049】
[工程1]
本工程では、(a)ウエハ200に対してシリコンを含む分解性の処理ガス(以下、「処理ガス」という。)を供給し、Si-Si-Si結合を有する層を形成する工程を含み、更に処理室201内の残留ガスを除去(排気)する工程を含んでもよい。
【0050】
具体的には、バルブ243a開き、ガス供給管232a内に処理ガスを流す。処理ガスは、MFC241aにより流量管理されて貯留部240aに貯留された処理ガスが、ノズル249aのガス供給孔250aから処理室201内にフラッシュ供給され、排気管231から排気される。なお、本工程において、貯留部240aに処理ガスを溜めることなく、そのまま処理ガスを処理室201内に供給するようにしてもよい(非フラッシュ供給)。このとき、同時にバルブ243cを開き、ガス供給管232c内に窒素(N2)ガス等の不活性ガスを流す。ガス供給管232c内を流れた不活性ガスは、MFC241cにより流量調整される。流量調整された不活性ガスは、処理ガスと共に、処理室201内に供給されつつ排気管231から排気される。
【0051】
処理ガスとして本開示のSiを含むガスを用いた場合の本工程の処理条件としては、
処理温度:500~1000℃、好ましくは600~800℃、より好ましくは650~750℃
処理圧力:1~2666Pa、好ましくは10~1333Pa
処理ガス供給流量:1~2000sccm、好ましくは10~1000sccm
処理ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
が例示される。
【0052】
なお、本開示における「500~1000℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「500~1000℃」とは「500℃以上1000℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本開示における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、供給流量に0sccmが含まれる場合、0sccmとは、そのガスを供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0053】
上記(a)は、処理ガスの分解が抑制される条件下で行われることが好ましい。これにより、Si置換量を少なくすることができ、チャージトラップ特性を高めることができる。
処理ガスの分解が抑制される条件としては、例えば、(1)ウエハ200の温度が、処理ガスが分解する温度以下の条件(好ましくは、処理ガスが分解する温度よりも低い条件)、(2)処理ガスの流速が、後述する反応ガスの流速に対して速い条件、及び(3)処理ガスの処理室201内通過時間(ウエハ200の存在する空間、ウエハ200上の空間)が、処理ガスの分解時間に対して短い条件が挙げられる。
【0054】
本開示において「処理ガスの分解が抑制される」とは、Si-Si-Si結合の解離(切断)が抑制されることを示す。
【0055】
上記(1)としては、例えば、処理ガスとして本開示のSiを含むガスを用いた場合(分解温度:用いるガスにより異なるが、例えば、300℃)、ウエハ200の温度が使用する処理ガスの分解温度よりも低い温度とすることが好ましい。これにより、ウエハ200上に形成された膜均一性が良好となる。
【0056】
上記(2)としては、例えば、処理ガスの流速を0.5~30m/sとした場合、反応ガスの流速を0.1~3.0m/sとすることが好ましく、0.5~1.5m/sとすることがより好ましい。
反応ガスの供給は、上述したフラッシュ供給により行われることが好ましい。これにより、処理室201内に反応ガスが存在する時間を減らすことができ、熱等による処理ガスの分解を抑制することを可能とする。処理ガスの分解を抑制することで、Si置換量を少なくすることができる。なお、このような流速で処理を行う際には、ウエハ200の温度を、処理ガスの分解温度よりも低い温度とする必要は無く、分解温度以上の温度で処理しても良い。分解温度よりも高いウエハ200の温度は、例えば、500~800℃の範囲内であり、600~800℃の範囲内にすることがより好ましく、650~750℃の範囲内にすることが更に好ましい。この様な温度範囲とすることにより、処理ガスの分解を抑制しつつ、反応ガスの反応性を向上させることができ、ウエハ200上に形成される膜の特性を向上させることができる。なお、分解温度以上の温度とは、分解温度と同じ温度、分解温度よりも高い温度を含む。
【0057】
上記(3)としては、例えば、処理ガスとして本開示のSiを含むガスを用いた場合、処理室201内を通過する時間は、0.01~0.5秒の範囲内であることが好ましく、0.05~0.1秒の範囲内であることがより好ましい。これにより処理ガスの分解を抑制することが可能となり、Si置換量を少なくすることができる。
【0058】
また、本開示において(a)が、処理ガスが分解される条件で行われることも好ましい。これにより、Si置換量を増やすことができ、反応ガス供給によるN欠損量を増やすことができる。
処理ガスが分解される条件としては、例えば、処理ガスに加えられる圧力が、反応ガスに加えられる圧力と比較し高いことが挙げられる。
具体的には、反応ガスに加えられる圧力が、1~1333Paである場合、処理ガスに加えられる圧力が、10~2666Paであることが挙げられる。
【0059】
ウエハ200上にSi-Si-Si結合を含む層が形成された後、バルブ243aを閉じ、処理ガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応、もしくはSi-Si-Si結合を含む層の形成に寄与した後の処理ガスを処理室201内から排除する。このとき、バルブ243eは開いたままとして、不活性ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはSi-Si-Si結合を有する層の形成に寄与した後の処理ガスを処理室201内から排除(パージ)する効果を高める。
【0060】
不活性ガスとしてN2ガスを用いた場合の本工程の処理条件としては、
不活性ガス供給流量:100~1000sccm、好ましくは300~500sccm
不活性ガス供給時間:1~60秒、好ましくは2~20秒
が例示される。その他処理条件は、本工程の処理ガス供給する際における処理条件と同様とする。
【0061】
本開示のシリコンを含む分解性の処理ガスとしては、例えば、無機系の処理ガス、及び有機系の処理ガスが挙げられる。
【0062】
無機系の処理ガスとしては、例えば、ジクロロシラン(H2SiCl2)ガス、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称:HCDS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl4)ガスなどのハロゲンを含むシリコン系ガス、及びSiH4、Si2H6、Si3H8などのハロゲンを含まないシリコン系ガスが挙げられる。
【0063】
有機系の処理ガスとしては、例えば、アミノシラン系のテトラキスジメチルアミノシラン(Si(N(CH3)2))4)ガス、トリスジメチルアミノシラン(Si(N(CH3)2))3H)ガス、ビスジエチルアミノシラン(Si(N(C2H5)2)2H2)ガス、ビスターシャリーブチルアミノシラン(SiH2(NH(C4H9))2)ガスが挙げられる。
処理ガスとしては、これらのうち1種単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。
【0064】
中でも、Si-Si-Si結合を含む層の形成し易さの観点から、Si-Si結合を有するHCDSガス、Si2H6ガス、Si2I6ガス、Si2Br6ガスなどの無機系処理ガス、及びSi-Si結合を有するSiH2(NH(C4H9))2ガスなどの有機系処理ガスが好ましい。
【0065】
本開示の条件下でウエハ200に対して本開示のSiを含むガスを供給することにより、ウエハ200上に、Si-Si-Si結合を含む層を形成することができる。
Si-Si-Si結合を含む層の形成メカニズムは、明確ではないが以下のように推測される。
【0066】
まず、処理室201内に供給されたSi-Si結合を有するガス分子のSi-Si結合が切断される。Si-Si結合が切断されることで、SiRX(「X」は、1以上の整数であって、原料中に含まれるRよりも小さいガスを示す。)が生成する。生成したSiRXは、他のSiRXと結合することでSi-Si-Si結合を生成する。このSi-Si-Si結合が、ウエハ200上に物理吸着、及び/又は化学吸着することでSi-Si-Si結合を含む層が形成されると推測される。なお、ここで、Rは、本開示のSi原料に含まれるリガンドである。例えば、水素(H)、塩素(Cl)、アミノ基、アルキルアミノ基、等である。処理ガスが、例えば、HCDSの場合、RはClとなり、Xは1~3の整数であり、SiRXは、SiClXである。
【0067】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガス、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。この点は、後述する各工程においても同様である。
【0068】
[工程2]
工程1の後、本工程では、(b)ウエハ200に対して反応ガスを供給し、ウエハ200上に形成されたSi-Si-Si結合を含む層のSi-Si-Si結合を解離させる工程を含む。更に、処理室201内の残留ガスを除去(排気)する工程を含むことが好ましい。
これにより、Si-Si-Si結合の解離により生じたSi-Si結合と、Siを含む層を形成することができる。
【0069】
具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へ反応ガスを流す。反応ガスは、MFC241bにより流量調整される。流量調節された反応ガスは、ノズル249bからバッファ室237内に供給される。このとき、第一の棒状電極269、及び第二の棒状電極270間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237内に供給された反応ガスはプラズマ励起され、活性種としてガス供給孔250cから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。このとき同時にバルブ243dを開き、不活性ガス供給管232d内に不活性ガスを流す。不活性ガスは、反応ガスと一緒に処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。
【0070】
本工程の処理条件として、
処理温度:500~1000℃、好ましくは600~800℃、より好ましくは650~750℃
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは10~10000Pa
反応ガス供給流量:10~10000sccm、好ましくは100~5000sccm
反応ガス供給時間:1~120秒、好ましくは10~60秒
棒状電極間に印加する高周波電力:0~1000W
が例示される。
【0071】
また、反応ガスを供給する際にプラズマ励起せず、APCバルブ244を適正に調整して処理室201内の圧力を例えば、50~3000Paの範囲内の圧力とすることで、反応ガスをノンプラズマで熱的に活性化することも可能である。なお、反応ガスは熱で活性化させて供給した方が、ソフトな反応を生じさせることができ、後述する窒化をソフトに行うことができる。なお、反応ガスをプラズマ励起しない場合は、基板処理装置にプラズマを生成する構成を設けなくても良い。
【0072】
その後、供給管232bのバルブ243bを閉じて、反応ガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する反応ガスを処理室201内から排除する。なお、この時バルブ243dは開いたままとして、不活性ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内に残留する反応ガスを処理室201内から排除(パージ)する効果を高める。
【0073】
不活性ガスとしてN2ガスを用いた場合の本工程の処理条件としては、
不活性ガス供給流量:100~1000sccm、好ましくは300~500sccm
不活性ガス供給時間:1~60秒、好ましくは2~20秒
が例示される。
【0074】
本開示の反応ガスとしては、例えば、窒素元素(N)と水素元素(H)とを含むガスが挙げられる。なお、NとHとを含むガスの代わりに、Nと重水素(D)とを含むガスを用いることもできる。これらのガスとしては、例えば、N2ガス+H2ガス;アンモニア(NH3)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス、ND3ガスなどの窒化水素系ガスが挙げられる。これらの反応ガスを1種単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。
【0075】
なお、本開示において「N2ガス+H2ガス」のような2つのガスの併記した記載は、H2ガスとN2ガスとの混合ガスを意味する。混合ガスを供給する場合は、2つのガスを供給管内で混合(プリミックス)させた後に、処理室201内へ供給するようにしてもよく、2つのガスを異なる供給管より別々に処理室201内へ供給し、処理室201内で混合(ポストミックス)させるようにしてもよい。
【0076】
中でも、N欠損量を増加させる観点から、N2ガス+H2ガス;NH3ガスN2H2ガス、N2H4ガス、N3H8ガス、ND3ガスなどの窒化水素系ガスを用いることが好ましい。
【0077】
ウエハ200に対して本開示の反応ガスを供給されることにより、Si-Si結合とSiとを含む層が形成される。また、層中のSi-Si結合におけるSiとSiとは、反応ガスと一部反応し窒化され、シリコン窒化層(SiN層)が形成される。
上記Si-Si結合とSiとを含む層が形成されるメカニズムは、明確ではないが以下のように推測される。
【0078】
(a)工程において形成されたSi-Si-Si結合を有する層のSi-Si-Si結合の間に、反応ガス中の窒素原子が入り込む。その結果、Si-Si-Si結合がSi-Si結合とSiとに解離され、Si-Si結合とSiを含む層へと改質されるためであると推測される。
【0079】
反応ガスにより、Si-Si結合と、Siとに解離されたSi-Si結合におけるSiは、窒素元素と結合することが好ましい。
Siは、窒素元素と結合すると共に、他のリガンドと結合することが好ましい。
【0080】
Si-Si結合におけるSiとSiとが結合する元素としては、特に窒素元素であることが好ましい。これにより、ウエハ200上に形成されたSi-Si結合と、Siを含む層の少なくとも一部を改質(窒化)させ、SiN層を形成することができる。また、N欠損量を増やすことができ、チャージトラップ特性を高めることができる。
上記他のリガンドとしては、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アミン、ハロゲン原子、及びダングリングボンド(未結合)、等のうち、少なくとも1つである。他のリガンドは、原料ガスの分子に含まれる元素、原料ガスの分子に含まれるリガンドや、これらと結合しなかったダングリングボンドも含み得る。
【0081】
(所定回数の実施)
上述の工程1及び工程2を含むサイクルを所定回数(n回、nは1または2以上の整数)行うことができる。ウエハ200の表面上に形成された層の屈折率、層の厚み、及び/又は層の組成を容易に調節可能とする観点から、上述のサイクルは複数回行うことが好ましい。
【0082】
工程1及び工程2を含むサイクルを所定回数行う場合において、処理ガス及び反応ガスの供給条件は、層の屈折率(RI)と、層中のSi-Si-Si結合の量とに基づいて設定されることが好ましい。
更に、工程1、及び工程2を含むサイクルを所定回数行う場合において、処理ガス及び反応ガスの供給条件は、層のRIと、層中のSi-Si-Si結合の量と、層中のSi-S結合の量(N欠損量)とに基づいて設定することがより好ましい。これにより、チャージトラップ特性を容易に制御することができる。
【0083】
処理ガス及び反応ガスの供給条件を設定するにあたり、ウエハ200の表面上に形成された層のRIは、2.0~2.10であることが好ましい。2.02~2.07であることがより好ましい。層のRIを2.0~2.10とすることで、要求される半導体デバイスの特性を満たすことができる。
層のRIが、2.0未満であると、N欠損量が減少し、チャージトラップ特性が低下する。層のRIが、2.10よりも大きいとSi置換量の増加により、リーク電流が増加することがあり、要求される半導体デバイスの特性を満たせなくなることがある。
層のRIは、例えば、分光エリプソメトリー等の装置を用いて測定することができる。
【0084】
またウエハ200表面上に形成された層のSi置換量とN欠損量との関係を基に、処理ガスの供給条件と反応ガスの供給条件とのいずれかまたは両方を設定することが好ましい。ここで、Si置換量とN欠損量との関係とは、横軸がSi置換量で、縦軸がN欠損量のグラフで表される関係である。Si置換量は1E+18以下であり、かつ、N欠損量は2.5E+18以上であることが好ましい。この範囲とすることで、要求される半導体デバイスの特性を満たすことができる。より好ましくは、Si置換量が5E+17以下であり、かつ、N欠損量が3.0E+18以上である様に供給条件を設定する。更に好ましくは、Si置換量が1E+17以下であり、かつ、N欠損量が3.5E+18以上である様に供給条件を設定する。Si置換量が、1E+18より大きいと、リーク電流が増加することがあり、要求される半導体デバイスの特性を満たせなくなることがある。N欠損量が2.5E+18未満であると、チャージトラップ特性が低下することがあり、要求される半導体デバイスの特性を満たせなくなることがある。なお、Si置換の量は、少ない程、リーク電流を低減することができるが、上述のRIの範囲となる様に調整することが好ましい。また、N欠損の量は多い程チャージトラップ量を多くできるが、上述のRIの範囲となる様に調整することが好ましい。
Si置換量及びN欠損量は、例えば、ESR(Electron Spin Resonance)法を用い、層中に含まれるダングリングボンド量から算出することができる。
【0085】
(パージ、及び大気圧復帰)
ウエハ200上への成膜が終了した後、不活性ガスを処理室201内へ供給し排気管231から排気する。不活性ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(パージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0086】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
ボートエレベータ115によりシールキャップ219を下降させ、反応管203の下端を開口させる。そして、処理済のウエハ200を、ボート217に支持させた状態で反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)させる。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0087】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0088】
例えば、上述のように一連の処理を同一の処理室(処理容器)201内にて連続して(in-situ)行ってもよい。また、上述の処理の内、少なくとも1つの処理を異なる処理室(処理容器)内にて(ex-situ)で行ってもよい。いずれの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。なお、上述の処理をin-situで行う場合は、処理間に行われるウエハ200の処理室外への搬出、または処理室外からの搬入によって生じ得るウエハ200の汚染や、ウエハ200の表面状態の変化などを抑制することができる。また、これらの処理をin-situで行う場合、処理間の遷移時間を短縮させることができる。一方で、これらの処理をex-situで行う場合、異なる処理室内にて各処理を並行して行うことができ、生産性を高めることができる。
【0089】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0090】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0091】
100 基板処理装置
200 ウエハ(基板)
207 ヒータ
231 排気管
232a、232b ガス供給管
250a、250c ガス供給孔