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特開2025-8309導電性ペースト、電子部品、及び積層セラミックコンデンサ
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  • 特開-導電性ペースト、電子部品、及び積層セラミックコンデンサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008309
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】導電性ペースト、電子部品、及び積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20250109BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01G4/30 516
H01B1/22 A
H01G4/30 201D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110357
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(74)【代理人】
【識別番号】100134441
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 由利
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚史
(72)【発明者】
【氏名】高野 清
(72)【発明者】
【氏名】河村 卓哉
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
5G301
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE23
5E082EE27
5E082EE29
5G301DA03
5G301DA05
5G301DA06
5G301DA10
5G301DA11
5G301DA12
5G301DA33
5G301DD01
5G301DD02
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】 高粘度であり、かつ、粗大粒子数が低減された導電性ペーストを提供する。
【解決手段】 無機粒子、バインダー樹脂、分散剤、及び、有機溶剤を含む導電性ペーストであって、無機粒子は、数平均粒径が0.05μm以上0.3μm以下の導電性粉末を、導電性ペースト全体に対して30質量%以上70質量%以下含み、バインダー樹脂は、セルロース系樹脂を含み、分散剤は、酸系分散剤を含み、導電性ペーストは、せん断速度4s-1での粘度が10Pa・S超であり、導電性ペースト中、導電性粉末の数平均粒径の2倍を超える粒子径を有する導電性粉末の個数割合が、導電性粉末の全個数に対して50ppm以下である、導電性ペースト。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子、バインダー樹脂、分散剤、及び、有機溶剤を含む導電性ペーストであって、
前記無機粒子は、数平均粒径が0.05μm以上0.3μm以下の導電性粉末を、導電性ペースト全体に対して30質量%以上70質量%以下含み、
前記バインダー樹脂は、セルロース系樹脂を含み、
前記分散剤は、酸系分散剤を含み、
前記導電性ペーストは、せん断速度4s-1での粘度が10Pa・S超であり、
前記導電性ペースト中、前記導電性粉末の数平均粒径の2倍を超える粒子径を有する導電性粉末の個数割合が、前記導電性粉末の全個数に対して50ppm以下である
導電性ペースト。
【請求項2】
前記導電性粉末は、Ni、Pd、Pt、Au、Ag、Cu、及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種の金属粉末を含む、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記無機粒子は、数平均粒径が0.01μm以上0.3μm以下であるセラミック粉末を、導電性ペースト全体に対して1質量%以上20質量%以下含む、請求項1又は2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記セラミック粉末が、チタン酸バリウムを含む、請求項3に記載の導電性ペースト。
【請求項5】
前記セルロース系樹脂は、導電性ペーストに対して0.1質量%以上3.0質量%以下含有される、請求項1又は2に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
前記バインダー樹脂は、アセタール系樹脂を、導電性ペースト全体に対して0.5質量%以上3.0質量%以下含む、請求項1又は2に記載の導電性ペースト。
【請求項7】
前記酸系分散剤は、導電性ペースト全体に対して0.01質量%以上1.0質量%未満含有される、請求項1又は2に記載の導電性ペースト。
【請求項8】
無機粒子、バインダー樹脂、分散剤、及び、有機溶剤を混合して、無機粒子スラリーを得る、第1工程と、
前記無機粒子スラリーを、1.0μm以下の濾過精度を有するフィルターにより濾過する、第2工程と、
前記濾過後の無機粒子スラリーと、バインダー樹脂、及び、有機溶剤とを、混合する、第3工程と、を備える、
請求項1に記載の導電性ペーストの製造方法。
【請求項9】
前記無機粒子スラリー中のバインダー樹脂が、セルロース系樹脂を含む、請求項8に記載の導電性ペーストの製造方法。
【請求項10】
前記無機粒子スラリー中の前記バインダー樹脂が、セルロース系樹脂とアセタール系樹脂を含む、請求項8又は9に記載の導電性ペーストの製造方法。
【請求項11】
第1工程で得られる無機粒子スラリーは、室温(25℃)における、せん断速度4s-1の粘度が20Pa・S以下である、請求項8又は9に記載の導電性ペーストの製造方法。
【請求項12】
積層セラミック部品の内部電極用である請求項1又は2に記載の導電性ペーストの製造方法。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の導電性ペーストを用いて形成された、電子部品。
【請求項14】
誘電体層と内部電極層とを積層した積層体を少なくとも有し、
前記内部電極層は、請求項1又は2に記載の導電性ペーストを用いて形成された、
積層セラミックコンデンサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペースト、電子部品、及び積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やデジタル機器などの電子機器の小型化および高性能化に伴い、積層セラミックコンデンサなどを含む電子部品についても小型化および高容量化が望まれている。積層セラミックコンデンサは、複数の誘電体層と複数の内部電極層とが交互に積層した構造を有し、これらの誘電体層及び内部電極層を薄膜化することにより、小型化及び高容量化を図ることができる。
【0003】
積層セラミックコンデンサは、例えば、次のように製造される。まず、チタン酸バリウム(BaTiO)などの誘電体粉末及びバインダー樹脂を含有するグリーンシートの表面上に、内部電極用の導電性ペーストを、所定の電極パターンで印刷し、乾燥して、乾燥膜(導電膜)を形成する。次いで、乾燥膜とグリーンシートとを、交互に重なるように積層して、積層体を得る。次に、この積層体を、加熱圧着して一体化し、圧着体を形成する。この圧着体を切断し、酸化性雰囲気または不活性雰囲気中にて脱有機バインダー処理を行った後、焼成を行い、焼成チップを得る。次いで、焼成チップの両端部に外部電極用ペーストを塗布し、焼成後、外部電極表面にニッケルメッキなどを施して、積層セラミックコンデンサが得られる。
【0004】
積層セラミックコンデンサの小型化および大容量化に伴い、内部電極や誘電体はともに薄層化が進められている。これに伴って、内部電極用の導電性ペーストに使用される導電性粉末(例、ニッケル粉末)の粒径も微細化が進行し、例えば、平均粒径0.4μm以下のニッケル粉末が必要とされることがある。また、内部電極の膜厚にもよるが、通常、導電性粉体全体の数平均粒径の3倍~5倍程度以上の粒径を基準粒径として、この基準粒径よりも大きな粒子が粗大粒子とみなされる。また、近年の積層セラミックコンデンサのさらなる小型化、内部電極層の薄膜化に伴い、導電性粉末の数平均粒径に対して、3倍より小さい基準粒径が要求されることもある。
【0005】
ここで、導電性粉末が主として一次粒子で構成されている場合、粗大粒子には、一次粒子径が基準以上の大きな粒子だけでなく、一次粒子が強固に連結して容易に解砕できない状態の連結粒子で、基準の粒径以上の粒径を有する粒子も含まれる。
【0006】
これらの基準粒径よりも粗大粒子を含まないニッケル粉末を得るためには、高価な分級装置の導入による分級処理が必須となる。分級処理では、0.6μm~2μm程度の任意の値の分級点を目途に、分級点よりも大きな粗大粒子の除去が可能であるが、分級点よりも小さな粒子の一部も同時に除去されてしまうため、製品実収が大幅に低下するという問題もある。
【0007】
例えば、特許文献1には、ニッケル粉末を製造する方法において、生成したニッケル粒子を高速分級ローターを備えたジェットミルにより解砕し、再凝集前に粗大粒子を除去することを特徴とするニッケル粉末の製造方法が開示されている。
【0008】
また、粗大粒子を含まない導電性ペーストを得る方法として、従来は導電性ペーストをフィルターにより、濾過して粗大粒子を除去する方法がある。
【0009】
例えば、特許文献2では、金属粒子を主たる固形分として含有するスラリー(以下「金属粒子スラリー」)をフィルターにより濾過して、所定の粒径以上の粗大金属粒子を除去する方法において、フィルターを通過させるべき金属粒子スラリーが供給される、フィルター前室として機能するスラリーチャンバーから、金属粒子スラリーを抜き出し、所定の経路で循環させて再びスラリーチャンバーに戻す循環ラインを設け、前記循環ラインに金属粒子スラリーを循環させつつ、スラリーチャンバー内の金属粒子スラリーを所定の目開きのフィルターにより濾過して、粗大金属粒子を除去することを特徴とする粗大金属粒子の除去方法が開示されている。また、特許文献2では、分散剤として、低沸点分散剤を用い、粗大金属粒子を分離した後の金属粒子スラリーから、分散剤及び溶剤を蒸留除去することにより、金属粒子を回収することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003-089806号公報
【特許文献2】特開2002-177743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、例えば、特許文献1のように、無機粒子を予め分級して、粗大粒子を除去したとしても、その後の保管・製造工程において、無機粒子が再凝集して、粗大粒子を形成することもある。
【0012】
また、特許文献2の金属粒子スラリーを循環させながら濾過する工程では、金属粒子スラリーの分散が十分に保たれず、金属粒子の凝集物により目詰まりが起こり、精度よく粗大粒子の除去が出来ない可能性がある。また、粗大粒子除去後に低沸点分散剤および溶剤を除去する追加の工程が必要になる。特に積層セラミックコンデンサに用いられる高粘度の導電性ペーストでは、粗大粒子を除去するため、高い濾過精度のフィルターを用いて濾過しようとしても、目詰まりが生じて、粗大粒子数を十分に低減することが困難である。
【0013】
このような状況を考慮して、本発明者らが、鋭意検討したところ、無機粒子を含む導電性ペーストの製造工程において、特定の組成を有する無機粒子スラリーの粘度を、特定の範囲に制御して、濾過精度の高いフィルターにて、粗大粒子を除去することにより、高粘度の導電性ペーストにおいても、基準粒径として、平均粒径の2倍程度の粒径を有する粒子(粗大粒子)数を非常に低減できることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
本発明は、分散性に優れ、高粘度を有するにも関わらず、粗大粒子数が非常に低減された導電性ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様では、無機粒子、バインダー樹脂、分散剤、及び、有機溶剤を含む導電性ペーストであって、無機粒子は、数平均粒径0.05μm以上0.3μm以下の導電性粉末を、導電性ペースト全体に対して30質量%以上70質量%以下含み、バインダー樹脂は、セルロース系樹脂を含み、分散剤は、酸系分散剤を含み、導電性ペーストのせん断速度4s-1での粘度が20Pa・S超であり、導電性ペースト中、導電性粉末の数平均粒径の2倍を超える粒子径を有する導電性粉末の個数割合が、導電性粉末の全個数に対して50ppm以下である、導電性ペーストが提供される。
【0016】
本発明の第2の態様では、無機粒子、バインダー樹脂、分散剤、及び、有機溶剤を混合して、無機粒子スラリーを得る、第1工程と、無機粒子スラリーを、1.0μm以下の濾過精度を有するフィルターにより濾過する、第2工程と、濾過後の無機粒子スラリーと、バインダー樹脂、及び、有機溶剤とを、混合する、第3工程と、を備える、上記導電性ペーストの製造方法が提供される。
【0017】
本発明の第3の態様では、上記導電性ペーストを用いて形成された電子部品が提供される。
【0018】
本発明の第4の態様では、誘電体層と内部電極層とを積層した積層体を少なくとも有し、内部電極層は、上記導電性ペーストを用いて形成された積層セラミックコンデンサが提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の導電性ペーストは、分散性に優れ、高粘度を有するにも関わらず、粗大粒子数が非常に低減されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、導電性粉末(無機粒子)の一次粒子(単独)の一例を示す図である。
図2図2は、導電性粉末(無機粒子)の連結粒子の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る導電性ペーストの製造方法の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す斜視図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[導電性ペースト]
(ペースト粘度)
本実施形態における導電性ペーストは、無機粒子(導電性粉末含む)、バインダー樹脂、分散剤、及び、有機溶剤を含む。また、本実施形態における導電性ペーストのせん断速度4s-1での粘度は、10Pa・S超であり、例えば、10Pa.Sを超え100Pa.S以下であってもよく、15Pa.S以上50Pa.S以下であってもよく、20Pa.S以上40Pa.S以下であってもよい。導電性ペーストの粘度が上記範囲である場合、例えば、スクリーン印刷用のペーストとして好適に使用することができる。
【0022】
上記のように比較的高い粘度を有する導電性ペーストでは、所定の粒径以上の粗大粒子を除去するため、濾過精度の高いフィルターを用いて濾過しようした場合、目詰まりが生じて、粗大粒子を十分に低減することが困難となる。本実施形態の導電性ペーストでは、比較的高い粘度を有するにも関わらず、後述する、導電性ペーストの製造方法を用いることより、導電性ペースト中の粗大粒子数を非常に低減させることがきる。
【0023】
図1に、導電性ペーストに含まれる導電性粉末の一次粒子(単独)の一例、図2に導電性ペーストに含まれる導電性粉末の連結粒子の一例を示す。本明細書において、粗大粒子とは、一次粒子(単独)の粒子径が基準粒径(例えば、導電性粉末の数平均粒径の2倍)に対して大きな粒子だけでなく、粒径の小さい一次粒子が連結して形成された連結粒子(図2参照)の粒子径が基準粒径に対して大きな粒子を含む。なお、導電性粉末の粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)像から求められる長径(外接直方体の長軸寸法)をいう。以下、本実施形態に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0024】
(無機粒子)
無機粒子は、導電性粉末を含む。また、無機粒子は、セラミック粉末を含んでもよいし、含まなくてもよい。以下、無機粒子の各成分について詳細に説明する。
【0025】
(a)導電性粉末
導電性粉末としては、特に限定されず、金属粉末を用いることができ、例えば、Ni、Pd、Pt、Au、Ag、Cu、およびこれらの合金から選ばれる1種以上の粉末を用いることができる。これらの中でも、導電性、耐食性及びコストの観点から、Ni、またはその合金の粉末(以下、「ニッケル粉末」と称する場合がある)が好ましい。Ni合金としては、例えば、Mn、Cr、Co、Al、Fe、Cu、Zn、Ag、Au、PtおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素とNiとの合金が用いることができる。Ni合金におけるNiの含有量は、例えば、50質量%以上、好ましくは80質量%以上である。また、ニッケル粉末は、脱バインダー処理の際、バインダー樹脂の部分的な熱分解による急激なガス発生を抑制するために、数百ppm程度の元素Sを含んでもよい。
【0026】
また、導電性粉末としてニッケル粉末を用いる場合、その製造方法は特に限定されず、従来公知の湿式法や乾式法等を用いて製造することができる。例えば、ニッケル粉末は、CVD法、蒸発急冷法、ニッケル塩やニッケル水酸化物等を用いた水素還元法等のいわゆる乾式法によるニッケル粉末であってもよく、またニッケル塩溶液に対してヒドラジン等の還元剤を用いた湿式還元法等のいわゆる湿式法によるニッケル粉末であってもよい。その中でも、湿式還元法等のいわゆる湿式法によるニッケル粉を使用することが好ましい。例えば、湿式還元法は、比較的粒度分布が狭いニッケル粉末を製造できることが知られているが、従来のニッケル粉末の製造方法では、粗大粒子が一定の割合で含まれ、粗大粒子を完全に除去することが困難であった。
【0027】
導電性粉末の数平均粒径は、例えば、0.05μm以上0.3μm以下であり、好ましくは0.05μm以上0.3μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上0.2μm以下である。導電性粉末の平均粒径が上記範囲である場合、薄膜化した積層セラミックコンデンサ(積層セラミック部品)の内部電極用ペーストとして好適に用いることができる。本実施形態の導電性ペーストでは、後述する方法を用いることにより、導電性粉末の平均粒径が上記範囲であっても、粗大粒子数が十分に低減され、高い平滑性を有する乾燥膜を形成できる。
【0028】
なお、平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から求められる値であり、SEMで倍率10,000倍にて観察した画像から、複数の粒子一つ一つの粒径を測定して、得られる平均値(SEM平均粒径、個数平均)である。
【0029】
また、導電性粉末の比表面積は、例えば、2m/g以上50m/g以下であってもよく、2.5m/g以上40m/g以下であってもよく、3m/g以上20m/g以下であってもよい。導電性粉末の比表面積が大きくなると、表面活性が高くなり、分散性が低下して、粉末同士が凝縮しやすくなったり、フィルターに対する通液性が低下することがあるが、本実施形態の導電性ペーストでは、例えば、比表面積が4m/g以上、又は、5m/g以上であっても、粗大粒子を十分に低減することができる。なお、導電性粉末の比表面積の分析は、窒素ガス吸着によるBET法により求めることができる。
【0030】
導電性粉末の含有量は、導電性ペースト全体に対して、好ましくは30質量%以上70質量%未満であり、より好ましくは40質量%以上60質量%以下である。導電性粉末の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。また、導電性粉末の含有量は、50質量%を超えてもよい。
【0031】
(b)セラミック粉末
セラミック粉末としては、特に限定されず、例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極用ペーストである場合、適用する積層セラミックコンデンサの種類により適宜、公知のセラミック粉末が選択される。セラミック粉末としては、例えば、Ba及びTiを含むペロブスカイト型酸化物を用いることができ、好ましくはチタン酸バリウム(BaTiO)を含む。
【0032】
セラミック粉末としては、チタン酸バリウムを主成分とし、酸化物を副成分として含むセラミック粉末を用いてもよい。酸化物としては、Mn、Cr、Si、Ca、Ba、Mg、V、W、Ta、Nbおよび1種類以上の希土類元素の酸化物が挙げられる。また、セラミック粉末としては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)のBa原子やTi原子を他の原子、例えば、Sn、Pb、Zrなどで置換したペロブスカイト型酸化物強誘電体のセラミック粉末を用いてもよい。
【0033】
内部電極用の導電性ペーストとして用いる場合、セラミック粉末は、積層セラミックコンデンサ(電子部品)のグリーンシートを構成する誘電体セラミック粉末と同一組成の粉末を用いてもよい。これにより、焼結工程における誘電体層と内部電極層との界面での収縮のミスマッチによるクラック発生が抑制される。このようなセラミック粉末としては、上記以外に、例えば、ZnO、フェライト、PZT、BaO、Al、Bi、R(希土類元素)、TiO、Ndなどの酸化物が挙げられる。なお、セラミック粉末は、1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0034】
セラミック粉末の数平均粒径は、例えば、は0.01μm以上0.3μm以下である。また、セラミック粉末の数平均粒径は、導電性粉末の数平均粒径よりも小さくてもよく、例えば、導電性粉末の平均粒径の1/2以下であってもよい。セラミック粉末の数平均粒径が上記範囲であることにより、内部電極用ペーストとして用いた場合、十分に細く薄い均一な内部電極を形成することができる。なお、数平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から求められる値であり、SEMで倍率50,000倍にて観察した映像から、複数の粒子一つ一つの粒径を測定して、得られる平均値(SEM平均粒径、個数平均)である。
【0035】
セラミック粉末の比表面積は、例えば、5m/g以上100m/g以下であってもよく、10m/g以上80m/g以下であってもよく、10m/g以上60m/g以下であってもよい。導電性粉末の比表面積の分析は、窒素ガス吸着によるBET法により求めることができる。
【0036】
セラミック粉末の含有量は、導電性ペースト全体に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下である。また、セラミック粉末の上限は、15質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよく、6質量%以下であってもよい。
【0037】
また、セラミック粉末の含有量は、導電性粉末100質量部に対して、例えば、2質量部以上40質量部以下であり、30質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよく、12質量部以下であってもよい。
【0038】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、セルロース系樹脂を含むことが好ましい。セルロース系樹脂としては、特に限定されず、バインダー樹脂として用いられる公知のセルロース系樹脂(セルロース誘導体)を用いることができる。セルロース系樹脂としては、例えば、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース、メチルセルロース、プロピルセルロース、アセチルセルロースなどが挙げられる。なお、セルロース系樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0039】
セルロース系樹脂としては、エチルセルロース樹脂を含むことが好ましい。エチルセルロース樹脂を含む場合、有機溶剤への溶解性、燃焼分解性に優れる。また、導電性ペーストの製造工程において、無機粒子スラリーがエチルセルロース樹脂を含むことにより、無機粒子スラリーの分散性およびフィルタに対する通液性が向上し、粗大粒子数を精度よく低減することができる。
【0040】
セルロース系樹脂の、重量平均分子量(Mw)は、1万以上30万以下であってもよく、3万以上25万以下であってもよく、5万以上20万以下であってもよい。また、セルロース系樹脂の水酸基価は、特に限定されないが、好ましくは0.1mgKOH/g以上15mgKOH/g以下であり、より好ましくは0.5mgKOH/g以上7mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは1.5mgKOH/g以上3mgKOH/g以下である。なお、セルロース系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0041】
セルロース系樹脂の含有量は、0.1質量%以上3.0質量%以下であってもよく、0.5質量%以上2質量%以下であってもよく、1.0質量%以上2質量%以下であってもよい。セルロース系樹脂の含有量が上記範囲内で多いほど、無機粒子スラリーの通液性が向上する。
【0042】
また、バインダー樹脂は、アセタール系樹脂を含んでもよい。アセタール系樹脂としては、ブチラール系樹脂を含むことが好ましく、ポリビニルブチラール(PVB)を含むことがより好ましい。導電性ペーストがアセタール系樹脂を含む場合、グリーンシートとの接着強度をより向上させることができる。また、導電性ペーストの製造工程において、無機粒子スラリーがアセタール系樹脂を含むことにより、無機粒子スラリーの分散性およびフィルタに対する通液性が向上し、粗大粒子数を精度よく低減することができる。
【0043】
また、アセタール系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3万以上30万以下であってもよく、5万以上20万以下であってもよく、10万以上15万以下であってもよい。また、アセタール系樹脂のガラス転移点Tgは、50℃以上90℃以下であってもよく、60℃以上80℃以下であってもよい。なお、アセタール系樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
アセタール系樹脂の含有量は、0.5質量%以上3質量%以下であってもよく、0.5質量%以上2質量%以下であってもよく、1質量%以上2質量%以下であってもよい。アセタール系樹脂の含有量が上記範囲内で多いほど、無機粒子スラリーの通液性が向上する。
【0045】
なお、セルロース系樹脂及びアセタール系樹脂以外の樹脂をバインダー樹脂として含んでもよい。上記以外のバインダー樹脂としては、特に限定されず、公知の樹脂を用いることができ、例えば、アクリル系樹脂などが挙げられる。
【0046】
バインダー樹脂が、セルロース系樹脂およびアセタール系樹脂を含む場合、セルロース系樹脂およびアセタール系樹脂の合計含有量(100質量%)に対して、セルロース系樹脂を20質量%以上含んでもよく、40質量%以上含んでもよく、55質量%以上含んでもよい。樹脂の含有量が上記範囲である場合、無機粒子の分散性をより向上させ、かつ、乾燥膜とグリーンシート(基材)との接着強度を向上できる。なお、バインダー樹脂は、セルロース系樹脂とアセタール系樹脂が結合した樹脂を含有してもよい。この場合、セルロース系樹脂とアセタール系樹脂の各構成部位の比率が上記含有量及び配合比率を満たすことが好ましい。
【0047】
バインダー樹脂の含有量は、導電性ペースト全体に対して、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上5質量%以下である。バインダー樹脂の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。
【0048】
バインダー樹脂の含有量は、導電性粉末100質量部に対して、好ましくは1質量部以上20質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上10質量部以下である。
【0049】
(有機溶剤)
有機溶剤としては、特に限定されず、バインダー樹脂を溶解することができる公知の有機溶剤を用いることができる。有機溶剤は、無機粒子スラリーの粘度や、導電性ペーストの粘度が所望の範囲となるように、適宜、公知の有機溶剤から選択することができる。有機溶剤としては、例えば、テルペン系溶剤、アセテート系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0050】
テルペン系溶剤としては、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテートなどが挙げられる。
【0051】
アセテート系溶剤としては、イソボルニルアセテート、イソボルニルプロピネート、イソボルニルブチレート及びイソボルニルイソブチレートなど、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メトキシー3-メチルブチルアセテート、1-メトキシプロピル-2-アセテートなどのグリコールエーテルアセテート類、プロピレングリコールジアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテートなどのグリコールジアセテート類、シクロヘキサノールアセテートなどが挙げられる。
【0052】
エーテル系溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテルなどのエチレングリコールエーテル類、ジプロピレングリコールメチルーn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルーn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。
【0053】
ケトン系溶剤としては、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどが挙げられる。ケトン系溶剤を含む場合、分散性を損なうことなく、粘度の調整が可能であり、かつ乾燥性を向上することができる。
【0054】
炭化水素系溶剤としては、例えば、トリデカン、ノナン、シクロヘキサンなどを含む溶剤、ミネラルスピリット、ナフテン系溶剤などが挙げられ、中でもミネラルスピリットが好ましい。
【0055】
有機溶剤としては、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの有機溶剤を含むことにより、バインダー樹脂との相溶性に優れ、かつ、フィラーの分散性に優れる。
【0056】
また、有機溶剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。例えば、有機溶剤として、2種類以上を含む場合、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種と、炭化水素系溶剤とを含んでもよく、ジヒドロターピネオールと、炭化水素系溶剤とを含んでもよい。また、これらの有機溶剤とあわせて、メチルイソブチルケトン、及びジイソブチルケトンから選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
【0057】
有機溶剤(全体)の含有量は、導電性ペースト全量に対して、20質量%以上60質量%以下が好ましく、25質量%以上50質量%以下がより好ましい。有機溶剤の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。
【0058】
有機溶剤の含有量は、導電性粉末100質量部に対して、好ましくは40質量部以上120質量部以下であり、より好ましくは50質量部以上100質量部以下である。有機溶剤の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。
【0059】
炭化水素系溶剤の含有量は、有機溶剤全体に対して、10質量%以上50質量%以下であってもよく、20質量%以上40質量%以下であってもよい。
【0060】
(分散剤)
導電性ペーストは、分散剤を含むことが好ましく、酸系分散剤を含むことがより好ましい。酸系分散剤を含むことにより、無機粒子の分散性を向上させ、無機粒子スラリーの通液性を向上させることができる。また、無機粒子の再凝集を抑制することにより、導電性ペースト中の粗大粒子の個数を低減することができる。
【0061】
酸系分散剤としては、高級脂肪酸などのカルボン酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤、リン酸系分散剤、高分子界面活性剤等の酸性基を有する酸系分散剤などを含んでもよく、ポリカルボン酸系分散剤およびリン酸系分散剤の少なくとも一方を含むことが好ましい。また、ポリカルボン酸系分散剤は、グラフト鎖を有するポリカルボン酸であってもよく、ブラフト鎖ポリオキシアルキレンを有するポリカルボン酸であってもよい。リン酸系分散剤としては、リン酸ポリエステルであってもよい。分散剤は、1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0062】
酸系分散剤は、導電性ペースト全体に対して0.01質量%以上1.0質量%未満含有されることが好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下含有されてもよい。
【0063】
また、酸系分散剤の含有量は、例えば、導電性ペーストに含まれる無機粒子(導電性粉末およびセラミック粉末含む)の比表面積(m/g)に対する酸価(mgKOH/g)が、0.02mgKOH/m以上0.30mgKOH/m以下、好ましくは0.05mgKOH/m以上0.25mgKOH/m以下、より好ましくは0.08mgKOH/m以上0.20mgKOH/m以下の範囲となるように調整することができる。
【0064】
また、酸系分散剤がポリカルボン酸系分散剤を含む場合、ポリカルボン酸系分散剤の含有量は、例えば、導電性ペーストに含まれる無機粒子(導電性粉末およびセラミック粉末含む)の比表面積(m/g)に対する酸価(mgKOH/g)が、0.01mgKOH/m以上0.10mgKOH/m以下、好ましくは0.02mgKOH/m以上0.07mgKOH/m以下、より好ましくは0.02mgKOH/m以上0.06mgKOH/m以下の範囲となるように調整することができる。
【0065】
また、酸系分散剤がリン酸系分散剤を含む場合、リン酸系分散剤の含有量は、例えば、導電性ペーストに含まれる無機粒子(導電性粉末およびセラミック粉末含む)の比表面積(m/g)に対する酸価(mgKOH/g)が、0.01mgKOH/m以上0.20mgKOH/m以下、好ましくは0.05mgKOH/m以上0.17mgKOH/m以下、より好ましくは0.08mgKOH/m以上0.16mgKOH/m以下の範囲となるように調整することができる。
【0066】
酸系分散剤の含有量を上記範囲内で調整することにより、無機粒子の分散性を向上させ、無機粒子スラリーの通液性をより向上させたり、無機粒子の再凝集をより抑制することができる。なお、酸価(mgKOH/g)は、例えば、JIS K0070に準拠して電位差滴定法により求めることができる。
【0067】
また、無機粒子全体の比表面積に対する分散剤の酸価は、以下の方法で算出することができる。すなわち、分散剤の酸価(例えば、XmgKOH/g)に、導電性ペースト全体に対する分散剤の含有量(例えば、x質量%)を乗じた値(X×x)を、導電性ペーストに含まれる導電性粉末及びセラミック粉末のそれぞれの比表面積(例えば、A m/g、B m/g)に、それぞれの導電性ペースト全体に対する含有割合(例えば、a質量%、b質量%)を乗じて、それらを合計した値(A×a+B×b)で除して(すなわち、X×y/(A×a+B×b))得られる値である。
【0068】
また、導電性ペーストは、酸系分散剤以外の分散剤を含んでもよく、例えば、塩基系分散剤、非イオン系分散剤、両性分散剤などを含んでもよい。
【0069】
分散剤は、導電性ペースト全体に対して、例えば、0.01質量%以上3質量%以下含有される。分散剤の含有量の上限を含む範囲は、2質量%以下であってもよく、1質量%以下であってもよく、0.6質量%以下であってもよい。
【0070】
(その他の添加剤)
本実施形態の導電性ペーストは、必要に応じて、上記の成分以外のその他の添加剤を含んでもよい。その他の添加剤としては、例えば、消泡剤、可塑剤、増粘剤などの従来公知の添加物を用いることができる。
【0071】
(導電性ペーストの特性)
(1)粗大粒子数
本実施形態の導電性ペーストは、走査型電子顕微鏡により観察される粒子径が導電性粉末の数平均粒径の2倍を超える導電性粉末(以下、単に「粗大粒子」ともいう。)の個数割合が、例えば、導電性粉末の全個数に対して50ppm以下であり、導電性ペーストに含まれる粗大粒子(単独の一次粒子、及び連結粒子を含む)を非常に低減することができる。また、粗大粒子の数は、40ppm以下であってもよく、20ppm以下であってもよく、10ppm以下であってもよく、5ppm以下であってもよく、0ppmであってもよい。
【0072】
粗大粒子の個数割合は、例えば、以下の方法で算出することができる。
【0073】
まず、導電性ペースト5mgを有機溶剤で希釈(例:ジヒドロターピネオールで4000倍に希釈)して、サンプル液を調製して、そのサンプル液を、導電性粉末の数平均粒径の2倍以下の孔径を有するフィルター(例、導電性粉末の数平均粒径が0.2μmの場合は、0.4μmのフィルター)で濾過して、一部の微細な粒子を除いた。その後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、倍率5000倍でフィルター上の導電性粒子を観察し、10視野の撮影をした。撮影した画像から、粗大粒子(1次粒子、及び連結粒子)をカウントし、以下の(式1)により、粗大粒子の個数割合を算出した。
【0074】
粗大粒子の個数割合 =(カウントされた粗大粒子数)/(観察した視野面積に対応する導電性粉末の個数)・・・(式1)
【0075】
なお、観察した視野面積に対応する導電性粉末の個数は、粗大粒子のカウントに用いられた導電性粉末(全体)の個数を意味し、以下の(式2)から算出される。
【0076】
観察した視野面積に対応する導電性粉末の個数 =(サンプル調製に用いた導電性粉末の個数)×(観察した視野面積)/(濾過フィルターの総面積)・・・(式2)
【0077】
なお、サンプル調製に用いた導電性粒子の個数は、サンプル調製に用いた導電性ペーストの重量(a、単位:g)、導電性ペースト中の導電性粉末の濃度(重量パーセント濃度)(b、単位:重量%)、導電性粉末の真密度(c、単位:g/cm)及び、導電性粉末の数平均粒径(d、単位:cm)を用いて、以下の(式3)から算出される。
【0078】
サンプル調製に用いた導電性粒子の個数
=(a×b/c)÷(4/3π(1/2d))・・・(式3)
【0079】
なお、導電性粉末がニッケル粉末の場合、真密度は8.9g/cmとなる。また、サンプル調製に用いる有機溶剤は、導電性ペーストの主溶剤(最も含有量が多い溶剤)を用いてもよい。
【0080】
観察した画像の面積(観察視野面積)で濾過した導電性ペースト量は、例えば、導電性ペースト0.02μg以上であってもよい。なお、導電性ペースト量、フィルターの面積、視野数に応じて評価する導電性ペースト量を変更しても良いが、量が少ないと検出される粗大粒子数が減り、バラつきが大きくなることがあるため、上記の導電性ペースト量、又は、それ以上とすることが好ましい。また、フィルターの面積を小さくして、全視野を観察できる場合は、評価に用いた導電性ペースト内の粗大粒子数をより正確に求めることができる。
【0081】
また、粗大粒子の数は、導電性ペーストを塗布・乾燥させ、SEM観察を行って、直接、粗大粒子数を測定してもよい。例えば、倍率5000倍のSEM画像を10視野得て、画像解析ソフトを用いて、カウントしてもよい。この場合、カウントされた粗大粒子数を、観察された導電性粉末全体の個数で除することにより、粗大粒子の個数割合を算出できる。
【0082】
また、本実施形態の導電性ペーストは、例えば、走査型電子顕微鏡により観察される粒子径が0.4μm超の導電性粉末の個数割合が、40ppm以下であってもよく、20ppm以下であってもよく、10ppm以下であってもよく、5ppm以下であってもよく、0ppmであってもよい。
【0083】
(2)乾燥膜の表面粗さ
また、導電性ペーストを印刷して形成される乾燥膜の表面粗さ(算術平均高さSa)は、例えば、0.1μm以下であり、0.08μm以下であってもよく、0.06μm以下であってもよく、0.05μm以下であってもよい。なお、上記導電性ペーストの表面粗さは、例えば、実施例に記載した方法(エビデント社製OLS5000を用いて、ISO 25178の規格に基づいて算術平均高さSaを測定する方法)等により測定することができる。
【0084】
本実施形態に係る導電性ペーストは、積層セラミックコンデンサなどの電子部品に好適に用いることができる。積層セラミックコンデンサは、例えば、誘電体グリーンシートを用いて形成される誘電体層及び導電性ペーストを用いて形成される内部電極層を有する。
【0085】
例えば、本実施形態の導電性ペーストを用いて形成された内部電極層の厚さは、例えば、1.5μm以下であってもよく、1μm以下であってもよく、0.7μm以下であってもよい。本実施形態の導電性ペーストは、分散性が良好であり、かつ、粗大粒子数が少ないため、薄膜化した内部電極層を信頼性高く製造することができる。
【0086】
[導電性ペーストの製造方法]
以下、本実施形態における導電性ペーストの製造方法について説明する。図3は、導電性ペーストの製造方法の一例を示す図である。図3に示すように、本実施形態における導電性ペーストの製造方法は、以下の(1)~(3)の工程を備える。
【0087】
(1)無機粒子、バインダー樹脂、分散剤、及び、有機溶剤を混合して、無機粒子スラリーを得る、第1工程(S1)
(2)前記無機粒子スラリーを、1.0μm以下の濾過精度を有するフィルターにより濾過する、第2工程(S2)
(3)濾過後の無機粒子スラリーと、バインダー樹脂、及び、有機溶剤とを、混錬する、第3工程(S3)
【0088】
なお、図3は、導電性ペーストの製造方法の一例を示しており、これらの方法に限定するものではない。本実施形態の導電性ペーストは、積層セラミックコンデンサの内部電極を形成する用途として好適に用いられる。以下、各工程の詳細について説明する。
【0089】
(第1工程:S1)
第1工程(S1)では、無機粒子、バインダー樹脂、分散剤、及び、有機溶剤を混合して、無機粒子スラリーを得る(ステップS1)。無機粒子スラリーには、例えば、粗大粒子(例、粒子径が0.4μmを超える無機粒子)が含まれる。粗大粒子は、後述する第2工程(S2)で、無機粒子スラリーから取り除かれる。
【0090】
第1工程(S1)で得られる無機粒子スラリーは、室温(25℃)における、せん断速度4s-1での粘度が20Pa・s以下である。無機粒子スラリーのせん断速度4s-1の粘度は、例えば、10Pa・s以下であってもよく、5Pa・s以下であってもよい。また、無機粒子スラリーのせん断速度4s-1の粘度の下限は、特に限定されず、粘度が低い方が通液性が向上しやすい。また、無機粒子スラリーのせん断速度4s-1の粘度の下限は、例えば、1Pa・s以上、又は、2Pa・s以上であっても、粗大粒子数を十分に低減することができる。
【0091】
また、第1工程(S1)で得られる無機粒子スラリーは、室温(25℃)における、せん断速度40s-1での粘度が5Pa・s以下であってもよく、1Pa・s以下であってもよい。また、また、無機粒子スラリーのせん断速度40s-1の粘度の下限は、特に限定されず、粘度が低い方が通液性が向上しやすい。また、無機粒子スラリーのせん断速度40s-1の粘度の下限は、例えば、0.3Pa・s以上、又は、0.4Pa・s以上であっても、粗大粒子数を十分に低減することができる。
【0092】
無機粒子スラリーの粘度は、無機粒子スラリーに含まれる各成分の種類および含有量を調整することにより、上記範囲に制御することができる。本実施形態の製造方法では、第1工程(S1)で得られる無機粒子スラリーの組成、及び粘度特性を調整することにより、無機粒子の分散性を向上させつつ、無機粒子の再凝集を抑制することにより、第2工程(S2)にて濾過精度の高いフィルターの使用を可能とする。
【0093】
無機粒子スラリーに含まれる無機粒子としては、導電性粉末を含んでもよく、導電性粉末とセラミック粉末の両方を含んでもよい。無機粒子は、単独の一次粒子、及び、一次粒子が連結して形成された連結粒子を含む。また、原料として用いる導電性粉末は、粗大粒子を含んでもよく、例えば、導電性粉末の数平均粒径の2倍を超える粒子径を有する粒子を50ppm超含んでもよく、70ppm以上含んでもよく、90ppm以上含んでもよい。また、本明細書において、粗大粒子とは、一次粒子(単独)の粒子径が基準粒径に対して大きな粒子だけでなく、粒径の小さい一次粒子が連結して形成された連結粒子(図2参照)の粒子径が基準粒径に対して大きな粒子を含む。
【0094】
無機粒子スラリーは、バインダー樹脂を含む。無機粒子スラリーに含まれるバインダー樹脂としては、セルロース系樹脂を含むことが好ましく、セルロース系樹脂とアセタール系樹脂の両方を含むことがより好ましい。セルロース系樹脂は、無機粒子スラリー全体に対して、例えば、0.1質量%以上3.0質量%以下含まれてもよく、0.2質量%以上2.0質量%以下含まれてもよく、0.2質量%以上1.5質量%以下含まれてもよい。アセタール系樹脂は、無機粒子スラリー全体に対して、例えば、0.5質量%以上3質量%以下含まれてもよく、0.5質量%以上2質量%以下含まれてもよい。
【0095】
また、無機粒子スラリーに含まれるセルロース系樹脂の含有量は、無機粒子の比表面積に対して、0.5g/m以上5g/m以下であることが好ましく、0.5g/m以上3g/m以下であってもよく、1g/m以上3g/m以下であってもよい。セルロース系樹脂を上記範囲で含む場合、無機粒子の分散性がより向上する。また、無機粒子スラリーに含まれるセルロース系樹脂の含有量は、導電性粉末の比表面積に対して、0.5g/m以上5g/m以下であってもよく、0.5g/m以上3g/m以下であってもよく、1g/m以上3g/m以下であってもよい。
【0096】
また、混合に用いられる各成分は、上述した導電性ペーストに含まれる各成分と同様のものを用いることができる。また、最終的に得られる導電性ペーストに含まれる成分のうち、バインダー樹脂の一部および有機溶剤の一部を除く、すべての成分を分散処理(混合)して、無機粒子スラリーを得てもよい。また、バインダー樹脂については、最終的に得られる導電性ペーストに含まれるアセタール系樹脂の全量を用いて分散処理(混合)し、無機粒子スラリーを得てもよい。
【0097】
混合の方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。混合に用いる装置としては、高圧ホモジナイザー、混合撹拌機、吸引分散撹拌機、ビーズミル、ボールミル、3本ロールミルなどが挙げられ、例えば、高圧ホモジナイザーを用いてもよい。高圧ホモジナイザーは、高速ジェット流を発生させるために微細なオリフィスを利用するものである。高圧ホモジナイザーのオリフィス径は、特に限定されないが、例えば、0.05~0.2mmであってもよい。また、高圧ホモジナイザーにおける条件(例、分散パス回数)は、要求される粒子径、粒度分布等によって適宜選択することができる。なお、分散パス回数は、ペーストを循環させるような装置の構成で行ってもよい。また、無機粒子が凝集体等を形成して分散が困難な場合は、3本ロールミルを用いて分散処理してもよい。なお、第1工程(S1)は、すべての成分を1回で混合して、無機粒子スラリーを得てもよいし、成分の一部を複数回に分けて混合して、無機粒子スラリーを得てもよい。また、混合の際は、1又は複数の装置を用いてもよい。例えば、分散装置(例、3本ロールミル)により、有機溶剤の一部を除く成分を分散処理をした後、有機溶剤をさらに添加、攪拌して、上述した範囲の粘度を有する無機粒子スラリーを得てもよい。
【0098】
(第2工程:S2)
第2工程(S2)では、無機粒子スラリーを、1.0μm以下の濾過精度を有するフィルターにより濾過する。濾過精度の比較的高いフィルターを使用することにより、基準粒径に対して大きな粗大粒子を除去することができる。
【0099】
第2工程で用いるフィルターは、濾過精度が1.0μm以下であってもよく、0.8μm以下であってもよく、0.6μm以下であってもよく、0.4μm以下であってもよい。濾過精度は、目的とする無機粒子の粒径によって、適宜選択することができる。フィルターの濾過精度の下限は、例えば、0.1μm以上である。なお、濾過精度とは、一般にはフィルターを通すことにより除去できる粒子の大きさを表し、例えば、流体が水で、ファインダストを10インチカートリッジで所定の流量で濾過した場合に99%以上粒子を捕捉できる粒子径で表してもよい。また、その構造上濾過精度で示された値よりも小さい粒子も捕捉可能である。
【0100】
また、第2工程において、フィルターにて濾過する際の通液量は、例えば内蔵フィルター全長25mmのフィルターを用いて、差圧0.39MPaで濾過した場合、50g/min以上であってもよく、100g/min以上であってもよく、300g/min以上であってもよい。通液量が上記範囲である場合、生産性高く導電性ペーストを製造することができる。
【0101】
(第3工程:S3)
第3工程(S3)では、濾過後の無機粒子スラリーと、バインダー樹脂、及び、有機溶剤とを、混合する。混合後、粗大粒子数の低減された、上記の導電性ペーストを得ることができる。なお、本工程において、バインダー樹脂、及び、有機溶剤以外の成分(例えば、セラミック粉末、他の添加剤など)を添加してもよい。
【0102】
第3工程(S3)で添加するバインダー樹脂は、セルロース系樹脂を含んでもよく、セルロース系樹脂と、アセタール系樹脂とを含んでもよく、セルロース系樹脂(例:エチルセルロース)単独でもよい。
【0103】
第3工程(S3)で添加する有機溶剤は、特に限定されないが、第1工程(S1)で添加する有機溶剤と同一の種類であってもよく、例えば、テルペン系溶剤を含んでもよく、テルペン系溶剤単独でもよい。
【0104】
混合の方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。混合は、例えば、上記の各成分を、3本ロールミル、ボールミル、ミキサーなどを用いて、攪拌・混練することにより行うことができる。
【0105】
[積層セラミックコンデンサ]
以下、本発明の積層セラミックコンデンサの実施形態について、図面を参照しながら説明する。図面においては、適宜、模式的に表現することや、縮尺を変更して表現することがある。また、部材の位置や方向などを、適宜、図4などに示すXYZ直交座標系を参照して説明する。このXYZ直交座標系において、X方向およびY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向(上下方向)である。
【0106】
図4A及びBは、積層セラミックコンデンサ1を示す図である。積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層12及び内部電極層11を交互に積層したセラミック積層体10と外部電極20とを備える。
【0107】
以下、上記導電性ペーストを使用した積層セラミックコンデンサの製造方法について説明する。まず、セラミックグリーンシート上に、導電性ペーストを印刷し、乾燥して、乾燥膜を形成する。この乾燥膜を上面に有する複数のセラミックグリーンシートを、圧着により積層させて積層体を得た後、積層体を焼成して一体化することにより、内部電極層11と誘電体層12とが交互に積層したセラミック積層体10を作製する。その後、セラミック積層体10の両端部に一対の外部電極20を形成することにより積層セラミックコンデンサ1が製造される。以下に、より詳細に説明する。
【0108】
まず、未焼成のセラミックシートであるグリーンシートを用意する。このグリーンシートとしては、例えば、チタン酸バリウム等の所定のセラミックの原料粉末に、ポリビニルブチラール等のバインダー樹脂とターピネオール等の溶剤とを加えて得た誘電体層用ペーストを、PETフィルム等の支持フィルム上にシート状に塗布し、乾燥させて溶剤を除去したものが挙げられる。なお、グリーンシートからなる誘電体層の厚みは、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサの小型化の要請の観点から、0.05μm以上3μm以下が好ましい。
【0109】
次いで、グリーンシートの片面に、上述の導電性ペーストを印刷して塗布し、乾燥して、グリーンシートの片面に乾燥膜を形成したものを複数枚、用意する。なお、導電性ペーストから形成される乾燥膜の厚みは、内部電極層11の薄層化の要請の観点から、乾燥後1μm以下とすることが好ましい。
【0110】
次いで、支持フィルムから、グリーンシートを剥離するとともに、グリーンシートとその片面に形成された乾燥膜とが交互に配置されるように積層した後、加熱・加圧処理により積層体を得る。なお、積層体の両面に、導電性ペーストを塗布していない保護用のセラミックグリーンシートを更に配置する構成としてもよい。
【0111】
次いで、積層体を所定サイズに切断してグリーンチップを形成した後、グリーンチップに対して脱バインダー処理を施し、還元雰囲気下において焼成することにより、積層セラミック焼成体(セラミック積層体10)を製造する。なお、脱バインダー処理における雰囲気は、大気またはNガス雰囲気にすることが好ましい。脱バインダー処理を行う際の温度は、例えば200℃以上400℃以下である。また、脱バインダー処理を行う際の、上記温度の保持時間を0.5時間以上24時間以下とすることが好ましい。また、焼成は、内部電極層に用いる金属の酸化を抑制するために還元雰囲気で行われ、また、積層体の焼成を行う際の温度は、例えば、1000℃以上1350℃以下であり、焼成を行う際の、温度の保持時間は、例えば、0.5時間以上8時間以下である。
【0112】
グリーンチップの焼成を行うことにより、セラミックグリーンシート中の有機バインダーが完全に除去されるとともに、セラミックの原料粉末が焼成されて、セラミック製の誘電体層12が形成される。また乾燥膜中の有機ビヒクルが除去されるとともに、ニッケル粉末またはニッケルを主成分とする合金粉末が焼結もしくは溶融、一体化されて、内部電極層11が形成され、誘電体層12と内部電極層11とが複数枚、交互に積層された積層セラミック焼成体が形成される。なお、酸素を誘電体層の内部に取り込んで信頼性を高めるとともに、内部電極の再酸化を抑制するとの観点から、焼成後の積層セラミック焼成体に対して、アニール処理を施してもよい。
【0113】
そして、作製した積層セラミック焼成体に対して、一対の外部電極20を設けることにより、積層セラミックコンデンサ1が製造される。例えば、外部電極20は、外部電極層21及びメッキ層22を備える。外部電極層21は、内部電極層11と電気的に接続する。なお、外部電極20の材料としては、例えば、銅やニッケル、またはこれらの合金が好適に使用できる。なお、電子部品は、積層セラミックコンデンサ以外の電子部品を用いることもできる。
【実施例0114】
以下、本発明を実施例と比較例に基づき詳細に説明するが、本発明は実施例によって何ら限定されるものではない。
【0115】
[評価方法]
(粘度測定)
導電性ペーストの粘度を、レオメーター(株式会社アントンパール・ジャパン製:レオメーターMCR302)を用いて測定した。粘度は、コーン角度1°、直径25mmのコーンプレートを用いて、ずり速度(せん断速度)4sec-1、ずり速度40sec-1の条件で測定した場合の値を用いた。
【0116】
(粗大粒子の個数)
導電性ペースト中の粗大粒子の個数は、以下の方法により測定した。
【0117】
導電性ペースト5mgをジヒドロターピネオール20gで希釈して、その溶液を0.4μmのメンブレンフィルター(フィルター面積:1075mm)で濾過した際に、フィルター表面に捕集された粗大粒子をSEM(日本電子製、JSM-IT100)で観察した。倍率5000倍で10視野(合計の視野面積0.0049mm)観察し、粒径0.4μmより大きい一次粒子と一次粒子が連結した連結粒子を粗大粒子としてその数をカウントした。なお、観察した視野面積に供されたペースト量を、濾過に用いた導電性ペースト量と濾過フィルターの総面積に対する観察した視野面積の割合から算出することで、0.023μgあたりの粒径0.4μm超の導電性粉末数を得た。
【0118】
(導電性粉末の数平均粒径)
導電性ペースト中の導電性粉末の数平均粒径は、SEMによる観察像の所定範囲内に存在する100個の導電性粉末の一次粒子の粒径を測定した平均値である。なお、導電性粉末の平均粒径は、有効数値1桁で示した。
【0119】
(乾燥膜の表面粗さ)
ガラス基板(2inch)上に、サンプルを塗布し(GAP厚=10μm)ベルト炉内の最大温度120~150℃、大気雰囲気にて乾燥させることにより、膜厚1~3μmの乾燥膜を作製した。導電性ペーストの分散性が良好な場合、乾燥膜の表面は平滑な膜となる。分散性に劣る場合は、導電性ペースト内に凝集を生じ、乾燥膜の表面が荒れ、表面
の平滑性が低下する。そこで、レーザ顕微鏡(エビデント社製OLS5000)を用いて、作製した乾燥膜の表面粗さSa(算術平均高さ)を、ISO 25178の規格に基づいて測定した。表面粗さSa(算術平均高さ)の値は、小さいほど、乾燥膜の表面が平滑であることを示す。
【0120】
[使用材料]
(導電性粉末)
導電性粉末としてはニッケル粉末a(数平均粒径0.2μm、比表面積4.2m/g)、及び、ニッケル粉末b(数平均粒径0.2μm、比表面積5.4m/g)を使用した。
【0121】
(セラミック粉末)
セラミック粉末としては、チタン酸バリウム(BaTiO、数平均粒径0.06μm、比表面積23.4m/g)を使用した。
【0122】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、エチルセルロース樹脂(EC)を使用した。
【0123】
(分散剤)
酸系分散剤として、グラフト鎖としてポリオキシアルキレンを有するポリカルボン酸(酸系A)、及び、リン酸系分散剤であるリン酸ポリエステル(酸系B)を用いた。
【0124】
(有機溶剤)
有機溶剤としては、ジヒドロターピネオール(DHT)及びミネラルスピリット(MSA)を用いた。
【0125】
[実施例1]
導電性粉末(Ni粉末)、セラミック粉末(BaTiO)、分散剤(酸系Aおよび酸系B)、バインダー樹脂(EC、PVB)、及び有機溶剤(DHT、MA)を表2の第1工程にて示される量(全体で100質量%)で配合し、高圧ホモジナイザーにて分散処理して、無機粒子スラリーを得た(第1工程:S1)。
【0126】
その後、得られた無機粒子スラリーを、濾過精度が0.6μmのフィルターにより濾過を行い、粗大粒子の少なくとも一部の除去を行った(第2工程:S2)。また、フィルター通液性を表4に示す。
【0127】
その後、濾過処理を行った無機粒子スラリーに、バインダー樹脂、及び有機溶剤を、表4の第3工程にて示される量で配合し、ミキサーを用いて混合させて導電性ペーストを作製した(第3工程:S3)。
【0128】
得られた導電性ペーストの特性(粘度、表面粗さ、粗大粒子数)を測定した。導電性ペーストの各成分の配合比率及びその結果を表1に示す。
【0129】
[実施例2~8]
実施例2~8は、第1工程、第3工程で用いる各材料の種類および含有量を表2、4に示されるように変更した以外は、実施例1と同様に導電性ペーストを作製して、評価した。導電性ペーストの各材料の含有量、及び、評価結果を表1に示す。また、表3に、第1工程で添加した無機粒子の比表面積に対する、分散剤の酸価、およびバインダー樹脂の重量について示す。
【0130】
[比較例1~3]
比較例1は、各成分を表1で示される量で配合して、3本ロールミルで分散処理(第1工程)のみして、導電性ペーストを作製し、評価した(第2工程、第3工程を行わない)。
【0131】
比較例2は、第1工程で作製する無機粒子スラリーの状態への樹脂の効果を確認するため、使用樹脂をエチルセルロースのみからポリビニルブチラールに変更した以外は実施例3と同様の条件で高圧ホモジナイザーで分散処理して、無機粒子スラリーを得た。得られた無機粒子スラリーは、分散性が低く、濾過が困難であったため、第2工程以降は行わなかった。参考に、中間材である無機粒子スラリーを導電性ペーストとして評価を行った。
【0132】
比較例3は、第1工程で作製する無機粒子スラリーの状態への樹脂の効果を確認するため、第1工程で樹脂成分を除いた以外は実施例1と同様の条件で高圧ホモジナイザーで分散処理して、無機粒子スラリーを得た。得られた無機粒子スラリーは、分散性が低く、濾過が困難であったため、第2工程以降は行わなかった。実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【0136】
【表4】
【0137】
(評価結果)
実施例1~8の導電性ペーストは、粘度が比較的高いにも関わらず、粗大粒子数が低減された。また、乾燥膜の表面粗さも十分小さく、分散性に優れることが示された。
【0138】
一方、比較例1~3の導電性ペーストでは、第2工程(濾過)を行っていないため、粗大粒子数が50ppmを超えた。また、比較例1では、第1工程後に得られた無機粒子スラリー(導電性ペースト)の粘度が高く、フィルターにて濾過することができなかった。比較例2では、第1工程で、バインダー樹脂を添加しなかったため、無機粒子の分散性が悪く、フィルターにて濾過することができなかった。比較例3では、第1工程で、エチルセルロース樹脂を添加しなかったため、ペースト粘度は低いものの、無機粒子の分散性が悪く、フィルターにて濾過することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の導電性ペーストを積層セラミックコンデンサの内部電極の形成に用いた場合、信頼性の高い積層セラミックコンデンサを生産性高く得ることができる。よって、本発明の導電性ペーストは、特に携帯電話やデジタル機器などの小型化が進む電子機器のチップ部品である積層セラミックコンデンサの内部電極用として好適に用いることができる。
【0140】
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態などで説明した態様に限定されるものではない。上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態などで引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0141】
1 積層セラミックコンデンサ
10 セラミック積層体
11 内部電極層
12 誘電体層
20 外部電極
21 外部電極層
22 メッキ層
図1
図2
図3
図4