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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025083775
(43)【公開日】2025-06-02
(54)【発明の名称】三次元形状計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20250526BHJP
   G01S 17/894 20200101ALI20250526BHJP
   G01B 9/02091 20220101ALI20250526BHJP
【FI】
G01B11/24 D
G01S17/894
G01B9/02091
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023197357
(22)【出願日】2023-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】中村 篤志
(72)【発明者】
【氏名】古敷谷 優介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文彦
(72)【発明者】
【氏名】張 超
【テーマコード(参考)】
2F064
2F065
5J084
【Fターム(参考)】
2F064AA09
2F064BB07
2F064CC04
2F064EE02
2F064FF00
2F064GG22
2F064GG32
2F064HH03
2F064HH08
2F064JJ01
2F065AA53
2F065FF12
2F065FF32
2F065FF52
2F065GG08
2F065GG18
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065PP15
5J084AA13
5J084AB17
5J084AD01
5J084AD08
5J084BA36
5J084BA40
5J084BB14
5J084BB17
5J084CA03
5J084CA31
5J084CA67
5J084EA04
5J084EA05
(57)【要約】
【課題】被測定物の3次元的な外観形状または内部構造を高い奥行分解能で高速に測定することができる三次元形状計測システム及び方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る三次元形状計測システムは、光強度が均一と見なせる2次元分布を有する超短光パルス列Ptを被測定物に照射する第1光源11と、繰返し周期が検査用の超短光パルス列Ptと異なり、パルス幅が超短光パルス列Ptより狭く、かつ光強度が均一と見なせる2次元分布を有する超短光パルス列Psを出力する第2光源12と、被測定物によって反射された超短光パルス列Pt’と超短光パルス列Psとを合波する干渉部13と、干渉光Piを受光する2次元フォトディレクタアレイ14と、干渉光Piから被測定物によって反射された超短光パルス列Pt’について、光強度の2次元分布の時間変化を測定し、被測定物の3次元形状を計算する演算部15と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光強度が均一と見なせる2次元分布を有する検査用の超短光パルス列を被測定物に照射する第1光源と、
繰返し周期が前記検査用の超短光パルス列と異なり、パルス幅が前記検査用の超短光パルス列より狭く、かつ光強度が均一と見なせる2次元分布を有するサンプリング用の超短光パルス列を出力する第2光源と、
前記被測定物によって反射された前記検査用の超短光パルス列と前記サンプリング用の超短光パルス列とを合波する干渉部と、
前記干渉部で合波された干渉光を受光する2次元フォトディレクタアレイと、
前記2次元フォトディレクタアレイが出力する前記干渉光の信号から前記被測定物によって反射された前記検査用の超短光パルス列について、光強度の2次元分布の時間変化を測定し、前記被測定物の3次元形状を計算する演算部と、
を備える三次元形状計測システム。
【請求項2】
前記干渉光を偏波分離し、それぞれの偏波を前記2次元フォトディレクタアレイに受光させる偏波分離部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の三次元形状計測システム。
【請求項3】
所望の測定距離レンジをΔz、光速をc、前記検査用の超短光パルス列の繰り返し周期をT、前記サンプリング用の超短光パルス列の繰り返し周期をT+ΔT、前記検査用の超短光パルス列のパルス幅と前記サンプリング用の超短光パルス列のパルス幅の差をΔtとしたとき、式(C1)を満たすようにT、ΔT及びΔtが設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の三次元形状計測システム。
【数C1】
【請求項4】
光強度が均一と見なせる2次元分布を有する検査用の超短光パルス列を被測定物に照射すること、
繰返し周期が前記検査用の超短光パルス列と異なり、パルス幅が前記検査用の超短光パルス列より狭く、かつ光強度が均一と見なせる2次元分布を有するサンプリング用の超短光パルス列を出力すること、
前記被測定物によって反射された前記検査用の超短光パルス列と前記サンプリング用の超短光パルス列とを合波して干渉させて干渉光とすること、
前記干渉光を2次元フォトディレクタアレイで受光すること、及び
前記2次元フォトディレクタアレイが出力する前記干渉光の信号から前記被測定物によって反射された前記検査用の超短光パルス列について、光強度の2次元分布の時間変化を測定し、前記被測定物の3次元形状を計算すること、
を行う三次元形状計測方法。
【請求項5】
前記干渉光を偏波分離し、それぞれの偏波を前記2次元フォトディレクタアレイで受光することを特徴とする請求項4に記載の三次元形状計測方法。
【請求項6】
所望の測定距離レンジをΔz、光速をc、前記検査用の超短光パルス列の繰り返し周期をT、前記サンプリング用の超短光パルス列の繰り返し周期をT+ΔT、前記検査用の超短光パルス列のパルス幅と前記サンプリング用の超短光パルス列のパルス幅の差をΔtとしたとき、式(C1)を満たすようにT、ΔT及びΔtを設定することを特徴とする請求項4又は5に記載の三次元形状計測方法。
【数C1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被測定物の3次元的な外観形状または内部構造を測定する三次元形状計測システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インダストリー4.0の台頭と共に、スマートファクトリーの重要性が高まっている。このような自律した生産システムの実現の一環として、機械が工業製品の外観検査を実施する過程があり、そこで3次元(3D)形状のレーザ計測の利用が拡大している。また、高品質で繊細な形状や表面等を評価するためには高精細で信頼性の高い検査機器が必要であり、こうした役割も3Dレーザ計測が担うことが期待されている。
【0003】
特に高い測定精度が要求される工業製品の外観検査においては、従来はノギスやマイクロメータ等による接触方式が用いられていた。ところが、これらの手法は人的労働に依存しており、長い計測時間が伴い、効率も低い。そこで近年、形状計測は超音波、高周波、光波等を用いた非接触方式に移行するようになった。これらの中で光波を用いた計測手法は高精細な3D形状を取得する能力を有しており、学術的な関心の高まりと共に、超スマート社会の実現に資する技術として産業界で注目を集めている。
【0004】
そして、3Dレーザ計測の中でも、2次元(フラッシュ)LiDARは可動走査部を持たず、対象物全体を照射して、2Dフォトディテクタアレイにより各画素に対応する距離を直接的に測定して、3D画像を出力する。他のLiDARと異なり、本技術は測定範囲の全ての位置を1度の計測でカバーすることができ、各検出で全体的なマッピングと環境認識を達成できる。したがって、生産ラインのタクトタイム内で迅速に部品の外観検査を行うことが期待できる。
【0005】
前述のLiDARは物体の外観検査を行う技術であるのに対し、被測定物の内部の検査を実施する需要も当然ながら存在する。OCTはOptical Coherence Tomography(光干渉断層撮影)(例えば、非特許文献4-8を参照。)の略語で、光の干渉性を利用して試料内部の構造を高分解能・高速で撮影する技術である。近赤外線を照射して非接触・非侵襲で撮像できるため、被爆の心配もなく、人体の様々な器官(眼底、皮下組織)の断層撮像に用いられている(例えば、非特許文献5-7を参照。)。近年はその利用領域が大幅に拡大し、産業、医療、生体等の様々な分野で利用されている(例えば、非特許文献8を参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Lange, Robert, and Peter Seitz. “Solid-state time-of-flight range camera”. IEEE Journal of quantum electronics 37.3 (2001): 390-397.
【非特許文献2】Stoppa, David, et al. “A Range Image Sensor Based on 10-um Lock-In Pixels in 0.18-um CMOS Imaging Technology”. IEEE journal of solid-state circuits 46.1 (2010): 248-258.
【非特許文献3】C. S. Bamji, P. O’Connor, T. Elkhatib, S. Mehta, B. Thompson, L. A. Prather, D. Snow, O. C. Akkaya, A. Daniel, A. D. Payne, T. Perry, M. Fenton, and V.-H. Chan, “A 0.13 μm CMOS system-on-chip for a 512×424 time-of-flight image sensor with multi-frequency photo-demodulation up to 130 MHz and 2 GS/s ADC”, IEEE J. Solid-State Circuits, vol. 50, pp. 303-319, 2015.
【非特許文献4】Fujimoto, James, and Eric Swanson. “The development, commercialization, and impact of optical coherence tomography”. Investigative ophthalmology & visual science 57.9 (2016): OCT1-OCT13.
【非特許文献5】Fujimoto, James G., et al. “Optical coherence tomography: an emerging technology for biomedical imaging and optical biopsy”. Neoplasia 2.1-2 (2000): 9-25.
【非特許文献6】Yamashita, Shinji, and Yuya Takubo. “Wide and fast wavelength-swept fiber lasers based on dispersion tuning and their application to optical coherence tomography”. Photonic Sensors 3 (2013): 320-331.
【非特許文献7】Gambichler, Thilo, et al. “Applications of optical coherence tomography in dermatology”. Journal of dermatological science 40.2 (2005): 85-94.
【非特許文献8】Su, Rong, et al. “Perspectives of mid-infrared optical coherence tomography for inspection and micrometrology of industrial ceramics”. Optics express 22.13 (2014): 15804-15819.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、工業製品の外観検査にはμm単位の外観の欠陥を検出する需要があるものの、そのような奥行分解能を有するフラッシュLiDARは存在しない。フラッシュLiDARの奥行精度は、撮像素子配列の応答速度により制限される(例えば、非特許文献1、2を参照。)。最近は研究段階で応答速度130MHzのフラッシュLiDAR(例えば、非特許文献3を参照。)も報告されているが、奥行き分解能はサブメートル程度であると予想される。つまり、フラッシュLiDARには奥行分解能を得ることが困難という課題がある。
【0008】
また、OCTは基本的に参照経路を構築し、単一画素イメージングとレーザビーム走査の組み合わせであり、対象領域を時間をかけて走査して内部構造の3D情報を取得する。生体測定の場合、測定中に生体は静止しておく必要があり、産業用途においては生産ラインのタクトタイムがこの測定時間に律速される。つまり、OCTには測定の高速化が困難という課題がある。
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために、被測定物の3次元的な外観形状または内部構造を高い奥行分解能で高速に測定することができる三次元形状計測システム及び三次元形状計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る三次元形状計測システムは、線形光サンプリング(2コム干渉)技術を2次元に拡張することとした。
【0011】
具体的には、本発明に係る三次元形状計測システムは、
光強度が均一と見なせる2次元分布を有する検査用の超短光パルス列を被測定物に照射する第1光源と、
繰返し周期が前記検査用の超短光パルス列と異なり、パルス幅が前記検査用の超短光パルス列より狭く、かつ光強度が均一と見なせる2次元分布を有するサンプリング用の超短光パルス列を出力する第2光源と、
前記被測定物によって反射された前記検査用の超短光パルス列と前記サンプリング用の超短光パルス列とを合波する干渉部と、
前記干渉部で合波された干渉光を受光する2次元フォトディレクタアレイと、
前記2次元フォトディレクタアレイが出力する前記干渉光の信号から前記被測定物によって反射された前記検査用の超短光パルス列について、光強度の2次元分布の時間変化を測定し、前記被測定物の3次元形状を計算する演算部と、
を備える。
【0012】
また、本発明に係る三次元形状計測方法は、
光強度が均一と見なせる2次元分布を有する検査用の超短光パルス列を被測定物に照射すること、
繰返し周期が前記検査用の超短光パルス列と異なり、パルス幅が前記検査用の超短光パルス列より狭く、かつ光強度が均一と見なせる2次元分布を有するサンプリング用の超短光パルス列を出力すること、
前記被測定物によって反射された前記検査用の超短光パルス列と前記サンプリング用の超短光パルス列とを合波して干渉させて干渉光とすること、
前記干渉光を2次元フォトディレクタアレイで受光すること、及び
前記2次元フォトディレクタアレイが出力する前記干渉光の信号から前記被測定物によって反射された前記検査用の超短光パルス列について、光強度の2次元分布の時間変化を測定し、前記被測定物の3次元形状を計算すること、
を行う。
【0013】
図1は、三次元形状計測システムの測定原理を説明する図である。線形サンプリング法(2コム干渉法)は、超短光パルスである、被測定物で反射された信号光パルス(図1(A))とサンプリングパルス(図1(B))とのコヒーレント相関検出を用いて、信号光パルスの瞬時複素振幅を測定する手法である。信号光パルスの繰返し周期とサンプリングパルスの繰り返し周期をわずかに離調し、干渉点をずらしながら瞬時振幅αを検出することで、サブピコ秒の時間分解能で信号光パルス全体の波形を観測することができる(図1(C))。
【0014】
観測可能な信号の時間分解能は、サンプリングパルス幅だけで定まるので、超高速信号に対応でき、高速な測定を行うことができる。使用するエレクトロニクス(2次元フォトディテクタアレイ及び演算部)はサンプリングパルスの繰り返し周期に追随できればよく、数MHz程度の帯域のものが使用できる。
【0015】
従って、本発明は、被測定物の3次元的な外観形状または内部構造を高い奥行分解能で高速に測定することができる三次元形状計測システム及び三次元形状計測方法を提供することができる。
【0016】
本発明に係る三次元形状計測システム及びその方法は、前記干渉光を偏波分離し、それぞれの偏波を前記2次元フォトディレクタアレイで受光することを特徴とする。
【0017】
図2は、三次元形状計測システムの測定原理を説明する図である。本三次元形状計測システムは、線形サンプリング法を2次元の分布を持つ信号光に適用する。2次元の空間分布を持つ信号光は、被測定物の外観ないし内部構造に対応した飛行時間の情報を持つ。この信号光は空間的に均一な振幅分布を持つサンプリングパルスと合波され、x偏波とy偏波に偏光分離された後、それぞれが2次元フォトディテクタアレイに結像される。そこで生じた干渉信号を、サンプリングパルスと同期したクロックにより取得する。つまり、本三次元形状計測システムは、信号光を偏波毎に分離することで複素電界振幅測定を行う。
【0018】
なお、信号光の偏波状態が定まっている場合は、サンプリングパルスの偏光状態を信号光に合わせることにより、偏波分離の工程を省略し、1つの2次元フォトディテクタアレイで被測定物の3次元的な外観形状または内部構造を測定できる。
【0019】
本発明に係る三次元形状計測システム及びその方法は、所望の測定距離レンジをΔz、光速をc、前記検査用の超短光パルス列の繰り返し周期をT、前記サンプリング用の超短光パルス列の繰り返し周期をT+ΔT、前記検査用の超短光パルス列のパルス幅と前記サンプリング用の超短光パルス列のパルス幅の差をΔtとしたとき、式(C1)を満たすようにT、ΔT及びΔtを設定する。
【数C1】
【0020】
本三次元形状計測システムの演算部はコンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0021】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、被測定物の3次元的な外観形状または内部構造を高い奥行分解能で高速に測定することができる三次元形状計測システム及び三次元形状計測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る三次元形状計測システムの測定原理を説明する図である。
図2】本発明に係る三次元形状計測システムの測定原理を説明する図である。
図3】本発明に係る三次元形状計測システムの実施形態を説明する図である。
図4】本発明に係る三次元形状計測システムの実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0025】
(実施形態1)
本実施形態では、サブミリメートル級の奥行分解能を有するフラッシュLiDARを実現する三次元形状計測システム301を説明する。図3は、三次元形状計測システム301を説明する図である。三次元形状計測システム301は、
光強度が均一と見なせる2次元分布を有する検査用の超短光パルス列Ptを被測定物に照射する第1光源11と、
繰返し周期が検査用の超短光パルス列Ptと異なり、パルス幅が検査用の超短光パルス列Ptより狭く、かつ光強度が均一と見なせる2次元分布を有するサンプリング用の超短光パルス列Psを出力する第2光源12と、
前記被測定物によって反射された検査用の超短光パルス列Pt’とサンプリング用の超短光パルス列Psとを合波する干渉部13と、
干渉部13で合波された干渉光Piを受光する2次元フォトディレクタアレイ14と、
2次元フォトディレクタアレイ14が出力する干渉光Piの信号から前記被測定物によって反射された検査用の超短光パルス列Pt’について、光強度の2次元分布の時間変化を測定し、前記被測定物の3次元形状を計算する演算部15と、
を備える。
【0026】
三次元形状計測システム301は、ベルトコンベアで運搬される工業製品の外観を高精度に検査する。
第1光源11は、パルス光源とレンズで構成され、光強度が均一と見なせる2次元分布を有する検査用の超短光パルス列Ptを出力する。超短光パルス列Ptの各光パルスのパルス間隔はT(sec)である。
第2光源12は、パルス光源とレンズで構成され、光強度が均一と見なせる2次元分布を有するサンプリング用の超短光パルス列Psを出力する。超短光パルス列Psの各光パルスのパルス間隔はT+ΔT(sec)である。また、超短光パルス列Psの光パルスのパルス幅は、超短光パルス列Ptの光パルスのパルス幅より狭くする必要がある。
【0027】
本実施形態では、干渉部13はビームスプリッタである。第1光源11から出力された超短光パルス列Ptは干渉部13で反射され、被測定物である工業製品に照射される。被測定物で反射された超短光パルス列Pt’は、被測定物の奥行き形状(表面状態)により飛行時間が変わり、被測定物の表面の情報を持つ。超短光パルス列Pt’は、干渉部13を透過するが、このときに第2光源12から出力された超短光パルス列Psと合波され、干渉する(干渉光Pi)。
【0028】
2次元フォトディレクタアレイ14は、複数のフォトダイオードが二次元的に配列されており、干渉光Piを面的に受光する。被測定物の形状を高精度に取得するためにはフォトダイオードの密度を高める必要がある。
【0029】
なお、干渉光Piを2次元フォトディレクタアレイ14に受光させる前に、干渉光Piを偏波分離し、偏波毎に2次元フォトディレクタアレイに受光させる偏波分離部(不図示)をさらに備えてもよい。この場合、2次元フォトディレクタアレイはX偏波用とY偏波用の2つ用意する必要がある。
【0030】
演算部15は、2次元フォトディレクタアレイ14が出力する干渉光Piの信号(偏波分離部がある場合はX偏波用とY偏波用の2次元フォトディレクタアレイそれぞれが出力する信号)を受信し、超短光パルス列Pt’について、フォトディレクタアレイ14の受光面における光強度の2次元分布の時間変化(飛行時間のずれ)を測定し、前記被測定物の3次元形状を計算する。当該3次元形状をモニタに表示してもよい。
【0031】
三次元形状計測システム301の動作を説明する。
超短光パルス列Ptを被測定物に照射する。被測定物で反射した超短光パルス列Pt’は、被測定物の形状に応じた各空間毎に固有の飛行時間で2次元フォトディテクタアレイ14に到着する。線形サンプリングによって各フォトデテクタの信号をサンプリングして飛行時間を測定することにより、被測定物の3次元形状の把握が可能となる。
【0032】
なお、測距の曖昧性回避のため、被測定物の測定距離レンジΔzに対して、超短光パルス列Ptのパルス周期Tは次式を満たすように設定する。
【数1】
ここで、cは光速(m/sec)である。
また、奥行き分解能δzは、超短光パルス列Ptのパルス幅、及び超短光パルス列Psのパルス幅であるΔtによって、次式で与えられる。
【数2】
パルス光源にモードロックレーザを使用すれば1ps程度のパルス幅を得ることは容易であり、この場合の奥行き分解能δzは約150mmである。
【0033】
なお、奥行き分解能は、超短光パルス列Ptのパルス間隔と超短光パルス列Psのパルス間隔とのずれΔTによっても影響される。具体的には、サンプリングデータの時間分解能(奥行分解能)はおおよそΔT/Tとなる。この時間分解能と数2のδzと比較し、大きい方が三次元形状計測システム301の奥行分解能となる。このため、次式のように、δzの方が大きくなるようにΔTを設定することで数2で奥行分解能を決定することができる。
【数3】
【0034】
三次元形状計測システム301は、機械的なビームスキャニングなどの可動走査部を一切必要とせずに3次元形状の把握が可能である。
【0035】
(実施形態2)
本実施形態では、断層撮像速度は、従前のOCTに比べて高速化が期待でき、血液を含む体液等のような流動し得る生体組織、あるいは工業用塗料や薄膜の内部構造の測定等、さらなる応用の拡大が期待できるフラッシュ型OCTを実現する三次元形状計測システム302を説明する。図4は、三次元形状計測システム302を説明する図である。三次元形状計測システム302の構造は、図3で説明した三次元形状計測システム301と同じである。
【0036】
三次元形状計測システム302は、生体組織、工業用塗料、又は薄膜等を被測定物とし、その内部構造を非破壊ないし非侵襲で測定する。このため、第1光源11は被測定物に対して一定の透過率を有する波長の超短光パルス列Ptを出力する。例えば、超短光パルス列Ptは赤外光である。
【0037】
三次元形状計測システム302の動作を説明する。
被測定物に対し、一定の透過率を持つ超短光パルス列Ptを被測定物に照射する。被測定物の内部で反射した超短光パルス列Pt’は、被測定物内部の各点からの反射率を反映している。つまり、超短光パルス列Pt’は、被測定物内部の各点の反射率の情報を持つ。超短光パルス列Pt’は、被測定物内部の位置に応じた固有の飛行時間で2次元フォトディテクタアレイ14に到着する。線形サンプリングによって各フォトデテクタの信号をサンプリングして飛行時間を測定することにより、被測定物内部の各点の反射率を測定でき、各点の反射率から被測定物の内部構造を3次元的に把握できる。
【0038】
三次元形状計測システム302の各パラメータについての関係性は図3で説明した三次元形状計測システム301と同じである(数1、2、3を参照。)。このため、三次元形状計測システム302は、リフレッシュレートが高いのみならず、サブミリメートルオーダーの奥行分解能を実現できる。
【0039】
三次元形状計測システム302は、被測定物の内部構造を非破壊ないし非侵襲で測定することができる。
【符号の説明】
【0040】
11:第1光源
12:第2光源
13:干渉部
14:2次元フォトディレクタアレイ
15:演算部
301、302:三次元形状計測システム
図1
図2
図3
図4