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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008562
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20250109BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20250109BHJP
   B28D 5/02 20060101ALI20250109BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20250109BHJP
   B24B 1/00 20060101ALI20250109BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20250109BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01L21/304 601Z
H01L21/304 622W
H01L21/02 B
B28D5/02 A
B23K26/53
B24B1/00 Z
B24B27/06 M
B24B7/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110819
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 彬
【テーマコード(参考)】
3C043
3C049
3C069
3C158
4E168
5F057
【Fターム(参考)】
3C043BA03
3C043BA07
3C043BA09
3C043BA12
3C043BA16
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD06
3C049AA03
3C049AA14
3C049AA16
3C049AB04
3C049AC04
3C049CB01
3C069AA03
3C069BA04
3C069BA08
3C069BB04
3C069BC01
3C069CB01
3C069CB03
3C069DA06
3C158AA03
3C158AA14
3C158AA16
3C158AB04
3C158AC04
3C158CB01
3C158DA17
4E168AE01
4E168CB07
4E168GA01
4E168JA12
4E168JA13
5F057AA05
5F057BA19
5F057BA20
5F057BB07
5F057BB09
5F057BB12
5F057BC02
5F057CA16
5F057DA17
5F057DA22
5F057DA31
(57)【要約】
【課題】貼り合わせウエーハの研削工程において、デバイスの破損を抑制しつつ外周余剰領域を除去することができるウエーハの加工方法を提供すること。
【解決手段】ウエーハの加工方法は、第一のウエーハと第二のウエーハとを仮接合して貼り合わせウエーハを形成する貼り合わせウエーハ形成ステップ201と、レーザービームで第一のウエーハの内部に環状の改質層と改質層から伸展するクラックとを形成する改質層形成ステップ202と、アニール処理により貼り合わせウエーハの接合強度を上げるアニール処理ステップ203と、第一のウエーハの環状領域に切削ブレードを位置付け、他方の面側から第二のウエーハに至らない深さまで切り込んで環状領域に沿って切削することで、改質層およびクラックよりも外周縁側の外周領域を除去する外周領域除去ステップ204と、第一のウエーハを他方の面側から研削して仕上げ厚さまで薄化する研削ステップ205とを備える。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハの加工方法であって、
第一のウエーハと第二のウエーハとを接合するために、第一のウエーハの一方の面と、第二のウエーハの一方の面とを仮接合して貼り合わせウエーハを形成する貼り合わせウエーハ形成ステップと、
該貼り合わせウエーハ形成ステップを実施した後に、該第一のウエーハを透過する波長のレーザービームを該第一のウエーハの外周縁よりも所定距離内側の環状領域に対して照射し、該第一のウエーハの内部に環状の改質層と該改質層から伸展するクラックとを形成する改質層形成ステップと、
該改質層形成ステップを実施した後に、該貼り合わせウエーハに対してアニール処理を施すことで、該第一のウエーハと該第二のウエーハとの接合強度を上げるアニール処理ステップと、
該アニール処理ステップを実施した後に、該貼り合わせウエーハの該第一のウエーハを他方の面側から研削して仕上げ厚さまで薄化する研削ステップと、
を備え、
該改質層形成ステップを実施した後、かつ該研削ステップを実施する前に、該第一のウエーハの該環状領域に切削ブレードを位置付け、該第一のウエーハの該他方の面側から該第二のウエーハに至らない深さまで切り込んで該環状領域に沿って切削することで、該改質層および該クラックよりも該外周縁側の外周領域を除去する外周領域除去ステップを更に備える
ことを特徴とする、ウエーハの加工方法。
【請求項2】
ウエーハの加工方法であって、
第一のウエーハの一方の面と、第二のウエーハの一方の面とを接合して貼り合わせウエーハを形成する貼り合わせウエーハ形成ステップと、
該貼り合わせウエーハ形成ステップを実施した後に、該第一のウエーハを透過する波長のレーザービームを該第一のウエーハの外周縁よりも所定距離内側の環状領域に対して照射し、該第一のウエーハの内部に環状の改質層と該改質層から伸展するクラックとを形成する改質層形成ステップと、
該改質層形成ステップを実施した後に、該第一のウエーハの該環状領域に切削ブレードを位置付け、該第一のウエーハの他方の面側から該第二のウエーハに至らない深さまで切り込んで該環状領域に沿って切削することで、該改質層および該クラックよりも該外周縁側の外周領域を除去する外周領域除去ステップと、
該外周領域除去ステップを実施した後に、該貼り合わせウエーハの該第一のウエーハを該他方の面側から研削して仕上げ厚さまで薄化する研削ステップと、
を備える
ことを特徴とする、ウエーハの加工方法。
【請求項3】
該外周領域除去ステップでは、
該第一のウエーハの該他方の面側から該改質層に至らない深さまで切り込んで該環状領域に沿って切削する
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項4】
該外周領域除去ステップでは、
該切削ブレードの厚み方向の中心が、該環状領域よりも該第一のウエーハの径方向外側に位置付けられる
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項5】
該外周領域除去ステップでは、
該切削ブレードの厚み方向の中心が、該環状領域よりも該第一のウエーハの径方向内側に位置付けられる
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のデバイスチップの低背化や高集積化に伴い、3次元積層された半導体ウエーハの開発が進んでいる。例えばTSV(Through-Silicon Via)ウエーハは、貫通電極によって2つのチップ同士の貼り合わせによる両チップの電極の接続を可能にしている。
【0003】
こうしたウエーハは、基台となる支持ウエーハ(シリコンやガラス、セラミックス等)に貼り合わされた状態で研削して薄化される。通常、ウエーハは、外周縁が面取りされているため、極薄に研削されると外周縁が所謂ナイフエッジとなり、研削中にエッジの欠けが発生しやすい。これにより、デバイスにまで欠けが延長してデバイスの破損に繋がる可能性がある。
【0004】
ナイフエッジの対策として、ウエーハの表面側の外周縁を環状に切削する所謂エッジトリミング技術が開発された(特許文献1参照)。また、ウエーハを貼り合わせてから、デバイスの外周縁に沿ってレーザービームを照射して環状の改質層を形成することで、その研削中に発生するウエーハのエッジ欠けがデバイスに伸展することを抑制するエッジトリミング方法も考案された(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4895594号公報
【特許文献2】特開2020-057709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法は、切削時にデバイスに届くチッピングを発生させてデバイスを破損させる可能性があり、また、大量の切削屑が出るため、デバイスがコンタミで汚れやすいという課題があった。また、特許文献2の方法は、改質層が接合領域よりも内側に形成されている場合、研削時に除去したい外周余剰領域の端材が剥離せず残存してしまう可能性があった。また、研削時に剥離できたとしても、外周余剰領域の端材が研削ホイールとウエーハとの間に挟まってしまい、ウエーハに傷がつく可能性があった。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、貼り合わせウエーハの研削工程において、デバイスの破損を抑制しつつ外周余剰領域を除去することができるウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウエーハの加工方法の第一の態様は、第一のウエーハと第二のウエーハとを接合するために、第一のウエーハの一方の面と、第二のウエーハの一方の面とを仮接合して貼り合わせウエーハを形成する貼り合わせウエーハ形成ステップと、該貼り合わせウエーハ形成ステップを実施した後に、該第一のウエーハを透過する波長のレーザービームを該第一のウエーハの外周縁よりも所定距離内側の環状領域に対して照射し、該第一のウエーハの内部に環状の改質層と該改質層から伸展するクラックとを形成する改質層形成ステップと、該改質層形成ステップを実施した後に、該貼り合わせウエーハに対してアニール処理を施すことで、該第一のウエーハと該第二のウエーハとの接合強度を上げるアニール処理ステップと、該アニール処理ステップを実施した後に、該貼り合わせウエーハの該第一のウエーハを他方の面側から研削して仕上げ厚さまで薄化する研削ステップと、を備え、該改質層形成ステップを実施した後、かつ該研削ステップを実施する前に、第一のウエーハの該環状領域に切削ブレードを位置付け、該第一のウエーハの該他方の面側から該第二のウエーハに至らない深さまで切り込んで該環状領域に沿って切削することで、該改質層および該クラックよりも該外周縁側の外周領域を除去する外周領域除去ステップを更に備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のウエーハの加工方法の第二の態様は、第一のウエーハの一方の面と、第二のウエーハの一方の面とを接合して貼り合わせウエーハを形成する貼り合わせウエーハ形成ステップと、該貼り合わせウエーハ形成ステップを実施した後に、該第一のウエーハを透過する波長のレーザービームを該第一のウエーハの外周縁よりも所定距離内側の環状領域に対して照射し、該第一のウエーハの内部に環状の改質層と該改質層から伸展するクラックとを形成する改質層形成ステップと、該改質層形成ステップを実施した後に、第一のウエーハの該環状領域に切削ブレードを位置付け、該第一のウエーハの他方の面側から該第二のウエーハに至らない深さまで切り込んで該環状領域に沿って切削することで、該改質層および該クラックよりも該外周縁側の外周領域を除去する外周領域除去ステップと、該外周領域除去ステップを実施した後に、該貼り合わせウエーハの該第一のウエーハを該他方の面側から研削して仕上げ厚さまで薄化する研削ステップと、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のウエーハの加工方法において、該外周領域除去ステップでは、該第一のウエーハの該他方の面側から該改質層に至らない深さまで切り込んで該環状領域に沿って切削することが好ましい。
【0011】
また、本発明のウエーハの加工方法において、該外周領域除去ステップでは、該切削ブレードの厚み方向の中心が、該環状領域よりも該第一のウエーハの径方向外側に位置付けられてもよい。
【0012】
また、本発明のウエーハの加工方法において、該外周領域除去ステップでは、該切削ブレードの厚み方向の中心が、該環状領域よりも該第一のウエーハの径方向内側に位置付けられてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、貼り合わせウエーハの研削工程において、デバイスの破損を抑制しつつ外周余剰領域を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1実施形態に係るウエーハの加工方法の加工対象のウエーハの一例を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すII-II線に沿う断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係るウエーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、図3に示す貼り合わせウエーハ形成ステップの一状態を示す斜視図である。
図5図5は、図3に示す改質層形成ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
図6図6は、図3に示す改質層形成ステップ後の貼り合わせウエーハの一部を拡大して示す断面図である。
図7図7は、図3に示す外周領域除去ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
図8図8は、図7における切削ブレードの位置付け例を示す断面図である。
図9図9は、図7における切削ブレードの位置付け例を示す断面図である。
図10図10は、図7における切削ブレードの位置付け例を示す断面図である。
図11図11は、図3に示す研削ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
図12図12は、第2実施形態に係るウエーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
図13図13は、図12に示す貼り合わせウエーハ形成ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
図14図14は、図12に示す貼り合わせウエーハ形成ステップ後における貼り合わせウエーハの接合面の状態を模式的に示す断面図である。
図15図15は、図12に示すアニール処理ステップの一例を一部断面で示す側面図である。
図16図16は、図12に示すアニール処理ステップ後における貼り合わせウエーハの接合面の状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0016】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係るウエーハ10の加工方法を図面に基づいて説明する。まず、加工対象のウエーハ10について説明する。図1は、第1実施形態に係るウエーハ10の加工方法の加工対象のウエーハ10の一例を示す斜視図である。図2は、図1に示すII-II線に沿う断面図である。
【0017】
図1および図2に示すウエーハ10は、シリコン(Si)、サファイア(Al)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)等を基板11とする円板状の半導体ウエーハ、光デバイスウエーハ等のウエーハであり、第1実施形態において、シリコンウエーハである。ウエーハ10は、図2に示すように、厚さ方向の中央が最も外周側に突出して、基板11の表面13から裏面14に亘って断面円弧状になるように、外周縁12が面取りされている。
【0018】
ウエーハ10は、図1に示すように、基板11の表面13側に中央領域15と、中央領域15を囲繞する外周領域16と、を含むデバイス層を有する。中央領域15は、基板11の表面13に格子状に設定された複数の分割予定ライン17と、分割予定ライン17によって区画された各領域に形成されたデバイス18と、を有している。外周領域16は、全周に亘って中央領域15を囲繞し、かつデバイス18が形成されていない領域である。
【0019】
デバイス18は、第1実施形態において、3DNANDフラッシュメモリを構成し、電極パッドと、電極パッドに接続した貫通電極とを備える。貫通電極は、基板11が薄化されてデバイス18がウエーハ10から個々に分割された際に、基板11の裏面14側に貫通する。すなわち、第1実施形態のウエーハ10は、個々に分割されたデバイス18が貫通電極を有する所謂TSVウエーハである。なお、本発明のウエーハ10は、第1実施形態のような貫通電極を有するTSVウエーハに限定されず、貫通電極のないデバイスウエーハであってもよい。
【0020】
次に、ウエーハ10の加工方法の流れについて説明する。図3は、第1実施形態に係るウエーハ10の加工方法の流れを示すフローチャートである。図3に示すように、第1実施形態のウエーハ10の加工方法は、貼り合わせウエーハ形成ステップ101と、改質層形成ステップ102と、外周領域除去ステップ103と、研削ステップ104と、を備える。第1実施形態のウエーハ10の加工方法は、一対のウエーハ10の一方の面側を互いに貼り合わせ、外周領域16を除去するための分割起点を形成した後、一方のウエーハ10(第一のウエーハ10-1)を所定の仕上げ厚さ19まで薄化する方法である。なお、第1実施形態において、一方の面は、表面13である。
【0021】
なお、以降の説明において、一対のウエーハ10のウエーハ10同士を区別する際には、一方のウエーハ10を第一のウエーハ10-1と記し、他方のウエーハ10を第二のウエーハ10-2(図4参照)と記し、区別しない場合には、単にウエーハ10と記す。薄化しない他方の第二のウエーハ10-2は、第1実施形態では第一のウエーハ10-1と同様のTSVウエーハであるものとして説明するが、本発明ではパターンの無い単なるサブストレートウエーハでもよい。
【0022】
(貼り合わせウエーハ形成ステップ101)
図4は、図3に示す貼り合わせウエーハ形成ステップ101の一状態を示す斜視図である。貼り合わせウエーハ形成ステップ101は、第一のウエーハ10-1の一方の面(第1実施形態では、表面13)と、第二のウエーハ10-2の一方の面(第1実施形態では、表面13)とを接合して貼り合わせウエーハ20を形成するステップである。
【0023】
貼り合わせウエーハ形成ステップ101では、まず、図4に示すように、第一のウエーハ10-1の表面13と、第二のウエーハ10-2の表面13とを、間隔をあけて対向させる。次に、第一のウエーハ10-1の表面13と第二のウエーハ10-2の表面13とを、貼り合わせる。これにより、貼り合わせウエーハ20を形成する。
【0024】
この際、第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2との間に接合層を設ける場合は、第一のウエーハ10-1の表面13と第二のウエーハ10-2の表面13とのうちの一方に接合層を積層してから、第一のウエーハ10-1の表面13と第二のウエーハ10-2の表面13とを、接合層を介して貼り合わせる。なお、接合層は、基材層の表裏面に粘着材層が積層された両面テープであってもよいし、酸化膜でもよいし、樹脂等を含む接着剤が塗布されることにより形成されるものでもよい。
【0025】
また、接合層を用いず、第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2とを直接接合してもよい。また、実施形態では、第一のウエーハ10-1の表面13側と第二のウエーハ10-2の表面13側とを貼り合わせるが、第二のウエーハ10-2がサブストレートウエーハである場合、第二のウエーハ10-2のいずれの面に貼り合わせてもよい。
【0026】
(改質層形成ステップ102)
図5は、図3に示す改質層形成ステップ102の一状態を一部断面で示す側面図である。図6は、図3に示す改質層形成ステップ102後の貼り合わせウエーハ20の一部を拡大して示す断面図である。改質層形成ステップ102は、貼り合わせウエーハ形成ステップ101を実施した後に実施される。改質層形成ステップ102は、第一のウエーハ10-1を透過する波長のレーザービーム43を第一のウエーハ10-1の外周縁12よりも所定距離内側の環状領域23に対して照射し、第一のウエーハ10-1の内部に環状の改質層21と改質層21から伸展するクラック22とを形成するステップである。
【0027】
改質層形成ステップ102では、図5に示すレーザー加工装置40によるステルスダイシングによって、第一のウエーハ10-1の内部に改質層21およびクラック22を形成する。レーザー加工装置40は、保持テーブル41と、レーザービーム照射ユニット42と、を備える。保持テーブル41は、ウエーハ10を保持面に保持し、垂直な軸心回りに回動可能である。レーザービーム照射ユニット42は、保持テーブル41に保持されたウエーハ10に対してレーザービーム43を照射する。レーザー加工装置40は、更に、保持テーブル41とレーザービーム照射ユニット42とを相対的に移動させる不図示の移動ユニット、および保持テーブル41に保持されたウエーハ10を撮像する不図示の撮像ユニット等を備える。
【0028】
改質層形成ステップ102では、第一のウエーハ10-1の裏面14側から、第一のウエーハ10-1の外周縁12より所定距離内側の位置に沿ってレーザービーム43を照射することで、第一のウエーハ10-1の内部に環状の改質層21を形成する。外周縁12より所定距離内側の位置とは、具体的には、中央領域15と外周領域16との境界である。レーザービーム43は、第一のウエーハ10-1に対して透過性を有する波長のレーザービームであり、例えば、赤外線(Infrared Rays;IR)である。
【0029】
改質層21とは、レーザービーム43が照射されることによって、密度、屈折率、機械的強度またはその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味する。改質層21は、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、およびこれらの領域が混在した領域等である。改質層21は、第一のウエーハ10-1の他の部分よりも機械的な強度等が低い。
【0030】
改質層形成ステップ102では、まず、第二のウエーハ10-2の裏面14側を保持テーブル41の保持面(上面)に吸引保持する。次に、第一のウエーハ10-1とレーザービーム照射ユニット42の集光器との位置合わせを行う。具体的には、不図示の移動ユニットによって、保持テーブル41をレーザービーム照射ユニット42の下方の照射領域まで移動させる。次に、不図示の撮像ユニットで第一のウエーハ10-1を撮影しアライメントすることで、レーザービーム照射ユニット42の照射部を第一のウエーハ10-1の外周縁12より所定距離内側の位置に向けて鉛直方向に対向させた後、レーザービーム43の集光点44を、第一のウエーハ10-1の内部に設定する。
【0031】
改質層形成ステップ102では、次に、保持テーブル41を垂直な軸心回りに回転させながら、レーザービーム照射ユニット42からパルス状のレーザービーム43を、第一のウエーハ10-1の裏面14側から照射する。すなわち、レーザービーム43を第一のウエーハ10-1の外周縁12より所定距離内側の位置に沿って環状に照射する。
【0032】
これにより、第一のウエーハ10-1において、外周縁12より所定距離内側の位置に沿う環状の改質層21が形成され、改質層21からはクラック22が伸展し、改質層21とクラック22との連結によって、第一のウエーハ10-1の外周縁12より所定距離内側の位置に分割起点が形成される。図6に示すように、改質層形成ステップ102では、改質層21から伸展するクラック22が、第一のウエーハ10-1の表面13側に表出するように、レーザービーム43の照射による改質層21を形成することが好ましい。
【0033】
なお、改質層形成ステップ102では、レーザービーム43の集光点44の高さを変更して複数回レーザービーム43を照射する、または、第一のウエーハ10-1の厚さ方向に離れた複数の集光点44を有するレーザービーム43を照射することで、第一のウエーハ10-1の厚さ方向に重なる複数の改質層21を形成してもよい。複数回レーザービーム43を第一のウエーハ10-1の裏面14側から照射する場合は、表面13側から裏面14側に向かって順に改質層21を形成する。また、第一のウエーハ10-1の表面13に対して垂直とは、伸展したクラック22全体を平面に近似した近似平面の垂直面に対する傾きが、±5度以内、好ましくは±2度以内であることを示す。また、レーザービーム43の進行方向に分岐されたレーザービーム43を用いてもよいし、進行方向と直交する方向に分岐されたレーザービーム43を用いてもよいし、進行方向が長軸かつ進行方向と直交する方向に短軸を有する楕円形状のレーザービーム43を用いてもよい。
【0034】
図6に示すように、第一のウエーハ10-1は、改質層21およびクラック22が形成されることによって、改質層21およびクラック22より外周縁12側の外周領域16において、表面13側が凸状となる反りを生じさせる。
【0035】
この外周領域16の反りによって、第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2との接合が解除される。なお、反りにより接合が解除されるのは、第一のウエーハ10-1の表面13側のデバイス層と第二のウエーハ10-2の表面13側のデバイス層との界面に限定されず、第一のウエーハ10-1の基板11とデバイス層との界面や、第二のウエーハ10-2の基板11とデバイス層との界面において、接合が解除されてもよい。改質層21およびクラック22を第一のウエーハ10-1の全周に沿って環状に形成すると、改質層形成ステップ102を終了する。
【0036】
(外周領域除去ステップ103)
図7は、図3に示す外周領域除去ステップ103の一状態を一部断面で示す側面図である。外周領域除去ステップ103は、改質層形成ステップ102を実施した後に実施される。外周領域除去ステップ103は、第一のウエーハ10-1の環状領域23に切削ブレード53を位置付け、第一のウエーハ10-1の他方の面(第1実施形態では、裏面14側から第二のウエーハ10-2に至らない深さまで切り込んで環状領域23に沿って切削することで、改質層21およびクラック22よりも外周縁12側の外周領域16を除去するステップである。第1実施形態では、改質層21に至らない深さまで切り込む。
【0037】
第1実施形態の外周領域除去ステップ103では、図7に示す切削装置50によって、所定の深さで環状領域23に沿って切削する。切削装置50は、保持テーブル51と、切削ユニット52と、を備える。切削ユニット52は、切削ブレード53と、スピンドル54と、スピンドルハウジング55と、を含む。切削ブレード53は、円環状の切削砥石を有し、軸心がスピンドル54の軸心に一致するようにスピンドル54に装着される。回転軸部材であるスピンドル54は、保持テーブル51の保持面と平行な回転軸で回転する。スピンドルハウジング55は、スピンドル54を回転軸回りに回転可能に保持する。切削装置50は、更に、保持テーブル51と切削ブレード53とを相対的に移動させる不図示の移動ユニットと、不図示の撮像ユニットと、切削ブレード53の加工点に切削水を供給する不図示の切削水供給ユニットと、を備える。
【0038】
外周領域除去ステップ103では、まず、保持テーブル51の保持面に、第二のウエーハ10-2の裏面14側を吸引保持する。次に、第一のウエーハ10-1と切削ブレード53との位置合わせを行う。具体的には、不図示の移動ユニットによって、保持テーブル51を切削ブレード53の下方の加工領域まで移動させる。次に、不図示の撮像ユニットで第一のウエーハ10-1を撮影しアライメントすることで、切削ブレード53の加工点を、第一のウエーハ10-1の環状領域23に位置合わせする。
【0039】
外周領域除去ステップ103では、次に、不図示の切削水供給ユニットによって、第一のウエーハ10-1の表面13に向けて切削水の供給を開始させる。次に、不図示の移動ユニットによって、切削ブレード53を切り込ませて、保持テーブル51を垂直な軸心回りに回転させる。そして、切削ブレード53を第一のウエーハ10-1の表面13側から所定深さまで切り込ませる。
【0040】
所定深さは、多くとも第二のウエーハ10-2に至らない深さである。所定深さは、改質層形成ステップ102で形成されたクラック22に達する深さであることが好ましいが、切削ブレード53による応力負荷によりクラック22が伸展するため、必ずしも改質層形成ステップ102で形成された時点でのクラック22の位置まで達していなくても構わない。例えば、第一のウエーハ10-1の厚みが775μmであり、最も裏面14側にある改質層21の形成位置が600μmの深さである場合、所定深さは、580μmである。
【0041】
外周領域除去ステップ103では、環状領域23を所定深さまで切削することにより、切削ブレード53による応力負荷がかかるとともに第一のウエーハ10-1の表面13側とクラック22との間に亀裂が伸展する。これにより、改質層21およびクラック22と切削溝とを分割起点として、外周領域16の端材が除去される。
【0042】
図8から図10は、図7における切削ブレード53の位置付け例を示す断面図である。図8に示す例では、切削ブレード53の厚み方向の中心が、環状領域23よりも第一のウエーハ10-1の径方向外側に位置付けられる。図9に示す例では、切削ブレード53の厚み方向の中心が、環状領域23よりも第一のウエーハ10-1の径方向内側に位置付けられる。図10に示す例では、切削ブレード53の厚み方向の全体が、環状領域23よりも第一のウエーハ10-1の径方向内側に位置付けられる。
【0043】
図8のように、切削ブレード53の厚み方向の中心が、環状領域23よりも第一のウエーハ10-1の径方向外側に位置付けられる場合は、外周領域16自体に直接負荷がかかるため、切り込み深さを深くしなくとも、切削ブレード53が第一のウエーハ10-1の裏面14に当接させる程度で、外周領域16の除去が可能である。したがって、切り込み量を少なくでき、切削屑を削減できる一方で、外周領域16が装置内に飛散しやすくなる可能性がある。
【0044】
一方で、図9および図10のように、切削ブレード53の厚み方向の中心が、環状領域23よりも第一のウエーハ10-1の径方向内側に位置付けられる場合は、外周領域16自体に直接負荷がかからないため、外周領域16の装置内への飛散を抑制できる。したがって、加工対象である第一のウエーハ10-1のサイズや材質、外周領域16の大きさ等によって、適宜設定されることが好ましい。
【0045】
(研削ステップ104)
図11は、図3に示す研削ステップ104の一状態を一部断面で示す側面図である。研削ステップ104は、外周領域除去ステップ103を実施した後に実施される。研削ステップ104は、貼り合わせウエーハ20の第一のウエーハ10-1を他方の面(第1実施形態では、裏面14)側から研削して仕上げ厚さ19まで薄化するステップである。
【0046】
第1実施形態の研削ステップ104では、図11に示す研削装置70によって、第一のウエーハ10-1の裏面14側を研削して所定の仕上げ厚さ19まで薄化する。研削装置70は、保持テーブル71と、回転軸部材であるスピンドル72と、スピンドル72の下端に取り付けられた研削ホイール73と、研削ホイール73の下面に装着される研削砥石74と、不図示の研削液供給ユニットと、を備える。研削ホイール73は、保持テーブル71の軸心と平行な回転軸で回転する。
【0047】
研削ステップ104では、まず、保持テーブル71の保持面に、第二のウエーハ10-2の裏面14側を吸引保持する。次に、保持テーブル71を軸心回りに回転させた状態で、研削ホイール73を軸心回りに回転させる。不図示の研削液供給ユニットによって研削液を加工点に供給するとともに、研削ホイール73の研削砥石74を保持テーブル71に所定の送り速度で近付けることによって、研削砥石74で第一のウエーハ10-1の裏面14を研削し、所定の仕上げ厚さ19まで薄化する。
【0048】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態に係るウエーハ10の加工方法を図面に基づいて説明する。第2実施形態の加工対象のウエーハ10は、第1実施形態の加工対象のウエーハ10と同様であるため、説明を省略する。また、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0049】
第2実施形態のウエーハ10の加工方法の流れについて説明する。図12は、第2実施形態に係るウエーハ10の加工方法の流れを示すフローチャートである。図12に示すように、第2実施形態のウエーハ10の加工方法は、貼り合わせウエーハ形成ステップ201と、改質層形成ステップ202と、アニール処理ステップ203と、外周領域除去ステップ204と、研削ステップ205と、を備える。
【0050】
なお、第2実施形態の改質層形成ステップ202、外周領域除去ステップ204、および研削ステップ205は、第1実施形態の改質層形成ステップ102、外周領域除去ステップ103、および研削ステップ104、と同様の手順であるため、説明を省略する。
【0051】
(貼り合わせウエーハ形成ステップ201)
図13は、図12に示す貼り合わせウエーハ形成ステップ201の一状態を一部断面で示す側面図である。図14は、図12に示す貼り合わせウエーハ形成ステップ201後における貼り合わせウエーハ20の接合面の状態を模式的に示す断面図である。第2実施形態の貼り合わせウエーハ形成ステップ201は、第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2とを接合するために、第一のウエーハ10-1の一方の面(第2実施形態では、表面13)と、第二のウエーハ10-2の一方の面(第2実施形態では、表面13)とを仮接合して貼り合わせウエーハ20を形成するステップである。
【0052】
第2実施形態の貼り合わせウエーハ形成ステップ201では、第一のウエーハ10-1および第二のウエーハ10-2の接合面となる面の少なくともいずれかにプラズマ処理を施すことにより活性化させた状態で貼り合わせて仮接合する。なお、仮接合は、後述のアニール処理ステップ203においてアニール処理が施されることで接合強度が上がる。
【0053】
第2実施形態の貼り合わせウエーハ形成ステップ201では、図13に示すプラズマ処理装置30によって、ウエーハ10(第一のウエーハ10-1および第二のウエーハ10-2)の表面13に対してプラズマ処理を施す。プラズマ処理装置30は、チャンバ31と、下部電極32と、上部電極34と、ガス供給源35と、高周波電源36と、不図示の静電吸着機構、昇降機構、搬入出口、および排気機構と、を備える。
【0054】
チャンバ31内には、下部電極32および上部電極34が上下に対向して配置される。下部電極32は、導電性の材料で形成され、ウエーハ10を保持する円盤状の保持部を有する。保持部の内部には、不図示の静電吸着機構が形成される。静電吸着機構が駆動することにより、保持部の上面に載置されたウエーハ10を静電吸着で固定可能である。
【0055】
上部電極34は、導電性の材料で形成され、下部電極32の保持部に保持されたウエーハ10の上方を覆う円盤状のガス噴出部を有する。ガス噴出部は、ガス供給源35に連通する。ガス供給源35は、アルゴン(Ar)、窒素(N)または酸素(O)等のプロセスガスを、ガス噴出部を介してチャンバ31内部に供給する。上部電極34は、不図示の昇降機構によって、下部電極32に対して上下に昇降可能である。
【0056】
下部電極32および上部電極34は、チャンバ31との間に不図示の絶縁部材を有し、チャンバ31と絶縁されている。下部電極32および上部電極34は、高周波電源36と接続する。高周波電源36は、不図示の制御装置から出力される制御信号に基づいて、下部電極32および上部電極34に所定の高周波電力を供給する。
【0057】
貼り合わせウエーハ形成ステップ201では、まず、ウエーハ10を、不図示の搬入口からチャンバ31内に搬入し、表面13側を上方に向けるように下部電極32の保持部に載置する。次に、不図示の静電吸着機構を駆動させて、ウエーハ10を保持部に静電吸着させて保持する。また、不図示の搬入口を閉塞してチャンバ31内の処理空間を密閉する。更に、下部電極32と上部電極34とがプラズマ処理に適した所定の位置関係となるように、不図示の昇降機構によって上部電極34の高さ位置を調整する。
【0058】
貼り合わせウエーハ形成ステップ201では、次に、不図示の排気機構を駆動させ、チャンバ31内の処理空間を真空(低圧)とする。次に、ガス供給源35からチャンバ31内の処理空間にプロセスガスを所定の流量で供給しつつ、高周波電源36から下部電極32および上部電極34に所定の高周波電力を供給することで、プラズマ状のガスをウエーハ10の表面13に供給させる。このようなプラズマ処理を実施することにより、ウエーハ10の表面13に吸着した有機物等の表面不純物が除去されて清浄な面が露出する。更に、露出した清浄な表面13のSi未結合種に、水酸基(OH基)が結合する。すなわち、プラズマ処理により活性化されたウエーハ10の表面13にOH基が形成される。
【0059】
貼り合わせウエーハ形成ステップ201では、次に、図4に示す第1実施形態の貼り合わせウエーハ形成ステップ101と同様に、第一のウエーハ10-1の表面13と、第二のウエーハ10-2の表面13とを、間隔をあけて対向させる。次に、第一のウエーハ10-1の表面13と第二のウエーハ10-2の表面13とを、貼り合わせる。これにより、貼り合わせウエーハ20を形成する。
【0060】
この際、図14に示すように、第一のウエーハ10-1の表面13側に形成されたOH基の水素原子(H)が、第二のウエーハ10-2の表面13側に形成されたOH基の酸素原子(O)との間に水素結合を形成する。また、第二のウエーハ10-2の表面13側に形成されたOH基の水素原子(H)が、第一のウエーハ10-1の表面13側に形成されたOH基の酸素原子(O)との間に水素結合を形成する。これにより、第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2とは、水素結合により互いに引き合い、仮接合される。
【0061】
貼り合わせウエーハ形成ステップ201のプラズマ処理は、第一のウエーハ10-1の表面13と第二のウエーハ10-2の表面13のいずれに対しても実施されるが、いずれか一方の面であってもよい。また、貼り合わせウエーハ形成ステップ201において、プラズマ処理を実施する方法は、第2実施形態に記載したチャンバ31内を減圧してプラズマを発生させる減圧プラズマ法に限定されず、ウエーハ10を載置した待機中においてプラズマ発生電極を面内スキャンする開放型大気圧プラズマ法であってもよい。
【0062】
(アニール処理ステップ203)
図15は、図12に示すアニール処理ステップ203の一例を一部断面で示す側面図である。図16は、図12に示すアニール処理ステップ203後における貼り合わせウエーハ20の接合面の状態を模式的に示す断面図である。アニール処理ステップ203は、改質層形成ステップ202を実施した後、外周領域除去ステップ204を実施する前に実施される。アニール処理ステップ203は、貼り合わせウエーハ20に対してアニール処理を施すことで、第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2との接合強度を上げるステップである。
【0063】
第2実施形態のアニール処理ステップ203は、図15に示すアニール処理装置60において実施される。アニール処理装置60は、チャンバ61と、保持テーブル62と、加熱源63と、を備える。チャンバ61内には、保持テーブル62が配置される。保持テーブル62は、保持面に貼り合わせウエーハ20を吸引保持可能である。チャンバ61内は、加熱源63によって、内部が加熱される。加熱源63は、例えば、赤外線ランプを含む。保持テーブル62が内部に加熱源を有し、保持テーブル62が保持面上に保持された貼り合わせウエーハ20を加熱してもよい。
【0064】
第2実施形態のアニール処理ステップ203では、まず、貼り合わせウエーハ20を、不図示の搬入口からチャンバ61内に搬入し、保持テーブル62で保持する。次に、加熱源63を駆動させ、チャンバ61内を加熱する。第2実施形態のウエーハ10は、シリコンウエーハであるため、赤外線を吸収しやすい。このため、赤外線ランプを含む加熱源63により加熱された貼り合わせウエーハ20は、急速に加熱される。なお、このような加熱方法を、RTA(Rapid Thermal Anneal)と呼ぶ。
【0065】
加熱された貼り合わせウエーハ20の第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2との接合面では、脱水縮合反応が生じる。すなわち、表面13に形成されたOH基から水(HO)が失われることにより、酸素原子(O)を介する共有結合となるため、第一のウエーハ10-1の表面13と第二のウエーハ10-2の表面13との間の結合強度が向上する。
【0066】
なお、アニール処理ステップ203において、貼り合わせウエーハ20をアニール処理する方法は、第2実施形態に記載したチャンバ61内部で1枚ずつ急速加熱する枚葉式RTAに限定されず、例えば、石英製の炉心管に配置した複数枚の貼り合わせウエーハ20を外側からヒーターで加熱し、同時に熱処理するバッチ式であってもよい。また、赤外線による加熱に限定されず、ホットプレートで加熱する方法であってもよい。
【0067】
以上説明したように、各実施形態のウエーハ10の加工方法は、貼り合わせウエーハ20の外周縁12から所定距離内側の位置である環状領域23にレーザービーム43を照射して改質層21と改質層21から伸展するクラック22とを形成した後、切削ブレード53によって環状領域23に沿って切削加工する。
【0068】
これにより、改質層21を起点として外周領域16の端材を確実に除去することができ、研削時に研削ホイール73と第一のウエーハ10-1との間に端材が挟まって損傷する可能性を回避することができるという効果を奏する。また、単に切削のみによって環状領域23の厚み分を加工する場合と比較して、切削屑を削減することができる。
【0069】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0070】
例えば、改質層形成ステップ102、202では、第一のウエーハ10-1の外周領域16における周方向の所定の位置において、外周領域16の内周縁と外周縁12との間に、補助改質層を形成してもよい。これにより、外周領域16における反りおよび剥離が促進される。また、補助改質層により外周領域16が複数の領域に分割されることで、外周領域16の除去が容易である。
【0071】
また、第2実施形態では、アニール処理ステップ203を実施する前に、外周領域除去ステップ204を実施してもよい。これにより、接合強度が弱い状態で外周領域16を除去することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 ウエーハ
10-1 第一のウエーハ
10-2 第二のウエーハ
11 基板
12 外周縁
13 表面
14 裏面
15 中央領域
16 外周領域
17 分割予定ライン
18 デバイス
19 仕上げ厚さ
20 貼り合わせウエーハ
21 改質層
22 クラック
23 環状領域
43 レーザービーム
44 集光点
53 切削ブレード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16