(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008596
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20250109BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20250109BHJP
B28D 5/00 20060101ALI20250109BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20250109BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01L21/304 601Z
H01L21/304 622W
H01L21/02 B
B28D5/00 A
B23K26/53
B24B7/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110876
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 彬
【テーマコード(参考)】
3C043
3C069
4E168
5F057
【Fターム(参考)】
3C043BA03
3C043BA07
3C043BA09
3C043BA12
3C043BA16
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
3C069AA03
3C069BA03
3C069BA08
3C069BB04
3C069BC01
3C069CA03
3C069CA05
3C069EA05
4E168AE01
4E168CB07
4E168HA01
4E168JA12
4E168JA13
5F057AA05
5F057BA19
5F057BB07
5F057BB09
5F057BB12
5F057BC02
5F057CA16
5F057DA11
5F057DA19
5F057DA22
5F057DA31
(57)【要約】
【課題】貼り合わせウエーハの研削工程において、デバイスの破損を抑制しつつ外周余剰領域を除去することができるウエーハの加工方法を提供すること。
【解決手段】ウエーハの加工方法は、第一のウエーハおよび第二のウエーハのうち少なくともいずれかの一方の面に対してプラズマ処理を施し該面を活性化させるプラズマ活性化処理ステップ101と、第一のウエーハと第二のウエーハとを仮接合して貼り合わせウエーハを形成する貼り合わせウエーハ形成ステップ102と、レーザービームで第一のウエーハの内部に環状の改質層およびクラックを形成することで外周領域に反りを生じさせる改質層形成ステップ103と、中央領域を圧着する圧着ステップ104と、アニール処理により貼り合わせウエーハの接合強度を上げるアニール処理ステップ105と、第一のウエーハを研削して仕上げ厚さまで薄化する研削ステップ106と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハの加工方法であって、
第一のウエーハと第二のウエーハとを接合するために、該第一のウエーハの一方の面および該第二のウエーハの一方の面のうち少なくともいずれかの面に対してプラズマ処理を施すことにより該プラズマ処理が施された該面を活性化させるプラズマ活性化処理ステップと、
該プラズマ活性化処理ステップを実施した後に、第一のウエーハの該一方の面と、第二のウエーハの該一方の面とを仮接合して貼り合わせウエーハを形成する貼り合わせウエーハ形成ステップと、
該貼り合わせウエーハ形成ステップを実施した後に、該第一のウエーハを透過する波長のレーザービームを該第一のウエーハの外周縁よりも所定距離内側の位置に沿って環状に照射し、該第一のウエーハの内部に環状の改質層と該改質層から伸展し該第一のウエーハの該一方の面側に表出するクラックとを形成することで、該改質層および該クラックより該外周縁側の外周領域に反りを生じさせる改質層形成ステップと、
該改質層形成ステップを実施した後に、該貼り合わせウエーハに対してアニール処理を施すことで該第一のウエーハと該第二のウエーハとの接合強度を上げるアニール処理ステップと、
該アニール処理ステップを実施した後に、該貼り合わせウエーハの該第一のウエーハを他方の面側から研削して仕上げ厚さまで薄化する研削ステップと、
を備え、
該改質層形成ステップを実施した後かつ該アニール処理ステップを実施する前に、または該アニール処理ステップを実施している間に、
該第一のウエーハの該改質層よりも中央側の中央領域を圧着する圧着ステップを更に備える
ことを特徴とする、ウエーハの加工方法。
【請求項2】
該改質層形成ステップを実施した後に、
該第一のウエーハの厚さ方向に該改質層に重なる第二の改質層と、該第二の改質層から該第一のウエーハの他方の面側に表出する第二のクラックと、を形成する表出クラック形成ステップを更に備える
ことを特徴とする、請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該研削ステップでは、
該第一のウエーハを仕上げ厚さまで薄化するとともに、該外周領域を除去する
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項4】
該圧着ステップを実施する前に、
該改質層より該外周縁側の該外周領域に外力を付与することで該外周領域を除去する外周領域除去ステップを更に備える
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項5】
該改質層形成ステップでは、
該第一のウエーハを透過する波長のレーザービームを該外周領域に対して照射し、該第一のウエーハの内部に、該第一のウエーハの該一方の面と平行な方向に沿う補助改質層と、該補助改質層から該第一のウエーハの該一方の面と平行な方向に沿って伸展する補助クラックと、を更に形成する
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のデバイスチップの低背化や高集積化に伴い、3次元積層された半導体ウエーハの開発が進んでいる。例えばTSV(Through-Silicon Via)ウエーハは、貫通電極によって2つのチップ同士の貼り合わせによる両チップの電極の接続を可能にしている。
【0003】
こうしたウエーハは、基台となる支持ウエーハ(シリコンやガラス、セラミックス等)に貼り合わされた状態で研削して薄化される。通常、ウエーハは、外周縁が面取りされているため、極薄に研削されると外周縁が所謂ナイフエッジとなり、研削中にエッジの欠けが発生しやすい。これにより、デバイスにまで欠けが延長してデバイスの破損に繋がる可能性がある。
【0004】
ナイフエッジの対策として、ウエーハの表面側の外周縁を環状に切削する所謂エッジトリミング技術が開発された(特許文献1参照)。また、ウエーハを貼り合わせてから、デバイスの外周縁に沿ってレーザービームを照射して環状の改質層を形成することで、その研削中に発生するウエーハのエッジ欠けがデバイスに伸展することを抑制するエッジトリミング方法も考案された(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4895594号公報
【特許文献2】特開2020-057709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法は、切削時にデバイスに届くチッピングを発生させてデバイスを破損させる可能性があり、また、大量の切削屑が出るため、デバイスがコンタミで汚れやすいという課題があった。また、特許文献2の方法は、改質層が接合領域よりも内側に形成されている場合、研削時に除去したい外周余剰領域の端材が剥離せず残存してしまう可能性があった。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、貼り合わせウエーハの研削工程において、デバイスの破損を抑制しつつ外周余剰領域を除去することができるウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウエーハの加工方法は、第一のウエーハと第二のウエーハとを接合するために、該第一のウエーハの一方の面および該第二のウエーハの一方の面のうち少なくともいずれかの面に対してプラズマ処理を施すことにより該プラズマ処理が施された該面を活性化させるプラズマ活性化処理ステップと、該プラズマ活性化処理ステップを実施した後に、第一のウエーハの該一方の面と、第二のウエーハの該一方の面とを仮接合して貼り合わせウエーハを形成する貼り合わせウエーハ形成ステップと、該貼り合わせウエーハ形成ステップを実施した後に、該第一のウエーハを透過する波長のレーザービームを該第一のウエーハの外周縁よりも所定距離内側の位置に沿って環状に照射し、該第一のウエーハの内部に環状の改質層と該改質層から伸展し該第一のウエーハの該一方の面側に表出するクラックとを形成することで、該改質層および該クラックより該外周縁側の外周領域に反りを生じさせる改質層形成ステップと、該改質層形成ステップを実施した後に、該貼り合わせウエーハに対してアニール処理を施すことで該第一のウエーハと該第二のウエーハとの接合強度を上げるアニール処理ステップと、該アニール処理ステップを実施した後に、該貼り合わせウエーハの該第一のウエーハを他方の面側から研削して仕上げ厚さまで薄化する研削ステップと、を備え、該改質層形成ステップを実施した後かつ該アニール処理ステップを実施する前に、または該アニール処理ステップを実施している間に、該第一のウエーハの該改質層よりも中央側の中央領域を圧着する圧着ステップを更に備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のウエーハの加工方法は、該改質層形成ステップを実施した後に、該第一のウエーハの厚さ方向に該改質層に重なる第二の改質層と、該第二の改質層から該第一のウエーハの他方の面側に表出する第二のクラックと、を形成する表出クラック形成ステップを更に備えることが好ましい。
【0010】
また、本発明のウエーハの加工方法において、該研削ステップでは、該第一のウエーハを仕上げ厚さまで薄化するとともに、該外周領域を除去してもよい。
【0011】
また、本発明のウエーハの加工方法は、該圧着ステップを実施する前に、該改質層より該外周縁側の該外周領域に外力を付与することで該外周領域を除去する外周領域除去ステップを更に備えてもよい。
【0012】
また、本発明のウエーハの加工方法において、該改質層形成ステップでは、該第一のウエーハを透過する波長のレーザービームを該外周領域に対して照射し、該第一のウエーハの内部に、該第一のウエーハの該一方の面と平行な方向に沿う補助改質層と、該補助改質層から該第一のウエーハの該一方の面と平行な方向に沿って伸展する補助クラックと、を更に形成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、貼り合わせウエーハの研削工程において、デバイスの破損を抑制しつつ外周余剰領域を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係るウエーハの加工方法の加工対象のウエーハの一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るウエーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図3に示すプラズマ活性化処理ステップの一例を一部断面で示す側面図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す貼り合わせウエーハ形成ステップの一状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図3に示す貼り合わせウエーハ形成ステップ後における貼り合わせウエーハの接合面の状態を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図3に示す改質層形成ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図8】
図8は、
図3に示す改質層形成ステップ後の貼り合わせウエーハの一部を拡大して示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図3に示す圧着ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図10】
図10は、
図3に示すアニール処理ステップの一例を一部断面で示す側面図である。
【
図11】
図11は、
図3に示すアニール処理ステップ後における貼り合わせウエーハの接合面の状態を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、
図3に示す研削ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図13】
図13は、第1変形例に係るウエーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、
図13に示す表出クラック形成ステップ後の貼り合わせウエーハの一部を拡大して示す断面図である。
【
図15】
図15は、第2変形例に係るウエーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、第3変形例に係る改質層形成ステップ後の貼り合わせウエーハを示す平面図である。
【
図18】
図18は、第4変形例に係る改質層形成ステップ後の貼り合わせウエーハを示す平面図である。
【
図19】
図19は、第5変形例に係る改質層形成ステップ後の貼り合わせウエーハの一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0016】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係るウエーハ10の加工方法を図面に基づいて説明する。まず、加工対象のウエーハ10について説明する。
図1は、実施形態に係るウエーハ10の加工方法の加工対象のウエーハ10の一例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示すII-II線に沿う断面図である。
【0017】
図1および
図2に示すウエーハ10は、シリコン(Si)、サファイア(Al
2O
3)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)等を基板11とする円板状の半導体ウエーハ、光デバイスウエーハ等のウエーハであり、実施形態において、シリコンウエーハである。ウエーハ10は、
図2に示すように、厚さ方向の中央が最も外周側に突出して、基板11の表面13から裏面14に亘って断面円弧状になるように、外周縁12が面取りされている。
【0018】
ウエーハ10は、
図1に示すように、基板11の表面13側に中央領域15と、中央領域15を囲繞する外周領域16と、を含むデバイス層を有する。中央領域15は、基板11の表面13に格子状に設定された複数の分割予定ライン17と、分割予定ライン17によって区画された各領域に形成されたデバイス18と、を有している。外周領域16は、全周に亘って中央領域15を囲繞し、かつデバイス18が形成されていない領域である。
【0019】
デバイス18は、実施形態において、3DNANDフラッシュメモリを構成し、電極パッドと、電極パッドに接続した貫通電極とを備える。貫通電極は、基板11が薄化されてデバイス18がウエーハ10から個々に分割された際に、基板11の裏面14側に貫通する。すなわち、実施形態のウエーハ10は、個々に分割されたデバイス18が貫通電極を有する所謂TSVウエーハである。なお、本発明のウエーハ10は、実施形態のような貫通電極を有するTSVウエーハに限定されず、貫通電極のないデバイスウエーハであってもよい。
【0020】
次に、ウエーハ10の加工方法の流れについて説明する。
図3は、実施形態に係るウエーハ10の加工方法の流れを示すフローチャートである。
図3に示すように、実施形態のウエーハ10の加工方法は、プラズマ活性化処理ステップ101と、貼り合わせウエーハ形成ステップ102と、改質層形成ステップ103と、圧着ステップ104と、アニール処理ステップ105と、研削ステップ106と、を備える。実施形態のウエーハ10の加工方法は、一対のウエーハ10の一方の面側を互いに貼り合わせ、外周領域16を除去するための分割起点を形成した後、一方のウエーハ10(第一のウエーハ10-1)を所定の仕上げ厚さ19まで薄化する方法である。なお、実施形態において、一方の面は、表面13である。
【0021】
なお、以降の説明において、一対のウエーハ10のウエーハ10同士を区別する際には、一方のウエーハ10を第一のウエーハ10-1と記し、他方のウエーハ10を第二のウエーハ10-2(
図5参照)と記し、区別しない場合には、単にウエーハ10と記す。薄化しない他方の第二のウエーハ10-2は、実施形態では第一のウエーハ10-1と同様のTSVウエーハであるものとして説明するが、本発明ではパターンの無い単なるサブストレートウエーハでもよい。
【0022】
(プラズマ活性化処理ステップ101)
図4は、
図3に示すプラズマ活性化処理ステップ101の一例を一部断面で示す側面図である。プラズマ活性化処理ステップ101は、第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2とを接合するために、接合面となる面に対してプラズマ処理を施すことによりプラズマ処理が施された面を活性化させるステップである。プラズマ活性化処理ステップ101では、第一のウエーハ10-1の一方の面(実施形態では、表面13)および第二のウエーハ10-2の一方の面(実施形態では、表面13)のうち少なくともいずれかの面にプラズマ処理を施す。
【0023】
実施形態のプラズマ活性化処理ステップ101では、
図4に示すプラズマ処理装置30によって、ウエーハ10(第一のウエーハ10-1および第二のウエーハ10-2)の表面13に対してプラズマ処理を施す。プラズマ処理装置30は、チャンバ31と、下部電極32と、上部電極34と、ガス供給源35と、高周波電源36と、不図示の静電吸着機構、昇降機構、搬入出口、および排気機構と、を備える。
【0024】
チャンバ31内には、下部電極32および上部電極34が上下に対向して配置される。下部電極32は、導電性の材料で形成され、ウエーハ10を保持する円盤状の保持部を有する。保持部の内部には、不図示の静電吸着機構が形成される。静電吸着機構が駆動することにより、保持部の上面に載置されたウエーハ10を静電吸着で固定可能である。
【0025】
上部電極34は、導電性の材料で形成され、下部電極32の保持部に保持されたウエーハ10の上方を覆う円盤状のガス噴出部を有する。ガス噴出部は、ガス供給源35に連通する。ガス供給源35は、アルゴン(Ar)、窒素(N2)または酸素(O2)等のプロセスガスを、ガス噴出部を介してチャンバ31内部に供給する。上部電極34は、不図示の昇降機構によって、下部電極32に対して上下に昇降可能である。
【0026】
下部電極32および上部電極34は、チャンバ31との間に不図示の絶縁部材を有し、チャンバ31と絶縁されている。下部電極32および上部電極34は、高周波電源36と接続する。高周波電源36は、不図示の制御装置から出力される制御信号に基づいて、下部電極32および上部電極34に所定の高周波電力を供給する。
【0027】
プラズマ活性化処理ステップ101では、まず、ウエーハ10を、不図示の搬入口からチャンバ31内に搬入し、表面13側を上方に向けるように下部電極32の保持部に載置する。次に、不図示の静電吸着機構を駆動させて、ウエーハ10を保持部に静電吸着させて保持する。また、不図示の搬入口を閉塞してチャンバ31内の処理空間を密閉する。更に、下部電極32と上部電極34とがプラズマ処理に適した所定の位置関係となるように、不図示の昇降機構によって上部電極34の高さ位置を調整する。
【0028】
プラズマ活性化処理ステップ101では、次に、不図示の排気機構を駆動させ、チャンバ31内の処理空間を真空(低圧)とする。次に、ガス供給源35からチャンバ31内の処理空間にプロセスガスを所定の流量で供給しつつ、高周波電源36から下部電極32および上部電極34に所定の高周波電力を供給することで、プラズマ状のガスをウエーハ10の表面13に供給させる。このようなプラズマ処理を実施することにより、ウエーハ10の表面13に吸着した有機物等の表面不純物が除去されて清浄な面が露出する。更に、露出した清浄な表面13のSi未結合種に、水酸基(OH基)が結合する。すなわち、プラズマ処理により活性化されたウエーハ10の表面13にOH基が形成される。
【0029】
実施形態のプラズマ活性化処理ステップ101は、第一のウエーハ10-1の表面13と第二のウエーハ10-2の表面13のいずれに対しても実施されるが、いずれか一方の面であってもよい。また、プラズマ活性化処理ステップ101において、プラズマ処理を実施する方法は、実施形態に記載したチャンバ31内を減圧してプラズマを発生させる減圧プラズマ法に限定されず、ウエーハ10を載置した待機中においてプラズマ発生電極を面内スキャンする開放型大気圧プラズマ法であってもよい。
【0030】
(貼り合わせウエーハ形成ステップ102)
図5は、
図3に示す貼り合わせウエーハ形成ステップ102の一状態を示す斜視図である。
図6は、
図3に示す貼り合わせウエーハ形成ステップ102後における貼り合わせウエーハ20の接合面の状態を模式的に示す断面図である。貼り合わせウエーハ形成ステップ102は、プラズマ活性化処理ステップ101を実施した後に実施される。貼り合わせウエーハ形成ステップ102は、第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2とを仮接合して貼り合わせウエーハ20を形成するステップである。
【0031】
貼り合わせウエーハ形成ステップ102においては、プラズマ活性化処理ステップ101でOH基を形成した方の面を接合面とする。実施形態では、第一のウエーハ10-1の表面13側と、第二のウエーハ10-2の表面13側と、を貼り合わせる。
【0032】
貼り合わせウエーハ形成ステップ102では、まず、
図5に示すように、第一のウエーハ10-1の表面13と、第二のウエーハ10-2の表面13とを、間隔をあけて対向させる。次に、第一のウエーハ10-1の表面13と第二のウエーハ10-2の表面13とを、貼り合わせる。これにより、貼り合わせウエーハ20を形成する。
【0033】
この際、
図6に示すように、第一のウエーハ10-1の表面13側に形成されたOH基の水素原子(H)が、第二のウエーハ10-2の表面13側に形成されたOH基の酸素原子(O)との間に水素結合を形成する。また、第二のウエーハ10-2の表面13側に形成されたOH基の水素原子(H)が、第一のウエーハ10-1の表面13側に形成されたOH基の酸素原子(O)との間に水素結合を形成する。これにより、第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2とは、水素結合により互いに引き合い、仮接合される。
【0034】
(改質層形成ステップ103)
図7は、
図3に示す改質層形成ステップ103の一状態を一部断面で示す側面図である。
図8は、
図3に示す改質層形成ステップ103後の貼り合わせウエーハ20の一部を拡大して示す断面図である。改質層形成ステップ103は、貼り合わせウエーハ形成ステップ102を実施した後に実施される。改質層形成ステップ103は、第一のウエーハ10-1の外周縁12よりも所定距離内側の位置に沿って環状の改質層21と一方の面(実施形態では、表面13)側に表出するクラック22とを形成することで外周領域16に反りを生じさせるステップである。
【0035】
改質層形成ステップ103では、
図7に示すレーザー加工装置40によるステルスダイシングによって、第一のウエーハ10-1の内部に改質層21およびクラック22を形成する。レーザー加工装置40は、保持テーブル41と、レーザービーム照射ユニット42と、を備える。保持テーブル41は、ウエーハ10を保持面に保持し、垂直な軸心回りに回動可能である。レーザービーム照射ユニット42は、保持テーブル41に保持されたウエーハ10に対してレーザービーム43を照射する。レーザー加工装置40は、更に、保持テーブル41とレーザービーム照射ユニット42とを相対的に移動させる不図示の移動ユニット、および保持テーブル41に保持されたウエーハ10を撮像する不図示の撮像ユニット等を備える。
【0036】
改質層形成ステップ103では、第一のウエーハ10-1の裏面14側から、第一のウエーハ10-1の外周縁12より所定距離内側の位置に沿ってレーザービーム43を照射することで、第一のウエーハ10-1の内部に環状の改質層21を形成する。外周縁12より所定距離内側の位置とは、具体的には、中央領域15と外周領域16との境界である。レーザービーム43は、第一のウエーハ10-1に対して透過性を有する波長のレーザービームであり、例えば、赤外線(Infrared Rays;IR)である。
【0037】
改質層21とは、レーザービーム43が照射されることによって、密度、屈折率、機械的強度またはその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味する。改質層21は、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、およびこれらの領域が混在した領域等である。改質層21は、第一のウエーハ10-1の他の部分よりも機械的な強度等が低い。
【0038】
改質層形成ステップ103では、まず、第二のウエーハ10-2の裏面14側を保持テーブル41の保持面(上面)に吸引保持する。次に、第一のウエーハ10-1とレーザービーム照射ユニット42の集光器との位置合わせを行う。具体的には、不図示の移動ユニットによって、保持テーブル41をレーザービーム照射ユニット42の下方の照射領域まで移動させる。次に、不図示の撮像ユニットで第一のウエーハ10-1を撮影しアライメントすることで、レーザービーム照射ユニット42の照射部を第一のウエーハ10-1の外周縁12より所定距離内側の位置に向けて鉛直方向に対向させた後、レーザービーム43の集光点44を、第一のウエーハ10-1の内部に設定する。
【0039】
改質層形成ステップ103では、次に、保持テーブル41を垂直な軸心回りに回転させながら、レーザービーム照射ユニット42からパルス状のレーザービーム43を、第一のウエーハ10-1の裏面14側から照射する。すなわち、レーザービーム43を第一のウエーハ10-1の外周縁12より所定距離内側の位置に沿って環状に照射する。
【0040】
これにより、第一のウエーハ10-1において、外周縁12より所定距離内側の位置に沿う環状の改質層21が形成され、改質層21からはクラック22が伸展し、改質層21とクラック22との連結によって、第一のウエーハ10-1の外周縁12より所定距離内側の位置に分割起点が形成される。
図8に示すように、改質層形成ステップ103では、改質層21から伸展するクラック22が、第一のウエーハ10-1の表面13側に表出するように、レーザービーム43の照射による改質層21を形成する。
【0041】
なお、改質層形成ステップ103では、レーザービーム43の集光点44の高さを変更して複数回レーザービーム43を照射する、または、第一のウエーハ10-1の厚さ方向に離れた複数の集光点44を有するレーザービーム43を照射することで、第一のウエーハ10-1の厚さ方向に重なる複数の改質層21を形成してもよい。複数回レーザービーム43を第一のウエーハ10-1の裏面14側から照射する場合は、表面13側から裏面14側に向かって順に改質層21を形成する。また、第一のウエーハ10-1の表面13に対して垂直とは、伸展したクラック22全体を平面に近似した近似平面の垂直面に対する傾きが、±5度以内、好ましくは±2度以内であることを示す。また、レーザービーム43の進行方向に分岐されたレーザービーム43を用いてもよいし、進行方向と直交する方向に分岐されたレーザービーム43を用いてもよいし、進行方向が長軸かつ進行方向と直交する方向に短軸を有する楕円形状のレーザービーム43を用いてもよい。
【0042】
図8に示すように、第一のウエーハ10-1は、改質層21およびクラック22が形成されることによって、第一のウエーハ10-1の改質層21およびクラック22より外周縁12側の外周領域16が、第二のウエーハ10-2から離隔するような反りを生じさせる。
【0043】
この外周領域16の反りによって、第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2との接合が解除される。なお、反りにより接合が解除されるのは、第一のウエーハ10-1の表面13側のデバイス層と第二のウエーハ10-2の表面13側のデバイス層との界面に限定されず、第一のウエーハ10-1の基板11とデバイス層との界面や、第二のウエーハ10-2の基板11とデバイス層との界面において、接合が解除されてもよい。改質層21およびクラック22を第一のウエーハ10-1の全周に沿って環状に形成すると、改質層形成ステップ103を終了する。
【0044】
(圧着ステップ104)
図9は、
図3に示す圧着ステップ104の一状態を一部断面で示す側面図である。圧着ステップ104は、改質層形成ステップ103を実施した後かつアニール処理ステップ105を実施する前に実施される。なお、本発明では、アニール処理ステップ105を実施している間に圧着ステップ104を実施してもよい。圧着ステップ104は、第一のウエーハ10-1の改質層21よりも中央側の中央領域15を圧着するステップである。
【0045】
実施形態の圧着ステップ104では、
図9に示す押圧装置50によって、第一のウエーハ10-1の中央領域15を第二のウエーハ10-2に圧着させる。押圧装置50は、保持テーブル51と、押圧ユニット52と、を備える。押圧ユニット52は、保持テーブル51の保持面(上面)に対向し、平坦かつ中央領域15と略同形の押圧面53を有する。押圧ユニット52は、保持テーブル51に対して相対的に移動可能である。
【0046】
圧着ステップ104では、まず、保持テーブル51の保持面に、第二のウエーハ10-2の裏面14側を吸引保持する。次に、押圧面53が第一のウエーハ10-1の中央領域15の直上に位置するように、保持テーブル51と押圧ユニット52とを位置合わせする。次に、押圧ユニット52を保持テーブル51に接近させ、第一のウエーハ10-1を裏面14側から押圧する。なお、押圧装置50は、押圧ユニット52に対して保持テーブル51がせり上がるものであってもよい。
【0047】
貼り合わせウエーハ20は、中央領域15が保持テーブル51の保持面と押圧ユニット52の押圧面53との間に挟まれて押圧されることで、第一のウエーハ10-1の中央領域15と第二のウエーハ10-2とが圧着される。これにより、改質層形成ステップ103において外周領域16に生じた反りが、中央領域15にまで達し、中央領域15における接合が解除されている場合でも、中央領域15を再び接合することができる。
【0048】
(アニール処理ステップ105)
図10は、
図3に示すアニール処理ステップ105の一例を一部断面で示す側面図である。
図11は、
図3に示すアニール処理ステップ105後における貼り合わせウエーハ20の接合面の状態を模式的に示す断面図である。アニール処理ステップ105は、改質層形成ステップ103を実施した後に実施される。実施形態のアニール処理ステップ105は、更に、圧着ステップ104を実施した後に実施される。アニール処理ステップ105は、貼り合わせウエーハ20に対してアニール処理を施すことで第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2との接合強度を上げるステップである。
【0049】
実施形態のアニール処理ステップ105は、
図10に示すアニール処理装置60において実施される。アニール処理装置60は、チャンバ61と、保持テーブル62と、加熱源63と、を備える。チャンバ61内には、保持テーブル62が配置される。保持テーブル62は、保持面に貼り合わせウエーハ20を吸引保持可能である。チャンバ61内は、加熱源63によって、内部が加熱される。加熱源63は、例えば、赤外線ランプを含む。保持テーブル62が内部に加熱源を有し、保持テーブル62が保持面上に保持された貼り合わせウエーハ20を加熱してもよい。
【0050】
実施形態のアニール処理ステップ105では、まず、貼り合わせウエーハ20を、不図示の搬入口からチャンバ61内に搬入し、保持テーブル62で保持する。次に、加熱源63を駆動させ、チャンバ61内を加熱する。実施形態のウエーハ10は、シリコンウエーハであるため、赤外線を吸収しやすい。このため、赤外線ランプを含む加熱源63により加熱された貼り合わせウエーハ20は、急速に加熱される。なお、このような加熱方法を、RTA(Rapid Thermal Anneal)と呼ぶ。
【0051】
加熱された貼り合わせウエーハ20の第一のウエーハ10-1と第二のウエーハ10-2との接合面では、脱水縮合反応が生じる。すなわち、表面13に形成されたOH基から水(H2O)が失われることにより、酸素原子(O)を介する共有結合となるため、第一のウエーハ10-1の表面13と第二のウエーハ10-2の表面13との間の結合強度が向上する。
【0052】
なお、アニール処理ステップ105において、貼り合わせウエーハ20をアニール処理する方法は、実施形態に記載したチャンバ61内部で1枚ずつ急速加熱する枚葉式RTAに限定されず、例えば、石英製の炉心管に配置した複数枚の貼り合わせウエーハ20を外側からヒーターで加熱し、同時に熱処理するバッチ式であってもよい。また、赤外線による加熱に限定されず、ホットプレートで加熱する方法であってもよい。
【0053】
(研削ステップ106)
図12は、
図3に示す研削ステップ106の一状態を一部断面で示す側面図である。研削ステップ106は、アニール処理ステップ105を実施した後に実施される。研削ステップ106は、貼り合わせウエーハ20の第一のウエーハ10-1を他方の面(実施形態では、裏面14)側から研削して仕上げ厚さ19まで薄化するステップである。
【0054】
実施形態の研削ステップ106では、
図12に示す研削装置70によって、第一のウエーハ10-1の裏面14側を研削して所定の仕上げ厚さ19まで薄化する。研削装置70は、保持テーブル71と、回転軸部材であるスピンドル72と、スピンドル72の下端に取り付けられた研削ホイール73と、研削ホイール73の下面に装着される研削砥石74と、不図示の研削液供給ユニットと、を備える。研削ホイール73は、保持テーブル71の軸心と平行な回転軸で回転する。
【0055】
研削ステップ106では、まず、保持テーブル71の保持面に、第二のウエーハ10-2の裏面14側を吸引保持する。次に、保持テーブル71を軸心回りに回転させた状態で、研削ホイール73を軸心回りに回転させる。不図示の研削液供給ユニットによって研削液を加工点に供給するとともに、研削ホイール73の研削砥石74を保持テーブル71に所定の送り速度で近付けることによって、研削砥石74で第一のウエーハ10-1の裏面14を研削し、所定の仕上げ厚さ19まで薄化する。
【0056】
この際、研削砥石74が第一のウエーハ10-1の研削面を押圧する外力によって、改質層21およびクラック22を分割起点として、第一のウエーハ10-1の外周領域16の端材を除去してもよい。
【0057】
以上説明したように、実施形態に係るウエーハ10の加工方法は、一対のウエーハ10同士を水素結合によって仮接合で貼り合わせ、改質層形成ステップ103において第一のウエーハ10-1の外周領域16に反りを生じさせ接合不良にさせた後、研削の前にアニール処理によって結合強度を上げる。これにより、接合強度が弱い状態で外周領域16を剥離させることができるため、後に続く研削ステップ106における研削中の外周領域16の除去を促進している。
【0058】
また、改質層形成ステップ103の後、アニール処理ステップ105の前に、圧着ステップ104を実施して、中央領域15を圧着している。これにより、改質層21の形成により外周領域16の反り力が強すぎて、改質層21よりも内側の中央領域15まで剥離して接合が解除されてしまった場合でも、再度接合させることが可能となるため、外周領域16を除去するとともに、中央領域15の剥離を抑制できるという効果を奏する。また、改質層21の形成位置にボイドが存在していた場合でも、圧着によりボイドを潰すことが可能である。
【0059】
また、実施形態のウエーハ10の加工方法は、外周領域16を除去するための分割起点となる環状の改質層21を形成する工程(改質層形成ステップ103)が、ウエーハ10同士を貼り合わせる工程(貼り合わせウエーハ形成ステップ102)より後の工程となる。これにより、改質層21の形成加工に伴う加工屑が、貼り合わせ面に飛散することがないため、よりクリーンプロセスとすることができる。また、改質層21の形成後、貼り合わせのためにウエーハ10を搬送する必要がないため、搬送に伴うエッジ欠け等のリスクを抑制できる。
【0060】
〔第1変形例〕
本発明の第1変形例に係るウエーハ10の加工方法を図面に基づいて説明する。
図13は、第1変形例に係るウエーハ10の加工方法の流れを示すフローチャートである。
図13に示すように、第1変形例のウエーハ10の加工方法は、プラズマ活性化処理ステップ201と、貼り合わせウエーハ形成ステップ202と、改質層形成ステップ203と、表出クラック形成ステップ204と、圧着ステップ205と、アニール処理ステップ206と、研削ステップ207と、を備える。
【0061】
なお、第1変形例のプラズマ活性化処理ステップ201、貼り合わせウエーハ形成ステップ202、改質層形成ステップ203、圧着ステップ205、アニール処理ステップ206、および研削ステップ207は、実施形態のプラズマ活性化処理ステップ101、貼り合わせウエーハ形成ステップ102、改質層形成ステップ103、圧着ステップ104、アニール処理ステップ105、および研削ステップ106、と同様の手順であるため、説明を省略する。
【0062】
(表出クラック形成ステップ204)
図14は、
図13に示す表出クラック形成ステップ204後の貼り合わせウエーハ20の一部を拡大して示す断面図である。表出クラック形成ステップ204は、改質層形成ステップ203を実施した後に実施される。表出クラック形成ステップ204は、第一のウエーハ10-1の厚さ方向に改質層21に重なる第二の改質層21-1と、第二の改質層21-1から第一のウエーハ10-1の他方の面(第1変形例では、裏面14)側に表出する第二のクラック22-1と、を形成するステップである。
【0063】
表出クラック形成ステップ204において、第二の改質層21-1および第二のクラック22-1を形成する手順は、レーザービーム43の集光点44を位置づける高さを、改質層21を形成する位置より裏面14側に変更させる以外、改質層21およびクラック22を形成する手順と同様である。表出クラック形成ステップ204では、第二の改質層21-1から伸展する第二のクラック22-1が、第一のウエーハ10-1に形成された改質層21のうち、最も裏面14側に形成された改質層21から裏面14側に伸展するクラック22に連結するように、レーザービーム43を照射する。
【0064】
また、第二のクラック22-1が裏面14側に表出するよう、レーザービーム43の集光点44の高さを変更して複数回レーザービーム43を照射する、または、第一のウエーハ10-1の厚さ方向に離れた複数の集光点44を有するレーザービーム43を照射することで、第一のウエーハ10-1の厚さ方向に重なる複数の第二の改質層21-1を形成する。
図14に示すように、第一のウエーハ10-1は、第二の改質層21-1および第二のクラック22-1が形成されることによって、外周縁12より所定距離内側の位置に沿う環状の領域に、第一のウエーハ10-1の表面13から裏面14に亘って分割起点が形成される。
【0065】
以上説明したように、第1変形例のウエーハ10の加工方法は、第一のウエーハ10-1の表面13側のみならず裏面14側にもクラック22(第二のクラック22-1)を表出させる。改質層形成ステップ203において形成された改質層21およびクラック22に加え、表出クラック形成ステップ204において形成された第二の改質層21-1および第二のクラック22-1が膨出することによって、第一のウエーハ10-1は、外周領域16が、第二のウエーハ10-2から離隔するような反りを生じさせる。これにより、仮接合状態であった第一のウエーハ10-1の表面13と第二のウエーハ10-2の表面13との接合は、外周領域16において剥がれる。この際、クラック22が表面13のみに表出しているより、表面13および裏面14の両方の面に表出している方が、より外周領域16の除去が容易である。
【0066】
〔第2変形例〕
本発明の第2変形例に係るウエーハ10の加工方法を図面に基づいて説明する。
図15は、第2変形例に係るウエーハ10の加工方法の流れを示すフローチャートである。
図15に示すように、第2変形例のウエーハ10の加工方法は、プラズマ活性化処理ステップ301と、貼り合わせウエーハ形成ステップ302と、改質層形成ステップ303と、外周領域除去ステップ304と、圧着ステップ305と、アニール処理ステップ306と、研削ステップ307と、を備える。
【0067】
なお、第2変形例のプラズマ活性化処理ステップ301、貼り合わせウエーハ形成ステップ302、改質層形成ステップ303、圧着ステップ305、アニール処理ステップ306、および研削ステップ307は、実施形態のプラズマ活性化処理ステップ101、貼り合わせウエーハ形成ステップ102、改質層形成ステップ103、圧着ステップ104、アニール処理ステップ105、および研削ステップ106、と同様の手順であるため、説明を省略する。
【0068】
(外周領域除去ステップ304)
図16は、
図15に示す外周領域除去ステップ304の一例を一部断面で示す側面図である。外周領域除去ステップ304は、圧着ステップ305を実施する前に実施される。外周領域除去ステップ304は、第一のウエーハ10-1の環状の改質層21が形成された位置よりも外周縁12側の外周領域16に対して外力を付与して外周領域16を除去するステップである。第2変形例の外周領域除去ステップ304では、押圧部材80で第一のウエーハ10-1の厚み方向のせん断力を付与することによって、外周領域16を除去する。
【0069】
押圧部材80は、上下方向に移動可能であり、貼り合わせウエーハ20の第一のウエーハ10-1に対して上方から押圧し荷重をかけることで外力を付与する。外周領域除去ステップ304では、まず、第一のウエーハ10-1が上方に位置するように貼り合わせウエーハ20を載置する。次に、押圧部材80を第一のウエーハ10-1の外周領域16に向けて鉛直方向に対向させた状態で下方に降下させ、押圧部材80を第一のウエーハ10-1の外周領域16に押し付けて荷重をかける。
【0070】
これにより、押圧部材80によって外周領域16に対して下方向の外力が付与される。すると、改質層21およびクラック22を起点として、中央領域15と外周領域16とが分割され、第一のウエーハ10-1の外周領域16が除去される。
【0071】
外周領域除去ステップ304において外力を付与する方法は、
図16に示す第2変形例に記載した外周領域16を上方から押圧してせん断方向への外力を付与する方法に限定されず、外周領域16を持ち上げてせん断方向への外力を付与するものでもよいし、ローラによって破砕するものであってもよい。また、機械的な外力に限定されず、超音波による振動や、第一のウエーハ10-1の裏面14に貼り付けたエキスパンドテープを拡張することによる放射方向への外力であってもよい。
【0072】
以上説明したように、第2変形例のウエーハ10の加工方法は、改質層形成ステップ303の後、圧着ステップ305の前に、外周領域除去ステップ304を実施して、第一のウエーハ10-1の外周領域16を除去している。これにより、接合強度が弱い状態で環状の改質層21より外周縁12側の外周領域16を除去することができる。
【0073】
〔第3変形例〕
図17は、第3変形例に係る改質層形成ステップ103、203、303後の貼り合わせウエーハ20を示す平面図である。第3変形例の改質層形成ステップ103、203、303では、第一のウエーハ10-1に形成する環状の改質層21およびクラック22より外周縁12側の外周領域16に、改質層21と同心環状の補助改質層23と表面13側に表出する補助クラックとを形成する。
【0074】
補助改質層23を形成する手順は、レーザービーム43の照射位置を外周縁12側に所定距離変更させる以外、改質層21を形成する手順と同様である。補助改質層23は、改質層21を形成した後に形成してもよいし、改質層21を形成する前に形成してもよい。また、照射するレーザービーム43は、第一のウエーハ10-1を透過する波長のレーザービームであり、改質層形成ステップ103、203、303における加工条件と同一でも異なっていてもよい。
【0075】
外周領域16には、第一のウエーハ10-1において、外周縁12より所定距離内側の位置に沿う環状の補助改質層23が形成され、補助改質層23からは補助クラックが伸展する。この際、補助改質層23から伸展する補助クラックが、第一のウエーハ10-1の表面13側に表出するように、レーザービーム43の照射による補助改質層23を形成する。なお、第1変形例の表出クラック形成ステップ204のように、補助クラックが、第一のウエーハ10-1の表面13側のみならず、裏面14側に表出してもよい。
【0076】
第一のウエーハ10-1は、補助改質層23および補助クラックが膨出することによって、第一のウエーハ10-1は、外周領域16が、第二のウエーハ10-2から離隔するような反りを生じさせる。これにより、改質層21およびクラック22が形成されることによって生じる反りと合わせて、より大きな反りが生じる。
【0077】
以上説明したように、第3変形例のウエーハ10の加工方法は、第一のウエーハ10-1の外周領域16に改質層21と同心環状の補助改質層23および補助クラックを形成する。これにより、外周領域16における第一のウエーハ10-1の反りを促進させることができるため、より外周領域16の除去が容易である。
【0078】
〔第4変形例〕
図18は、第4変形例に係る改質層形成ステップ103、203、303後の貼り合わせウエーハ20を示す平面図である。第4変形例の改質層形成ステップ103、203、303では、第一のウエーハ10-1に形成する環状の改質層21およびクラック22より外周縁12側の外周領域16を、少なくとも二つ以上に区切る補助改質層24および補助クラックを形成する。
【0079】
図18に示す第4変形例では、例えば、第一のウエーハ10-1の外周領域16における周方向の所定の位置において、外周領域16の内周縁と外周縁12との間に、補助改質層24を放射方向に形成する。補助改質層24および補助クラックを形成する手順は、レーザービーム43の照射中に集光点44を移動させる方向が異なる以外、改質層21およびクラック22を形成する手順と同様である。
【0080】
具体的には、レーザービーム43の集光点44が第一のウエーハ10-1の径方向外側に向かって移動するように、保持テーブル41を移動させる。すなわち、外周領域16に放射方向にレーザービーム43を照射することによって、放射方向に沿って補助改質層24を形成する。なお、集光点44が第一のウエーハ10-1の径方向外側から径方向内側へ移動するように保持テーブル41を移動させながらレーザービーム43を照射してもよい。この場合は、集光点44が改質層21に達した時点でレーザービーム43の照射を停止させる。
【0081】
なお、補助改質層24は、改質層21を形成した後に形成してもよいし、改質層21を形成する前に形成してもよい。また、照射するレーザービーム43は、第一のウエーハ10-1を透過する波長のレーザービームであり、改質層形成ステップ103、203、303における加工条件と同一でも異なっていてもよい。また、
図18に示す補助改質層24は、外周領域16を円周方向に8分割しているが、本発明では例えば更に倍の16分割にしてもよく、第一のウエーハ10-1の径や外周領域16の幅の寸法に応じて適宜分割数を設定してよい。
【0082】
以上説明したように、第4変形例のウエーハ10の加工方法は、第一のウエーハ10-1の外周領域16を少なくとも二つ以上に区切る補助改質層23および補助クラックを形成する。これにより、外周領域16において周方向に分割する分割起点が形成されるため、より外周領域16の除去が容易である。
【0083】
〔第5変形例〕
図19は、第5変形例に係る改質層形成ステップ103、203、303後の貼り合わせウエーハ20の一部を拡大して示す断面図である。第5変形例の改質層形成ステップ103、203、303では、第一のウエーハ10-1の内部に、一方の面(表面13)と平行な方向に沿う補助改質層25と、補助改質層25から一方の面(表面13)と平行な方向に沿って伸展する補助クラック26と、を更に形成する。なお、平行な方向とは、伸展した補助クラック26全体を平面に近似した近似平面の水平面に対する傾きが、±5度以内、好ましくは±2度以内であることを示す。
【0084】
第5変形例の改質層形成ステップ103、203、303では、補助改質層25および補助クラック26を、前述した改質層21およびクラック22を形成するより前に形成してもよいし、後に形成してもよい。補助改質層25を形成する手順は、レーザービーム43の照射位置を一方の面(表面13)と平行な方向に沿う位置に変更させる以外、改質層21を形成する手順と同様でよい。
【0085】
第5変形例の改質層形成ステップ103、203、303では、例えば、径方向に分岐したレーザービーム43の複数の集光点44が、外周領域16に沿って環状に移動するように、レーザービーム43を照射する。外周領域16を一周加工した後は、複数の集光点44の位置を径方向に移動させて、平面視において環状の外周領域16全体が加工されるまで、同様に同心円状に加工する。これにより、外周領域16全体に環状の補助改質層25が形成される。この際、補助改質層25からは補助クラック26が第一のウエーハ10-1の表面13と平行な方向に沿って伸展し、平面視において外周領域16全体に伸展する。
【0086】
以上説明したように、第5変形例のウエーハ10の加工方法は、第一のウエーハ10-1の外周領域16において、第一のウエーハ10-1の一方の面(表面13)と平行な方向に沿う補助改質層25および補助クラック26を形成する。すなわち、第一のウエーハ10-1の外周領域16において、表面13側と裏面14側とを分断する層が形成される。
【0087】
補助改質層25および補助クラック26が膨出することによって、第一のウエーハ10-1は、改質層21およびクラック22より外周縁12側の外周領域16が、第二のウエーハ10-2から離隔するような反りを生じさせる。これにより、仮接合状態であった第一のウエーハ10-1の表面13と第二のウエーハ10-2の表面13との接合は、外周領域16において剥がれる。この際、改質層21およびクラック22のみを形成する場合に比べ、より外周領域16を反らせることができるので、後に続く工程での外周領域16の除去がより容易である。
【0088】
なお、本発明は、上記実施形態および変形例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0089】
10 ウエーハ
10-1 第一のウエーハ
10-2 第二のウエーハ
11 基板
12 外周縁
13 表面
14 裏面
15 中央領域
16 外周領域
17 分割予定ライン
18 デバイス
19 仕上げ厚さ
20 貼り合わせウエーハ
21 改質層
21-1 第二の改質層
22 クラック
22-1 第二のクラック
23、24、25 補助改質層
26 補助クラック
43 レーザービーム
44 集光点