(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008600
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】複数のユーザ端末に対して通信を中継する方法、複数のユーザ端末に対する通信の中継を制御する装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/26 20090101AFI20250109BHJP
H04W 72/0446 20230101ALI20250109BHJP
H04W 72/0453 20230101ALI20250109BHJP
H04W 4/08 20090101ALI20250109BHJP
【FI】
H04W16/26
H04W72/0446
H04W72/0453
H04W4/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110884
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 匡史
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】小川 智明
(72)【発明者】
【氏名】阪口 啓
(72)【発明者】
【氏名】ケ スウェン
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA03
5K067AA22
5K067CC02
5K067CC04
5K067DD57
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
5K067EE16
5K067KK02
(57)【要約】
【課題】複数のユーザ端末に対して中継装置を経由して通信を行う場合において、複数の中継装置を用いて通信を行うことのメリットをそれぞれのユーザ端末において享受しつつ、ユーザ端末間の干渉を抑えることを可能にする。
【解決手段】制御装置は、複数のユーザ端末の中で、ユーザ端末間での中継装置の共有が抑えられる所定の空間的条件を満たすユーザ端末のグループを作る。また、複数のユーザ端末のそれぞれに対し、所定の割当規則に従って複数の中継装置を割り当てる。そして、上記グループに属するユーザ端末(空間多重ユーザ)には同一の周波数及び時間の無線リソースを割り当て、上記グループに属しないユーザ端末(時間/周波数多重ユーザ)には他のユーザ端末とは異なる周波数及び時間の無線リソースを割り当てる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザ端末に対して通信を中継する方法であって、
前記複数のユーザ端末の中で、ユーザ端末間での中継装置の共有が抑えられる所定の空間的条件を満たすユーザ端末のグループを作ることと、
前記複数のユーザ端末のそれぞれに対し、所定の割当規則に従って複数の中継装置を割り当てることと、
前記グループに属するユーザ端末に同一の周波数及び時間の無線リソースを割り当てることと、
前記グループに属しないユーザ端末に他のユーザ端末とは異なる周波数及び時間の無線リソースを割り当てることと、を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記所定の空間的条件を満たすユーザ端末のグループを作ることは、他のユーザ端末との空間的距離が閾値よりも大きいユーザ端末で構成されるグループを作ることを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記所定の空間的条件を満たすユーザ端末のグループを作ることは、中継装置を共有する他のユーザ端末のそれぞれとの間での中継装置の共有数が所定数以下のユーザ端末で構成されるグループを作ることを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
前記所定の空間的条件を満たすユーザ端末のグループを作ることは、他のユーザ端末との間に遮蔽物を有するユーザ端末で構成されるグループを作ることを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法において、
前記所定の割当規則に従って複数の中継装置を割り当てることは、前記グループに属するユーザ端末と前記グループに属しないユーザ端末のそれぞれについて、対象のユーザ端末から近い順に所定数の中継装置を割り当てることを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
前記グループ内で中継装置を共有するユーザ端末の組に対し、共有される中継装置の無線リソースを時分割で割り当てることをさらに含む
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
複数のユーザ端末に対する通信の中継を制御する装置であって、
前記複数のユーザ端末の中で、ユーザ端末間での中継装置の共有が抑えられる所定の空間的条件を満たすユーザ端末のグループを作ることと、
前記複数のユーザ端末のそれぞれに対し、所定の割当規則に従って複数の中継装置を割り当てることと、
前記グループに属するユーザ端末に同一の周波数及び時間の無線リソースを割り当てることと、
前記グループに属しないユーザ端末に他のユーザ端末とは異なる周波数及び時間の無線リソースを割り当てることと、を実行するように構成されている
ことを特徴とする装置。
【請求項8】
複数のユーザ端末に対して通信を中継するシステムに設けられた少なくとも一つのプロセッサで実行可能な複数のインストラクションを含むプログラムであって、
前記複数のインストラクションは前記少なくとも一つのプロセッサに、
前記複数のユーザ端末の中で、ユーザ端末間での中継装置の共有が抑えられる所定の空間的条件を満たすユーザ端末のグループを作ることと、
前記複数のユーザ端末のそれぞれに対し、所定の割当規則に従って複数の中継装置を割り当てることと、
前記グループに属するユーザ端末に同一の周波数及び時間の無線リソースを割り当てることと、
前記グループに属しないユーザ端末に他のユーザ端末とは異なる周波数及び時間の無線リソースを割り当てることと、
を実行させるように構成されている
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数のユーザ端末に対して通信を中継する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
高速・大容量・低遅延な無線ネットワークの実現のためには高周波数帯の利用が欠かせない。ただし、高周波数帯の電波は減衰しやすく、且つ、高い直進性を有するため、遮蔽物による見通し外エリアまで通信カバレッジを形成することはできず、また、ユーザ端末への空間多重利得の改善において課題がある。この点に関し、非特許文献1には、多数の中継装置を用いて高周波数帯における空間多重利得を改善する方法が開示されている。中継装置を用いることによって、新たに基地局を設置することなく低コストで見通し外への通信カバレッジを形成することができる。さらには、多数の中継装置を展開して新たな通信経路を確保し、電波の到来角度を広げることにより、空間多重利得を改善することができる。しかしながら、非特許文献1に開示された従来技術は、単一のユーザ端末を前提としたものであって、複数のユーザ端末を収容した場合に生じ得るユーザ間の干渉については考慮されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】K. Sakaguchi, et al., "Mmwave massive analog relay MIMO", ITU Journal on Future and Evolving Technologies, Vol.2, Issue6, Sept. 2021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものである。本開示は、複数のユーザ端末に対して中継装置を経由して通信を行う場合において、複数の中継装置を用いて通信を行うことのメリットをそれぞれのユーザ端末において享受しつつ、ユーザ端末間の干渉を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は上記目的を達成するための方法を提供する。本開示の方法は複数のユーザ端末に対して通信を中継する方法である。本開示の方法は以下の第一乃至第四のステップを含む。第一のステップは、複数のユーザ端末の中で、ユーザ端末間での中継装置の共有が抑えられる所定の空間的条件を満たすユーザ端末のグループ(以下、空間多重グループと呼ぶ)を作るステップである。第二のステップは、複数のユーザ端末のそれぞれに対し、所定の割当規則に従って複数の中継装置を割り当てるステップである。ただし、第二のステップの実行順序と第一のステップの実行順序とは前後してよい。第三のステップは、空間多重グループに属するユーザ端末に同一の周波数及び時間の無線リソースを割り当てるステップである。第四のステップは、空間多重グループに属しないユーザ端末に他のユーザ端末とは異なる周波数及び時間の無線リソースを割り当てるステップである。
【0006】
また、本開示は上記目的を達成するための装置を提供する。本開示の装置は複数のユーザ端末に対する通信の中継を制御する装置である。本開示の装置は以下の第一乃至第四の処理を実行するように構成されている。第一の処理は、複数のユーザ端末の中で上記の空間多重グループを作る処理である。第二の処理は、複数のユーザ端末のそれぞれに対し、所定の割当規則に従って複数の中継装置を割り当てる処理である。ただし、第二の処理の実行順序と第一のステップの実行順序とは前後してよい。第三の処理は、空間多重グループに属するユーザ端末に同一の周波数及び時間の無線リソースを割り当てる処理である。第四の処理は、空間多重グループに属しないユーザ端末に他のユーザ端末とは異なる周波数及び時間の無線リソースを割り当てる処理である。
【0007】
さらに、本開示は上記目的を達成するためのプログラムを提供する。本開示のプログラムは複数のユーザ端末に対して通信を中継するシステムに設けられた少なくとも一つのプロセッサで実行可能な複数のインストラクションを含むプログラムである。本開示のプログラムが含む複数のインストラクションは少なくとも一つのプロセッサに上記の第一乃至第四の処理を実行させるように構成されている。なお、本開示のプログラムはコンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体に記憶されてもよいし、ネットワークを介して提供されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術では、複数のユーザ端末のそれぞれに対して所定の規則に従って複数の中継装置が割り当てられる。また、本開示の技術では、無線リソースの割り当て方法を所定の空間的条件を満たすグループに属するユーザ端末か否かによって切り替えることで、各ユーザ端末が置かれている状況に適した方法で無線リソースが割り当てられる。その結果、本開示の技術によれば、複数の中継装置を用いて通信を行うことのメリットをそれぞれのユーザ端末において享受しつつ、ユーザ端末間の干渉を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の無線中継方法の概要を説明する図である。
【
図2】空間多重ユーザの判定方法の第一実施形態を説明する図である。
【
図3】空間多重ユーザの判定方法の第一実施形態を説明する図である。
【
図4】空間多重ユーザの判定方法の第二実施形態を説明する図である。
【
図5】空間多重ユーザの判定方法の第二実施形態を説明する図である。
【
図6】空間多重ユーザの判定方法の第三実施形態を説明する図である。
【
図7】空間多重ユーザの判定方法の第三実施形態を説明する図である。
【
図8】ユーザ端末への中継装置の割当方法の一つの実施形態を説明する図である。
【
図9】本開示の無線中継システムの概要を説明する図である。
【
図10】本開示の制御装置による処理の一つの実施形態を示すフロー図である。
【
図11】中継装置の割当に係る装置間の動作の連携の一つの実施形態を示すフロー図である。
【
図12】無線中継システムの構成の一つの実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.無線中継方法の概要
図1は本開示の無線中継方法の概要を説明する図である。
図1に示すように、基地局装置30とユーザ端末10との間に多数の遮蔽物50が存在するケースが存在する。このようなケースであっても多数のアナログ中継装置(以下、単に中継装置と呼ぶ)20を無線通信が行われる空間内に配置することによって、遮蔽物50による見通し外エリアまで通信カバレッジを形成することが可能となる。
【0011】
図1に示す例は、ユーザ端末10への中継装置20の一つの理想的な割り当てを示している。この例では、ユーザ#1、ユーザ#2、ユーザ#3のそれぞれのユーザ端末10に重複することなく中継装置20が割り当てられている。このように中継装置20を割り当てることができれば、全てのユーザ端末10間で空間多重化によるマルチユーザ伝送が可能となって、ユーザ端末10間の干渉を最小限に抑えることができる。
【0012】
ただし、中継装置20を成り行きで動作させただけでは、ユーザ端末10から位置情報の通知を受けた全ての中継装置20が動作してしまう。よって、各ユーザ端末10に対して一定のルールに従って能動的に中継装置20が割り当てる必要がある。また、ユーザ端末10間の位置関係によっては、必ずしも全てのユーザ端末10間で空間多重化が実現できるとは限らない。その場合、ユーザ端末10間の干渉を可能な限り抑えることができるように、各ユーザ端末10が置かれている状況に適したユーザ多重方法を選択する必要が有る。
【0013】
ユーザ端末10間のユーザ多重方法としては、
図1に示すような空間多重の他には、時間多重及び周波数多重を挙げることができる。時間多重及び周波数多重は空間多重を利用できない場合の代替として用いることができる。以下、あるユーザ端末10を基準とした場合に、その基準とするユーザ端末10との間で空間多重を実現可能なユーザ端末10を空間多重ユーザと称する。そして、基準とするユーザ端末10との間で空間多重を実現できないユーザ端末10については時間多重或いは周波数多重を適用するものとし、そのユーザ端末10を時間/周波数多重ユーザと称する。
【0014】
あるユーザ端末10を空間多重ユーザに設定するか、或いは、時間/周波数多重ユーザに設定するかは、そのユーザ端末10が所定の空間的条件を満たすか否かによって判定される。その所定の空間的条件とは、ユーザ端末10間での中継装置20の共有が抑えられる空間的条件である。そのような空間的条件を満たすユーザ端末10のグループ、すなわち、空間多重グループに属するユーザ端末10に対しては、ユーザ多重方法として空間多重を適用することができる。一方、空間多重グループに属さないユーザ端末10に対しては、時間多重或いは周波数多重を適用することができる。
【0015】
ユーザ端末10が所定の空間的条件を満たすか否かの判定方法、すなわち、空間多重ユーザの判定方法には、好ましいいくつかの実施形態が存在する。以下、空間多重ユーザの判定方法の実施形態について具体的に説明する。
【0016】
2.空間多重ユーザの判定方法
2-1.第一実施形態
図2及び
図3は空間多重ユーザの判定方法の第一実施形態を説明する図である。第一実施形態では、まず、基準とするユーザ端末10-1が定められる(以下、個々のユーザ端末を区別しない場合にはユーザ端末10と表記し、個々のユーザ端末を区別する場合にはユーザ端末10-Xと表記する)。そして、
図2に示すように、基準となるユーザ端末10-1に対して距離の閾値が設定される。あるユーザ端末10が空間多重ユーザか時間/周波数多重ユーザかは、ユーザ端末10-1からの距離が閾値よりも大きいか否かによって判定される。ユーザ端末10間の空間的距離が離れているほど、空間多重によるマルチユーザ伝送が有効になる可能性が高いからである。距離の閾値は任意の値に設定することができる。なお、ユーザ端末10間の距離はユーザ端末10毎の測位で得られた位置情報から算出される。
【0017】
図2に示す例では、ユーザ端末10-2はユーザ端末10-1からの距離が閾値よりも大きいため、空間多重ユーザと判定される。ユーザ端末10-1とユーザ端末10-2とは、他のユーザ端末10との空間的距離が閾値よりも大きいユーザ端末10で構成されるグループに属しているとみなすことができる。第一実施形態では、このようなグループが空間多重グループとして作られる。一方、ユーザ端末10-3はユーザ端末10-1からの距離が閾値以下であるため、時間/周波数多重ユーザと判定される。ユーザ端末10-3は空間多重グループには属さないユーザ端末である。
【0018】
ユーザ端末10が空間多重ユーザかどうかの判定は順番に行われる。判定の順番は所定の規則に従って決めてもよいしランダムでもよい。
図2に示す例では、ユーザ端末10-2について判定を行った後にユーザ端末10-3について判定を行ってもよいし、ユーザ端末10-3について判定を行った後にユーザ端末10-2について判定を行ってもよい。
図3に示す例では、ユーザ端末10-2、10-3に続けてユーザ端末10-4について判定が行われている。ユーザ端末10-4が空間多重ユーザかどうは、ユーザ端末10-1とユーザ端末10-2とで構成される空間多重グループに属するかどうかで判定される。具体的には、ユーザ端末10-4のユーザ端末10-1からの距離が閾値よりも大きく、且つ、ユーザ端末10-4のユーザ端末10-2からの距離が閾値よりも大きければ、ユーザ端末10-4は空間多重グループに属すると判定される。
【0019】
2-2.第二実施形態
図4及び
図5は空間多重ユーザの判定方法の第二実施形態を説明する図である。第二実施形態では、まず、基準となるユーザ端末10-1を含む各ユーザ端末10に対し、所定の割当規則に従って中継装置20が割り当てられる。中継装置20の割当方法については追って詳細に説明するが、
図4に示す例では、各ユーザ端末10に最も近い中継装置20から順に五つの中継装置20が割り当てられている。あるユーザ端末10が空間多重ユーザか時間/周波数多重ユーザかは、ユーザ端末10-1と共有する中継装置20の共有数が所定数以下か否かによって判定される。ユーザ端末10-1と共有する中継装置20の数が少ないほど、つまり、ユーザ端末10-1と異なる中継装置20の割り当て数が多いほど、空間多重によるマルチユーザ伝送が有効になる可能性が高いからである。なお、判定の基準となる所定数は任意の値に設定することができる。
【0020】
図4に示す例では、ユーザ端末10-2がユーザ端末10-1と共有する中継装置20の共有数はゼロである。空間多重ユーザか時間/周波数多重ユーザかの判定基準とする中継装置20の共有数を二つとすると、ユーザ端末10-2は空間多重ユーザと判定される。ユーザ端末10-1とユーザ端末10-2とは、中継装置20を共有する他のユーザ端末10のそれぞれとの間での中継装置20の共有数が所定数以下のユーザ端末10で構成されるグループに属しているとみなすことができる。第二実施形態では、このようなグループが空間多重グループとして作られる。ユーザ端末10-3はユーザ端末10-1との間での中継装置20の共有数が三つであるため、空間多重グループには属さないユーザ端末である。よって、ユーザ端末10-3は時間/周波数多重ユーザと判定される。
【0021】
図5に示す例では、ユーザ端末10-2、10-3に続けてユーザ端末10-4について判定が行われている。ユーザ端末10-4が空間多重ユーザかどうは、ユーザ端末10-1とユーザ端末10-2とで構成される空間多重グループに属するかどうかで判定される。具体的には、ユーザ端末10-4とユーザ端末10-1との間での中継装置20の共有数が所定数以下であり、且つ、ユーザ端末10-4とユーザ端末10-2との間での中継装置20の共有数が所定数以下であれば、ユーザ端末10-4は空間多重グループに属すると判定される。
【0022】
2-3.第三実施形態
図6及び
図7は空間多重ユーザの判定方法の第三実施形態を説明する図である。第三実施形態では、あるユーザ端末10が空間多重ユーザか時間/周波数多重ユーザかは、基準となるユーザ端末10-1との間に建物等の遮蔽物が存在するか否かによって判定される。遮蔽物によって空間が仕切られることにより、空間多重によるマルチユーザ伝送が有効になる可能性が高いからである。なお、ユーザ端末10間に遮蔽物が存在するか否かは、ユーザ端末10毎の位置情報を地図情報と対比することによって判定することができる。
【0023】
図6に示す例では、ユーザ端末10-2とユーザ端末10-1との間に遮蔽物50-1が存在する。このため、ユーザ端末10-2は空間多重ユーザと判定される。ユーザ端末10-1とユーザ端末10-2とは、他のユーザ端末10との間に遮蔽物を有するユーザ端末10で構成されるグループに属しているとみなすことができる。第三実施形態では、このようなグループが空間多重グループとして作られる。ユーザ端末10-3はユーザ端末10-1との間に遮蔽物を有していないため、空間多重グループには属さないユーザ端末である。よって、ユーザ端末10-3は時間/周波数多重ユーザと判定される。
【0024】
図7に示す例では、ユーザ端末10-2、10-3に続けてユーザ端末10-4について判定が行われている。ユーザ端末10-4が空間多重ユーザかどうは、ユーザ端末10-1とユーザ端末10-2とで構成される空間多重グループに属するかどうかで判定される。ユーザ端末10-4とユーザ端末10-1との間には遮蔽物50-1、50-2が存在し、ユーザ端末10-4とユーザ端末10-2との間には遮蔽物50-2が存在する。このため、ユーザ端末10-4は空間多重グループに属すると判定される。
【0025】
3.中継装置の割当方法
次に、ユーザ端末10への中継装置20の割当方法について説明する。ユーザ端末10への中継装置20の割り当ては所定の割当規則に従って行われる。
図8はユーザ端末10への中継装置20の割当方法の一つの実施形態を説明する図である。ここでは、複数の中継装置20を介してユーザ端末10-1とユーザ端末10-2とに対するマルチユーザ伝送が行われるものとする。
【0026】
中継装置20の割り当てを行う場合、まず、ユーザ端末10-1、10-2と各中継装置20の位置情報から、ユーザ端末10-1、10-2と各中継装置20との間の距離が算出される。そして、ユーザ端末10-1に対しては、ユーザ端末10-1から近い順に所定数の中継装置20が割り当てられる。同様に、ユーザ端末10-2に対しても、ユーザ端末10-2から近い順に所定数の中継装置20が割り当てられる。ユーザ端末10-1、10-2に割り当てられる中継装置20の数は任意に設定することができる。
図8に示す例では、中継装置20の割り当て数は七つに設定されている。
【0027】
図8に示す例では、中継装置20x及び中継装置20yは、ユーザ端末10-1とユーザ端末10-2の両方に割り当てられている。このようにユーザ端末10-1、10―2間で中継装置20x、20yが共有される場合、各中継装置20x、20yには、各ユーザ端末10-1、10―2のユーザスケジューリング情報が通知される。各中継装置20x、20yはユーザスケジューリング情報にしたがって、各ユーザ端末10-1、10―2に対してビーム制御を実行する。その際、各ユーザ端末10-1、10―2には、各中継装置20x、20yの無線リソースが時分割で割り当てられる。
【0028】
4.無線中継システムの概要
上述の無線中継方法は無線中継システムで実行される。
図9は本開示の無線中継システムの概要を説明する図である。
図9に示す一つの実施形態では、無線中継システム2は中継装置20、基地局装置30、及び制御装置40を備える。
【0029】
中継装置20はプロセッサ201と、メモリ202と、プロセッサ201で実行可能な複数のインストラクション203とを備える。複数のインストラクション203はメモリ102に記憶されている。中継装置20を構成するプロセッサ201及びメモリ202の各個数はそれぞれ複数でもよい。一つの無線中継システム2には複数の中継装置20が含まれている。
【0030】
基地局装置30はプロセッサ301と、メモリ302と、プロセッサ301で実行可能な複数のインストラクション303とを備える。複数のインストラクション303はメモリ302に記憶されている。基地局装置30を構成するプロセッサ301及びメモリ302の各個数はそれぞれ複数でもよい。一つの無線中継システム2には一つ又は複数の基地局装置30が含まれている。
【0031】
制御装置40は無線中継システム2の動作を制御する装置である。制御装置40はプロセッサ401と、メモリ402と、プロセッサ401で実行可能な複数のインストラクション403とを備える。複数のインストラクション403はメモリ402に記憶されている。メモリ402はRAM、ROM、及びストレージを含む。前述の空間多重ユーザの判定で用いられる各種の閾値や設定値はメモリ402に記憶されていてもよい。また、メモリ402には地図情報が記憶されていてもよい。制御装置40を構成するプロセッサ401及びメモリ402の各個数はそれぞれ複数でもよい。制御装置40の一部又は全部の機能は中継装置20と一体化されてもよい。また、制御装置40の一部又は全部の機能は基地局装置30と一体化されてもよい。
【0032】
また、一つの実施形態ではユーザ端末10を無線中継システム2の構成要素に含めてもよい。その場合、一つの無線中継システム2に複数のユーザ端末10が含まれてもよい。ユーザ端末10はプロセッサ101と、メモリ102と、プロセッサ101で実行可能な複数のインストラクション103とを備える。複数のインストラクション103はメモリ102に記憶されている。ユーザ端末10を構成するプロセッサ101及びメモリ102の各個数はそれぞれ複数でもよい。
【0033】
上記のように無線中継システム2は実行可能な複数のインストラクションを含む。それらが無線中継システム2に含まれる少なくとも一つのプロセッサで実行されることによって、後述するように無線中継システム2が動作し、上述の無線中継方法によるマルチユーザ伝送が行われる。なお、無線中継システム2に含まれるプロセッサは、CPU、RISC、DSP、FPGA、ASIC、PLD、又は別の処理ユニットであってもよいし、それらの2以上の組合せであってもよいし、後述の実施形態に従って動作する専用プロセッサであってもよい。また、プロセッサはメモリと通信可能に結合されてもよいし、メモリを内蔵してもよい。
【0034】
5.制御装置による処理
次に、上述の制御装置40で行われる処理について説明する。
図10は制御装置40で行われる処理の一つの実施形態を示すフロー図である。フロー図に示す処理の主体は制御装置40、より詳しくは、それら処理に対応するインストラクションを実行する少なくとも一つのプロセッサである。なお、フロー図においてユーザとはユーザ端末10を意味し、以下のフロー図の説明ではこの語を使用する。
【0035】
まず、ステップS01では、制御装置40はマルチユーザ伝送の対象となるユーザの中から基準となるユーザ♯1を決定する。ユーザ♯1の一つの選択方法では、全てのユーザ或いはこれから通信を行うユーザの中からランダムに選択されたユーザがユーザ♯1とされる。ユーザ♯1の別の選択方法では、全てのユーザ或いはこれから通信を行うユーザの中で、シングルユーザ伝送を行った際に最も伝送容量が大きくなるユーザがユーザ♯1として選択される。
【0036】
次に、ステップS02では、制御装置40はユーザ#1へ割当てる中継装置20を決定する。ユーザ#1への中継装置20の割当方法は、「3.中継装置の割当方法」で説明した通りである。
【0037】
次に、ステップS03では、制御装置40は現在選択されているユーザ以外にユーザが存在するかを確認する。他にもユーザが存在すれば処理はステップS04へ進む。
【0038】
ステップS04では、制御装置40は既に選択されたユーザ以外から次のユーザ#nを選択する。nはn番目に選択されたユーザであることを意味する。次のユーザ#nは予め決められた順番に従って選択されてもよいし、ランダムに選択されてもよい。
【0039】
次に、ステップS05では、制御装置40はステップS04で選択したユーザ#nに対して空間多重を適用できるかどうかを判定する。空間多重を適用できるかどうかの判定には、「2.空間多重ユーザの判定方法」で説明した方法が用いられる。空間多重ユーザの判定方法の第一乃至第三実施形態のいずれか一つを用いてもよいし、二つ或いは全部を組み合わせて用いてもよい。空間多重を適用できるのであれば処理はステップS07へ進み、空間多重を適用できないのであれば処理はステップS08へ進む。
【0040】
ステップS07では、制御装置40はユーザ#nを空間多重ユーザに設定する。空間多重ユーザに設定されたユーザ#nは、ユーザ#1を含む先に空間多重ユーザに設定されたユーザとともに空間多重グループを構成する。
【0041】
ステップS08では、制御装置40はユーザ#nを時間/周波数多重ユーザに設定する。
【0042】
次に、ステップS09では、制御装置40はユーザ#nに割り当てる中継装置20を決定する。ユーザ#nへの中継装置20の割当方法は「3.中継装置の割当方法」で説明した通りである。
【0043】
ステップS09の実行後、再びステップS03が実行される。他に選択可能なユーザがいなくなるまで、制御装置40はステップS03からステップ09までの処理を繰り返し実行する。そして、他に選択可能なユーザがいなくなった場合、処理はステップS10へ進む。
【0044】
ステップS10では、制御装置40は各ユーザに周波数/時間リソースを割り当てる。詳しくは、空間多重グループに属する空間多重ユーザには、同一の周波数及び時間の無線リソースが割り当てられる。空間多重グループに属しない時間/周波数多重ユーザには、他のユーザとは異なる周波数及び時間の無線リソースが割り当てられる。空間多重ユーザと時間/周波数多重ユーザとの間での無線リソースの配分には、ユーザ間で公平になるように配分する方法を用いてもよいし、プロポーショナルフェアネス規範に基づいて配分する方法を用いてもよい。
【0045】
6.装置間の動作の連携
次に、中継装置20の割当に係る装置間の動作の連携について説明する。
図11は装置間の動作の連携の一つの実施形態を示すフロー図である。
【0046】
ユーザ端末10は内蔵する測位機能によって自身の測位を実行する。測位はユーザ端末10毎に行われる。次に、ユーザ端末10は測位によって得られた位置情報を制御装置40へ送信する。ユーザ端末10による位置情報の送信は定期的に行われてもよいし、一定の受信品質が満足されていないことをトリガーとして行われてもよい。
【0047】
制御装置40はユーザ端末10から送信された位置情報を受信し、位置情報に基づいて中継装置20をユーザ端末10に割り当てる。制御装置40が割り当てた中継装置20に関する情報は、制御装置40から基地局装置30及び中継装置20に通知される。なお、事前処理として、制御装置40は基地局装置30及び中継装置20の位置情報を取得しメモリ402に記憶させておく。
【0048】
同一の中継装置20を複数のユーザ端末10に割り当てる場合、制御装置40はユーザスケジューリング情報を各中継装置20に通知する。ユーザスケジューリング情報が基地局装置30で生成される場合、ユーザスケジューリング情報は基地局装置30から各中継装置20に通知される。
【0049】
上記のような装置間の連携を可能にするため、基地局装置30、制御装置40、及び中継装置20は、装置間で情報をやり取りするための通信機能を有し、その通信機能を用いて装置間の同期をとっている。
【0050】
6.無線中継システムの構成
次に、前述の無線中継方法を実行可能な無線中継システム2の構成について説明する。
図12は無線中継システム2の構成の一つの実施形態を示すブロック図である。この実施形態では、制御装置40は基地局装置30及び中継装置20から独立した装置として構成されている。ただし、制御装置40は基地局装置30に組み込まれてもよいし、中継装置20に組み込まれてもよい。なお、基地局装置30及び中継装置20それぞれ1台に限定されず複数台を用いてもよい。
【0051】
制御装置40は、処理部411、記憶部412、及び通信部413を備える。メモリ402に記憶されたインストラクション403がプロセッサ401で実行されることにより、プロセッサ401が処理部411、記憶部412、及び通信部413として機能する。ただし、通信部413は通信回路として構成されてもよいし、記憶部412は記憶装置として構成されてもよい。
【0052】
処理部411は「5.制御装置による処理」で説明した処理を行う。処理の結果のうち、基地局装置30に関係する制御情報は基地局装置30の制御部311へ、中継装置20に関係する制御情報は中継装置20の制御部214へ通知される。制御情報の通知には、制御装置40と基地局装置30との間、及び制御装置40と中継装置20との間に引かれた管理用回線が用いられる。管理用回線による通信は有線でもよいし無線でもよい。記憶部412は通信部413を経由して取得したユーザ端末10の情報と、前述の処理の実行のために予め取得していた情報とを記憶する。通信部413はユーザ端末10の第二通信部112との間で無線通信を行う。
【0053】
基地局装置30は、制御部311、処理部312、及び通信部313を備える。メモリ302に記憶されたインストラクション303がプロセッサ301で実行されることにより、プロセッサ301が処理部311、記憶部322、及び通信部313として機能する。ただし、通信部313は通信回路として構成されてもよい。
【0054】
通信部313は中継装置20との間で無線信号を送受信する。処理部312は通信部313を用いて送受信した信号を処理する。制御部311は制御装置40からの通知に応じて処理部312を制御する。
【0055】
中継装置20は、基地局側アンテナ部211、増幅部213、端末側アンテナ部212、及び制御部214を有する。このうち基地局側アンテナ部211と端末側アンテナ部212とは後述する物理的な機器を含む。メモリ202に記憶されたインストラクション203がプロセッサ201で実行されることにより、プロセッサ201は増幅部213及び制御部214として機能し、また、基地局側アンテナ部211及び端末側アンテナ部212の一部として機能する。
【0056】
基地局側アンテナ部211は基地局装置30との間で無線信号を送受信する。基地局側アンテナ部211は複数のアンテナ素子を用いてビームフォーミングを行う。端末側アンテナ部212はユーザ端末10との間で無線信号を送受信する。端末側アンテナ部212は複数のアンテナ素子を用いてビームフォーミングを行う。増幅部213は、基地局側アンテナ部211又は端末側アンテナ部212が受信した信号を増幅する。制御部214は、基地局側アンテナ部211と端末側アンテナ部212とを制御し、ビームフォーミングを行う際にはビームを選択する。なお、中継装置20の制御部214と基地局装置30の制御部311との間には管理用回線が引かれている。制御情報は管理用回線を用いて送受信される。管理用回線による通信は有線でもよいし無線でもよい。
【0057】
ユーザ端末10は、第一通信部111、第二通信部112、処理部113、制御部114、及び測位部115を備える。メモリ102に記憶されたインストラクション103がプロセッサ101で実行されることにより、プロセッサ101が第一通信部111、第二通信部112、処理部113、制御部114、及び測位部115として機能する。ただし、第一通信部111及び第二通信部112は通信回路として構成されてもよい。また、測位部115は物理的な機器も含む。
【0058】
第一通信部111は中継装置20を経由して伝送される無線信号を受信する。第二通信部112は測位部115で取得された位置情報を無線信号として受信する。第一通信部111と第二通信部112とはまとめて一つの通信部としてもよい。測位部115はユーザ端末10の位置を取得する機能を有する。位置を取得するための方法はいかなる方法でもよいが、例えば、GPSやLiDAR、セルラ通信、近距離無線通信等の方法を用いて測位を行ってもよい。処理部113は第一通信部111及び第二通信部112を用いて送受信した信号を処理する。制御部114は測位部115や処理部113の制御を行う。
【符号の説明】
【0059】
2 無線中継システム
10 ユーザ端末
20 中継装置
30 基地局装置
40 制御装置
50 遮蔽物