(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008685
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】付加硬化型シリコーン組成物及びその製造方法並びに光半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20250109BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20250109BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111054
(22)【出願日】2023-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】前原 佑生
(72)【発明者】
【氏名】水梨 友之
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP042
4J002CP141
4J002DE076
4J002DE086
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE116
4J002DE136
4J002DE146
4J002DJ016
4J002FB266
4J002GF00
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GJ02
4J002GQ01
4J002GQ05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】無機酸化物粒子を含有し、硬化物を機械特性、耐クラック性、耐熱性、耐湿性に優れたものとすることができ、組成物を低粘度で作業性に優れたものとすることができる、付加硬化型シリコーン組成物を提供する。
【解決手段】(A)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物、(C)白金族金属系触媒、及び(D)無機酸化物粒子であって、下記式(1)及び式(2)で示される繰り返し単位の合計数に対する式(2)で示される繰り返し単位の数の比が、0~0.5であるポリシラザン化合物と有機溶剤を含むポリシラザン化合物含有組成物によって表面処理された表面処理無機酸化物粒子である付加硬化型シリコーン組成物。
(式中、Rは脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びアルコキシ基から選ばれる基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中にケイ素原子に結合した炭素数2~10のアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物: 前記(A)成分のアルケニル基1モルに対して、前記(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~4.0モルとなる量、
(C)白金族金属系触媒:触媒量、及び
(D)無機酸化物粒子
を含有する付加硬化型シリコーン組成物であり、
前記無機酸化物粒子は、下記式(1)及び式(2)で示される繰り返し単位の合計数に対する式(2)で示される繰り返し単位の数の比が、0~0.5であるポリシラザン化合物と有機溶剤を含み、前記ポリシラザン化合物と有機溶剤の合計量に対して、ポリシラザン化合物が0.1~20質量%であるポリシラザン化合物含有組成物によって表面処理された表面処理無機酸化物粒子であることを特徴とする付加硬化型シリコーン組成物。
【化1】
(式中、Rは炭素数1~6の脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、及び炭素数1~6のアルコキシ基から選ばれる基であり、ポリシラザン化合物1分子中のRは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記ポリシラザン化合物における式(2)のRがメチル基であることを特徴とする請求項1に記載の付加硬化型シリコーン組成物。
【請求項3】
前記ポリシラザン化合物含有組成物が硬化触媒を含むことを特徴とする請求項1に記載の付加硬化型シリコーン組成物。
【請求項4】
前記無機酸化物粒子が、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、及び酸化亜鉛の少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1に記載の付加硬化型シリコーン組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の付加硬化型シリコーン組成物を硬化した硬化物を備えることを特徴とする光半導体装置。
【請求項6】
(A)1分子中にケイ素原子に結合した炭素数2~10のアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物: 前記(A)成分のアルケニル基1モルに対して、前記(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~4.0モルとなる量、
(C)白金族金属系触媒:触媒量、及び
(D)無機酸化物粒子
を含有する付加硬化型シリコーン組成物を製造する付加硬化型シリコーン組成物の製造方法であって、
前記無機酸化物粒子を準備するステップと、
該無機酸化物粒子に、下記式(1)及び式(2)で示される繰り返し単位の合計数に対する式(2)で示される繰り返し単位の数の比が、0~0.5であるポリシラザン化合物と有機溶剤を含み、前記ポリシラザン化合物と有機溶剤の合計量に対して、ポリシラザン化合物が0.1~20質量%であるポリシラザン化合物含有組成物によって表面処理することにより、表面処理無機酸化物粒子を作製するステップと、
前記表面処理無機酸化物粒子を、前記(A)成分~前記(C)成分と混合することにより、前記付加硬化型シリコーン組成物を製造するステップと
を有することを特徴とする付加硬化型シリコーン組成物の製造方法。
【化2】
(式中、Rは炭素数1~6の脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、及び炭素数1~6のアルコキシ基から選ばれる基であり、ポリシラザン化合物1分子中のRは同一であっても異なっていてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加硬化型シリコーン組成物及びその製造方法並びに光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光半導体装置に使用する樹脂には、その用途に応じて高透明、高屈折率、高放熱、高反射率、機械特性、耐熱性、耐候性、ガスバリア性に優れた材料が求められており、従来はエポキシ樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂が多用されてきた。しかしながら、近年の光半導体装置の高出力化に伴い、長期にわたる使用条件下では、これらの熱可塑性樹脂を使用した場合に耐熱性、耐湿性、耐変色性の問題が発生することが分かってきた。
【0003】
また、最近では光学素子を基板に半田付けする際に、鉛フリー半田が使用されることが多くなっている。この鉛フリー半田は、従来の半田に比べ溶融温度が高く、通常260℃以上の温度をかけて半田付けを行う必要があるが、このような温度で半田付けを行った場合、上記のような従来の熱可塑性樹脂の封止材では変形が起こったり、高温によって封止材が黄変したりするなどの不具合が発生することも分かってきた。
【0004】
このように、光半導体装置の高出力化や鉛フリー半田の使用に伴い、封止材にはこれまで以上に優れた耐熱性、耐湿性、耐変色性が求められている。これまでに、耐熱性向上を目的として熱可塑性樹脂にナノシリカを充填した光学用樹脂組成物などが提案されてきたが(特許文献1、2)、熱可塑性樹脂自体には耐熱性に限界があり、要求を満たすような十分な耐熱性は得られなかった。
【0005】
熱硬化性樹脂であるシリコーン樹脂は、耐熱性、耐光性、光透過性に優れることから、光半導体装置用材料として検討されている。しかしながら、このシリコーン樹脂は単体ではガス透過性が非常に大きい(すなわちガスバリア性が低い)ため、透過した空気中の酸素や水分等のガスの影響により電極が劣化する(特許文献3、4)。
【0006】
また、無機酸化物を充填することによりガスの透過性は低下するが、高温もしくは高湿下において空気中の酸素や水分による無機酸化物粒子を介した急速なシリコーン樹脂の劣化を引き起こし、市販の無機酸化物粒子のような所定の処理をされた無機酸化物粒子を使用した場合においても機械特性の低下、硬度上昇などによるクラックの発生という問題は改善できない(特許文献5~7)。
【0007】
この対策として、フェニル基等の芳香族系置換基の導入によるガスバリア性の向上が検討されているが、芳香族系置換基を導入すると、加熱時における粘弾性の変化が大きくなるためメチルシリコーン系樹脂と比較して耐クラック性がさらに低下してしまうことやより黄変色が顕著になり耐熱性、耐光性が低下してしまうという問題が発生する(特許文献8)。そのため、作業性が良好で、かつ硬化物の機械特性、耐クラック性、耐熱性、耐湿性に優れた光半導体装置向け材料の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-214554号公報
【特許文献2】特開2013-204029号公報
【特許文献3】特開2006-213789号公報
【特許文献4】特開2007-131694号公報
【特許文献5】特開2011-099008号公報
【特許文献6】特開2015-051924号公報
【特許文献7】特開2014-125401号公報
【特許文献8】特表2017-519058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、無機酸化物粒子を含有する付加硬化型シリコーン組成物において、硬化物を機械特性、耐クラック性、耐熱性、耐湿性に優れたものとすることができ、組成物を低粘度で作業性に優れたものとすることができる、付加硬化型シリコーン組成物を提供すること、及び、該組成物を硬化した硬化物を備える光半導体装置を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような付加硬化型シリコーン組成物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では、
(A)1分子中にケイ素原子に結合した炭素数2~10のアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物: 前記(A)成分のアルケニル基1モルに対して、前記(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~4.0モルとなる量、
(C)白金族金属系触媒:触媒量、及び
(D)無機酸化物粒子
を含有する付加硬化型シリコーン組成物であり、
前記無機酸化物粒子は、下記式(1)及び式(2)で示される繰り返し単位の合計数に対する式(2)で示される繰り返し単位の数の比が、0~0.5であるポリシラザン化合物と有機溶剤を含み、前記ポリシラザン化合物と有機溶剤の合計量に対して、ポリシラザン化合物が0.1~20質量%であるポリシラザン化合物含有組成物によって表面処理された表面処理無機酸化物粒子であることを特徴とする付加硬化型シリコーン組成物を提供する。
【化1】
(式中、Rは炭素数1~6の脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、及び炭素数1~6のアルコキシ基から選ばれる基であり、ポリシラザン化合物1分子中のRは同一であっても異なっていてもよい。)
【0011】
このような表面処理無機酸化物粒子を使用した付加硬化型シリコーン組成物であれば、組成物の作業性や硬化物を機械特性、耐クラック性、耐熱性、耐湿性に優れたものとすることができる。
【0012】
また、前記ポリシラザン化合物における式(2)のRがメチル基であることが好ましい。
【0013】
このようなメチル基を有するポリシラザン化合物であれば、調製が容易である。
【0014】
また、前記ポリシラザン化合物含有組成物が硬化触媒を含むことが好ましい。
【0015】
このようなものであれば、常温や短時間での表面処理が可能となり、さらに作業性に優れたものとなる。
【0016】
また、前記無機酸化物粒子が、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、及び酸化亜鉛の少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0017】
このような無機酸化物粒子を表面処理した表面処理無機酸化物粒子であれば、付加硬化型シリコーン組成物に添加した際に、特に機械特性、耐クラック性、耐熱性、耐湿性、作業性に優れたものにすることができる。
【0018】
また本発明では、上記の付加硬化型シリコーン組成物を硬化した硬化物を備えることを特徴とする光半導体装置を提供する。
【0019】
このような半導体装置であれば、半導体素子が、機械特性、耐クラック性、耐熱性および耐湿性に優れた硬化物で封止されることで、高温高湿下における長期信頼性、長期演色性に優れた光半導体装置となる。
【0020】
また、本発明は、
(A)1分子中にケイ素原子に結合した炭素数2~10のアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物: 前記(A)成分のアルケニル基1モルに対して、前記(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~4.0モルとなる量、
(C)白金族金属系触媒:触媒量、及び
(D)無機酸化物粒子
を含有する付加硬化型シリコーン組成物を製造する付加硬化型シリコーン組成物の製造方法であって、
前記無機酸化物粒子を準備するステップと、
該無機酸化物粒子に、下記式(1)及び式(2)で示される繰り返し単位の合計数に対する式(2)で示される繰り返し単位の数の比が、0~0.5であるポリシラザン化合物と有機溶剤を含み、前記ポリシラザン化合物と有機溶剤の合計量に対して、ポリシラザン化合物が0.1~20質量%であるポリシラザン化合物含有組成物によって表面処理することにより、表面処理無機酸化物粒子を作製するステップと、
前記表面処理無機酸化物粒子を、前記(A)成分~前記(C)成分と混合することにより、前記付加硬化型シリコーン組成物を製造するステップと
を有することを特徴とする付加硬化型シリコーン組成物の製造方法を提供する。
【化2】
(式中、Rは炭素数1~6の脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、及び炭素数1~6のアルコキシ基から選ばれる基であり、ポリシラザン化合物1分子中のRは同一であっても異なっていてもよい。)
【0021】
このような表面処理無機酸化物粒子を用いて付加硬化型シリコーン組成物を製造する方法であれば、組成物の作業性や硬化物を機械特性、耐クラック性、耐熱性、耐湿性に優れたものとすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物であれば、無機酸化物粒子を含有する付加硬化型シリコーン組成物において、組成物の作業性や硬化物の機械特性、耐クラック性、耐熱性、耐湿性に優れたものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上述のように、近年の半導体装置における使用条件に対し、高耐熱性、高耐湿性、作業性などの向上が求められている。
【0024】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、所定の範囲の変性率を満たすポリシラザン化合物含有組成物で表面処理された表面処理無機酸化物粒子を含む付加硬化型シリコーン組成物に添加したものであれば、硬化物の機械特性、耐クラック性、耐熱性、耐湿性に優れたものとすることができ、また無機酸化物粒子の添加後も組成物を低粘度で作業性に優れたものとすることができること、さらにはこのような付加硬化型シリコーン組成物であればLED等の光半導体素子に対して好適に用いることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0025】
即ち、本発明は、
(A)1分子中にケイ素原子に結合した炭素数2~10のアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物: 前記(A)成分のアルケニル基1モルに対して、前記(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~4.0モルとなる量、
(C)白金族金属系触媒:触媒量、及び
(D)無機酸化物粒子
を含有する付加硬化型シリコーン組成物であり、
前記無機酸化物粒子は、下記式(1)及び式(2)で示される繰り返し単位の合計数に対する式(2)で示される繰り返し単位の数の比が、0~0.5であるポリシラザン化合物と有機溶剤を含み、前記ポリシラザン化合物と有機溶剤の合計量に対して、ポリシラザン化合物が0.1~20質量%であるポリシラザン化合物含有組成物によって表面処理された表面処理無機酸化物粒子であることを特徴とする付加硬化型シリコーン組成物を提供する。
【化3】
(式中、Rは炭素数1~6の脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、及び炭素数1~6のアルコキシ基から選ばれる基であり、ポリシラザン化合物1分子中のRは同一であっても異なっていてもよい。)
を提供するものである。
【0026】
また、このような付加硬化型シリコーン組成物を製造する方法として、以下の付加硬化型シリコーン組成物の製造方法を提供する。すなわち、
(A)1分子中にケイ素原子に結合した炭素数2~10のアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物: 前記(A)成分のアルケニル基1モルに対して、前記(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~4.0モルとなる量、
(C)白金族金属系触媒:触媒量、及び
(D)無機酸化物粒子
を含有する付加硬化型シリコーン組成物を製造する付加硬化型シリコーン組成物の製造方法であって、
前記無機酸化物粒子を準備するステップと、
該無機酸化物粒子に、上記式(1)及び式(2)で示される繰り返し単位の合計数に対する式(2)で示される繰り返し単位の数の比が、0~0.5であるポリシラザン化合物と有機溶剤を含み、前記ポリシラザン化合物と有機溶剤の合計量に対して、ポリシラザン化合物が0.1~20質量%であるポリシラザン化合物含有組成物によって表面処理することにより、表面処理無機酸化物粒子を作製するステップと、
前記表面処理無機酸化物粒子を、前記(A)成分~前記(C)成分と混合することにより、前記付加硬化型シリコーン組成物を製造するステップと
を有することを特徴とする付加硬化型シリコーン組成物の製造方法である。
【0027】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、上記(A)~(D)成分を含有するものであるが、必要に応じてさらに、各種の公知の添加剤を含んでもよい。以下、各成分について説明する。
【0029】
[(A):オルガノポリシロキサン]
本発明の(A)成分は、ケイ素原子に結合した炭素数2~10のアルケニル基を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサンであり、直鎖状、分岐鎖状などいずれのオルガノポリシロキサンでもよい。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基等の炭素数2~10、特に炭素数2~8のアルケニル基が好ましい。
【0030】
直鎖状オルガノポリシロキサンは、重量平均分子量(Mw)が通常1,500~300,000であり、好ましくは2,000~200,000である。分子量が1,500以上であれば、組成物が硬化しないおそれがなく、分子量が300,000以下であれば組成物が必要以上に高粘度になり流動しなくなるおそれがない。
【0031】
なお、本明細書中で言及するオルガノポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)とは、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量を指す。
[測定条件]
・展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
・流量:0.6mL/min
・検出器:示差屈折率検出器(RI)
・カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
・TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
・TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
・TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL(濃度0.5重量%のTHF溶液)
【0032】
上記アルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンとして具体的には以下のものを例示できる。
【0033】
【0034】
本発明の(A)成分として用いることができる分岐鎖状オルガノポリシロキサンは、SiO4/2単位及びR1SiO3/2単位のうちのいずれか、またはその両方を含み、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する分岐鎖状オルガノポリシロキサンである。このとき、R1は独立して炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または炭素数2~10のアルケニル基であることが好ましい。
【0035】
本発明の(A)成分としての分岐鎖状オルガノポリシロキサンは、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有し、含まれるアルケニル基の量は0.01~0.5mol/100gが好ましく、より好ましくは0.05~0.3mol/100g、さらに好ましくは0.10~0.25mol/100gである。ケイ素原子に結合したアルケニル基の量が0.01mol/100g以上であれば、架橋点が多く組成物が固まり、0.5mol/100g以下であれば架橋密度が適度であり、靱性を確保できる。
【0036】
さらにケイ素原子に結合した水酸基の量が0.001~1.0mol/100gであることが好ましく、より好ましくは0.005~0.8mol/100g、さらに好ましくは0.008~0.6mol/100gである。
【0037】
本発明の(A)成分としての分岐鎖状オルガノポリシロキサンにおいては、さらに、炭素数1~10、好ましくは1~5の、ケイ素原子に結合したアルコキシ基の量が、1.0mol/100g以下が好ましく、より好ましくは0.8mol/100g以下、さらに好ましくは0.5mol/100g以下である。アルコキシ基の量が1.0mol/100g以下であれば、硬化時に副生成物のアルコールガスが発生せず、硬化物にボイドが残らない。
【0038】
なお、本発明におけるケイ素原子に結合した水酸基量、アルコキシ基量は1H-NMR及び、29Si-NMRによって測定された値を指すこととする。
【0039】
本発明の(A)成分としての分岐鎖状オルガノポリシロキサンにおいては、さらに、0~60mol%、好ましくは0~50mol%のSiO4/2単位(Q単位)、0~90mol%、好ましくは30~80mol%のR1aSiO3/2単位(T単位)及び0~50mol%、好ましくは0~30mol%の(R1a)3SiO1/2単位(M単位)からなるレジン構造のオルガノポリシロキサンであることが好ましく、またSiO4/2単位とR1aSiO3/2単位の和が50mol%以上であることが好ましい。上記式中、R1aは独立して炭素数1~10、好ましくは2~5の置換または非置換のアルキル基、炭素数6~10、好ましくは6~8のアリール基、または炭素数2~10のアルケニル基であり、置換基R1aの少なくとも1つが炭素数2~10のアルケニル基であることが好ましい。
【0040】
M単位、T単位中のR1aは独立して、炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または炭素数2~10のアルケニル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基;及びこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子やシアノ基等で置換した基、例えばクロロメチル基、シアノエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられる。中でも、メチル基、フェニル基、ビニル基が好ましい。
【0041】
SiO4/2単位(Q単位)を得るための材料としては、例えば、ケイ酸ソーダ、テトラアルコキシシラン、及びその縮合反応物等を例示できるが、これらに限定されない。
【0042】
R
1aSiO
3/2単位(T単位)を得るための材料としては、例えば、下記構造式で表されるオルガノトリクロロシラン、オルガノトリアルコキシシラン等の有機ケイ素化合物、及びこれらの縮合反応物等を例示できるが、これらに限定されない。
【化5】
(上記式中、Meはメチル基を示す。)
【0043】
(R
1a)
3SiO
1/2単位(M単位)を得るための材料としては、例えば、下記構造式で表されるトリオルガノクロロシラン、トリオルガノアルコキシシラン、ヘキサオルガノジシロキサン等の有機ケイ素化合物等を例示できるが、これらに限定されない。
【化6】
(上記式中、Meはメチル基を示す。)
【0044】
[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
本発明の(B)成分は、1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子(ケイ素原子に結合した水素原子)を有する有機ケイ素化合物であり、すなわち、オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。言い換えると、本発明の(B)成分は、1分子中にSiH基(ヒドロシリル基)を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、(A)成分と反応し、架橋剤として作用する。
【0045】
(B)成分は下記平均組成式(3)で示されることができる。
R2
hHiSiO(4-h-i)/2 ・・・(3)
【0046】
平均組成式(3)中、R2は同一または異種の非置換もしくは置換の炭素原子数が1~10の1価炭化水素基であり、hおよびiは、0.7≦h≦2.1、0.001≦i≦1.0、かつ0.8≦h+i≦3.0であり、好ましくは1.0≦h≦2.0、0.01≦i≦1.0、かつ1.5≦h+i≦2.5を満足する正数である。
【0047】
上記R2としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の飽和脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の飽和環式炭化水素基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などの芳香族炭化水素基、これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子で置換したもの、例えば、トリフルオロプロピル基、クロロプロピル基等のハロゲン化炭化水素基、アリルグリシジル基等のエポキシ基などが挙げられる。これらの中では、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~5の飽和脂肪族炭化水素基、並びにフェニル基が好ましい。
【0048】
(B)成分の分子構造は特に制限されず、例えば、線状、環状、分岐状、三次元網目状(レジン状)等の、いずれの分子構造でも(B)成分として使用することができる。(B)成分が線状構造を有する場合、ヒドロシリル基は、分子鎖末端および分子鎖側鎖のどちらか一方でのみケイ素原子に結合していても、その両方でケイ素原子に結合していてもよい。また、1分子中のケイ素原子の数(または重合度)が、通常、2~200個、好ましくは3~100個程度であり、室温(25℃)において液状又は固体状であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが使用できる。
【0049】
上記平均組成式(3)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)3SiO1/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0050】
また、下記構造で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンも用いることができるが、これらだけに限定されるものではない。
【化7】
(式中、p、r、sはそれぞれ0以上の整数であり、qは1以上の整数である。)
【0051】
(B)成分の配合量は、(A)成分のケイ素原子に結合したアルケニル基1モル当たり、(B)成分のヒドロシリル基が0.1~4.0モルとなる量であり、より好ましくは0.5~3.5モル、さらに好ましくは0.8~3.0モルとなる量である。
【0052】
(B)成分のヒドロシリル基の量が0.1モル以上であれば、本発明の組成物の硬化反応が進行し、硬化物を得ることができ、得られる硬化物の架橋密度や、機械強度が十分となり、耐熱性も良くなる。一方、配合量が上記ヒドロシリル基の量が4.0モル以下であると、未反応のヒドロシリル基が硬化物中に多量に残存しないため、物性の経時変化や硬化物の耐熱性の低下などが起こらず、更に、硬化物中に脱水素反応による発泡が生じない。
【0053】
[(C)白金族金属系触媒]
本発明における(C)成分は、白金族金属系触媒であり、(A)成分および(B)成分のヒドロシリル化反応を促進させる触媒として、従来公知であるいずれのものも使用することができる。コスト等を考慮して、白金、白金黒、塩化白金酸などの白金系のもの、例えば、H2PtCl6・pH2O,K2PtCl6,KHPtCl6・pH2O,K2PtCl4,K2PtCl4・pH2O,PtO2・pH2O,PtCl4・pH2O,PtCl2,H2PtCl4・pH2O(ここで、pは、正の整数)等や、これらと、オレフィン等の炭化水素、アルコール又はビニル基含有オルガノポリシロキサンとの錯体、トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金等の光活性を有する錯体等を例示することができる。これらの触媒は1種単独でも、2種以上の組み合わせでも使用することができる。これらの触媒の配合量は、硬化のための有効量でよく、通常、(A)成分および(B)成分の合計量に対して白金族金属として質量換算で0.1~500ppmが好ましく、特に好ましくは0.5~100ppmの範囲である。
【0054】
[(D)無機酸化物粒子]
(D)成分の無機酸化物粒子としては、表面を処理された表面処理無機酸化物粒子を使用する。この表面処理については後述する。(D)成分の配合量は、組成物の全量に対して1~99質量%となることが好ましく、25~75質量%がより好ましく、30~70質量%がさらに好ましい。また(D)成分は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。(D)成分の配合量が1質量%以上であれば無機酸化物粒子の効果を十分に得ることができ、また、配合量が99質量%以下であればシリコーンの効果を十分に得ることができ、硬化物を用いた光半導体装置の耐久性を良好にすることができる。
【0055】
無機酸化物粒子としては、例えば二酸化ケイ素(シリカ:SiO2)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉄(FeO2)、四酸化三鉄(Fe3O4)、酸化鉛(PbO2)、酸化すず(SnO2)、酸化セリウム(CeO2)、酸化カルシウム(CaO)、四酸化三マンガン(Mn3O4)、酸化マグネシウム(MgO)などが挙げられる。これらの無機酸化物粒子は単独、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、及び酸化亜鉛が好ましく、酸化チタンが特に好ましい。これらの無機酸化物粒子を用いることで、シリコーン樹脂組成物に添加した際の硬化物の特性を更に優れたものとすることができる。
【0056】
[ポリシラザン]
ポリシラザンは、無機酸化物粒子の表面に硬化して皮膜(硬化膜)を形成する成分である。本発明で用いるポリシラザン化合物は、下記式(1)で示される繰り返し単位及び下記式(2)で示される繰り返し単位を有する。
【化8】
【0057】
前記式(2)中、Rは炭素数1~6の脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、及び炭素数1~6のアルコキシ基から選ばれる基である。このRは、好ましくは、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基、炭素数6~8の芳香族炭化水素基、炭素数1~3のアルコキシ基から選ばれる基であり、例えばメチル基、エチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。中でも、取り扱いが容易であり、また硬化膜の硬度も低下しにくいメチル基が特に好ましい。Rはポリシラザン1分子中で繰り返し単位毎に適宜選択することができ、同一であっても異なっていてもよい。
【0058】
また、前記ポリシラザン化合物は、前記式(1)及び式(2)で示される繰り返し単位の合計数に対する前記式(2)で示される繰り返し単位の数の比が、0~0.5である。この比が0.5を超えると硬化膜中の有機成分が多く、耐熱性の低下につながる恐れがある。また、この比が0である場合、すなわち、式(1)で示される繰り返し単位からなるポリシラザン化合物を用いてもよい。
【0059】
また、前記ポリシラザン化合物は、希釈溶剤の成分である有機溶剤への溶解性の観点から、重量平均分子量が200~1,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは500~100,000、更に好ましくは1,000~20,000の範囲である。重量平均分子量が200以上であれば、揮発性も高くなく、有機溶媒の乾燥及び表面処理時に揮発することもほとんどないので、無機酸化物粒子への均一な表面処理が可能である。重量平均分子量が1,000,000以下であれば、有機溶媒に対する溶解性が良好であり、溶解粘度も高くないので、効率的に表面処理を行うことが可能である。
【0060】
なお、本明細書中で言及するポリシラザン化合物の重量平均分子量とは、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量を指す。
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6mL/min
検出器:UV検出器
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperMultiporeHZ-M(4.6mmI.D.×15cm×4)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL(濃度0.5質量%のTHF溶液)
【0061】
また、前記式(1)及び前記式(2)で示される繰り返し単位を有するポリシラザン化合物は、これらの繰り返し単位以外に分岐構造や環状構造を含有してもよい。
【0062】
また、前記ポリシラザン化合物含有組成物は、ポリシラザン化合物と有機溶剤との合計量に対して、ポリシラザン化合物の配合量が0.1~20質量%であり、0.5~10質量%であることがより好ましい。この範囲内であれば、無機酸化物粒子表面に均一な処理が可能となる。
【0063】
[有機溶剤]
本発明で用いる前記ポリシラザン化合物は、保存安定性を改善することや表面処理の均一性を目的として、有機溶剤で希釈して用いられる。前記有機溶剤としては、ポリシラザン化合物を溶解する有機溶剤であれば特に限定されない。例えば、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、n-ノナン、イソノナン、n-デカン、イソデカンなどの飽和脂肪族炭化水素、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、β-ミルセンなどの不飽和脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの飽和脂環式炭化水素、シクロヘキセンなどの不飽和脂環式炭化水素、p-メンタン、d-リモネン、l-リモネン、ジペンテンなどのテルペン化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、テトラヒドロナフタレンなどの芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ダイアセトンアルコールなどのケトン化合物、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、アセト酢酸エチル、カプロン酸エチルなどのエステル化合物、ジエチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジ-n-ペンチルエーテル、ジ-n-ヘキシルエーテル、tert-ブチルメチルエーテルなどのアルキルエーテル化合物、アニソール、ジフェニルエーテルなどのアリールエーテル化合物、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、ビス(2-エトキシエチル)エーテル、ビス(2-ブトキシエチル)エーテルなどのグリコールエーテル化合物などが挙げられる。
【0064】
前記ポリシラザン化合物含有組成物は、含有している水分が1,000ppm以下であることが好ましく、500ppm以下であることがより好ましい。水分が1,000ppm以下であれば、ポリシラザン化合物と水分が反応しないので、発熱、水素ガスやアンモニアガスの発生、増粘及びゲル化などを引き起こす恐れがないため好ましい。
【0065】
[硬化触媒]
本発明で用いるポリシラザン化合物含有組成物は、前記ポリシラザン化合物および有機溶剤に加え、硬化触媒を添加することができる。硬化触媒を添加することにより、ポリシラザンの無機表面への反応速度を上昇することができ作業性の観点から好ましい。
【0066】
硬化触媒は、例えば1分子中に1個以上のアルコキシシリル基及び1個以上のアミノ基を有する有機ケイ素化合物や、金属元素含有化合物であることが好ましい。
【0067】
前記有機ケイ素化合物の具体例としては、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシランなどのアミノシラン類、及びこれらアミノシラン類の部分加水分解物が挙げられ、3-アミノプロピルトリメトキシシランや3-アミノプロピルトリエトキシシランは硬化速度が速く、作業性に優れるため好ましい。
【0068】
前記金属元素含有化合物の具体例としては、チタン、アルミ、スズ、亜鉛およびパラジウムなどの金属元素を含む化合物が挙げられ、着色する恐れが少ないチタンやアルミの金属化合物が好ましい。
【0069】
硬化触媒は、単独で、あるいは2種又は3種以上を任意の割合で添加してもよい。硬化触媒の添加量は、ポリシラザン化合物100質量部に対して0.01~20質量部が好ましく、0.05~10質量部がより好ましい。
【0070】
無機酸化物粒子の表面処理方法としては、公知の方法が適用できる。無機酸化物粒子の
表面処理方法としては、乾式法と湿式法があるが、無機酸化物粒子への均一処理、ゲル防止の観点から溶液系での湿式法が好ましい。
【0071】
この表面処理方法は、上記所定の無機酸化物粒子を上記所定のポリシラザン化合物を含む溶液で、20℃~150℃で1~48時間反応させ、100℃~400℃での加熱処理工程を含む表面処理無機酸化物粒子を作製する方法が好ましい。
【0072】
この表面処理は20℃以上の温度で反応させると表面処理の速度を十分速くすることができ、150℃以下の温度で反応させると反応のコントロールが容易であり、ゲル化や着色を防止できる。また、反応1時間以上では処理を十分としやすく、48時間以下であれば生産効率を良好なものとすることができる。
【0073】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物には上記の(A)~(D)成分以外に必要に応じて、公知の接着付与剤や添加剤を配合することができる。
【0074】
[接着付与剤]
接着付与剤としては、例えば、フェニルトリメトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等や、及びそれらのオリゴマー等が挙げられる。なお、これらの接着付与剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。また、接着付与剤は、上記の(A)~(D)成分の合計質量に対し、0~10質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましい。
【0075】
[その他の添加剤]
その他の添加剤としては、例えば、グラスファイバー、ヒュームドシリカ、ヒュームド酸化チタン等の補強性無機充填材、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸バリウム等の無機白色顔料、ケイ酸カルシウム、カーボンブラック、セリウム脂肪酸塩、バリウム脂肪酸塩、セリウムアルコキシド、バリウムアルコキシド等の非補強性無機充填材、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、酸化鉄(Fe2O3)、四酸化三鉄(Fe3O4)、酸化鉛(PbO2)、酸化すず(SnO2)、酸化セリウム(Ce2O3、CeO2)、酸化カルシウム(CaO)、四酸化三マンガン(Mn3O4)、酸化バリウム(BaO)などのフィラーが挙げられ、これらを、上記の(A)~(D)成分の合計100質量部当たり600質量部以下、好ましくは10~400質量部の量で適宜配合することができる。
【0076】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、用途に応じて所定の基材に塗布した後、硬化させることができる。硬化条件は、常温(25℃)でも十分に硬化するが、必要に応じて加熱により硬化してもよい。加熱する場合の温度は、例えば、60~200℃で硬化することができる。
【0077】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物であれば、例えば、封止材、接着剤、電気絶縁材、積層板、コーティング、インク、塗料、シーラント、レジスト、複合材料、フィルム、アンダーフィル材、反射防止材、光拡散材、光反射材などの各種用途にも使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
また、本発明では、上述の本発明の付加硬化型シリコーン組成物の硬化物で半導体素子が封止された光半導体装置を提供する。
【0079】
このような本発明の付加硬化型シリコーン組成物であれば、機械特性、耐クラック性、耐熱性、耐湿及び耐光性に優れた硬化物を与えるものとなる。
【実施例0080】
以下、合成例、比較合成例、実施例、及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。なお、部は質量部を示し、各成分の粘度は、JIS K 7117-1:1999記載の回転粘度計で測定した25℃における絶対粘度を示す。
【0081】
[ポリシラザン化合物含有組成物]
ポリシラザン化合物含有組成物として、以下のPSZ-1~PSZ-4を使用した。
【0082】
(PSZ-1)
商品名「X-45-870」[ペルヒドロポリシラザンを含むジブチルエーテル溶液]、信越化学工業製。ポリシラザン化合物と有機溶剤の合計量に対して、ポリシラザン化合物が20質量%である(ポリシラザン成分20%溶液)。硬化触媒を1%含む。ポリシラザン化合物の重量平均分子量は3000である。上記式(2)で示される繰り返し単位を含まないため、式(1)及び式(2)で示される繰り返し単位の合計数に対する式(2)で示される繰り返し単位の数の比が0である。
【0083】
(PSZ-2)
商品名「X-45-872」[ペルヒドロポリシラザンおよびメチルポリシラザンを含むジブチルエーテル溶液]、信越化学工業製。式(1)及び式(2)で示される繰り返し単位の合計数に対する式(2)で示される繰り返し単位の数の比(以下、「メチルポリシラザン比」と称する)が0.5である。ポリシラザン化合物と有機溶剤の合計量に対して、ポリシラザン化合物が20質量%である(ポリシラザン成分20%溶液)。硬化触媒を1%含む。重量平均分子量は1500である。
【0084】
(PSZ-3)
商品名「X-45-872」[ペルヒドロポリシラザンおよびメチルポリシラザンを含むジブチルエーテル溶液](信越化学工業製)のメチルポリシラザン比を0.25にしたものである。ポリシラザン化合物と有機溶剤の合計量に対して、ポリシラザン化合物が20質量%である(ポリシラザン成分20%溶液)。硬化触媒を1%含む。重量平均分子量は1800である。
【0085】
(PSZ-4)
商品名「X-45-872」[ペルヒドロポリシラザンおよびメチルポリシラザンを含むジブチルエーテル溶液]、信越化学工業製のメチルポリシラザン比を0.7にしたものである。ポリシラザン化合物と有機溶剤の合計量に対して、ポリシラザン化合物が20質量%である(ポリシラザン成分20%溶液)。硬化触媒を1%含む。重量平均分子量は1700である。
【0086】
[無機酸化物粒子]
無機酸化物粒子として、以下の無機酸化物粒子-1~無機酸化物粒子-5を使用した。
【0087】
(無機酸化物粒子-1)
商品名「CR-50」[酸化チタン粉末]、石原産業製。
【0088】
(無機酸化物粒子-2)
【0089】
商品名「酸化亜鉛」[酸化亜鉛粉末]、三井金属鉱業製。
(無機酸化物粒子-3)
【0090】
商品名「TZ-3YS-E」[酸化ジルコニウム]、東ソー製。
(無機酸化物粒子-4)
【0091】
商品名「ACT-05」[二酸化ケイ素]、フミテック製。
【0092】
(無機酸化物粒子-5)
商品名「AO-502」[酸化アルミニウム]、アドマテックス製。
【0093】
[合成例1]
300mLナス型フラスコに、上記PSZ-1、すなわち、ポリシラザン化合物含有組成物「X-45-870」10gを計量し、ジブチルエーテル190gを加えて1%ポリシラザン溶液を調製した。70℃で1時間加熱攪拌後、無機酸化物粒子-1を100g加え、さらに3時間加熱、攪拌した。加圧ろ過により処理溶液を除き、250℃で4時間加熱処理を行うことで表面処理無機酸化物粒子1(D-1)を得た。
【0094】
[合成例2]
合成例1のポリシラザン化合物含有組成物「X-45-870」を上記PSZ-2、すなわち、「X-45-872」に変える以外は同様の操作を行い、表面処理無機酸化物粒子2(D-2)を得た。
【0095】
[合成例3]
合成例1のポリシラザン化合物含有組成物「X-45-870」を上記PSZ-3、すなわち、「X-45-872のメチルポリシラザン比を0.25にしたもの」に変える以外は同様の操作を行い、表面処理無機酸化物粒子3(D-3)を得た。
【0096】
[合成例4]
300mLナス型フラスコに、上記PSZ-1、すなわち、ポリシラザン化合物含有組成物「X-45-870」50gを計量し、ジブチルエーテル150gを加えて10%ポリシラザン溶液を調製した。70℃で1時間加熱攪拌後、無機酸化物粒子-1を100g加え、さらに3時間加熱、攪拌した。加圧ろ過により処理溶液を除き、250℃で4時間加熱処理を行うことで表面処理無機酸化物粒子4(D-4)を得た。
【0097】
[合成例5]
合成例1の無機酸化物粒子-1を無機酸化物粒子-2に変える以外は同様の操作を行い、表面処理無機酸化物粒子5(D-5)を得た。
【0098】
[合成例6]
合成例1の無機酸化物粒子-1を無機酸化物粒子-3に変える以外は同様の操作を行い、表面処理無機酸化物粒子6(D-6)を得た。
【0099】
[合成例7]
合成例1の無機酸化物粒子-1を無機酸化物粒子-4に変える以外は同様の操作を行い、表面処理無機酸化物粒子7(D-7)を得た。
【0100】
[合成例8]
合成例1の無機酸化物粒子-1を無機酸化物粒子-5に変える以外は同様の操作を行い、表面処理無機酸化物粒子8(D-8)を得た。
【0101】
[比較合成例1]
300mLナス型フラスコに、上記PSZ-4、すなわち、ポリシラザン化合物含有組成物「X-45-872」のメチルポリシラザン比を0.7にしたもの10gを計量し、ジブチルエーテル190gを加えて1%ポリシラザン溶液を調製した。70℃で1時間加熱後、無機粒子-1を100g加え、さらに3時間加熱、攪拌した。加圧ろ過により処理溶液を除き、250℃で4時間加熱処理を行うことで表面処理無機酸化物粒子9(D-9)を得た。
【0102】
[比較合成例2]
比較合成例1の無機酸化物粒子-1を無機酸化物粒子-2に変える以外は同様の操作を行い、表面処理無機酸化物粒子10(D-10)を得た。
【0103】
[比較合成例3]
比較合成例1の無機酸化物粒子-1を無機酸化物粒子-3に変える以外は同様の操作を行い、表面処理無機酸化物粒子11(D-11)を得た。
【0104】
[比較合成例4]
比較合成例1の無機酸化物粒子-1を無機酸化物粒子-4に変える以外は同様の操作を行い、表面処理無機酸化物粒子12(D-12)を得た。
【0105】
[比較合成例5]
比較合成例1の無機酸化物粒子-1を無機酸化物粒子-5に変える以外は同様の操作を行い、表面処理無機酸化物粒子13(D-13)を得た。
【0106】
[比較合成例6]
300mLナス型フラスコにシランカップリング剤「KBM-04」(信越化学工業株式会社製)10gを計量しトルエン190gを加えて、5%シランカップリング剤溶液を調製した。100℃で1時間加熱後、無機酸化物粒子-1を100g加え、さらに3時間加熱、攪拌した。加圧ろ過により処理溶液を除き、150℃で1時間加熱処理を行うことで表面処理無機酸化物粒子14(D-14)を得た。
【0107】
[比較合成例7]
300mLナス型フラスコにシランカップリング剤「エチルポリシリケート40T」(コルコート株式会社製、テトラエトキシシラン部分加水分解縮合物)10gを計量しトルエン190gを加えて、5%溶液を調製した。100℃で1時間加熱後、無機酸化物粒子-1を100g加え、さらに3時間加熱、攪拌した。加圧ろ過により処理溶液を除き、150℃で1時間加熱処理を行うことで表面処理無機酸化物粒子15(D-15)を得た。
【0108】
[実施例1]
(A)成分として下記式(A-1)で示されるオルガノポリシロキサン:
【化9】
を50部、
(B)成分として、下記式(B-1)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:
【化10】
を(A-1)成分中のケイ素原子結合ビニル基の合計個数に対する(B-1)成分中のケイ素原子結合水素原子の合計個数の比(以下、SiH/SiVi比と表す場合がある。)が2.0となる量(この場合、質量部としては1部である。)
(C)成分として、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:1質量%)0.1部
(D)成分として、調製した表面処理無機酸化物粒子-1(D-1)を50部
加えてよく撹拌し、付加硬化型シリコーン組成物を調製した。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0109】
[実施例2]
(D)成分として、実施例1で使用した表面処理無機酸化物粒子-1(D-1)50部の代わりに、表面処理無機酸化物粒子-2(D-2)を50部用いた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0110】
[実施例3]
(D)成分として、実施例1で使用した表面処理無機酸化物粒子-1(D-1)50部の代わりに、表面処理無機酸化物粒子-3(D-3)を50部用いた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0111】
[実施例4]
(D)成分として、実施例1で使用した表面処理無機酸化物粒子-1(D-1)50部の代わりに、表面処理無機酸化物粒子-4(D-4)を50部用いた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0112】
[実施例5]
(D)成分として、実施例1で使用した表面処理無機酸化物粒子-1(D-1)50部の代わりに、表面処理無機酸化物粒子-5(D-5)を50部用いた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0113】
[実施例6]
(D)成分として、実施例1で使用した表面処理無機酸化物粒子-1(D-1)50部の代わりに、表面処理無機酸化物粒子-6(D-6)を50部用いた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0114】
[実施例7]
(D)成分として、実施例1で使用した表面処理無機酸化物粒子-1(D-1)50部の代わりに、表面処理無機酸化物粒子-7(D-7)を50部用いた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0115】
[実施例8]
(D)成分として、実施例1で使用した表面処理無機酸化物粒子-1(D-1)50部の代わりに、表面処理無機酸化物粒子-8(D-8)を50部用いた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0116】
[実施例9]
(A)成分として、実施例1で使用したオルガノポリシロキサン(A-1)を50部の代わりに30部、(D)成分として、実施例1で使用した表面処理無機酸化物粒子-1(D-1)を50部の代わりに70部用いた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0117】
[実施例10]
(A)成分として、実施例1で使用したオルガノポリシロキサン(A-1)を50部の代わりに70部、(D)成分として、実施例1で使用した表面処理無機酸化物粒子-1(D-1)を50部の代わりに30部用いた以外は、実施例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0118】
[比較例1]
(A)成分として下記式(A-1)で示されるオルガノポリシロキサン:
【化11】
を50部、
(B)成分として、下記式(B-1)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:
【化12】
を(A-1)成分中のケイ素原子結合ビニル基の合計個数に対する(B-1)成分中のケイ素原子結合水素原子の合計個数の比(SiH/SiVi比)が2.0となる量
(C)成分として、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:1質量%)0.1部
(D)成分として、未処理の無機酸化物粒子-1を50部
加えてよく撹拌し、付加硬化型シリコーン組成物を調製した。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0119】
[比較例2]
(D)成分として、比較例1で使用した無機酸化物粒子-1を50部の代わりに、無機酸化物粒子-2を50部用いた以外は、比較例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0120】
[比較例3]
(D)成分として、比較例1で使用した無機酸化物粒子-1を50部の代わりに、無機酸化物粒子-3を50部用いた以外は、比較例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0121】
[比較例4]
(D)成分として、比較例1で使用した無機酸化物粒子-1を50部の代わりに、無機酸化物粒子-4を50部用いた以外は、比較例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0122】
[比較例5]
(D)成分として、比較例1で使用した無機酸化物粒子-1を50部の代わりに、無機酸化物粒子-5を50部用いた以外は、比較例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0123】
[比較例6]
(D)成分として、比較例1で使用した無機酸化物粒子-1を50部の代わりに、表面処理無機酸化物粒子-9(D-9)を50部用いた以外は、比較例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0124】
[比較例7]
(D)成分として、比較例1で使用した無機酸化物粒子-1を50部の代わりに、表面処理無機酸化物粒子-10(D-10)を50部用いた以外は、比較例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0125】
[比較例8]
(D)成分として、比較例1で使用した無機酸化物粒子-1を50部の代わりに、表面処理無機酸化物粒子-11(D-11)を50部用いた以外は、比較例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0126】
[比較例9]
(D)成分として、比較例1で使用した無機酸化物粒子-1を50部の代わりに、表面処理無機酸化物粒子-12(D-12)を50部用いた以外は、比較例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0127】
[比較例10]
(D)成分として、比較例1で使用した無機酸化物粒子-1を50部の代わりに、表面処理無機酸化物粒子-13(D-13)を50部用いた以外は、比較例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0128】
[比較例11]
(D)成分として、比較例1で使用した無機酸化物粒子-1を50部の代わりに、表面処理無機酸化物粒子-14(D-14)を50部用いた以外は、比較例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0129】
[比較例12]
(D)成分として、比較例1で使用した無機酸化物粒子-1を50部の代わりに、表面処理無機酸化物粒子-15(D-15)を50部用いた以外は、比較例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0130】
[比較例13]
(A)成分として、比較例1で使用したオルガノポリシロキサン(A-1)を50部の代わりに30部、(D)成分として、比較例1で使用した無機酸化物粒子-1を50部の代わりに、70部用いた以外は、比較例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0131】
[比較例14]
(A)成分として、比較例1で使用したオルガノポリシロキサン(A-1)を50部の代わりに70部、(D)成分として、比較例1で使用した無機酸化物粒子-1を50部の代わりに、30部用いた以外は、比較例1と同様にして組成物を調製し、付加硬化型シリコーン組成物が得られた。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0132】
実施例1~8及び比較例1~14で調製した各組成物、及びその硬化物の物性を下記の方法で測定した。結果を表1および表2に記載した。
【0133】
(1)外観
各組成物を150℃で4時間硬化させることで得られた硬化物(1mm)の色と透明性およびボイドの有無を目視で確認した。
【0134】
(2)性状
硬化前の各組成物の流動性を確認した。100mlのガラス瓶に50gの組成物を加え、ガラスビンを横に倒して25℃で10分間静置した。その間に樹脂が流れ出せば液状であると判断した。
【0135】
(3)粘度
25℃における硬化前の各組成物の粘度をJIS K 7117-1:1999記載の方法で測定した。
【0136】
(4)チキソ比
25℃における硬化前の各組成物の10rpmの粘度と1rpmの粘度をJIS K 7117-1:1999記載の方法で測定し、チキソ比=1rpm粘度/10rpm粘度で算出した。
【0137】
(5)硬さ(タイプA)
各組成物を150℃×4時間で硬化して得られた硬化物の硬さを、JIS K 6249:2003に準拠して、デュロメータ タイプA硬度計を用いて測定した。
【0138】
(6)切断時伸びおよび引張り強さ
各組成物を150℃で4時間硬化して得られた硬化物の硬さを、JIS K 6249:20003に準拠して測定した。
【0139】
(7) 耐熱性試験
各組成物を150℃で4時間硬化させ、得られた硬化物を大気中250℃下で1000時間放置し、硬度変化を確認した。また、スライドガラス(25mm×75mm×1mm)の上に250μmの厚さになるように樹脂を塗布し、同様に150℃で4時間硬化させ、得られた硬化物を大気中250℃下で1000時間放置し、外観を確認した。
(外観判定基準)
○:クラックがみられない
△:一部クラックがみられる
×:クラックがみられる
【0140】
(8) 耐湿性試験
各組成物を150℃で4時間硬化させ、得られた硬化物を大気中135℃、85%Rh下で放置して、HAST試験を行い1000時間放置し、硬度変化を確認した。また、スライドガラス(25mm×75mm×1mm)の上に250μmの厚さになるように樹脂を塗布し、同様に150℃で4時間硬化させ、得られた硬化物を大気中135℃、85%Rh下で放置して、HAST試験を行い1000時間放置し、外観を確認した。
(外観判定基準)
○(良好): クラックがみられない
△(やや不良):一部クラックがみられる
×(不良): クラックがみられる
【0141】
【0142】
【0143】
表1に示されるように、(D)成分として、本発明の条件を満たす表面処理無機酸化物粒子を使用した実施例1~10では、十分な粘度、外観、引張り強さ、切断時伸び、耐熱性、耐湿性、耐クラック性に優れた硬化物が得られた。これに対し、ポリシラザン化合物処理されていない無機酸化物粒子を使用した比較例1~5では粘度が高く、作業性に問題があり、さらに耐熱性および耐湿性試験後に硬化物の硬度が大幅に上昇しており、樹脂のクラックも発生する。また、本発明の条件である所定の範囲を満たさないポリシラザン化合物で処理した表面処理無機酸化物粒子を使用した比較例6~10の場合においても、耐熱試験後の硬化物の硬度の上昇(耐熱性の悪化)や、樹脂粘度の上昇が見られている。さらに、汎用されているシランカップリング剤で処理した表面処理無機酸化物粒子を使用した比較例11~12では、粘度の十分な低下が見られるものの、耐熱性や耐湿性、耐クラック性に問題がある。また、無機酸化物粒子の含有量を増やした比較例13では、粘度やチキソ比の大幅な上昇によって硬化物にボイドが発生する問題も生じた。比較例14では無機酸化物粒子の含有量を減らしたが、耐熱性、耐湿性および耐クラック性の改善は見られなかった。以上のように、本発明の付加硬化型シリコーン組成物であれば、作業性、機械特性、耐熱性、耐湿性、耐クラック性に優れた硬化物を与えることができる。
【0144】
本明細書は、以下の発明を包含する。
【0145】
[1]: (A)1分子中にケイ素原子に結合した炭素数2~10のアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物: 前記(A)成分のアルケニル基1モルに対して、前記(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~4.0モルとなる量、
(C)白金族金属系触媒:触媒量、及び
(D)無機酸化物粒子
を含有する付加硬化型シリコーン組成物であり、
前記無機酸化物粒子は、下記式(1)及び式(2)で示される繰り返し単位の合計数に対する式(2)で示される繰り返し単位の数の比が、0~0.5であるポリシラザン化合物と有機溶剤を含み、前記ポリシラザン化合物と有機溶剤の合計量に対して、ポリシラザン化合物が0.1~20質量%であるポリシラザン化合物含有組成物によって表面処理された表面処理無機酸化物粒子であることを特徴とする付加硬化型シリコーン組成物。
【化13】
(式中、Rは炭素数1~6の脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、及び炭素数1~6のアルコキシ基から選ばれる基であり、ポリシラザン化合物1分子中のRは同一であっても異なっていてもよい。)
[2]: 前記ポリシラザン化合物における式(2)のRがメチル基である上記[1]の付加硬化型シリコーン組成物。
[3]: 前記ポリシラザン化合物含有組成物が硬化触媒を含む上記[1]又は上記[2]の付加硬化型シリコーン組成物。
[4]: 前記無機酸化物粒子が、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、及び酸化亜鉛の少なくとも一種を含む上記[1]から上記[3]のいずれかの付加硬化型シリコーン組成物。
[5]: 上記[1]から上記[4]のいずれかの付加硬化型シリコーン組成物を硬化した硬化物を備えることを特徴とする光半導体装置。
[6]: (A)1分子中にケイ素原子に結合した炭素数2~10のアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物: 前記(A)成分のアルケニル基1モルに対して、前記(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~4.0モルとなる量、
(C)白金族金属系触媒:触媒量、及び
(D)無機酸化物粒子
を含有する付加硬化型シリコーン組成物を製造する付加硬化型シリコーン組成物の製造方法であって、
前記無機酸化物粒子を準備するステップと、
該無機酸化物粒子に、下記式(1)及び式(2)で示される繰り返し単位の合計数に対する式(2)で示される繰り返し単位の数の比が、0~0.5であるポリシラザン化合物と有機溶剤を含み、前記ポリシラザン化合物と有機溶剤の合計量に対して、ポリシラザン化合物が0.1~20質量%であるポリシラザン化合物含有組成物によって表面処理することにより、表面処理無機酸化物粒子を作製するステップと、
前記表面処理無機酸化物粒子を、前記(A)成分~前記(C)成分と混合することにより、前記付加硬化型シリコーン組成物を製造するステップと
を有することを特徴とする付加硬化型シリコーン組成物の製造方法。
【化14】
(式中、Rは炭素数1~6の脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、及び炭素数1~6のアルコキシ基から選ばれる基であり、ポリシラザン化合物1分子中のRは同一であっても異なっていてもよい。)
【0146】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。