(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008719
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】被加工物の研削方法
(51)【国際特許分類】
B24B 7/04 20060101AFI20250109BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B24B7/04 A
H01L21/304 631
H01L21/304 622R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111138
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】須藤 雄二郎
【テーマコード(参考)】
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C043BA03
3C043BA09
3C043BA12
3C043BA16
3C043CC04
3C043DD05
3C043EE04
5F057AA05
5F057BA01
5F057BA12
5F057BB03
5F057BB06
5F057BB09
5F057BB11
5F057CA01
5F057CA14
5F057DA08
5F057DA11
5F057EB16
5F057EB18
5F057EB20
5F057FA13
5F057GA01
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、一面側の表面粗さが他面側の表面粗さよりも大きいウェーハ又はインゴット等の被加工物の一面側を平坦化してから所望の厚さになるまで薄化する際に被加工物が破損する蓋然性を低減することが可能な被加工物の研削方法を提供する。
【解決手段】被加工物の研削方法であって、被加工物の一面側が露出されるようにチャックテーブルの保持面において被加工物の他面側を保持する保持ステップと、保持ステップの後に、被加工物の一面側が平坦化されるまで被加工物の一面側を研削する第1研削ステップと、第1研削ステップの後に、被加工物と複数の研削砥石との接触面積の増減を繰り返すことによって被加工物の研削される領域を変更しながら被加工物の一面側を研削する第2研削ステップと、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面の中心を通る直線を回転軸として回転可能なチャックテーブルと、環状の基台と該基台の一面において環状に離散して設けられている複数の研削砥石とを含む研削ホイールが先端部に装着されているスピンドルと、を備える研削装置において、該チャックテーブルと該スピンドルとの双方を回転させながら、一面側の表面粗さが他面側の表面粗さよりも大きい被加工物の該一面側に該複数の研削砥石を接触させることによって該被加工物の該一面側を研削する被加工物の研削方法であって、
該被加工物の該一面側が露出されるように該チャックテーブルの該保持面において該被加工物の該他面側を保持する保持ステップと、
該保持ステップの後に、該被加工物の該一面側が平坦化されるまで該被加工物の該一面側を研削する第1研削ステップと、
該第1研削ステップの後に、該被加工物と該複数の研削砥石との接触面積の増減を繰り返すことによって該被加工物の研削される領域を変更しながら該被加工物の該一面側を研削する第2研削ステップと、
を備える被加工物の研削方法。
【請求項2】
該第2研削ステップにおいては、該スピンドルに沿った方向と直交する方向における該スピンドルと該保持面の中心との間隔を変化させることによって該接触面積の増減を繰り返す請求項1に記載の被加工物の研削方法。
【請求項3】
該第2研削ステップにおいては、該スピンドルに沿った方向と該チャックテーブルの該回転軸に沿った方向とがなす角度を変化させることによって該接触面積の増減を繰り返す請求項1に記載の被加工物の研削方法。
【請求項4】
該第2研削ステップの後に、該接触面積を変化させないように該被加工物の該一面側を研削する最終研削ステップを更に備える請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の被加工物の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一面側の表面粗さが他面側の表面粗さよりも大きい被加工物の一面側に複数の研削砥石を接触させることによって被加工物の一面側を研削する被加工物の研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスのチップは、一般的に、シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、タンタル酸リチウム(LiTaO3:LT)又はニオブ酸リチウム(LiNbO3:LN)等の単結晶からなるウェーハを利用して製造される。このウェーハは、例えば、その表面側の一部が剥離されるようにインゴットを分離することによって製造される。
【0003】
インゴットを分離する方法としては、インゴットの素材を透過する波長のレーザービームを利用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この方法においては、まず、このレーザービームが集光される集光点がインゴットの内部に位置付けられるようにレーザービームをインゴットに照射しながら集光点とインゴットとを相対的に移動させる。
【0004】
これにより、インゴットの内部に改質部と改質部から伸展するクラックとを含む分離層が形成される。そして、この方法においては、このクラックをさらに伸展させるようにインゴットに外力が付与される。その結果、インゴットが分離層において分離されて、すなわち、その表面側の一部がインゴットから剥離して、ウェーハが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したようにウェーハが製造されると、インゴット及びウェーハのそれぞれの一面側(分離層側)に分離層に含まれる改質部及びクラックの分布を反映した凹凸が形成される。すなわち、それぞれの一面側の表面粗さが他面側の表面粗さよりも大きいウェーハ及びインゴットが形成される。
【0007】
そのため、このように製造されたウェーハは、チップの製造に供される前に、その一面側を平坦化してから所望の厚さになるまで薄化するように研削される。また、ウェーハが製造された後に残存するインゴットは、別のウェーハの製造に供される前に、その一面側を平坦化してから所望の厚さになるまで薄化するように研削される。
【0008】
このような研削は、環状の基台と基台の一面において環状に離散して設けられている複数の研削砥石とを含む研削ホイールを利用して行われる。具体的には、このような研削は、ウェーハ又はインゴットと研削ホイールとの双方を回転させながら、ウェーハ又はインゴットの一面側に複数の研削砥石を接触させることによって行われる。
【0009】
ただし、上述したようにインゴット及びウェーハのそれぞれの一面側に凹凸が形成されていると、この研削が行われる期間のうちインゴット又はウェーハの一面側が平坦化されるまでの期間において研削砥石が過剰に摩耗するおそれがある。そのため、この研削は、摩耗しにくい研削砥石(例えば、その硬度が高い研削砥石)を備える研削ホイールを利用して実施されることが多い。
【0010】
他方、摩耗しにくい研削砥石を備える研削ホイールを利用してインゴット又はウェーハを研削する場合には、この研削が行われる期間のうちインゴット又はウェーハの一面側が平坦化されてからの期間において研削砥石の自生発刃が抑制されるおそれがある。この場合、長期間に渡ってインゴット又はウェーハに大きな負荷が加わり、インゴット又はウェーハが破損する蓋然性が高くなる。
【0011】
これらの点に鑑み、本発明の目的は、一面側の表面粗さが他面側の表面粗さよりも大きいウェーハ又はインゴット等の被加工物の一面側を平坦化してから所望の厚さになるまで薄化する際に被加工物が破損する蓋然性を低減することが可能な被加工物の研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、保持面の中心を通る直線を回転軸として回転可能なチャックテーブルと、環状の基台と該基台の一面において環状に離散して設けられている複数の研削砥石とを含む研削ホイールが先端部に装着されているスピンドルと、を備える研削装置において、該チャックテーブルと該スピンドルとの双方を回転させながら、一面側の表面粗さが他面側の表面粗さよりも大きい被加工物の該一面側に該複数の研削砥石を接触させることによって該被加工物の該一面側を研削する被加工物の研削方法であって、該被加工物の該一面側が露出されるように該チャックテーブルの該保持面において該被加工物の該他面側を保持する保持ステップと、該保持ステップの後に、該被加工物の該一面側が平坦化されるまで該被加工物の該一面側を研削する第1研削ステップと、該第1研削ステップの後に、該被加工物と該複数の研削砥石との接触面積の増減を繰り返すことによって該被加工物の研削される領域を変更しながら該被加工物の該一面側を研削する第2研削ステップと、を備える被加工物の研削方法が提供される。
【0013】
また、該第2研削ステップにおいては、該スピンドルに沿った方向と直交する方向における該スピンドルと該保持面の中心との間隔を変化させることによって該接触面積の増減を繰り返すことが好ましい。あるいは、該第2研削ステップにおいては、該スピンドルに沿った方向と該チャックテーブルの該回転軸に沿った方向とがなす角度を変化させることによって該接触面積の増減を繰り返すことが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の被加工物の研削方法は、該第2研削ステップの後に、該接触面積を変化させないように該被加工物の該一面側を研削する最終研削ステップを更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、被加工物の一面側が平坦化されるまで被加工物の一面側を研削してから、被加工物と複数の研削砥石との接触面積の増減を繰り返すことによって被加工物の研削される領域を変更しながら被加工物の一面側を研削する。そして、被加工物と複数の研削砥石との接触面積が減少すると、被加工物に加わる負荷が小さくなる。
【0016】
さらに、被加工物と複数の研削砥石との接触面積の増減を繰り返すと、複数の研削砥石のそれぞれの自生発刃が促進されて被加工物に加わる負荷が小さくなる。そのため、本発明においては、長期間に渡って被加工物に大きな負荷が加わることに起因して被加工物が破損する蓋然性を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、被加工物の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される被加工物の一面側を研削するための研削装置の一例を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、
図2に示される研削装置において
図1に示される被加工物の一面側を研削する被加工物の研削方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図3に示される保持ステップの一例の様子を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、
図3に示される第1研削ステップの一例の様子を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、
図3に示される第2研削ステップの一例における第1動作の様子を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、
図3に示される第2研削ステップの一例における第2動作の様子を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、
図3に示される第2研削ステップの別の例における第3動作の様子を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、
図3に示される第2研削ステップの別の例における第4動作の様子を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、
図2に示される研削装置において
図1に示される被加工物の一面側を研削する被加工物の研削方法の別の例を模式的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、被加工物の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示される被加工物11は、例えば、Si、SiC、GaN、LT又はLN等の単結晶からなる。
【0019】
この被加工物11は、例えば、レーザービームを利用して円柱状のインゴットの内部に分離層を形成してから当該分離層においてインゴットを分離することによって製造されるウェーハ、又は、このウェーハが製造された後に残存するインゴットである。
【0020】
また、被加工物11においては、一面11a側(例えば、分離層側)の表面粗さが他面11b側の表面粗さよりも大きい。換言すると、被加工物11の一面11a側には凹凸部11cが存在するのに対して、被加工物11の他面11bは概ね平坦である。
【0021】
図2は、被加工物11の一面11a側を研削するための研削装置の一例を模式的に示す図である。
図2に示される研削装置2は、被加工物11よりも直径が大きい円盤状のチャックテーブル4を有する。このチャックテーブル4は、セラミックス等からなる枠体6を有する。
【0022】
枠体6は、円盤状の底壁6aと、底壁6aの外周部から立設されている円筒状の側壁6bと、を有する。すなわち、枠体6の上面側には、底壁6a及び側壁6bによって画定される凹部が画定されている。そして、この凹部には、多孔質セラミックス等からなる円盤状のポーラス板8が固定されている。
【0023】
なお、ポーラス板8の直径は、被加工物11の直径よりも小さい。また、枠体6の側壁6bの上面及びポーラス板8の上面は、円錐の側面に相当する形状を有し、被加工物11の他面11b側を保持する際にチャックテーブル4の保持面として機能する。
【0024】
また、底壁6aには、凹部の底面において開口し、かつ、底壁6aを貫通する流路6cが形成されている。そして、この流路6cは、バルブ10aを介して吸引源12aに連通し、かつ、バルブ10bを介して流体供給源12bに連通する。
【0025】
吸引源12aは、例えば、エジェクタ等を含む。また、流体供給源12bは、例えば、高圧気体を貯蔵するためのタンクと、タンクから供給される気体に混入した異物を取り除くためのフィルタと、タンクから供給される気体の圧力を調整するためのレギュレータと、を含む。
【0026】
さらに、チャックテーブル4は、回転機構(不図示)に接続されている。この回転機構は、例えば、モータ及びプーリ等を含む。そして、この回転機構が動作すると、チャックテーブル4の保持面の中心を通る直線を回転軸としてチャックテーブル4が回転する。
【0027】
また、チャックテーブル4は、ベアリング(不図示)等を介して傾き調整機構(不図示)に支持されている。この傾き調整機構は、例えば、チャックテーブル4の周方向に沿って概ね等しい角度の間隔で配置されている2つの可動軸及び1つの固定軸を含む。そして、2つの可動軸の少なくとも一方がチャックテーブル4を部分的に昇降させると、チャックテーブル4の回転軸の傾きが調整される。
【0028】
チャックテーブル4の上方には、鉛直方向に沿って延在するスピンドル14が設けられている。そして、スピンドル14の下端部(先端部)は、円盤状のマウント16となっている。なお、マウント16の直径は、被加工物11の半径よりも大きい。
【0029】
また、マウント16の外周部には、マウント16の厚さ方向においてマウント16を貫通する複数の孔(不図示)が形成されており、各孔にはボルト(不図示)が挿入されている。さらに、マウント16の下面には、複数のボルトを利用して、研削ホイール18が装着されている。
【0030】
研削ホイール18は、例えば、ステンレス鋼又はアルミニウム合金等の金属材料からなる環状の基台20を有する。なお、基台20の外径はマウント16の直径と概ね等しく、その下面には環状に離散して複数の研削砥石22が設けられている。
【0031】
複数の研削砥石22のそれぞれは、ビトリファイド又はレジノイド等のボンド材と、このボンド材に分散されたダイヤモンド等の砥粒と、を含む。そして、複数の研削砥石22のそれぞれの下面においては砥粒が露出されており、この下面は被加工物11の一面11a側を研削する際に研削面として機能する。
【0032】
なお、複数の研削砥石22によって被加工物11の一面11a側に存在する凹凸部11cを研削すると、各研削砥石22が過剰に摩耗するおそれがある。そのため、各研削砥石22としては、摩耗しにくい研削砥石が適用されることが好ましい。具体的には、各研削砥石22は、その結合材としてビトリファイドボンドを含むことが好ましい。
【0033】
さらに、スピンドル14の基端部(上端部)には、モータ(不図示)が接続されている。そして、このモータが動作すると、スピンドル14が延在する方向(ここでは、鉛直方向)に沿った直線を回転軸としてスピンドル14とともに研削ホイール18が回転する。この時、複数の研削砥石22のそれぞれの研削面は、その外径が被加工物11の半径よりも大きい環状の軌跡を描く。
【0034】
また、スピンドル14は、水平方向移動機構(不図示)及び鉛直方向移動機構(不図示)に接続されている。これらの移動機構のそれぞれは、例えば、モータ及びボールねじ等を含む。そして、この水平方向移動機構が動作するとスピンドル14が水平方向に沿って移動し、また、この鉛直方向移動機構が動作するとスピンドル14が鉛直方向に沿って移動する。
【0035】
図3は、研削装置2において被加工物11の一面11a側を研削する被加工物の研削方法の一例を模式的に示すフローチャートである。この方法においては、まず、被加工物11の一面11a側が露出されるようにチャックテーブル4の保持面において被加工物11の他面11b側を保持する(保持ステップS1)。
【0036】
図4は、保持ステップS1の一例の様子を模式的に示す図である。この保持ステップS1においては、まず、その一面11aが上を向くとともにポーラス板8を覆うように被加工物11をチャックテーブル4の保持面に置く。次いで、吸引源12aを動作させ、かつ、バルブ10aを開状態とする。
【0037】
これにより、チャックテーブル4の枠体6の底壁6aに形成されている流路6c及びポーラス板8を介して被加工物11の他面11b側に吸引力が作用する。その結果、チャックテーブル4の保持面に沿うように、具体的には、その他面11bが円錐の側面に相当する形状になるように被加工物11が弾性変形した状態で被加工物11がチャックテーブル4の保持面において保持される。以上によって、保持ステップS1が完了する。
【0038】
保持ステップS1の後には、被加工物11の一面11a側が平坦化されるまで被加工物11の一面11a側を研削する(第1研削ステップS2)。なお、第1研削ステップS2における被加工物11の一面11a側の平坦化は、被加工物11の一面11a側から凹凸部11cを除去することを意味する。
【0039】
換言すると、被加工物11の全域の厚さを凹凸部11cのうち最も窪んだ箇所と他面11bとの間隔以下にすることを意味する。また、凹凸部11cの厚さ、すなわち、凹凸部11cのうち最も突出した箇所と最も窪んだ箇所との間隔は、例えば、10μm以上50μm以下である。
【0040】
図5は、第1研削ステップS2の一例の様子を模式的に示す図である。この第1研削ステップS2においては、まず、スピンドル14を回転させた時の複数の研削砥石22のそれぞれの研削面の軌跡をチャックテーブル4の保持面の中心の直上に位置付けるようにスピンドル14を水平方向に沿って移動させる。次いで、チャックテーブル4の保持面のうち当該軌跡と重なる箇所が最も上に位置付けられるようにチャックテーブル4の傾きを調整する。
【0041】
次いで、チャックテーブル4及びスピンドル14の双方を回転させながら、スピンドル14を下降させる。なお、第1研削ステップS2におけるチャックテーブル4の回転速度は、例えば、1000rpm以上4000rpm以下であり、また、スピンドル14の回転速度は、例えば、40rpm以上500rpm以下である。また、第1研削ステップS2におけるスピンドル14の下降速度は、例えば、0.2μm/s以上0.8μm/s以下である。
【0042】
これにより、被加工物11の一面11a側に位置する凹凸部11cに複数の研削砥石22が接触して、凹凸部11cのうち最も突出した箇所が研削される。そして、この研削、すなわち、チャックテーブル4及びスピンドル14の双方を回転させながらのスピンドル14の下降は、凹凸部11cが除去されるまで継続される。以上によって、第1研削ステップS2が完了する。
【0043】
第1研削ステップS2の後には、被加工物11と複数の研削砥石22との接触面積の増減を繰り返すことによって被加工物11の研削される領域を変更しながら被加工物11の一面11a側を研削する(第2研削ステップS3)。
【0044】
この第2研削ステップS3においては、例えば、チャックテーブル4及びスピンドル14の双方を回転させながら、スピンドル14を下降させるとともに揺動させる。なお、スピンドル14の揺動は、例えば、被加工物11と複数の研削砥石22との接触面積を減少させるための第1動作と当該接触面積を増加させるための第2動作との繰り返しを意味する。
【0045】
図6は、第1動作の様子を模式的に示す図である。具体的には、第1動作は、スピンドル14が延在する方向(ここでは、鉛直方向)と直交する所定の方向に向かうスピンドル14の移動を意味する。そして、この第1動作は、例えば、スピンドル14とチャックテーブル4の保持面の中心との当該所定の方向における間隔が増加して、複数の研削砥石22のそれぞれの研削面と被加工物11の一面11aの中心とが離隔するまで続けられる。
【0046】
図7は、第2動作の様子を模式的に示す図である。具体的には、第2動作は、当該所定の方向の反対の方向に向かうスピンドル14の移動を意味する。そして、この第2動作は、例えば、スピンドル14とチャックテーブル4の保持面の中心との当該所定の方向における間隔が減少して、複数の研削砥石22のそれぞれの研削面と被加工物11の一面11aの中心とが再び接触するまで続けられる。
【0047】
なお、第2研削ステップS3におけるチャックテーブル4の回転速度は、例えば、1000rpm以上4000rpm以下であり、また、スピンドル14の回転速度は、例えば、40rpm以上500rpm以下である。また、第2研削ステップS3におけるスピンドル14の下降速度は、例えば、0.2μm/s以上0.8μm/s以下である。
【0048】
また、スピンドル14の当該所定の方向に沿った移動速度は、例えば、50μm/s以上5000μm/s以下である。また、第2研削ステップS3における第1動作と第2動作の切り替えは、第1動作及び第2動作のそれぞれにおける当該所定の方向に沿ったスピンドル14の移動距離が5mm以上50mm以下の所定の距離になったタイミングで行われる。
【0049】
これにより、被加工物11の一面11a側の中央に円錐の側面に相当する形状の突出部11dを残存させるような被加工物11の一面11a側の中央近傍以外の領域の研削、すなわち、第1動作を伴う研削と、被加工物11の一面11a側を平坦化するような被加工物11の一面11a側の全域の研削、すなわち、第2動作を伴う研削と、が交互に繰り返される。
【0050】
そして、第1動作を伴う研削と第2動作を伴う研削との交互の繰り返しは、被加工物11が所定の仕上げ厚さに到るまで継続される。また、この場合、第2研削ステップS3においては、最終的に得られる被加工物11の一面11a側を平坦化するために第2動作を伴う研削が最後に実施される。
【0051】
図3に示される被加工物の研削方法においては、被加工物11の一面11a側が平坦化されるまで被加工物11の一面11a側を研削してから、被加工物11と複数の研削砥石22との接触面積の増減を繰り返すことによって被加工物11の研削される領域を変更しながら被加工物11の一面11a側を研削する。そして、被加工物11と複数の研削砥石22との接触面積が減少すると、被加工物11に加わる負荷が小さくなる。
【0052】
さらに、被加工物11と複数の研削砥石22との接触面積の増減を繰り返すと、複数の研削砥石22のそれぞれの自生発刃が促進されて被加工物11に加わる負荷が小さくなる。そのため、
図3に示される被加工物の研削方法においては、長期間に渡って被加工物11に大きな負荷が加わることに起因して被加工物11が破損する蓋然性を低減することが可能である。
【0053】
なお、上述した内容は本発明の一態様であって、本発明は上述した内容に限定されない。例えば、本発明は、スピンドル14を移動させるための水平方向移動機構及び/又は鉛直方向移動機構に換えて又は加えて、チャックテーブル4を移動させるための水平方向移動機構及び/又は鉛直方向移動機構が設けられている研削装置において実施されてもよい。
【0054】
同様に、本発明は、チャックテーブル4の傾きを調整するための傾き調整機構に換えて又は加えて、スピンドル14の傾きを調整するための傾き調整機構が設けられている研削装置において実施されてもよい。すなわち、本発明においては、チャックテーブル4とスピンドル14とを相対的に移動できればよく、そのための構造に限定はない。
【0055】
そして、本発明においては、例えば、第2研削ステップS3において、スピンドル14の揺動に換えて又は加えて、チャックテーブル4を揺動させることによって、上述した第1動作を伴う研削と第2動作を伴う研削とが交互に繰り返されてもよい。
【0056】
また、本発明の第2研削ステップS3においては、被加工物11と複数の研削砥石22との接触面積の増減を繰り返すことによって被加工物11の研削される領域を変更しながら被加工物11の一面11a側を研削できればよく、そのための動作に限定はない。
【0057】
例えば、本発明の第2研削ステップS3においては、スピンドル14に沿った方向とチャックテーブル4の回転軸に沿った方向とがなす角度を変化させることによって被加工物11と複数の研削砥石22との接触面積の増減が繰り返されてもよい。
【0058】
具体的には、本発明の第2研削ステップS3においては、チャックテーブル4及びスピンドル14の双方を回転させながら、スピンドル14を下降させるとともにチャックテーブル4を揺らしてもよい。なお、チャックテーブル4の揺れは、例えば、被加工物11と複数の研削砥石22との接触面積を減少させるための第3動作と当該接触面積を増加させるための第4動作との繰り返しを意味する。
【0059】
図8は、第3動作の様子を模式的に示す図である。具体的には、第3動作は、被加工物11の外周部を複数の研削砥石22から離隔させるようなチャックテーブル4の傾きの調整を意味する。そして、この第3動作は、例えば、被加工物11の一面11a側のうち少なくとも中央近傍以外の領域が複数の研削砥石22のそれぞれの研削面から離隔するまで続けられる。
【0060】
図9は、第4動作の様子を模式的に示す図である。具体的には、第4動作は、被加工物11の外周部を複数の研削砥石22に接触させるようなチャックテーブル4の傾きの調整を意味する。そして、この第4動作は、例えば、被加工物11の一面11a側のうち中心から外周までの全域が複数の研削砥石22のそれぞれの研削面に接触するまで続けられる。
【0061】
これにより、被加工物11の一面11a側を逆円錐台に相当する形状にするような被加工物の一面11a側の中央近傍の領域の研削、すなわち、第3動作を伴う研削と、被加工物11の一面11a側を平坦化するような被加工物11の一面11a側の全域の研削、すなわち、第4動作を伴う研削と、が交互に繰り返される。
【0062】
そして、第3動作を伴う研削と第4動作を伴う研削との交互の繰り返しは、被加工物11が所定の仕上げ厚さに到るまで継続される。また、この場合、第2研削ステップS3においては、最終的に得られる被加工物11の一面11a側を平坦化するために第4動作を伴う研削が最後に実施される。
【0063】
また、本発明においては、例えば、第2研削ステップS3において、チャックテーブル4の揺れに換えて又は加えて、スピンドル14を揺らすことによって、上述した第3動作を伴う研削と第4動作を伴う研削とが交互に繰り返されてもよい。
【0064】
また、本発明においては、第2研削ステップS3において被加工物11を仕上げ厚さとすることなく、その後、さらに被加工物11の一面11a側を研削することによって被加工物11を仕上げ厚さとしてもよい。
図10は、このように研削される被加工物の研削方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【0065】
この方法においては、上述したように保持ステップS1、第1研削ステップS2及び第2研削ステップS3を実施した後、被加工物11と複数の研削砥石22との接触面積を変化させないように被加工物11の一面11a側を研削する(最終研削ステップS4)。この最終研削ステップS4は、例えば、研削装置2の構成要素を第1研削ステップS2と同様に動作させることによって実施される。
【0066】
なお、最終研削ステップS4におけるチャックテーブル4の回転速度は、例えば、1000rpm以上4000rpm以下であり、また、スピンドル14の回転速度は、例えば、40rpm以上500rpm以下である。また、最終研削ステップS4におけるスピンドル14の下降速度は、例えば、0.2μm/s以上0.8μm/s以下である。
【0067】
図10に示される被加工物の研削方法においては、
図3に示される被加工物の研削方法と比較して、仕上げ厚さを有する被加工物11の一面11a側をより容易に平坦化することが可能である。
【0068】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0069】
2 :研削装置
4 :チャックテーブル
6 :枠体(6a:底壁、6b:側壁、6c:流路)
8 :ポーラス板
10a:バルブ
10b:バルブ
11 :被加工物(11a:一面、11b:他面、11c:凹凸部、11d:突出部)
12a:吸引源
12b:流体供給源
14 :スピンドル
16 :マウント
18 :研削ホイール
20 :基台
22 :研削砥石