IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JNC株式会社の特許一覧 ▶ JNC石油化学株式会社の特許一覧

特開2025-8779高透明・高屈曲・低誘電基板形成用ポリアミック酸、ポリイミド、および薄膜
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008779
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】高透明・高屈曲・低誘電基板形成用ポリアミック酸、ポリイミド、および薄膜
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20250109BHJP
   C09D 179/08 20060101ALI20250109BHJP
   H01L 21/312 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C08G73/10
C09D179/08 A
H01L21/312 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111264
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古田 智嗣
(72)【発明者】
【氏名】杉原 克幸
(72)【発明者】
【氏名】藤原 武
(72)【発明者】
【氏名】島田 太一
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩綱
(72)【発明者】
【氏名】菊池 貴夫
(72)【発明者】
【氏名】松浦 智夫
【テーマコード(参考)】
4J038
4J043
5F058
【Fターム(参考)】
4J038DJ031
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA09
4J038PB08
4J038PB09
4J043PA01
4J043PA19
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA47
4J043SA52
4J043SA53
4J043SA54
4J043SA62
4J043TA12
4J043TA13
4J043TA14
4J043TA22
4J043TA70
4J043TA71
4J043UA022
4J043UA032
4J043UA041
4J043UA042
4J043UA052
4J043UA121
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA141
4J043UA151
4J043UA222
4J043UA232
4J043UA261
4J043UA262
4J043UA361
4J043UA391
4J043UA561
4J043UB011
4J043UB021
4J043UB121
4J043UB122
4J043UB291
4J043UB301
4J043UB401
4J043UB402
4J043VA021
4J043VA041
4J043VA051
4J043VA061
4J043ZA23
4J043ZA43
4J043ZA52
4J043ZB03
4J043ZB11
4J043ZB48
4J043ZB50
5F058AC02
5F058AD04
5F058AF04
5F058AH02
5F058AH03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐熱塗料、絶縁塗料、コーティング剤、薄膜、絶縁フィルム、耐熱フィルム、テープオートメーションボンディング用基材、半導体素子の保護膜、集積回路の層間絶縁膜、フレキシブル耐熱基板、フレキシブル絶縁基板、電線被覆材料を製造することが可能なポリアミック酸、該ポリアミック酸を含有するポリイミド系樹脂組成物、ならびに、該組成物を用いて形成される耐熱性、透明性および低誘電性に優れたポリイミドフィルムや基板を提供する。
【解決手段】(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンを含有する原料を反応させて得られるポリアミック酸とする。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンを含有する原料を反応させて得られるポリアミック酸。
【請求項2】
ジアミンが芳香環を有する、請求項1に記載のポリアミック酸。
【請求項3】
ジアミンが、式(A-1)~(A-3)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つである、請求項2に記載のポリアミック酸。

式(A-1)から式(A-3)において、化合物のベンゼン環上の少なくとも1つの水素はメチルで置き換えられてもよく、XおよびYは独立して、単結合、―O―、―N=N―、―CO―、―S―、―SO―、炭素数2~6の分岐アルキレン、または炭素数1~6の直鎖アルキレンである。
【請求項4】
原料が、さらに以下の(a)~(c)からなる群から選択される少なくとも1つの酸成分を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアミック酸。
(a) 式(2)~(12)のいずれかで表されるテトラカルボン酸に対応する、二無水物またはジカルボン酸一無水物;

(b) 1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,3-シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,3-シクロペンタントリカルボン酸、および1,2,4-シクロペンタントリカルボン酸からなる群から選ばれるトリカルボン酸、または対応するカルボン酸一無水物;
(c) 式(13)で表されるジカルボン酸または対応する一無水物;

式(13)において、Zは、1,2-フェニレン、1,2-ナフチレン、2,3-ナフチレン、エチレン、プロピレン、または1,2-シクロヘキシレンであり、これらの基の芳香環上の少なくとも1つの水素は、メチル、エチル、またはフェニルで置き換えられてもよい。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミック酸の脱水反応によって得られるポリイミド。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミック酸および溶媒を含有するワニス。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミック酸、当該ポリアミック酸から誘導されるポリイミド、および溶媒を含有するワニス。
【請求項8】
請求項6または7に記載のワニスから形成される薄膜。
【請求項9】
400nmの透過率が55%以上である、請求項5に記載のポリイミド、または請求項8に記載の薄膜。
【請求項10】
比誘電率が3.3以下である、請求項5に記載のポリイミド、または請求項8に記載の薄膜。
【請求項11】
請求項6または7に記載のワニスから形成される、耐熱塗料、絶縁塗料、またはコーティング剤。
【請求項12】
請求項8に記載の薄膜から形成される、絶縁フィルム、耐熱フィルム、テープオートメーションボンディング用基材、半導体素子の保護膜、または集積回路の層間絶縁膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高透明性、低誘電性を持つポリイミド(ポリイミド樹脂)に関する。
【0002】
本発明は、式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を原料とする重合体、この重合体および溶媒を含有するワニス(varnish)、該ワニスから形成される耐熱塗料、絶縁塗料、コーティング剤、薄膜、絶縁フィルム、耐熱フィルム、テープオートメーションボンディング用基材、半導体素子の保護膜、集積回路の層間絶縁膜、フレキシブル耐熱基板、フレキシブル絶縁基板、電線被覆材料に関する。
【背景技術】
【0003】
液晶表示素子や有機EL表示素子などのディスプレイ分野においては、パネルを構成する透明基板として無機ガラスが広く用いられているが、無機ガラスの高い比重と脆さが問題となっている。そのため、ガラスに代わる低比重の透明材料が求められているが、透明基板上にITOからなる透明電極を形成する際、高い導電性を得るために200℃以上の高温にすることから、さらに耐熱性を有する材料が求められている。
【0004】
ポリイミド樹脂は、高分子フィルムの中では高い耐熱性を持つことが知られており、表示素子や半導体における保護材料や絶縁材料などの電子材料として広く用いられている。しかしながら、芳香族ポリイミド樹脂フィルムは、一般に、分子内または分子間電荷移動錯体の形成に由来する可視光の吸収により黄色又は褐色に着色する。このため、フラットパネルディスプレイ等の透明基板材料、光ファイバーおよび光導波路などの光学用途には不適当であった。
【0005】
光学用プラスチックとして用いられてきたアクリル樹脂は、低複屈折性と無色透明性を有しているが、耐熱性が不足しているために、上記用途には使用できなかった。また、ポリカーボネートは、高いガラス転移温度を有しているが、耐熱着色性を満足できていなかった。このような問題を解決する方法として、透明ポリイミドフィルムに関する報告がいくつかなされている。
【0006】
従来より、プリント配線基板や層間絶縁膜などにもポリイミド樹脂が用いられてきた。これらの用途に用いられてきたポリイミド樹脂は芳香族系であり、典型的な場合、これら芳香族系のポリイミドの比誘電率は3.0~4.0であるとされている(非特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、近年、大規模集積回路(LSI)の開発においては、演算速度の高速化から配線が微細化しており、これら用途に用いる層間絶縁膜では一段と高い絶縁性が求められているにもかかわらず、従来のポリイミド樹脂では比誘電率が高く適用することができなかった。
【0008】
そこで、ポリイミド樹脂の耐熱性を維持しつつ、比誘電率の低下を図る検討がなされてきた。その1つはモル分極率の小さな原子の導入であり、典型的にはフッ素原子を導入するという方法である(非特許文献2参照)。しかしながら、工業的にフッ素原子の導入されたポリイミド樹脂を製造するには、原料の入手性やコストの面で問題があった。
【0009】
また、一般にポリイミド樹脂は溶媒に対する溶解性が低い。このため、通常、その前駆体であるポリアミック酸の状態で溶液として塗布しておき、高温に加熱処理することによりポリイミドに変換している。このため、加工性に制限があり特に、ポリイミドを配したい部分が熱により不可逆な損傷を受けやすい場合には使用できないなどの問題があった。
また、高温処理した後に冷却する際に収縮を伴うことが通常であり、この際生ずる熱応力による膜の剥離や割れ等の深刻な問題を伴うことが多かった。
【0010】
このような状況から耐熱性を維持しつつ無色透明、低誘電性のポリイミド樹脂の提案がいくつかなされている。その一つの方法として、芳香環ではなく脂肪族基を有するテトラカルボン酸二無水物ないしジアミンを用いてポリイミド樹脂を製造するものがある。例えば、脂環骨格が連続して縮環した構造を有するテトラカルボン酸二無水物を原料としたポリイミド樹脂が提案されている(特許文献1)。しかしながら、このポリイミド樹脂の複屈折は必ずしも十分ではなく、また原料の合成も多段におよび複雑で工業的な製造には問題がある。
【0011】
また、薄膜トランジスタ用の基板材料として1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を原料としたポリイミド樹脂が提案されている(特許文献2)。しかしながら、ここに記載された実施例によれば、得られたポリイミド樹脂の透明性は高いものの、薄い茶色に着色しているとあり、高い無色透明性を要求される用途には使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003-96070号公報
【特許文献2】特開2003-168800号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】第54回(2005年)高分子討論会予稿2Pc095
【非特許文献2】Macromolecules,27,5964(1994).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、耐熱塗料、絶縁塗料、コーティング剤、薄膜、絶縁フィルム、耐熱フィルム、テープオートメーションボンディング用基材、半導体素子の保護膜、集積回路の層間絶縁膜、フレキシブル耐熱基板、フレキシブル絶縁基板、電線被覆材料を製造することが可能なポリアミック酸、該ポリアミック酸を含有するポリイミド系樹脂組成物、ならびに、該組成物を用いて形成される耐熱性、透明性、および低誘電性に優れたポリイミドフィルムや基板を提供することにある。さらには、密着性や屈曲性に優れたポリイミドフィルムや基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記従来の課題を解決すべく、鋭意研究を積み重ねた結果、式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られたポリアミック酸が、フィルムを製造する際に空気中で200℃以上に加熱しても高い透明性を有すること、低誘電性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の態様の例を以下に示す。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリアミック酸を用いれば、高透明性、低誘電性などの物性の少なくとも1つを好適に充足するポリイミドフィルムや基板を提供できる。また本発明で得られるポリイミドフィルムや基板は、密着性や屈曲性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は下記の項などである。
[1] 式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンを含有する原料を反応させて得られるポリアミック酸。
【0018】
[2]ジアミンが芳香環を有する、項[1]に記載のポリアミック酸。
【0019】
[3] ジアミンが、式(A-1)~(A-3)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つである、項[2]に記載のポリアミック酸。

式(A-1)から式(A-3)において、化合物のベンゼン環上の少なくとも1つの水素はメチルで置き換えられてもよく、XおよびYは独立して、単結合、―O―、―N=N―、―CO―、―S―、―SO―、炭素数2~6の分岐アルキレン、または炭素数1~6の直鎖アルキレンである。
【0020】
[4] 原料が、さらに以下の(a)~(c)からなる群から選択される少なくとも1つの酸成分を含有する、項[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリアミック酸。
(a) 式(2)~(12)のいずれかで表されるテトラカルボン酸に対応する、二無水物またはジカルボン酸一無水物;

(b) 1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,3-シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,3-シクロペンタントリカルボン酸、および1,2,4-シクロペンタントリカルボン酸からなる群から選ばれるトリカルボン酸、または対応するカルボン酸一無水物;
(c) 式(13)で表されるジカルボン酸または対応する一無水物;

式(13)において、Zは、1,2-フェニレン、1,2-ナフチレン、2,3-ナフチレン、エチレン、プロピレン、または1,2-シクロヘキシレンであり、これらの基の芳香環上の少なくとも1つの水素は、メチル、エチル、またはフェニルで置き換えられてもよい。
【0021】
[5] 項[1]~[4]のいずれか1項に記載のポリアミック酸の脱水反応によって得られるポリイミド。
【0022】
[6] 項[1]~[4]のいずれか1項に記載のポリアミック酸および溶媒を含有するワニス。
【0023】
[7] 項[1]~[4]のいずれか1項に記載のポリアミック酸、当該ポリアミック酸から誘導されるポリイミド、および溶媒を含有するワニス。
【0024】
[8] 項[6]または[7]に記載のワニスから形成される薄膜。
【0025】
[9] 400nmの透過率が55%以上である、項[5]に記載のポリイミド、または項[8]に記載の薄膜。
【0026】
[10] 比誘電率が3.3以下である、項[5]に記載のポリイミド、または項[8]に記載の薄膜。
【0027】
[11] 項[6]または[7]に記載のワニスから形成される、耐熱塗料、絶縁塗料、またはコーティング剤。
【0028】
[12] 項[8]に記載の薄膜から形成される、絶縁フィルム、耐熱フィルム、テープオートメーションボンディング用基材、半導体素子の保護膜、または集積回路の層間絶縁膜。
【0029】
以下、本発明に係るポリアミック酸、樹脂溶液組成物、ポリイミド樹脂、ポリイミドフィルム、およびこれらの用途について詳細に説明する。
【0030】
<テトラカルボン酸二無水物>
式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物(以下「化合物(1)」ともいう)は立体異性体が存在するが、本発明においては、単一の立体異性体であっても、それらの混合物であってもよい。これら立体異性体のうち、対称性の高いものはより耐熱性に優れ、対称性が低いものや異性体混合物はより溶解性や屈曲性に優れる。
【0031】
<ワニス(樹脂溶液組成物)>
本発明のワニスは、化合物(1)とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸又はポリイミド樹脂を含む樹脂溶液組成物である。
【0032】
<ジアミン>
ジアミンとしては、1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノキシレン、2,4-ジアミノデュレン、3,5-ジアミノベンゾトリフルオリド、2,5-ジアミノベンゾトリフルオリド、3,5-ジアミノ-1,6-ジメトキシベンゼン、3,5-ジアミノ-1,6-ジメトキシトルエン、4,4’-ビナフチルアミン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,5-ジアミノナフタレン、ジアミノナフタレン、ベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ジフェニル-4,4’-ジアミノジフェニル、ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニル、ジアルキル-4,4’-ジアミノジフェニル、ジメトキシ-4,4’-ジアミノジフェニル、ジエトキシ-4,4’-ジアミノジフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、2,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-メチレンビス(2-メチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、2,2-ジアミノジフェニルプロパン、ビス(3,5-ジエチル-4-アミノフェニル)メタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、2,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、2,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’-ベンゾフェノンジアミン、3,3’-ベンゾフェノンジアミン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ターフェニレンジアミン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,3-ビス(4-アミノ-3-メチルフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-5-メチルベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-5-デシルベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-5-エイコシルベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-3-ドデシルフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-5-シアノベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-5-クロロベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-5-メトキシベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-5-ビニルベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-5-アリルベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-5-カルボキシベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-5-シクロプロピルベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-5-シクロヘキシルベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-4-メチルフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-5-メチルベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-5-デシルベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-5-エイコシルベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-4-ドデシルフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-5-シアノベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-5-クロロベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-5-メトキシベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-5-ビニルベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-5-アリルベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-5-カルボキシベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-5-シクロプロピルベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-5-シクロヘキシルベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,7-ジアミノ-ジメチルジベンゾチオフェン-5,5-ジオキシド、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン、1,2-ビス[2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、5(6)-アミノ-1-(4-アミノメチル)-1,3,3-トリメチルインダン、1,2-トリジン、1,3-トリジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ビストリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ビストリフルオロメチル-5,5’-ジアミノビフェニル、ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル、ビス(フッ素化アルキル)-4,4’-ジアミノジフェニル、ビス(フッ素化アルコキシ)-4,4’-ジアミノジフェニル、4,4’-ビス(4-アミノテトラフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノテトラフルオロフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)へキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)へキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル)へキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-(3-アミノ-5-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル)へキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)へキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)へキサフルオロプロパン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、2,2’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニル、ジブロモ-4,4’-ジアミノジフェニル、2,6-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノ-s-トリアジン、2,7-ジアミノベンゾフラン、2,7-ジアミノカルバゾール、3,7-ジアミノフェノチアジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-チアジアゾール、2,4-ジアミノ-6-フェニル-s-トリアジン、4-アミノ安息香酸-4-アミノフェニルエステル、2-(4-アミノフェニル)アミノベンゾオキサゾール、5,5’-メチレン-ビス-(アントラニル酸)、3,5-ジアミノ安息香酸、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル-6,6’-ジスルホン酸、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル-3,3’-ジスルホン酸、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,6-ジヒドロキシ-1,3-フェニレンジアミン、3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニル、9,9-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2’-ビス(3-スルホプロポキシ)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジンなどが挙げられる。
【0033】
<酸成分(a)~(c)等>
本発明のポリアミック酸又はポリイミドを得る際には、本発明のテトラカルボン酸系化合物に加えて他の酸二無水物又はテトラカルボン酸を混合し、ジアミンと共重合させてもよい。その際、使用することができる酸二無水物は特に限定はされないが、例えばピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、m-タ-フェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、p-タ-フェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二酸無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-スルホニルジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-オキシジフタル酸無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エ-テル二酸無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エ-テル二酸無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、が例として挙げられる。
【0034】
一方、加えて使用できる脂環式の酸無水物としては、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物、ビシクロ[3,3,0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物、1-カルボキシメチル-2,3,5-シクロペンタントリカルボン酸-2,6:3,5-二酸無水物、4-フェニルエチニルフタル酸無水物などの脂環構造を有するテトラカルボン酸の二無水物などを挙げることができる。
【0035】
これら酸二無水物と本発明のテトラカルボン酸系化合物との使用割合は得ようとする樹脂の物性により任意に設定可能であるが、本発明の化合物(1)の使用量が30モル%以上であることが好ましく、さらに50モル%以上であることがより好ましく、99モル%以下であることが好ましく、さらに90モル%以下であることがより好ましい。
【0036】
<添加物>
本発明のポリアミック酸を含有する樹脂溶液組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、表面平滑性等の特性向上のために、他の添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、例えば、高分子化合物、エポキシ化合物、アクリル樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、エポキシ硬化剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、水溶性ポリマーが挙げられる。
【0037】
<溶媒>
本発明のワニスに用いる溶媒としては、有機極性溶媒が好ましい。有機極性溶媒としては、特に限定されないが、例えば、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルフォルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、p-クロロフェノール、m-クレゾール、テトラメチレンスルホンおよびプロピレンカーボネートが挙げられる。これらの溶媒は2種以上を混合して使用してもよい。また、得られる樹脂の溶解度が低くならない範囲で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン等の環状エーテル類、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等の鎖状のエーテル類、およびシクロヘキサノン、シクロペンタノン等の環状ケトン類を併用してもよい。
さらにこれに加え、塗膜均一性向上を目的として、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-ブトキシ-2-プロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、プロピレングリコール-1-モノエチルエーテル-2-アセテート、ジプロピレングリコール、2-(2-エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n-プロピルエステル、乳酸n-ブチルエステル、乳酸イソアミルエステルなどの低表面張力を有する溶媒も用いることができる。これら溶媒は1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。
【0038】
<ポリアミック酸の製造方法>
上記ポリアミック酸は、原料として、式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンを含有する。これらの原料からの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ジアミンを溶媒に溶解した後、酸二無水物を5℃~室温付近で添加し、次いで室温付近~160℃の温度で30~120分間撹拌し、さらに室温付近で60分間撹拌する方法が挙げられる。
【0039】
<ポリイミド>
上記ポリイミド樹脂は上記ポリアミック酸を溶液中で加熱してイミド化することにより得ることができる。反応系内でポリイミド樹脂を製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、ジアミンを溶媒に溶解した後、化合物(1)を添加し、得られた溶液を4時間還流する方法が挙げられる。溶媒等についてはポリアミック酸の製造方法で用いられる溶媒等と同様のものを用いることができる。
【0040】
本発明のポリイミド樹脂は、耐熱性および透明性に優れていることから、フラットパネルディスプレイや携帯電話機器等の透明基板材料、光ファイバー、光導波路および光学用接着剤などの光学用途に好適である。
【0041】
<フィルム>
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、本発明の樹脂溶液組成物を基板上に塗布して得られた塗膜中の溶媒を空気中で蒸発除去する工程を含む方法が好ましい。以下、この方法における好ましい態様を説明するが、本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、この方法に限定されるものではない。
【0042】
本発明の樹脂溶液組成物を塗布する基板としては、特に限定されないが、アルミニウム基板、ガラス基板やステンレス製基板などの無機材料基板や、ポリイミドなどの有機材料基板が挙げられる。本発明の樹脂溶液組成物の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、アプリケーターやスピンコートを用いて基板上にキャストする方法が挙げられる。
【0043】
基板上に塗膜を形成した後、ホットプレート上又は乾燥炉中で、60~120℃の温度で約1~60分間予備乾燥する。次いで、熱循環オーブンを用いて、150~250℃の温度で約20~120分間加熱処理することにより、ポリイミドフィルムが得られる。
【実施例0044】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
(1)原料および溶媒の名称の略称
実施例および比較例で用いた原料および溶媒の名称の略称を以下に示す。
【0045】
<テトラカルボン酸二無水物>
DH-NTCDA:1,2,3,4,5,6,7,8, 9,10,-デカヒドロ-2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸2,3:6,7-二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
CBDA:1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
<ジアミン>
DDM:4,4’-ジアミノジフェニルメタン
<溶媒>
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
【0046】
合成例、実施例および比較例
<実施例1>
200mLの反応容器中にマグネット攪拌子を入れて、DH-NTCDA7.2g、PMDA1.4g、DDM6.4g、およびNMP50gを仕込み、マクネチックスターラーを用いて室温で90分間攪拌した。その後、NMP35gを加え、さらに室温で60分間撹拌して淡黄色のポリアミック酸の15%(w/w)NMP溶液を得た。
【0047】
<比較例1>
200mLの反応容器中にマグネット攪拌子を入れて、CBDA5.9g、PMDA1.6g、DDM7.5g、およびNMP50gを仕込み、マクネチックスターラーを用いて室温で90分間攪拌した。その後、NMP35gを加え、さらに室温で60分間攪拌して淡黄色のポリアミック酸の15%(w/w)NMP溶液を得た。
【0048】
<比較例2>
200mLの反応容器中にマグネット攪拌子を入れて、PMDA5.2g、DDM4.8g、NMP65gを仕込み、マクネチックスターラーを用いて室温で90分間攪拌した。その後、NMP25gを加え、さらに室温で60分間攪拌して淡黄色のポリアミック酸の10%(w/w)NMP溶液を得た。
【0049】
(2)評価方法
それぞれのポリアミック酸溶液からのフィルムの作製および物性評価は以下に示す方法で行った。
<密着性・屈曲性評価>
実施例および比較例で作製したポリアミック酸溶液を厚さ0.06mmのアルミニウム箔上に塗布し、120℃で30分乾燥後、220℃で40分間焼成して、膜厚100μmのポリイミド膜を得た。この膜を1mmの丸棒に巻き付け、ひび割れや剥離の有無を確認した。
【0050】
<熱可塑性評価>
密着性・屈曲性評価と同様に作製したポリイミド膜を、ホットプレートに載せて再加熱を行うことにより、熱可塑性を評価した。
【0051】
<溶解性評価>
密着性・屈曲性評価と同様に作製したポリイミドの個片をNMPに含浸し、スターラーで攪拌することにより、溶解性を確認した。
【0052】
<透過率>
密着性・屈曲性評価と同様に作製したポリイミドフィルム(膜厚10μm)の400nmでの透過率を、日本分光(株)製分光光度計「V-660」を用いて測定した。
【0053】
<比誘電率および誘電正接>
実施例および比較例で作製したポリアミック酸溶液をカプトン300H(東レ・デュポン株式会社製;登録商標)(75μm)の上に塗布し、120℃で30分乾燥したのち、220℃で40分間、大気中で焼成し60μmのフィルムとした。
このフィルムから50mm角に切り出したサンプルを、ベクトルネットワークアナライザー(アンリツ社製MS46522B-043型)に接続した、株式会社AET製の空洞共振器(TEモード40GHz用)を用いて、共振周波数のシフト量と減衰量を測定し、同社製ソフトウエアを用いて比誘電率および誘電正接を計算した。また、測定値はカプトン300Hと新たに塗布・硬化させた硬化膜の2層構造の測定結果であるので、ポリイミドフィルムのみを測定した値を用いて、同社の計算シートで硬化膜のみの比誘電率および誘電正接を求めた。データの比較時に短冊中の水分量の影響を少なくするために、短冊の成形は測定前日におこない、比誘電率および誘電正接の評価は空調機の温度を20℃にした実験室で、サンプルを60分以上静置したあとで開始した。
【0054】
表1.評価結果1
【0055】
表2.評価結果2
【0056】
実施例1は、比較例1や比較例2に比べて、密着性、屈曲性、溶解性が高いことが分かった。また、比誘電率および誘電正接の値も低いことから、実施例1のポリアミック酸を用いた基板は、発熱量が少なく、高いエネルギー効率を期待できる。比較例2の比誘電率や誘電正接の値は比較的良好ではあったが、透過率が著しく低いものであった。
よって実験結果から、本発明のポリアミック酸は、優れた性能を有するものであることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のポリアミック酸を用いれば、耐熱塗料、絶縁塗料、コーティング剤、薄膜、絶縁フィルム、耐熱フィルム、テープオートメーションボンディング用基材、半導体素子の保護膜、集積回路の層間絶縁膜、フレキシブル耐熱基板、フレキシブル絶縁基板、電線被覆材料を製造することが可能なポリイミド系樹脂組成物、ならびに、該組成物を用いて形成される耐熱性、透明性、および低誘電性に優れたポリイミドフィルムや基板を提供できる。