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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008810
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】加熱機構
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20250109BHJP
   F25B 30/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
F25B1/00 304T
F25B1/00 361A
F25B1/00 371J
F25B1/00 396D
F25B30/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111330
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀幸
(57)【要約】
【課題】成績係数を高めることができる加熱機構を提供する。
【解決手段】加熱機構2の制御手段4は、第一の温度センサー38または第二の温度センサー40の値が設定温度になるように、CO冷媒が臨界温度31.1℃および臨界圧力7.38MPaで特定される臨界点を囲繞する設定圧力値と設定温度とで規定される経路にしたがって可変膨張弁32の開度と圧縮機6の回転数と制水弁20の開度を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工装置で使用する加工寄与液を加熱する加熱機構であって、
制御手段と、
CO冷媒を圧縮する圧縮機と、
該圧縮機が圧縮した圧縮熱を帯びたCO冷媒から熱を奪い加工装置で使用する加工寄与液に熱を与える水冷式ガスクーラと、
熱が奪われたCO冷媒が送り込まれる内部熱交換器と、
該内部熱交換器から送り出されたCO冷媒を気化させ気化熱を生成する蒸発器と、
該圧縮機と該水冷式ガスクーラとを連結する第一の経路と、
該水冷式ガスクーラと該蒸発器とを連結する第二の経路と、
該蒸発器と該圧縮機とを連結する第三の経路と、
該蒸発器に工業用水または加工装置で使用された排水が導入されCO冷媒に熱を与える制水弁を備えた第四の経路と、
該第一の経路に連結する第一の連結部と該第二の経路に連結する第二の連結部とによって連結され可変バイパス弁を備えたバイパス経路と、を含み、
該内部熱交換器は、該蒸発器から送り出されたCO冷媒が該水冷式ガスクーラから送り出されたCO冷媒から熱を奪うように該第二の経路と該第三の経路とに跨り配設され、
該第二の経路には、熱が奪われたCO冷媒の流量を調整する可変膨張弁が該内部熱交換器と該第二の連結部との間に配設され、
該可変膨張弁と該圧縮機との間の該第二の経路と該第三の経路とのいずれかにCO冷媒の圧力を計測する第一の圧力センサーが配設され、
該圧縮機と該可変膨張弁との間の該第一の経路と該第二の経路とのいずれかに該圧縮機によって圧縮されたCO冷媒の圧力を計測する第二の圧力センサーが配設され、
加工装置で使用する加工寄与液が該水冷式ガスクーラから流出する温度を計測する第一の温度センサーと、
該水冷式ガスクーラに流入する加工寄与液の温度を計測する第二の温度センサーと、
該蒸発器から流出する工業用水または加工装置で使用された排水の温度を計測する第三の温度センサーと、
該蒸発器に流入する工業用水または加工装置で使用された排水の温度を計測する第四の温度センサーと、
該圧縮機から送り出されるCO冷媒の温度を計測する第五の温度センサーと、
該水冷式ガスクーラから送り出されるCO冷媒の温度を計測する第六の温度センサーと、
該内部熱交換器から送り出され該圧縮機に至るCO冷媒の温度を計測する該第三の経路に配設される第七の温度センサーと、が配設され、
該制御手段は、該第一の圧力センサーが検出すべき第一の圧力値と、該第二の圧力センサーが検出すべき第二の圧力値と、該第一の温度センサーが検出すべき第一の温度または該第二の温度センサーが検出すべき第二の温度と、該第五の温度センサーが検出すべき第五の温度と、該第七の温度センサーが検出すべき第七の温度と、を少なくとも設定する設定部を備え、
該第一の温度センサーまたは該第二の温度センサーの値が該設定された温度になるように、CO冷媒が臨界温度31.1℃および臨界圧力7.38MPaで特定される臨界点を囲繞する該設定された圧力値と温度とで規定される経路にしたがって該可変膨張弁の開度と該圧縮機の回転数と該制水弁の開度を制御する加熱機構。
【請求項2】
該制御手段は、加工装置で使用する加工寄与液の加熱量を減少させる場合、該圧縮機の回転数を低下させて該水冷式ガスクーラを流れるCO冷媒の流量を減少させ、その際に該圧縮機の回転数が下限値を下回らないように該バイパス経路の該可変バイパス弁の開度を大きくして該水冷式ガスクーラを流れるCO冷媒の流量を減少させる請求項1記載の加熱機構。
【請求項3】
該制御手段は、加工装置で使用する加工寄与液の加熱量を増大させる場合、該可変膨張弁の開度を大きくするとともに該圧縮機の回転数を増大させて該蒸発器を流れるCO冷媒の流量を増大させ、それに伴って該蒸発器から送り出されるCO冷媒に残存する液状COを該内部熱交換器において気化させ該圧縮機の負担を軽減する請求項1記載の加熱機構。
【請求項4】
該制御手段は、該第三の温度センサーによって検出される工業用水または加工装置で使用された排水の温度と、該第四の温度センサーによって検出される工業用水または加工装置で使用された排水の温度との温度差が所定の値になるように該制水弁の開度を調整してCO冷媒に熱を与える請求項1記載の加熱機構。
【請求項5】
該制御手段は、該可変膨張弁の開度を小さくすることで該第二の圧力センサーの値を大きくし、該可変膨張弁の開度を大きくすることで該第二の圧力センサーの値を小さくして該設定された圧力値に調整し成績係数(加熱能力/圧縮仕事)を制御する請求項1記載の加熱機構。
【請求項6】
該圧縮機の出口をA点、
該水冷式ガスクーラの出口をB点、
該内部熱交換器における該第二の経路の出口をC点、
該可変膨張弁の出口をD点、
該蒸発器の出口をE点、
該内部熱交換器における該第三の経路の出口をF点、
該A点における温度をTA、圧力をPA、エンタルピーをEA、
該B点における温度をTB、圧力をPB、エンタルピーをEB、
該C点における温度をTC、圧力をPC、エンタルピーをEC、
該D点における温度をTD、圧力をPD、エンタルピーをED、
該E点における温度をTE、圧力をPE、エンタルピーをEE、
該F点における温度をTF、圧力をPF、エンタルピーをEF、とした場合、
該F点から該圧縮機に送り込まれたCO冷媒は該圧縮機によって圧縮されて臨界点を超える該A点に至り、温度はTFからTAに、圧力はPFからPAに、エンタルピーはEFからEAにそれぞれ変化し、
該A点から該水冷式ガスクーラに送り込まれたCO冷媒は該水冷式ガスクーラによって熱が奪われて該B点に至り、温度はTAからTBに変化し、圧力は変化せず(PA=PB)、エンタルピーはEAからEBに変化し、TAとTBとの温度差およびEAとEBとのエンタルピー差は、該水冷式ガスクーラによって加工寄与液の加熱に使用され、温度TBは臨界温度を下回りCO冷媒は亜臨界状態となることで液状に近づき、
該B点から該内部熱交換器に送り込まれたCO冷媒は該蒸発器から送り込まれるCO冷媒によって熱が奪われて該C点に至り、温度はTBからTCに変化し、圧力は変化せず(PB=PC)、エンタルピーはEBからECに変化し、温度TCは臨界温度を更に下回りCO冷媒は更に液状に近づき、
該C点から該可変膨張弁に送り込まれたCO冷媒は該可変膨張弁によって減圧されて該D点に至り、温度はTCからTDに変化し、圧力はPCからPDに変化し、エンタルピーは変化せず(EC=ED)、CO冷媒は飽和液線に達し、
該D点から該蒸発器に送り込まれたCO冷媒は該蒸発器によって工業用水または加工装置で使用された排水からエネルギーを奪い該E点に至り、温度および圧力は変化せず(TD=TE、PD=PE)、エンタルピーはEDからEEに変化し、該E点は飽和蒸気線の内側でCO冷媒は液体を含む気体となり、
該E点から該内部熱交換器に送り込まれたCO冷媒は該B点から該内部熱交換器に送り込まれたCO冷媒から熱を奪い気体となって該F点に至り、温度はTEからTFに変化し、圧力は変化せず(PE=PF)、エンタルピーはEEからEFに変化し、該A点に至り、
該制御手段は、
成績係数(加熱能力/圧縮仕事)=(EA-EB)/(EA-EF)が最大となるように温度、圧力、エンタルピーを制御する請求項1から5までのいずれかに記載の加熱機構。
【請求項7】
該A点における温度TAは該第五の温度センサーによって検出し、
該B点における温度TBは該第六の温度センサーによって検出し、
該F点における温度TFは該第七の温度センサーによって検出し、
該A点における圧力PAは該第二の圧力センサーによって検出し、
該B点における圧力PBは該第二の圧力センサーによって検出し、
該F点における圧力PFは該第一の圧力センサーによって検出し、
該A点におけるエンタルピーEAはp-h線図に基づいて検出し、
該B点におけるエンタルピーEBはp-h線図に基づいて検出し、
該F点におけるエンタルピーEFはp-h線図に基づいて検出し、
該制御手段は、
成績係数(加熱能力/圧縮仕事)=(EA-EB)/(EA-EF)
の式によって加熱能力を高くし圧縮仕事を小さくして成績係数を向上させる請求項6記載の加熱機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置で使用する加工寄与液を加熱する加熱機構に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSIなどの複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、裏面が研削装置によって研削され所定の厚みに形成された後、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、分割された各デバイスチップは携帯電話、パソコンなどの電気機器に利用される。
【0003】
ウエーハを加工している際に、研削装置またはダイシング装置を構成する加工具が装着されたスピンドルユニットが発熱して熱膨張すると、高精度な研削または切削ができなくなる。そのため、温度制御装置によって、スピンドルユニットの温度を一定するための制御が行われている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の温度制御装置は、CO2を冷媒として使用するタイプの装置であり、高い冷却効率を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-40396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
研削装置やダイシング装置が寒冷地で使用される場合、加工寄与液の温度が所定の温度よりも低くなってしまうことがある。このようなときには、電気ヒーターによって加工寄与液を所定の温度まで加熱する必要がある。しかし、電気ヒーターの加熱能力は、消費電力に対応しており、成績係数(加熱能力/消費電力)が1と小さいという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、成績係数を高めることができる加熱機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記課題を解決する以下の加熱機構が提供される。すなわち、
「加工装置で使用する加工寄与液を加熱する加熱機構であって、
制御手段と、
CO冷媒を圧縮する圧縮機と、
該圧縮機が圧縮した圧縮熱を帯びたCO冷媒から熱を奪い加工装置で使用する加工寄与液に熱を与える水冷式ガスクーラと、
熱が奪われたCO冷媒が送り込まれる内部熱交換器と、
該内部熱交換器から送り出されたCO冷媒を気化させ気化熱を生成する蒸発器と、
該圧縮機と該水冷式ガスクーラとを連結する第一の経路と、
該水冷式ガスクーラと該蒸発器とを連結する第二の経路と、
該蒸発器と該圧縮機とを連結する第三の経路と、
該蒸発器に工業用水または加工装置で使用された排水が導入されCO冷媒に熱を与える制水弁を備えた第四の経路と、
該第一の経路に連結する第一の連結部と該第二の経路に連結する第二の連結部とによって連結され可変バイパス弁を備えたバイパス経路と、を含み、
該内部熱交換器は、該蒸発器から送り出されたCO冷媒が該水冷式ガスクーラから送り出されたCO冷媒から熱を奪うように該第二の経路と該第三の経路とに跨り配設され、
該第二の経路には、熱が奪われたCO冷媒の流量を調整する可変膨張弁が該内部熱交換器と該第二の連結部との間に配設され、
該可変膨張弁と該圧縮機との間の該第二の経路と該第三の経路とのいずれかにCO冷媒の圧力を計測する第一の圧力センサーが配設され、
該圧縮機と該可変膨張弁との間の該第一の経路と該第二の経路とのいずれかに該圧縮機によって圧縮されたCO冷媒の圧力を計測する第二の圧力センサーが配設され、
加工装置で使用する加工寄与液が該水冷式ガスクーラから流出する温度を計測する第一の温度センサーと、
該水冷式ガスクーラに流入する加工寄与液の温度を計測する第二の温度センサーと、
該蒸発器から流出する工業用水または加工装置で使用された排水の温度を計測する第三の温度センサーと、
該蒸発器に流入する工業用水または加工装置で使用された排水の温度を計測する第四の温度センサーと、
該圧縮機から送り出されるCO冷媒の温度を計測する第五の温度センサーと、
該水冷式ガスクーラから送り出されるCO冷媒の温度を計測する第六の温度センサーと、
該内部熱交換器から送り出され該圧縮機に至るCO冷媒の温度を計測する該第三の経路に配設される第七の温度センサーと、が配設され、
該制御手段は、該第一の圧力センサーが検出すべき第一の圧力値と、該第二の圧力センサーが検出すべき第二の圧力値と、該第一の温度センサーが検出すべき第一の温度または該第二の温度センサーが検出すべき第二の温度と、該第五の温度センサーが検出すべき第五の温度と、該第七の温度センサーが検出すべき第七の温度と、を少なくとも設定する設定部を備え、
該第一の温度センサーまたは該第二の温度センサーの値が該設定された温度になるように、CO冷媒が臨界温度31.1℃および臨界圧力7.38MPaで特定される臨界点を囲繞する該設定された圧力値と温度とで規定される経路にしたがって該可変膨張弁の開度と該圧縮機の回転数と該制水弁の開度を制御する加熱機構」が提供される。
【0008】
好ましくは、該制御手段は、加工装置で使用する加工寄与液の加熱量を減少させる場合、該圧縮機の回転数を低下させて該水冷式ガスクーラを流れるCO冷媒の流量を減少させ、その際に該圧縮機の回転数が下限値を下回らないように該バイパス経路の該可変バイパス弁の開度を大きくして該水冷式ガスクーラを流れるCO冷媒の流量を減少させる。
【0009】
該制御手段は、加工装置で使用する加工寄与液の加熱量を増大させる場合、該可変膨張弁の開度を大きくするとともに該圧縮機の回転数を増大させて該蒸発器を流れるCO冷媒の流量を増大させ、それに伴って該蒸発器から送り出されるCO冷媒に残存する液状COを該内部熱交換器において気化させ該圧縮機の負担を軽減するのが望ましい。
【0010】
該制御手段は、該第三の温度センサーによって検出される工業用水または加工装置で使用された排水の温度と、該第四の温度センサーによって検出される工業用水または加工装置で使用された排水の温度との温度差が所定の値になるように該制水弁の開度を調整してCO冷媒に熱を与えるのが好適である。
【0011】
該制御手段は、該可変膨張弁の開度を小さくすることで該第二の圧力センサーの値を大きくし、該可変膨張弁の開度を大きくすることで該第二の圧力センサーの値を小さくして該設定された圧力値に調整し成績係数(加熱能力/圧縮仕事)を制御するのがよい。
【0012】
該圧縮機の出口をA点、
該水冷式ガスクーラの出口をB点、
該内部熱交換器における該第二の経路の出口をC点、
該可変膨張弁の出口をD点、
該蒸発器の出口をE点、
該内部熱交換器における該第三の経路の出口をF点、
該A点における温度をTA、圧力をPA、エンタルピーをEA、
該B点における温度をTB、圧力をPB、エンタルピーをEB、
該C点における温度をTC、圧力をPC、エンタルピーをEC、
該D点における温度をTD、圧力をPD、エンタルピーをED、
該E点における温度をTE、圧力をPE、エンタルピーをEE、
該F点における温度をTF、圧力をPF、エンタルピーをEF、とした場合、
該F点から該圧縮機に送り込まれたCO冷媒は該圧縮機によって圧縮されて臨界点を超える該A点に至り、温度はTFからTAに、圧力はPFからPAに、エンタルピーはEFからEAにそれぞれ変化し、
該A点から該水冷式ガスクーラに送り込まれたCO冷媒は該水冷式ガスクーラによって熱が奪われて該B点に至り、温度はTAからTBに変化し、圧力は変化せず(PA=PB)、エンタルピーはEAからEBに変化し、TAとTBとの温度差およびEAとEBとのエンタルピー差は、該水冷式ガスクーラによって加工寄与液の加熱に使用され、温度TBは臨界温度を下回りCO冷媒は亜臨界状態となることで液状に近づき、
該B点から該内部熱交換器に送り込まれたCO冷媒は該蒸発器から送り込まれるCO冷媒によって熱が奪われて該C点に至り、温度はTBからTCに変化し、圧力は変化せず(PB=PC)、エンタルピーはEBからECに変化し、温度TCは臨界温度を更に下回りCO冷媒は更に液状に近づき、
該C点から該可変膨張弁に送り込まれたCO冷媒は該可変膨張弁によって減圧されて該D点に至り、温度はTCからTDに変化し、圧力はPCからPDに変化し、エンタルピーは変化せず(EC=ED)、CO冷媒は飽和液線に達し、
該D点から該蒸発器に送り込まれたCO冷媒は該蒸発器によって工業用水または加工装置で使用された排水からエネルギーを奪い該E点に至り、温度および圧力は変化せず(TD=TE、PD=PE)、エンタルピーはEDからEEに変化し、該E点は飽和蒸気線の内側でCO冷媒は液体を含む気体となり、
該E点から該内部熱交換器に送り込まれたCO冷媒は該B点から該内部熱交換器に送り込まれたCO冷媒から熱を奪い気体となって該F点に至り、温度はTEからTFに変化し、圧力は変化せず(PE=PF)、エンタルピーはEEからEFに変化し、該A点に至り、
該制御手段は、
成績係数(加熱能力/圧縮仕事)=(EA-EB)/(EA-EF)が最大となるように温度、圧力、エンタルピーを制御することができる。
【0013】
該A点における温度TAは該第五の温度センサーによって検出し、
該B点における温度TBは該第六の温度センサーによって検出し、
該F点における温度TFは該第七の温度センサーによって検出し、
該A点における圧力PAは該第二の圧力センサーによって検出し、
該B点における圧力PBは該第二の圧力センサーによって検出し、
該F点における圧力PFは該第一の圧力センサーによって検出し、
該A点におけるエンタルピーEAはp-h線図に基づいて検出し、
該B点におけるエンタルピーEBはp-h線図に基づいて検出し、
該F点におけるエンタルピーEFはp-h線図に基づいて検出し、
該制御手段は、
成績係数(加熱能力/圧縮仕事)=(EA-EB)/(EA-EF)
の式によって加熱能力を高くし圧縮仕事を小さくして成績係数を向上させるのが好都合である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の加熱機構は、
制御手段と、
CO冷媒を圧縮する圧縮機と、
該圧縮機が圧縮した圧縮熱を帯びたCO冷媒から熱を奪い加工装置で使用する加工寄与液に熱を与える水冷式ガスクーラと、
熱が奪われたCO冷媒が送り込まれる内部熱交換器と、
該内部熱交換器から送り出されたCO冷媒を気化させ気化熱を生成する蒸発器と、
該圧縮機と該水冷式ガスクーラとを連結する第一の経路と、
該水冷式ガスクーラと該蒸発器とを連結する第二の経路と、
該蒸発器と該圧縮機とを連結する第三の経路と、
該蒸発器に工業用水または加工装置で使用された排水が導入されCO冷媒に熱を与える制水弁を備えた第四の経路と、
該第一の経路に連結する第一の連結部と該第二の経路に連結する第二の連結部とによって連結され可変バイパス弁を備えたバイパス経路と、を含み、
該内部熱交換器は、該蒸発器から送り出されたCO冷媒が該水冷式ガスクーラから送り出されたCO冷媒から熱を奪うように該第二の経路と該第三の経路とに跨り配設され、
該第二の経路には、熱が奪われたCO冷媒の流量を調整する可変膨張弁が該内部熱交換器と該第二の連結部との間に配設され、
該可変膨張弁と該圧縮機との間の該第二の経路と該第三の経路とのいずれかにCO冷媒の圧力を計測する第一の圧力センサーが配設され、
該圧縮機と該可変膨張弁との間の該第一の経路と該第二の経路とのいずれかに該圧縮機によって圧縮されたCO冷媒の圧力を計測する第二の圧力センサーが配設され、
加工装置で使用する加工寄与液が該水冷式ガスクーラから流出する温度を計測する第一の温度センサーと、
該水冷式ガスクーラに流入する加工寄与液の温度を計測する第二の温度センサーと、
該蒸発器から流出する工業用水または加工装置で使用された排水の温度を計測する第三の温度センサーと、
該蒸発器に流入する工業用水または加工装置で使用された排水の温度を計測する第四の温度センサーと、
該圧縮機から送り出されるCO冷媒の温度を計測する第五の温度センサーと、
該水冷式ガスクーラから送り出されるCO冷媒の温度を計測する第六の温度センサーと、
該内部熱交換器から送り出され該圧縮機に至るCO冷媒の温度を計測する該第三の経路に配設される第七の温度センサーと、が配設され、
該制御手段は、該第一の圧力センサーが検出すべき第一の圧力値と、該第二の圧力センサーが検出すべき第二の圧力値と、該第一の温度センサーが検出すべき第一の温度または該第二の温度センサーが検出すべき第二の温度と、該第五の温度センサーが検出すべき第五の温度と、該第七の温度センサーが検出すべき第七の温度と、を少なくとも設定する設定部を備え、
該第一の温度センサーまたは該第二の温度センサーの値が該設定された温度になるように、CO冷媒が臨界温度31.1℃および臨界圧力7.38MPaで特定される臨界点を囲繞する該設定された圧力値と温度とで規定される経路にしたがって該可変膨張弁の開度と該圧縮機の回転数と該制水弁の開度を制御するので、成績係数を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る加熱機構の回路図。
図2】COのp-h線図。
図3図1に示す加熱機構の配置の一例を示す模式図。
図4】作動再開時の圧縮機の速度の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る加熱機構の好適実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
(加熱機構2)
図1には、加工装置で使用する加工寄与液をCO冷媒によって加熱するための加熱機構2が示されている。加熱機構2は、制御手段4と、圧縮機6と、水冷式ガスクーラ8と、内部熱交換器10と、蒸発器12とを含む。
【0018】
(制御手段4)
制御手段4は、プロセッサおよびメモリを有するコンピュータから構成されている。本実施形態の制御手段4は、設定部4aと、制御部4bとを備える。設定部4aは、オペレータによって入力された指示(たとえば、加工装置で使用する加工寄与液の温度)に基づいて、CO冷媒の圧力・温度を設定する。制御部4bは、実際の加工寄与液の温度が設定温度(オペレータによって入力された温度)となるように、可変膨張弁32の開度や圧縮機6の回転数、制水弁20の開度などを制御する。制御部4bによる制御内容については、後で詳しく説明する。
【0019】
(圧縮機6)
圧縮機6は、加熱機構2を循環するCO冷媒を圧縮する。図1に示すとおり、圧縮機6を駆動するモータ6aには、インバータ6bが設けられている。インバータ6bは、モータ6aに供給される電力の周波数を所定範囲(たとえば、20Hz~120Hz)で変更する。これによって、モータ6aの回転数が変更されるとともに、圧縮機6の回転数が許容回転数の範囲(下限値と上限値との間)で変更される。なお、インバータ6bは、制御手段4に電気的に接続されており、制御手段4の制御部4bによって制御される。
【0020】
(水冷式ガスクーラ8)
水冷式ガスクーラ8は、圧縮機6が圧縮した圧縮熱を帯びたCO冷媒から熱を奪い、加工装置で使用する加工寄与液に熱を与える。図3に示すとおり、水冷式ガスクーラ8の内部には、CO冷媒が流れる冷媒通路8aと、加工寄与液が流れる加工寄与液通路8bとが形成されている。そして、水冷式ガスクーラ8においては、冷媒通路8a内のCO冷媒と、加工寄与液通路8b内の加工寄与液との間で熱交換をさせることにより、CO冷媒の熱を加工寄与液に与える。
【0021】
(内部熱交換器10)
内部熱交換器10には、水冷式ガスクーラ8において熱が奪われたCO冷媒が送り込まれる。図3に示すとおり、内部熱交換器10には、水冷式ガスクーラ8において熱が奪われたCO冷媒が通る第一の通路10aと、蒸発器12を通過した後のCO冷媒が通る第二の通路10bとが形成されている。そして、内部熱交換器10においては、第一の通路10a内のCO冷媒と、第二の通路10b内のCO冷媒との間で熱交換が行われる。これによって、蒸発器12から送り出された第二の通路10b内のCO冷媒が、水冷式ガスクーラ8から送り出された第一の通路10a内のCO冷媒から熱を奪うようになっている。
【0022】
(蒸発器12)
蒸発器12は、内部熱交換器10から送り出されたCO冷媒を気化させて気化熱を生成する。図3に示すとおり、蒸発器12の内部には、CO冷媒が流れる冷媒通路12aと、工業用水または加工装置で使用された排水が流れる水路12bとが設けられている。そして、蒸発器12においては、冷媒通路12a内のCO冷媒と、水路12b内の工業用水または排水との間で熱交換をさせることにより、工業用水または排水の熱をCO冷媒に与える。
【0023】
(第一~第四の経路14、16、18、22、バイパス経路30)
図1を参照して説明を続けると、加熱機構2は、さらに、圧縮機6と水冷式ガスクーラ8とを連結する第一の経路14と、水冷式ガスクーラ8と蒸発器12とを連結する第二の経路16と、蒸発器12と圧縮機6とを連結する第三の経路18と、蒸発器12に工業用水(または、加工装置で使用された排水でもよい。)が導入されCO冷媒に熱を与える制水弁20を備えた第四の経路22と、第一の経路14に連結する第一の連結部24と第二の経路16に連結する第二の連結部26とによって連結され、可変バイパス弁28を備えたバイパス経路30とを含む。第二の経路16には、熱が奪われたCO冷媒の流量を調整する可変膨張弁32が、内部熱交換器10と第二の連結部26との間に配設されている。また、第二の経路16と第三の経路18とに跨って内部熱交換器10が配設されている。
【0024】
(制水弁20、可変バイパス弁28、可変膨張弁32)
図1に示すように、制水弁20、可変バイパス弁28および可変膨張弁32のそれぞれには、開度を調整するためのモータ20a、28a、32aが設けられている。モータ20a、28a、32aは、いずれも制御手段4に電気的に接続されている。そして、制水弁20、可変バイパス弁28および可変膨張弁32のそれぞれの開度は、制御手段4の制御部4bからの指示に基づき、モータ20a、28a、32aによって調整される。
【0025】
加熱機構2のCO冷媒は、第一~第三の経路14、16、18を順に通り、圧縮機6、水冷式ガスクーラ8、内部熱交換器10、蒸発器12、内部熱交換器10の順に循環する。すなわち、本実施形態では、圧縮機6から送り出されたCO冷媒が、再び圧縮機6に戻るまでの間に、内部熱交換器10を原則として2回通過する。具体的には、水冷式ガスクーラ8を出たCO冷媒が内部熱交換器10を通り、次いで、蒸発器12を通過した後、再び内部熱交換器10を通るようになっている。
【0026】
ただし、可変バイパス弁28が開いた場合には、圧縮機6によって圧縮されたCO冷媒の一部が、水冷式ガスクーラ8および内部熱交換器10を通らずに、バイパス経路30を通って蒸発器12へと送られる。
【0027】
(圧力センサー)
加熱機構2には、CO冷媒の圧力を計測するセンサーとして、第一・第二の圧力センサー34、36が配設されている。第一・第二の圧力センサー34、36で計測された値は、制御手段4に送られる。
【0028】
(第一の圧力センサー34)
第一の圧力センサー34は、可変膨張弁32によって膨張されたCO冷媒の圧力を計測する。第一の圧力センサー34は、可変膨張弁32と圧縮機6との間の、第二の経路16と第三の経路18とのいずれかに配設され得る。本実施形態では、第三の経路18において、内部熱交換器10と圧縮機6との間に第一の圧力センサー34が配設されている。
【0029】
(第二の圧力センサー36)
第二の圧力センサー36は、圧縮機6によって圧縮されたCO冷媒の圧力を計測する。第二の圧力センサー36は、圧縮機6と可変膨張弁32との間の、第一の経路14と第二の経路16とのいずれかに配設され得る。本実施形態では、第一の経路14において、圧縮機6と水冷式ガスクーラ8との間に第二の圧力センサー36が配設されている。
【0030】
(温度センサー)
加熱機構2には、加工寄与液と、工業用水(または加工装置で使用された排水)と、CO冷媒とのそれぞれの温度を計測するための複数の温度センサーが配設されている。各温度センサーで計測された値は、いずれも制御手段4に送られる。
【0031】
(加工寄与液の温度を計測するセンサー)
加工寄与液の温度を計測するためのセンサーとして、第一・第二の温度センサー38、40が配設されている。第一の温度センサー38は、水冷式ガスクーラ8から流出する加工寄与液の温度を計測する。一方、第二の温度センサー40は、水冷式ガスクーラ8に流入する加工寄与液の温度を計測する。
【0032】
(工業用水または排水の温度を計測するセンサー)
工業用水または排水の温度を計測するためのセンサーとして、第三・第四の温度センサー42、44が配設されている。第三の温度センサー42は、蒸発器12から流出する工業用水または加工装置の排水の温度を計測する。一方、第四の温度センサー44は、蒸発器12に流入する工業用水または加工装置の排水の温度を計測する。
【0033】
(CO冷媒の温度を計測するセンサー)
CO冷媒の温度を計測するセンサーとして、第五~第七の温度センサー46、48、50が配設されている。第五の温度センサー46は、圧縮機6から送り出されるCO冷媒の温度を計測する。第六の温度センサー48は、水冷式ガスクーラ8から送り出されるCO冷媒の温度を計測する。第七の温度センサー50は、内部熱交換器10から送り出され圧縮機6に至るCO冷媒の温度を計測する。
【0034】
(加工寄与液)
加熱機構2によって加熱される加工寄与液は、たとえば、半導体ウエーハを切削するダイシング装置で使用される。図1に示すように、ダイシング装置は、半導体ウエーハを切削するための切削手段52を備えている。切削手段52は、管路54によって水冷式ガスクーラ8に連結されている。また、水冷式ガスクーラ8には、管路56を介して純水設備58が連結されている。そして、純水設備58から管路56を介して水冷式ガスクーラ8に加工寄与液としての純水が送られ、水冷式ガスクーラ8において所定の温度に純水が加熱された後、所定の温度に加熱された純水が管路54を介して切削手段52に送られる。
【0035】
ただし、加熱機構2によって加熱される加工寄与液が使用される加工装置は、ダイシング装置に限定されず、半導体ウエーハを研削して薄化するための研削装置など様々な加工装置が対象となり得る。なお、加工寄与液には、切削水のように加工水として使用され捨てられる流体のほか、加工装置および加熱機構2で循環する循環液も含まれる。
【0036】
(加熱機構2の作動)
ここからは、上述した加熱機構2の作動について説明する。はじめに、基本的な加熱機構2の作動を説明し、次に、加工寄与液の加熱量を増減させる場合の作動について説明する。
【0037】
(基本的な作動)
まず、加熱機構2においては、オペレータによって制御手段4に作動指示が入力されると、入力された作動指示に応じて、制御手段4の設定部4aが、各センサーで検出すべき値(設定値)を設定する。具体的には、加工寄与液の設定温度と、CO冷媒の設定圧力・設定温度を設定部4aが設定する。加工寄与液の設定温度は、オペレータによって入力された温度である。CO冷媒の設定圧力・設定温度は、加工寄与液の設定温度に基づいて、制御手段4によって決定される。
【0038】
(加工寄与液の設定温度:第一・第二の温度)
まず、設定部4aは、加工寄与液の設定温度として、第一の温度センサー38が検出すべき第一の温度または第二の温度センサー40が検出すべき第二の温度を設定する。第一の温度は、水冷式ガスクーラ8から流出する加工寄与液の設定温度である。一方、第二の温度は、水冷式ガスクーラ8に流入する加工寄与液の設定温度である。たとえば、第一の温度は23℃、第二の温度は20℃に設定され得る。
【0039】
図1に示すように、加工寄与液を使い捨てる場合には、第一の温度のみを設定する。すなわち、純水設備58の純水(加工寄与液)を所定温度に加熱して切削手段52に送り、切削手段52で使用した純水を純水設備58に戻さない場合には、水冷式ガスクーラ8から流出する純水の温度(第一の温度)のみを設定する。
【0040】
一方、加工装置と加熱機構2との間で加工寄与液を循環させる場合には、第一・第二の温度の両方を設定することができる。たとえば、加工装置に供給する前の加工寄与液の温度よりも、加工装置から排出された加工寄与液の温度の方が低くなる場合である。このような場合には、加工装置と加熱機構2との間で加工寄与液を循環させて、加熱機構2で加熱した加工寄与液を加工装置に送ることになるため、第一・第二の温度の両方を設定してもよい。
【0041】
(CO冷媒の設定圧力:第一・第二の圧力値)
また、設定部4aは、CO冷媒の設定圧力として、第一の圧力センサー34が検出すべき第一の圧力値と、第二の圧力センサー36が検出すべき第二の圧力値と、を設定する。第一の圧力値は、可変膨張弁32によって膨張されたCO冷媒の設定圧力である。第一の圧力値は、たとえば4MPa(絶対圧)程度でよい。一方、第二の圧力値は、圧縮機6によって圧縮されたCO冷媒の設定圧力である。第二の圧力値は、圧縮後のCO冷媒の圧力であるから、圧縮前のCO冷媒の設定圧力(第一の圧力値)よりも大きい値に設定される。具体的には、第二の圧力値は10MPa(絶対圧)程度でよい。
【0042】
(CO冷媒の設定温度:第五・第七の温度)
さらに、設定部4aは、CO冷媒の設定温度として、第五の温度センサー46が検出すべき第五の温度と、第七の温度センサー50が検出すべき第七の温度と、を設定する。第五の温度は、圧縮機6から送り出されるCO冷媒の設定温度である。第五の温度は、たとえば80℃に設定され得る。第七の温度は、内部熱交換器10から送り出され圧縮機6に至るCO冷媒の設定温度である。第七の温度は、たとえば10℃程度でよい。
【0043】
このように設定部4aは、第一の圧力センサー34が検出すべき第一の圧力値と、第二の圧力センサー36が検出すべき第二の圧力値と、第一の温度センサー38が検出すべき第一の温度または第二の温度センサー40が検出すべき第二の温度と、第五の温度センサー46が検出すべき第五の温度と、第七の温度センサー50が検出すべき第七の温度と、を少なくとも設定する。
【0044】
なお、設定部4aは、第六の温度センサー48が検出すべき温度については、設定してもよく、あるいは設定しなくてもよい。水冷式ガスクーラ8から送り出されるCO冷媒の温度は、水冷式ガスクーラ8に送り込まれる加工寄与液の温度や流量、CO冷媒の流量によって変化するため、特定の温度に定まらないからである。
【0045】
(制御部4bによる制御)
設定部4aによって、加工寄与液の設定温度、CO冷媒の設定圧力・設定温度が設定されたら、制御部4bは、第一の温度センサー38または第二の温度センサー40の値が設定された温度(第一の温度または第二の温度)になるように、CO冷媒が臨界点を囲繞する設定された圧力値(第一・第二の圧力値)と温度(第五・第七の温度)とで規定される経路にしたがって可変膨張弁32の開度と圧縮機6の回転数と制水弁20の開度とを制御する。
【0046】
(可変膨張弁32の開度)
可変膨張弁32の開度を制御することにより、CO冷媒の圧力を調整することができる。可変膨張弁32の開度が大きくなると、可変膨張弁32を通過するCO冷媒の流量が増加するので、第二の圧力センサー36の値が小さくなる。一方、可変膨張弁32の開度が小さくなると、可変膨張弁32を通過するCO冷媒の流量が減少するので、第二の圧力センサー36の値が大きくなる。
【0047】
(圧縮機6の回転数)
また、圧縮機6の回転数を制御することにより、CO冷媒の圧力および加工寄与液の温度を調整することができる。圧縮機6の回転数が高まると、圧縮機6に吸引されるCO冷媒の量が多くなるため、第一の圧力センサー34の値が下がる。また、圧縮機6の回転数が高まると、水冷式ガスクーラ8におけるCO冷媒の流量が増大するため、第一・第二の温度センサー38、40の値(加工寄与液の温度)が上がる。反対に、圧縮機6の回転数が低くなると、第一の圧力センサー34の値が上がるとともに、第一・第二の温度センサー38、40の値が下がる。
【0048】
(制水弁20の開度)
制水弁20の開度を制御することにより、蒸発器12の熱交換能力を適正に保つことができる。つまり、第三の温度センサー42の値と第四の温度センサー44の値との差を所定値に維持できる。
【0049】
制水弁20の開度を大きくするのは、圧縮機6の回転数を高める場合である。圧縮機6の回転数を高めると、水冷式ガスクーラ8におけるCO冷媒の流量が増大するとともに、蒸発器12においてもCO冷媒の流量が増大する。そうすると、蒸発器12においてCO冷媒による工業用水または排水の冷却量が増大するため、第三の温度センサー42の値と第四の温度センサー44の値との差が大きくなる。このような場合に、制水弁20の開度を大きくすることにより、第三の温度センサー42の値と第四の温度センサー44の値との差を所定値に維持でき、蒸発器12の熱交換能力を適正に保つことができる。
【0050】
一方、制水弁20の開度を小さくするのは、圧縮機6の回転数を低くする場合である。圧縮機6の回転数を低くすると、水冷式ガスクーラ8におけるCO冷媒の流量が減少するとともに、蒸発器12においてもCO冷媒の流量が減少する。そうすると、蒸発器12においてCO冷媒による工業用水または排水の冷却量が減少するため、第三の温度センサー42の値と第四の温度センサー44の値との差が小さくなる。このような場合に、制水弁20の開度を小さくすることにより、第三の温度センサー42の値と第四の温度センサー44の値との差を所定値に維持でき、蒸発器12の熱交換能力を適正に保つことができる。
【0051】
すなわち、制御手段4の制御部4bは、第三の温度センサー42によって検出される工業用水または加工装置で使用された排水の温度と、第四の温度センサー44によって検出される工業用水または加工装置で使用された排水の温度との温度差が所定の値になるように制水弁20の開度を調整してCO冷媒に熱を与えるようになっている。
【0052】
(臨界点)
また、上記の臨界点とは、一般に、物質が超臨界状態になる温度と圧力で特定される点である。本実施形態における臨界点は、冷媒のCOが超臨界状態になる臨界温度31.1℃および臨界圧力7.38MPaで特定される点である。図2において、COの臨界点を符号Pで示している。図2は、COのp-h線図(モリエル線図)であり、縦軸が圧力、横軸がエンタルピーを示す。
【0053】
(臨界点Pを囲繞する経路)
臨界点Pを囲繞する経路(CO冷媒が臨界点Pを囲繞する設定された圧力値と温度とで規定される経路)とは、たとえば、図2におけるA点、B点、C点、D点、E点、F点を通る経路Rである。図2におけるA点~F点は、図1に示すA点~F点のそれぞれにおける温度および圧力に基づいてプロットした点である。
【0054】
本実施形態では、図1に示すように、圧縮機6の出口をA点、水冷式ガスクーラ8の出口をB点、内部熱交換器10における第二の経路16の出口をC点、可変膨張弁32の出口をD点、蒸発器12の出口をE点、内部熱交換器10における第三の経路18の出口をF点としている。
【0055】
A~F点の圧力・温度の具体的な数値は、たとえば、図2に示すとおりである。すなわち、A点、B点、C点の圧力は、たとえば10MPaであり、D点、E点、F点の圧力は、たとえば4MPaである。また、A点~F点の温度の具体例については、A点の温度が80℃程度、B点の温度が20℃程度、C点の温度が8℃程度、D点およびE点の温度が5℃程度、F点の温度が10℃程度である。
【0056】
ここからはA点~F点のそれぞれにおける温度、圧力・エンタルピーを下記のように符号を用いて説明する。すなわち、
A点における温度をTA、圧力をPA、エンタルピーをEA、
B点における温度をTB、圧力をPB、エンタルピーをEB、
C点における温度をTC、圧力をPC、エンタルピーをEC、
D点における温度をTD、圧力をPD、エンタルピーをED、
E点における温度をTE、圧力をPE、エンタルピーをEE、
F点における温度をTF、圧力をPF、エンタルピーをEF、
として説明する。
【0057】
(CO冷媒の流れ:F点→A点)
上記のとおりの制御が開始されると、まず、F点から圧縮機6に送り込まれたCO冷媒が圧縮機6によって圧縮されて臨界点Pを超えるA点に至る。この際、CO冷媒の温度はTFからTAに変化(上昇)し、CO冷媒の圧力はPFからPAに変化(上昇)し、CO冷媒のエンタルピーはEFからEAに変化(上昇)する。
【0058】
(A点→B点)
次いで、A点から水冷式ガスクーラ8に送り込まれたCO冷媒は、水冷式ガスクーラ8によって熱が奪われてB点に至る。この際、CO冷媒の温度はTAからTBに変化(低下)し、CO冷媒の圧力は変化せず(PA=PB)、CO冷媒のエンタルピーはEAからEBに変化(低下)する。TAとTBとの温度差およびEAとEBとのエンタルピー差は、水冷式ガスクーラ8によって加工寄与液の加熱に使用される。また、CO冷媒の温度TBは臨界温度を下回り、B点におけるCO冷媒は亜臨界状態となることで液状に近づく。
【0059】
(B点→C点)
次いで、B点から内部熱交換器10に送り込まれたCO冷媒は、蒸発器12から送り込まれるCO冷媒によって熱が奪われてC点に至る。この際、CO冷媒の温度はTBからTCに変化(低下)し、CO冷媒の圧力は変化せず(PB=PC)、CO冷媒のエンタルピーはEBからECに変化(低下)する。また、CO冷媒の温度TCが臨界温度を更に下回るため、C点におけるCO冷媒は更に液状に近づく。
【0060】
(C点→D点)
次いで、C点から可変膨張弁32に送り込まれたCO冷媒は、可変膨張弁32によって減圧されてD点に至る。この際、CO冷媒の温度はTCからTDに変化(低下)し、CO冷媒の圧力はPCからPDに変化(低下)し、CO冷媒のエンタルピーは変化しない(EC=ED)。また、D点におけるCO冷媒は、飽和液線に達し、気体と液体とが混在した状態である。
【0061】
(D点→E点)
次いで、D点から蒸発器12に送り込まれたCO冷媒は、蒸発器12によって工業用水または加工装置で使用された排水からエネルギーを奪いE点に至る。この際、工業用水または排水から奪った熱が液状のCO冷媒の気化に使われるため、CO冷媒の温度は変化しない(TD=TE)。また、CO冷媒の圧力も変化しない(PD=PE)。ただし、CO冷媒のエンタルピーは、EDからEEに変化(上昇)する。E点は飽和蒸気線の内側である。このため、E点におけるCO冷媒は、わずかに液体を含む気体となる。
【0062】
(E点→F点)
次いで、E点から内部熱交換器10に送り込まれたCO冷媒は、B点から内部熱交換器10に送り込まれたCO冷媒から熱を奪う。このため、E点においてCO冷媒中に液体が残存していても、内部熱交換器10においてCO冷媒中の液体が気体となる。すなわち、飽和蒸気線の外にあるF点に到達したCO冷媒は、すべて気体となる。したがって、F点から圧縮機6に流入するCO冷媒は気体のみとなる。そして、圧縮機6の負荷を軽減できる。CO冷媒がE点からF点に至る際は、CO冷媒の温度はTEからTFに変化(上昇)し、CO冷媒の圧力は変化せず(PE=PF)、CO冷媒のエンタルピーはEEからEFに変化(上昇)する。
【0063】
このように加熱機構2においては、第一の温度センサー38または第二の温度センサー40の値が設定された温度になるように、CO冷媒が臨界点Pを囲繞する設定された圧力値と温度とで規定される経路Rにしたがって可変膨張弁32の開度と圧縮機6の回転数と制水弁20の開度とを制御部4bが制御する。これによって、F点から圧縮機6に流入するCO冷媒が気体のみとなるため液圧縮が生じることがない。
【0064】
(成績係数)
次に、加熱機構2の成績係数について説明する。成績係数とは、エネルギー消費効率の目安として使われる係数であり、加熱能力を圧縮仕事で除したものである。
【0065】
加熱能力とは、水冷式ガスクーラ8においてCO冷媒が加工寄与液を加熱する能力である。したがって、水冷式ガスクーラ8前後のエンタルピーを用いて、下記式1のように加熱能力を表すことができる。
加熱能力=EA-EB・・・式1
EAは、水冷式ガスクーラ8を通過する前のA点におけるCO冷媒のエンタルピーである。また、EBは、水冷式ガスクーラ8を通過した後のB点におけるCO冷媒のエンタルピーである。
【0066】
圧縮仕事とは、圧縮機6で行われる仕事のことである。圧縮仕事は、A点のエンタルピーEA(圧縮後のエンタルピー)と、F点のエンタルピーEF(圧縮前のエンタルピー)とを用いて、式7のように表すことができる。
圧縮仕事=EA-EF・・・式2
【0067】
上記式1および2から、成績係数は、式3のように表すことができる。
成績係数(加熱能力/圧縮仕事)=(EA-EB)/(EA-EF)・・・式3
【0068】
そして、制御手段4は、式3から導かれる成績係数が最大となるように、CO冷媒の温度、圧力、エンタルピーを制御する。具体的には、加熱能力(EA-EB)を高くし圧縮仕事(EA-EF)を小さくして成績係数を向上させる。
【0069】
A点、B点、F点におけるエンタルピーEA、EB、EFは、各点の温度・圧力を検出し、検出した温度・圧力を用いてp-h線図に基づき求めることができる。
【0070】
A点、B点、F点におけるCO冷媒の温度は、下記のセンサーによって検出可能である。すなわち、A点における温度TAは第五の温度センサー46によって検出し、B点における温度TBは第六の温度センサー48によって検出し、F点における温度TFは第七の温度センサー50によって検出できる。
【0071】
また、A点、B点、F点におけるCO冷媒の圧力は、下記のセンサーによって検出可能である。すなわち、A点における圧力PAは第二の圧力センサー36によって検出し、B点における圧力PBは第二の圧力センサー36によって検出し、F点における圧力PFは第一の圧力センサー34によって検出できる。
【0072】
A点、B点、F点におけるエンタルピーは、上記の温度・圧力を用いてp-h線図に基づき求めることができる。すなわち、A点におけるエンタルピーEAは、A点の温度TA、圧力PAを用いてp-h線図に基づいて検出し、B点におけるエンタルピーEBは、B点の温度TB、圧力PBを用いてp-h線図に基づいて検出し、F点におけるエンタルピーEFは、F点の温度TF、圧力PFを用いてp-h線図に基づいて検出することができる。
【0073】
そして、制御手段4は、加工寄与液の温度を設定温度にするための上記制御を行う際、上記のとおりにして検出可能なEA、EB、EFを用いて、加熱能力(EA-EB)を高くし圧縮仕事(EA-EF)を小さくして成績係数を向上させるようになっている。たとえば、制御手段4は、可変膨張弁32の開度を小さくすることで第二の圧力センサー36の値を大きくし、あるいは可変膨張弁32の開度を大きくすることで第二の圧力センサー36の値を小さくして、設定された圧力値にCO冷媒の圧力を調整し、成績係数(加熱能力/圧縮仕事)を制御することができる。
【0074】
次に、加工装置で使用される加工寄与液の加熱量を増減させる場合(すなわち、加工寄与液の設定温度を変更する場合)の作動について説明する。
【0075】
(加工寄与液の加熱量を減少させる場合)
まず、加工装置で使用される加工寄与液の加熱量を減少させる場合(加工寄与液の設定温度を下げる場合)から説明する。この場合、制御手段4の制御部4bは、圧縮機6の回転数を低下させる。これによって、水冷式ガスクーラ8におけるCO冷媒の流量が減少するため、加工寄与液の加熱量を減少させることができる。この結果、第一の温度センサー38または第二の温度センサー40の値が下がる。
【0076】
この場合において、圧縮機6の回転数が許容回転数の下限値まで達しているにもかかわらず、第一の温度センサー38の値または第二の温度センサー40の値が設定温度(第一の温度または第二の温度)まで下がらないときがある。このようなときには、制御部4bは更に、通常は閉じている可変バイパス弁28を閉から開に作動し開度を大きくして、水冷式ガスクーラ8におけるCO冷媒の流量を減らす。これによって、圧縮機6の回転数を、許容回転数の下限値よりも低い回転数に下げることなく、第一の温度センサー38の値または第二の温度センサー40の値を設定温度(第一の温度または第二の温度)まで低下させることができる。
【0077】
しかし、水冷式ガスクーラ8におけるCO冷媒の流量を減少させると、CO冷媒の圧力が設定値から大きく外れてしまうことがある。すなわち、第一の圧力センサー34の値が第一の圧力値を上回るとともに、第二の圧力センサー36の値が第二の圧力値を下回ってしまうことがある。
【0078】
そこで、制御部4bは、加工寄与液の設定温度の下げ幅に応じて、可変膨張弁32の開度を適宜小さくする。これによって、第一の圧力センサー34の値を第一の圧力値まで低下させるとともに、第二の圧力センサー36の値を第二の圧力値まで上昇させることができる。したがって、加熱機構2においては、加工寄与液の設定温度を下げても、圧縮機6の吸入圧力と吐出圧力が大きく変動することがないので、効率の高い加熱制御を実現することができる。
【0079】
このように制御部4bは、加工寄与液の加熱量を減少させる場合、圧縮機6の回転数を低下させて水冷式ガスクーラ8を流れるCO冷媒の流量を減少させ、その際に圧縮機6の回転数が下限値を下回らないようにバイパス経路30の可変バイパス弁28の開度を大きくして水冷式ガスクーラ8を流れるCO冷媒の流量を減少させるようになっている。
【0080】
(加工寄与液の加熱量を増大させる場合)
上記とは反対に、加熱機構2において、加工装置で使用される加工寄与液の加熱量を増大させる場合(加工寄与液の設定温度を上げる場合)、制御手段4の制御部4bは、圧縮機6の回転数を増大させる。これによって、水冷式ガスクーラ8におけるCO冷媒の流量が増大するので、加工寄与液の加熱量を増大させることができる。この結果、第一の温度センサー38または第二の温度センサー40の値が上がる。
【0081】
けれども、水冷式ガスクーラ8におけるCO冷媒の流量が増大させると、CO冷媒の圧力が設定値から大きく外れてしまうことがある。すなわち、第一の圧力センサー34の値が第一の圧力値を下回るとともに、第二の圧力センサー36の値が第二の圧力値を上回ってしまうことがある。
【0082】
そこで、制御部4bは、加工寄与液の設定温度の上げ幅に応じて、可変膨張弁32の開度を適宜大きくする。これによって、第一の圧力センサー34の値を第一の圧力値まで上昇させるとともに、第二の圧力センサー36の値を第二の圧力値まで低下させることができる。したがって、加熱機構2においては、加工寄与液の設定温度を上げても、圧縮機6の吸入圧力と吐出圧力が大きく変動することがないので、効率の高い加熱制御を実現することができる。
【0083】
ところで、可変膨張弁32の開度を大きくすると、蒸発器12におけるCO冷媒の流量が増大する。そうすると、液状のCO冷媒が圧縮機6に吸い込まれるおそれが高まる。しかし、本実施形態の加熱機構2では、蒸発器12から出たCO冷媒と、水冷式ガスクーラ8から出たCO冷媒とが内部熱交換器10において熱交換を行なうことになる。この熱交換においては、蒸発器12から出たCO冷媒が、水冷式ガスクーラ8から出たCO冷媒から熱を奪うことになる。このため、蒸発器12から出たCO冷媒中に液体が残存していても、内部熱交換器10においてCO冷媒中の液体が気体となる。
【0084】
このように制御部4bは、加工寄与液の加熱量を増大させる場合、可変膨張弁32の開度を大きくするとともに圧縮機6の回転数を増大させて蒸発器12を流れるCO冷媒の流量を増大させ、それに伴って蒸発器12から送り出されるCO冷媒に残存する液状COを内部熱交換器10において気化させ圧縮機6の負担を軽減するようになっている。
【0085】
以上のとおりであり、加熱機構2においては、第一の温度センサー38または第二の温度センサー40の値が設定された温度になるように、CO冷媒が臨界点Pを囲繞する設定された圧力値と温度とで規定される経路Rにしたがって可変膨張弁32の開度と圧縮機6の回転数と制水弁20の開度とを制御するので、成績係数を高めることができる。
【0086】
なお、圧縮機6、水冷式ガスクーラ8、内部熱交換器10および蒸発器12の配置については、図3に示すように、圧縮機6、内部熱交換器10および蒸発器12よりも上方に、水冷式ガスクーラ8を設置するのが好ましい。
【0087】
CO冷媒は、超臨界状態に達すると、圧縮機6内の潤滑油がCO冷媒に溶解して圧縮機6から流出しやすくなる傾向がある。超臨界状態のCO冷媒に溶解した圧縮機6内の潤滑油が、水冷式ガスクーラ8や内部熱交換器10などに滞留し、圧縮機6に戻ってこないと、圧縮機6に異常摩耗が生じるおそれがある。
【0088】
そこで、図3に示すように、水冷式ガスクーラ8を圧縮機6などの上方に設置することにより、加熱機構2全体の設置面積を抑えつつ、水冷式ガスクーラ8および内部熱交換器10における超臨界状態のCO冷媒の流れ方向を、重力方向(つまり、上から下)にすることができる。したがって、超臨界状態のCO冷媒に溶解した圧縮機6内の潤滑油が、水冷式ガスクーラ8や内部熱交換器10などに滞留するのを抑制し、潤滑油を圧縮機6に戻すことができる。この結果、圧縮機6に異常摩耗が生じるのを防止することができる。
【0089】
可変膨張弁32によって膨張されたCO冷媒は、蒸発器12および内部熱交換器10において、流れ方向が反重力方向(下から上)となるが、圧縮機6、内部熱交換器10および蒸発器12のそれぞれの下端位置を同じ高さにすることにより、蒸発器12出口から圧縮機6までの高低差をできるだけ小さくして、潤滑油が圧縮機6に戻りやすくするのが好適である。
【0090】
また、圧縮機6の停止した後、圧縮機6の作動を再開する際は、可変膨張弁32および可変バイパス弁28を所定の開度に維持しつつ、図4に示すように、中間速度での運転と最低速度での運転とを所定時間ずつ何度か繰り返すのがよい。これによって、圧縮機6の停止時に内部熱交換器10および蒸発器12に滞留した潤滑油を圧縮機6に効率的に戻すことができる。
【符号の説明】
【0091】
2:加熱機構
4:制御手段
4a:設定部
4b:制御部
6:圧縮機
8:水冷式ガスクーラ
10:内部熱交換器
12:蒸発器
14:第一の経路
16:第二の経路
18:第三の経路
20:制水弁
22:第四の経路
24:第一の連結部
26:第二の連結部
28:可変バイパス弁
30:バイパス経路
32:可変膨張弁
34:第一の圧力センサー
36:第二の圧力センサー
38:第一の温度センサー
40:第二の温度センサー
42:第三の温度センサー
44:第四の温度センサー
46:第五の温度センサー
48:第六の温度センサー
50:第七の温度センサー
P:臨界点
R:臨界点を囲繞する経路
図1
図2
図3
図4