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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008917
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/38 20150101AFI20250109BHJP
【FI】
H04B1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111542
(22)【出願日】2023-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西森 俊彦
【テーマコード(参考)】
5K011
【Fターム(参考)】
5K011AA16
5K011BA01
5K011DA01
5K011DA21
5K011KA08
5K011KA18
(57)【要約】
【課題】伝送線路が交差する構成であってもアイソレーション特性の劣化を招くことのない半導体装置を提供する。
【解決手段】第1伝送線路8aが配置される第1チップ2は、第1共通端子6aが第1リード列4Aに対向し、かつ第1個別端子7aが第2リード列4Bに対向してチップ搭載部5に実装され、第2伝送線路8bが配置される第2チップ3は、第2共通端子6bが第1リード列4Aに対向し、第2個別端子7bが第2リード列4Bに対向し、かつ第2伝送線路8bが第1伝送線路8aと重ならないように配置されて第1チップ2上に積層され、第2共通端子6bに接続される金属ワイヤ10と第1伝送線路8aが交差して配置されている半導体装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ搭載部と、前記チップ搭載部を挟んで対向して配置される複数のリード端子で構成される第1リード列および複数のリード端子で構成される第2リード列とを備える実装部と、
少なくとも1つの第1共通端子と、複数の第1個別端子と、前記第1共通端子と前記第1個別端子とを接続する第1伝送線路間にそれぞれ配置される半導体スイッチとを備える第1チップと、
少なくとも1つの第2共通端子と、複数の第2個別端子と、前記第2共通端子と前記第2個別端子とを接続する第2伝送線路間にそれぞれ配置される半導体スイッチとを備える第2チップとを備え、
前記第1チップは、前記第1共通端子が前記第1リード列に対向し、かつ前記第1個別端子が前記第2リード列に対向するように配置されて前記チップ搭載部に実装され、
前記第2チップは、前記第2共通端子が前記第1リード列に対向し、前記第2個別端子が前記第2リード列に対向し、かつ前記第2伝送線路が前記第1伝送線路と重ならないように配置されて前記第1チップ上に積層され、
前記第1共通端子および前記第2共通端子が、前記第1リード列のリード端子にそれぞれ金属ワイヤにより接続され、
前記第1個別端子および前記第2個別端子が、前記第2リード列のリード端子にそれぞれ金属ワイヤにより接続され、
前記第2共通端子と前記第1リード列のリード端子を接続する金属ワイヤまたは前記第2個別端子と前記第2リード列のリード端子を接続する金属ワイヤの少なくとも1つが、前記第1チップに配置される前記第1伝送線路と交差して配置されている
半導体装置。
【請求項2】
前記第2チップは、前記第1伝送線路に重ならないように配置されて前記第1チップ上に積層されている、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2チップは、前記第1伝送線路を覆うように配置されて前記第1チップ上に積層されている、
請求項1記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関し、特に複数の入力端子と複数の出力端子との間の高周波信号の伝送を半導体スイッチによって切り替える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の無線通信装置は、複数の通信規格(マルチモード)による通信を可能とするため複数の通信システムが備えられている。また各通信システムには所定の周波数帯域が割り当てられ、複数の周波数帯域(マルチバンド)を利用した通信が行われている。
【0003】
このようなマルチモード、マルチバンドの無線通信装置では、複数のアンテナと複数の高周波回路間の伝送経路を切り替えるため、各アンテナと各高周波回路を接続する伝送線路にそれぞれ半導体スイッチが配置されている。例えば特許文献1には、2つの入力端子と4つの出力端子との間の接続経路を切り替える半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-69562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8は、DPDT(Double Pole Double Through)スイッチとしての半導体装置の説明図である。図8に示す半導体装置は、2つの共通端子6と、2つの個別端子7と、各共通端子6と各個別端子7に接続される伝送線路8間にそれぞれ配置される4つの半導体スイッチ9とを備える構成とされている。このように2つの共通端子に対して個別端子の数を2つとして半導体装置を構成することにより、場合によっては半導体装置の小型化が可能となったり、半導体装置を実装させるプリント回線基板における配線設計が一部容易となり得るが、その一方で、半導体装置においては、一方の共通端子6と半導体スイッチ9に接続される伝送線路と、他方の共通端子6と半導体スイッチ9に接続される伝送線路が交差して配置され、図8に示すように交差部aが発生する。
【0006】
一般的に、このような交差部aでは上層と下層の伝送線路間に容量が発生し、この容量を介して一方の伝送線路を伝送する信号が他方の伝送線路に漏洩し、アイソレーション特性が劣化してしまう。
【0007】
そこで交差部aの伝送線路間の容量を小さくするために、伝送線路間に厚い層間絶縁膜を配置し、交差する伝送線路の間隔を拡げ、アイソレーション特性の劣化を防いでいる。
【0008】
しかしながら、通常、層間絶縁膜の厚さはせいぜい10μm程度であり、アイソレーション特性の改善には限界があった。
【0009】
そこで、本発明は、伝送線路が交差する構成であってもアイソレーション特性の劣化を招くことのない半導体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体装置の一実施形態は、チップ搭載部と、前記チップ搭載部を挟んで対向して配置される複数のリード端子で構成される第1リード列および複数のリード端子で構成される第2リード列とを備える実装部と、少なくとも1つの第1共通端子と、複数の第1個別端子と、前記第1共通端子と前記第1個別端子とを接続する第1伝送線路間にそれぞれ配置される半導体スイッチとを備える第1チップと、少なくとも1つの第2共通端子と、複数の第2個別端子と、前記第2共通端子と前記第2個別端子とを接続する第2伝送線路間にそれぞれ配置される半導体スイッチとを備える第2チップとを備え、前記第1チップは、前記第1共通端子が前記第1リード列に対向し、かつ前記第1個別端子が前記第2リード列に対向するように配置されて前記チップ搭載部に実装され、前記第2チップは、前記第2共通端子が前記第1リード列に対向し、前記第2個別端子が前記第2リード列に対向し、かつ前記第2伝送線路が前記第1伝送線路と重ならないように配置されて前記第1チップ上に積層され、前記第1共通端子および前記第2共通端子が、前記第1リード列のリード端子にそれぞれ金属ワイヤにより接続され、前記第1個別端子および前記第2個別端子が、前記第2リード列のリード端子にそれぞれ金属ワイヤにより接続され、前記第2共通端子と前記第1リード列のリード端子を接続する金属ワイヤまたは前記第2個別端子と前記第2リード列のリード端子を接続する金属ワイヤの少なくとも1つが、前記第1チップに配置される前記第1伝送線路と交差して配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導体装置によれば、第1チップと第2チップが、第1チップに配置される第1伝送線路と第2チップに配置される第2伝送線路が重ならない配置とされて実装部に実装され、第2伝送線路と実装部のリード端子とを金属ワイヤで接続することで、第1伝送線路と第2伝送線路となる金属ワイヤが交差する構成となり、交差部の伝送線路の間隔が積層された第2チップの厚さ分広くなり、アイソレーション特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態であるDPDTスイッチとしての半導体装置(実施形態1)の説明図であり、実装部に第1チップが実装されている状態を示す説明図である。
図2】実施形態1の半導体装置の説明図であり、図1の第1チップ上に第2チップが積層されている状態を示す説明図である。
図3】実施形態1の半導体装置の説明図であり、実装部に第1チップおよび第2チップが実装され、共通端子とリード端子、個別端子とリード端子それぞれが金属ワイヤにより接続されている状態を示す説明図である。
図4】実施形態1の半導体装置の説明図であり、金属ワイヤと第1伝送線路の配置を模式的に説明する図である。
図5】本発明の別の実施形態であるDPDTスイッチとしての半導体装置(実施形態2)の説明図であり、実装部に第1チップが実装され、共通端子とリード端子、個別端子とリード端子それぞれが金属ワイヤにより接続されている状態を示す説明図である。
図6】実施形態2の半導体装置の説明図であり、図5の第1チップ上に第2チップが積層され、共通端子とリード端子、個別端子とリード端子それぞれが金属ワイヤにより接続されている状態を示す説明図である。
図7】実施形態2の半導体装置の説明図であり、金属ワイヤと第1伝送線路の配置を模式的に説明する図である。
図8】DPDTスイッチとしての半導体装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の半導体装置について、図面を参照して説明するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではなく、以下に説明する部材、材料等は、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。また、図面において同一符号は同等あるいは同一のものを示し、各構成要素間の大きさや位置関係等は便宜上のものであり、実態を厳密に反映したものではない場合がある。
【0014】
(実施形態1)
本発明の実施形態1について説明する。図1~4は本発明の実施形態1のDPDTスイッチとしての半導体装置の説明図である。まず図1は、本実施形態の半導体装置の実装部1に第1チップ2が実装されている状態を示す説明図である。実装部1は、リードフレームや有機基板等で構成され、図1に示す例では、チップ搭載部5を挟んで2つのリード端子4aで構成される第1リード列4Aと、2つのリード端子4bで構成される第2リード列4Bが対向配置される構成とされている。
【0015】
チップ搭載部5には、接着材により第1チップ2が実装されている。第1チップ2は、1つの第1共通端子6aと、2つの第1個別端子7aと、第1共通端子6aと各第1個別端子7aとを接続する第1伝送線路8a間にそれぞれ配置される2つの半導体スイッチ9とを備える構成とされている。半導体スイッチ9は、例えば、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)で構成することができる。本実施形態では、図1に示すように、1つの第1共通端子6aがリード端子4aで構成される第1リード列4Aに対向して配置され、2つの第1個別端子7aがリード端子4bで構成される第2リード列4Bに対向して配置されて、第1チップ2がチップ搭載部5に実装されている。
【0016】
図2は、本実施形態の半導体装置の実装部1に実装されている第1チップ2上に第2チップ3が接着材により接着され積層されている状態を示す説明図である。図2に示すように、本実施形態の半導体装置は、第1チップ2の第1共通端子6a、第1個別端子7aおよび第1伝送線路8aを露出して第2チップ3が第1チップ2上に積層されている。第2チップ3は、1つの第2共通端子6bと、2つの第2個別端子7bと、第2共通端子6bと各第2個別端子7bとを接続する第2伝送線路8b間にそれぞれ配置される2つの半導体スイッチ9とを備える構成とされている。本実施形態では、図2に示すように、第2チップ3は、1つの第2共通端子6bがリード端子4aで構成される第1リード列4Aに対向して配置され、2つの第2個別端子7bがリード端子4bで構成される第2リード列4Bに対向して配置されている。さらに第1伝送線路8aに重ならないように第2チップ3が第1チップ2上に積層され、第1チップ2に配置される第1伝送線路8aと第2チップ3に配置される第2伝送線路8bが重ならない配置とされている。
【0017】
図3は、図2に示す本実施形態の半導体装置の第1共通端子6aとリード端子4a、第2共通端子6bとリード端子4a、第1個別端子7aとリード端子4bおよび第2個別端子7bとリード端子4bそれぞれが金属ワイヤ10により接続されている状態を示す説明図である。図3に示すように、第1チップ2の第1共通端子6aは、第1リード列4Aの1つのリード端子4aに金属ワイヤ10により接続されている。また第1チップ2の第1個別端子7aは、第2リード列4Bのリード端子4bそれぞれに金属ワイヤ10により接続されている。一方、第2チップ3の第2共通端子6bは、第1リード列4Aの第1共通端子6aに接続されていない1つのリード端子4aに金属ワイヤ10により接続されている。また第2チップ3の第2個別端子7bは、第2リード列4Bのリード端子4bそれぞれに金属ワイヤ10により接続されている。このように接続されることで、2つの入出力端子としての共通端子と、2つの入出力端子としての個別端子間の高周波信号の伝送を4つの半導体スイッチ9によって切り替えられる半導体装置が構成される。
【0018】
図3に示すように、本実施形態の半導体装置では、第2共通端子6bとリード端子4aとを接続する金属ワイヤ10と、第1チップ2に配置されている第1伝送線路8aが交差して配置され、平面視で交差部Aが発生している。図4は、図3に示す本実施形態の半導体装置の第2共通端子6bとリード端子4aとを接続する金属ワイヤ10と第1伝送線路8aの配置を模式的に説明する図である。図4に示すように、第1チップ2に配置されている第1伝送線路8aと金属ワイヤ10は、第2チップ3の厚さを超える間隔をもって交差している。半導体スイッチを備える第2チップ3の厚さは、例えば、100μm~260μm程度であり、第1伝送線路8aと金属ワイヤ10との平面視での交差部Aは、半導体装置の高さ方向に第2チップ3の厚さを超える大きな間隔を有する構成となっていることがわかる。
【0019】
以上説明したように本実施形態の半導体装置は、伝送線路(具体的には第1伝送線路8aと金属ワイヤ10)が大きな間隔をもって交差する構成とされているため、伝送線路間で信号が漏洩することはなく、アイソレーション特性の優れた半導体装置となる。また本実施形態の半導体装置は、第1チップ2に配置される第1伝送線路8a上に第2チップ3が配置されないため、第1個別端子7aが露出され、結果として各第2個別端子7bが各第1個別端子7aとそれぞれ離れて配置されることとなり、各個別端子とリード端子4bとの金属ワイヤ10による接続が容易に形成できるという利点がある。
【0020】
(実施形態2)
次に本発明の実施形態2について説明する。図5~7は本発明の実施形態2のDPDTスイッチとしての半導体装置の説明図である。上記実施形態1で説明した半導体装置は、第1チップ2上に積層される第2チップ3の大きさが第1チップ2よりも小さい場合について説明したが、本発明の半導体装置はこれに限定されない。例えば、第1チップ2と第2チップ3の大きさが同じでもよい。図5は、本実施形態の半導体装置の実装部1に第1チップ2が実装され、第1共通端子6aとリード端子4a、第1個別端子7aとリード端子4bそれぞれが金属ワイヤ10により接続されている状態を示す説明図である。実装部1は、リードフレームや有機基板等で構成され、図5に示す例では、チップ搭載部5を挟んで2つのリード端子4aで構成される第1リード列4Aと、2つのリード端子4bで構成される第2リード列4Bが対向配置される構成とされている。
【0021】
チップ搭載部5には、接着材により第1チップ2が実装されている。第1チップ2は、1つの第1共通端子6aと、2つの第1個別端子7aと、第1共通端子6aと各第1個別端子7aとを接続する第1伝送線路8a間にそれぞれ配置される2つの半導体スイッチ9とを備える構成とされている。本実施形態でも、図5に示すように、1つの第1共通端子6aがリード端子4aで構成される第1リード列4Aに対向して配置され、2つの第1個別端子7aがリード端子4bで構成される第2リード列4Bに対向して配置されて、第1チップ2がチップ搭載部5に実装されている。本実施形態の半導体装置は、第1チップ2上に同じ大きさの第2チップ3Aが積層し、第1共通端子6aおよび第1個別端子7aが第2チップ3Aにより覆われて露出しない構成となる。そのため、第2チップ3Aが積層される前に第1チップ2の第1共通端子6aが、第1リード列4Aの1つのリード端子4aに金属ワイヤ10により接続され、第1個別端子7aは、第2リード列4Bのリード端子4bそれぞれに金属ワイヤ10により接続されている。
【0022】
図6は、本実施形態の半導体装置の実装部1に実装されている第1チップ2上に第2チップ3Aが接着材により接着され積層され、第2共通端子6bとリード端子4a、第2個別端子7bとリード端子4bそれぞれが金属ワイヤ10により接続されている状態を示す説明図である。本実施形態の半導体装置は、金属ワイヤ10による接続が形成されている第1チップ2上に第2チップ3Aが積層されている。第1チップ2に第2チップ3Aを積層する接着材は、例えばワイヤ埋込型のフィルム状接着材等が使用される。このワイヤ埋込型のフィルム状接着材としては、一例としてワイヤ埋込型のダイアタッチフィルムを使用することができる。
【0023】
図6に示すように第2チップ3Aは、1つの第2共通端子6bと、2つの第2個別端子7bと、第2共通端子6bと各第2個別端子7bとを接続する第2伝送線路8b間にそれぞれ配置される2つの半導体スイッチ9とを備える構成とされている。本実施形態でも、図6に示すように、1つの第2共通端子6bがリード端子4aで構成される第1リード列4Aに対向して配置され、2つの第2個別端子7bがリード端子4bで構成される第2リード列4Bに対向して配置されて、第2チップ3Aが図5で説明した第1チップ2上に積層されている。また、第1チップ2に配置される第1伝送線路8aと第2チップ3Aに配置される第2伝送線路8bが重ならない配置とされている。
【0024】
第2チップ3Aの第2共通端子6bは、第1リード列4Aの第1共通端子6aに接続されていない1つのリード端子4aに金属ワイヤ10により接続されている。また第2チップ3Aの第2個別端子7bは、第2リード列4Bのリード端子4bそれぞれに金属ワイヤ10により接続されている。このように接続されることで、2つの入出力端子としての共通端子と、2つの入出力端子としての個別端子間の高周波信号の伝送を4つの半導体スイッチ9によって切り替えられる半導体装置が構成される。
【0025】
図7は、図6に示す本実施形態の半導体装置の第2共通端子6bとリード端子4aとを接続する金属ワイヤ10と第1伝送線路8aの配置を模式的に説明する図である。図7に示すように、第1チップ2に配置されている第1伝送線路8aと金属ワイヤ10は、第2チップ3Aの厚さを超える間隔をもって交差している。半導体スイッチを備える第2チップ3Aの厚さは、例えば、100μm~260μm程度であり、第1伝送線路8aと金属ワイヤ10とは半導体装置の高さ方向に第2チップ3Aの厚さを超える大きな間隔を有する構成となっていることがわかる。なお図7には、第1チップ2の第1個別端子7aとリード端子4bとを接続する金属ワイヤ10と、ワイヤ埋込型のフィルム状接着材11も記載されている。
【0026】
本実施形態の半導体装置では、第1チップ2に配置される第1伝送線路8aと金属ワイヤ10間に第2チップ3A等が配置される構成とされている。この場合、上記実施形態1で説明した半導体装置と比較してアイソレーション特性向上の効果が低い可能性がある。そこで、本実施形態の半導体装置であっても、図8に示す層間絶縁膜を隔てて伝送線路8が交差する半導体装置と比較してアイソレーション特性が向上されることを示す目的で、それらのアイソレーション特性を比較した。まず本実施形態の半導体装置は、ガリウムヒ素(比誘電率13)で構成され、厚さ130μmの第2チップ3Aが配置される構成とする。図8に示す構成の半導体装置は、伝送線路8間に厚さ10μmのポリイミド(比誘電率4)で構成される層間絶縁膜が配置される構成とする。それぞれについてアイソレーション特性をシミュレーションした結果、周波数7GHzにおいて、図8に示す半導体装置のアイソレーション特性が34.0dBであったのに対し、本実施形態の半導体装置は40.1dBとなり、アイソレーション特性の向上を確認できた。
【0027】
以上説明したように本実施形態の半導体装置も、伝送線路(具体的には第1伝送経路8aと金属ワイヤ10)が大きな間隔をもって交差する構成とされているため、伝送線路間で信号が漏洩することはなく、アイソレーション特性の優れた半導体装置となる。また本実施形態の半導体装置は、第1チップ2に配置される第1伝送線路8a上に第2チップ3を配置することができ、本実施形態の半導体装置に接続される高周波回路を構成する別の回路等を搭載することもでき、半導体装置を含む装置全体の小型化が可能となる。
【0028】
以上本発明の半導体装置の実施形態についてDPDTスイッチについて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでないことは言うまでもない。例えば、上記説明では、共通端子に接続される伝送線路間の交差について説明したが、個別端子に接続される伝送線路間の交差についても本発明の交差構造を適用することができる。また、第1チップ2と第2チップ3、3Aがそれぞれ異なるような構成とすることができ、例えば、共通端子の数、個別端子の数および半導体スイッチの数が異なる構成とすることができる。さらにまた、積層するチップの数は3以上であってもよく、下層のチップに配置される伝送線路と、上層のチップとリード端子を接続する金属ワイヤとが交差する構成とすることができる。
【0029】
(まとめ)
(1)本発明の半導体装置の一実施形態は、チップ搭載部と、前記チップ搭載部を挟んで対向して配置される複数のリード端子で構成される第1リード列および複数のリード端子で構成される第2リード列とを備える実装部と、少なくとも1つの第1共通端子と、複数の第1個別端子と、前記第1共通端子と前記第1個別端子とを接続する第1伝送線路間にそれぞれ配置される半導体スイッチとを備える第1チップと、少なくとも1つの第2共通端子と、複数の第2個別端子と、前記第2共通端子と前記第2個別端子とを接続する第2伝送線路間にそれぞれ配置される半導体スイッチとを備える第2チップとを備え、前記第1チップは、前記第1共通端子が前記第1リード列に対向し、かつ前記第1個別端子が前記第2リード列に対向するように配置されて前記チップ搭載部に実装され、前記第2チップは、前記第2共通端子が前記第1リード列に対向し、前記第2個別端子が前記第2リード列に対向し、かつ前記第2伝送線路が前記第1伝送線路と重ならないように配置されて前記第1チップ上に積層され、前記第1共通端子および前記第2共通端子が、前記第1リード列のリード端子にそれぞれ金属ワイヤにより接続され、前記第1個別端子および前記第2個別端子が、前記第2リード列のリード端子にそれぞれ金属ワイヤにより接続され、前記第2共通端子と前記第1リード列のリード端子を接続する金属ワイヤまたは前記第2個別端子と前記第2リード列のリード端子を接続する金属ワイヤの少なくとも1つが、前記第1チップに配置される前記第1伝送線路と交差して配置されている。
【0030】
上記(1)の半導体装置によれば、伝送線路(具体的には第1伝送経路8aと金属ワイヤ10)が大きな間隔をもって交差する構成とされているため、伝送線路間で信号が漏洩することはなく、アイソレーション特性の優れた半導体装置となる。
【0031】
(2)また別の実施形態によれば、上記(1)の半導体装置において、前記第2チップは、前記第1伝送線路に重ならないように配置されて前記第1チップ上に積層されている。
【0032】
上記(2)の半導体装置によれば、第1伝送線路上に第2チップがない構成となり、アイソレーション特性のより優れた半導体装置となる。
【0033】
(3)またさらに別の実施形態によれば、上記(1)の半導体装置において、前記第2チップは、前記第1伝送線路を覆うように配置されて前記第1チップ上に積層されている。
【0034】
上記(3)の半導体装置によれば、第2チップに高周波回路を構成する別の回路等を搭載することができ、半導体装置を含む装置全体の小型化が可能となる。
【符号の説明】
【0035】
1 実装部
2 第1チップ
3、3A 第2チップ
4A 第1リード列
4B 第2リード列
4a、4b リード端子
5 チップ搭載部
6 共通端子
6a 第1共通端子
6b 第2共通端子
7 個別端子
7a 第1個別端子
7b 第2個別端子
8 伝送線路
8a 第1伝送線路
8b 第2伝送線路
9 半導体スイッチ
10 金属ワイヤ
11 フィルム状接着材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8