(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009152
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】搬送車
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20250110BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111960
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】小谷 将也
(72)【発明者】
【氏名】中島 毅
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA00
5F131CA32
5F131CA36
5F131DA02
5F131DA23
5F131DA24
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5F131DC05
5F131DC06
5F131DD02
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5F131DD92
5F131KA02
5F131KA32
5F131KA44
5F131KA53
5F131KA63
5F131KB16
5F131KB60
(57)【要約】
【課題】被加工物の搬送効率の低下を防止することが可能な搬送車を提供する。
【解決手段】加工装置の上方に設置された搬送路上を走行して被加工物を搬送する搬送車であって、被加工物を収容する容器と、容器が格納される格納領域と、容器を格納領域と加工装置との間で昇降させる昇降ユニットと、容器に被加工物が収容されているか否かを判定する判定ユニットと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工装置の上方に設置された搬送路上を走行して被加工物を搬送する搬送車であって、
該被加工物を収容する容器と、
該容器が格納される格納領域と、
該容器を該格納領域と該加工装置との間で昇降させる昇降ユニットと、
該容器に該被加工物が収容されているか否かを判定する判定ユニットと、を備えることを特徴とする搬送車。
【請求項2】
該判定ユニットは、該容器を介して該被加工物を検出する非接触型のセンサを有することを特徴とする請求項1に記載の搬送車。
【請求項3】
該昇降ユニットは、該容器に接続され該容器を吊り下げる吊り下げ部材と、該吊り下げ部材が巻き付けられた回転可能なリールと、該リールの回転を制御するモータと、を有し、
該判定ユニットは、該モータに掛かるトルクに基づいて該容器に該被加工物が収容されているか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の搬送車。
【請求項4】
該被加工物には、該被加工物の個体情報を含む個体識別タグが付され、
該判定ユニットは、該個体識別タグから該個体情報を読み取ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を搬送する搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のデバイスが形成されたウェーハを分割して個片化することにより、デバイスを備えるデバイスチップが製造される。また、所定の基板上に複数のデバイスチップを実装し、実装されたデバイスチップを樹脂層(モールド樹脂)で被覆して封止することにより、パッケージ基板が形成される。このパッケージ基板を分割して個片化することにより、パッケージ化された複数のデバイスチップを備えるパッケージデバイスが製造される。デバイスチップやパッケージデバイスは、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の様々な電子機器に組み込まれる。
【0003】
ウェーハ、パッケージ基板等の被加工物は、切削装置、研削装置、研磨装置、レーザー加工装置等の各種の加工装置によって加工される。加工装置で被加工物を加工する際には、複数の被加工物が収容されたカセットをオペレータが加工装置へ搬送する。そして、カセットが加工装置にセットされると、加工装置はカセットから被加工物を1枚ずつ取り出して順に加工する。
【0004】
また、近年では、加工装置に被加工物を自動で搬送する搬送システムが提案されている。例えば特許文献1には、複数の加工装置の上方に設けられた搬送路上を走行する搬送車を用いて被加工物を搬送する手法が開示されている。搬送車は、被加工物を収容した状態で走行し、被加工物を所定の加工装置に所定のタイミングで搬送する。これにより、被加工物の搬送が自動化され、搬送作業の効率が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように搬送車で被加工物を搬送する場合、各搬送車は、搬送車の動作を統括するコントローラ(制御部)と有線又は無線で接続される。例えばコントローラは、搬送車の搬送状況(搬送車の位置、搬送車が搬送中であるか待機中であるか、どの搬送車がいかなる被加工物を搬送しているか等)を監視しつつ、各搬送車に指令(制御信号)を出力する。これにより、被加工物の効率的な搬送や受け渡しが自動で実行される。
【0007】
しかしながら、搬送車の稼働中には、コントローラが認識している搬送車の搬送状況と実際の搬送車の搬送状況とが意図せず異なる状態になることがある。例えば、被加工物の搬送中に加工装置や搬送車で異常が発生すると、エラーが発報されて搬送車が緊急停車し、搬送システムの点検が行われる。このとき、エラーの内容によっては、停車中の搬送車に収容されている被加工物が作業者によって抜き取られ、被加工物の検査が行われる。そして、検査後に作業者が誤って被加工物を搬送車に戻し忘れたまま搬送システムを再稼働させてしまうと、コントローラは搬送車に被加工物が収容されていると認識したままであるにも関わらず、実際には被加工物が搬送車に収容されていない状態となる。
【0008】
上記のように搬送車の搬送状況が誤認識されると、被加工物が所望の場所に所望のタイミングで搬送されず、円滑な搬送作業が妨げられるおそれがある。例えば、搬送車が目的地である加工装置に到着して被加工物の受け渡しを行う段階で初めて、被加工物が搬送車に収容されていないことが判明し、エラーが発報されることがある。この場合、搬送車が走行を終えた後に改めて被加工物の搬送をやり直す必要があり、搬送スケジュールの再設定や被加工物の再搬送による搬送時間のロスが生じる。このように、コントローラが認識している搬送車の搬送状況と実際の搬送車の搬送状況とが異なる状況が発生すると、被加工物の搬送効率が低下し、加工装置による被加工物の加工が滞る原因となる。
【0009】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、被加工物の搬送効率の低下を防止することが可能な搬送車の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、加工装置の上方に設置された搬送路上を走行して被加工物を搬送する搬送車であって、該被加工物を収容する容器と、該容器が格納される格納領域と、該容器を該格納領域と該加工装置との間で昇降させる昇降ユニットと、該容器に該被加工物が収容されているか否かを判定する判定ユニットと、を備える搬送車が提供される。
【0011】
なお、好ましくは、該判定ユニットは、該容器を介して該被加工物を検出する非接触型のセンサを有する。また、好ましくは、該昇降ユニットは、該容器に接続され該容器を吊り下げる吊り下げ部材と、該吊り下げ部材が巻き付けられた回転可能なリールと、該リールの回転を制御するモータと、を有し、該判定ユニットは、該モータに掛かるトルクに基づいて該容器に該被加工物が収容されているか否かを判定する。
【0012】
さらに、好ましくは、該被加工物には、該被加工物の個体情報を含む個体識別タグが付され、該判定ユニットは、該個体識別タグから該個体情報を読み取る。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様にかかる搬送車は、搬送車に搭載された容器に被加工物が収容されているか否かを自発的に判定する機能を備える。これにより、容器の収容状態が不適切な状態のまま被加工物の搬送が続行されることを回避でき、被加工物の搬送効率の低下が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】
図3(A)は搬送車の上面側を示す斜視図であり、
図3(B)は搬送車の下面側を示す斜視図である。
【
図4】容器を載置領域に載置する搬送車を示す斜視図である。
【
図5】
図5(A)は容器を示す斜視図であり、
図5(B)は容器を示す正面図である。
【
図8】
図8(A)は吊り下げ部材を繰り出すリールを示す正面図であり、
図8(B)は容器が載置領域に載置される際のリールを示す正面図である。
【
図9】
図9(A)は逆回転するリールを示す正面図であり、
図9(B)は吊り下げ部材のたるみが解消される際のリールを示す正面図である。
【
図11】
図11(A)は被加工物に個体識別タグが付された被加工物ユニットを示す斜視図であり、
図11(B)はフレームに個体識別タグが付された被加工物ユニットを示す斜視図であり、
図11(C)はシートに個体識別タグが付された被加工物ユニットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る搬送車が用いられる搬送システムの構成例について説明する。
図1は、搬送システム2を示す平面図である。
【0016】
搬送システム2は、被加工物11を加工する複数の加工装置4の上方で被加工物11を搬送するためのシステムである。なお、
図1には1台の加工装置4のみを図示しているが、搬送システム2に含まれる加工装置4の台数は任意に設定できる。
【0017】
加工装置4の種類に制限はない。加工装置4の例としては、被加工物11を切削する切削装置、被加工物11を研削する研削装置、被加工物11を研磨する研磨装置、被加工物11にレーザー加工を施すレーザー加工装置等が挙げられる。
【0018】
切削装置は、被加工物11を切削する加工ユニット(切削ユニット)を備える。切削ユニットはスピンドルを備えており、スピンドルの先端部には環状の切削ブレードが装着される。切削ブレードを回転させつつ被加工物11に切り込ませることにより、被加工物11が切削される。
【0019】
研削装置は、被加工物11を研削する加工ユニット(研削ユニット)を備える。研削ユニットはスピンドルを備えており、スピンドルの先端部には複数の研削砥石を含む環状の研削ホイールが装着される。研削ホイールを回転させつつ研削砥石を被加工物11に接触させることにより、被加工物11が研削される。
【0020】
研磨装置は、被加工物11を研磨する加工ユニット(研磨ユニット)を備える。研磨ユニットはスピンドルを備えており、スピンドルの先端部には円盤状の研磨パッドが装着される。研磨パッドを回転させつつ被加工物11に接触させることにより、被加工物11が研磨される。
【0021】
レーザー加工装置は、被加工物11にレーザー加工を施す加工ユニット(レーザー照射ユニット)を備える。例えばレーザー照射ユニットは、所定の波長のレーザービームをパルス発振するレーザー発振器と、レーザー発振器から出射したレーザービームを集光させる集光器とを備える。レーザー照射ユニットから照射されたレーザービームを被加工物11の表面、裏面又は内部で集光させることにより、被加工物11にレーザー加工が施される。
【0022】
例えば被加工物11は、単結晶シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハであり、互いに概ね平行な表面(第1面)及び裏面(第2面)を備える。被加工物11は、互いに交差するように格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)によって、複数の矩形状の領域に区画されている。また、ストリートによって区画された複数の領域にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等のデバイスが形成されている。
【0023】
切削装置やレーザー加工装置によって被加工物11を加工してストリートに沿って分割することにより、デバイスをそれぞれ備える複数のデバイスチップが製造される。また、研削装置や研磨装置によって分割前の被加工物11を加工して薄化しておくことにより、薄型化されたデバイスチップを得ることが可能になる。
【0024】
ただし、被加工物11の種類、材質、大きさ、形状、構造等に制限はない。例えば被加工物11は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、サファイア、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等でなるウェーハ(基板)であってもよい。また、デバイスの種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はなく、被加工物11にはデバイスが形成されていなくてもよい。
【0025】
さらに、被加工物11は、CSP(Chip Size Package)基板、QFN(Quad Flat Non-leaded package)基板等のパッケージ基板であってもよい。例えばパッケージ基板は、所定の基板上に複数のデバイスチップを実装し、実装されたデバイスチップを樹脂層(モールド樹脂)で被覆して封止することによって形成される。パッケージ基板を分割して個片化することにより、パッケージ化された複数のデバイスチップを備えるパッケージデバイスが製造される。
【0026】
加工装置4で被加工物11を加工する際には、被加工物11の取り扱い(搬送、保持等)の便宜のため、被加工物11を環状のフレーム13で支持してもよい。フレーム13は、SUS(ステンレス鋼)等の金属でなる円環状の部材であり、フレーム13の中央部にはフレーム13を厚さ方向に貫通する円形の開口が設けられている。なお、フレーム13の開口の直径は、被加工物11の直径よりも大きい。
【0027】
被加工物11及びフレーム13には、被加工物11を支持するシート15が固定される。例えばシート15は、フレーム13の開口よりも直径が大きい円形のテープであり、フィルム状の基材と、基材上に設けられた粘着層(糊層)とを有する。ただし、シート15は、粘着層(糊層)を備えず被加工物11及びフレーム13に熱圧着可能な熱圧着シートであってもよい。
【0028】
被加工物11がフレーム13の開口の内側に配置された状態で、シート15の中央部が被加工物11の裏面側に貼付され、シート15の外周部がフレーム13に貼付される。これにより、被加工物11がシート15を介してフレーム13によって支持され、被加工物11、フレーム13及びシート15を含む被加工物ユニット(フレームユニット)17が構成される。
【0029】
加工装置4の側面には、複数の配管6が接続されている。例えば配管6は、加工装置4に液体や気体を供給するための供給ダクト、加工装置4の内部から液体や気体を排出するための排出ダクト等に相当する。
【0030】
加工装置4に隣接する位置には、複数の被加工物11を収容する収容装置(ローダー・アンローダー)8が設置される。収容装置8には、加工装置4によって加工される前の被加工物11や、加工装置4によって加工された後の被加工物11が収容される。
【0031】
また、搬送システム2は、複数の加工装置4及び収容装置8の上方に設置された搬送路10を備える。搬送路10は、加工装置4同士の間、及び、加工装置4と収容装置8との間の空間を跨ぐように設置される。すなわち、複数の加工装置4及び収容装置8は、搬送路10を介して連結されている。そして、搬送路10上には、被加工物11を搬送する無人の搬送車(搬送装置)12が配置される。なお、
図1では2台の搬送車12を図示しているが、搬送路10上に配置される搬送車12の台数に制限はない。
【0032】
搬送車12は、加工装置4同士の間、又は、加工装置4と収容装置8との間で被加工物11を搬送する。例えば、収容装置8に収容されている加工前の被加工物11が搬送車12に搬入される。そして、搬送車12は収容装置8から受け取った被加工物11を収容した状態で搬送路10上を走行し、被加工物11を所定の加工装置4へ搬送する。また、搬送車12は、加工装置4から受け取った加工後の被加工物11を収容した状態で搬送路10上を走行し、被加工物11を他の加工装置4又は収容装置8へ搬送する。
【0033】
なお、搬送路10のうち加工装置4又は収容装置8の直上に位置する領域には、搬送路10を上下に貫通する開口10aが設けられている。この開口10aを介して、搬送車12と加工装置4との間、及び、搬送車12と収容装置8との間における被加工物11の受け渡しが行われる。
【0034】
上記のように、搬送システム2では、加工装置4及び収容装置8の上方に設置された搬送路10上を搬送車12が走行することにより、被加工物11が搬送される。これにより、被加工物11の搬送が自動化され、搬送作業の効率が向上する。また、加工装置4の側面に接続された配管6等が被加工物11の搬送の障害となることを回避でき、被加工物11の円滑な搬送が実現される。
【0035】
図2は、搬送システム2を示すブロック図である。搬送システム2は、搬送システム2を統括して制御するコントローラ(制御ユニット、制御部、制御装置)14を備える。コントローラ14は、搬送システム2の構成要素(加工装置4、収容装置8、搬送車12等)と無線又は有線で接続され、制御信号(指令)を出力することによって各構成要素の動作を制御する。これにより、搬送車12の走行、加工装置4と搬送車12との間での被加工物11の受け渡し、収容装置8と搬送車12との間での被加工物11の受け渡し等が制御される。また、搬送システム2の構成要素から送信された各種の情報(信号、データ等)がコントローラ14に入力される。
【0036】
例えばコントローラ14は、コンピュータによって構成され、搬送システム2の稼働に必要な演算等の処理を行う処理部と、搬送システム2の稼働に用いられる各種の情報(データ、プログラム等)を記憶する記憶部とを含む。処理部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成される。記憶部は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリを含んで構成される。
【0037】
次に、搬送路10上を走行して被加工物11を搬送する搬送車12の詳細について説明する。
図3(A)は搬送車12の上面側を示す斜視図であり、
図3(B)は搬送車12の下面側を示す斜視図である。
【0038】
搬送車12は、搬送車12を構成する各構成要素が搭載される板状の本体フレーム20を備える。本体フレーム20の前方側の両側端部には、一対の車軸22が設けられている。車軸22は、一端側が本体フレーム20の側面から突出するように本体フレーム20の下面側に配置されており、車軸22の一端側にはそれぞれ車輪(前輪)24が装着されている。
【0039】
本体フレーム20の後端部には、一対の車輪(後輪)26が、本体フレーム20の幅方向(車幅方向)において互いに離隔した状態で配置されている。例えば車輪26は、搬送車12の車高方向と概ね平行な回転軸の周りで360°回転可能なキャスターであり、本体フレーム20の下面側に装着されている。車輪24及び車輪26は、搬送車12が搬送路10(
図1参照)上を走行するための走行用の車輪である。
【0040】
図3(A)に示すように、本体フレーム20の前端部には、一対の車輪24を駆動する駆動ユニット28が搭載されている。駆動ユニット28は、車軸22を介して車輪24に連結される一対のモータ30を備える。モータ30は、回転軸(出力シャフト)30aを備えており、車輪24を回転させるための動力を生成する。
【0041】
図3(B)に示すように、車軸22の他端側にはプーリー32が固定されている。そして、モータ30の回転軸30aとプーリー32とに、ベルト、チェーン等の無端の連結部材(不図示)が巻き付けられる。これにより、車軸22とモータ30とを連結する動力伝達機構が構成される。そして、モータ30によって生成された動力(回転力)が車輪24に伝達され、車輪24が回転する。
【0042】
駆動ユニット28は、一対のモータ30によって一対の車輪24の回転方向を独立に制御する。一対の車輪24を同じ方向に回転させると、搬送車12が前進又は後退する。また、一対の車輪24を互いに逆方向に回転させると、搬送車12が車高方向と概ね平行な回転軸の周りで回転し、搬送車12の進行方向が制御される。
【0043】
駆動ユニット28には、給電用の配線(不図示)を介してモータ30等に電力を供給するバッテリー(二次電池)34が接続される。例えばバッテリー34は、本体フレーム20の前端部に装着され、車輪24を回転させるための電力をモータ30に供給する。バッテリー34としては、リチウムイオン電池等が用いられる。
【0044】
図3(B)に示すように、本体フレーム20の前端部の下面側には、配線(不図示)を介してバッテリー34に接続された一対の受電用の端子36が設けられている。一対の端子36は、例えば搬送車12の外部に設置された給電用の端子に接続される。給電用の端子から一対の端子36に供給される電力により、バッテリー34が充電される。
【0045】
本体フレーム20の下側には、格納領域38が設けられている。格納領域38は、一対の車輪24と一対の車輪26とによって囲まれ、且つ、車輪24及び車輪26の下端よりも上方に位置する空間に相当する。そして、
図3(A)に示すように、1又は複数の被加工物11を収容可能な容器(カセット)40が格納領域38に格納される。なお、容器40の構成の詳細については後述する(
図5(A)及び
図5(B)参照)。
【0046】
搬送車12で被加工物11を搬送する際には、被加工物11を収容した容器40が格納領域38に配置される。このとき、容器40の下面は、車輪24の下端及び車輪26の下端よりも上方に位置付けられる。そのため、搬送車12の走行中に容器40が搬送路10(
図1参照)と接触することはない。
【0047】
本体フレーム20の上面側の格納領域38と重なる領域には、格納領域38と加工装置4又は収容装置8(
図1参照)との間で容器40を昇降させる昇降ユニット(昇降機構)42が設けられている。昇降ユニット42は、格納領域38に格納されている容器40を下降させて所定の載置領域に載置するとともに、載置領域に載置されている容器40を上昇させて格納領域38に格納する。
【0048】
図4は、容器40を載置領域(搬送先)16に載置する搬送車12を示す斜視図である。昇降ユニット42は、一端側が容器40に接続された複数の吊り下げ部材44と、吊り下げ部材44の繰り出し及び巻き取りを行う駆動機構46とを備える。例えば載置領域16は、加工装置4又は収容装置8(
図1参照)の内部に設けられ被加工物11が仮置きされる載置台の載置面に相当する。
【0049】
吊り下げ部材44としては、所定の幅を有するベルトや、繰り出し及び巻き取りが可能なワイヤロープ等が用いられる。
図4には、吊り下げ部材44がベルトであり、4本の吊り下げ部材44の先端部(下端部)がそれぞれ容器40の上面側の4つの位置に接続されている例を示している。ただし、吊り下げ部材44の本数に制限はない。
【0050】
容器40が格納領域38に格納された状態で、吊り下げ部材44が駆動機構46によって繰り出されると、容器40が下降して載置領域16に載置される。また、容器40が載置領域16に載置された状態で、吊り下げ部材44が駆動機構46によって巻き取られると、容器40が上昇して格納領域38に格納される。
【0051】
図3(B)に示すように、本体フレーム20の下面側には、容器40の上面側と接触する複数の接触部材(接触ピン)48が設けられている。複数の接触部材48は、概ね同じ高さの柱状に形成され、本体フレーム20の下面から下方に突出するように本体フレーム20に固定されている。容器40が格納領域38に格納されると、容器40の上面側が複数の接触部材48の下端部に接触して支持される。
【0052】
例えば接触部材48は、容器40が押し当てられた際に弾性変形を生じる弾性体でなる。接触部材48に弾性体を用いると、容器40が接触部材48と接触した際の衝撃が緩和され、容器40や容器40に収容された被加工物ユニット17が破損しにくくなる。また、搬送車12が搬送路10(
図1参照)を走行する際、接触部材48が緩衝材として機能し、本体フレーム20の振動が容器40や被加工物ユニット17に伝わりにくくなる。
【0053】
接触部材48としては、ゴム(ウレタンゴム、シリコーンゴム等)、スポンジ等を用いることができる。特に、接触部材48として、容器40との間に作用する摩擦力が大きいゴムを用いると、搬送中の容器40の位置ずれが生じにくくなる。なお、接触部材48は、必ずしもその全体が弾性体で構成される必要はなく、少なくとも接触部材48の容器40と接触する領域(下端部)が弾性体であればよい。
【0054】
接触部材48は、容器40の上面側に対して3以上の位置で接触することが好ましい。例えば、
図3(B)に示すように、3つの柱状の接触部材48が本体フレーム20に設けられる。この場合、容器40の上面が3つの接触部材48の下端を含む平面に沿って支持され、容器40が傾きにくくなる。
【0055】
ただし、接触部材48の形状、数、配置等は任意に変更され得る。例えば、互いに概ね平行に配置された一対の線状(帯状)の接触部材48が本体フレーム20に設けられてもよい。また、スポンジ等でなる板状の接触部材48が本体フレーム20の下面側の全体にわたって固定されてもよい。
【0056】
本体フレーム20の後端部の下側には、カバー50が設けられている。カバー50は、容器40が格納領域38に格納された際に、容器40に設けられた被加工物11の搬入搬出口(開口40b、
図4参照)を覆う。これにより、搬送車12の走行中に容器40内に異物が入り込むことを防止でき、被加工物11への異物の付着が回避される。また、搬送車12の走行中に容器40が傾いたり振動したりしても、容器40からの被加工物11の飛び出しがカバー50によって防止される。
【0057】
本体フレーム20の前端部及び後端部には、一対の第1センサ52が設けられている。また、本体フレーム20の両側端部には、一対の第2センサ54が設けられている。第1センサ52、第2センサ54はそれぞれ、搬送車12が走行する搬送路10(
図1参照)と対面するように装着され、搬送路10に付されたマークを検出する。第1センサ52及び第2センサ54によるマークの検出結果に基づいて、搬送車12の動作(走行、旋回、停車等)が制御される。
【0058】
また、
図3(A)に示すように、本体フレーム20の前端側には、搬送車12が障害物に衝突したことを検知する一対の第3センサ56が設けられている。搬送車12の前端部が障害物に衝突すると、第3センサ56が作動して搬送車12の衝突が検知され、搬送車12が緊急停車する。第3センサ56としては、例えば押しボタン式のスイッチが用いられる。ただし、搬送車12の衝突を検知可能であれば、第3センサ56の種類に制限はない。
【0059】
昇降ユニット42の上側には、本体フレーム20に固定された板状の支持台58が設けられている。支持台58上には、搬送車12を制御するコントローラ(制御ユニット、制御部、制御装置)60と、コントローラ60に接続された受信機62及び送信機64とが設けられている。
【0060】
コントローラ60は、搬送車12の構成要素(駆動ユニット28、バッテリー34、昇降ユニット42、第1センサ52、第2センサ54、第3センサ56、受信機62、送信機64等)に接続されており、各構成要素の動作を制御する。例えばコントローラ60は、コンピュータによって構成され、搬送車12の稼働に必要な演算等の処理を行う処理部と、搬送車12の稼働に用いられる各種の情報(データ、プログラム等)を記憶する記憶部とを含む。処理部は、CPU等のプロセッサを含んで構成される。記憶部は、ROM、RAM等のメモリを含んで構成される。
【0061】
受信機62は、外部からの信号(情報)を受信してコントローラ60に入力する。例えば受信機62は、搬送システム2のコントローラ14(
図2参照)から送信される情報(信号、データ等)を受信してコントローラ60に入力する。そして、コントローラ60は受信機62から受信した情報に基づいて搬送車12の動作を制御する。
【0062】
送信機64は、コントローラ60からの信号(情報)を受信して外部に送信する。例えば、コントローラ60が搬送車12に関する情報(信号、データ等)を送信機64に出力する。そして、送信機64はコントローラ60から受信した情報を搬送システム2のコントローラ14に送信する。
【0063】
さらに、本実施形態に係る搬送車12においては、
図3(B)に示すように、容器40に収容された被加工物11を検出する1又は複数のセンサ(検出器)66が、本体フレーム20の下面側に設けられている。センサ66は、容器40を介して被加工物11を検出する検出器であり、コントローラ60に接続されている。コントローラ60でセンサ66を制御することにより、容器40に収容されている被加工物11が検出される。なお、センサ66の機能の詳細については後述する(
図5(B)参照)。
【0064】
昇降ユニット42、第1センサ52、第2センサ54、第3センサ56、コントローラ60、受信機62、送信機64、センサ66はそれぞれ、給電用の配線(不図示)を介してバッテリー34に接続されていてもよい。この場合、昇降ユニット42、第1センサ52、第2センサ54、第3センサ56、コントローラ60、受信機62、送信機64、センサ66を、バッテリー34から供給される電力によって動作させることができる。
【0065】
次に、被加工物11を収容する容器40の詳細について説明する。
図5(A)は容器40を示す斜視図であり、
図5(B)は容器40を示す正面図である。以下では一例として、サイズ及び重量が異なる2種類の被加工物ユニット17(被加工物ユニット17A,17B、
図5(B)参照)を収容可能な容器40について説明する。被加工物ユニット17A,17Bはそれぞれ、被加工物11、フレーム13及びシート15を備える(
図1参照)。
【0066】
例えば、容器40は平面視で六角形状に形成され、容器40の内部には被加工物ユニット17A,17Bを収容可能な収容部(収容空間)40aが設けられている。収容部40aは、容器40の一側面側で開口するスリット状の開口40bを介して、容器40の外部と接続されている。被加工物ユニット17は、開口40bを通過して収容部40aに搬入されるとともに、開口40bを通過して収容部40aから搬出される。
【0067】
容器40は、収容部40aに被加工物ユニット17A,17Bを同時に収容可能に構成されている。具体的には、容器40の収容部40aには、被加工物ユニット17Aを支持する一対の第1ガイドレール70と、被加工物ユニット17Bを支持する一対の第2ガイドレール72とが設けられている。
【0068】
一対の第1ガイドレール70はそれぞれ、収容部40aの上壁40cに固定された側壁70aと、側壁70aの下端部から突出する突出部70bとを備える。突出部70bの上面は、被加工物ユニット17Aの下面側を保持する保持面70cを構成している。また、一対の第2ガイドレール72は、互いに離隔するように収容部40aの底壁40dに固定されている。第2ガイドレール72の上面は、被加工物ユニット17Bの下面側を保持する保持面72aを構成している。
【0069】
一対の第1ガイドレール70の間隔は、一対の保持面70cによって被加工物ユニット17Aを下側から支持できるように調節される。また、一対の第2ガイドレール72の間隔は、一対の保持面72aによって被加工物ユニット17Bを下側から支持できるように調節される。ただし、一対の第1ガイドレール70の間隔は一対の第2ガイドレール72の間隔よりも狭い。
【0070】
例えば、被加工物ユニット17Aは直径200mm(8インチ)の被加工物11と、その被加工物11を支持するフレーム13とを備える。また、被加工物ユニット17Bは、直径300mm(12インチ)の被加工物11と、その被加工物11を支持するフレーム13とを備える。そして、被加工物ユニット17Aのフレーム13は、被加工物ユニット17Bのフレーム13よりも直径及び重量が小さい。
【0071】
容器40に被加工物ユニット17A,17Bが搬入されると、被加工物ユニット17Aのフレーム13が一対の第1ガイドレール70によって支持され、被加工物ユニット17Bのフレーム13が一対の第2ガイドレール72によって支持される。このように、容器40は、サイズの異なる2種類の被加工物ユニット17A,17Bを同時に収容できる。
【0072】
被加工物11を収容した容器40は、搬送車12の格納領域38に格納される(
図3(A)参照)。そして、搬送車12の本体フレーム20の下面側に設けられたセンサ66(
図3(B)参照)によって、容器40に収容されている被加工物11が検出される。
【0073】
具体的には、容器40に2種類の被加工物ユニット17A,17Bが収容される場合には、被加工物ユニット17Aを検出するセンサ66(センサ66A)と被加工物ユニット17Bを検出するセンサ66(センサ66B)とが搬送車12に搭載される。そして、
図5(B)に示すように、センサ66Aは容器40の上壁40cを介して被加工物ユニット17Aを検出し、センサ66Bは容器40の上壁40cを介して被加工物ユニット17Bを検出する。これにより、容器40に被加工物ユニット17A,17Bが収容されているか否かを確認することができる。
【0074】
センサ66Aは、容器40に収容された被加工物ユニット17Aが備える被加工物11、フレーム13、シート15(
図1参照)の少なくとも1つを検出可能な検出器である。そして、センサ66Aの設置位置は、容器40に収容された被加工物ユニット17Aをセンサ66Aで検出できるように設定される。例えばセンサ66Aは、容器40に収容された被加工物ユニット17Aの被加工物11、フレーム13又はシート15と鉛直方向(搬送車12の車高方向)において重なるように設置される。
【0075】
センサ66Bは、容器40に収容された被加工物ユニット17Bが備える被加工物11、フレーム13、シート15(
図1参照)の少なくとも1つを検出可能な検出器である。そして、センサ66Bの設置位置は、容器40に収容された被加工物ユニット17Bをセンサ66Bで検出できるように設定される。例えばセンサ66Bは、容器40に収容された被加工物ユニット17A及び第1ガイドレール70とは鉛直方向において重ならず、且つ、容器40に収容された被加工物ユニット17Bの被加工物11、フレーム13又はシート15と鉛直方向において重なるように設置される。
【0076】
容器40に被加工物ユニット17A,17Bが収容されている場合には、センサ66Aによって被加工物ユニット17Aが検出され、センサ66Bによって被加工物ユニット17Bが検出される。なお、センサ66A,66Bは、被加工物11を直接的に検出してもよいし、フレーム13又はシート15を検出することによって被加工物11を間接的に検出してもよい。
【0077】
センサ66A,66Bはそれぞれ、対象物に接触せず対象物を検出可能な非接触型のセンサである。例えばセンサ66A,66Bは、光を照射する投光部と、投光部から照射された光を受光する受光部とを含む光電センサである。光電センサの種類に制限はなく、光透過型の光電センサ、光反射型の光電センサ等を用いることができる。また、センサ66A,66Bは、CCD(Charged-Coupled Devices)センサ、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)センサ等のイメージセンサを備える撮像ユニット(カメラ)であってもよい。
【0078】
また、容器40は、センサ66A,66Bが容器40を介して被加工物ユニット17A,17Bを検出できるように構成される。具体的には、センサ66A,66Bが光電センサや撮像ユニット等の光センサである場合には、センサ66A,66Bによって受光される光(検出光)が容器40を透過するように、容器40の材質が選択される。例えば、センサ66A,66Bが可視光を受光して検出する可視光センサである場合には、可視光が透過可能なプラスチック、ガラス等の透明体によって容器40が構成される。
【0079】
ただし、センサ66A,66Bが容器40を介して被加工物ユニット17A,17Bを検出可能であれば、容器40の構成に制限はない。例えば、容器40のうち検出光が通過する領域のみが、検出光を透過させる透明体によって構成されていてもよい。また、容器40のうち検出光が通過する領域に開口(貫通孔)が設けられていてもよい。この場合には、容器40の他の領域の材質を自由に選択することができる。
【0080】
センサ66A,66Bは、被加工物ユニット17A,17Bの検出結果に対応する信号(検出信号)を生成し、コントローラ60に出力する。そして、コントローラ60は、検出信号に基づいて容器40に被加工物ユニット17A,17Bが収容されているか否かを判定する。
【0081】
例えばコントローラ60は、センサ66A,66Bから入力された検出信号の強度IA,IBと、予め設定された検出信号の強度の参照値(閾値)Irefとを比較する。そして、コントローラ60は、強度IAが参照値Irefよりも高い場合には容器40に被加工物ユニット17Aの被加工物11が収容されていると判定し、強度IAが参照値Irefよりも低い場合には容器40に被加工物ユニット17Aの被加工物11が収容されていないと判定する。また、コントローラ60は、強度IBが参照値Irefよりも高い場合には容器40に被加工物ユニット17Bの被加工物11が収容されていると判定し、強度IBが参照値Irefよりも低い場合には容器40に被加工物ユニット17Bの被加工物11が収容されていないと判定する。
【0082】
上記のように、コントローラ60及びセンサ66A,66Bによって、容器40に被加工物11が収容されているか否か、及び、容器40に収容されている被加工物11の種類が自動で判定される。すなわち、コントローラ60とセンサ66A,66Bとによって、容器40の収容状態を判定する判定ユニット68が構成される。
【0083】
なお、センサ66は、複数の種類の被加工物ユニット17を検出可能であってもよい。例えば搬送車12には、被加工物ユニット17A,17Bの両方を検出可能な1個のセンサ66が搭載されてもよい。また、容器40は、1種類の被加工物ユニット17を収容可能な容器であってもよいし、3種類以上の被加工物ユニット17を収容可能な容器であってもよい。
【0084】
さらに、容器40の収容状態の判定は、センサ66による被加工物11の検出以外の方法によって実施することもできる。例えば、昇降ユニット42によって容器40を昇降させる際(
図4参照)の負荷に基づいて、容器40に被加工物11が収容されているか否かを判定してもよい。以下、昇降ユニット42を用いて容器40の収容状態を判定する方法について説明する。
【0085】
図6は、昇降ユニット42を示す平面図である。前述の通り昇降ユニット42は、容器40を吊り下げる複数の吊り下げ部材44と、吊り下げ部材44の繰り出し及び巻き取りを行う駆動機構46とを備える。
【0086】
駆動機構46は、回転軸(出力シャフト)80aを有するモータ80を備える。モータ80は、パルスモータ、サーボモータ等によって構成され、回転軸80aを回転させることにより吊り下げ部材44の繰り出し及び巻き取りに必要な動力を生成する。また、モータ80の両側(
図6の上側及び下側)には、一対のロッド(回転軸)82A,82Bが設けられている。一対のロッド82A,82Bは、平面視でモータ80を挟むように互いに概ね平行に配置されている。
【0087】
ロッド82Aの一端側には、プーリー84が固定されている。そして、モータ80の回転軸80a及びプーリー84に、ベルト、チェーン等の無端の連結部材86が巻き付けられている。モータ80の回転軸80a、プーリー84、及び連結部材86によって、モータ80の動力をロッド82Aに伝達する動力伝達機構が構成され、モータ80とロッド82Aとが連結される。一方、ロッド82Bの一端側にはプーリーが設けられていない。
【0088】
ロッド82Aの他端側にはプーリー88Aが固定され、ロッド82Bの他端側にはプーリー88Aと同径のプーリー88Bが固定されている。また、プーリー88A及びプーリー88Bには、ベルト、チェーン等の無端の連結部材90が巻き付けられている。プーリー88A,88B及び連結部材90によって、ロッド82Aの動力をロッド82Bに伝達する動力伝達機構が構成され、ロッド82Aとロッド82Bとが連結される。
【0089】
ロッド82Aの両端部には、吊り下げ部材44が巻き付けられる一対の回転可能な円柱状のリール92Aが設けられている。リール92Aの中央部には、リール92Aを高さ方向に貫通する貫通孔(不図示)が設けられており、この貫通孔にロッド82Aの端部が挿入されている。なお、一対のリール92Aはロッド82Aに固定されておらず、ロッド82Aに対して回転自在な状態で装着されている。そのため、リール92Aに外力が付与されると、リール92Aはロッド82Aと独立して、ロッド82Aの長さ方向と概ね平行な回転軸の周りを回転する。
【0090】
一対のリール92Aの外側(モータ80とは反対側)にはそれぞれ、吊り下げ部材44を支持する円柱状のローラー94Aが設けられている。一対のローラー94Aは、一対のリール92Aの下方に配置されており(
図7参照)、ロッド82Aの長さ方向と概ね平行な回転軸の周りを回転自在な状態で支持されている。
【0091】
ロッド82Aには、ロッド82Aの側面(外周面)からロッド82Aの半径方向外側に突出する柱状の押圧部材(突起、凸部)96Aが固定されている。例えば、一対の押圧部材96Aが一対のリール92Aの間に設けられる。
【0092】
また、一対のリール92Aは、ロッド82Aと概ね平行に配置されたバー(シャフト)98Aを介して互いに連結されている。例えば、バー98Aの両端部が、一対のリール92Aの互いに対向する面に固定される。リール92Aが回転すると、バー98Aはロッド82Aと概ね平行に配置された状態を維持したまま、リール92Aと連動してロッド82Aの周りを回転する。
【0093】
ロッド82Aとバー98Aとは、付勢部材100Aによって連結されている。付勢部材100Aとしては、例えば渦巻き状に巻かれた帯状の金属によって構成されるばね(渦巻きばね)が用いられる。この場合、渦巻きばねの一端側は、ロッド82Aの中央部に巻き付けられて固定される。また、渦巻きばねの他端側は、バー98Aの中央部に固定され、バー98Aを介して一対のリール92Aに連結される。
【0094】
一方、ロッド82Bの両端部には、吊り下げ部材44が巻き付けられる一対の回転可能な円柱状のリール92Bが設けられている。リール92Bの中央部には、リール92Bを高さ方向に貫通する貫通孔(不図示)が設けられており、この貫通孔にロッド82Bの端部が挿入されている。なお、一対のリール92Bはロッド82Bに固定されておらず、ロッド82Bに対して回転自在な状態で装着されている。そのため、リール92Bに外力が付与されると、リール92Bはロッド82Bと独立して、ロッド82Bの長さ方向と概ね平行な回転軸の周りを回転する。
【0095】
一対のリール92Bの外側(モータ80とは反対側)にはそれぞれ、吊り下げ部材44を支持する円柱状のローラー94Bが設けられている。一対のローラー94Bは、一対のリール92Bの下方に配置されており(
図7参照)、ロッド82Bの長さ方向と概ね平行な回転軸の周りを回転自在な状態で支持されている。
【0096】
ロッド82Bには、ロッド82Bの側面(外周面)からロッド82Bの半径方向外側に突出する柱状の押圧部材(突起、凸部)96Bが固定されている。例えば、一対の押圧部材96Bが一対のリール92Bの間に設けられる。
【0097】
また、一対のリール92Bは、ロッド82Bと概ね平行に配置されたバー(シャフト)98Bを介して互いに連結されている。例えば、バー98Bの両端部が、一対のリール92Bの互いに対向する面に固定される。リール92Bが回転すると、バー98Bはロッド82Bと概ね平行に配置された状態を維持したまま、リール92Bと連動してロッド82Bの周りを回転する。
【0098】
ロッド82Bとバー98Bとは、付勢部材100Bによって連結されている。付勢部材100Bとしては、例えば渦巻き状に巻かれた帯状の金属によって構成されるばね(渦巻きばね)が用いられる。この場合、渦巻きばねの一端側は、ロッド82Bの中央部に巻き付けられて固定される。また、渦巻きばねの他端側は、バー98Bの中央部に固定され、バー98Bを介して一対のリール92Bに連結される。
【0099】
一対のリール92A及び一対のリール92Bにはそれぞれ、吊り下げ部材44が巻き付けられる。吊り下げ部材44の一端側(先端側、下端側)は容器40に接続され(
図4参照)、吊り下げ部材44の他端側(基端側、上端側)はリール92A,92Bに接続される。リール92Aに固定された吊り下げ部材44は、ローラー94Aの外周面(側面)に接触した状態で下方に垂れ下がる。同様に、リール92Bに固定された吊り下げ部材44は、ローラー94Bの外周面(側面)に接触した状態で下方に垂れ下がる。
【0100】
図7は、昇降ユニット42を示す正面図である。なお、説明の便宜上、
図7では昇降ユニット42の構成要素の一部の図示を省略している。
【0101】
リール92Aに巻き付けられた吊り下げ部材44は、リール92Aの上側から繰り出されてローラー94Aに支持される。一方、リール92Bに巻き付けられた吊り下げ部材44は、リール92Bの下側から繰り出されてローラー94Bに支持される。コントローラ60でモータ80を制御することにより、リール92A,92Bの回転が制御される。これにより、吊り下げ部材44の繰り出し及び巻き取りが制御され、容器40が昇降する。
【0102】
搬送車12が搬送路10(
図1参照)上を走行して搬送先の加工装置4又は収容装置8(
図1参照)の直上に到達すると、昇降ユニット42は吊り下げ部材44を繰り出して容器40を下降させる。これにより、容器40は搬送路10の開口10a(
図1参照)を通過して、加工装置4又は収容装置8の内部の所定の場所(載置領域16、
図4参照)に載置される。
【0103】
次に、昇降ユニット42の具体的な動作を説明する。まず、コントローラ60によってモータ80のトルクを制御し、回転軸80aを回転方向A1(矢印A1で示す方向)に回転可能な状態とする。すると、容器40の自重によってリール92Aが吊り下げ部材44を繰り出す回転方向B1(矢印B1で示す方向)に回転し、リール92Aに巻きつけられている吊り下げ部材44が繰り出される。
【0104】
このとき、リール92Aと連動してバー98Aが回転し、ロッド82Aに固定された押圧部材96Aに接触する。そして、バー98Aによって押圧部材96Aが押圧され、ロッド82Aがリール92Aと連動して回転方向B1に回転する。
【0105】
同様に、容器40の自重によってリール92Bが吊り下げ部材44を繰り出す回転方向C1(矢印C1で示す方向)に回転し、リール92Bに巻きつけられた吊り下げ部材44が繰り出される。また、ロッド82Bがリール92Bと連動して回転方向C1に回転する。
【0106】
リール92A,92Bからそれぞれ吊り下げ部材44が繰り出されると、容器40が下降する。このとき、コントローラ60によってモータ80のトルクを制御することにより、容器40の下降速度を調整することができる。例えば、容器40が重く、容器40の自重による吊り下げ部材44の繰り出しが速すぎる場合には、モータ80の回転軸80aに回転方向A1とは逆方向の回転方向A2(矢印A2で示す方向)の力を付与する。
【0107】
回転軸80aの動力は、連結部材86及びプーリー84を介してロッド82Aに伝達される。これにより、ロッド82Aに回転方向B1とは逆方向の回転方向B2(矢印B2で示す方向)の力が付与される。そして、ロッド82Aに固定されている押圧部材96Aが、バー98Aを回転方向B2に向かって押圧する。その結果、バー98Aに連結されたリール92Aに回転方向B2の力が付与され、リール92Aの回転方向B1における回転が減速される。
【0108】
また、ロッド82Aの動力は、プーリー88A,88B(
図6参照)及び連結部材90を介してロッド82Bに伝達される。これにより、ロッド82Bに回転方向C
1とは逆方向の回転方向C
2(矢印C
2で示す方向)の力が付与される。そして、ロッド82Bに固定されている押圧部材96Bが、バー98Bを回転方向C
2に向かって押圧する。その結果、バー98Bに連結されたリール92Bに回転方向C
2の力が付与され、リール92Aの回転方向C
1における回転が減速される。
【0109】
図8(A)は、吊り下げ部材44を繰り出すリール92Aを示す正面図である。容器40の自重によってリール92Aが回転方向B
1に回転すると、リール92Aに固定されているバー98Aがロッド82Aの周りを回転方向B
1に回転し、押圧部材96Aに接触する。このとき、ロッド82Aに固定されている付勢部材100Aの先端部がバー98Aによって引っ張られ、付勢部材100Aがロッド82Aに巻き付くように変形して縮む。
【0110】
その結果、付勢部材100Aの復元力がバー98A及びリール92Aに作用し、リール92Aは回転方向B
1とは逆方向(回転方向B
2)に付勢される。ただし、容器40の下降中は、付勢部材100Aがリール92Aを付勢する力よりも容器40がリール92Aを引っ張る力の方が強いため、リール92Aは回転方向B
1に回転して吊り下げ部材44を繰り出す。また、付勢部材100B(
図6参照)も同様に、リール92Bを回転方向C
2(
図7参照)に付勢する。
【0111】
そして、リール92A,92Bからそれぞれ吊り下げ部材44が所定量繰り出されると、容器40が載置領域16に到達する。
図8(B)は、容器40が載置領域16に載置される際のリール92Aを示す正面図である。容器40が載置領域16に載置されると、容器40の自重がリール92Aに作用しなくなる。ただし、リール92Aの回転はすぐに停止しないため、容器40が載置領域16で支持された後も、リール92Aから吊り下げ部材44がわずかに繰り出される。その結果、過剰に繰り出された吊り下げ部材44にたるみが生じる。
【0112】
ここで、容器40が載置領域16に載置された際には、付勢部材100Aの復元力がバー98Aに作用しており、バー98Aは回転方向B2に付勢されている。そして、容器40の自重がリール92Aに作用していない状態では、付勢部材100Aの復元力によってバー98Aが回転方向B2に回転し、バー98Aに連結されたリール92Aも連動して回転方向B2に回転する。すなわち、容器40が載置領域16に載置されると、リール92Aが逆回転する。
【0113】
図9(A)は、逆回転するリール92Aを示す正面図である。付勢部材100Aによってリール92Aが回転方向B
2に回転すると、吊り下げ部材44がリール92Aに巻き取られる。その結果、吊り下げ部材44のたるみが自動的に解消される。
【0114】
図9(B)は、吊り下げ部材44のたるみが解消される際のリール92Aを示す正面図である。なお、付勢部材100Aの特性(ばね定数等)は、吊り下げ部材44の自重よりも大きく、且つ、容器40の自重よりも小さいトルクがリール92Aに付与されるように設定される。すなわち、付勢部材100Aは、容器40が載置領域16に載置された際に、吊り下げ部材44が巻き取られ、且つ、容器40が載置領域16から離れないようにリール92Aを回転させる。そのため、リール92Aの逆回転によって容器40が載置領域16から浮き上がることはない。
【0115】
また、付勢部材100B(
図6参照)の作用によって、リール92Bも同様に逆回転する。これにより、リール92Bから繰り出された吊り下げ部材44のたるみも解消される。なお、付勢部材100Bの特性は、付勢部材100Aと同様に設定される。
【0116】
そして、載置領域16に載置された容器40から被加工物11が搬出される。また、載置領域16に載置された容器40に被加工物11が搬入される。
【0117】
載置領域16に載置された容器40を上昇させる際は、モータ80(
図7参照)の回転軸80aを回転方向A
2に回転させる。すると、回転軸80aの動力がロッド82Aに伝達され、ロッド82Aが回転方向B
2に回転する。そして、ロッド82Aに設けられた押圧部材96Aがバー98Aを押圧し、リール92A及びバー98Aが回転方向B
2に回転する。これにより、リール92Aに連結されている吊り下げ部材44が巻き取られる。
【0118】
また、ロッド82Aの動力が連結部材90を介してロッド82Bに伝達され、ロッド82Bが回転方向C
2に回転する。そして、ロッド82Bに設けられた押圧部材96Bがバー98Bを押圧し、リール92B及びバー98Bが回転方向C
2に回転する。これにより、リール92Bに連結されている吊り下げ部材44が巻き取られる。リール92A,92Bがそれぞれ吊り下げ部材44が巻き取ると、容器40が載置領域16から離れて上昇し、搬送車12の格納領域38に格納される(
図3(A)参照)。
【0119】
そして、容器40が搬送車12にセットされた後、搬送車12は搬送路10(
図1参照)上を走行し、容器40に収容された被加工物ユニット17を搬送する。なお、搬送車12が容器40を格納して走行する際は、容器40の自重によってリール92A,92Bから吊り下げ部材44が繰り出されないように、モータ80の回転軸80aに回転方向A
2(
図7参照)の力が付与される。
【0120】
上記のように、容器40の昇降が昇降ユニット42によって制御される。ここで、モータ80に掛かるトルクは、容器40の収容状態によって異なる。そのため、モータ80に掛かるトルクに基づいて容器40の収容状態を判定することができる。
【0121】
図10は、コントローラ60を示すブロック図である。モータ80のトルクに基づく容器40の収容状態の判定は、コントローラ60によって自動で実施される。すなわち、コントローラ60が、容器40の収容状態を判定する判定ユニットとして機能する。なお、
図10には、コントローラ60の機能的な構成を示すブロックに加えて、容器40及び昇降ユニット42の構成要素の一部を模式的に図示している。
【0122】
コントローラ60は、容器40の収容状態の判定に必要な処理を実行する処理部110と、処理部110における処理に用いられる各種の情報(データ、プログラム等)を記憶する記憶部120とを含む。また、処理部110は、モータ80を制御するモータ制御部112と、モータ80のトルクに対応する値を検出する検出部114と、容器40の収容状態を判定する判定部116とを含む。
【0123】
モータ制御部112は、モータ80に制御信号を出力することにより、モータ80の回転軸80aの回転数及び回転速度を制御し、容器40の昇降距離及び昇降速度を調節する。具体的には、容器40を搬送先に載置する際には、モータ制御部112からモータ80に容器40の下降を指示する制御信号が出力される。これにより、容器40が搬送車12に格納された状態から所定の速度で所定の距離下降し、搬送先に到達する。一方、容器40を搬送する際には、モータ制御部112からモータ80に容器40の上昇を指示する制御信号が出力される。これにより、搬送先に載置された容器40が所定の速度で所定の距離分上昇し、搬送車12に格納される。
【0124】
検出部114は、モータ80に接続されており、モータ80から入力される信号に基づいてモータ80のトルクに対応する値(トルク対応値)を算出する。トルク対応値は、モータ80の回転軸80aに掛かるトルクの値であってもよいし、モータ80の回転軸80aに掛かるトルクに対応する他の値であってもよい。例えば、モータ80の回転軸80aに掛かるトルクが増加すると、回転軸80aの回転速度を維持するために必要なモータ80の電流値も増加する。そのため、モータ80の電流値をトルク対応値として用いることもできる。
【0125】
検出部114によって検出されたトルク対応値は、判定部116に出力される。なお、検出部114は、モータ80に内蔵又は接続された所定のセンサによって測定されたトルク対応値を判定部116に出力してもよいし、モータ80から検出部114に入力された情報(信号)に基づいてトルク対応値を算出して判定部116に出力してもよい。
【0126】
トルク対応値の具体的な測定方法は適宜選択できる。例えば、搬送車12に容器40が格納された状態で、モータ制御部112がモータ80を制御し、吊り下げ部材44を所定の速度で所定量だけ繰り出す。これにより、容器40が所定の速度で所定量下降した後に停止する。そして、容器40が停止する際におけるモータ80のトルクや電流値が、トルク対応値として検出部114によって検出される。ただし、容器40の上昇中又は下降中におけるモータ80のトルクや電流値をトルク対応値として検出してもよい。
【0127】
判定部116は、検出部114から入力されたトルク対応値に基づいて、容器40の収容状態を判定する。例えば判定部116は、トルク対応値と予め設定された所定の参照値(閾値)とを比較することにより、容器40に被加工物11が収容されているか否か、及び/又は、容器40に収容されている被加工物11の種類を判定する。
【0128】
例えば、容器40に収容される被加工物ユニット17A(
図5(B)参照)のサイズ及び重量が、被加工物ユニット17B(
図5(B)参照)よりも小さい場合を考える。この場合、容器40に被加工物ユニット17A及び被加工物ユニット17B(
図5(B)参照)が収容されていない場合にモータ80に掛かるトルクをT
0、容器40に被加工物ユニット17Aのみが収容されている場合にモータ80に掛かるトルクをT
A、容器40に被加工物ユニット17Bのみが収容されている場合にモータ80に掛かるトルクをT
B、容器40に被加工物ユニット17A及び被加工物ユニット17Bが収容されている場合にモータ80に掛かるトルクをT
ABとすると、各トルクの関係はT
0<T
A<T
B<T
ABと表される。すなわち、モータ80に掛かるトルクは、容器40の収容状態に応じて異なる値をとる。
【0129】
そこで、例えばトルクの参照値として、Tref1(T0<Tref1<TA)、Tref2(TA<Tref2<TB)、Tref3(TB<Tref3<TAB)が設定され、予め記憶部120に記憶される。そして、判定部116は、検出部114によって検出されたモータ80のトルクTと、基準値Tref1、Tref2、Tref3とをそれぞれ比較する。
【0130】
モータ80のトルクTがTref1よりも小さい場合には、判定部116は容器40に被加工物ユニット17が収容されていないと判定する。一方、モータ80のトルクTがTref1よりも大きい場合には、判定部116は容器40に被加工物ユニット17が収容されていると判定する。これにより、容器40に被加工物ユニット17(被加工物11)が収容されているか否かが判定される。
【0131】
また、容器40に被加工物ユニット17が収容されている場合には、被加工物ユニット17(被加工物11)の種類及び数も判定される。具体的には、モータ80のトルクTがTref1よりも大きくTref2よりも小さい場合には、判定部116は容器40に被加工物ユニット17Aのみが収容されていると判定する。また、モータ80のトルクTがTref2よりも大きくTref3よりも小さい場合には、判定部116は容器40に被加工物ユニット17Bのみが収容されていると判定する。さらに、モータ80のトルクTがTref3よりも大きい場合には、判定部116は容器40に被加工物ユニット17A及び被加工物ユニット17Bが収容されていると判定する。
【0132】
判定部116による判定の結果、想定されている容器40の収容状態と実際の容器40の収容状態とが異なる場合、コントローラ60は送信機64(
図3(A)参照)を介してコントローラ14(
図2参照)へエラーを送信する。これにより、搬送車12における容器40の収容状態の異常がコントローラ14に通知される。
【0133】
容器40の収容状態の判定は、予め設定された所定のタイミングで自動的に実施してもよいし、コントローラ14(
図2参照)から搬送車12へ検査を指示する指令が送信されたタイミングで随時実施してもよい。例えば、搬送車12に容器40が格納される直前又は直後、搬送車12による容器40の搬送中、載置領域16(
図4参照)に容器40が載置される直前又は直後に、容器40の収容状態が検査される。
【0134】
また、搬送システム2(
図1及び
図2参照)で異常が発生して搬送車12が緊急停車した場合には、異常の解消後、搬送車12による被加工物11の搬送を再開する前に容器40の収容状態が判定されてもよい。これにより、搬送車12の停車中に被加工物11の出し入れが行われた場合にも、搬送の再開前に搬送車12に適切な被加工物11が収容されているか否かを確認することができ、誤搬送が防止される。
【0135】
以上の通り、本実施形態に係る搬送車12は、搬送車12に搭載された容器40に被加工物11が収容されているか否かを自発的に判定する機能を備える。これにより、容器40の収容状態が不適切な状態のまま被加工物11の搬送が続行されることを回避でき、被加工物11の搬送効率の低下が防止される。
【0136】
なお、本実施形態では、容器40の収容状態を判定する際に被加工物11の有無がセンサ66によって検出される例について説明した(
図5(B)参照)。ただし、容器40の収容状態を検査する際には、被加工物11の検出に加えて、被加工物11の個体情報の読み取りが行われてもよい。
【0137】
図11(A)は、被加工物11に個体識別タグ19が付された被加工物ユニット17を示す斜視図である。被加工物11には、被加工物11の個体情報(識別情報)を示す個体識別タグ19が付されていてもよい。
【0138】
被加工物11の個体情報は、被加工物11を特定するための情報であり、被加工物11に関する各種の情報(被加工物11の形状、材質、寸法、構造、製造者、製造年月日、加工履歴等)を含む。そして、被加工物11の個体情報を含む個体識別タグ19が、例えば被加工物11の外周部に付される。
【0139】
個体識別タグ19の種類は、被加工物11の個体情報を記録することが可能であれば制限はない。例えば、数字、アルファベット、記号等の羅列によって構成される文字列(個体ID)、バーコード、二次元コード等の個体識別マークが、個体識別タグ19として被加工物11に付される。この場合には、個体識別マークを被加工物11に直接印字してもよいし、個体識別マークが付されたシール等のタグを被加工物11に貼付してもよい。また、個体識別タグ19は、被加工物11の個体情報が記録されたICタグ、RFID(Radio Frequency Identification)タグ等であってもよい。
【0140】
そして、判定ユニット68(
図5(B)参照)は、個体識別タグ19から被加工物11の個体情報を読み取る読み取り器(読み取りユニット)を備える。例えば、センサ66が、被加工物11を検出する機能に加えて、被加工物11の個体情報を読み取る機能も備える。この場合、センサ66が読み取り器としても機能する。ただし、搬送車12には、被加工物11の個体情報を読み取る専用の読み取り器がセンサ66とは別途独立して搭載されてもよい。
【0141】
読み取り器の種類は、個体識別タグ19の種類に応じて適宜選択される。例えば、個体識別タグ19が文字列、バーコード、二次元コード等である場合には、読み取り器として、OCR(Optical Character Recognition Reader)、バーコードリーダー、二次元コードリーダー等が用いられる。また、個体識別タグ19がICタグやRFIDタグである場合には、読み取り器としてICリーダーやRFIDリーダーが用いられる。
【0142】
容器40の収容状態を判定する際には、センサ66が被加工物11を検出するとともに、読み取り器が個体識別タグ19から被加工物11の個体情報を読み取る。そして、コントローラ60は、読み取られた個体情報を記憶部120(
図10参照)に記憶し、必要に応じて個体情報の照合を行う。これにより、容器40に所望の被加工物11が収容されているか否かを確認することができる。
【0143】
なお、個体情報の読み取りを行うタイミングは自由に設定でき、センサ66によって被加工物11を検出するタイミングとは必ずしも一致していなくてもよい。例えば、被加工物11が容器40に収容された直後に、個体情報の読み取りのみが実施されてもよい。
【0144】
ただし、被加工物11には個体識別タグ19を付すための余剰スペースが存在しないことがある。また、被加工物11の個体識別タグ19が付された領域に加工(切削加工、レーザー加工等)が施され、個体識別タグ19から個体情報を読み取ることが困難になる場合もある。そのため、個体識別タグ19はフレーム13又はシート15に付されてもよい。
【0145】
図11(B)はフレーム13に個体識別タグ19が付された被加工物ユニット17を示す斜視図であり、
図11(C)はシート15に個体識別タグ19が付された被加工物ユニット17を示す斜視図である。被加工物11に個体識別タグ19を付すことに支障がある場合にも、個体識別タグ19をフレーム13又はシート15に付すことにより、被加工物11の個体情報を読み取ることが可能になる。なお、個体識別タグ19は、被加工物11及びフレーム13に付されてもよいし、被加工物11及びシート15に付されてもよい。さらに、個体識別タグ19は、被加工物11、フレーム13及びシート15にそれぞれ付されてもよい。
【0146】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0147】
11 被加工物
13 フレーム
15 シート
17,17A,17B 被加工物ユニット(フレームユニット)
19 個体識別タグ
2 搬送システム
4 加工装置
6 配管
8 収容装置(ローダー・アンローダー)
10 搬送路
10a 開口
12 搬送車(搬送装置)
14 コントローラ(制御ユニット、制御部、制御装置)
16 載置領域(搬送先)
20 本体フレーム
22 車軸
24 車輪(前輪)
26 車輪(後輪)
28 駆動ユニット
30 モータ
30a 回転軸(出力シャフト)
32 プーリー
34 バッテリー(二次電池)
36 端子
38 格納領域
40 容器(カセット)
40a 収容部(収容空間)
40b 開口
40c 上壁
40d 底壁
42 昇降ユニット(昇降機構)
44 吊り下げ部材
46 駆動機構
48 接触部材(接触ピン)
50 カバー
52 第1センサ
54 第2センサ
56 第3センサ
58 支持台
60 コントローラ(制御ユニット、制御部、制御装置)
62 受信機
64 送信機
66A,66B センサ(検出器)
68 判定ユニット
70 第1ガイドレール
70a 側壁
70b 突出部
70c 保持面
72 第2ガイドレール
72a 保持面
80 モータ
80a 回転軸(出力シャフト)
82A,82B ロッド(回転軸)
84 プーリー
86 連結部材
88A,88B プーリー
90 連結部材
92A,92B リール
94A,94B ローラー
96A,96B 押圧部材(突起、凸部)
98A,98B バー(シャフト)
100A,100B 付勢部材
110 処理部
112 モータ制御部
114 検出部
116 判定部
120 記憶部