(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009182
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】複合固体電解質およびそれを用いる電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/056 20100101AFI20250110BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20250110BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20250110BHJP
H01B 1/10 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
H01M10/056
H01M10/054
H01B1/06 A
H01B1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112002
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100170748
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126859
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 裕士
(72)【発明者】
【氏名】馬 廷麗
【テーマコード(参考)】
5G301
5H029
【Fターム(参考)】
5G301CA05
5G301CA17
5G301CA19
5G301CD01
5H029AJ02
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL11
5H029AM12
5H029AM16
5H029HJ02
(57)【要約】
【課題】イオン電導率に優れる硫化物系固体電解質と、安定性の高いポリマー系固体電解質の両方の長所を有する固体電解質を提供する。
【解決手段】本発明の複合固体電解質は、ナトリウムイオンを含むイオン電導性を有する無機硫化物材料と、導電性ポリマーとを含む。特定の無機硫化物材料と、導電性ポリマーとが三次元構造体を形成した複合固体電解質である。この結果、得られる複合固体電解質は、無機硫化物材料の表面を導電性ポリマーでコーティングされ、保護された形態である。この結果、本発明の複合固体電解質は、無機硫化物材料と、導電性ポリマーとの相乗効果により、低い界面抵抗、高い導電性および優れた安定性を有する。
【選択図】
図1(b)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウムイオンを含むイオン電導性を有する無機硫化物材料と、導電性ポリマーとを含む複合固体電解質。
【請求項2】
前記ナトリウムイオンを含むイオン電導性を有する無機硫化物材料は、Na-P-S元素を含む、請求項1に記載の複合固体電解質。
【請求項3】
前記ナトリウムイオンを含むイオン電導性を有する無機硫化物材料は、下記式(I)で表される化合物である、請求項1に記載の複合固体電解質。
NaM1M2PS・・・・・(I)
【請求項4】
前記式(I)で表される化合物は、下記式(I´)で表される化合物である、請求項3に記載の複合固体電解質。
NaxM1pM2qPSy・・・・・(I´)
(3≦x≦17、2≦y≦14、0.01≦p≦10、0.001≦q≦10)
【請求項5】
前記導電性ポリマーは、ポリエチレンオキシドを主骨格とするポリマーまたはポリフッ化ビニリデン樹脂である、請求項1に記載の複合固体電解質。
【請求項6】
前記複合固体電解質は、前記無機硫化物材料と、前記導電性ポリマーとの三次元構造体である、請求項1に記載の複合固体電解質。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の複合固体電解質を有する、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な複合固体電解質およびそれを用いる電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、エネルギー密度および出力密度等に優れ、小型、軽量化に有効であるため、ノート型パソコン、タブレット型端末、携帯電話およびハンディビデオカメラ等の携帯機器の電源としてその需要は急激な伸びを示している。二次電池はまた、電気自動車や電力のロードレベリング等の電源としても注目されている。
【0003】
二次電池として、現在リチウムイオン電池が主流である。しかし、リチウムはレアメタルであり二次電池の大容量化に適さないという問題がある。このため、ナトリウムイオン電池が注目されている。ナトリウムは、海水中や、地殻の2-3%に含まれる豊富な資源であり、原料として安価に入手できるという利点がある。また、ナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池より蓄電容量が大きいという利点、またリチウムイオン電池より充電速度がかなり速く、使用温度範囲が広いなどの利点がある。このため、今後の二次電池の候補としてナトリウムイオン電池が注目されている。一方、現在提案されているナトリウムイオン電池は有機溶剤を含む液体電解質が使用されている。液体電解質中のナトリウムイオンは低抵抗で自由に移動でき、電極と電解液の界面接触が容易に得られる。一方で液体電解質は発火等の危険性がある。
【0004】
近年、電解液に代えて固体電解質を用いた電池の開発が進められている。固体電池に使用される固体電解質としては、硫化物系または酸化物系などの無機系固体電解質や、ポリマー系固体電解質などが知られており、これらを利用した固体電池の検討がなされている。ここで、固体電界質を用いる固体電池には、電極と固体電解質を密着できないという問題や、固体電解質の耐水性が低いという問題がある。密着性が低いと、電池を充放電させたときに正極および負極が収縮、膨張し、徐々に電解質との間に隙間ができてしまう。
【0005】
これら固体電解質のうち、硫化物系を主原料として用いる電解質は、酸化物系を主原料として用いる電解質に比べて高いイオン電導性を有する。一方で固体硫化物は、酸化分解や水との反応により有毒な硫化水素ガスが発生し、電池の劣化が起こるという問題がある。
【0006】
これに対しポリマー系固体電解質は、熱安定性および化学安定性に優れる。しかしこのポリマー系固体電解質は、イオン電導率および安定性が低いという問題がある。
【0007】
そこで、硫化物系固体電解質を改良することが試みられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の例では、イオン電導率に優れる電池を実現することができる電解質組成物を提供することを目的に、硫化物系の固体電解質と、ガラス転移温度または融点が特定温度以下のポリマーを用いる電解質組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載の電解質組成物では、上述した硫化物系を主原料として用いる電解質とポリマー系固体電解質が有する課題を解決することはできない。
【0010】
そこで本発明は、イオン電導率に優れる硫化物系固体電解質と、安定性の高いポリマー系固体電解質の両方の長所を有する固体電解質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、特定の無機硫化物材料と導電性ポリマーとを含む複合固体電解質を用いることにより、上記の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は以下のとおりである。
【0012】
本発明の複合固体電解質は、ナトリウムイオンを含むイオン電導性を有する無機硫化物材料と導電性ポリマーとを含む。
【0013】
本発明の複合固体電解質は、特定の無機硫化物材料と、導電性ポリマーとの複合体である。本発明の複合固体電解質は、三次元(3D)ネットワーク構造を有する。得られる複合固体電解質は、無機硫化物材料の表面を導電性ポリマーでコーティングされ、保護された形態である。この結果、本発明の複合固体電解質は、無機硫化物材料と導電性ポリマーとの相乗効果により、低い界面抵抗、高い導電性および優れた安定性を有する。
【0014】
本発明の複合固体電解質において、前記ナトリウムイオンを含むイオン電導性を有する無機硫化物材料は、Na-P-S元素を含むものであってもよい。
【0015】
本発明の複合固体電解質において、前記ナトリウムイオンを含むイオン電導性を有する無機硫化物材料は、下記式(I)で表される化合物である複合固体電解質であってもよい。
【0016】
NaM1M2PS・・・・・(I)
式中、M1およびM2はIII-VIの遷移金属および13-15族の金属である。また式(I)で表される化合物は、2-3種類の金属を含む。この結果、イオン電導率の高い複合固体電解質を得ることができる。
【0017】
本発明の複合固体電解質において、前記式(I)で表される化合物は、下記式(I´)で表される化合物であってもよい。
【0018】
NaxM1pM2qPSy・・・・・(I´)
式(I´)中、xおよびyは、それぞれ、3≦x≦17、2≦y≦14を満たす数である。また、pおよびqは、それぞれ、0.01≦p≦10、0.001≦q≦10を満たす数である。
【0019】
本発明の複合固体電解質において、導電性ポリマーは、ポリエチレンオキシドを主骨格とするポリマーまたはポリフッ化ビニリデン樹脂であってもよい。
【0020】
本発明の複合固体電解質は、無機硫化物材料と導電性ポリマーとの三次元構造体であってもよい。
【0021】
本発明の電池は、上記いずれかの複合固体電解質を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の複合固体電解質は、ナトリウムイオンを含むイオン電導性を有する無機硫化物材料と導電性ポリマーとを含む。また、特定の無機硫化物材料と導電性ポリマーとが三次元構造体を形成した複合固体電解質である。この結果、得られる複合固体電解質は、無機硫化物材料の表面を導電性ポリマーでコーティングされ、保護された形態である。この結果、本発明の複合固体電解質は、無機硫化物材料と、導電性ポリマーとの相乗効果により、低い界面抵抗、高い導電性および優れた安定性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1(a)】従来の無機固体電解質と電極との関係を示す図である
【
図1(b)】本発明の複合固体電解質と電極との関係を示す図である
【
図3】固体電池の容量とサイクリング安定性の測定結果を表す図である
【発明を実施するための形態】
【0024】
(複合固体電解質)
本発明の複合固体電解質は、ナトリウムイオンを含むイオン電導性を有する無機硫化物材料と、導電性ポリマーとの三次元構造体である。
図1は、従来の無機固体電解質と、本発明の複合固体電解質とを説明する図である。
図1(a)は、従来の無機固体電解質粒子11~13と電極14との関係を示す図である。
図1(a)からわかるように、従来の無機固体電解質は、無機固体中でNaイオン10を運搬する。このため、無機固体電解質粒子11~13間で接触抵抗を生じ、電極14と該電極に接触する無機固体電解質粒子13の間で界面抵抗を生ずる。このため、Naイオン10の移動が制限される、力学的な強度も劣るという問題がある。
【0025】
図1(b)は、本発明の複合固体電解質と電極との関係を示す図である。
図1(b)からわかるように、本発明の複合固体電解質では、無機硫化物21~23の表面が、導電性ポリマー24でコーティングされて保護されている。このため、無機硫化物21~23の分解反応を抑制できる。また、電極25の活物質と固体電解質である無機硫化物23との間に、良好な密着界面を構築することができる。この結果、電極と電解質との間の界面抵抗が低減され、Naイオン20が良好に移動可能となる。すなわち、高性能かつ安定性に優れたナトリウムイオン電池を得ることができる。
【0026】
(ナトリウムイオンを含むイオン電導性を有する無機硫化物材料)
本発明に用いられるナトリウムイオンを含むイオン電導性を有する無機硫化物材料は、Na、P、およびS元素を含む組成(Na-P-S元素を含む硫化物)である。
【0027】
ナトリウムイオンを含むイオン電導性を有する無機硫化物材料は、下記式(I)で表される化合物である。
NaM1M2PS・・・・・(I)
式中、M1およびM2は、異なる元素であり、III-VIの遷移金属および13-15族の金属である。M1としては、具体的には、例えばSb、Bi、La、Sr、Zrなどが挙げられる。M2としては、具体的には、例えば、Sn、Ge、Al、Tiなどが挙げられる。
【0028】
式(I)で表される化合物は、式(I´)で表される化合物であると好ましい。
NaxM1pM2qPSy・・・・・(I´)
式(I´)中、xおよびyは、それぞれ、3≦x≦17、2≦y≦14を満たす数である。また、pおよびqは、それぞれ、0.01≦p≦10、0.001≦q≦10を満たす数である。
【0029】
ナトリウムイオンを含むイオン電導性を有する無機硫化物材料は、複数の元素や分子にメカニカルミリングを行い、上記式(I)、式(I´)に該当する硫化物系ガラスとして得ることができる。
【0030】
Na、P、およびS元素を含む硫化物以外にナトリウム塩や導電性を向上する金属酸化物を含んでいてもよい。導電性を向上する金属酸化物としては、例えばTiO2、SnO2、Al2O3、NiO2、W2O3などが挙げられる。
【0031】
(導電性ポリマー)
導電性ポリマーは、電気伝導性の高い高分子化合物のことをいう。本発明の導電性ポリマーは、ポリエチレンオキシドを主骨格とするポリマーまたはポリフッ化ビニリデン樹脂などの公知の導電性ポリマーを用いることが好ましい。
【0032】
ポリエチレンオキシドを主骨格とするポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、アクリル/メタクリル樹脂(PMMA)、ポリプロピレンカルボナート(PPC)などが挙げられる。ポリフッ化ビニリデン樹脂としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが挙げられる。
【0033】
また、PVDFは、分子鎖中に-CH2-CF2-CH2-CF2-で示される正常結合の他に、-CH2-CF2-CF2-CH2-および-CF2-CH2-CH2-CF2-で示される異種結合を含んでいてもよい。また、これらの樹脂の共重合体であってもよい。
【0034】
上記した導電性ポリマー以外に、例えば、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル(PAN)なども使用することができる。
【0035】
本発明の複合型固形電解質は、三次元網目構造を有する硫化物と導電性ポリマーの複合型固体電解質と定義される。本発明の複合型固形電解質は、三次元網目構造の形成の仕方によって,化学結合による架橋点によってゲル構造を形成する化学架橋ゲル(例えばポリエチレンオキシド(PEO)など)と、微結晶等を架橋点としてゲル構造を形成する物理架橋ゲル(例えば、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)など)に分類される。化学架橋ゲルまたは物理架橋ゲルのいずれであってもよい。
【0036】
本発明の複合型固形電解質において、無機硫化物材料と導電性ポリマーとの配合比は任意で良い。導電性ポリマーを少量添加しても三次元網目構造を形成することができる。
【0037】
(複合固体電解質の製造方法)
本発明の、複合固体電解質は、例えば以下のようにして製造される。
【0038】
本発明の硫化物系固体電解質の製造方法は、少なくとも硫黄(S)を含有する原料組成物を調製する原料組成物調製工程と、上記原料組成物、メカニカルミリングを行い、硫化物系ガラスを合成するガラス化工程を特徴とする。
【0039】
本発明の硫化物系固体電解質の製造方法においては、まず、原料として例えば硫化リンナトリウム(Na2S)と五硫化リン(P2S5)と硫化錫(SnS2)と硫化アンチモン(SbS2)などの硫化金属を用意する。硫化金属は、2種または3種であるとよい。硫化金属を所定の割合で混合して、原料組成物を調製する。混合割合は、使用する原料により適宜調整すればよく、例えば60:20:10:10である。
【0040】
次に、原料組成物および粉砕用ボールを、メカニカルミリング用のポットに投入し、ポットを密閉する。次に、このポットを、遊星型ボールミル機に取り付けて、室温にて低速回転(例えば、回転速度:100ppm)で、数分間ミリングを行い、原料組成物を十分混合させる。次に、徐々に回転数を増大させ(例えば、600rpm)、この回転速度で15時間ミリングを行うことにより、原料組成物を非晶質化し、粉末状の硫化物系ガラスを合成する。
【0041】
次にアルコン雰囲気下で、粉末状の硫化物系ガラスを約300℃で焼成し、粉末状の硫化物系ガラスセラミックス(Na11Sn2-zSbxPS12)を合成する。得られた粉末状の硫化物系ガラスセラミックスに導電性ポリマーを添加して複合させ、目的とする硫化物とポリマーの複合型固体電解質を得る。添加するのは導電性ポリマーだけではなく、金属酸化物や金属リン化物や金属フッ化物を添加してもよい。
【0042】
原料組成物における化合物の含有量は、特に限定されるものではなく、目的とする硫化物系固体電解質の組成に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、原料組成物がNa2SとP2S5およびSnS2とSb2S3を含有する場合、本発明においては、Na2SとP2S5およびSnS2とSb2S3が、モル比で60:20:10:10の関係を満たすことが好ましい。この結果、Naイオン伝導性に優れた硫化物系固体電解質を得ることができる。
【0043】
本発明の複合固体電解質は、メカニカルミリング法を用いることで、量産することができる。また、硫化物系ガラスセラミックスに粉末状の硫化物系ガラスセラミックスに導電性ポリマーを添加し、複合させることにより、三次元ネットワーク構造の高いイオン導電性を有する固体電解質を得ることができる。
【0044】
(電池)
本発明の複合固体電解質は、ナトリウム全固体電池に使用することができる。ナトリウム全固体電池は、正極電極、正極活物質、複合固体電解質、負極活物質、負極を少なくとも備えている。
【0045】
正極活物質、負極活物質としては、ナトリウム固体電池に用いられる公知の物質を使用することができる。
【0046】
正極活物質としては、例えば、p2類Na2/3MeO2(Meは遷移金属酸化物)、O3類NaMeO2(Me遷移金属酸化物)などを使用することができ、具体的には、Na2FeS2、NaCrO2、Na2FePO4F、NaFeO2-NaNi0.5Mn0.5O2、NaFeO2、Na1+xZr2(SiO4)x(PO4)3-x (xは1.8<x<2.2を満たす数)などが挙げられる。
【0047】
負極活物質としては、例えばハードカーボン(Hard carbon)、Sn、Sb、Sb2O3、Pb、P、Na2Ti3O7、TiO2などが挙げられる。
【実施例0048】
以下に本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0049】
(実施例1)
出発原料として、硫化ナトリウム結晶(Na2S)と五硫化リン(P2S5)およびSnS2とSb2S3(それぞれ、富士フィルム和光純薬株式会社製)を用いた。これらの粉末をアルゴン雰囲気下のドライボックス内でモル比60:20:10:10の割合で2g秤量し、60mlのジルコニア製のポット(型番4-3925-0、株式会社アズワン社製)に投入した。次に、脱水ヘプタン8gを秤量し、上記のポットに投入し、さらに、ジルコニア製の粉砕用ボール(型番5-4060-34、株式会社アズワン社製)(φ10mm、20g)を上記のポットに投入し、ポットを完全に密閉した。
【0050】
このポットを遊星型ボールミル機に取り付け、初期は原料組成物を充分混合する目的で数分間、低速回転(回転速度:100ppm)でミリングを行った。その後、徐々に回転数を増大させていき、600rpmで15時間メカニカルミリングを行い、Ar雰囲気下、300℃、2時間の条件で加熱してNa10SnSbPS12の粉末を得た。その後、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などを共重合させたポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)PVDF-HFP(メルク社製)とNaPF6と含む液体前駆体10mlを、得られた粉末に添加し、乾燥させて、複合型電解質を得た。
【0051】
比較例として、上記得られたNa10SnSbPS12の粉末から、無機硫化物型固体電解質を作製し、PVDF-HFPとNaPF6からポリマー型固体電解質を作成した。
【0052】
[評価1]電気伝導性
実施例1で得られた複合型電解質を、6t/cm2にて加圧しペレット状に成形した。次に、交流二端子法により、得られたペレットの電気伝導度(Naイオン伝導度)を測定した。その結果、実施例1で得られた粉末ガラスを用いたペレットの電気伝導度(室温(25℃))は、2.6×10-3S/cmであり、40℃では、1.0×10-2S/cmであり、60℃では、2.5×10-2S/cmであった。
【0053】
比較例として、硫化物型固体電解質を用いたペレットの電気伝導度(室温(25℃))は、1.2×10-3S/cmであり、40℃では、4.5×10-3S/cmであり、60℃では、9.3×10-3S/cmであった。また、ポリマー型固体電解質を用いたペレットの電気伝導度(室温(25℃))は、2.8×10-4S/cmであり、40℃では、3.2×10-3S/cm、60℃では、2.2×10-4S/cmであった。
【0054】
上記結果を、以下の表1にまとめる。
【0055】
【0056】
以上から、実施例1の複合型電解質は、従来の硫化物型電解質やポリマー型電解質に比べ、いずれの測定温度においても、電気伝導度が高いことがわかった。
【0057】
[評価2]内部界面抵抗
実施例1で得られた複合型電解質、硫化物型固体電解質、ポリマー型固体電解質を用いて全固体電池を作製した。まず、実施例1で得られた複合型電解質、硫化物型固体電解質、ポリマー型固体電解質を用い電極としてNa箔を用いた。正極合剤(Na
2FePO
4F、NATRIUM社製)、固体電解質およびNa箔を、ペレット成形金型を用いて順にペレット成形することにより直径9mm、厚さ1.2mmの3層のペレットを形成した。そして形成したペレット状の全固体電池を直径12mm、厚さ1.6mm、のステンレス鋼製の電池ケース内に収納した。そして電池ケースにガスケットを介して電池蓋を挿入し、電池ケース開口部をプレス封口することによりコイン形電池を作製した。作製した電池を150μAの電流値で3.7Vまで充電し、ポテンショスタット(HA-151B、北斗電工株式会社製)を用いて、充電後のコイン形電池の内部インピーダンスを交流インピーダンス法により調べた。結果を
図2に示す。
【0058】
図2から、実施例1の複合型電解質を用いると、硫化物型電解質、ポリマー型電解質を単独で用いた場合より内部界面抵抗が極めて低いことがわかった。また、実施例1の複合型電解質は、硫化物型電解質、ポリマー型電解質を組み合わせた以上に内部界面抵抗が低かった。これは、実施例1の複合型電解質が三次元構造体を形成しているためと考えられる。
【0059】
[評価3]固体電池の容量とサイクリング安定性
全固体電池を以下のように作成した。実施例1で得られた複合型電解質、硫化物型固体電解質、ポリマー型固体電解質を用いた。正極合剤、固体電解質、ハードカーボン負極を用いて、評価2の場合と同様にコイン形電池を作製した。作製した電池の容量とサイクリング安定性を、充放電システム電池充放電装置(HJ1001SD8C、北斗電工株式会社製)を用いて測定した。電池の容量とサイクリング安定性を
図3に示す。電池の容量は複合型電解質を用いた電池が一番高かった。また、200サイクリング後の安定性は、硫化物型電解質、ポリマー型電解質と比べ実施例1の複合型電解質の電池は優れた安定性を有することを確認できた。
【0060】
以上から、本発明の複合型電解質は、無機硫化物材料と導電性ポリマーとの相乗効果により、低い界面抵抗、高い導電性および優れた安定性を有することがわかった。