(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009226
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】白いドーナツ及び製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 10/00 20060101AFI20250110BHJP
A21D 13/60 20170101ALI20250110BHJP
A21D 2/36 20060101ALI20250110BHJP
A21D 13/066 20170101ALI20250110BHJP
A21D 13/04 20170101ALI20250110BHJP
A21D 13/064 20170101ALI20250110BHJP
【FI】
A21D10/00
A21D13/60
A21D2/36
A21D13/066
A21D13/04
A21D13/064
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112085
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【弁理士】
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】大柳 杏里
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB24
4B032DE10
4B032DG02
4B032DK03
4B032DK12
4B032DK15
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4B032DL01
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4B032DP10
4B032DP12
4B032DP13
4B032DP25
4B032DP47
(57)【要約】
【課題】本発明は、生地の作業性が良好であり、白くて外観が良好な小麦アレルギーフリーないしは小麦低アレルゲンドーナツを製造するために用いるドーナツ用澱粉性原料組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】澱粉性原料として馬鈴薯澱粉、エーテル化澱粉、α化澱粉及び任意に穀粉を特定の配合割合で使用することにより上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
馬鈴薯澱粉(ただし、エーテル化馬鈴薯澱粉及びα化馬鈴薯澱粉を除く)、エーテル化澱粉、及び任意に穀粉からなる主原料と、
α化澱粉(ただし、エーテル化α化澱粉を除く)と
からなり、下記条件1~3を満たす、ドーナツ用澱粉性原料組成物。
条件1:馬鈴薯澱粉の量が、主原料の合計質量に対して8~55質量%
条件2:穀粉の量が、主原料の合計質量に対して0~17質量%
条件3:α化澱粉の量が、主原料100質量部に対して2~27質量部
【請求項2】
馬鈴薯澱粉が、未変性馬鈴薯澱粉、アセチル化馬鈴薯澱粉、リン酸架橋馬鈴薯澱粉、酸処理馬鈴薯澱粉及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のドーナツ用澱粉性原料組成物。
【請求項3】
穀粉が小麦粉を含む、請求項1に記載のドーナツ用澱粉性原料組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のドーナツ用澱粉性原料組成物と、糖類と、油脂とを含み、下記条件4および5を満たす、ドーナツ用ミックス粉。
条件4:糖類の量が、ドーナツ用澱粉性原料組成物100質量部に対して5.5~47質量部
条件5:油脂の量が、ドーナツ用澱粉性原料組成物100質量部に対して5.5~32質量部
【請求項5】
糖類がショ糖を含む、請求項4に記載のドーナツ用ミックス粉。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のドーナツ用ミックス粉と水性液体原料とを含む、ドーナツ用生地。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載のドーナツ用澱粉性原料組成物、または請求項4もしくは請求項5に記載のドーナツ用ミックス粉を使用する、ドーナツの製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載のドーナツ用生地を加熱する工程を含む、ドーナツの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白いドーナツ及びその製造方法、ドーナツの製造に用いるためのドーナツ用澱粉性原料に関する。
【背景技術】
【0002】
ドーナツは、ふんわりとしたソフトな食感で、口どけの良いベーカリー食品であり、多様なデコレーションを施されたベーカリー食品の一つとして市場に広く流通している。小麦粉や卵等の蛋白質性原料は、ドーナツの製造に用いられる主要な原料であり、ドーナツ生地の作業性や製品の外観に重要な役割を果たしている。しかしながら、このような小麦粉や卵等の蛋白質性原料は、アレルゲン性を示す物質として広く知られているものであり、アレルギー患者にとっては摂食を避けざるをえない現状にある。
【0003】
このような問題に対して、特許文献1には、澱粉損傷度が10%以上である米粉を含有することを特徴とする洋菓子用米粉組成物が開示されており、また、特許文献2には、0.05N酢酸水溶液に可溶性の蛋白質の含有量が熱処理米粉1g当たり5~35mgである熱処理米粉を含有することを特徴とする菓子類または粉物類の製造用の熱処理米粉組成物が開示されており、小麦アレルギーの人でも安心して食することのできる、外観および食感に優れるドーナツを含む洋菓子類を製造することができることが記載されている。しかしながら、米粉を使用したドーナツはボリュームが不足し、外観が良くないという問題があった。
【0004】
一方で、ドーナツを製造するにはフライする工程が欠かせないが、このフライ工程ではドーナツ生地が高温のフライ油に曝され、小麦粉や卵等の蛋白質性原料が褐変して揚げ色がつきやすく、外観がきつね色からこげ茶色のドーナツになりがちである。米粉を使用したドーナツの場合にも同様に揚げ色がつきやすい。このような揚げ色がつくと、食用色素による発色がくすみがちになるのが現状である。カラフルなドーナツを得るためには、チョコレート等の油脂ベースの食材を被覆材やトッピング材として用いることが一般的である。ドーナツ生地に食用色素を適用して発色のよいカラフルなドーナツを得るためには、クッキングシートに生地を乗せたまま揚げ時間を調節しながら低めの油温で揚げる等の手間を加える必要があることが知られている。
【0005】
特許文献3には、加工澱粉および/または馬鈴薯澱粉を50~99重量%、油脂類を1~10重量%配合した原料に水を加えて混合し液状生地を作製後、焼成することを特徴とする鯛焼き類菓子の製造方法が開示されており、生地を焼成することのみにより、もちもちした食感を有し、同時に、焼き色が付き難く白い色を有する鯛焼き類菓子を製造できることが記載されているが、ドーナツについては何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-233143号公報
【特許文献2】特開2014-18136号公報
【特許文献3】特開2004-321182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、生地の作業性が良好であり、白くて外観が良好な小麦アレルギーフリーないしは小麦低アレルゲンドーナツを製造するために用いるドーナツ用澱粉性原料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、澱粉性原料として馬鈴薯澱粉、エーテル化澱粉、α化澱粉及び任意に穀粉を特定の配合割合で使用することで、生地の作業性が良好で、白くて外観が良いドーナツを製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
〔1〕馬鈴薯澱粉(ただし、エーテル化馬鈴薯澱粉及びα化馬鈴薯澱粉を除く)、エーテル化澱粉、及び任意に穀粉からなる主原料と、
α化澱粉(ただし、エーテル化α化澱粉を除く)と
からなり、下記条件1~3を満たす、ドーナツ用澱粉性原料組成物。
条件1:馬鈴薯澱粉の量が、主原料の合計質量に対して8~55質量%
条件2:穀粉の量が、主原料の合計質量に対して0~17質量%
条件3:α化澱粉の量が、主原料100質量部に対して2~27質量部
〔2〕馬鈴薯澱粉が、未変性馬鈴薯澱粉、アセチル化馬鈴薯澱粉、リン酸架橋馬鈴薯澱粉、酸処理馬鈴薯澱粉及びこれらの組合せからなる群から選択される、〔1〕に記載のドーナツ用澱粉性原料組成物。
〔3〕穀粉が小麦粉を含む、〔1〕または〔2〕に記載のドーナツ用澱粉性原料組成物。
〔4〕〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のドーナツ用澱粉性原料組成物と、糖類と、油脂とを含み、下記条件4および5を満たす、ドーナツ用ミックス粉。
条件4:糖類の量が、ドーナツ用澱粉性原料組成物100質量部に対して5.5~47質量部
条件5:油脂の量が、ドーナツ用澱粉性原料組成物100質量部に対して5.5~32質量部
〔5〕糖類がショ糖を含む、〔4〕に記載のドーナツ用ミックス粉。
〔6〕〔4〕または〔5〕に記載のドーナツ用ミックス粉と水性液体原料とを含む、ドーナツ用生地。
〔7〕〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のドーナツ用澱粉性原料組成物、または〔4〕もしくは〔5〕に記載のドーナツ用ミックス粉を使用する、ドーナツの製造方法。
〔8〕〔6〕に記載のドーナツ用生地を加熱する工程を含む、ドーナツの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小麦粉や卵原料等のアレルゲン性原料を用いなくとも、生地の作業性が良好で、外観が良いドーナツを製造することができる。更には、揚げ色がつき難く、食用着色料を使用しない場合には白い、食用着色料を使用する場合にはカラフルなドーナツを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、馬鈴薯澱粉(ただし、エーテル化馬鈴薯澱粉及びα化馬鈴薯澱粉を除く)、エーテル化澱粉、及び任意に穀粉からなる主原料と、α化澱粉(ただし、エーテル化α化澱粉を除く)とからなり、下記条件1~3を満たす、ドーナツ用澱粉性原料組成物に関する。
条件1:馬鈴薯澱粉の量が、主原料の合計質量に対して8~55質量%
条件2:穀粉の量が、主原料の合計質量に対して0~17質量%
条件3:α化澱粉の量が、主原料100質量部に対して2~27質量部
【0012】
(1)ドーナツ用澱粉性原料組成物
(1-1)主原料
本発明のドーナツ用澱粉性原料組成物は、馬鈴薯澱粉、エーテル化澱粉、及び任意に穀粉からなる主原料を含む。
【0013】
(1-1-1)馬鈴薯澱粉
本発明に用いる馬鈴薯澱粉は、馬鈴薯を由来原料とした澱粉であり、一般にドーナツの製造に用いられる澱粉であれば何れも好適に使用することができる。そのような馬鈴薯澱粉としては、未変性澱粉(生澱粉)でも加工澱粉でもよく、それらの混合物であってもよいが、好ましくは未変性澱粉である。
【0014】
加工澱粉は、化学的加工澱粉であってもよく、物理的加工澱粉であってもよい。一般に、化学的加工澱粉としては、アセチル化澱粉(酢酸澱粉等)、架橋澱粉(リン酸架橋澱粉、アジピン酸架橋澱粉等)、酸処理澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉等があり、物理的加工澱粉としては、α化澱粉、熱処理(湿熱処理)澱粉等がある。これらの加工を組合せたものでもよい(アセチル化リン酸架橋澱粉等)。本発明の馬鈴薯澱粉には、これら加工澱粉の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、本発明において、エーテル化馬鈴薯澱粉及びα化馬鈴薯澱粉は、それぞれエーテル化澱粉及びα化澱粉に分類する。
【0015】
馬鈴薯澱粉の配合量は、べたつきによる生地の作業性低下の抑制やドーナツ形状の安定性の観点から、主原料の合計質量に対して8~55質量%であり、15~40質量%が好ましく、20~30質量%がさらに好ましい。
【0016】
(1-1-2)エーテル化澱粉
本発明において、エーテル化澱粉とは、澱粉に対してエーテル結合で官能基を付加した澱粉をいう。エーテル化澱粉の例としては、カルボキシメチル澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシエチル澱粉およびカルボキシエチル澱粉等が挙げられ、ヒドロキシプロピル化澱粉が好ましい。エーテル化澱粉は由来原料の種類を問わず、例えばタピオカ澱粉、小麦澱粉、コーン澱粉、ワキシー澱粉、馬鈴薯澱粉など何れも好適に使用することができ、タピオカ及び/又はコーン由来のヒドロキシプロピル澱粉が最も好ましい。なお、本発明において、エーテル化に加えて他の加工が施されている場合はエーテル化澱粉として扱い、例えばエーテル化とα化が施されたエーテル化α化澱粉、架橋とエーテル化が施されたヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉等はエーテル化澱粉に該当する。本発明はエーテル化澱粉を含むことでもちもちした食感が付与され、ボリュームのある外観が得られる。主原料のうち、馬鈴薯澱粉及びα化澱粉を除いた残りをエーテル化澱粉とする。馬鈴薯澱粉とエーテル化澱粉の配合量(質量)の比は、1:11~1:1であることが好ましく、1:8~1:1.5であることがより好ましく、1:5~1:2であることがさらにより好ましい。
【0017】
(1-1-3)穀粉
従来のドーナツに主要な原料として使用されている小麦粉等の穀粉は、アレルギーフリーのドーナツを提供するという目的から、本発明のドーナツ用澱粉性原料組成物の主原料としては含まないことが望ましいが、アレルゲンを低減したドーナツを提供する目的では、馬鈴薯澱粉とエーテル化澱粉の一部を穀粉に置換して少量使用することもできる。生地の作業性やドーナツの外観及び白さの観点からも穀粉の配合量は少ない方が好ましく、主原料の合計質量に対して17質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらにより好ましく、0質量%が最も好ましい。
【0018】
穀粉を使用する場合には、小麦粉が好ましい。小麦粉以外の穀粉としては、例えば大麦、とうもろこし、そば、大豆、ひえ、あわ、アマランサス等の穀物由来の穀粉;馬鈴薯、里芋、キャッサバあるいは甘藷、山芋等の穀物に準ずる主食となる農作物である塊茎粉あるいは塊根粉などが挙げられる。これらの内の何れか2種以上を組み合わせても良い。
【0019】
(1-2)α化澱粉
主原料に含まれる馬鈴薯澱粉やエーテル化澱粉は加水しても十分な粘りが出ず、穀粉は加水により粘りが出るものの不使用または少量の使用であるため、加水により澱粉性原料をつないで生地にするために、本発明のドーナツ用澱粉性原料組成物はα化澱粉を含む。α化澱粉はドーナツ生地の粘度を高くし、生地の結着性を高められれば良いため、タピオカ、小麦、ワキシー、コーン、馬鈴薯等のいずれに由来するα化澱粉も問題なく使用できるが、ドーナツ生地の作業性とドーナツのもっちりした食感や色の白さの観点からタピオカ由来のα化澱粉が好ましい。ただし、上記のとおり、本発明において、エーテル化α化澱粉は、エーテル化澱粉に分類する。
【0020】
α化澱粉の配合量は、べたつきによる生地の作業性低下の抑制やドーナツ形状の安定性の観点から、主原料100質量部に対して2~27質量部であり、5~20質量部が好ましく、10~18質量部がさらに好ましい。
【0021】
(1-3)ドーナツ用澱粉性原料組成物
本発明のドーナツ用澱粉性原料組成物は、馬鈴薯澱粉、エーテル化澱粉、及び任意に穀粉からなる主原料と、α化澱粉とからなる。すなわち、ドーナツ用澱粉性原料組成物から主原料を除いた残りがα化澱粉である。
【0022】
(2)ドーナツ用ミックス粉
(2-1)糖類
ドーナツ用ミックス粉では糖類を添加することで、フライ時の破裂防止効果や、生地の伸展性と保水性が向上し、揚げた際の蒸気で生地が膨らみ、ドーナツのボリュームが向上する効果が得られる。糖類としては、グルコースやフルクトース等の単糖類、ショ糖やラクトース等の二糖類等が挙げられる。上記糖類は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。保水性があり食品に使用される糖類であればいずれも好適に使用できるが、生地製造時の作業性や食感、甘味付与の観点からショ糖が好ましい。糖類の配合量は、ドーナツ用澱粉性原料組成物100質量部に対して5.5~47質量部であり、7~40質量部が好ましく、10~30質量部がさらに好ましく、15~25質量部がより更に好ましい。
【0023】
(2-2)油脂
ドーナツ用ミックス粉では油脂を添加することで、フライ時の破裂防止効果や、生地の伸展性を向上させ、ドーナツのボリュームが向上する効果や、食感を柔らかくする効果が得られる。油脂は食用油脂であればいずれも好適に使用でき、例えば、大豆油、綿実油、サフラワー油、米油、コーン油、ナタネ油、シソ油、エゴマ油、アマニ油、オリーブ油、ゴマ油、小麦胚芽油、コメヌカ油、ヒマワリ油、落花生油、アボガド油、卵黄油、魚油、鯨油、鶏油、豚脂、牛脂、乳脂、カカオ脂、シア脂、ヤシ油、パーム油、パーム核油等、並びにこれらに水素添加処理、分別処理及びエステル交換処理等の処理を一又は二以上を施した加工油脂等が挙げられる。油脂は常温で液体、固体、粉体いずれであってもよく、好ましくは固体又は粉体、より好ましくは粉体の粉末油脂である。ミックス粉にした場合、液状油、固形油に比べ、粉末油脂のミックスの方が流動性が良く、作業性が良い。粉末油脂の中に乳化剤やデキストリンなど混合物が含まれていてもよい。これらのうち単一の油脂を用いてもよく、2種以上を適当な比率で用いてもよい。
【0024】
油脂の配合量は、ドーナツ用澱粉性原料組成物100質量部に対して5.5~32質量部であり、好ましくは7~30質量部であり、さらに好ましくは10~27.5質量部であり、より好ましくは13~25質量部であり、よりさらに好ましくは15~22.5質量部である。
【0025】
(2-3)ドーナツ用ミックス粉
本発明のドーナツ用ミックス粉は、前記ドーナツ用澱粉性原料組成物、ショ糖及び油脂を含む。
【0026】
馬鈴薯澱粉とエーテル化澱粉とα化澱粉と任意に穀粉からなるドーナツ用澱粉性原料組成物、糖類及び油脂からなる必須成分以外に本発明の効果を損なわない範囲において、通常ドーナツの製造に使用される各種の副原料を使用することができる。そのような副原料としては、膨張剤、乳化剤、塩、卵粉、イースト等を挙げることができる。
【0027】
(3)ドーナツ用生地
(3-1)水性液体原料
本発明の水性液体原料は、水や、乳、豆乳、アーモンドミルク、卵液など一般にドーナツの製造に用いられる水に溶解する液体原料を指す。
【0028】
(3-2)ドーナツ用生地
本発明のドーナツ用生地は、前記ドーナツ用澱粉性原料組成物または前記ドーナツ用ミックス粉と水性液体原料を含む。
【0029】
一般に、ドーナツは、その食感の観点から、ケーキ様の生地を用いて製造されるケーキ様の食感を有するケーキドーナツと、イースト発酵させたパン様の生地を用いて製造されるパン様の食感を有するイーストドーナツとに分類される。また、ケーキ様の生地においては、柔らかく流動性のある「バッター生地」と比較的硬く可塑性のある「ペースト生地」とがある。本発明のドーナツ用生地は、ケーキドーナツ用の生地であってもよく、イーストドーナツ用の生地であってもよい。
【0030】
本発明のドーナツ用生地は、前記ドーナツ用澱粉性原料組成物又は前記ドーナツ用ミックス粉と水や乳等の水性液体原料とを混合することにより得ることができる。ドーナツ用澱粉性原料組成物を用いる場合、前記ドーナツ用ミックス粉に使用し得る副原料を共に混合することができる。水性液体原料の量は、求める生地の特性やドーナツの食感により変動するが、概ねドーナツ用ミックス粉100質量部またはドーナツ用澱粉性原料組成物及び副原料の合計100質量部に対して50~90質量部である。
【0031】
(4)ドーナツの製造方法
本発明のドーナツの製造方法は、前記ドーナツ用澱粉性原料組成物ないしは前記ドーナツ用ミックス粉を使用する。
【0032】
本発明のドーナツの製造方法は、ドーナツ用澱粉性原料組成物及び任意に副原料と水性液体原料、もしくはドーナツ用ミックス粉と水性液体原料とを混捏してドーナツ用生地を得る工程を含む。混捏する手段は、特に限定されるものではなく、一般に使用されるミキサーを用いることができる。好ましくは、得られたドーナツ用生地を、例えばドーナツカッターを用いて、リング状等の所望の形状に分割する。
【0033】
本発明のドーナツの製造方法は、前記ドーナツ生地を加熱する工程を含む。一般に、ドーナツの加熱膨張には化学膨張剤の反応によって発生するガスが利用されるが、風味付け等の目的でイースト発酵を組み合わせる場合がある。化学膨張剤の反応により発生するガスがドーナツ用生地から放出されることを極力避けるため、生地製造後はなるべく時間を空けずに加熱することが好ましい。加熱手段は特に限定されるものではなく、例えば油ちょう等、一般に使用される手段を用いることができ、加熱温度及び時間も適宜調整すればよい。
【実施例0034】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0035】
<製造例1 ドーナツの製造>
下記工程1~3に従ってドーナツを製造した。
工程1:下記配合表に従い、ドーナツ用澱粉性原料組成物とショ糖、油脂及び副原料(乳化剤、膨張剤、塩)をケミカルミキサーで混合し、ドーナツ用ミックス粉を製造した。
工程2:配合表に従ってドーナツ用ミックス粉に水性液体原料を加え、ミキサー(KitchenAid社製、KSM5)で、低速で2分間、高速で3分間混捏し、ドーナツ生地を得た。
工程3:混捏した生地をドーナツカッター(ベルショー社製、Fカッター及びプレーンプランジャー)で50gのリング状に分割し、190℃のフライ油で潜行3分30秒間フライしてドーナツを得た。
【0036】
【表1】
馬鈴薯澱粉:未変性の馬鈴薯澱粉(松谷化学社製)
エーテル化澱粉:ヒドロキシプロピルタピオカ澱粉(イングレディオン社製)
α化澱粉:α化タピオカ澱粉(イングレディオン社製)
油脂:パームを主原料とした粉末油脂(ミヨシ油脂社製)
【0037】
<評価例1 ドーナツの官能評価>
工程2で得られたドーナツ生地の作業性及び工程3で得られたドーナツの外観及び白さについて、10名の熟練パネラーにより下記評価表に従って官能評価を行い、10名の平均点を算出した。各評価項目について、3点以上の場合を許容範囲内と評価した。
【0038】
【0039】
<試験例1 馬鈴薯澱粉とエーテル化澱粉の量の検討>
馬鈴薯澱粉とエーテル化澱粉の量を表3に記載した量に変更した以外は製造例1に従ってドーナツを製造し、評価例1に従って評価した。なお、生地の硬さが製造例1(実施例2)と同じになるように加水量を適宜調節した。
【0040】
実施例1~3では、適量の馬鈴薯澱粉を使用することにより、生地の作業性、ドーナツの外観及び白さが良好になり、主原料(馬鈴薯澱粉とエーテル化澱粉の合計)100質量部に対して25質量部の馬鈴薯澱粉を使用した実施例2において最も優れていた。比較例1では、馬鈴薯澱粉の量が少ないため、生地がべたつきドーナツカッターで切り出したリング状の形状も安定しなかったため、作業性及び外観の評価が低かった。比較例2では、馬鈴薯澱粉の量が多すぎたため、生地の硬さを調整するための加水が多くなり生地がややべたつき、作業性は3点未満であり許容できなかった。
【0041】
【表3】
*:主原料(馬鈴薯澱粉とエーテル化澱粉の合計)の合計質量に対する馬鈴薯澱粉の割合(質量%)
【0042】
<試験例2 α化澱粉の量の検討>
α化澱粉の含有量を表4に記載した量に変更した以外は製造例1に従ってドーナツを製造し、評価例1に従って評価した。なお、生地の硬さが製造例1(実施例2)と同じになるように加水量を適宜調節した。
【0043】
実施例2及び4~6では、適量のα化澱粉を使用することにより、生地の作業性、ドーナツの外観及び白さが良好になり、主原料(馬鈴薯澱粉とエーテル化澱粉の合計)100質量部に対して11.7質量部のα化澱粉を使用した実施例2において最も優れていた。比較例3では、α化澱粉の量が少ないため、ドーナツカッターで切り出したリング状の形状がやや安定せず、作業性及び外観の評価が3点未満であり許容できなかった。比較例4では、α化澱粉の量が多すぎたため、ドーナツ生地にべたつきが生じ、そのべたつきのためにドーナツカッターによる成型が不安定になり、作業性及び外観が3点未満であり許容できなかった。
【0044】
【表4】
*:主原料(馬鈴薯澱粉とエーテル化澱粉の合計)100質量部に対するα化澱粉の量(質量部)
【0045】
<試験例3 糖類の量の検討>
ショ糖の量を表5に記載した量に変更した以外は製造例1に従ってドーナツを製造し、評価例1に従って評価した。なお、生地の硬さが製造例1(実施例2)と同じになるように加水量を適宜調節した。
【0046】
実施例2及び7~10では、適量のショ糖を使用することにより、生地の作業性、ドーナツの外観及び白さが良好になり、ドーナツ用澱粉性原料組成物(馬鈴薯澱粉とエーテル化澱粉とα化澱粉の合計)100質量部に対して23.9質量部のショ糖を使用した実施例2において最も優れていた。比較例5では、ショ糖の量が少ないため、生地の伸展性がやや不足し、フライ中の生地の膨らみが足りず形状がやや安定しなかった。比較例6では、ショ糖の量が多すぎたため、生地がべたつき、成型が不安定で作業性及び外観が3点未満であり許容できず、やや揚げ色も付いた。
【0047】
【表5】
*:ドーナツ用澱粉性原料組成物(馬鈴薯澱粉とエーテル化澱粉とα化澱粉の合計)100質量部に対するショ糖の配合量(質量部)
【0048】
<試験例4 油脂の量の検討>
油脂の量を表6に記載した量に変更した以外は製造例1に従ってドーナツを製造し、評価例1に従って評価した。なお、生地の硬さが製造例1(実施例2)と同じになるように加水量を適宜調節した。
【0049】
実施例2及び11~13では、適量の油脂を使用することにより、生地の作業性、ドーナツの外観及び白さが良好になり、ドーナツ用澱粉性原料組成物(馬鈴薯澱粉とエーテル化澱粉とα化澱粉の合計)100質量部に対して19.4質量部の油脂を使用した実施例2において最も優れていた。比較例7では、油脂の量が少なすぎたため、ドーナツカッターで切り出したリング状の形状がやや安定せず、作業性及び外観が3点未満であり許容できなかった。比較例8では、油脂の量が多すぎたため、ドーナツ生地表面に油浮きが生じて成型が不安定であり、作業性及び外観が3点未満であり許容できなかった。
【0050】
【表6】
*:ドーナツ用澱粉性原料組成物(馬鈴薯澱粉とエーテル化澱粉とα化澱粉の合計)100質量部に対する油脂の量(質量部)
【0051】
<試験例5 穀粉の量の検討>
馬鈴薯澱粉とエーテル化澱粉の一部を表7に記載した量の小麦粉に置き換えたこと以外は製造例1に従ってドーナツを製造し、評価例1に従って評価した。なお、生地の硬さが製造例1(実施例2)と同じになるように加水量を適宜調節した。
【0052】
実施例14及び15では、小麦粉を少量使用しても、良好な生地の作業性、ドーナツの外観及び白さを実現することが出来たが、小麦粉を使用しない実施例2において最も優れていた。比較例9では、小麦粉の量が多すぎたため、ドーナツ生地製造後の時間経過で生地にべたつきが生じ、作業性が3点未満であり許容できず、そのため成型が不安定で外観がやや悪くなり、やや揚げ色も付いた。小麦粉含有量が増えるに従って作業性、外観が悪化する表7の結果は、小麦粉が持つ酵素によって生地中の澱粉等が分解され、分解物の影響による生地のべたつきが生じたことによるものと考えられた。
【0053】
【表7】
*:主原料(馬鈴薯澱粉とエーテル化澱粉と小麦粉の合計)の合計質量に対する小麦粉の量(質量%)
【0054】
<試験例6 馬鈴薯澱粉の加工方法の検討>
未変性馬鈴薯澱粉(生澱粉)を表8に記載したアセチル化馬鈴薯澱粉(松谷化学社製)、リン酸架橋馬鈴薯澱粉(ロケットジャパン社製)、酸処理馬鈴薯澱粉(松谷化学社製)、に変更した以外は製造例1に従ってドーナツを製造し、評価例1に従って評価した。
【0055】
いずれの加工馬鈴薯澱粉でも外観が良く作業性も問題なく、白さも好ましかったが、実施例2の生澱粉(未変性馬鈴薯澱粉)が最も好ましかった。
【0056】
【0057】
<試験例7 エーテル化澱粉の由来原料の検討>
エーテル化澱粉の由来原料の種類を表9に記載したもの(ヒドロキシプロピル化澱粉、いずれも松谷化学社製)に変更した以外は製造例1に従ってドーナツを製造し、評価例1に従って評価した。
【0058】
実施例2のタピオカ由来が最も好ましく、次いでコーン由来が好ましかったが、いずれの原料由来のエーテル化澱粉であっても作業性は問題なく、外観も良く、白さも好ましかった。
【0059】