(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009270
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20250110BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20250110BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
B23Q11/00 Q
H01L21/78 F
H01L21/304 622E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112154
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今岡 大智
【テーマコード(参考)】
3C011
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
3C011BB22
5F057AA21
5F057BA11
5F057BB03
5F057BB09
5F057BB11
5F057BB12
5F057DA01
5F057DA11
5F057FA41
5F057FA43
5F057FA45
5F063AA15
5F063BA45
5F063BA47
5F063BA48
5F063DD02
5F063DE02
5F063DE33
5F063FF01
5F063FF13
5F063FF21
5F063FF22
5F063FF33
5F063FF34
5F063FF35
5F063FF36
5F063FF38
5F063FF48
5F063FF49
(57)【要約】
【課題】加工屑などの排水管内への堆積を防いで加工廃水を排水管内でスムーズに流して排出することができる加工装置を提供すること。
【解決手段】切削装置(加工装置)1において、切削水(加工水)を供給しつつウェーハ(被加工物)Wを加工することによって発生する切削屑(加工屑)を含む切削廃水(加工廃水)を排出する排水管81は、エアと水との混合流体を加工廃水の流れ方向上流から下流に向かうように内部に噴射する噴射部83を備えている。ここで、排水管81の切削廃水の流れ方向下流側から分岐管88を分岐させ、該分岐管88を吸引源89に接続してもよい。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工水を供給しつつ被加工物を加工することによって発生する加工屑を含む加工廃水を排水する排水管を備える加工装置であって、
前記排水管は、エアと水との混合流体を加工廃水の流れ方向上流から下流に向かうように内部に噴射する噴射部を備えることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記排水管の加工廃水の流れ方向下流側から分岐管を分岐させ、該分岐管を大気に開放し或いは吸引源に接続したことを特徴とする請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
前記噴射部にエアを供給するエア供給源と水を供給する水供給源と、
前記エア供給源から前記噴射部へのエア供給経路に設けられたエアバルブと、
前記水供給源から前記噴射部への水供給経路に設けられた水バルブと、
被加工物を加工しているときにのみ前記エアバルブと前記水バルブとを開いて前記噴射部から混合流体を噴射させる制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1または2記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の加工によって発生した加工屑を含む加工廃水を排出する排水管を備える加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体チップの製造工程においては、円板状の薄い半導体ウェーハ(以下、単に「ウェーハ」と称する)の表面が格子状に配列されたストリートと称される分割予定ラインによって多数の矩形領域に区画され、各矩形領域にICやLSIなどのデバイスがそれぞれ形成される。そして、このように多数のデバイスが形成されたウェーハをダイサーと称される切削装置の切削ブレードで分割予定ラインに沿って切削することによって、複数の半導体チップが得られる。
【0003】
ところで、切削装置によるウェーハの切削は、切削ブレードに加工液である切削水を供給しつつ、切削ブレードを高速回転させることによってなされるが、切削ブレードの高速回転によって周囲に飛散する切削水(以下、「切削廃水」と称する)には、ウェーハの切削屑や端材が含まれている。このような切削屑や端材を含んだ切削廃水は、容器状のウォータケースに落下して回収され、ウォータケースの排水口から排水管を経てウォータケース外へと排出されている。
【0004】
ところが、ウォータケース内においては、切削水の流れだけでは切削屑や端材が排水口へとスムーズに流れず、これらの切削屑や端材がウォータケースの底面に滞留して蓄積するという問題があった。
【0005】
そこで、特許文献1には、流動ノズルからウォータケースの排水口に向かって水を噴射して切削屑や端材を排水口に向かってスムーズに流すようにした切削装置が提案されている。また、特許文献2には、ウォータケースの排水口を覆う網カゴを設置し、この網カゴで端材など回収するとともに、網カゴの下方から該網カゴに向けってエアを噴射するようにした加工装置が提案されている。さらに、特許文献3には、切削屑や端材をウォータケースの排出口に向けてスムーズに流すために、流体発振ノズルから高圧の水を排水口に向けて流すようにした切削装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-134475号公報
【特許文献2】特開2022-020289号公報
【特許文献3】特開2023-038865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~3において提案されている手法によって切削屑や端材をウォータケースの排水口へと流すようにしても、排水口から延びる排水管の傾斜(勾配)が小さい場合には、切削屑や端材が排水管を流れないで堆積し、これらの切削屑や端材を含んだ切削廃水の流れを阻害するという問題が発生する。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、加工屑などの排水管内への堆積を防いで加工廃水を排水管内でスムーズに流して排出することができる加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、加工水を供給しつつ被加工物を加工することによって発生する加工屑を含む加工廃液を排水する排水管を備える加工装置であって、前記排水管は、エアと水との混合流体を加工廃液の流れ方向上流から下流に向かうように内部に噴射する噴射部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記排水管の加工廃水の流れ方向下流側から分岐管を分岐させ、該分岐管を大気に開放し或いは吸引源に接続したことを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記噴射部にエアを供給するエア供給源と水を供給する水供給源と、前記エア供給源から前記噴射部へのエア供給経路に設けられたエアバルブと、前記水供給源から前記噴射部への水供給経路に設けられた水バルブと、被加工物を加工しているときにのみ前記エアバルブと前記水バルブとを開いて前記噴射部から混合流体を噴射させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、加工屑などを含んだ加工廃水は、排水管内を該排気管の傾斜(勾配)に沿って下流側へと流れるが、この加工廃液の下流に向かう流れは、排水管に設けられた噴射部からの混合流体の噴射によって促進される。このため、加工廃液は、排水管内を下流側へとスムーズに流れ、該加工廃液に含まれる加工屑などが排水管内で滞留して堆積することがなく、加工廃液が効率よく排出される。
【0013】
請求項2記載の発明において、排水管の下流側から分岐する分岐管を大気に開放すれば、排水管の下流側部分と上流側部分の圧力が大気圧に等しくなる。このため、加工屑を含んだ加工廃液は、排水管の勾配に沿って該排水管内を下流側に向かって流れるが、この流れは、噴射部から排水管内への混合流体の噴射によって促進される。また、分岐管を吸引源に接続すれば、排水管の下流側が吸引源によって吸引され、加工屑などを含んだ加工廃液が排気管内を一層スムーズに流れる。したがって、請求項2記載の発明によれば、加工屑などの排水管内への堆積が一層確実に防がれて加工廃液の排出が効率よくなされる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、被加工物を加工しているときにのみエアバルブと水バルブを開いて混合流体を噴射部から排水管内に噴射するようにしたため、噴射部へのエアと水の供給量を必要最小限に抑えることができて経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る加工装置の一形態としての切削装置の斜視図である。
【
図3】
図1に示す切削装置の切削ブレード部分の正面図である。
【
図4】
図1に示す切削装置のウォータケースと伸縮カバーの斜視図である。
【
図5】
図1に示す切削装置のウォータケースと伸縮カバーの分解斜視図である。
【
図8】噴射部の別形態1を示す排水管の上流側部分の縦断面図である。
【
図10】噴射部の別形態2を示す排水管の上流側部分の縦断面図である。
【
図12】排水機構の別形態を示す模式的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
[切削装置の全体構成]
まず、発明に係る加工装置の一形態としての切削装置の全体構成を
図1に基づいて以下に説明する。なお、以下の説明では、
図1における前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とする。
【0018】
図1は切削装置の斜視図であり、図示の切削装置1は、ダイサーと称されるものであって、各構成要素を支持する基台2を備えており、この基台2上の奥側角部には、コラム3が垂直に立設されている。
【0019】
而して、切削装置1は、被加工物であるウェーハWをリングフレームFと共に保持して回転するチャックテーブル10と、該チャックテーブル10をウェーハWと共にX軸方向(切削送り方向)に沿って往復動させる切削送り機構20と、チャックテーブル10の保持面上に保持されたウェーハWを切削する切削ユニット30と、該切削ユニット30をZ軸方向(切り込み方向)に沿ってそれぞれ昇降動させる切り込み送り機構40と、切削ユニット30をY軸方向(割り出し方向)に沿って往復動させる割り出し送り機構50と、切削加工中に切削ユニット30の切削ブレード35(
図3参照)に向けて加工水である研削水を供給する切削水供給部60と、切削ブレード35の高速回転によって周囲に飛散した切削廃水を受けて回収するウォータケース70と、該ウォータケース70から切削廃水を排出する排水機構80と、制御部100を主要な構成要素として備えている。なお、
図1においては、
図4及び
図5に示す伸縮カバー5,6の図示を省略している。
【0020】
以下、切削装置1の主要な構成要素であるチャックテーブル10、切削送り機構20、切削ユニット30、切り込み送り機構40、割り出し送り機構50、切削水供給部60、ウォータケース70、排水機構80及び制御部100の構成についてそれぞれ説明する。
【0021】
(チャックテーブル)
チャックテーブル10は、基台2上の略中央部に回転可能に配置された円板状の部材であって、その上面は、ウェーハWをリングフレームF(
図2参照)と共に保持する保持面を構成している。そして、このチャックテーブル10の周囲には、リングフレームFを四方から固定するための4つのクランプ11が周方向に等角度ピッチ(90°ピッチ)で配設されている。
【0022】
また、チャックテーブル10は、その下方に配された回転機構12を介して切削送り機構20の後述のスライダ22上に回転可能に支持されており、回転機構12によって垂直な軸中心回りに回転駆動されるとともに、その下方に配置された切削送り機構20によってX軸方向(切削送り方向)に沿って往復移動することができる。
【0023】
ここで、被加工物であるウェーハWは、例えば、単結晶のシリコン(Si)で構成された薄い円板状の部材であって、
図2に示すように、その表面(
図2においては、上面)が互いに直交する格子状の分割予定ライン(ストリート)L1,L2によって複数の矩形領域に区画されており、各矩形領域には、ICやLSIなどのデバイスDがそれぞれ形成されている。そして、このように表面に多数のデバイスDが形成されたウェーハWは、その裏面(
図2においては、下面)とリングフレームFの下面に貼着されたダイシングテープTを介してリングフレームFに支持されている。なお、ウェーハWの材質としては、シリコン(Si)以外に、シリコンカーバイド(SiC)、ガラス、セラミックス、サファイアなどが用いられる。
【0024】
(切削送り機構)
切削送り機構20は、チャックテーブル10をウェーハWと共にX軸方向(切削送り方向)に沿って往復移動させる機構であって、基台2上に配置されている左右一対のX軸ガイドレール21と、これらのX軸ガイドレール21に沿ってX軸方向に摺動可能に設置された矩形プレート状のスライダ22と、左右のX軸ガイドレール21の間にX軸方向に沿って配置された正逆転可能なX軸ボールネジ23と、該X軸ボールネジ23を正逆転させる回転駆動源であるX軸サーボモータ24を含んで構成されている。そして、スライダ22上には、回転機構12を介してチャックテーブル10が垂直な中心軸回りに回転可能に支持されている。なお、図示しないが、スライダ22の下面の幅方向中央部には、ナット部材が下方に向かって突設されており、このナット部材には、X軸ボールネジ23が螺合挿通している。
【0025】
したがって、X軸サーボモータ24を起動してX軸ボールネジ23を正逆転させれば、該X軸ボールネジ23に螺合する不図示のナット部材が突設されたスライダ22が左右一対のX軸ガイドレール21に沿ってX軸方向に摺動するため、該スライダ22と共にチャックテーブル10が回転機構12と共にX軸方向(切削送り方向)に沿って往復移動する。
【0026】
(切削ユニット)
切削ユニット30は、切り込み送り機構40の後述の昇降板42の下部に取り付けられたスピンドルユニット31と撮像ユニット32を備えている。ここで、スピンドルユニット31は、
図3に示すように、左右方向(Y軸方向)に沿って水平に配置された矩形ブロック状のスピンドルハウジング33と、該スピンドルハウジング33内に収容された回転駆動源である不図示のスピンドルモータと、該スピンドルモータによって回転駆動されるスピンドル34と、該スピンドル34の先端に取り付けられた薄い円板状の切削ブレード35を含んで構成されている。ここで、切削ブレード35は、円環状の基台35aの外周部に切れ刃35bを形成して構成されるが、切れ刃35bは、ダイヤモンド砥粒などをレジンボンド、メタルボンド、ビトリファイドボンドなどによって固定することによって形成されている。
【0027】
また、撮像ユニット32は、チャックテーブル10の保持面上に保持されたウェーハWの表面を撮像して分割予定ラインL1,L2(
図2参照)の位置を検出するものであり、CCDやCMOSなどの撮像素子を備えている。
【0028】
(切り込み送り機構)
切り込み送り機構40は、切削ユニット30をZ軸方向(切り込み方向)に沿って昇降動させる機構であって、矩形プレート状のスライダ51の左右に互いに平行に垂直に配置された一対のZ軸ガイドレール41と、これらのZ軸ガイドレール41に沿って上下に移動可能な昇降板42と、一対のZ軸ガイドレール41の間に垂直に配置された回転可能なZ軸ボールネジ軸43と、該Z軸ボールネジ軸43を回転駆動する正逆転可能なZ軸サーボモータ44を含んで構成されている。そして、切削ユニット30は、昇降板42の下部に取り付けられている。なお、昇降板42の裏面には不図示のナット部材が突設されており、このナット部材にZ軸ボールネジ軸43が螺合挿通している。
【0029】
上述のように構成された切り込み送り機構40において、Z軸サーボモータ44が起動されてZ軸ボールネジ軸43が正逆転すると、該Z軸ボールネジ軸43に螺合する不図示のナット部材が突設された昇降板42が一対のZ軸ガイドレール41に沿って上下動するため、昇降板42に取り付けられた切削ユニット30もZ軸方向(切り出し送り方向)に沿って上下移動する。
【0030】
(割り出し送り機構)
割り出し送り機構50は、切削ユニット30をY軸方向(割り出し方向)に沿って往復移動させる機構であって、摺動可能なスライダ51を備えている。ここで、スライダ51は、基台2上に垂直に立設されたコラム3の正面にY軸方向に沿って互いに平行に配置された上下一対のY軸ガイドレール52に沿ってY軸方向に沿ってそれぞれ移動可能である。
【0031】
そして、割り出し送り機構50おいては、上下一対のY軸ガイドレール52の間に、Y軸方向に沿って配置された正逆転可能なY軸ボールネジ軸53を備えており、このY軸ボールネジ軸53は、スライダ51の裏面に突設された不図示のナット部材に螺合挿通している。また、Y軸ボールネジ軸53の軸方向一端は、回転駆動源である不図示のY軸サーボモータに連結されている。
【0032】
したがって、割り出し送り機構50において、不図示のY軸サーボモータを起動してY軸ボールネジ軸53を正逆転させると、該Y軸ボールネジ軸53に螺合する不図示のナット部材が突設されたスライダ51が昇降板42と共にY軸ガイドレール52に沿ってY軸方向(割り出し送り方向)に移動することができる。このため、昇降板42に取り付けられた切削ユニット30がY軸ガイドレール52に沿ってY軸方向(割り出し送り方向)に移動することができる。
【0033】
而して、
図1に示す切削装置1においては、チャックテーブル10とこれに保持されたウェーハWがX軸方向(切削送り方向)に沿って移動可能であり、切削ユニット30がY軸方向(割り出し方向)とZ軸方向(切り出し方向)に沿ってそれぞれ移動可能である。
【0034】
(切削水供給部)
図3に示す切削水供給部60は、ウェーハWの切削加工中に高速回転する切削ブレード35に切削水を供給するものであって、切削ブレード35の切れ刃35bに向かって開口するシャワーノズル61と、切削ブレード35の外側と内側に配された一対のクーラーノズル62(
図3には一方のみ図示)に切削水をそれぞれ供給する切削水供給源63を備えている。この切削水供給源63から延びる配管64,65は、シャワーノズル61と一対のクーラーノズル62にそれぞれ接続されており、各配管64,65には、電磁式の開閉バルブV1,V2がそれぞれ設けられている。なお、開閉バルブV1,V2は、制御部100に電気的に接続されており、その開閉動作が制御部100によってそれぞれ制御される。また、切削水には、純水が好適に用いられる。
【0035】
(ウォータケース)
ウォータケース70は、ウェーハWの切削加工によって発生した切削屑を含む研削廃水を受けて回収した後に排出するものである。すなわち、ウェーハWの切削加工は、切削水供給部60から切削水の供給を受けながら高速回転する切削ブレード35によってなされるが、このウェーハWの切削加工によって周囲に飛散する切削廃水をこれに含まれる切削屑などと共に受けて排出するものであって、
図1に示すように、切削送り機構20の上方のチャックテーブル10のX軸方向(切削送り方向)の移動経路の周囲を取り囲むように配設されている。
【0036】
より詳細には、ウォータケース70は、上方が開口する矩形枠状の容器として構成されており、その中央には、チャックテーブル10や回転機構12のX軸方向(切削送り方向)の移動を許容する矩形の開口部70aが形成されている。ここで、ウォータケース70は、開口部70aに沿って垂直に起立する高さの低い矩形筒状の内壁71と、該内壁71の外側において垂直に起立する矩形筒状の外壁72と、これらの内壁71と外壁72の各下端部同士を連結する矩形枠状の底壁73を備えており、これらの内壁71と外壁72及び底壁73によって前述のように矩形枠状の容器として構成されている。したがって、このウォータケース70には、切削屑を含む切削廃水を受け止めて流す樋としての機能が備えられており、その底壁73のコーナー部には、
図1に示すように、円孔状の排水口74が開口している。なお、ウォータケース70の底壁73は、排水口74に向かって下がり勾配に傾斜していることが望ましい。
【0037】
ところで、ウォータケース70の中央部に形成された開口部70aは、
図4及び
図5に示すように、その上方に配置された矩形プレート状のカバー4と、該カバー4のX軸方向両端部からそれぞれ延びて各外端部がウォータケース70の外壁72に取り付けられた伸縮可能な蛇腹状の伸縮カバー5,6によって覆われている。ここで、カバー4は、チャックテーブル10と回転機構12のX軸方向(切削送り方向)の移動に伴って同方向に移動可能であって、このカバー4の移動に伴って一対の伸縮カバー5,6が互いに伸縮するが、これらのカバー4と伸縮カバー5,6によってウォータケース70の開口部70aが上方から覆われている。したがって、切削屑などを含む切削廃水のウォータケース70の開口部70aへの浸入がカバー4と伸縮カバー5,6によって防がれる。
【0038】
(排水機構)
図1に示す排水機構80は、ウォータケース70によって受け止められて回収された切削廃水をウォータケース70の外部へと排出する機構であって、ウォータケース70の底壁73に開口する排水口74に一端が接続された排水管81と、該排水管81の基台2外へと延出する他端に接続されたドレインパイプ82と、排水管81のウォータケース70から垂直下方に延びる垂直部81Aに設けられた噴射部83と、該噴射部83にエアを供給するエア供給源84と水を供給する水供給源85などを備えている。ここで、エア供給源84から延びて噴射部83に接続されるエア配管86には、電磁式のエアバルブV3が設けられ、水供給源85から延びて噴射部83に接続される水配管87には、電磁式の水バルブV4が設けられている。そして、これらのエアバルブV3と水バルブV4は、制御部100に電気的に接続されており、その開閉動作が制御部100によって制御される。
【0039】
また、
図1に示すように、排水管81は、垂直部81Aの下端から屈曲して基台2内を+Y軸方向に向かって斜め下方に延びており、該排水管81の基台2の外部へと延びる下流端には、ドレインパイプ82が接続されている。したがって、ウォータケース70の内部は、排水口74とこれに接続された排水管81及びドレインパイプ82を経て不図示の廃水処理設備に接続されている。
【0040】
さらに、
図1に示すように、排水管81の下流端に近い部分からは分岐管(排気管)88が分岐しており、この分岐管88は、真空ポンプなどの吸引源89に接続されている。したがって、排水管81の下流端に近い部分は、分岐管88によって吸引源89に接続されて吸引源89によって真空引きされる。
【0041】
ここで、排水管81の垂直部81Aに設けられた噴射部83の構成の詳細を
図6及び
図7に基づいて以下に説明する。
【0042】
図6及び
図7に示すように、排水管81のウォータケース70に近い垂直部81Aには、平面視円弧状のミキシング部83Aが形成されており、このミキシング部83Aには、周方向2箇所の上下に形成された連通孔83aと、これらの連通孔83aに連結されたプラグ90,91を介してエア供給源84と水供給源85がエア配管86と水配管87によってそれぞれ接続されている。そして、排水管81の垂直部81Aに形成されたミキシング部83Aの周方向中間部からは噴射ノズル92が当該排水管81の内部に向かって斜め下方に形成されており、この噴射ノズル92の円孔状の流入口92aは、ミキシング部83Aの底面に開口し、上下方向に長い楕円状の噴射口92bは、排水管81の内周面に開口している。
【0043】
(制御部)
制御部100は、切削装置1を構成する各構成要素をそれぞれ制御するものであって、制御プログラムにしたがって演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)や、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリなどを備えている。特に、本実施形態では、後述のように、排水機構80を構成する排水管81に設けられた噴射部83にエアを供給するエア供給源84の供給経路であるエア配管86に設けられたエアバルブV3と、噴射部83に水を供給する水供給源85の供給経路である水配管87に設けられた水バルブV4の開閉を制御する機能を果たす。
【0044】
[切削装置の作用]
次に、以上のように構成された切削装置1の作用について説明する。
【0045】
被加工物であるウェーハWの切削装置1による切削に際して、ウェーハWがこれを保持するリングフレームFと共に
図1に示すチャックテーブル10の保持面上に載置されると、リングフレームFが4つのクランプ11によってウェーハWと共にチャックテーブル10の保持面上に固定される。この状態から、切削送り機構20によってチャックテーブル10がX軸方向に沿って移動して切削ユニット30の下方に位置決めされると、切削ユニット30の撮像ユニット32によってウェーハWの表面が撮像される。このウェーハWの表面の撮像ユニット32による撮像によって画像が得られると、その画像に基づくパターンマッチング処理によって切削すべき分割予定ラインL1(
図2参照)が検出される。
【0046】
上述のように、ウェーハWの分割予定ラインL1が検出されると、切削ユニット30の切削ブレード35(
図3参照)のY軸方向(割り出し方向)の位置が割り出し送り機構50によって割り出され、該切削ブレード35のY軸方向の位置が切削すべき分割予定ラインL1の位置に合わせられる。
【0047】
そして、上記状態から切削ユニット30の切削ブレード35が高速で回転駆動されながら、切り込み送り機構40によって所定の切込量分だけ下降するとともに、切削送り機構20によってチャックテーブル10とこれに保持されたウェーハWがX軸方向(切り出し送り方向)に移動する。すると、ウェーハWは、切削ユニット30の切削ブレード35によって分割予定ラインL1に沿って切削され、このような作業が一方向の全ての分割予定ラインL1に対して行われると、回転機構12によってチャックテーブル10とこれに保持されたウェーハWが90°だけ回転され、ウェーハWに対して、切削が終了した分割予定ラインL1と直交する他方向の分割予定ラインL2(
図2参照)に沿う切削が同様になされる。
【0048】
ところで、以上のウェーハWの切削ブレード35による切削加工においては、
図3に示す切削水供給部60の切削水供給源63からシャワーノズル61とクーラーノズル62に供給される切削水が切削ブレード35に向かって噴射されるが、該切削ブレード35に向かって噴射される切削水は、切削ブレード35の高速回転によって周囲に飛散する。この周囲に飛散する切削水には、ウェーハWの切削によって発生した切削屑が含まれているが、この切削屑を含んだ切削廃水は、
図4及び
図5に示すカバー4や伸縮カバー5,6の上に落下し、これらのカバー4や伸縮カバー5,6のY軸方向両端部からウォータケース70内に落下して受け止められる。
【0049】
而して、制御部100は、ウェーハWを切削加工しているときにのみエアバルブV3と水バルブV4を開く。すると、
図6及び
図7に示すエア供給源84からエアがエア配管86を通って排水管81の噴射部83に形成されたミキシング部83Aに供給されるとともに、水供給源85から水が水配管87を経てミキシング部83Aに供給される。すると、ミキシング部83Aにおいてエアと水とがミキシングされて混合流体が生成され、この混合流体が噴射ノズル92の噴射口92bから排水管81内に向かって
図6に矢印aにて示すように斜め下方に向かって勢いよく噴射される。
【0050】
また、ウォータケース70によって受け止められた切削廃液は、排水管81の傾斜(勾配)に沿って下流側へと流れるが、この切削廃水の流れは、噴射ノズル92から噴射される混合流体によって促進され、該切削廃水は、排水管81内を下流側に向かって効率よくスムーズに押し流される。この場合、排水管81内に噴射される混合流体によって切削廃水が排水管81内でかき回されるため、排水管81内への切削屑の滞留が防がれる。
【0051】
さらに、本実施形態では、
図1に示すように、排水管81の下流端に近い部分が分岐管(排気管)88によって吸引源89に接続されているため、排水管81に噴射される混合流体のエアが吸引源89によって吸引され、混合流体と切削廃水の排水口74からウォータケース70への逆流が防がれる。この結果、切削屑を含んだ切削廃水は、排水管81内を下流側に向かって一層効率よくスムーズに流れ、切削廃水に含まれる切削屑などが排水管81内に滞留して堆積することがない。このため、ウォータケース70によって受け止められて回収された切削廃液は、排水管81によってウォータケース70外へと効率よく確実に排出される。なお、切削屑を含んだ切削廃水は、排水管81からドレインパイプ82を通って不図示の廃水処理設備へと送られて、切削屑が除去されるなどの廃水処理がなされる。
【0052】
また、本実施形態においては、制御部100は、ウェーハWを切削加工しているときにのみエアバルブV3と水バルブV4を開いて混合流体を噴射部83の噴射ノズル92から排水管81内に噴射するようにしたため、噴射部83へのエアと水の供給量を必要最小限に抑えることができて経済的であるという効果も得られる。なお、本実施形態のように、噴射部83の噴射ノズル92からエアと水との混合流体を噴射すれば、エアのみを噴射する場合や水のみを噴射する場合に比して強い洗浄力を得ることができる。
【0053】
ところで、以上の実施形態では、
図6及び
図7に示すように、噴射部83を排水管81の垂直部81Aに配置したが、
図8及び
図9に示すように、排水管81の垂直部81Aよりも下流側部分の左右両側(
図9の左右)にそれぞれ配置してもよい。なお、
図8及び
図9においては、
図6及び
図7において示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0054】
すなわち、
図9に示すように、排水管81の左右両側(
図9の左右)にそれぞれ配置された各噴射部83は、円弧状のミキシング部83Aをそれぞれ備えており、各ミキシング部83Aには、連通孔83a、プラグ90、エア配管86及びエアバルブV3を経てエア供給源84がそれぞれ接続されるとともに、連通孔83a、プラグ91、水配管87及び水バルブV4を経て水供給源85がそれぞれ接続されている。そして、各ミキシング部83Aの周方向中間部からは噴射ノズル92が当該排水管81の内部及び下流側に向かって斜め下方にそれぞれ形成されており、各噴射ノズル92の円孔状の流入口92aは、ミキシング部83Aの側面にそれぞれ開口し、楕円状の噴射口92bは、排水管81の内周面に開口している。
【0055】
したがって、ウェーハWの切削加工時にエアバルブV3と水バルブV4が開かれると、エア供給源84からエアがエア配管86を通って排水管81の左右両側の各噴射部83に形成されたミキシング部83Aにそれぞれ供給されるとともに、水供給源85から水が水配管87を経て左右のミキシング部83Aにそれぞれ供給される。すると、各ミキシング部83Aにおいてエアと水とがミキシングされて混合流体が生成され、この混合流体が各噴射ノズル92の噴射口92bから排水管81内に向かってそれぞれ
図9に矢印aにて示すように斜め下方に向かって勢いよく噴射されるため、切削廃水の排水管81内での流れが混合流体によって促進され、該切削廃水は、排水管81内を下流側に向かって効率よくスムーズに押し流される。
【0056】
或いは、噴射部83を
図10及び
図11に示すように排水管81の垂直部81Aよりも下流側部分の底部に配置してもよい。なお、
図10及び
図11においても、
図6及び
図7において示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0057】
すなわち、排水管81の底部に配置された各噴射部83は、円弧状のミキシング部83Aを備えており、このミキシング部83Aには、連通孔83a、プラグ90、エア配管86及びエアバルブV3を経てエア供給源84が接続されるとともに、連通孔83a、プラグ91、水配管87及び水バルブV4を経て水供給源85が接続されている。そして、ミキシング部83Aの周方向中間部からは噴射ノズル92が当該排水管81の内部及び下流側に向かって斜め上方に形成されており、該噴射ノズル92の円孔状の流入口92aは、ミキシング部83Aの側面に開口し、楕円状の噴射口92bは、排水管81の内周面に下流側に向かって斜め上方に開口している。
【0058】
したがって、ウェーハWの切削加工時にエアバルブV3と水バルブV4が開かれると、エア供給源84からエアがエア配管86を通って排水管81の噴射部83に形成されたミキシング部83Aに供給されるとともに、水供給源85から水が水配管87を経てミキシング部83Aに供給される。すると、ミキシング部83Aにおいてエアと水とがミキシングされて混合流体が生成され、この混合流体が噴射ノズル92の噴射口92bから排水管81内に向かって
図10に矢印aにて示すように下流側に向かって斜め上方に勢いよく噴射されるため、切削廃水の排水管81内での流れが混合流体によって促進され、該切削廃水は、排水管81内を下流側に向かって効率よくスムーズに押し流される。
【0059】
ところで、以上の実施形態においては、
図1に示すように、排水管81の下流端部分から分岐管88を分岐させ、この分岐管88を吸引源89に接続する構成を採用したが、
図12に示すように、分岐管88をウォータケース70に接続するようにしてもよい。ここで、ウォータケース70の内部の圧力は大気圧に保たれているため、排水管81の分岐管88が分岐する下流側部分も大気圧となって同圧となる。したがって、切削屑を含んだ切削廃水は、排水管81の勾配に沿って該排水管81内を下流側に向かって流れるが、この流れは、噴射部83から排水管81内への混合流体の噴射によって促進される。この結果、切削屑などの排水管81内への堆積が一層確実に防がれて切削廃水のウォータケース70からの排出が効率よくなされるという効果が得られる。なお、
図12に示す例では、分岐管88をウォータケース70に接続したが、分岐管88を直接大気に開放するようにしてもよい。
【0060】
なお、以上は本発明を切削装置1に対して適用した形態について説明したが、本発明は、切削装置1以外の研削装置、研磨装置などの他の任意の加工装置に対しても同様に適用可能である。
【0061】
また、本実施形態では、ウェーハWが研削加工されているときにのみ排水管81内に混合流体を噴射するようにしたが、混合流体を排水管81内に常時噴射するようにしてもよい。
【0062】
さらに、以上の実施形態では、被加工物としてウェーハWを切削する場合を例として説明したが、被加工物としては、ウェーハW以外の任意のものを採用することができる。
【0063】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
1:切削装置、2:基台、3:コラム、4:カバー、5,6:伸縮カバー、
10:チャックテーブル、11:クランプ、12:回転機構、20:切削送り機構、
21:X軸ガイドレール、22:スライダ、23:X軸ボールネジ、
24:X軸サーボモータ、30:切削ユニット、31:スピンドルユニット、
32:撮像ユニット、33:スピンドルハウジング、34:スピンドル、
35:切削ブレード、35a:基台、35b:切れ刃、40:切込み送り機構、
41:Z軸ガイドレール、42:昇降板、43:Z軸ボールネジ、
44:Z軸サーボモータ、50:割り出し送り機構、51:スライダ、
52:Y軸ガイドレール、53:Y軸ボールネジ、60:研削水供給部、
61:シャワーノズル、62:クーラーノズル、63:切削水供給部、
64,65:配管、70:ウォータケース、70a:開口部、71:内壁、72:外壁、73:底壁、74:排水口、80:排水機構、81:排水管、81A:排水管の垂直部、
82:ドレインパイプ、83:噴射部、83A:ミキシング部、83a:連通孔、
84:エア供給源、85:水供給源、86:エア配管(エア供給経路)、
87:水配管(水供給経路)、88:分岐管、89:吸引源、90,91:プラグ、
92:噴射ノズル、92a:噴射ノズルの流入口、92b:噴射ノズルの噴射口、
100:制御部、D:デバイス、F:リングフレーム、L1,L2:分割予定ライン、
T:ダイシングテープ、V1,V2:開閉バルブ、V3:エアバルブ、V4:水バルブ、W:ウェーハ(被加工物)