(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009433
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】凍上を抑制する舗装構造物および舗装構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
E01C 11/24 20060101AFI20250110BHJP
【FI】
E01C11/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112437
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000175021
【氏名又は名称】三井化学産資株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(71)【出願人】
【識別番号】523259994
【氏名又は名称】所 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弘中 淳市
(72)【発明者】
【氏名】松本 七保子
(72)【発明者】
【氏名】石川 達也
(72)【発明者】
【氏名】所 哲也
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA04
2D051AH01
2D051CA04
2D051EB02
(57)【要約】
【課題】凍上を抑制する舗装構造物を提供する。
【解決手段】舗装構造物2は、路床4の上方に敷設された砕石層6と、砕石層6の上方に敷設された表層8と、砕石層6と表層8との境界または砕石層6中に設置された吸水性シート10とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍上を抑制する舗装構造物であって、
路床の上方に敷設された砕石層と、
前記砕石層の上方に敷設された表層と、
前記砕石層と前記表層との境界または前記砕石層中に設置された吸水性シートとを備える舗装構造物。
【請求項2】
前記吸水性シートは、前記砕石層の上側部分に設置されている、請求項1に記載の舗装構造物。
【請求項3】
前記砕石層は、前記路床の上面に敷設された下層路盤と、前記下層路盤の上面に敷設された上層路盤とを含み、
前記吸水性シートは、前記上層路盤と前記表層との境界または前記上層路盤中に設置されている、請求項1に記載の舗装構造物。
【請求項4】
前記吸水性シートは、前記上層路盤の上側部分に設置されている、請求項3に記載の舗装構造物。
【請求項5】
前記吸水性シートは、前記砕石層の上面に散布されるアスファルト乳剤が浸透する深さよりも深い位置に設置されている、請求項1に記載の舗装構造物。
【請求項6】
前記吸水性シートは、吸水性を有する繊維が所定方向に沿って織り込まれており、前記繊維によって吸収した水を前記所定方向に導く、請求項1に記載の舗装構造物。
【請求項7】
前記吸水性シートは、吸水性を有する繊維が所定方向に沿ってジオテキスタイルに織り込まれた吸水性補強シートであり、前記繊維によって吸収した水を前記所定方向に導く、請求項1に記載の舗装構造物。
【請求項8】
凍上を抑制する舗装構造物の構築方法であって、
路床の上方に砕石層を敷設する工程と、
前記砕石層の上面または前記砕石層中に吸水性シートを設置する工程と、
前記砕石層の上方に表層を敷設する工程とを含む舗装構造物の構築方法。
【請求項9】
前記砕石層の上側部分に前記吸水性シートを設置する、請求項8に記載の舗装構造物の構築方法。
【請求項10】
前記砕石層として、前記路床の上面に下層路盤を敷設するとともに、前記下層路盤の上面に上層路盤を敷設し、
前記上層路盤の上面または前記上層路盤中に前記吸水性シートを設置する、請求項8に記載の舗装構造物の構築方法。
【請求項11】
前記上層路盤の上側部分に前記吸水性シートを設置する、請求項10に記載の舗装構造物の構築方法。
【請求項12】
前記砕石層の上面に散布されるアスファルト乳剤が浸透する深さよりも深い位置に前記吸水性シートを設置する、請求項8に記載の舗装構造物の構築方法。
【請求項13】
前記吸水性シートは、吸水性を有する繊維が所定方向に沿って織り込まれており、前記繊維によって吸収した水を前記所定方向に導く、請求項8に記載の舗装構造物の構築方法。
【請求項14】
前記吸水性シートは、吸水性を有する繊維が所定方向に沿ってジオテキスタイルに織り込まれた吸水性補強シートであり、前記繊維によって吸収した水を前記所定方向に導く、請求項8に記載の舗装構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍上を抑制する舗装構造物、および、凍上を抑制する舗装構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路や駐車場、飛行場の滑走路などの舗装構造物は、一般に、路床の上方に敷設された砕石層と、砕石層の上方に敷設された表層とを備えている。
【0003】
寒冷地に構築された舗装構造物においては、寒気が地盤に浸入することによって舗装構造物の内部にアイスレンズが形成されることがある。このアイスレンズは未凍結部分からの水分移動によって徐々に成長する。そして、アイスレンズがある程度の大きさに達すると、舗装構造物の表面が持ち上がる凍上現象が発生し、舗装構造物に亀裂が生じるという問題がある。
【0004】
そこで、凍上を起こしにくい材料に置き換える置換工法、遮水層を設けて降水および地下水が地盤へ補給されるのを防ぐ遮断工法など、凍上を抑制するための種々の工法が行われている(たとえば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、温暖化の影響により、寒冷地における融雪期間が短縮化しており、これに伴って多くの融雪水が短期間に舗装構造物に流入するようになっている。その結果、融雪期間において舗装構造物中の水分量が急激に増加するため、凍上が生じやすくなっており、より効果的な凍上の抑制が望まれている。
【0007】
本発明の課題は、凍上を抑制する舗装構造物、および、凍上を抑制する舗装構造物の構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記課題を解決する以下の舗装構造物が提供される。すなわち、
「凍上を抑制する舗装構造物であって、
路床の上方に敷設された砕石層と、
前記砕石層の上方に敷設された表層と、
前記砕石層と前記表層との境界または前記砕石層中に設置された吸水性シートとを備える舗装構造物」が提供される。
【0009】
好ましくは、前記吸水性シートは、前記砕石層の上側部分に設置されている。前記砕石層は、前記路床の上面に敷設された下層路盤と、前記下層路盤の上面に敷設された上層路盤とを含み、前記吸水性シートは、前記上層路盤と前記表層との境界または前記上層路盤中に設置されているのがよい。前記吸水性シートは、前記上層路盤の上側部分に設置されているのが好適である。
【0010】
前記吸水性シートは、前記砕石層の上面に散布されるアスファルト乳剤が浸透する深さよりも深い位置に設置され得る。
【0011】
前記吸水性シートは、吸水性を有する繊維が所定方向に沿って織り込まれており、前記繊維によって吸収した水を前記所定方向に導くのが望ましい。前記吸水性シートは、吸水性を有する繊維が所定方向に沿ってジオテキスタイルに織り込まれた吸水性補強シートであり、前記繊維によって吸収した水を前記所定方向に導くのが好都合である。
【0012】
また、本発明によれば、上記課題を解決する以下の舗装構造物の構築方法が提供される。すなわち、
「凍上を抑制する舗装構造物の構築方法であって、
路床の上方に砕石層を敷設する工程と、
前記砕石層の上面または前記砕石層中に吸水性シートを設置する工程と、
前記砕石層の上方に表層を敷設する工程とを含む舗装構造物の構築方法」が提供される。
【0013】
好ましくは、前記砕石層の上側部分に前記吸水性シートを設置する。前記砕石層として、前記路床の上面に下層路盤を敷設するとともに、前記下層路盤の上面に上層路盤を敷設し、前記上層路盤の上面または前記上層路盤中に前記吸水性シートを設置するのがよい。前記上層路盤の上側部分に前記吸水性シートを設置するのが好適である。
【0014】
前記砕石層の上面に散布されるアスファルト乳剤が浸透する深さよりも深い位置に前記吸水性シートを設置することができる。
【0015】
前記吸水性シートは、吸水性を有する繊維が所定方向に沿って織り込まれており、前記繊維によって吸収した水を前記所定方向に導くのが望ましい。前記吸水性シートは、吸水性を有する繊維が所定方向に沿ってジオテキスタイルに織り込まれた吸水性補強シートであり、前記繊維によって吸収した水を前記所定方向に導くのが好都合である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、表層の下方に溜まる水分を吸水性シートによって吸収し、表層の下方における水分率の上昇を抑えるので、アイスレンズの形成ないし成長を抑制して、凍上を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る舗装構造物の一例を示す断面図(砕石層と表層との境界に吸水性シートが設置されている例)。
【
図2】本発明に係る舗装構造物の他の例を示す断面図(砕石層中に吸水性シートが設置されている例)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の舗装構造物の好適実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
(舗装構造物2)
図1および
図2に示すとおり、舗装構造物2は、路床4の上方に敷設された砕石層6と、砕石層6の上方に敷設された表層8と、吸水性シート10とを備える。
【0020】
(砕石層6)
図1に示す砕石層6は、路床4の上面に敷設された下層路盤6aと、下層路盤6aの上面に敷設された上層路盤6bとを含む。下層路盤6aの材料としては、クラッシャラン、クラッシャラン鉄鋼スラグ、再生クラッシャラン、切込砂利、山砂利、砂などが挙げられる。上層路盤6bの材料は、粒度調整砕石、粒度調整鉄鋼スラグ、再生粒度調整砕石、水硬性粒度調整鉄鋼スラグなどでよい。図示していないが、砕石層6の上面(図示の実施形態では上層路盤6bの上面)には、アスファルト乳剤が散布されている。なお、砕石層6は、下層路盤6aおよび上層路盤6bを有する2層構造ではなく、1層であってもよい。
【0021】
(表層8)
表層8は、アスファルト層またはコンクリート層から構成され得る。
図1および
図2には、表層8がアスファルト層である例が示されている。図示の表層8は、上層路盤6bの上面に敷設された基層部8aと、基層部8aの上面に敷設された表層部8bとを有する。ただし、表層8は、基層部8aおよび表層部8bを有する2層構造ではなく、1層であってもよい。
【0022】
表層8の基層部8aおよび表層部8bは、いずれもアスファルト混合物から構成され得る。基層部8aの骨材の粒度と、表層部8bの骨材の粒度とは異なるものでよい。基層部8aおよび表層部8bを構成するアスファルト混合物としては、常温アスファルト混合物でもよいが、常温アスファルト混合物よりも耐久性が優れる加熱アスファルト混合物であるのが好ましい。なお、図示していないが、基層部8aの上面には、アスファルト乳剤が散布されている。
【0023】
(吸水性シート10)
吸水性シート10は、砕石層6と表層8との境界に設置され(
図1参照)、または砕石層6中に設置され得る(
図2参照)。
図2に示すように、砕石層6中に吸水性シート10が設置される場合、吸水性シート10は砕石層6の上側部分(砕石層6の上下方向中間部よりも上方)に設置されているのが望ましい。
【0024】
図示の実施形態のように、砕石層6が下層路盤6aと上層路盤6bとを含む場合には、吸水性シート10は、上層路盤6bと表層8との境界に設置され(
図1参照)、または上層路盤6b中に設置され得る(
図2参照)。上層路盤6b中に吸水性シート10が設置される場合、吸水性シート10は、上層路盤6bの上側部分(上層路盤6bの上下方向中間部よりも上方)に設置されているのが好適である。
【0025】
図示の例においては、吸水性シート10が実質上水平に設置されているが、吸水性シート10は水平面に対して傾斜して設置されていてもよい。また、吸水性シート10は、折り曲げられて設置されることにより、局所的に傾斜部分ないし鉛直部分を有していてもよい。
【0026】
吸水性シート10は、砕石層6の上面に散布されるアスファルト乳剤が浸透する深さよりも深い位置(アスファルト乳剤が達しない位置)に設置されているのが好都合である。これによって、アスファルト乳剤が吸水性シート10に浸み込むことによる吸水性シート10の吸水機能の低下を防ぐことができる。
【0027】
吸水性シート10は、合成樹脂製の織布または不織布でよい。
図3に示すように、図示の吸水性シート10は、吸水性を有する繊維10aが所定方向(
図3に矢印Xで示す方向)に織り込まれており、繊維10aによって吸収した水を所定方向(X方向)に導くようになっている。繊維10aは、吸水性に加え、さらに親水性を有しているのが好適である。
【0028】
吸水性シート10の繊維10aの材質としては、たとえば、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロースエステル等が挙げられる。
図3に示すとおり、繊維10aは、
図3に矢印Yで示す方向(
図3における上下方向であり、X方向に直交する方向)に間隔をおいてX方向に延びる複数本のラインを形成している。繊維10aによって形成された複数のラインのそれぞれ(単一のライン)は、多数の繊維10aによって構成されている。また、繊維10aによって形成された複数のラインは互いに平行である。
【0029】
吸水性シート10は、ジオテキスタイルとして形成された主要部10bに、吸水性を有する繊維10aが織り込まれた吸水性補強シートであってもよい。これによって、舗装構造物2に設置された吸水性シート10が、舗装構造物2中の地下水や浸入水(舗装構造物2の表面および側方から舗装構造物2の内部に浸入する浸入水)を吸収して排出する機能だけでなく、舗装構造物2を補強する機能を発揮することができる。主要部10bの材質としては、たとえば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエステルが用いられ得る。
【0030】
そして、吸水性シート10においては、毛細管現象によって、単一のラインを形成する繊維10a同士の隙間に水を吸収するとともに、繊維10a同士の隙間に吸収した水を所定方向(X方向)に導くようになっている。また、吸水性シート10は、繊維10aの長手方向(X方向)に延びる1個以上の凹所(図示していない。)が各繊維10aに形成されていることにより、毛細管現象によって各繊維10aの凹所に水を吸収し、各繊維10aの凹所を介して所定方向(X方向)に水を運ぶようになっていてもよい。
【0031】
吸水性シート10においては、繊維10aが毛細管現象によって水を吸収するので、吸水性シート10の上方の水分を吸収するだけでなく、重力に逆らって吸水性シート10の下方からも水分を吸い上げることができる。
【0032】
図示の吸水性シート10は、Y軸方向両端部が繊維10aによって吸収した水を排出する排水部10cとなっている。そして、排水部10cが舗装構造物2の外部に接続されていることにより、吸水性シート10で吸収した水が舗装構造物2の外部に排水部10cから排出される。
【0033】
あるいは、排水溝(図示していない。)などの適宜の排水手段が舗装構造物2の内部に設けられている場合には、吸水性シート10の排水部10cは、排水手段に接続されていてもよい。この場合には、吸水性シート10で吸収した水が排水手段を介して舗装構造物2の外部に排出される。
【0034】
なお、吸水性シート10のY軸方向両端部以外が舗装構造物2の外部や排水手段などに接続されることによって、吸水性シート10のY軸方向両端部以外の部分に排水部が設けられていてもよい。
【0035】
一般に舗装構造物においては、日射により表層の温度が上がると、路床や砕石層に存在していた水分が水蒸気となって、路床や砕石層の間隙を通って上昇する。この水蒸気は、アスファルト層やコンクリート層などの透水性の低い表層に遮られるため、表層の下方(特に表層の下面近傍)に溜まりやすい(表層のキャッピング効果)。
【0036】
図示の実施形態の舗装構造物2においては、路床4や砕石層6から上昇する水蒸気を吸水性シート10によって吸収して外部に排出するので、表層8の下方において水分率が局所的に上昇するのを抑えることができる。したがって、舗装構造物2は、アイスレンズの形成ないし成長を抑制して、凍上を抑制することができる。また、表層8下方における水分率の局所的な上昇を抑えるので、砕石層6の吸出しを抑制することもできる。
【0037】
上記のとおり、特に表層8の下面近傍に水分が溜まりやすいため、吸水性シート10は、砕石層6と表層8との境界に近い位置に設置されるのが好ましい。ただし、アスファルト乳剤の浸透による吸水性シート10の吸水機能の低下を抑制する観点から、砕石層6の上面に散布されるアスファルト乳剤が浸透する深さよりも深い位置に、吸水性シート10が設置されているのがより好適である。
【0038】
次に、上述したとおりの舗装構造物2の構築方法について説明する。
【0039】
舗装構造物2を構築する際は、まず、路床4の上方に砕石層6を敷設する工程を実施する。図示の実施形態では、砕石層6が下層路盤6aおよび上層路盤6bを含むので、本工程においては、路床4の上面に下層路盤6aを敷設し、次いで、下層路盤6aの上面に上層路盤6bを敷設する。
【0040】
路床4の上面に下層路盤6aを敷設する際は、たとえば、ダンプトラックで搬入した路盤材を、モータグレーダ等の整地車両を用いて路床4の上面に敷きならし、転圧車両によって締め固める。これによって、下層路盤6aの上面を平坦に仕上げることができる。同様に、ダンプトラックで搬入した上層路盤6b用の路盤材を、下層路盤6aの上面に敷きならし、次いで締め固めることにより、上層路盤6bを敷設することができる。
【0041】
次いで、砕石層6を敷設した後、砕石層6の上面(すなわち、上層路盤6bの上面)に吸水性シート10を設置する(
図1参照)。あるいは、砕石層6を敷設する際に、砕石層6中に吸水性シート10を設置してもよい。砕石層6中に吸水性シート10を設置する場合には、砕石層6の上側部分(上層路盤6bの上側部分)に吸水性シート10を設置するのが望ましい。
【0042】
吸水性シート10の設置する深さについては、砕石層6の上面に散布されるアスファルト乳剤が浸透する深さよりも深い位置にするのがよい。これによって、アスファルト乳剤が吸水性シート10に浸み込むことによる吸水性シート10の吸水機能の低下を防ぐことができる。
【0043】
このようにして構築された舗装構造物2においては、路床4や砕石層6から上昇する水蒸気を吸水性シート10によって吸収して外部に排出するので、表層8の下方において水分率が局所的に上昇するのを抑えることができる。したがって、舗装構造物2は、アイスレンズの形成ないし成長を抑制して、凍上を抑制することができる。また、表層8下方における水分率の局所的な上昇を抑えるので、砕石層6の吸出しを抑制することもできる。
【0044】
なお、降雪地域においては冬季に融雪剤が舗装道路に散布されるところ、融雪剤には塩分が含まれているため、地下水および浸入水の塩分濃度が上昇して塩が結晶化してしまう場合がある。
【0045】
この点、吸水性シート10においては、吸水性を有する繊維10aが毛細管現象によって舗装構造物2中の地下水および浸入水を吸収する一方、結晶化した塩を吸収することがないので、地下水および浸入水の塩分濃度が上昇して塩が結晶化した場合でも、吸水性シート10の繊維10aに目詰まりが生じにくく、吸水性シート10の吸水機能は、ほとんど低下しない。同様に、吸水性シート10においては、路床4や砕石層6から繊維10aに土の細粒分が流入することも阻止される。したがって、舗装構造物2においては、長期にわたってアイスレンズの形成ないし成長を抑制して、凍上を抑制することができる。
【符号の説明】
【0046】
2:舗装構造物
4:路床
6:砕石層
6a:下層路盤
6b:上層路盤
8:表層
8a:基層部
8b:表層部
10:吸水性シート
10a:繊維
10b:吸水性シートの主要部
10c:吸水性シートの排水部