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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025094787
(43)【公開日】2025-06-25
(54)【発明の名称】光学素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/122 20060101AFI20250618BHJP
   G02B 6/14 20060101ALI20250618BHJP
   G02B 6/124 20060101ALI20250618BHJP
【FI】
G02B6/122
G02B6/14
G02B6/124
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023210538
(22)【出願日】2023-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】御手洗 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 剛
【テーマコード(参考)】
2H147
【Fターム(参考)】
2H147AB28
2H147BB03
2H147BD15
2H147BD16
2H147BE11
2H147BE20
2H147BG04
2H147BG06
2H147CA11
2H147EA13C
2H147EA14B
2H147FC03
2H147FD20
(57)【要約】
【課題】光の損失を抑制することが可能な光学素子を提供する。
【解決手段】面内に第1領域と第2領域とを有する基板と、光を入力するための第1導波路と、光を出力するための第2導波路と、を具備し、前記第2領域は前記第1領域を囲み、前記第1導波路および前記第2導波路は前記第1領域に光学的に結合し、前記第1領域において、前記基板は、順番に積層された第1層と第2層とを含み、前記第2層に複数の孔が設けられ、前記孔の深さは、前記第2層の厚さの1/2以下であり、前記第2領域において前記基板は前記第2層を有さず、前記第1層を有する光学素子。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面内に第1領域と第2領域とを有する基板と、
光を入力するための第1導波路と、
光を出力するための第2導波路と、を具備し、
前記第2領域は前記第1領域を囲み、
前記第1導波路および前記第2導波路は前記第1領域に光学的に結合し、
前記第1領域において、前記基板は、順番に積層された第1層と第2層とを含み、
前記第2層に複数の孔が設けられ、
前記孔の深さは、前記第2層の厚さの1/2以下であり、
前記第2領域において前記基板は前記第2層を有さず、前記第1層を有する光学素子。
【請求項2】
前記孔の深さは、前記第2層の厚さの1/20以上、1/2以下である請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記孔の深さは、前記第2層の厚さの1/5以上、2/5以下である請求項1または請求項2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第1層は酸化シリコンで形成され、
前記第2層はシリコンで形成されている請求項1または請求項2に記載の光学素子。
【請求項5】
前記孔の平面形状は矩形である請求項1または請求項2に記載の光学素子。
【請求項6】
前記第1領域の平面形状は矩形である請求項1または請求項2に記載の光学素子。
【請求項7】
1つの前記第1導波路と、
複数の前記第2導波路と、を具備する請求項1または請求項2に記載の光学素子。
【請求項8】
前記第1導波路に入力される前記光のモードは、前記第2導波路から出力される前記光のモードとは異なる請求項1または請求項2に記載の光学素子。
【請求項9】
前記第1導波路および前記第2導波路の少なくとも一方に接続されたグレーティングカプラを具備し、
前記グレーティングカプラは前記第2層で形成され、かつ前記第2層に設けられた凹凸を有し、
前記孔の深さは前記凹凸の深さと等しい請求項1または請求項2に記載の光学素子。
【請求項10】
前記第1領域の側面および上面を覆い、前記第2領域の上面を覆う絶縁膜を具備する請求項1または請求項2に記載の光学素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は光学素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板の面内に配置された複数の孔を有する、モザイク型の光学素子が開発されている(非特許文献1など)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“Deep Learning Enabled Design of Complex Trasmission Matrices for Universal Optical Components” Nicholas J.Dinsdale et.al. ACS Photonics 2021,8,283-295
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
穴のパターンに応じて、特定の分岐比で光を分岐させることができる光学素子が知られている。しかし、穴によって光の損失が増加する恐れがある。そこで、光の損失を抑制することが可能な光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る光学素子は、面内に第1領域と第2領域とを有する基板と、光を入力するための第1導波路と、光を出力するための第2導波路と、を具備し、前記第2領域は前記第1領域を囲み、前記第1導波路および前記第2導波路は前記第1領域に光学的に結合し、前記第1領域において、前記基板は、順番に積層された第1層と第2層とを含み、前記第2層に複数の孔が設けられ、前記孔の深さは、前記第2層の厚さの1/2以下であり、前記第2領域において前記基板は前記第2層を有さず、前記第1層を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、光の損失を抑制することが可能な光学素子を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は第1実施形態に係る光学素子を例示する平面図である。
図2図2は合分波器を拡大した模式的な平面図である。
図3A図3A図2の線A-Aに沿った断面図である。
図3B図3B図2の線B-Bに沿った断面図である。
図3C図3Cはグレーティングカプラを例示する断面図である。
図4A図4Aは光学素子の製造方法を例示する断面図である。
図4B図4Bは光学素子の製造方法を例示する断面図である。
図5A図5Aは光学素子の製造方法を例示する断面図である。
図5B図5Bは光学素子の製造方法を例示する断面図である。
図6図6は比較例に係る合分波器を例示する断面図である。
図7A図7Aは第2実施形態に係る合分波器を例示する平面図である。
図7B図7Bは第2実施形態に係る合分波器を例示する平面図である。
図7C図7Cは第2実施形態に係る合分波器を例示する平面図である。
図8A図8Aは分岐比の計算結果を例示する図である。
図8B図8Bは分岐比の計算結果を例示する図である。
図8C図8Cは分岐比の計算結果を例示する図である。
図9図9は光の損失の計算結果を例示する図である。
図10A図10Aは孔の深さを20nmとした場合の合分波器を例示する平面図である。
図10B図10Bは孔の深さを20nmとした場合の合分波器を例示する平面図である。
図10C図10Cは孔の深さを20nmとした場合の合分波器を例示する平面図である。
図11A図11Aは孔の深さを70nmとした場合の合分波器を例示する平面図である。
図11B図11Bは孔の深さを70nmとした場合の合分波器を例示する平面図である。
図11C図11Cは孔の深さを70nmとした場合の合分波器を例示する平面図である。
図11D図11Dは孔の深さを70nmとした場合の合分波器を例示する平面図である。
図11E図11Eは孔の深さを70nmとした場合の合分波器を例示する平面図である。
図12A図12Aは孔の深さを120nmとした場合の合分波器を例示する平面図である。
図12B図12Bは孔の深さを120nmとした場合の合分波器を例示する平面図である。
図12C図12Cは孔の深さを120nmとした場合の合分波器を例示する平面図である。
図13A図13Aは分岐比の計算結果を例示する図である。
図13B図13Bは分岐比の計算結果を例示する図である。
図13C図13Cは分岐比の計算結果を例示する図である。
図14図14は光の損失の計算結果を例示する図である。
図15図15はスペクトルを例示する図である。
図16図16はスペクトルを例示する図である。
図17図17はスペクトルを例示する図である。
図18図18は分岐比の計算結果を表す図である。
図19図19は光の損失の計算結果を表す。
図20A図20Aはスペクトルを例示する図である。
図20B図20Bは第3実施形態に係る合分波器を例示する平面図である。
図21A図21Aはスペクトルを例示する図である。
図21B図21Bは第3実施形態に係る合分波器を例示する平面図である。
図22A図22Aはスペクトルを例示する図である。
図22B図22Bは第3実施形態に係る合分波器を例示する平面図である。
図23図23は第4実施形態に係るモード変換器を例示する平面図である。
図24A図24Aはスペクトルを例示する図である。
図24B図24Bは第4実施形態に係るモード変換器を例示する平面図である。
図25A図25Aはスペクトルを例示する図である。
図25B図25Bは第4実施形態に係るモード変換器を例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0009】
本開示の一形態は、(1)面内に第1領域と第2領域とを有する基板と、光を入力するための第1導波路と、光を出力するための第2導波路と、を具備し、前記第2領域は前記第1領域を囲み、前記第1導波路および前記第2導波路は前記第1領域に光学的に結合し、前記第1領域において、前記基板は、順番に積層された第1層と第2層とを含み、前記第2層に複数の孔が設けられ、前記孔の深さは、前記第2層の厚さの1/2以下であり、前記第2領域において前記基板は前記第2層を有さず、前記第1層を有する光学素子である。光の損失を抑制することができる。
(2)上記(1)において、前記孔の深さは、前記第2層の厚さの1/20以上、1/2以下でもよい。光の損失を抑制することができる。
(3)上記(1)または(2)において、前記孔の深さは、前記第2層の厚さの1/5以上、2/5以下でもよい。光の損失を抑制することができる。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記第1層は酸化シリコンで形成され、前記第2層はシリコンで形成されてもよい。光の損失を抑制することができる。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記孔の平面形状は矩形でもよい。光の損失を抑制することができる。
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記第1領域の平面形状は矩形でもよい。矩形の第1領域に光を閉じ込め、損失を抑制することができる。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、1つの前記第1導波路と、複数の前記第2導波路と、を具備してもよい。光を分岐することができる。
(8)上記(1)から(7)のいずれかにおいて、前記第1導波路に入力される前記光のモードは、前記第2導波路から出力される前記光のモードとは異なってもよい。光のモードを変換することができる。
(9)上記(1)から(8)のいずれかにおいて、前記第1導波路および前記第2導波路の少なくとも一方に接続されたグレーティングカプラを具備し、前記グレーティングカプラは前記第2層で形成され、かつ前記第2層に設けられた凹凸を有し、前記孔の深さは前記凹凸の深さと等しくてもよい。孔と凹凸とを同時に形成することができる。
(10)上記(1)から(9)のいずれかにおいて、前記第1領域の側面および上面を覆い、前記第2領域の上面を覆う絶縁膜を具備してもよい。第1領域の第2層に光を閉じ込めることができる。
【0010】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光学素子の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0011】
<第1実施形態>
(光学素子)
図1は第1実施形態に係る光学素子1を例示する平面図である。光学素子1は、基板10、合分波器100、導波路20、導波路22および導波路24、3つのグレーティングカプラ26を有する。平面図においては、光学素子1を覆うクラッド層を透視している。
【0012】
基板10は、例えばSOI(Silicon on Insulator)基板である。基板10の2つの辺は、X軸方向に平行である。別の2つの辺は、Y軸方向に平行である。基板10の上面は、XY平面に平行である。Z軸方向は、基板10の法線方向である。X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向は互いに直交する。基板10のX軸方向の長さL1は例えば300μmである。Y軸方向の長さL2は例えば150μmである。
【0013】
基板10は領域30(第1領域)と領域32(第2領域)とを有する。領域30は基板10の中央に位置する。領域32は、領域30の外に位置し、領域30を囲む。領域30に合分波器100が設けられている。
【0014】
導波路20、導波路22および導波路24は、合分波器100に光学的に結合されている。導波路20(第1導波路)は、合分波器100の1つの端部に接続されている。導波路22および導波路24(第2導波路)は、合分波器100の別の端部に接続されている。導波路20、導波路22および導波路24それぞれの合分波器100とは反対の部分にグレーティングカプラ26が接続されている。導波路20、導波路22、導波路24、およびグレーティングカプラ26は、領域32に設けられている。グレーティングカプラ26のX軸方向の長さLaは例えば60μmである。Y軸方向の長さLbは例えば30μmである。
【0015】
本開示の一例において、合分波器100はパワー合分波器である。パワー合分波器とは、入力される光をある強度の割合で分岐して、複数の光として出力する素子、または入力される複数の光を合成して1つまたは複数の光として出力する素子である。本開示の別の例では、合分波器はモードディバイダである。モードディバイダとは、特定の偏波を有する光が入力されたとき、その光の一部をある割合で別の偏波を有する光に変換して、特定の偏波を有する光と別の偏波を有する光とに分岐して出力する素子である。本開示のさらに別の例においては、合分波器はモード変換器である。モード変換器とは、特定の偏波を有する光が入力されたとき、その光を別の偏波を有する光に変換して出力する素子である。
【0016】
(合分波器)
図2は合分波器100を拡大した模式的な平面図である。合分波器100は基板10の領域30に設けられている。領域30の平面形状は矩形である。領域30の外に領域32が位置する。
【0017】
合分波器100は、モザイク型の受動型光学素子である。モザイク型とは複数の孔40が面内に2次元配列されている構成を意味する。合分波器100は、入射された特定の波長を有する光を分岐して出射する、または入射された互いに同じ波長を有する複数の光を合波して出射する。合分波器100の平面形状は例えば矩形である。合分波器100のX軸方向の長さL3は、例えば32μmである。Y軸方向の長さL4は例えば6μmである。
【0018】
合分波器100は複数の孔40を有する。複数の孔40は、XY面内に2次元状に配列され、X軸方向およびY軸方向に沿って並ぶ。孔40の平面形状は例えば矩形である。孔40の一辺の長さL5は例えば400nmである。孔40の個数および位置は、合分波器100の特性に応じて決められる。特性とは、例えば分岐比、出力光のモードなどである。
【0019】
図3A図2の線A-Aに沿った断面図である。図3B図2の線B-Bに沿った断面図である。図3Aおよび図3Bに示すように、基板10はSOI基板であり、基板12、ボックス層14(第1層)、およびシリコン層16(第2層)を有する。
【0020】
図3Aに示すように、基板10の領域30に合分波器100が形成されている。領域30にはシリコン層16が設けられている。基板12の1つの面にボックス層14が積層されている。シリコン層16は、ボックス層14の基板12とは反対の面に積層されている。シリコン層16のうち厚い部分の厚さT1は例えば220nmである。シリコン層16のボックス層14とは反対の面にクラッド層18(絶縁膜)が積層されている。基板12およびシリコン層16はシリコン(Si)で形成されている。ボックス層14およびクラッド層18は酸化シリコン(SiO)などの絶縁体で形成されている。ボックス層14の厚さは例えば3μmである。シリコンの屈折率は波長1.55μmにおいて約3.46である。SiOの屈折率は波長1.55μmにおいて約1.46である。シリコン層16の屈折率はボックス層14およびクラッド層18の屈折率よりも高い。Y軸方向において、領域30に接する領域32にはシリコン層16は設けられておらず、基板12およびボックス層14が設けられている。
【0021】
図3Aに示すように、シリコン層16に複数の孔40が設けられている。シリコン層16のうち孔40が設けられていない部分をテラス17とする。テラス17の位置におけるシリコン層16の厚さがT1である。Z軸方向において、孔40はテラス17よりも窪んでいる。テラス17の上面を基準とする孔40の深さD1は、シリコン層16の厚さT1の1/2以下である。厚さT1が220nmの場合、深さD1は110nm以下であり、例えば50nm以上、100nm以下でもよいし、70nmとしてもよい。
【0022】
クラッド層18はシリコン層16の上面および側面を覆う。孔40の内部はクラッド層18で埋められてもよいし、クラッド層18によって埋められず、空気が含まれてもよい。孔40の位置および個数は、特性に応じて決められる。孔40の個数は例えば数十個、数百個または千個以上である。
【0023】
図3Bに示すように、導波路20はシリコン層16で形成されている。導波路20の断面形状は矩形である。導波路20の幅W1は例えば1μmである。導波路20の厚さは、シリコン層16のテラス17の厚さと同じであり、例えば220nmである。導波路20の上面および側面はクラッド層18によって覆われる。導波路22および導波路24は、導波路20と同じ構成を有する。
【0024】
(グレーティングカプラ)
図3Cはグレーティングカプラ26を例示する断面図である。グレーティングカプラ26はシリコン層16に設けられ、凹凸を有する。すなわち、複数の凸部26aと複数の凹部26bとが交互に並ぶ。凸部26aにおけるシリコン層16の厚さはテラス17の厚さT1に等しい。凸部26aの上面から凹部26bの底面までの深さD2は、孔40の深さD1に等しく、例えば70nmである。
【0025】
図1に示すように、合分波器100には3つの導波路20、導波路22および導波路24が接続されている。グレーティングカプラ26から導波路20に光を入射する。図2に矢印で示すように、光は導波路20を伝搬し、合分波器100に入力される。孔40の内部はSiOのクラッド層18で埋められている。孔40の屈折率は、シリコン層16の屈折率とは異なる。光は基板10およびクラッド層18を含む面内で散乱され、分岐される。光の一部は導波路22から出力される。光の別の一部は導波路24から出力される。光の分岐比をγとすると、強度1の光が導波路20に入力されたとき、導波路24から出力される光の強度がγであり、導波路22から出力される光の強度が1-γである。γは1以下の数値である。導波路22および導波路24からの出射光は、グレーティングカプラ26を通じて出力される。
【0026】
所望の分岐比に応じて複数の孔40の配置を設計すればよい。孔40のパターンを変えつつ、分岐比を繰り返しシミュレーション計算することで、所望の分岐比に対応するパターンを設計してもよい。
【0027】
(製造方法)
図4Aから図5Bは光学素子1の製造方法を例示する断面図であり、図3Aに対応する断面を図示している。
【0028】
図4Aに示すように、シリコン層16の上面にレジストを塗布し、ステッパを用いてフォトリソグラフィを行い、レジストマスク50を形成する。設計された孔40の配置に応じて、レジストマスク50がパターニングされ、開口部52が形成される。開口部52からシリコン層16が露出する。
【0029】
図4Bに示すように、ドライエッチングを行い、シリコン層16に孔40を形成する。シリコン層16のうち、レジストマスク50の開口部52から露出する部分がエッチングされ、孔40が形成される。エッチング深さはシリコン層16の厚さの半分以下であり、例えば70nmである。孔40の底面とボックス層14の上面との間には、厚さ150nmのシリコン層16が残る。シリコン層16のうちレジストマスク50で覆われた部分はエッチングされない。
【0030】
図示は省略するが、グレーティングカプラ26が製造される部分においても、レジストマスク50は開口部を有する。シリコン層16のうち当該開口部から露出する部分を、例えば深さ70nmまでドライエッチングする。孔40の製造と同時に、グレーティングカプラ26の凹部26bも形成される。この工程では導波路は形成されない。孔40および凹部26bの製造後、レジストマスク50を除去する。
【0031】
図5Aに示すように、シリコン層16の上面にレジストを塗布し、フォトリソグラフィを行い、レジストマスク54を形成する。レジストマスク54は矩形であり、領域30を覆う。Y軸方向において、領域30に接する領域32のシリコン層16は、レジストマスク54から露出する。
【0032】
図5Bに示すように、ドライエッチングを行い、シリコン層16のうちレジストマスク54から露出する部分を取り除く。領域32からはシリコン層16が除去され、ボックス層14が露出する。領域30にはシリコン層16が残る。
【0033】
図示は省略するが、導波路が製造される部分においても、レジストマスク54がパターニングされる。レジストマスク54は、シリコン層16のうち導波路が形成される部分を覆う。ドライエッチング後、シリコン層16が残存する部分に導波路が形成される。ドライエッチングの後、レジストマスク54を除去する。クラッド層18を成膜する。クラッド層18は領域30の上面および側面、領域32の上面、および導波路を覆う。以上の工程で光学素子1が製造される。
【0034】
(比較例)
図6は比較例に係る合分波器110を例示する断面図である。基板10は領域31を有する。領域31に複数の孔40が設けられている。孔40の深さD3は、図3Aにおける深さD1より大きく、シリコン層16の厚さT1の1/2よりも大きい。厚さT1が220nmである場合、深さD3は例えば110nmより大きい。シリコン層16はリブ19を有する。リブ19は、XY平面内において領域31よりも外に突出している。リブ19の上面からテラス17の上面までの距離は、例えば深さD3に等しい。
【0035】
比較例の孔40は深いため、合分波器110を導波する光のモードが、Z軸方向において上下対称に近づく。しかし、Z軸方向において、光のモードの半分程度がクラッド層18に染み出す。深い孔40によって光が強く散乱され、かつシリコンのリブ19があるため、散乱された光が、XY平面内において合分波器110の外に染み出す。光の損失が増加してしまう。
【0036】
第1実施形態によれば、基板10は領域30と領域32とを有する。図3Aに示すように、領域30では、ボックス層14とシリコン層16とが積層されている。図2に示すように、シリコン層16には複数の孔40が設けられている。孔40の深さD1は、シリコン層16のテラス17の位置における厚さT1の1/2以下である。光のモードが厚さ方向に染み出しにくい。深い孔による散乱に比べ、浅い孔40による光の散乱が弱い。図3Aに示すように、Y軸方向の断面では、合分波器100の近傍の領域32において基板10はシリコン層16を有さない。XY平面内において光が領域30に強く閉じ込められ、外に染み出しにくい。領域30内で浅い孔40によって光が散乱されるため、光の損失を抑制することができる。
【0037】
浅い孔40による散乱は、深い孔による散乱よりも弱い。第1実施形態によれば、光が領域30に閉じ込められるため、光が外に漏洩しにくい。領域30に閉じ込められた光が、複数の孔40によって散乱されることで、所望の分岐比で光を分岐することができる。
【0038】
孔40の深さD1は、シリコン層16の厚さT1の1/20以上、1/2以下でもよいし、厚さT1の1/5以上、2/5以下でもよい。厚さT1が220nmならば、深さD1は11nm以上、110nm以下、44nm以上、88nm以下などである。光の損失を抑制することができる。
【0039】
図3Aに示すように、基板10は例えばSOI基板であり、基板12、ボックス層14およびシリコン層16を有する。領域30には、基板12、ボックス層14およびシリコン層16が順番に積層されている。領域32には、基板12とSiOのボックス層14とが積層されている。合分波器100の近傍には導波路20、導波路22および導波路24を除いてシリコン層16は設けられていない。光を領域30に強く閉じ込め、合分波器100内で散乱させることができる。光の損失を抑制し、かつ光を分岐させることができる。
【0040】
図2に示すように、基板10の領域30の平面形状は矩形である。領域32は領域30を囲む。矩形の領域30内に光を閉じ込め、損失を抑制することができる。領域30は矩形以外に、多角形、円形、楕円形の形状を有してもよい。基板10はSOI基板以外の基板でもよい。基板10に含まれる層が、SiOおよびSi以外で形成されてもよい。基板10の1つの層が領域30に設けられ、当該1つの層に複数の孔40が設けられていればよい。
【0041】
図2に示すように、孔40の平面形状は矩形である。矩形の孔40を複数個2次元配列することで、光を分岐させることができる。孔40の平面形状は円形、楕円形、多角形などでもよい。
【0042】
孔40の1辺の長さL5は、数百nmであり、例えば400nmである。分岐比の設計値が同一であるならば、孔40の大きさが変わっても、複数の孔40の位置は大きく変化しない。しかし、孔40が大きすぎると、分岐比が設計値から外れることがある。孔40が小さすぎると、ドライエッチングなどで精度よく製造することが困難である。孔40の長さL5を、例えば50nm以上、1000nm以下とする。孔40を製造し、分岐比を設計値に近づけることができる。
【0043】
合分波器100は、1入力2出力の素子であり、導波路20、導波路22および導波路24を有する。導波路20から光を入力する。複数の孔40によって光が散乱される。導波路22および導波路24から光を出力する。所望の分岐比で光を分岐することができる。導波路22および導波路24から入力する光を、合成して導波路20から出力してもよい。出力導波路の個数は1個でもよいし、2個以上でもよい。
【0044】
導波路20に入力される光のモードは、導波路22から出力される光のモードおよび導波路24から出力される光のモードと同じでもよいし、出力モードの少なくとも一方と異なってもよい。
【0045】
図1に示すように、導波路にはグレーティングカプラ26が結合されている。グレーティングカプラ26の凹部26bの深さD2は、孔40の深さD1に等しくてもよい。一度のエッチングにより、孔40と凹部26bとを同時に製造することができる。グレーティングカプラ26は全ての導波路に結合されてもよいし、少なくとも1つの導波路に結合されてもよい。光学素子1はグレーティングカプラを含まなくてもよい。導波路20、導波路22および導波路24は、光学素子1の端面まで延伸し、端面を経由して光学素子1への光の入射および出射が行われてもよい。
【0046】
クラッド層18は、領域30の側面および上面を覆い、領域32の上面を覆う。シリコン層16の屈折率は、クラッド層18およびボックス層14の屈折率よりも高い。光を領域30のシリコン層16に強く閉じ込め、損失を抑制することができる。
【0047】
孔40は空洞でもよいし、クラッド層18が埋め込まれてもよい。孔40の屈折率は、シリコンの屈折率とは異なる。基板10の面内において屈折率が変化する。光を分岐することができる。
【0048】
<第2実施形態>
(D1=70nmの例)
第2実施形態では、分岐比γを特定の値に定め、その分岐比に応じて合分波器を設計する。図7Aから図7Cは第2実施形態に係る合分波器を例示する平面図である。第1実施形態と同じ構成については説明を省略する。
【0049】
基板10の領域30はシリコン層16を有する。領域32は、領域30の外に位置し、合分波器のY軸方向の近傍ではシリコン層16を有さない。基板10のシリコン層16のX軸方向の長さは32μmであり、Y軸方向の長さは6μmである。領域30のシリコン層16を、400nm×400nmのピクセルに分割する。ピクセルの個数は15×80である。ピクセルのうち一部がエッチングされ、孔40となる。ピクセルのうち別の一部はエッチングされず、テラス17となる。孔40の深さD1の設計値を70nmとし、かつ分岐比γの設計値を0.2、0.3、および0.4とする。図7Aから図7Cのように、分岐比に応じて複数の孔40の配置が設計される。隣り合う複数の孔40は、連続し、1つの凹部を形成する。
【0050】
図7Aの合分波器は、分岐比を0.2とした例である。図7Bの合分波器は、分岐比を0.3とした例である。図7Cの合分波器は、分岐比を0.4とした例である。図7Aの例では、合分波器に導波路20から光が入力されると、理想的には80%の光が導波路22から出力され、20%の光が導波路24から出力される。他の合分波器も分岐比に応じて光を出力する。これらの合分波器を、図1の光学装置1に適用することができる。
【0051】
孔40の配置を設計時のものに維持したうえで、孔40の深さを20nm、50nm、70nm、100nm、および120nmに変化させて、分岐比および光の損失を計算する。基板10はSOI基板であり、孔40が形成されていない部分のシリコン層16の厚さは220nmとしている。光の波長は1550nmとしている。
【0052】
図8Aから図8Cは分岐比の計算結果を例示する図である。横軸は孔40の深さD1を表す。縦軸はSplitting ratio(SR)を表す。分岐比をγとすると、SRは次式で表される。
SR=γ/(1-γ) (1)
γが0.2ならばSRは0.25である。γが0.3ならばSRは約0.43である。γが0.4ならばSRは約0.67である。分岐比γが設計された値(理想値)ならば、SRも上記の理想値となる。分岐比γが理想値から外れると、SRも理想値とは異なる値となる。図8Aから図8Cにおいて、実線はSplitting ratioの理想値を表す。点線はSRの計算結果を表す。
【0053】
図8Aは、分岐比γの設計値を0.2とした場合の分岐比の計算結果である。孔40の深さが20nmの場合、SRが1を超える。分岐比γが0.2から外れているためである。深さが50nm、70nm、100nmおよび120nmの各例において、SRは理想値に近い。分岐比γが設計値0.2に近いためである。
【0054】
図8Bは、分岐比γの設計値を0.3とした場合の分岐比の計算結果である。孔40の深さが20nmの場合、SRが1を超える。深さが50nmの場合、SRは0.6から0.7の間である。深さが70nm、100nmおよび120nmの各例において、SRは理想値に近い。すなわち、分岐比γが設計値0.3に近い。
【0055】
図8Cは、分岐比γの設計値を0.4とした場合の分岐比の計算結果である。孔40の深さが20nmの場合、SRが1を超える。深さが設計値の70nmに近いほど、SRは理想値に近づく。分岐比γが設計値0.4に近い。
【0056】
図9は光の損失の計算結果を例示する図である。横軸は孔40の深さD1を表す。縦軸は合分波器における光の損失を表す。実線は分岐比の設計値γが0.2の場合の損失を表す。点線はγ=0.3の場合の損失を表す。破線はγ=0.4の場合の損失を表す。図9に示すように、いずれの分岐比においても、孔40が深いと損失が大きくなる。深さが20nm、50nmおよび70nmにおいて損失が少なくなる。
【0057】
図9に示すように、孔40の深さが100nm以上ならば損失が増加してしまう。深さが20nmの場合、損失を低減することができる。しかし図8Aから図8Cに示すように、分岐比が理想値から外れてしまう。深さが50nmから70nmにおいて、分岐比が理想値に近づき、かつ損失も抑制することができる。
【0058】
(再設計)
次に、孔40の深さごとに合分波器の再設計を行い、分岐比および損失の計算を行う。孔40の深さD1を20nm、50nm、70nm、100nm、または120nmに定め、かつ分岐比γの設計値を0.1、0.2、0.3、0.4または0.5として、深さおよび分岐比ごとに合分波器を設計する。つまり、各深さにおいて、分岐比が所望の分岐比γになるべく近づくように、複数の孔40の配置を再設計する。
【0059】
図10Aから図10Cは孔40の深さD1を20nmとした場合の合分波器を例示する平面図である。図11Aから図11Eは孔40の深さD1を70nmとした場合の合分波器を例示する平面図である。図12Aから図12Cは孔40の深さD1を120nmとした場合の合分波器を例示する平面図である。図11Aは分岐比γの設計値を0.1とした例である。図10A図11Bおよび図12Aは分岐比γの設計値を0.2とした例である。図10B図11Cおよび図12Bは分岐比γの設計値を0.3とした例である。図10C図11Dおよび図12Cは分岐比γの設計値を0.4とした例である。図11Eは分岐比γの設計値を0.5とした例である。D1=50nmの合分波器、およびD1=100nmの合分波器の図示は省略する。
【0060】
例えば図10A図11Bおよび図12Aに示すように、同一の分岐比(γ=0.2)で比較すると、孔40が浅いほど孔40の個数が多くなり、孔40が深いほど個数は少なくなる。浅い孔40に比べ、深い孔40によって光が強く散乱される。このため少ない個数の孔40によって所望の分岐比が実現される。浅い孔40による散乱は弱いため、より多くの孔40によって所望の分岐比が実現される。
【0061】
図13Aから図13Cは分岐比の計算結果を例示する図である。横軸は孔40の深さD1を表す。縦軸はSplitting ratio(SR)を表す。各図において、実線はSplitting ratioの理想値を表す。点線はSRの計算結果を表す。
【0062】
図13Aは、分岐比γの設計値を0.2とした場合の分岐比の計算結果である。いずれの深さにおいても、計算されたSRは理想値から0.01程度ずれている。図13Bは、分岐比γの設計値を0.3とした場合の分岐比の計算結果である。孔40が深いほどSRの理想値からのずれが大きい。孔40が浅いほどSRは理想値に近づく。図13Cは、分岐比γの設計値を0.4とした場合の分岐比の計算結果である。孔40の深さが100nmおよび120nmの場合、SRの計算値は理想値から大きくずれる。深さが50nmの場合、SRの計算値が最も理想値に近い。
【0063】
図14は光の損失の計算結果を例示する図である。横軸は孔40の深さD1を表す。縦軸は合分波器における光の損失を表す。実線は分岐比γの設計値が0.2の場合の損失を表す。点線はγ=0.3の場合の損失を表す。破線はγ=0.4の場合の損失を表す。図14に示すように、γ=0.2の例では、いずれの深さでも損失が0.6dBから0.4dBの範囲内である。γ=0.3の例およびγ=0.4の例では、深さが120nmになると損失が大きい。深さが20nmから100nmでは、損失が抑制される。
【0064】
図13Bおよび図13Cに示すように、深さD1が20nm、50nmおよび70nmの場合、分岐比は理想値に近い。図14に示すように、深さD1が120nmの場合は損失が大きい。孔40が浅いと損失が抑制され、D1=70nmおよびD1=100nmでは特に損失が低減される。図13Aから図13Cに示すように、深さD1を変えて理想値に近づく孔40の配置を探索したとしても、分岐比γは必ずしも理想値には一致しない。深さD1が70nm付近では、他の深さに比べて、いずれの分岐比においてもSRの計算値が理想値から大きくは外れていない。複数の分岐比γを有する合分波器を同じ孔の深さD1で設計する場合には、深さD1は70nm付近が好ましい。
【0065】
(波長依存性)
光の波長を1520nmから1600nmまで変化させ、合分波器の特性の測定および計算を行う。孔40の深さD1は70nmとする。分岐比γを0.1、0.3および0.5に定め、合分波器を設計する。
【0066】
図15から図17はスペクトルを例示する図である。横軸は光の波長を表す。縦軸は光の透過率または反射率を表す。反射率、導波路22からの透過率、導波路24からの透過率が図示されている。破線は導波路22の透過率の計算結果を表す。点線は導波路22の透過率の測定結果を表す。一点鎖線は導波路24の透過率の計算結果を表す。実線は導波路24の透過率の測定結果を表す。細い実線は反射率の計算結果を表す。反射率とは、導波路20から光を入力したとき、導波路20に反射される光の割合である。
【0067】
図15はγ=0.1の例であり、図11Aの合分波器におけるスペクトルを表す。透過率の比は理想的には-0.46dB:-10dBである。図16はγ=0.3の例であり、図11Cの合分波器におけるスペクトルを表す。透過率の比は理想的には-1.54dB:-5.23dBである。図17はγ=0.5の例であり、図11Eの合分波器におけるスペクトルを表す。透過率の比は理想的には-3dB:-3dBである。図15から図17の各例において、透過率の測定結果は計算結果に近い。1520nmから1600nmの波長範囲において、分岐比が所望の値に近いことがわかる。
【0068】
第2実施形態によれば、分岐比γに応じて孔40の個数および位置を設計することで、所望の分岐比を得ることができる。図9に示すように、孔40が深くなると損失が増加する。深さD1が50nmから70nmにおいて、分岐比が理想値に近くなり、かつ損失を抑制することができる。図14に示すように、深さD1が120nmの場合は損失が大きい。孔40が浅いと損失が抑制される。すなわち、孔40の深さD1を、シリコン層16の厚い部分における厚さT1の1/2以下とする。厚さT1が220nmの場合、深さD1を例えばT1の1/20以上(11nm以上)、1/5以上(44nm以上)、2/5以下(80nm以下)とする。光の損失を抑制することができる。図15から図17に示すように、深さD1を70nmとした場合、1520nmから1600nmまでの波長範囲で、所望の分岐比が実現される。
【0069】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る合分波器はモードディバイダであり、光のモードを変換し、モードごとに光を分岐する。第1実施形態または第2実施形態と同じ構成については説明を省略する。合分波器は図2と同様の構成を有する。合分波器の平面形状、X軸方向の長さ、Y軸方向の長さ、および孔40の一辺の長さは、第1実施形態および第2実施形態の合分波器100と同じである。導波路の幅、およびシリコン層16の厚さは、第1実施形態および第2実施形態と同じである。複数の孔40の配置は、第1実施形態および第2実施形態とは異なる。
【0070】
例えば、導波路20に入力される光のモードはTE0モードである。導波路24から出力される光のモードはTE0モードである。導波路22から出力される光のモードはTE1モードである。分岐比をγとすると、強度1の光が導波路20に入力されたとき、導波路24から出力される光の強度がγであり、導波路22から出力される光の強度が1-γである。
【0071】
図18は分岐比の計算結果を表す図である。横軸は孔40の深さD1を表す。縦軸はSplitting ratio(SR)を表す。D1=20nm、50nm、70nm、100nm、120nmにおいて合分波器を設計し、分岐比を計算している。光の波長は1550nmである。D1=50nmにおけるSRが理想値から最も離れている。D1=20nm、70nm、100nm、および120nmになると、SRが理想値に近づく。
【0072】
図19は光の損失の計算結果を表す。横軸は孔40の深さD1を表す。縦軸は光の損失の計算結果を表す。D1=20nm、70nm、120nmにおいて損失を計算している。図19に示すように、孔40が浅いほど損失が抑制される。
【0073】
図20A図21A、および図22Aはスペクトルを例示する図である。横軸は光の波長を表す。縦軸は光の透過率または反射率を表す。反射率、導波路22からの透過率、導波路24からの透過率が図示されている。破線は導波路22の透過率の計算結果を表す。一点鎖線は導波路22の透過率の測定結果を表す。実線は導波路24の透過率の測定結果を表す。点線は導波路24の透過率の計算結果を表す。細い実線は反射率の計算結果を表す。孔40の深さD1は70nmである。図20B図21B図22Bは第3実施形態に係る合分波器を例示する平面図である。
【0074】
図20Aおよび図20Bはγ=0.1の例である。図21Aおよび図21Bはγ=0.5の例である。図22Aおよび図22Bはγ=0.9の例である。図20A図21A図22Aの各例において、透過率の測定結果は計算結果に近い。1520nmから1600nmの波長範囲において、分岐比が所望の値に近いことがわかる。
【0075】
第3実施形態によれば、合分波器はモードディバイダであり、光を分岐し、かつ光のモードを変換させる。導波路20に入力される光のモードが、導波路24から出力される光のモードとは異なる。図19に示すように、モードディバイダにおいて、孔40の深さD1をシリコン層16の厚さの半分以下とすることで、損失を抑制することができる。図20A図21A図22Aに示すように、波長1520nmから1600nmにおいて、分岐比を所望の大きさに近づけることができる。第3実施形態のモードディバイダは、第1実施形態および第2実施形態のパワー分配器と比較して、孔40の配置および深さは変えて設計されるが、それ以外のパラメータは同様である。多くの同じパラメータを用いつつ、孔40の配置および深さという少ないパラメータを設計で決める。これにより、パワー分配器とモードディバイダという異なる機能を生じさせることができる。
【0076】
<第4実施形態>
第4実施形態はモード変換器の例である。第1実施形態から第3実施形態のいずれかと同じ構成については説明を省略する。
【0077】
図23は第4実施形態に係るモード変換器400を例示する平面図である。モード変換器400は、導波路20と導波路22とを有する。導波路20は入力用の導波路である。導波路22は出力用の導波路である。例えば、導波路20にTE0モードが入力される。モード変換器400は、光のモードをTE1モードまたはTE2モードに変換し、導波路22から出射する。モード変換器400のX軸方向の長さは33.2μmである。
【0078】
図24Aおよび図25Aはスペクトルを例示する図である。横軸は光の波長を表す。縦軸は光の透過率または反射率を表す。TE0モード、TE1モードおよびTE2モードの透過率、および反射率が図示されている。孔40の深さD1は70nmである。図24Bおよび図25Bは第4実施形態に係るモード変換器を例示する平面図である。
【0079】
図24Aでは、点線はTE1モードの透過率の測定結果(TE1測定)を表す。一点鎖線はTE1モードの透過率の計算結果(TE1計算)を表す。破線はTE2モードの透過率の計算結果(TE2計算)を表す。実線はTE0モードの透過率の測定結果(TE0測定)を表す。二点鎖線はTE0モードの透過率の計算結果(TE0計算)を表す。細い実線は反射率の計算結果を表す。TE1モードの透過率の測定結果は、計算結果に近い。
【0080】
図25Aでは、点線はTE2モードの透過率の測定結果(TE2測定)を表す。他は図24Aと同じである。TE2モードの透過率の測定結果は、計算結果に近い。
【0081】
第4実施形態によれば、TE0モードの光をTE1モードまたはTE2モードに変換し、出射する。図24Aに示すように、TE0モードおよびTE2モードの透過率に比べて、TE1モードの透過率が高い。図25Aに示すように、TE0モードおよびTE1モードの透過率に比べて、TE2モードの透過率が高い。孔40の深さを70nmとすることで、損失を抑制し、所望のモードの光を出射することができる。
【0082】
第3実施形態および第4実施形態において、入力されるモードはTE0モード以外でもよい。出力されるモードはTE1モードおよびTE2モード以外でもよい。
【0083】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 光学素子
10、12 基板
14 ボックス層
16 シリコン層
17 テラス
18 クラッド層
19 リブ
20、22、24 導波路
26 グレーティングカプラ
26a 凸部
26b 凹部
30、31、32 領域
40 孔
50、54 レジストマスク
52 開口部
100、110 合分波器
400 モード変換器

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B
図23
図24A
図24B
図25A
図25B