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特開2025-96266金属酸化物粒子、高濃縮金属酸化物ゾル、及びそれらの製造方法
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  • 特開-金属酸化物粒子、高濃縮金属酸化物ゾル、及びそれらの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025096266
(43)【公開日】2025-06-26
(54)【発明の名称】金属酸化物粒子、高濃縮金属酸化物ゾル、及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/04 20060101AFI20250619BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20250619BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20250619BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20250619BHJP
   C08K 9/10 20060101ALI20250619BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20250619BHJP
【FI】
C08G77/04
C08K3/22
C08K3/36
C08L83/04
C08K9/10
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024220376
(22)【出願日】2024-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2023212478
(32)【優先日】2023-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 豪
(72)【発明者】
【氏名】江原 和也
【テーマコード(参考)】
4J002
4J246
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002CD151
4J002CP051
4J002DE076
4J002DE086
4J002DE096
4J002DE116
4J002DE126
4J002DE136
4J002DE146
4J002DJ016
4J002EE047
4J002FA106
4J002FB266
4J002FB286
4J002FD016
4J002FD147
4J002GH00
4J002GQ05
4J002HA06
4J246AA03
4J246BA02X
4J246BB022
4J246BB02X
4J246CA24X
4J246CA40X
4J246CA65X
4J246FA081
4J246FA431
4J246FB211
4J246FB221
4J246FC061
4J246FD09
4J246FE13
4J246FE14
4J246GA13
4J246GB06
4J246GB07
4J246GB24
4J246GB27
4J246GB32
4J246HA22
4J246HA59
(57)【要約】      (修正有)
【課題】金属酸化物ゾルの分散媒である有機溶媒中で高濃度に濃縮可能であるとともに、有機溶媒への再分散が可能である金属酸化物粒子、及び該金属酸化物粒子を含む金属酸化物ゾル並びにそれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】2つの化学基(a1)と2つの加水分解性基(a2)を有するシラン化合物(A)の加水分解物と、3つの化学基(b1)と1つの加水分解性基(b2)を有するシラン化合物(B)の加水分解物が表面被覆された金属酸化物粒子であって、金属酸化物粒子は塩基性化合物(I)を含み、該金属酸化物粒子は1.4~3.0の粒子屈折率と有機溶媒に金属酸化物濃度として40質量%以上で分散可能であるか、又は該金属酸化物粒子は1.1~1.4未満の粒子屈折率と有機溶媒に金属酸化物濃度として25質量%以上で分散可能である上記金属酸化物粒子。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの化学基(a1)と2つの加水分解性基(a2)を有するシラン化合物(A)の加水分解物と、3つの化学基(b1)と1つの加水分解性基(b2)を有するシラン化合物(B)の加水分解物が表面被覆された金属酸化物粒子であって、
前記シラン化合物(A)が下記式(1):
【化1】
(式(1)中、Rは化学基(a1)であってそれぞれ直鎖又は環状の炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~40のアリール基、及び(メタ)アクリロキシ基含有アルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の化学基であり且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、Rは加水分解性基(a2)であってそれぞれ炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数2~10のアシルオキシ基、及びハロゲン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の加水分解性基である。)で表されるシラン化合物の群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物であり、
前記シラン化合物(B)が下記式(2)及び下記式(3):
【化2】
(式(2)及び式(3)中、R及びRは化学基(b1)であってそれぞれ炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R及びYは加水分解基(b2)であってそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を示し、YはNH基、又は酸素原子を示す。)で表されるシラン化合物の群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物であり、
上記金属酸化物粒子は塩基性化合物(I)を含み、該金属酸化物粒子は1.4~3.0の粒子屈折率と有機溶媒に金属酸化物濃度として40質量%以上で分散可能であるか、又は該金属酸化物粒子は1.1~1.4未満の粒子屈折率と有機溶媒に金属酸化物濃度として25質量%以上で分散可能である上記金属酸化物粒子。
【請求項2】
金属酸化物粒子が5~120nmの平均一次粒子径を有し、且つ金属成分がケイ素、周期表における第4周期の金属元素及び周期表における第5周期の金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物からなる群から選ばれる請求項1に記載の金属酸化物粒子。
【請求項3】
金属酸化物粒子が5~120nmの平均一次粒子径を有し、且つ金属成分がケイ素、チタン、スズ、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、アンチモン、セリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、鉄、及びアルミニウムから選ばれる群から選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物からなる請求項1に記載の金属酸化物粒子。
【請求項4】
金属酸化物粒子表面に更にシラン化合物(C)として下記式(4):
【化3】
(式(4)中、Rは化学基(c1)であってそれぞれ直鎖又は環状の炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~40のアリール基、及び(メタ)アクリロキシ基含有アルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の化学基であり且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、Rは加水分解性基(c2)であってそれぞれ炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数2~10のアシルオキシ基、及びハロゲン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の加水分解性基である。)で表されるシラン化合物の群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物の加水分解物が被覆されているものである請求項1に記載の金属酸化物粒子。
【請求項5】
金属酸化物粒子表面のシラン化合物の29Si-NMRの測定において、M構造、D構造、及びT構造のそれぞれの構造の含有割合は、M構造とD構造とT構造の合計を100モル%とした場合、M構造が30モル%以上60モル%未満、D構造が30モル%以上90モル%未満、T構造が0モル%以上30モル%未満である請求項1に記載の金属酸化物粒子。
【請求項6】
メタノール滴定法による疎水化度が20~80容積%である請求項1に記載の金属酸化物粒子。
【請求項7】
メタノール滴定法による疎水化度が20容積%以上60容積%未満である請求項1に記載の金属酸化物粒子。
【請求項8】
リーチング法による測定で、金属酸化物粒子の表面にAl換算で金属酸化物1gに対してアルミニウム原子が20~20000ppm/金属酸化物の割合(A)で結合したものである請求項1に記載の金属酸化物粒子。
【請求項9】
前記リーチング法が金属酸化物粒子を硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の鉱酸の水溶液で浸出した金属酸化物粒子の表面に結合したアルミニウム原子を含む化合物を、Al換算で金属酸化物粒子の金属酸化物1gに対する割合(A)を算出するものである請求項8に記載の金属酸化物粒子。
【請求項10】
フッ酸水溶液を用いた溶解法による測定で、金属酸化物粒子全体に存在するアルミニウム原子がAl換算で金属酸化物1gに対して50~50000ppm/金属酸化物の割合(B)で結合し、前記割合(A)を該割合(B)で除した値が0.001~1.0である請求項8に記載の金属酸化物粒子。
【請求項11】
塩基性化合物(I)がアミン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド化合物、又は水酸化第4級アンモニウムである請求項1に記載の金属酸化物粒子。
【請求項12】
金属酸化物粒子が、粒子内部に空間が存在しない中実金属酸化物粒子、外殻の内部に空間を有する中空金属酸化物粒子、又はそれら粒子の混合金属酸化物粒子である請求項1に記載の金属酸化物粒子。
【請求項13】
請求項1~請求項12の何れか1項に記載の金属酸化物粒子を、有機溶媒及び/又は反応性モノマーに分散した金属酸化物ゾル。
【請求項14】
金属酸化物ゾル中の金属酸化物粒子の動的光散乱法平均粒子径が5~240nmである
請求項13に記載の金属酸化物ゾル。
【請求項15】
有機溶媒がアルコール、ケトン、エーテル、エステル、アミド、グリコール、又は炭化水素である請求項13に記載の金属酸化物ゾル。
【請求項16】
反応性モノマーがアクリル化合物、アリル化合物、イソシアナート化合物、イソチオシアナート化合物、エポキシ化合物、ジアミン含有化合物、ジオール含有化合物、ジカルボン酸含有化合物、ジスルホニルクロリド含有化合物、ジチオール含有化合物、ジスルフィド含有化合物、ジビニル含有化合物、ジアリル含有化合物、スチレン、テトラカルボン酸無水物、ビスマレイミド、ビニル含有化合物、ラクトン環含有化合物、ラクチド含有化合物、含フッ素含有化合物、環状オレフィン含有化合物、エチレン、プロピレン、又はシランである請求項13に記載の金属酸化物ゾル。
【請求項17】
請求項13に記載の金属酸化物ゾルの60℃~100℃50Torrの乾燥条件で乾燥後に、有機溶媒に再分散した時の分散溶媒中での動的光散乱法による金属酸化物ゾル中の金属酸化物粒子の平均粒子径(nm)について、(再分散後の動的光散乱法平均粒子径)/(再分散前の動的光散乱法平均粒子径)の比が0.6~3.0である金属酸化物ゾル。
【請求項18】
請求項13に記載の金属酸化物ゾルを50℃4週間保管後の、金属酸化物ゾル中での動的光散乱法による金属酸化物ゾル中の金属酸化物粒子の平均粒子径(nm)について、(50℃保管後の動的光散乱法平均粒子径)/(50℃保管前の動的光散乱法平均粒子径)の比が0.8~2.0である金属酸化物ゾル。
【請求項19】
屈折率1.4~3.0の金属酸化物粒子であって、20℃におけるEMS粘度(mPa・s)が1~20である分散媒に、金属酸化物粒子を金属酸化物濃度として60質量%で再分散させた金属酸化物ゾルのEMS粘度(mPa・s)にて、(再分散させた金属酸化物ゾルのEMS粘度)/(分散媒のEMS粘度)の比が1~3000であり、分散媒が有機溶媒または反応性モノマーである、金属酸化物粒子。
【請求項20】
屈折率1.1~1.4の金属酸化物粒子であって、20℃におけるEMS粘度(mPa・s)が1~20である分散媒に、金属酸化物粒子を金属酸化物濃度として30質量%で再分散させた金属酸化物ゾルのEMS粘度(mPa・s)にて、(再分散させた金属酸化物ゾルのEMS粘度)/(分散媒のEMS粘度)の比が1~3000である、金属酸化物粒子。
【請求項21】
請求項19又は請求項20に記載の金属酸化物粒子と分散媒とを含む金属酸化物ゾルであって、該金属酸化物粒子は、平均一次粒子径が35~200nmである金属酸化物粒子Aと、平均一次粒子径が5~100nmである金属酸化物粒子Bとを含み、(金属酸化物粒子Aの平均一次粒子径)/(金属酸化物粒子Bの平均一次粒子径)の比が1.1~20未満であり、(金属酸化物ゾルのEMS粘度)/(分散媒のEMS粘度)の比が1~1000である、金属酸化物ゾル。
【請求項22】
請求項1~請求項12の何れか1項に記載の金属酸化物粒子と有機成分を含む分散ワニス組成物。
【請求項23】
有機成分がアクリル化合物、アリル化合物、イソシアナート化合物、イソチオシアナート化合物、エポキシ化合物、ジアミン含有化合物、ジオール含有化合物、ジカルボン酸含有化合物、ジスルホニルクロリド含有化合物、ジチオール含有化合物、ジスルフィド含有化合物、ジビニル含有化合物、ジアリル含有化合物、スチレン、テトラカルボン酸無水物、ビスマレイミド、ビニル含有化合物、ラクトン環含有化合物、ラクチド含有化合物、含
フッ素含有化合物、環状オレフィン含有化合物、エチレン、プロピレン、又はシランから選ばれる少なくとも1種のモノマー、又はそれら成分を含むポリマーを含む請求項22に記載の分散ワニス組成物。
【請求項24】
請求項1~請求項12の何れか一項に記載の金属酸化物粒子と、有機系樹脂材料又はポリシロキサン系樹脂とを含むコンポジット組成物。
【請求項25】
前記有機系樹脂材料が、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、チオエポキシ樹脂、ノボラック系樹脂、シアネート系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、マレイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリヒドロキシイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリベンゾチアゾール樹脂、ポリヒドロキシアミド樹脂、ポリヒドロキシアゾメチン樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ビニルトリアジン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、架橋性ポリフェニレンオキサイド系樹脂、硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂、及び縮合系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項24に記載のコンポジット組成物。
【請求項26】
分散ワニス組成物が、半導体デバイス材料、半導体素子用材料、半導体用レジスト用材料、ナノインプリント、絶縁膜用材料、銅張積層板用材料、プリント基板用材料、印刷板用材料、印刷インキ用材料、顔料、塗料、封止剤用材料、ハードコート用材料、3Dプリント材料、反射防止膜用材料、構造色形成部材、車載部品用材料、電子部品用材料、機械要素部品、接着剤用材料、電池用材料、発電用材料、帯電性付与材料、導電性付与用材料、粉体流動性付与用材料、化粧品用材料、フレキシブル配線材料、液晶ディスプレイ用材料、有機ELディスプレイ用材料、マイクロLEDディスプレイ用材料、QD-ELディスプレイ用材料、フレキシブルディスプレイ材料、アンテナ材料、光配線材料、又はセンシング材料に用いられる請求項22に記載の分散ワニス組成物。
【請求項27】
コンポジット組成物が、半導体デバイス材料、半導体素子用材料、半導体用レジスト用材料、ナノインプリント、絶縁膜用材料、銅張積層板用材料、プリント基板用材料、印刷板用材料、印刷インキ用材料、顔料、塗料、封止剤用材料、ハードコート用材料、3Dプリント材料、反射防止膜用材料、構造色形成部材、車載部品用材料、電子部品用材料、機械要素部品、接着剤用材料、電池用材料、発電用材料、帯電性付与材料、導電性付与用材料、粉体流動性付与用材料、化粧品用材料、フレキシブル配線材料、液晶ディスプレイ用材料、有機ELディスプレイ用材料、マイクロLEDディスプレイ用材料、QD-ELディスプレイ用材料、フレキシブルディスプレイ材料、アンテナ材料、光配線材料、又はセンシング材料に用いられる請求項24に記載のコンポジット組成物。
【請求項28】
下記(A)工程~(C)工程:
(A)工程:5~120nmの平均一次粒子径を有する金属酸化物粒子が炭素原子数1~5のアルコールに分散した金属酸化物ゾルを準備する(A)工程、
(B)工程:(A)工程で得られた金属酸化物ゾルに請求項1で規定した式(1)に記載のシラン化合物(A)及び請求項1で規定した式(2)及び式(3)からなる群より選ばれたシラン化合物(B)と、塩基性化合物(I)を添加する工程、
(C)工程:(B)工程で得られた金属酸化物ゾルを乾燥する工程、を含む請求項1~請求項12の何れか1項に記載の金属酸化物粒子の製造方法。
【請求項29】
請求項27に記載の(A)工程~(C)工程のうち、(C)工程が下記(C’)工程であるか、又は上記(A)工程~(C)工程に更に下記(D)工程:
(C’)工程:(B)工程で得られた金属酸化物ゾルを、炭素原子数1~5のアルコール以外の有機溶媒に溶媒置換する工程、
(D)工程:(C)工程で得られた金属酸化物粒子を有機溶媒に分散する工程、を含む請求項13に記載の金属酸化物ゾルの製造方法。
【請求項30】
下記(E)工程~(G)工程:
(E)工程:金属酸化物粒子が有機溶媒に分散した分散液に水を添加する工程、
(F)工程:(E)工程の後、上澄みの溶媒を除去して沈殿物を得る工程、
(G)工程:(F)工程の後、沈殿物を乾燥させて金属酸化物粒子粉末を得る工程、を含む請求項1に記載の金属酸化物粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面修飾(表面被覆ともいう)シリカ粒子等の金属酸化物粒子と、それを用いた高濃縮シリカゾル等の高濃縮金属酸化物ゾルと、それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コロイド状金属酸化物粒子の分散液(ゾル)、例えばシリカゾルは液状媒体にシリカ粒子が分散した液体である。しかし、分散媒である液体を除去することでシリカ粒子(シリカ粉末)が得られる。これらの金属酸化物粒子は、粒子状である金属酸化物粉末として利用する場合、金属酸化物ゾルとして利用する場合に比べて体積割合が十分に低く、輸送コストが低く、また金属酸化物を利用する場面において添加成分として捉えた場合に添加後の分散媒除去の工程がなく、工程管理上のメリットがある。
【0003】
添加成分として金属酸化物粒子が含まれる被膜について、金属酸化物の特性を利用して耐摩耗性、屈折率調整、耐熱性、断熱性、耐電気絶縁性、誘電特性等の改良が試みられている。
【0004】
これらの添加成分として金属酸化物が含まれ有機成分と共に基板上に形成される被膜において、その後に被膜全体又は被膜の一部を取り除くプロセスが含まれる製造過程中、しばしば有機成分は薬液エッチングやガスエッチングを利用して除去可能であるが、金属酸化物粒子は耐エッチング性が高く除去することが困難であった。
【0005】
チオール、スルフィド、ジスルフィト、又はポリスルフィドから選択された官能基を含む表面修飾剤をナノ粒子分散液に添加し、有機モノマーと共にラジカル重合させる方法で得られる再分散可能なナノ粒子が開示されている(特許文献1参照)。
【0006】
100nm以下の平均粒子径を有する表面改質されたシリカ粒子の製造方法であって、a)予備分散液を提供する工程、b)該予備分散液を高圧粉砕して分散液を形成する工程、c)分散液の液相を除去する工程を含み、シリルアミンで被覆された再分散可能な、表面改質された二酸化ケイ素粒子。これらを、トナー粉末、シリコーンゴム、接着剤及び耐引掻性の表面コーティングに用いるシリカ粒子が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2009-532514号公報
【特許文献2】特表2011-528310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
金属酸化物ゾルの分散媒である有機溶媒中で高濃度に濃縮可能であるとともに、有機溶媒への再分散が可能である金属酸化物粒子、及び該金属酸化物粒子を含む金属酸化物ゾル並びにそれらの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は第1観点として、2つの化学基(a1)と2つの加水分解性基(a2)を有するシラン化合物(A)の加水分解物と、3つの化学基(b1)と1つの加水分解性基(b2)を有するシラン化合物(B)の加水分解物が表面被覆された金属酸化物粒子であって、
前記シラン化合物(A)が下記式(1):
【0010】
【化1】
【0011】
(式(1)中、Rは化学基(a1)であってそれぞれ直鎖又は環状の炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~40のアリール基、及び(メタ)アクリロキシ基含有アルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の化学基であり且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、Rは加水分解性基(a2)であってそれぞれ炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数2~10のアシルオキシ基、及びハロゲン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の加水分解性基である。)で表されるシラン化合物の群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物であり、
前記シラン化合物(B)が下記式(2)及び下記式(3):
【0012】
【化2】
【0013】
(式(2)及び式(3)中、R及びRは化学基(b1)であってそれぞれ炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R及びYは加水分解基(b2)であってそれぞれアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を示し、YはNH基、又は酸素原子を示す。)で表されるシラン化合物の群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物であり、
上記金属酸化物粒子は塩基性化合物(I)を含み、該金属酸化物粒子は1.4~3.0の粒子屈折率と有機溶媒に金属酸化物濃度として40質量%以上で分散可能であるか、又は該金属酸化物粒子は1.1~1.4未満の粒子屈折率と有機溶媒に金属酸化物濃度として25質量%以上で分散可能である上記金属酸化物粒子、
第2観点として、金属酸化物粒子が5~120nmの平均一次粒子径を有し、且つ金属成分がケイ素、周期表における第4周期の金属元素及び周期表における第5周期の金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物からなる群から選ばれる請求項1に記載の金属酸化物粒子、
第3観点として、金属酸化物粒子が5~120nmの平均一次粒子径を有し、且つ金属成分がケイ素、チタン、スズ、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、アンチモン、セリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、鉄、及びアルミニウムから選ばれる群から選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物からなる第1観点に記載の金属酸化物粒子、
第4観点として、シリカ粒子表面に更にシラン化合物(C)として下記式(4):
【0014】
【化3】
【0015】
(式(4)中、Rは化学基(c1)であってそれぞれ直鎖又は環状の炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~40のアリール基、及び(メタ)アクリロキシ基含有アルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の化学基であり且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、Rは加水分解性基(c2)であってそれぞれ炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数2~10のアシルオキシ基、及びハロゲン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の加水分解性基である。)で表されるシラン化合物の群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物の加水分解物が被覆されているものである第1観点~第3観点の何れか一つに記載の金属酸化物粒子、
第5観点として、金属酸化物粒子表面のシラン化合物の29Si-NMRの測定において、M構造、D構造、及びT構造のそれぞれの構造の含有割合は、M構造とD構造とT構造の合計を100モル%とした場合、M構造が30モル%以上60モル%未満、D構造が30モル%以上90モル%未満、T構造が0モル%以上30モル%未満である第1観点~第4観点の何れか一つに記載の金属酸化物粒子、
第6観点として、メタノール滴定法による疎水化度が20~80容積%である第1観点~第5観点の何れか一つに記載の金属酸化物粒子、
第7観点として、メタノール滴定法による疎水化度が20容積%以上60容積%未満である第1観点から第6観点に記載の金属酸化物粒子、
第8観点として、リーチング法による測定で、金属酸化物粒子の表面にAl換算で金属酸化物1gに対してアルミニウム原子が20~20000ppm/金属酸化物の割合(A)で結合したものである第1観点に記載の金属酸化物粒子、
第9観点として、前記リーチング法が金属酸化物粒子を硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の鉱酸の水溶液で浸出した金属酸化物粒子の表面に結合したアルミニウム原子を含む化合物を、Al換算で金属酸化物粒子の金属酸化物1gに対する割合(A)を算出するものである第8観点に記載の金属酸化物粒子、
第10観点として、フッ酸水溶液を用いた溶解法による測定で、金属酸化物粒子全体に存在するアルミニウム原子がAl換算で金属酸化物1gに対して50~50000ppm/金属酸化物の割合(B)で結合し、前記割合(A)を該割合(B)で除した値が0.001~1.0である第8観点又は第9観点に記載の金属酸化物粒子、
第11観点として、塩基性化合物(I)がアミン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド化合物、アンモニア、又は水酸化第4級アンモニウムである第1観点~第10観点の何れか一つに記載の金属酸化物粒子、
第12観点として、金属酸化物粒子が、粒子内部に空間が存在しない中実金属酸化物粒子、外殻の内部に空間を有する中空金属酸化物粒子、又はそれら粒子の混合金属酸化物粒子である第1観点~第11観点の何れか一つに記載の金属酸化物粒子、
第13観点として、第1観点~第12観点の何れか一つに記載の金属酸化物粒子を、有機溶媒及び/又は反応性モノマーに分散した金属酸化物ゾル、
第14観点として、金属酸化物ゾル中の金属酸化物粒子の動的光散乱法平均粒子径が5~240nmである第13観点に記載の金属酸化物ゾル、
第15観点として、有機溶媒がアルコール、ケトン、エーテル、エステル、アミド、グリコール、又は炭化水素である第13観点又は第14観点に記載の金属酸化物ゾル、
第16観点として、反応性モノマーがアクリル化合物、アリル化合物、イソシアナート化合物、イソチオシアナート化合物、エポキシ化合物、ジアミン含有化合物、ジオール含有化合物、ジカルボン酸含有化合物、ジスルホニルクロリド含有化合物、ジチオール含有化合物、ジスルフィド含有化合物、ジビニル含有化合物、ジアリル含有化合物、スチレン、テトラカルボン酸無水物、ビスマレイミド、ビニル含有化合物、ラクトン環含有化合物
、ラクチド含有化合物、含フッ素含有化合物、環状オレフィン含有化合物、エチレン、プロピレン、又はシランである第13観点~第15観点の何れか一つに記載の金属酸化物ゾル、
第17観点として、第13観点~第16観点の何れか一つに記載の金属酸化物ゾルの60℃~100℃50Torrの乾燥条件で乾燥後に、有機溶媒に再分散した時の分散溶媒中での動的光散乱法による金属酸化物ゾル中の金属酸化物粒子の平均粒子径(nm)について、(再分散後の動的光散乱法平均粒子径)/(再分散前の動的光散乱法平均粒子径)の比が0.6~3.0である金属酸化物ゾル、
第18観点として、第13観点~第17観点の何れか一つに記載の金属酸化物ゾルを50℃4週間保管後の、金属酸化物ゾル中での動的光散乱法による金属酸化物ゾル中の金属酸化物粒子の平均粒子径(nm)について、(50℃保管後の動的光散乱法平均粒子径)/(50℃保管前の動的光散乱法平均粒子径)の比が0.8~2.0である金属酸化物ゾル、
第19観点として、屈折率1.4~3.0の金属酸化物粒子であって、20℃におけるEMS粘度(mPa・s)が1~20である分散媒に、金属酸化物粒子を金属酸化物濃度として60質量%で再分散させた金属酸化物ゾルのEMS粘度(mPa・s)にて、(再分散させた金属酸化物ゾルのEMS粘度)/(分散媒のEMS粘度)の比が1~3000であり、であり、分散媒が有機溶媒または反応性モノマーである、金属酸化物粒子、
第20観点として、屈折率1.1~1.4の金属酸化物粒子であって、20℃におけるEMS粘度(mPa・s)が1~20である分散媒に、金属酸化物粒子を金属酸化物濃度として30質量%で再分散させた金属酸化物ゾルのEMS粘度(mPa・s)にて、(再分散させた金属酸化物ゾルのEMS粘度)/(分散媒のEMS粘度)の比が1~3000である、金属酸化物粒子、
第21観点として、第19観点又は第20観点に記載の金属酸化物粒子と分散媒とを含む金属酸化物ゾルであって、該金属酸化物粒子は、平均一次粒子径が35~200nmである金属酸化物粒子Aと、平均一次粒子径が5~100nmである金属酸化物粒子Bとを含み、(金属酸化物粒子Aの平均一次粒子径)/(金属酸化物粒子Bの平均一次粒子径)の比が1.1~20未満であり、(金属酸化物ゾルのEMS粘度)/(分散媒のEMS粘度)の比が1~1000である、金属酸化物ゾル、
第22観点として、第1観点~第12観点の何れか一つに記載の金属酸化物粒子と有機成分を含む分散ワニス組成物、
第23観点として、有機成分がアクリル化合物、アリル化合物、イソシアナート化合物、イソチオシアナート化合物、エポキシ化合物、ジアミン含有化合物、ジオール含有化合物、ジカルボン酸含有化合物、ジスルホニルクロリド含有化合物、ジチオール含有化合物、ジスルフィド含有化合物、ジビニル含有化合物、ジアリル含有化合物、スチレン、テトラカルボン酸無水物、ビスマレイミド、ビニル含有化合物、ラクトン環含有化合物、ラクチド含有化合物、含フッ素含有化合物、環状オレフィン含有化合物、エチレン、プロピレン、又はシランから選ばれる少なくとも1種のモノマー、又はそれら成分を含むポリマーを含む第22観点に記載の分散ワニス組成物、
第24観点として、第1観点~第12観点のうちいずれか一つに記載の金属酸化物粒子と、有機系樹脂材料又はポリシロキサン系樹脂とを含むコンポジット組成物、
第25観点として、前記有機系樹脂材料が、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、チオエポキシ樹脂、ノボラック系樹脂、シアネート系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、マレイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリヒドロキシイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリベンゾチアゾール樹脂、ポリヒドロキシアミド樹脂、ポリヒドロキシアゾメチン樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ビニルトリアジン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、架橋性ポリフェニレンオキサイド系樹脂、硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂
、及び縮合系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、第24観点に記載のコンポジット組成物、
第26観点として、分散ワニス組成物が、半導体デバイス材料、半導体素子用材料、半導体用レジスト用材料、ナノインプリント、絶縁膜用材料、銅張積層板用材料、プリント基板用材料、印刷板用材料、印刷インキ用材料、顔料、塗料、封止剤用材料、ハードコート用材料、3Dプリント材料、反射防止膜用材料、構造色形成部材、車載部品用材料、電子部品用材料、機械要素部品、接着剤用材料、電池用材料、発電用材料、帯電性付与材料、導電性付与用材料、粉体流動性付与用材料、化粧品用材料、フレキシブル配線材料、液晶ディスプレイ用材料、有機ELディスプレイ用材料、マイクロLEDディスプレイ用材料、QD-ELディスプレイ用材料、フレキシブルディスプレイ材料、アンテナ材料、光配線材料、又はセンシング材料に用いられる第22観点又は第23観点に記載の分散ワニス組成物、
第27観点として、コンポジット組成物が、半導体デバイス材料、半導体素子用材料、半導体用レジスト用材料、ナノインプリント、絶縁膜用材料、銅張積層板用材料、プリント基板用材料、印刷板用材料、印刷インキ用材料、顔料、塗料、封止剤用材料、ハードコート用材料、3Dプリント材料、反射防止膜用材料、構造色形成部材、車載部品用材料、電子部品用材料、機械要素部品、接着剤用材料、電池用材料、発電用材料、帯電性付与材料、導電性付与用材料、粉体流動性付与用材料、化粧品用材料、フレキシブル配線材料、液晶ディスプレイ用材料、有機ELディスプレイ用材料、マイクロLEDディスプレイ用材料、QD-ELディスプレイ用材料、フレキシブルディスプレイ材料、アンテナ材料、光配線材料、又はセンシング材料に用いられる第24観点又は第25観点に記載のコンポジット組成物、
第28観点として、下記(A)工程~(C)工程:
(A)工程:5~120nmの平均一次粒子径を有する金属酸化物粒子が炭素原子数1~5のアルコールに分散した金属酸化物ゾルを準備する(A)工程、
(B)工程:(A)工程で得られた金属酸化物ゾルに式(1)に記載のシラン化合物(A)及び式(2)及び式(3)からなる群より選ばれたシラン化合物(B)と、塩基性化合物(I)を添加する工程、
(C)工程:(B)工程で得られた金属酸化物ゾルを乾燥する工程、を含む第1観点~第12観点の何れか一つに記載の金属酸化物粒子の製造方法、
第29観点として、第27観点に記載の(A)工程~(C)工程のうち、(C)工程が下記(C’)工程であるか、又は上記(A)工程~(C)工程に更に下記(D)工程:
(C’)工程:(B)工程で得られた金属酸化物ゾルを、炭素原子数1~5のアルコール以外の有機溶媒に溶媒置換する工程、
(D)工程:(C)工程で得られた金属酸化物粒子を有機溶媒に分散する工程、を含む第14観点~第22観点の何れか一つに記載の金属酸化物ゾルの製造方法、及び
第30観点として、下記(E)工程~(G)工程:
(E)工程:金属酸化物粒子が有機溶媒に分散した分散液に水を添加する工程、
(F)工程:(E)工程の後、上澄みの溶媒を除去して沈殿物を得る工程、
(G)工程:(F)工程の後、沈殿物を乾燥させて金属酸化物粒子粉末を得る工程、を含む第1観点~第12観点の何れか1つに記載の金属酸化物粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
コロイド状金属酸化物粒子の分散液(ゾル)、例えばシリカゾルは液状媒体にシリカ粒子が分散した液体である。しかし、分散媒である液体を除去することでシリカ粒子(シリカ粉末)が得られる。これらの金属酸化物粒子は、粒子状である金属酸化物粉末として利用する場合、金属酸化物ゾルとして利用する場合に比べて体積割合が十分に低く、輸送コストが低く、また金属酸化物を利用する場面において添加成分として捉えた場合に添加後の分散媒除去の工程がなく、工程管理上のメリットがある。
【0017】
本発明では、粉末化された金属酸化物粒子を溶媒に再分散して粉末化される前のコロイド分散状態に再分散することができるので、輸送コストにおいて大きな利点が得られる。また、金属酸化物粒子を粉末化する手前の高濃度化状態で用いることも可能であり、輸送コストだけでなく、添加後の溶媒除去の負担軽減の点でも大きなメリットがある。
【0018】
添加成分として考えた時に、金属酸化物粒子が含まれる被膜は、金属酸化物の特性を利用して耐摩耗性、屈折率調整、耐熱性、断熱性、耐電気絶縁性、誘電特性等にメリットがある。
【0019】
これらの添加成分として金属酸化物が含まれ有機成分と共に基板上に形成される被膜では、その後に被膜全体又は被膜の一部を取り除くプロセスが含まれる製造過程では、しばしば有機成分は薬液エッチングやガスエッチングを利用して除去可能であるが、金属酸化物粒子は耐エッチング性が高く除去に困難であった。
【0020】
これらの金属酸化物粒子を被膜と共に基板上から除去する場合に、薬液(例えば湿式エッチング液として有機溶媒を用いる薬液除去)により除去することが可能である。除去された金属酸化物粒子は有機溶媒中に分散された分散液(ゾル)であり、除去に用いる薬液は少量で除去されることがプロセス上で有用であることから、高濃縮ゾルを形成できることが望ましい。本発明では被膜中に含有された金属酸化物粒子が有機溶媒等の薬液で除去される際に、少量の有機溶媒等の薬液によっても除去可能である金属酸化物粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例5-1で得られた膜の写真である。
図2】比較例5-1で得られた膜の写真である。
図3】マレイミド樹脂のみの硬化膜(図3(A)、図3の左側)と、表面修飾シリカ粒子とマレイミド樹脂とを含むコンポジット材料の硬化膜(図3(B)、図3の右側)である。
図4】(乾燥粉末の再分散による高濃度ゾル作製評価)にて金属酸化物粒子を溶媒に再分散させた金属酸化物ゾル(図4左側:実施例1-3、図4右側:比較例1-2)の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は2つの化学基(a1)と2つの加水分解性基(a2)を有するシラン化合物(A)の加水分解物と、3つの化学基(b1)と1つの加水分解性基(b2)を有するシラン化合物(B)の加水分解物が表面被覆された金属酸化物粒子であって、前記シラン化合物(A)が上記式(1)で表されるシラン化合物の群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物であり、前記シラン化合物(B)が上記式(2)及び上記式(3)で表されるシラン化合物の群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物であり、上記金属酸化物粒子は塩基性化合物(I)を含み、該金属酸化物粒子は1.4~3.0の粒子屈折率と有機溶媒に金属酸化物濃度として40質量%以上、又は40~90質量%、又は50~90質量%、又は60~90質量%以上で分散可能であるか、又は該金属酸化物粒子は1.1~1.4未満の粒子屈折率と有機溶媒に金属酸化物濃度として25質量%以上、又は30質量%以上、又は25~60質量%、又は30~60%以上で分散可能である上記金属酸化物粒子である。
本発明に用いられる金属酸化物粒子が5~120nmの平均一次粒子径を有し、且つ金属成分がケイ素、周期表における第4周期の金属元素、及び周期表における第5周期の金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属成分からなる群から選ばれる金属酸化物粒子を用いることができる。
【0023】
上記第4周期の金属成分は、例えばカリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素等が挙げられる。
【0024】
上記第5周期の金属成分は、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル等が挙げられる。
【0025】
上記金属酸化物粒子が5~120nmの平均一次粒子径を有し、且つ金属成分がケイ素、チタン、スズ、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、アンチモン、セリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、鉄、及びアルミニウムから選ばれる群から選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物を用いることができる。特に、金属成分がケイ素であるシリカ粒子を金属酸化物粒子として用いることができる。
【0026】
上記金属酸化物粒子は単独の金属酸化物粒子、又は複合金属酸化物粒子が挙げられる。複合金属酸化物は、金属酸化物同士の固溶体として用いる事や、金属酸化物粒子が界面で化学結合を有する複合コロイド粒子として用いる事や、金属酸化物粒子の混合物として用いることができる。
【0027】
金属酸化物粒子は、粒子内部に空間が存在しない中実金属酸化物粒子、外殻の内部に空間を有する中空金属酸化物粒子、又はそれら粒子の混合金属酸化物粒子を用いることができる。
中実金属酸化物粒子としては以下に説明することができる。
【0028】
単独での金属酸化物粒子としては、シリカ粒子(即ち、酸化ケイ素粒子)、酸化チタン粒子、酸化スズ粒子、酸化コバルト粒子、酸化ニッケル粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子等が挙げられる。
【0029】
中実金属酸化物粒子は、平均1次粒子径が5~120nm、又は10~100nmであり、粒子屈折率が1.4~3.0であり、表面シラノール基密度が0.4~3.0個/nmである。
【0030】
上記中実金属酸化物粒子は、分散媒に分散した中実金属酸化物ゾルとして得ることができる。中実金属酸化物粒子が分散媒に分散したゾルであって、動的光散乱法による平均粒子径が20~250nm、又は20~150nmである中実金属酸化物ゾルを得ることができる。
【0031】
上記中実金属酸化物粒子は、20℃におけるEMS粘度(mPa・s)が1~20である分散媒に、屈折率1.4~3.0の金属酸化物粒子を金属酸化物濃度として60質量%で再分散させた金属酸化物ゾルのEMS粘度(mPa・s)にて、(再分散させた金属酸化物ゾルのEMS粘度)/(分散媒のEMS粘度)の比が1~3000、1~2000、1~1000、1~500、1~100、1~70、又は1~50とすることができる。金属酸化物粒子の(再分散させた金属酸化物ゾルのEMS粘度)/(分散媒のEMS粘度)の比を1~3000とすることで、分散媒に再分散させたときの金属酸化物ゾルの流動性が良好となる。
【0032】
上記金属酸化物粒子は、金属酸化物粒子と分散媒とを含む金属酸化物ゾルとすることができ、該金属酸化物粒子は、平均一次粒子径が35~200nm、又は50nm~200nm、又は50nm~150nm、又は60nm~100nmである金属酸化物粒子Aと、平均一次粒子径が5~100nm、又は5nm~50nm、又は10nm~35nmで
ある金属酸化物粒子Bとを含み、(金属酸化物粒子Aの平均一次粒子径)/(金属酸化物粒子Aの平均一次粒子径)の比が1.1~20未満、又は2~20未満、又は2~10、又は4~10であり、(金属酸化物ゾルのEMS粘度)/(分散媒のEMS粘度)の比が1~1000、又は1~100、又は1~10、又は1.1~10である、金属酸化物ゾルとすることができる。上記金属酸化物粒子は、平均一次粒子径が35~200nmである金属酸化物粒子Aと、平均一次粒子径が5~100nmである金属酸化物粒子Bとを含むことで、小粒子が大粒子の摩擦係数を低減するベアリング効果が生じ、金属酸化物ゾル中での金属酸化物粒子Aの流動性が向上し、金属酸化物ゾルのEMS粘度を低下させることができる。
【0033】
上記金属酸化物粒子は平均粒子径分布において少なくとも2つのピークを有することができ、D50~D90の範囲にある最も大きなピークaが35~200nm、又は50nm~200nm、又は50nm~150nm、又は60nm~100nmの範囲に存在し、D10~D50の範囲にある最も大きなピークbが5~100nm、又は5nm~50nm、又は10nm~35nmの範囲に存在することができる。
【0034】
上記D10、D50、D90は累積粒度分布を示す微粒子側から累積10%、50%、90%を示す粒子径である。本発明では例えば累積粒度分布の値を画像解析による粒度分布により測定することができる。画像解析による粒度分布の測定では、測定サンプルを透過型電子顕微鏡画像として解析する。D値の解析方法には、個数分布法と体積分布法がある。個数分布法は、粒子をその粒子の面積と同じ面積の真円として捉え、一定の視野に特定粒子径を有する粒子がどのくらいの%で存在するかを測定する。また体積分布法では、粒子の密度が一定なら体積と重量は比例関係にあるとして、一定量サンプル中に特定粒子径の粒子がどのくらいの質量%で存在するかを測定する。本発明では体積分布法でD値(D10、D50、D90)を求めることが好ましい。
【0035】
上記金属酸化物粒子は、平均粒子径分布において少なくとも2つのピークを有する金属酸化物粒子を含むことができる。ここで、少なくとも2つのピークとして、D50~D90の範囲にある最も大きなピークaが35nm以上200nm以下の範囲に存在するとは、累積粒度分布がD50~D90の範囲で最も大きなピークが存在し、またD10~D50の範囲にある最も大きなピークbが5nm以上100nm未満の範囲に存在するとは、累積粒度分布がD10~D50の範囲で最も大きなピークが存在することを意味する。
【0036】
上記金属酸化物粒子は、(金属酸化物粒子Aの体積)/(金属酸化物粒子Bの体積)の比が0.1~100、又は0.1~50、又は0.1~20、又は1~10、又は2~10とすることができる。金属酸化物粒子A及び金属酸化物粒子Bの体積は、透過型電子顕微鏡画像による金属酸化物粒子A及び金属酸化物粒子Bの(平均一次粒子径から算出される平均粒子体積)×(粒子個数)から算出できる。金属酸化物粒子の(金属酸化物粒子Aの体積)/(金属酸化物粒子Bの体積)の比が0.1~100とすることで、金属酸化物粒子を含む金属酸化物ゾルの粘度を十分に低下させて流動性が良好なゾルを得ることができる。
【0037】
上記金属酸化物粒子は、屈折率が1.4~3.0、1.4~2.5、1.4~2.0、又は1.4~1.7の粒子屈折率を有し、粒子内部に空間が存在しない中実シリカ粒子を用いることができる。
【0038】
また、上記金属酸化物粒子は、屈折率が1.1~1.4未満、1.1~1.35、1.15~1.35、又は1.2~1.35の粒子屈折率を有し、外殻の内部に空間を有する中空シリカ粒子を用いることができる。
【0039】
シリカ粒子はアルカリ金属珪酸塩水溶液を陽イオン交換することによって得られた活性珪酸を加熱処理する方法で得られるコロイド状シリカ粒子、又はアルコキシドシランを有機溶媒中で加水分解させる方法で得られるコロイド状シリカ粒子、又は四塩化ケイ素を酸素/水素バーナーの火炎中で加水分解させて得られるフュームドシリカ粒子、ケイ酸ナトリウムを酸性物質と中和させてシリカを生成し濾過と乾燥を経て得られる湿式法シリカ、シリカ粉体を乾式で粉砕して得られる粉砕法シリカが挙げられる。
【0040】
複合金属酸化物粒子としてはコア粒子とシェル粒子との組み合わせからなるコアシェル型金属酸化物粒子が挙げられ、コア粒子/シェル粒子が、酸化チタン粒子/酸化スズと二酸化ケイ素の複合粒子、酸化チタンと酸化スズの複合粒子/酸化スズと二酸化ケイ素の複合粒子、酸化チタン粒子と酸化ジルコニウム粒子の複合粒子/酸化スズと二酸化ケイ素の複合粒子、酸化チタン粒子と酸化スズ粒子と酸化ジルコニウム粒子の複合粒子/酸化スズと二酸化ケイ素の複合粒子、酸化チタン粒子/酸化アンチモン粒子、酸化チタンと酸化スズの複合粒子/酸化アンチモン粒子の組み合わせが挙げられる。
上記コアシェル型金属酸化物粒子は、(シェルの金属酸化物)/(コアの金属酸化物)が質量比で0.05~1.0、又は0.1~1.0、又は0.15~1.0の範囲で仕込み製造することができる。
【0041】
本発明ではコア粒子とシェル粒子の間に中間層が存在し、中間層は(D)成分として酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化アンチモン、及び酸化タングステンからなる群から選ばれる少なくとも1種の組み合わせからなる金属酸化物粒子であり、(コア以外の金属酸化物)/(コアの金属酸化物)が質量比で0.05~1.0、又は0.1~1.0、又は0.15~1.0の範囲で仕込み製造することができる。
金属酸化物粒子は、粒子内部に空間が存在しない中実金属酸化物粒子、外殻の内部に空間を有する中空金属酸化物粒子、又はそれら粒子の混合金属酸化物粒子を用いることができる。
【0042】
コアシェル構造を用いる場合、核の金属酸化物の金属酸化物成分又は金属酸化物含有率とは異なる金属酸化物成分又は金属酸化物含有率の金属酸化物粒子を含む被覆層で被覆とは、核と被覆層の金属酸化物の成分が異なる場合や、核と被覆の金属酸化物の成分が一部重複していたとしてもその金属酸化物の配合割合が異なる場合を含めることができる。
例えば、被覆層の金属酸化物粒子に含まれる酸化スズ-二酸化ケイ素の複合酸化物(B1)を例とすれば、スズ酸アルカリとしては、スズ酸ナトリウム又はスズ酸カリウムを用いることができ、好ましくはスズ酸ナトリウムである。
【0043】
珪酸アルカリとしては珪酸リチウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムを用いることができる。
【0044】
スズ酸アルカリと珪酸アルカリとは、二酸化珪素/酸化第二スズを質量比として0.1~5の比率で含有する水溶液として調製され、次いでその水溶液中に存在する陽イオンを陽イオン交換樹脂により除去したものを使用できる。
スズ酸アルカリと珪酸アルカリとは、二酸化珪素/酸化第二スズの質量比が0.1~5.0の比率となるよう計量されて水に溶解され調製される。好ましい水溶液の固形分濃度は(SnO+SiO)として1~12質量%である。
【0045】
調製された水溶液は陽イオン交換樹脂を用いて陽イオンが除去される。陽イオン交換樹脂としては水素型の強酸性陽イオン交換樹脂が好ましく、陽イオン交換には例えばアンバーライト(商品名)120B等を充填したカラムを用いることができる。この陽イオン交換を行うことにより、珪酸成分とスズ酸成分とが重合し、1~4nmの一次粒子径を有す
る二酸化珪素-酸化第二スズ複合体コロイド粒子が生成することができる。
この二酸化珪素-酸化第二スズ複合体コロイド粒子は安定性に乏しく、放置すると数時間でゲル化するため、陽イオン交換後は速やかにアミン化合物を添加して安定化させて、二酸化珪素/酸化第二スズの質量比が0.1~5.0であり且つ0.1~1.0のM/(SnO+SiO)(但しMはアミン化合物を表す)のモル比で存在するアミン化合物で安定化された1~4nmの一次粒子径を有する二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子の水性ゾルとすることが必要である。得られる水性ゾルは(SnO+SiO)として0.1~10質量%である。
【0046】
前記陽イオン交換により生成する二酸化珪素-酸化第二スズ複合体コロイド粒子の安定化には、M/(SnO+SiO)(但しMはアミン化合物を表す)のモル比として0.1~1.0となる量のアミン化合物の添加が適切である。M/(SnO+SiO)のモル比が0.1~1.0の未満のアミン化合物の添加では、数時間の放置により安定性を失いゲル化するため好ましくない。
次に5~60nmの一次粒子径を有する核に用いる金属の酸化物コロイド粒子(A)の水性ゾルと、二酸化珪素/酸化第二スズの質量比が0.1~5.0であり且つ0.1~1.0のM/(SnO+SiO)(但しMはアミン化合物を表す)のモル比のアミン化合物で安定化された1~4nmの一次粒子径を有する二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子(B1)の水性ゾルとを、前記金属の酸化物コロイド粒子に対する前記二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子の質量比が(B1)/(A)として0.05~0.50の比で混合することにより、前記金属の酸化物コロイド粒子(A)が前記二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子(B1)により被覆されてなる変性金属酸化物コロイド粒子(C)の水性ゾルを得ることができる。
前記金属の酸化物コロイド粒子(A)の水性ゾルの固形分濃度は0.5~50質量%であり、5~30質量%であることが好ましい。
【0047】
前記金属の酸化物コロイド粒子(A)の水性ゾルは、pH5~11.5、好ましくはpH7~11.5のものを用いることができる。該水性ゾルのpHは必要に応じてアルカリ成分により調整することができ、用いられるアルカリ成分としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属水酸化物、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、エチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n-プロピルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、第4級アンモニウム水酸化物等が挙げられる。
前記金属の酸化物コロイド粒子(A)の水性ゾルと被覆粒子(B1)の水性ゾルとの混合は、撹拌下で行うことが好ましい。
前記金属の酸化物コロイド粒子(A)に対する前記二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子(B1)の混合比は、質量比(B1)/(A)として0.05~0.50が好ましく、0.05未満では二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子(B1)による核となる前記金属の酸化物コロイド粒子(A)の被覆を十分に行うことができず、安定な親水性有機溶媒分散ゾル又は0.05~12質量%の水溶解度を有する疎水性有機溶媒分散ゾルを得ることができない。また、前記質量比は0.50で十分であり、0.50を超えても効率的ではない。
【0048】
上記ゾル(A)と上記ゾル(B1)とを、容器に装填された一方のゾルの固形分100質量部に対して該容器に添加する他方のゾルの固形分が毎分22~1000質量部の割合で混合することができる。
次いで得られた変性金属酸化物コロイド粒子(C)の水性ゾルの陽イオン交換を行う。陽イオン交換は水素型の強酸性陽イオン交換樹脂を用いることが好ましい。
次いで得られた水性ゾルに、前記二酸化珪素-酸化第二スズ複合酸化物コロイド粒子(B
1)に対するアミン化合物のモル比としてM/(SnO+SiO)(但しMはアミン化合物を表す)が0.001~0.08となる量のアミン化合物を添加する。添加するアミン化合物の量が前記M/(SnO+SiO)のモル比が0.001未満では、本発明の親水性有機溶媒分散ゾルの分散安定性が不十分となるため好ましくない。また、前記M/(SnO+SiO)のモル比が0.08を超える場合は、前記変性金属酸化物コロイド粒子(C)の粒子表面に結合させるシラン化合物を結合させる場合には、結合の妨げになることがある。
【0049】
次いで得られた水性ゾルの水性媒体を親水性有機溶媒に置換する。分散媒を水から親水性有機溶媒に置換する方法は公知の方法を用いることができ、常圧下又は減圧下における蒸発置換法、限外濾過膜法、溶媒抽出法等である。
溶媒置換を効率よく行うため、得られた水性ゾルは、含まれる変性金属酸化物コロイド粒子(C)の濃度を1~70質量%、又は10~50質量%の範囲となるように予め濃縮しておくことが好ましい。ゾルの濃縮は、加熱蒸発法、限外濾過法等の公知の方法を用いることができる。溶媒置換の際のゾルの温度は室温から親水性溶媒の沸点の範囲で行われる。溶媒置換はゾル中の水分が5質量%未満となるまで行われる。得られるゾルの固形分濃度は、前記変性金属酸化物コロイド粒子(C)の全金属酸化物濃度として20~70質量%である。
【0050】
本発明ではゾルの分散媒は、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、アミド、グリコール、又は炭化水素等の有機溶媒を用いることができる。
有機溶媒としては、例えばエーテル結合を有していても良い炭素原子数1~10のアルコール、エステル、ケトン、エーテル、アミド、エステル又は炭化水素が挙げられる。
炭素原子数1~10のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、n-ペンタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
ケトンとしては炭素原子数3~30の直鎖状又は環状の脂肪族ケトンが挙げられ、例えばメチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0051】
エーテルとしては炭素原子数3~30の直鎖状又は環状の脂肪族エーテルが挙げられ、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
エステルとしては炭素原子数2~30の直鎖状又は環状のエステルが挙げられ、例えば酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸secブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、酢酸フェニル、乳酸フェニル、プロピオン酸フェニル等が挙げられる。
アミドは炭素原子数3~30の脂肪族アミドであり、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン等が挙げられる。
グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポロピレングリコール、及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0052】
炭化水素としては炭素原子数6~30の直鎖状又は環状の脂肪族又は芳香族炭化水素が挙げられ、例えばヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0053】
本発明では塩基性化合物(I)としてアミン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド化合物、アンモニア又は水酸化第4級アンモニウムを用いることができる。
アルカリ金属水酸化物としては、リチウム、ナトリウム、カリウムの水酸化物を用いることができる。
アルカリ金属アルコキシド化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウムのアルコラートを用いることができる。
本発明に用いられるアミンは、5~35の総炭素原子数を有する第2級アミン又は第3級アミンを挙げることができる。これらのアミンはpH5~11.5、好ましくはpH7~11.5の範囲で仕込み製造することができる。
上記第2級アミンとしては例えばエチルn-プロピルアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、エチルイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルブチルアミン、n-プロピルブチルアミン、ジブチルアミン、エチルペンチルアミン、n-プロピルペンチルアミン、イソプロピルペンチルアミン、ジペンチルアミン、エチルオクチルアミン、i-プロピルオクチルアミン、ブチルオクチルアミン、ジオクチルアミン等が挙げられる。
【0054】
上記第3級アミンとしては例えばトリエチルアミン、エチルジn-プロピルアミン、ジエチルn-プロピルアミン、トリn-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、エチルジブチルアミン、ジエチルブチルアミン、イソプロピルジブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジイソプロピルブチルアミン、トリブチルアミン、エチルジペンチルアミン、ジエチルペンチルアミン、トリペンチルアミン、メチルジオクチルアミン、ジメチルオクチルアミン、エチルジオクチルアミン、ジエチルオクチルアミン、トリオクチルアミン、ベンジルジブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン等が挙げられる。
上記アミンの中でも総炭素原子数が6~35のアルキル基を有する第2級アミン及び第3級アミンが好ましく、例えばジイソプロピルアミン、トリペンチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジメチルオクチルアミン、トリオクチルアミン等が挙げられる。
また、水酸化第4級アンモニウムは、炭素原子数1~10のアルキル基を有する水酸化第4級アンモニウムが好ましく、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトライソプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0055】
上記金属酸化物粒子は、リーチング法による測定で、金属酸化物粒子の表面にAl換算で金属酸化物の質量に対して該アルミニウム原子が100~20000ppm/金属酸化物の割合(A)で結合したものである。
【0056】
前記リーチング法が金属酸化物粒子を硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の鉱酸の水溶液で浸出した金属酸化物粒子の表面に結合したアルミニウム原子を含む化合物を、Al換算で金属酸化物粒子の金属酸化物の質量に対する割合(A)を算出するものである。
【0057】
上記金属酸化物粒子は、フッ酸水溶液(フッ化水素酸)を用いた溶解法による測定では、金属酸化物粒子全体に存在するアルミニウム原子がAl換算で金属酸化物の質量に対して50~50000、又は120~50000ppm/SiOの割合(B)で結合し、前記割合(A)を該割合(B)で除した値が0.001~1.0である金属酸化物粒子である。
【0058】
本発明では外殻の内部に空間を有する中空金属酸化物粒子としては、中空シリカ粒子を挙げることができる。
中空シリカ粒子はシリカの外殻を有し、外殻の内側に空間を有するものである。中空シ
リカは分散媒中でいわゆるテンプレートと呼ばれるコアに相当する部分の表面に、シリカを主成分とする外殻を形成し、コアに相当する部分を除去する方法で得られる。
【0059】
本発明では金属酸化物粒子について硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の鉱酸の水溶液を用いたリーチング法によって、金属酸化物粒子表面に存在するアルミニウムを測定することにより、アルミニウム原子をAlに換算して示すことができる。例えば、金属酸化物粒子がシリカ粒子である場合には、シリカ粒子を硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の鉱酸の水溶液を用いたリーチング法によって、シリカ粒子表面に存在するアルミニウムを測定することにより、アルミニウム原子をAlに換算して示すことができる。
即ち、アルミニウム原子はリーチング法により測定したアルミニウム原子が中空シリカ粒子表面にAl換算で中空シリカ粒子のSiOの質量に対して100~20000ppm/SiO、又は100~15000ppm/SiO、100~10000ppm/SiO、又は200~5000ppm/SiO、又は500~5000ppm/SiO、又は800~3000ppm/SiOの割合(A)でシリカ粒子に結合している。シリカ粒子表面に存在してアルミノシリケートサイトを形成することが、溶媒や樹脂に分散する上で重要である。
【0060】
金属酸化物粒子の表面にアルミノシリケートとして存在するアルミニウム原子は、当該金属酸化物粒子を硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の鉱酸の水溶液により、アルミニウム原子がアルミニウム塩、アルミニウム酸化物、又はアルミニウム水酸化物に近い構造でリーチング(溶出)されて、その溶液からICP発光分光分析装置を用いてアルミニウム原子を測定でき、Alに換算して示すことができる。特に硝酸水溶液を用いてリーチング(溶出)する方法が用いられる。リーチングに用いる硝酸水溶液は、その水溶液のpHが0.5~4.0、0.5~3.0、0.5~2.0、又は1.0~1.5の範囲で用いることができ、典型的にはpH1.0となる硝酸水溶液を用いることができる。
【0061】
例えば、金属酸化物粒子がシリカ粒子である場合には、シリカ粒子の表面にアルミノシリケートとして存在するアルミニウム原子は、当該シリカ粒子を硫酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の鉱酸の水溶液により、アルミニウム原子がアルミニウム塩、アルミニウム酸化物、又はアルミニウム水酸化物に近い構造でリーチング(溶出)されて、その溶液からICP発光分光分析装置を用いてアルミニウム原子を測定でき、Alに換算して示すことができる。特に硝酸水溶液を用いてリーチング(溶出)する方法が用いられる。リーチングに用いる硝酸水溶液は、その水溶液のpHが0.5~4.0、0.5~3.0、0.5~2.0、又は1.0~1.5の範囲で用いることができ、典型的にはpH1.0となる硝酸水溶液を用いることができる。例えばシリカ1gに対して100mLの上記の硝酸水溶液を添加して、20~70℃、又は40~60℃の温度で10~24時間保持してシリカ粒子表面からアルミニウム化合物を溶出させ、それを分析用試料に用いることができる。
【0062】
本発明において、シリカ粒子表面とは上記リーチングによりアルミニウム化合物が溶出可能な領域をシリカ粒子表面と定義することができる。それはシリカゾルから溶媒を蒸発させ更に250℃で乾燥したシリカゲルをすりつぶしてシリカ粉体として、そのシリカ粉体0.2gにpH1.0の硝酸水溶液20mLを加え十分に振とうし、50℃の恒温槽に17時間保持した後、遠心ろ過して得られたろ液中のアルミニウム含有量をICP発光分光分析装置で測定し、Alに換算したアルミニウム含有量をシリカ粉体の質量で除することで、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(Al/SiO)(ppm)を求めるものである。
【0063】
また、シリカ粒子表面にアルミノシリケートを形成させる場合においても、製造方法によっては選択的に表面だけではなく、シリカ粒子内部にもアルミノシリケートが形成されることがある。表面と内部を含めた中空シリカ粒子全体に存在するアルミニウム原子がAl換算で中空シリカ粒子のSiOの質量に対する割合(B)で120~50000ppm/SiO、又は500~20000ppm/SiO、又は500~10000ppm/SiO、又は1000~5000ppm/SiO、又は1000~4000ppm/SiOの割合でシリカ粒子に結合している。
シリカ粒子表面とシリカ粒子全体に存在するアルミニウムの割合である上記(A)/(B)の割合が0.001~1.0、又は0.01~1.0、又は0.1~1.0、又は0.3~1.0、又は0.4~1.0の範囲に設定することができる。
シリカ粒子についてフッ酸水溶液で溶解法によりシリカ粒子全体に存在するアルミニウム原子を測定することによりAlに換算して示すことができる。即ち、シリカ粒子全体にアルミノシリケートとして存在するアルミニウム原子は、フッ酸水溶液で溶解することにより、その溶液からICP発光分光分析装置を用いて測定でき、Alに換算してシリカ粒子全体に存在するアルミニウム原子を示すことができる。
【0064】
このようにシリカ粒子表面にアルミノシリケートサイトが形成されることにより、シリカ粒子表面に存在する中空シリカ粒子のSiOの1g当たりに換算した負電荷量が、5~250μeq/g、又は5~150μeq/g、又は5~100μeq/g、又は25~150μeq/g、又は25~100μeq/gの範囲で計測される。
中空シリカ粒子は平均1次粒子径が5~120nm、又は10~100nmであり、粒子屈折率が1.1~1.4未満であり、外殻の厚さが3~12nm、又は5~10nm、表面シラノール基密度が0.4~3.0個/nmである。
【0065】
上記中空シリカ粒子は分散媒に分散した中空シリカゾルとして得ることができる。中空シリカ粒子が分散媒に分散したゾルであって、動的光散乱法による平均粒子径が20~250nm、又は20~150nmである中空シリカゾルを得ることができる。
【0066】
上記中空シリカ粒子は、20℃におけるEMS粘度(mPa・s)が1~20である分散媒に、屈折率1.1~1.4の中空シリカ粒子をシリカ濃度として30質量%で再分散させた中空シリカゾルのEMS粘度(mPa・s)にて、(再分散させた中空シリカゾルのEMS粘度)/(分散媒のEMS粘度)の比が、1~3000、1~2500、1~2000、1~1000、1~500、又は1~100とすることができる。中空シリカ粒子の(再分散させた中空シリカゾルのEMS粘度)/(分散媒のEMS粘度)の比を1~3000とすることで、分散媒に再分散させたときの中空シリカゾルの流動性が良好となる。
【0067】
中空シリカは分散媒中でいわゆるテンプレートと呼ばれるコアに相当する部分の表面に、シリカを主成分とする外殻を形成し、コアに相当する部分を除去する方法で得られるが、この状態では中空シリカ水性ゾルである。
本発明の金属酸化物粒子はメタノール滴定法による疎水化度が30~80容積%、又は40~80容積%、50~80容積%、60容積%超~80容積%、40~60容積%、30~60容積%未満、20容積%以上60容積%未満、又は30~50容積%とすることができる。
【0068】
上記中空シリカ粒子は上述の塩基性化合物(I)を含有させること、上述の有機溶媒に分散させることができる。
【0069】
本発明の金属酸化物粒子は、2つの化学基(a1)と2つの加水分解性基(a2)を有するシラン化合物(A)の加水分解物と、3つの化学基(b1)と1つの加水分解性基(
b2)を有するシラン化合物(B)の加水分解物が表面被覆された金属酸化物粒子を用いることができる。
【0070】
シラン化合物(A)は上記式(1)から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を用いることができる。
式(1)中、Rは化学基(a1)であってそれぞれ直鎖状又は環状の炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~40のアリール基、及び(メタ)アクリロキシ基含有アルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の化学基であり且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、Rは加水分解性基(a2)であってそれぞれ炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数2~10のアシルオキシ基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の加水分解性基である。
【0071】
上記アルキル基は炭素原子数1~10のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等があげられる。
【0072】
上記アリール基は炭素原子数6~40のアリール基であり例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基、ピレン基等が挙げられる。
上記(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の双方をあらわす。(メタ)アクリロイル基を有する有機基は例えば、3-メタクリロキシプロピル基、3-アクリロキシプロピル基等が挙げられる。
は加水分解性基(a2)であって、アルコキシ基は炭素原子数1~10のアルコキシ基が挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチロキ
シ基、1-メチル-n-ブトキシ基、2-メチル-n-ブトキシ基、3-メチル-n-ブトキシ基、1,1-ジメチル-n-プロポキシ基、1,2-ジメチル-n-プロポキシ基、2,2-ジメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-n-プロポキシ基、n-ヘキシロキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
上記アシルオキシ基は炭素原子数2~10のアシルオキシ基であり、例えばメチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、i-プロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、i-ブチルカルボニルオキシ基、s-ブチルカルボニルオキシ基、t-ブチルカルボニルオキシ基、n-ペンチルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、3-メチル-n-ブチルカルボニルオキシ基、1,1-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、2,2-ジメチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、1-エチル-n-プロピルカルボニルオキシ基、n-ヘキシルカルボニルオキシ基、1-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基、2-メチル-n-ペンチルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
上記ハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
シラン化合物(A)において、Rは飽和炭化水素基と不飽和炭化水素基とをそれぞれ1個有する組み合わせが好ましい。これらの組み合わせとして、メチル基とフェニル基の組み合わせ、メチル基と3-メタクリロキシプロピル基の組み合わせ、メチル基と3-アクリロキシプロピル基の組み合わせが挙げられる。
これらのシラン化合物としては、例えばメチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、メチルメタクリロキシジメトキシシラン、メチルメタクリロキシジエトキシシラン、メチルアクリロキシジメトキシシラン、メチルアクリロキシジエトキシシラン等が挙げられる。
【0075】
シラン化合物(B)が上記式(2)及び上記式(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を用いることができる。
式(2)及び式(3)中、R及びRは化学基(b1)であってそれぞれ炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数6~30のアリール基で且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、R及びYは加水分解基(b2)であってそれぞれRはアルコキシ基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を示し、YはNH基、又は酸素原子を示す。これらアルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子は上述の例示を用いることができる。
上記R及びRの化学基(b1)は炭素原子数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、トリメチルシリル基を好ましく用いることができる。
上記シラン化合物としては例えば以下に例示することができる。
【0076】
【化4】
【0077】
本発明において、金属酸化物粒子は更にシラン化合物(C)として上記式(4)から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物の加水分解物を被覆することができる。
式(4)中、Rは化学基(c1)であってそれぞれ直鎖状又は環状の炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~40のアリール基、及び(メタ)アクリロキシ基含有アルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の化学基であり且つSi-C結合によりケイ素原子と結合しているものであり、Rは加水分解性基(c2)であってそれぞれ炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数2~10のアシルオキシ基、及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の加水分解性基である。
炭素原子数1~20のアルキル基は上述のアルキル基に加えて、更に炭素原子数8~12のアルキル基が好ましく、例えばオクチル基、ノナン基、デシル基が挙げられる。例えば、オクチルトリメトキシシラン、ノナントリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランが挙げられる。
【0078】
上記シラン化合物は信越化学工業(株)製のシラン化合物を使用することができる。
【0079】
シリカ粒子の表面にヒドロキシル基、例えばシリカ粒子であればシラノール基と上記シラン化合物が反応してシロキサン結合によりシリカ粒子の表面に上記シラン化合物を被覆する。反応温度は20℃からその分散媒の沸点の範囲までの温度で行うことができるが、例えば20℃~100℃の範囲で行うことができる。反応時間は0.1~10時間程度で行うことができる。
【0080】
上記シラン化合物はシリカ粒子表面の被覆量として、シラン化合物中のケイ素原子の個数が0.1個/nm~20.0個/nm、又は0.1個/nm~6.0個/nm、又は0.5個/nm~4.0個/nm、1個/nm~3.0個/nmの被覆量に相当するシラン化合物をシリカゾルに添加してシリカ粒子表面の被覆を行うことができる。
上記シラン化合物の加水分解には水が必要であるが、水性溶媒のゾルであればそれら水性溶媒が用いられる。水性媒体を有機溶媒に溶媒置換した時に溶媒中に残存する水分を用いることができる。例えば0.01~5質量%に存在する水分を用いることができる。また、加水分解は触媒を用いて行うことも、触媒なしで行うこともできる。
【0081】
触媒なしで行う場合は金属酸化物粒子の表面が酸性サイドで存在する場合であり、例えばシリカ粒子表面が酸性サイドで存在する場合であり、触媒を用いる場合は、加水分解触媒として金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基を挙げることができ
る。加水分解触媒としての金属キレート化合物は、例えばトリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム等が挙げられる。加水分解触媒としての有機酸は、例えば酢酸、シュウ酸等が挙げられる。加水分解触媒としての無機酸は、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等を挙げられる。加水分解触媒としての有機塩基は、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、第4級アンモニウム塩が挙げられる。加水分解触媒としての無機塩基としては、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。
【0082】
有機酸としては2価脂肪族カルボン酸、脂肪族オキシカルボン酸、アミノ酸、及びキレート剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸が挙げられ、2価脂肪族カルボン酸はシュウ酸、マロン酸、及びコハク酸であり、脂肪族オキシカルボン酸はグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、及びクエン酸であり、アミノ酸はグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、及びトリオニンであり、キレート剤はエチレンジアミン四酢酸、L-アスパラギン酸-N,N-二酢酸、及びジエチレントリアミン五酢酸等が挙げられる。有機酸塩としては上記有機酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、及びアミン塩が挙げられる。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウムが挙げられる。
【0083】
本発明の金属酸化物粒子はシラン化合物(A)の加水分解物、シラン化合物(B)の加水分解物、及びシラン化合物(C)の加水分解物を被覆することによって、金属酸化物粒子表面のシラン化合物の29Si-NMRによるM構造(1官能性、即ちケイ素原子に結合する加水分解基が1個とケイ素原子に結合する化学基が3個有するシラン化合物に由来する構造)、D構造(2官能性、即ちケイ素原子に結合する加水分解基が2個とケイ素原子に結合する化学基が2個有するシラン化合物に由来する構造)、及びT構造(3官能性、即ちケイ素原子に結合する加水分解基が3個とケイ素原子に結合する化学基が1個有するシラン化合物に由来する構造)が、M構造とD構造とT構造の合計が100モル%とした時にそれぞれが、M構造=30モル%以上60モル%未満、D構造=30モル%以上90モル%未満、T構造=0モル%以上30モル%未満の割合でシラン化合物を被覆する事ができる。
【0084】
上記金属酸化物粒子は有機溶媒及び/又は反応性モノマーに分散した金属酸化物粒子ゾルを得ることができる。上記ゾルは動的光散乱法による平均粒子径が5~250nm、又は5~200nmの範囲に設定することができる。
有機溶媒がアルコール、ケトン、エーテル、エステル、アミド、グリコール、又は炭化水素を選択することができる。これらの有機溶媒は上述の例示を用いることができる。
反応性モノマーはアクリル化合物、アリル化合物、イソシアナート化合物、イソチオシアナート化合物、エポキシ化合物、ジアミン含有化合物、ジオール含有化合物、ジカルボン酸含有化合物、ジスルホニルクロリド含有化合物、ジチオール含有化合物、ジスルフィド含有化合物、ジビニル含有化合物、ジアリル含有化合物、スチレン、テトラカルボン酸無水物、ビスマレイミド、ビニル含有化合物、ラクトン環含有化合物、ラクチド含有化合物、含フッ素含有化合物、環状オレフィン含有化合物、エチレン、プロピレン、又はシランを例示する事ができる。反応性モノマーはそれ自体がゾルの分散媒とすることができるが、固体であったり、気体であったり、高粘度である場合には有機溶媒と混合することでゾルの分散媒とすることができる。
アクリル化合物はアクリル酸、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、4-アクリロイルモルホリンテトラヒドロフルフリルアクリレート、メタクリル酸グリコール、又はメタクリル酸のモノマーを例示することができる。
アリル化合物はアリルアルコール、アリルクロライド、アリルエーテル、アリルグリシジルエーテル、アリルカルボン酸、アリルアミン、アリルイソプロピルアセチル尿素、アリル酸等が挙げられる。
【0085】
イソシアナート化合物としては、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、トリジンジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、トリス(イソシアナトフェニル)チオホスフェート、p-フェニレンジイソシアナート等の芳香族イソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキシル、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、リジンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート等の脂肪族イソシアナートが挙げられる。
イソチオシアネートとしては、アリルイソチオシアネート、スルフォラファン、ベンジルイソチオシアネート、p-ヒドロキシベンジルイソチオシアネート、ゲバリン、イペリン、フェネチルイソチオシアネート等が挙げられる。
【0086】
エポキシ化合物としては、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-(エポキシエチル)シクロヘキサン、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、2,6-ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル、1,1,3-トリス[p-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル、ビスフェノール-F-ジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル、ビスフェノールヘキサフルオロアセトンジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル、トリス-(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、1-{2,3-ジ(プロピオニルオキシ)}-3,5-ビス(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6・(1H,3H,5H)-トリオン、1,3-ビス{2,3-ジ(プロピオニルオキシ)}-5-(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6・(1H,3H,5H)-トリオン、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジグリセロールポリジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4-ビス(2,3-エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6-へキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p-ターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエーテル、o-フタル酸ジグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、1,6-ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、4,4’-ビス(2,3-エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)ジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルオキシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-3’,4’-エポキシ-1,3-ジオキサン-5-スピロシクロヘキサン、1,2-エチレンジオキシ-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメタン)、4’,5’-エポキシ-2’
-メチルシクロヘキシルメチル-4,5-エポキシ-2-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレングリコール-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス-(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、及びビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテルが挙げられる。また、ビスフェノールA液状エポキシ化合物、ビスフェノールF液状エポキシ化合物、又は3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリス(2,4エポキシプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0087】
ジアミン含有化合物は、エチレンジアミン、プトレシン、カダベリン、ヘキサメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン等のジアミンを例示することができる。
【0088】
ジオール含有化合物としては、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、マルチトール、グルコース、スクロース等が挙げられる。
【0089】
ジカルボン酸含有化合物としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。これらの酸無水物も挙げられ、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水安息香酸等が挙げられる。
【0090】
ジスルホニルクロリド含有化合物としては、1,3-ベンゼンジスルホニルクロリドが挙げられる。
【0091】
ジチオール含有化合物としては、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、2,3-ジメルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール等が挙げられる。
【0092】
ジスルフィド含有化合物としては、ジメチルジスルフィド、二硫化アリル、ジフェニルジスルフィド等が挙げられる。
【0093】
ジビニル含有化合物としては、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0094】
ジアリル含有化合物としては、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0095】
スチレンは、スチレン系化合物が挙げられ、スチレン、3-アセトキシ-5-ヒドロキシスチレン、4-アセトキシスチレン、3,5-ビス(トリフルオロメチル)スチレン、p-ブロモースチレン、p-クロロスチレン等が挙げられる。
【0096】
テトラカルボン酸無水物としては、3,3’-4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビフタル酸無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0097】
ビスマレイミドとしては、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン、フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン等が挙げられる。
【0098】
ビニル含有化合物としては、酢酸ビニル、メチルビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0099】
ラクトン環含有化合物としては、ベータプロピオラクトン、ガンマーブチロラクトン、デルタバレロラクトン、アルファビロン、クマリン等が挙げられる。
【0100】
ラクチド含有化合物としては、L-ラクチド、D-ラクチド等が挙げられる。
【0101】
含フッ素含有化合物としては、トリフルオロエタノール、2,2,2-トリフロオロエチルメタクリレート、トリフルオロメチルトリメチルシラン等が挙げられる。
【0102】
環状オレフィン含有化合物としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、1,3-シクロヘキサンジエン、1,4-シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン等が挙げられる。
【0103】
エチレンとしては、エチレン系化合物が挙げられ、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。
【0104】
シランとしては加水分解性シラン化合物が挙げられる。
【0105】
上記金属酸化物粒子、及び金属酸化物ゾルは以下の製造方法によって製造することができる。
下記(A)工程~(C)工程:
(A)工程:5~120nmの平均一次粒子径を有する金属酸化物粒子が炭素原子数1~5のアルコールに分散した金属酸化物ゾルを準備する(A)工程、
(B)工程:(A)工程で得られた金属酸化物ゾルに式(1)に記載のシラン化合物(A)及び式(2)及び式(3)からなる群より選ばれたシラン化合物(B)と、塩基性化合物(I)とを添加する工程、
(C)工程:(B)工程で得られた金属酸化物ゾルを乾燥する工程、を含む工程で得られる。
【0106】
そして、金属酸化物ゾルは、(C)工程が(C’)工程であるか、又は更に(D)工程:
(C’)工程:(B)工程で得られた金属酸化物ゾルを、炭素原子数1~5のアルコール以外の有機溶媒に溶媒置換する工程、
(D)工程:(C)工程で得られた金属酸化物粒子を有機溶媒に分散する工程、を含み得られる。
【0107】
さらに、上記金属酸化物粒子、及び金属酸化物ゾルは以下の製造方法によっても製造することができる。
下記(E)工程~(G)工程:
(E)工程:金属酸化物粒子が有機溶媒に分散した分散液に水を添加する工程、
(F)工程:(E)工程の後、上澄みの溶媒を除去して沈殿物を得る工程、
(G)工程:(F)工程の後、沈殿物を乾燥させて金属酸化物粒子粉末を得る工程、を含み得られる。上記(E)工程~(G)工程の製造方法は、大半の分散媒を上澄みとして除去できるため乾燥工程を大幅に短縮することができる。
【0108】
上記金属酸化物ゾルを60℃~100℃50Torrの乾燥条件で乾燥後に、有機溶媒に再分散した時の分散溶媒中での動的光散乱法による金属酸化物ゾル中の金属酸化物粒子の平均粒子径(nm)について、(再分散後の動的光散乱法平均粒子径)/(再分散前の
動的光散乱法平均粒子径)の比が0.6~3.0である金属酸化物ゾルである。60℃~100℃50Torrの乾燥条件は、金属酸化物ゾルに含まれる分散溶媒を除去できる条件であればよく、例えば60℃50Torr、80℃50Torrなどとすることができる。
上記金属酸化物ゾルを50℃4週間保管後の、分散溶媒中での動的光散乱法による金属酸化物ゾル中の金属酸化物粒子の平均粒子径(nm)について、(50℃保管後の動的光散乱法平均粒子径)/(50℃保管前の動的光散乱法平均粒子径)の比が0.8~2.0である金属酸化物ゾルである。
【0109】
本発明では金属酸化物粒子と有機成分を含む分散ワニス組成物が得られる。
これらに用いられる有機成分はアクリル化合物、アリル化合物、イソシアナート化合物、イソチオシアナート化合物、エポキシ化合物、ジアミン含有化合物、ジオール含有化合物、ジカルボン酸含有化合物、ジスルホニルクロリド含有化合物、ジチオール含有化合物、ジスルフィド含有化合物、ジビニル含有化合物、ジアリル含有化合物、スチレン、テトラカルボン酸無水物、ビスマレイミド、ビニル含有化合物、ラクトン環含有化合物、ラクチド含有化合物、含フッ素含有化合物、環状オレフィン含有化合物、エチレン、プロピレン、又はシランから選ばれる少なくとも1種のモノマー、又はそれら成分を含むポリマーを例示することができる。これらの有機成分は上述の成分を挙げることができる。
【0110】
本発明では上記金属酸化物粒子と、有機系樹脂材料又はポリシロキサン系樹脂とを含むコンポジット組成物が得られる。
【0111】
有機系樹脂材料が、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、チオエポキシ樹脂、ノボラック系樹脂、シアネート系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、マレイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリヒドロキシイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリベンゾチアゾール樹脂、ポリヒドロキシアミド樹脂、ポリヒドロキシアゾメチン樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ビニルトリアジン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、架橋性ポリフェニレンオキサイド系樹脂、硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂、及び縮合系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、発泡ポリスチレン、AS樹脂(スチレン-アクリロニトリル共重合体)、MS樹脂(スチレン-メチルメタクリレート共重合体)、ABS樹脂(スチレン-アクリロニトリル-ブタジエン樹脂)等が挙げられる。
【0112】
エポキシ系樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0113】
チオエポキシ樹脂としては、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4-ビス(β-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス(β-エピチオプロピルチオエチルチオメチル)-1,4-ジチアン及び2-(2-β-エピチオプロピルチオエチルチオ)-1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオ)プロパンを用いて得られる重合物であり、更にポリイソシアネート化合物やポリチオール化合物を共重合して得る事ができる。
【0114】
ノボラック系樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂が挙げられる。
【0115】
シアネート系樹脂としては、シアン酸とビスフェノールAから製造されるシアネートエステル樹脂が挙げられる。
【0116】
フェノール系樹脂としては、フェノールとホルムアルデヒドを原料にして酸触媒を用いて得られるノボラック樹脂と、アルカリ触媒を用いて得られるレゾール樹脂が挙げられる。
【0117】
アクリル系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとメタクリルル酸メチルとスチレン等を共重合したポリアクリル酸エステル、アクリル酸ナトリウムとアクリル酸メチルと酢酸ビニル等を共重合したポリアクリル酸ナトリウム、アクリロニトリルとアクリル酸メチルとメタクリル酸メチル等を共重合したポリアクリロニトリル、アクリロニトリルを加水分解して得られるポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0118】
マレイミド系樹脂としては、マレイミド変性エポキシ樹脂、エポキシ変性ビスマレイミド樹脂、チオール変性ビスマレイミド樹脂等が挙げられる。
【0119】
ポリエステル系樹脂としては、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリエチレンアジペート(PEA)等の重縮合や開環重合による脂肪族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等の重縮合による半芳香族ポリエステル、4-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸のポリエステル(LCP)ビスフェノールAとフタル酸のポリエステル(PAR)等の重縮合による芳香族ポリエステルが挙げられる。
【0120】
ウレタン系樹脂としては、主剤のポリオールと硬化剤のポリイソシアネートを組み合わせ、アクリルポリオールを主剤とするアクリルウレタン樹脂が挙げられる。
【0121】
ポリウレア樹脂としては、イソシアネートとポリアミンの反応による樹脂が挙げられる。
【0122】
ポリイミド系樹脂としては、無水カルボン酸とジアミンの反応により得られる樹脂を用い、縮重合型ポリイミドとしてはピロメリット酸系ポリイミド樹脂、ビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミド樹脂、ベンゾフェノンテトラカルボン酸系ポリイミド樹脂が挙げられ、付加型ポリイミドとしてはビスマレイミド系ポリイミド樹脂、ナジック酸末端系ポリイミド樹脂、アセチレン末端系ポリイミド樹脂が挙げられる。
【0123】
ポリアミド系樹脂としては、アミド結合による線状高分子を用い、オメガアミノ酸の開環重合で合成される場合と、ジアミンとジカルボン酸の縮合重合で合成される場合があり、脂肪族骨格を含む商品名ナイロン、芳香族骨格のみの商品名アラミド等が挙げられる。
【0124】
ポリアミック酸樹脂としては、ポリイミド樹脂合成の酸無水物とジアミンの中間重合物としてのポリアミック酸を用いることができる。
ポリヒドロキシイミド樹脂としては、ヒドロキシアミド基やヒドロキシイミド基を有する感光性ポリイミド樹脂が挙げられる。
ポリベンゾオキサゾール樹脂としては、ベンゾオキサゾール環を有する熱硬化型樹脂が挙げられる。
【0125】
ポリベンゾイミダゾール樹脂としては、ベンゾイミダゾールを繰り返し単位に含むポリべンゾアゾール類であり、ポリベンゾオキサゾールや、ポリベンゾチアゾールが挙げられる。
ポリヒドロキシアゾメチン樹脂としては、アゾメチンを連結部位とするポリヒドロキシアゾメチン樹脂が挙げられる。
ポリエーテル系樹脂としては、ジイソシアネートとグリコール類又はジアミン類を反応させて得られる樹脂であり、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルスルホン(PES)等のエンジニアプラスチックが挙げられる。
【0126】
ポリベンゾオキサジン樹脂としては、フェノールとビスフェノールAをホルムアルデヒドと芳香族アミンと反応させることで形成され、例えば熱開環重合で硬化することができる樹脂を挙げることができる。
ポリテトラフルオロエチレン系樹脂としては、テトラフルオロエチレンの重合体でありテフロン(登録商標)が挙げられる。
シクロオレフィンポリマー系樹脂としては、ノルボルネン類の付加共重合体、ノルボルネン類の水素化開環メタセシス重合体、アルキリデンノルボルネン類のトランスアニュラー重合体、ノルボルネン類の付加重合体、シクロペンタジエンの1,2-、1,4-不可重合体水添ポリマー、共役ジエン類の開環重合体等が挙げられる。
不飽和ポリエステル系樹脂としては、例えば無水マレイン酸とグリコールの縮合反応により得られるポリエステルを、スチレンやメチルメタクリレートに溶解し加熱硬化させて得られる樹脂が挙げられる。
【0127】
ビニルトリアジン系樹脂としては、2-ビニル-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンを重合して得られる樹脂を例示する事ができる。
ポリフェニレンサルファイド系樹脂としては、ベンゼン環と硫黄原子が交互に結合した直鎖状構造を有する樹脂を例示する事ができる。
架橋性ポリフェニレンオキサイド系樹脂としては、耐熱性ポリエーテル樹脂で2,6-ジメチルフェニレンオキサイドを重合したポリフェニレンエーテルとポリスチレンのポリマアロイを例示することができる。
縮合系樹脂としては、上記ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂に加えて、デンプン、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0128】
上記樹脂の中で例えばポリシロキサン樹脂を例示すれば、シラン化合物の加水分解と、それに続く脱水縮合によって得られる。この加水分解と縮合は、上述のシランカップリング剤の加水分解条件によって得ることができる。
【0129】
シラン化合物は4官能シラン(4つの加水分解基を有するシラン化合物)と、3官能シラン(3つの加水分解基と、1つの有機基を有するシラン化合物)、2官能シラン(2つの加水分解基と、2つの有機基を有するシラン化合物)、及び1官能シラン(1つの加水分解基と、3つの有機基を有するシラン化合物)の組み合わせによって製造することができる。例えば、4官能シランと3官能シランとの組み合わせによるポリシロキサン系樹脂を挙げることができる。
【0130】
4官能シランとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランが挙げられる。特にテトラエトキシシランを好ましく用いることができる。
【0131】
3官能シランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシ
シラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等のアルキル系シラン、
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルメチルトリメトキシシラン、フェニルメチルトリエトキシシラン等のアリール系シラン、
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル系シラン、
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系シラン、
p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル系シラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタククリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリル系シラン、
3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル系シラン、
N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等のアミン系シラン、
トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ジアリル(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート系シラン、
3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン等のウレイド系シラン、
3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シラン、
3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系シランが挙げられる。
【0132】
2官能シランとしては、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。
【0133】
ポリシロキサン系樹脂としては、例えばテトラエトキシシランとメチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランを共重合したポリシロキサン系樹脂、ジアリル(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートとテトラエトキシシランとメチルトリメトキシシランとN,N-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシランを共重合したポリシロキサン系樹脂を挙げることができる。これら線状~球状のポリシロキサン系樹脂の重量平均分子量は1000~100000、又は1000~5000の範囲に設定する事ができる。
【0134】
例えば、プロピレングリコールエチルエーテル等のグリコール系溶媒に上記ポリシロキサン系樹脂を溶解し、シリカ粒子を100phrの配合割合で混合することができる。そして50Torr80℃でプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶媒置換したワニスをコーティング組成物として製造することができる。これらコーティング組成物中のシリカの濃度は1~30質量%、又は5~30質量%、3~10質量%に設定することができる。そして、コーティング組成物中の動的光散乱法粒子径は10~200nm、又は10~100nm、又は30~90nmの範囲に設定することができる。例えば透明フィルムを基材とする場合に上記コーティング組成物を塗布して80~100℃、1~60分間の加熱乾燥により0.1~100μm、又は0.1~30μm、又は1~10μm、又は1~3μmの膜厚を有する積層基材が得られる。
【0135】
これらの透明フィルム状基材を誘電率、誘電正接を測定することができる。
本発明において上記ワニス組成物及びコンポジット組成物は、半導体デバイス材料、半導体素子用材料、半導体用レジスト用材料、ナノインプリント、絶縁膜用材料、銅張積層板用材料、プリント基板用材料、印刷板用材料、印刷インキ用材料、顔料、塗料、封止剤用材料、ハードコート用材料、3Dプリント材料、反射防止膜用材料、構造色形成部材、車載部品用材料、電子部品用材料、機械要素部品、接着剤用材料、電池用材料、発電用材料、帯電性付与材料、導電性付与用材料、粉体流動性付与用材料、化粧品用材料、フレキシブル配線材料、液晶ディスプレイ用材料、有機ELディスプレイ用材料、マイクロLEDディスプレイ用材料、QD-ELディスプレイ用材料、フレキシブルディスプレイ材料、アンテナ材料、光配線材料、又はセンシング材料に用いることができる。
【0136】
上記用途の中で熱硬化性や光硬化性を有する硬化性材料に上記粒子を用いる場合、特に感光性を有する材料に用いる場合を以下に説明する。
有機樹脂は熱硬化性又は光硬化性の樹脂を選択し混合する事により被膜形成組成物が得られる。そしてアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ラジカル発生剤系硬化剤(熱ラジカル発生剤、光ラジカル発生剤)、又は酸発生剤系硬化剤(熱酸発生剤、又は光酸発生剤)等の硬化剤を含み硬化物とすることができる。
有機樹脂と硬化剤を含む本発明の被膜形成組成物を基材に塗布又は充填して加熱、光照射、又はその組み合わせにより硬化物を形成する事ができる。有機樹脂(硬化性樹脂)はエポキシ基又は(メタ)アクリロイル基等の官能基を有する樹脂や、イソシアネート系樹脂が挙げられる。例えば光硬化性多官能アクリレートは好ましく用いることができる。
【0137】
多官能アクリレートとしては分子中に2官能、3官能、4官能、それ以上の官能基を有する多官能アクリレートが挙げられ、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら多官能アクリレートは以下に記載することもできる。
【0138】
【化5】
【0139】
【化6】
【0140】
【化7】
【0141】
【化8】
【0142】
本発明の被膜形成組成物は界面活性剤(レベリング剤)を含むことができる。
界面活性剤(レベリング剤)としてはアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びシリコン系界面活性剤を用いることができる。界面活性剤(レベリング剤)は、有機樹脂に対して0.01~5phr、又は0.01~1phrの範囲で添加することが可能である。
本発明に用いられるアニオン性界面活性剤としては、脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル、α-オレフィンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、及びアルカンスルホン酸塩が挙げられる。
例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩は、ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩が挙げられ、C10~C16アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、C10~C16アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどがある。
【0143】
高級アルコール硫酸エステル塩は、炭素原子数12のドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアンモニウムなどがある。
【0144】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンデシルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル硫酸ナトリウムなどがある。
α-オレフィンスルホン酸塩は、α-オレフィンスルホン酸ナトリウムなどがある。
【0145】
アルカンスルホン酸塩は、2-エチルヘキシル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0146】
本発明に用いられるカチオン性界面活性剤は、例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アミン塩系剤があげられる。
【0147】
アルキルトリメチルアンモニウム塩は第4級アンモニウム塩であり、塩化物イオンや臭化物イオンを対イオンとして有する。例えば、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ヤシアルキルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(C16-18)トリメチルアンモニウム等が挙げられる。
ジアルキルジメチルアンモニウム塩は、親油性となる主鎖を2つ、メチル基を2つ有するものである。ビス(水素化牛脂)ジメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。例えば、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジヤシアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0148】
アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩は、親油性となる主鎖を1つ、メチル基を2つ、ベンジル基を有する第4級アンモニウム塩であり塩化ベンザウコニウムが挙げられる。例えば、塩化アルキル(C8-18)ジメチルベンジルアンモニウムが挙げられる。
アミン塩系剤としては、アンモニアの水素原子を1つ以上の炭化水素基で置換したもので、例えばNメチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩が挙げられる。
【0149】
本発明に用いられる両性界面活性剤は、N-アルキル-β-アラニン型のアルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルカルボキシベタイン型のアルキルベタイン、N,N-ジメチルドデシルアミンオキシド型のアルキルアミンオキシドが挙げられる。これらの例示として、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。
【0150】
本発明に用いられる非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミドから選ばれる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンドデシルエーテル(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル等が挙げられる。
【0151】
ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルとしては、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルなどがある。
【0152】
アルキルグルコシドとしては、デシルグルコシド、ラウリルグルコシドなどがある。
【0153】
ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポ
リオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールジオレート、ポリプロピレングリコールジオレートなどがある。
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンモノセスキオレート、及びこれらのエチレンオキシド付加物などがある。
【0154】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレートなどがある。
【0155】
また脂肪酸アルカノールアミドとしては、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミドなどがある。
さらに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどのポリオキシアルキルエーテル又はポリオキシアルキルグリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテル、ソルビタン脂肪酸エステルアルキルエーテル、アルキルポリグルコシド、ソルビタンモノオレート、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0156】
シリコン系界面活性剤を用いることができる。シリコン系界面活性剤は主鎖にシロキサン結合を含む繰り返し単位を有する化合物である。シリコン系界面活性剤の重量平均分子量は500~50000の範囲で用いることができる。これらは変性シリコン系界面活性剤であってもよく、ポリシロキサンの側鎖及び/又は末端に有機基を導入した構造が挙げられる。有機基としてはアミノ基、エポキシ基、脂環式エポキシ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基、脂肪族エステル基、脂肪族アミド基、ポリエーテル基が挙げられる。シリコン系界面活性剤としては商品名、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、Silwet l-77、L-7280、L-7001、L-7002、L-7200、L-7210、L-7220、L-7230、L7500、L-7600、L-7602、L-7604、L-7605、L-7622、L-765 7、L-8500、L-8610 (以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP-341、KF-6001、KF-6002 (以上、信越シリコーン株式会社製)、BYK307、BYK323、BYK330 (以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。例えばポリエーテル変性シリコーンとして商品名L-7001(DOWSIL社製)を好適に用いることができる。
【0157】
本発明では上記有機溶媒ゾルと有機樹脂を含む被膜形成組成物が得られる。被膜形成組成物は有機溶媒ゾル中の有機溶媒を除去して、シリカ粒子と有機樹脂を含む被膜形成組成物とすることができる。
上記被膜形成組成物において熱硬化性被膜形成組成物の場合は、エポキシ基又は(メタ)アクリロイル基等の官能基含有樹脂に対して熱硬化剤を0.01~50phr、又は0.01~10phrの範囲で添加することが可能であり、例えばエポキシ基又は(メタ)アクリロイル基等の官能基に対して熱硬化剤を0.5~1.5当量、好ましくは0.8~
1.2当量の割合で含有することができる。硬化性樹脂に対する熱硬化剤の当量は、官能基に対する熱硬化剤の当量比で示される。
【0158】
熱硬化剤はフェノール樹脂、アミン系硬化剤、ポリアミド樹脂、イミダゾール類、ポリメルカプタン、酸無水物、熱ラジカル発生剤、熱酸発生剤等が挙げられる。特にラジカル発生剤系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤が好ましい。
これら熱硬化剤は固体であっても溶剤に溶解することによって使用することはできるが、溶剤の蒸発により硬化物の密度低下や細孔の生成により強度低下、耐水性の低下を生ずるために、硬化剤自体が常温、常圧下で液状のものが好ましい。
フェノール樹脂としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0159】
アミン系硬化剤としては、例えばピペリジン、N,N-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N-アミノエチルピペラジン、ジ(1-メチル-2-アミノシクロヘキシル)メタン、メンセンジアミン、イソフオロンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3-ジアミノメチルシクロヘキサン、キシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミン等が挙げられる。これらの中で液状であるジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N-アミノエチルピペラジン、ジ(1-メチル-2-アミノシクロヘキシル)メタン、メンセンジアミン、イソフオロンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミン等を好ましく用いることができる。
【0160】
ポリアミド樹脂としては、ダイマー酸とポリアミンの縮合により生成するもので、分子中に一級アミンと二級アミンを有するポリアミドアミンである。
【0161】
イミダゾール類としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、エポキシイミダゾールアダクト等が挙げられる。
【0162】
ポリメルカプタンは、例えばポリプロピレングリコール鎖の末端にメルカプタン基が存在するものや、ポリエチレングリコール鎖の末端にメルカプタン基が存在するものであり、液状のものが好ましい。
酸無水物系硬化剤としては一分子中に複数のカルボキシル基を有する化合物の無水物が好ましい。これらの酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、クロレンド酸無水物等が挙げられる。
熱酸発生剤としてはスルホニウム塩、ホスホニウム塩が挙げられるが、スルホニウム塩が好ましく用いられる。例えば以下の化合物を例示することができる。
【0163】
【化9】
【0164】
Rは炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数6~20アリール基が挙げられ、特に炭素数1~12のアルキル基が好ましい。
【0165】
これらの中でも常温、常圧で液状であるメチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(メチルナジック酸無水物、無水メチルハイミック酸)、水素化メチルナジック酸無水物、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物が好ましい。これら液状の酸無水物は粘度が25℃での測定で10mPa・s~1000mPa・s程度である。
熱ラジカル発生剤は例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。これらは東京化成工業(株)から入手することができる。
【0166】
また、上記硬化物を得る際、適宜、硬化助剤が併用されても良い。硬化助剤としてはトリフェニルホスフィンやトリブチルホスフィンなどの有機リン化合物、エチルトリフェニルホスフォニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムリン酸ジエチル等の第4級ホスフォニウム塩、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカン-7-エン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカン-7-エンとオクチル酸の塩、オクチル酸亜鉛、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの硬化助剤は、硬化剤1質量部に対して、0.001~0.1質量部の割合で含有することができる。
【0167】
組成物に、樹脂と硬化剤と所望により硬化助剤を混合し熱硬化性ワニスが得られる。これらの混合は反応容器中で撹拌羽根やニーダーを用いて行うことができる。
混合は加熱混合方法により行われ、60℃~100℃の温度で0.5~1時間行われる。
得られた熱硬化性被膜形成組成物は熱硬化性コーティング組成物であり、例えば液状封止材として用いるための適切な粘度を有する。液状の熱硬化性被膜形成組成物は、任意の粘度に調製が可能であり、キャスティング法、ポッティング法、ディスペンサー法、印刷法等によりLED等の透明封止材として用いるために、その任意箇所に部分的封止ができる。液状の熱硬化性組成物を上述の方法で液状のまま直接にLED等に実装した後、乾燥し、硬化することにより硬化体が得られる。
【0168】
熱硬化性被膜形成組成物(熱硬化性コーティング組成物)は基材に塗布し、80~200℃の温度で加熱することにより硬化物が得られる。
上記被膜形成組成物において光硬化性樹脂組成物の場合は、エポキシ基又は(メタ)ア
クリロイル基等の官能基含有樹脂に対して光硬化剤(光ラジカル発生剤、光酸発生剤)を0.01~50phr、又は0.01~10phrの範囲で添加することが可能であり、例えばエポキシ基又は(メタ)アクリロイル基等の官能基に対して光硬化剤(光ラジカル発生剤、光酸発生剤)を0.5~1.5当量、好ましくは0.8~1.2当量の割合で含有することができる。硬化性樹脂に対する光硬化剤の当量は、官能基に対する光硬化剤の当量比で示される。
光ラジカル発生剤は、光照射により直接又は間接的にラジカルを発生するものであれば特に限定されない。
【0169】
光ラジカル発生剤としては、光ラジカル重合開始剤が挙げられる。該光ラジカル重合開始剤として例えば、イミダゾール化合物、ジアゾ化合物、ビスイミダゾール化合物、N-アリールグリシン化合物、有機アジド化合物、チタノセン化合物、アルミナート化合物、有機過酸化物、N-アルコキシピリジニウム塩化合物、及びチオキサントン化合物等が挙げられる。アジド化合物としては、p-アジドベンズアルデヒド、p-アジドアセトフェノン、p-アジド安息香酸、p-アジドベンザルアセトフェノン、4,4’-ジアジドカルコン、4,4’-ジアジドジフェニルスルフィド、及び2,6-ビス(4’-アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン等を挙げることができる。ジアゾ化合物としては、1-ジアゾ-2,5-ジエトキシ-4-p-トリルメルカプトベンゼンボロフルオリド、1-ジアゾ-4-N,N-ジメチルアミノベンゼンクロリド、及び1-ジアゾ-4-N,N-ジエチルアミノベンゼンボロフルオリド等を挙げることができる。ビスイミダゾール化合物としては、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,5,4’,5’-テトラキス(3,4,5-トリメトキシフェニル)1,2’-ビスイミダゾール、及び2,2’-ビス(o-クロロフェニル)4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ビスイミダゾール等を挙げることができる。チタノセン化合物としては、ジシクロペンタジエニル-チタン-ジクロリド、ジシクロペンタジエニル-チタン-ビスフェニル、ジシクロペンタジエニル-チタン-ビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル-チタン-ビス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル-チタン-ビス(2,4,6-トリフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル-チタン-ビス(2,6-ジフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル-チタン-ビス(2,4-ジフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)-チタン-ビス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)-チタン-ビス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)-チタン-ビス(2,6-ジフルオロフェニル)、及びジシクロペンタジエニル-チタン-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)等を挙げることができる。
【0170】
光ラジカル発生剤としては、また、1,3-ジ(tert-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラキス(tert-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3-フェニル-5-イソオキサゾロン、2-メルカプトベンズイミダゾール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、及び2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン等を挙げることができる。
【0171】
これらの光ラジカル重合剤としては、例えばBASF社製、商品名Irgacure TPO(成分は2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)(c1-1-1)、IGM RESINS社製、商品名Omnirad819(成分は
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスピンオキサイド)(c1-1-2)、IGM RESINS社製、商品名Irgacure 184(成分は1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)(c1-1-3)として入手することができる。
【0172】
【化10】
【0173】
光酸発生剤は、光照射により直接又は間接的に酸を発生するものであれば特に限定されない。
光酸発生剤の具体例としては、トリアジン系化合物、アセトフェノン誘導体化合物、ジスルホン系化合物、ジアゾメタン系化合物、スルホン酸誘導体化合物、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩等のオニウム塩、メタロセン錯体、鉄アレーン錯体などを用いることができる。
上記光酸発生剤として用いるオニウム塩は、ヨードニウム塩として例えばジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムメシレート、ジフェニルヨードニウムトシレート、ジフェニルヨードニウムブロミド、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムメシレート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトシレート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムクロリド、ビス(p-クロロフェニル)ヨードニウムクロライド、ビス(p-クロロフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、更にビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなどのビス(アルキルフェニル)ヨードニウム塩、アルコキシカルボニルアルコキシ-トリアルキルアリールヨードニウム塩(例えば、4-[(1-エトキシカルボニル-エトキシ)フェニル]-(2,4,6-トリメチルフェニル)-ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなど)、ビス(アルコキシアリール)ヨ
ードニウム塩(例えば、(4-メトキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのビス(アルコキシフェニル)ヨードニウム塩)が挙げられる。
スルホニウム塩としてトリフェニルスルホニウムクロリド、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリ(p-メトキシフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、トリ(p-メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリ(p-エトキシフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のトリフェニルスルホニウム塩や、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4 - フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド-ビス-ヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド-ビス-ヘキサフルオロホスフェート、(4-メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート)等のスルホニウム塩が挙げられる。
【0174】
ホスホニウム塩としてトリフェニルホスホニウムクロリド、トリフェニルホスホニウムブロミド、トリ(p-メトキシフェニル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、トリ(p-メトキシフェニル)ホスホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリ(p-エトキシフェニル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、4-クロロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のホスホニウム塩が挙げられる。
さらに、トリフェニルセレニウムヘキサフルオロホスフェートなどのセレニウム塩、(η5又はη6-イソプロピルベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェートなどのメタロセン錯体が挙げられる。
【0175】
また、光酸発生剤としては以下の化合物も用いることができる。
【0176】
【化11】
【0177】
【化12】
【0178】
【化13】
【0179】
【化14】
【0180】
【化15】
【0181】
【化16】
【0182】
【化17】
【0183】
【化18】
【0184】
【化19】
【0185】
光酸発生剤としてはスルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物が好ましい。それらのアニオン種としてはCFSO 、CSO 、C17SO 、カンファースルホン酸アニオン、トシル酸アニオン、BF 、PF 、AsF 及びSbF などが挙げられる。特に強酸性を示す六フッ化リン及び六フッ化アンチモン等のアニオン種が好ましい。
本発明の被膜形成組成物は必要に応じて慣用の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、顔料、着色剤、増粘剤、増感剤、消泡剤、塗布性改良剤、潤滑剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、耐光安定剤など)、可塑剤、溶解促進剤、充填剤、帯電防止剤などが挙げられる。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0186】
本発明の被膜形成組成物の塗布方法としては、例えば、フローコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、キャスト法、バーコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディッピング法、スリット法などを挙げることができる。
本発明では光コーティング組成物(被膜形成組成物)を基材上に塗布し光照射により硬化することができる。また光照射の前後に加熱することもできる。
塗膜の厚みは、硬化物の用途によって応じて、0.01μm~10mm程度の範囲から選択でき、例えばフォトレジストに用いる場合は0.05~10μm(特に0.1~5μm)程度とすることができ、プリント配線基板に用いる場合は5μm~5mm(特に100μm~1mm)程度とすることができ、光学薄膜に用いる場合は0.1~100μm(特に0.3~50μm)程度とすることができる。
透明性被膜を得る場合に、被膜の可視光線透過率が80%以上、又は90%以上、典型的には90~96%とすることができる。
【0187】
光酸発生剤を用いる場合の照射又は露光する光は、例えばガンマー線、X線、紫外線、可視光線などであってもよく、通常、可視光又は紫外線、特に紫外線である場合が多い。光の波長は、例えば150~800nm、好ましくは150~600nm、さらに好ましくは150~400nm程度である。照射光量は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば2~20000mJ/cm2、好ましくは5~5000mJ/cm2程度とすることができる。光源としては、露光する光線の種類に応じて選択でき、例えば紫外線の場合は低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、重水素ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光(ヘリウム-カドミウムレーザー、エキシマレーザーなど)などを用いることができる。このような光照射により、前記組成物の硬化反応が進行する。
熱酸発生剤を用いる場合や、光酸発生剤を用い光照射後に必要により行われる塗膜の加熱は、例えば60~350℃、好ましくは100~300℃程度で行われる。加熱時間は、3秒以上(例えば、3秒~5時間程度)の範囲から選択でき、例えば、5秒~2時間、好ましくは20秒~30分程度で行うことができ、通常は1分~3時間(例えば、5分~2.5時間)程度で行うことができる。
【0188】
さらに、パターンや画像を形成する場合(例えば、プリント配線基板などを製造する場合)、基材上に形成した塗膜をパターン露光してもよく、このパターン露光は、レーザー光の走査により行ってもよく、フォトマスクを介して光照射することにより行ってもよい。このようなパターン露光により生成した非照射領域(未露光部)を現像剤で現像(又は溶解)することによりパターン又は画像を形成できる。
現像液としてはアルカリ水溶液や有機溶剤を用いることができる。
アルカリ水溶液としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化エチルトリメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液を挙げることができる。
【0189】
前記アルカリ現像液は10質量%以下の水溶液であることが一般的で、好ましくは0.1~3.0質量%の水溶液などが用いられる。さらに上記現像液にアルコール類や界面活性剤を添加して使用することもでき、これらはそれぞれ、現像液100質量部に対して、好ましくは0.05~10質量部である。
この中で、水酸化テトラメチルアンモニウム、又は水酸化エチルトリメチルアンモニウムの0.1~2.38質量%水溶液を用いることができる。
また、現像液としての有機溶剤は一般的な有機溶剤を用いることが可能であり、例えばアセトン、アセトニトリル、トルエン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール
、イソプロパノール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、乳酸エチル、シクロヘキサノン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物として用いることができる。特にプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等は好ましく使用することができる。
【0190】
本発明では現像後の基材との密着性を向上させる目的で、密着促進剤を添加することができる。これらの密着促進剤はトリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフエニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’-ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、ビニルトリクロロシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-(N-ピペリジニル)プロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環状化合物や、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア等の尿素、またはチオ尿素化合物を挙げることができる。前記密着促進剤のうち1種又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの密着促進剤の添加量は固形分中で、通常18質量%以下、好ましくは0.0008~9質量%、より好ましくは0.04~9質量%である。
【0191】
本発明では増感剤を含んでいても良い。使用できる増感剤としては、アントラセン、フェノチアゼン、ぺリレン、チオキサントン、ベンゾフェノンチオキサントン等が挙げられる。更に、増感色素としては、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム塩系色素等が例示される。特に好ましいのは、アントラセン系の増感剤であり、カチオン硬化触媒(感放射性カチオン重合開始剤)と併用することにより、感度が飛躍的に向上すると共に、ラジカル重合開始機能も有しており、本発明のカチオン硬化システムとラジカル硬化システムを併用するハイブリッドタイプでは、触媒種をシンプルにできる。具体的なアントラセンの化合物としては、ジブトキシアントラセン、ジプロポキシアントラキノン等が有効である。増感剤の添加量は固形分中で、0.01~20質量%、好ましくは0.01~10質量%の割合で使用される。
本発明の組成物を光ラジカル発生剤、熱ラジカル発生剤、光酸発生剤又は熱酸発生剤を用い光硬化又は熱硬化させることが可能である。光酸発生剤又は熱酸発生剤を用いる場合は、例えば通常用いられるエポキシの硬化剤(例えばアミンや酸無水物)を用いないか又はそれらを用いたとしても極端にそれらの含有量が少ないため、本組成物の保存安定性が良くなる。
【0192】
上記組成物は光カチオン重合性に適用することを見出した。従来品の液状エポキシ化合物(例えばエポキシシクロヘキシル環を有する脂環式エポキシ化合物)よりも高い硬化速度を有する。硬化速度が速いため酸発生剤添加量の低減や、弱酸系酸発生剤の使用も可能である。酸発生剤の低減はUV照射後も酸活性種が残存することがあり金属腐食防止の上
で重要である。硬化速度が速いため厚膜硬化が可能である。
UV照射による硬化は熱に弱い材料(機材)に適用できる。
【0193】
本件発明の被膜形成組成物を用いた熱硬化材料、光硬化材料は速硬性、透明性、硬化収縮が小さい等の特徴を持ち電子部品、光学部品(反射防止膜)、精密機構部品の被覆や接着に用いることができる。
本発明では有機溶媒又はアルカリ水溶液を含む現像液に再分散することが可能なシリカ粒子をコーティング組成物中に含むことができる。中空シリカ粒子表面に存在する表面電位に基づき現像液に可溶性を示すことができるが、表面に有機官能基を結合させて有機溶媒のみ選択現像性を示すこと、又はアルカリ水溶液のみ選択現像性を示すことが可能である。これらの有機官能基はシリカ粒子の上述シランカップリング剤の被覆、又はシリカゾルにアミンの添加、又は界面活性剤の添加によって達成される。
【実施例0194】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。
実施例、及び比較例で使用した溶媒、樹脂、金属酸化物粒子、シラン類、pH調整剤は以下の通りである。
(溶媒・樹脂)
MeOH:メタノール
IPA:イソプロピルアルコール
AC:アセトン
MEK:メチルエチルケトン
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PGEE:プロピレングリコールモノエチルエーテル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
DMAC:N-ジメチルアセトアミド
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
EL:エチルラクテート
HBM:メチル-2-ヒドロキシイソブチレート
GBL:γ-ブチロラクトン
MIBK:メチルイソブチルケトン
AcMO:4-アクリロイルモルホリン
THFAc:テトラヒドロフルフリルアクリレート
【0195】
(屈折率1.4~3.0の金属酸化物粒子)
・商品名MT-ST:平均一次粒子径12nmのMeOH分散シリカゾル(日産化学(株)製、中実シリカ粒子のメタノール分散ゾル、屈折率1.45)
・商品名PGM-ST:平均一次粒子径12nmのPGME分散シリカゾル(日産化学(株)製、中実シリカ粒子のPGME分散ゾル、屈折率1.45)
・商品名スノーテックスMSH:平均一次粒子径17nmの水分散シリカゾル(日産化学(株)製、中実シリカ粒子の水分散ゾル、屈折率1.45)
・商品名スノーテックスO-40:平均一次粒子径22nmの水分散シリカゾル(日産化学(株)製、中実シリカ粒子の水分散ゾル、屈折率1.45)
・商品名MA-ST-L:平均一次粒子径45nmのMeOH分散シリカゾル(日産化学(株)製、中実シリカ粒子のMeOH分散ゾル、屈折率1.45)
・商品名ST-ZL:平均一次粒子径80nmの水分散シリカゾル(日産化学(株)製、中実シリカ粒子の水分散ゾル、屈折率1.45)
・商品名PGM-ST-ZL:平均一次粒子径80nmのPGME分散シリカゾル(日産化学(株)製、中実シリカ粒子のPGME分散ゾル、屈折率1.45)
・商品名PL-3:平均一次粒子径35nmの水分散シリカゾル(扶桑化学工業(株)製、中実シリカ粒子の水分散ゾル、屈折率1.43)
【0196】
(屈折率1.1~1.4未満の金属酸化物粒子)
・商品名HKT-A20-40D:平均一次粒子径40nmの水分散シリカゾル(Ningbo Dilato社製、中空シリカ粒子の水分散ゾル、屈折率1.26)
・商品名HKT-A20-70D:平均一次粒子径71nmの水分散シリカゾル(Ningbo Dilato社製、中空シリカ粒子の水分散ゾル、屈折率1.19)
【0197】
(シラン類)
・MPDMS:メチルフェニルジメトキシシラン(信越化学工業(株)製)
・MPMDMS:3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業(株)製)
・TMSO:ヘキサメチルジシロキサン(信越化学工業(株)製)
・TMS:トリメチルメトキシシラン(東京化成工業(株)製)
・DTMS:デシルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)
・PTMS:フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)
・MTMS:メチルトリメトキシラン(信越化学工業(株)製)
・TEOS:テトラエトキシシラン(東京化成工業(株)製)
・DEDPS:ジエトキシジフェニルシシラン(東京化成工業(株)製)
・APMDMS:3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(東京化成工業(株)製)
【0198】
(塩基性化合物)
DiPA:ジイソプロピルアミン
DiPEA:ジイソプロピルエチルアミン
水酸化ナトリウムの1質量%水溶液
【0199】
(添加剤)
・MEHQ:4-メトキシフェノール
以下の方法に従い、上記水分散シリカゾル、実施例及び比較例で調製した表面修飾シリカ粒子の分散液、並びに該分散液製造工程中のシリカゾル及び分散液の物性を測定及び評価した。
【0200】
(金属酸化物粒子濃度の測定)
金属酸化物ゾルの金属酸化物粒子濃度(シリカゾルの場合はシリカ濃度ともいう)は、該ゾルを坩堝に取り、加熱により溶媒を除去した後、1000℃で焼成し、焼成残分を計量して算出した。
【0201】
(水分散金属酸化物ゾルのpH測定方法)
水分散金属酸化物ゾルのpHは、pHメーター(東亞ディーケーケー(株)製、製品名:MM-43X)を用いて測定した。
【0202】
(有機溶媒分散金属酸化物ゾルのpH測定方法)
有機溶媒分散金属酸化物ゾルのpHは、有機溶媒分散金属酸化物ゾルを含む対象サンプルとMeOHと純水とを質量比で1:1:1にて混合した液をpHメーター(東亞ディーケーケー(株)製、製品名:MM-43X)で測定した。
【0203】
(水分量)
金属酸化物ゾルに含まれる水分量は、カールフィッシャー水分計(京都電子工業(株)
製、商品名:MKA-610)を用いてカールフィッシャー滴定法にて測定した。
【0204】
(有機溶媒含有量)
金属酸化物ゾル中の有機溶媒含有量は、ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、製品名:GC-2014s)を用いて下記記載の条件で測定した。
カラム:3mm×1mガラスカラム
充填剤:商品名ポーラパックQ
カラム温度:130~230℃(昇温8℃/分)
キャリアー:N 40mL/分
検出器:FID
注入量:1μL
内部標準:アセトニトリルを採用した。
【0205】
(粘度の測定)
金属酸化物ゾルの粘度はオストワルド粘度計(柴田科学(株)製)を用いて測定した。測定温度は20℃で行った。
【0206】
(再分散ゾル粘度(EMS粘度)の測定)
金属酸化物粒子又は金属酸化物ゾルを乾燥して得られた乾燥粉末と溶媒とを混合して得られた再分散溶媒(再分散ゾル)の粘度測定は、EMS粘度計(京都電子(株)製、商品名EMS-1000S)を用いて測定した。測定温度は20℃で行った。
【0207】
(窒素吸着法の比表面積(SN2)の測定)
金属酸化物粒子の窒素吸着法の比表面積(SN2)は、水分散金属酸化物ゾル中の水溶性の陽イオンを陽イオン交換樹脂(ダウ・ケミカル社製、商品名:アンバーライトIR-120B)で除去した後、該金属酸化物ゾルを290℃にて乾燥して測定試料とし、これを窒素吸着法の比表面積測定装置 Monosorb(カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン合同会社製)を用いて測定した。
【0208】
(平均一次粒子径)
金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、上記の窒素吸着法で得られた比表面積SN2(m/g)から算出した。金属酸化物粒子がシリカ粒子の場合には平均一次粒子径は、上記の窒素吸着法で得られた比表面積SN2(m/g)から、下記式を用い、球状粒子に換算して算出した。平均一次粒子径は下記式で求めた。
【0209】
例えば、金属酸化物の密度が2.2g/cmであるシリカであるとき、平均一次粒子径は下記式を用いた。
平均一次粒子径(nm)=2720/SN2(m/g)
【0210】
(DLS法による平均粒子径(動的光散乱法平均粒子径))
DLS法による平均粒子径は、動的光散乱粒子径測定装置(Malvern Panalytical社製、製品名:Zetasizer Nano)を用いて測定した。測定サンプルに合わせて粒子屈折率、溶媒屈折率、溶媒粘度などを設定し、測定温度は採用した溶媒屈折率や溶媒粘度に合わせて実施した。光路長10mmのガラス製セルに対象の金属酸化物ゾルを0.1g分取し、さらに該金属酸化物ゾルの分散媒の主成分と同一の溶媒を添加して減衰器(Attenuator)が7を示したときのカウントレートが200~400kcpsとなるように金属酸化物粒子濃度が調製された金属酸化物ゾルを得た。例えば、MEK分散金属酸化物ゾルではMEKを添加して、減衰器(Attenuator)が7を示したときのカウントレートが200~400kcpsとなるように金属酸化物粒子濃度が調製された金属酸化物ゾルを得た。該調製された金属酸化物ゾルを前記セル
にセル底面から液面の高さが1cm程度になるよう調整し、減衰器が7を示したときの金属酸化物ゾルの動的光散乱による平均粒子径を測定した。動的光散乱による平均粒子径としては、Z平均粒子径を採用した。
【0211】
(金属酸化物粒子の屈折率の測定)
以下の1)~3)の手順で測定した。
1)金属酸化物粒子の水性ゾル配合ワニスの調製
3-グリシドキシプロピルトリメトシキシシラン(GPS、モメンティブ社製、商品名SILQUEST A-187T)20.00gをポリ容器に秤量し、ここにメタノール18.57g、0.01N塩酸水溶液4.57gを添加し、室温で5時間撹拌した。予め調製した2,4-ペンタンジオン酸アルミニウム(Al(acac))のメタノール溶液(10質量%Al(acac))6.00gを硬化剤として添加し、10分間撹拌することで、GPSの部分加水分解物(濃度:43質量%)を調製した。
全量で25.00g、最終的な溶媒組成が重量比で水/メタノール=9/1、金属酸化物粒子水性ゾルの金属酸化物の配合量が50phr、100phr、150phrとなるように、調製したGPSの部分加水分解物、水、メタノール、レベリング剤(DOWSIL商標 L-7604)のメタノール溶液(10質量%L-7604)0.25gを褐色瓶に秤量し、室温で30分間撹拌することで、金属酸化物粒子水性ゾル配合ワニス(固形分濃度は4質量%、金属酸化物の配合量:50phr、100phr、150phr)を調製した。
【0212】
2)金属酸化物粒子配合膜の調製
1)で得られた金属酸化物粒子水性ゾル配合ワニス(配合量(金属酸化物):50phr、100phr、150phr)をUV-O処理したSi基板上に約1mL滴下し、スピンコーター(ミカサ(株)、Opticoat MS-B100)を用いて、200rpmまで2秒で上昇、200rpm×10秒、800rpmまで2秒で上昇、800rpm×5秒、0rpmまで5秒で下降の条件でSi基板上に均一に展開した。その後、ホットプレート上にて80℃で5分間ベークし、オーブン内にて120℃で1時間の熱処理することで金属酸化物粒子配合膜(金属酸化物の配合量:50phr、100phr、150phr)を調製した。
【0213】
3)金属酸化物粒子配合膜の屈折率測定、金属酸化物粒子の屈折率算出
2)で得られた金属酸化物粒子配合膜(金属酸化物の配合量:50phr、100phr、150phr)の屈折率を、エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン(株)製 多入射角分光エリプソメーター VASE)で測定した。別途GPSの部分加水分解物のみで同様に調製した金属酸化物粒子を含まない膜の屈折率も測定した。測定した配合膜の屈折率を、金属酸化物粒子の配合量に対してプロットし、金属酸化物粒子の配合量が100質量%となるように外挿することで金属酸化物粒子の屈折率を求めた。
【0214】
(疎水化度測定)
金属酸化物ゾル5mLをロータリーエバポレーターにて減圧度50Torr、浴温度80~130℃(DMAC分散シリカゾルでは120℃)で溶媒を蒸発留去させることで金属酸化物粉末を得た。得られた粉末を乳鉢で粉砕し、再度ロータリーエバポレーターにて減圧度50Torr、浴温度130℃で乾燥することで疎水化度測定用試料とした。
100mLのビーカーに純水50mLを入れ、上記金属酸化物粉末0.2gを加え、マグネチックスターラーを使用して撹拌した。その後、メタノールを滴下し、液面上に浮いた金属酸化物粉末が完全に液中に沈むまでに要するメタノールの添加量XmLに基づき、以下の計算式から疎水化度を算出した。
疎水化度(容積%)={(X)/(50+X)}×100
【0215】
(金属酸化物粒子の表面構造解析)
金属酸化物粒子の表面構造解析は、500MHzの核磁気共鳴装置(機種名「AVANCE III 500」、Bruker社製)を用い、試料管径4.0mmのCP-MASプローブを装着し、下記条件で測定した。
測定:CP-MAS
回転数:8kHz
積算回数:8000回
緩和待ち時間:2 sec.
接触時間:5000 μsec.
リファレンス:DSS(1.534ppm)
LB:60Hz
上記測定後に、置換基及び結合基の異なる複数のシラン類の信号をカーブフィッティングにて下記M構造(1官能性/本実施例においてはモノアルコキシシラン由来の信号)、D構造(2官能性/本実施例においてはジアルコキシシラン由来の信号)、T構造(3官能性/本実施例においては、トリアルコキシシラン由来の信号)にピーク分離して、それぞれピーク面積を算出した。
【0216】
(組成物濃度の測定)
組成物の濃度(質量%)は、組成物をアルミカップに1.00g程度測り取り、200℃、2時間で焼成し、焼成残分を計量して算出した。
【0217】
(TEM(透過型電子顕微鏡)による平均一次粒子径の測定)
金属酸化物中の粒子を透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製 商品名JEM-F200)にて写真撮影し、自動画像処理解析装置((株)ニレコ製 商品名LUZEX AP)にて、任意に選択した粒子約300個を二値化し、投影面積を円形換算した直径を平均一次粒子径(Heywood径)として測定した。
【0218】
(D10、D50、D90の測定)
D10、D50、D90は、金属酸化物中の粒子を透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製 商品名JEM-F200)にて写真撮影し、自動画像処理解析装置((株)ニレコ製
商品名LUZEX AP)にて、任意に選択した粒子約300個を二値化し、投影面積を円形換算した直径から粒子径分布として金属酸化物ゾルのD10、D50、D90を測定した。D10、D50、D90としては、累積粒度分布を示す微粒子側から累積10%、50%、90%を示す粒子径として体積分布法で測定した。
【0219】
(TEM(透過型電子顕微鏡)による粒子体積の測定)
金属酸化物中の粒子を透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製 商品名JEM-F200)にて写真撮影し、自動画像処理解析装置((株)ニレコ製 商品名LUZEX AP)にて、任意に選択した粒子約2000個を二値化し、投影面積を円形換算した直径を平均一次粒子径(Heywood径)として測定し、その数値から粒子体積を算出した。(金属酸化物粒子Aの体積)/(金属酸化物粒子Bの体積)の比は、任意に選択した粒子約2000個の粒子径分布を測定し、D50~D90の範囲にある最も大きなピークを金属酸化物粒子A、D10~D50の範囲にある最も大きなピークを金属酸化物粒子Bとし、それぞれ平均一次粒子径と個数を測定し、(金属酸化物粒子Aの体積)は(金属酸化物粒子Aの平均一次粒子径から算出される粒子1個の体積)×(金属酸化物粒子Aの粒子個数)として、(金属酸化物粒子Bの体積)は(金属酸化物粒子Bの平均一次粒子径から算出される粒子1個の体積)×(金属酸化物粒子Bの粒子個数)として算出した。
【0220】
(シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(B)の測定/溶解法)
精秤したシリカゾルを乾燥し、得られた粒子250mgに硝酸(関東化学(株)製、商
品名:硝酸1.38、純度60.0%)2.5ml、38%フッ化水素酸(多摩化学工業(株)、商品名:ふっ化水素酸)2.5mlを加えて溶解し、水溶液を得た。得られた水溶液中のアルミニウム量を、ICP発光分析装置((株)リガク製、商品名:CIROS120 EOP)で測定し、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量をAlに換算してシリカのSiOの質量に対する割合で(Al(ppm)/SiO)を求めた。
【0221】
(シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量(A)の測定/リーチング法)
シリカゾル中のカチオン成分をH型陽イオン交換樹脂で除去し、加熱処理で溶媒を除去した乾燥物を乳鉢で粉砕し、さらに250℃2時間処理した。0.1モル/リットル(N/10)硝酸水溶液20mLが入ったポリプロピレン製容器(PPサンプラボトル50mL)に、得られた粉体0.2gを投入し、手で激しく振り混ぜた。次に、超音波洗浄器(アズワン製 商品名ASU CLEANER ASU-10M)で10分間超音波処理を行い、粉体と硝酸水溶液を十分に馴染ませた。それを50℃恒温槽に投入し、17時間保持した。その後、内溶液を室温まで冷却し、遠心式限外ろ過フィルター(商品名Amicon Ultra-15、分画分子量1万)に仕込み、遠心処理して得られたろ液中のアルミニウム量をICP発光分析装置で測定し、シリカ粒子表面に結合したアルミニウム量をAlに換算してシリカのSiOの質量に対する割合で(Al(ppm)/SiO)を求めた。
【0222】
(金属酸化物粒子の表面電荷量の測定)
金属酸化物濃度が0.5質量%となるようにMeOH10mLに金属酸化物ゾルを添加・希釈し、測定用サンプルとした。粒子電荷量計(フォイトターボ(株)製、商品名PCD-06)により、カチオン標準滴定液として0.001モル/リットル(N/1000)DADMAC溶液(フォイトターボ(株)製)を用いて、測定用サンプルの流動電位がゼロになるまでの滴定値を測定した。得られた滴定値を測定用サンプルに含まれる金属酸化物の質量で割ることで金属酸化物粒子1g当たりに換算した値を表面電荷量(μeq/g-SiO)とした。なお、DADMACはポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)を示す。
【0223】
(金属酸化物粒子の元素分析)
金属酸化物粒子の元素分析は、元素分析装置(パーキンエルマ-社製、機種名:元素分析装置2400II)を用い、炭素、水素、及び窒素の含有量(質量%)を測定した。測定サンプルは、150℃で加熱することで吸着水を除去した。
【0224】
(合成例1)
表面修飾中実シリカ粒子のMeOH分散液(1)の合成
MA-ST-L(日産化学(株)製、商品名)200gを500mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、30gのMEK、4.45gのMPMDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、6.61gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが8.3になるようにDiPAを添加し、60℃に加熱して1時間保持することで、目的のゾルを得た。得られたMeOHを分散媒とするメタノール分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径85nm、pH9.5、シリカ濃度35.9質量%、水分量1.5質量%であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0225】
(合成例2)
表面修飾中実シリカ粒子のMEK分散液(2)の合成
合成例1で得られた表面修飾シリカ粒子のMeOH分散液(1)60.0gを200mlのナス型フラスコに仕込み、ロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、550
~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMEKに置換することで、目的のゾルを得た。得られたMEKを分散媒とするMEK分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径80nm、pH7.6、シリカ濃度41.6質量%、水分量0.1質量%未満、MeOH含有量0.1質量%未満であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0226】
(合成例3)
表面修飾中実シリカ粒子のMEK分散液(3)の合成
MA-ST-L(日産化学(株)製、商品名)50gを200mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、7.5gのMEK、1.11g(粒子の単位表面積(nm相)当たり、MPDMS分子が3個相当)のMPDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、1.65gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが8.4になるようにDiPAを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。得られたゾルの入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、550~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMEKに置換することで、目的のゾルを得た。得られたMEKを分散媒とするMEK分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径79nm、pH7.3、シリカ濃度42.7質量%、水分量0.1質量%未満、MeOH含有量0.1質量%未満であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0227】
(合成例4)
表面修飾中実シリカ粒子のMEK分散液(4)の合成
合成例3のMPDMSの添加量を0.74g(粒子の単位表面積(nm相)当たり、MPDMS分子が2個相当)にしたこと以外は、合成例3と同様の方法で、目的のゾルを得た。
得られたMEKを分散媒とするMEK分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径80nm、pH7.7、シリカ濃度40.0質量%、水分量0.1質量%未満、MeOH含有量0.1質量%未満であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0228】
(合成例5)
表面修飾中実シリカ粒子のMEK分散液(5)の合成
合成例3のMPDMSの添加量を0.37g粒子の単位表面積(nm相当)当たり、MPDMS分子が1個相当)にしたこと以外は、合成例3と同様の方法で、目的のゾルを得た。
得られたMEKを分散媒とするMEK分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径79nm、pH7.6、シリカ濃度41.0質量%、水分量0.1質量%未満、MeOH含有量0.1質量%未満であった。沈降物もなく、良分散性を示した。
【0229】
(合成例6)
表面修飾中実シリカ粒子のMEK分散液(6)の合成
MA-ST-L(日産化学(株)製、商品名)100gを200mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、2.0gのTMSOを添加し、60℃に加熱して2時間保持した。その後、得られたゾルの入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温90℃、550~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMEKに置換することで、シリカ濃度40.5質量%のMEK分散液を得た。
更に、得られたMEK分散液50gを100mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、1.3gの純水、1.11gのMPDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが8.4になるようにDiPEAを添加し、60℃に加熱して1時間保持することで目的のゾルを得た。
得られたMEKを分散媒とするMEK分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径90nm、pH5.4、シリカ濃度は40.1質量%、水分量は0.1質量%、MeOH含有量は0.2質量%であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0230】
(合成例7)
表面修飾中実シリカ粒子のMEK分散液(7)の合成
MA-ST-L(日産化学(株)製、商品名)50gを200mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、7.5gのMEK、1.08gのMPDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、0.52gのDTMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、1.60gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが8.4になるようにDiPAを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。得られたゾルの入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、550~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMEKに置換することで、目的のゾルを得た。得られたMEKを分散媒とするMEK分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径79nm、pH7.8、シリカ濃度39.1質量%、水分量0.1質量%未満、MeOH含有量0.1質量%未満であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0231】
(合成例8)
中実シリカのMeOH分散液(8)の合成
スノーテックスO-40(日産化学(株)製、商品名)14000gをMeOH用いて限外ろ過法で水の置換を行い、水分量が0.5質量%に到達したところで置換を終了し、MeOH分散中実シリカゾルを得た。得られたゾルの物性は、シリカ濃度40.6質量%、水分量0.5質量%、粘度5.4mPa・s、DLS法による平均粒子径56nm、シリカ粒子全体に存在するNa量はNaOに換算してシリカのSiOの質量に対する割合で2210ppm/SiO、シリカゾル中に存在する硫酸イオン量はSOに換算してシリカのSiOの質量に対する割合で0.7ppm/SiOであった。また、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量はAlに換算してシリカのSiOの質量に対する割合で2500ppm/SiOであった。
【0232】
(合成例9)
表面修飾中実シリカ粒子のMEK分散液(9)の合成
合成例8で得られたMeOH分散液(8)200gを500mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、5.27gの純水、30.0gのMEK、9.01gのMPMDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、13.39gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが8.4になるようにDiPAを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。得られたゾルの入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、550~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMEKに置換することで、目的のゾルを得た。得られたMEKを分散媒とするMEK分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径39nm、pH7.7、シリカ濃度37.6質量%、水分量0.1質量%未満、MeOH含有量0.1質量%未満であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0233】
(合成例10)
表面修飾中実シリカ粒子のMEK分散液(10)の合成
合成例8で得られたMeOH分散液(8)350gを1000mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、9.5gの純水、52.5gのMEK、15.79gのMPDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、23.41gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが8.4
になるようにDiPAを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。得られたゾルの入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、550~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMEKに置換することで、目的のゾルを得た。得られたMEKを分散媒とするMEK分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径35nm、pH8.3、シリカ濃度41.0質量%、水分量0.2質量%、MeOH含有量0.1質量%未満であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0234】
(合成例11)
表面修飾中実シリカ粒子のMEK分散液(11)の合成
MT-ST(日産化学(株)製、商品名)300gを1000mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、45.0gのMEK、19.60gのMPDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、29.03gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが8.4になるようにDiPAを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。得られたゾルの入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、550~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMEKに置換することで、目的のゾルを得た。得られたMEKを分散媒とするMEK分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径15nm、pH9.3、シリカ濃度30.5質量%、水分量0.1質量%、MeOH含有量0.2質量%であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0235】
(合成例12)
表面修飾中実シリカ粒子のPGME分散液(12)の合成
PGM-ST(日産化学(株)製、商品名)300gを1000mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、6.2gの純水、19.60gのMPDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、38.8gのTMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが8.4になるようにDiPEAを添加し、60℃に加熱して1時間保持することで目的のゾルを得た。得られたPGMEを分散媒とするPGME分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径19nm、pH9.1、シリカ濃度28.2質量%であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0236】
(合成例13)
中実シリカ粒子のMeOH分散液(13)の合成
ST-ZL(日産化学(株)製、商品名)1000gを陽イオン交換樹脂(ダウ・ケミカル社製、商品名:アンバーライトIR-120B)が充填されたカラムに1時間当たりの空間速度10で通液し陽イオンを除去し、pH3.3の水分散シリカゾルを得た。得られた水分散シリカゾル800gを、撹拌機、コンデンサー、温度計及び注入口2個を備えた内容積2Lのガラス製反応器に仕込み、反応器内のゾルを沸騰させたままの状態で、別のボイラーで発生させたメタノールの蒸気を反応器内のシリカゾル中に連続的に吹き込んで、メタノールによる水の置換を行った。留出液の体積が9Lになったところで置換を終了して、メタノールを分散媒とするメタノール分散中実シリカゾルを870g得た。得られたメタノール分散シリカゾルはシリカ濃度35.7質量%、水分量1.6質量%、pH3.0であった。
【0237】
(合成例14)
表面修飾中実シリカ粒子のMeOH分散液(14)の合成
合成例13で得られたMeOH分散液(13)400gを1000mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、5.8gの純水、60gのMEK、8.49gのMPDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、6.3
6gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが8.3になるようにDiPAを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。得られたメタノールを分散媒とするメタノール分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径134nm、pH8.5、シリカ濃度27.6質量%、水分量2.5質量%であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0238】
(合成例15)
表面修飾中実シリカ粒子のMEK分散液(15)の合成
合成例14で得られたゾルの入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、550~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMEKに置換することで、目的のゾルを得た。得られたMEKを分散媒とするMEK分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径129nm、pH6.8、シリカ濃度28.2質量%、水分量0.1質量%、MeOH含有量0.1質量%未満であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0239】
(合成例16)
表面修飾中実シリカ粒子のMEK分散液(16)の合成
合成例13で得られたMeOH分散液(13)400gを1000mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、5.8gの純水、60gのMEK、8.49gのMPDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、6.36gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが8.3になるように水酸化ナトリウム水溶液を添加し、60℃に加熱して1時間保持した。得られたMEKを分散媒とするMEK分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径127nm、pH8.5、シリカ濃度28.4質量%、水分量3.5質量%であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0240】
(合成例17)
表面修飾中実シリカ粒子のPGME分散液(17)の合成
PGM-ST-ZL(日産化学(株)製、商品名)400gを1000mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、8.3gの純水、8.49gのMPDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、6.36gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが8.0~10.0になるようにDiPEAを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。得られたPGMEを分散媒とするPGME分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径130nm、pH6.6であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0241】
(合成例18)
中実シリカ粒子のMeOH分散液(18)の合成
内容積300mlのSUS製オートクレーブ反応器にスノーテックスMSH(日産化学(株)製、商品名)250gを仕込み、230±10℃、で2.5時間水熱処理を実施した。得られたゾル100gに5%に希釈した硫酸ナトリウム水溶液をSO換算として、20~50ppmになるように添加し、水素型強酸性陽イオン交換樹脂(商品名アンバーライトIR-120B)30gと混合し、30分間撹拌後に濾過することで酸性シリカゾル130gを得た(pH3、シリカ濃度23質量%、平均一次粒子径28nm、NaO:344ppm、SO濃度30ppm)。
上記で得られた酸性シリカゾル130gを1Lのナス型フラスコ付きエバポレーターに投入して、次いでMeOHを徐々に添加しながら550Torrで水を留去することにより、分散媒である水をMeOHに置換した。この分散液の水分量が2.0質量%以下になったところで置換を終了し、MeOHを添加し、30質量部になるように調整後、目的のMeOH分散シリカゾル(18)を92g得た。得られたメタノールを分散媒とするメタ
ノール分散中実シリカゾルは、平均一次粒子径28.0nm、シリカ濃度30.0質量%、水分量1.5質量%、粘度5.4mPa・s、DLS法による平均粒子径48nm、シリカ粒子全体に存在するNa量はNaOに換算してシリカのSiOの質量に対する割合で1700ppm/SiO、シリカゾル中に存在する硫酸イオン量はSOに換算してシリカのSiOの質量に対する割合で36ppm/SiOであった。また、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量はAlに換算してシリカのSiOの質量に対する割合で470ppm/SiOであった。
【0242】
(合成例19)
表面修飾中実シリカ粒子のMeOH分散液(19)の合成
合成例18で得られたMeOH分散シリカゾル(18)50gをコンデンサー付100mlナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、0.78gの純水、1.32gのMPDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、1.97gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが8.4になるようにDiPEAを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。得られたメタノールを分散媒とするメタノール分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径63nm、pH7.2であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0243】
(合成例20)
MeOH分散中空シリカゾル(20)の合成
HKT-A20-40D(Ningbo Dilato社製、商品名)1856gを3Lポリ容器に入れ、Al換算で1.0質量%濃度に希釈したアルミン酸ナトリウム32.2gを1分間で滴下し、さらに純水643.6gを添加し、ガラス式撹拌羽をつけたメカニカルスターラーで600rpmの回転速度で30分間撹拌した。次に、この混合物2442gをSUS製オートクレーブ容器に入れ、150℃5時間の加熱処理を行い、室温まで冷却した。得られた加熱処理済み水分散シリカゾル1700gに対して8.2%硫酸水溶液1.51gを滴下し、室温で800rpmの撹拌速度で1時間撹拌して硫酸添加加熱処理済み水分散シリカゾルを得た。次に、カラム充填した陽イオン交換樹脂(商品名H型アンバーライトIR-120B)に、空間速度(SV)5/時間で通液し、アルミニウム含有中空シリカ粒子の水分散ゾル(20-1)を得た。得られた水分散ゾル(20-1)の物性を測定した結果、SiOとして14.3質量%、pH2.5、DLS法による平均粒子径54nm、BET法による比表面積(C)149m/g、粒子表面に結合したアルミニウム量(A)1500ppm、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量(B)はAlに換算してシリカのSiOの質量に対する割合で1900ppm、(A/B比)は0.79、TEM観察による平均一次粒子径43nm、BET比表面積(D)123m/g、粒子屈折率1.26、外殻の厚み6.7nmであった。その後、得られた水分散ゾル(20-1)を80℃10時間で加熱処理を行い、室温まで冷却した後、カラム充填した陽イオン交換樹脂(商品名H型アンバーライトIR-120B)に、空間速度(SV)5/時間で通液し、アルミニウム含有中空シリカ粒子の水分散ゾル(20-2)を得た。その物性は、シリカ濃度14.0質量%、pH2.3、DLS法による平均粒子径54nm、BET法による比表面積(C)116m/g、粒子表面に結合したアルミニウム量(A)1500ppm、粒子全体に存在するアルミニウム量(B)2500ppm、(A/B比)は0.60、TEM観察による平均一次粒子径43nm、TEM換算比表面積(D)63m/g、比表面積比(C/D比)1.8、粒子屈折率1.27、外殻の厚み6.0nmであった。
その後、得られた水分散ゾル(20-2)の入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温120℃、580Torrの減圧下で、MeOHを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMeOHに置換することで、目的のゾルを得た。
得られたメタノールを分散媒とするメタノール分散中空シリカゾルは、DLS法による平均粒子径72nm、pH3.1、シリカ濃度は20.3質量%、水分量は1.2質量%
であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0244】
(合成例21)
表面修飾中空シリカ粒子のMEK分散液(21)の合成
合成例20で得られたMeOH分散中空シリカゾル(20)50gを100mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、0.4gの純水、7.5gのMEK、0.60gのMPDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、さらに0.87gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが8.0になるようにDiPAを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。
その後、得られたゾルの入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、550~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMEKに置換することで、目的のゾルを得た。
得られたMEKを分散媒とするMEK分散中空シリカゾルは、DLS法による平均粒子径66nm、pH7.1、シリカ濃度は19.1質量%、水分量は0.2質量%、MeOH含有量は0.1質量%未満であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0245】
(合成例22)
表面修飾中空シリカ粒子のMEK分散液(22)の合成
合成例20で得られたMeOH分散中空シリカゾル(20)50gを100mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、0.95gの純水、7.5gのMEK、0.54gのMPMDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、さらに0.79gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが8.0になるようにDiPAを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。
その後、得られたゾルの入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、550~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMEKに置換することで、目的のゾルを得た。
得られたMEKを分散媒とするMEK分散中空シリカゾルは、DLS法による平均粒子径66nm、pH7.1、シリカ濃度は12.8質量%、水分量は0.1質量%、MeOH含有量は0.2質量%であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0246】
(合成例23)
表面修飾中実シリカ粒子のMEK分散液(23)の合成
1,000gのMA-ST-Lを2リットルのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、150gのMEK及び21.6gのMPDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが8.4になるようにDiPAを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。
その後、得られたゾルの入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、550~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMEKに置換することで、目的のゾルを得た。
得られたMEKを分散媒とするMEK分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径86nm、pH7.6、シリカ濃度は38.9質量%、水分量は0.1質量%未満、MeOH含有量は0.1質量%未満であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0247】
(合成例24)
表面修飾中実シリカ粒子のMEK分散液(24)の合成
1,000gのMA-ST-Lを2リットルのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、150gのMEK及び32.0gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが8.4になるようにDiPAを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。
その後、得られたゾルの入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし
、浴温80℃、550~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMEKに置換することで、目的のゾルを得た。
得られたMEKを分散媒とするMEK分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径87nm、pH7.8、シリカ濃度は33.4質量%、水分量は0.1質量%未満、MeOH含有量は0.1質量%未満であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0248】
(合成例25)
表面修飾中実シリカ粒子のMEK分散液(25)の合成
合成例(8)で得られたMeOH分散シリカゾル(8)200gを500mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、5.2gの純水、9.79gのPTMSを添加し、60℃に加熱して2時間保持した。その後、pHが7.9になるようにDiEPAを添加し、60℃に加熱して2時間保持した。得られたゾルの入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、550~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMEKに置換することで、目的のMEKを分散媒とするMEK分散中実シリカゾルを得た。DLS法による平均粒子径32.7nm、pH7.4、シリカ濃度40.7質量%、水分量0.2質量%、MeOH含有量0.4質量%であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0249】
(合成例26)
表面修飾シリカ粒子のMeOH分散液(26)の合成
合成例18で得られたMeOH分散シリカゾル(18)50gをコンデンサー付100mlナスフラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、0.25gのMTMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持することで目的のシリカゾルを得た。得られたメタノールを分散媒とするメタノール分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径48nm、pH3.1であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0250】
(合成例27)
表面非修飾シリカ粒子のメタノールを分散媒とするMeOH分散シリカゾル(27)としてMA-ST-L(日産化学(株)製、商品名)を準備した。
【0251】
(合成例28)
MeOH分散シリカゾル(28)の合成
PL-3(扶桑化学工業(株)製、商品名)100gを500mLのナス型フラスコ付きエバポレーターに投入して、次いでMeOHを徐々に添加しながら580Torrで水を留去することにより、分散媒である水をMeOHに置換した。この分散液の水分量が2.0質量%以下になったところで置換を終了し、MeOHを添加後し、シリカ粒子濃度が30質量部になるように調整後、MeOH分散シリカゾル(a3)を100g得た。得られたメタノールを分散媒とするメタノール分散シリカゾルは、シリカ濃度30.0質量%、DLS法による平均粒子径69.1nm、シリカ粒子全体に存在するNa量はNaOに換算してシリカのSiOの質量に対する割合で2210ppm/SiO、シリカゾル中に存在する硫酸イオン量はSOに換算してシリカのSiOの質量に対する割合で0.7ppm/SiOであった。また、シリカ粒子全体に存在するアルミニウム量はAlに換算してシリカのSiOの質量に対する割合で0.026ppm/SiOであった。
【0252】
(合成例29)
ポリシロキサン(P1)の合成
14.58gのTEOS(全シラン化合物中に70mol%)、3.57gのMTMS(全シラン化合物中に20mol%)、1.98gのPTMS(全シラン化合物中に10mol%)、31gのアセトンを200mlのフラスコに入れ、混合溶液をマグネチック
スターラーにて撹拌しながら、ここに0.01mol/Lの塩酸6.67gを滴下した。添加後、85℃に調整されたオイルバスにフラスコを移し、加温還流下で240分反応させた。その後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液に40gのPGMEAを加え、反応副生物であるメタノール、エタノール、水、塩酸を減圧留去し、濃縮して下記単位構造を有する加水分解縮合物(ポリマー、式d-1)のPGMEA溶液を得た。ここにPGEEを加え、溶媒留去にて溶媒置換を行い、PGEEポリマー溶液を得た。得られた溶液は、200℃における固形残物換算で15質量%となるようにPGEEで調整した。また、得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算で1,500であった。
【化20】
【0253】
(合成例30)
ポリアミック酸(P2)の調製
4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DDE)、およびピロメリット酸二無水物(PMDA)、溶剤としてNMP及びDMACを用い撹拌下50℃の温度で重合し、式(e-1)に相当するポリアミック酸(固形分17質量%、E型粘度計で25℃の粘度が13640mPa・s)を得た。ポリアミック酸の重合は上記DDEとPMDAは1:1の等モルで重合させた。得られたポリアミック酸の重量平均分子量は63000であった。式(e-1)中のnは繰り返し単位の数である。
【化21】
【0254】
(合成例31)
ポリイミド(P3)の合成
窒素の注入口/排出口、メカニカルスターラー及び冷却器を取り付けた250mLの反応三口フラスコ内に、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン 25.6g(0.08mol)を入れた。その後、GBL 173gを添加し、撹拌を開始した。ジアミンが溶媒中に完全に溶解した後、すぐに、撹拌したビシクロ[2,2,2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物 10.0g(4mmol)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物 7.84g(4mmol)及びGBL 43.4gを添加し、窒素下140℃に加熱した。その後、1-エチルピペリジン0.35gを溶液内に添加し、窒素下で7時間180℃に加熱した。最終的に加熱を停止し、反応溶液を10質量%まで希釈し、終夜撹拌を維持した。得られたポリイミド反応溶液をGBL:MeOH=50質量%:50質量%混合溶液2000g中に添加して30分間撹拌し、その後ポリイミド固体をろ過することによりポリイミドを精製した。そして該ポリイミド固体をMeOH2000g中で30分間撹拌し、ポリイミド固体をろ過した。このポリイミド固体の撹拌及びろ過の精製手順を3回繰り返した。ポリイミド中のMeOH残留物を150℃下の真空オーブンの8時間の乾燥により除去し、最終的に、乾燥した21.5gのポリイミド(P3)を得た。得られたポリイミドは式(f-1)と式(f-2)の単位構造を含むものであった。P3の収率は51%(Mw=310,000、数平均分子量(Mn)=144,300)であった。
【化22】
【0255】
(合成例32)
表面修飾中実シリカ粒子のMeOH分散液(32)の合成
MT-ST(日産化学(株)製、商品名)300gを1000mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、45.0gのMEK、19.60gのMPDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、29.03gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが8.6になるようにDiPEAを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。
得られたMeOHを分散媒とするMeOH分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径22nm、pH8.2、シリカ濃度25.0質量%、水分量2.2質量%であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0256】
(合成例33)
表面修飾中実シリカ粒子のMEK分散液(33)の合成
MT-ST(日産化学(株)製、商品名)300gを1000mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、45.0gのMEK、19.60gのMPDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、29.03gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが8.2になるようにDiPEAを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。得られたゾルの入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、550~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMEKに置換することで、目的のゾルを得た。得られたMEKを分散媒とするMEK分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径19nm、pH7.6、シリカ濃度30.8質量%、水分量0.2質量%、MeOH含有量0.1質量%であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0257】
(合成例34)
表面修飾中実シリカ粒子のMEK分散液(34)の合成
MT-ST(日産化学(株)製、商品名)300gを1000mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、45.0gのMEK、23.63gのMPMDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、29.03gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが7.9になるようにDiPEAを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。得られたゾルの入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、550~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMEKに置換することで、目的のゾルを得た。得られたMEKを分散媒とするMEK分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径20nm、pH7.3、シリカ濃度31.0質量%、水分量0.2質量%、MeOH含有量0.1質量%であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0258】
(合成例35)
表面修飾中実シリカ粒子のMEK分散液(35)の合成
合成例8で得られたMeOH分散液(8)200gを500mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、5.27gの純水、30.0gのMEK、8.99gのMPDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、13.39gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが7.7になるようにDiPEAを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。得られたゾルの入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、550~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMEKに置換することで、目的のゾルを得た。得られたMEKを分散媒とするMEK分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径33nm、pH7.1、シリカ濃度39.9質量%、水分量0.2質量%、MeOH含有量0.1質量%であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0259】
(合成例36)
表面修飾中実シリカ粒子のMEK分散液(36)の合成
合成例8で得られたMeOH分散液(8)200gを500mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、5.27gの純水、30.0gのMEK、12.01gのMPMDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、13.39gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが7.7になるようにDiPEAを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。得られたゾルの入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、550~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMEKに置換することで、目的のゾルを得た。得られたMEKを分散媒とするMEK分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径33nm、pH7.1、シリカ濃度39.9質量%、水分量0.2質量%、MeOH含有量0.1質量%であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0260】
(合成例37)
表面修飾中実シリカ粒子のMEK分散液(37)の合成
合成例8で得られたMeOH分散液(8)300gを500mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、7.5gの純水、45.0gのMEK、19.87gのDEDPSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、19.77gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが7.8になるようにDiPEAを添加し、60℃に加熱して1時間保持した。得られたゾルの入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、550~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMEKに置換することで、目的のゾルを得た。得られたMEKを分散媒とするMEK分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径29nm、pH7.2、シリカ濃度40.7質量%、水分量0.1質量%、MeOH含有量0.1質量%未満であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0261】
(合成例38)
MEK分散中空シリカゾル(38)の合成
合成例20におけるHKT-A20-40Dの代わりにHKT-A20-70Dを用いたこと以外は、合成例20と同様の工程でアルミニウム原子含有中空シリカ粒子(TEM観察による平均一次粒子径71nm、BET比表面積(D)102m/g)のMeOH分散シリカゾルを得た。
得られたアルミニウム原子含有中空シリカ粒子のMeOH分散シリカゾル50gを100mLのポリ容器に仕込み、陽イオン交換樹脂50ml(ダウ・ケミカル社製、商品名:
アンバーライトIR-120B)を加え、ミックスローター(アズワン株式会社製、商品名:MIX-ROTAR MR-5)にて100回毎分で撹拌しながら60分間保持し、中空シリカ粒子のMeOH分散シリカゾルを得た。
次いで、得られた中空シリカ粒子のMeOH分散シリカゾル25gを50mLのナスフラスコに仕込み、マグネチックターラーで撹拌しながら、MEK3.8g、MeOHで希釈したMEHQの10質量%MeOH溶液を0.16g、MPDMS0.20gを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、TMSO0.29gを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。その後、pHが8.0~10.0になるようにDiPAを添加し、60℃に加熱して1時間保持することで、表面修飾中空シリカ粒子のMeOH分散シリカゾルを得た。
得られたシリカゾルの入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、550~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMeOHからMEKに置換することで、中空シリカ粒子のMEK分散シリカゾルを得た。
得られたMEK分散シリカゾルは、TEMによる平均一次粒子径71nm、TEMによる比表面積(D)38m/g、DLS法による平均粒子径105nm、pH6.2、固形分(シリカ粒子)濃度30.1質量%、水分量0.3質量%、MeOH0.1質量%未満であった。なお、得られた中空シリカゾルは沈降物もなく、良分散性を示した。
【0262】
(合成例39)
MEK分散中空シリカゾル(39)の合成
合成例20で得られたMeOH分散中空シリカゾル(20)100gを250mLのポリ容器に仕込み、陽イオン交換樹脂10ml(ダウ・ケミカル社製、商品名:アンバーライトIR-120B)を加え、ミックスローター(アズワン株式会社製、商品名:MIX-ROTAR MR-5)にて100回毎分で撹拌しながら60分間保持し、中空シリカ粒子のMeOH分散シリカゾルを得た。
次いで、得られた中空シリカ粒子のMeOH分散シリカゾル55gを300mLのナスフラスコに仕込み、マグネチックターラーで撹拌しながら、MEHQ0.01g、APMDMS0.50gを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、TMSO1.29gを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、その後、pHが8.0になるようにDiPAを添加し、60℃に加熱して1時間保持することで、表面修飾中空シリカ粒子のMeOH分散シリカゾルを得た。
得られたシリカゾルの入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、550~350Torrの減圧下で、MEKを供給しながら蒸留を行い、分散媒をMeOHからMEKに置換することで、中空シリカ粒子のMEK分散シリカゾルを得た。
得られたMEK分散シリカゾルは、TEMによる平均一次粒子径40nm、DLS法による平均粒子径62nm、pH7.4、粘度1.4mPa・s、固形分(シリカ粒子)濃度21.6質量%、水分量0.4質量%、MeOH0.1質量%未満であった。なお、得られた中空シリカゾルは沈降物もなく、良分散性を示した。
【0263】
(合成例40)
表面修飾中実シリカ粒子のMeOH分散液(40)の合成
MT-ST(日産化学(株)製、商品名)300gを1000mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、45.0gのMEK、19.60gのMPDMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。次いで、29.03gのTMSOを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。
得られたMeOHを分散媒とするMeOH分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径21nm、シリカ濃度25.1質量%、水分量2.1質量%であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0264】
(合成例41)
表面修飾中実シリカ粒子のMeOH分散液(41)の合成
合成例20で得られたMeOH分散中空シリカゾル(20)50gを100mlのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、7.5gのMEK、0.83gのMTMSを添加し、60℃に加熱して3時間保持した。
得られたメタノールを分散媒とするMeOH分散中空シリカゾルは、DLS法による平均粒子径73nm、pH3.3、シリカ濃度は17.2質量%、水分量は1.0質量%であった。なお、沈降物もなく、良分散性を示した。
【0265】
(合成例42)
MEK分散中空シリカゾル(42)の合成
合成例38におけるMPDMSの代わりに、MPMDMSを添加したこと以外は、合成例38と同様の方法でMEK分散中空シリカゾルを合成した。
得られたMEK分散シリカゾルは、TEMによる平均一次粒子径71nm、DLS法による平均粒子径109nm、pH6.5、固形分(シリカ粒子)濃度30.3質量%、水分量0.4質量%、MeOH0.1質量%未満であった。なお、得られた中空シリカゾルは沈降物もなく、良分散性を示した。
【0266】
(乾燥粉末の再分散による高濃度ゾル作製評価)
実施例1-1:合成例1で得られたゾル50gの入った100mlナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温60~80℃、20~50Torrの減圧下で、分散溶媒を除去することで、ゾルの乾燥物を得た。さらに、得られた乾燥物を乳鉢と乳棒で砕き、シリカ粒子の粉末を得た。その後、得られたシリカ粒子の粉末1.20gを13mlのガラス製バイアル瓶に仕込み、屈折率1.4~3.0の金属酸化物濃度が60質量%以上、又は屈折率が1.1~1.4未満の金属酸化物濃度が30質量%以上になるよう表1~6に記載する有機溶媒を加えた。次いで、ミックスローター(アズワン株式会社製、商品名:MIX-ROTAR MR-5)を用いて12時間撹拌した。得られた混合物の外観が透明性を有していれば、再分散可能、外観が不透明(凝集による白濁)、流動性なし、または粉末が残存していれば再分散不可とした。さらに、再分散可能であったシリカ粒子の粉末の再分散後のDLSを取得した。表に再分散可能のとき「OK」、再分散不可能のとき「NG」、未実施は「-」として結果を記載した。更に、再分散後のDLS測定結果から、再分散前後DLS比:(高濃度ゾル中のDLS法による平均粒子径)/(有機溶媒除去する前のシリカ粒子のDLS法による平均粒子径)を記載した。
実施例1-2~1-22、実施例1-25~1-30、実施例1-33~1-35:実施例1-1と同様の方法で合成例2~19、合成例32~37で得られたゾルの乾燥粉末を作製し、表1~6に記載する有機溶媒と混合し、再分散性を確認した。得られた再分散性の結果、及び再分散後のDLS測定結果を表1~6に記載した。
実施例1-23~1-24、実施例1-31、1-32、1-36:実施例1-1において固形分が30質量%以上になるよう表1に記載する有機溶媒を加えたこと以外は、実施例1と同様の方法で合成例21~合成例22、合成例38~39、42で得られたゾルの乾燥粉末を作製し、表1~6に記載する有機溶媒と混合し、再分散性を確認した。得られた再分散性の結果、及び再分散後のDLS測定結果を表1~6に記載した。
比較例1-1~1-7:実施例1-1と同様の方法で合成例23~27、合成例40、合成例41で得られたゾルの乾燥粉末を作製し、表1~6に記載する有機溶媒と混合し、再分散性を確認した。得られた再分散性の結果、及び再分散後のDLS測定結果を表1~6に記載した。
再分散可否確認後のゾル外観を示した代表例を図4に記載した。図4中、左は再分散可能であった実施例1-3、右は再分散不可であった比較例1-2を示す。
【0267】
【表1】
【0268】
【表2】
【0269】
【表3】
【0270】
【表4】
【0271】
【表5】
【0272】
【表6】
【0273】
以上の結果より、2つの化学基(a1)と2つの加水分解性基(a2)を有するシラン化合物(A)の加水分解物と、3つの化学基(b1)と1つの加水分解性基(b2)を有するシラン化合物(B)の加水分解物が表面被覆され、塩基性化合物(I)を含有する、実施例1-1から実施例1-36は、高い有機溶媒への再分散性、及び高濃度化特性を示した。一方、上記シラン化合物(A)、(B)のうち、どちら一方の加水分解物のみが表面被覆され、塩基性化合物(I)を含有するか又はしない比較例1-1~比較例1-4、比較例1-7は、有機溶媒への再分散性を示さず、及び高濃度化特性を示さなかった。又は、シラン化合物(A)の加水分解物とシラン化合物(B)の加水分解物とが表面被覆され、塩基性化合物(I)を含有しない比較例1-6は、有機溶媒への再分散性を示さず、及び高濃度化特性を示さなかった。
【0274】
(溶媒置換または濃縮による高濃度ゾル作製評価)
実施例2-1:合成例3で得られたゾル20gの入った50mlナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、400Torrの減圧下で、MEKを留去することで、金属酸化物濃度60質量%の高濃度ゾルを得た。なお、得られた高濃度ゾルは沈降物もなく、良分散性を示した。得られた結果を表7~8に記載した。濃縮後のDLS測定結果から、濃縮前後のDLS比:(高濃度ゾル中のDLS法による平均粒子径)/(有機溶媒除去する前のシリカ粒子のDLS法による平均粒子径)を記載した。
実施例2-2:合成例21で得られたゾル20gの入った50mlナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、400Torrの減圧下で、PGMEAを供給しながらMEKを留去した。分散媒をPGMEAに置換しながら、濃縮することで、シリカ濃度40質量%以上のゾルを得た。なお、得られたゾルは沈降物もなく、良分散性を示した。得られた結果を表7~8に記載した。濃縮後のDLS測定結果から、濃縮前後のDLS比:(高濃度ゾル中のDLS法による平均粒子径)/(有機溶媒除去する前のシリカ粒子のDLS法による平均粒子径)を記載した。
表8にて判定OKは再分散が可のとき、NGは再分散が不可のときを示した。
【0275】
【表7】
【0276】
【表8】
【0277】
(保存安定試験)
実施例3-1:実施例1-3で得られたゾル2gを13mlのガラス製バイアル瓶に封入し、50℃で4週間保管し、50℃における保存安定性を確認した。50℃で4週間後のDLS法による平均粒子径は、86nmであり、高い保存安定性を有することを確認した。得られた結果を表9~10に示した。
実施例3-2:実施例1-3で得られたゾルの代わりに、実施例1-23で得られたゾルを用いたこと以外は、実施例3-1に記載と同様の方法で保存安定性を確認した。50℃で4週間後のDLS法による平均粒子径は、78nmであり、高い保存安定性を有することが確認された。得られた結果を表9~10に示した。
実施例3-3:実施例1-3で得られたゾルの代わりに、実施例2-2で得られたゾルを用いたこと以外は、実施例3-1に記載と同様の方法で保存安定性を確認した。50℃で4週間後のDLS法による平均粒子径は、71nmであり、高い保存安定性を有するこ
とが確認された。得られた結果を表9~10に示した。
【0278】
【表9】
【0279】
【表10】
【0280】
(金属酸化物粒子の粒子表面状態と再分散性、及び高濃度化特性)
実施例4-1:合成例2で得られたゾル8mlを42mlの梨型沈殿管(Thermo
Fisher Scientifics社製、商品名:Nalgeneオークリッジ)に仕込み、MEK8ml、ヘキサン20mlを加え、凝集による白濁、分離あるいはまた沈殿を生じさせた。その後、遠心分離機(株式会社トミー精工製、商品名:高速冷却遠心機Suprema21)を用いて遠心分離(温度:5℃、回転数:5000rpm、時間:30分間)にかけた後、上澄み液を除去した。その後、アセトン4mlを添加して、遠心分離による沈殿物を試験管ミキサー(アズワン株式会社、商品名:MVM-10)で再溶解させた後、ヘキサン20mLを添加した。その後、遠心分離機にかけた後、上澄み液を除去した。その後、アセトン4mlを添加して、遠心分離による沈殿物を試験管ミキサーで再溶解させた後、ヘキサン20mLを添加した。その後、遠心分離機にかけた後、上澄み液を除去した。得られた混合物を真空乾燥後(温度:60℃、ブルドン管式真空計目盛りのゲージ圧力で-0.1MPa:絶対圧力(大気圧力+ゲージ圧力)換算では0.1013MPa-0.1MPa=1.3kPa)、得られた粉末を乳鉢で粉砕し、シリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子の元素分析測定結果、及び29Si-NMR測定結果を表11~12に示す。
29Si-NMR構造解析において(A)は90~100モル%の積分値比率を示し、(B)は60~90モル%未満の積分値比率を示し、(C)は30~60モル%未満の積分値比率を示し、(D)は0.1~30モル%未満の積分値比率を示し、(E)は積分値比率がない(検出信号なし)事を示した。
更に、得られたシリカ粒子の再分散性と高濃度化特性を評価した。再分散性と高濃度化の評価は、得られたシリカ粒子の粉末1.20gを13mlのガラス製バイアル瓶に仕込み、金属酸化物濃度が60質量%以上になるようPGMEAを加えた。次いで、ミックスローター(アズワン株式会社製、商品名:MIX-ROTAR MR-5)を用いて12
時間撹拌した。得られた混合物の外観が透明であれば、再分散可能、外観が不透明または粉末が残存していれば再分散不可とした。表に再分散可能のとき「OK」、再分散不可能のとき「NG」として結果を記載した。
実施例4-2~4-6:実施例4-1と同様の方法で、合成例3、合成例4、合成例6、合成例9、合成例11のシリカ粒子の粉末を作製した。更に、実施例4-1と同様の方法で、得られたシリカ粒子の表面状態と、再分散性と高濃度化特性を確認した。得られた結果を表11~12に示した。
比較例4-1~4-3:実施例4-1と同様の方法で、合成例23、合成例24、合成例27のシリカ粒子の粉末を作製した。更に、実施例4-1において固形分が60質量%以上になるようにPGMEAを加える操作の代わりに、金属酸化物濃度が41質量%以上になるようにPGMEAを加えたこと以外は、実施例4-1と同様の方法で、得られたシリカ粒子の表面状態と、再分散性と高濃度化特性を確認した。得られた結果を表11~12に示した。
【0281】
【表11】
【0282】
【表12】
【0283】
以上の結果より、金属酸化物粒子表面のシラン化合物の29Si-NMRの測定において、M構造、D構造、及びT構造のそれぞれの構造の含有割合は、M構造とD構造とT構造の合計を100モル%とした場合、M構造が30モル%以上60モル%未満であり、D構造が30モル%以上90モル%未満であり、T構造が0モル%以上30モル%未満である、実施例4-1から実施例4-7は、高い有機溶媒への再分散性、及び高濃度化特性を示した。一方、金属酸化物粒子表面のシラン化合物の29Si-NMRの測定において、M構造、D構造、及びT構造のそれぞれの構造の含有割合が、M構造とD構造とT構造の合計を100モル%とした場合、D構造が90モル%以上でありM構造が存在しない比較例4-1、M構造が90モル%以上でありD構造が存在しない比較例4-2、M構造とD構造とT構造から選ばれるいずれの構造も含まない比較例4-3は、有機溶媒への再分散性を示さず、及び高濃度化特性を示さなかった。
【0284】
(ポリシロキサン組成物評価)
実施例5-1:合成例29のポリマーと合成例21で得られたシリカゾルを固形分50:50で混合した溶液が入ったナスフラスコをエバポレーターにて設置し、浴温80℃、250TorrにてMeOHを留去し、表13~14記載の目的の組成物を作製した。濃度を測定後、スピンコーター(ミカサ株式会社製、製品名:MS-A100)にセットした5×5cm無アルカリガラス基板(コーニング社製、製品名:イーグルXG)上に、成膜条件800rpm×5秒で塗布した。その後、ホットプレート上で100℃2分焼成後、更に180℃30分で焼成し、塗布膜を得た。得られた塗布膜は透明であり、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、製品名:NHD-5000)で全光透過率(T.T.)を測定した結果、93.3%であった。また、膜厚は商品名F20-EXR(FILMETRICS株式会社製)で測定し、1.603μmであった。条件と得られた結果を表13~14に示した。得られた膜の写真を図1に示した。
比較例5-1:使用するゾルをMeOH分散シリカゾル(28)に変更以外は、実施例5-1と同様に行った。焼成後得られた膜はクラックが入り、目的とする塗布膜は得られなかった。条件と得られた結果を表13~14に示した。比較例5-1で得られた膜の写真を図2に示した。
製膜性は以下の基準(A)、(B)及び(C)に従い評価した。結果を表13に示す。
(A):1.5μm以上の成膜が可能、(B):1μm超~1.5μm未満での成膜が可能、(C):1μm以下の成膜が不可能であった。
【0285】
【表13】
【0286】
【表14】
【0287】
以上の結果より、2つの有機官能化学基(a1)と2つの加水分解性基(a2)を有するシラン化合物(A)としてMPDMSの加水分解物と、3つの有機官能化学基(b1)と1つの加水分解性基(b2)を有するシラン化合物(B)としてTMSOの加水分解物が表面被覆され、塩基性化合物(I)としてDiPAを含有したシリカ粒子は、樹脂と高い相溶性を示し、塗布膜が得られた。一方、リーチング法による測定で、金属酸化物粒子の表面にAl換算で金属酸化物の質量に対してアルミニウム原子が100~20000ppm/金属酸化物の割合(A)に含まれない金属酸化物粒子を用いた場合、目的とする塗布膜を得ることができなかった。
【0288】
(マレイミド樹脂組成物評価)
実施例6-1:合成例1-3で得られた表面修飾シリカ粒子について、表面修飾シリカ粒子と有機樹脂材料(マレイミド樹脂)の相溶性を確認した。合成例1-3で得られた表面修飾シリカ粒子のMEK分散液50gを300mLのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスターラーで撹拌しながら、低粘度液状マレイミド樹脂(DMI社製、マレイミド終端化ポリイミド樹脂 商品名:BMI-689、1000~2000mPa・s(25℃))20gを加えた。その後、得られた表面修飾シリカ粒子のMEK分散液とマレイミド樹脂との混合液が入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、400~30Torrの減圧下で蒸留を行い、分散媒をMEKからマレイミド樹脂に置換することで、表面修飾シリカ粒子のマレイミド樹脂分散液を得た。
得られた表面修飾シリカ粒子のマレイミド樹脂分散液は、シリカ濃度30.4質量%、水分量0.1質量%以下、メタノール量0.1質量%以下、MEK量0.1質量%以下、粘度:6000~7000mPa・s(B型粘度計、温度25℃)、DLS法による平均分散粒子径79nm、であり外観は黄色透明であった。更に、得られた表面修飾シリカ粒子のマレイミド樹脂分散液は、室温1週間静置後においても外観変化なく、析出沈降物も生じなかった。
更に、得られた表面修飾シリカ粒子のマレイミド樹脂分散液をアセトンで脱脂したガラス基板に手塗りのバーコーター(gap:25μm)で塗布し、窒素雰囲気下の下、100℃に加熱したホットプレート上で30分間焼成し、更にホットプレートの温度を230℃に昇温後、120分間焼成することで、表面修飾シリカ粒子とマレイミド樹脂とを含む
コンポジット材料の硬化膜(図3(B)参照)を得た。得られた硬化膜は黄色透明であり、ガラス基板とのはじきがみられなかった(なお図1において、樹脂分散液及び後述の低粘度液状マレイミド樹脂を塗布した部分の周辺を参考までに黒枠にて示す)。尚、膜厚は定圧厚さ測定器(株式会社テクロック製、型式:PG-01A)で測定し、19μmであった。
一方、表面修飾シリカ粒子を使用しない例として、上記低粘度液状マレイミド樹脂(商品名:BMI-689)のみを用い、これをアセトンで脱脂したガラス基板に手塗りのバーコーター(gap:25μm)で塗布し、窒素雰囲気下の下、100℃に加熱したホットプレート上で30分間焼成し、更にホットプレートの温度を230℃に昇温後、120分間焼成することで、マレイミド樹脂のみの硬化膜(図3(A)参照)を得た。得られた硬化膜は黄色透明であったが、ガラス基板とのはじきがみられた。
【0289】
(ポリイミド樹脂組成物評価その1)
実施例7-1: 実施例1-3で得られたシリカ乾燥粉末をシリカ濃度30質量%になるようDMACに再分散させた。得られたDMAC再分散ゾルを、合成例30で得られたポリアミック酸に質量比で樹脂/SiO=80/20になるようにガラス瓶中で添加混合した。次いで、真空脱泡機(EME社製、商品名V-mini300)で20分間脱泡撹拌することで、シリカ配合ポリアミック酸を得た。
次いで、得られたシリカ配合ポリアミック酸をCu板(アズワン社製、商品名HC0536、300mm×300mm、0.5mm厚)上にアプリケーター(BEVS社製、商品名:膜厚調整機能付きフィルムアプリケーターB/M150mm)で塗布後、70℃で30分、100℃で30分、150℃で30分、290℃で60分の条件で溶媒除去・熱硬化させることでシリカ配合ポリイミドを焼き付けたCu板(皮膜厚:29~32μm)を得た。これを5cm角に切り出して、絶縁試験用試料とした。
【0290】
(絶縁破壊寿命の測定)
大きさ50mm×50mmで、厚さが0.5mmの板状サンプルをヤマヨ試験器社製の絶縁破壊試験装置、型式:YST-243WS形によって、試験温度155℃(空気中)、印加電圧2.0kV、周波数50Hzでの絶縁破壊寿命を測定した。電極形状は、下部は平板電極(φ=25mm)、上部は球状電極(φ=20mm)を用い、いずれの電極もサンプルと接するように設置して試験した。印加電圧2.0kVで3~4回の測定を行ってその平均値を測定した。実施例1-3を配合した試料の絶縁寿命は196分であった。なお、ブランクとしてシリカを含まないポリイミド樹脂のみをサンプルとして同様に測定した。ポリイミド樹脂のみの試料の絶縁寿命は21分であった。
【0291】
(ポリイミド樹脂組成物評価その2)
実施例7-2:合成例31で得られたP3 10gをDMACに10質量%で溶解させ、目的のポリイミド溶液(PI-A)を得た。
次に実施例1-23で得られた乾燥粉末10gをDMACに40質量%で再分散液を得た。更に、この再分散液にポリイミド:乾燥粉末を重量比で1:1となるようにPI-Aを添加し、真空脱泡機(EME社製、商品名V-mini300)にて1500rpm10分間撹拌し、目的とするポリイミド/シリカ分散液を得た。
このポリイミド/シリカ分散液をイーグルXG上にバーコータ―にて厚み25μmで塗布をした。更に窒素雰囲気下ホットプレートにて90℃1時間、230℃1時間で焼成し、ポリイミドシリカ塗布膜を得た。得られた膜は、自己支持性を示した。
【0292】
(エポキシモノマーに分散したシリカゾル)
実施例8-1:合成例3で得られた表面修飾シリカ粒子について、表面修飾シリカ粒子と有機樹脂材料(エポキシ樹脂)の相溶性を確認した。合成例3で得られた表面修飾シリカ粒子のMEK分散液50gを300mLのナス型フラスコに仕込み、マグネチックスタ
ーラーで撹拌しながら、エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名:YD-8125、3900~5300mPa・s)20gを加えた。その後、得られた表面修飾シリカ粒子のMEK分散液とエポキシ樹脂の混合液が入ったナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、400~30Torrの減圧下で蒸留を行い、分散媒をMEKからエポキシ樹脂に置換することで、表面修飾シリカ粒子のエポキシ樹脂分散液を得た。
得られた表面修飾シリカ粒子のエポキシ樹脂分散液は、シリカ濃度32.1質量%、水分量0.1質量%以下、MeOH量0.1質量%以下、MEK量0.1質量%以下、粘度:14000~16000mPa・s(B型粘度計、温度25℃)、DLS法による平均分散粒子径79nm、エポキシ当量264g/eq(JIS K7236に準拠)であり、外観は白色透明であった。
更に、得られた表面修飾シリカ粒子のエポキシ樹脂分散液は、室温1週間静置後においても外観変化なく、析出沈降物も生じなかった。
【0293】
(表面修飾シリカ粒子の沈降回収)
実施例9-1:合成例32で得られた表面修飾中実シリカ粒子のMeOH分散液(32)50gを200mlのビーカーに入れ、50gの純水を添加した。30分静置することで表面修飾中実シリカ粒子が沈降したため、上澄みをデカンテーションで除去し、含水表面修飾中実シリカ粒子を回収した。得られた含水表面修飾中実シリカ粒子の入ったビーカーを真空乾燥(温度:60~100℃、圧力:ブルドン管式真空計目盛りのゲージ圧力で-0.1MPa:絶対圧力(大気圧力+ゲージ圧力)換算では0.1013MPa-0.1MPa=1.3kPa)に入れ、含水表面修飾中実シリカ粒子の水分量がシリカ粒子当たり1.0質量%以下になるまで保持した。
次いで、得られた水分低減済み表面修飾中実シリカ粒子5.0gを50mlのガラス製バイアル瓶に仕込み、MeOH18.5gを加えた。次いで、ミックスローター(アズワン株式会社製、商品名:MIX-ROTAR MR-5)を用いて2時間撹拌することで、MeOHに再分散した表面修飾中実シリカ粒子の再分散MeOH分散液が得られた。
得られたMeOHを再分散媒とする再分散MeOH分散中実シリカゾルは、DLS法による平均粒子径21nm、pH7.4、シリカ濃度21.1質量%、粘度2.1mPa・s、であった。なお、ナイロンシリンジフィルター(商品名、穴径0.45μm、Membrane Solutions社製)による濾過で根詰まりもなく、良分散性を示した。
【0294】
(金属酸化物粉末の再分散ゾルの流動性評価)
実施例10-1:合成例32で得られたゾル10gの入った50mlナス型フラスコをロータリーエバポレーターにセットし、浴温80℃、50Torrの減圧下で、分散溶媒を除去することで、ゾルの乾燥物を得た。さらに、得られた乾燥物を乳鉢と乳棒で砕き、シリカ粒子の粉末を得た。その後、得られたシリカ粒子の粉末1.4gを表15、表16に記載の再分散媒との組み合わせと濃度になるように13mlのガラス製バイアル瓶に仕込み、混合した。混合は、ミックスローター(アズワン株式会社製、商品名:MIX-ROTAR MR-5)を用いて12時間撹拌した。得られた再分散ゾルが、流動性を有しているとき、再分散可能、流動性を有していなければ再分散不可能とした。さらに再分散可能であった再分散ゾルの粘度はEMS粘度計を用いて測定した。表15、表16に再分散可能のとき「OK」、再分散不可能のとき「NG」、未実施は「-」として結果を記載した。更に、再分散後のDLS測定結果から、再分散ゾルと分散媒の粘度比:(再分散ゾルの粘度)/(分散媒の粘度)を記載した。
【0295】
実施例10-2~実施例10-15、比較例10-1、10-2:
実施例10-1と同様の方法で、表15、表16の金属酸化物粒子、再分散媒、濃度になるように再分散ゾルを作製した。得られた結果は、表15、表16に記載した。
【0296】
【表15】
【0297】
【表16】
【0298】
(平均一次粒子径が異なる2粒子混合ゾルの流動性評価)
実施例11-1:実施例10-5で得られた平均一次粒子径12nmの金属酸化物粒子のPGMEA分散ゾル(固形分30質量%、EMS粘度3mPa・s)0.1gと、実施例10-13で得られた平均一次粒子径71nmの金属酸化物粒子のPGMEA分散ゾル(固形分30質量%、EMS粘度1650mPa・s)0.9gとを13mlのガラス製バイアル瓶に仕込み、ミックスローター(アズワン株式会社製、商品名:MIX-ROTAR MR-5)を用いて2時間撹拌した。
得られた平均一次粒子径が異なる2粒子混合PGMEAゾルは、固形分30質量%、EMS粘度は449mPa・s、粘度比(ゾル/分散媒)は397、平均一次粒子径が12nmと71nmの金属酸化物粒子を含み、D50~D90の範囲にある最も大きなピークaが35nm以上200nm以下の範囲に存在し、D10~D50の範囲にある最も大きなピークbが5nm以上100nm未満の範囲に存在し、(平均一次粒子径が71nmの金属酸化物粒子の体積)/(平均一次粒子径が12nmの金属酸化物粒子の体積)の比が21であるゾルであり、実施例10-13で得られた平均一次粒子径71nmの金属酸化物粒子のPGMEA分散ゾルから半分以上に低粘度化し、流動性が改善した。
【0299】
実施例11-2:実施例10-5で得られた平均一次粒子径12nmの金属酸化物粒子のPGMEA分散ゾル(固形分60質量%、EMS粘度51mPa・s)0.1gと、実施例10-14で得られた平均一次粒子径80nmの金属酸化物粒子のPGMEA分散ゾル(固形分60質量%、EMS粘度3150mPa・s)0.9gとを13mlのガラス製バイアル瓶に仕込み、ミックスローター(アズワン株式会社製、商品名:MIX-RO
TAR MR-5)を用いて2時間撹拌した。
得られた平均一次粒子径が異なる2粒子混合PGMEAゾルは、固形分60質量%、金属酸化物粒子の体積の比(80nmの金属酸化物粒子/12nmの金属酸化物粒子)は9、EMS粘度は7mPa・s、粘度比(ゾル/分散媒)は6、平均一次粒子径が12nmと80nmの金属酸化物粒子を含み、D50~D90の範囲にある最も大きなピークaが35nm以上200nm以下の範囲に存在し、D10~D50の範囲にある最も大きなピークbが5nm以上100nm未満の範囲に存在するゾルであり、実施例10-14で得られた平均一次粒子径80nmの金属酸化物粒子のPGMEA分散ゾルと比べて半分以上に低粘度化し、流動性が改善した。
【0300】
実施例11-3:実施例10-5で得られた平均一次粒子径12nmの金属酸化物粒子の乾燥粉末0.18gと、実施例10-14で得られた平均一次粒子径80nmの金属酸化物粒子の乾燥粉末1.62gと、PGMEA1.2gとを13mlのガラス製バイアル瓶に仕込み、ミックスローター(アズワン株式会社製、商品名:MIX-ROTAR MR-5)を用いて12時間撹拌した。
得られた平均一次粒子径が異なる2粒子混合PGMEAゾルは、固形分60質量%、金属酸化物粒子の体積の比(80nmの金属酸化物粒子/12nmの金属酸化物粒子)は9、EMS粘度は7mPa・s、粘度比(ゾル/分散媒)は6、平均一次粒子径が12nmと80nmの金属酸化物粒子を含み、D50~D90の範囲にある最も大きなピークaが35nm以上200nm以下の範囲に存在し、D10~D50の範囲にある最も大きなピークbが5nm以上100nm未満の範囲に存在するゾルであり、実施例10-14で得られた平均一次粒子径80nmの金属酸化物粒子のPGMEA分散ゾルから半分以上に低粘度化し、流動性が改善した。
【0301】
実施例11-4:実施例10-12で得られた平均一次粒子径43nmの金属酸化物粒子のPGMEA分散ゾル(固形分30質量%、EMS粘度5mPa・s)0.1gと、実施例10-15で得られた平均一次粒子径71nmの金属酸化物粒子のPGMEA分散ゾル(固形分30質量%、EMS粘度27mPa・s)0.9gとを13mlのガラス製バイアル瓶に仕込み、ミックスローター(アズワン株式会社製、商品名:MIX-ROTAR MR-5)を用いて2時間撹拌した。
得られた平均一次粒子径が異なる2粒子混合PGMEAゾルは、固形分30質量%、EMS粘度は16mPa・s、粘度比(ゾル/分散媒)は14、平均一次粒子径が43nmと71nmの金属酸化物粒子を含み、D50~D90の範囲にある最も大きなピークaが35nm以上200nm以下の範囲に存在し、D10~D50の範囲にある最も大きなピークbが5nm以上100nm未満の範囲に存在し、(平均一次粒子径が71nmの金属酸化物粒子の体積)/(平均一次粒子径が43nmの金属酸化物粒子の体積)の比が13であるゾルであり、実施例10-15で得られた平均一次粒子径71nmの金属酸化物粒子のPGMEA分散ゾルと比べて10mPa・s以上も低粘度化し、流動性が改善した。
【産業上の利用可能性】
【0302】
金属酸化物ゾルの分散媒である有機溶媒中で高濃度に濃縮可能であるとともに、有機溶媒への再分散が可能である金属酸化物粒子、及び該金属酸化物粒子を含む金属酸化物ゾル並びにそれらの製造方法を提供すること。
図1
図2
図3
図4