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特開2025-9702ガス透過膜用組成物、ガス透過膜用硬化物及びガス透過膜
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  • 特開-ガス透過膜用組成物、ガス透過膜用硬化物及びガス透過膜 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009702
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ガス透過膜用組成物、ガス透過膜用硬化物及びガス透過膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/40 20060101AFI20250109BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20250109BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B01D71/40
C08F220/26
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023195213
(22)【出願日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2023108244
(32)【優先日】2023-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】萩原 優樹
(72)【発明者】
【氏名】岡 和行
(72)【発明者】
【氏名】井上 祐太
【テーマコード(参考)】
4D006
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006MA01
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA31
4D006MB03
4D006MB04
4D006MB06
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC24
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC37X
4D006MC47
4D006NA42
4D006PA02
4D006PB17
4D006PB64
4D006PC80
4J100AL08Q
4J100AL67P
4J100BA02P
4J100BA02Q
4J100BA08P
4J100BA08Q
4J100BC43Q
4J100CA04
4J100DA36
4J100JA15
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB051
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC051
4J127BC131
4J127BD221
4J127BG141
4J127CB15
4J127CC031
4J127CC131
4J127EA13
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】優れたCO気体透過係数を有し、分離係数(CO/N)も両立されたガス透過膜を得ることができるガス透過膜用組成物、ガス透過膜用硬化物及びガス透過膜を提供する。
【解決手段】式(1):-(CH-CH-O)-(ただし、nは2以上の整数である。)で表される構造を有し、かつ、末端基として3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)と、下記式(2)で表される化合物(B)(ただし、前記式(2)中、mは1以上の整数であり、pは1以上の整数である。)とを含むガス透過膜用組成物。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造を有し、かつ、末端基として3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)と、
下記式(2)で表される化合物(B)と、を含む、ガス透過膜用組成物。
-(CH-CH-O)- ・・・(1)
(ただし、前記式(1)中、nは2以上の整数である。)
【化1】
(ただし、前記式(2)中、mは1以上の整数であり、pは1以上の整数である。)
【請求項2】
前記化合物(A)が下記式(3)で表される基を有する、請求項1に記載のガス透過膜用組成物。
【化2】
(ただし、前記式(3)におけるRは、水素原子又はメチル基である。nは2以上の整数である。-*は結合子を示す。)
【請求項3】
前記化合物(B)の含有率は、前記化合物(A)及び前記化合物(B)の合計質量に対して10質量%以上90質量%以下である、請求項1に記載のガス透過膜用組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のガス透過膜用組成物が硬化されてなるガス透過膜用硬化物。
【請求項5】
請求項4に記載のガス透過膜用硬化物を含む、ガス透過膜。
【請求項6】
CO気体透過係数が50Barrer以上であり、かつ、分離係数(CO/N)が40以上である、請求項5に記載のガス透過膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス透過膜用組成物、ガス透過膜用硬化物及びガス透過膜に関する。
【背景技術】
【0002】
COの大気への実質排出量をゼロとすることを目的とする技術として、大気等のガス中のCOを分離、回収し、地中などに貯留したり、化学製品や燃料に変換して利用したりする、いわゆるCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)が知られている。
【0003】
COを回収する技術には、回収するガス種におけるCO濃度によって高コストになるという課題がある。近年、膜分離を利用したCO回収は、圧力差を駆動力とし、設備サイズが小さいことから、低コストで運用できる技術として注目されている。
膜分離によるCO回収においては、使用するガス透過膜を構成する材料のCO気体透過係数と分離係数(CO/N)がトレードオフの関係にある。そのため、COを選択的に回収するガス透過膜に使用できる材料は限られている。
COに対する親和性に優れ、分離係数(CO/N)が高い材料として、ポリエチレンオキシド(PEO)が知られている。しかし、PEOは結晶化してCO気体透過係数が著しく低くなることから、ガス透過膜には適用できない。
【0004】
結晶化によるCO気体透過係数の低下を抑制できる材料としては、エチレンオキシド(EO)変性された2官能アクリレートモノマーを用いた硬化物がある。非特許文献1には、EO変性数(EO付加モル数)が14の2官能アクリレートモノマーを用いた硬化物、及び前記硬化物で構成された膜が開示されている。非特許文献2には、EO変性数(EO付加モル数)が15の2官能アクリレートモノマーを用いた硬化物、及び前記硬化物で構成された膜が開示されている。
しかし、非特許文献1、2のような膜は、CO気体透過係数は充分に高いものの、分離係数(CO/N)が低い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kusuma et al., Journal of Membrane Science, 327, 2009, 195-207.
【非特許文献2】Ricards et al., Chemical Engineerig Science, 64, 2009, 4707-4718.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れたCO気体透過係数を有し、分離係数(CO/N)も両立されたガス透過膜を得ることができるガス透過膜用組成物、ガス透過膜用硬化物及びガス透過膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を含む。
[1]下記式(1)で表される構造を有し、かつ、末端基として3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)と、
下記式(2)で表される化合物(B)と、を含む、ガス透過膜用組成物。
-(CH-CH-O)- ・・・(1)
(ただし、前記式(1)中、nは2以上の整数である。)
【0008】
【化1】
【0009】
(ただし、前記式(2)中、mは1以上の整数であり、pは1以上の整数である。)
[2]前記化合物(A)が下記式(3)で表される基を有する、[1]に記載のガス透過膜用組成物。
【0010】
【化2】
【0011】
(ただし、前記式(3)におけるRは、水素原子又はメチル基である。nは2以上の整数である。-*は結合子を示す。)
[3]前記化合物(B)の含有率は、前記化合物(A)及び前記化合物(B)の合計質量に対して10質量%以上90質量%以下である、[1]又は[2]に記載のガス透過膜用組成物。
[4][1]~[3]のいずれかに記載のガス透過膜用組成物が硬化されてなるガス透過膜用硬化物。
[5][4]に記載のガス透過膜用硬化物を含む、ガス透過膜。
[6]CO気体透過係数が50Barrer以上であり、かつ、分離係数(CO/N)が40以上である、[5]に記載のガス透過膜。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れたCO気体透過係数を有し、分離係数(CO/N)も両立されたガス透過膜を得ることができるガス透過膜用組成物、ガス透過膜用硬化物及びガス透過膜が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例及び比較例において作成したガス透過膜のCO気体透過係数に対する分離係数(CO/N)をプロットした両対数グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[ガス透過膜用組成物]
実施形態に係るガス透過膜用組成物は、ガス透過膜に用いられる硬化性組成物であって、後述の化合物(A)と、化合物(B)とを含む。
【0015】
(化合物(A))
化合物(A)は、下記式(1)で表される構造(以下、「構造(1)」ともいう。)を有し、かつ、末端基として3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。すなわち、化合物(A)は、EO変性数(EO付加モル数)が2以上で3官能以上の多官能(メタ)アクリル系モノマーである。
-(CH-CH-O)- ・・・(1)
ただし、前記式(1)中、nは2以上の整数である。
【0016】
式(1)のn、すなわちEO変性数(EO付加モル数)は、2以上であり、5以上が好ましく、8以上がより好ましい。nが前記下限値以上であれば、分離係数(CO/N)が高いガス透過膜が得られやすくなる。nは、20以下が好ましく、15以下がより好ましい。nの好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば2~20が好ましい。
また、化合物(A)中に構造(1)が複数ある場合、nの合計数の上限値は、100以下が好ましく、90以下がより好ましく、80以下がさらに好ましく、65以下が特に好ましい。nの合計数が前記上限値以下であれば、架橋密度が適正値に入るため膜が自立しやすい。
【0017】
化合物(A)が末端基として有する(メタ)アクリロイル基数は、3以上であり、4以上が好ましく、5以上がより好ましく、6以上がさらに好ましい。(メタ)アクリロイル基数が前記下限値以上であれば、架橋密度が上がり、ガス透過膜の強度が増加する。また、分離係数(CO/N)が高いガス透過膜が得られやすくなる。化合物(A)が末端基として有する(メタ)アクリロイル基数は、10以下が好ましく、9以下がより好ましく、8以下がさらに好ましく、6以下が特に好ましい。(メタ)アクリロイル基数が前記上限値以下であれば、架橋密度が適正となり、膜の成型がしやすい。(メタ)アクリロイル基数の好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば3~6が好ましい。
なお、化合物(A)の末端基である(メタ)アクリロイル基数と、EO変性数(EO付加モル数)とは、独立に選定することより、合わせて検討したほうがよい。前述の(メタ)アクリロイル基数と、EO変性数(EO付加モル数)の好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができる。例えば、(メタ)アクリロイル基数が3以上、かつ、EO変性数(EO付加モル数)2以上の場合が好ましく、(メタ)アクリロイル基数が4以上、かつ、EO変性数(EO付加モル数)5以上がより好ましく、(メタ)アクリロイル基数が5以上、かつ、EO変性数(EO付加モル数)8以上がさらに好ましい。
【0018】
CO気体透過係数と分離係数(CO/N)が高いガス透過膜が得られやすいことから、化合物(A)としては、下記式(3)で表される基(以下、「基(3)」ともいう。)を有する化合物が好ましい。
【0019】
【化3】
【0020】
ただし、前記式(3)におけるRは、水素原子又はメチル基である。-*は結合子を示す。
なお、-*が結合する構造は特に限定されないが、アルコール基になる場合、自由体積が低下するのでメチル基、エチル基などの炭化水素基が望ましい。
【0021】
基(3)は、末端基としての(メタ)アクリロイル基と構造(1)とを含む基である。CO気体透過係数と分離係数(CO/N)が高いガス透過膜が得られやすいことから、化合物(A)は、末端基として有する(メタ)アクリロイル基を、すべて基(3)の一部として有していることが好ましい。
【0022】
化合物(A)が有する基(3)の数は、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5以上がさらに好ましく、6以上が特に好ましい。基(3)の数が前記下限値以上であれば、分離係数(CO/N)が高いガス透過膜が得られやすくなる。化合物(A)が有する基(3)の数は、10以下が好ましく、9以下がより好ましく、8以下がさらに好ましく、6以下が特に好ましい。基(3)の数が前記上限値以下であれば、架橋密度が適正となり、膜の成型がしやすい。基(3)の数の好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば3~6が好ましい。
【0023】
化合物(A)としては、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭化水素の3つ以上の水素原子が基(3)に置換された化合物であることが好ましい。
エーテル性酸素原子を有していてもよい炭化水素は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状であってもよい。
エーテル性酸素原子を有していてもよい炭化水素の炭素原子数は、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上がさらに好ましく、また15以下が好ましく、14以下がより好ましく、12以下がさらに好ましい。
【0024】
化合物(A)としては、例えば、グリセリンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリエトキシヘキサ(メタ)アクリレート、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
実施形態に係るガス透過膜用組成物は、化合物(A)にとして、式(4)で表される化合物、及び、式(5)で表される化合物のいずれか一方又は両方を含むことが好ましい。また、化合物(A)として、式(4)で表される化合物、及び、式(5)で表される化合物のいずれか一方又は両方であることがより好ましい。
【0025】
【化4】
【0026】
ただし、前記式(4)中、n1~n3は、それぞれ独立に2以上の整数である。
n1~n3のそれぞれの好ましい範囲は、nの好ましい範囲と同じである。n1~n3の合計数の好ましい上限値は、nの合計数の好ましい上限値と同じである。
【0027】
【化5】
【0028】
ただし、前記式(5)中、n4~n9は、それぞれ独立に2以上の整数である。
n4~n9のそれぞれの好ましい範囲は、nの好ましい範囲と同じである。n4~n9の合計数の好ましい上限値は、nの合計数の好ましい上限値と同じである。
【0029】
化合物(A)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、3官能以上の多価アルコールにエチレンオキサイド(EO)を反応させて得られる反応物に、(メタ)アクリル酸を反応させることによって製造できる。
3官能以上の多価アルコールとしては、例えば、トリグリセリン、テトラグリセリン等のポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。3官能以上の多価アルコールとしては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
(化合物(B))
化合物(B)は、下記式(2)で表される化合物である。
化合物(B)としては、例えば、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレートが挙げられる。
【0031】
【化6】
【0032】
ただし、前記式(2)中、mは1以上の整数であり、pは1以上の整数である。
式(2)のm、すなわちEO変性数(EO付加モル数)は、2以上が好ましく、4以上がより好ましく、6以上がさらに好ましく、8以上が特に好ましい。mが前記下限値以上であれば、CO気体透過係数と分離係数(CO/N)が高いガス透過膜が得られやすくなる。mは、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下がさらに好ましく、10以下が特に好ましい。mが前記上限値以下であれば、架橋密度が維持され、膜の自立がしやすい。mの好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば8~10が好ましい。
【0033】
2p+1で表されるアルキル基は、直鎖構造であってもよく、分岐構造であってもよい。
式(2)のpは、1以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上がさらに好ましく、9以上が特に好ましい。pが前記下限値以上であれば、CO気体透過係数が高いガス透過膜が得られやすくなる。pは、15以下が好ましく、13以下がより好ましく、12以下がさらに好ましく、10以下が特に好ましい。pが前記上限値以下であれば、分離係数(CO/N)の減少を抑えることができる。pの好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば9~10が好ましい。
【0034】
実施形態に係るガス透過膜用組成物中の化合物(B)の含有率は、化合物(A)及び化合物(B)の合計質量に対して、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。前記化合物(B)の含有率が前記下限値以上であれば、ガス透過膜のCO気体透過係数と分離係数(CO/N)が向上する。前記化合物(B)の含有率は、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。前記化合物(B)の含有率が前記上限値以下であれば、ガス透過膜用組成物が硬化しやすくなる。
前記化合物(B)の含有率の好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば10~90質量%が好ましく、15~85質量%がより好ましく、20~80質量%がさらに好ましい。
【0035】
(他のモノマー)
実施形態に係るガス透過膜用組成物は、化合物(A)及び化合物(B)に加えて、化合物(A)及び化合物(B)以外の他の(メタ)アクリル系モノマーを含んでもよい。
化合物(A)及び化合物(B)以外の他の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルジエトキシ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、水添ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリプロポキシヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
他の(メタ)アクリル系モノマーとしては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
実施形態に係るガス透過膜用組成物中の化合物(A)及び化合物(B)の合計含有率は、ガス透過膜用組成物中のモノマー成分の総量に対して、90質量%以上が好ましく、92.5質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、97.5質量%以上が特に好ましい。化合物(A)及び化合物(B)の合計含有率が前記下限値以上であれば、CO気体透過係数と分離係数(CO/N)が高いガス透過膜が得られやすくなる。化合物(A)及び化合物(B)の合計含有率の上限は、特に限定されず、100質量%とすることもできる。
【0037】
(光開始剤)
実施形態に係るガス透過膜用組成物は、光開始剤を含むことが好ましい。
光開始剤としては、特に限定されず、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(HCPK)、ベンゾフェノン等のケトン類が挙げられる。光開始剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
ガス透過膜用組成物中の光開始剤の含有率は、モノマー成分100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上がさらに好ましい。前記光開始剤の含有率が前記下限値以上であれば、ガス透過膜用組成物が硬化しやすい。前記光開始剤の含有率は、1質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましく、0.3質量部以下がさらに好ましい。前記光開始剤の含有率が前記上限値以下であれば、気体透過係数に影響を与えない。前記光開始剤の含有率の好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば0.1~0.3質量部が好ましい。
【0039】
[ガス透過膜用硬化物]
実施形態に係るガス透過膜用硬化物は、前述の実施形態に係るガス透過膜用組成物が硬化されてなる硬化物である。
【0040】
実施形態に係るガス透過膜用硬化物は、例えば、前述のガス透過膜用組成物を活性エネルギー線によって硬化させることによって得ることができる。
活性エネルギー線としては、電子線、X線、紫外線、低波長領域の可視光等が挙げられ、紫外線が好ましい。
【0041】
[ガス透過膜]
実施形態に係るガス透過膜は、実施形態に係るガス透過膜用硬化物を含む。
実施形態に係るガス透過膜は、実施形態に係るガス透過膜用硬化物によって形成された単一の非多孔質層からなる膜であってもよく、多孔質支持体と、前記多孔質支持体上に実施形態に係るガス透過膜用硬化物によって形成された非多孔質層とを含む膜であってもよい。
【0042】
ガス透過膜の形態は、特に限定されず、平膜であってもよく、中空糸膜であってもよい。
例えばガス透過膜が平膜の場合、多孔質支持体と非多孔質層を有する二層構造の平膜であってもよく、非多孔質層の両側に多孔質支持体を有する三層構造の平膜であってもよい。
例えばガス透過膜が中空糸膜の場合、中空状の多孔質支持体の内側又は外側に非多孔質層を有する二層構造の中空糸膜であってもよく、中空状の非多孔質層の内側と外側に多孔質支持体を有する三層構造の中空糸膜であってもよい。
【0043】
非多孔質層の厚みは、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。非多孔質層の厚みが前記下限値以上であれば、COを効率良く選択的に分離、回収することができる。非多孔質層の厚みは、10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。非多孔質層の厚みが前記上限値以下であれば、透過抵抗を減らすことができるのでCOを効率的に回収することができる。
【0044】
多孔質支持体としては、非多孔質層を補強できる充分な機械的強度を有し、かつ非多孔質層と一体化できるものであれば特に限定されない。
多孔質支持体を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-3-メチルブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1等のポリオレフィン系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマー、ポリスチレン、ポリエーテルケトン等の疎水性ポリマーが挙げられる。多孔質支持体を構成する材料は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
実施形態に係るガス透過膜は、CO気体透過係数が50Barrer以上であり、かつ、分離係数(CO/N)が40以上であることが好ましい。
【0046】
ガス透過膜のCO気体透過係数は、高ければ高いほどよいが、一般的に50Barrer以上が好ましく、100Barrer以上がより好ましく、150Barrer以上がさらに好ましい。ガス透過膜のCO気体透過係数の上限は特に限定されず、実質的には300Barrer以下である。
なお、ガス透過膜のCO気体透過係数は、後述の実施例に記載の方法で測定される値である。
【0047】
ガス透過膜の分離係数(CO/N)は、高ければ高いほどよいが、一般的に40以上が好ましく、50以上がより好ましく、60以上がさらに好ましい。ガス透過膜の分離係数(CO/N)上限は特に限定されず、実質的には100以下である。
なお、ガス透過膜の分離係数(CO/N)は、後述の実施例に記載の方法で測定される値である。
なお、好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができる。一般的に、ガス透過膜のCO気体透過係数及び分離係数(CO/N)を両立させることが難しいと言われている。例えば、図1に示した直線kは、CO/NにおけるRobson上限性能を示した直線である。よって、ガス透過膜のCO気体透過係数とガス透過膜の分離係数(CO/N)は、お互い独立に検討するわけではなく、両方高いのが最も理想である。
【0048】
以上説明したように、本発明では、化合物(A)と化合物(B)とを組み合わせて用いることにより、特に優れたCO気体透過係数を有し、分離係数(CO/N)も両立されたガス透過膜を得ることができる。
【0049】
なお、本発明のガス透過膜用組成物、ガス透過膜用硬化物及びガス透過膜は、前述の構成には限定されない。本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【実施例0050】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0051】
[略号]
本実施例で用いた原料の略号は以下のとおりである。
(化合物(A))
A-1:MIRAMER M3150(Miwon社製、アクリロイル基数:3、前記式(4)で表される化合物、n1=n2=n3=5)
A-2:Syntech SA-TE60(阪本薬品工業社製、アクリロイル基数:6、前記式(5)で表される化合物、n4=n5=n6=n7=n8=n9=10)
(化合物(B))
B-1:CH=CH-C(=O)-(O-CH-CH-O-C-C19(前記式(2)で表されるm=4、p=9(直鎖構造)の化合物)
B-2:CH=CH-C(=O)-(O-CH-CH-O-C-C19(前記式(2)で表されるm=8、p=9(直鎖構造)の化合物)
(比較対象化合物)
B’-1:CH=CH-C(=O)-(O-CH-CH-O-C
(光開始剤)
HCPK:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
【0052】
[気体透過係数P(Barrer)及び分離係数の測定]
(1)ガス透過膜の作成
ガス透過膜用組成物を、スペーサーを張り付けたポリエステルフィルム(以下、「PETフィルム」という。)(コスモサンシャイン、東洋紡社製、厚さ:188μm)上に塗布し、さらにPETフィルムを重ね、2枚のフィルム間で硬化後の膜厚が200μm程度になるように押し広げた。次いで、高圧水銀灯(市販品)を用い、空気中で波長340~380nmの紫外線を積算光量が500mJ/cmとなるように照射し、ガス透過膜用組成物を硬化させてガス透過膜を形成した。
【0053】
(2)測定方法
得られたガス透過膜を含む積層体を直径35mmの円形状にカットし、PETフィルムを剥がしてガス透過膜からなる測定サンプルを回収した。
ガス透過率測定装置(K-315N-01、ツクバリカセイキ社製)を用い、得られた測定サンプルについて、窒素及び二酸化炭素を供給ガスとした圧力法により、温度25.5℃、測定圧力102kPaの条件下でCO気体透過係数及びN気体透過係数をそれぞれ測定した。気体透過係数P(Barrer)は下記式(6)から算出した。また、CO気体透過係数をN気体透過係数で除して分離係数(CO/N)を求めた。
【0054】
【数1】
【0055】
前記式(6)における各記号は以下の意味を示す。
V:低圧タンク側体積(cm
A:測定サンプル(ガス透過膜)の透過部分面積(cm
T:セルにおける温度(K)
l:測定サンプル(ガス透過膜)の膜厚(cm)
:高圧タンク側圧力(cmHg)
:低圧タンク側圧力(cmHg)
【0056】
[実施例1]
化合物(A)として化合物(A-2)80質量部、化合物(B)として化合物(B-1)20質量部、光開始剤としてHCPK0.1質量部を混合し、液体状のガス透過膜用組成物を調製した。
前記ガス透過膜用組成物を用いてガス透過膜を作成し、CO気体透過係数及び分離係数(CO/N)を測定した。
【0057】
[実施例2~4]
モノマー組成を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてガス透過膜用組成物を調製し、前記ガス透過膜用組成物を用いて作成したガス透過膜のCO気体透過係数及び分離係数(CO/N)を測定した。
【0058】
[実施例5]
化合物(A-2)の代わりに化合物(A-1)を用いる以外は、実施例1と同様にしてガス透過膜用組成物を調製し、前記ガス透過膜用組成物を用いて作成したガス透過膜のCO気体透過係数及び分離係数(CO/N)を測定した。
【0059】
[実施例6]
モノマー組成を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例5と同様にしてガス透過膜用組成物を調製し、前記ガス透過膜用組成物を用いて作成したガス透過膜のCO気体透過係数及び分離係数(CO/N)を測定した。
【0060】
[比較例1]
化合物(B-1)の代わりに化合物(B’-1)を用いる以外は、実施例3と同様にしてガス透過膜用組成物を調製し、前記ガス透過膜用組成物を用いて作成したガス透過膜のCO気体透過係数及び分離係数(CO/N)を測定した。
【0061】
[比較例2]
化合物(B-1)を用いずに化合物(A-2)を100質量部用いる以外は、実施例1と同様にしてガス透過膜用組成物を調製し、前記ガス透過膜用組成物を用いて作成したガス透過膜のCO気体透過係数及び分離係数(CO/N)を測定した。
【0062】
[比較例3]
化合物(B-1)を用いずに化合物(A-1)を100質量部用いる以外は、実施例5と同様にしてガス透過膜用組成物を調製し、前記ガス透過膜用組成物を用いて作成したガス透過膜のCO気体透過係数及び分離係数(CO/N)を測定した。
【0063】
各例のガス透過膜のCO気体透過係数及び分離係数(CO/N)の測定結果を表1に示す。なお、表1における「EO変性数」は、化合物におけるEO変性数の合計を意味する。また、各例のCO気体透過係数に対する分離係数(CO/N)をプロットした両対数グラフを図1に示す。図1中の直線kは、CO/NにおけるRobson上限性能を示した直線である。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示すように、化合物(A-2)に化合物(B)を併用した実施例1~4は、化合物(B)を用いていない比較例2に比べ、高いCO気体透過係数を有し、分離係数(CO/N)も両立されていた。また、化合物(A-2)に化合物(B)を併用した実施例3は、同じ比率で化合物(B’-1)を併用した比較例1と比べて、特に高いCO気体透過係数が得られた。
化合物(A-1)に化合物(B)を併用した実施例5、6は、化合物(B)を用いていない比較例3に比べ、高いCO気体透過係数及び分離係数(CO/N)が両立された。
また、図1に示すように、化合物(A)と化合物(B)を併用することにより、Robson上限性能を示す直線kを上回る性能のガス透過膜も得られた(実施例5)。
図1