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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097042
(43)【公開日】2025-06-30
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/68 20060101AFI20250623BHJP
   A61K 31/727 20060101ALI20250623BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250623BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250623BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20250623BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250623BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20250623BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20250623BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20250623BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20250623BHJP
   A61K 31/164 20060101ALI20250623BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20250623BHJP
【FI】
A61K8/68
A61K31/727
A61P17/00
A61P43/00 121
A61K8/73
A61Q19/00
A61K8/49
A61K31/4166
A61K8/63
A61K31/704
A61K31/164
A61K8/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213095
(22)【出願日】2023-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】山本 真悠子
(72)【発明者】
【氏名】北林 奈々子
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC542
4C083AC552
4C083AC612
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC681
4C083AC682
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD311
4C083AD312
4C083AD531
4C083AD532
4C083CC05
4C083DD31
4C083DD33
4C083EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086EA10
4C086EA27
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA22
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZA89
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA03
4C206GA25
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA42
4C206MA48
4C206MA83
4C206NA03
4C206NA05
4C206ZA89
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】本開示の課題は、ヘパリン類似物質及びアラントインを含み、非密封条件での保管による外観性状の変化を抑制できる外用組成物を提供することである。
【解決手段】(A)ヘパリン類似物質、(B)アラントイン、(C)グリチルリチン酸、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(D)セラミド2を含有する、外用乳化組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヘパリン類似物質、(B)アラントイン、(C)グリチルリチン酸、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(D)セラミド2を含有する、外用組成物。
【請求項2】
乳化製剤である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
クリーム剤である、請求項2に記載の外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘパリン類似物質及びアラントインを含み、非密封条件での保管による外観性状の変化を抑制できる外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘパリン類似物質は、保湿作用や血行促進作用等を有することが知られており、外用組成物の成分として使用されている。また、アラントインには、組織修復賦活作用、抗炎症作用、鎮痒作用等があり、外用組成物の成分として使用されている。
【0003】
近年、外用組成物に対する機能性の向上が強く求められるようになっており、ヘパリン類似物質とアラントインの機能性に着目し、これらの成分を併用することにより機能性を向上させた外用組成物についても提案されている。例えば、特許文献1には、ヘパリン類似物質と、アラントインと、非イオン性界面活性剤とを含む外用組成物は、それらの相乗効果によりメラニン産生抑制効果が発揮され、皮膚への色素の沈着とを抑制、防止、予防、又は改善することができることが報告されている。また、特許文献2には、ヘパリン類似物質とアラントインとパンテノールとを含む外用医薬組成物は、角層細胞への正常な分化を促進し、角層を構成する角層細胞の面積を増大させ、角層の構造および機能を正常化し得ることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-84337号公報
【特許文献2】特開2011-231128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外用組成物を実用化するには、その有効性だけでなく、製剤安定性についても十分に配慮する必要がある。本発明者は、ヘパリン類似物質及びアラントインを含む外用組成物について、様々な観点から検討を進めたところ、製剤安定性の点で問題があることを知得した。具体的には、ヘパリン類似物質及びアラントインを含む外用組成物を非密封条件で保管すると、外観性状の変化(成分の分離やそれに伴う外観変化)が生じることを知得した。通常、外用組成物は密封状態で保管されるが、使用者が容器の蓋を閉め忘れることもあるため、非密封条件で保管されても外観性状を安定に維持できることが望まれる。
【0006】
そこで、本開示は、ヘパリン類似物質及びアラントインを含み、非密封条件での保管による外観性状の変化を抑制できる外用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、外用組成物において、ヘパリン類似物質及びアラントインと共に、グリチルリチン酸類とセラミド2を含有させることにより、非密封条件での保管による外観性状の変化を抑制できることを見出した。本開示は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本開示は、下記に掲げる態様の外用組成物を提供する。
項1.(A)ヘパリン類似物質、(B)アラントイン、(C)グリチルリチン酸、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(D)セラミド2を含有する、外用組成物。
項2.乳化製剤である、請求項1に記載の外用組成物。
項3.クリーム剤である、請求項2に記載の外用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本開示によればヘパリン類似物質及びアラントインを含む外用組成物において、非密封条件での保管による外観性状の変化を抑制し、優れた製剤安定性を備えさせ得る製剤処方が提供される。外用組成物は、使用者が不注意により容器の蓋を閉め忘れて非密封条件で保管される状況が生じ得るが、本開示の外用組成物は、非密封条件で保管されても外観性状の変化を抑制できるので、このような不適切な保管状態になっても、外観性状の変化を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の外用組成物は、(A)ヘパリン類似物質、(B)アラントイン、(C)グリチルリチン酸、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(D)セラミド2を含有することを特徴とする。以下、本開示の外用組成物について詳述する。なお、本開示において、数値範囲に関する記載「X~Y」は、X以上Y以下の範囲を指す。
【0011】
[(A)ヘパリン類似物質]
本開示の外用組成物は、ヘパリン類似物質((A)成分と表記することもある)を含有する。ヘパリン類似物質とは、コンドロイチン多硫酸等の多硫酸化ムコ多糖であり、保湿作用や血行促進作用等を有することが知られている公知の成分である。本開示で使用されるヘパリン類似物質の由来については、特に限定されないが、例えば、ムコ多糖類を多硫酸化することにより得られたもの、食用獣の組織(例えば、ウシの気管軟骨を含む肺臓)から抽出したもの等が挙げられる。本開示の外用組成物では、ヘパリン類似物質として、日本薬局方外医薬品規格に収戴されているヘパリン類似物質が好適に使用される。
【0012】
本開示の外用組成物における(A)成分の含有量としては、外用組成物の用途、製剤形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.001~5重量%、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.01~0.3重量%、更に好ましくは0.1~0.3重量%が挙げられる。
【0013】
[(B)アラントイン]
本開示の外用組成物は、アラントイン((B)成分と表記することもある)を含有する。アラントインとは、5-ウレイドヒダントインとも称される化合物であり、組織修復賦活作用、抗炎症作用、鎮痒作用等を有することが知られている公知の成分である。
【0014】
本開示の外用組成物における(B)成分の含有量としては、外用組成物の用途、製剤形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.01~10重量%、好ましくは0.01~8重量%、より好ましくは0.01~1重量%、更に好ましくは0.05~0.5重量%が挙げられる。
【0015】
[(C)グリチルリチン酸類]
本開示の外用組成物は、グリチルリチン酸、その誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種のグリチルリチン酸類((C)成分と表記することもある)を含有する。本開示の外用組成物において、グリチルリチン酸類は後述するセラミド2との相乗効果により、ヘパリン類似物質及びアラントインを含む外用組成物の非密封条件での保管による外観性状の変化を抑制する作用を発揮する。
【0016】
グリチルリチン酸は、抗炎症作用や抗アレルギー作用等を有することが知られている公知の薬剤である。グリチルリチン酸の誘導体としては、薬学的に許容されることを限度として特に限定されないが、具体的には、グリチルリチン酸メチル、グリチルリチン酸ステアリル等が挙げられる。グリチルリチン酸及びその誘導体の塩としては、薬学的に許容されるものである限り特に限定されないが、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩等が挙げられる。
【0017】
本開示の外用組成物において、(C)成分として、グリチルリチン酸、その誘導体、及びそれらの塩の中から、1種を選択して使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
これらの(C)成分の中でも、被密封条件での保管による外観性状の変化をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくはグリチルリチン酸の塩、より好ましくはグリチルリチン酸ジカリウムが挙げられる。
【0019】
本開示の外用組成物において、(A)成分と(C)成分の比率としては、例えば、(A)成分1重量部当たり、(C)成分が0.01~100重量部、好ましくは0.05~50重量部、より好ましくは0.1~10重量部、更に好ましくは1~6重量部が挙げられる。
【0020】
本開示の外用組成物における(C)成分の含有量としては、外用組成物の用途、製剤形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.01~10重量%、好ましくは0.01~2.5重量%、より好ましくは0.1~2.5重量%、更に好ましくは0.5~2重量%が挙げられる。
【0021】
[(D)セラミド2類]
本開示の外用組成物は、セラミド2((D)成分と表記することもある)を含有する。本開示の外用組成物において、セラミド2は前記グリチルリチン酸類との相乗効果により、ヘパリン類似物質及びアラントインを含む外用組成物の非密封条件での保管による外観性状の変化を抑制する作用を発揮する。セラミド2とは、N-ステアロイルジヒドロスフィンゴシンであり、ヒト型セラミドの1種である。
【0022】
本開示の外用組成物において、(A)成分と(D)成分の比率としては、例えば、(A)成分1重量部当たり、(D)成分が0.005~50重量部、好ましくは0.02~25重量部、より好ましくは0.05~5重量部、更に好ましくは0.5~4重量部、特に好ましくは1.3~4重量部が挙げられる。
【0023】
本開示の外用組成物における(D)成分の含有量としては、外用組成物の用途、製剤形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.001~10重量%、好ましくは0.001~5重量%、より好ましくは0.05~3重量%、更に好ましくは0.1~1.5重量%、特に好ましくは0.3~1重量%、特により好ましくは0.5~1重量%が挙げられる。
【0024】
[水]
本開示の外用組成物は、所望の製剤形態に調製するために、水が含まれる。本開示の外用組成物における水の含有量については、製剤形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、20~97重量%、好ましくは25~95重量%、より好ましくは30~90重量%、更に好ましくは35~80重量%が挙げられる。
【0025】
[多価アルコール]
本開示の外用組成物には、必要に応じて多価アルコールが含まれていてもよい。多価アルコールの種類については、薬学的に許容されることを限度として、特に制限されないが、例えば、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等の2価アルコール;グリセリン等の3価アルコールが挙げられる。これらの多価アルコールの中でも、好ましくはプロピレングリコール及び1,3-ブチレングリコールが挙げられる。これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
本開示の外用組成物に、多価アルコールを含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.1~25重量%、好ましくは1~20重量%、より好ましくは2~15重量%が挙げられる。
【0027】
[界面活性剤]
本開示の外用組成物には、所望の製剤形態に調製するために、界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、又は両性界面活性剤のいずれであってもよいが、好ましくは非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0028】
非イオン性界面活性剤の種類については、薬学的に許容されることを限度として、特に制限されないが、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、レシチン誘導体等が挙げられる。これらの中でも、好適な非イオン性界面活性剤の例として、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
本開示の外用組成物に界面活性剤を含有させる場合、その含有量については、製剤形態、使用する界面活性剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.1~20重量%、好ましくは0.5~10重量%、更に好ましくは1~5重量%が挙げられる。
【0030】
[増粘剤]
本開示の外用組成物には、粘性の付与等のために、必要に応じて増粘剤が含まれていてもよい。増粘剤の種類については、薬学的に許容されることを限度として、特に制限されないが、例えば、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸ナトリウムベントナイト、デキストリン脂肪酸エステル、ペクチン等が挙げられる。これらの増粘剤の中でも、好ましくはカルボキシビニルポリマーが挙げられる。これらの増粘剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
本開示の外用組成物に、増粘剤を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.05~5重量%、好ましくは0.1~3重量%、より好ましくは0.1~1重量%が挙げられる。
【0032】
[キレート剤]
本開示の外用組成物には、必要に応じてキレート剤が含まれていてもよい。キレート剤の種類については、薬学的に許容されることを限度として、特に制限されないが、例えば、例えば、エデト酸、クエン酸、コハク酸、アスコルビン酸、トリヒドロキシメチルアミノメタン、ニトリロトリ酢酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ポリリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸、及びこれらの薬学的に許容される塩等が挙げられる。これらの増粘剤の中でも、好ましくはエデト酸及びその塩、より好ましくはエデト酸ナトリウムが挙げられる。これらのキレート剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
本開示の外用組成物に、キレート剤を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.001~5重量%、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%が挙げられる。
【0034】
[油分]
本開示の外用組成物は、所望の製剤形態に調製するために、油分が含まれていてもよい。油分の種類については、薬学的に許容されるものであることを限度として特に制限されないが、例えば、高級1価アルコール、脂肪酸アルキルエステル、炭化水素油、シリコーンオイル、植物油、動物油、コレステロール等が挙げられる。
【0035】
これらの油分の中でも、好適な一例として、1価の高級アルコール、脂肪酸アルキルエステル、炭化水素油、及びシリコーンオイルが挙げられる。1価の高級アルコールとしては、例えば、炭素数12~34の1価アルコールが挙げられ、具体的には、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。脂肪酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数6~30の脂肪酸と炭素数1~34のアルコールのエステルが挙げられ、具体的には、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、セバシン酸ジエチル、オレイン酸エチル等が挙げられる。炭化水素油としては、具体的には、パラフィン、水添ポリイソブテン、流動パラフィン、ゲル化炭化水素(プラスチベース等)、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、白色ワセリン、スクワラン等が挙げられる。シリコーンオイルとしては、具体的には、メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アクリルシリコーン、フェニル変性シリコーン等が挙げられる。
【0036】
これらの油分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
本開示の外用組成物に油分を含有させる場合、その含有量については、製剤形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1~60重量%、好ましくは5~50重量%、より好ましくは5~40重量%、更に好ましくは10~30重量%が挙げられる。
【0038】
[その他の成分]
本開示の外用組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、通常使用される他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、防腐剤、1価低級アルコール、pH調節剤、緩衝剤、可溶化剤、酸化防止剤、安定化剤、香料、着色料等が挙げられる。本開示の外用組成物において、これらの添加剤を含有させる場合、その含有量については、使用する添加剤の種類等に応じて適宜設定すればよい。
【0039】
また、本開示の外用組成物は、前述する成分の他に、薬理成分が含まれていてもよい。このような薬理成分としては、例えば、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、保湿剤、殺菌剤、抗菌剤、鎮痒剤、皮膚保護剤、血行促進成分、ビタミン類等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、本開示の外用組成物において、これらの薬理成分を含有させる場合、その濃度については、使用する薬理成分の種類、期待する効果等に応じて適宜設定すればよい。
【0040】
[製剤形態・剤型]
本開示の外用組成物は、水中油型乳化製剤、油中水型乳化製剤等の乳化製剤であってもよく、また可溶化型製剤、水性軟膏等の非乳化製剤であってもよい。本来、ヘパリン類似物質及びアラントインが乳化製剤(特に水中油型乳化製剤)に含まれる場合に、非密封条件での保管による外観性状の変化(成分の分離やそれに伴う外観変化)が顕著になる傾向があるが、本開示の外用組成物では、乳化製剤であっても、非密封条件での保管による外観性状の変化を効果的に抑制できる。このような効果に鑑みれば、本開示の外用組成物として、好ましくは乳化製剤、より好ましくは水中油型乳化製剤が挙げられる。
【0041】
本開示の外用組成物の剤型については、経皮適用可能であることを限度として特に制限されず、液状、半固形状(クリーム状、ゲル状、軟膏状、ペースト状)、固形状等のいずれであってもよいが、好ましくは液状又は半固形状が挙げられる。
【0042】
また、本開示の外用組成物は、皮膚外用医薬品(医薬部外品を含む)又は化粧料として使用される。本発明の外用組成物の製剤形態として、具体的には、クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、乳液剤、液剤、パップ剤、貼付剤、リニメント剤、エアゾール剤、水性軟膏剤、パック剤等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはクリーム剤が挙げられる。
【0043】
[製造方法]
本開示の外用組成物は、その製剤形態に応じた公知の製剤化手法に従って製造することができる。例えば、本開示の外用組成物が乳化製剤である場合には、含有させる成分を水溶性成分と油性成分に分けて、水溶性成分を含む水相と、油性成分を含む油相とを調製し、これらを公知の手法に従って乳化させることにより調製できる。
【実施例0044】
以下に実施例を示して本開示をより具体的に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0045】
試験例
表1に示す組成の外用組成物(クリーム状の水中油型乳化製剤)を調製した。具体的には、セラミド2、ステアリルアルコール、セタノール、ミリスチン酸イソプロピル、白色ワセリン、流動パラフィン、スクワラン、ジメチルポリシロキサン、パラオキシ安息香酸プロピル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50,ポリソルベート60、及び自己乳化型モノステアリン酸グリセリルを所定量混合し、75~85℃で加熱溶解することにより、油相用組成物を調製した。また、別途、ヘパリン類似物質、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エデト酸ナトリウム水和物、カルボキシビニルポリマー、pH調整剤、パラオキシ安息香酸メチル、及び精製水を所定量混合することにより、水相用組成物を調製した。次いで、80℃に加熱した水相用組成物を、80℃に加熱している油相用組成物に徐々に添加し混合して乳化操作を行い、外用組成物(クリーム状の水中油型乳化製剤)を得た。製造直後の外用組成物は、白色で分離を生じていない乳化状態であった。
【0046】
製造直後の外用組成物の約1gを容器に入れずに平らな台に置いた状態で、室温で4日間静置した。保存後の各外用組成物の外観を目視にて観察し、以下の判定基準に従って、製剤安定性を評価した。
<製剤安定性の判定基準>
AA:白色の外観を維持しており、成分の分離も認められず、調製直後と比べて外観性状に差は認められない。
A :白色の外観を維持しており、僅かにだけ成分の分離が認められるが、調製直後と比べて外観性状殆ど差は認められない。
B :やや半透明の外観に変化しており、僅かに成分の分離も認められ、調製直後と比べて外観性状が変化している。
C :半透明の外観に変化しており、成分の分離も認められ、調製直後と比べて外観性状が大きく変化している。
【0047】
結果を表1に示す。ヘパリン類似物質及びアラントインを含む外用組成物では、非密封条件での保管後に外観性状が大きく変化していた(比較例1)。また、ヘパリン類似物質及びアラントインに加えて、グリチルリチン酸ジカリウム又はセラミド2の一方を含む外用組成物でも、非密封条件での保管後に外観性状が大きく変化していた(比較例2及び3)。また、ヘパリン類似物質、グリチルリチン酸ジカリウム、及びセラミド2の3成分、或いはアラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム、及びセラミド2の3成分を組み合わせて含む外用組成物でも、非密封条件での保管後に外観性状の変化が認められた(比較例4及び5)。これに対して、ヘパリン類似物質、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム、及びセラミド2を組み合わせて含む場合には、非密封条件での保管後でも外観性状の変化を抑制できており、優れた製剤安定性が認められた(実施例1~3)。特に、ヘパリン類似物質、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム、及び0.5重量%以上のセラミド2を含む外用組成物では、非密封条件での保管後でも外観性状の変化を顕著に抑制できており、顕著に優れた製剤安定性が認められた(実施例2及び3)
【0048】
【表1】
【0049】
表2及び3に示す組成の外用組成物(クリーム状の水中油型乳化製剤)を前記試験例と同様の方法で調製した。得られた各外用組成物について、前記試験例と同様の方法で製剤安定性を評価したところ、いずれについても、非密封条件での保管後でも外観性状の変化を抑制できており、優れた製剤安定性が認められた。
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】