(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097440
(43)【公開日】2025-07-01
(54)【発明の名称】ヘッドユニット及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20250624BHJP
【FI】
B41J2/165 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213643
(22)【出願日】2023-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(72)【発明者】
【氏名】西川 漠
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA23
2C056FA13
2C056JA03
2C056JA05
2C056JA10
2C056JA17
2C056JA21
(57)【要約】
【課題】キャップ機構を備えたコンパクトな構成のヘッドユニット及びインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】ヘッドユニットは、複数のノズルが配置されたノズル面を有し、かつ、第1位置と第2位置との間を移動可能な記録ヘッドと、記録ヘッドに備えられ、ノズル面を覆う第3位置とノズル面を開放する第4位置との間を移動可能なキャップと、記録ヘッドが第1位置から第2位置に移動する動作によって、キャップを第3位置から第4位置に移動させ、かつ、記録ヘッドが第2位置から第1位置に移動する動作によって、キャップを第4位置から第3位置に移動させる連動機構と、を備える。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが配置されたノズル面を有し、かつ、第1位置と第2位置との間を移動可能な記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに備えられ、前記ノズル面を覆う第3位置と前記ノズル面を開放する第4位置との間を移動可能なキャップと、
前記記録ヘッドが前記第1位置から前記第2位置に移動する動作によって、前記キャップを前記第3位置から前記第4位置に移動させ、かつ、前記記録ヘッドが前記第2位置から前記第1位置に移動する動作によって、前記キャップを前記第4位置から前記第3位置に移動させる連動機構と、
を備えたヘッドユニット。
【請求項2】
前記記録ヘッドは、直線運動により前記第1位置と前記第2位置との間を移動し、
前記キャップは、円弧運動により前記第3位置と前記第4位置との間を移動し、
前記連動機構は、前記記録ヘッドの直線運動を前記キャップの円弧運動に変換する、
請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項3】
前記連動機構は、
前記キャップを前記第4位置に向けて付勢する付勢部材と、
前記第2位置から前記第1位置に移動する前記記録ヘッドに対し定位置で前記キャップに係合し、前記付勢部材の付勢力に抗して前記キャップを前記第4位置から前記第3位置に向けて移動させる係合部材と、
を備える、
請求項2に記載のヘッドユニット。
【請求項4】
前記連動機構は、
前記キャップを前記第3位置に向けて付勢する付勢部材と、
前記第1位置から前記第2位置に移動する前記記録ヘッドに対し定位置で前記キャップに係合し、前記付勢部材の付勢力に抗して前記キャップを前記第3位置から前記第4位置に向けて移動させる係合部材と、
を備える、
請求項2に記載のヘッドユニット。
【請求項5】
前記連動機構は、ラック及びピニオンを含むギアの組み合わせで構成される、
請求項2に記載のヘッドユニット。
【請求項6】
前記連動機構は、直線運動を円弧運動に変換するカム機構又はリンク機構で構成される、
請求項2に記載のヘッドユニット。
【請求項7】
前記キャップは、開口した中空形状を有し、前記第3位置において、開口部が前記ノズル面に対向して配置される、
請求項1から6のいずれか1項に記載のヘッドユニット。
【請求項8】
前記記録ヘッド又は前記キャップに備えられ、前記第3位置に位置した前記キャップと前記記録ヘッドとの間で前記開口部の周囲を封止する封止部材を更に備えた、
請求項7に記載のヘッドユニット。
【請求項9】
前記第3位置に位置した前記キャップをロックするロック機構を更に備えた、
請求項8に記載のヘッドユニット。
【請求項10】
前記ロック機構が、プッシュラッチ機構で構成される、
請求項9に記載のヘッドユニット。
【請求項11】
前記キャップは、内部に吸液体を有する、
請求項7に記載のヘッドユニット。
【請求項12】
前記キャップは、傾斜した場合に内部に貯留された液体が前記開口部から流出するのを堰き止める堰部を有する、
請求項7に記載のヘッドユニット。
【請求項13】
前記キャップは、前記堰部によって内部が深さ方向に二分割され、
前記堰部を挟んで底部側の空間に保湿用の液体が貯留され、
前記堰部を挟んで前記開口部側の空間で前記ノズルから吐出又は排出された液体が回収される、
請求項12に記載のヘッドユニット。
【請求項14】
前記キャップは、前記ノズルの配列方向と平行な軸を中心とする円弧運動により前記第3位置と前記第4位置との間を移動し、
前記軸と直交する断面において、前記軸から最も近い前記キャップの部位が、前記キャップの縁部である、
請求項1から6のいずれか1項に記載のヘッドユニット。
【請求項15】
前記第1位置と前記第2位置との間で前記記録ヘッドを移動させる駆動部を更に備えた、
請求項1から6のいずれか1項に記載のヘッドユニット。
【請求項16】
メディアを搬送する搬送部と、
前記搬送部で搬送される前記メディアに向けて前記ノズルからインクを吐出し、前記メディアに画像を記録する請求項1から6のいずれか1項に記載のヘッドユニットと、
を備えたインクジェット記録装置。
【請求項17】
前記ヘッドユニットは、シングルパスで前記メディアに画像を記録する、
請求項16に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドユニット及びインクジェット記録装置に係り、特にキャップ機構を備えたヘッドユニット及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置において、画質欠陥を引き起こす代表的な記録ヘッドの不具合現象は、不吐出及び吐出状態の変化(吐出方向不良、吐出量変化及び吐出速度変化等)である。特定のノズルで不吐出又は吐出状態の変化が起きると、記録される画像にスジが現れる。
【0003】
記録ヘッドに不具合を引き起こす主な要因は、ノズル面への異物の付着、インクの固化、増粘等である。これらを抑止する手段の一つとして、キャップ機構が知られている。キャップ機構は、不使用時にキャップでノズル面を覆うことで、ノズルからの溶媒蒸発、及び、ノズル面への異物付着等を抑制する。
【0004】
一般に、キャップ機構は、画像の記録動作を行う位置とは別のメンテナンス領域に設けられる。したがって、キャップする際は、記録ヘッドをメンテナンス領域に移動させる必要がある。
【0005】
特許文献1、2には、記録ヘッドにキャップ機構を設けることで、メンテナンス位置への移動を不要とする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-305972号公報
【特許文献2】特開2011-212949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術は、キャップの開閉に動力を要し、記録ヘッドが大型化するという欠点がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、キャップ機構を備えたコンパクトな構成のヘッドユニット及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)複数のノズルが配置されたノズル面を有し、かつ、第1位置と第2位置との間を移動可能な記録ヘッドと、記録ヘッドに備えられ、ノズル面を覆う第3位置とノズル面を開放する第4位置との間を移動可能なキャップと、記録ヘッドが第1位置から第2位置に移動する動作によって、キャップを第3位置から第4位置に移動させ、かつ、記録ヘッドが第2位置から第1位置に移動する動作によって、キャップを第4位置から第3位置に移動させる連動機構と、を備えたヘッドユニット。
【0010】
(2)記録ヘッドは、直線運動により第1位置と第2位置との間を移動し、キャップは、円弧運動により第3位置と第4位置との間を移動し、連動機構は、記録ヘッドの直線運動をキャップの円弧運動に変換する、(1)に記載のヘッドユニット。
【0011】
(3)連動機構は、キャップを第4位置に向けて付勢する付勢部材と、第2位置から第1位置に移動する記録ヘッドに対し定位置でキャップに係合し、付勢部材の付勢力に抗してキャップを第4位置から第3位置に向けて移動させる係合部材と、を備える、(2)に記載のヘッドユニット。
【0012】
(4)連動機構は、キャップを第3位置に向けて付勢する付勢部材と、第1位置から第2位置に移動する記録ヘッドに対し定位置でキャップに係合し、付勢部材の付勢力に抗してキャップを第3位置から第4位置に向けて移動させる係合部材と、を備える、(2)に記載のヘッドユニット。
【0013】
(5)連動機構は、ラック及びピニオンを含むギアの組み合わせで構成される、(2)に記載のヘッドユニット。
【0014】
(6)連動機構は、直線運動を円弧運動に変換するカム機構又はリンク機構で構成される、(2)に記載のヘッドユニット。
【0015】
(7)キャップは、開口した中空形状を有し、第3位置において、開口部がノズル面に対向して配置される、(1)から(6)のいずれか1つに記載のヘッドユニット。
【0016】
(8)記録ヘッド又はキャップに備えられ、第3位置に位置したキャップと記録ヘッドとの間で開口部の周囲を封止する封止部材を更に備えた、(7)に記載のヘッドユニット。
【0017】
(9)第3位置に位置したキャップをロックするロック機構を更に備えた、(8)に記載のヘッドユニット。
【0018】
(10)ロック機構が、プッシュラッチ機構で構成される、(9)に記載のヘッドユニット。
【0019】
(11)キャップは、内部に吸液体を有する、(7)から(10)のいずれか1つに記載のヘッドユニット。
【0020】
(12)キャップは、傾斜した場合に内部に貯留された液体が開口部から流出するのを堰き止める堰部を有する、(7)から(11)のいずれか1つに記載のヘッドユニット。
【0021】
(13)キャップは、堰部によって内部が深さ方向に二分割され、堰部を挟んで底部側の空間に保湿用の液体が貯留され、堰部を挟んで開口部側の空間でノズルから吐出又は排出された液体が回収される、(12)に記載のヘッドユニット。
【0022】
(14)キャップは、ノズルの配列方向と平行な軸を中心とする円弧運動により第3位置と第4位置との間を移動し、軸と直交する断面において、軸から最も近いキャップの部位が、キャップの縁部である、(1)から(13)のいずれか1つに記載のヘッドユニット。
【0023】
(15)第1位置と第2位置との間で記録ヘッドを移動させる駆動部を更に備えた、(1)から(14)のいずれか1つに記載のヘッドユニット。
【0024】
(16)メディアを搬送する搬送部と、搬送部で搬送されるメディアに向けてノズルからインクを吐出し、メディアに画像を記録する(1)から(15)のいずれか1つに記載のヘッドユニットと、を備えたインクジェット記録装置。
【0025】
(17)ヘッドユニットは、シングルパスでメディアに画像を記録する、(16)に記載のインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、キャップ機構を備えたコンパクトな構成のヘッドユニット及びインクジェット記録装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】インクジェット印刷機の概略構成を示す側面図
【
図2】インクジェット印刷機の概略構成を示す平面図
【
図10】プリントヘッドの昇降によるキャップの状態の変化を示す図
【
図12】プリントヘッドの昇降によるキャップの状態の変化を示す図
【
図14】プリントヘッドの昇降によるキャップの状態の変化を示す図
【
図16】プリントヘッドの昇降によるキャップの状態の変化を示す図
【
図18】プリントヘッドの昇降によるキャップの状態の変化を示す図
【
図21】キャップの揺動による保湿液の状態の変化を示す図
【
図23】プリントヘッドユニットの要部の構成を示す図
【
図24】プリントヘッドユニットの要部の構成を示す図
【
図25】プリントヘッドユニットの第3の実施の形態の要部の構成を示す図
【
図26】プッシュラッチ機構を利用したキャップのロック及びアンロックの動作の説明図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。
【0029】
[第1の実施の形態]
ここでは、枚葉紙に所望の画像をシングルパス(1pass)で印刷するインクジェット印刷機に本発明を適用した場合を例に説明する。インクジェット印刷機は、インクジェット記録装置の一例である。
【0030】
[インクジェット印刷機]
図1は、インクジェット印刷機の概略構成を示す側面図である。
図2は、インクジェット印刷機の概略構成を示す平面図である。
【0031】
図1及び
図2に示すように、本実施の形態のインクジェット印刷機1は、用紙Pを搬送する用紙搬送部10、用紙Pに画像を印刷する印刷部20、及び、用紙Pに印刷された画像を読み取る画像読取部30等を備える。用紙Pは、枚葉紙で構成される。用紙Pは、メディアの一例である。
【0032】
[用紙搬送部]
用紙搬送部10は、規定の経路に沿って用紙Pを搬送する。一例として、本実施の形態では、用紙Pをベルト搬送する。すなわち、走行するベルト11の表面に用紙Pを吸着させて搬送する。
【0033】
ベルト11は、無端状ベルトで構成される。ベルト11は、駆動ローラー12Aを含む複数のローラー12に巻き掛けられて、走行経路が設定される。駆動ローラー12Aには、駆動源として、ベルト駆動モーター13が接続される。ベルト駆動モーター13によって駆動ローラー12Aを回転させることにより、ベルト11が経路に沿って走行する。本実施の形態では、ベルト11が水平に走行する区間を利用して、用紙Pを搬送する。したがって、用紙Pは水平に搬送される(
図1において、紙面の右側から左側に向けて水平に搬送される。)。
【0034】
用紙Pは、ベルト11の表面に吸着されて搬送される。用紙Pをベルト11に吸着させる方式は、特に限定されない。一例として、本実施の形態では、空気圧(負圧)を利用して、用紙Pをベルト11に吸着させる。この場合、ベルト11の内側に吸引ユニット15が備えられ、かつ、ベルト11に吸引穴が備えられる。吸引ユニット15によって、ベルト11の内側からの吸引することにより、吸引穴を介して用紙Pがベルト11の表面に吸着される。用紙Pの吸着には、この他、静電気を利用する方式(いわゆる静電吸着)等を採用することもできる。
【0035】
なお、用紙Pは、図示しない給紙部から用紙搬送部10に供給される。用紙Pは、必要に応じて前処理が施される。たとえば、表面に所定の処理液が塗布される。前処理を行う場合、印刷部20の前段に前処理部が設けられる。
【0036】
印刷後の用紙Pは、図示しない排紙部に排紙される。印刷後の用紙Pは、必要に応じて排紙前に後処理が施される。たとえば、ニス等のコーティング処理、乾燥処理等が行われる。後処理を行う場合、画像読取部30の後段に後処理部が設けられる。
【0037】
[印刷部]
印刷部20は、用紙搬送部10によって搬送される用紙Pにシングルパスでカラー画像を印刷する。一例として、本実施の形態では、シアン(Cyan:C)、マゼンタ(Magenta:M)、イエロー(Yellow:Y)、及び、ブラック(black:Bk)の4色のインクを用いて、用紙Pにカラー画像を印刷する。
【0038】
印刷部20は、使用するインクの色数と同じ数のプリントヘッドユニットを備える。本実施の形態では、4色のインクを使用するため、4つのプリントヘッドユニットを備える。具合的には、シアン(C)のプリントヘッドユニット100C、マゼンタ(M)のプリントヘッドユニット100M、イエロー(Y)のプリントヘッドユニット100Y、及び、ブラック(Bk)のプリントヘッドユニット100Bkを備える。
【0039】
各プリントヘッドユニット100C、100M、100Y、100Bkは、それぞれプリントヘッド200C、200M、200Y、200Bkを有し、対応する色のインク滴をプリントヘッド200C、200M、200Y、200Bkから吐出する。具体的には、シアンのプリントヘッドユニット100Cは、シアンのインク滴をプリントヘッド200Cから吐出する。マゼンタのプリントヘッドユニット100Mは、マゼンタのインク滴をプリントヘッド200Mから吐出する。イエローのプリントヘッドユニット100Yは、イエローのインク滴をプリントヘッド200Yから吐出する。ブラックのプリントヘッドユニット100Bkは、ブラックのインク滴をプリントヘッド200Bkから吐出する。プリントヘッドユニットの構成については、後述する。
【0040】
各プリントヘッドユニット100C、100M、100Y、100Bkは、用紙Pの搬送経路上に一定の間隔をもって配置される。本実施の形態では、水平に搬送される用紙Pに対し、水平方向に一定の間隔をもって配置される。各プリントヘッドユニット100C、100M、100Y、100Bkは、図示しないフレーム(インクジェット印刷機1のフレーム)に組み付けられて、所定位置に設置される。
【0041】
用紙Pは、各プリントヘッドユニット100C、100M、100Y、100Bkを通過する過程で、各色のインク滴が表面に付与され、表面にカラー画像が印刷される。
【0042】
[画像読取部]
画像読取部30は、用紙Pに印刷された画像を読み取る。画像読取部30には、画像読取装置31が備えられる。画像読取装置31は、ラインスキャナーで構成され、用紙搬送部10によって水平に搬送される用紙Pから画像を読み取る。
【0043】
[プリントヘッドユニット]
上記のように、本実施の形態のインクジェット印刷機1の印刷部20には、4つのプリントヘッドユニット100C、100M、100Y、100Bkが備えられる。各プリントヘッドユニット100C、100M、100Y、100Bkは、プリントヘッド200C、200M、200Y、200Bkから吐出するインクの種類(色)が異なるだけで、構成は同じである。ここでは、共通のプリントヘッドユニット100として、その構成について説明する。本実施の形態において、プリントヘッドユニット100は、ヘッドユニットの一例である。
【0044】
図3は、プリントヘッドユニットの正面図である。
図4は、プリントヘッドユニットに側面図である。
【0045】
図3及び
図4に示すように、プリントヘッドユニット100は、ベースフレーム110、プリントヘッド200、プリントヘッド昇降機構300、キャップ400、及び、キャップ開閉機構500等を備える。キャップ400及びキャップ開閉機構500によって、プリントヘッド200のキャップ機構が構成される。
【0046】
[ベースフレーム]
ベースフレーム110は、プリントヘッドユニット100のベースとなるフレームである。プリントヘッド200、プリントヘッド昇降機構300、キャップ400、及び、キャップ開閉機構500等は、ベースフレーム110に組み付けられて一体化される。
【0047】
ベースフレーム110は、天面部110T、及び、天面部110Tの両端から垂直に延びる側壁部110L、110Rを有し、
図3に示すように、正面視において、逆U字状ないし門型の形状を有する。
【0048】
[プリントヘッド]
プリントヘッド200は、いわゆるラインヘッドであり、所望の画像をシングルパスで印刷可能な構成を有する。したがって、用紙幅をカバーする印刷幅(印字幅)を有する。一例として、本実施の形態のプリントヘッド200は、全体として扁平な直方体形状を有し、先端部分(
図3及び
図4において下端部分)にノズル面(ヘッドフェイス面)210を有する。ノズル面210は、ノズルが配置される面である。
【0049】
図5は、ノズル面の概略構成を示す図である。また、
図6は、ノズル面の一部を拡大した図である。
図5及び
図6は、プリントヘッド200が、複数のヘッドモジュール201を繋ぎ合わせて構成される場合の例を示している。なお、この種の構成は、公知であるので、詳細については省略する。
【0050】
図5及び
図6において、Y方向は、用紙Pの搬送方向であり、X方向は、用紙Pの搬送方向と直交する方向(用紙Pの幅方向)である。用紙Pの搬送方向をプリントヘッド200の前後方向とし、搬送方向の上流側を前側(正面側)、下流側を後側(背面側)とする。
【0051】
図5に示すように、本実施の形態のプリントヘッド200は、矩形状のノズル面210を有する。ノズル面210は、平坦な面(ほぼ平坦と認められる範囲を含む)で構成される。ノズル面210には、中央部分に帯状のノズル領域211が備えられる。ノズル領域211は、複数のノズル212が配置される領域である。本実施の形態では、用紙Pの幅方向(X方向)に沿って一定の幅(ほぼ一定と認められる範囲を含む)で設定される。
【0052】
ノズル212は、所望の解像度を実現するようにノズル領域211に複数配置される。一例として、本実施の形態では、
図6に示すように、ノズル212がマトリックス状に配置されて、所望の解像度(たとえば、1200dpi)が実現される。
【0053】
図5及び
図6において、X方向(ノズル面210の長手方向)が、実質的なノズル212の配列方向とされる。ベースフレーム110に組み付けられたプリントヘッド200は、先端のノズル面210が、用紙搬送部10によって搬送される用紙Pに対向して配置される。また、ノズル212の配列方向が、用紙Pの搬送方向と直交して配置される。上記のように、本実施の形態では、用紙Pが水平に搬送されるので、プリントヘッド200は、ノズル面210が水平に配置される。本実施の形態において、プリントヘッド200は、記録ヘッドの一例である。
【0054】
[プリントヘッド昇降機構]
プリントヘッド昇降機構300は、用紙搬送部10によって搬送される用紙Pに対し、プリントヘッド200を進退移動させる。本実施の形態では、用紙Pが水平に搬送されるので、プリントヘッド昇降機構300は、プリントヘッド200を昇降(上下動)させる機構として構成される。
【0055】
プリントヘッド昇降機構300は、プリントヘッド200をベースフレーム110に対し移動可能に支持する支持部310、及び、プリントヘッド200を昇降させる駆動部320を備える。
【0056】
支持部310は、ガイドレール311L、311R及びスライダー312L、312Rを介して、プリントヘッド200をベースフレーム110に対しスライド可能に支持する。
図3に示すように、ベースフレーム110には、側壁部110L、110Rにガイドレール311L、311Rが備えられる。ガイドレール311L、311Rは、上下方向(Z方向)に沿って配置される。一方、プリントヘッド200には、ガイドレール311L、311Rに沿って摺動するスライダー312L、312Rが備えられる。プリントヘッド200は、スライダー312L、312Rをガイドレール311L、311Lに係合させて、ベースフレーム110に組み付けられる。これにより、プリントヘッド200が、ベースフレーム110に対しスライド可能に支持される。
【0057】
駆動部320は、いわゆる送りねじ機構によって、プリントヘッド200を昇降させる。
図3及び
図4に示すように、ベースフレーム110の一方の側壁部110Lには、上下方向(Z方向)に沿ってねじ軸321が配置される。ねじ軸321は、ベースフレーム110の側壁部110Lに取り付けられたブラケット322、323に軸受324を介して回転可能に支持される。ねじ軸321には、昇降駆動モーター325が接続される。昇降駆動モーター325は、一方のブラケット322に設けられ、ねじ軸321を回転駆動する。ねじ軸321には、ナット326が備えられる。ナット326は、連結バー327を介して、プリントヘッド200に連結される。これにより、昇降駆動モーター325を介してねじ軸321を回転させると、ナット326が、ねじ軸321に沿って上下方向に移動する。そして、ナット326が上下方向に移動することにより、ナット326に連結されたプリントヘッド200が、ナット326と共に上下方向に移動する。
【0058】
[キャップ]
キャップ400は、不使用時にプリントヘッド200のノズル面210を覆うことで、ノズル212からの溶媒蒸発、及び、ノズル面への異物付着等を抑止する。
【0059】
図3及び
図4に示すように、キャップ400は、ノズル面210を覆う面が開口した中空形状を有する。キャップ400を中空形状とすることにより、キャップ400がノズル212に直接接触するのを抑止できる。また、キャップ400内に液体(インクを含む)を保持できる。本実施の形態では、キャップ400が、矩形の平板形状を有し、ノズル面210を覆う面に矩形の凹部410が備えられる。凹部410は、長手方向(用紙Pの搬送方向と直交する方向)の幅が、ノズル面210の長手方向の幅よりも若干広い幅を有する。また、長手方向と直交する方向(用紙Pの搬送方向)の幅が、ノズル面210の長手方向と直交する方向の幅と同じないし若干広い幅を有する。
【0060】
図3及び
図4に示すように、キャップ400は、プリントヘッド200の直下に位置して、プリントヘッド200のノズル面210を覆う。この際、キャップ400は、ノズル面210を覆う面(
図3及び
図4において上面)が、ノズル面210と平行(ほぼ平行と認められる範囲を含む)になる。
【0061】
[キャップ開閉機構]
キャップ開閉機構500は、開位置と閉位置との間でキャップ400を移動させて、キャップ400を開閉させる。開位置は、ノズル面210を開放する位置であり、閉位置は、ノズル面210を覆う位置である。キャップ400は、プリントヘッド200に設けられた軸(ロッド)を中心として、揺動(円弧運動)することにより、開位置と閉位置との間を移動する。本実施の形態において、閉位置は第3位置の一例であり、開位置は第4位置の一例である。また、軸(ロッド)を中心とする揺動は、円弧運動の一例である。
【0062】
キャップ開閉機構500は、プリントヘッド200の昇降を利用して、キャップ400を開閉させる。したがって、キャップ400は、プリントヘッド200の昇降に連動して開閉する。本実施の形態において、キャップ開閉機構500は、連動機構の一例である。
【0063】
図7は、キャップ開閉機構の構成を示す側面図である。
図8は、キャップ開閉機構の構成を示す正面図である。
【0064】
図7及び
図8に示すように、プリントヘッド200には、両側面に丸棒状のロッド510が備えられる。ロッド510は、ノズル面210と平行(ほぼ平行と認められる範囲を含む)に配置され、かつ、ノズル212の配列方向(ノズル面210の長手方向)に沿って配置される。ロッド510は、キャップ400を支持する軸として機能する。
【0065】
キャップ400は、長手方向の両端部にアーム部420が備えられる。アーム部420は、先端部分(
図7及び
図8において上端部分)に装着穴421が備えられる。装着穴421は、ロッド510が嵌入可能な穴で構成される。
【0066】
キャップ400は、装着穴421にロッド510を嵌入させることにより、プリントヘッド200に装着される。プリントヘッド200に装着されたキャップ400は、ロッド510を軸(揺動軸)として、揺動可能に支持される。
【0067】
キャップ400は、ロッド510に装着されたバネ511によって、開方向(閉位置から開位置に向かって揺動する方向)に付勢される。バネ511は、たとえば、トーションバネ(捩じりコイルバネ)で構成される。バネ511は、一端がプリントヘッド200に設けられたバネ掛け部512に掛けられ、他端がアーム部420に備えられたバネ掛け部513に掛けられて、キャップ400を開方向に付勢する。本実施の形態において、バネ511は、付勢部材の一例である。
【0068】
キャップ400には、長手方向の両端部にレバー430が備えられる。レバー430は、基端部に円筒状の軸部431を有し、軸部431が、アーム部420の先端に固定されて、アーム部420に一体化される。円筒状の軸部431は、ロッド510を嵌入可能な内径を有し、アーム部420の装着穴421と同軸上に配置される。キャップ400は、プリントヘッド200への装着に際して、レバー430の軸部431にもロッド510が嵌入される。よって、レバー430は、ロッド510を軸として揺動する。レバー430が揺動することにより、レバー430と一体化されたキャップ400のアーム部420もロッド510を軸として揺動する。したがって、キャップ400も揺動する。
【0069】
プリントヘッド200には、両側面にストッパーピン520が備えられる。ストッパーピン520は、ロッド510と平行に配置される。バネ511によって開方向に付勢されたキャップ400は、レバー430がストッパーピン520に当接することにより、所定の位置で保持される。本実施の形態では、開位置において、レバー430がストッパーピン520に当接する。
【0070】
ベースフレーム110には、キャップ400のレバー430に対応して、両側の側壁部110L、110Rに接触子530が備えられる。接触子530は、ブラケット531を介して、ベースフレーム110の所定の位置に取り付けられる。本実施の形態では、接触子530がローラーで構成される。接触子530は、ロッド510と平行な軸周りに回転自在に保持される。
【0071】
接触子530は、プリントヘッド200に装着されたキャップ400のレバー430に当接(係合)する。バネ511で付勢されたキャップ400は、レバー430が接触子530に当接することにより、所定の姿勢で保持される。
【0072】
接触子530は、ベースフレーム110の定位置に保持される。このため、プリントヘッド200をベースフレーム110に対しスライド(昇降)させると、レバー430が、接触子530に押されて揺動する。この結果、キャップ400が、ロッド510を軸にして揺動(円弧運動)し、開位置と閉位置との間を移動する。本実施の形態において、接触530は、係合部材の一例である。
【0073】
[キャップの開閉動作]
上記のように、本実施の形態のキャップ400は、プリントヘッド200の昇降に連動して開閉する。
【0074】
図9は、プリントヘッドの昇降動作を説明する図である。
【0075】
プリントヘッド200は、先端のノズル面210が、用紙搬送部10によって搬送される用紙Pに対向して配置される。本実施の形態では、用紙Pが水平に搬送されることから、ノズル面210が、用紙Pに対向して水平に配置される。
【0076】
プリントヘッド200は、プリントヘッド昇降機構300に駆動されて昇降する。本実施の形態では、水平に搬送される用紙Pに対し、プリントヘッド200が垂直に昇降する。プリントヘッド200は、上昇することで、用紙Pから離間し、下降することで、用紙Pに接近する。
【0077】
図9(A)は、待機時(不使用時)のプリントヘッド200の位置を示している。
図9(A)に示すように、待機時、プリントヘッド200は、ノズル面210がベルト11から大きく離間した位置に位置する。待機時におけるプリントヘッド200の位置を「待機位置」とする。
【0078】
図9(B)は、印刷時のプリントヘッド200の位置を示している。
図9(B)に示すように、印刷時、プリントヘッド200は、ノズル面210がベルト11に近接する。印刷時におけるプリントヘッド200の位置を「印刷位置」とする。印刷位置において、プリントヘッド200は、ノズル面210が用紙Pから所定高さの位置に位置する。
【0079】
キャップ400は、プリントヘッド200の昇降に連動して揺動し、自動的に開閉される。具体的には、プリントヘッド200が「待機位置」に移動すると、「閉位置」に移動し、「印刷位置」に移動すると、「開位置」に移動する。
【0080】
本実施の形態において、プリントヘッド200の待機位置は、第1位置の一例であり、印刷位置は、第2位置の一例である。
【0081】
[開動作]
図10は、プリントヘッドの昇降によるキャップの状態の変化を示す図である。
【0082】
図10(A)は、プリントヘッド200が、待機位置に位置した状態を示している。
図10(C)は、プリントヘッド200が、印刷位置に位置した状態を示している。
図10(B)は、プリントヘッド200が待機位置と印刷位置との間に位置した状態を示している。
【0083】
図10(A)に示すように、プリントヘッド200が、待機位置に位置すると、キャップ400は、閉位置に位置する。閉位置において、キャップ400は、プリントヘッド200の直下に位置し、凹部410の開口を有する面(開口面)が、ノズル面210に対向して配置される。これにより、ノズル面210がキャップ400で覆われる。すなわち、ノズル面210がキャッピングされる。
【0084】
閉位置に位置したキャップ400に対し、ノズル面210は、凹部410の開口部の内側にノズル領域211が配置される。これにより、たとえば、予備吐出又はパージした際に、ノズル212から吐出又は排出されるインクを凹部410で回収できる。
【0085】
キャップ400は、両端のレバー430が、ベースフレーム110に備えられた接触子530に当接することで、閉位置に保持される。すなわち、開方向に付勢されるキャップ400に対し、接触子530がストッパーとして機能することで、閉位置に保持される。
【0086】
図10(B)に示すように、プリントヘッド200が、待機位置から印刷位置に向けて下降すると、これに連動して、キャップ400が、閉位置から開位置に向かって移動(揺動)する。この際、キャップ400は、バネ511の付勢力によって、閉位置から開位置に向かって移動する。
【0087】
図10(C)に示すように、プリントヘッド200が、更に下降し、印刷位置に位置すると、キャップ400は、開位置まで移動する。開位置において、キャップ400は、プリントヘッド200の下部から完全に退避し、正面側に位置する。本実施の形態では、閉位置から90度回転して開位置に位置する。したがって、キャップ400は、開口面がノズル面210に対し、垂直な姿勢で保持される。
【0088】
キャップ400が、開位置に位置して、プリントヘッド200の下部から退避することにより、ノズル面210が開放される。これにより、用紙Pに向けてインク滴の吐出が可能になる。
【0089】
キャップ400は、両端のレバー430が接触子530に当接することで、開位置に保持される。すなわち、開方向に付勢されるキャップ400に対し、接触子530がストッパーとして機能することで、開位置に保持される。
【0090】
なお、本実施の形態では、プリントヘッド200が、印刷位置に位置すると、レバー430がストッパーピン520に当接する。よって、ストッパーピン520によってもキャップ400の移動が阻止される。レバー430がストッパーピン520に当接することにより、プリントヘッド200が印刷位置から更に下方に移動した場合であっても、キャップ400が開位置に保持される。
【0091】
[閉動作]
プリントヘッド200が、印刷位置から待機位置に向けて上昇すると、キャップ400のレバー430が、バネ511の付勢力に抗して、接触子530に押される。この結果、キャップ400が、閉方向(開位置から閉位置に向かう方向)に揺動する。
【0092】
図10(A)に示すように、プリントヘッド200が、待機位置に移動すると、キャップ400が、閉位置に位置する。これにより、ノズル面210がキャップ400で覆われる。キャップ400は、レバー430が、接触子530に当接していることで、閉位置に保持される。
【0093】
このように、本実施の形態のキャップ機構によれば、プリントヘッド200の昇降動作(進退動作)に連動して、キャップ400が自動で開閉される。これにより、待機位置で確実にノズル面210をキャッピングできる。また、印刷位置で確実にノズル面210を開放できる。
【0094】
また、本実施の形態によれば、キャップ400の開閉に別途動力を必要としないので、キャップ機構の構成を簡素化できる。また、これにより、キャップ機構を含む印刷機全体をコンパクト化できる。
【0095】
[変形例]
[キャップ開閉機構の変形例]
(1)キャップ開閉機構の第1変形例
図11は、キャップ開閉機構の第1変形例を示す図である。
【0096】
本例のキャップ開閉機構500は、キャップ400が、開方向に付勢される場合の例を示している。この場合、キャップ400は、バネ(図示せず)によって、開位置から閉位置に向かう方向(
図11において時計回りの方向)に付勢される。
【0097】
図12は、プリントヘッドの昇降によるキャップの状態の変化を示す図である。
【0098】
図12(A)は、プリントヘッド200が、待機位置に位置した状態を示している。
図12(C)は、プリントヘッド200が、印刷位置に位置した状態を示している。
図12(B)は、プリントヘッド200が待機位置と印刷位置との間に位置した状態を示している。
【0099】
閉方向に付勢されたキャップ400は、レバー430が、接触子530に当接することで、プリントヘッド200に対し所定位置に保持される。接触子530がストッパーとして機能することで、所定位置に保持される。
【0100】
図12(A)に示すように、プリントヘッド200が、待機位置に位置すると、キャップ400は、閉位置に位置する。閉位置において、キャップ400は、プリントヘッド200の直下に位置し、開口面が、ノズル面210に対向して配置される。これにより、ノズル面210がキャップ400で覆われる。
【0101】
図12(B)に示すように、プリントヘッド200が、待機位置から印刷位置に向けて下降すると、接触子530の作用によって、キャップ400のレバー430が、バネの付勢力に抗して、開方向に引き上げられる。この結果、キャップ400が、開方向に揺動する。
【0102】
図12(C)に示すように、プリントヘッド200が、印刷位置に位置すると、キャップ400は、開位置まで揺動する。開位置において、キャップ400は、プリントヘッド200の下部から完全に退避する。これにより、ノズル面210が開放され、用紙Pに向けてノズル212からインク滴の吐出が可能になる。
【0103】
プリントヘッド200が、印刷位置から待機位置に向けて上昇すると、バネの付勢力でキャップ400が、閉方向に向けて揺動する。プリントヘッド200が、待機位置に移動すると、キャップ400が、閉位置に位置して、ノズル面210がキャップ400で覆われる。
【0104】
このように、本例のキャップ開閉機構500によっても、プリントヘッド200の昇降動作に連動して、キャップ400を自動で開閉できる。
【0105】
なお、本例では、閉位置において、ストッパーピン520が、キャップ400のアーム部420に当接する構成とされている。よって、プリントヘッド200が、待機位置に移動すると、ストッパーピン520によって、キャップ400が閉位置に保持される。この場合、プリントヘッド200が更に上昇しても、キャップ400は閉位置に保持される。
【0106】
(2)キャップ開閉機構の第2変形例
図13は、キャップ開閉機構の第2変形例を示す図である。
【0107】
本例のキャップ開閉機構500は、ギアを利用して、キャップ400を開閉される。具体的には、ラック及びピニオンを利用して、昇降によるプリントヘッド200の直線運動をキャップ400の回転運動(揺動)に変換し、キャップ400を開閉させる。
【0108】
キャップ400には、ピニオン540が備えられる。ピニオン540は、両側のアーム部420の先端(
図13において上端)に備えられ、かつ、装着穴421と同軸上に配置される。また、ピニオン540は、アーム部420に固定して取り付けられる。したがって、ピニオン540を軸周りに回転させると、アーム部420もピニオン540と一体となって回転する。
【0109】
プリントヘッド200に装着されたキャップ400は、ピニオン540がロッド510と同軸上に配置される。したがって、ピニオン540を回転させると、アーム部420が、ロッド510を軸に回転する。この結果、キャップ400が、ロッド510を軸にして揺動する。すなわち、ピニオン540を回転させると、キャップ400が揺動する。
【0110】
ベースフレーム110には、ピニオン540に噛み合うラック541が備えられる。ラック541は、ブラケット542を介して、ベースフレーム110の側壁部110L、110Rに取り付けられる。ラック541は、プリントヘッド200の移動方向に沿って配置される。本実施の形態では、プリントヘッド200が、水平面に対し垂直に上下動(昇降)する。したがって、ラック541は、上下方向(
図13においてZ方向)に沿って配置される。
【0111】
ベースフレーム110に対しプリントヘッド200が昇降すると、ピニオン540に対しラック541が直線的に往復動する。この結果、ピニオン540が回転し、キャップ400が揺動する。また、プリントヘッド200が静止すると、ラック541に噛み合うピニオン540の作用によって、キャップ400の姿勢が保持される。
【0112】
図14は、プリントヘッドの昇降によるキャップの状態の変化を示す図である。
【0113】
図14(A)は、プリントヘッド200が、待機位置に位置した状態を示している。
図14(C)は、プリントヘッド200が、印刷位置に位置した状態を示している。
図14(B)は、プリントヘッド200が待機位置と印刷位置との間に位置した状態を示している。
【0114】
図14(A)に示すように、プリントヘッド200が、待機位置に位置すると、キャップ400は、閉位置に位置する。閉位置において、キャップ400は、プリントヘッド200の直下に位置し、開口面が、ノズル面210に対向して配置される。これにより、ノズル面210がキャップ400で覆われる。
【0115】
図14(B)に示すように、プリントヘッド200が、待機位置から印刷位置に向けて下降すると、静止したラック541に対し、ピニオン540が下降する。この結果、ピニオン540が開方向(
図14において反時計回りの方向)に回転し、キャップ400が開方向に揺動する。
【0116】
更に下降して、
図14(C)に示すように、プリントヘッド200が、印刷位置に位置すると、キャップ400は、開位置まで揺動する。開位置において、キャップ400は、プリントヘッド200の下部から完全に退避する。これにより、ノズル面210が開放され、用紙Pに向けてインク滴の吐出が可能になる。
【0117】
プリントヘッド200が、印刷位置から待機位置に向けて上昇すると、静止したラック541に対し、ピニオン540が上昇する。この結果、
図14(B)に示すように、ピニオン540が閉方向(
図14において時計回りの方向)に回転し、キャップ400が、閉方向に揺動する。プリントヘッド200が、待機位置に移動すると、
図14(A)に示すように、キャップ400が、閉位置に位置して、ノズル面210がキャップ400で覆われる。
【0118】
このように、本例のキャップ開閉機構500によっても、プリントヘッド200の昇降動作に連動して、キャップ400を自動で開閉できる。
【0119】
なお、本例では、ラック541及びピニオン540によって、キャップ開閉機構500を構成しているが、更にギアを組み合わせて、キャップ開閉機構500を構成してもよい。また、本例において、付勢部材としてのバネは、原則として不要とされる。
【0120】
(3)キャップ開閉機構の第3変形例
図15は、キャップ開閉機構の第3変形例を示す図である。
【0121】
本例のキャップ開閉機構500は、いわゆるリンク機構を利用して、キャップ400を開閉される。
図15は、スライダーリンク機構を利用する例を示している。
【0122】
図15に示すように、ベースフレーム110の両側の側壁部110L、110Rには、第1ジョイント551を介して、第1リンク552の一端が連結される(
図15には、一方の側壁部110Lに連結される第1リンク552のみを図示)。第1リンク552の他端は、第2ジョイント553を介して、第2リンク554の一端に連結される。第2リンク554の他端は、ロッド510を介して、プリントヘッド200に連結される。
【0123】
プリントヘッド200は、スライダーリンク機構におけるスライダーとして機能する。プリントヘッド200が、ベースフレーム110に対しスライド(昇降)すると、第2リンク554が、ロッド510を軸にして揺動する。
【0124】
揺動する第2リンク554に対し、アーム部420が固定される。これにより、第2リンク554に連動して、アーム部420が揺動する。そして、アーム部420が揺動することにより、キャップ400が、ロッド510を軸にして揺動する。
【0125】
図16は、プリントヘッドの昇降によるキャップの状態の変化を示す図である。
【0126】
図16(A)は、プリントヘッド200が、待機位置に位置した状態を示している。
図16(C)は、プリントヘッド200が、印刷位置に位置した状態を示している。
図16(B)は、プリントヘッド200が待機位置と印刷位置との間に位置した状態を示している。
【0127】
図16(A)に示すように、プリントヘッド200が、待機位置に位置すると、キャップ400は、閉位置に位置する。閉位置において、キャップ400は、プリントヘッド200の直下に位置し、開口面が、ノズル面210に対向して配置される。これにより、ノズル面210がキャップ400で覆われる。
【0128】
図16(B)に示すように、プリントヘッド200が、待機位置から印刷位置に向けて下降すると、ロッド510を軸として、第2リンク554が開方向(
図16において反時計回りの方向)に揺動する。この結果、アーム部420を介して、第2リンク554に固定されたキャップ400が開方向に揺動する。
【0129】
更に下降して、
図16(C)に示すように、プリントヘッド200が、印刷位置に位置すると、キャップ400は、開位置まで揺動する。開位置において、キャップ400は、プリントヘッド200の下部から完全に退避する。これにより、ノズル面210が開放され、用紙Pに向けてインク滴の吐出が可能になる。
【0130】
プリントヘッド200が、印刷位置から待機位置に向けて上昇すると、ロッド510を軸として、第2リンク554が閉方向(
図16において時計回りの方向)に揺動する。この結果、
図16(B)に示すように、アーム部420を介して、第2リンク554に固定されたキャップ400が閉方向に揺動する。プリントヘッド200が、待機位置に移動すると、
図16(A)に示すように、キャップ400が、閉位置に位置して、ノズル面210がキャップ400で覆われる。
【0131】
このように、本例のキャップ開閉機構500によっても、プリントヘッド200の昇降動作に連動して、キャップ400を自動で開閉できる。
【0132】
(4)キャップ開閉機構の第4変形例
図17は、キャップ開閉機構の第4変形例を示す図である。
【0133】
本例のキャップ開閉機構500は、いわゆるカム機構を利用して、キャップ400を開閉される。
【0134】
図17に示すように、ベースフレーム110には、両側の側壁部110L、110Rに板カム561が備えられる(
図17には、一方の側壁部110Lの板カム561のみを図示)。板カム561は、ブラケット562を介して、ベースフレーム110の両側の側壁部110L、110Rに設けられる。
【0135】
キャップ400には、両側のアーム部420の先端にレバー563が備えられる。レバー563は、基端部に円筒状の軸部564を有し、軸部564が、アーム部420の先端に固定されて、アーム部420に一体化される。軸部564は、ロッド510を嵌入可能な内径を有し、アーム部420の装着穴421と同軸上に配置される。
【0136】
レバー563の先端には、板カム561に係合する接触子565が備えられる。接触子565は、ローラーで構成される。板カム561は、いわゆる直進カム(直動カム)で構成され、プリントヘッド200に対し、相対的に直線移動する。
【0137】
キャップ400は、図示しないバネによって、閉方向(
図17において時計回りの方向)に付勢される。これにより、接触子565が、板カム561に押圧当接される。
【0138】
プリントヘッド200が昇降することにより、接触子565及び板カム561の作用でレバー563が揺動する。これにより、キャップ400が開閉される。
【0139】
図18は、プリントヘッドの昇降によるキャップの状態の変化を示す図である。
【0140】
図18(A)は、プリントヘッド200が、待機位置に位置した状態を示している。
図18(C)は、プリントヘッド200が、印刷位置に位置した状態を示している。
図18(B)は、プリントヘッド200が待機位置と印刷位置との間に位置した状態を示している。
【0141】
図18(A)に示すように、プリントヘッド200が、待機位置に位置すると、キャップ400は、閉位置に位置する。閉位置において、キャップ400は、プリントヘッド200の直下に位置し、開口面がノズル面210に対向して配置される。これにより、ノズル面210がキャップ400で覆われる。
【0142】
図18(B)に示すように、プリントヘッド200が、待機位置から印刷位置に向けて下降すると、接触子565及び板カム561の作用で、レバー563がバネの付勢力に抗して、開方向(
図18において反時計回りの方向)に揺動する。この結果、キャップ400が開方向に揺動する。
【0143】
更に下降して、
図18(C)に示すように、プリントヘッド200が、印刷位置に位置すると、キャップ400は、開位置まで揺動する。開位置において、キャップ400は、プリントヘッド200の下部から完全に退避する。これにより、ノズル面210が開放され、用紙Pに向けてインク滴の吐出が可能になる。
【0144】
プリントヘッド200が、印刷位置から待機位置に向けて上昇すると、接触子565及び板カム561の作用でレバー563が閉方向(
図18において時計回りの方向)に揺動する。この結果、
図18(B)に示すように、キャップ400が閉方向に揺動する。プリントヘッド200が、待機位置に移動すると、
図18(A)に示すように、キャップ400が、閉位置に位置して、ノズル面210がキャップ400で覆われる。
【0145】
このように、本例のキャップ開閉機構500によっても、プリントヘッド200の昇降動作に連動して、キャップ400を自動で開閉できる。
【0146】
なお、本例は、キャップ開閉機構がカム機構で構成される場合の一例であるが、上記第1の実施の形態のキャップ開閉機構もカム機構で構成される場合の一例である。
【0147】
(5)キャップ開閉機構のその他の変形例
上記第1の実施の形態のキャップ開閉機構500は、キャップ400を開方向に付勢する手段として、トーションバネを採用しているが、キャップ400を付勢する手段は、これに限定されるものではない。この他、引張コイルバネ、渦巻きバネ、板バネ等を採用することもできる。
【0148】
また、上記各変形例は、プリントヘッド200による直線運動をキャップ400による円弧運動に変換する機構として、ラック及びピニオンを含むギア機構、リンク機構、及び、カム機構を採用しているが、プリントヘッド200の直線運動をキャップ400の回転運動に変換する機構は、これに限定されるものではない。他の変換機構を作用することもできる。また、上記変形例では、カム機構、リンク機構、ギア機構を単体で使用する構成とされているが、これらを適宜組み合わせた構成を採用することもできる。
【0149】
[キャップの変形例]
(1)キャップの第1変形例
図19は、キャップの第1変形例を示す図である。
図19は、揺動軸と直交する断面におけるキャップ400の断面形状を示している。なお、
図19において、実線は、キャップ400が、閉位置に位置した状態を示し、破線は、キャップ400が、開位置に位置した状態を示している。
【0150】
図19に示すように、本例のキャップ400は、揺動軸と直交する断面において、円弧状の形状を有する。円弧は、揺動軸を中心とする円の一部を構成する。すなわち、本例のキャップ400は、円筒の一部を切り出した形状を有する。
【0151】
円弧状の形状を有することにより、キャップ400は、ノズル面210を覆う面に円弧状の凹部410が備えられる。すなわち、キャップ400は、ノズル面210を覆う面が開口した中空形状を有する。
【0152】
ノズル面210を覆う面に凹部410を有することにより、キャップ400は、たとえば、予備吐出又はパージした際に、ノズル212から吐出又は排出されるインクを回収できる。
【0153】
このように、キャップ400は、ノズル面210を覆う面に凹部410を備えることが好ましい。すなわち、ノズル面210を覆う面が開口した中空形状を有することが好ましい。
【0154】
ノズル面を覆う面が開口した中空形状のキャップでは、開口部の周縁部が、揺動軸と直交する断面において、揺動軸から最も近い部位を構成する。換言すると、揺動軸と直交する断面において、揺動軸から最も近い部位が、縁部となるキャップは、ノズル面を覆う面が開口した中空形状を有することとなる。
【0155】
(2)キャップの第2変形例
図20は、キャップの第2変形例を示す図である。
図20は、揺動軸と直交する断面におけるキャップ400の断面形状を示している。
【0156】
図20に示すように、本例のキャップ400は、内部(凹部410の内側)に仕切板411が備えられ、内部が深さ方向に二分割される。仕切板411を挟んで底部側の空間を第1空間410A、開口部側の空間を第2空間410Bとする。第1空間410A及び第2空間410Bは、仕切板411の一端(
図20において右端)において連通される。
【0157】
第1空間410Aは、保湿用の液体(保湿液)を貯留する空間として用いられる。一方、第2空間410Bは、ノズル212から吐出又は排出されたインクを回収する空間として用いられる。
【0158】
第1空間410Aには、保湿液460の供給口440a及び回収口440bが備えられる。
【0159】
供給口440aには、保湿液供給配管441aが接続される。保湿液供給配管441aは、保湿液供給バルブ442a及び保湿液供給ポンプ443aを介して、保湿液供給タンク444aに接続される。保湿液供給タンク444aには、未使用の保湿液が貯留される。保湿液供給バルブ442aを開き、かつ、保湿液供給ポンプ443aを駆動することにより、保湿液供給タンク444aに貯留された保湿液が、第1空間410Aに供給される。
【0160】
回収口440bには、保湿液回収配管441bが接続される。保湿液回収配管441bは、保湿液回収バルブ442b及び保湿液回収ポンプ443bを介して、保湿液回収タンク444bに接続される。保湿液回収タンク444bには、使用済みの保湿液が貯留される。保湿液回収バルブ442bを開き、かつ、保湿液回収ポンプ443bを駆動することにより、第1空間410Aに貯留された保湿液が、保湿液回収タンク444bに回収される。
【0161】
第2空間410Bには、排液口450が備えられる。排液口450には、排液配管451が接続される。排液配管451は、排液バルブ452及び排液ポンプ453を介して、廃液タンク454に接続される。廃液タンク454には、第2空間410Bで回収したインクが貯留される。排液バルブ452を開き、かつ、排液ポンプ453を駆動することにより、第2空間410Bで回収されたインクが廃液タンク454に回収される。
【0162】
インクの回収は、キャップ400を閉じた状態(キャッピング状態)で行われる。すなわち、閉位置で行われる。
図20に示すように、閉位置において、仕切板411は、排液口450に向けて傾斜して配置される。より具体的には、排液口450側が低くなるように、水平な状態から傾斜して配置される。これにより、重力を利用して、回収したインクを自然に排液口450に導くことができる。
【0163】
ノズル面210を保湿する場合、キャップ400の第1空間410Aに保湿液460を貯留する。保湿液460は、保湿液供給バルブ442aを開け、保湿液供給ポンプ443aを駆動する。これにより、保湿液供給タンク444aから第1空間410Aに保湿液が供給される。一定量供給後、保湿液供給ポンプ443aの駆動が停止され、保湿液供給バルブ442aが閉じられる。これにより、第1空間410Aに保湿液460が貯留される。第1空間410Aに保湿液460を貯留することにより、凹部410内が湿潤され、ノズル面210が保湿される。
【0164】
保湿液460を回収する場合は、保湿液回収バルブ442bを開け、保湿液回収ポンプ443bを駆動する。これにより、回収口440bを介して第1空間410Aから保湿液460が回収される。回収された保湿液は、保湿液回収タンク444bに貯留される。
【0165】
パージ又は予備吐出する場合は、キャップ400を閉位置に位置させた状態で実施する。パージ又は予備吐出によりノズル212から排出又は吐出されたインクは、仕切板411で回収され、第2空間410Bに貯留される。
【0166】
第2空間410Bに貯留されたインクを回収する場合は、排液バルブ452を開け、排液ポンプ453を駆動する。これにより、排液口450を介して第2空間410Bからインクが回収される。回収されたインクは、廃液タンク454に貯留される。
【0167】
図21は、キャップの揺動による保湿液の状態の変化を示す図である。
【0168】
図21(A)は、キャップ400が、閉位置に位置した状態を示している。
図21(C)は、キャップ400が開位置に位置した状態を示している。
図21(B)は、キャップ400が閉位置と開位置との間に位置した状態を示している。
【0169】
図21に示すように、閉位置から開位置に向けてキャップ400を揺動させると、キャップ400は、水平状態から次第に傾斜する。キャップ400が傾斜すると、凹部410内に貯留された保湿液460が、凹部410の開口から流れ出ようとする。しかしながら、本例のキャップ400は、凹部410内に仕切板411が備えられているため、仕切板411によって保湿液460の流出が堰き止められる。よって、
図21(B)及び(C)に示すように、キャップ400が傾斜又は起立した場合であっても、凹部410内に保湿液460を保持できる。本変形例において、仕切板411は、堰部の一例である。
【0170】
このように、本例のキャップ400によれば、開閉のためにキャップ400を揺動させても、凹部410内に保湿液460を保持できる。また、ノズル212から排出又は吐出されたインクを保湿液460に混合させることなく回収できる。
【0171】
(3)キャップの第3変形例
図22は、キャップの第3変形例を示す図である。
【0172】
図22は、仕切板411を備えたキャップ400の変形例を示している。
図22(A)は、キャッピング中のキャップ400の状態を示している。
図22(B)は、パージ中のキャップ400の状態を示している。
【0173】
図22(A)に示すように、本例のキャップ400は、閉位置において、仕切板411が水平に配置される点で
図20に示すキャップ400と相違する。
【0174】
閉位置において、仕切板411が水平に配置されるため、キャッピング中にノズル212からインクを吐出又は排出すると、仕切板411で受けたインクが、第1空間410Aに流れ込むおそれがある。
【0175】
そこで、
図22(B)に示すように、本例のキャップ400でパージ又は予備吐出する場合は、キャップ400を傾斜させる。これにより、ノズル212から吐出又は排出されたインクを保湿液460に混入させることなく回収できる。
【0176】
なお、本変形例においても、仕切板411は、凹部410内に貯留された保湿液460を堰き止める機能を有する。よって、本変形例においても、仕切板411は、堰部として機能する。
【0177】
(4)キャップのその他の変形例
上記例では、ポンプを利用して、保湿液をキャップ400に供給及び回収する構成としているが、重力を利用して、保湿液をキャップ400に供給及び回収する構成としてもよい。この場合、たとえば、キャップ400よりも高い位置に保湿液供給タンク444aを設置し、キャップ400よりも低い位置に保湿液回収タンク444bを設置する。パージ等で回収したインクについても同様であり、重力を利用して回収する構成としてもよい。
【0178】
保湿液を使用する場合、凹部410内に吸液体を備えてもよい。これにより、効率よく凹部410内に保湿液を保持できる。また、キャップ400を揺動させた場合に、保湿液が開口部から流出するのを抑止できる。
【0179】
凹部410内に仕切板411を配置する場合、第1空間410A及び第2空間410Bの双方に吸液体を配置してもよい。
【0180】
吸液体には、たとえば、スポンジ等の多孔質体を採用できる。
【0181】
[第2の実施の形態]
キャップを揺動させて開閉する構成の場合、揺動するキャップがプリントヘッドに接触しない設計にする必要がある。キャップとプリントヘッドとの接触を回避するためには、キャップとプリントヘッドとの間にクリアランスを確保する必要がある。しかし、クリアランスを大きくとると、キャッピング時にキャップとプリントヘッドとの間に大きな隙間が生じ、キャップによる封止効果が低減する。本実施の形態では、キャップによる封止効果を向上できるプリントヘッドユニットについて説明する。
【0182】
図23及び
図24は、プリントヘッドユニットの要部の構成を示す図である。
図23は、プリントヘッド200の長手方向の中間位置での部分断面を示している。
図24は、プリントヘッド200の長手方向の一端での部分断面を示している。
【0183】
図23及び
図24に示すように、本実施の形態のプリントヘッドユニット100は、プリントヘッド200に弾性変形可能なシール600を有する。なお、シール600を有する点以外の構成は、上記第1の実施の形態のプリントヘッドユニット100と同じである。よって、以下においては、シール600の構成及び作用効果についてのみ説明する。
【0184】
シール600は、プリントヘッド200の先端の周縁に沿って備えられる。シール600は、プリントヘッド200の前後の縁(用紙搬送方向の上流側及び下流側の縁)に沿って備えられる前後シール部601、及び、プリントヘッド200の長手方向の両端に備えられる両端シール部602で構成される。前後シール部601は、先端が直線状の形状を有する。両端シール部602は、先端が円弧状の形状を有する。両端シール部602の先端は、ロッド510を中心とする円の一部を構成する。前後シール部601及び両端シール部602は、ホルダー603を介してプリントヘッド200に取り付けられる。
【0185】
前後シール部601及び両端シール部602は、キャップ400が閉位置に位置すると、先端部がキャップ400の開口部の周縁に押圧当接される。具体的には、
図23に示すように、前後シール部601は、キャップ400の開口部の前後の周縁部(用紙搬送方向の上流側及び下流側の周縁部)に押圧当接される。また、両端シール部602は、
図24に示すように、キャップ400の長手方向の両端の周縁部に押圧当接される。両端シール部602が当接されるキャップ400の部位(凹部410の長手方向の両端の周縁部)は、両端シール部602の先端の形状に対応して円弧状の形状を有する。
【0186】
以上のように構成される本実施の形態のプリントヘッドユニット100によれば、キャップ400が閉位置に位置すると、前後シール部601及び両端シール部602が、キャップ400の開口部の周縁に押圧当接される。これにより、開口部の周囲が、シール600で封止される。シール600は、弾性変形可能であるため、接触した場合であっても、キャップ400の移動を阻害しない。
【0187】
このように、本実施の形態のプリントヘッドユニット100によれば、キャップ400の開閉に必要なクリアランスを確保しつつ、キャッピング時の密閉性を高めることができる。
【0188】
上記実施の形態では、プリントヘッド側にシール600を備える構成としているが、キャップ側にシールを備える構成としてもよい。
【0189】
また、上記実施の形態では、プリントヘッド200の全周をシールする構成としているが、前後方向のみシールする構成としてもよい。この場合、長手方向の両端は、可能な限りクリアランスを小さく設定することが好ましい。
【0190】
シール600の素材は、特に限定されない。弾性変形可能であり、密閉性を確保できる素材であればよい。本実施の形態において、シール600は、封止部材の一例である。
【0191】
[第3の実施の形態]
図25は、プリントヘッドユニットの第3の実施の形態の要部の構成を示す図である。
【0192】
本実施の形態のプリントヘッドユニットは、閉位置でキャップをロックするロック機構を有する。なお、ロック機構を有する点以外は、上記第1の実施の形態のプリントヘッドユニット100と同じである。よって、以下においては、ロック機構の構成及び作用効果についてのみ説明する。
【0193】
本実施の形態では、ロック機構が、プッシュラッチ700を利用したプッシュラッチ機構で構成される。プッシュラッチ機構は、押す動作によって、ロック及びアンロック(ロック解除)が行われるラッチ機構である。
図25に示すように、プッシュラッチ700は、プッシュラッチ本体701及びストライク702で構成される。プッシュラッチ700は、ストライク702をプッシュラッチ本体701に押し込む動作によって結合(ロック)され、更に押し込む動作によって結合が解除(アンロック)される。
【0194】
プッシュラッチ本体701は、プリントヘッド200の長手方向の両側面に備えられる(
図25では片側の側面のみ図示)。
【0195】
一方、ストライク702は、ブラケット703を介して、キャップ400のアーム部420に一体的に取り付けられる。よって、ストライク702は、キャップ400が揺動すると、キャップ400と一体となって揺動する。
【0196】
図25は、キャップ400が閉位置に位置した状態が示されている。
図25に示すように、プッシュラッチ本体701及びキャップ400は、キャップ400が閉位置に位置すると、互いに係合する位置関係で配置される。
【0197】
図26は、プッシュラッチ機構を利用したキャップのロック及びアンロックの動作の説明図である。
図26(A)は、キャップをロックした状態を示す図である。
図26(B)は、キャップをアンロックした状態を示す図である。
【0198】
図26(A)に示すように、キャップ400は、閉位置において、ストライク702が、プッシュラッチ本体701に係合する。ストライク702が、プッシュラッチ本体701に係合することにより、キャップ400の揺動がロックされ、閉位置に保持される。
【0199】
プッシュラッチ700によってロックされることにより、レバー430が接触子530から離れても、キャッピング状態が維持される。したがって、ロック後は、プリントヘッド200を下降させても、ロック状態が維持される。
【0200】
ロックを解除する場合は、キャップ400を揺動させて、ストライク702をプッシュラッチ本体701に向けて押し込む。
図26に示す例では、時計回りの方向にキャップ400を揺動させる。キャップ400は、プリントヘッド200を上昇させることで、時計回りの方向に揺動する。したがって、ロックを解除する場合は、プリントヘッド200を所定上昇させる(ロック解除に必要な量、上昇させる。)。これにより、ストライク702がプッシュラッチ本体701に押し込まれ、ストライク702とプッシュラッチ本体701との係合が解除される。
【0201】
ストライク702とプッシュラッチ本体701との係合が解除されることにより、キャップ400のロックが解除され、キャップ400が揺動可能になる。これにより、
図26(B)に示すように、プリントヘッド200の下降に連動して、キャップ400が揺動する。
【0202】
このように、本実施の形態のプリントヘッドユニット100によれば、プリントヘッド200の位置によらずに、キャップ400を閉位置に保持できる。すなわち、キャッピング状態を保持できる。これにより、キャッピング状態を安定して保持できる。
【0203】
なお、本実施の形態では、ロック機構としてプッシュラッチ機構を採用しているが、ロック機構は、これに限定されるものではない。プリントヘッド200に対し定位置でキャップ400をロックできる機構であればよい。
【0204】
また、上記実施の形態では、閉位置でのみキャップ400をロック可能に構成しているが、開位置においてもロックできる構成としてもよい。
【0205】
また、上記実施の形態のプリントヘッドユニットには、シールが備えられていないが、シールを備えたプリントヘッドユニットにもロック機構は採用できる。シールを備えたプリントヘッドユニットにロック機構は採用することにより、シールを確実に密着させることができ、シールによる封止性を向上できる。
【0206】
[その他の実施の形態]
[キャップの移動形態]
上記実施の形態では、キャップ400がロッド510を中心とする円に沿って揺動(円弧運動)する構成とされているが、キャップの移動形態は、これに限定されるものではない。
【0207】
図27は、キャップの移動形態の他の一例を示す図である。
【0208】
図27は、楕円形状の移動軌跡に沿ってキャップ400が揺動する場合の例を示している。このように、楕円形状の移動軌跡に沿ってキャップ400を揺動させることにより、開位置において、キャップ400をプリントヘッド200に近づけて保持できる。これにより、プリントヘッドユニットを小型化できる。
【0209】
この他、キャップ400は、たとえば、ノズル面に沿って用紙Pの搬送方向に直線移動して、開閉する構成としてもよい。
【0210】
また、上記実施の形態では、開位置において、キャップが起立する構成としているが、水平状態を保持して、キャップを開位置に移動させる構成としてもよい。
【0211】
[キャップを移動させる機構]
プリントヘッドの移動を利用して、キャップに所望の動作を行わせる機構は、カム機構、ギア機構、及び、リンク機構等を単独又は適宜組み合わせて実現できる。
【0212】
また、上記実施の形態では、昇降駆動モーター325を利用して、電動でプリントヘッド200を昇降させる構成としているが、プリントヘッド200は、手動で昇降させる構成としてもよい。
【0213】
[インクジェット記録装置]
上記実施の形態では、本発明をインクジェット印刷機に適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではない。メディアにインクジェット方式で画像を記録する装置(インクジェット記録装置)全般に適用できる。また、メディアは、紙に限定されず、種々の物質が含まれる。
【0214】
また、上記実施の形態では、用紙(メディア)をベルト搬送する場合を例に説明したが、用紙の搬送形態は、これに限定されるものではない。たとえば、用紙をドラム搬送する形態のインクジェット記録装置にも本発明は適用できる。用紙をドラム搬送する形態のインクジェット記録装置では、プリントヘッドが、傾斜して配置される場合がある。この場合、キャップの凹部内に仕切板を配置することにより、キャップ内に保湿液を保持できる(
図20参照)。
【0215】
また、上記実施の形態では、枚葉紙に印刷する場合を例に説明したが、ロール紙に印刷するインクジェット印刷機にも同様に適用できる。
【0216】
更に、上記実施の形態では、いわゆるシングルパス方式のインクジェット記録装置に本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではない。いわゆるシャトル方式のインクジェット記録装置にも適用できる。なお、シングルパス方式のインクジェット記録装置は、シャトル方式のインクジェット記録装置に比して、記録ヘッドが長尺になるので、キャップ機構をヘッドユニットに内包できる本発明は、特に有効に作用する。すなわち、キャップ機構をヘッドユニットに内包しない構成のインクジェット記録装置では、キャップのためのスペース、及び、キャップの位置までヘッドユニットを搬送する機構が別途必要になる。キャップのためのスペースは、プリントヘッドの長さ分必要となるため、シングルパス方式のインクジェット記録装置では、装置が大型化する傾向にある。キャップ機構をヘッドユニットに内包できることにより、シングルパス方式のインクジェット記録装置でも、装置の小型化が図れる。よって、本発明は、シングルパス方式のインクジェット記録装置において特に有効に作用する。
【0217】
また、上記実施の形態では、記録ヘッドをモジュール化し、複数のヘッドモジュールを繋ぎ合わせて、1つの記録ヘッドを生成する構成としているが、記録ヘッドの構成は、これに限定されるものではない。モジュール化していない単体の記録ヘッドを採用することもできる。
【符号の説明】
【0218】
1 インクジェット印刷機
10 用紙搬送部
11 ベルト
12 ローラー
12A 駆動ローラー
13 ベルト駆動モーター
15 吸引ユニット
20 印刷部
30 画像読取部
31 画像読取装置
100 プリントヘッドユニット
100Bk プリントヘッドユニット
100C プリントヘッドユニット
100M プリントヘッドユニット
100Y プリントヘッドユニット
110 ベースフレーム
110L 側壁部
110R 側壁部
110T 天面部
200 プリントヘッド
200Bk プリントヘッド
200C プリントヘッド
200M プリントヘッド
200Y プリントヘッド
201 ヘッドモジュール
210 ノズル面
211 ノズル領域
212 ノズル
300 プリントヘッド昇降機構
310 支持部
311L ガイドレール
311R ガイドレール
312L スライダー
312R スライダー
320 駆動部
321 ねじ軸
322 ブラケット
323 ブラケット
324 軸受
325 昇降駆動モーター
326 ナット
327 連結バー
400 キャップ
410 凹部
410A 第1空間
410B 第2空間
411 仕切板
420 アーム部
421 装着穴
430 レバー
431 軸部
440a 供給口
440b 回収口
441a 保湿液供給配管
441b 保湿液回収配管
442a 保湿液供給バルブ
442b 保湿液回収バルブ
443a 保湿液供給ポンプ
443b 保湿液回収ポンプ
444a 保湿液供給タンク
444b 保湿液回収タンク
450 排液口
451 排液配管
452 排液バルブ
453 排液ポンプ
454 廃液タンク
460 保湿液
500 キャップ開閉機構
510 ロッド
511 バネ
512 バネ掛け部
513 バネ掛け部
520 ストッパーピン
530 接触子
531 ブラケット
540 ピニオン
541 ラック
542 ブラケット
551 第1ジョイント
552 第1リンク
553 第2ジョイント
554 第2リンク
561 板カム
562 ブラケット
563 レバー
564 軸部
565 接触子
600 シール
601 前後シール部
602 両端シール部
603 ホルダー
700 プッシュラッチ
701 プッシュラッチ本体
702 ストライク
703 ブラケット
P 用紙