(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097525
(43)【公開日】2025-07-01
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20250624BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213757
(22)【出願日】2023-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】三ツ森 章祥
(72)【発明者】
【氏名】孫 亮
(72)【発明者】
【氏名】有吉 文彬
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 徹治
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004BA06
5F004BA09
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB28
(57)【要約】
【課題】本開示は、上部電極部がプラズマからの入熱により変形することを抑制する技術を提供する。
【解決手段】基板支持部と、前記基板支持部に対向して設けられる上部電極部と、制御部と、を備え、前記上部電極部は、前記基板支持部の側から順に、電極プレートと、内部に伝熱流体が流れる冷却プレートと、ヒータと、を備え、前記制御部は、プラズマから前記上部電極部に入熱する熱量に応じて、前記ヒータの出力を制御するプラズマ処理装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板支持部と、
前記基板支持部に対向して設けられる上部電極部と、
制御部と、
を備え、
前記上部電極部は、前記基板支持部の側から順に、電極プレートと、内部に伝熱流体が流れる冷却プレートと、ヒータと、を備え、
前記制御部は、プラズマから前記上部電極部に入熱する熱量に応じて、前記ヒータの出力を制御する、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、プラズマから前記上部電極部に入熱する熱量が多くなると、前記ヒータの出力を増加させるように制御する、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記冷却プレートは、前記伝熱流体が流れる流路を有し、
前記流路は、前記冷却プレートにおける前記ヒータより前記電極プレートの近くに設けられる、
請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記ヒータから前記冷却プレートにおける前記流路までの距離は、前記電極プレートから前記冷却プレートにおける前記流路までの距離に前記ヒータからの熱量に対する前記プラズマからの熱量の比を乗じた距離より長い、
請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、プラズマ生成後に前記ヒータの出力を増加させるように制御する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記冷却プレートは、金属により形成され、
前記電極プレートは、半導体により形成される、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
基板支持部と、前記基板支持部に対向して設けられる上部電極部と、制御部と、を備え、前記上部電極部は、前記基板支持部の側から順に、電極プレートと、内部に伝熱流体が流れる冷却プレートと、ヒータと、を備えるプラズマ処理装置における制御方法であって、
前記ヒータの出力を、プラズマから前記上部電極部に入熱する熱量に応じて制御する、
プラズマ処理装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、プラズマによって基板を処理する処理室を備える基板処理装置に配された電極ユニットであって、処理室側から順に配置された、処理室内に暴露される電極層、加熱層及び冷却層を有する電極ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上部電極部がプラズマからの入熱により変形することを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、基板支持部と、前記基板支持部に対向して設けられる上部電極部と、制御部と、を備え、前記上部電極部は、前記基板支持部の側から順に、電極プレートと、内部に伝熱流体が流れる冷却プレートと、ヒータと、を備え、前記制御部は、プラズマから前記上部電極部に入熱する熱量に応じて、前記ヒータの出力を制御するプラズマ処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、上部電極部がプラズマからの入熱により変形することを抑制する技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るプラズマ処理装置を含むプラズマ処理システムの構成を説明する図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るプラズマ処理装置における上部電極部について説明する図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るプラズマ処理装置における上部電極部について熱による変形状態を説明する図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るプラズマ処理装置における上部電極部について熱による変形状態を説明する図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るプラズマ処理装置における上部電極部について流路の位置について説明する図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係るプラズマ処理装置における上部電極部について流路の位置について説明する図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係るプラズマ処理装置における上部電極部について流路の位置について説明する図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係るプラズマ処理装置の動作について説明する図である。
【
図9】
図9は、参考例のプラズマ処理装置の動作について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。なお、理解を容易にするために、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直には、略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直が含まれてもよい。
【0009】
<プラズマ処理システム>
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。
図1は、本実施形態に係るプラズマ処理装置の一例であるプラズマ処理装置1を含むプラズマ処理システムの構成を説明する図である。
【0010】
プラズマ処理システムは、容量結合プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、伝熱流体供給部50と、ヒータ電源部60と、を含む。さらに、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、上部電極部の一例であるシャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11に対向して設けられる。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0011】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域(基板支持面)111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域(リング支持面)111bとを有する。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。一実施形態において、本体部111は、基台及び静電チャックを含む。基台は、導電性部材を含む。基台の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャックは、基台の上に配置される。静電チャックの上面は、基板支持面111aを有する。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持部11は、静電チャック、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0012】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。シャワーヘッド13は、電極プレート13Aと、冷却プレート13Bと、ヒータ13Cと、を備える。冷却プレート13Bは、伝熱流体供給部50から供給される伝熱流体が流れる流路13rを備える。ヒータ13Cは、ヒータ電源部60から電力を供給される。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0013】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0014】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0015】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持部11の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0016】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、基板支持部11の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、基板支持部11の導電性部材に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、シャワーヘッド13の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド13の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0017】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0018】
伝熱流体供給部50は、シャワーヘッド13に設定した温度に調整した伝熱流体を供給する。また、伝熱流体供給部50は、シャワーヘッド13を通過した伝熱流体を回収する。そして、伝熱流体供給部50は、回収した伝熱流体を設定した温度に調整し、再度、シャワーヘッド13に供給する。
【0019】
ヒータ電源部60は、ヒータ13Cに電力を供給する。ヒータ電源部60から供給される電力は、制御部2により制御される。
【0020】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0021】
<本実施形態に係るプラズマ処理装置>
本実施形態に係るプラズマ処理装置について説明する。本実施形態に係るプラズマ処理装置は、基板支持部と、基板支持部に対向して設けられる上部電極部と、制御部と、を備える。本実施形態に係るプラズマ処理装置における上部電極部は、基板支持部の側から順に、電極プレートと、内部に伝熱流体が流れる冷却プレートと、ヒータと、を備える。本実施形態に係るプラズマ処理装置における制御部は、プラズマから電極プレートに入熱する熱量に応じて、ヒータの出力を制御する。
【0022】
本実施形態に係るプラズマ処理装置について図面を用いて説明する。
図2は、本実施形態に係るプラズマ処理装置における上部電極部の一例であるシャワーヘッド13について説明する図である。
【0023】
シャワーヘッド13は、電極プレート13Aと、冷却プレート13Bと、ヒータ13Cと、を備える。また、プラズマ処理装置1は、伝熱流体供給部50と、ヒータ電源部60と、伝熱流体供給部50及びヒータ電源部60を制御する制御部70と、を備える。なお、制御部70は、プラズマ処理装置1が備えていてもよいし、制御部2が制御部70の処理を実施してもよい。
【0024】
(電極プレート13A)
電極プレート13Aは、上部電極として機能する。電極プレート13Aは、シャワーヘッド13におけるプラズマ処理空間10s側に設けられる。電極プレート13Aは、例えば、半導体、例えば、シリコン、炭化シリコンにより形成される。電極プレート13Aは、例えば、外側をホルダーにより保持して、冷却プレート13Bに固定される。冷却プレート13Bにより電極プレート13Aを効率的に冷却するために、電極プレート13Aは冷却プレート13Bに密着するように固定される。
【0025】
(冷却プレート13B)
冷却プレート13Bは、シャワーヘッド13、特に電極プレート13Aを冷却する。冷却プレート13Bは、伝熱流体供給部50から供給される伝熱流体RFが流れる流路13rを有する。
【0026】
冷却プレート13Bは、金属、例えば、アルミニウム合金、により形成される。
【0027】
伝熱流体供給部50から供給される伝熱流体RFは、流路13rを通過する間に加熱される。そして、流路13rを通過して加熱された伝熱流体RFは、伝熱流体供給部50に回収される。伝熱流体供給部50に回収された伝熱流体RFは設定した温度に調整されて、再度、冷却プレート13Bに供給される。
【0028】
伝熱流体供給部50は、制御部70により制御される。制御部70は、例えば、伝熱流体供給部50からシャワーヘッド13に供給される伝熱流体RFの温度と流量を制御する。
【0029】
伝熱流体RFは、液体、例えば、ブライン、水、塩化カルシウム水溶液、エチレングリコール水溶液、アルコール、シリコーンオイル等である。伝熱流体RFは、気体、例えば、空気、ヘリウムガス、窒素ガス等でもよい。
【0030】
なお、シャワーヘッド13は、電極プレート13Aと冷却プレート13Bとの間に、熱の伝達を促進する伝熱部材を備えていてもよい。
【0031】
(ヒータ13C)
ヒータ13Cは、シャワーヘッド13を加熱する。ヒータ13Cは、例えば、電熱ヒータである。ヒータ13Cは、冷却プレート13Bにおけるプラズマ処理空間10sに対して遠い側に設けられる。
【0032】
ヒータ13Cは、ヒータ電源部60から電力を供給される。ヒータ13Cは、ヒータ電源部60から供給される電力により発熱して、冷却プレート13Bを加熱する。
【0033】
ヒータ電源部60は、制御部70により制御される。制御部70は、例えば、ヒータ電源部60からヒータ13Cに供給される電力HPを制御する。
【0034】
[上部電極部における熱による変形]
次に、本実施形態に係るプラズマ処理装置における上部電極部における熱による変形について説明する。
図3及び
図4のそれぞれは、本実施形態に係るプラズマ処理装置における上部電極部の一例であるシャワーヘッド13について熱による変形状態を説明する図である。
図3は、ヒータ13Cからの熱による影響を示す図である。
図4は、プラズマからの熱による影響を示す図である。
【0035】
最初に、ヒータ13Cからの熱による影響について説明する。
図3に示すように、ヒータ13Cから熱Qhが冷却プレート13Bに入ると、ヒータ13Cからの熱Qhにより、矢印Du1に示すように、シャワーヘッド13の上側が熱により膨張する。一方、シャワーヘッド13の下側は、矢印Dd1に示すように膨張の度合いは上側と比較して小さい。この上下の膨張量の差によって、冷却プレート13Bにおける電極プレート13Aと接触する面は、線LD1に示すように上側に凸となるように変形する。
【0036】
例えば、ヒータ13Cからの熱により、冷却プレート13Bは、中心部が外側より数100マイクロメートル程度上にたわむ。
【0037】
次に、プラズマからの熱による影響について説明する。
図4に示すように、プラズマから電極プレート13Aを介して冷却プレート13Bに熱が入ると、プラズマからの熱Qpにより、矢印Dd2に示すように、シャワーヘッド13の下側が熱により膨張する。一方、シャワーヘッド13の上側は、矢印Du2に示すように膨張の度合いは下側と比較して小さい。この上下の膨張量の差によって、冷却プレート13Bにおける電極プレート13Aと接触する面は、線LD2に示すように下側に凸となるように変形する。
【0038】
例えば、プラズマからの熱により、冷却プレート13Bは、中心部が外側より数100マイクロメートル程度下にたわむ。
【0039】
冷却プレート13Bが熱により変形すると、冷却プレート13Bと、電極プレート13Aとの接触が弱くなる場合がある。冷却プレート13Bと、電極プレート13Aとの接触が弱くなると、電極プレート13Aを冷却プレート13Bで冷却する効率が低下する。電極プレート13Aを冷却プレート13Bで冷却する効率が低下すると、冷却プレート13Bにより電極プレート13Aを十分冷却できず、電極プレート13Aの温度が上昇する場合がある。
【0040】
上述のように、プラズマからの熱による冷却プレート13Bの変形は、ヒータ13Cからの熱による冷却プレート13Bの変形と傾向が反対になる。そこで、発明者らは、プラズマからの熱による冷却プレート13Bの変形を、ヒータ13Cによりプラズマからの冷却プレート13Bを加熱することで抑制することを見いだした。
【0041】
本実施形態に係るプラズマ処理装置において、プラズマから上部電極部に入熱する熱量に応じて、ヒータの出力を制御する。プラズマから上部電極部に入熱する熱量に応じて、ヒータの出力を制御することにより、冷却プレートのプラズマからの熱による変形をヒータからの熱による変形で相殺して、冷却プレートの変形を抑制できる。
【0042】
なお、本実施形態に係るプラズマ処理装置において、プラズマ処理空間は真空環境であって、プラズマ処理空間の外側は大気圧環境であることから、上部電極部は、下に凸となるように変形する場合がある。本実施形態に係るプラズマ処理装置において、ヒータを備えることにより、大気圧による上部電極部の変形についても影響を抑制できる。
【0043】
[冷却プレートにおける流路の位置]
本実施形態に係るプラズマ処理装置における上部電極部について、冷却プレートにおける流路の位置について説明する。
図5から
図7のそれぞれは、本実施形態に係るプラズマ処理装置における上部電極部について流路の位置について説明する図である。
図5から
図7のそれぞれについて、上部電極部を想定したモデルを用いて説明する。
【0044】
(1)流路がヒータ側にある場合
図5における上部電極部MD1は、本実施形態に係るプラズマ処理装置における上部電極部の例を示すモデルであって、電極プレートCELと、冷却プレートCP1と、ヒータHTRと、を備える。
【0045】
上部電極部MD1は、冷却プレートCP1における流路FP1をヒータHTR側に設ける。ヒータHTRから冷却プレートCP1における流路FP1までの距離を距離L11とする。電極プレートCELから冷却プレートCP1における流路FP1までの距離を距離L12とする。上部電極部MD1において、式1に示すように、距離L12は、距離L11の3倍であるとする。
【0046】
L12 = 3×L11 ・・・式1
【0047】
電極プレートCEL側からプラズマによる熱量Pw1の熱が上部電極部MD1に入熱する。ヒータHTRは、熱量Hw1の熱が冷却プレートCP1に入熱する。式2に示すように、熱量Pw1は、熱量Hw1の3倍であるとする。
【0048】
Pw1 = 3×Hw1 ・・・式2
【0049】
プラズマを発生させると、冷却プレートCP1における電極プレートCEL側の温度T12は、冷却プレートCP1におけるヒータHTR側の温度T11と比較して非常に高くなる(式3)。
【0050】
T12 >>> T11 ・・・式3
【0051】
冷却プレートCP1の幅をLとし、冷却プレートCP1における熱膨張率をαとすると、冷却プレートCP1における下側の幅はL+α×T12×L、上側の幅はL+α×T11×Lとなる。式3より式4が成り立つことから冷却プレートCP1は強く下反りになる。
【0052】
L+α×T12×L >>> L+α×T11×L ・・・式4
【0053】
(2)流路がヒータと電極プレートとの中間にある場合
図6における上部電極部MD2は、本実施形態に係るプラズマ処理装置における上部電極部の例を示すモデルであって、電極プレートCELと、冷却プレートCP2と、ヒータHTRと、を備える。
【0054】
上部電極部MD2は、冷却プレートCP2における流路FP2をヒータHTRと電極プレートCELとの中間に設ける。ヒータHTRから冷却プレートCP2における流路FP2までの距離を距離L21とする。電極プレートCELから冷却プレートCP2における流路FP2までの距離を距離L22とする。上部電極部MD2において、式5に示すように、距離L22は、距離L21に等しいとする。
【0055】
L22 = L21 ・・・式5
【0056】
電極プレートCEL側からプラズマによる熱量Pw2の熱が上部電極部MD2に入熱する。ヒータHTRは、熱量Hw2の熱が冷却プレートCP2に入熱する。式6に示すように、熱量Pw2は、熱量Hw2の3倍であるとする。
【0057】
Pw2 = 3×Hw2 ・・・式6
【0058】
プラズマを発生させると、冷却プレートCP2における電極プレートCEL側の温度T22は、冷却プレートCP2におけるヒータHTR側の温度T21と比較して高くなる(式7)。
【0059】
T22 >> T21 ・・・式7
【0060】
冷却プレートCP2の幅をLとし、冷却プレートCP2における熱膨張率をαとすると、冷却プレートCP2における下側の幅はL+α×T22×L、上側の幅はL+α×T21×Lとなる。式7より式8が成り立つことから冷却プレートCP2は下反りになる。一方、冷却プレートCP1よりは下反りの度合いは小さくなる。
【0061】
L+α×T22×L >> L+α×T21×L ・・・式8
【0062】
(3)流路が電極プレート側にある場合
図7における上部電極部MD3は、本実施形態に係るプラズマ処理装置における上部電極部の例を示すモデルであって、電極プレートCELと、冷却プレートCP3と、ヒータHTRと、を備える。
【0063】
上部電極部MD3は、冷却プレートCP3における流路FP3を電極プレートCEL側に設ける。ヒータHTRから冷却プレートCP3における流路FP3までの距離を距離L31とする。電極プレートCELから冷却プレートCP3における流路FP3までの距離を距離L32とする。上部電極部MD3において、式9に示すように、距離L31は、距離L32の3倍であるとする。
【0064】
L31 = 3×L32 ・・・式9
【0065】
電極プレートCEL側からプラズマによる熱量Pw3の熱が上部電極部MD3に入熱する。ヒータHTRは、熱量Hw3の熱が冷却プレートCP3に入熱する。式10に示すように、熱量Pw3は、熱量Hw3の3倍であるとする。
【0066】
Pw3 = 3×Hw3 ・・・式10
【0067】
プラズマを発生させると、冷却プレートCP3における電極プレートCEL側の温度T32は、冷却プレートCP3におけるヒータHTR側の温度T31と比較して少し大きくなる(式11)。
【0068】
T32 > T31 ・・・式11
【0069】
冷却プレートCP3の幅をLとし、冷却プレートCP3における熱膨張率をαとすると、冷却プレートCP3における下側の幅はL+α×T32×L、上側の幅はL+α×T31×Lとなる。式11より式12が成り立つことから冷却プレートCP3は下反りになる。一方、冷却プレートCP2よりは下反りの度合いは更に小さくなる。
【0070】
L+α×T32×L > L+α×T31×L ・・・式12
【0071】
したがって、上述の例において、プラズマによる熱量は、ヒータによる熱量の3倍であることから、ヒータから冷却プレートにおける流路までの距離は、電極プレートから冷却プレートにおける流路までの距離の3倍以上であることが望ましい。
【0072】
また、上記より、冷却プレートにおける流路は、冷却プレートにおけるヒータより電極プレートの近くに設けられることが望ましい。
【0073】
上記の例では、プラズマによる熱量がヒータによる熱量の3倍である例について説明したが、プラズマによる熱量はヒータによる熱量の3倍に限らない。プラズマによる熱量はヒータによる熱量の所定の定数倍である場合、ヒータから冷却プレートにおける流路までの距離は、電極プレートから冷却プレートにおける流路までの距離の当該定数倍以上であればよい。例えば、プラズマによる熱量はヒータによる熱量のα倍(αは1より大きい実数)である場合、ヒータから冷却プレートにおける流路までの距離は、電極プレートから冷却プレートにおける流路までの距離のα倍以上であればよい。言い換えると、ヒータから冷却プレートにおける流路までの距離は、電極プレートから冷却プレートにおける流路までの距離にヒータからの熱量に対するプラズマからの熱量の比を乗じた距離より長くするとよい。
【0074】
[本実施形態に係るプラズマ処理装置の動作]
次に、本実施形態に係るプラズマ処理装置の動作について説明する。本実施形態に係るプラズマ処理装置の動作を説明することにより、本実施形態に係るプラズマ処理装置の制御方法について説明する。
図8は、本実施形態に係るプラズマ処理装置の一例であるプラズマ処理装置1の動作について説明する図である。また、比較のために、
図9に、参考例のプラズマ処理装置の動作について説明する図を示す。
【0075】
図8及び
図9のそれぞれにおける横軸は時間、縦軸は測定値等、を概念的に示す。
図8及び
図9のそれぞれにおける横軸におけるtpは、プラズマの生成を開始した時刻を示す。
図8及び
図9のそれぞれにおける縦軸の符号について説明する。Tcpは、冷却プレート13Bの温度を示す。Qhは、ヒータ電源部60からヒータ13Cに供給される電力を示す。Tceは、電極プレート13Aの温度を示す。Qpは、プラズマからの入熱を示す。Vrfは、伝熱流体RFの流量を示す。
【0076】
図8に示す本実施形態に係るプラズマ処理装置において、制御部70は、プラズマからの入熱があると、冷却プレート13Bの反りを低減するために、ヒータ13Cにより冷却プレート13Bを加熱するようにヒータ電源部60を制御する。制御部70は、ヒータ13Cにより冷却プレート13Bを加熱するようにヒータ電源部60を制御すると、冷却プレート13Bの反りが低減して、電極プレート13Aを効率よく冷却することにより、電極プレート13Aの温度又は面内温度の差を低減できる。
【0077】
制御部70は、冷却プレート13Bの変形を小さくするように、ヒータ電源部60からヒータ13Cに供給する電力を調整するようにヒータ電源部60を制御する。
図8において、矢印Bによって指し示すように、プラズマの入熱に基づいて、ヒータ電源部60からヒータ13Cに供給する電力を調整する。制御部70は、プラズマ生成後に、ヒータ13Cの出力を増加させるように制御する。より具体的には、制御部70は、シャワーヘッド13に入熱する熱量が多くなると、ヒータ13Cの出力を増加させるように、ヒータ電源部60を制御する。すると、冷却プレート13Bの温度であるTcpにおいて矢印Aによって指し示すように、冷却プレート13Bは高くなる。
【0078】
一方、ヒータ13Cから入熱することにより、冷却プレート13Bの変形は小さくなる。冷却プレート13Bの変形が小さいことにより、電極プレート13Aと冷却プレート13Bと十分接触した状態で電極プレート13Aを冷却できる。したがって、電極プレート13Aの温度を示すTceが矢印Cで示すように低くできる。
【0079】
ここで、参考例のプラズマ処理装置について説明する。
図9に示す参考例のプラズマ処理装置において、冷却プレート13Bの温度であるTcpにおいて矢印Xによって指し示すように、冷却プレート13Bの温度を一定にするように制御する。したがって、参考例のプラズマ処理装置において、プラズマが生成すると、プラズマの入熱分を相殺する形で、ヒータ電源部60からヒータ13Cに供給される電力であるQhを矢印Yとして指し示すように減らす。上述のように、ヒータ13Cからの入熱がないと、冷却プレート13Bは上側に凸に変形することから、電極プレート13Aと冷却プレート13Bとの接触が弱くなる。したがって、電極プレート13Aの温度を示すTceが矢印Zで示すように、高くなる。
【0080】
図8におけるTceと、
図9におけるTceを比較すると、矢印Cで指し示す部分が、矢印Zで指し示す部分より低くなる。すなわち、本実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、冷却プレートの変形を低減できる。そして、本実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、冷却プレートの変形を低減することにより、電極プレートをより効率よく冷却できる。
【0081】
本実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、上部電極部がプラズマからの入熱により変形することを抑制できる。本実施形態に係るプラズマ処理装置は、上部電極部におけるプラズマからの入熱による変形を抑制することにより、電極プレートを効率よく冷却して、電極プレートの温度を低減できる。
【0082】
本実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、冷却プレートにおける流路を電極プレート側に配置することにより、冷却プレートのプラズマからの入熱により変形することをより抑制できる。
【0083】
今回開示された本実施形態に係るプラズマ処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 プラズマ処理装置
11 基板支持部
13 シャワーヘッド
13A 電極プレート
13B 冷却プレート
13C ヒータ
13r 流路
50 伝熱流体供給部
60 ヒータ電源部
70 制御部