(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098145
(43)【公開日】2025-07-01
(54)【発明の名称】成膜方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/318 20060101AFI20250624BHJP
H01L 21/302 20060101ALI20250624BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20250624BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20250624BHJP
【FI】
H01L21/318 B
H01L21/302 201A
C23C16/455
C23C16/42
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025049865
(22)【出願日】2025-03-25
(62)【分割の表示】P 2021032639の分割
【原出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 宗仁
(72)【発明者】
【氏名】村上 博紀
(57)【要約】 (修正有)
【課題】狭窄部を含む凹部に膜を埋め込む際のボイドの発生を抑制する成膜方法を提供する。
【解決手段】狭窄部を含む凹部が形成された基板を埋め込む成膜方法であって、(a)基板に第1シリコン含有ガスと第1窒素含有ガスとを供給して、第1膜を凹部の底部よりも開口部に厚く形成する工程S2と、基板に第2シリコン含有ガスと第2窒素含有ガスとを供給して、第2膜を凹部の底部と開口部とで同じ厚さに形成する工程又は第2膜を凹部の開口部よりも底部に厚く形成する工程S3と、凹部に形成された第1膜及び第2膜を部分的にエッチングする工程S4と、前記工程S3及び工程S4を複数回のサイクルを行い、複数回のサイクルを行った後に、基板に第3シリコン含有ガスと第3窒素含有ガスとを供給して、第3膜を凹部の底部と開口部とで同じ厚さに形成する工程又は第3膜を凹部の開口部よりも底部に厚く形成する工程S6と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
狭窄部を含む凹部が形成された基板の凹部に膜を埋め込む成膜方法であって、
(a)前記基板に第1のシリコン含有ガスと第1の窒素含有ガスとを供給して、第1の膜を前記凹部の底部よりも開口部に厚く形成する工程と、
(b)前記基板に第2のシリコン含有ガスと第2の窒素含有ガスとを供給して、第2の膜を前記凹部の前記底部と前記開口部とで同じ厚さに形成する工程、又は、前記第2の膜を前記凹部の前記開口部よりも前記底部に厚く形成する工程と、
(c)前記凹部に形成された前記第1の膜及び前記第2の膜を部分的にエッチングする工程と、
(d)前記基板に第3のシリコン含有ガスと第3の窒素含有ガスとを供給して、第3の膜を前記凹部の前記底部と前記開口部とで同じ厚さに形成する工程、又は、第3の膜を前記凹部の前記開口部よりも前記底部に厚く形成する工程と、
を有し、
前記工程(b)及び前記工程(c)を各々が含む複数回のサイクルを行い、前記複数回のサイクルを行った後に前記工程(d)を行う、
成膜方法。
【請求項2】
前記複数回のサイクルの少なくとも一部は、前記工程(a)を含む、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記工程(a)は、前記第1のシリコン含有ガスの供給と、前記第1の窒素含有ガスの供給とを交互に繰り返して、前記第1の膜を形成することを含む、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記工程(a)の前記第1の窒素含有ガスの供給は、N2を含むガスから生成したプラズマに前記基板を晒すことを含む、請求項3に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記工程(a)は、改質ガスから生成したプラズマに前記基板を晒して、前記第1の膜を改質することをさらに含む、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記工程(a)は、前記基板にエッチングガスを供給して、前記第1の膜をエッチングすることをさらに含む、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記工程(a)は、前記第1のシリコン含有ガスの供給と、前記第1の窒素含有ガスの供給とを同時に行い、前記第1の膜を形成することを含む、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記工程(a)は、前記第1のシリコン含有ガス及び前記第1の窒素含有ガスから生成したプラズマに前記基板を晒して、前記第1の膜を形成することを含む、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記工程(a)の前記第1のシリコン含有ガス及び前記第1の窒素含有ガスの少なくともいずれかは、供給律速状態で供給されることを含む、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記工程(b)は、前記第2のシリコン含有ガスの供給と、前記第2の窒素含有ガスの供給とを交互に繰り返して、前記第2の膜を形成することを含む、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記工程(b)の前記第2の窒素含有ガスの供給は、前記第2の窒素含有ガスから生成したプラズマに前記基板を晒すことを含む、請求項10に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記工程(b)は、改質ガスから生成したプラズマに前記基板を晒して、前記第2の膜を改質することをさらに含む、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記工程(b)は、前記凹部における前記狭窄部よりも前記開口部の側に、前記膜の堆積を阻害する阻害領域を形成することを含む、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項14】
前記工程(d)は、前記第3のシリコン含有ガスの供給と、前記第3の窒素含有ガスの供給とを交互に繰り返して、前記第3の膜を形成することを含む、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項15】
前記工程(d)の前記第3の窒素含有ガスの供給は、前記第3の窒素含有ガスから生成したプラズマに前記基板を晒すことを含む、請求項14に記載の成膜方法。
【請求項16】
前記工程(d)は、改質ガスから生成したプラズマに前記基板を晒して、前記第3の膜を改質することをさらに含む、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項17】
前記工程(d)は、前記凹部における前記狭窄部よりも前記開口部の側に、前記膜の堆積を阻害する阻害領域を形成することを含む、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項18】
前記第1の膜、前記第2の膜、及び、前記第3の膜は、シリコン窒化膜である、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項19】
前記工程(a)、前記工程(b)、前記工程(c)、及び、前記工程(d)は、減圧雰囲気下で連続して実施される、請求項1に記載の成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいて、構造の微細化に伴いアスペクト比が高い凹部にボイド(隙間)なく膜を埋め込むことが求められている。凹部に膜を埋め込むプロセスの一例として、堆積とエッチングとを交互に繰り返すことで凹部の底部からボトムアップで膜を埋め込む技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、狭窄部を有する凹部に膜を埋め込む際のボイドの発生を抑制できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による成膜方法は、狭窄部を含む凹部が形成された基板の凹部に膜を埋め込む成膜方法であって、(a)前記基板に第1のシリコン含有ガスと第1の窒素含有ガスとを供給して、第1の膜を前記凹部の底部よりも開口部に厚く形成する工程と、(b)前記基板に第2のシリコン含有ガスと第2の窒素含有ガスとを供給して、第2の膜を前記凹部の前記底部と前記開口部とで同じ厚さに形成する工程、又は、前記第2の膜を前記凹部の前記開口部よりも前記底部に厚く形成する工程と、(c)前記凹部に形成された前記第1の膜及び前記第2の膜を部分的にエッチングする工程と、(d)前記基板に第3のシリコン含有ガスと第3の窒素含有ガスとを供給して、第3の膜を前記凹部の前記底部と前記開口部とで同じ厚さに形成する工程、又は、第3の膜を前記凹部の前記開口部よりも前記底部に厚く形成する工程と、を有し、前記工程(b)及び前記工程(c)を各々が含む複数回のサイクルを行い、前記複数回のサイクルを行った後に前記工程(d)を行う。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、狭窄部を有する凹部に膜を埋め込む際のボイドの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の成膜方法の一例を示すフローチャート
【
図3】実施形態の成膜方法を実施するための処理システムの一例を示す図
【
図4】実施形態の成膜方法を実施するための処理装置の一例を示す図
【
図5】凹部に低カバレッジ条件でSiN膜を形成した結果を示す図(1)
【
図6】凹部に低カバレッジ条件でSiN膜を形成した結果を示す図(2)
【
図7】従来の成膜方法で狭窄部を含む凹部に膜を埋め込む場合の埋め込み特性を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔埋め込みプロセス〕
半導体製造プロセスにおいて、構造の微細化に伴いアスペクト比が高い凹部にボイド(隙間)なく膜を埋め込むことが求められている。凹部に膜を埋め込むプロセスの一例として、堆積(Deposition)とエッチング(Etching)とを交互に繰り返すことで凹部の底部からボトムアップで膜を埋め込む技術(以下「DEDプロセス」ともいう。)が知られている。DEDプロセスを用いることで、ボイドの発生を抑制できる。
【0010】
しかしながら、DEDプロセスを用いて、狭窄部を含む凹部が形成された基板の凹部に膜を埋め込む場合、凹部の開口部において下地にダメージが生じ得る。以下、
図7を参照し、下地にダメージが生じ得る理由を説明する。
図7は、従来の成膜方法で狭窄部を含む凹部に膜を埋め込む場合の埋め込み特性を説明するための図である。
【0011】
図7(a)は、狭窄部を含む凹部が形成された基板の概略断面図である。
図7(a)に示されるように、基板900は、凹部910が形成された下地920を有する。凹部910は、開口部911、狭窄部912及び底部913を含む。開口部911は、凹部910の上部において開口した部分である。狭窄部912は、開口部911から底部913までの途中に形成され、開口部911及び底部913よりも断面視での幅が狭い部分である。底部913は、凹部910の下部における凹部910の底面914を含む部分である。
【0012】
図7(b)は、
図7(a)に示される凹部にコンフォーマルに膜を形成したときの基板の概略断面図であり、DEDプロセスにおいて堆積を行った後の状態を示す。
図7(b)に示されるように、基板900の凹部910には、狭窄部912が閉塞しない程度にコンフォーマルに膜930が形成されている。
【0013】
図7(c)は、凹部にコンフォーマルに膜が形成された基板に対してドライエッチングを施したときの基板の概略断面図であり、DEDプロセスにおいてエッチングを行った後の状態を示す。
図7(c)に示されるように、狭窄部912を含む凹部910が形成された基板900では、エッチング後の堆積で底部913に膜930が埋め込まれるようにするため、狭窄部912に堆積した膜930をエッチングして除去することが好ましい。ところで、DEDプロセスのエッチングでは、凹部910にコンフォーマルに形成された膜930を、断面視でV字状にエッチングする。すなわち、エッチングは、底部913よりも開口部911の方が膜930に対するエッチングレートが高い条件で行われる。そのため、狭窄部912に堆積した膜930を除去する前に、開口部911に堆積した膜930が除去される。そして、開口部911に堆積した膜930が除去された状態でドライエッチングを継続すると、下地920の一部が削られる等、下地920にダメージが生じる。これは、対下地選択比が無限大ではないためである。
【0014】
以下では、狭窄部を有する凹部に、下地に対するダメージを抑制しつつ、ボイドレスで膜を埋め込むことができる実施形態の成膜方法について説明する。
【0015】
〔成膜方法〕
図1及び
図2を参照し、実施形態の成膜方法の一例について説明する。以下では、凹部にシリコン窒化膜(SiN膜)を成膜して埋め込む場合を例に挙げて説明する。
【0016】
(工程S1)
まず、工程S1では、狭窄部を含む凹部が形成された基板を準備する。
図2(a)に示されるように、基板100は、凹部110が形成された下地120を有する。凹部110は、開口部111、狭窄部112及び底部113を含む。開口部111は、凹部110の上部において開口した部分である。狭窄部112は、開口部111から底部113までの途中に形成され、開口部111及び底部113よりも断面視での幅が狭い部分である。底部113は、凹部110の下部における凹部110の底面114を含む部分である。図示の例では、凹部110は、開口部111から狭窄部112に向かうにつれて連続的に狭くなり、狭窄部112から底部113に向かうにつれて連続的に拡がる形状を有する。ただし、凹部110は、図示された形状に限定されず、開口部111から底部113までの途中に狭窄部112を含む別の形状であってもよい。凹部110は、トレンチ、ホール等である。下地120は、例えばシリコンや絶縁膜で構成され、部分的に金属や金属化合物が存在していてもよい。
【0017】
(工程S2)
次いで、工程S2では、
図2(b)に示されるように、凹部110の底部113よりも開口部111に厚く形成される条件(以下「低カバレッジ条件」ともいう。)で凹部110にSiN膜130を形成する。
【0018】
工程S2は、例えば原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)によりSiN膜130を形成することを含んでいてよい。
【0019】
ALDによりSiN膜130を形成する場合、基板100にシリコン含有ガスを供給するステップと、N2を含むガスから生成したプラズマに基板100を晒すステップと、を交互に繰り返すことが好ましい。基板100にシリコン含有ガスを供給するステップでは基板100にシリコン含有ガスが吸着し、N2を含むガスから生成したプラズマに基板100を晒すステップでは基板100に吸着したシリコン含有ガスが窒化されてSiNの層が形成される。ここで、N2を含むガスから生成したプラズマ中のラジカルは寿命が短いため、凹部110の底部113に到達しにくい。そのため、凹部110の底部113に形成されるSiN膜130が薄くなる。その結果、凹部110の底部113よりも開口部111に特に厚くSiN膜130を形成できる。なお、N2を含むガスは、例えばN2ガスのみであってよく、NH3、H2を更に含んでいてもよい。ただし、底部113と開口部111との間の膜厚差が大きくなるという観点から、N2を含むガスはN2のみであることが好ましい。
【0020】
また、ALDによりSiN膜130を形成する場合、基板100にシリコン含有ガスを供給律速状態で供給するステップと、基板100に窒素含有ガスを供給するステップと、を交互に繰り返すことが好ましい。供給律速状態とは、基板100が収容される処理容器内へ供給する処理ガスの量が非常に少ない領域であって、成膜速度が処理ガスの供給量に主に支配される状態を意味する。例えば、処理ガスの供給量を少なくし、処理温度を高くすることにより、供給律速状態を実現できる。基板100にシリコン含有ガスを供給律速状態で供給することで、凹部110に供給されるシリコン含有ガスが底部113に到達する前に開口部111や狭窄部112に吸着して消費される。その結果、凹部110の底部113よりも開口部111に特に厚くSiN膜130を形成できる。なお、基板100に供給律速状態で供給するガスは、シリコン含有ガスに限らず、窒素含有ガスであってもよく、シリコン含有ガスと窒素含有ガスの両方であってもよい。
【0021】
また、ALDによりSiN膜130を形成する場合、SiN膜130を形成する工程を含み、SiN膜130をエッチングする工程を含んでもよい。SiN膜130を形成する工程は、基板100にシリコン含有ガスを供給するステップと、基板100に窒素含有ガスを供給するステップと、を含むサイクルを繰り返すことを含み、さらにHeを含むガスから生成したプラズマに基板100を晒すステップを含んでいてよい。基板100にシリコン含有ガスを供給するステップでは基板100にシリコン含有ガスが吸着し、基板100に窒素含有ガスを供給するステップでは基板100に吸着したシリコン含有ガスが窒化されてSiNの層が形成される。また、Heを含むガスから生成したプラズマに基板100を晒すステップでは、SiNの層及び/又はSiN膜130がエッチング耐性の高い膜に改質される。ここで、Heを含むガスから生成したプラズマによる改質では、凹部110の底部113よりも開口部111がエッチング耐性の高い膜に改質されやすい。そのため、SiN膜130を形成する工程の後に行われるSiN膜130をエッチングする工程では、凹部110の開口部111よりも底部113におけるSiN膜130のエッチングの量が多くなる。その結果、凹部110の底部113よりも開口部111に特に厚くSiN膜130を形成できる。なお、基板100に窒素含有ガスを供給するステップは、窒素含有ガスから生成したプラズマに基板100を晒すステップに変更してもよい。また、Heを含むガスは、例えばArを含んでいてもよい。また、SiN膜130をエッチングする工程は、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれであってもよい。ドライエッチングによりSiN膜130をエッチングする場合、エッチングガスとしては、NF3、CHF系ガス等を利用できる。また、それらのエッチングガスには、O2、N2、H2等のガスを添加してもよい。ウェットエッチングによりSiN膜130をエッチングする場合、希フッ酸(DHF:Diluted HF)等を利用できる。
【0022】
また、工程S2は、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)によりSiN膜130を形成することを含んでいてよい。CVDによりSiN膜130を形成することで、凹部110の底部113よりも開口部111に厚くSiN膜130を形成できる。
【0023】
CVDによりSiN膜130を形成する場合、シリコン含有ガスと窒素含有ガスとの反応を熱により行う熱CVD(Th-CVD)によりSiN膜130を形成することを含んでいてよい。すなわち、基板100にシリコン含有ガス及び窒素含有ガスを供給することによりSiN膜130を形成することを含んでいてよい。
【0024】
また、CVDによりSiN膜130を形成する場合、シリコン含有ガスと窒素含有ガスとの反応をプラズマによるアシストで行うプラズマCVD(PE-CVD)によりSiN膜130を形成することを含んでいてよい。すなわち、シリコン含有ガス及び窒素含有ガスから生成したプラズマに基板100を晒すことによりSiN膜130を形成することを含んでいてよい。
【0025】
また、CVDによりSiN膜130を形成する場合、基板100にシリコン含有ガス及び窒素含有ガスを供給律速状態で供給することが好ましい。基板100にシリコン含有ガス及び窒素含有ガスを供給律速状態で供給することで、凹部110に供給されるシリコン含有ガス及び窒素含有ガスが底部113に到達する前に開口部111や狭窄部112において消費される。その結果、凹部110の底部113よりも開口部111に特に厚くSiN膜130を形成できる。
【0026】
なお、工程S2において用いられるシリコン含有ガスとしては、例えばヘキサクロロジシラン(HCD)、モノシラン[SiH4]、ジシラン[Si2H6]、ジクロロシラン(DCS)、ヘキサエチルアミノジシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、テトラクロロシラン(TCS)、ジシリルアニン(DSA)、トリシリルアミン(TSA)及びビスターシャルブチルアミノシラン(BTBAS)、ブチルアミノシラン、ジメチルアミノシラン、ビスジメチルアミノシラン、トリジメチルアミノシラン、ジエチルアミノシラン、ビスジエチルアミノシラン、ジプロピルアミノシラン、ジイソプロピルアミノシラン、ヘキサキスエチルアミノジシラン等からなる群から選択される1又は2以上のガスを利用できる。
【0027】
また、工程S2において用いられる窒素含有ガスとしては、例えば窒素(N2)、アンモニア(NH3)、ジアゼン(N2H2)、ヒドラジン(N2H4)及びモノメチルヒドラジン(CH3(NH)NH2)等の有機ヒドラジン化合物からなる群から選択される1又は2以上のガスを利用できる。
【0028】
(工程S3)
次いで、工程S3では、
図2(c)に示されるように、凹部110の底部113と開口部111とで同じ厚さに形成される条件、又は凹部110の開口部111よりも底部113に厚く形成される条件で凹部110にSiN膜140を形成する。
【0029】
工程S3は、例えばALDによりSiN膜140を形成することを含んでいてよい。ALDによりSiN膜140を形成することで、凹部110の底部113と開口部111とで同じ厚さ(コンフォーマル)にSiN膜140を形成できる。
【0030】
ALDによりSiN膜140を形成する場合、シリコン含有ガスと窒素含有ガスとの反応を熱により行う熱ALD(Th-ALD)によりSiN膜140を形成することを含んでいてよい。すなわち、基板100にシリコン含有ガスを供給するステップと、基板100に窒素含有ガスを供給するステップと、を交互に繰り返すことによりSiN膜140を形成することを含んでいてよい。基板100にシリコン含有ガスを供給するステップでは基板100にシリコン含有ガスが吸着し、基板100に窒素含有ガスを供給するステップでは基板100に吸着したシリコン含有ガスが窒化されてSiNの層が形成される。熱ALDにおいて用いられる窒素含有ガスとしては、NH3、N2H4等を利用できる。
【0031】
また、ALDによりSiN膜140を形成する場合、シリコン含有ガスと窒素含有ガスとの反応をプラズマによるアシストで行うプラズマALD(PE-ALD)によりSiN膜140を形成することを含んでいてよい。すなわち、基板100にシリコン含有ガスを供給するステップと、窒素含有ガスを含むガスから生成したプラズマに基板100を晒すステップと、を交互に繰り返すことを含んでいてよい。プラズマALDにおいて用いられる窒素含有ガスとしては、例えば、NH3、N2/H2、NH3/N2/H2からなる群から選択される1又は2以上のガスを利用できる。窒素含有ガスに希ガスを添加してもよい。
【0032】
また、ALDによりSiN膜140を形成する場合、改質ガスから生成したプラズマに基板100を晒すことで、SiNの層及び/又はSiN膜140をエッチング耐性の高い膜に改質してもよい。すなわち、基板100にシリコン含有ガスを供給するステップと、窒素含有ガスを含むガスから生成したプラズマに基板100を晒すステップと、改質ガスから生成したプラズマに基板100を晒すステップと、を繰り返すことを含んでいてよい。改質ガスとしては、例えば、He、H2等を挙げることができる。
【0033】
また、工程S3は、凹部110における狭窄部112よりも上方に開口している側(すなわち、狭窄部112より浅い開口部111側)に、SiN膜の堆積を阻害する阻害領域を形成するステップを含んでいてよい。これにより、凹部110の開口部111へのSiN膜140の堆積が阻害されるので、凹部110の開口部111よりも底部113に厚くSiN膜140を形成できる。阻害領域を形成するステップは、例えばハロゲンを含むガスから生成したプラズマに基板100を晒すことを含んでいてよい。ハロゲンを含むガスとしては、例えば、フッ素ガス(F2)、塩素ガス(Cl2)、フッ化水素ガス(HF)等を利用できる。また、阻害領域を形成するステップは、例えばN2を含むガスから生成したプラズマに基板100を晒すことを含んでいてよい。
【0034】
なお、工程S3において用いられるシリコン含有ガスとしては、例えば工程S2において用いられるシリコン含有ガスと同じガスを利用でき、シリコンハライドやアミノシラン等を利用できる。
【0035】
(工程S4)
次いで、工程S4では、
図2(d)に示されるように、凹部110に形成されたSiN膜130,140を、底部113よりも開口部111のエッチング速度が大きいエッチング条件でエッチングし、SiN膜130,140を部分的に除去する。これにより、開口部111及び狭窄部112が拡がるので、後に再び行われる工程S3において狭窄部112よりも底部113の側にSiN膜140が埋め込むことができる。
【0036】
工程S4では、底部113よりも開口部111の方がSiN膜130に対するエッチングレートが高い条件でSiN膜130,140のエッチングが行われるため、狭窄部112よりも開口部111の方がSiN膜130,140のエッチングの量が多くなる。そのため、狭窄部112に形成されたSiN膜130,140を除去する前に、開口部111に形成されたSiN膜130,140が除去されて下地120が露出するおそれがある。しかし、本実施形態では、工程S2において凹部110の底部113よりも開口部111に厚くSiN膜130が形成されている。これにより、狭窄部112に形成されたSiN膜130,140が除去される前に、開口部111に形成されたSiN膜130,140が除去されることを抑制できる。そのため、開口部111において下地120が露出することを抑制できる。その結果、対下地選択比が無限大でない場合であっても、開口部111において下地120がダメージを受けることを抑制できる。
【0037】
工程S4は、基板100にNF3又はCHF系ガスを供給することを含んでいてよい。これにより、凹部110に形成されたSiN膜130,140を、底部113よりも開口部111のエッチング速度が大きいエッチング条件でエッチングできる。
【0038】
また、工程S4は、基板100にNF3又はCHF系ガスを供給律速状態で供給することを含んでいてよい。これにより、凹部110に形成されたSiN膜130,140を、底部113よりも開口部111のエッチング速度が大きいエッチング条件でエッチングできる。
【0039】
(工程S5)
次いで、工程S5では、工程S3及び工程S4を含むサイクルの繰り返し回数が所定回数に到達したか否かを判定する。工程S3及び工程S4を含むサイクルの繰り返し回数が所定回数に到達していない場合、再び工程S3及び工程S4を行う。すなわち、所定回数に到達するまで、コンフォーマル又は開口部111が薄いSiN膜140の成膜と、SiN膜130,140のエッチングとを繰り返す。これにより、
図2(e)に示されるように、凹部110における狭窄部112よりも底部113の側にボイドレスでSiN膜140を埋め込むことができる。また、工程S3及び工程S4を含むサイクルの繰り返し回数が所定回数に到達した場合、工程S6に進む。所定回数は、1回以上である。
【0040】
また、工程S4において開口部111に形成されたSiN膜130が除去されて下地120が露出する場合や露出するおそれがある場合には、工程S3及び工程S4を繰り返している間であって、工程S4の後かつ工程S3の前に工程S2を行ってもよい。すなわち、工程S3及び工程S4を各々が含む複数回のサイクルの一部が工程S2を含んでいてよい。
【0041】
(工程S6)
次いで、工程S6では、凹部110の底部113と開口部111とで同じ厚さに形成される条件又は凹部110の開口部111よりも底部113に厚く形成される条件で凹部110にSiN膜140を形成する。これにより、
図2(f)に示されるように、凹部110にボイドレスでSiN膜140を埋め込むことができる。
【0042】
工程S6は、例えばALDによりSiN膜140を形成することを含んでいてよい。ALDによりSiN膜140を形成することで、凹部110の底部113と開口部111とで同じ厚さ(コンフォーマル)にSiN膜140を形成できる。また、ALDによりSiN膜140を形成することで凹部110の開口部111よりも底部113の方が厚くなるSiN膜140を形成することができる。ALDによりSiN膜140を形成する方法は、工程S3においてALDによりSiN膜140を形成する方法と同じであってよい。
【0043】
以上に説明した実施形態によれば、狭窄部を含む凹部が形成された基板に対し、低カバレッジ条件でSiN膜を形成し、次いでコンフォーマル又は開口部が薄いSiN膜の成膜と、該SiN膜のエッチングとを繰り返すことにより、凹部にSiN膜を埋め込む。これにより、SiN膜のエッチングの際に低カバレッジ条件で形成されたSiN膜が下地の露出を防止する保護膜として機能する。これにより、SiN膜のエッチングの際に下地がダメージを受けることを抑制できる。また、コンフォーマル又は開口部が薄いSiN膜の成膜と、該SiN膜のエッチングとを繰り返しながら凹部にSiN膜を形成するので、狭窄部の閉塞を防止できる。その結果、凹部に膜を埋め込む際のボイドの発生を抑制できる。
【0044】
〔処理システム〕
図3を参照し、実施形態の成膜方法を実施するための処理システムの一例について説明する。
【0045】
処理システムPSは、処理装置PM1~PM4と、真空搬送室VTMと、ロードロック室LL1~LL3と、大気搬送室LMと、ロードポートLP1~LP3と、全体制御部CU0と、を備える。
【0046】
処理装置PM1~PM4は、それぞれゲートバルブG11~G14を介して真空搬送室VTMと接続されている。処理装置PM1~PM4内は所定の真空雰囲気に減圧され、その内部にて基板Wに所望の処理を施す。
【0047】
真空搬送室VTM内は、所定の真空雰囲気に減圧されている。真空搬送室VTMには、減圧状態で基板Wを搬送可能な搬送機構TR1が設けられている。搬送機構TR1は、処理装置PM1~PM4、ロードロック室LL1~LL3に対して、基板Wを搬送する。搬送機構TR1は、例えば独立に移動可能な2つの搬送アームFK11,FK12を有する。
【0048】
ロードロック室LL1~LL3は、それぞれゲートバルブG21~G23を介して真空搬送室VTMと接続され、ゲートバルブG31~G33を介して大気搬送室LMと接続されている。ロードロック室LL1~LL3内は、大気雰囲気と真空雰囲気とを切り替えることができるようになっている。
【0049】
大気搬送室LM内は、大気雰囲気となっており、例えば清浄空気のダウンフローが形成されている。大気搬送室LM内には、基板Wのアライメントを行うアライナANが設けられている。また、大気搬送室LMには、搬送機構TR2が設けられている。搬送機構TR2は、ロードロック室LL1~LL3、後述するロードポートLP1~LP3のキャリアC、アライナANに対して、基板Wを搬送する。
【0050】
ロードポートLP1~LP3は、大気搬送室LMの長辺の壁面に設けられている。ロードポートLP1~LP3は、基板Wが収容されたキャリアC又は空のキャリアCが取り付けられる。キャリアCとしては、例えばFOUP(Front Opening Unified Pod)を利用できる。
【0051】
全体制御部CUは、例えばコンピュータであってよい。全体制御部CUは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置等を備える。CPUは、ROM又は補助記憶装置に格納されたプログラムに基づいて動作し、処理システムPSの各部を制御する。例えば、全体制御部CUは、処理装置PM1~PM4の動作、搬送機構TR1,TR2の動作、ゲートバルブG11~G14,G21~G23,G31~G33の開閉、ロードロック室LL1~LL3内の雰囲気の切り替え等を実行する。
【0052】
実施形態の処理システムPSでは、処理装置PM1~PM4のうちの少なくとも1つを用いて、実施形態の成膜方法における工程S2~S4,S6を減圧雰囲気下で連続して実施する。例えば、処理装置PM1~PM4のうちの1つを用いて工程S2~S4,S6を連続して実施してもよい。また例えば、処理装置PM1~PM4のうちの1つを用いて工程S2,S3を連続して実施し、別の1つを用いて工程S4を実施し、更に別の1つを用いて工程S6を実施してもよい。また例えば、処理装置PM1~PM4が各々異なる工程S2~S4,S6を実施してもよい。
【0053】
〔処理装置〕
図4を参照し、
図3の処理システムPSが備える処理装置PM1~PM4として用いられる処理装置の一例について説明する。
【0054】
処理装置は、処理容器1、載置台2、シャワーヘッド3、排気部4、ガス供給部5、RF電力供給部8、制御部9等を有する。
【0055】
処理容器1は、アルミニウム等の金属により構成され、略円筒状を有している。処理容器1は、基板Wを収容する。基板Wは、例えば半導体ウエハである。処理容器1の側壁には、基板Wを搬入又は搬出するための搬入出口11が形成されている。搬入出口11は、ゲートバルブ12により開閉される。処理容器1の本体の上には、断面が矩形状をなす円環状の排気ダクト13が設けられている。排気ダクト13には、内周面に沿ってスリット13aが形成されている。排気ダクト13の外壁には、排気口13bが形成されている。排気ダクト13の上面には、絶縁体部材16を介して処理容器1の上部開口を塞ぐように天壁14が設けられている。排気ダクト13と絶縁体部材16との間はシールリング15で気密に封止されている。区画部材17は、載置台2(及びカバー部材22)が後述する処理位置へと上昇した際、処理容器1の内部を上下に区画する。
【0056】
載置台2は、処理容器1内で基板Wを水平に支持する。載置台2は、基板Wに対応した大きさの円板状に形成されており、支持部材23に支持されている。載置台2は、AlN等のセラミックス材料や、アルミニウムやニッケル合金等の金属材料で形成されており、内部に基板Wを加熱するためのヒータ21が埋め込まれている。ヒータ21は、ヒータ電源(図示せず)から給電されて発熱する。そして、載置台2の上面の近傍に設けられた熱電対(図示せず)の温度信号によりヒータ21の出力を制御することで、基板Wが所定の温度に制御される。載置台2には、上面の外周領域及び側面を覆うようにアルミナ等のセラミックスにより形成されたカバー部材22が設けられている。
【0057】
載置台2の底面には、載置台2を支持する支持部材23が設けられている。支持部材23は、載置台2の底面の中央から処理容器1の底壁に形成された孔部を貫通して処理容器1の下方に延び、その下端が昇降機構24に接続されている。昇降機構24により載置台2が支持部材23を介して、
図1で示す処理位置と、その下方の二点鎖線で示す基板Wの搬送が可能な搬送位置との間で昇降する。支持部材23の処理容器1の下方には、鍔部25が取り付けられている。処理容器1の底面と鍔部25との間には、ベローズ26が設けられている。ベローズ26は、処理容器1内の雰囲気を外気と区画し、載置台2の昇降動作にともなって伸縮する。
【0058】
処理容器1の底面の近傍には、昇降板27aから上方に突出するように3本(2本のみ図示)のウエハ支持ピン27が設けられている。ウエハ支持ピン27は、処理容器1の下方に設けられた昇降機構28により昇降板27aを介して昇降する。ウエハ支持ピン27は、搬送位置にある載置台2に設けられた貫通孔2aに挿通されて載置台2の上面に対して突没可能となっている。ウエハ支持ピン27を昇降させることにより、搬送機構(図示せず)と載置台2との間で基板Wの受け渡しが行われる。
【0059】
シャワーヘッド3は、処理容器1内に処理ガスをシャワー状に供給する。シャワーヘッド3は、金属製であり、載置台2に対向するように設けられており、載置台2とほぼ同じ直径を有している。シャワーヘッド3は、本体部31及びシャワープレート32を有する。本体部31は、処理容器1の天壁14に固定されている。シャワープレート32は、本体部31の下に接続されている。本体部31とシャワープレート32との間には、ガス拡散空間33が形成されている。ガス拡散空間33には、処理容器1の天壁14及び本体部31の中央を貫通するようにガス導入孔36が設けられている。シャワープレート32の周縁部には下方に突出する環状突起部34が形成されている。環状突起部34の内側の平坦部には、ガス吐出孔35が形成されている。載置台2が処理位置に存在した状態では、載置台2とシャワープレート32との間に処理空間38が形成され、カバー部材22の上面と環状突起部34とが近接して環状隙間39が形成される。
【0060】
排気部4は、処理容器1の内部を排気する。排気部4は、排気口13bに接続された排気配管41と、排気配管41に接続された真空ポンプや圧力制御バルブ等を有する排気機構42とを有する。処理に際しては、処理容器1内のガスがスリット13aを介して排気ダクト13に至り、排気ダクト13から排気配管41を通って排気機構42により排気される。
【0061】
ガス供給部5は、シャワーヘッド3に各種の処理ガスを供給する。ガス供給部5は、ガス源51及びガスライン52を含む。ガス源51は、例えば各種の処理ガスの供給源、マスフローコントローラ、バルブ(いずれも図示せず)を含む。各種の処理ガスは、前述の実施形態の成膜方法において用いられるガスを含む。各種のガスは、ガス源51からガスライン52及びガス導入孔36を介してガス拡散空間33に導入される。
【0062】
また、処理装置は、容量結合プラズマ装置であって、載置台2が下部電極として機能し、シャワーヘッド3が上部電極として機能する。載置台2は、コンデンサ(図示せず)を介して接地されている。ただし、載置台2は、例えばコンデンサを介さずに接地されていてもよく、コンデンサとコイルを組み合わせた回路を介して接地されていてもよい。シャワーヘッド3は、RF電力供給部8に接続されている。
【0063】
RF電力供給部8は、高周波電力(以下、「RF電力」ともいう。)をシャワーヘッド3に供給する。RF電力供給部8は、RF電源81、整合器82及び給電ライン83を有する。RF電源81は、RF電力を発生する電源である。RF電力は、プラズマの生成に適した周波数を有する。RF電力の周波数は、例えば低周波数帯の450KHzからマイクロ波帯の2.45GHzの範囲内の周波数である。RF電源81は、整合器82及び給電ライン83を介してシャワーヘッド3の本体部31に接続されている。整合器82は、RF電源81の内部インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるための回路を有する。なお、RF電力供給部8は、上部電極となるシャワーヘッド3にRF電力を供給するものとして説明したが、これに限られるものではない。下部電極となる載置台2にRF電力を供給する構成であってもよい。
【0064】
制御部9は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置等を備える。CPUは、ROM又は補助記憶装置に格納されたプログラムに基づいて動作し、処理装置の動作を制御する。制御部9は、処理装置の内部に設けられていてもよく、外部に設けられていてもよい。制御部9が処理装置の外部に設けられている場合、制御部9は、有線又は無線等の通信手段によって、処理装置を制御できる。
【0065】
〔評価結果〕
図5及び
図6を参照し、実施形態の成膜方法における工程S2で用いられる低カバレッジ条件で凹部(トレンチ)にSiN膜を形成し、形成したSiN膜を電子顕微鏡で観察した。
【0066】
まず、SiN膜の上にアモルファスシリコン(a-Si)膜により形成された凹部を含む基板を準備した。次いで、低カバレッジ条件として、基板にシリコン含有ガスを供給するステップと、N
2を含むガスから生成したプラズマに基板を晒すステップと、を交互に繰り返すことにより、凹部にSiN膜を形成した。シリコン含有ガスとしては、ビスジエチルアミノシラン(BDEAS)を用いた。N
2を含むガスとしては、N
2とArとの混合ガスを用いた。具体的には、
図4のような処理装置で、例えば、圧力を0.1~50Torr(1.3×10
1~6.7×10
3Pa)に維持しつつ、BDEASを特定の流量で0.05~1.0秒で供給するステップと、N
2の特定の流量から生成された10~1000Wの電力のプラズマに0.1~6.0秒晒すステップと、を交互に繰り返して凹部にSiN膜を形成した。
【0067】
図5は、凹部に低カバレッジ条件でSiN膜を形成した結果を示す図であり、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)による観察結果を示す。
【0068】
図5に示されるように、凹部の底部よりも開口部に厚くSiN膜が形成されていることが分かる。この結果から、基板にシリコン含有ガスを供給するステップと、N
2を含むガスから生成したプラズマに基板を晒すステップと、を交互に繰り返すことで、凹部の底部よりも開口部に厚くSiN膜を形成できることが示された。
【0069】
次に、結晶シリコン(Si)により形成された凹部を含む基板を準備した。次いで、低カバレッジ条件として、SiN膜を形成する工程及びSiN膜をエッチングする工程をこの順に行うことにより、凹部にSiN膜を形成した。SiN膜を形成する工程では、基板にシリコン含有ガスを供給するステップと、窒素含有ガスから生成したプラズマに基板を晒すステップと、Heを含むガスから生成したプラズマに基板を晒すステップと、を含むサイクルを繰り返した。SiN膜をエッチングする工程では、希フッ酸を用いたウェットエッチングを行った。シリコン含有ガスとしては、ジクロロシラン(DCS)を用いた。窒素含有ガスとしては、NH
3を用いた。Heを含むガスとしては、HeとArとの混合ガスを用いた。具体的には、
図4のような処理装置で、例えば、圧力を0.1~50Torr(1.3×10
1~6.7×10
3Pa)に維持しつつ、DCSを特定の流量で0.05~1.0秒で供給するステップと、NH
3の特定の流量から生成された100~3000Wの電力のプラズマに1.0~10.0秒晒すステップと、Heの特定流量から生成された10~1000Wの電力のプラズマに1.0~10.0秒晒すステップとを、繰り返して凹部にSiN膜を形成した。
【0070】
図6は、凹部に低カバレッジ条件でSiN膜を形成した結果を示す図であり、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察結果を示す。
図6(a)は、SiN膜を形成する工程の後のTEMによる観察結果を示し、
図6(b)は、SiN膜をエッチングする工程の後のTEMによる観察結果を示す。
【0071】
図6(a)に示されるように、SiN膜を形成する工程の後には、凹部にコンフォーマルにSiN膜が形成されていることが分かる。また、
図6(b)に示されるように、SiN膜をエッチングする工程の後には、凹部の底部に形成されたSiN膜がほとんど除去され、凹部の開口部に形成されたSiN膜が残存していることが分かる。この結果から、SiN膜を形成する工程においてHeを含むガスから生成したプラズマに基板を晒し、次いでSiN膜を形成する工程において形成されたSiN膜をエッチングすることで、凹部の底部よりも開口部に厚くSiN膜を形成できることが示された。
【0072】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0073】
上記の実施形態では、処理装置が容量結合プラズマ装置である場合を説明してきたが、本開示はこれに限定されない。例えば、誘導結合型プラズマ、表面波プラズマ(マイクロ波プラズマ)、マグネトロンプラズマ、リモートプラズマ等をプラズマ源とするプラズマ装置であってもよい。
【0074】
上記の実施形態では、成膜方法の一例として、凹部にSiN膜を埋め込む場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、凹部に埋め込む膜は、シリコン酸化膜(SiO2膜)、金属窒化物膜、金属酸化物膜であってもよい。
【0075】
上記の実施形態では、処理装置がウエハを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、処理装置は複数のウエハに対して一度に処理を行うバッチ式の装置であってもよい。また、例えば処理装置は処理容器内の回転テーブルの上に配置した複数のウエハを回転テーブルにより公転させ、第1のガスが供給される領域と第2のガスが供給される領域とを順番に通過させてウエハに対して処理を行うセミバッチ式の装置であってもよい。また、1つの処理容器内に複数の載置台を備えた複数枚葉処理装置であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
100 基板
110 凹部
111 開口部
112 狭窄部
113 底部
130 SiN膜
140 SiN膜