(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098419
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】情報処理装置、プログラム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20250625BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20250625BHJP
H01J 37/22 20060101ALI20250625BHJP
G01B 15/02 20060101ALI20250625BHJP
【FI】
H01L21/66 J
H01L21/02 Z
H01J37/22 502H
G01B15/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214534
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】永松 大樹
【テーマコード(参考)】
2F067
4M106
5C101
【Fターム(参考)】
2F067AA02
2F067AA03
2F067AA21
2F067BB04
2F067CC17
2F067EE05
2F067GG01
2F067GG06
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2F067GG08
2F067HH06
2F067JJ05
2F067KK04
2F067KK07
2F067RR24
2F067RR35
2F067RR36
4M106AA01
4M106BA02
4M106CA39
4M106DB05
4M106DH03
4M106DH08
4M106DH24
4M106DH33
4M106DJ14
4M106DJ38
5C101AA03
5C101HH17
5C101HH27
5C101HH36
5C101KK06
5C101KK13
5C101KK17
5C101KK18
(57)【要約】
【課題】複数の画像データから測長した測長箇所の寸法データとプロセス条件のパラメータとの相関関係の認識をより容易にする技術を提供する。
【解決手段】電子顕微鏡によって撮像された複数の画像データを処理する情報処理装置であって、画像データを測長対象の領域とそれ以外の領域とに二値化する二値化処理部と、二値化した画像データから得られる測長対象の領域の輪郭データを用いて、測長対象の領域の複数の測長箇所の寸法データを測長する測長処理部と、画像データと対応付いた複数のパラメータを含むプロセス条件を用いて、複数の測長箇所の寸法データと複数のパラメータとの相関関係を視覚的に示す画像を出力する出力処理部と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子顕微鏡によって撮像された複数の画像データを処理する情報処理装置であって、
前記画像データを測長対象の領域とそれ以外の領域とに二値化する二値化処理部と、
二値化した前記画像データから得られる前記測長対象の領域の輪郭データを用いて、前記測長対象の領域の複数の測長箇所の寸法データを測長する測長処理部と、
前記画像データと対応付いた複数のパラメータを含むプロセス条件を用いて、前記複数の測長箇所の寸法データと前記複数のパラメータとの相関関係を視覚的に示す画像を出力する出力処理部と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記出力処理部は、前記複数の測長箇所の寸法データと前記複数のパラメータとの相関関係を視覚的に示す画像を、前記プロセス条件のパラメータ毎に出力する
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記出力処理部は、前記複数の測長箇所の寸法データごとに算出された前記複数のパラメータとの相関係数を、前記画像データの前記複数の測長箇所に重畳して表示する
請求項1又は2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記画像データと対応付いた複数のパラメータは、被撮像物を処理した際の前記プロセス条件に含まれる前記複数のパラメータであり、
前記出力処理部は、値の異なる前記パラメータと対応付いた複数の前記画像データの同一の前記測長箇所の寸法データを用いて、前記複数の測長箇所ごとに前記相関係数を算出する
請求項3記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記出力処理部は、前記画像データの前記複数の測長箇所に、一の前記パラメータとの前記相関係数を示す色を重畳して表示する
請求項3記載の情報処理装置。
【請求項6】
電子顕微鏡によって撮像された複数の画像データを処理する情報処理装置に、
前記画像データを測長対象の領域とそれ以外の領域とに二値化する二値化処理工程、
二値化した前記画像データから得られる前記測長対象の領域の輪郭データを用いて、前記測長対象の領域の複数の測長箇所の寸法データを測長する測長処理工程、
前記画像データと対応付いた複数のパラメータを含むプロセス条件を用いて、前記複数の測長箇所の寸法データと前記複数のパラメータとの相関関係を視覚的に示す画像を出力する出力処理工程、
を実行させるプログラム。
【請求項7】
電子顕微鏡によって撮像された複数の画像データを処理する情報処理装置の情報処理方法であって、
前記画像データを測長対象の領域とそれ以外の領域とに二値化することと、
二値化した前記画像データから得られる前記測長対象の領域の輪郭データを用いて、前記測長対象の領域の複数の測長箇所の寸法データを測長することと、
前記画像データと対応付いた複数のパラメータを含むプロセス条件を用いて、前記複数の測長箇所の寸法データと前記複数のパラメータとの相関関係を視覚的に示す画像を出力することと、
を有する情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、プログラム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡によって撮像された撮像画像から抽出したパターンの輪郭線から寸法計測値を算出する方法は、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、撮像画像から測長された測長箇所の寸法データは、人の手によって表又はグラフ形式で表現され、解析に利用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、複数の画像データから測長した測長箇所の寸法データとプロセス条件のパラメータとの相関関係の認識をより容易にする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、電子顕微鏡によって撮像された複数の画像データを処理する情報処理装置であって、前記画像データを測長対象の領域とそれ以外の領域とに二値化する二値化処理部と、二値化した前記画像データから得られる前記測長対象の領域の輪郭データを用いて、前記測長対象の領域の複数の測長箇所の寸法データを測長する測長処理部と、前記画像データと対応付いた複数のパラメータを含むプロセス条件を用いて、前記複数の測長箇所の寸法データと前記複数のパラメータとの相関関係を視覚的に示す画像を出力する出力処理部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数の画像データから測長した測長箇所の寸法データとプロセス条件のパラメータとの相関関係の認識をより容易にする技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る基板処理システムの一例の構成図である。
【
図2】コンピュータの一例のハードウェア構成図である。
【
図3】本実施形態に係る情報処理装置の機能を示した一例の構成図である。
【
図4】本実施形態に係る情報処理装置の処理の一例のフローチャートである。
【
図5】測長対象の画像データの一例のイメージ図である。
【
図6】ノイズが低減された測長対象の画像データの一例のイメージ図である。
【
図7】測長対象の画像データの一例のイメージ図である。
【
図8】測長対象の画像データの画像ヒストグラムの一例を示す図である。
【
図9】測長対象の画像データの画像ヒストグラムと測長対象の領域との関係を示す一例の図である。
【
図10】測長対象の画像データ及び二値化した測長対象の画像データの一例のイメージ図である。
【
図11】二値化した測長対象の画像データの複数の測長箇所を示す一例のイメージ図である。
【
図12】複数の測長箇所の寸法データとプロセスパラメータとの相関関係を示す一例のグラフ図である。
【
図13】測長対象の画像データの複数の測長箇所の寸法データと複数のプロセスパラメータとの相関関係をプロセスパラメータごとに示すマッピング画像の一例のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の説明を行う。本実施形態では、膜厚寸法とプロセス条件に含まれるパラメータ(プロセスパラメータ)との相関関係の例を説明するが、膜厚寸法に限定するものではなく、パターン寸法などであってもよい。
【0010】
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る基板処理システム1の一例の構成図である。
図1に示す基板処理システム1は、基板処理装置10、装置制御コントローラ20、情報処理装置22、電子顕微鏡24、及び情報記憶装置26を有している。
【0011】
図1に示す基板処理装置10、装置制御コントローラ20、情報処理装置22、電子顕微鏡24、及び情報記憶装置26は、インターネット又はLAN(Local Area Network)等のネットワーク40を介して通信可能に接続される。
【0012】
基板処理装置10は、成膜処理、エッチング処理、又はアッシング処理等の処理を行う装置であって、例えば半導体ウエハなどの基板を処理する。基板処理装置10は、例えば半導体製造装置、熱処理装置、又は成膜装置等である。
【0013】
基板処理装置10は、例えばレシピ(プロセス条件)に従った制御命令(プロセスパラメータ)を装置制御コントローラ20から受け付け、プロセスを実行する。基板処理装置10は、プロセス状態を監視する為に、温度を測定する温度センサ及び圧力を測定する圧力センサなどの複数のセンサが設置されている。
【0014】
装置制御コントローラ20は、基板処理装置10を制御するためのコンピュータ構成を持ったコントローラである。装置制御コントローラ20は、基板処理装置10に対する指示を作業者から受け付けると共に、基板処理装置10に関する情報を作業者に提供するマンマシンインタフェースの機能を有する。装置制御コントローラ20は、基板処理装置10に設置されている複数のセンサから出力されたセンサ値などを受信する。
【0015】
装置制御コントローラ20は、基板処理装置10ごとに設けられてもよいし、複数の基板処理装置10ごとに設けられていてもよい。装置制御コントローラ20は、基板処理装置10の筐体内に設けられていてもよい。
【0016】
電子顕微鏡24は、基板処理装置10がプロセス条件に従ってプロセスを実行した処理結果を撮像し、画像データを出力する装置の一例である。例えば電子顕微鏡24は、基板処理装置10がプロセス条件に従って処理した基板上の膜の付き具合(膜厚)を処理結果の一例として撮像し、画像データを出力する。基板は、被撮像物の一例である。
【0017】
情報記憶装置26は、電子顕微鏡24によって撮像された被撮像物の複数の画像データを受信して記憶する。また、情報記憶装置26は、基板処理装置10が被撮像物を処理した際のプロセス条件を、被撮像物の画像データと対応付けて記憶してもよい。また、情報記憶装置26は、基板処理装置10に設置されている複数のセンサから出力されたセンサ値などを受信し、プロセスログとして記憶してもよい。
【0018】
情報処理装置22は、電子顕微鏡24によって撮像された被撮像物の複数の画像データを解析するコンピュータである。情報処理装置22は、作業者から解析等の指示を受け付けると共に、解析結果等を表示して作業者に提供するマンマシンインタフェースの機能を有する。
【0019】
情報処理装置22は、電子顕微鏡24又は情報記憶装置26から測長対象の画像データを受信する。また、情報処理装置22は、被撮像物の画像データと対応付いたプロセス条件を、情報記憶装置26から受信する。なお、情報処理装置22は、作業者により入力されたプロセス条件を、電子顕微鏡24又は情報記憶装置26から受信した測長対象の画像データと対応付けてもよい。測長対象の画像データ又はプロセス条件は、可搬記録媒体を用いて、情報処理装置22に入力してもよい。
【0020】
情報処理装置22は、電子顕微鏡24によって撮像された被撮像物の複数の画像データを後述のように処理することで、基板上の膜厚などの測長対象の寸法データを測長箇所ごとに測長する。また、情報処理装置22は、後述のように処理することで、複数の測長箇所の寸法データとプロセス条件に含まれるプロセスパラメータとの相関関係を視覚的に示す画像を出力する。
【0021】
なお、
図1に示す基板処理システム1は一例であり、用途や目的に応じて様々なシステム構成例があることは言うまでもない。
図1に示す装置制御コントローラ20、情報処理装置22、電子顕微鏡24、及び情報記憶装置26の装置の区分は一例である。基板処理システム1は、装置制御コントローラ20、情報処理装置22、電子顕微鏡24、及び情報記憶装置26の少なくとも2つが一体化された構成や、更に分割された構成など、様々な構成が可能である。
【0022】
<ハードウェア構成>
図1に示した基板処理システム1の装置制御コントローラ20、情報処理装置22、及び情報記憶装置26は、例えば
図2に示すハードウェア構成のコンピュータにより実現される。
図2は、コンピュータ500の一例のハードウェア構成図である。
【0023】
図2のコンピュータ500は、入力装置501、出力装置502、外部I/F(インタフェース)503、RAM(Random Access Memory)504、ROM(Read Only Memory)505、CPU(Central Processing Unit)506、通信I/F507、及びHDD(Hard Disk Drive)508などを備え、それぞれがバスBで相互に接続されている。入力装置501及び出力装置502は、必要なときに接続して利用する形態であってもよい。
【0024】
入力装置501は、キーボードやマウス、タッチパネルなどであり、作業者等が操作信号を入力する為に用いられる。出力装置502は、ディスプレイ等であり、コンピュータ500による処理結果を表示する。通信I/F507は、コンピュータ500を
図1に示したネットワーク40に接続するインタフェースである。HDD508は、プログラムやデータを格納している不揮発性の記憶装置の一例である。
【0025】
外部I/F503は、外部装置とのインタフェースである。コンピュータ500は、外部I/F503を介してSD(Secure Digital)メモリカードなどの記録媒体503aの読み取りを行うことができる。外部I/F503は、外部I/F503を介してSDメモリカードなどの記録媒体503aへの書き込みを行うことができてもよい。
【0026】
ROM505は、プログラム及びデータが格納された不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。RAM504は、プログラム及びデータを一時保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。CPU506は、ROM505又はHDD508などの記憶装置からプログラム及びデータをRAM504上に読み出し、処理を実行することで、コンピュータ500全体の制御及び機能を実現する演算装置である。
【0027】
図1に示す基板処理システム1の装置制御コントローラ20、情報処理装置22、及び情報記憶装置26は、
図2に示したコンピュータ500でプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。
【0028】
<機能構成>
本実施形態に係る基板処理システム1の情報処理装置22は、例えば
図3に示す機能構成で実現される。
図3は、本実施形態に係る情報処理装置22の機能を示した一例の構成図である。なお、
図3は、本実施形態の説明に不要な機能について図示を省略している。
【0029】
情報処理装置22は、プログラムを実行することにより、画像データ取得部50、画像データ記憶部52、プロセス条件取得部54、プロセス条件記憶部56、画像データ選択処理部58、平滑化処理部60、二値化処理部62、輪郭検出処理部64、測長処理部66、操作受付部68、及び出力処理部70を実現している。
【0030】
画像データ取得部50は、電子顕微鏡24によって撮像された複数の画像データを取得する。画像データ記憶部52は、画像データ取得部50が取得した複数の画像データを記憶する。
【0031】
プロセス条件取得部54は、電子顕微鏡24によって撮像された被撮像物を基板処理装置10が処理した際のプロセス条件を取得する。プロセス条件記憶部56は、プロセス条件取得部54が取得したプロセス条件を、画像データ記憶部52に記憶されている複数の画像データと対応付けて記憶する。
【0032】
画像データ選択処理部58は、画像データ記憶部52に記憶されている画像データから測長対象の画像データを選択する。画像データ選択処理部58は、操作受付部68が作業者から受け付けた選択操作に従って、画像データ記憶部52に記憶されている画像データから測長対象の画像データを選択してもよい。また、画像データ選択処理部58は、操作受付部68が作業者から受け付けた選択条件(被撮像物を処理した基板処理装置10の指定など)に従って、画像データ記憶部52に記憶されている画像データから測長対象の画像データを選択してもよい。
【0033】
平滑化処理部60は、画像データ選択処理部58が選択した測長対象の画像データに含まれるノイズを低減する。二値化処理部62は、ノイズを低減した測長対象の画像データの画像ヒストグラムに基づき、後述のように二値化しきい値を決定する。画像ヒストグラムは、画像データに含まれる画素を、横軸が画素の画素値及び縦軸が画素値の個数のグラフで表したものである。二値化処理部62は、操作受付部68が作業者から受け付けた設定操作に従って、二値化しきい値を決定してもよい。二値化処理部62は、測長対象の画像データの画像ヒストグラムに基づき、自動的に、二値化しきい値を決定してもよい。二値化処理部62は、決定した二値化しきい値を用いて、測長対象の画像データを測長対象の領域(例えば膜が写っている領域)と、それ以外の領域とに二値化する。
【0034】
輪郭検出処理部64は、二値化した測長対象の画像データから、測長対象の領域の境界を検知する。輪郭検出処理部64は、境界の画素の座標を取得し、測長対象の領域の輪郭データを得る。
【0035】
測長処理部66は、二値化した測長対象の画像データから得られる測長対象の領域の輪郭データを用いて、測長対象の領域の複数の測長箇所の寸法データを測長する。例えば測長処理部66は、測長対象の領域の輪郭データ間の距離(画素数)から測長箇所の実寸法を測長できる。
【0036】
操作受付部68は、作業者からの各種操作を受け付け、作業者から受け付けた操作に応じた機能に、操作の内容を通知する。出力処理部70は、測長対象の画像データと対応付いた複数のプロセスパラメータを含むプロセス条件を用いて、複数の測長箇所の寸法データと複数のプロセスパラメータとの相関関係を視覚的に示す画像(例えば後述のマッピング画像)を出力する。
【0037】
<処理>
図4は、本実施形態に係る情報処理装置22の処理の一例のフローチャートである。
【0038】
ステップS10において、情報処理装置22の画像データ選択処理部58は、例えば
図5に示す測長対象の画像データ1000を、画像データ記憶部52に記憶されている画像データから選択する。
【0039】
図5は、測長対象の画像データ1000の一例のイメージ図である。画像データ1000は、基板処理装置10が処理した基板上の膜を、電子顕微鏡24によって撮像した顕微鏡画像(SEM画像)である。
【0040】
ステップS12において、情報処理装置22の平滑化処理部60は、例えば
図5に示す測長対象の画像データ1000を平滑化し、画像をぼかして画像データ1000に含まれるノイズの影響を低減する。平滑化処理部60は、エッジ保存平滑化フィルタの一例であるBilateral Blur(バイラテラルブラー)を用いて、画像データ1000の平滑化を行ってもよい。バイラテラルブラーは、ガウシアンフィルタがベースとなっている。
【0041】
平滑化処理部60は、
図5に示す測長対象の画像データ1000を平滑化し、エッジとなる部分を残し(強調し)ながら、例えば
図6に示す測長対象の画像データ1010のように画像をぼかす。
図6は、ノイズが低減された測長対象の画像データ1010の一例のイメージ図である。
【0042】
なお、情報処理装置22は、二値化処理部62の処理前に、ガウシアンフィッティング処理を行うようにしてもよい。ガウシアンフィッティング処理は、測長対象の画像データの画像ヒストグラムに対してフィッティングを行い、近似式を得る処理である。
【0043】
二値化処理部62の処理前に、ガウシアンフィッティング処理を行い、得られた近似式から二値化しきい値を決定することで、情報処理装置22は、二値化処理部62の処理により、測長対象の領域の境界が明確な例えば
図7に示す二値化した測長対象の画像データ1030を得ることができる。
【0044】
図7は、測長対象の画像データ1020及び1030の一例のイメージ図である。測長対象の画像データ1020は、二値化処理部62の処理前に、ガウシアンフィッティング処理を行わなかった場合の二値化した測長対象の画像データの例である。また、測長対象の画像データ1030は、二値化処理部62の処理前に、ガウシアンフィッティング処理を行った場合の二値化した測長対象の画像データの例である。
【0045】
ステップS14において、二値化処理部62は、測長対象の画像データの例えば
図8及び
図9に示す画像ヒストグラムに基づき、測長対象の領域の色を持つ画素の検出を行う為の二値化しきい値を決定する。
図8は、測長対象の画像データの画像ヒストグラムの一例を示す図である。
図9は、測長対象の画像データの画像ヒストグラムと測長対象の領域との関係を示す一例の図である。
図8及び
図9に示す画像ヒストグラムは、画像データに含まれる画素を、横軸が画素の画素値(黒:0~白:255)及び縦軸が画素値の個数のグラフで表したものである。
【0046】
図9に示す測長対象の画像データの画像ヒストグラムは、最も高い真ん中のピーク位置及びピーク幅が、測長対象の画像データにおいて膜の領域を表している画素の画素値の範囲を示す。また、
図9に示す測長対象の画像データの画像ヒストグラムは、2番目に高い右側のピーク位置及びピーク幅が、測長対象の画像データにおいて膜の領域以外の白に近い画素の画素値の範囲を示す。
【0047】
測長対象の領域が膜の領域であれば、二値化処理部62は、測長対象の画像データにおける測長対象の領域の画素の検出を行う為の二値化しきい値を、
図8の画像ヒストグラムの最も高い真ん中のピーク位置及びピーク幅に基づいて決定する。例えば、二値化処理部62は、
図8の画像ヒストグラムのピーク幅の位置(ピーク間の谷にあたる位置)の2つの画素値を二値化しきい値とする。
【0048】
ステップS16において、二値化処理部62は、ステップS14で決定した二値化しきい値を用いて、例えば
図10に示す測長対象の画像データ1040を、例えば
図10に示す測長対象の画像データ1050のように白及び黒の2色に変換する。
図10は、測長対象の画像データ1040及び二値化した測長対象の画像データ1050の一例のイメージ図である。
【0049】
図10の二値化した測長対象の画像データ1050は、測長対象の領域(例えば膜を表す領域)が白で表され、測長対象の領域以外の領域(例えば膜以外を表す領域)が黒で表されている。二値化処理部62は、ステップS14で決定した二値化しきい値により検出される画素の色と、二値化しきい値により検出されない画素の色とを、白又は黒の異なる色に変換することで、測長対象の画像データ1040を測長対象の画像データ1050のように測長対象の領域と、それ以外の領域とに二値化する。
【0050】
ステップS18において、輪郭検出処理部64は、二値化した測長対象の画像データ1050から、測長対象の領域の境界を検知する。輪郭検出処理部64は、境界の画素の座標を取得し、測長対象の領域の輪郭データを検出する。
【0051】
ステップS20において、測長処理部66は、ステップS18で検出した測長対象の領域の輪郭データを用いて、測長対象の領域の複数の測長箇所の寸法データを、例えば
図11に示すように測長する。
図11は、二値化した測長対象の画像データ1050の複数の測長箇所1052~1058を示す一例のイメージ図である。
図11では、複数の測長箇所の一例として、topの測長箇所1052、top-sideの測長箇所1054、middle-sideの測長箇所1056、及びbtm-sideの測長箇所1058を示している。なお、
図11の測長箇所1052~1058は、一例であり、更に細かく測長箇所を設けることが望ましい。
【0052】
測長処理部66は、例えば
図11に矢印で示した測長箇所1052~1058の領域の輪郭データ間の距離(画素数)と撮像時の倍率とを用いて、測長箇所1052~1058の実寸法を測長できる。
【0053】
ステップS22において、出力処理部70は、二値化した測長対象の画像データ1050と対応付いたプロセス条件をプロセス条件記憶部56から取得する。ステップS24において、出力処理部70は、測長対象の画像データと対応付いたプロセス条件に含まれる複数のプロセスパラメータを用いて、複数の測長箇所1052~1058の寸法データと複数のプロセスパラメータとの相関関係を視覚的に示すマッピング画像を出力する。
【0054】
図12は、複数の測長箇所1052~1058の寸法データとプロセスパラメータとの相関関係を示す一例のグラフ図である。
図12のグラフ図は、横軸がプロセスパラメータの一例であるガス流量を示し、縦軸が測長箇所1052~1058の寸法データを示している。
【0055】
図12では、ガス流量のプロセスパラメータが「500」「1000」「1500」及び「2000」であるプロセス条件で処理された測長対象の画像データの複数の測長箇所1052~1058の寸法データをプロットしている。
図12では、ガス流量のプロセスパラメータの値が異なる同一の測長箇所の寸法データのプロットを用いて、測長箇所ごとに相関係数を算出する。例えば
図12では、topの測長箇所1052の寸法データの変化が、top以外の測長箇所1054~1058の寸法データの変化より大きく、ガス流量のプロセスパラメータがtopの測長箇所1052の膜厚制御に有効であることが分かる。また、
図12では、topの測長箇所1052の寸法データのプロットから、プロセスパラメータの一例であるガス流量と、複数の測長箇所1052~1058の寸法データとの相関係数を求めることができる。
【0056】
ステップS24において、出力処理部70は、測長対象の画像データ1000の複数の測長箇所の寸法データと複数のプロセスパラメータとの相関関係を、プロセスパラメータごとに視覚的に示すマッピング画像を出力する。
【0057】
図13は、測長対象の画像データ1000の複数の測長箇所の寸法データと複数のプロセスパラメータとの相関関係をプロセスパラメータごとに示すマッピング画像の一例のイメージ図である。
図13に示すイメージ図は、プロセスパラメータの一例であるガス流量のマッピング画像とステージ温度のマッピング画像とを一例として示したものである。
【0058】
図13のマッピング画像は、複数の測長箇所の寸法データごとに算出されたプロセスパラメータとの相関係数を、測長対象の画像データ1000の複数の測長箇所に重畳して例えば色の変化などで表示する。
【0059】
例えば
図13のガス流量のマッピング画像を参照することで、作業者は、ガス流量がtopの測長箇所の膜厚制御に有効であり、top以外の測長箇所の膜厚制御にあまり有効でないことを認識できる。また、
図13のステージ温度のマッピング画像を参照することで、作業者は、ステージ温度がmiddle-side及びbtm-sideの測長箇所の膜厚制御に有効であり、top及びtop-sideの測長箇所の膜厚制御にあまり有効でないことを認識できる。
【0060】
図13のマッピング画像は、ステップS10の処理において、中心のプロセス条件と対応付いた画像データと、その中心のプロセス条件に含まれるプロセスパラメータを変化させた複数の画像データと、を測長対象の画像データとして選択することで、
図13に示すマッピング画像を出力できる。
【0061】
図13のマッピング画像は、二値化した測長対象の画像データ1050の複数の測長箇所1052~1058よりも細かく測長箇所を設けた例である。測長箇所を細かく設けることで、マッピング画像は、測長対象の画像データ1000の測長箇所の寸法データとプロセスパラメータとの相関関係を、色のグラデーションで表すこともできる。
【0062】
なお、ステップS24におけるマッピング画像の出力は、複数のマッピング画像を一覧表示してもよいし、作業者が選択したプロセスパラメータのマッピング画像を表示してもよい。また、ステップS24におけるマッピング画像の出力は、マッピング画像を分類して表示してもよい。例えばステップS24におけるマッピング画像の出力は、topの測長箇所の膜厚制御に有効なプロセスパラメータなど、マッピング画像を分類して出力してもよい。
【0063】
作業者によるマッピング画像の解析が終了すると(S26においてYES)、情報処理装置22は、
図4のフローチャートの処理を終了する。
【0064】
<まとめ>
例えば、電子顕微鏡によって撮像された撮像画像から測長された測長箇所の寸法データを作業者の手によって表又はグラフ形式で表現し、解析しようとすると、作業者の主観的評価が入り、客観的評価と言えない。また、作業者の手による解析では、測長箇所を増やすほどデータ量が膨大となるため、時間的な問題から測長箇所を増やすことが難しい。
【0065】
本実施形態では、測長対象の画像データと対応付いた複数のプロセスパラメータを含むプロセス条件を用いて、複数の測長箇所の寸法データと複数のプロセスパラメータとの相関関係を視覚的に示す画像を自動で出力する。
【0066】
したがって、本実施形態によれば、作業者の主観的な解析結果でなく、客観的な解析結果を得られるため、解析結果の信頼性が増す。また、本実施形態によれば、作業者の手により解析していた処理を自動化することで大幅な時間短縮を実現できる。
【0067】
また、本実施形態によれば、複数の測長箇所の寸法データと複数のプロセスパラメータとの相関関係を視覚的に示す画像から、作業者が複数の測長箇所の寸法データの制御に有効なプロセスパラメータ又は有効でないプロセスパラメータをより容易に認識できる。
【0068】
したがって、作業者は、例えば複雑なパターン形状であっても、形状制御に有効である又は有効でないプロセスパラメータ(ノブ)を容易に把握できる。
【0069】
本実施形態に係る基板処理システム1によれば、複数の画像データから測長した測長箇所の寸法データとプロセス条件のパラメータとの相関関係の認識をより容易にする技術を提供できる。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 基板処理システム
10 基板処理装置
20 装置制御コントローラ
22 情報処理装置
24 電子顕微鏡
26 情報記憶装置
40 ネットワーク
62 二値化処理部
66 測長処理部
70 出力処理部