(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009843
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】光受信ユニット
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G01B11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024074673
(22)【出願日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】10 2023 206 288.7
(32)【優先日】2023-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・シュペックバッハー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・ゼドルマイアー
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065BB05
2F065BB29
2F065DD03
2F065FF09
2F065FF41
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065LL41
2F065MM02
2F065QQ25
2F065QQ28
2F065UU02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】空間位置情報を決定する位置測定システムのための光受信ユニットを提供する。
【解決手段】空間位置情報を決定する位置測定システムのための光受信ユニットに関し、受信ユニットは、走査格子と、走査格子の方向に感光面が向けられている光電子検出器とを含む測定セルを備える。測定セルは、走査格子の領域内において測定波長に対して透明なカバー要素162を備える組立ケーシング内に配置されている。カバー要素162は、組立ケーシングに導電的に接続されている導電層1を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間位置情報を決定する位置測定システムのための光受信ユニットであって、
前記受信ユニットは、走査格子と、前記走査格子の方向に感光面が向けられている光電子検出器とを含む測定セルを備え、
前記測定セルは、前記走査格子の領域内において測定波長に対して透明なカバー要素を備える組立ケーシング内に配置されている、当該光受信ユニットにおいて、
前記カバー要素(162)は、前記組立ケーシング(160)に導電的に接続されている少なくとも1つの導電層(1)を備える、
ことを特徴とする光受信ユニット。
【請求項2】
前記カバー要素(162)が、対向する側面(4.1、4.2)を有するキャリア基板(4)を備え、少なくとも1つの導電層(1)および少なくとも1つの反射防止層(2)が、両側面(4.1、4.2)上に平坦に積層されていることを特徴とする、請求項1に記載の光受信ユニット。
【請求項3】
第1の側面(4.1)の前記導電層(1)と第2の側面(4.2)の前記導電層(1)との間に、接触要素(5)を介した導電接続があることを特徴とする、請求項2に記載の光受信ユニット。
【請求項4】
前記導電層(1)は、前記キャリア基板(4)と前記反射防止層(2)との間に配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の光受信ユニット。
【請求項5】
前記導電層(1)が、測定に使用される電磁放射に対して透明である導電性酸化物(TCO)として構成されていることを特徴とする、請求項1~4の少なくとも1項に記載の光受信ユニット。
【請求項6】
前記導電性酸化物は、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZnO:Al)または酸化インジウムスズ(ITO)であることを特徴とする請求項5に記載の光受信ユニット。
【請求項7】
前記反射防止層(2)が、少なくとも一つの第1の部分層(2.1)および少なくとも一つの第2の部分層(2.2)を含み、
・前記第1の部分層(2.1)は二酸化ケイ素(SiO2)を含み、かつ
・前記第2の部分層(2.2)はケイ素(Si)または五酸化タンタル(Ta2O5)を含む、
ことを特徴とする、請求項2~6の少なくとも1項に記載の光受信ユニット。
【請求項8】
前記カバー要素(162)は、前記接触要素(5)の少なくとも一部分が前記導電層(1)と前記反射防止層(2)との間に配置されているように形成されることを特徴とする、請求項3~7の少なくとも1項に記載の光受信ユニット。
【請求項9】
前記導電層(1)および/または前記反射防止層(2)の層厚は、前記測定に使用される電磁放射に対して、前記キャリア基板(4)の対称面(S)に対して垂直に延在する軸線(A)に対して、0°~50°の間の入射角の最小限の反射率および最大透過率が得られるように形成されていることを特徴とする、請求項2~8の少なくとも1つに記載の光受信ユニット。
【請求項10】
前記導電層(1)が、前記キャリア基板(4)上に直接積層されていることを特徴とする、請求項2~9の少なくとも1項に記載の光受信ユニット。
【請求項11】
前記接触要素(5)が、前記カバー要素(162)を中心に周回して形成されていることを特徴とする、請求項3~10の少なくとも1つに記載の光受信ユニット。
【請求項12】
前記接触要素(5)が、アルミニウムクロム合金(AlCr)またはアルミニウム-チタン-金スタック(AlTiAu)からなることを特徴とする、請求項3~11の少なくとも1項に記載の光受信ユニット。
【請求項13】
前記カバー要素(162)は、前記接触要素(5)を介して、導電性の接着剤または半田接続(7)によって前記組立ケーシング(160)に接続されていることを特徴とする請求項3~12のいずれか一項に記載の光受信ユニット。
【請求項14】
前記キャリア基板(4)が、780nmを超える波長に対してのみ透過性であるように形成されていることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の光受信ユニット。
【請求項15】
前記カバー要素(162)が、前記キャリア基板(4)の対称面(S)に対して対称に形成されていることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の光受信ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間位置情報を決定する位置測定システムで使用することができる光受信ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1からは、空間2D角度測定システムとして構成され、かつ空間位置情報を決定するために使用することができる光学位置測定システムが知られている。一方では、このシステムは、その空間的な位置および向き、すなわちその姿勢が特定される空間内で動くことのできる測定対象物に配置されている送信ユニットを備え、送信ユニットとしては、例えば、適した光源がその役割を担うことができる。他方では、1つ以上の光受信ユニットが、動くことのできる送信ユニットに対して静止した状態で設けられており、これらの光受信ユニットのいずれの大抵走査格子および光電子検出器を備えているが、受信ユニットの適切な構造に関するさらなる詳細は、先述の文献には含まれていない。このようなシステムを用いることで、いわゆる多角測量(Multiangulation)によって、送信ユニットの空間内における姿勢を決定することができる。この目的のために、各受信ユニットからみた送信ユニットへの見通し線の方向が、2つの角度測定によって決定される。2つの受信ユニットの相対位置が既知である場合、特定された見通し線の交点から、送信ユニットの姿勢を決定できる。そのような測定原理のさらなる詳細については、先述の文献を参照されたい。
【0003】
そのような測定システムのための光受信ユニットの適切な構成は、特許文献2から知られている。これは、検出器が配置されているベースプレートを含み、組立ケーシング内に配置されている測定セルからなり、測定セルの上に走査格子を備えたカバープレートが、スペーサを介して検出器から特定された距離で離間して設けられている。その上に配置されている透明のカバー要素は、測定セルの内部を汚染から保護する。これらの刊行物は、生成されるべき測定信号に対して妨害する影響を低減するための適切な手段に関するさらなる詳細について開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第01/38828号
【特許文献2】独国特許出願公開第102021209393号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第3739287号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第3175949号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、空間位置情報を決定する位置測定システムのための光受信ユニットを提供することであり、この光受信ユニットでは、生成されるべき測定信号に対して妨害する影響が可能な限り最小限に抑えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この課題は、請求項1の特徴を有する光受信ユニットによって達成される。有利な実施形態およびさらなる発展形態は、それぞれの従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明による光受信ユニットは、空間位置情報を決定する位置測定システムで使用することができる。この光受信ユニットは、走査格子と、走査格子の方向に感光面が向けられている光電子検出器とを含む測定セルを備える。測定セルは、走査格子の領域内において測定波長に対して透明なカバー要素を備える組立ケーシング内に配置されている。カバー要素、組立ケーシングに導電的に接続されている少なくとも1つの導電層を備える。
【0008】
カバー要素のそのような構成は、電磁干渉に対して電磁遮蔽することを確実に保証することができる。
【0009】
有利には、カバー要素は、対向する側面を有するキャリア基板を備えることが企図されている。少なくとも1つの導電層および少なくとも1つの反射防止層が、キャリア基板の2つの側面に積層されている。
【0010】
反射防止層を用いて、散乱光を妨害する影響をそれによって最小限に抑えることができるので、生成される測定信号における信号対雑音比を最適化することができる。
【0011】
本発明による光受信ユニットの好ましい実施形態では、カバー要素のキャリア基板が、好ましくは0.7mm~7mmの厚さのフィルタガラス板からなる。この板は、硬化される、硬化されない、または部分的に硬化される、透明もしくは構造化され、ならびに着色され、したがって所定の波長範囲に対して半透明または不透明であり得る。
【0012】
この場合、接触要素を介して、第1の側面の導電層と第2の側面の導電層との間に導電接続が存在することが可能である。
【0013】
さらに、導電層は、キャリア基板と反射防止層との間に配置されていることを企図することが企図され得る。
【0014】
好ましくは、導電層は、測定に使用される電磁放射に対して透明である導電性酸化物(TCO)として形成されている。
【0015】
有利には、導電性酸化物が、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZnO:Al)または酸化インジウムスズ(ITO)である。
【0016】
導電層は、薄膜プロセスを用いて、例えばスパッタリングプロセスによってキャリア基板に積層することができる。
【0017】
好ましくは、反射防止層は、少なくとも第1および第2の部分層を含み、
・第1の部分層は、二酸化ケイ素(SiO2)を含み、かつ
・第2の部分層は、ケイ素(Si)または五酸化タンタル(Ta2O5)を含む。
【0018】
反射防止層の第1および第2の部分層は、薄膜技術プロセスを用いて積層することもできる。
【0019】
有利には、カバー要素が、接触要素の少なくとも一つの部分層が導電層と反射防止層との間に配置されているように構成されている。
【0020】
導電層の層の厚さ、及び、追加的に又は代替的に、反射防止層の厚さが、測定に使用される電磁放射に対して、キャリア基板の対称面に対して垂直に延在する軸線に対して、0°~50°の間の入射角で最小限の反射率および最大透過率が得られるように構成される場合に、有利であることが分かる。
【0021】
さらに、導電層がキャリア基板上に直接積層されていることが企図され得る。
【0022】
キャリア基材と導電層または導電層と反射防止層との間の光学的な接合剤の層は、必要ではない。
【0023】
好ましくは、接触要素は、カバー要素に周回して形成されている。
【0024】
接触要素は、アルミニウムクロム合金(AlCr)またはアルミニウム-チタン-金スタック(AlTiAu)からなることが可能である。
【0025】
環境からの影響に対して特に安定した接触要素が必要とされる場合、アルミニウムーチタンー金スタックを使用することができる。
【0026】
有利には、カバー要素は、接触要素を介して、導電性の接着剤または半田接続によって組立ケーシングに接続されている。
【0027】
有利な実施形態では、キャリア基板は、780nmを超える波長に対してのみ透過性であるように形成され得る。
【0028】
好ましくは、カバー要素は、キャリア基板の対称面に対して正確に対称であるように形成されている。
【0029】
本発明は、実施例の説明に基づき、添付の概略図を参照して、さらなる特徴および利点に関して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明による複数の光受信ユニットが使用される空間位置情報を決定する位置測定システムの概略図である。
【
図2】本発明による光受信ユニットの一実施例の断面図である。
【
図3】
図2の光受信ユニットの測定セルの透明カバー要素の断面図である。
【
図4】
図3の透明カバー要素の一部を詳細図で示す。
【
図5】測定セルに使われる透明のカバー要素の一部を詳細図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明のいくつかの特定の実施形態については、図面を参照して以下により詳細に説明される。
【0032】
図1では、空間位置情報を決定するために、または空間内で移動する測定対象物の位置と向きとを決定するために適している光学位置測定システムが、非常に概略的な形態で記載されている。以下では、測定対象物の姿勢も言及する。本願の実施例では、測定対象物として測定ヘッド10が設けられていて、この測定ヘッド10は、単に概略的に示されているキネマティクス20を介して空間内に配置することができ、その姿勢は、光学的位置測定システムを用いて決定される。例えば、既知のスイッチングプローブを測定ヘッド10として使用することができ、このプローブは、触覚的なプロービングによって製造されたワークピースを測定するために、キネマティクス20を介して工作機械の機械加工領域内に配置される。
【0033】
本願の実施例では、位置測定システムは、例えば、冒頭で引用した特許文献2から基本的に知られているように、複数の空間2D角度測定システムからなる。さらに、補足として、特許文献3および特許文献4を指摘する。これらの文献はそれぞれ、特別な光学位置測定システムにおけるそのような2D角度測定システムの適用を示す。ここで、そのような2D角度測定システムの詳細についてこれらの刊行物の開示内容およびその中に含まれる情報が明示的に参照される。
【0034】
対応する位置測定システムは、姿勢を決定するために、一方では、測定ヘッド10上に配置された複数の識別可能な光源31.1~31.6を備える。図示された例では、計8つの光源31.1~31.6が測定ヘッド10に設けられており、これらの光源は、測定ヘッド10の周りに90°だけずらして対になって配置されていて、図では6つの光源31.1~31.6しか見ることができない。他方では、本発明による位置測定システムは、複数の光受信ユニット40.1、40.2を備え、これらの光受信ユニットは、可動する光源31.1~31.6に対向して測定ヘッド10に固定して配置されている。記載されている実施例では、そのような2つの光受信ユニット40.1、40.2のみが設けられている。もちろん、このような位置測定システムでは、より多くのこのようなユニットを使用することができ、使用される光源の数も変えることができる。光受信ユニット40.1、40.2は、適切な固定した物体に、例えば機械フレーム(図示せず)に配置されている。
【0035】
以下でより詳細に説明されるべき光受信ユニット40.1、40.2を用いて、光源31.1~31.6から来る光ビームの入射方向、または測定された光源31.1~31.6の角度位置を、対応する受信ユニット40.1、40.2に対してそれぞれ検出することができる。加えて、固定した2つの受信ユニット40.1、40.2の互いに対する相対位置が既知である場合、測定ヘッド10の姿勢は、特定の入射方向または光源31.1~31.6への見通し線の交点から決定することができる。この目的のために、光受信ユニット40.1、40.2で生成された信号は、信号処理ユニット50を介して処理され、姿勢計算ユニット60に転送され、それを使用して、姿勢計算ユニットが測定ヘッド10の空間的な位置及び向き又は姿勢を決定する。次いで、この情報は、キネマティクス20を介して測定ヘッド10を空間内で適切に位置決めするために機械制御装置70で使用することができる。
【0036】
本発明による光受信ユニット140の実施例が、他の図面を参照して以下に詳細に説明される。ここで、
図2は、測定セル141、組立ケーシング160、および透明なカバー要素162を備える受信ユニット140の断面図を示しており、
図3は、受信ユニット140の測定セル141のカバー要素162の断面図を示しており、
図4および
図5は、カバー要素162の詳細図を示している。
【0037】
重要な機能要素として、受信ユニット140は、組立ケーシング160内に配置されている測定セル141を備え、その個々の構成要素は、
図2において斜線で強調されている。測定セル141および組立ケーシング160はそれぞれ円筒形状に形成されていて、その際、測定セル141は、組立ケーシング160の内部に適切にキネマティクス的に載置されて配置することができる。測定セル141の上方には、組立ケーシング160が測定波長λに対して透明なカバー要素162を備え、このカバー要素162は基本的に高感度な測定セル141を保護するために使用され、本発明による光受信ユニット140におけるカバー要素162を適切に構成するために、以下の説明を参照する。受信ユニット140は、組立ケーシング160を介して物体に着脱可能に取り付けることができ、この目的のために、1つ以上の円筒形の孔161が組立ケーシング160の外周に設けられていて、これを介し、組立ケーシングがネジ接続を用いて固定した物体に取り付けることができる。
【0038】
測定セル141は、基本的に、ベースプレート142と、走査格子144を有する透明なカバープレート143と、ベースプレート142とカバープレート143との間の1つ以上のスペーサ145と、光電子検出器146とを備え、その感光面は、カバープレート143または走査格子144の方向に向けられる。
図2に単に概略的に示されている走査格子144は、検出器146の方向に向けられた透明カバープレート143の側に配置されている。
【0039】
測定セル141のベースプレート142、スペーサ145、およびカバープレート143はそれぞれ、同じ材料からなり、好ましくは、可能な限り小さい熱膨張係数を有する。本実施例では、石英ガラスが、これらの測定セルの構成要素のための材料として選択され、代替的には、他の材料、例えば、BK7ガラスも好適である。これは、測定セル141の非常に硬い構造をもたらし、他方では、様々な構成要素の同一の材料は、測定セル141を介して検出されるべき測定変数の高い熱不変性を確実にする、すなわち、熱的な影響に対する確実な安定性が保証される。これは、例えば、均一な温度上昇の場合には、全ての測定セルの構成要素の同一の熱膨張係数によって、検出器146と走査格子144との間の距離が、カバープレート143に配置されている走査格子144が拡大し、それによってその格子定数を増加させるのと同様に増加することを意味する。このように、温度が変化した場合であっても、受信ユニット140を介して決定された、受信ユニット140に対する光源の角度位置は変化しないままである。
【0040】
光電子検出器146を用いて、検出平面に結果として生じる周期的なストライプパターンが検出される。これは、光源から放射されたビームと走査格子144との相互作用に起因する。検出器146上のストライプパターンの位置は、受信ユニット140に対して測定された光源の放射の入射方向に依存し、その結果、光源の角度位置は、検出平面内のストライプパターンの位置から決定することができる。好ましくは、受信ユニット140の走査格子144は、2次元クロス格子として構成され、光電子検出器146が列および行に配置されている光電子検出器素子を有する2次元検出器として構成される。
【0041】
これにより、検出器146上の生成された2次元ストライプパターンの位置から2つの入射角を決定することができ、その入射角は2次元の走査格子144の主方向に対して整列されている。これは、検出器146上のストライプパターンの位置を評価することによって、それぞれの光源から来る光ビームの入射方向または測定された光源の角度位置を、対応する受信ユニット140について検出することができることを意味する。このため、この文脈では、対応する位置検出装置は、空間2D角度測定システムとも呼ばれる。
【0042】
検出器146を介して生成された信号をさらに処理するために、光受信ユニット140において、いくつかの信号処理モジュール151.1~151.5が、測定セル141のベースプレート142の下方の回路基板150上に配置されている。これら(信号処理モジュール)は、例えば、増幅器モジュール、A/D変換器モジュール、またはラインドライバモジュールであってよい。
【0043】
光受信ユニット140に対して、上述の妨害する影響を回避するために、カバー要素162を測定セル141の組立ケーシング160に導電的に接続することが企図されている。この目的のために、カバー要素162は、測定に使用される波長の場合に透明である少なくとも1つの導電層を含む、複数の層を有する本発明による構成を有し、この点に関するさらなる詳細については、
図3~
図5の以下の説明を参照されたい。このようにして、測定セル141の内部は、ファラデーケージとして作用する組立ケーシング160および導電層1からなる導電性のシェルによって完全に囲まれていて、これは、測定セルの内部を妨害する外部の電磁場に対して確実に遮蔽するために使用され得る。特に、光電子検出器146の場合、このようにして高い電磁適合性(EMC)を保証することができる。したがって、本発明による光受信ユニット140の使用は、より大きな電磁場を有する環境、例えば工作機械の作業領域においても可能である。
【0044】
本発明による光受信ユニット140のカバー要素162は、導電層に加えて、少なくとも1つの反射防止層2も備える。これは、測定に使用される波長に関して、最小限の反射率および最大透過値が得られるように形成されている。例えば、測定波長λを有する電磁放射が、測定セル141の内部のカバー要素162の反射防止層上に到達する場合、これは、検出器146に反射して戻らず、カバー要素162を透過して測定セル141を離れる。これは、信号歪み散乱光が光電子検出器146に到達しないことが保証される。このようにして、生成された測定信号の信号対雑音比を大幅に最適化することができる。
【0045】
最小限の反射率は、カバー要素162によって反射される電磁放射の最小の反射度を意味する。この最小値は、入射電磁放射の特定の波長範囲内、例えば750nm~950nmの間の極小値とすることができる。本実施例において、反射極小値は、例えば、λ=850nmとすることができる。これは、λ=850nmの波長を有する電磁放射についてのみ、キャリア基板4を含む全ての層1、2の全体を通して最大透過率をもたらす。有利には、0°~50°の入射角範囲における最小限の反射率での反射度が、2%未満、特に1%未満、有利には0.5%未満である。
【0046】
この場合、入射角とは、入射電磁波と、キャリア基板4の対称面Sに対して垂直に延在する軸線Aとの間に形成される内角を意味する。
【0047】
この場合、対称面Sは、キャリア基板4を通って側面4.1、4.2に対して中心かつ平行に延在する。さらに、対称面Sに対して垂直に延在する軸線Aに対して回転対称性があってもよい。
【0048】
本発明による光受信ユニットの図示された実施例では、
図3の断面図に示されているカバー要素162が、対向する側面4.1、4.2を有する平面キャリア基板4からなり、導電層1および反射防止層2がそれぞれ、対向する側面4.1、4.2の両方に対して平坦に積層されている。例えば、780nmを超える波長に対してのみ透明に構成されている0.7mm~7mmの範囲の厚さを有するフィルタガラス板をキャリア基板として使用することができる。この場合、対向する側面4.1、4.2上の層1、2はそれぞれ、導電層1がキャリア基板4と反射防止層2との間に配置されているように形成されている。
【0049】
導電層1は、例えば、薄膜プロセスによって、例えば適切なスパッタリングプロセスによって、キャリア基板4上に積層される。好ましくは、測定に使用される電磁放射に対して透明である導電性酸化物(TCO)が、導電層1の材料として使用される。本実施例では、アルミニウムドープ酸化亜鉛(ZnO:Al)の膜厚が約100nmで比抵抗が5・10-6Ω~6・10-6Ωmが好適な導電性酸化物として企図されているが、代替的には酸化インジウムスズ(ITO)も好適である。
【0050】
図示されている実施例では、導電層1の上に配置されている反射防止層2が、約190nmの層厚を有する二酸化ケイ素(SiO2)からなる第1の部分層2.1と、約4nmの層厚を有するケイ素(Si)からなる第2の部分層2.2とを含み、代替的には、五酸化タンタル(Ta2O5)を第2の部分層2.1に使用することもできる。
【0051】
カバー素子162の側方領域には接触素子5が設けられていて、この接触素子5はカバー素子162を中心に周回して形成され、第1の側面4.1の導電層1と第2の側面4.1の導電層1との間の導電接続を可能にする。この場合、接触要素5の部分領域は、導電層1と反射防止層2との間に位置するように、カバー要素162の積層体に統合される。その結果、反射防止層2と接触要素5との間に接触領域が形成され、この領域が、その面積で十分な導電性が形成され、かつ導電層1がこの領域の腐食に対して同時に保護されるように構成される。具体的には、これは、導電層1が、反射防止層2の下、および接触要素5を介して側方に「埋め込まれる」か、または封入されていることを意味する。したがって、導電層1は、本発明による光受信ユニットが湿潤環境で使用される場合でも、腐食に対して確実に保護されている。
【0052】
接触要素5は、同じまたは異なる金属の複数の積層した部分層から形成してもよい。特に、環境の影響にも耐性がある導電性金属は、この目的に特に適している。特に、接触要素5は、接合可能なアルミニウム-チタン-金スタック(AlTiAu)の形態で形成してもよい。この場合、スタックのすべての部分層は、同一の層厚で形成できるか、またはそれぞれ異なる層厚で形成できる。
【0053】
代替的には、接触要素5は、接合可能なアルミニウム-クロム合金(AlCr)の形態で形成してもよい。
【0054】
好ましくは、導電層1は、キャリア基板4の第1および第2の側面4.1、4.2の表面全体にわたって延在し、すでに述べたように、薄膜プロセスによってキャリア基板に直接設けられる。次いで、接触要素5は、例えばスパッタリングによって、導電層1に設けられ、その結果、導電性の接触が、キャリア基板4またはカバー要素162の縁部領域に形成される。
【0055】
本実施例では、波長λ=850nmの電磁放射を測定に使用する。20°~50°の入射角の場合、導電層1及び二つの部分から成る反射防止層2の両方について、最小限の反射率は、この波長又はこの波長の前後の規定された範囲で生じ、これによって、導電層1及び二つの部分から成る反射防止層2を通る最大透過を可能にする。
【0056】
本発明の範囲内で、導電層1の導電性や抵抗を要件に応じて柔軟に調整することが可能である。これは、導電層1の層厚を適切に選択することによって達成する。次に、積層のシステム全体を設計する際、その上に配置されている反射防止層2の層厚は、この層の所望の反射特性および透過特性を保証するために、導電層1の選択されている層厚に適合しなければならない。
【0057】
例えば、特に妨害的な電磁場を有する環境では、測定セルの内部空間の確実な遮蔽を保証するために、導電層1がより高い導電率、したがってより高い層厚を有することが必要であり得る。それに応じて、この場合には、測定に使用される波長λに対して顕著な最小限の反射率が依然として存在するように反射防止層2の層厚も適応される。
【0058】
図3から分かるように、カバー要素162の、キャリア基板4を通って側面4.1、4.2に対して中央かつ平行に延在する対称面Sに対して対称的な構造は意図されている。この構成は、一方では、測定セル141の外部空間および内部空間に対して、測定に使用される波長λにおける反射の最小化を保証する。他方、カバー要素162の歪みのない構成は対象構造によって保証され、これは、信号歪みの光学的な歪みが回避される。対称面Sに対するカバー要素162のすでに述べた対称性に加えて、対称面Sに対して垂直に向けられ、かつ円形のカバー要素162の中心を通って延在する軸線Aに対する回転対称性がさらにあってもよい。
【0059】
図4から分かるように、接触要素5の部分領域は、導電層1に対して縁領域を越えて外へかつ平行に延在するように形成されている。この場合、接触要素5の部分領域の平行な推移は、数ミリメートルに制限され、その結果、接触ゾーンは、縁部領域の近傍にのみ形成される。導電層1上に積層されている反射防止層2は、導電層1の残りの表面全体にわたって延在し、接触要素5との重複領域6を形成する。重複領域6において、反射防止層2は、接触要素5の部分領域上に延在する。この場合、反射防止層2は、接触要素5の部分領域全体を覆うことができる(図示せず)が、好ましくは、接触要素5の部分領域を完全には覆わず、その結果、開口領域8が残る(
図4参照)。
【0060】
カバー要素162は、
図5に概略的に示されるように、導電性の接着剤または半田接続を介して組立ケーシング160に導電的に接続されている。この場合、好ましくは、接触要素5の自由表面8を介して接続される。しかしながら、代替的に、接触要素5の任意の他の表面を使用することができる。接着剤の接続の場合、接触要素5と組立ケーシングとの間に部分的に又は連続的に配置することができる導電性の接着剤が特に適している。
【外国語明細書】