(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098537
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20250625BHJP
【FI】
A61B8/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214738
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 智彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 一力
(72)【発明者】
【氏名】安田 惇
(72)【発明者】
【氏名】吉川 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】栗原 浩
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DE05
4C601DE08
4C601DE14
4C601EE04
4C601EE08
4C601EE22
4C601HH14
4C601JB30
4C601JB34
4C601KK02
4C601KK12
4C601KK18
4C601KK42
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、ドプラ計測によって得られる情報に含まれる不要成分を抑制しながらも、ドプラ計測において超音波パルスを送信する回数を減らすことである。
【解決手段】情報処理部26は、ウォールフィルタ38から出力された受信ドプラ信号に基づいてドプラ計測情報を生成するドプラ計測部40と、トレーニング情報および目標情報に基づいて構築された機械学習モデル44とを含む。トレーニング情報は、K個の受信ドプラ信号から得られる情報である。目標情報は、K個の受信ドプラ信号から得られたときと同一の測定対象物について、J個の受信ドプラ信号から得られる情報である。ここで、JおよびKは2以上の整数であり、JはKよりも大きい。機械学習モデル44は、入力情報に基づいてドプラ計測情報を生成する。入力情報は、被検体18における測定対象物に対して、K個の受信ドプラ信号から生成される情報である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nを2以上の整数として、
超音波プローブによって超音波パルスをN回に亘って送信する送信部と、
測定対象物でN回に亘って生じた反射波を前記超音波プローブによって受信する受信部と、
測定対象物でN回に亘って生じた反射波に応じて、前記受信部から出力されるN個の受信パルス信号からN個の受信ドプラ信号を生成し、各前記受信ドプラに対する処理を実行する情報処理部と、を備え、
前記情報処理部は、
N個の前記受信ドプラ信号に対して高域通過フィルタ処理を施すフィルタと、
前記高域通過フィルタ処理が施されたN個の前記受信ドプラ信号に基づいて、測定対象物のドプラ計測情報を生成するドプラ計測部と、
教師データに基づいて構築された機械学習モデルとを含み、
JおよびKを2以上の整数とし、JがKよりも大きいという条件の下で、
前記教師データは、
NをKとして各前記受信ドプラ信号から導き出される受信特性情報、および、NをKとしたときに前記ドプラ計測部が生成する前記ドプラ計測情報のうち少なくとも一方であるトレーニング情報と、
NをKとしたときと同一の測定対象物に対して、NをJとして各前記受信ドプラ信号から導き出される前記受信特性情報、および、NをJとしたときに前記ドプラ計測部が生成する前記ドプラ計測情報のうち少なくとも一方である目標情報と、を含み、
前記機械学習モデルは、
被検体における測定対象物に対して、NをKとして各前記受信ドプラ信号から導き出される前記受信特性情報、および、NをKとしたときに前記ドプラ計測部が生成する前記ドプラ計測情報のうち少なくとも一方である入力情報に基づいて、前記ドプラ計測情報を生成することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置であって、
前記受信特性情報は、
前記高域通過フィルタ処理前のN個の前記受信ドプラ信号、および、
前記高域通過フィルタ処理後のN個の前記受信ドプラ信号のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波診断装置であって、
前記ドプラ計測情報は、
前記高域通過フィルタ処理後のN個の前記受信ドプラ信号の自己相関値、
前記高域通過フィルタ処理後のN個の前記受信ドプラ信号から求められる測定対象物の速度、
前記高域通過フィルタ処理後のN個の前記受信ドプラ信号についてのドプラ周波数ばらつき度、および、
前記高域通過フィルタ処理後のN個の前記受信ドプラ信号の大きさを示す値、のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波診断装置であって、
前記送信部は、前記超音波プローブによってBモード画像生成用の超音波を送信し、
前記受信部は、測定対象物で生じたBモード画像生成用の反射波を前記超音波プローブによって受信し、
前記情報処理部は、
Bモード画像生成用の反射波に応じて、前記受信部から出力されるBモード画像受信信号に基づいて、Bモード画像データを生成するBモード画像生成部を備え、
Bモード画像生成用の反射波に応じて、前記受信部から出力されるBモード画像受信信号が、前記受信部から出力されるN個の前記受信パルス信号のうちいずれかとして援用されることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波診断装置であって、
前記送信部は、前記超音波パルスについて、異なる位置または異なる方向に複数の送信帯を形成し、
隣接する2つの送信帯について、一方の送信帯で前記超音波パルスが送信されていない間に、他方の送信帯で前記超音波パルスが送信されるように、交互に前記超音波パルスが送信され、
隣接する2つの送信帯をそれぞれが含む、隣接する2つの送信帯ペアについて、1つの送信帯ペアが含む2つの送信帯で交互に送信される一連の前記超音波パルスを超音波パルス群として、一方の送信帯ペアで超音波パルス群が送信されていない間に、他方の送信帯ペアで超音波パルス群が送信されるように、交互に超音波パルス群が送信され、
各送信帯でK個の前記超音波パルスが送信されるごとに、前記機械学習モデルは、各送信帯につき1フレーム分の前記ドプラ計測情報を生成することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項5に記載の超音波診断装置であって、
1フレーム分の前記ドプラ計測情報が生成される間に、隣接する2つの送信帯ペアについて、交互に超音波パルス群が送信される動作が複数回に亘って行われることを特徴とする超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、ドプラ計測を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波の送受信によって被検体を観測する超音波診断装置が広く用いられている。超音波診断装置の動作モードには、観測部位での血流速度を計測するドプラモードがある。ドプラモードでの計測では、超音波パルスが複数回に亘って被検体に送信され、被検体で複数回に亘って生じた反射波が受信される。複数回に亘って受信された反射波に基づく複数の受信パルス信号からドプラ周波数成分を有する複数の受信信号(以下、受信ドプラ信号という)が生成される。さらに、複数の受信ドプラ信号に対して高域通過フィルタ処理(ウォールフィルタ処理)が施され、高域通過フィルタ処理後の複数の受信ドプラ信号に基づいて、超音波パルスが形成する超音波ビーム上に設定された関心領域での血流速度が求められる。
【0003】
高域通過フィルタにはFIRフィルタ(Finite Impulse Response Filter)やIIRフィルタ(Infinite Impulse Response Filter))等のフィルタが用いられる。高域通過フィルタ処理対象の受信ドプラ信号の数が多い程、高域通過フィルタのタップ係数の数を増加させることができる。そのため、高域通過フィルタ処理対象の受信ドプラ信号の数が多い程、フィルタ特性を急峻とし、高域の通過周波数帯域を確保しながらも低域の減衰量を大きくすることができる。これによって、表示される超音波画像におけるクラッタ等のノイズが抑制される。
【0004】
なお、本願発明に関連する技術として、以下の特許文献1~3には、ドプラモードで動作する超音波診断装置が記載されている。特許文献4~6には、ウォールフィルタに関する記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-102718号公報
【特許文献2】特開平8-154935号公報
【特許文献3】特開2016-87302号公報
【特許文献4】特開2009-5737号公報
【特許文献5】特開平07-16227号公報
【特許文献6】特表2004-532711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、ドプラ計測では超音波パルスを送信する回数が多い程、受信ドプラ信号の数が多くなり、フィルタ特性を急峻とし、クラッタ等の不要成分を抑制する効果を大きくすることができる。しかし、超音波パルスを送信する回数が多い程、フレームレートが小さくなり、一定時間当たりに表示される超音波画像の枚数が少なくなる。
【0007】
本発明の目的は、ドプラ計測によって得られる情報に含まれる不要成分を抑制しながらも、ドプラ計測において超音波パルスを送信する回数を減らすことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る超音波診断装置は、Nを2以上の整数として、超音波プローブによって超音波パルスをN回に亘って送信する送信部と、測定対象物でN回に亘って生じた反射波を前記超音波プローブによって受信する受信部と、測定対象物でN回に亘って生じた反射波に応じて、前記受信部から出力されるN個の受信パルス信号からN個の受信ドプラ信号を生成し、各前記受信ドプラに対する処理を実行する情報処理部と、を備え、前記情報処理部は、N個の前記受信ドプラ信号に対して高域通過フィルタ処理を施すフィルタと、前記高域通過フィルタ処理が施されたN個の前記受信ドプラ信号に基づいて、測定対象物のドプラ計測情報を生成するドプラ計測部と、教師データに基づいて構築された機械学習モデルとを含み、JおよびKを2以上の整数とし、JがKよりも大きいという条件の下で、前記教師データは、NをKとして各前記受信ドプラ信号から導き出される受信特性情報、および、NをKとしたときに前記ドプラ計測部が生成する前記ドプラ計測情報のうち少なくとも一方であるトレーニング情報と、NをKとしたときと同一の測定対象物に対して、NをJとして各前記受信ドプラ信号から導き出される前記受信特性情報、および、NをJとしたときに前記ドプラ計測部が生成する前記ドプラ計測情報のうち少なくとも一方である目標情報と、を含み、 前記機械学習モデルは、被検体における測定対象物に対して、NをKとして各前記受信ドプラ信号から導き出される前記受信特性情報、および、NをKとしたときに前記ドプラ計測部が生成する前記ドプラ計測情報のうち少なくとも一方である入力情報に基づいて、前記ドプラ計測情報を生成することを特徴とする。
【0009】
一実施形態においては、受信特性情報は、前記高域通過フィルタ処理前のN個の前記受信ドプラ信号、および、前記高域通過フィルタ処理後のN個の前記受信ドプラ信号のうち少なくとも1つを含む。
【0010】
一実施形態においては、前記ドプラ計測情報は、前記高域通過フィルタ処理後のN個の前記受信ドプラ信号の自己相関値、前記高域通過フィルタ処理後のN個の前記受信ドプラ信号から求められる測定対象物の速度、前記高域通過フィルタ処理後のN個の前記受信ドプラ信号についてのドプラ周波数ばらつき度、および、前記高域通過フィルタ処理後のN個の前記受信ドプラ信号の大きさを示す値、のうち少なくとも1つを含む。
【0011】
一実施形態においては、前記送信部は、前記超音波プローブによってBモード画像生成用の超音波を送信し、前記受信部は、測定対象物で生じたBモード画像生成用の反射波を前記超音波プローブによって受信し、前記情報処理部は、Bモード画像生成用の反射波に応じて、前記受信部から出力されるBモード画像受信信号に基づいて、Bモード画像データを生成するBモード画像生成部を備え、Bモード画像生成用の反射波に応じて、前記受信部から出力されるBモード画像受信信号が、前記受信部から出力されるN個の前記受信パルス信号のうちいずれかとして援用される。
【0012】
一実施形態においては、前記送信部は、前記超音波パルスについて、異なる位置または異なる方向に複数の送信帯を形成し、隣接する2つの送信帯について、一方の送信帯で前記超音波パルスが送信されていない間に、他方の送信帯で前記超音波パルスが送信されるように、交互に前記超音波パルスが送信され、隣接する2つの送信帯をそれぞれが含む、隣接する2つの送信帯ペアについて、1つの送信帯ペアが含む2つの送信帯で交互に送信される一連の前記超音波パルスを超音波パルス群として、一方の送信帯ペアで超音波パルス群が送信されていない間に、他方の送信帯ペアで超音波パルス群が送信されるように、交互に超音波パルス群が送信され、各送信帯でK個の前記超音波パルスが送信されるごとに、前記機械学習モデルは、各送信帯につき1フレーム分の前記ドプラ計測情報を生成することを特徴とする。
【0013】
一実施形態においては、1フレーム分の前記ドプラ計測情報が生成される間に、隣接する2つの送信帯ペアについて、交互に超音波パルス群が送信される動作が複数回に亘って行われる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ドプラ計測によって得られる情報に含まれる不要成分を抑制しながらも、ドプラ計測において超音波パルスを送信する回数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】トレーニング情報が機械学習部に入力される動作を示す図である。
【
図3】目標情報が機械学習部に入力される動作を示す図である。
【
図5】通常動作において超音波プローブから送信される超音波パルスの例を示す図である。
【
図6】モデル適用動作において超音波プローブから送信される超音波パルスの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の各実施形態について各図を参照して説明する。複数の図面に示された同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
図1には、本発明の実施形態に係る超音波診断装置100の構成が示されている。超音波診断装置100は、ビーム制御部10、送信部12、超音波プローブ14、受信部20、制御部22、操作部24、情報処理部26および表示部46を備えている。
【0017】
情報処理部26は、整相加算部28、Bモード画像生成部32、画像処理部34、直交検波部36、ウォールフィルタ38、ドプラ計測部40および機械学習部42を備えている。情報処理部26は、プログラムを実行することで、これらの構成要素(整相加算部28、Bモード画像生成部32、画像処理部34、直交検波部36、ウォールフィルタ38、ドプラ計測部40および機械学習部42)の各機能を実現する1つまたは複数のプロセッサによって構成されてよい。制御部22は、超音波診断装置100に対する全体的な制御を行う。操作部24は、キーボード、マウス、レバー、ボタン、音声認識装置等を含み、ユーザの操作に関する情報を制御部22に出力する。制御部22は、操作部24における操作に応じて超音波診断装置100を制御する。
【0018】
操作部24は、超音波診断装置100を操作するためのユーザーインターフェースを表示部46と共に構成してもよい。例えば操作部24は、表示部46の表示画面におけるタッチパネルを含んでもよい。また、操作部24は、表示画面に仮想的に構成されるキーボード、レバー、ボタン等を操作する機能を有してよい。
【0019】
超音波診断装置100の動作の概略について説明する。超音波診断装置100は、超音波プローブ14から被検体18に超音波を送信し、被検体18内で反射した超音波、すなわち被検体18内で発生した反射波を超音波プローブ14で受信する。超音波診断装置100は、Bモードおよびドプラモードによる各測定を実行する。
【0020】
超音波診断装置100は、Bモードの動作では、被検体18から受信された反射波に基づいてBモード画像データを生成し、Bモード画像を表示部46に表示する。超音波診断装置100は、ドプラモードの動作では、血流速度に応じた色彩がBモード画像に付された画像を示すBモードカラードプラ画像データを生成し、Bモードカラードプラ画像を表示部46に表示する。
【0021】
超音波診断装置100の具体的な構成、および超音波診断装置100が実行する具体的な処理について説明する。超音波プローブ14は、被検体18の表面に接触した状態とされる。超音波プローブ14は、複数の振動素子16を備えている。送信部12は、ビーム制御部10による制御に基づいて超音波プローブ14の各振動素子16に送信信号を出力する。これによって、超音波プローブ14から超音波が送信される。ビーム制御部10は送信部12に対する制御によって、超音波プローブ14において送信ビームを形成し、送信ビームを被検体18に対して走査してよい。すなわち、送信部12は、ビーム制御部10の制御に従い各送信信号の遅延時間またはレベルを調整し、超音波プローブ14において送信ビームを形成し、送信ビームを被検体18に対して走査してよい。また、送信部12は、ビーム制御部10の制御に従い各送信信号の遅延時間またはレベルを調整し、超音波プローブ14において複数本の送信ビームから構成される送信帯を形成してもよい。
【0022】
被検体18内で発生した反射波が超音波プローブ14の各振動素子16で受信されると、各振動素子16は、受信された超音波に応じた受信信号を受信部20に出力する。受信部20は、ビーム制御部10による制御に従い、各振動素子16から出力された受信信号に対し増幅、周波数帯域制限等の処理を施して、情報処理部26に出力する。情報処理部26は、各構成要素(整相加算部28、Bモード画像生成部32、画像処理部34、直交検波部36、ウォールフィルタ38、ドプラ計測部40および機械学習部42)が実行する処理を各受信信号に施す。
【0023】
整相加算部28は、複数の振動素子16に対して受信部20から出力された複数の受信信号を整相加算して整相後受信信号を生成する。これよって、特定の方向から受信された超音波に基づく受信信号が互いに強め合うように位相が調整され加算された整相後受信信号が生成され、その特定の方向に受信ビームが形成される。整相加算部28は、Bモードでの動作時には整相後受信信号をBモード画像生成部32に出力する。また、整相加算部28は、ドプラモードでの動作時には整相後受信信号を直交検波部36に出力する。
【0024】
Bモードでの動作について説明する。整相加算部28は、被検体18内で走査される受信ビームの各方向から受信された超音波に基づく各整相後受信信号を生成し、Bモード画像受信信号としてBモード画像生成部32に出力する。Bモード画像生成部32は、各受信ビーム方向に対して得られたBモード画像受信信号に基づいてBモード画像データを生成し、画像処理部34に出力する。送信ビームおよび受信ビーム(以下、送受信ビームという)の1回の走査に基づくBモード画像データは1フレーム分の画像データであり、1枚のBモード画像に対応する。
【0025】
ビーム制御部10、送信部12、超音波プローブ14、受信部20、整相加算部28およびBモード画像生成部32は、送受信ビームの繰り返し走査と共にBモード画像データを次々と生成し、各Bモード画像データを画像処理部34に出力する。画像処理部34は、Bモード画像データに基づいて、Bモード画像を表示する映像信号を生成し、表示部46に出力する。表示部46は、映像信号に基づいてBモード画像を表示する。
【0026】
Bモードは、フェーズインバージョンBモードであってもよい。フェーズインバージョンBモードでは、位相を180°異らせて2回に亘って同一方向に超音波パルスが送信される。Bモード画像生成部32は、2回に亘って送信された超音波パルスに応じて2回に亘って受信された反射波に基づく2つの整相後受信信号を加算して高調波受信信号を生成し、高調波受信信号に基づいてフェーズインバージョンBモード画像データを生成する。高調波受信信号は、ドプラ周波数が0でないことに起因して2つの整相後受信信号に生じた高調波成分を示す。フェーズインバージョンBモード画像データは、血液等、動きのある測定対象物の画像を示す。
【0027】
ドプラモードでの動作について説明する。本実施形態に係るドプラモードの動作には、基本動作、学習動作およびモデル適用動作がある。基本動作では、整相後受信信号を直交検波することで得られた受信ドプラ信号に基づいて、ドプラ計測部40がドプラ計測情報を生成する。
【0028】
ドプラ計測情報にはカラードプラデータが含まれてよい。カラードプラデータは、送受信ビームが走査された領域のBモード画像上に、血流速度を色彩によって示すデータである。カラードプラデータは、例えば、超音波プローブ14から離れる方向に血液が流れる領域に青色を付し、超音波プローブ14に近付く方向に血液が流れる領域に赤色を付し、さらに、血流速度が大きい領域ほど輝度を大きくするデータであってよい。
【0029】
ドプラ計測部40が生成するドプラ計測情報には、カラードプラデータの他、送受信ビームが走査された領域における血流速度に関連する様々な情報が含まれてよい。ドプラ計測情報に含まれるカラードプラデータ以外の情報については後述する。
【0030】
学習動作は、機械学習のための教師データを生成し、機械学習によって機械学習部42に機械学習モデル44を構築する動作である。教師データは、基本動作によって生成される。モデル適用動作では、機械学習部42が機械学習によって構築した機械学習モデル44によってドプラ計測情報が生成される。
【0031】
基本動作について説明する。基本動作では、1つの送受信ビームについてN回に亘って超音波パルスが送受信される。ここで、Nは2以上の整数である。整相加算部28から直交検波部36には、N個の整相後受信信号として、N個の受信パルス信号が出力される。直交検波部36は、送信される超音波パルスの周波数を有するローカル信号で、N個の受信パルス信号を直交検波し、N個の受信ドプラ信号を生成する。直交検波部36からウォールフィルタ38には、N個の受信ドプラ信号が出力される。ウォールフィルタ38は、N個の受信ドプラ信号に対して高域通過フィルタ処理を施して、高域通過フィルタ処理後のN個の受信ドプラ信号をドプラ計測部40に出力する。
【0032】
ドプラ計測部40は、位置または方向が異なる複数の送受信ビームのそれぞれについて取得されたN個の受信ドプラ信号に基づいて、ドプラ計測情報に含まれる1つの情報としてカラードプラデータを生成する。
【0033】
ドプラ計測部40は、N個の受信ドプラ信号に基づいて、例えば、特許文献3に示されている自己相関処理に従って、送受信ビームの深さ方向の血流速度v(r)を求める。ここで、v(r)は、深さrの位置における血流速度を示す。ドプラ計測部40は、位置または方向が異なる複数の送受信ビームのそれぞれについて求められた各深さrにおける深さ方向の血流速度v(r)に基づいて、カラードプラデータを生成し、画像処理部34に出力する。以下、血流速度v(r)を求める具体的な処理について説明する。
【0034】
第1番目から第N番目のうち第q番目(q=1~N)に取得された受信ドプラ信号は、次の(数1)で表される。
【0035】
【0036】
rは深さ方向の座標値である。I(r,q)は受信ドプラ信号の同相成分を示し、Q(r,q)は受信ドプラ信号の直交成分を示す。jは虚数単位である。ドプラ計測部40は、(数2)に従い、N個の受信ドプラ信号z(r,1)、z(r,2)、・・・・・z(r,N)に対する自己相関値A(r)を求める。
【0037】
【0038】
ここで、上付きの「*」は共役複素数であることを示す。ドプラ計測部40は、自己相関値A(r)の実数部Re[A(r)]および虚数部をIm[A(r)]を用いて、(数3)に従って血流速度v(r)を求める。
【0039】
【0040】
cは、被検体18内を伝搬する超音波パルスの伝搬速度である、f0は、超音波プローブ14から送信される超音波パルスの周波数である。Tは、N個の超音波パルスを送信する時間間隔である。(数3)の右辺のうちc/(2f0)よりも右側の部分は、ドプラ周波数を表す。血流速度v(r)は、深さrにおける血流速度の深さ方向の成分を表す。血流の方向が深さ方向に対してなす角度φが既知である場合には、v(r)/cosφが血流速度である。
【0041】
血流速度分布の測定を行う場合等、血流速度の絶対的な値(例えば、MKSA単位系での値)を求める必要がない場合、血流速度は、(数3)で求められる値に任意の定数を乗じた値としてもよい。また、血流速度に代えて、(数3)の右辺のうちc/(2f0)よりも右側の部分であるドプラシフト周波数測定値が用いられてもよい。
【0042】
画像処理部34は、Bモード画像データおよびカラードプラデータに基づいて、Bモード画像上に血流速度に応じた色彩を付したBモードカラードプラ画像を示すデータを生成する。画像処理部34は、Bモードカラードプラ画像データに基づいて映像信号を生成し、表示部46に出力する。表示部46は、映像信号に基づいてBモードカラードプラ画像を表示する。
【0043】
ドプラ計測部40は、位置または方向が異なる複数の送受信ビームのそれぞれについて求められた各深さrにおける自己相関値A(r)をドプラ計測情報の1つとしてよい。
【0044】
また、ドプラ計測部40は、位置または方向が異なる複数の送受信ビームのそれぞれについて求められた各深さrにおける速度v(r)をドプラ計測情報の1つとしてよい。
【0045】
ドプラ計測部40はドプラ計測情報の1つとして、位置または方向が異なる送受信ビームのそれぞれについて求められた各深さrにおける血流パワーP(r)を生成してもよい。血流パワーP(r)は、(数1)で示される受信ドプラ信号の大きさによって表される。ドプラ計測部40が血流パワーP(r)を求めるため、SVD(Singular Value Decomposition)フィルタ等が適切なフィルタがウォールフィルタ38として用いられてよい。
【0046】
また、ドプラ計測部40は、ドプラ計測情報に含まれる1つの情報として、1つの送受信ビームについてN回に亘って取得された受信ドプラ信号のドプラ周波数のばらつき度(以下、ドプラ周波数ばらつき度という)を生成してもよい。
【0047】
ドプラ周波数ばらつき度は、血流速度v(r)が、上記の(数1)~(数3)に従って求められる場合、(数4)に従って求められるN-1個の隣接時間ドプラ周波数に基づいて求められてよい。
【0048】
すなわち、ドプラ計測部40は、(数2)の右辺で加算合計されるz(r,q)・z(r,q+1)*の実数部および虚数部を用いて、(数4)に従って、q=1~N-1のそれぞれについて、隣接時間ドプラ周波数fa(r,q)を求める。
【0049】
【0050】
ドプラ計測部40は、N-1個の隣接時間ドプラ周波数fa(r,1)、fa(r,2)、・・・・・fa(r,N-1)に対してドプラ周波数ばらつき度を求め、画像処理部34に出力する。ドプラ周波数ばらつき度はN-1個の隣接時間ドプラ周波数についての分散、標準偏差等のばらつきを示す値であってよい。
【0051】
画像処理部34は、ドプラ周波数ばらつき度に応じて、Bモード画像上に付する色彩を調整してよい。例えば、超音波プローブ14から離れる方向に血液が流れる領域に青色を付し、超音波プローブ14に近付く方向に血液が流れる領域に赤色を付する場合には、ドプラ周波数ばらつき度が大きい程、色彩を紫色や白色に近付けてよい。
【0052】
以上のように、ドプラ計測部40が生成するドプラ計測情報には、カラードプラデータの他、位置または方向が異なる送受信ビームのそれぞれについて求められた、自己相関値A(r)、血流速度v(r)、血流パワーP(r)、ドプラ周波数ばらつき度等がある。ドプラ計測情報は、自己相関値A(r)、血流速度v(r)、血流パワーP(r)およびドプラ周波数ばらつき度のうち少なくとも1つを含む情報であってよい。
【0053】
このように、基本動作では、ウォールフィルタ38によって高域通過フィルタ処理が施されたN個の受信ドプラ信号に基づいて、ドプラ計測部40がドプラ計測情報を生成する。直交検波部36から出力された受信ドプラ信号には、被検体18内の組織の動きに基づく低周波ノイズが含まれており、ドプラ計測情報に含まれる不要成分の原因となる。例えば、カラードプラデータについては、クラッタと称されるノイズが発生する原因となる。そのため、ウォールフィルタ38によってドプラ計測情報に含まれる不要成分が抑制される。
【0054】
次に、学習動作について説明する。学習動作では、各送受信ビームについてK回に亘って超音波パルスが送受信された場合について次のような処理が実行される。ここで、Kは上記のNよりも小さい2以上の整数である。各送受信ビームについてK回に亘って超音波パルスが送受信されたことに伴って、直交検波部36から機械学習部42およびウォールフィルタ38には、K個の受信ドプラ信号が出力される。
【0055】
ウォールフィルタ38は、K個の受信ドプラ信号に対して高域通過フィルタ処理を施して、高域通過フィルタ処理後のK個の受信ドプラ信号をドプラ計測部40および機械学習部42に出力する。ドプラ計測部40は、位置または方向が異なる複数の送受信ビームのそれぞれについてK回に亘って取得された受信ドプラ信号に基づいてドプラ計測情報を生成し、機械学習部42に出力する
【0056】
このように、機械学習部42には、各送受信ビームについてK回に亘って超音波パルスが送受信された場合(以下、K回送受信ということがある)について、トレーニング情報として次のような情報が入力される。すなわち、ウォールフィルタ38によって高域通過フィルタ処理が施される前の受信ドプラ信号、ウォールフィルタ38によって高域通過フィルタ処理が施された後の受信ドプラ信号、および、ドプラ計測部40によって生成されたドプラ計測情報が機械学習部42入力される。
【0057】
トレーニング情報は、ウォールフィルタ38によって高域通過フィルタ処理が施される前の受信ドプラ信号、ウォールフィルタ38によって高域通過フィルタ処理が施された後の受信ドプラ信号、およびドプラ計測部40によって生成されたドプラ計測情報のうち少なくとも1つを含むものであってもよい。ドプラ計測情報は、ドプラ計測情報に含まれる複数種の情報のうち少なくとも1つであってよい。
【0058】
次に、各送受信ビームについてJ回に亘って超音波パルスが送受信された場合(以下、J回送受信ということがある)について、目標情報として次のような情報が機械学習部42に入力される。ここで、Jは、Kよりも大きい2以上の整数である。J回送受信の場合は、K回送受信の場合に比べて、ウォールフィルタ38のタップ係数が多くなる。そのため、J回送受信の場合はK回送受信の場合に比べて、低域通過フィルタ特性が急峻となり、高域では減衰量が小さく低域では減衰量が大きくなるという特性が顕著となる。
【0059】
ウォールフィルタ38によって高域通過フィルタ処理が施される前の受信ドプラ信号、ウォールフィルタ38によって高域通過フィルタ処理が施された後の受信ドプラ信号、さらには、ドプラ計測部40によって生成されたドプラ計測情報が機械学習部42に入力される。ただし、J回送受信の場合について超音波パルスが送受信される領域(測定対象物)は、K回送受信の場合について超音波パルスが送受信される領域(測定対象物)と同一とされる。目標情報としてのドプラ計測情報は、ドプラ計測情報に含まれる複数種の情報のうち少なくとも1つであってよい。
【0060】
学習動作では、異なる複数の測定対象物、例えば、異なる複数の観測部位における血流に対して、上記のK回送受信とJ回送受信が行われる。機械学習部42は、異なる複数の被検体18や異なる複数の観測部位について、K回送受信によって生成されたトレーニング情報と、J回送受信によって生成された目標情報との組を教師データとして取得して、機械学習モデル44を構築する。異なる複数の測定対象物のうち少なくとも1つについては、目標情報として少なくともドプラ計測情報を含む。学習動作は、CNN、AdaBoost、SVN等の機械学習アルゴリズムを用いて行われてよい。機械学習アルゴリズムは深層学習アルゴリズムを含んでよい。
【0061】
構築される機械学習モデル44は、各送受信ビームについてK回に亘って超音波パルスが送受信された場合に、以下の入力情報が入力された場合に、J回送受信の場合と同等のドプラ計測情報を生成するモデルである。すなわち、機械学習モデル44は、K回に亘って超音波パルスが送受信された場合において、仮にJ回に亘って超音波パルスが送受信されたならば得られるであろうドプラ計測情報を予測するモデルである。
【0062】
入力情報は、ウォールフィルタ38によって高域通過フィルタ処理が施される前の受信ドプラ信号、ウォールフィルタ38によって高域通過フィルタ処理が施された後の受信ドプラ信号、および、ドプラ計測部40によって生成されたドプラ計測情報のうち少なくとも1つであってよい。ドプラ計測情報は、ドプラ計測情報に含まれる複数種の情報のうち少なくとも1つであってよい。
【0063】
次に、モデル適用動作について説明する。モデル適用動作では、被検体18の観測部位で超音波ビームが走査され、位置または方向が異なる複数の送受信ビームについて超音波パルスが送受信される。各送受信ビームについては、K回に亘って超音波パルスが送受信され、直交検波部36からウォールフィルタ38および機械学習モデル44には、K個の受信ドプラ信号が出力される。
【0064】
ウォールフィルタ38は、K個の受信ドプラ信号に対して高域通過フィルタ処理を施して、高域通過フィルタ処理後のK個の受信ドプラ信号をドプラ計測部40および機械学習モデル44に出力する。ドプラ計測部40は、位置または方向が異なる複数の送受信ビームのそれぞれについてK回に亘って取得された受信ドプラ信号に基づいて、ドプラ計測情報を生成し、機械学習モデル44に出力する。
【0065】
これによって、機械学習モデル44には、各送受信ビームについてK回に亘って超音波パルスが送受信された場合について入力情報が入力され、機械学習モデル44は、入力情報に対してJ回送受信の場合と同等のドプラ計測情報を生成する。
【0066】
ドプラ計測情報にカラードプラデータが含まれている場合、機械学習モデル44は、画像処理部34にカラードプラデータを出力する。画像処理部34は、Bモード画像データおよびカラードプラデータに基づいて、Bモードカラードプラ画像を示すデータを生成する。画像処理部34は、Bモードカラードプラ画像データに基づいて、Bモードカラードプラ画像を表示する映像信号を生成し、表示部46に出力する。表示部46は、映像信号に基づいてBモードカラードプラ画像を表示する。
【0067】
なお、画像処理部34は、通常動作によって得られたBカラードプラ画像データに基づく画像と、モデル適用動作によって得られたBカラードプラ画像データに基づく画像とを並べて表示する合成画像データを生成してもよい。また、画像処理部34は、通常動作によって得られたBカラードプラ画像データに基づく画像と、モデル適用動作によって得られたBカラードプラ画像データに基づく画像について、一方を他方を透かして見通されるような画像を示す合成画像データを生成してもよい。画像処理部34は、合成画像データに基づいて、合成画像を表示する映像信号を生成し、表示部46に出力する。表示部46は、映像信号に基づいて合成画像を表示する。
【0068】
このように、本実施形態に係る超音波診断装置100は、送信部12、受信部20および情報処理部26を備えている。送信部12は、超音波プローブ14によって超音波パルスをN回に亘って送信する。受信部20は、測定対象物でN回に亘って生じた反射波を超音波プローブ14によって受信する。情報処理部26は、N回に亘って生じた反射波に応じて、受信部20から出力されるN個の受信パルス信号から、直交検波部36によってN個の受信ドプラ信号を生成し、N個の受信ドプラに対する処理を実行する。本実施形態における測定対象物は、被検体18において血液が流れている観測部位である。
【0069】
情報処理部26は、N個の受信ドプラ信号に対して高域通過フィルタ処理を施すウォールフィルタ38(フィルタ)と、高域通過フィルタ処理が施されたN個の受信ドプラ信号に基づいて、測定対象物のドプラ計測情報を生成するドプラ計測部40と、教師データに基づいて構築された機械学習モデル44とを含んでいる。
【0070】
教師データは、トレーニング情報および目標情報を含む。トレーニング情報は、NをKとして各受信ドプラ信号から導き出される受信特性情報、および、NをKとしたときにドプラ計測部40が生成するドプラ計測情報のうち少なくとも一方である。ここで、受信特性情報は、高域通過フィルタ処理が施される前の受信ドプラ信号、および高域通過フィルタ処理が施された後の受信ドプラ信号のうち少なくとも一方を含む。
【0071】
目標情報は、NをKとしたときと同一の測定対象物に対して、NをJとして各受信ドプラ信号から導き出される受信特性情報、および、NをJとしたときにドプラ計測部40が生成するドプラ計測情報のうち少なくとも一方である。ここで、JおよびKは2以上の整数であり、JはKよりも大きい。
【0072】
機械学習モデル44は、入力情報に基づいてドプラ計測情報を生成する。入力情報は、被検体18における測定対象物に対して、NをKとして各受信ドプラ信号から導き出される受信特性情報、および、NをKとしたときにドプラ計測部40が生成するドプラ計測情報のうち少なくとも一方である。
【0073】
上記のように、NをJとしたJ回送受信の場合は、NをKとしたK回送受信の場合に比べて、ウォールフィルタ38のタップ係数が多くなる。そのため、J回送受信の場合はK回送受信の場合に比べて、低域通過フィルタ特性が急峻となり、高域では減衰量が小さく低域では減衰量が大きくなるという特性が顕著となる。したがって、J回送受信の方が、K回送受信に比べて、ドプラ計測情報に含まれる不要成分が大きく抑制される。ドプラ計測情報に含まれるカラードプラデータについては、J回送受信の方が、K回送受信に比べて、クラッタが抑制される効果が大きい。
【0074】
本実施形態に係る超音波診断装置100によれば、機械学習モデル44を適用することで、K回送受信の場合についても、J回送受信の場合と同等のドプラ計測情報が得られる。これによって、超音波パルスの送信回数が比較的少ない場合であっても、ウォールフィルタ38によってドプラ計測情報に含まれる不要成分が抑制される。Bモードカラードプラ画像を表示する場合については、超音波パルスの送信回数が比較的少ない場合であっても、ウォールフィルタ38によってクラッタが抑制される。
【0075】
また、本実施形態に係る超音波診断装置100では、ドプラ計測情報に含まれる不要成分を抑制する効果を維持しながら、超音波パルスの送信回数を少なくすることで、カラードプラデータを生成するときのフレームレートが大きくなる。
【0076】
図2には、トレーニング情報が機械学習部42に入力される動作が示されている。この図には、J=3Kが成立し、J回の一連の超音波パルスの送受信に対し、トレーニング情報が3回に亘って機械学習部42に入力されることが示されている。すなわち、J個の超音波パルスが超音波プローブ14から送信され、J個の反射波が超音波プローブ14で受信されることに伴って、J個の受信ドプラ信号が、ウォールフィルタ38および機械学習部42に入力される。
【0077】
ウォールフィルタ38、ドプラ計測部40および機械学習部42は、K個の受信ドプラ信号ごとにトレーニング情報を機械学習部42に入力する。すなわち、ウォールフィルタ38は、K個の受信ドプラ信号が入力されるごとに、高域通過フィルタ処理後のK個の受信ドプラ信号をドプラ計測部40および機械学習部42に出力する。ドプラ計測部40は、高域通過フィルタ処理後のK個の受信ドプラ信号が入力されるごとに、ドプラ計測情報を機械学習部42に出力する。このように、K個の受信ドプラ信号、高域通過フィルタ処理前のK個の受信ドプラ信号、高域通過フィルタ処理後のK個の受信ドプラ信号、K個の受信ドプラ信号に応じて生成されたドプラ計測情報が入力されることで、K回送受信に対応するトレーニング情報が、3回に亘って機械学習部42に入力される。
【0078】
図3には、目標情報が機械学習部42に入力される動作が示されている。この図には、J回の一連の超音波パルスの送受信に対し、目標情報が機械学習部42に1回入力されることが示されている。すなわち、J個の超音波パルスが超音波プローブ14から送信され、J個の反射波が超音波プローブ14で受信されることに伴って、J個の受信ドプラ信号が、ウォールフィルタ38および機械学習部42に入力される。
図3に示されたJ個の受信ドプラ信号は、
図2に示されたJ個の受信ドプラ信号と同一であってよい。すなわち、トレーニング情報が機械学習部42に入力される動作におけるJ=3K回の送受信によって得られたJ個の受信ドプラ信号が、機械学習部42に目標情報が入力される動作に用いられてよい。
【0079】
ウォールフィルタ38、ドプラ計測部40および機械学習部42は、J個の受信ドプラ信号に基づく目標情報を機械学習部42に入力する。すなわち、ウォールフィルタ38は、J個の受信ドプラ信号に基づいて、高域通過フィルタ処理後のJ個の受信ドプラ信号をドプラ計測部40および機械学習部42に出力する。ドプラ計測部40は、高域通過フィルタ処理後のJ個の受信ドプラ信号が入力されたことに応じて、ドプラ計測情報を機械学習部42に出力する。このように、J個の受信ドプラ信号、高域通過フィルタ処理前のJ個の受信ドプラ信号、高域通過フィルタ処理後のJ個の受信ドプラ信号、J個の受信ドプラ信号に応じて生成されたドプラ計測情報が、J回送受信に対応する目標情報として
機械学習部42に入力される。
【0080】
図2および
図3に示される動作が、異なる複数の被検体18や異なる複数の観測部位について行われ、機械学習部42は、複数回に亘って入力されたトレーニング情報、および複数回に亘って入力された目標情報に基づいて、機械学習モデル44を構築する。
【0081】
図4にはモデル適用動作が示されている。この図には、K回の一連の超音波の送受信に対し、高域通過フィルタ処理が施される前のK個の受信ドプラ信号と、高域通過フィルタ処理が施された後のK個の受信ドプラ信号と、ドプラ計測情報が機械学習モデル44に1回入力されることが示されている。すなわち、K個の超音波パルスが超音波プローブ14から送信され、K個の反射波が超音波プローブ14で受信されることに伴って、K個の受信ドプラ信号が、ウォールフィルタ38および機械学習モデル44に入力される。ウォールフィルタ38は、K個の受信ドプラ信号に基づいて、高域通過フィルタ処理後のK個の受信ドプラ信号をドプラ計測部40および機械学習モデル44に出力する。ドプラ計測部40は、高域通過フィルタ処理後のK個の受信ドプラ信号が入力されることで、ドプラ計測情報を機械学習モデル44に出力する。このように、高域通過フィルタ処理前のK個の受信ドプラ信号、高域通過フィルタ処理後のK個の受信ドプラ信号、K個の受信ドプラ信号に応じて生成されたドプラ計測情報が、入力情報として機械学習モデル48に入力され、機械学習モデル48は、入力情報に基づいてJ回送受信の場合と同等のドプラ計測情報を生成する。
【0082】
図5には、通常動作において超音波プローブ14から送信される超音波パルスの例が示されている。超音波プローブ14が備える複数の振動素子16が、
図5の左右方向に配列されている。縦軸方向は時間を表す。
図5に示される実施形態では、左右方向に配列された複数の振動素子16によって、横方向の異なる位置に4つの送信帯TX1~TX4が形成されている。各送信帯TX1~TX4は、複数の送信ビームによって形成される。各送信帯TX1~TX4では、N個の超音波パルスが送信され、被検体18で反射して生じたN個の反射波が受信される。一連のN個の超音波パルスを超音波パルス群として、超音波パルス群が所定の時間間隔で送信される。
【0083】
隣接する送信帯TX1およびTX2では、超音波パルスが交互に送信され、各送信帯TX1およびTX2のそれぞれにおいて、N個の超音波パルスが送信される。隣接する送信帯TX3およびTX4でも同様に、超音波パルスが交互に送信され、各送信帯TX3およびTX4のそれぞれにおいて、N個の超音波パルスが送信される。
【0084】
隣接する送信帯TX1およびTX2で超音波パルス群SP1が送信された後に、隣接する送信帯TX3およびTX4で超音波パルス群SP2が送信される。隣接する送信帯TX1およびTX2での超音波パルス群SP1の送信と、隣接する送信帯TX3およびTX4での超音波パルス群SP2の送信とが交互に繰り返される。以下の説明では、隣接する送信帯TX1およびTX2は送信帯ペアPTX1と称され、隣接する送信帯TX3およびTX4は送信帯ペアPTX2と称される。
【0085】
送信帯ペアPTX2で超音波パルス群SP2が送信されてから、送信帯ペアPTX1で超音波パルス群SP2が送信されるまでの間、超音波プローブ14では、Bモード画像生成用の超音波パルスが送信され、Bモード画像生成用の反射波が受信される。
図5に示される実施形態では、送信帯TX1~TX4のそれぞれの幅の半分の幅で、Bモード画像生成用のハーフ送信帯が形成されている。送信帯TX1内で隣接する2つのハーフ送信帯のそれぞれでBモード画像生成用の2つの超音波パルスが送信され、送信帯TX1内で隣接する2つのハーフ送信帯でBモード画像生成用の超音波パルスが交互に送信される。本実施形態では、BモードはフェーズインバージョンBモードであり、各ハーフ送信帯で送信される2つのBモード画像生成用の超音波パルスの位相差は、180°である。
【0086】
本実施形態では、送信帯TX1、TX2、TX2、TX4の順に、各送信帯における2つのハーフ送信帯でBモード画像生成用の超音波パルスが交互に送信される動作が実行される。
図5では、送信帯TX1、TX2、TX3およびTX4のそれぞれにおける2つのハーフ送信帯で、Bモード画像生成用の超音波パルスが交互に送信されるときのBモード画像用の超音波パルス群が、超音波パルス群PIBと示されている。
【0087】
送信帯ペアPTX1で超音波パルス群SP1が送信され、送信帯ペアPTX2で超音波パルス群SP2が送信され、送信帯TX1、TX2、TX2およびTX4のそれぞれで超音波パルス群PIBが送信され、各超音波パルス群によって生じた反射波に対する受信処理によって、1フレームFR分の処理が実行される。1フレームFR分の処理は、1枚のカラードプラ画像に対応するドプラ計測情報を生成する処理に相当する。
【0088】
各送信帯TX1~TX4については、1フレームFR分の処理において、N個の超音波パルスが送信され、被検体18で反射して生じたN個の反射波が受信された場合の通常動作が実行され、ドプラ計測部40は、機械学習モデル44によらないドプラ計測情報を生成する。
【0089】
図6には、モデル適用動作において超音波プローブ14から送信される超音波パルスの例が示されている。
図6に示される実施形態においても、
図5に示された実施形態と同様、左右方向に配列された複数の振動素子16によって、超音波パルスについて、横方向の異なる位置に4つの送信帯TX1~TX4が形成されている。
【0090】
隣接する送信帯TX1およびTX2のそれぞれにおいて2つの超音波パルスが送信され、隣接する送信帯TX1およびTX2において超音波パルスが交互に送信される。同様に、隣接する送信帯TX3およびTX4のそれぞれにおいて2つの超音波パルスが送信され、隣接する送信帯TX3およびTX4において超音波パルスが交互に送信される。このように、送信帯TX1、TX2、TX3およびTX4のそれぞれにおいて、それぞれが2つの超音波パルスからなる超音波パルス群SP1が送信される。同様にして、送信帯TX1、TX2、TX3およびTX4のそれぞれにおいて、それぞれが2つの超音波パルスからなる超音波パルス群SP2、SP3、SP4が時間経過と共に順に送信される。
【0091】
本実施形態では、送信帯TX1、TX2、TX3およびTX4のそれぞれにおいて、超音波パルス群SP1~SP4が時間経過と共に順に送信される一連の送信処理が繰り返される。送信帯TX1、TX2、TX3およびTX4のそれぞれにおいて、超音波パルス群SP1~SP4が送信されることで、送信帯TX1、TX2、TX3およびTX4のそれぞれで、K個の超音波パルスが送信される。
図6に示されている例では、K=8である。
【0092】
図6の最初の一連の超音波パルス群SP1~SP4の送信に伴って送信されるBモード画像生成用の超音波の送信について説明する。送信帯TX4で超音波パルス群SP1が送信されてから、送信帯TX1で超音波パルス群SP2が送信されるまでの間、送信帯TX1の左側のハーフ送信帯でBモード画像生成用の超音波パルス群PIB1が送信される。送信帯TX4で超音波パルス群SP2が送信されてから、送信帯TX1で超音波パルス群SP3が送信されるまでの間、送信帯TX1の右側のハーフ送信帯でBモード画像生成用の超音波パルス群PIB2が送信される。
【0093】
送信帯TX4で超音波パルス群SP3が送信されてから、送信帯TX1で超音波パルス群SP4が送信されるまでの間、送信帯TX2の左側のハーフ送信帯でBモード画像生成用の超音波パルス群PIB3が送信される。送信帯TX4で超音波パルス群SP4が送信されてから、送信帯TX1で超音波パルス群SP1が送信されるまでの間、送信帯TX2の右側のハーフ送信帯でBモード画像生成用の超音波パルス群PIB4が送信される。
【0094】
図6の第2番目の一連の超音波パルス群SP1~SP4の送信に伴って送信されるBモード画像生成用の超音波の送信について説明する。送信帯TX4で超音波パルス群SP1が送信されてから、送信帯TX1で超音波パルス群SP2が送信されるまでの間、送信帯TX3の左側のハーフ送信帯でBモード画像生成用の超音波パルス群PIB5が送信される。送信帯TX4で超音波パルス群SP2が送信されてから、送信帯TX1で超音波パルス群SP3が送信されるまでの間、送信帯TX3の右側のハーフ送信帯でBモード画像生成用の超音波パルス群PIB6が送信される。送信帯TX4で超音波パルス群SP3が送信されてから、送信帯TX1で超音波パルス群SP4が送信されるまでの間、送信帯TX4の左側のハーフ送信帯でBモード画像生成用の超音波パルス群PIB7が送信される。送信帯TX4で超音波パルス群SP4が送信されてから、送信帯TX1で超音波パルス群SP1が送信されるまでの間、送信帯TX4の右側のハーフ送信帯でBモード画像生成用の超音波パルス群PIB8が送信される。
【0095】
以降、
図6の奇数番目の一連の超音波パルス群SP1~SP4の送信に伴って、最初の一連の超音波パルス群SP1~SP4の送信に伴って送信された超音波パルス群PIB1~PIB4と同様のタイミングで、超音波パルス群PIB1~PIB4が送信される。また、
図6の偶数番目の一連の超音波パルス群SP1~SP4の送信に伴って、第2番目の一連の超音波パルス群SP1~SP4の送信に伴って送信された超音波パルス群PIB5~PIB8と同様のタイミングで、超音波パルス群PIB5~PIB8が送信される。
【0096】
送信帯TX1~TX4のそれぞれにおいて超音波パルス群SP1~SP4が送信され、各超音波パルス群によって生じた反射波に対する受信処理によって、カラードプラデータの1フレームFR分の処理が実行される。1フレームFR分の処理は、1枚のカラードプラ画像に対応するドプラ計測情報を生成する処理に相当する。
【0097】
また、送信帯TX1~TX4のそれぞれによって形成されるハーフ送信帯から、Bモード画像生成用の超音波パルス群PIB1~PIB8が送信され、各超音波パルス群によって生じた反射波に対する受信処理によって、フェーズインバージョンBモードデータの1フレームFRB分の処理が実行される。1フレームFRB分の処理は、1枚のフェーズインバージョンBモード画像に対応するフェーズインバージョンBモードデータを生成する処理に相当する。
【0098】
図5に示される通常動作における超音波パルスの送信では、1フレームFR分のドプラ計測情報が生成される間に、隣接する2つの送信帯ペアPTX1およびPTX2について、交互に超音波パルス群が送信される動作が1回だけ行われる。
【0099】
これに対し、
図6に示されるモデル適用動作では、1フレームFR分のドプラ計測情報が生成される間に、隣接する2つの送信帯ペアPTX1およびPTX2について、交互に超音波パルス群が送信される動作が複数回に亘って行われる。
図6に示されている例では、1フレームFR分のドプラ計測情報が生成される間に、隣接する2つの送信帯ペアPTX1およびPTX2について、交互に超音波パルス群が送信される動作が4回に亘って行われる。
【0100】
したがって、
図5に比べて1フレームFRにおいて超音波パルス群が送信される時間間隔が大きくなり、1フレームFRにおいて得られる複数の受信ドプラ信号の位相変化が十分に大きくなる。すなわち、(数2)で示される自己相関値A(r)の位相角(複素数の偏角)が十分に大きくなる。これによって、ドプラ計測情報の計測精度が高められる。さらに、隣接する2つの送信帯ペアPTX1およびPTX2について、交互に超音波パルス群が送信されることで、一定時間当たりにドプラ測定情報が取得される領域が広くなる。さらに、
図5に比べて1フレームFR分のドプラ計測情報を生成する時間が短くなり、フレームレートが大きくなる。
【0101】
ここでは、直線状に配列された複数の振動素子16を超音波プローブ14が備え、複数の送信帯が振動素子16の配列方向に対し垂直方向に形成される実施形態が示された。複数の振動素子16は、超音波プローブ14の先端部において曲線状に配列されてもよい。この場合、超音波プローブ14の先端部から放射状に延びるように複数の送信帯が形成されてもよい。
【0102】
図7には、
図6に従って超音波プローブ14から超音波パルスが送信された場合におけるモデル適用動作が示されている。この図には、1フレームFR分のK回の一連の超音波の送受信に対し、高域通過フィルタ処理が施される前のK個の受信ドプラ信号と、高域通過フィルタ処理が施された後のK個の受信ドプラ信号と、ドプラ計測情報が機械学習モデル44に1回入力されることが示されている。すなわち、K個の超音波パルスが超音波プローブ14から送信され、K個の反射波が超音波プローブ14で受信されることに伴って、K個の受信ドプラ信号が、ウォールフィルタ38および機械学習モデル44に入力される。ウォールフィルタ38は、高域通過フィルタ処理後のK個の受信ドプラ信号をドプラ計測部40および機械学習モデル44に出力する。ドプラ計測部40は、高域通過フィルタ処理後のK個の受信ドプラ信号が入力されることで、ドプラ計測情報を機械学習モデル44に出力する。このように、K個の受信ドプラ信号、高域通過フィルタ処理前のK個の受信ドプラ信号、高域通過フィルタ処理後のK個の受信ドプラ信号、K個の受信ドプラ信号に応じて生成されたドプラ計測情報が、入力情報として機械学習モデル44に入力される。機械学習モデル44は、入力情報に基づいて、J回送受信の場合と同等のドプラ計測情報を生成する。K個の受信ドプラ信号における各隣接する受信パルス信号の時間間隔のうち少なくとも1つについては、ドプラ周波数が検出可能な時間間隔が用いられてもよい。
【0103】
なお、
図5に示されている超音波パルス群PIBや、
図6に示されている超音波パルス群PIB1~PIB8は、Bモードの他、ドプラモードのための超音波パルス群として援用されてもよい。この場合、超音波パルス群PIBまたは超音波パルス群PIB1~PIB8に属する超音波パルスの送受信に応じて、整相加算部30から出力される受信パルス信号は、Bモード画像生成部32のみならず直交検波部36にも出力される。例えば、Bモードとドプラモードについて同一の波形を有する超音波パルスを用いることで、Bモードでの超音波パルスをドプラモードで用いることができる。フェーズインバージョンを用いる超音波パルスについては、2つの超音波パルスに基づく2つの受信ドプラ信号に、直交検波部36が180°の位相差を与える。
【0104】
Bモード画像生成用の反射波に応じて、受信部20から出力される整相後受信信号(Bモード画像受信信号)としての受信パルス信号が、受信部20から出力されるK個の受信パルス信号のうちいずれかとして、ドプラモードにおける動作に援用される。超音波パルス群PIBまたは超音波パルス群PIB1~PIB8が、Bモードに加えて、ドプラモードのための超音波パルス群として援用されることで、ドプラモードの動作において送受信パルスの送受信回数を増加させた場合と同等の効果が得られる。
【0105】
[本発明の構成]
構成1:
Nを2以上の整数として、
超音波プローブによって超音波パルスをN回に亘って送信する送信部と、
測定対象物でN回に亘って生じた反射波を前記超音波プローブによって受信する受信部と、
測定対象物でN回に亘って生じた反射波に応じて、前記受信部から出力されるN個の受信パルス信号からN個の受信ドプラ信号を生成し、各前記受信ドプラに対する処理を実行する情報処理部と、を備え、
前記情報処理部は、
N個の前記受信ドプラ信号に対して高域通過フィルタ処理を施すフィルタと、
前記高域通過フィルタ処理が施されたN個の前記受信ドプラ信号に基づいて、測定対象物のドプラ計測情報を生成するドプラ計測部と、
教師データに基づいて構築された機械学習モデルとを含み、
JおよびKを2以上の整数とし、JがKよりも大きいという条件の下で、
前記教師データは、
NをKとして各前記受信ドプラ信号から導き出される受信特性情報、および、NをKとしたときに前記ドプラ計測部が生成する前記ドプラ計測情報のうち少なくとも一方であるトレーニング情報と、
NをKとしたときと同一の測定対象物に対して、NをJとして各前記受信ドプラ信号から導き出される前記受信特性情報、および、NをJとしたときに前記ドプラ計測部が生成する前記ドプラ計測情報のうち少なくとも一方である目標情報と、を含み、
前記機械学習モデルは、
被検体における測定対象物に対して、NをKとして各前記受信ドプラ信号から導き出される前記受信特性情報、および、NをKとしたときに前記ドプラ計測部が生成する前記ドプラ計測情報のうち少なくとも一方である入力情報に基づいて、前記ドプラ計測情報を生成することを特徴とする超音波診断装置。
構成2:
構成1に記載の超音波診断装置であって、
前記受信特性情報は、
前記高域通過フィルタ処理前のN個の前記受信ドプラ信号、および、
前記高域通過フィルタ処理後のN個の前記受信ドプラ信号のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする超音波診断装置。
構成3:
構成1または構成2に記載の超音波診断装置であって、
前記ドプラ計測情報は、
前記高域通過フィルタ処理後のN個の前記受信ドプラ信号の自己相関値、
前記高域通過フィルタ処理後のN個の前記受信ドプラ信号から求められる測定対象物の速度、
前記高域通過フィルタ処理後のN個の前記受信ドプラ信号についてのドプラ周波数ばらつき度、および、
前記高域通過フィルタ処理後のN個の前記受信ドプラ信号の大きさを示す値、のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする超音波診断装置。
構成4:
構成1から構成3のいずれか1項に記載の超音波診断装置であって、
前記送信部は、前記超音波プローブによってBモード画像生成用の超音波を送信し、
前記受信部は、測定対象物で生じたBモード画像生成用の反射波を前記超音波プローブによって受信し、
前記情報処理部は、
Bモード画像生成用の反射波に応じて、前記受信部から出力されるBモード画像受信信号に基づいて、Bモード画像データを生成するBモード画像生成部を備え、
Bモード画像生成用の反射波に応じて、前記受信部から出力されるBモード画像受信信号が、前記受信部から出力されるN個の前記受信パルス信号のうちいずれかとして援用されることを特徴とする超音波診断装置。
構成5:
構成1から構成4のいずれか1項に記載の超音波診断装置であって、
前記送信部は、前記超音波パルスについて、異なる位置または異なる方向に複数の送信帯を形成し、
隣接する2つの送信帯について、一方の送信帯で前記超音波パルスが送信されていない間に、他方の送信帯で前記超音波パルスが送信されるように、交互に前記超音波パルスが送信され、
隣接する2つの送信帯をそれぞれが含む、隣接する2つの送信帯ペアについて、1つの送信帯ペアが含む2つの送信帯で交互に送信される一連の前記超音波パルスを超音波パルス群として、一方の送信帯ペアで超音波パルス群が送信されていない間に、他方の送信帯ペアで超音波パルス群が送信されるように、交互に超音波パルス群が送信され、
各送信帯でK個の前記超音波パルスが送信されるごとに、前記機械学習モデルは、各送信帯につき1フレーム分の前記ドプラ計測情報を生成することを特徴とする超音波診断装置。
構成6:
構成5に記載の超音波診断装置であって、
1フレーム分の前記ドプラ計測情報が生成される間に、隣接する2つの送信帯ペアについて、交互に超音波パルス群が送信される動作が複数回に亘って行われることを特徴とする超音波診断装置。
【符号の説明】
【0106】
10 ビーム制御部、12 送信部、14 超音波プローブ、16 振動素子、18 被検体、20 受信部、22 制御部、24 操作部、26 情報処理部、30 整相加算部、32 Bモード画像生成部、34 画像処理部、36 直交検波部、38 ウォールフィルタ、40 ドプラ計測部、42 機械学習部、44 機械学習モデル、46 表示部、100 超音波診断装置。