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特開2025-98558超音波断層画像処理装置及び超音波断層画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098558
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】超音波断層画像処理装置及び超音波断層画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20250625BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214773
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白丸 淳
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD01
4C601EE09
4C601JC08
4C601JC15
4C601KK31
(57)【要約】
【課題】超音波断層画像の断面種別を予測する第1学習モデルと、特定の断面種別の超音波断層画像に含まれる組織構造物を予測する第2学習モデルと、を用いて超音波断層画像に含まれる組織構造物を特定する際の特定精度を向上させる。
【解決手段】断面種別特定部38は、対象画像を第1学習モデル32に入力し、対象画像TIに対する第1学習モデル32の予測結果に基づいて、対象画像TIの断面種別を特定する。組織構造物特定部40は、特定断面に関連付けられた最初の第2学習モデル34に対象画像TIを入力して、対象画像TIに含まれる第1組織構造物を特定する。表示制御部22は、第1組織構造物に関する第1組織構造物情報をディスプレイ24に表示させる。組織構造物特定部40は、ユーザからの指示に応じて、最初の第2学習モデル34以外の他の第2学習モデル34に対象画像TIを入力して、対象画像TIに含まれる第2組織構造物を特定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された超音波断層画像の断面種別を予測して出力するように学習された第1学習モデルと、
超音波断層画像の各断面種別にそれぞれ関連付けられた複数の第2学習モデルであって、各前記第2学習モデルが、対応する断面種別の超音波断層画像に含まれる組織構造物を予測して出力するように学習された、複数の第2学習モデルと、
にアクセス可能な超音波断層画像処理装置であって、
処理対象の超音波断層画像である対象画像を前記第1学習モデルに入力することで、前記対象画像の断面種別である特定断面を特定する断面種別特定部と、
前記特定断面に関連付けられた前記第2学習モデルである最初の第2学習モデルに前記対象画像を入力することで、前記対象画像に含まれる第1組織構造物を特定する組織構造物特定部と、
前記第1組織構造物に関する情報である第1組織構造物情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備え、
前記組織構造物特定部は、前記第1組織構造物情報を確認したユーザからの、前記対象画像上の位置を示す指示に応じて、前記特定断面以外の断面種別に関連付けられた前記第2学習モデルを含む、前記最初の第2学習モデル以外の前記第2学習モデルに前記対象画像を入力し、当該第2学習モデルの予測結果に基づいて、前記対象画像の前記ユーザに指示された位置近傍に含まれる第2組織構造物を特定する、
ことを特徴とする超音波断層画像処理装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記特定断面を示す断面情報を前記表示部に表示させ、
前記表示制御部は、前記特定断面と、前記第2組織構造物の特定に寄与した前記第2学習モデルに関連付けられた断面種別と、が互いに異なる場合、前記特定断面を示す断面情報に代えて、前記第2組織構造物の特定に寄与した前記第2学習モデルに対応する断面種別を示す修正断面情報を前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波断層画像処理装置。
【請求項3】
前記複数の第2学習モデルが被検体の各部位に対応してグルーピングされており、
前記組織構造物特定部は、前記第1組織構造物情報を確認したユーザからの指示に応じて、前記最初の第2学習モデル以外の前記複数の第2学習モデルのうち、前記最初の第2学習モデルと同じグループに属する前記第2学習モデルに前記対象画像を入力し、当該第2学習モデルの予測結果に基づいて、前記対象画像に含まれる第2組織構造物をさらに特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波断層画像処理装置。
【請求項4】
前記組織構造物特定部は、前記第1組織構造物情報を確認したユーザからの指示に応じて、前記最初の第2学習モデル以外の複数の前記第2学習モデルそれぞれに前記対象画像を入力し、当該複数の第2学習モデルそれぞれが予測した複数の組織構造物のラベルそれぞれについての予測正確度の順序を演算し、
前記表示制御部は、当該複数の第2学習モデルそれぞれが予測した複数の組織構造物のラベルを、前記予測正確度の順序が表現された表示態様で前記表示部に表示させ、
前記組織構造物特定部は、当該複数の第2学習モデルそれぞれが予測した複数の組織構造物のうち、ユーザに選択されたラベルに係る組織構造物を前記第2組織構造物として特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波断層画像処理装置。
【請求項5】
超音波断層画像の断面種別と、当該断面種別の前記超音波断層画像の画質を調整するための画質調整パラメータとが互いに関連付けられた画質調整情報に基づいて、前記超音波断層画像の画質を調整する画質調整部であって、前記特定断面と、前記第2組織構造物の特定に寄与した前記第2学習モデルに関連付けられた断面種別と、が互いに異なる場合、前記第2組織構造物の特定に寄与した前記第2学習モデルに対応する断面種別に関連付けられた前記画質調整パラメータを用いて、前記対象画像の画質を調整する画質調整部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の超音波断層画像処理装置。
【請求項6】
入力された超音波断層画像の断面種別を予測して出力するように学習された第1学習モデルと、
超音波断層画像の各断面種別にそれぞれ関連付けられた複数の第2学習モデルであって、各前記第2学習モデルが、対応する断面種別の超音波断層画像に含まれる組織構造物を予測して出力するように学習された、複数の第2学習モデルと、
にアクセス可能なコンピュータを、
処理対象の超音波断層画像である対象画像を前記第1学習モデルに入力することで、前記対象画像の断面種別である特定断面を特定する断面種別特定部と、
前記特定断面に関連付けられた前記第2学習モデルである最初の第2学習モデルに前記対象画像を入力することで、前記対象画像に含まれる第1組織構造物を特定する組織構造物特定部と、
前記第1組織構造物に関する情報である第1組織構造物情報を表示部に表示させる表示制御部と、
として機能させ、
前記組織構造物特定部は、前記第1組織構造物情報を確認したユーザからの、前記対象画像上の位置を示す指示に応じて、前記特定断面以外の断面種別に関連付けられた前記第2学習モデルを含む、前記最初の第2学習モデル以外の前記第2学習モデルに前記対象画像を入力し、当該第2学習モデルの予測結果に基づいて、前記対象画像の前記ユーザに指示された位置近傍に含まれる第2組織構造物を特定する、
ことを特徴とする超音波断層画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、超音波断層画像処理装置及び超音波断層画像処理プログラムの改良を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波診断装置によって形成された超音波断層画像(Bモード画像)を解析することで、当該超音波断層画像に含まれる組織構造物(例えば臓器や血管など)を特定する技術がある。従来、このような機能を有する超音波診断装置も存在する。超音波断層画像において組織構造物を特定することで、例えば、当該超音波断層画像を用いて、特定された組織構造物に関する計測などを行うことができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、形成された超音波断層画像に対して、学習モデルを用いた処理、又は、テンプレートデータとのパターンマッチング処理などの画像認識処理を行うことによって、超音波断層画像に含まれる計測対象としての組織構造物を自動判別する超音波診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6836652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、第1学習モデルを用いて超音波断層画像の断面種別を予測して出力する第1学習モデルと、超音波断層画像に含まれる組織構造物を予測して出力する複数の第2学習モデルを用いて、超音波断層画像に含まれる組織構造物を特定することを考える。複数の第2学習モデルは、各断面種別にそれぞれ関連付けられている。この場合、まず、処理対象の超音波断層画像は、第1学習モデルに入力され、これにより当該超音波断層画像の断面種別が特定される。次に、特定された断面種別に関連付けられた第2学習モデルに当該超音波断層画像が入力され、これにより当該超音波断層画像に含まれる組織構造物が特定される。
【0006】
上記の処理によって組織構造物を特定する場合、その特定精度を向上させることが望まれる。
【0007】
本実施形態に係る超音波断層画像処理装置の目的は、超音波断層画像の断面種別を予測する第1学習モデルと、特定の断面種別の超音波断層画像に含まれる組織構造物を予測する第2学習モデルと、を用いて超音波断層画像に含まれる組織構造物を特定する際の特定精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示される超音波断層画像処理装置は、入力された超音波断層画像の断面種別を予測して出力するように学習された第1学習モデルと、超音波断層画像の各断面種別にそれぞれ関連付けられた複数の第2学習モデルであって、各前記第2学習モデルが、対応する断面種別の超音波断層画像に含まれる組織構造物を予測して出力するように学習された、複数の第2学習モデルと、にアクセス可能な超音波断層画像処理装置であって、処理対象の超音波断層画像である対象画像を前記第1学習モデルに入力することで、前記対象画像の断面種別である特定断面を特定する断面種別特定部と、前記特定断面に関連付けられた前記第2学習モデルである最初の第2学習モデルに前記対象画像を入力することで、前記対象画像に含まれる第1組織構造物を特定する組織構造物特定部と、前記第1組織構造物に関する情報である第1組織構造物情報を表示部に表示させる表示制御部と、を備え、前記組織構造物特定部は、前記第1組織構造物情報を確認したユーザからの、前記対象画像上の位置を示す指示に応じて、前記特定断面以外の断面種別に関連付けられた前記第2学習モデルを含む、前記最初の第2学習モデル以外の前記第2学習モデルに前記対象画像を入力し、当該第2学習モデルの予測結果に基づいて、前記対象画像の前記ユーザに指示された位置近傍に含まれる第2組織構造物を特定する、ことを特徴とする。
【0009】
前記表示制御部は、前記特定断面を示す断面情報を前記表示部に表示させ、前記表示制御部は、前記特定断面と、前記第2組織構造物の特定に寄与した前記第2学習モデルに関連付けられた断面種別と、が互いに異なる場合、前記特定断面を示す断面情報に代えて、前記第2組織構造物の特定に寄与した前記第2学習モデルに対応する断面種別を示す修正断面情報を前記表示部に表示させるとよい。
【0010】
前記複数の第2学習モデルが被検体の各部位に対応してグルーピングされており、前記組織構造物特定部は、前記第1組織構造物情報を確認したユーザからの指示に応じて、前記最初の第2学習モデル以外の前記複数の第2学習モデルのうち、前記最初の第2学習モデルと同じグループに属する前記第2学習モデルに前記対象画像を入力し、当該第2学習モデルの予測結果に基づいて、前記対象画像に含まれる第2組織構造物をさらに特定するとよい。
【0011】
前記組織構造物特定部は、前記第1組織構造物情報を確認したユーザからの指示に応じて、前記最初の第2学習モデル以外の複数の前記第2学習モデルそれぞれに前記対象画像を入力し、当該複数の第2学習モデルそれぞれが予測した複数の組織構造物のラベルそれぞれについての予測正確度の順序を演算し、前記表示制御部は、当該複数の第2学習モデルそれぞれが予測した複数の組織構造物のラベルを、前記予測正確度の順序が表現された表示態様で前記表示部に表示させ、前記組織構造物特定部は、当該複数の第2学習モデルそれぞれが予測した複数の組織構造物のうち、ユーザに選択されたラベルに係る組織構造物を前記第2組織構造物として特定するとよい。
【0012】
超音波断層画像の断面種別と、当該断面種別の前記超音波断層画像の画質を調整するための画質調整パラメータとが互いに関連付けられた画質調整情報に基づいて、前記超音波断層画像の画質を調整する画像調整部であって、前記特定断面と、前記第2組織構造物の特定に寄与した前記第2学習モデルに関連付けられた断面種別と、が互いに異なる場合、前記第2組織構造物の特定に寄与した前記第2学習モデルに対応する断面種別に関連付けられた前記画質調整パラメータを用いて、前記対象画像の画質を調整する画質調整部と、をさらに備えるとよい。
【0013】
また、本明細書で開示される超音波断層画像プログラムは、入力された超音波断層画像の断面種別を予測して出力するように学習された第1学習モデルと、超音波断層画像の各断面種別にそれぞれ関連付けられた複数の第2学習モデルであって、各前記第2学習モデルが、対応する断面種別の超音波断層画像に含まれる組織構造物を予測して出力するように学習された、複数の第2学習モデルと、にアクセス可能なコンピュータを、処理対象の超音波断層画像である対象画像を前記第1学習モデルに入力することで、前記対象画像の断面種別である特定断面を特定する断面種別特定部と、前記特定断面に関連付けられた前記第2学習モデルである最初の第2学習モデルに前記対象画像を入力することで、前記対象画像に含まれる第1組織構造物を特定する組織構造物特定部と、前記第1組織構造物に関する情報である第1組織構造物情報を表示部に表示させる表示制御部と、として機能させ、前記組織構造物特定部は、前記第1組織構造物情報を確認したユーザからの、前記対象画像上の位置を示す指示に応じて、前記特定断面以外の断面種別に関連付けられた前記第2学習モデルを含む、前記最初の第2学習モデル以外の前記第2学習モデルに前記対象画像を入力し、当該第2学習モデルの予測結果に基づいて、前記対象画像の前記ユーザに指示された位置近傍に含まれる第2組織構造物を特定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本明細書で開示される医用画像処理装置によれば、超音波断層画像の断面種別を予測する第1学習モデルと、特定の断面種別の超音波断層画像に含まれる組織構造物を予測する第2学習モデルと、を用いて超音波断層画像に含まれる組織構造物を特定する際の特定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る超音波診断装置の構成概略図である。
図2】第1組織構造物情報の表示例を示す図である。
図3】第2組織構造物情報の表示例を示す図である。
図4】修正断面情報の表示例を示す図である。
図5】複数の組織構造物のラベルの表示例を示す図である。
図6】本実施形態に係る超音波診断装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本実施形態に係る超音波断層画像処理装置としての超音波診断装置10の構成概略図である。超音波診断装置10は、病院などの医療機関に設置される医用装置である。
【0017】
超音波診断装置10は、被検体に対して超音波ビームを走査し、それにより得られた受信信号に基づいて、医用画像である超音波画像を生成する装置である。特に、本実施形態では、超音波診断装置10は、受信信号に基づいて、走査面からの反射波の振幅強度が輝度に変換された超音波断層画像(Bモード画像)を形成する。なお、超音波診断装置10は、送信波と受信波の周波数の差分(ドプラシフト)に基づいて形成される被検体内の組織の運動速度を表すドプラ画像など、その他の超音波画像を形成することもできる。
【0018】
詳しくは後述するが、超音波診断装置10は、形成した超音波断層画像を解析することで、被検体内の組織構造物を特定する処理を行う。本実施形態においては、超音波診断装置10は、特定した組織対象物に対して計測などの処理を行う。すなわち、本実施形態においては、特定する組織対象物は計測対象である。
【0019】
なお、超音波診断装置10が有する、送受信部14、信号処理部16、画像形成部18、画質調整部20、表示制御部22、断面種別特定部38、及び、組織構造物特定部40は、プロセッサによって構成される。プロセッサとは、汎用的な処理装置(例えばCPU(Central Processing Unit)など)、及び、専用の処理装置(例えばGPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいは、プログラマブル論理デバイスなど)の少なくとも1つを含んで構成される。プロセッサとしては、1つの処理装置によるものではなく、物理的に離れた位置に存在する複数の処理装置の協働により構成されるものであってもよい。また、上記の各部は、プロセッサなどのハードウェアとソフトウエアとの協働により実現されてもよい。
【0020】
超音波プローブ12は、被検体(特に計測対象の組織対象物)に対して超音波の送受波を行う装置である。超音波プローブ12は、被検体に対して超音波の送受波を行う複数の振動素子からなる振動素子アレイを有する。
【0021】
送受信部14は、制御部28(後述)からの制御によって、超音波プローブ12(詳しくは振動素子アレイの各振動素子)に対して送信信号を送信する。これにより、各振動素子から被検体に向けて超音波が送信される。
【0022】
また、送受信部14は、被検体からの反射波を受信した各振動素子から受信信号を受信する。送受信部14は、加算器及び各振動素子に対応した複数の遅延器を有しており、当該加算器及び複数の遅延器により、各振動素子からの受信信号の位相を揃えて加算する整相加算処理を行う。これにより、被検体からの反射波の信号強度を示す情報が被検体の深度方向に並ぶ受信ビーム信号が形成される。
【0023】
信号処理部16は、送受信部14からの受信ビーム信号に対して、バンドパスフィルタを適用するフィルタ処理や検波処理などを含む各種信号処理を実行する。
【0024】
画像形成部18は、信号処理部16において信号処理された受信ビーム信号に基づいて、超音波断層画像(Bモード画像)を形成する。まず、画像形成部18は、受信ビーム信号を超音波画像の座標空間上のデータに変換する。そして、画像形成部18は、座標変換信号に基づいて超音波断層画像を形成する。
【0025】
画質調整部20は、画像形成部18により形成された超音波断層画像の画質(例えば輝度など)を調整する処理を実行する。画質調整部20は、後述の断面種別特定部38の処理結果(すなわち超音波断層画像の断面種別)に応じた画質調整処理を実行する。画質調整部20の処理内容の詳細については後述する。
【0026】
表示制御部22は、画像形成部18で形成された超音波断層画像及びその他の種々の情報をディスプレイ24に表示させる制御を行う。表示部としてのディスプレイ24は、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)などから構成される表示器である。
【0027】
入力インターフェース26は、例えばボタン、トラックボール、タッチパネルなどから構成される。入力インターフェース26は、ユーザの命令を超音波診断装置10に入力するために用いられる。本実施形態では、ディスプレイ24がタッチパネルとなっており、ディスプレイ24が入力インターフェース26の機能も発揮する。
【0028】
制御部28は、汎用的なプロセッサ(例えばCPU(Central Processing Unit)など)、及び、専用のプロセッサ(例えばGPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、あるいは、プログラマブル論理デバイスなど)の少なくとも1つを含んで構成される。制御部28としては、1つの処理装置によるものではなく、物理的に離れた位置に存在する複数の処理装置の協働により構成されるものであってもよい。制御部28は、後述のメモリ30に記憶された超音波断層画像処理プログラムに従って、超音波診断装置10の各部を制御する。
【0029】
メモリ30は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、eMMC(embedded Multi Media Card)、あるいはROM(Read Only Memory)などを含んで構成される。メモリ30は、超音波診断装置10のプロセッサ、具体的には、制御部28、並びに、後述の断面種別特定部38及び組織構造物特定部40を含む、図1に示す各部からアクセス可能なように、当該各部に接続される。メモリ30には、超音波診断装置10の各部を動作させるための超音波断層画像処理プログラムが記憶される。なお、超音波断層画像処理プログラムは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ又はCD-ROMなどのコンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体に格納することもできる。超音波診断装置10は、そのような記憶媒体から超音波断層画像処理プログラムを読み取って実行することができる。
【0030】
また、図1に示すように、メモリ30には、第1学習モデル32及び複数の第2学習モデル34が記憶される。
【0031】
第1学習モデル32は、例えばCNN(Convolutional Neural Network)などのモデルから構成されるが、以下に説明する機能を発揮可能な限りにおいてどのようなモデルであってもよい。第1学習モデル32は、超音波断層画像を入力データとし、入力された超音波断層画像の断面種別を予測し、その予測結果を出力するものである。
【0032】
本実施形態では、第1学習モデル32は、超音波診断装置10以外の装置である学習装置によって学習されて、学習済みの第2学習モデル34がメモリ30に記憶される。学習装置のプロセッサは、超音波断層画像と、当該超音波断層画像の断面種別を示す情報(教師データ)との組み合わせを学習データとして用いて第1学習モデル32を学習させる。具体的には、学習装置のプロセッサは、学習データである超音波断層画像を第1学習モデル32に入力する。第1学習モデル32は、入力された超音波断層画像の断面種別を予測して、その予測結果を出力する。学習装置のプロセッサは、第1学習モデル32が予測した断面種別と教師データである断面種別との差分が小さくなるように、第1学習モデル32のパラメータを調整する。このような学習処理を繰り返すことで、学習済みの第1学習モデル32は、超音波断層画像の断面種別を予測して出力できるようになる。ただし、十分に学習済みの第1学習モデル32であっても、完全に正確に超音波断層画像の断面種別を予測できるわけではなく、不正確な予測結果を出力する場合もある。
【0033】
メモリ30には、1つの第1学習モデル32が記憶されていてもよいが、被検体の複数の部位(例えば腹部や下肢など)にそれぞれ対応する複数の第1学習モデル32が記憶されていてもよい。この場合、各第1学習モデル32は、対応する部位の超音波断層画像の断面種別を予測することに特化したモデルとなっている。例えば、腹部に対応する第1学習モデル32は、腹部に対して超音波が送受信されることで形成された超音波断層画像の断面種別を予測することに特化したモデルであり、下肢に対応する第1学習モデル32は、下肢に対して超音波が送受信されることで形成された超音波断層画像の断面種別を予測することに特化したモデルである。この場合、各第1学習モデル32は、対応する部位の超音波断層画像を学習データとして用いて学習される。例えば、腹部に対応する第1学習モデル32は、腹部に対して超音波が送受信されることで形成された超音波断層画像を学習データとして用いて学習され、下肢に対応する第1学習モデル32は、下肢に対して超音波が送受信されることで形成された超音波断層画像を学習データとして用いて学習される。
【0034】
第2学習モデル34も、例えばCNNなどのモデルから構成されるが、以下に説明する機能を発揮可能な限りにおいてどのようなモデルであってもよい。第2学習モデル34は、超音波断層画像を入力データとし、入力された超音波断層画像に含まれる組織構造物を予測し、その予測結果を出力するものである。本明細書において、超音波断層画像に含まれる組織構造物を予測する(又は特定する)、とは、組織構造物の超音波断層画像上の位置(以下、単に「組織構造物の位置」と記載する)、又は、ラベル(組織構造物の名称)の少なくとも一方を予測する(又は特定する)ことを意味する。本実施形態に係る第2学習モデル34は、組織構造物の位置及びラベルを予測する。
【0035】
本実施形態では、第2学習モデル34は、超音波診断装置10以外の装置である学習装置によって学習されて、学習済みの第2学習モデル34がメモリ30に記憶される。学習装置のプロセッサは、超音波断層画像と、当該超音波断層画像に含まれる組織構造物の位置及びラベルを示す情報(教師データ)との組み合わせを学習データとして用いて第2学習モデル34を学習させる。具体的には、学習装置のプロセッサは、学習データである超音波断層画像を第2学習モデル34に入力する。第2学習モデル34は、入力された超音波断層画像に含まれる組織構造物の位置及びラベルを予測して、その予測結果を出力する。学習装置のプロセッサは、第2学習モデル34が予測した組織構造物の位置と、教師データである組織構造物の位置との差分が小さくなるように、第2学習モデル34のパラメータを調整する。また、学習装置のプロセッサは、第2学習モデル34が予測した組織構造物のラベルと、教師データである組織構造物のラベルとの差分が小さくなるように、第2学習モデル34のパラメータを調整する。このような学習処理を繰り返すことで、学習済みの第2学習モデル34は、超音波断層画像に含まれる組織構造物の位置及びラベルを予測して出力できるようになる。なお、第2学習モデル34が組織構造物の位置又はラベルの一方を予測する場合には、学習データに含まれる教師データとしては、組織構造物の位置又はラベルの一方が含まれていればよい。
【0036】
メモリ30には、複数の第2学習モデル34が記憶される。複数の第2学習モデル34は、超音波断層画像の各断面種別にそれぞれ関連付けられている。例えば、ある第2学習モデル34は、SFJ(Sapheno Femoral Junction;伏在大腿静脈接合部)断面に関連付けられており、他の第2学習モデル34は、CFV(Common Femoral Vein;総大腿静脈)断面に関連付けられている、の如くである。各第2学習モデル34は、対応する断面種別の超音波断層画像に含まれる組織構造物を予測することに特化したモデルとなっている。例えば、SFJ断面に関連付けられた第2学習モデル34は、断面種別がSFJ断面である超音波断層画像に含まれる組織構造物を予測することに特化したモデルであり、CFV断面に関連付けられた第2学習モデル34は、断面種別がCFV断面である超音波断層画像に含まれる組織構造物を予測することに特化したモデルである。各第2学習モデル34は、対応する断面種別の超音波断層画像を学習データとして用いて学習される。例えば、SFJ断面に対応する第2学習モデル34は、断面種別がSFJ断面である超音波断層画像を学習データとして用いて学習され、CFV断面に対応する第2学習モデル34は、断面種別がCFV断面である超音波断層画像を学習データとして用いて学習される。
【0037】
超音波断層画像の各断面種別にそれぞれ1つずつの第2学習モデル34が関連付けられていてもよいが、本実施形態では、1つの断面種別に複数の異なる第2学習モデル34が関連付けられている。例えば、SFJ断面に複数の異なる第2学習モデル34が関連付けられている、1つの断面種別に関連付けられた複数の第2学習モデル34は、パラメータ(学習処理によって調整されるパラメータ、あるいは、学習処理によって調整されないハイパーパラメータを含む)が互いに異なっている、あるいは、前処理(学習モデルによる予測処理に先立って入力データを処理すること)の内容が互いに異なるものである。すなわち、1つの断面種別に関連付けられた複数の第2学習モデル34は、同じ超音波断層画像が入力された際に、それに対する予測結果が互いに異なり得るものである。
【0038】
なお、本実施形態においては、超音波診断装置10とは別の学習装置にて、第1学習モデル32及び第2学習モデル34が学習されるが、第1学習モデル32及び第2学習モデル34は、超音波診断装置10にて学習されてもよい。その場合、超音波診断装置10は、プロセッサで構成されるか、あるいは、プロセッサなどのハードウェアとソフトウエアとの協働により実現される学習処理部(図1において不図示)を有し、当該学習処理部が、第1学習モデル32及び第2学習モデル34の学習処理を実行する。
【0039】
また、図1に示す通り、メモリ30には画質調整情報36が記憶される。画質調整情報36の詳細については後述する。
【0040】
断面種別特定部38は、画像形成部18により形成された超音波断層画像の断面種別を特定する。本明細書では、断面種別特定部38(及び組織構造物特定部40)による処理対象となる超音波断層画像を対象画像と呼ぶ。
【0041】
具体的には、断面種別特定部38は、対象画像を第1学習モデル32に入力し、対象画像に対する第1学習モデル32の予測結果に基づいて、対象画像の断面種別を特定する。本明細書では、断面種別特定部38により特定された対象画像の断面種別を特定断面と呼ぶ。
【0042】
組織構造物特定部40は、対象画像に含まれる組織構造物を特定する。まず、組織構造物特定部40は、メモリ30に記憶された複数の第2学習モデル34のうち、断面種別特定部38により特定された特定断面に関連付けられた第2学習モデル34に対象画像を入力し、対象画像に対する第2学習モデル34の予測結果に基づいて、対象画像に含まれる組織構造物を特定する。特定断面に対して複数の第2学習モデル34が関連付けられている場合には、組織構造物特定部40は、予め定められた、そのうちの1つの第2学習モデル34に対して対象画像を入力する。本明細書では、このように、断面種別特定部38により特定された特定断面に応じて選択された1つの第2学習モデル34を最初の第2学習モデル34と呼ぶ。また、最初の第2学習モデル34の出力に基づいて、組織構造物特定部40が特定した組織構造物を第1組織構造物と呼ぶ。
【0043】
表示制御部22は、組織構造物特定部40によって特定された第1組織構造物に関する情報である第1組織構造物情報をディスプレイ24に表示させる。図2は、第1組織構造物情報S1の表示例を示す図である。本実施形態では、表示制御部22は、対象画像TI、特定断面を示す断面情報CS、及び、第1組織構造物情報S1をディスプレイ24に表示させる。第1組織構造物情報S1とは、第1組織構造物の対象画像TI上の位置を示すアイコン、又は、ラベルを示す画像アイコンや文字などを含むものである。図2の例では、第1組織構造物情報S1として、第1組織構造物の対象画像TI上の位置を示すアイコンが対象画像TIに重畳して表示されている。また、これに加え、第1組織構造物のラベルを示す文字などが表示されてもよい。
【0044】
ここで、第1組織構造物が誤っていたとする。第1組織構造物が誤っている、とは、特定された第1組織構造物の位置及びラベルが、事実に合致するもののユーザが期待した組織構造物とは違う場合を含む。例えば、第1組織構造物情報S1が示す位置には、確かに大腿静脈があり、そのラベルも大腿静脈となっているであるが、ユーザとしては、大腿動脈の位置を特定したい場合などである。また、第1組織構造物が誤っている、とは、特定された第1組織構造物の位置又はラベルがそもそも事実と異なる場合も含む。例えば、第1組織構造物情報S1が示す位置には、大腿静脈があるのが正しいのであるが、そのラベルが大腿動脈となっている場合などである。本明細書では、ユーザとしては大腿動脈の位置を特定したい場合において、第1組織構造物として大腿静脈の位置及びラベルが特定されてしまったとする。図2の第1組織構造物情報S1が示す位置は、大腿静脈の位置である。
【0045】
組織構造物特定部40が誤った第1組織構造物を特定してしまう第1の要因は、断面種別特定部38が特定した特定断面が誤っていることである。上述のように、組織構造物特定部40は、特定断面に関連付けられた第2学習モデル34、すなわち、特定断面の超音波断層画像に含まれる組織構造物を予測することに特化した第2学習モデル34を用いて、第1組織構造物を特定する。ここで、断面種別特定部38が、対象画像TIの真の断面種別とは異なる断面種別を特定断面として特定してしまうと、組織構造物特定部40は、対象画像TIの真の断面種別に特化したものではない第2学習モデル34を用いて第1組織構造物を特定してしまうことになる。例えば、対象画像TIの真の断面種別がCFV断面であるのに、組織構造物特定部40が、SFJ断面を特定断面として特定してしまうと、組織構造物特定部40は、SFJ断面に特化した第2学習モデル34を用いて、CFV断面の対象画像TIから第1組織構造物を特定することになる。このような場合、誤った第1組織構造物が特定され得る。
【0046】
組織構造物特定部40が誤った第1組織構造物を特定してしまう第2の要因は、断面種別特定部38が特定した特定断面が正しいが、最初の第2学習モデル34が対象画像TIに適していないことである。上述のように、特定断面に対して複数の第2学習モデル34が関連付けられている場合には、組織構造物特定部40は、そのうちの1つを最初の第2学習モデル34とする。そのように選ばれた最初の第2学習モデル34が、対象画像TIに適していない場合である。例えば、最初の第2学習モデル34が正しい組織構造物を予測するには、対象画像TIの輝度が小さすぎる場合、誤った第1組織構造物が特定され得る。
【0047】
ユーザは、ディスプレイ24に表示された第1組織構造物情報S1を確認することで、第1組織構造物が誤っていることを確認する。第1組織構造物の誤りを確認したユーザは、入力インターフェース26から、目的の組織構造物の対象画像TI上の位置を示す指示を入力する。当該指示は、ユーザが期待する組織構造物の対象画像TI上の位置と共に、第1組織構造物が誤っていることを組織構造物特定部40に通知する指示でもある。本実施形態では、ユーザは、入力インターフェース26の操作に応じてディスプレイ24上を移動するカーソルCを目的の位置に合わせてクリックなどすることで、当該指示を入力する。ここでは、図2に示すカーソルCの位置である大腿動脈の位置をユーザが指示したとする。
【0048】
ユーザからの指示に応じて、組織構造物特定部40は、断面種別特定部38により特定された特定断面以外の断面種別に関連付けられた第2学習モデル34を含む、最初の第2学習モデル34以外の、1又は複数の第2学習モデル34に対象画像TIを入力する。本明細書では、ここで対象画像TIが入力される、最初の第2学習モデル34以外の1又は複数の第2学習モデル34を、他の第2学習モデル34と呼ぶ。組織構造物特定部40は、他の第2学習モデル34の予測結果に基づいて、対象画像TIのユーザに指示された位置近傍に含まれる組織構造物を特定する。本明細書では、他の第2学習モデル34の出力に基づいて、組織構造物特定部40が特定した組織構造物を第2組織構造物と呼ぶ。
【0049】
具体的には、組織構造物特定部40は、1又は複数の他の第2学習モデル34が予測した組織構造物のうち、ユーザが指定した位置に最も近い位置に検出された組織構造物を第2組織構造物とする。あるいは、組織構造物特定部40は、ユーザが指定した位置を中心とした一定の範囲を定め、当該範囲内に検出された組織構造物を第2組織構造物とするようにしてもよい。この場合、当該範囲内に、複数の他の第2学習モデル34によって複数の組織構造物が検出された場合、当該複数の組織構造物のラベルのうち、最も多く検出されたラベルを有する組織構造物を第2組織構造物としてもよい。例えば、当該範囲内において、3つの他の第2学習モデル34がラベル「大腿動脈」を有する組織構造物を検出し、1つの他の第2学習モデル34が「血栓」を有する組織構造物を検出した場合、組織構造物特定部40は、ラベル「大腿動脈」を有する組織構造物の1つを第2組織構造物とする。
【0050】
また、組織構造物特定部40は、対象画像TIから、ユーザが指定した位置を中心とする一定の範囲を切り出し、切り出した画像を他の第2学習モデル34に入力することで、第2組織構造物を特定するようにしてもよい。
【0051】
特定された第2組織構造物は、正しい組織構造物(すなわち、第1組織構造物の位置及びラベルが事実に合致し、且つ、ユーザが期待した組織構造物であること)であり得る。
【0052】
まず、断面種別特定部38が特定した特定断面が誤っていることで、組織構造物特定部40が誤った第1組織構造物を特定してしまった場合を考える。他の第2学習モデル34には、特定断面以外の断面種別に関連付けられた第2学習モデル34を含む。つまり、他の第2学習モデル34には、対象画像TIの真の断面種別に対応する第2学習モデル34を含む。したがって、組織構造物特定部40は、対象画像TIの真の断面種別に対応する他の第2学習モデル34の出力に基づいて、正しい組織構造物である第2組織構造物を特定し得る。
【0053】
次に、断面種別特定部38が特定した特定断面が正しいが、最初の第2学習モデル34が対象画像TIに適していないことで、組織構造物特定部40が誤った第1組織構造物を特定してしまった場合を考える。他の第2学習モデル34には、特定断面に関連付けられた、最初の第2学習モデル34以外の第2学習モデル34を含む。このような第2学習モデル34には、対象画像TIに適した第2学習モデル34が含まれ得る。例えば、最初の第2学習モデル34が正しい組織構造物を予測するには、対象画像TIの輝度が小さすぎる場合であっても、特定断面に関連付けられた他の第2学習モデル34では、輝度を修正(大きく)する前処理が行われるなどするならば、組織構造物特定部40は、他の第2学習モデル34の出力に基づいて、正しい組織構造物である第2組織構造物を特定し得る。
【0054】
表示制御部22は、組織構造物特定部40によって特定された第2組織構造物に関する情報である第2組織構造物情報をディスプレイ24に表示させる。図3は、第2組織構造物情報S2の表示例を示す図である。本実施形態では、表示制御部22は、対象画像TI及び断面情報CSと共に、第2組織構造物情報S2をディスプレイ24に表示させる。第2組織構造物情報S2とは、第1組織構造物情報S1とは、第1組織構造物の対象画像TI上の位置を示すアイコン、又は、ラベルを示す画像アイコンや文字などを含むものである。図3の例では、第2組織構造物情報S2として、第2組織構造物の対象画像TI上の位置を示すアイコンが対象画像TIに重畳して表示されている。また、これに加え、第2組織構造物のラベルを示す文字などが表示されてもよい。また、図3に示すように、表示制御部22は、第1組織構造物情報S1と共に第2組織構造物情報S2を表示させてもよい。その場合、第2組織構造物情報S2としてのアイコンなどは、第1組織構造物情報S1としてのアイコンと形状や色が異なるものであるとよい。
【0055】
なお、第2組織構造物情報S2をディスプレイ24に表示させる前、又は、他の第2学習モデル34を用いた予測処理の前において、表示制御部22は、ユーザに確認のための通知をディスプレイ24に表示させてもよい。例えば、ポップアップの態様でダイアログなどを表示させてもよい。
【0056】
第2組織構造物情報S2が示す第2組織構造物が正しい組織構造物である場合、ユーザは、第2組織構造物を指定して(当該指定は、第2組織構造物が正しい組織構造物であることを超音波診断装置10に通知するものでもある)、以後の処理、例えば第2組織構造物に関する計測処理に進むことができる。
【0057】
このように、本実施形態によれば、第1組織構造物が正しくない場合に、ユーザの指示に応じて、特定断面以外の断面種別に関連付けられた第2学習モデル34を含む、他の第2学習モデル34を用いて第2組織構造物が特定されるため、組織構造物の特定精度を向上させることができる。
【0058】
断面種別特定部38が特定した特定断面が誤っていることで、組織構造物特定部40が誤った第1組織構造物を特定してしまった場合であって、組織構造物特定部40が、特定断面以外の断面種別に関連付けられた他の第2学習モデル34の出力に基づいて第2組織構造物を特定し、且つ、当該第2組織構造物が正しい組織構造物であった場合を考える。この場合、当該他の第2学習モデル34の出力に基づいて正しい組織構造物が特定できたのであるから、当該他の第2学習モデル34は、対象画像TIの真の断面種別を有する超音波断層画像に含まれる組織構造物を予測することに特化したモデルである可能性が高い。つまり、当該他の第2学習モデル34に関連付けられた断面種別が、対象画像TIの真の断面種別である可能性が高いと言える。
【0059】
したがって、表示制御部22は、断面種別特定部38が特定した特定断面と、正しい第2組織構造物の特定に寄与した他の第2学習モデル34に関連付けられた断面種別と、が互いに異なる場合、特定断面を示す断面情報CS(図3参照)に代えて、図4に示すように、第2組織構造物の特定に寄与した当該他の第2学習モデル34に対応する断面種別を示す修正断面情報CS’をディスプレイ24に表示させるとよい。これにより、断面種別特定部38が誤った特定断面を特定してしまった場合であっても、対象画像TIの正しい断面種別をユーザに通知することができる。
【0060】
本実施形態では、第1組織構造物が誤っていた場合、組織構造物特定部40は、他の第2学習モデル34を用いた第2組織構造物の特定処理を行う。ここで、メモリ30には多数の第2学習モデル34が記憶されている場合がある。その場合、対象画像TIを入力すべき他の第2学習モデル34の数も多数となり、第2組織構造物の特定のための処理量が膨大となってしまう場合がある。
【0061】
当該問題を考慮して、被検体の各部位に対応して、複数の第2学習モデル34を予めグルーピングしておくとよい。例えば、複数の第2学習モデル34を、腹部に対応するグループ、下肢に対応するグループ、などの複数のグループにグルーピングしておくとよい。その上で、組織構造物特定部40は、第1組織構造物情報S1を確認したユーザからの指示に応じて、最初の第2学習モデル34以外の複数の第2学習モデル34のうち、最初の第2学習モデル34と同じグループに属する他の第2学習モデル34に対象画像TIを入力し、最初の第2学習モデル34と異なるグループに属する第2学習モデル34には対象画像TIを入力しないようにするとよい。そして、組織構造物特定部40は、最初の第2学習モデル34と同じグループに属する他の第2学習モデル34の予測結果に基づいて、対象画像TIに含まれる第2組織構造物を特定するとよい。
【0062】
これは、断面種別特定部38が誤った特定断面を特定したとしても、対象画像TIの真の断面種別と部位の異なる断面を特定部位としてしまう可能性はかなり低いことに基づくものである。例えば、対象画像TIの真の断面種別が下肢の断面であるCFV断面である場合、断面種別特定部38は、対象画像TIの断面を下肢の断面であるSFJ断面と特定してしまうことがあっても、それを腹部の断面だと特定する可能性はかなり低い。断面種別特定部38が、対象画像TIの断面を下肢の断面であるSFJ断面と誤って特定した場合、最初の第2学習モデル34は、下肢の断面であるSFJ断面に関連付けられたものとなる。そして、この場合、組織構造物特定部40は、ユーザからの指示に応じて、下肢に対応する他の第2学習モデル34(真の断面種別であるCFV断面に関連付けられた他の第2学習モデル34を含む)に対象画像TIを入力する。これにより、下肢に対応するグループ以外のグループに属する第2学習モデル34を用いることなく、下肢に対応するグループに属する他の第2学習モデル34のみを用いて、正しい組織構造物である第2組織構造物が特定できる(この場合、CFV断面に関連付けられた他の第2学習モデル34によって、正しい組織構造物である第2組織構造物が特定できる)。つまり、正しい組織構造物である第2組織構造物を特定できる可能性を低減させずに、第2組織構造物の特定のための処理量を低減させることができる。
【0063】
上記実施形態では、組織構造物特定部40は、例えば、ユーザが指定した位置に最も近い位置に検出された組織構造物を第2組織構造物としていたが、組織構造物特定部40は、複数の第2組織構造物の候補をユーザに提示して、第2組織構造物をユーザに選択させるようにしてもよい。
【0064】
具体的には、まず、組織構造物特定部40は、第1組織構造物情報S1(図2参照)を確認したユーザからの指示に応じて、最初の第2学習モデル34以外の複数の他の第2学習モデル34それぞれに対象画像TIを入力する。これにより、複数の他の第2学習モデル34によって、複数の組織構造物の位置及びラベルが予測される。
【0065】
次いで、組織構造物特定部40は、複数の他の第2学習モデル34が予測した複数の組織構造物のラベルそれぞれについての予測正確度の順序を演算する。例えば、組織構造物特定部40は、予測された組織構造物をユーザが指定した位置から近い順に並べ、同順序において各組織構造物のラベルを重複しないように(例えば同じラベルがある場合は順序のより高い方を用いて、他のラベルは用いないように)並べ、その並び順をラベルの予測正確度の順序とする。あるいは、ユーザが指定した位置を中心とする一定の範囲を定め、当該範囲内において検出された数が多い順序をラベルの予測正確度の順序としてもよい。
【0066】
表示制御部22は、当該他の複数の第2学習モデル34それぞれが予測した複数の組織構造物のラベルを、演算した予測正確度の順序が表現された表示態様でディスプレイ24に表示させる。図5は、複数の組織構造物のラベルの表示例を示す図である。図5の例では、予測された複数の組織構造物のレベルをラベルリストLの形で表示している。ラベルリストLにおいては、複数のラベルが上下に並ぶように表示されており、一番上に表示されたラベルが予測正確度が最も高いものであり、下に向かうにつれて予測正確度の順序が下がっていくことを表している。もちろん、ラベルリストLはあくまで一例であり、表示制御部22は、予測正確度の順序が表現される限りにおいて、複数のラベルをどのような表示態様で表示してもよい。
【0067】
ユーザは、予測正確度の順序が表現された表示態様で表示された複数のラベルを確認し、予測正確度を参考にしつつ、1つのラベルを選択する。
【0068】
組織構造物特定部40は、複数の他の第2学習モデル34それぞれが予測した複数の組織構造物のうち、ユーザに選択されたラベルに係る組織構造物を第2組織構造物として特定する。なお、ユーザに選択されたラベルに係る組織構造物が複数ある場合は、組織構造物特定部40は、選択されたラベルに係る複数の組織構造物の中から1つの組織構造物を選択し、これを第2組織構造物とする。例えば、組織構造物特定部40は、選択されたラベルに係る複数の組織構造物のうち、ユーザが指定した位置から最も近い位置にある組織構造物を第2組織構造物とする。
【0069】
画質調整部20の処理の詳細について説明する。メモリ30に記憶された画質調整情報36は、超音波断層画像の断面種別と、当該断面種別の超音波断層画像の画質を調整するための画質調整パラメータとが互いに関連付けられた情報である。画質調整部20は、対象画像TIの断面種別、及び、画質調整情報36に基づいて、対象画像TIの画質を調整する。
【0070】
特に、断面種別特定部38が特定した特定断面が誤っていることで、組織構造物特定部40が誤った第1組織構造物を特定してしまった場合であって、組織構造物特定部40が、特定断面以外の断面種別に関連付けられた他の第2学習モデル34の出力に基づいて第2組織構造物を特定し、且つ、当該第2組織構造物が正しい組織構造物であった場合を考える。つまり、特定断面と、第2組織構造物の特定に寄与した他の第2学習モデル34に関連付けられた断面種別と、が互いに異なる場合を考える。
【0071】
この場合、画質調整部20は、第2組織構造物の特定に寄与した他の第2学習モデル34に対応する断面種別に関連付けられた画質調整パラメータを用いて、対象画像TIの画質を調整するとよい。これにより、対象画像TIの真の断面種別に適した画質調整パラメータを用いて対象画像TIの画質を調整することができる。
【0072】
本実施形態に係る超音波診断装置10の構成概要は以上の通りである。以下、図6に示すフローチャートに従って、超音波診断装置10の基本的な処理の流れを説明する。なお、図6に示すフローチャートの開始時点において、第1学習モデル32及び第2学習モデル34は学習済みであるとする。
【0073】
ステップS10において、画像形成部18は、信号処理部16において信号処理された受信ビーム信号に基づいて、超音波断層画像である対象画像TIを形成する。
【0074】
ステップS12において、断面種別特定部38は、ステップS10で形成された対象画像TIを第1学習モデル32に入力し、対象画像TIに対する第1学習モデル32の予測結果に基づいて、対象画像TIの断面種別である特定断面を特定する。
【0075】
ステップS14において、組織構造物特定部40は、ステップS12で特定された特定断面に関連付けられた、最初の第2学習モデル34に対象画像TIを入力し、対象画像TIに対する最初の第2学習モデル34の予測結果に基づいて、対象画像TIに含まれる第1組織構造物を特定する。
【0076】
ステップS16において、表示制御部22は、ステップS14で特定された第1組織構造物に関する第1組織構造物情報をディスプレイ24に表示させる。
【0077】
ステップS18において、組織構造物特定部40は、ステップS16でディスプレイ24に表示された第1組織構造物情報を確認したユーザから、対象画像TI上の位置を示す指示を受け付けたか否かを判定する。当該指示を受け付けなかった場合、第1組織構造物が誤ったものではない(ユーザが期待する組織構造物だった)ということなので、本フローチャートの処理を終了する。その後、ユーザは、第1組織構造物に関する計測処理などに進む。当該指示を受け付けた場合、ステップS20に進む。
【0078】
ステップS20において、組織構造物特定部40は、最初の第2学習モデル34以外の他の第2学習モデル34に対象画像TIを入力し、対象画像TIに対する他の第2学習モデル34の予測結果に基づいて、対象画像TIに含まれる第2組織構造物を特定する。
【0079】
ステップS22において、表示制御部22は、ステップS20で特定された第2組織構造物に関する第2組織構造物情報をディスプレイ24に表示させる。
【0080】
その後、第2組織構造物が正しい組織構造物である場合は、ユーザは、第2組織構造物を選択した上で、当該第2組織構造物に関する計測処理などに進む。
【0081】
以上、本開示に係る超音波断層画像処理装置を説明したが、本開示に係る超音波断層画像処理装置は上記実施形態に限られるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0082】
例えば、上記実施形態では、超音波断層画像処理装置が超音波診断装置10であったが、超音波断層画像処理装置としては、超音波診断装置10に限られない。例えば、超音波断層画像処理装置は、パーソナルコンピュータ(PC(Personal Computer))やサーバなどであってもよい。この場合、超音波断層画像処理装置としてのPCやサーバは、表示制御部22、ディスプレイ24、学習済みの第1学習モデル32及び学習済みの第2学習モデル34が記憶されたメモリ30、断面種別特定部38、及び、組織構造物特定部40を有する。超音波断層画像処理装置としてのPCやサーバは、超音波診断装置から対象画像TIを取得し、取得した対象画像TIに対して上記実施形態に係る処理を行う。
【0083】
また、上記実施形態では、第1学習モデル32及び第2学習モデル34が超音波断層画像処理装置のメモリ30に記憶されていたが、第1学習モデル32及び第2学習モデル34は、超音波断層画像処理装置からアクセス可能である限りにおいて、超音波断層画像処理装置とは別の装置に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10 超音波診断装置、12 超音波プローブ、14 送受信部、16 信号処理部、18 画像形成部、20 画質調整部、22 表示制御部、24 ディスプレイ、26 入力インターフェース、28 制御部、30 メモリ、32 第1学習モデル、34 第2学習モデル、36 画質調整情報、38 断面種別特定部、40 組織構造物特定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6