(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098670
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】ズームレンズ、投写型表示装置、および撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 15/20 20060101AFI20250625BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20250625BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20250625BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20250625BHJP
G02B 13/16 20060101ALI20250625BHJP
【FI】
G02B15/20
G03B21/00 D
G03B21/14 D
G02B13/18
G02B13/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214970
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 賢
【テーマコード(参考)】
2H087
2K203
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087KA06
2H087KA07
2H087MA12
2H087MA18
2H087NA02
2H087PA13
2H087PA14
2H087PA15
2H087PA18
2H087PA19
2H087PB16
2H087PB18
2H087QA03
2H087QA05
2H087QA06
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA22
2H087QA26
2H087QA33
2H087QA34
2H087QA41
2H087QA46
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA41
2H087RA42
2H087RA43
2H087RA44
2H087RA45
2H087RA48
2H087SA57
2H087SA61
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA66
2H087SA71
2H087SA72
2H087SB01
2H087SB07
2H087SB12
2H087SB22
2H087SB32
2H087SB33
2H087SB35
2H087SB44
2H087SB45
2H087SB47
2K203FA03
2K203FA23
2K203FA25
2K203FA34
2K203FA62
2K203GC03
2K203GC17
2K203GC20
2K203HA67
2K203HA68
2K203HB17
2K203HB25
2K203MA07
(57)【要約】
【課題】広角、高変倍比、コンパクトで、変倍の際および合焦の際の収差変動が良好に抑制され、高性能のズームレンズ、このズームレンズを備えた投写型表示装置、およびこのズームレンズを備えた撮像装置を提供する。
【解決手段】ズームレンズは、拡大側から縮小側へ順に、負屈折力の第1レンズ群と、正屈折力の第2レンズ群と、正屈折力の第3レンズ群と、負屈折力の第4レンズ群と、1つ以上のレンズ群を含む中間群と、正屈折力の最終レンズ群とからなる。第1レンズ群は、拡大側から縮小側へ順に、負屈折力の第1A部分群と、第1B部分群と、第1C部分群とからなる。合焦の際に第1B部分群と隣り合う部分群との間隔が変化する。
第2レンズ群と第3レンズ群の間隔が広角端より望遠端で短い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡大側から縮小側へ順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群と、1つ以上のレンズ群を含む中間群と、正の屈折力を有する最終レンズ群とからなり、
前記第1レンズ群は、拡大側から縮小側へ順に、負の屈折力を有する第1A部分群と、第1B部分群と、第1C部分群とからなり、
合焦の際、前記第1A部分群と前記第1B部分群との間隔が変化し、前記第1B部分群と前記第1C部分群との間隔が変化し、
変倍の際、前記第1レンズ群および前記最終レンズ群は不動であり、前記第2レンズ群と、前記第3レンズ群と、前記第4レンズ群と、前記中間群内の全てのレンズ群とが隣り合うレンズ群との光軸方向の間隔を変化させて光軸に沿って移動し、
望遠端における前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔が、広角端における前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔より短いズームレンズ。
【請求項2】
望遠端における前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔をD23t、
広角端における前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔をD23wとした場合、
D23t/D23w<1 (1)
で表される条件式(1)を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
望遠端における前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との合成横倍率をβ23t、
広角端における前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との合成横倍率をβ23wとした場合、
1.4<β23t/β23w<3 (2)
で表される条件式(2)を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記第4レンズ群の焦点距離をfG4、
広角端における前記ズームレンズの焦点距離をfwとした場合、
-15<fG4/fw<-1 (3)
で表される条件式(3)を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記第1A部分群の焦点距離をfG1A、
前記第1C部分群の焦点距離をfG1Cとした場合、
-0.5<fG1A/fG1C<0.5 (4)
で表される条件式(4)を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記第1A部分群の焦点距離をfG1A、
前記第1B部分群の焦点距離をfG1Bとした場合、
0<|fG1A/fG1B|<0.3 (5)
で表される条件式(5)を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項7】
前記第1レンズ群の焦点距離をfG1、
広角端における前記ズームレンズの焦点距離をfwとした場合、
-4<fG1/fw<-1 (6)
で表される条件式(6)を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項8】
合焦の際、前記第1C部分群は不動である請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項9】
前記第1C部分群は少なくとも1枚の負レンズを含み、
前記第1C部分群に含まれる全ての負レンズのd線基準のアッベ数の平均値をνaveとした場合、
νave>50 (7)
で表される条件式(7)を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項10】
縮小側がテレセントリックである請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項11】
前記第2レンズ群の焦点距離をfG2、
広角端における前記ズームレンズの焦点距離をfwとした場合、
2<fG2/fw<10 (8)
で表される条件式(8)を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項12】
前記第3レンズ群の焦点距離をfG3、
広角端における前記ズームレンズの焦点距離をfwとした場合、
4<fG3/fw<12 (9)
で表される条件式(9)を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項13】
前記最終レンズ群の焦点距離をfGE、
広角端における前記ズームレンズの焦点距離をfwとした場合、
3<fGE/fw<8 (10)
で表される条件式(10)を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項14】
前記ズームレンズの空気換算距離での縮小側のバックフォーカスをBf、
広角端における前記ズームレンズの焦点距離をfwとした場合、
2<Bf/fw (11)
で表される条件式(11)を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項15】
前記中間群は、拡大側から縮小側へ順に負レンズと正レンズとが接合された接合レンズを最も縮小側に含む請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項16】
前記第1C部分群は、拡大側から縮小側へ順に、負レンズと、正レンズとからなる請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか1項に記載のズームレンズを備えた投写型表示装置。
【請求項18】
請求項1から請求項16のいずれか1項に記載のズームレンズを備えた撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、ズームレンズ、投写型表示装置、および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1および特許文献2には、画像投射装置に適用可能な光学系が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-095395号公報
【特許文献1】特開2015-212753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
広角で、高変倍比を有し、コンパクトに構成されながら、変倍の際および合焦の際の収差変動が良好に抑制され、高い光学性能を有するズームレンズが要望されている。これらの要求レベルは、年々高まっている。
【0005】
本開示は、広角で、高変倍比を有し、コンパクトに構成されながら、変倍の際および合焦の際の収差変動が良好に抑制され、高い光学性能を有するズームレンズ、このズームレンズを備えた投写型表示装置、およびこのズームレンズを備えた撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、ズームレンズであって、拡大側から縮小側へ順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群と、1つ以上のレンズ群を含む中間群と、正の屈折力を有する最終レンズ群とからなり、第1レンズ群は、拡大側から縮小側へ順に、負の屈折力を有する第1A部分群と、第1B部分群と、第1C部分群とからなり、合焦の際、第1A部分群と第1B部分群との間隔が変化し、第1B部分群と第1C部分群との間隔が変化し、変倍の際、第1レンズ群および最終レンズ群は不動であり、第2レンズ群と、第3レンズ群と、第4レンズ群と、中間群内の全てのレンズ群とが隣り合うレンズ群との光軸方向の間隔を変化させて光軸に沿って移動し、望遠端における第2レンズ群と第3レンズ群との間隔が、広角端における第2レンズ群と第3レンズ群との間隔より短い。
【0007】
望遠端における第2レンズ群と第3レンズ群との間隔をD23t、広角端における第2レンズ群と第3レンズ群との間隔をD23wとした場合、上記態様のズームレンズは、
D23t/D23w<1 (1)
で表される条件式(1)を満足することが好ましい。
【0008】
望遠端における第2レンズ群と第3レンズ群との合成横倍率をβ23t、広角端における第2レンズ群と第3レンズ群との合成横倍率をβ23wとした場合、上記態様のズームレンズは、
1.4<β23t/β23w<3 (2)
で表される条件式(2)を満足することが好ましい。
【0009】
第4レンズ群の焦点距離をfG4、広角端におけるズームレンズの焦点距離をfwとした場合、上記態様のズームレンズは、
-15<fG4/fw<-1 (3)
で表される条件式(3)を満足することが好ましい。
【0010】
第1A部分群の焦点距離をfG1A、第1C部分群の焦点距離をfG1Cとした場合、上記態様のズームレンズは、
-0.5<fG1A/fG1C<0.5 (4)
で表される条件式(4)を満足することが好ましい。
【0011】
第1A部分群の焦点距離をfG1A、第1B部分群の焦点距離をfG1Bとした場合、上記態様のズームレンズは、
0<|fG1A/fG1B|<0.3 (5)
で表される条件式(5)を満足することが好ましい。
【0012】
第1レンズ群の焦点距離をfG1、広角端におけるズームレンズの焦点距離をfwとした場合、上記態様のズームレンズは、
-4<fG1/fw<-1 (6)
で表される条件式(6)を満足することが好ましい。
【0013】
合焦の際、第1C部分群は不動であるように構成してもよい。
【0014】
第1C部分群が少なくとも1枚の負レンズを含む構成において、第1C部分群に含まれる全ての負レンズのd線基準のアッベ数の平均値をνaveとした場合、上記態様のズームレンズは、
νave>50 (7)
で表される条件式(7)を満足することが好ましい。
【0015】
上記態様のズームレンズは、縮小側がテレセントリックであることが好ましい。
【0016】
第2レンズ群の焦点距離をfG2、広角端におけるズームレンズの焦点距離をfwとした場合、上記態様のズームレンズは、
2<fG2/fw<10 (8)
で表される条件式(8)を満足することが好ましい。
【0017】
第3レンズ群の焦点距離をfG3、広角端におけるズームレンズの焦点距離をfwとした場合、上記態様のズームレンズは、
4<fG3/fw<12 (9)
で表される条件式(9)を満足することが好ましい。
【0018】
最終レンズ群の焦点距離をfGE、広角端におけるズームレンズの焦点距離をfwとした場合、上記態様のズームレンズは、
3<fGE/fw<8 (10)
で表される条件式(10)を満足することが好ましい。
【0019】
ズームレンズの空気換算距離での縮小側のバックフォーカスをBf、広角端におけるズームレンズの焦点距離をfwとした場合、上記態様のズームレンズは、
2<Bf/fw (11)
で表される条件式(11)を満足することが好ましい。
【0020】
中間群は、拡大側から縮小側へ順に負レンズと正レンズとが接合された接合レンズを最も縮小側に含むことが好ましい。
【0021】
第1C部分群は、拡大側から縮小側へ順に、負レンズと、正レンズとからなるように構成してもよい。
【0022】
本開示の別の態様は、上記態様のズームレンズを備えた投写型表示装置である。
【0023】
本開示のさらに別の態様は、上記態様のズームレンズを備えた撮像装置である。
【0024】
本明細書の「~からなり」、「~からなる」は、挙げられた構成要素以外に、実質的に屈折力を有さないレンズ、並びに、絞り、マスク、フィルタ、カバーガラス、平面ミラー、およびプリズム等のレンズ以外の光学要素、並びに、レンズフランジ、レンズバレル、撮像素子、および手振れ補正機構等の機構部分、等が含まれていてもよいことを意図する。
【0025】
本明細書の「正の屈折力を有する~群」は、群全体として正の屈折力を有することを意味する。同様に「負の屈折力を有する~群」は、群全体として負の屈折力を有することを意味する。「正の屈折力を有するレンズ」と「正レンズ」とは同義である。「負の屈折力を有するレンズ」と「負レンズ」とは同義である。本明細書の「~レンズ群」および「合焦群」は、複数のレンズからなる構成に限らず、1枚のみのレンズからなる構成としてもよい。
【0026】
複合非球面レンズ(レンズ(例えば球面レンズ)と、その球面レンズ上に形成された非球面形状の膜とが一体的に構成されて、全体として1つの非球面レンズとして機能するレンズ)は、接合レンズとは見なさず、1枚のレンズとして扱う。非球面を含むレンズに関する屈折力の符号は、特に断りが無い限り、近軸領域のものを用いる。条件式で用いている「焦点距離」は、近軸焦点距離である。条件式で用いている値は、d線を基準とした場合の値である。
【0027】
本明細書に記載の「d線」、「C線」、および「F線」は輝線であり、d線の波長は587.56nm(ナノメートル)、C線の波長は656.27nm(ナノメートル)、F線の波長は486.13nm(ナノメートル)として扱う。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、広角で、高変倍比を有し、コンパクトに構成されながら、変倍の際および合焦の際の収差変動が良好に抑制され、高い光学性能を有するズームレンズ、このズームレンズを備えた投写型表示装置、およびこのズームレンズを備えた撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施例1のズームレンズに対応し、一実施形態に係るズームレンズの構成と光束を示す断面図である。
【
図2】
図1のズームレンズの各変倍状態における構成を示す断面図である。
【
図3】投写距離が無限遠の状態における実施例1のズームレンズの各収差図である。
【
図4】投写距離が1370mm(ミリメートル)の状態における実施例1のズームレンズの各収差図である。
【
図5】実施例2のズームレンズの構成と光束を示す断面図である。
【
図6】投写距離が無限遠の状態における実施例2のズームレンズの各収差図である。
【
図7】投写距離が1370mm(ミリメートル)の状態における実施例2のズームレンズの各収差図である。
【
図8】実施例3のズームレンズの構成と光束を示す断面図である。
【
図9】投写距離が無限遠の状態における実施例3のズームレンズの各収差図である。
【
図10】投写距離が1370mm(ミリメートル)の状態における実施例3のズームレンズの各収差図である。
【
図11】実施例4のズームレンズの構成と光束を示す断面図である。
【
図12】投写距離が無限遠の状態における実施例4のズームレンズの各収差図である。
【
図13】投写距離が1370mm(ミリメートル)の状態における実施例4のズームレンズの各収差図である。
【
図14】実施例5のズームレンズの構成と光束を示す断面図である。
【
図15】投写距離が無限遠の状態における実施例5のズームレンズの各収差図である。
【
図16】投写距離が1370mm(ミリメートル)の状態における実施例5のズームレンズの各収差図である。
【
図17】一実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
【
図18】別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
【
図19】さらに別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
【
図20】一実施形態に係る撮像装置の正面側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態について説明する。
【0031】
図1に、本開示の一実施形態に係るズームレンズの構成および光束の断面図、並びに移動軌跡を示す。
図1では、光束として、軸上光束K0、および最大半画角の光束K1を示す。また、
図2に、
図1のズームレンズの各変倍状態における構成の断面図を示す。
図2では、「WIDE」と付した上段に広角端状態を示し、「MIDDLE」と付した中段に中間焦点距離状態を示し、「TELE」と付した下段に望遠端状態を示す。
図1および
図2に示す構成例は、後述の実施例1に対応している。
図1および
図2では、左側を拡大側、右側を縮小側としている。以下では主に
図1を参照しながら説明する。
【0032】
本開示のズームレンズは、投写型表示装置に搭載されてスクリーンに投写する像を形成する投写光学系とすることができ、また、撮像装置に搭載されて物体の像を形成する撮像光学系とすることもできる。以下では、ズームレンズが投写光学系の用途で使用される場合を想定して説明する。また、以下では、冗長な説明を避けるため「本開示のズームレンズ」を単に「ズームレンズ」と記すことがある。
【0033】
図1では、ズームレンズが投写型表示装置に搭載されることを想定して、ズームレンズの縮小側に光学部材PP、およびライトバルブの画像表示面Simを配置した例を示す。光学部材PPは、フィルタ、カバーガラス、および色合成プリズム等を想定した部材である。光学部材PPは屈折力を有しない部材であり、光学部材PPを省略した構成も可能である。ライトバルブは光学像を出力するものであり、この光学像は画像表示面Simに画像として表示される。
【0034】
投写型表示装置においては、画像表示面Simで画像情報を与えられた光束が光学部材PPを介してズームレンズに入射され、ズームレンズにより不図示のスクリーン上に投写される。この場合、画像表示面Simが縮小側共役面に対応し、スクリーンが拡大側共役面に対応する。なお、本明細書において「スクリーン」は、ズームレンズが形成する投写像が投写される対象物を意味する。スクリーンとしては、専用のスクリーンの他、部屋の壁面、床面、天井、および建物の外壁等でもよい。
【0035】
なお、本明細書の説明において、「拡大側」は光路上でのスクリーン側を意味し、「縮小側」は光路上での画像表示面Sim側を意味する。本明細書では、「拡大側」および「縮小側」は、光路に沿って決められるものであり、この点は折り曲げられた光路を有するズームレンズの場合も同様である。「最も拡大側の~」は、光路上における並び順として最も拡大側という意味であり、距離的にスクリーンに最も近いということを意味するものではない。以下では、説明が冗長になるのを避けるため、「拡大側から縮小側へ光路に沿って順に」を「拡大側から縮小側へ順に」と記す。
【0036】
本開示のズームレンズは、拡大側から縮小側へ順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4と、1つ以上のレンズ群を含む中間群GMと、正の屈折力を有する最終レンズ群GEとからなる。最も拡大側のレンズ群を負屈折力の群とすることによって、最も拡大側のレンズの小径化と充分なバックフォーカスの確保とが可能になり、小型化に有利となる。正の屈折力を有する第2レンズ群G2および第3レンズ群G3は、変倍の主な作用を担うことができる。第4レンズ群G4および中間群GMは、像面補正を担うことができる。特に、第4レンズ群G4を負屈折力の群とすることによって、高変倍比化に伴うレンズ群の移動量増加によって発生する広角端から望遠端における収差の補正が可能となる。中間群GMを多群化可能な構成にすることによって、高変倍比化および高性能化に有利となる。最終レンズ群GEは、正の屈折力を有することによって、結像作用と縮小側のテレセントリック性とを担うことができる。
【0037】
変倍の際、第1レンズ群G1および最終レンズ群GEは不動であり、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、中間群GM内の全てのレンズ群とが隣り合うレンズ群との光軸方向の間隔を変化させて光軸Zに沿って移動する。なお、ここでいう「変倍の際、~不動」とは、変倍の際に縮小側共役面に対して固定されていることを意味する。変倍の際に最も拡大側の第1レンズ群G1を不動とすることによって、変倍の際の重心位置の変動の抑制に有利となる。変倍の際に最終レンズ群GEを不動とすることによって、結像作用および縮小側のテレセントリック性の確保が容易となる。
【0038】
なお、本明細書においては、変倍の際に隣り合う群との光軸方向の間隔が変化する群を1つのレンズ群としている。変倍の際、1つのレンズ群の内部では隣り合うレンズの間隔は変化しない。すなわち、「レンズ群」は、ズームレンズの構成部分であって、変倍の際に変化する空気間隔によって分けられた、少なくとも1枚のレンズを含む部分である。変倍の際には、各レンズ群単位で移動又は固定される。なお、「レンズ群」は、屈折力を有しないレンズ以外の構成要素、例えば、絞り、マスク、フィルタ、カバーガラス、平面ミラー等を含んでもよい。
【0039】
一例として、
図1のズームレンズは、拡大側から縮小側へ順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、第5レンズ群G5と、第6レンズ群G6とからなる。
図1の例では、中間群GMは第5レンズ群G5からなり、最終レンズ群GEは第6レンズ群G6からなる。
図1では、変倍の際に移動する各レンズ群の下に、広角端から望遠端までの変倍の際の各レンズ群の概略的な移動軌跡を実線の矢印で示す。
【0040】
一例として、
図1の各群は以下のように構成されている。第1レンズ群G1は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL11~L16の6枚のレンズからなる。第2レンズ群G2は、レンズL21の1枚のレンズからなる。第3レンズ群G3は、レンズL31の1枚のレンズからなる。第4レンズ群G4は、レンズL41の1枚のレンズからなる。第5レンズ群G5は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL51~L56の6枚のレンズからなる。第6レンズ群G6は、レンズL61の1枚のレンズからなる。
【0041】
本開示のズームレンズでは、望遠端における第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が、広角端における第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔より短くなるように構成される。主な変倍作用を担う第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔を上記のよう構成することによって、レンズ全長の増大を抑制し、また、変倍の際に移動するレンズ群のレンズの大径化を抑制しながら、変倍比の確保および望遠側での球面収差の補正を行うことに有利となる。
【0042】
また、本開示のズームレンズにおいては、第1レンズ群G1は、拡大側から縮小側へ順に、負の屈折力を有する第1A部分群G1Aと、第1B部分群G1Bと、第1C部分群G1Cとからなる。合焦の際、第1A部分群G1Aと第1B部分群G1Bとの間隔が変化し、第1B部分群G1Bと第1C部分群G1Cとの間隔が変化する。すなわち、本開示では、第1レンズ群G1内の部分群を光軸Zに沿って移動させることによって、合焦が行われる。以下では、合焦の際に移動する群を合焦群と呼ぶ。変倍の際に不動の第1レンズ群G1の中に合焦群を配置することによって、変倍と合焦とを切り離した操作が可能となる。また、投写光学系では広角化に伴い投写距離が変動した際の性能変化が問題となりやすいが、本開示のように、第1B部分群G1Bが隣接する拡大側および縮小側の間隔が変化して合焦が行われることによって、上記の投写距離が変動した際の性能変化の抑制に有利となる。なお、本明細書において、「投写距離」は、拡大側共役面からズームレンズの最も拡大側のレンズ面までの光軸上の距離を意味する。
【0043】
本開示においては、合焦の際、第1B部分群G1Bのみが移動してもよく、第1A部分群G1Aと第1B部分群G1Bとが相互間隔を変化させて移動してもよく、第1B部分群G1Bと第1C部分群G1Cとが相互間隔を変化させて移動してもよく、第1A部分群G1Aと第1B部分群G1Bと第1C部分群G1Cとが隣り合う群との間隔を変化させて移動してもよい。第1B部分群G1Bは正の屈折力を有する群であってもよく、負の屈折力を有する群であってもよい。第1C部分群G1Cは正の屈折力を有する群であってもよく、負の屈折力を有する群であってもよい。
【0044】
一例として、
図1のズームレンズでは、第1A部分群G1AはレンズL11~L13からなり、第1B部分群G1BはレンズL14からなり、第1C部分群G1CはレンズL15~L16からなる。
図1の例では、合焦の際、第1B部分群G1Bのみが移動し、第1A部分群G1Aおよび第1C部分群G1Cは不動である。すなわち、
図1の例では、合焦群は第1B部分群G1Bからなる。
図1では、合焦群の下に左右方向の両矢印を記入している。合焦の際、第1C部分群G1Cが不動であることによって、構成を簡素化でき、コストダウンに貢献できる。合焦の際、第1A部分群G1Aが不動であることによって、構成を簡素化でき、コストダウンに貢献できる。また、レンズ径の大きな第1A部分群G1Aを不動にすることによって、駆動系の負荷の低減に有利となる。
【0045】
中間群GMは、拡大側から縮小側へ順に負レンズと正レンズとが接合された接合レンズを最も縮小側に含むことが好ましい。このようにした場合は、倍率色収差の補正、特に変倍の際の倍率色収差の補正に有利となる。
【0046】
本開示のズームレンズは、縮小側がテレセントリックであることが好ましい。例えば高精細な画像を投写する投写型表示装置では、青色、緑色、および赤色の各々の色の波長に対応する画像表示素子が設けられた、いわゆる3板方式が採用されることが多い。このような方式に対応するため、縮小側がテレセントリックに構成されていることが好ましい。厳密に縮小側がテレセントリックに構成されている光学系では、光学系の最も縮小側の面から縮小側共役面に向かう主光線は光軸Zに平行となる。
【0047】
但し、本開示の技術における「縮小側がテレセントリック」は、上記主光線の光軸Zに対する角度が0度のものに限定されず、本開示の技術が属する技術分野で実用上許容される誤差を含む。誤差は例えば、上記主光線の光軸Zに対する角度が-3度以上かつ+3度以下の範囲としてもよい。なお、開口絞りを含まない系では、拡大側から縮小側へ向かう方向に光束を見た場合に、縮小側共役面上の点に集光する光束の断面において上側の最大光線と下側の最大光線との二等分角線を主光線の代用としてテレセントリック性を判断してもよい。
【0048】
次に、本開示のズームレンズの条件式に関する好ましい構成について述べる。なお、以下の条件式に関する説明では、冗長な説明を避けるため、定義が同じものには同じ記号を用いて記号の重複説明を省略する。
【0049】
ズームレンズは下記条件式(1)を満足することが好ましい。ここでは、望遠端における第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔をD23tとしている。広角端における第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔をD23wとしている。一例として、
図2に上記の間隔D23tおよび間隔D23wを示す。高変倍比を実現しようとすると、レンズ全長の増大、および変倍の際に移動するレンズ群のレンズの大径化を招きやすい。しかし、条件式(1)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、レンズ全長の増大、および変倍の際に移動するレンズ群のレンズの大径化を招くことなく、高変倍比を確保することに有利となる。また、レンズ全長の増大を抑制しようとすると望遠側での良好な球面収差の補正が困難になるという不都合が生じやすいが、条件式(1)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、上記不都合も回避できる。
D23t/D23w<1 (1)
【0050】
ズームレンズは下記条件式(1-1)を満足することが好ましい。条件式(1-1)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、望遠端で第3レンズ群G3が第2レンズ群G2に近くなり過ぎないようにすることが可能である。これによって、レンズ同士が接触しないようなメカ保持構造の維持が容易となり、あるいは移動するレンズ群を吊るカムの溝の間隔の維持が容易となる。
0.05<D23t/D23w<1 (1-1)
【0051】
より良好な特性を得るためには、条件式(1)および条件式(1-1)の上限値は、0.9にすることが好ましい。
【0052】
ズームレンズは下記条件式(2)を満足することが好ましい。ここでは、望遠端における第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との合成横倍率をβ23tとしている。広角端における第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との合成横倍率をβ23wとしている。なお、β23tおよびβ23wは、投写距離が無限遠の状態における値とする。条件式(2)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、変倍比の確保に有利となる。より詳しくは、条件式(2)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、レンズ全長の増大を抑制しながら変倍比を確保することに有利となる。条件式(2)は、第2レンズ群G2および第3レンズ群G3の変倍作用の大きさを示すものである。第2レンズ群G2および第3レンズ群G3の変倍作用が大きくなり過ぎると、この変倍作用の一部を相殺するような大きな変倍作用を第3レンズ群G3より縮小側のレンズ群が担うことになり、その場合、変倍に伴う収差補正が困難になるという不都合が生じる。条件式(2)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、第2レンズ群G2および第3レンズ群G3の変倍作用が大きくなり過ぎないため、上記不都合を回避でき、これによって、収差補正に有利となる。
1.4<β23t/β23w<3 (2)
【0053】
より良好な特性を得るためには、条件式(2)の下限値は、1.5にすることがより好ましい。また、より良好な特性を得るためには、条件式(2)の上限値は、2.5にすることがより好ましい。
【0054】
第4レンズ群G4の焦点距離をfG4とし、広角端におけるズームレンズの焦点距離をfwとした場合、ズームレンズは下記条件式(3)を満足することが好ましい。なお、fwは、投写距離が無限遠の状態における値とする。条件式(3)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、第4レンズ群G4の負の屈折力が弱くなり過ぎないため、広角端と望遠端の収差補正に大きな作用効果を持たせることができ、また、充分長いバックフォーカスを確保することが容易となる。条件式(3)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、第4レンズ群G4の負の屈折力が強くなり過ぎないため、球面収差の補正に有利となる。
-15<fG4/fw<-1 (3)
【0055】
より良好な特性を得るためには、条件式(3)の下限値は、-12にすることがより好ましい。また、より良好な特性を得るためには、条件式(3)の上限値は、-1.5にすることがより好ましい。
【0056】
第1A部分群G1Aの焦点距離をfG1A、第1C部分群G1Cの焦点距離をfG1Cとした場合、ズームレンズは下記条件式(4)を満足することが好ましい。条件式(4)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、第1A部分群G1Aに対する第1C部分群G1Cの正の屈折力が強くなり過ぎないため、第1レンズ群G1内の屈折力のバランスを良好に保つことが容易となるので、投写距離の変動に伴う性能変化の抑制に有利となる。条件式(4)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、第1A部分群G1Aに対する第1C部分群G1Cの負の屈折力が強くなり過ぎないため、第1A部分群G1Aの大径化を招くことなく第1レンズ群G1に求められる負の屈折力を維持することできる。これによって、小型化に有利となる。
-0.5<fG1A/fG1C<0.5 (4)
【0057】
より良好な特性を得るためには、条件式(4)の下限値は、-0.28にすることがより好ましい。また、より良好な特性を得るためには、条件式(4)の上限値は、0.22にすることがより好ましい。
【0058】
第1B部分群G1Bの焦点距離をfG1Bとした場合、ズームレンズは下記条件式(5)を満足することが好ましい。条件式(5)の下限については、|fG1A/fG1B|が絶対値であることから0<|fG1A/fG1B|となる。条件式(5)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、第1A部分群G1Aに対する第1B部分群G1Bの屈折力が強くなり過ぎないため、投写距離の変動に伴う諸収差の変動の抑制、特に像面湾曲の変動の抑制に有利となる。これによって、広角化と高変倍比化との両立が容易となる。
0<|fG1A/fG1B|<0.3 (5)
【0059】
より良好な特性を得るためには、条件式(5)の上限値は、0.1にすることがより好ましい。
【0060】
第1レンズ群G1の焦点距離をfG1とした場合、ズームレンズは下記条件式(6)を満足することが好ましい。なお、fG1は、投写距離が無限遠の状態における値とする。条件式(6)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、第1レンズ群G1の屈折力が弱くなり過ぎないため、所望のバックフォーカスの確保が容易となり、また、レンズ全長の増大を抑制できる。条件式(6)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、第1レンズ群G1の屈折力が強くなり過ぎないため、広角化で問題となる歪曲収差および像面湾曲の補正に有利となる。
-4<fG1/fw<-1 (6)
【0061】
より良好な特性を得るためには、条件式(6)の下限値は、-3にすることがより好ましい。また、より良好な特性を得るためには、条件式(6)の上限値は、-1.5にすることがより好ましい。
【0062】
第1C部分群G1Cは少なくとも1枚の負レンズを含むように構成してもよい。第1C部分群G1Cが少なくとも1枚の負レンズを含む構成において、ズームレンズは下記条件式(7)を満足することが好ましい。ここでは、第1C部分群G1Cに含まれる全ての負レンズのd線基準のアッベ数の平均値をνaveとしている。条件式(7)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、広角化で問題となる倍率色収差の補正に有利となる。
νave>50 (7)
【0063】
また、ズームレンズは下記条件式(7-1)を満足することが好ましい。条件式(7-1)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、レンズの高価格化を抑制できるため、低コスト化に有利となる。
50<νave<100 (7-1)
【0064】
より良好な特性を得るためには、条件式(7)および条件式(7-1)の下限値は、65にすることが好ましい。
【0065】
第2レンズ群G2の焦点距離をfG2とした場合、ズームレンズは下記条件式(8)を満足することが好ましい。条件式(8)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、第2レンズ群G2の屈折力が強くなり過ぎないため、変倍に伴う収差補正に有利となる。条件式(8)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、変倍の際の第2レンズ群G2の移動量を抑制できるため、小型化に有利となる。
2<fG2/fw<10 (8)
【0066】
より良好な特性を得るためには、条件式(8)の下限値は、4にすることがより好ましい。また、より良好な特性を得るためには、条件式(8)の上限値は、8にすることがより好ましい。
【0067】
第3レンズ群G3の焦点距離をfG3とした場合、ズームレンズは下記条件式(9)を満足することが好ましい。条件式(9)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、第3レンズ群G3の屈折力が強くなり過ぎないため、変倍に伴う収差補正に有利となる。条件式(9)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、変倍の際の第3レンズ群G3の移動量を抑制できるため、小型化に有利となる。
4<fG3/fw<12 (9)
【0068】
より良好な特性を得るためには、条件式(9)の下限値は、5にすることがより好ましい。また、より良好な特性を得るためには、条件式(9)の上限値は、9にすることがより好ましい。
【0069】
最終レンズ群GEの焦点距離をfGEとした場合、ズームレンズは下記条件式(10)を満足することが好ましい。条件式(10)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、最終レンズ群GEの屈折力が強くなり過ぎないため、テレセントリック性の維持と適切な長さのバックフォーカスの確保との両立に有利となる。条件式(10)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、バックフォーカスが長くなり過ぎないため、バックフォーカスも含めたレンズ系全体の小型化に有利となる。
3<fGE/fw<8 (10)
【0070】
より良好な特性を得るためには、条件式(10)の下限値は、4にすることがより好ましい。また、より良好な特性を得るためには、条件式(10)の上限値は、7にすることがより好ましい。
【0071】
ズームレンズの空気換算距離での縮小側のバックフォーカスをBfとした場合、ズームレンズは下記条件式(11)を満足することが好ましい。なお、Bfは、投写距離が無限遠の状態における値とする。条件式(11)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、バックフォーカスが短くなり過ぎないため、色合成プリズム等を配置することが容易となる。
2<Bf/fw (11)
【0072】
また、ズームレンズは下記条件式(11-1)を満足することが好ましい。条件式(11-1)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、バックフォーカスも含めたレンズ系全体の小型化に有利となる。
2<Bf/fw<8 (11-1)
【0073】
より良好な特性を得るためには、条件式(11)および条件式(11-1)の下限値は、2.5にすることが好ましい。
【0074】
なお、
図1に示した例は一例であり、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形が可能である。
【0075】
例えば、第1A部分群G1Aは、3枚の負レンズからなるように構成してもよい。第1B部分群G1Bは、1枚のレンズからなるように構成してもよく、2枚のレンズからなるように構成してもよい。第1B部分群G1Bが1枚のレンズからなる場合は、そのレンズは、正レンズであってもよく、負レンズであってもよい。第1B部分群G1Bが2枚のレンズからなる場合は、例えば、負レンズと正レンズとからなるように構成してもよい。第1C部分群G1Cは、拡大側から縮小側へ順に、負レンズと、正レンズとからなるように構成してもよい。第1C部分群G1Cをこのようにした場合は、倍率色収差の補正に有利となる。
【0076】
合焦群は、1枚のレンズからなるように構成してもよく、2枚のレンズからなるように構成してもよい。合焦群を構成するレンズ枚数を極力少なくすることによって、合焦群の小型化および軽量化に有利となる。
【0077】
第2レンズ群G2は、1枚の正レンズからなるように構成してもよい。第3レンズ群G3は、1枚の正レンズからなるように構成してもよい。第4レンズ群G4は、1枚のレンズからなるように構成してもよく、2枚のレンズからなるように構成してもよく、4枚のレンズからなるように構成してもよい。
【0078】
中間群GMは、1つのレンズ群からなるように構成してもよく、2つのレンズ群からなるように構成してもよい。
【0079】
最終レンズ群GEは、1枚の正レンズからなるように構成してもよい。
【0080】
ズームレンズと投写型表示装置との取り付けマウントの傾き誤差および/又は位置の誤差等を吸収するために、合焦群より拡大側のレンズをバック調整群として移動可能なように構成してもよい。例えば、
図1の例では、レンズL14が合焦群であるが、レンズL11~L13をバック調整群として可動な構成としてもよい。
【0081】
上述した好ましい構成および可能な構成は、矛盾しない範囲において任意の組合せが可能であり、要求される仕様に応じて適宜選択的に採用されることが好ましい。
【0082】
一例として、本開示のズームレンズの好ましい一態様は、拡大側から縮小側へ順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、負の屈折力を有する第4レンズ群G4と、1つ以上のレンズ群を含む中間群GMと、正の屈折力を有する最終レンズ群GEとからなり、第1レンズ群G1は、拡大側から縮小側へ順に、負の屈折力を有する第1A部分群G1Aと、第1B部分群G1Bと、第1C部分群G1Cとからなり、合焦の際、第1A部分群G1Aと第1B部分群G1Bとの間隔が変化し、第1B部分群G1Bと第1C部分群G1Cとの間隔が変化し、変倍の際、第1レンズ群G1および最終レンズ群GEは不動であり、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、中間群GM内の全てのレンズ群とが隣り合うレンズ群との光軸方向の間隔を変化させて光軸Zに沿って移動し、望遠端における第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が、広角端における第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔より短い。
【0083】
次に、本開示のズームレンズの実施例について図面を参照して説明する。なお、各実施例の断面図の群およびレンズに付された参照符号は、参照符号の桁数の増大に伴う説明および図面の煩雑化を避けるため、実施例ごとに独立して用いている。したがって、異なる実施例の図面において共通の参照符号が付されていても、必ずしも共通の構成ではない。
【0084】
[実施例1]
投写距離が無限遠の状態の実施例1のズームレンズの構成と光束の断面図は
図1に示しており、その図示方法と構成は上述したとおりであるので、ここでは重複説明を一部省略する。実施例1のズームレンズは、拡大側から縮小側へ順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、第5レンズ群G5と、第6レンズ群G6とからなる。第1レンズ群G1は、拡大側から縮小側へ順に、負の屈折力を有する第1A部分群G1Aと、正の屈折力を有する第1B部分群G1Bと、正の屈折力を有する第1C部分群G1Cとからなる。
【0085】
実施例1のズームレンズについて、基本レンズデータを表1に、諸元と変倍の際の可変面間隔を表2に、非球面係数を表3に、合焦の際の可変面間隔を表4に示す。
【0086】
基本レンズデータの表は以下のように記載されている。「Sn」の列には最も拡大側の面を第1面とし縮小側に向かうに従い1つずつ番号を増加させた場合の面番号を示す。「R」の列には各面の曲率半径を示す。「D」の列には各面とその縮小側に隣接する面との光軸上の面間隔を示す。「Nd」の列には各構成要素のd線に対する屈折率を示す。「νd」の列には各構成要素のd線基準のアッベ数を示す。
【0087】
基本レンズデータの表では、拡大側に凸形状を向けた面の曲率半径の符号を正、縮小側に凸形状を向けた面の曲率半径の符号を負としている。表のDの列の最下欄の値は表中の最も縮小側の面と画像表示面Simとの間隔である。基本レンズデータの表では、変倍の際の可変面間隔についてはDD[ ]という記号を用い、[ ]の中にこの間隔の拡大側の面番号を付してDの列に記入している。表1には、投写距離が無限遠の状態のデータを示す。
【0088】
表2に、変倍比Zr、焦点距離f、FナンバーFNo.、および最大全画角2ωをd線基準で示す。2ωの欄の[°]は単位が度であることを示す。表2では、「WIDE」の列に広角端における各値を示し、「MIDDILE」の列に中間焦点距離状態における各値を示し、「TELE」の列に望遠端における各値を示す。
【0089】
基本レンズデータでは、非球面の面番号には*印を付しており、非球面の曲率半径の欄には近軸曲率半径の値を記載している。表3において、Snの行には非球面の面番号を示し、KAおよびAmの行には各非球面についての非球面係数の数値を示す。なお、Amのmは3以上の整数であり、面により異なる。例えば実施例1の第1面ではm=3、4、5、・・・、16である。表3の非球面係数の数値の「E±n」(n:整数)は「×10±n」を意味する。KAおよびAmは下式で表される非球面式における非球面係数である。
Zd=C×h2/{1+(1-KA×C2×h2)1/2}+ΣAm×hm
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸Zに垂直な平面に下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸Zからレンズ面までの距離)
C:近軸曲率半径の逆数
KA、Am:非球面係数
であり、非球面式のΣはmに関する総和を意味する。
【0090】
表4には、投写距離が、無限遠、1370mm(ミリメートル)、および1000mm(ミリメートル)の各状態における、第1A部分群G1Aと第1B部分群G1Bとの間隔、および第1B部分群G1Bと第1C部分群G1Cとの間隔を示す。
【0091】
各表のデータにおいて、角度の単位としては度を用い、長さの単位としてはミリメートルを用いているが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても使用可能なため他の適当な単位を用いることもできる。また、以下に示す各表では予め定められた桁でまるめた数値を記載している。
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
図3に、投写距離が無限遠の状態の実施例1のズームレンズの各収差図を示す。
図3では、「WIDE」と付した上段に広角端における各収差図を示し、「MIDDILE」と付した中段に中間焦点距離状態における各収差図を示し、「TELE」と付した下段に望遠端における各収差図を示す。
図3では左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差、および倍率色収差を示す。球面収差図では、d線、C線、およびF線に関する収差をそれぞれ実線、長破線、および短破線で示す。非点収差図では、サジタル方向のd線に関する収差を実線で示し、タンジェンシャル方向のd線に関する収差を短破線で示す。歪曲収差図ではd線に関する収差を実線で示す。倍率色収差図では、C線、およびF線に関する収差をそれぞれ長破線、および短破線で示す。球面収差図では「FNo.=」の後にFナンバーの値を示す。その他の収差図では「ω=」の後に最大半画角の値を示す。
【0097】
図4に、投写距離が1370mm(ミリメートル)の状態の実施例1のズームレンズの各収差図を示す。
図4の図示方法は
図3と同様である。
【0098】
上記の実施例1に関する各データの記号、意味、記載方法、および図示方法は、特に断りが無い限り以下の実施例においても基本的に同様であるので、以下では重複説明を省略する。
【0099】
[実施例2]
実施例2のズームレンズの構成と光束の断面図を
図5に示す。実施例2のズームレンズは、拡大側から縮小側へ順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、第5レンズ群G5と、第6レンズ群G6とからなる。中間群GMは第5レンズ群G5からなり、最終レンズ群GEは第6レンズ群G6からなる。変倍の際、第1レンズ群G1および第6レンズ群G6は不動であり、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、第5レンズ群G5とが隣り合うレンズ群との光軸方向の間隔を変化させて光軸Zに沿って移動する。
【0100】
第1レンズ群G1は、拡大側から縮小側へ順に、負の屈折力を有する第1A部分群G1Aと、正の屈折力を有する第1B部分群G1Bと、正の屈折力を有する第1C部分群G1Cとからなる。第1A部分群G1Aは、拡大側から縮小側へ順に、レンズL11~L13の3枚のレンズからなる。第1B部分群G1Bは、レンズL14の1枚のレンズからなる。第1C部分群G1Cは、拡大側から縮小側へ順に、レンズL15~L16の2枚のレンズからなる。合焦の際、第1B部分群G1Bのみが移動し、第1A部分群G1Aおよび第1C部分群G1Cは不動である。
【0101】
第2レンズ群G2は、レンズL21の1枚のレンズからなる。第3レンズ群G3は、レンズL31の1枚のレンズからなる。第4レンズ群G4は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL41~L44の4枚のレンズからなる。第5レンズ群G5は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL51~L53の3枚のレンズからなる。第6レンズ群G6は、レンズL61の1枚のレンズからなる。
【0102】
実施例2のズームレンズについて、基本レンズデータを表5に、諸元と変倍の際の可変面間隔を表6に、非球面係数を表7に、合焦の際の可変面間隔を表8に示す。また、実施例2のズームレンズについて、投写距離が無限遠の状態の各収差図を
図6に、投写距離が1370mm(ミリメートル)の状態の各収差図を
図7に示す。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
[実施例3]
実施例3のズームレンズの構成と光束の断面図を
図8に示す。実施例3のズームレンズは、拡大側から縮小側へ順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、第5レンズ群G5と、第6レンズ群G6とからなる。中間群GMは第5レンズ群G5からなり、最終レンズ群GEは第6レンズ群G6からなる。変倍の際、第1レンズ群G1および第6レンズ群G6は不動であり、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、第5レンズ群G5とが隣り合うレンズ群との光軸方向の間隔を変化させて光軸Zに沿って移動する。
【0108】
第1レンズ群G1は、拡大側から縮小側へ順に、負の屈折力を有する第1A部分群G1Aと、正の屈折力を有する第1B部分群G1Bと、負の屈折力を有する第1C部分群G1Cとからなる。第1A部分群G1Aは、拡大側から縮小側へ順に、レンズL11~L13の3枚のレンズからなる。第1B部分群G1Bは、拡大側から縮小側へ順に、レンズL14~L15の2枚のレンズからなる。第1C部分群G1Cは、拡大側から縮小側へ順に、レンズL16~L17の2枚のレンズからなる。合焦の際、第1B部分群G1Bのみが移動し、第1A部分群G1Aおよび第1C部分群G1Cは不動である。
【0109】
第2レンズ群G2は、レンズL21の1枚のレンズからなる。第3レンズ群G3は、レンズL31の1枚のレンズからなる。第4レンズ群G4は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL41~L42の2枚のレンズからなる。第5レンズ群G5は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL51~L56の6枚のレンズからなる。第6レンズ群G6は、レンズL61の1枚のレンズからなる。
【0110】
実施例3のズームレンズについて、基本レンズデータを表9に、諸元と変倍の際の可変面間隔を表10に、非球面係数を表11に、合焦の際の可変面間隔を表12に示す。また、実施例3のズームレンズについて、投写距離が無限遠の状態の各収差図を
図9に、投写距離が1370mm(ミリメートル)の状態の各収差図を
図10に示す。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
[実施例4]
実施例4のズームレンズの構成と光束の断面図を
図11に示す。実施例4のズームレンズは、拡大側から縮小側へ順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、第5レンズ群G5と、第6レンズ群G6と、第7レンズ群G7からなる。中間群GMは第5レンズ群G5および第6レンズ群G6の2つのレンズ群からなる。最終レンズ群GEは第7レンズ群G7からなる。変倍の際、第1レンズ群G1および第7レンズ群G7は不動であり、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、第5レンズ群G5と、第6レンズ群G6とが隣り合うレンズ群との光軸方向の間隔を変化させて光軸Zに沿って移動する。
【0116】
第1レンズ群G1は、拡大側から縮小側へ順に、負の屈折力を有する第1A部分群G1Aと、正の屈折力を有する第1B部分群G1Bと、負の屈折力を有する第1C部分群G1Cとからなる。第1A部分群G1Aは、拡大側から縮小側へ順に、レンズL11~L13の3枚のレンズからなる。第1B部分群G1Bは、レンズL14の1枚のレンズからなる。第1C部分群G1Cは、拡大側から縮小側へ順に、レンズL15~L16の2枚のレンズからなる。合焦の際、第1B部分群G1Bのみが移動し、第1A部分群G1Aおよび第1C部分群G1Cは不動である。
【0117】
第2レンズ群G2は、レンズL21の1枚のレンズからなる。第3レンズ群G3は、レンズL31の1枚のレンズからなる。第4レンズ群G4は、レンズL41の1枚のレンズからなる。第5レンズ群G5は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL51~L54の4枚のレンズからなる。第6レンズ群G6は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL61~L62の2枚のレンズからなる。第7レンズ群G7は、レンズL71の1枚のレンズからなる。
【0118】
実施例4のズームレンズについて、基本レンズデータを表13に、諸元と変倍の際の可変面間隔を表14に、非球面係数を表15に、合焦の際の可変面間隔を表16に示す。また、実施例4のズームレンズについて、投写距離が無限遠の状態の各収差図を
図12に、投写距離が1370mm(ミリメートル)の状態の各収差図を
図13に示す。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
[実施例5]
実施例5のズームレンズの構成と光束の断面図を
図14に示す。実施例5のズームレンズは、拡大側から縮小側へ順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、第5レンズ群G5と、第6レンズ群G6とからなる。中間群GMは第5レンズ群G5からなり、最終レンズ群GEは第6レンズ群G6からなる。変倍の際、第1レンズ群G1および第6レンズ群G6は不動であり、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、第5レンズ群G5とが隣り合うレンズ群との光軸方向の間隔を変化させて光軸Zに沿って移動する。
【0124】
第1レンズ群G1は、拡大側から縮小側へ順に、負の屈折力を有する第1A部分群G1Aと、負の屈折力を有する第1B部分群G1Bと、正の屈折力を有する第1C部分群G1Cとからなる。第1A部分群G1Aは、拡大側から縮小側へ順に、レンズL11~L13の3枚のレンズからなる。第1B部分群G1Bは、レンズL14の1枚のレンズからなる。第1C部分群G1Cは、拡大側から縮小側へ順に、レンズL15~L16の2枚のレンズからなる。合焦の際、第1B部分群G1Bのみが移動し、第1A部分群G1Aおよび第1C部分群G1Cは不動である。
【0125】
第2レンズ群G2は、レンズL21の1枚のレンズからなる。第3レンズ群G3は、レンズL31の1枚のレンズからなる。第4レンズ群G4は、レンズL41の1枚のレンズからなる。第5レンズ群G5は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL51~L56の6枚のレンズからなる。第6レンズ群G6は、レンズL61の1枚のレンズからなる。
【0126】
実施例5のズームレンズについて、基本レンズデータを表17に、諸元と変倍の際の可変面間隔を表18に、非球面係数を表19に、合焦の際の可変面間隔を表20に示す。また、実施例5のズームレンズについて、投写距離が無限遠の状態の各収差図を
図15に、投写距離が1370mm(ミリメートル)の状態の各収差図を
図16に示す。
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
表21に実施例1~5のズームレンズの条件式(1)~(11)の対応値を示す。表21にはd線を基準とした場合の値を示す。表21に示す実施例の対応値を条件式の上限又は下限として用いて、条件式の好ましい範囲を設定してもよい。
【0132】
【0133】
実施例1~5のズームレンズは、小型に構成されながらも、広角端における最大全画角が75度以上であり、変倍比が1.4倍以上であり、広角および高変倍比を達成している。また、実施例1~5のズームレンズは、各収差が良好に補正され、さらに変倍の際および合焦の際の収差変動が良好に抑制され、高い光学性能を実現している。
【0134】
次に、本開示の実施形態に係る投写型表示装置について説明する。
図17は、本開示の一実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
図17に示す投写型表示装置100は、本開示の実施形態に係るズームレンズ10と、光源15と、各色光に対応し光学像を出力するライトバルブとしての透過型表示素子11a~11cとを有する。また、投写型表示装置100は、色分解のためのダイクロイックミラー12、13と、色合成のためのクロスダイクロイックプリズム14と、コンデンサレンズ16a~16cと、光路を偏向するための全反射ミラー18a~18cとを有する。なお、
図17では、ズームレンズ10は概略的に図示している。また、光源15とダイクロイックミラー12の間にはインテグレーターが配されているが、
図17ではその図示を省略している。
【0135】
光源15からの白色光は、ダイクロイックミラー12、13で3つの色光光束(青色光、緑色光、および赤色光)に分解された後、それぞれコンデンサレンズ16a~16cを経て各色光光束にそれぞれ対応する透過型表示素子11a~11cに入射して変調され、クロスダイクロイックプリズム14により色合成された後、ズームレンズ10に入射する。ズームレンズ10は、透過型表示素子11a~11cにより変調された変調光に基づく光学像をスクリーン105上に投写する。
【0136】
図18は、本開示の別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
図18に示す投写型表示装置200は、本開示の実施形態に係るズームレンズ210と、光源215と、各色光に対応し光学像を出力するライトバルブとしてのDMD(Digital Micromirror Device:登録商標)素子21a~21cとを有する。また、投写型表示装置200は、色分解および色合成のためのTIR(Total Internal Reflection)プリズム24a~24cと、照明光と投写光を分離する偏光分離プリズム25とを有する。なお、
図18ではズームレンズ210を概略的に図示している。また、光源215と偏光分離プリズム25の間にはインテグレーターが配されているが、
図18ではその図示を省略している。
【0137】
光源215からの白色光は、偏光分離プリズム25内部の反射面で反射された後、TIRプリズム24a~24cにより3つの色光光束(青色光、緑色光、および赤色光)に分解される。分解後の各色光光束はそれぞれ対応するDMD素子21a~21cに入射して変調され、再びTIRプリズム24a~24cを逆向きに進行して色合成された後、偏光分離プリズム25を透過して、ズームレンズ210に入射する。ズームレンズ210は、DMD素子21a~21cにより変調された変調光に基づく光学像をスクリーン205上に投写する。
【0138】
図19は、本開示のさらに別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
図19に示す投写型表示装置300は、本開示の実施形態に係るズームレンズ310と、光源315と、各色光に対応し光学像を出力するライトバルブとしての反射型表示素子31a~31cとを有する。また、投写型表示装置300は、色分離のためのダイクロイックミラー32、33と、色合成のためのクロスダイクロイックプリズム34と、光路偏向のための全反射ミラー38と、偏光分離プリズム35a~35cとを有する。なお、
図19では、ズームレンズ310は概略的に図示している。また、光源315とダイクロイックミラー32の間にはインテグレーターが配されているが、
図19ではその図示を省略している。
【0139】
光源315からの白色光はダイクロイックミラー32、33により3つの色光光束(青色光、緑色光、および赤色光)に分解される。分解後の各色光光束はそれぞれ偏光分離プリズム35a~35cを経て、各色光光束それぞれに対応する反射型表示素子31a~31cに入射して変調され、クロスダイクロイックプリズム34により色合成された後、ズームレンズ310に入射する。ズームレンズ310は、反射型表示素子31a~31cにより変調された変調光に基づく光学像をスクリーン305上に投写する。
【0140】
図20および
図21は、本開示の一実施形態に係る撮像装置であるカメラ400の外観図である。
図20は、カメラ400を正面側から見た斜視図を示し、
図21は、カメラ400を背面側から見た斜視図を示す。カメラ400は、交換レンズ48が取り外し自在に装着され、かつミラーレスタイプの一眼形式のデジタルカメラである。交換レンズ48は、本開示の実施形態に係るズームレンズ49を鏡筒内に収納したものである。
【0141】
カメラ400はカメラボディ41を備え、カメラボディ41の上面にはシャッターボタン42および電源ボタン43が設けられている。また、カメラボディ41の背面には、操作部44、操作部45、および表示部46が設けられている。表示部46は、撮像された画像および撮像される前の画角内にある画像を表示する。
【0142】
カメラボディ41の前面中央部には、撮影対象からの光が入射する撮影開口が設けられ、その撮影開口に対応する位置にマウント47が設けられ、マウント47を介して交換レンズ48がカメラボディ41に装着される。
【0143】
カメラボディ41内には、撮像素子50が設けられている。撮像素子50は、交換レンズ48によって形成された被写体像に応じた撮像信号を出力する。撮像素子50としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等が用いられる。カメラボディ41内には、信号処理回路(不図示)、および記録媒体(不図示)等が設けられている。信号処理回路は、撮像素子50から出力された撮像信号を処理して画像を生成する。記録媒体は、生成された画像を記録するためのものである。カメラ400では、シャッターボタン42を押すことにより静止画又は動画の撮影が可能であり、この撮影で得られた画像データが上記記録媒体に記録される。
【0144】
以上、実施形態および実施例を挙げて本開示の技術を説明したが、本開示の技術は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、および非球面係数等は、上記各実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得る。
【0145】
また、本開示の技術に係る投写型表示装置も、上記構成のものに限定されず、例えば、光束分離又は光束合成に用いられる光学部材、およびライトバルブは、種々の態様の変更が可能である。ライトバルブは、光源からの光を画像表示素子により空間変調して、画像データに基づく光学像として出力する態様に限定されず、自発光型の画像表示素子から出力された光自体を、画像データに基づく光学像として出力する態様であってもよい。自発光型の画像表示素子としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)又はOLED(Organic Light Emitting Diode)等の発光素子が2次元配列された画像表示素子が挙げられる。
【0146】
また、本開示の技術に係る撮像装置も、上記構成のものに限定されず、例えば、ミラーレスタイプ以外のカメラ、フィルムカメラ、ビデオカメラ、セキュリティカメラ、および映画撮影用カメラ等、種々の態様とすることができる。
【0147】
以上の実施形態および実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
[付記1]
拡大側から縮小側へ順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群と、1つ以上のレンズ群を含む中間群と、正の屈折力を有する最終レンズ群とからなり、
前記第1レンズ群は、拡大側から縮小側へ順に、負の屈折力を有する第1A部分群と、第1B部分群と、第1C部分群とからなり、
合焦の際、前記第1A部分群と前記第1B部分群との間隔が変化し、前記第1B部分群と前記第1C部分群との間隔が変化し、
変倍の際、前記第1レンズ群および前記最終レンズ群は不動であり、前記第2レンズ群と、前記第3レンズ群と、前記第4レンズ群と、前記中間群内の全てのレンズ群とが隣り合うレンズ群との光軸方向の間隔を変化させて光軸に沿って移動し、
望遠端における前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔が、広角端における前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔より短いズームレンズ。
[付記2]
望遠端における前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔をD23t、
広角端における前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔をD23wとした場合、
D23t/D23w<1 (1)
で表される条件式(1)を満足する付記1に記載のズームレンズ。
[付記3]
望遠端における前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との合成横倍率をβ23t、
広角端における前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との合成横倍率をβ23wとした場合、
1.4<β23t/β23w<3 (2)
で表される条件式(2)を満足する付記1又は付記2に記載のズームレンズ。
[付記4]
前記第4レンズ群の焦点距離をfG4、
広角端における前記ズームレンズの焦点距離をfwとした場合、
-15<fG4/fw<-1 (3)
で表される条件式(3)を満足する付記1から付記3のいずれか1つに記載のズームレンズ。
[付記5]
前記第1A部分群の焦点距離をfG1A、
前記第1C部分群の焦点距離をfG1Cとした場合、
-0.5<fG1A/fG1C<0.5 (4)
で表される条件式(4)を満足する付記1から付記4のいずれか1つに記載のズームレンズ。
[付記6]
前記第1A部分群の焦点距離をfG1A、
前記第1B部分群の焦点距離をfG1Bとした場合、
0<|fG1A/fG1B|<0.3 (5)
で表される条件式(5)を満足する付記1から付記5のいずれか1つに記載のズームレンズ。
[付記7]
前記第1レンズ群の焦点距離をfG1、
広角端における前記ズームレンズの焦点距離をfwとした場合、
-4<fG1/fw<-1 (6)
で表される条件式(6)を満足する付記1から付記6のいずれか1つに記載のズームレンズ。
[付記8]
合焦の際、前記第1C部分群は不動である付記1から付記7のいずれか1つに記載のズームレンズ。
[付記9]
前記第1C部分群は少なくとも1枚の負レンズを含み、
前記第1C部分群に含まれる全ての負レンズのd線基準のアッベ数の平均値をνaveとした場合、
νave>50 (7)
で表される条件式(7)を満足する付記1から付記8のいずれか1つに記載のズームレンズ。
[付記10]
縮小側がテレセントリックである付記1から付記9のいずれか1つに記載のズームレンズ。
[付記11]
前記第2レンズ群の焦点距離をfG2、
広角端における前記ズームレンズの焦点距離をfwとした場合、
2<fG2/fw<10 (8)
で表される条件式(8)を満足する付記1から付記10のいずれか1つに記載のズームレンズ。
[付記12]
前記第3レンズ群の焦点距離をfG3、
広角端における前記ズームレンズの焦点距離をfwとした場合、
4<fG3/fw<12 (9)
で表される条件式(9)を満足する付記1から付記11のいずれか1つに記載のズームレンズ。
[付記13]
前記最終レンズ群の焦点距離をfGE、
広角端における前記ズームレンズの焦点距離をfwとした場合、
3<fGE/fw<8 (10)
で表される条件式(10)を満足する付記1から付記12のいずれか1つに記載のズームレンズ。
[付記14]
前記ズームレンズの空気換算距離での縮小側のバックフォーカスをBf、
広角端における前記ズームレンズの焦点距離をfwとした場合、
2<Bf/fw (11)
で表される条件式(11)を満足する付記1から付記13のいずれか1つに記載のズームレンズ。
[付記15]
前記中間群は、拡大側から縮小側へ順に負レンズと正レンズとが接合された接合レンズを最も縮小側に含む付記1から付記14のいずれか1つに記載のズームレンズ。
[付記16]
前記第1C部分群は、拡大側から縮小側へ順に、負レンズと、正レンズとからなる付記1から付記15のいずれか1つに記載のズームレンズ。
[付記17]
付記1から付記16のいずれか1つに記載のズームレンズを備えた投写型表示装置。
[付記18]
付記1から付記16のいずれか1つに記載のズームレンズを備えた撮像装置。
【符号の説明】
【0148】
10 ズームレンズ
11a~11c 透過型表示素子
12 ダイクロイックミラー
13 ダイクロイックミラー
14 クロスダイクロイックプリズム
15 光源
16a~16c コンデンサレンズ
18a~18c 全反射ミラー
21a~21c DMD素子
24a~24c TIRプリズム
25 偏光分離プリズム
31a~31c 反射型表示素子
32 ダイクロイックミラー
33 ダイクロイックミラー
34 クロスダイクロイックプリズム
35a~35c 偏光分離プリズム
38 全反射ミラー
41 カメラボディ
42 シャッターボタン
43 電源ボタン
44 操作部
45 操作部
46 表示部
47 マウント
48 交換レンズ
49 ズームレンズ
50 撮像素子
100 投写型表示装置
105 スクリーン
200 投写型表示装置
205 スクリーン
210 ズームレンズ
215 光源
300 投写型表示装置
305 スクリーン
310 ズームレンズ
315 光源
400 カメラ
D23t 間隔
D23w 間隔
G1 第1レンズ群
G1A 第1A部分群
G1B 第1B部分群
G1C 第1C部分群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
G5 第5レンズ群
G6 第6レンズ群
G7 第7レンズ群
GE 最終レンズ群
GM 中間群
K0 軸上光束
K1 最大半画角の光束
L11~L71 レンズ
PP 光学部材
Sim 画像表示面
Z 光軸