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特開2025-98766スクアリリウム色素及びその精製方法、分散物、並びに、近赤外線吸収性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098766
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】スクアリリウム色素及びその精製方法、分散物、並びに、近赤外線吸収性組成物
(51)【国際特許分類】
   C09B 57/00 20060101AFI20250625BHJP
   C09B 23/14 20060101ALI20250625BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20250625BHJP
   C09B 67/54 20060101ALI20250625BHJP
   G02B 5/22 20060101ALN20250625BHJP
【FI】
C09B57/00 X CSP
C09B23/14
C09B67/20 F
C09B67/54 Z
G02B5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215124
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】坂井 優介
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA09
2H148CA12
2H148CA17
(57)【要約】
【課題】耐熱性に優れるスクアリリウム色素及びその精製方法の提供。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物及びその異性体の少なくとも一方を含み、高速液体クロマトグラフィーを用いて検出波長254nmで測定した純度が、測定溶媒由来のピークを除いたすべてのピーク面積に対し、上記式(1)で表される化合物及びその異性体由来のピーク面積の割合が90%以上であるスクアリリウム色素及びその精製方法、上記スクアリリウム色素を含む分散物及び近赤外線吸収性組成物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物及びその異性体の少なくとも一方を含み、
高速液体クロマトグラフィーを用いて検出波長254nmで測定した純度が、測定溶媒由来のピークを除いたすべてのピーク面積に対し、前記式(1)で表される化合物及びその異性体由来のピーク面積の割合が90%以上である
スクアリリウム色素。
【化1】

式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、
及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、
及びXは、それぞれ独立に、酸素原子又は-N(R)-を表し、
は、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、
~Yはそれぞれ独立に、ハロゲン原子又は1価の有機基を表し、YとY、及び、YとYは、互いに結合して環構造を形成していてもよく、
~Yをそれぞれ複数有する場合は、複数有するY同士、複数有するY同士、複数有するY同士又は複数有するY同士は、互いに結合して環構造を形成していてもよく、
p及びsはそれぞれ独立に、0~3の整数を表し、
q及びrはそれぞれ独立に、0~2の整数を表す。
【請求項2】
及びRが、水素原子であり、かつX及びXがNHである請求項1に記載のスクアリリウム色素。
【請求項3】
とRとが同一の基である請求項1又は請求項2に記載のスクアリリウム色素。
【請求項4】
粒子である請求項1又は請求項2に記載のスクアリリウム色素。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のスクアリリウム色素と、樹脂とを含む分散物。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のスクアリリウム色素を含む近赤外線吸収性組成物。
【請求項7】
前記式(1)で表される化合物及びその異性体の少なくとも一方の粗製物を準備する工程、
前記粗製物を20℃以下の有機極性溶媒中にて撹拌する工程、並びに、
前記撹拌後、撹拌した混合物をろ過する工程を含む請求項1又は請求項2に記載のスクアリリウム色素の精製方法。
【請求項8】
前記有機極性溶媒が、アミド系溶媒である請求項7に記載のスクアリリウム色素の精製方法。
【請求項9】
前記撹拌する工程における有機極性溶媒の温度が、10℃以下である請求項7に記載のスクアリリウム色素の精製方法。
【請求項10】
前記ろ過する工程後、ろ過物とエステル系溶媒とを混合し、混合物を50℃~前記エステル系溶媒の沸点に加熱する工程、及び、前記加熱後、加熱した混合物をろ過する工程を含む請求項7に記載のスクアリリウム色素の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スクアリリウム色素及びその精製方法、分散物、並びに、近赤外線吸収性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などにはカラー画像の固体撮像素子である、電荷結合素子(CCD)や、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)などが用いられている。これら固体撮像素子は、その受光部において近赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードを使用しているために、視感度補正を行うことが必要であり、近赤外線吸収フィルタを用いることが多い。
近赤外線吸収物質として、スクアリリウム化合物などが知られている(例えば、特許文献1又は2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-208101号公報
【特許文献2】特開2022-1632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、耐熱性に優れるスクアリリウム色素及びその精製方法を提供することである。
本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記スクアリリウム色素を含む分散物及び近赤外線吸収性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 下記式(1)で表される化合物及びその異性体の少なくとも一方を含み、高速液体クロマトグラフィーを用いて検出波長254nmで測定した純度が、測定溶媒由来のピークを除いたすべてのピーク面積に対し、上記式(1)で表される化合物及びその異性体由来のピーク面積の割合が90%以上であるスクアリリウム色素。
【0006】
【化1】
【0007】
式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、
及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、
及びXは、それぞれ独立に、酸素原子又は-N(R)-を表し、
は、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、
~Yはそれぞれ独立に、ハロゲン原子又は1価の有機基を表し、YとY、及び、YとYは、互いに結合して環構造を形成していてもよく、
~Yをそれぞれ複数有する場合は、複数有するY同士、複数有するY同士、複数有するY同士又は複数有するY同士は、互いに結合して環構造を形成していてもよく、
p及びsはそれぞれ独立に、0~3の整数を表し、
q及びrはそれぞれ独立に、0~2の整数を表す。
【0008】
<2> R及びRが、水素原子であり、かつX及びXがNHである<1>に記載のスクアリリウム色素。
<3> RとRとが同一の基である<1>又は<2>に記載のスクアリリウム色素。
<4> 粒子である<1>~<3>のいずれか1つに記載のスクアリリウム色素。
<5> <1>~<4>のいずれか1つに記載のスクアリリウム色素と、樹脂とを含む分散物。
<6> <1>~<4>のいずれか1つに記載のスクアリリウム色素を含む近赤外線吸収性組成物。
<7> 上記式(1)で表される化合物及びその異性体の少なくとも一方の粗製物を準備する工程、上記粗製物を20℃以下の有機極性溶媒中にて撹拌する工程、並びに、上記撹拌後、撹拌した混合物をろ過する工程を含む<1>~<4>のいずれか1つに記載のスクアリリウム色素の精製方法。
<8> 上記有機極性溶媒が、アミド系溶媒である<7>に記載のスクアリリウム色素の精製方法。
<9> 上記撹拌する工程における有機極性溶媒の温度が、10℃以下である<7>又は<8>に記載のスクアリリウム色素の精製方法。
<10> 上記ろ過する工程後、ろ過物とエステル系溶媒とを混合し、混合物を50℃~前記エステル系溶媒の沸点に加熱する工程、及び、上記加熱後、加熱した混合物をろ過する工程を含む<7>~<9>のいずれか1つに記載のスクアリリウム色素の精製方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、耐熱性に優れるスクアリリウム色素及びその精製方法を提供することができる。
本発明の他の実施形態によれば、上記スクアリリウム色素を含む分散物及び近赤外線吸収性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。 また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、全固形分とは、組成物の全組成から溶剤を除いた成分の総質量をいう。本開示における固形分は、25℃における固形分である。
以下、本開示を詳細に説明する。
【0011】
(スクアリリウム色素)
本開示に係るスクアリリウム色素は、下記式(1)で表される化合物及びその異性体の少なくとも一方を含み、高速液体クロマトグラフィーを用いて検出波長254nmで測定した純度が、測定溶媒由来のピークを除いたすべてのピーク面積に対し、上記式(1)で表される化合物及びその異性体由来のピーク面積の割合が90%以上である。
【0012】
【化2】
【0013】
式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、
及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、
及びXは、それぞれ独立に、酸素原子又は-N(R)-を表し、
は、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、
~Yはそれぞれ独立に、ハロゲン原子又は1価の有機基を表し、YとY、及び、YとYは、互いに結合して環構造を形成していてもよく、
~Yをそれぞれ複数有する場合は、複数有するY同士、複数有するY同士、複数有するY同士又は複数有するY同士は、互いに結合して環構造を形成していてもよく、
p及びsはそれぞれ独立に、0~3の整数を表し、
q及びrはそれぞれ独立に、0~2の整数を表す。
【0014】
従来の式(1)で表されるスクアリリウム色素においては、不純物が含まれており、耐熱性が十分ではなかった。
本開示に係るスクアリリウム色素は、高速液体クロマトグラフィーを用いて検出波長254nmで測定した純度が、測定溶媒由来のピークを除いたすべてのピーク面積に対し、上記式(1)で表される化合物及びその異性体由来のピーク面積の割合が90%以上であることにより、不純物の多くが除かれ、不純物由来で悪化していた耐熱性が向上すると推定している。
【0015】
また、本開示に係るスクアリリウム色素は、上記構成をとることにより、分散安定性、及び、耐光性にも優れると推定される。
【0016】
以下、本開示に係るスクアリリウム色素について、詳細に説明する。
【0017】
<ピーク面積の割合>
本開示に係るスクアリリウム色素は、高速液体クロマトグラフィーを用いて検出波長254nmで測定した純度が、測定溶媒由来のピークを除いたすべてのピーク面積に対し、上記式(1)で表される化合物及びその異性体由来のピーク面積の割合(「面積比率」ともいう。)が90%以上であり、耐熱性、耐光性、及び、分散安定性の観点から、91%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましく、93%以上であることが更に好ましく、94%以上100%以下であることが特に好ましい。
【0018】
本開示における高速液体クロマトグラフィーを用いて検出波長254nmで測定した純度が、測定溶媒由来のピークを除いたすべてのピーク面積に対し、上記式(1)で表される化合物及びその異性体由来のピーク面積の割合は、以下の方法により測定するものとする。
-サンプル作製方法-
測定するサンプル10mgを秤量し、測定溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)で20mlにメスアップ後、液温を10℃以下に保ちながら超音波を5分間あてて溶解させる。溶解させたものをシリンジフィルターにてろ過した後、以下の測定条件にて、HPLCにより速やかに測定する。
-HPLC測定条件-
装置:(株)島津製作所製NexeraX2
カラム:Kinetex C18 2.6μm,150mm×4.6mm
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出波長:254nm
移動層:超純水/テトラヒドロフラン(THF)/酢酸=50/50/0.1(体積%)
【0019】
<式(1)で表される化合物及びその異性体>
本開示に係るスクアリリウム色素は、上記式(1)で表される化合物のみを含んでいてもよいし、その異性体を含んでいてもよいし、これらの両方を含んでいてもよい。
異性体としては、光学異性体、及び、下記に示す互変異性体が挙げられる。
また、上記式(1)で表される化合物におけるスクアリリウム構造は、以下のように電荷が非局在化して存在しており、いずれも同じ化合物を表すものである。
【0020】
【化3】
【0021】
式(1)におけるR及びRはそれぞれ独立に、耐熱性、耐光性、及び、分散安定性の観点から、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、アリール基であることがより好ましい。
及びRにおけるアルキル基、アルケニル基、アリール基及びヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、上記置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミド基等が挙げられる。中でも、上記置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基又はアミド基が好ましく挙げられる。
また、式(1)におけるRとRとは、耐熱性、耐光性、分散安定性、及び、合成容易性の観点から、同一の基であることが好ましい。
【0022】
及びRが表すアルキル基の炭素数(「炭素原子数」ともいう。)は、1~30が好ましい。下限は、1以上がより好ましく、3以上が更に好ましい。上限は、20以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖又は分岐が好ましい。分岐のアルキル基の分岐数は、例えば、2~10が好ましく、2~8がより好ましい。分岐数が上記範囲であれば、溶剤溶解性が良好である。
及びRが表すアルケニル基の炭素数は、2~30が好ましい。下限は、例えば、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましい。上限は、25以下がより好ましく、20以下が更に好ましい。アルケニル基は直鎖又は分岐が好ましい。分岐のアルケニル基の分岐数は、2~10が好ましく、2~8がより好ましい。分岐数が上記範囲であれば、溶剤溶解性が良好である。
及びRが表すアリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。
及びRが表すヘテロアリール基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は、3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12が更に好ましい。
【0023】
式(1)におけるR及びRはそれぞれ独立に、耐熱性、耐光性、及び、分散安定性の観点から、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
式(1)におけるRとRとは、耐熱性、耐光性、分散安定性、及び、合成容易性の観点から、同一の基であることが好ましい。
及びRが表すアルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~4が更に好ましく、1又は2が特に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐のいずれでもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0024】
式(1)におけるX及びXは、耐熱性、耐光性、分散安定性、及び、合成容易性の観点から、-N(R)-であることが好ましく、-NH-であることがより好ましい。
また、式(1)におけるXとXとは、耐熱性、耐光性、分散安定性、及び、合成容易性の観点から、同一の基であることが好ましい。
は、耐熱性、耐光性、及び、分散安定性の観点から、水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
が表すアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基及びヘテロアリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミド基等が挙げられる。
【0025】
式(1)におけるY~Yはそれぞれ独立に、1価の有機基であることが好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基又はアミド基であることがより好ましい。
1価の有機基としては、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ヘテロアリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、-NRa1a2、-CORa3、-COORa4、-OCORa5、-NHCORa6、-CONRa7a8、-NHCONRa9a10、-NHCOORa11、-SOa12、-SOORa13、-NHSOa14又は-SONRa15a16が挙げられる。Ra1~Ra16はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
【0026】
とY、及び、YとYは、互いに結合して環構造を形成していてもよい。例えば、YとYとが互いに結合して、Y及びYに直結しているナフタレン環と併せて、例えば、アセナフテン環、アセナフチレン環等の3環等となっていてもよい。
~Yは、それぞれ複数有する場合は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。例えば、Yが複数存在する場合、Y同士が互いに結合し、Y及びYに直結しているナフタレン環と併せて、例えば、アントラセン環、フェナントレン環等の3環等となっていてもよい。なお、Y同士が互いに結合して環構造を形成する場合、Y以外の置換基であるY~Yは必ずしも複数存在する必要はない。また、Y~Yは存在しなくてもよい。Y同士、Y同士及びY同士が結合して環構造を形成する場合も同様である。
【0027】
また、式(1)において、耐熱性、耐光性、分散安定性、及び、合成容易性の観点から、R及びRが、水素原子であり、かつX及びXがNHであることが好ましい。
【0028】
p及びsはそれぞれ独立に、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
q及びrはそれぞれ独立に、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0029】
式1で表される化合物の好ましい具体例を以下に記載載するが、本開示はこれらの例によって限定されるものではない。
【0030】
【化4】
【0031】
【化5】
【0032】
【化6】
【0033】
式1で表される化合物及びその互変異性体の製造方法としては、特に制限はないが、例えば、特開2011-208101号公報に記載の方法により合成することができる。
【0034】
式(1)で表される化合物の分子量は、400~3,000であることが好ましく、500~2,000がより好ましい。
式(1)で表される化合物は、波長700nm~1,200nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましく、波長750nm~1,000nmの範囲に極大吸収波長を有することがより好ましい。
本開示において、極大吸収波長の値は、式(1)で表される化合物を、クロロホルムに溶解させて1g/Lの濃度の溶液を調製し、化合物を溶解させた溶液の吸収スペクトルを、(株)島津製作所製UV-1800を用いて、350nm~1,200nmの波長範囲で測定したスペクトルから得られるものである。
また、式(1)で表される化合物のモル吸光係数は限定されないが、好ましく5,000~250,000であり、より好ましくは50,000~200,000である。
式(1)で表される化合物は、透明であることが好ましいが、わずかに緑色、灰色、茶色等の着色があってもよい。
【0035】
また、本開示に係るスクアリリウム色素は、耐熱性、及び、耐光性の観点から、粒子であることが好ましい。
本開示に係るスクアリリウム色素の体積平均粒子径は、特に制限はなく、用途等に応じて適宜選択すればよいが、耐熱性、耐光性、及び、分散安定性の観点から、10nm~10μmであることが好ましく、50nm~1μmであることがより好ましく、100nm~500nmであることが更に好ましく、100nm~300nmであることが特に好ましい。
本開示において、スクアリリウム色素の体積平均粒子径は、スクアリリウム色素の水分散液を調製し、ゼータサイザーNanoZS(Malvern Panalytical社製)を用いて体積平均粒子径を測定するものとする。
【0036】
本開示に係るスクアリリウム色素は、顔料であっても、染料であってもよいが、耐熱性、及び、耐光性の観点から、顔料であることが好ましい。
本開示において、顔料とは、25℃における水100gに対する溶解度が0.1g以下であり、かつ、25℃におけるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gに対する溶解度が0.1g以下である化合物を指す。
【0037】
(スクアリリウム色素の精製方法)
本開示に係るスクアリリウム色素の精製方法は、上記式(1)で表される化合物及びその異性体の少なくとも一方の粗製物を準備する工程、上記粗製物を20℃以下の有機極性溶媒中にて撹拌する工程、並びに、上記撹拌後、撹拌した混合物をろ過する工程を含むことが好ましい。
本開示に係るスクアリリウム色素は、本開示に係るスクアリリウム色素の精製方法により精製されたものであることが好ましい。
【0038】
上記式(1)で表される化合物及びその異性体に含まれる不純物は、溶解性が低く精製が難しい。更に上記式(1)で表される化合物及びその異性体の内部に取り込まれている不純物を抜くことは難しい。また、上記式(1)で表される化合物及びその異性体並びにこれらの不純物は、塩基性条件で溶解する傾向にあったが、上記式(1)で表される化合物及びその異性体が塩基性条件下で不安定であることがわかっている。
上記精製方法であると、高速液体クロマトグラフィーを用いて検出波長254nmで測定した純度が、測定溶媒由来のピークを除いたすべてのピーク面積に対し、上記式(1)で表される化合物及びその異性体由来のピーク面積の割合が90%以上であるスクアリリウム色素を容易に作製することができる。上記精製方法を行うことにより、本開示に係るスクアリリウム色素が安定して製造できるようになる。また、不純物が除かれた影響で分散安定性が向上した。更には、結晶子サイズが大きくなるという予期せぬ効果も見られ、耐熱性も向上した。
【0039】
上記準備する工程としては、特に制限はなく、上述したように、例えば、特開2011-208101号公報に記載の方法により上記式(1)で表される化合物及びその異性体の粗製物を作製することができる。
【0040】
上記撹拌する工程に用いる有機極性溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミドなどのアミド系溶媒;N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドンなどのピロリドン系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;フェノール、o-、m-、又はp-クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ブチルセロソルブ等のセロソルブ系;ピリジン、ヘキサメチルホスホルアミド、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。
中でも、有機極性溶媒としては、不純物除去性、耐熱性、及び、耐光性の観点から、アミド系溶媒、ピロリドン系溶媒、スルホキシド系溶媒及びピリジンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の溶媒であることが好ましく、アミド系溶媒であることがより好ましく、N,N-ジメチルホルムアミド及びN,N-ジメチルアセトアミドよりなる群から選ばれた少なくとも1種の溶媒であることが特に好ましい。
また、有機極性溶媒としては、不純物除去性、耐熱性、及び、耐光性の観点から、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン及びジメチルスルホキシドよりなる群から選ばれた少なくとも1種の溶媒であることが好ましく、N,N-ジメチルホルムアミド及びN,N-ジメチルアセトアミドよりなる群から選ばれた少なくとも1種の溶媒であることが特に好ましい。
【0041】
上記撹拌する工程における有機極性溶媒の温度は、20℃以下であり、不純物除去性、耐熱性、及び、耐光性の観点から、15℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがより好ましく、有機極性溶媒の融点を超え10℃以下であることが更に好ましく、-15℃~10℃であることが特に好ましく、0℃~10℃であることが最も好ましい。
【0042】
上記撹拌する工程に用いる有機極性溶媒の量は、収率、不純物除去性、耐熱性、及び、耐光性の観点から、上記粗精製物の全体積に対し、2倍体積量~100倍体積量であることが好ましく、5倍体積量~50倍体積量であることがより好ましく、8倍体積量~30倍体積量であることが特に好ましい。
【0043】
上記撹拌する工程に用いる撹拌手段は、特に限定されず、公知の撹拌器具又は撹拌装置を用いることができる。
また、上記撹拌する工程に用いる撹拌容器は、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、内温を15℃以下に調整することができる冷却手段又は温度調整手段を備えていることが好ましい。冷却手段及び温度調整手段としては、公知のものを用いることができる。
上記撹拌する工程に用いる撹拌時間は、5分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましく、20分~600分であることが更に好ましく、25分~120分であることが特に好ましい。
【0044】
上記ろ過する工程に用いられるろ過手段は、得られるスクアリリウム色素がろ別可能なものであれば特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
得られたろ過物は、酢酸エチル等のエステル系溶媒などの得られるスクアリリウム色素が溶解度の小さい溶媒により1回又は複数回洗浄することが好ましい。
【0045】
本開示に係るスクアリリウム色素の精製方法は、不純物除去性、耐熱性、及び、耐光性の観点から、上記ろ過する工程後、ろ過物とエステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒及びアルコール系溶媒よりなる群から選ばれた少なくとも1種の溶媒とを混合し、混合物を50℃~前記溶媒の沸点に加熱する工程、及び、上記加熱後、加熱した混合物をろ過する工程を含むことが好ましい。中でも、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、又は、アルコール系溶媒が好ましく、エステル系溶媒が特に好ましい。
エステル系溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
上記加熱する工程における温度は、収率、不純物除去性、耐熱性、及び、耐光性の観点から、60℃~上記エステル系溶媒の沸点であることが好ましい。
上記加熱する工程に用いるエステル系溶媒の量は、収率、不純物除去性、耐熱性、及び、耐光性の観点から、上記ろ過物の全体積に対し、1体積倍量~100体積倍量であることが好ましく、2体積倍量~50体積倍量であることがより好ましく、5体積倍量~30体積倍量であることが特に好ましい。
【0046】
上記加熱した混合物をろ過する工程に用いられるろ過手段は、上記ろ過する工程に用いられるろ過手段と同様のものを用いることができる。
また、得られたろ過物(「ろ物」ともいう。)は、酢酸エチル等のエステル系溶媒などの得られるスクアリリウム色素が溶解度の小さい溶媒により1回又は複数回洗浄することが好ましい。
【0047】
また、本開示に係るスクアリリウム色素の精製方法は、得られたろ過物を乾燥する工程を含むことが好ましい。
上記乾燥する工程における乾燥手段としては、特に制限はなく、公知の乾燥手段を用いることができる。
上記乾燥する工程における乾燥温度は、得られるスクアリリウム色素が分解しない温度であればよいが、10℃~80℃であることが好ましく、25℃~60℃であることがより好ましく、40℃~60℃であることが特に好ましい。
【0048】
(分散物)
本開示に係る分散物は、本開示に係るスクアリリウム色素と、樹脂とを含む。
樹脂としては、後述するポリマー型の分散剤、水性樹脂、非水系ビヒクルに使用される樹脂、後述する近赤外線吸収性組成物に用いられる樹脂等が挙げられる。
本開示に係る分散物は、水系分散物であっても非水系分散物であってもよい。
水系分散物が含む溶剤としては、例えば、水を主成分とし、所望により親水性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等の多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールものブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートトリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール誘導体;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン等のアミン;ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド;その他、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、2-オキサゾリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン;等が挙げられる。
【0049】
更に、本開示に係る分散物は、樹脂として、水性樹脂を含んでいてもよい。水性樹脂としては、水に溶解する水溶解性の樹脂,水に分散する水分散性の樹脂、又はそれらの混合物が挙げられる。水性樹脂としては具体的には、アクリル系、スチレン-アクリル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、フッ素系等の樹脂が挙げられる。
【0050】
溶剤中に含まれる水の含量は、30質量%~100質量%未満が好ましく、50質量%~100質量%がより好ましい。
【0051】
更に、界面活性剤及び分散剤を用いてもよい。界面活性剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性の界面活性剤が挙げられ、いずれの界面活性剤を用いてもよい。
【0052】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0053】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコン系等が挙げられる。
【0054】
カチオン系界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0055】
両イオン性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アミンオキサイド等が挙げられる。
【0056】
分散剤としては、公知のものを用いることができる。
分散剤として例えば、ポリエステル系、ε-カプロラクトン系、ポリカルボン酸塩、ポリリン酸塩、ハイドロステアリン酸塩、アミドスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、オレフィンマレイン酸塩共重合物、アクリル-マレイン酸塩共重合物、アルキルアミン酢酸塩、有機リン酸類、アルキル脂肪酸塩、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル系、シリコーン系、フッ素系を用いることができる。具体的には、ディスパービックシリーズ(ビッグケミー・ジャパン社製)、ソルスパースシリーズ(ゼネガ社製)、TAMNシリーズ(日光ケミカル社製)等が挙げられる。
【0057】
非水系分散物としては、例えば、本開示に係るスクアリリウム色素を非水系ビヒクルに分散してなるものが挙げられる。
非水系ビヒクルに使用される樹脂は、例えば、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン/マレイン酸樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。非水系ビヒクルとして、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いてもよい。
【0058】
また、非水系ビヒクルに使用される溶剤としては、例えば、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N-ジメチルホルムアミド、γ-ブチロラクタム、N-メチル-2-ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル等が挙げられる。
【0059】
本開示に係る分散物に含まれるスクアリリウム色素の含有量は、分散物の全質量に対して、0.1質量%~35質量%であることが好ましく、0.5質量%~25質量%であることがより好ましい。
【0060】
本開示に係る分散物は、その他にも目的及び用途に応じて、各種添加剤を含有していてもよい。例えば、表面張力調整剤、粘度調整剤、比抵抗調整剤、消泡剤、防黴剤等を加えることもできる。
【0061】
(近赤外線吸収性組成物)
本開示に係る近赤外線吸収性組成物は、本開示に係るスクアリリウム色素を含む。
本開示に係る近赤外線吸収性組成物は、本開示に係るスクアリリウム色素を、近赤外線吸収性組成物の全固形分に対して、0.1質量%~90質量%含有することが好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
【0062】
<樹脂>
本開示に係る近赤外線吸収性組成物は、樹脂を含むことが好ましい。樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2,000~2,000,000であることが好ましい。上限は、1,000,000以下がより好ましく、500,000以下が更に好ましい。下限は、3,000以上がより好ましく、5,000以上が更に好ましい。
また、エポキシ樹脂の場合、エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、100以上が好ましく、200~2,000,000がより好ましい。上限は、1,000,000以下が更に好ましく、500,000以下が特に好ましい。下限は、100以上が好ましく、200以上がより好ましい。
【0063】
樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
中でも、溶解性、及び、可視透明性の観点から、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂が好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。
【0064】
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸及びそのエステルのうちの少なくとも1つに由来する構成単位を含む重合体が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種を重合して得られる重合体が挙げられる。
【0065】
ポリエステル樹脂としては、ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)と、多塩基酸(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらの芳香核の水素原子がメチル基、エチル基、フェニル基等で置換された芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸など)との反応により得られるポリマーや、カプロラクトンモノマー等の環状エステル化合物の開環重合により得られるポリマー(例えばポリカプロラクトン)が挙げられる。
【0066】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等を挙げることができる。市販品としては、例えば、以下のものが挙げられる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、JER827、JER828、JER834、JER1001、JER1002、JER1003、JER1055、JER1007、JER1009、JER1010(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON860、EPICLON1050、EPICLON1051、EPICLON1055(以上、DIC(株)製)等が挙げられる。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、JER806、JER807、JER4004、JER4005、JER4007、JER4010(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON830、EPICLON835(以上、DIC(株)製)、LCE-21、RE-602S(以上、日本化薬(株)製)等が挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、JER152、JER154、JER157S70、JER157S65(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON N-740、EPICLON N-770、EPICLON N-775(以上、DIC(株)製)等が挙げられる。
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、EPICLON N-660、EPICLON N-665、EPICLON N-670、EPICLON N-673、EPICLON N-680、EPICLON N-690、EPICLON N-695(以上、DIC(株)製)、EOCN-1020(以上、日本化薬(株)製)等が挙げられる。
脂肪族エポキシ樹脂としては、ADEKA RESIN EP-4080S、同EP-4085S、同EP-4088S(以上、(株)ADEKA製)、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、EHPE3150、EPOLEAD PB 3600、同PB 4700(以上、ダイセル化学工業(株)製)、デナコール EX-212L、EX-214L、EX-216L、EX-321L、EX-850L(以上、ナガセケムテックス(株)製)等が挙げられる。
その他にも、ADEKA RESIN EP-4000S、同EP-4003S、同EP-4010S、同EP-4011S(以上、(株)ADEKA製)、NC-2000、NC-3000、NC-7300、XD-1000、EPPN-501、EPPN-502(以上、(株)ADEKA製)、JER1031S(三菱化学(株)製)等が挙げられる。
【0067】
また、樹脂は、アルカリ可溶性を促進する基(以下、酸基ともいう)を有していてもよい。酸基としては、例えば、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられる。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。なお、アルカリ可溶性を促進する基を有する樹脂は、アルカリ可溶性樹脂ともいう。
【0068】
アルカリ可溶性樹脂としては、側鎖にカルボキシ基を有するポリマーが好ましく、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック型樹脂などのアルカリ可溶性フェノール樹脂等、並びに側鎖にカルボキシ基を有する酸性セルロース誘導体、ヒドロキシ基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等が挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他のモノマーとの共重合体が、アルカリ可溶性樹脂として好適である。(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等、ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等が挙げられる。また、他のモノマーとして、特開平10-300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマーである、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等を用いることもできる。なお、これらの(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0069】
アルカリ可溶性樹脂として、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体を好ましく用いることができる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合したもの、特開平7-140654号公報に記載の、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体なども好ましく用いることができる。
【0070】
アルカリ可溶性樹脂は、下記式(ED1)で示される化合物及び下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)のうちの少なくとも1つを含むモノマー成分を重合してなるポリマー(a)を含むことも好ましい。
【0071】
【化7】
【0072】
式(ED1)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~25の炭化水素基を表す。
【0073】
【化8】
【0074】
式(ED2)中、Rは、水素原子又は炭素数1~30の有機基を表す。式(ED2)の具体例としては、特開2010-168539号公報の記載を参酌できる。
【0075】
式(ED1)中、R及びRで表される置換基を有していてもよい炭素数1~25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、tert-アミル、ステアリル、ラウリル、2-エチルヘキシル等の直鎖状又は分岐状のアルキル基;フェニル等のアリール基;シクロヘキシル、tert-ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、2-メチル-2-アダマンチル等の脂環式基;1-メトキシエチル、1-エトキシエチル等のアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジル等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。これらの中でも特に、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような酸や熱で脱離しにくい1級又は2級炭素の置換基が、耐熱性の点で好ましい。
【0076】
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013-29760号公報の段落0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。エーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0077】
アルカリ可溶性樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0078】
【化9】
【0079】
式(X)において、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数2~10のアルキレン基を表し、Rは、水素原子又はベンゼン環を含んでもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。nは1~15の整数を表す。
【0080】
上記式(X)において、Rのアルキレン基の炭素数は、2~3が好ましい。また、R のアルキル基の炭素数は1~20であるが、好ましくは1~10であり、Rのアルキル基はベンゼン環を含んでもよい。Rで表されるベンゼン環を含むアルキル基としては、ベンジル基、2-フェニル(イソ)プロピル基等を挙げることができる。
【0081】
アルカリ可溶性樹脂としては、特開2012-208494号公報の段落0558~0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の[0685]~[0700])の記載、特開2012-198408号公報の段落0076~0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0082】
アルカリ可溶性樹脂の酸価は、30mgKOH/g~200mgKOH/gであることが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上がより好ましく、70mgKOH/g以上が更に好ましい。上限は、150mgKOH/g以下がより好ましく、120mgKOH/g以下が更に好ましい。
【0083】
また、樹脂は、重合性基を有していてもよい。樹脂が重合性基を有することで、後述する硬化性化合物を使用しなくても、硬度のある膜を形成することができる。
重合性基としては、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。重合性基を含有する樹脂としては、ダイヤナ-ルNRシリーズ(三菱レイヨン株式会社製)、Photomer6173(COOH含有ポリウレタンアクリル酸オリゴマー、Diamond Shamrock Co.,Ltd.製)、ビスコートR-264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業株式会社製)、サイクロマーPシリーズ(例えば、ACA230AA)、プラクセル CF200シリーズ(いずれもダイセル化学工業株式会社製)、Ebecryl3800(ダイセルユーシービー株式会社製)、アクリキュアーRD-F8(株式会社日本触媒製)などが挙げられる。また、上述したエポキシ樹脂なども挙げられる。
【0084】
本開示に係る近赤外線吸収性組成物において、樹脂の含有量は、近赤外線吸収性組成物の全固形分に対し、1質量%~80質量%であることが好ましい。下限は、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上が更に好ましい。上限は、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
【0085】
<<硬化性化合物>>
本開示に係る近赤外線吸収性組成物は、硬化性化合物を含有してもよい。硬化性化合物としては、重合性基を有する化合物(以下、「重合性化合物」ということがある)が好ましい。
重合性化合物は、例えば、エチレン性不飽和結合を有する基、環状エーテル(エポキシ、オキセタン)基、メチロール基等を含む化合物が挙げられ、エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物が好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
重合性化合物は、単官能であっても多官能であってもよいが、好ましくは、多官能である。多官能重合性化合物を含むことにより、近赤外線遮蔽性及び耐熱性をより向上させることができる。官能基の数は特に限定されないが、2~8官能が好ましく、3~6官能がより好ましい。
重合性化合物は、例えば、モノマー、プレポリマー、オリゴマー、及びそれらの混合物、並びにそれらの多量体などの化学的形態のいずれであってもよい。重合性化合物としては、モノマーが好ましい。
重合性化合物は、3官能~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3官能~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。
【0086】
硬化性化合物は、エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物であることが好ましい。
エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物の例としては、特開2013-253224号公報の段落0033~0034の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
具体例としては、エチレンオキシ変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはNKエステルATM-35E;新中村化学工業社製)、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA ;日本化薬株式会社製、A-DPH-12E;新中村化学工業社製)、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介して結合している構造を含む化合物が好ましい。またこれらのオリゴマータイプも使用できる。
また、特開2013-253224号公報の段落0034~0038の重合性化合物の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
また、特開2012-208494号公報の段落0477(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の[0585])に記載の重合性モノマー等が具体例として挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物としては、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としてはM-460;東亞合成株式会社製)が好ましい。ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業株式会社製、A-TMMT)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD HDDA)も好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。例えば、RP-1040(日本化薬株式会社製)などが挙げられる。
【0087】
エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物は、更に、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等の酸基を有していてもよい。
酸基を有する化合物としては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルが挙げられる。脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシ基に、非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた多官能モノマーが好ましく、特に好ましくは、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールのうちの少なくとも1つである化合物である。市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製の多塩基酸変性アクリルオリゴマーである、アロニックスシリーズのM-305、M-510、M-520などが挙げられる。
酸基を有する化合物の酸価は、0.1~40mgKOH/gであることが好ましい。下限は、5mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、30mgKOH/g以下がより好ましい。
【0088】
硬化性化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物も好ましい態様である。
カプロラクトン構造を有する化合物としては、特開2013-253224号公報の段落0042~0045の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR-494、日本化薬株式会社製のペンチレンオキシ鎖を6個有する6官能アクリレートであるDPCA-60、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA-330などが挙げられる。
【0089】
本開示に係る近赤外線吸収性組成物が硬化性化合物を含有する場合、硬化性化合物の含有量は、近赤外線吸収性組成物の全固形分に対し、1質量%~90質量%が好ましい。下限は、15質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましい。上限は、80質量%以下よりが好ましく、75質量%以下が更に好ましい。
硬化性化合物は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0090】
<<光重合開始剤>>
本開示に係る近赤外線吸収性組成物は、光重合開始剤を含有してもよい。
光重合開始剤の含有量は、近赤外線吸収性組成物の全固形分に対し、0.01質量%~30質量%であることが好ましい。下限は、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。上限は、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
光重合開始剤は、1種類のみでも、2種類以上でもよく、2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
光重合開始剤としては、光により硬化性化合物の重合を開始させる能力を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。中でも、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有するものが好ましい。
【0091】
光重合開始剤としては、芳香族基を有する化合物であることが好ましく、例えば、アシルホスフィン化合物、アセトフェノン系化合物、α-アミノケトン化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール誘導体化合物、チオキサントン化合物、オキシム化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、トリハロメチル化合物、アゾ化合物、有機過酸化物、ジアゾニウム化合物、ヨードニウム化合物、スルホニウム化合物、アジニウム化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール誘導体化合物、メタロセン化合物等のオニウム塩化合物、有機硼素塩化合物、ジスルホン化合物、チオール化合物などが挙げられる。
光重合開始剤としては、特開2013-253224号公報の段落0217~0228の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
オキシム化合物としては、市販品であるIRGACURE-OXE01、及び、IRGACURE-OXE02(いずれもBASF社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司社製)、アデカアークルズNCI-831、及び、アデカアークルズNCI-930(いずれもADEKA社製)等を用いることができる。
アセトフェノン系化合物としては、市販品であるIRGACURE-907、IRGACURE-369、及び、IRGACURE-379(いずれもBASF社製)を用いることができる。またアシルホスフィン化合物としては市販品であるIRGACURE-819、及び、DAROCUR-TPO(いずれもBASF社製)を用いることができる。
本発明は、光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれることとする。
【0092】
<<溶剤>>
本開示に係る近赤外線吸収性組成物は溶剤を含有してもよい。溶剤は、特に制限はなく、本開示に係る近赤外線吸収性組成物の各成分を均一に溶解又は分散しうるものであれば、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、水、有機溶剤を用いることができ、有機溶剤が好ましい。
有機溶剤としては、例えば、アルコール類(例えばメタノール)、ケトン類、エステル類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、及びジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキサイド、スルホラン等が好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上の溶剤を併用する場合、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートから選択される2種以上で構成される混合溶液が好ましい。
アルコール類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類の具体例としては、特開2012-194534号公報の段落0136等に記載のものが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、エステル類、ケトン類、エーテル類の具体例としては、特開2012-208494号公報の段落0497(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の[0609])に記載のものが挙げられ、更に、酢酸-n-アミル、プロピオン酸エチル、フタル酸ジメチル、安息香酸エチル、硫酸メチル、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
本開示に係る近赤外線吸収性組成物中における溶剤の量は、本開示に係るスクアリリウム色素の固形分が10質量%~90質量%となる量が好ましい。下限は、20質量%以上がより好ましい。上限は、80質量%以下がより好ましい。
【0093】
<<界面活性剤>>
本開示に係る近赤外線吸収性組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。界面活性剤の含有量は、本開示に係る近赤外線吸収性組成物の全固形分に対して、0.0001~5質量%であることが好ましい。下限は、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましい。上限は、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。本開示に係る近赤外線吸収性組成物は、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。界面活性剤により、被塗布面と塗布液との界面張力が低下して、被塗布面への濡れ性が改善される。このため、組成物の液特性(特に、流動性)が向上し、塗布厚の均一性や省液性がより改善する。その結果、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜を形成することができる。
【0094】
フッ素系界面活性剤のフッ素含有率は、3~40質量%が好ましい。下限は、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上が更に好ましい。上限は、30質量以下%がより好ましく、25質量%以下が更に好ましい。フッ素含有率が上述した範囲内である場合は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、溶解性も良好である。
フッ素系界面活性剤として具体的には、特開2014-41318号公報の段落0060~0064(対応する国際公開WO2014/17669号パンフレットの段落0060~0064)等に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファック F-171、同F-172、同F-173、同F-176、同F-177、同F-141、同F-142、同F-143、同F-144、同R30、同F-437、同F-475、同F-479、同F-482、同F-554、同F-780(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、同SC-101、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC-1068、同SC-381、同SC-383、同S-393、同KH-40(以上、旭硝子(株)製)等が挙げられる。
また、下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【0095】
【化10】
【0096】
上記の化合物の重量平均分子量は、例えば、14,000である。
ノニオン系界面活性剤として具体的には、特開2012-208494号公報の段落0553(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の[0679])等に記載のノニオン系界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
カチオン系界面活性剤として具体的には、特開2012-208494号公報の段落0554(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の[0680])等に記載のカチオン系界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
アニオン系界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)社製)等が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、特開2012-208494号公報の段落0556(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の[0682])等に記載のシリコーン系界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0097】
<<重合禁止剤>>
本開示に係る近赤外線吸収性組成物は、製造中又は保存中において、硬化性化合物の不要な反応を阻止するために、少量の重合禁止剤を含有してもよい。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、パラメトキシフェノール、ジ-t-ブチル-パラクレゾール、ピロガロール、t-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられ、パラメトキシフェノールが好ましい。
本開示に係る近赤外線吸収性組成物が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、本開示に係る近赤外線吸収性組成物の全固形分に対して、0.01質量%~5質量%であることが好ましい。
【0098】
<<紫外線吸収剤>>
本開示に係る近赤外線吸収性組成物は、紫外線吸収剤を含有してもよい。
紫外線吸収剤としては、特開2012-068418公報の段落0137~0142(対応する米国特許出願公開第2012/0068292号明細書の段落0251~0254)の化合物や特許第7330295号公報に記載の化合物を使用することができ、これらの内容が援用でき、本明細書に組み込まれる。市販品としては、例えば、UV503(大東化学株式会社)などが挙げられる。
本開示に係る近赤外線吸収性組成物は、紫外線吸収剤を含んでも含まなくてもよいが、含む場合、紫外線吸収剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.01質量%~10質量%であることが好ましく、0.01質量%~5質量%であることがより好ましい。
本開示においては、紫外線吸収剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
<<他の近赤外線吸収物質>>
本開示に係る近赤外線吸収性組成物は、本開示に係るスクアリリウム色素の極大吸収波長とは異なる近赤外線領域に極大吸収波長を有する近赤外線吸収物質(以下、他の近赤外線吸収物質ともいう)を更に含んでもよい。この態様によれば、本開示に係るスクアリリウム色素のみよりも、更に広い波長領域の近赤外線領域の光を吸収可能な、近赤外線カットフィルタを得ることができる。
他の近赤外線吸収物質としては、例えば、銅化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、イミニウム系化合物、チオール錯体系化合物、遷移金属酸化物系化合物、本開示に係るスクアリリウム色素以外のスクアリリウム系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クアテリレン系化合物、ジチオール金属錯体系化合物、クロコニウム系化合物等が挙げられる。
フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、イミニウム系化合物、シアニン系化合物、スクアリリウム系化合物及びクロコニウム系化合物は、特開2010-111750号公報の段落0010~0081に記載の化合物を使用してもよく、この内容は本明細書に組み込まれる。シアニン系化合物については、例えば、「機能性色素、大河原信/松岡賢/北尾悌次郎/平嶋恒亮・著、講談社サイエンティフィック」を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
銅化合物としては、特開2014-41318号公報の段落0013~0056、特開2014-32380号公報の段落0012~0030に記載の銅化合物を使用してもよく、この内容は本明細書に組み込まれる。
また、特開平07-164729号公報の段落0004~0016に開示の化合物や、特開2002-146254号公報の段落0027~0062に開示の化合物、特開2011-164583号公報の段落0034~0067に開示のCu及びPのうちの少なくとも一方を含む酸化物の結晶子からなり数平均凝集粒子径が5~200nmである近赤外線吸収粒子を使用してもよく、この内容は本明細書に組み込まれる。
また、市販品としては、Exiton製「IRA842」、山田化学製「FD-25」などを使用することもできる。
他の近赤外線吸収物質を含有する場合、他の近赤外線吸収物質の含有量は、本発明の組成物の全固形分に対して、0.01質量%~50質量%であることが好ましく、0.01~45質量%であることがより好ましい。本開示においては、他の近赤外線吸収物質は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
<<その他の成分>>
本開示に係る近赤外線吸収性組成物で併用可能なその他の成分としては、例えば、増感剤、架橋剤、硬化促進剤、フィラー、熱硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤などが挙げられ、更に基材表面への密着促進剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を併用してもよい。
これらの成分を適宜含有させることにより、目的とする近赤外線カットフィルタの安定性、膜物性などの性質を調整することができる。
これらの成分は、例えば、特開2012-003225号公報の段落0183~0228(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の[0237]~[0309])、特開2008-250074号公報の段落0101~0104、段落0107~0109、特開2013-195480号公報の段落0159~0184等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0101】
<組成物の調製>
本開示に係る近赤外線吸収性組成物は、上記各成分を混合して調製することができる。
組成物の調製に際しては、組成物を構成する各成分を一括配合してもよいし、各成分を有機溶剤に溶解又は分散した後に逐次配合してもよい。また、配合する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。
本開示においては、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているものであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン-6、ナイロン-6,6等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量を含む)等で構成されたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)及びナイロンが好ましい。
フィルタの孔径は、0.1μm~7.0μmであることが好ましく、0.2μm~2.5μmがより好ましく、0.2μm~1.5μmが更に好ましく、0.3μm~0.7μmが特に好ましい。この範囲とすることにより、ろ過詰まりを抑えつつ、組成物に含まれる不純物や凝集物など、微細な異物を確実に除去することが可能となる。
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、第1のフィルタでのフィルタリングは、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。異なるフィルタを組み合わせて2回以上フィルタリングを行う場合は1回目のフィルタリングの孔径より2回目以降の孔径が同じ、若しくは大きい方が好ましい。また、上述した範囲内で異なる孔径の第1のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)又は株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
第2のフィルタは、上述した第1のフィルタと同様の材料等で形成されたものを使用することができる。第2のフィルタの孔径は、0.2~10.0μmであることが好ましく、0.2~7.0μmがより好ましく、0.3~6.0μmが更に好ましい。この範囲とすることにより、組成物に含有されている成分粒子を残存させたまま、異物を除去することができる。
【0102】
本開示に係る近赤外線吸収性組成物の粘度は、例えば、塗布により近赤外線カットフィルタを形成する場合、1~3000mPa・sの範囲にあることが好ましい。下限は、10mPa・s以上がより好ましく、100mPa・s以上が更に好ましい。上限は、2000mPa・s以下がより好ましく、1500mPa・s以下が更に好ましい。
本開示に係る近赤外線吸収性組成物は、固体撮像素子の受光側における近赤外線カットフィルタ(例えば、ウエハーレベルレンズに対する近赤外線カットフィルタなど)、固体撮像素子の裏面側(受光側とは反対側)における近赤外線カットフィルタなどに用いることもできる。また、本開示に係る近赤外線吸収性組成物を、イメージセンサ上に直接塗布し塗膜形成して用いてもよい。
本開示に係る近赤外線吸収性組成物は、塗布可能な状態で供給できることから、固体撮像素子の所望の部材や位置に近赤外線カットフィルタを容易に形成することができる。
【0103】
<近赤外線吸収性組成物の用途>
本開示に係る近赤外線吸収性組成物は、例えば、(i)特定の近赤外線領域の光を吸収可能な近赤外線カットフィルタ用途、(ii)本開示に係るスクアリリウム色素のみよりも、更に広い波長領域の近赤外線領域の光を吸収可能な近赤外線カットフィルタ用途等に用いることができる。
上記(i)の近赤外線カットフィルタ用途に用いる場合、本開示に係る近赤外線吸収性組成物は、本開示に係るスクアリリウム色素を含有し、かつ、本開示に係るスクアリリウム色素の極大吸収波長とは異なる近赤外線領域に極大吸収波長を有する近赤外線吸収物質を実質的に含まないことが好ましい。ここで、実質的に含まないとは、含有量が本開示に係るスクアリリウム色素の1質量%以下であることをいう。
上記(ii)の近赤外線カットフィルタ用途に用いる場合、本開示に係る近赤外線吸収性組成物は、本開示に係るスクアリリウム色素に加えて、本開示に係るスクアリリウム色素が有する極大吸収波長とは異なる近赤外線領域に極大吸収波長を有する赤外線吸収物質を含むことが好ましい。
【0104】
<硬化膜、近赤外線カットフィルタ>
本開示に係る硬化膜及び本開示に係る近赤外線カットフィルタは、上述した本開示に係る近赤外線吸収性組成物を用いてなるものである。
本開示に係る近赤外線カットフィルタは、光透過率が以下の(1)~(4)のうちの少なくとも1つの条件を満たすことが好ましく、(1)~(4)のすべての条件を満たすことがより好ましい。
(1)波長400nmでの光透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上が更に好ましく、90%以上が特に好ましい。
(2)波長500nmでの光透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。
(3)波長600nmでの光透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。
(4)波長650nmでの光透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。
【0105】
本開示に係る近赤外線カットフィルタの膜厚は、目的に応じて適宜選択することができる。膜厚は、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μ、以下が更に好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
本開示に係る近赤外線カットフィルタは、膜厚200μm以下で、波長400~650nmの全ての範囲での光透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また、波長750~830nmの範囲の少なくとも1点での光透過率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0106】
<近赤外線カットフィルタの用途>
本開示に係る近赤外線カットフィルタは、近赤外線を吸収及びカットする機能を有するレンズ(デジタルカメラや携帯電話や車載カメラ等のカメラ用レンズ、f-θレンズ、ピックアップレンズ等の光学レンズ)及び半導体受光素子用の光学フィルタ、省エネルギー用に熱線を遮断する近赤外線吸収フィルムや近赤外線吸収板、太陽光の選択的な利用を目的とする農業用コーティング剤、近赤外線の吸収熱を利用する記録媒体、電子機器用や写真用近赤外線カットフィルタ、保護めがね、サングラス、熱線遮蔽フィルム、光学文字読み取り記録、機密文書複写防止用、電子写真感光体、レーザー溶着などに用いられる。またCCDカメラ用ノイズカットフィルター、CMOSイメージセンサ用フィルタとしても有用である。
【0107】
<硬化膜及び近赤外線カットフィルタの製造方法>
本開示に係る硬化膜及び本開示に係る近赤外線カットフィルタは、本開示に係る近赤外線吸収性組成物を用いて得られる。具体的には、本開示に係る近赤外線吸収性組成物を支持体に適用することにより膜を形成する工程、膜を乾燥する工程を経て製造することができる。膜厚、積層構造などについては、目的に応じて適宜選択することができる。また、更にパターンを形成する工程を行ってもよい。
【0108】
膜を形成する工程は、例えば、本開示に係る近赤外線吸収性組成物を、支持体に滴下法(ドロップキャスト)、スピンコーター、スリットスピンコーター、スリットコーター、スクリーン印刷、アプリケータ塗布等を用いることにより実施できる。滴下法(ドロップキャスト)の場合、所定の膜厚で、均一な膜が得られるように、支持体上にフォトレジストを隔壁とする組成物の滴下領域を形成することが好ましい。
支持体は、ガラスなどからなる透明基板であってもよい。また、固体撮像素子であってもよい。また、固体撮像素子の受光側に設けられた別の基板であってもよい。また、固体撮像素子の受光側に設けられた平坦化層等の層であっても良い。
膜を乾燥する工程において、乾燥条件としては、各成分、溶剤の種類、使用割合等によっても異なるが、60℃~150℃の温度で30秒間~15分間程度である。
パターンを形成する工程としては、例えば、本開示に係る近赤外線吸収性組成物を支持体上に適用して膜状の組成物層を形成する工程と、組成物層をパターン状に露光する工程と、未露光部を現像除去してパターンを形成する工程とを含む方法などが挙げられる。パターンを形成する工程としては、フォトリソグラフィ法でパターンを形成してもよいし、ドライエッチング法でパターンを形成してもよい。
近赤外線カットフィルタの製造方法は、その他の工程を含んでいても良い。その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、基材の表面処理工程、前加熱工程(プリベーク工程)、硬化処理工程、後加熱工程(ポストベーク工程)などが挙げられる。
【0109】
<<前加熱工程・後加熱工程>>
前加熱工程及び後加熱工程における加熱温度は、80~200℃であることが好ましい。上限は150℃以下がより好ましい。下限は90℃以上がより好ましい。
前加熱工程及び後加熱工程における加熱時間は、30~240秒であることが好ましい。上限は180秒以下がより好ましい。下限は60秒以上がより好ましい。
【0110】
<<硬化処理工程>>
硬化処理工程は、必要に応じ、形成された上記膜に対して硬化処理を行う工程であり、この処理を行うことにより、近赤外線カットフィルタの機械的強度が向上する。
上記硬化処理工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、全面露光処理、全面加熱処理などが好適に挙げられる。本発明において「露光」とは、各種波長の光の照射のみならず、電子線、X線などの放射線照射をも包含する意味で用いられる。
露光は放射線の照射により行うことが好ましく、露光に際して用いることができる放射線としては、特に、電子線、KrF、ArF、g線、h線、i線等の紫外線や可視光が好ましく用いられる。
露光方式としては、ステッパー露光や、高圧水銀灯を用いた露光などが挙げられる。
露光量は5mJ/cm~3,000mJ/cmであることが好ましい。上限は、2,000mJ/cm以下がより好ましく、1,000mJ/cm以下が更に好ましい。下限は、10mJ/cm以上がより好ましく、50mJ/cm以上が更に好ましい。
全面露光処理の方法としては、例えば、形成された上記膜の全面を露光する方法が挙げられる。本開示に係る近赤外線吸収性組成物が重合性化合物を含有する場合、全面露光により、膜中の重合成分の硬化が促進され、膜の硬化が更に進行し、機械的強度、耐久性が改良される。
全面露光を行う装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、超高圧水銀灯などの紫外線(UV)露光機が好適に挙げられる。
全面加熱処理の方法としては、形成された上記膜の全面を加熱する方法が挙げられる。全面加熱により、パターンの膜強度が高められる。
全面加熱における加熱温度は、100~260℃が好ましい。下限は120℃以上がより好ましく、160℃以上が更に好ましい。上限は240℃以下がより好ましく、220℃以下が更に好ましい。加熱温度が上記範囲であれば、強度に優れた膜が得られやすい。
全面加熱における加熱時間は、1~180分が好ましい。下限は3分以上がより好ましく、5分以上が更に好ましい。上限は120分以下がより好ましい。
全面加熱を行う装置としては、特に制限はなく、公知の装置の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ドライオーブン、ホットプレート、赤外線ヒーターなどが挙げられる。
【0111】
<固体撮像素子、赤外線センサ>
本開示に係る固体撮像素子は、本開示に係る近赤外線吸収性組成物を用いてなる硬化膜を含む。
また、本開示に係る赤外線センサは、本開示に係る近赤外線吸収性組成物を用いてなる硬化膜を含む。
本開示に係る赤外線センサの一実施形態としては、固体撮像素子上に設けられている撮像領域は、近赤外線カットフィルタとカラーフィルタを有する態様が挙げられる。近赤外線カットフィルタは、例えば、本開示に係る近赤外線吸収性組成物を用いて形成できる。
また、本開示に係る固体撮像素子及び赤外線センサとしては、例えば、国際公開第2016/136783号に記載の固体撮像素子及び赤外線センサを参照することができる。
また、本開示に係る赤外線センサとしては、例えば、撮像装置において、モーションセンサ、近接センサ、ジェスチャーセンサなどに用いることができる。
更に、上記撮像装置には、固体撮像素子と上述した近赤外線カットフィルタとを有するカメラモジュールを組み込むことができる。
【0112】
<他の着色化合物>
本開示に係る分散物及び本開示に係る近赤外線吸収性組成物は、本開示に係るスクアリリウム色素以外の他の着色化合物(顔料、染料等)を含んでいてもよい。
他の着色化合物は、染料であってもよく、顔料であってもよい。顔料は顔料分散物などの固体粒子分散物として含まれてもよい。また、既存の色素でも、新規に合成した色素でもよい。
【0113】
染料としては、例えば、アントラキノン系(例えば、特開2001-108815号公報記載のアントラキノン化合物)、フタロシアニン系(例えば、米国特許第2008/0076044号明細書記載のフタロシアニン化合物)、キサンテン系(例えば、シー・アイ・アシッド・レッド289(C.I.Acid.Red 289))、トリアリールメタン系(例えば、シー・アイ・アシッドブルー7(C.I.Acid Blue7)、シー・アイ・アシッドブルー83(C.I.Acid Blue83)、シー・アイ・アシッドブルー90(C.I.Acid Blue90)、シー・アイ・ソルベント・ブルー38(C.I.Solvent Blue38)、シー・アイ・アシッド・バイオレット17(C.I.Acid Violet17)、シー・アイ・アシッド・バイオレット49(C.I.Acid Violet49)、シー・アイ・アシッド・グリーン3(C.I.Acid Green3)、スクアリリウム系、ピラゾールアゾ系、メチン系、ピラゾロンアゾ系、バルビツールアゾ系、などが挙げられる。
【0114】
直接染料としては、C.I.ダイレクイトブラック17、19、22、31、32、38、51、62、71、74、112、113、154、168、
C.I.ダイレクイトイエロー4、8、11、12、26、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、
C.I.ダイレクイトレッド1、2、4、9、11、20、23、24、31、37、39、46、62、75、79、80、81、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、230、
C.I.ダイレクイトブルー1、15、22、25、41、71、76、77、80、86、90、98、106、108、199、120、158、163、168、199、226等が挙げられる。
【0115】
酸性染料としては、C.I.アシッドブラック1、2、24、26、31、48、51、52、107、109、110、115、119、154、156、
C.I.アシッドイエロー1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、49、61、72、78、110、135、127、141、142、
C.I.アシッドレッド6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、37、42、51、52、57、80、82、83、87、89、92、94、106、111、114、115、129、131、133、134、138、145、158、186、198、249、254、265、276、289、
C.I.アシッドバイオレット15、17、49、
C.I.アシッドブルー1、7、9、15、22、23、25、29、40、41、43、59、62、74、78、80、83、90、93、100、102、103、104、112、113、117、127、138、158、161、
C.I.アシッドグリーン3、9、16、25、27等が挙げられる。
塩基性染料としては、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、38、39、92、
C.I.ベーシックブルー1、3、7、5、9、19、24、25、26、28、45、54、65、
C.I.ベーシックブラック2、8等が挙げられる。
【0116】
油溶性染料としては、ニグロシン系、アジン系、モノアゾ系、ジスアゾ系、金属錯塩型モノアゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、トリアリールメタン系等の油溶性染料、油溶性造塩染料、油溶性含金染料を用いることができる。
油溶性染料としては、
ニグロシンベースEE、EEL、EX、EXBP、EB、
オイルイエロー105、107、
オイルピンク312、
オイルスカーレット318、
オイルブラウンBB、GR、416、
オイルグリーンBG、オイルブルー613、BOS、
オイルブラックHBB、860、BS、
バリファストイエロー1101、1105、3108、4120、4121、
バリファストオレンジ2210、3209、3210、
バリファストレッド1306、1308、1355、1360、2303、2320、3304、3306、3320、
バリファストピンク2310N、
バリファストブラウン2402、3405、
バリファストグリーン1501、
バリファストブルー1603、1605、1631、2606、2610、2620、
バリファストバイオレット1701、1702、
バリファストブラック1807、3804、3806、3808、3810、3820、3830、
オスピーイエローRY、ROB-B、MVB3、SPブルー105(以上、オリエント化学工業(株)製)、
アイゼンスピロンイエロー3RH、GRLHスペシャル、C-2GH、C-GNH、
アイゼンスピロンオレンジ2RH、GRHコンクスペシャル、
アイゼンスピロンレッドGEH、BEH、GRLHスペシャル、C-GH、C-BH、
アイゼンスピロンバイオレットRH、C-RH、
アイゼンスピロンブラウンBHコンク、RH、
アイゼンスピロンマホガニーRH、
アイゼンスピロンブルーGNH、2BNH、C-RH、BPNH、
アイゼンスピロングリーンC-GH、
アイゼンスピロンブラックBNH、MH、RLH、GMHスペシャル、BHスペシャル、
S.B.N.オレンジ703、
S.B.N.バイオレット510、521、
S.P.T.オレンジ6、
S.P.T.ブルー111、
SOTピンク1、
SOTブルー4、
SOTブラック1、6、10、12、13リキッド、
アイゼンローダミンBベース、アイゼンメチルバイオレットベース、アイゼンビクトリアブルーBベース(以上、保土谷化学工業(株)製)、
オイルイエローCH、
オイルピンク330、
オイルブルー8B、
オイルブラックS、FSスペシャルA、2020、109、215、
ALイエロー1106D、3101、
ALレッド2308、
ネオスーパーイエローC-131、C-132、C-134、
ネオスーパーオレンジC-233、
ネオスーパーレッドC-431、
ネオスーパーブルーC-555、
ネオスーパーブラウンC-732、C-733、(以上、中央合成化学(株)製)などが挙げられる。
その他、天然色素、食用色素、植物色素などの染料を用いることができる。
【0117】
顔料としては、従来公知の有機顔料及び無機顔料を使用することができる。
顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ・チオインジゴ系、ベリノン・ベリレン系、イソインドレノン系、アゾメチレンアゾ系などの有機顔料、カーボンブラック、チタン白などの無機顔料、着色樹脂エマルジョン、パール顔料、アルミニウム顔料、光輝性顔料、蓄光顔料、蛍光顔料などを用いることができる。
【0118】
顔料化合物としては、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アントアントロン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合、ジスアゾ、アゾ、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、ジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、インジゴ、チオインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロン、イソビオラントロン等が挙げられる。
【0119】
更に詳しくは、例えば、ピグメントレッド190、ピグメントレッド224、ピグメントバイオレット29等のペリレン化合物顔料、ピグメントオレンジ43、若しくはピグメントレッド194等のペリノン化合物顔料、ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット42、ピグメントレッド122、ピグメントレッド192、ピグメントレッド202、ピグメントレッド207、若しくはピグメントレッド209のキナクリドン化合物顔料、ピグメントレッド206、ピグメントオレンジ48、若しくはピグメントオレンジ49等のキナクリドンキノン化合物顔料、ピグメントイエロー147等のアントラキノン化合物顔料、ピグメントレッド168等のアントアントロン化合物顔料、ピグメントブラウン25、ピグメントバイオレット32、ピグメントオレンジ36、ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー181、ピグメントオレンジ62、若しくはピグメントレッド185等のベンズイミダゾロン化合物顔料、ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー94、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー166、ピグメントオレンジ34、ピグメントオレンジ13、ピグメントオレンジ31、ピグメントレッド144、ピグメントレッド166、ピグメントレッド220、ピグメントレッド221、ピグメントレッド242、ピグメントレッド248、ピグメントレッド262、若しくはピグメントブラウン23等のジスアゾ縮合化合物顔料、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー83、若しくはピグメントイエロー188等のジスアゾ化合物顔料、ピグメントレッド187、ピグメントレッド170、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー150、ピグメントレッド48、ピグメントレッド53、ピグメントオレンジ64、若しくはピグメントレッド247等のアゾ化合物顔料、ピグメントブルー60等のインダントロン化合物顔料、ピグメントグリーン7、ピグメントグリーン36、ピグメントグリーン37、ピグメントグリーン58、ピグメントブルー16、ピグメントブルー75、若しくはピグメントブルー15等のフタロシアニン化合物顔料、ピグメントブルー56、若しくはピグメントブルー61等のトリアリールカルボニウム化合物顔料、ピグメントバイオレット23、若しくはピグメントバイオレット37等のジオキサジン化合物顔料、ピグメントレッド177等のアミノアントラキノン化合物顔料、ピグメントレッド254、ピグメントレッド255、ピグメントレッド264、ピグメントレッド272、ピグメントオレンジ71、若しくはピグメントオレンジ73等のジケトピロロピロール化合物顔料、ピグメントレッド88等のチオインジゴ化合物顔料、ピグメントイエロー139、ピグメントオレンジ66等のイソインドリン化合物顔料、ピグメントイエロー109、若しくはピグメントオレンジ61等のイソインドリノン化合物顔料、ピグメントオレンジ40、若しくはピグメントレッド216等のピラントロン化合物顔料、又はピグメントバイオレット31等のイソビオラントロン化合物顔料が挙げられる。
【0120】
顔料は、そのまま本開示に係る分散物又は本開示に係る近赤外線吸収性組成物に含有させてもよく、また、分散物を調製して顔料分散物として含有させてもよい。
他の着色化合物として顔料を使用する場合、顔料の分散方法及び好ましい粒子径などは、既述の近赤外吸収色素における顔料の例と同様である。
【0121】
顔料は、公知の樹脂、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン-アクリル酸共重合体、及び、それらの金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩などに練り込んで加工顔料としてもよく、樹脂に練り込んだ加工顔料は、溶剤と混合する際に容易に分散するため好ましい。
加工顔料は、既に分散剤中に顔料を練り込んである市販の加工顔料を用いてもよい。使用可能な市販の加工顔料としては、具体的には、MICROLITHYellow3G-WA、MICROLITHYellow2R-WA、MICROLITHScarletR-WA、MICROLITHBlue4G-WA、MICROLITHYellow2R-A、MICROLITHScarletR-A、MICROLITHBlue4G-A(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、EMYELLOWFX-3024、EMSCARLET2YD、EMGREENG、EMPINK2B、EMBLUE2G(以上、東洋インキ(株)製)、SANDYESUPERYELLOW1608、SANDYESUPERYELLOWD215、SANDYESUPERBLUEGLL、SANDYESUPERCARMINEFB(以上、山陽色素(株)製)等を例示することができる。
【0122】
本開示に係る分散物及び本開示に係る近赤外線吸収性組成物は、他の着色化合物を1種単独で含んでもよく、目的に応じて2種以上を含んでいてもよい。
なお、他の着色化合物としては、特定赤外線吸収色素との関連、及び、分光の観点、及び、堅牢性がより高いといった観点から、フタロシアニン、トリアリールメタン、スクアリリウム、アゾ、金属錯塩型アゾ、メチン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、ベンズイミダゾロン、ジオキサジン、ジケトピロロピロール、イソインドリン、カーボンブラック、チタンなどから選ばれる色素が好ましい。
【0123】
本開示に係る分散物及び本開示に係る近赤外線吸収性組成物における他の着色化合物の含有量には特に制限はなく、分散物又は近赤外線吸収性組成物の使用目的、必要な色相、発色濃度により適宜決定することができる。
他の着色化合物の含有量は、本開示に係る分散物及び本開示に係る近赤外線吸収性組成物の全量に対して、0.01質量%~50質量%が好ましく、0.1質量%~30質量%がより好ましく、0.5質量%~20質量%が更に好ましい。
他の着色化合物の含有量が上記範囲において、より鮮明な発色を得ることができ、取り扱い性が良好な物性を得易い。
【0124】
本開示に係るスクアリリウム色素と他の着色化合物との含有比率には特に制限はなく、分散物又は近赤外線吸収性組成物の使用目的、必要な色相、発色濃度により適宜決定することができる。
本開示に係る分散物又は本開示に係る近赤外線吸収性組成物において、本開示に係るスクアリリウム色素(IR)と他の着色化合物(CL)との含有比率(IR/CL)は、質量比で、1/1000~1/1が好ましく、1/1000~1/2がより好ましく、1/500~1/2が更に好ましく、1/200~1/2が特に好ましい。
本開示に係るスクアリリウム色素と他の着色化合物との含有比率が上記範囲において、他の着色化合物の色相が、より再現し易いという利点を有する。
【0125】
<インクジェット記録用インク>
本開示に係るインクジェット記録用インク(以下、単に「インク」ともいう。)は、本開示に係るスクアリリウム色素を含む。
本開示に係るスクアリリウム色素の含有量は、インクの全量に対して、0.1質量%~20質量%が好ましく、0.1質量%~10質量%がより好ましく、0.3質量%~7質量%が更に好ましい。
また、本開示に係るインクは、重合性モノマー、及び、重合開始剤を含むことが好ましい。
【0126】
<重合性モノマー>
本開示に係るインクは、重合性モノマーを含有することが好ましい。
本開示において、重合性モノマーは、インクに含有され得る全ての重合性モノマーを意味する。
重合性モノマーは、1種のみの重合性モノマーであってもよいし、2種以上の重合性モノマーであってもよい。
【0127】
本開示において、モノマーとは、分子量が1000未満の化合物のことをいう。重合性モノマーとは、重合性基を有し、かつ、分子量が1000未満の化合物のことをいう。
【0128】
重合性モノマーの分子量は、100以上1000未満であることが好ましく、100~800であることがより好ましく、150~700であることがさらに好ましい。重合性モノマーの分子量は、重合性モノマーを構成する原子の種類及び数から算出される。
【0129】
重合性モノマーとしては、光の照射によって重合反応が進行する光重合性モノマー、及び、加熱又は赤外線の照射によって重合反応が進行する熱重合性モノマーが挙げられる。光重合性モノマーとしては、ラジカル重合可能なラジカル重合性基を有する重合性モノマー(すなわち、ラジカル重合性モノマー)、及びカチオン重合可能なカチオン重合性基を有する重合性モノマー(すなわち、カチオン重合性モノマー)が挙げられる。中でも、重合性モノマーは、光重合性モノマーであることが好ましく、ラジカル重合性モノマーであることがより好ましい。
【0130】
ラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合性基としてエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和モノマーであることが好ましい。
エチレン性不飽和モノマーとしては、単官能エチレン性不飽和モノマー及び多官能エチレン性不飽和モノマーが挙げられる。
【0131】
単官能エチレン性不飽和モノマーとは、エチレン性不飽和基を1つ有するモノマーであり、例えば、単官能(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリルアミド、単官能芳香族ビニル化合物、単官能ビニルエーテル及び単官能N-ビニル化合物が挙げられる。
【0132】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert-オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-n-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-クロロエチル(メタ)アクリレート、4-ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-(2-メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2-テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5-テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4-クロロフェニル(メタ)アクリレート、2-フェノキシメチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシヘキサヒドロフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性フェノー
ル(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(PO)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性-2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(3-エチル-3-オキセタニルメチル)(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、及び環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0133】
単官能(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
【0134】
単官能芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、3-プロピルスチレン、4-プロピルスチレン、3-ブチルスチレン、4-ブチルスチレン、3-ヘキシルスチレン、4-ヘキシルスチレン、3-オクチルスチレン、4-オクチルスチレン、3-(2-エチルヘキシル)スチレン、4-(2-エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4-t-ブトキシカルボニルスチレン及び4-t-ブトキシスチレンが挙げられる。
【0135】
単官能ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4-メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2-ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル及びフェノキシポリエチレングリコールビニルエーテルが挙げられる。
【0136】
単官能N-ビニル化合物としては、例えば、N-ビニル-ε-カプロラクタム及びN-ビニルピロリドンが挙げられる。
【0137】
単官能エチレン性不飽和化合物は、硬化性向上の観点から、環構造を有する化合物であることが好ましい。環構造を有する単官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-n-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、ボルニル(メタ)アクリ
レート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5-テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4-クロロフェニル(メタ)アクリレート、2-フェノキシメチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(3-エチル-3-オキセタニルメチル)(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート等の環構造を有する単官能(メタ)アクリレート;
単官能芳香族ビニル化合物;
シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4-メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2-ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等の環構造を有する単官能ビニルエーテル;
N-ビニル-ε-カプロラクタム、N-ビニルピロリドン等の環構造を有する単官能N-ビニル化合物が挙げられる。
【0138】
多官能エチレン性不飽和モノマーとは、エチレン性不飽和基を2つ以上有するモノマーであり、例えば、多官能(メタ)アクリレート及び多官能ビニルエーテルが挙げられる。
【0139】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート及
び2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0140】
多官能ビニルエーテルとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、EO付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、PO付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、EO付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、PO付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、EO付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、PO付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、EO付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル及びPO付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルが挙げられる。
【0141】
多官能エチレン性不飽和モノマーは、硬化性向上の観点から、酸素原子を有する化合物であることが好ましく、1分子中に含まれる炭素原子数に対する酸素原子数の比率が0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。比率の上限値は特に限定されないが、例えば、0.5である。1分子中に含まれる炭素原子数に対する酸素原子数の比率が0.2以上である化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレートが挙げられる。
【0142】
また、重合性モノマーは、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品であってもよい。
【0143】
本開示に係るインクは、重合性モノマーとして、多官能重合性モノマーを含むことが好ましく、単官能重合性モノマー及び多官能重合性モノマーを含むことがより好ましい。インクに多官能重合性モノマーを含有させることにより、硬化性に優れる画像を記録することができる。また、インクに多官能重合性モノマーを含有させることにより、画像記録物から未反応の重合性モノマーが外部へ転着する現象(いわゆるマイグレーション)を抑制することができる。特に、基材における安全性が厳格に要求される食品包装分野及び化粧品包装分野において、包装材料へ適用可能であるという点で優れる。
【0144】
インクに含まれる重合性モノマーに占める多官能重合性モノマーの割合は、硬化性の観点から、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。
また、インクに含まれる重合性モノマーに占める多官能重合性モノマーの割合の上限値は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0145】
インクに含まれる重合性モノマーに占める単官能重合性モノマーの割合は、近赤外線吸収画像のアルコール耐性をより向上させる観点から、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
また、インクに含まれる重合性モノマーに占める単官能重合性モノマーの割合は、0質
量%であってもよい。
【0146】
本開示に係るインクの全量中に占める重合性モノマーの割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上である。
本開示に係るインクの全量中に占める重合性モノマーの上限は、他の成分の量にもよるが、例えば、95質量%、90質量%等である。
【0147】
本開示において、重合性モノマーは、擦過試験後の読み取り性、及び耐溶剤性を向上させる観点から、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。特に、重合性モノマーに占める、ガラス転移温度が30℃以上である重合性モノマーの割合は、90質量%以上であることが好ましく、92質量%以上であることがより好ましい。上記割合の上限値は特に限定されず、例えば、100質量%である。重合性モノマーに占める、ガラス転移温度が30℃以上である重合性モノマーの割合が90質量%以上であると、擦過試験後の読み取り性がより向上する。Tgが30℃以上である重合性モノマーとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる(Tg:97℃)。
【0148】
なお、重合性モノマーのガラス転移温度(Tg)とは、当該重合性モノマー(A)がホモポリマーである場合のガラス転移温度を意味する。重合性モノマー(A)に、任意の重合開始剤を添加して、重量平均分子量10000~20000のホモポリマーを得る。重量平均分子量10000~20000のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)を、重合性モノマー(A)のガラス転移温度として採用する。ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は、重量平均分子量によって変化するが、重量平均分子量が10000~20000の範囲において、重量平均分子量の差によるTgの変動は無視できる程度である。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された値を意味する。GPCによる測定は、測定装置として、HLC(登録商標)-8020GPC(東ソー社製)を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)Super Multipore HZ-H(4.6mmID×15cm、東ソー社製)を3本用い、溶離液として、THF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、測定は、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、及び測定温度を40℃とし、示差屈折率(RI)検出器を用いて行う。検量線は、東ソー社製の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-40」、「F-20」、「F-4」、「F-1」、「A-5000」、「A-2500」、「A-1000」、及び「n-プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
【0149】
ガラス転移温度(Tg)は、ASTMD3418-8に準拠して、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される。例えば、ガラス転移温度(Tg)は、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製の示差走査熱量計(製品名「EXSTAR6220」)を用いて通常の測定条件にて測定される。
【0150】
<重合開始剤>
本開示に係るインクは、重合開始剤を含有することが好ましい。
本開示において、重合開始剤は、インクに含有され得る全ての重合開始剤を意味する。
重合開始剤は、1種のみの化合物であってもよいし、2種以上の化合物であってもよい。
本開示に係るインクにおける重合性モノマーがラジカル重合性モノマーを含む場合に、重合開始剤はラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。
【0151】
ラジカル重合開始剤としては、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィン化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
【0152】
アシルホスフィンオキシド化合物としては、モノアシルホスフィンオキシド化合物及びビスアシルホスフィンオキシド化合物が挙げられ、ビスアシルホスフィンオキシド化合物が好ましい。
【0153】
モノアシルホスフィンオキシド化合物としては、例えば、イソブチリルジフェニルホスフィンオキシド、2-エチルヘキサノイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキシド、o-トルイルジフェニルホスフィンオキシド、p-t-ブチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、3-ピリジルカルボニルジフェニルホスフィンオキシド、アクリロイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ピバロイルフェニルホスフィン酸ビニルエステル、アジポイルビスジフェニルホスフィンオキシド、ピバロイルジフェニルホスフィンオキシド、p-トルイルジフェニルホスフィンオキシド、4-(t-ブチル)ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、テレフタロイルビスジフェニルホスフィンオキシド、2-メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、バーサトイルジフェニルホスフィンオキシド、2-メチル-2-エチルヘキサノイルジフェニルホスフィンオキシド、1-メチル-シクロヘキサノイルジフェニルホスフィンオキシド、ピバロイルフェニルホスフィン酸メチルエステル及びピバロイルフェニルホスフィン酸イソプロピルエステルが挙げられる。
【0154】
ビスアシルホスフィンオキシド化合物としては、例えば、ビス(2,6-ジクロロベン
ゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-2-ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-クロロフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,4-ジメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)デシルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-オクチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロ-3,4,5-トリメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロ-3,4,5-トリメトキシベンゾイル)-4-エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2-メチル-1-ナフトイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2-メチル-1-ナフトイル)-4-エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2-メチル-1-ナフトイル)-2-ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2-メチル-1-ナフトイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2-メチル-1-ナフトイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2-メトキシ-1-ナフトイル)-4-エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2-クロロ-1-ナフトイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド及びビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドが挙げられる。
【0155】
中でも、アシルホスフィンオキシド化合物は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(製品名「Omnirad 819」、IGM Resins B.V.社製)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(製品名「Omnirad TPO H」、IGM Resins B.V.社製)又は(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキシド(製品名「Omnirad TPO-L」、IGM Resins B.V.社製)が好ましい。
【0156】
チオキサントン化合物としては、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-ドデシルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-メトキシカルボニルチオキサントン、2-エトキシカルボニルチオキサントン、3-(2-メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4-ブトキシカルボニルチオキサントン、3-ブトキシカルボニル-7-メチルチオキサントン、1-シアノ-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-エトキシチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-アミノチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-フェニルスルフリルチオキサントン、3,4-ジ[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-(1-メチル-1-モルホリノエチル)チオキサントン、2-メチル-6-ジメトキシメチルチオキサントン、2-メチル-6-(1,1-ジメトキシベンジル)チオキサントン、2-モルホリノメチルチオキサントン、2-メチル-6-モルホリノメチルチオキサントン、n-アリルチオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、n-オクチルチオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、N-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)チオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、1-フェノキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メトキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メチルチオキサントン、チオキサントン-2-ポリエチレングリコールエステル、及び2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9
H-チオキサントン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリドが挙げられる。
【0157】
チオキサントン化合物は、市販品であってもよい。市販品としては、Lambson社製のSPEEDCUREシリーズ(例:SPEEDCURE 7010、SPEEDCURE 7010L、SPEEDCURE CPTX、SPEEDCURE ITX等)が挙げられる。
【0158】
重合開始剤の含有量は、近赤外線吸収画像のアルコール耐性をより向上させる観点から、インクの全量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。重合開始剤の含有量の上限値は特に限定されないが、例えば、30質量%である。
【0159】
重合開始剤がアシルホスフィンオキシド化合物を含む場合、アシルホスフィンオキシド化合物の含有量は、近赤外線吸収画像のアルコール耐性をより向上させる観点から、インクの全量に対して5質量%~15質量%であることが好ましく、8質量%~12質量%であることがより好ましい。
【0160】
重合開始剤がチオキサントン化合物を含む場合、チオキサントン化合物の含有量は、近赤外線吸収画像のアルコール耐性をより向上させる観点から、インクの全量に対して0.5質量%~5質量%であることが好ましく、1質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0161】
<分散剤>
本開示に係るインクは、分散剤を少なくとも1種含有することが好ましい。
分散剤は、近赤外線吸収色素(D)を分散させる機能を有する。
【0162】
分散剤の重量平均分子量は、100000以下であることが好ましく、75000以下であることがより好ましく、50000以下であることがさらに好ましい。分散剤の重量平均分子量が100000以下であると、分散媒中への分散剤の拡散速度が向上するため、読み取り性に優れた画像記録物が得られる。
分散剤の重量平均分子量は、1000以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましく、3000以上であることがさらに好ましい。分散剤の重量平均分子量が1000以上であると、分散媒との相溶性が高くなりすぎず、分散剤によって式1で表される近赤外線吸収色素を安定に分散させることができる。
【0163】
分散剤は、ポリマーであることが好ましく、ポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、及びグラフトポリマーのいずれであってもよい。
【0164】
中でも、経時後の読み取り性の観点から、分散剤はブロックポリマーであることが好ましい。ブロックポリマーは、例えば、式1で表される近赤外線吸収色素へ吸着する吸着基を有する吸着ブロックと、分散媒と親和性のある官能基を有する分散媒親和ブロックとを有する。ブロックポリマーでは、吸着基の遮蔽性が低く、運動性が高いことから、式1で表される近赤外線吸収色素への吸着速度が速い。そのため、分散剤がブロックポリマーであると、読み取り性がより向上する。また、ブロックポリマーでは、吸着基が集まっているため、式1で表される近赤外線吸収色素に対する吸着力が高い。そのため、分散剤がブロックポリマーであると、経時後の読み取り性がより向上する。
【0165】
分散剤は、塩基性官能基又は酸性官能基を有することが好ましい。後述する顔料誘導体をインクに含有させる場合には、塩基性官能基を有する分散剤と、酸性官能基を有する顔料誘導体との組み合わせ、又は、酸性官能基を有する分散剤と、塩基性官能基を有する顔料誘導体との組み合わせが好ましい。塩基性官能基を有する分散剤と、酸性官能基を有する顔料誘導体とを組み合わせてインクに含有させると、酸塩基相互作用によって顔料誘導体が分散剤に吸着しやすい。同様に、酸性官能基を有する分散剤と、塩基性官能基を有す
る顔料誘導体とを組み合わせてインクに含有させると、酸塩基相互作用によって顔料誘導体が分散剤に吸着しやすい。分散剤同士の立体反発によって、式1で表される近赤外線吸収色素をインク中で安定に分散させることができ、経時安定性が向上する。その結果、経時後の読み取り性が向上する。
【0166】
塩基性官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基及びイミノ基が挙げられる。分散剤は、塩基性官能基を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0167】
酸性官能基としては、例えば、カルボキシ基及びスルホ基が挙げられる。分散剤は、酸性官能基を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0168】
分散剤が塩基性官能基を有する分散剤である場合には、読み取り性及び経時後の読み取り性を向上させる観点から、分散剤の塩基価は15mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上であることがより好ましく、25mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。分散剤の塩基価の上限値は特に限定されないが、例えば、40mgKOH/gである。
【0169】
本開示において、塩基価は、JIS K 2501:2003によって規定された過塩素酸法によって測定される値である。なお、塩基価とは、試料1g中に含まれる全塩基性成分を中和するのに要する塩酸又は過塩素酸と当量の水酸化カリウムのミリグラム(mg)数として得られる。
【0170】
分散剤が酸性官能基を有する分散剤である場合には、読み取り性及び経時後の読み取り性を向上させる観点から、分散剤の酸価は15mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上であることがより好ましく、25mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。分散剤の酸価の上限値は特に限定されないが、例えば、40mgKOH/gである。
【0171】
本開示において、酸価は、JIS K0070:1992に記載の方法によって測定される値である。なお、酸価とは、試料1g中に含まれる全酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム(mg)数として得られる。
【0172】
分散剤は、市販品であってもよい。市販品としては、例えば、ルーブリゾール社のSOLSPERSE(登録商標)シリーズ(例:SOLSPERSE 16000、21000、32000、35000、41000、41090、43000、44000、46000、54000、55000、71000等)、BYK社のDISPERBYK(登録商標)シリーズ(例:DISPERBYK 102、110、111、118、170、190、194N、2001、2013、2015、2090、2096等)、エボニック社のTEGO(登録商標)Dispersシリーズ(例:TEGO Dispers
610、610S、630、651、655、750W、755W等)、楠本化成社のディスパロン(登録商標)シリーズ(例:DA-375、DA-1200等)、共栄化学工業社のフローレンシリーズ(例:WK-13E、G-700、G-900、GW-1500、GW-1640、WK-13E等)、BASF社のEFKA(登録商標)シリーズ(
例:EFKA PX 4701、EFKA PX 4731、EFKA PX 4732等)が挙げられる。
【0173】
分散剤の含有量は、読み取り性及び経時後の読み取り性を向上させる観点から、インクの全量に対して0.7質量%~5質量%であることが好ましく、0.8質量%~4質量%であることがより好ましい。
【0174】
本開示に係るスクアリリウム色素の含有量に対する分散剤の含有量の比率は、質量基準で0.1~20であることが好ましく、0.2~5であることがより好ましく、0.5~5であることがさらに好ましい。
【0175】
<顔料誘導体>
本開示に係るインクは、更に、顔料誘導体を少なくとも1種含有することが好ましい。
【0176】
顔料誘導体とは、分子内に顔料に由来する構造を有し、分子量が1000未満の化合物である。
【0177】
インクに顔料誘導体が含まれていると、顔料誘導体と、式1で表される近赤外線吸収色素との間でπ-π相互作用が働き、顔料誘導体と分散剤との間で酸塩基相互作用が働く。そのため、式1で表される近赤外線吸収色素が分散剤によって、より安定に分散され、インクの経時安定性が向上する。その結果、経時後の読み取り性が向上する。
【0178】
顔料誘導体は、塩基性官能基又は酸性官能基を有することが好ましい。
【0179】
塩基性官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基及びイミノ基が挙げられる。顔料誘導体は、塩基性官能基を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0180】
酸性官能基としては、例えば、カルボキシ基及びスルホ基が挙げられる。顔料誘導体は、酸性官能基を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0181】
インクに含まれる顔料誘導体は1種であってもよく2種以上であってもよい。
顔料誘導体の含有量は、読み取り性及び経時後の読み取り性を向上させる観点から、インクの全量に対して0.005質量%~0.1質量%であることが好ましい。
【0182】
顔料誘導体の含有量は、読み取り性及び経時後の読み取り性を向上させる観点から、式1で表される近赤外線吸収色素の全量に対して0.12質量%~15質量%であることが好ましく、0.15質量%~12質量%であることがより好ましい。
【0183】
本開示に係るインクは、以下の他の成分を更に含有してもよい。
【0184】
<重合禁止剤>
本開示に係るインクは、重合禁止剤を含むことが好ましい。インクに含まれる重合禁止剤は1種であってもよく2種以上であってもよい。
【0185】
重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン化合物、フェノチアジン、カテコール類、アルキルフェノール類、アルキルビスフェノール類、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、サリチル酸銅、チオジプロピオン酸エステル、メルカプトベンズイミダゾール、ホスファイト類、ニトロソアミン化合物、ヒンダードアミン化合物、及びニトロキシルラジカルが挙げられる。
【0186】
中でも、重合禁止剤は、ニトロソアミン化合物、ヒンダードアミン化合物、ヒドロキノン化合物及びニトロキシルラジカルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ニトロソアミン化合物、ヒドロキノン化合物及びニトロキシルラジカルからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ニトロソアミン化合物、ヒドロキノン化合物及びニトロキシルラジカルを含むことがさらに好ましい。
【0187】
ニトロソアミン化合物としては、例えば、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩及びN-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンが挙げられる。中でも、ニトロソアミン化合物は、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩であることが好ましい。
【0188】
ヒンダードアミン化合物は、分子内にヒンダードアミン構造を有する化合物である。ヒンダードアミン化合物としては、特開昭61-91257号公報に記載されている化合物が挙げられる。中でも、ヒンダードアミン化合物は、ピペリジンの2位及び6位の炭素上の全ての水素がメチル基で置換された構造を有する2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの誘導体であることが好ましい。ヒンダードアミン化合物としては、例えば、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン及び1-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシエチル)-4-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンが挙げられる。
【0189】
ヒドロキノン化合物としては、例えば、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、t-ブチルヒドロキノン、及び、p-メトキシフェノールが挙げられる。中でも、ヒドロキノン化合物は、p-メトキシフェノールであることが好ましい。
【0190】
ニトロキシルラジカルとしては、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)及び2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル(TEMPOL)が挙げられる。中でも、ニトロキシルラジカルは、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル(TEMPOL)であることが好ましい。
【0191】
重合禁止剤の含有量は、インクの経時安定性を向上させる観点から、インクの全量に対して1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましい。重合禁止剤の含有量の上限値は特に限定されないが、重合性の観点から、5質量%であることが好ましい。
【0192】
重合禁止剤がニトロソアミン化合物を含む場合、ニトロソアミン化合物の含有量は、インクの経時安定性を向上させる観点から、インクの全量に対して0.5質量%~5質量%であることが好ましく、0.5質量%~2質量%であることがより好ましい。
【0193】
重合禁止剤がヒドロキノン化合物を含む場合、ヒドロキノン化合物の含有量は、インクの経時安定性を向上させる観点から、インクの全量に対して0.1質量%~5質量%であることが好ましく、0.5質量%~2質量%であることがより好ましい。
【0194】
<増感剤>
本開示に係るインクが重合開始剤を含む場合、重合開始剤と共に増感剤を含有してもよい。インクが増感剤を含有すると、硬化性が向上し、特にLED光源を用いた場合の硬化性が向上する。また、増感剤は、インクの耐光性の向上にも寄与する。
【0195】
増感剤は、特定の活性エネルギー線を吸収して電子励起状態となる物質である。電子励起状態となった増感剤は、光重合開始剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱等の作用を生じる。これにより、光重合開始剤の化学変化が促進される。
【0196】
増感剤としては、例えば、4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル(EDB)、アントラキノン、3-アシルクマリン誘導体、ターフェニル、スチリルケトン、3-(アロイルメチレン)チアゾリン、ショウノウキノン、エオシン、ローダミン、エリスロシン、特開2010-24276号公報に記載の一般式(i)で表される化合物、及び特開平6-107718号公報に記載の一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0197】
インクが増感剤を含有する場合、増感剤の含有量は、インクの全量に対して、1.0質量%~15.0質量%であることが好ましく、1.5質量%~10.0質量%であること
がより好ましく、2.0質量%~6.0質量%であることがさらに好ましい。
【0198】
<有機溶剤>
本開示に係るインクは、有機溶剤を少なくとも1種含有してもよい。
有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン;メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、1-ブタノール、tert-ブタノール等のアルコール;クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤;ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸イソプロピル等のエステル系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;及び、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート系溶剤が挙げられる。
【0199】
本開示に係るインクが有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の含有量は、インクの全量に対して5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。本開示に係るインクは、有機溶剤を含まない組成(すなわち、有機溶剤の含有量がインクの全量に対して0質量%)であってもよい。
【0200】
<樹脂>
本開示に係るインクは、樹脂を含有することが好ましい。
インクに樹脂が含まれていると、アルコール耐性により優れる近赤外線吸収画像が得られる。
ここでいう樹脂は、本開示に係るスクアリリウム色素を分散させる作用を持たず、上記分散剤とは区別される。また、ここでいう樹脂は、重合性基を有さず、上記重合性モノマーとは区別される。
【0201】
樹脂としては、アクリル樹脂、セルロース誘導体、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、フェノール樹脂、及びシリコーン樹脂が挙げられる。
【0202】
中でも、樹脂は、分散安定性の観点から、アクリル樹脂であることが好ましい。
即ち、本開示に係るインクは、アクリル樹脂を含有することが好ましい。
本開示において、「アクリル樹脂」とは、(メタ)アクリル化合物由来の構造単位を含むポリマーのことをいう。
【0203】
(メタ)アクリル化合物は、アクリロイル基(CH=CH-C(=O)-)又はメタクリロイル基(CH=C(CH)-C(=O)-)を有する化合物である。
(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、及び(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0204】
アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を含むポリマーであることが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル由来の構造単位を含むポリマーであることがより好ましく、ポリ(メタ)アクリル酸メチルであることがさらに好ましい。
【0205】
アクリル樹脂の含有量は、近赤外線吸収画像のアルコール耐性を向上させる観点から、インクの全量に対して0.5質量%~2質量%であることが好ましい。
【0206】
近赤外線吸収画像のアルコール耐性を向上させる観点から、アクリル樹脂の含有量は、重合性モノマーの全量を100質量部とした場合に、0.40質量部~1.70質
量部であることが好ましい。
【0207】
樹脂の重量平均分子量は、インクジェット記録方式でインクを吐出する場合の吐出性の観点から、5000~100000であることが好ましく、10000~75000であることがより好ましい。
【0208】
吐出性の観点から見た場合、インク全体に占める分子量1000以上の成分の含有量は、インクの全量に対し、6.5質量%以下であることが好ましい。
吐出性の観点から見た場合、インク全体に占める分子量1000以上の成分の含有量の下限には特に制限はない。インク全体に占める分子量1000以上の成分の含有量は、0.5質量%以上であってもよいし、1.0質量%以上であってもよいし、2.0質量%以上であってもよい。
【0209】
本開示に係るインクは、更に、シロキサン化合物等の界面活性剤、紫外線吸収剤、共増感剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩等の添加剤を含有してもよい。添加剤については、特開2011-225848号公報、特開2009-209352号公報等の公知文献を適宜参照することができる。
【0210】
<物性>
本開示に係るインクの粘度は、10mPa・s~50mPa・sであることが好ましく、10mPa・s~30mPa・sであることがより好ましく、10mPa・s~25mPa・sであることが更に好ましい。粘度は、粘度計を用い、25℃で測定される値である。粘度は、例えば、VISCOMETER TV-22型粘度計(東機産業社製)を用いて測定される。
【0211】
本開示に係るインクの表面張力は、20mN/m~45mN/mであることが好ましく、20mN/m~30mN/mであることがより好ましい。表面張力は、表面張力計を用い、25℃で測定される値である。表面張力は、例えば、DY-700(共和界面科学社製)を用いて測定される。
【0212】
(樹脂成形体)
本開示に係る樹脂成形体は、本開示に係るスクアリリウム色素と、樹脂と、を含む。
本開示に係る樹脂成形体は、着色剤を更に含むことができる。
樹脂成型体に用いられる樹脂は、本開示に係るスクアリリウム色素を含む樹脂組成物を調製し得る限り、特に制限はない。本開示において、樹脂とは、一般的な合成樹脂を包含する。樹脂のなかでも、成形を容易に行いうる観点から、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の例としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリアクリル、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリビニル、ポリスルホン、ポリイミド、ポリオレフィンなどが挙げられ、ポリエステル、ポリアミド及びポリウレタンよりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂が好ましい。
樹脂を1種のみ含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0213】
樹脂成型体に用いられる着色剤としては、特に制限はなく、公知の着色剤を用いることができ、また、上述した他の着色化合物を用いることもできる。
樹脂組成物が着色剤を含む場合、着色剤は1種のみ含んでもよく、2種類以上を含んでもよい。
着色剤を用いる場合の含有量としては、樹脂成形体全量に対し、0.0001質量%~20質量%であることが好ましく、0.001質量%~10質量%がより好ましい。
【0214】
本開示に係る樹脂成形体には、更に、必要に応じて耐衝撃性、抗菌性、ガスバリア性、導電性、磁性、圧電性、制振性、遮音性、摺動性、電磁波吸収性、難燃性、脱水性、脱臭性、アンチブロッキング性、吸油性、吸水性、成形性等を向上させる目的で、さらに無機充填材を配合できる。
無機充填材は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、ガラスフレーク、ゼオライト、マイカ、黒鉛、金属粉、フェライト、アルミナ、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、硫酸バ
リウム、テフロン(登録商標)粉、タルク、木炭粉、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンマイクロコイル(CMC)、酸化アンチモン、水酸化アルミ、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、酸化カルシウム、シリカ、炭酸カルシウム等が挙げられる。無機充填材は、樹脂成形体の透明性を低下させない程度に配合することが好ましい。
【0215】
また、本開示に係る樹脂成形体は、例えば、レベリング剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘性改質剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、金属不活性剤、過酸化物分解剤、加工安定剤、核剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、ゲル化防止剤、充填剤、補強剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、防錆剤、蛍光性増白剤、流動性改質剤、帯電防止剤等の公知添加剤を適宜選択して配合できる。
【0216】
樹脂成形体の形状、用途には特に制限なく、様々な成形体に加工できる。
樹脂成形体の態様としては、具体的には、例えば、樹脂フィルム;合成繊維;瓶、化粧品用容器、食品用容器等の樹脂製容器;樹脂板;レンズ;トナー;一般装飾品をはじめとする各種家電、電子デバイス等の外装部品;内装材、外装材等の住宅建材部品;航空機、車輛等の内外装部品;など、様々な用途に用いる樹脂成形体の態様が挙げられる。
更に、樹脂成形体として、既述の各種樹脂成形体の原料として用い得る樹脂ペレット又は粒状樹脂等を挙げることができる。
中でも、本開示に係る樹脂成形体は、樹脂が有する色味が変化せず、赤外線吸収能が長時間維持され、加熱成形された樹脂成形体が良好な赤外線吸収能を維持することから、樹脂フィルム、合成繊維等に用いた場合、近赤外線吸収性の樹脂フィルム、近赤外線吸収性の合成樹脂が得られ、本開示における効果が著しいといえる。
また、本開示に係る樹脂成形体は、加熱成形に供される樹脂原料としての樹脂ペレット又は樹脂粒子などにも好適に適用できる。
【0217】
樹脂成形体の製造方法には特に制限はなく、公知の樹脂の成形方法を適宜適用することができる。
一例として、本開示に係るスクアリリウム色素と、樹脂チップとを所定の含有量で混合し、必要に応じて着色剤などの他の任意成分を加えて、混合または溶融混練等により、樹脂組成物を得て、得られた樹脂組成物を任意の方法で成形することができる。
【0218】
<他の用途>
本開示に係るスクアリリウム色素、本開示に係る分散物、本開示に係る近赤外線吸収性組成物の用途としては、上述した以外にも、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)等のディスプレイに用いられるブラックマトリクス、これらのブラックマトリクスを作製するための硬化性組成物、カラー画像を形成するためのカラー画像記録材料、インク組成物、熱線遮蔽材料、熱線吸収材料、光記録媒体、レーザー溶着材料、レーザーマーキング材料、センサー(生体認証など)等が挙げられる。具体的には、昇華型感熱記録材料、電子写真方式を用いる記録材料(例えば、カラートナー)、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、セキュリティ用インク、トレーサビリティ用インク、記録ペン、繊維の染色、ビニールハウス用フィルム、眼鏡、光ディスク等への使用が挙げられる。
また、生体認証(指紋認証や静脈認証)用のセンサーは、スマートフォン、タブレットパソコン等、他には銀行ATM、マルチメディア端末等にはセキュリティ保護のため指紋認証、手指静脈認証等の生体認証機能に用いられる。また、生体認証用のセンサーは、スマートフォン、タブレットパソコン等におけるディスプレイ内蔵型指紋認証センサーに好適に用いられる。
【実施例0219】
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。
なお、実施例におけるB-1~B-35は、上述したB-1~B-35とそれぞれ同じ化合物である。
【0220】
(実施例1)
【0221】
【化11】
【0222】
化合物A-1(38g)、スクアリン酸15g、トルエン650ml、ブタノール240ml、を加え、6時間加熱還流した。この際、窒素フロー条件下でディーンスターク管を用い、水を共沸脱水しながら実施した。反応液を室温(25℃、以下同様)まで冷却し、生成したろ物をろ過、酢酸エチルで洗浄した。
続いて別容器にジメチルホルムアミド520mlを内温5℃以下になるまで冷却し、続いて先に得られたろ物を加え、5℃以下で30分撹拌した。撹拌終了後、速やかにろ過し、ろ物を酢酸エチルを用いて洗浄した。得られたろ物をもとの容器に戻し、酢酸エチル390mlを加え、加熱分散した。放冷後、ろ過、ろ物を酢酸エチルで洗浄し、50℃で送風乾燥した。目的物を37.2g得た。
化合物B-1に対応するピークの面積比率は、93%であった。
【0223】
(実施例3)
【0224】
【化12】
【0225】
化合物A-3(10g)、スクアリン酸3.4g、トルエン160ml、イソプロパノール30ml、を加え、8時間加熱還流した。この際、窒素フロー条件下でディーンスターク管を用い、水を共沸脱水しながら実施した。反応液を室温まで冷却し、生成したろ物をろ過、酢酸エチルで洗浄した。
続いて別容器にジメチルホルムアミド120mlを内温5℃以下になるまで冷却し、続いて先に得られたろ物を加え、5℃以下で30分撹拌した。撹拌終了後、速やかにろ過し、ろ物を酢酸エチルを用いて洗浄した。得られたろ物をもとの容器に戻し、酢酸エチル120mlを加え、加熱分散した。放冷後、ろ過、ろ物を酢酸エチルで洗浄し、50℃で送風乾燥した。目的物を9.1g得た。
化合物B-3に対応するピークの面積比率は、95%であった。
【0226】
(実施例8)
【0227】
【化13】
【0228】
化合物A-22(12g)、スクアリン酸3.4g、トルエン160ml、ブタノール30ml、を加え、8時間加熱還流した。この際、窒素フロー条件下でディーンスターク管を用い、水を共沸脱水しながら実施した。反応液を室温まで冷却し、生成したろ物をろ過、酢酸エチルで洗浄した。
続いて別容器にジメチルホルムアミド120mlを内温5℃以下になるまで冷却し、続いて先に得られたろ物を加え、5℃以下で30分撹拌した。撹拌終了後、速やかにろ過し、ろ物を酢酸エチルを用いて洗浄した。得られたろ物をもとの容器に戻し、酢酸エチル120mlを加え、加熱分散した。放冷後、ろ過、ろ物を酢酸エチルで洗浄し、50℃で送風乾燥した。目的物を9.5g得た。
化合物B-22に対応するピークの面積比率は、94%であった。
【0229】
(実施例2、4~7及び9~19)
上述した以外のスクアリリウム色素は、出発原料を最終物に対応した基質に変更以外は、上記実施例1と同様にして合成した。
【0230】
(比較例1:B-22の低純度体T-22の合成)
化合物A-22(54g)、スクアリン酸15g、トルエン650ml、ブタノール240ml、を加え、8時間加熱還流した。この際、窒素フロー条件下でディーンスターク管を用い、水を共沸脱水しながら実施した。反応液を室温まで冷却し、生成したろ物をろ過、酢酸エチルで洗浄し、目的物を52g得た。
化合物B-22に対応するピークの面積比率は88%であった。
【0231】
<高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いたピーク面積比率の測定方法>
-サンプル作製方法-
サンプル10mgを秤量し、N-メチルピロリドン(NMP)で20mlにメスアップ後、液温を10℃以下に保ちながら超音波を5分間あてて溶解させた。シリンジフィルターにてろ過した後、速やかに測定した。
-測定条件-
装置:(株)島津製作所製NexeraX2
カラム:Kinetex C18 2.6μm,150mm×4.6mm
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出波長:254nm
移動層:超純水/テトラヒドロフラン(THF)/酢酸=50/50/0.1(体積%)
【0232】
【表1】
【0233】
なお、表1におけるDMFは、N,N-ジメチルホルムアミドを表し、DMAcは、N,N-ジメチルアセトアミドを表し、NMPは、N-メチルピロリドンを表し、DMSOは、ジメチルスルホキシドを表す。
【0234】
(実施例C1)
化合物B-1を90mg、超純水を9g、DisperBYK-191(分散剤、BYK社製)を60mg加え、Φ0.1mmのジルコニアビーズを9g加えた。続いて遊星ビーズビル分散機500rpmで6時間分散した。分散終了後、ビーズをろ過し、分散液C-1(分散物)を作製した。
分散液C-1をガラス基板にスピンコート塗布し、続いてホットプレート120℃2分間乾燥し、硬化膜を作製した。
【0235】
(実施例C2~C13、及び、比較例C1)
実施例2~13又は比較例1で得られた化合物を用いた以外は、実施例C1と同様にして、分散液を作製し、硬化膜を作製した。
【0236】
<平均粒子径>
前記分散液に対し、ゼータサイザーNanoZS(Malvern Panalytical社製)を用いて体積平均粒子径を測定した。
【0237】
<耐熱性>
得られた硬化膜に対し、210℃5分間加熱した後、色度計MCPD-1000(大塚電子(株)製)にて、耐熱テスト前後の色差のΔEab値を測定した。ΔEab値の小さいほうが、耐熱性が良好であることを示す。
なお、ΔEab値は、CIE1976(L,a,b)空間表色系による以下の色差公式から求められる値である(日本色彩学会編 新編色彩科学ハンドブック(昭和60年)p.266)。
ΔEab={(ΔL+(Δa+(Δb1/2
<<判定基準>>
A:ΔEab値<5
B:5≦ΔEab値<20
C:20≦ΔEab値
【0238】
<耐光性>
得られた硬化膜に対し、Xeランプにて紫外線カットフィルタを通して1万ルクスの光を20時間照射した後、色度計MCPD-1000(大塚電子(株)製)にて、耐光テスト前後の色差のΔEab値を測定した。
<<判定基準>>
A:ΔEab値<5
B:5≦ΔEab値<20
C:20≦ΔEab値
【0239】
<分散安定性>
得られた分散液を、25℃1週間静置したのち、再度粒子径を測定した。
A:変化率が<10%
B:変化率が10%~20%
C:変化率が>20%
【0240】
評価結果を以下の表2に示す。
【0241】
【表2】
【0242】
(実施例C14)
DisperBYK-191をDisperBYK-190(分散剤、BYK社製)に変更した以外は、実施例C1と同様にして、評価したところ、平均粒径は242nm、分散安定性はA、耐熱性はA、耐光性はAであった。
【0243】
(実施例C15)
DisperBYK-191をDisperBYK-180(分散剤、BYK社製)に変更した以外は、実施例C1と同様にして、評価したところ、平均粒径は271nm、分散安定性はA、耐熱性はA、耐光性はAであった。
【0244】
(実施例C16)
DisperBYK-191をドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(アニオン性界面活性剤)に変更した以外は、実施例C1と同様にして、評価したところ、平均粒径は265nm、分散安定性はA、耐熱性はA、耐光性はAであった。
【0245】
(実施例C17)
化合物B-3を100mg、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート(製品名SR341、Sartomer社製)を5g、及び、バイオニンD-7240(ノニオン性界面活性剤、竹本油脂(株)製)を100mg加え、Φ0.1mmのジルコニアビーズを12g加えた。続いて遊星ビーズビル分散機500rpmで6時間分散した。分散終了後、ビーズをろ過し、分散液C-14(分散物)を作製した。実施例C1と同様にして、評価したところ、平均粒径は274nm、分散安定性はA、耐熱性はA、耐光性はAであった。
【0246】
(実施例20)
化合物B-1を先と同様の手順で合成した後、ジメチルホルムアミドを使って撹拌、ろ過した後の洗浄溶媒を酢酸エチルからメタノールに変更した以外は同様に精製した。収量は37.5g、化合物B-1に対応するピークの面積比率は、93%であった。
また、得られた化合物B-1を用いた以外は、実施例C1と同様にして、分散液を作製し、耐熱性を評価したところ、A評価であった。
【0247】
(実施例21)
化合物B-3を先と同様の手順で合成した後、ジメチルホルムアミドを使って攪拌、ろ過した後の洗浄溶媒を酢酸エチルからアセトンに変更した以外は同様に精製した。収量は9.2g、化合物B-3に対応するピークの面積比率は、95%であった。
また、得られた化合物B-1を用いた以外は、実施例C1と同様にして、分散液を作製し、耐熱性を評価したところ、A評価であった。
【0248】
(比較例2)
化合物A-3(10g)、スクアリン酸3.4g、トルエン160ml、イソプロパノール30ml、を加え、8時間加熱還流した。この際、窒素フロー条件下でディーンスターク管を用い、水を共沸脱水しながら実施した。反応液を室温まで冷却し、生成したろ物をろ過、酢酸エチルで洗浄した。
続いて別容器にジメチルホルムアミド120mlを40℃になるまで加熱し、続いて先に得られたろ物を加え、40℃で30分撹拌した。撹拌終了後、速やかにろ過し、ろ物を酢酸エチルを用いて洗浄した。得られたろ物をもとの容器に戻し、酢酸エチル120mlを加え、加熱分散した。放冷後、ろ過、ろ物を酢酸エチルで洗浄し、50℃で送風乾燥した。しかしながら、不純物が多く生成し、ろ過が目詰まりして目的物が少量しか得られない結果となった。また、硬化膜を作製することができず、耐熱性評価ができなかった。
【0249】
(比較例3)
比較例2において、ジメチルホルムアミドの温度を25℃とした以外は、同様にして行ったところ、目的物は85%程度の収率で得られたものの、不純物が多く生成した。また、硬化膜を作製することができず、耐熱性評価ができなかった。
【0250】
(実施例22)
合成例2において、ジメチルホルムアミドの温度を15℃とした以外は、同様にして行ったところ、目的物である化合物B-3を9.1g得た。
また、化合物B-3に対応するピークの面積比率は、95%であった。
また、得られた化合物B-3を用いた以外は、実施例1と同様にして、分散液を作製し、耐熱性を評価したところ、A評価であった。
【0251】
(実施例101)
<近赤外線吸収性組成物の調製>
下記の組成を混合して近赤外線吸収性組成物を調製した。
-組成-
化合物B-31:1.2部
樹脂:アリルメタクリレート(AMA)とメタクリル酸(MAA)との共重合体(組成比(質量比):(AMA/MAA)=(80/20)、Mw=15,000):14部
重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、製品名 KAYARAD DPHA):12.9部
光重合開始剤:IRGACURE-OXE01〔2-(o-ベンゾイルオキシム)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン〕、BASF社製:2.5部
紫外線吸収剤:UV503(大東化学株式会社):0.5部
界面活性剤:下記混合物(Mw=14000):0.04部
重合禁止剤:p-メトキシフェノール:0.006部
シクロヘキサノン:49.6部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:19.3部
【0252】
【化14】
【0253】
<硬化膜の作製>
得られた組成物を、ガラス基板(コーニング社製1737)上に、乾燥後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行った。
次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(キヤノン(株)製)を使用して、500mJ/cmで全面露光した。次いで現像機(CD-2060、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒間パドル現像を行い、次いで、純水でリンス処理し、次いで、スプレー乾燥した。更に、200℃のホットプレートを用いて300秒間加熱処理(ポストベーク)を行い、硬化膜を得た。
得られた硬化膜に対し、上述した耐熱性及び耐光性を評価した結果、いずれもA評価であった。