(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098811
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】アルカリ可溶性樹脂及び感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 220/38 20060101AFI20250625BHJP
C08F 220/04 20060101ALI20250625BHJP
G03F 7/032 20060101ALI20250625BHJP
G03F 7/033 20060101ALI20250625BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20250625BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20250625BHJP
【FI】
C08F220/38
C08F220/04
G03F7/032 501
G03F7/033
G03F7/038 501
G03F7/027 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215192
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】周 正偉
(72)【発明者】
【氏名】柳 正義
(72)【発明者】
【氏名】木下 健宏
【テーマコード(参考)】
2H225
4J100
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AC43
2H225AC46
2H225AC54
2H225AC72
2H225AC75
2H225AD06
2H225AE13P
2H225AM22P
2H225AM32P
2H225AM61P
2H225AM70P
2H225AM92P
2H225AM93P
2H225AM95P
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225BA01P
2H225CA21
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J100AJ02Q
4J100AL08P
4J100BA03P
4J100BC83P
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA63
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA37
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い屈折率を有する樹脂硬化膜が得られ、現像性が良好な感光性樹脂組成物を構成するアルカリ可溶性樹脂を提供する。また、アルカリ可溶性樹脂を含む感光性樹脂組成物、パターニング性が良好で、高い屈折率を有する樹脂硬化膜を提供する。さらには、該樹脂硬化膜を具備する画像表示素子を提供する。
【解決手段】本発明のアルカリ可溶性樹脂は、下記式(1)で示される基を有する。酸価が、20~300mgKOH/gである。
(R
1及びR
2は独立に-O-、-S-、又は-N(R
5)-;R
4はハロゲン、アルキル、アルコキシ又は芳香族;R
5はH、アルキル又はアルコキシ)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される基を有し、
酸価が、20~300mgKOH/gであることを特徴とする、アルカリ可溶性樹脂。
【化1】
(式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に-O-、-S-、又は-N(R
5)-であり、R
4はハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、又は芳香族基であり、R
5はH、アルキル基、又はアルコキシ基であり、pは0~4の整数である。)
【請求項2】
上記式(1)で示される基の当量数が、200~1100g/molである、請求項1に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項3】
屈折率が、1.40以上である、請求項1に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項4】
重量平均分子量が、1000~50000である、請求項1に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項5】
アルカリ可溶性樹脂が、上記式(1)で示される基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-1)由来の構造単位(a-1)と、酸基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-2)由来の構造単位(a-2)と、を含有する共重合体である、請求項1に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項6】
全構造単位100モル%に対して、
前記構造単位(a-1)が、10~95モル%であり、
前記構造単位(a-2)が、5~90モル%である、請求項5に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項7】
アルカリ可溶性樹脂が、上記式(1)で示される基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-1)由来の構造単位(a-1)と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-3)由来の構造単位(a-3)と、を含有する共重合体のエポキシ基の一部に、エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物がさらに付加し、さらにエポキシ基が開環して生じたヒドロキシ基の一部に多塩基酸又はその無水物が付加した第1変性共重合体である、請求項1に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項8】
前記第1変性共重合体を構成する構造単位の合計100モル%に対して、
前記構造単位(a-1)が、10~95モル%であり、
前記構造単位(a-3)が、5~90モル%であり、
前記構造単位(a-3)由来のエポキシ基のモル数に対するエポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物の付加率が10~90モル%である、請求項7に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項9】
アルカリ可溶性樹脂が、酸基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-2)由来の構造単位(a-2)と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-3)由来の構造単位(a-3)と、を含有する共重合体のエポキシ基の一部に、下記式(2)で示される化合物が付加した第2変性共重合体である、請求項1に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【化2】
(式中、R
2は-O-、-S-、又は-N(R
5)-であり、R
4はハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、又は芳香族基であり、R
12は-OH、-SH、又は-NHR
5であり、R
5はH、アルキル基、又はアルコキシ基であり、pは0~4の整数である。)
【請求項10】
前記第2変性共重合体を構成する構造単位の合計100モル%に対して、
前記構造単位(a-2)が、5~90モル%であり、
前記構造単位(a-3)が、10~95モル%であり、
前記構造単位(a-3)由来のエポキシ基のモル数に対する上記式(2)で示される化合物の付加率が10~90モル%である、請求項9に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項11】
アルカリ可溶性樹脂が、前記第2変性共重合体のエポキシ基が開環して生じたヒドロキシ基の一部に多塩基酸又はその無水物がさらに付加した第3変性共重合体である、請求項9に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項12】
アルカリ可溶性樹脂が、 エポキシ樹脂が有するエポキシ基の一部に下記式(2)で示される化合物が付加し、さらにエポキシ基が開環して生じたヒドロキシ基の一部に多塩基酸又はその無水物が付加した変性エポキシ樹脂である、請求項1に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【化3】
(式中、R
2は-O-、-S-、又は-N(R
5)-であり、R
4はハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、又は芳香族基であり、R
12は-OH、-SH、又は-NHR
5であり、R
5はH、アルキル基、又はアルコキシ基であり、pは0~4の整数である。)
【請求項13】
前記エポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル数に対する上記式(2)で示される化合物の付加率が10~90モル%である、請求項12に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項14】
アルカリ可溶性樹脂(A)と、
反応性希釈剤(B)と、
光重合開始剤(C)と、
溶剤(D)と、
を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記アルカリ可溶性樹脂(A)が、請求項1~13のいずれか1項に記載のアルカリ可溶性樹脂である、感光性樹脂組成物。
【請求項15】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)及び前記反応性希釈剤(B)の合計100質量%に対して、
前記アルカリ可溶性樹脂(A)が10~99質量%であり、
前記反応性希釈剤(B)が1~90質量%であり、
前記アルカリ可溶性樹脂(A)及び前記反応性希釈剤(B)の合計100質量部に対して、
前記光重合開始剤(C)が0.1~30質量部であり、
前記溶剤(D)を除く成分の合計100質量部に対して、
前記溶剤(D)が30~1000質量部である、請求項14に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項16】
請求項14に記載の感光性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂硬化膜。
【請求項17】
請求項16に記載の樹脂硬化膜を具備する画像表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ可溶性樹脂、感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物の硬化物である樹脂硬化膜、該樹脂硬化膜を具備する画像表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイの普及に伴い、液晶ディスプレイの構成部材として使用されるカラーフィルターや、このカラーフィルター上に設けられるオーバーコート層、層間絶縁膜などについて盛んに研究がなされている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
これらの材料には、しばしば高い屈折率が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-53266号公報
【特許文献2】特開2023-147017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高い屈折率と良好な現像性を兼ね備える材料として、さらなる改善が求められていた。
【0005】
本発明は、高い屈折率を有する樹脂硬化膜が得られ、現像性が良好な感光性樹脂組成物に構成するアルカリ可溶性樹脂を提供することを目的とする。また、アルカリ可溶性樹脂を含む感光性樹脂組成物、パターニング性が良好で、高い屈折率を有する樹脂硬化膜を提供することを目的とする。さらには、該樹脂硬化膜を具備する画像表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を含む。
[1] 下記式(1)で示される基を有し、
酸価が、20~300mgKOH/gであることを特徴とする、アルカリ可溶性樹脂。
【化1】
(式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に-O-、-S-、又は-N(R
5)-であり、R
4はハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、又は芳香族基であり、R
5はH、アルキル基、又はアルコキシ基であり、pは0~4の整数である。)
[2] 上記式(1)で示される基の当量数が、200~1100g/molである、[1]に記載のアルカリ可溶性樹脂。
[3] 屈折率が、1.40以上である、[1]又は[2]に記載のアルカリ可溶性樹脂。
[4] 重量平均分子量が、1000~50000である、[1]~[3]のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂。
[5] アルカリ可溶性樹脂が、上記式(1)で示される基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-1)由来の構造単位(a-1)と、エチレン性不飽和化合物(ma-2)由来の酸基を有する構造単位(a-2)と、を含有する共重合体である、[1]~[4]のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂。
[6] 全構造単位100モル%に対して、
前記構造単位(a-1)が、10~95モル%であり、
前記構造単位(a-2)が、5~90モル%である、[5]に記載のアルカリ可溶性樹脂。
[7] アルカリ可溶性樹脂が、上記式(1)で示される基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-1)由来の構造単位(a-1)と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-3)由来の構造単位(a-3)と、を含有する共重合体のエポキシ基の一部に、エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物がさらに付加し、さらにエポキシ基が開環して生じたヒドロキシ基の一部に多塩基酸又はその無水物が付加した第1変性共重合体である、[1]~[4]のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂。
[8] 前記第1変性共重合体を構成する構造単位の合計100モル%に対して、
前記構造単位(a-1)が、10~95モル%であり、
前記構造単位(a-3)が、5~90モル%であり、
前記構造単位(a-3)由来のエポキシ基のモル数に対するエポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物の付加率が10~90モル%である、[7]に記載のアルカリ可溶性樹脂。
[9] アルカリ可溶性樹脂が、酸基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-2)由来の構造単位(a-2)と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-3)由来の構造単位(a-3)と、を含有する共重合体のエポキシ基の一部に、下記式(2)で示される化合物が付加した第2変性共重合体である、[1]~[4]のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂。
【化2】
(式中、R
2は-O-、-S-、又は-N(R
5)-であり、R
4はハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、又は芳香族基であり、R
12は-OH、-SH、又は-NHR
5であり、R
5はH、アルキル基、又はアルコキシ基であり、pは0~4の整数である。)
[10] 前記第2変性共重合体を構成する構造単位の合計100モル%に対して、
前記構造単位(a-2)が、5~90モル%であり、
前記構造単位(a-3)が、10~95モル%であり、
前記構造単位(a-3)由来のエポキシ基のモル数に対する上記式(2)で示される化合物の付加率が10~90モル%である、[9]に記載のアルカリ可溶性樹脂。
[11] アルカリ可溶性樹脂が、前記第2変性共重合体のエポキシ基が開環して生じたヒドロキシ基の一部に多塩基酸又はその無水物がさらに付加した第3変性共重合体である、[9]又は[10]に記載のアルカリ可溶性樹脂。
[12] アルカリ可溶性樹脂が、エポキシ樹脂が有するエポキシ基の一部に下記式(2)で示される化合物が付加し、さらにエポキシ基が開環して生じたヒドロキシ基の一部に多塩基酸又はその無水物が付加した変性エポキシ樹脂である、[1]~[4]のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂。
【化3】
(式中、R
2は-O-、-S-、又は-N(R
5)-であり、R
4はハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、又は芳香族基であり、R
12は-OH、-SH、又は-NHR
5であり、R
5はH、アルキル基、又はアルコキシ基であり、pは0~4の整数である。)
[13] 前記エポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル数に対する上記式(2)で示される化合物の付加率が10~90モル%である、[12]に記載のアルカリ可溶性樹脂。
[14] アルカリ可溶性樹脂(A)と、
反応性希釈剤(B)と、
光重合開始剤(C)と、
溶剤(D)と、
を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記アルカリ可溶性樹脂(A)が、[1]~[13]のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂である、感光性樹脂組成物。
[15] 前記アルカリ可溶性樹脂(A)及び前記反応性希釈剤(B)の合計100質量%に対して、
前記アルカリ可溶性樹脂(A)が10~99質量%であり、
前記反応性希釈剤(B)が1~90質量%であり、
前記アルカリ可溶性樹脂(A)及び前記反応性希釈剤(B)の合計100質量部に対して、
前記光重合開始剤(C)が0.1~30質量部であり、
前記溶剤(D)を除く成分の合計100質量部に対して、
前記溶剤(D)が30~1000質量部である、[14]に記載の感光性樹脂組成物。
[16] [14]に記載の感光性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂硬化膜。
[17] [16]に記載の樹脂硬化膜を具備する画像表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高い屈折率を有する樹脂硬化膜が得られ、現像性が良好な感光性樹脂組成物に構成するアルカリ可溶性樹脂を提供することができる。また、アルカリ可溶性樹脂を含む感光性樹脂組成物、パターニング性が良好で、高い屈折率を有する樹脂硬化膜を提供することができる。さらには、該樹脂硬化膜を具備する画像表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0009】
本明細書では、数値範囲について「~」を使用する場合には、両端の数値は、それぞれ上限値及び下限値であり、数値範囲に含まれる。
【0010】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、メタクリル酸又はアクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイルオキシ」はアクリロイルオキシ又はメタクリロイルオキシを意味する。上限値又は下限値が複数記載されている場合は、上限値と下限値の全ての組み合わせから数値範囲を作ることができる。同様に、複数の数値範囲が記載されている場合は、それらの数値範囲から上限値と下限値を個別に選択して組み合わせることで、別個の数値範囲を作ることができる。
【0011】
本明細書において、「エチレン性不飽和結合」とは、芳香環を形成する炭素原子を除く炭素原子間で形成される二重結合を意味し、「エチレン性不飽和単量体」とは、エチレン性不飽和結合を有する単量体を意味する。
【0012】
本明細書において、「構造単位」とは、単量体として使用したエチレン性不飽和化合物に由来する単位又は単量体として使用したエチレン性不飽和化合物に由来する単位をさらに変性して得られた単位を意味する。
【0013】
本明細書において「重量平均分子量」及び「数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)を用いて下記条件にて常温(23℃)で測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて求めた値とする。
装置:GPC Prominence501(株式会社島津製作所)
カラム:Shodex(商標) LF-804+LF-804(株式会社レゾナック)
カラム温度:40℃
試料:試料の0.2質量%テトラヒドロフラン溶液
流量:1mL/分
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:Shodex(商標) RI-71S(株式会社レゾナック)
【0014】
本明細書において「酸価」は、JIS K6901 5.3に従って測定した樹脂の酸価である。すなわち、酸価は、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を意味する。
【0015】
本明細書において「屈折率」は、下記の方法で算出した値である。すなわち、樹脂と溶剤とを含有する樹脂組成物(試料)の屈折率を下記条件にて測定し、次いで溶剤の屈折率を下記条件にて測定する。次いで試料中に含まれる樹脂の含有率(固形分)をJIS K6901 5.11に従って測定し、下記式を用いて試料中に含まれる樹脂単独の屈折率を算出する。
測定器:J-357 Automatic Refractometer(Rudolph Research Analytical社)
測定波長:589nm
測定温度:25℃
樹脂単独の屈折率=(試料の屈折率-溶剤の屈折率)÷固形分×100+溶剤の屈折率
【0016】
(アルカリ可溶性樹脂)
本発明の一実施形態のアルカリ可溶性樹脂(本実施形態のアルカリ可溶性樹脂(A)ということがある)は、下記式(1)で示される基を有する。
【0017】
【化4】
(式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に-O-、-S-、又は-N(R
5)-であり、R
4はハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、又は芳香族基であり、R
5はH、アルキル基、又はアルコキシ基であり、pは0~4の整数である。)なお、~~は、当該構造単位から式(1)の基を除いた残基との連結部位を表す。
【0018】
本実施形態のアルカリ可溶性樹脂(A)が、上記式(1)で示される基を有することにより、高屈折率の樹脂となるため、屈折率の高い樹脂硬化膜を得ることができる。また、アルカリ可溶性樹脂(A)の安定性が良好であり、感光性樹脂組成物としたときに良好な透明性と現像性が得られる。さらには、高い屈折率とパターニング性を両立した樹脂硬化膜が得られる。
【0019】
R1は、アルカリ可溶性樹脂(A)の合成容易性や原料入手性の観点から、-S-が好ましい。R2は、屈折率や透明性の観点から、-S-がより好ましい。pは、感光性樹脂組成物としたときの現像性の観点から0または1が好ましく、0がより好ましい。R4のハロゲン基は、フッ素を有する基、塩素を有する基が挙げられる。R4のアルキル基、アルコキシ基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、感光性樹脂組成物としたときの現像性の観点から炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~40のアルコキシ基がより好ましい。R4の芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0020】
上記式(1)で示される基としては、具体的には、下記式(11)~(19)で表される置換基が挙げられる。これら置換基は、前記アルカリ可溶性樹脂(A)に1種含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
【0021】
【化5】
(式中、R
4、R
5及びpは、上記と同じである。)
【0022】
アルカリ可溶性樹脂(A)の上記式(1)で示される基の当量数は、
好ましくは1100g/mol以下であり、より好ましくは1000g/mol以下であり、さらに好ましくは900g/mol以下であり、よりさらに好ましくは800g/mol以下である。アルカリ可溶性樹脂(A)の上記式(1)で示される基の当量数は、好ましくは200g/mol以上であり、より好ましくは250g/mol以上であり、さらに好ましくは300g/mol以上であり、よりさらに好ましくは350g/mol以上である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。アルカリ可溶性樹脂(A)の上記式(1)で示される基の当量数が1100g/mol以下であると、高い屈折率を有するアルカリ可溶性樹脂(A)が得られ、樹脂硬化膜としても十分に高屈折率なものが得られる。アルカリ可溶性樹脂(A)の上記式(1)で示される基の当量数が200g/mol以上であると、感光性樹脂組成物としての現像性に影響することなく、良好なパターンを有する樹脂硬化膜が得られる。
【0023】
なお、上記式(1)で示される基の当量数とは、アルカリ可溶性樹脂(A)中の上記式(1)で示される基1モル当たりのアルカリ可溶性樹脂(A)の質量である。上記式(1)で示される基の当量数は、アルカリ可溶性樹脂(A)の質量を樹脂中の上記式(1)で示される基数で除することにより求めることが可能である(g/モル)。本明細書において、アルカリ可溶性樹脂(A)の上記式(1)で示される基の当量数とは、樹脂中に上記式(1)で示される基を導入するために用いられる原料の仕込み量から計算した理論値である。
【0024】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)の酸価は、好ましくは20KOHmg/g以上であり、より好ましくは30KOHmg/g以上であり、さらに好ましくは35KOHmg/g以上である。前記アルカリ可溶性樹脂(A)の酸価は、好ましくは300KOHmg/g以下であり、より好ましくは200KOHmg/g以下であり、さらに好ましくは150KOHmg/g以下であり、よりさらに好ましくは100KOHmg/g以下である。
これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。前記アルカリ可溶性樹脂(A)の酸価が20KOHmg/g以上であると、感光性樹脂組成物としたときの現像性が良好である。前記アルカリ可溶性樹脂(A)の酸価が300KOHmg/g以下であると、感光性樹脂組成物の保存安定性が良好である。
【0025】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)の屈折率は、好ましくは1.40以上であり、より好ましくは1.50以上であり、さらに好ましくは1.55以上である。前記アルカリ可溶性樹脂(A)の屈折率は、1.85以下であってよく、1.80以下であってよく、1.70以下であってよい。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。前記アルカリ可溶性樹脂(A)の屈折率が1.40以上であると、樹脂硬化膜としたときの屈折率が十分高くなる。そのため例えば、これをディスプレイ材料の絶縁層に用いればITOまたはSiNxと絶縁層との間の界面での屈折を低減し、液晶ディスプレイのバックライトからの輝度を高める効果がある。
【0026】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは1000以上であり、より好ましくは2000以上であり、さらに好ましくは3000以上である。前記アルカリ可溶性樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは50000以下であり、より好ましくは30000以下であり、さらに好ましくは20000以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。前記アルカリ可溶性樹脂(A)の重量平均分子量が上記範囲であると、パターング性が良好である。前記アルカリ可溶性樹脂(A)の重量平均分子量は、樹脂骨格が後述する(メタ)アクリル樹脂である場合には、ラジカル重合性の観点から、4000以上であってよく、5000以上であってよく、6000以上であって良い。前記アルカリ可溶性樹脂(A)の重量平均分子量は、樹脂骨格が後述するエポキシ樹脂である場合には、現像性の観点から、10000以下であってよく、7000以下であってよく、5000以下であって良い。
【0027】
前記アルカリ可溶性樹脂(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.1以上であり、より好ましくは1.2以上であり、さらに好ましくは1.3以上である。前記アルカリ可溶性樹脂(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは5.0以下であり、
より好ましくは4.0以下であり、さらに好ましくは3.0以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。前記アルカリ可溶性樹脂(A)の分子量分布(Mw/Mn)が1.1以上であると、前記アルカリ可溶性樹脂(A)を合成する際の製造条件のコントロールが容易である。前記アルカリ可溶性樹脂(A)の重量平均分子量が5.0以下であると、感光性樹脂組成物としてばらつきなく現像性や保存安定性を確保することができる。
【0028】
アルカリ可溶性樹脂(A)は、特定範囲の酸価を有し、上記式(1)で示される基を有していれば、特に限定されず、従来から感光性樹脂組成物に用いられている各種ポリマーを使用することができる。このようなポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリアミック酸を含むポリイミド前駆体、エポキシ樹脂、及び、側鎖にカルボキシル基や水酸基を有するポリイミド樹脂などのアルカリ現像液に可溶な有機高分子ポリマーが挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸共重合体とは、アクリル酸共重合体及びメタクリル酸共重合体の双方を意味する。
さらにアルカリ可溶性樹脂には、露光により上記の樹脂が再生されアルカリ可溶となる樹脂も含まれる。
これらの中でも、高屈折率と現像性を両立する観点から、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂が好ましく、後述するアルカリ可溶性樹脂(A-1)、アルカリ可溶性樹脂(A-2)、アルカリ可溶性樹脂(A-3)、アルカリ可溶性樹脂(A-4)がより好ましい。
【0029】
〔アルカリ可溶性樹脂(A-1)〕
アルカリ可溶性樹脂(A-1)は、上記式(1)で示される基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-1)由来の構造単位(a-1)(以下、単に「構造単位(a-1)」とも言う。)と、酸基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-2)(以下、単に「モノマー(ma-2)」とも言う。)に由来する、酸基を有する構造単位(a-2)(以下、単に「構造単位(a-2)」とも言う。)と、を含有する共重合体である。アルカリ可溶性樹脂(A-1)は、上記式(1)で示される基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-1)と、酸基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-2)との共重合体である。アルカリ可溶性樹脂(A-1)は、必要に応じて、その他のエチレン性不飽和化合物(ma-4)由来の構造単位(a-4)(以下、単に「構造単位(a-4)」とも言う。)を含有しても良い。すなわち、アルカリ可溶性樹脂(A-1)は、上記式(1)で示される基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-1)と、酸基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-2)と、必要に応じて、その他のエチレン性不飽和化合物(ma-4)との共重合体であってもよい。アルカリ可溶性樹脂(A-1)を用いることにより、特に現像性と保存安定性に優れた感光性樹脂組成物が得られ、さらに高い屈折率を有する樹脂硬化膜が得られる。アルカリ可溶性樹脂(A-1)は、共重合反応のみ(一段目の合成のみ)で得られるため、製造容易である点が有利である。また、付加反応等の変性反応(二段目の合成)を利用しないため、樹脂中の未反応原料等に由来する低分子量成分を低減することができ、感光性樹脂組成物としたときの現像残差を低減することができる。さらには、官能基同士の意図しない架橋や副生物の生成を抑制できるため、分子量分布を狭い範囲にコントロールすることができ、樹脂硬化膜のパターンが細線化してピッチが狭くなっても良好な現像性を有する感光性樹脂組成物が得られる。
【0030】
「上記式(1)で示される基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-1)由来の構造単位(a-1)」
構造単位(a-1)は、上記式(1)で示される基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-1)(以下、単に「モノマー(ma-1)」とも言う。)に由来する構造単位である。アルカリ可溶性樹脂(A-1)が構造単位(a-1)を有することにより、高屈折率のアルカリ可溶性樹脂(A-1)が得られ、これを用いた樹脂硬化膜も高い屈折率となる。
【0031】
構造単位(a-1)を与えるモノマー(ma-1)は、後述するモノマー(ma-2)及びその他のモノマー(ma-4)と共重合可能な化合物であればよく、特に限定されない。モノマー(ma-1)としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂(A-1)を合成する際の反応性の観点から、上記式(1)で示される基と、エチレン性不飽和結合とを有するモノマーを用いることができる。エチレン性不飽和結合を有する基として、具体的には、ビニル基および(メタ)アクリロイルオキシ基が挙げられる。モノマー配合比の自由度の観点から(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。
【0032】
モノマー(ma-1)の例としては、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物と下記式(2)で示される化合物の反応物が挙げられる。
【0033】
【化6】
(式中、R
2は-O-、-S-、又は-N(R
5)-であり、R
4はハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、又は芳香族基であり、R
12は-OH、-SH、又は-NHR
5であり、R
5はH、アルキル基、又はアルコキシ基であり、pは0~4の整数である。)
【0034】
モノマー(ma-1)を生成する上記エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物は、エポキシ基とエチレン性不飽和基を有する化合物であれば、特に限定されない。例えば、オキシラニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-オキシラニルエチル(メタ)アクリレート、2-グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を含む(メタ)アクリル酸エステル誘導体;3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3-(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルオキシ)プロピル(メタ)アクリレートなどの3,4-エポキシシクロヘキサン環等のエポキシ基含有脂環式炭素環を含む(メタ)アクリル酸エステル誘導体;エポキシ基を含むビニルエーテル化合物;エポキシ基を含むアリルエーテル化合物等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、重合性及び入手の容易性の観点から、エポキシ基を含む(メタ)アクリル酸エステル誘導体、エポキシ基含有脂環式炭素環を含む(メタ)アクリル酸エステル誘導体が好ましく、オキシラニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-オキシラニルエチル(メタ)アクリレート、2-グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレートが好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0035】
モノマー(ma-1)を生成する上記式(2)で示される化合物について、R12は、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物との反応容易性の観点から、SHが好ましい。R2やpの好ましい範囲については、上記式(1)と同様である。
上記式(2)で示される化合物の具体例としては、下記式(21)~(29)で示される化合物が挙げられる。中でも、反応性と入手の容易性の観点から、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンズイミダゾールが好ましい。
【0036】
【化7】
(式中、R
4、R
5及びpは、上記と同じである。)
【0037】
「酸基を有する構造単位(a-2)」
構造単位(a-2)は、酸基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-2)(以下、単に「モノマー(ma-2)」とも言う。)に由来する構造単位である。構造単位(a-2)は、上記式(1)で示される基を有さず、酸基を有していれば特に限定されない。酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、ホスホ基等が挙げられる。これらの酸基の中でも、感光性樹脂組成物としての現像性の観点から、カルボキシ基が好ましい。アルカリ可溶性樹脂(A-1)が構造単位(a-2)を有することにより、感光性樹脂組成物として、良好な現像性が得られる。
【0038】
構造単位(a-2)を与えるモノマー(ma-2)は、上記式(1)で示される基を有さず、酸基を有し、モノマー(ma-1)及び後述するその他のモノマー(ma-4)と共重合可能な化合物であれば、特に限定されない。モノマー(a-2)としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂(A-1)を合成する際の反応性の観点から、酸基と、エチレン性不飽和結合とを有するモノマーを用いることができる。例えば、不飽和カルボン酸又はその無水物、不飽和スルホン酸、不飽和ホスホン酸等が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基として、具体的には、ビニル基および(メタ)アクリロイルオキシ基が挙げられる。モノマー配合比の自由度の観点から(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸、α-ブロモ(メタ)アクリル酸、β-フリル(メタ)アクリル酸、クロトン酸、プロピオール酸、ケイ皮酸、α-シアノケイ皮酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸又はその無水物;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、tert-ブチルアクリルアミドスルホン酸、p-スチレンスルホン酸などの不飽和スルホン酸;ビニルホスホン酸などの不飽和ホスホン酸;などが挙げられる。中でも、感光性樹脂組成物としての現像性の観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。これらのモノマー(ma-2)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
「その他のエチレン性不飽和化合物(ma-4)由来の構造単位(a-4)」
構造単位(a-4)は、構造単位(a-1)及び構造単位(a-2)以外のその他のエチレン性不飽和化合物(ma-4)(以下、単に「モノマー(ma-4)」とも言う。)に由来する構造単位である。モノマー(ma-4)は、上記式(1)で示される基、及び酸基を有さず、モノマー(ma-1)及びモノマー(ma-2)と共重合可能な化合物であれば、特に限定されない。
具体例としては、芳香族ビニル化合物、ノルボルネン構造を有する環状オレフィン、ジエン、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド、ビニル化合物、不飽和ジカルボン酸ジエステル、モノマレイミド、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アニリド、(メタ)アクリロニトリル、アクロレインなどが挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-ビニルトルエン、p-ビニルトルエン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、メトキシスチレン、p-ニトロスチレン、p-シアノスチレン、p-アセチルアミノスチレンなどが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する環状オレフィンとしては、ノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン)、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、ジシクロペンタジエン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ-3-エン、トリシクロ[6.2.1.01,8]ウンデカ-9-エン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10.01,6]ドデカ-3-エン、8-エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,12]ドデカ-3-エン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ-4-エンなどが挙げられる。
ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソ-プロピル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリルレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ロジン(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、5-エチルノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、1,1,1-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロ-n-プロピル(メタ)アクリレート、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、トリフェニルメチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、クミル(メタ)アクリレート、4-フェノキシフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ナフタレン(メタ)アクリレート、アントラセン(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アミドとしは、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N-ジ-イソプロピルアミド、(メタ)アクリル酸アントラセニルアミドなどが挙げられる。
ビニル化合物としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N-ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニル、ビニルトルエンなどが挙げられる。
不飽和ジカルボン酸ジエステルとしては、シトラコン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルなどが挙げられる。
モノマレイミドとしては、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミドなどが挙げられる。
中でも樹脂硬化膜としての屈折率を高める観点から、高屈折率の化合物を用いることが好ましく、ホモポリマーとしたときの屈折率が1.55以上の化合物を用いることがより好ましく、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、1-ナフタレンメチル(メタ)アクリレート、m-フェニキシベンジル(メタ)アクリレート、N-ビニルカルバゾール、トリブロモフェニルアクリレートを用いることがさらに好ましい。
これらのモノマー(ma-4)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
〔アルカリ可溶性樹脂(A-1)の構造単位の割合〕
構造単位(a-1)の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-1)を構成する構造単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは10モル%以上であり、より好ましくは30モル%以上であり、さらに好ましくは50モル%以上である。構造単位(a-1)の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-1)を構成する構造単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは95モル%以下であり、より好ましくは85モル%以下であり、さらに好ましくは80モル%以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
構造単位(a-1)の含有割合が10モル%以上であると、樹脂硬化膜の屈折率が高いものとなる。構造単位(a-1)の含有割合が95モル%以下であると、構造単位(a-2)の含有量を十分に確保することができ、感光性樹脂組成物としての現像性が良好である。
【0041】
構造単位(a-2)の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-1)を構成する構造単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは5モル%以上であり、より好ましくは10モル%以上であり、さらに好ましくは15モル%以上である。構造単位(a-2)の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-1)を構成する構造単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは90モル%以下であり、より好ましくは70モル%以下であり、さらに好ましくは50モル%以下であり、よりさらに好ましくは40モル%以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
構造単位(a-2)の含有割合が5モル%以上であると、感光性樹脂組成物としての現像性が良好である。構造単位(a-2)の含有割合が90モル%以下であると、構造単位(a-1)の含有量を十分に確保することができ、樹脂硬化膜の屈折率が高いものとなる。
【0042】
構造単位(a-4)を含有する場合、構造単位(a-4)の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-1)を構成する構造単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは1モル%以上であり、より好ましくは5モル%以上であり、さらに好ましくは10モル%以上である。構造単位(a-4)の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-1)を構成する構造単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは50モル%以下であり、より好ましくは40モル%以下であり、さらに好ましくは30モル%以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
構造単位(a-4)の含有割合が1モル%以上であると、感光性樹脂組成物として所望の機能を付与することができる。構造単位(a-4)の含有割合が50モル%以下であると、構造単位(a-1)や構造単位(a-2)の含有量を十分に確保することができ、感光性樹脂組成物としての現像性が良好であるとともに、樹脂硬化膜の屈折率が高いものとなる。
【0043】
本明細書において、アルカリ可溶性樹脂(A1)の各構造単位の割合とは、樹脂中に各構造単位を導入するために用いられる原料(各モノマー)の仕込み量から計算した理論値である(後述のアルカリ可溶性樹脂(A2)~アルカリ可溶性樹脂(A4)も同様である)。
下記のアルカリ可溶性樹脂(A1)の製造方法において、該樹脂を合成する原料の配合比の範囲は、上記各構造単位の含有割合の好ましい範囲と同じである(後述のアルカリ可溶性樹脂(A2)~アルカリ可溶性樹脂(A4)も同様である)。
【0044】
〔アルカリ可溶性樹脂(A-1)の製造方法〕
共重合反応は、当該技術分野において公知のラジカル重合方法に従って重合溶剤の存在下又は不存在下で行うことができる。例えば、上記モノマーを重合溶剤に溶解した後、その溶液に重合開始剤を添加し、50~100℃で1~20時間にわたり重合反応を行えばよい。
【0045】
この共重合反応に用いることが可能な重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートなどが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合開始剤の使用量は、モノマーの全仕込み量を100質量部とした場合に、一般に0.5~20質量部、好ましくは1.0~10質量部である。
【0046】
共重合反応に用いる溶剤としては、後述の溶剤(D)と同様のものを用いることができる。また他にも、プロピレングリコールモノアリールエーテル、1,3-プロパンジオールモノアルキルエーテル、1,3-ブタンジオールモノアルキルエーテル、1,4-ブタンジオールモノアルキルエーテル、グリセリンモノアルキルエーテル、グリセリンジアルキルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、C5-6シクロアルカンジオール、C5-6シクロアルカンジメタノール、乳酸エチル及びジアセトンアルコールなどが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
〔アルカリ可溶性樹脂(A-2)〕
アルカリ可溶性樹脂(A-2)は、上記式(1)で示される基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-1)由来の構造単位(a-1)(以下、単に「構造単位(a-1)」とも言う。)と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-3)由来の構造単位(a-3)と、を含有する共重合体のエポキシ基の一部に、エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物がさらに付加し、さらにエポキシ基が開環して生じたヒドロキシ基の一部に多塩基酸又はその無水物が付加した第1変性共重合体である。前記構造単位(a-1)と前記構造単位(a-3)とを含有する前記共重合体は、上記式(1)で示される基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-1)と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-3)との共重合体である。
アルカリ可溶性樹脂(A-1)は、必要に応じて、その他のエチレン性不飽和化合物(ma-4)由来の構造単位(a-4)(以下、単に「構造単位(a-4)」とも言う。)を含有しても良い。すなわち、アルカリ可溶性樹脂(A-1)は、更にその他のエチレン性不飽和化合物(ma-4)との共重合体であってもよい。
後述の感光性樹脂組成物に、前記アルカリ可溶性樹脂(A-2)を用いることにより、特に現像性と保存安定性に優れた感光性樹脂組成物が得られ、さらに高い屈折率を有する樹脂硬化膜が得られる。アルカリ可溶性樹脂(A-2)は、化合物(ma-1)を含むモノマーの共重合反応により、上記式(1)で示される基を容易に導入することができ、また上記式(1)で示される基の導入量を容易に調整することができるため、屈折率のコントロールをするうえで有利である。さらに、アルカリ可溶性樹脂(A-2)はエチレン性不飽和基が導入されることにより、反応性希釈剤(B)との相溶性が良好である。また、多塩基酸又はその無水物の付加量に応じて、アルカリ可溶性樹脂(A-2)に導入するカルボキシ基量を調整することができるため、感光性樹脂組成物としての現像性が良好である。
【0048】
「上記式(1)で示される基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-1)由来の構造単位(a-1)」
構造単位(a-1)は、上記式(1)で示される基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-1)(以下、単に「モノマー(ma-1)」とも言う。)に由来する構造単位である。構造単位(a-1)やモノマー(ma-1)の具体例や好ましい範囲については、アルカリ可溶性樹脂(A-1)に用いるものと同様である。
【0049】
「エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-3)由来の構造単位(a-3)」
「エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-3)由来の構造単位(a-3)」
構造単位(a-3)は、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-3)(以下、単に「モノマー(ma-3)」とも言う。)に由来する構造単位である。構造単位(a-3)は、上記式(1)で示される基及び酸基を有さず、エポキシ基を有していれば特に限定されない。構造単位(a-3)やモノマー(ma-3)の具体例や好ましい範囲については、アルカリ可溶性樹脂(A-1)の構成モノマーである、モノマー(ma-1)を生成するエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物と同様のものを用いることができる。アルカリ可溶性樹脂(A-2)が構造単位(a-3)を有することにより、エチレン性不飽和基を導入するための反応点となり、良好な現像性を有する感光性樹脂組成物が得られる。また、エチレン性不飽和基が導入されずにアルカリ可溶性樹脂(A-2)に残存するエポキシ基は、アルカリ可溶性樹脂(A-2)に導入されるカルボキシ基との架橋により熱硬化をアシストするため、感光性樹脂組成物としての低温硬化性を付与することができる。したがって、耐熱性の低い基材を用いる場合においても、良好な硬化性を有する感光性樹脂組成物が得られる。
【0050】
「その他のエチレン性不飽和化合物(ma-4)由来の構造単位(a-4)」
構造単位(a-4)は、構造単位(a-1)及び構造単位(a-3)以外のその他のエチレン性不飽和化合物(ma-4)(以下、単に「モノマー(ma-4)」とも言う。)に由来する構造単位である。モノマー(ma-4)は、上記式(1)で示される基、酸基、及びエポキシ基を有さず、モノマー(ma-1)及びモノマー(ma-3)と共重合可能な化合物であれば、特に限定されない。構造単位(a-4)やモノマー(ma-4)の具体例や好ましい範囲については、アルカリ可溶性樹脂(A-1)に用いるものと同様である。
【0051】
「エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物」
アルカリ可溶性樹脂(A-2)は、構造単位(a-3)のエポキシ基の一部にエポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物がさらに付加している。エポキシ基と反応性を有する基としては、合成容易性の観点から、好ましくはカルボキシ基である。アルカリ可溶性樹脂(A-2)は、構造単位(a-3)のエポキシ基に対する、エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物の付加率を調整することにより、アルカリ可溶性樹脂(A-2)の屈折率を調整することができる。また、アルカリ可溶性樹脂(A-2)へのエチレン性不飽和基の導入量を調整することができ、感光性樹脂組成物としての光硬化性や現像性を調整することができる。
【0052】
エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物の具体例としては、アルカリ可溶性樹脂(A-1)の構成モノマーである、モノマー(ma-2)に挙げられているものを使用することができ、中でも合成容易性の観点から(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0053】
「多塩基酸又はその無水物」
多塩基酸又はその無水物は、2以上のカルボキシ基を有する化合物又はその無水物である。アルカリ可溶性樹脂(A-2)は、構造単位(a-3)のエポキシ基にエポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物が付加し、前記エポキシ基が開環して生じたヒドロキシ基の一部に多塩基酸又はその無水物をさらに付加してカルボキシ基を導入する。アルカリ可溶性樹脂(A-2)は、多塩基酸又はその無水物によるカルボキシ基の導入量を調整することができるため、感光性樹脂組成物としての現像性を所望の範囲に調整することができる。
多塩基酸としては、アジピン酸、イタコン酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、酒石酸、グルタミン酸、セバシン酸等が挙げられる。多塩基酸無水物としては、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、シクロヘキサントリカルボン酸無水物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも硬化膜の硬度の観点から、脂環構造を有する多塩基酸無水物が好ましく、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水エチルマレイン酸、無水メチルイタコン酸、無水クロルマレイン酸、無水シトラコン酸、2-ノルボネン-5,6-ジカルボン酸無水物、4-[2-(メタクリロイルオキシ)エトキシカルボニル]無水フタル酸、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサントリカルボン酸無水物がより好ましく、カルボキシ基の導入量を増加させて低温硬化性を向上させる観点からテトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサントリカルボン酸無水物がさらに好ましい。
【0054】
〔アルカリ可溶性樹脂(A-2)の構造単位の割合〕
構造単位(a-1)の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-2)の主鎖を構成する構造単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは10モル%以上であり、より好ましくは30モル%以上であり、さらに好ましくは50モル%以上である。構造単位(a-1)の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-2)の主鎖を構成する構造単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは95モル%以下であり、より好ましくは85モル%以下であり、さらに好ましくは80モル%以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。構造単位(a-1)の含有割合が10モル%以上であると、樹脂硬化膜の屈折率が高いものとなる。
構造単位(a-1)の含有割合が95モル%以下であると、構造単位(a-3)の含有量と、エチレン性不飽和基の導入量及びカルボキシ基の導入量を十分に確保することができ、感光性樹脂組成物としての光硬化性と現像性が良好である。
【0055】
構造単位(a-3)の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-2)の主鎖を構成する構造単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは5モル%以上であり、より好ましくは10モル%以上であり、さらに好ましくは15モル%以上である。構造単位(a-3)の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-2)の主鎖を構成する構造単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは90モル%以下であり、より好ましくは70モル%以下であり、さらに好ましくは50モル%以下であり、よりさらに好ましくは40モル%以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
構造単位(a-3)の含有割合が5モル%以上であると、エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物の導入量を十分に確保することができ、感光性樹脂組成物としての光硬化性が良好である。また、多塩基酸又はその無水物の付加量を確保することができ、カルボキシ基の導入量を十分に確保することができるため、感光性樹脂組成物としての現像性が良好である。構造単位(a-3)の含有割合が90モル%以下であると、構造単位(a-1)の含有量を十分に確保することができ、樹脂硬化膜の屈折率が高いものとなる。
【0056】
構造単位(a-4)を含有する場合、構造単位(a-4)の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-2)の主鎖を構成する構造単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは1モル%以上であり、より好ましくは5モル%以上であり、さらに好ましくは10モル%以上である。構造単位(a-4)の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-2)を構成する構造単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは50モル%以下であり、より好ましくは40モル%以下であり、さらに好ましくは30モル%以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
構造単位(a-4)の含有割合が1モル%以上であると、感光性樹脂組成物として所望の機能を付与することができる。構造単位(a-4)の含有割合が50モル%以下であると、構造単位(a-1)や構造単位(a-3)の含有量を十分に確保することができ、感光性樹脂組成物としての現像性が良好であるとともに、樹脂硬化膜の屈折率が高いものとなる。
【0057】
エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物由来の構造単位の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-2)の主鎖を構成する構造単位の合計を100モルとしたときに、好ましくは1モル以上であり、より好ましくは5モル以上であり、さらに好ましくは10モル以上である。エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物由来の構造単位の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-2)の主鎖を構成する構造単位の合計を100モルとしたときに、好ましくは80モル以下であり、より好ましくは60モル以下であり、さらに好ましくは40モル以下であり、
よりさらに好ましくは30モル以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物由来の構造単位の含有割合が1モル以上であると、感光性樹脂組成物としての光硬化性が高いものとなる。エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物由来の構造単位の含有割合が80モル以下であると、前記アルカリ可溶性樹脂(A-2)を合成する際の残存原料を抑制でき、感光性樹脂組成物としての現像性を向上させることができる。
【0058】
前記構造単位(a-3)由来のエポキシ基のモル数に対するエポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物の付加率は、好ましくは10モル%以上であり、より好ましくは20モル%以上であり、さらに好ましくは30モル%以上である。
前記構造単位(a-3)由来のエポキシ基のモル数に対するエポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物の付加率は、好ましくは90モル%以下であり、より好ましくは85モル%以下であり、さらに好ましくは80モル%以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物の付加率が10モル%以上であると、感光性樹脂組成物としての光硬化性が良好である。また、アルカリ可溶性樹脂(A-2)に含まれるエポキシ基の量を調整して、良好な保存安定性が得られる。エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物の付加率が90モル%以下であると、前記アルカリ可溶性樹脂(A-2)を合成する際の残存原料を抑制でき、感光性樹脂組成物としての現像性を向上させることができる。また、アルカリ可溶性樹脂(A-2)に含まれるエポキシ基の量を調整して、低温硬化性を付与することができる。
【0059】
多塩基酸又はその無水物由来の構造単位の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-2)の主鎖を構成する構造単位の合計を100モルとしたときに、好ましくは1モル以上であり、より好ましくは5モル以上であり、さらに好ましくは10モル以上である。
多塩基酸又はその無水物由来の構造単位の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-2)の主鎖を構成する構造単位の合計を100モルとしたときに、好ましくは70モル以下であり、より好ましくは50モル以下であり、さらに好ましくは30モル以下である。
これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
多塩基酸又はその無水物由来の構造単位の含有割合が1モル以上であると、感光性樹脂組成物としての現像性が良好である。多塩基酸又はその無水物由来の構造単位の含有割合が70モル以下であると、前記アルカリ可溶性樹脂(A-2)を合成する際の残存原料を抑制でき、感光性樹脂組成物としての現像性残渣を低減できる。また、感光性樹脂組成物としての保存安定性が良好である。
【0060】
アルカリ可溶性樹脂(A-2)の前駆体が有するヒドロキシ基のモル数に対する多塩基酸又はその無水物の付加率は、好ましくは1モル%以上であり、より好ましくは10モル%以上であり、さらに好ましくは25モル%以上である。アルカリ可溶性樹脂(A-2)の前駆体が有するヒドロキシ基のモル数に対する多塩基酸又はその無水物の付加率は、好ましくは90モル%以下であり、より好ましくは75モル%以下であり、さらに好ましくは60モル%以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
アルカリ可溶性樹脂(A-2)の前駆体が有するヒドロキシ基のモル数とは、エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物が構造単位(a-3)由来のエポキシ基に付加することにより、エポキシ基が開環して生じるヒドロキシ基の他、構造単位(a-1)や任意で含有する構造単位(a-4)がヒドロキシ基を有する場合には、これらのヒドロキシ基も含めた合計のモル数である。
多塩基酸又はその無水物の付加率が1モル%以上であると、感光性樹脂組成物としての現像性が良好である。多塩基酸又はその無水物の付加率が90モル%以下であると、前記アルカリ可溶性樹脂(A-2)を合成する際の残存原料を抑制でき、感光性樹脂組成物としての現像性残渣を低減できる。また、感光性樹脂組成物としての保存安定性が良好である。
【0061】
〔アルカリ可溶性樹脂(A-2)の製造方法〕
アルカリ可溶性樹脂(A-2)を得るための共重合反応は、アルカリ可溶性樹脂(A-1)の製造方法と同様にして行えばよい。
上記式(1)で示される基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-1)と、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物(ma-3)及び必要に応じて用いてもよいその他のエチレン性不飽和化合物(ma-4)との共重合体へ上記エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物や、多塩基酸又はその無水物を付加する方法としては、公知の付加反応を用いることができる。例えば、上記式(1)で示される基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-1)と、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物(ma-3)及び必要に応じて用いてもよいその他のエチレン性不飽和化合物(ma-4)との共重合体溶液に触媒を添加した後、付加させる化合物を添加し、室温~150℃、好ましくは50~120℃の条件下で付加反応させる。触媒の具体例としては、トリエチルアミン等の第3級アミノ基、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、トリフェニルホスフィン等のリン化合物、クロムやスズ等の有機金属化合物等が挙げられる。
【0062】
〔アルカリ可溶性樹脂(A-3)〕
アルカリ可溶性樹脂(A-3)は、酸基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-2)に由来する、酸基を有する構造単位(a-2)と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-3)由来の構造単位(a-3)と、を含有する共重合体のエポキシ基の一部に、下記式(2)で示される化合物が付加した第2変性共重合体である。前記構造単位(a-2)と前記構造単位(a-3)とを含有する前記共重合体は、酸基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-2)と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-3)と、を含有する共重合体である。
【0063】
【化8】
(式中、R
2は-O-、-S-、又は-N(R
5)-であり、R
4はハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、又は芳香族基であり、R
12は-OH、-SH、又は-NHR
5であり、R
5はH、アルキル基、又はアルコキシ基であり、pは0~4の整数である。)
【0064】
アルカリ可溶性樹脂(A-3)は、必要に応じて、その他のエチレン性不飽和化合物(ma-4)由来の構造単位(a-4)(以下、単に「構造単位(a-4)」とも言う。)を含有しても良い。
【0065】
アルカリ可溶性樹脂(A-3)は、必要に応じて、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-3)由来のエポキシ基が開環して生じたヒドロキシ基の一部に多塩基酸又はその無水物がさらに付加した第3変性共重合体であっても良い。
【0066】
アルカリ可溶性樹脂(A-3)を用いることにより、特に透明性が良好で、さらに高い屈折率を有する樹脂硬化膜が得られる。アルカリ可溶性樹脂(A-1)は、適宜上記式(2)で示される化合物の付加率や、必要に応じて用いる多塩基酸又はその無水物の付加率を調整することができるため、感光性樹脂組成物としての現像性や樹脂組成物としての屈折率を所望の範囲に調整することができる。また、構造単位(a-2)の酸基と構造単位(a-3)のエポキシ基との熱硬化による架橋も進行するため、感光性樹脂組成物に低温硬化性を付与することができる。
【0067】
「酸基を有する構造単位(a-2)」
構造単位(a-2)は、酸基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-2)(以下、単に「モノマー(ma-2)」とも言う。)に由来する構造単位である。構造単位(a-2)は、上記式(1)で示される基を有さず、酸基を有していれば特に限定されない。
構造単位(a-2)やモノマー(ma-2)の具体例や好ましい範囲については、アルカリ可溶性樹脂(A-1)に用いるものと同様である。アルカリ可溶性樹脂(A-3)が構造単位(a-2)を有することにより、感光性樹脂組成物として、良好な現像性が得られる。
【0068】
「エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-3)由来の構造単位(a-3)」
構造単位(a-3)は、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(ma-3)(以下、単に「モノマー(ma-3)」とも言う。)に由来する構造単位である。構造単位(a-3)は、上記式(1)で示される基及び酸基を有さず、エポキシ基を有していれば特に限定されない。構造単位(a-3)やモノマー(ma-3)の具体例や好ましい範囲については、アルカリ可溶性樹脂(A-1)の構成モノマーである、モノマー(ma-1)を生成するエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物と同様のものを用いることができる。アルカリ可溶性樹脂(A-3)が構造単位(a-3)を有することにより、上記式(1)で示される基を導入するための反応点となり、高い屈折率を有する樹脂硬化膜が得られる。また、上記式(1)で示される基が導入されずにアルカリ可溶性樹脂(A-3)に残存するエポキシ基は、構造単位(a-2)との架橋により熱硬化をアシストするため、感光性樹脂組成物としての低温硬化性を付与することができる。したがって、耐熱性の低い基材を用いる場合においても、良好な硬化性を有する感光性樹脂組成物が得られる。
【0069】
「その他のエチレン性不飽和化合物(ma-4)由来の構造単位(a-4)」
構造単位(a-4)は、構造単位(a-2)及び構造単位(a-3)以外のその他のエチレン性不飽和化合物(ma-4)(以下、単に「モノマー(ma-4)」とも言う。)に由来する構造単位である。モノマー(ma-4)は、上記式(1)で示される基、酸基、及びエポキシ基を有さず、モノマー(ma-2)及びモノマー(ma-3)と共重合可能な化合物であれば、特に限定されない。構造単位(a-4)やモノマー(ma-4)の具体例や好ましい範囲については、アルカリ可溶性樹脂(A-1)に用いるものと同様である。
【0070】
「式(2)で示される化合物」
上記式(2)で示される化合物は、アルカリ可溶性樹脂(A-1)の構成モノマーである、モノマー(ma-1)を生成する「上記式(2)で示される化合物」と同様の具体例や好ましい範囲のものを用いることができる。アルカリ可溶性樹脂(A-3)は、構造単位(a-3)のエポキシ基の一部に上記式(2)で示される化合物を付加する際の付加率を調整することにより、アルカリ可溶性樹脂(A-3)の屈折率を調整することができ、樹脂硬化膜としての屈折率を所望の範囲に調整することができる。
【0071】
「多塩基酸又はその無水物」
多塩基酸又はその無水物は、アルカリ可溶性樹脂(A-2)の項目に記載した、多塩基酸又はその無水物と同様の具体例と好ましい範囲のものを用いることができる。アルカリ可溶性樹脂(A-3)は、構造単位(a-3)のエポキシ基に上記式(2)で示される化合物が付加し、前記エポキシ基が開環して生じたヒドロキシ基の一部に多塩基酸又はその無水物をさらに付加してカルボキシ基を導入することができる。アルカリ可溶性樹脂(A-3)は、多塩基酸又はその無水物によるカルボキシ基の導入量を調整することができるため、感光性樹脂組成物としての現像性を所望の範囲に調整することができる。
【0072】
〔アルカリ可溶性樹脂(A-3)の構造単位の割合〕
構造単位(a-2)の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-3)の主鎖を構成する構造単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは5モル%以上であり、より好ましくは10モル%以上であり、さらに好ましくは15モル%以上である。構造単位(a-2)の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-3)の主鎖を構成する構造単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは90モル%以下であり、より好ましくは70モル%以下であり、さらに好ましくは50モル%以下であり、よりさらに好ましくは40モル%以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
構造単位(a-2)の含有割合が5モル%以上であると、感光性樹脂組成物としての現像性が良好である。構造単位(a-2)の含有割合が90モル%以下であると、構造単位(a-3)の含有量を十分に確保することができ、上記式(2)で示される化合物の導入量を確保できるため、樹脂硬化膜の屈折率が高いものとなる。
【0073】
構造単位(a-3)の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-3)の主鎖を構成する構造単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは10モル%以上であり、より好ましくは30モル%以上であり、さらに好ましくは50モル%以上である。構造単位(a-3)の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-3)の主鎖を構成する構造単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは95モル%以下であり、より好ましくは90モル%以下であり、さらに好ましくは85モル%以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
構造単位(a-3)の含有割合が10モル%以上であると、上記式(2)で示される化合物の導入量を確保できるため、樹脂硬化膜の屈折率が高いものとなる。構造単位(a-3)の含有割合が95モル%以下であると、構造単位(a-2)の含有量を十分に確保することができ、感光性樹脂組成物としての現像性が良好である。
【0074】
構造単位(a-4)を含有する場合、構造単位(a-4)の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-3)の主鎖を構成する構造単位の合計を100モル%としたときに、
好ましくは1モル%以上であり、より好ましくは5モル%以上であり、さらに好ましくは10モル%以上である。構造単位(a-4)の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-3)の主鎖を構成する構造単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは50モル%以下であり、より好ましくは40モル%以下であり、さらに好ましくは30モル%以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
構造単位(a-4)の含有割合が1モル%以上であると、感光性樹脂組成物として所望の機能を付与することができる。構造単位(a-4)の含有割合が50モル%以下であると、構造単位(a-2)や構造単位(a-3)の含有量を十分に確保することができ、感光性樹脂組成物としての現像性が良好であるとともに、樹脂硬化膜の屈折率が高いものとなる。
【0075】
上記式(2)で示される化合物由来の構造単位の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-3)の主鎖を構成する構造単位の合計を100モルとしたときに、好ましくは5モル以上であり、より好ましくは10モル以上であり、さらに好ましくは15モル以上である。
上記式(2)で示される化合物由来の構造単位の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-3)の主鎖を構成する構造単位の合計を100モルとしたときに、好ましくは90モル以下であり、より好ましくは80モル以下であり、さらに好ましくは70モル以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
上記式(2)で示される化合物由来の構造単位の含有割合が5モル以上であると、樹脂硬化膜の屈折率が高いものとなる。上記式(2)で示される化合物由来の構造単位の含有割合が90モル以下であると、前記アルカリ可溶性樹脂(A-3)を合成する際の残存原料を抑制でき、感光性樹脂組成物としての現像性を向上させることができる。
【0076】
前記構造単位(a-3)由来のエポキシ基のモル数に対する上記式(2)で示される化合物の付加率は、好ましくは10モル%以上であり、より好ましくは20モル%以上であり、さらに好ましくは30モル%以上である。前記構造単位(a-3)由来のエポキシ基のモル数に対する上記式(2)で示される化合物の付加率は、好ましくは90モル%以下であり、より好ましくは85モル%以下であり、さらに好ましくは80モル%以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
上記式(2)で示される化合物の付加率が10モル%以上であると、樹脂硬化膜の屈折率が高いものとなる。また、アルカリ可溶性樹脂(A-3)に含まれるエポキシ基の量を調整して、良好な保存安定性が得られる。上記式(2)で示される化合物の付加率が90モル%以下であると、前記アルカリ可溶性樹脂(A-3)を合成する際の残存原料を抑制でき、感光性樹脂組成物としての現像性を向上させることができる。また、アルカリ可溶性樹脂(A-3)に含まれるエポキシ基の量を調整して、低温硬化性を付与することができる。
【0077】
多塩基酸又はその無水物由来の構造単位を含有する場合、多塩基酸又はその無水物由来の構造単位の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-3)の主鎖を構成する構造単位の合計を100モルとしたときに、好ましくは1モル以上であり、より好ましくは5モル以上であり、さらに好ましくは10モル以上である。多塩基酸又はその無水物由来の構造単位の含有割合は、前記アルカリ可溶性樹脂(A-3)の主鎖を構成する構造単位の合計を100モルとしたときに、好ましくは70モル以下であり、より好ましくは60モル以下であり、さらに好ましくは50モル以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
多塩基酸又はその無水物由来の構造単位の含有割合が1モル以上であると、感光性樹脂組成物としての現像性をさらに向上させることができる。多塩基酸又はその無水物由来の構造単位の含有割合が70モル以下であると、前記アルカリ可溶性樹脂(A-3)を合成する際の残存原料を抑制でき、感光性樹脂組成物としての現像性残渣を低減できる。また、感光性樹脂組成物としての保存安定性が良好である。
【0078】
多塩基酸又はその無水物由来の構造単位を含有する場合、上記式(2)で示される化合物由来の構造単位のモル数に対する多塩基酸又はその無水物の付加率は、好ましくは1モル%以上であり、より好ましくは10モル%以上であり、さらに好ましくは25モル%以上である。上記式(2)で示される化合物由来の構造単位のモル数に対する多塩基酸又はその無水物の付加率は、好ましくは90モル%以下であり、より好ましくは75モル%以下であり、さらに好ましくは60モル%以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
多塩基酸又はその無水物の付加率が1モル%以上であると、感光性樹脂組成物としての現像性をさらに向上させることができる。多塩基酸又はその無水物の付加率が90モル%以下であると、前記アルカリ可溶性樹脂(A-3)を合成する際の残存原料を抑制でき、感光性樹脂組成物としての現像性残渣を低減できる。また、感光性樹脂組成物としての保存安定性が良好である。
【0079】
〔アルカリ可溶性樹脂(A-3)の製造方法〕
アルカリ可溶性樹脂(A-3)を得るための共重合反応は、アルカリ可溶性樹脂(A-1)の製造方法と同様にして行えばよい。
酸基含有エチレン性不飽和化合物(ma-2)と、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物(ma-3)及び必要に応じて用いてもよいその他のエチレン性不飽和化合物(ma-4)との共重合体へ上記式(2)で示される化合物や、必要に応じて多塩基酸又はその無水物を付加する方法としては、公知の付加反応を用いることができる。例えば、酸基含有エチレン性不飽和化合物(ma-2)と、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物(ma-3)及び必要に応じて用いてもよいその他のエチレン性不飽和化合物(ma-4)との共重合体溶液に触媒を添加した後、付加させる化合物を添加し、室温~150℃、好ましくは50~120℃の条件下で付加反応させる。触媒の具体例としては、トリエチルアミン等の第3級アミノ基、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、トリフェニルホスフィン等のリン化合物、クロムやスズ等の有機金属化合物等が挙げられる。
【0080】
〔アルカリ可溶性樹脂(A-4)〕
アルカリ可溶性樹脂(A-4)は、エポキシ樹脂が有するエポキシ基の一部に下記式(2)で示される化合物が付加し、さらにエポキシ基が開環して生じたヒドロキシ基の一部に多塩基酸又はその無水物が付加した変性エポキシ樹脂である。
【0081】
【化9】
(式中、R
2は-O-、-S-、又は-N(R
5)-であり、R
4はハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、又は芳香族基であり、R
12は-OH、-SH、又は-NHR
5であり、R
5はH、アルキル基、又はアルコキシ基であり、pは0~4の整数である。)
【0082】
アルカリ可溶性樹脂(A-4)は、必要に応じて、エポキシ樹脂が有するエポキシ基の一部に、エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物がさらに付加していても良い。
【0083】
アルカリ可溶性樹脂(A-4)を用いることにより、特に屈折率が高く、複屈折率の小さい樹脂硬化膜を得ることができ、さらに現像性を両立した感光性樹脂組成物が得られる。
【0084】
「エポキシ樹脂」
エポキシ樹脂は、エポキシ基を有していれば、特に限定されない。
具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものであるノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等);
上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂;
上記フェノール化合物及びナフトール化合物と、アルデヒド化合物とを酸性触媒下で共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものである共重合型エポキシ樹脂;
ビスフェノールA、ビスフェノールF等のジグリシジルエーテルであるジフェニルメタン型エポキシ樹脂;
アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;
スチルベン系フェノール化合物のジグリシジルエーテルであるスチルベン型エポキシ樹脂;
ビスフェノールS等のジグリシジルエーテルである硫黄原子含有型エポキシ樹脂;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂;
フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸化合物のグリシジルエステルであるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;
アニリン、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したものであるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;
ジシクロペンタジエンとフェノール化合物の共縮合樹脂をエポキシ化したものであるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;
分子内のオレフィン結合をエポキシ化したものであるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;
パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるパラキシリレン変性エポキシ樹脂;
メタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるメタキシリレン変性エポキシ樹脂;
テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるテルペン変性エポキシ樹脂;
ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;
シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;
多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルである多環芳香環変性エポキシ樹脂;
ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるナフタレン型エポキシ樹脂;
ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;
オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;
フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるアラルキル型エポキシ樹脂;などが挙げられる。
さらにはシリコーン樹脂のエポキシ化物、アミノフェノールのグリシジルエーテルであるアミノフェノール型エポキシ樹脂等もエポキシ樹脂として挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、解性、分子量と高屈折率の観点から、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が好ましく、ノボラック型エポキシ樹脂がより好ましく、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂がさらに好ましい。
【0085】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に制限されない。樹脂硬化膜の屈折率や感光性樹脂組成物としての現像性等の各種特性バランスの観点からは、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、60g/eq~1000g/eqであることが好ましく、80g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
【0086】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は特に制限されない。粘度と現像性の観点からは、エポキシ樹脂の重量平均分子量は500~30000が好ましく、1000~10000がより好ましく2000~5000がさらに好ましい。
【0087】
「式(2)で示される化合物」
上記式(2)で示される化合物は、アルカリ可溶性樹脂(A-1)の構成モノマーである、モノマー(ma-1)を生成する「上記式(2)で示される化合物」と同様の具体例や好ましい範囲のものを用いることができる。アルカリ可溶性樹脂(A-4)は、エポキシ樹脂のエポキシ基の一部に上記式(2)で示される化合物を付加する際の付加率を調整することにより、アルカリ可溶性樹脂(A-4)の屈折率を調整することができ、樹脂硬化膜としての屈折率を所望の範囲に調整することができる。
【0088】
「多塩基酸又はその無水物」
多塩基酸又はその無水物は、アルカリ可溶性樹脂(A-2)の項目に記載した、多塩基酸又はその無水物と同様の具体例と好ましい範囲のものを用いることができる。アルカリ可溶性樹脂(A-4)は、エポキシ樹脂のエポキシ基に上記式(2)で示される化合物が付加し、前記エポキシ基が開環して生じたヒドロキシ基の一部に多塩基酸又はその無水物をさらに付加してカルボキシ基を導入する。アルカリ可溶性樹脂(A-4)は、多塩基酸又はその無水物によるカルボキシ基の導入量を調整することができるため、感光性樹脂組成物としての現像性を所望の範囲に調整することができる。
【0089】
「エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物」
アルカリ可溶性樹脂(A-4)は、必要に応じて、前記エポキシ樹脂由来のエポキシ基の一部にエポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物がさらに付加していても良い。エポキシ基と反応性を有する基としては、合成容易性の観点から、好ましくはカルボキシ基である。アルカリ可溶性樹脂(A-4)は、エポキシ樹脂のエポキシ基に対する、エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物の付加率を調整することにより、アルカリ可溶性樹脂(A-4)の屈折率を調整することができる。また、アルカリ可溶性樹脂(A-4)へのエチレン性不飽和基の導入量を調整することができ、感光性樹脂組成物としての光硬化性や現像性を調整することができる。
【0090】
エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物の具体例としては、アルカリ可溶性樹脂(A-1)の構成モノマーである、モノマー(ma-2)に挙げられているものを使用することができ、中でも合成容易性の観点から(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0091】
〔アルカリ可溶性樹脂(A-4)の構造単位の割合〕
前記エポキシ樹脂由来のエポキシ基のモル数に対する上記式(2)で示される化合物の付加率は、好ましくは10モル%以上であり、より好ましくは20モル%以上であり、
さらに好ましくは30モル%以上である。前記エポキシ樹脂由来のエポキシ基のモル数に対する上記式(2)で示される化合物の付加率は、好ましくは90モル%以下であり、
より好ましくは85モル%以下であり、さらに好ましくは80モル%以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
上記式(2)で示される化合物の付加率が10モル%以上であると、樹脂硬化膜の屈折率が高いものとなる。また、アルカリ可溶性樹脂(A-3)に含まれるエポキシ基の量を調整して、良好な保存安定性が得られる。上記式(2)で示される化合物の付加率が90モル%以下であると、前記アルカリ可溶性樹脂(A-4)を合成する際の残存原料を抑制でき、感光性樹脂組成物としての現像性を向上させることができる。また、アルカリ可溶性樹脂(A-4)に含まれるエポキシ基の量を調整して、低温硬化性を付与することができる。
【0092】
上記式(2)で示される化合物由来の構造単位のモル数に対する多塩基酸又はその無水物の付加率は、好ましくは10モル%以上であり、より好ましくは20モル%以上であり、さらに好ましくは30モル%以上である。上記式(2)で示される化合物由来の構造単位のモル数に対する多塩基酸又はその無水物の付加率は、好ましくは90モル%以下であり、より好ましくは75モル%以下であり、さらに好ましくは60モル%以下である。
これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
多塩基酸又はその無水物の付加率が1モル%以上であると、感光性樹脂組成物としての現像性を向上させることができる。多塩基酸又はその無水物の付加率が90モル%以下であると、前記アルカリ可溶性樹脂(A-4)を合成する際の残存原料を抑制でき、感光性樹脂組成物としての現像性残渣を低減できる。また、感光性樹脂組成物としての保存安定性が良好である。
【0093】
エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物由来の構造単位を有する場合、前記エポキシ樹脂由来のエポキシ基のモル数に対する上記式エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物の付加率は、好ましくは1モル%以上であり、より好ましくは5モル%以上であり、さらに好ましくは10モル%以上である。前記エポキシ樹脂由来のエポキシ基のモル数に対する上記式エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物の付加率は、好ましくは60モル%以下であり、より好ましくは40モル%以下であり、さらに好ましくは30モル%以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物の付加率が1モル%以上であると、感光性樹脂組成物としての現像性をさらに向上させることができる。エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物の付加率が60モル%以下であると、上記式(2)で示される化合物の付加率を十分に確保することができ、樹脂硬化膜の屈折率が十分に高いものとなる。
【0094】
エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物由来の構造単位を有する場合、多塩基酸又はその無水物の付加率は、上記式(2)で示される化合物由来の構造単位のモル数に対する付加率の部分を、上記式(2)で示される化合物由来の構造単位と、エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物由来の構造単位と、の合計のモル数に対する付加率と読み替えて、同様の範囲の付加率で用いることが好ましい。
【0095】
〔アルカリ可溶性樹脂(A-4)の製造方法〕
アルカリ可溶性樹脂(A-4)は、エポキシ樹脂が有するエポキシ基の一部に下記式(2)で示される化合物、及び必要に応じて、エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物を付加し、さらにエポキシ基が開環して生じたヒドロキシ基の一部に多塩基酸又はその無水物を付加することにより製造することができる。
エポキシ樹脂へ上記式(2)で示される化合物や、必要に応じて、エポキシ基と反応性を有する基とエチレン性不飽和基とを有する化合物を付加する方法、さらにヒドロキシ基が開環して生じたヒドロキシ基へ多塩基酸又はその無水物を付加する方法としては、公知の付加反応を用いることができる。例えば、エポキシ樹脂と溶剤を混合した溶液に触媒を添加した後、付加する化合物を添加し、室温~150℃、好ましくは50~120℃の条件下で付加反応させる。触媒の具体例としては、トリエチルアミン等の第3級アミノ基、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、トリフェニルホスフィン等のリン化合物、クロムやスズ等の有機金属化合物等が挙げられる。
【0096】
(感光性樹脂組成物)
本発明の一実施形態の感光性樹脂組成物(本実施形態の感光性樹脂組成物ということがある)は、上記の本実施形態のアルカリ可溶性樹脂(A)と、反応性希釈剤(B)と、光重合開始剤(C)と、溶剤(D)と、を含有するものである。前記感光性樹脂組成物は、必要に応じて、着色剤(E)を含有する。本実施形態の感光性樹脂組成物は、光照射されることにより重合硬化し、樹脂硬化膜を形成する。
【0097】
本実施形態の感光性樹脂組成物におけるアルカリ可溶性樹脂(A)の含有量は、前記アルカリ可溶性樹脂(A)及び前記反応性希釈剤(B)の合計100質量%に対して、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。アルカリ可溶性樹脂(A)の含有量は、前記アルカリ可溶性樹脂(A)及び前記反応性希釈剤(B)の合計100質量%に対して、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
反応性希釈剤(A)の含有割合が上記範囲内であると、感光性樹脂組成物の現像性および光硬化性がより適切になる。
【0098】
[反応性希釈剤(B)]
本実施形態の感光性樹脂組成物に含まれる反応性希釈剤(B)としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のエチレン性不飽和基を有する低分子量化合物であればよく、特に限定されない。硬化性(反応性)向上のため、エチレン性不飽和基を複数個有する反応性希釈剤(多官能反応性希釈剤)が好ましい。反応性希釈剤(B)の具体例としては、芳香族ビニル系モノマー類;酢酸ビニル、アジピン酸ビニル等のポリカルボン酸モノマー類;単官能(メタ)アクリレート類;多官能(メタ)アクリレート類;トリアリルシアヌレート等が挙げられる。
【0099】
芳香族ビニル系モノマー類の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、α-クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等が挙げられる。
【0100】
単官能(メタ)アクリレート類の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、β-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0101】
多官能(メタ)アクリレート類の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0102】
これらの中でも反応性希釈剤(B)としては、硬化性(反応性)向上のため、多官能(メタ)アクリレート類が好ましく、特に、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、および/またはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。
これらの反応性希釈剤(B)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
本実施形態の感光性樹脂組成物における反応性希釈剤(B)の含有量は、前記アルカリ可溶性樹脂(A)及び前記反応性希釈剤(B)の合計100質量%に対して、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上である。反応性希釈剤(B)の含有量は、前記アルカリ可溶性樹脂(A)及び前記反応性希釈剤(B)の合計100質量%に対して、好ましくは90質量%以下であり、
より好ましくは75質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。
反応性希釈剤(B)の含有割合が上記範囲内であると、感光性樹脂組成物の粘度および光硬化性がより適切になる。
【0104】
[光重合開始剤(C)]
光重合開始剤(C)としては、特に限定されないが、例えば、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル-]-,-1-(O-アセチルオキシム);ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、4’-(1-t-ブチルジオキシ-1-メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン化合物;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1;2-メチルアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等のアントラキノン化合物;キサントン;チオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等のチオキサントン化合物;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール化合物;ベンゾフェノン、4-(1-t-ブチルジオキシ-1-メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラキス(t-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤などが挙げられる。光重合開始剤(C)は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0105】
感光性樹脂組成物中の光重合開始剤(C)の含有量は、アルカリ可溶性樹脂(A)と反応性希釈剤(B)の合計100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1.0質量部以上であることがさらに好ましい。感光性樹脂組成物中の光重合開始剤(C)の含有量は、アルカリ可溶性樹脂(A)と反応性希釈剤(B)の合計100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。光重合開始剤(C)の含有量が0.1質量部以上であると、光硬化性の良好な感光性樹脂組成物を得ることができる。光重合開始剤(C)の含有量が30質量部以下であると、光重合開始剤(C)が多すぎることによって感光性樹脂組成物の硬化物の物性に悪影響を来すことを防止できる。
【0106】
[溶剤(D)]
溶剤(D)としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸メチル等のヒドロキシ基含有カルボン酸エステル;及びジエチレングリコールなどのヒドロキシ基含有溶剤;並びにエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン;3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸i-プロピル、酢酸i-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸i-アミル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸i-プロピル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソ酪酸エチル等のエステル;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;及びN-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミドなどのヒドロキシ基非含有溶剤が挙げられる。溶剤(D)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
これらの溶剤(D)の中でも、入手の容易さ、コスト及びレジスト作製時の安定性の観点から、エーテルを用いることが好ましく、具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、及び3-メトキシ-1-ブタノールから選ばれる1種又は2種以上を用いることがより好ましい。
【0108】
感光性樹脂組成物中の溶剤(C)の含有量は、溶剤(D)を除く成分の合計100質量部に対して、30質量部以上であることが好ましく、より好ましくは50質量部以上である。感光性樹脂組成物中の溶剤(C)の含有量は、溶剤(D)を除く成分の合計100質量部に対して、1,000質量部以下であることが好ましく、より好ましくは800質量部以下である。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。溶剤(C)の含有量が30質量部以上であると、感光性樹脂組成物の粘度を適正な範囲とすることができる。溶剤(C)の含有量が1,000質量部以下であると、感光性樹脂組成物を基材上に塗布して形成した塗布膜中の溶剤(C)を除去する場合に、容易に溶剤(C)を除去できる。
【0109】
[着色剤(E)]
感光性樹脂組成物は、必要に応じて、着色剤(E)を含有しても良い。着色剤(E)を含有する感光性樹脂組成物は、カラーフィルターの材料として用いることができる。
【0110】
着色剤(E)は、溶剤(D)に溶解又は分散するものであれば特に限定されず、例えば、染料、顔料などが挙げられる。
【0111】
染料としては、溶剤(D)及びアルカリ現像液に対する溶解性、感光性樹脂組成物中の他の成分との相互作用、耐熱性などの観点から、カルボキシ基、スルホ基などの酸基を有する酸性染料、酸性染料の窒素化合物との塩、酸性染料のスルホンアミド付加体などを用いることが好ましい。
【0112】
このような染料の例としては、acid alizarin violet N;acid black 1、2、24、48;acid blue 1、7、9、25、29、40、45、62、70、74、80、83、90、92、112、113、120、129、147;solvent blue 38、44、70;acid chrome violet K;acid Fuchsin;acid green 1、3、5、25、27、50;acid orange 6、7、8、10、12、50、51、52、56、63、74、95;acid red 1、4、8、14、17、18、26、27、29、31、34、35、37、42、44、50、51、52、57、69、73、80、87、88、91、92、94、97、103、111、114、129、133、134、138、143、145、150、151、158、176、183、198、211、215、216、217、249、252、257、260、266、274;acid violet 6B、7、9、17、19;acid yellow 1、3、9、11、17、23、25、29、34、36、42、54、72、73、76、79、98、99、111、112、114、116;food yellow 3及びこれらの誘導体などが挙げられる。これらの中でも、アゾ系、キサンテン系、アンスラキノン系、又はフタロシアニン系の酸性染料が好ましい。染料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0113】
顔料の例としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、15、16、17、20、24、31、53、83、86、93、94、109、110、117、125、128、137、138、139、147、148、150、153、154、166、173、194、214等の黄色顔料;C.I.ピグメントオレンジ13、31、36、38、40、42、43、51、55、59、61、64、65、71、73等の橙色顔料;C.I.ピグメントレッド9、97、105、122、123、144、149、166、168、176、177、180、192、209、215、216、224、242、254、255、264、265等の赤色顔料;C.I.ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、60等の青色顔料;C.I.ピグメントバイオレット1、19、23、29、32、36、38等のバイオレット色顔料;C.I.ピグメントグリーン7、36、58、59等の緑色顔料;C.I.ピグメントブラウン23、25等の茶色顔料;C.I.ピグメントブラック1、7、カーボンブラック、チタンブラック、酸化鉄等の黒色顔料などが挙げられる。顔料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0114】
着色剤(E)は、例えば、目的とする着色パターン(ブラックマトリックス及び画素)の色などに応じて、適宜決定できる。着色剤(E)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。着色剤(E)として2種以上のものを用いる場合、染料と顔料とを組み合わせて用いてもよい。
【0115】
着色剤(E)として顔料を用いる場合、顔料の分散性を向上させる観点から、公知の分散剤を感光性樹脂組成物に配合してもよい。分散剤としては、経時の分散安定性に優れる高分子分散剤を用いることが好ましい。高分子分散剤としては、例えば、ウレタン系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレングリコールジエステル系分散剤、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤、脂肪族変性エステル系分散剤などが挙げられる。高分子分散剤として、EFKA(エフカーケミカルズビーブイ(EFKA CHEMICALS B.V.)社製)、Disperbyk(ビックケミー社製)、ディスパロン(楠本化成株式会社製)、SOLSPERSE(ルーブリゾール社製)などの商品名で市販されているものを用いてもよい。分散剤の含有量は、着色剤(E)として使用する顔料の種類及び量などに応じて適宜設定すればよい。
【0116】
感光性樹脂組成物中の着色剤(E)の含有量は、アルカリ可溶性樹脂(A)及び前記反応性希釈剤(B)の合計100質量部に対して、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましい。感光性樹脂組成物中の着色剤(E)の含有量は、アルカリ可溶性樹脂(A)及び前記反応性希釈剤(B)の合計100質量部に対して、80質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることがさらに好ましい。これらの下限値と上限値の組み合わせは、いかなる組み合わせでもよい。着色剤(E)の含有量が3質量部以上であると、着色剤(E)を含有することによる効果が顕著となり、カラーフィルターの着色パターンの材料として好適な感光性樹脂組成物が得られる。着色剤(E)の含有量が80質量部以下であると、着色剤(E)が、感光性樹脂組成物の硬化性に支障を来すことがなく、低温硬化性の良好な感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0117】
[その他の成分]
一実施形態の感光性樹脂組成物には、アルカリ可溶性樹脂(A)と、反応性希釈剤(B)と、光重合開始剤(C)と、溶剤(D)と、必要に応じて含有される着色剤(E)に加えて、必要に応じて、カップリング剤、レベリング剤、熱重合禁止剤などの公知の添加剤を配合してもよい。添加剤の配合量は、本発明の効果を阻害しない範囲であればよく、特に限定されない。
【0118】
<感光性樹脂組成物の製造方法>
一実施形態の感光性樹脂組成物は、公知の混合装置を用いて、アルカリ可溶性樹脂(A)と、反応性希釈剤(B)と、光重合開始剤(C)と、溶剤(D)と、必要に応じて含有される着色剤(E)とを混合する方法により製造できる。
【0119】
感光性樹脂組成物を製造する際には、原料として、アルカリ可溶性樹脂(A)を製造する際の反応液をそのまま用いることができる。この場合、反応液中に含まれる溶剤(D)は、感光性樹脂組成物又は感光性着色組成物中に含まれる溶剤(D)の一部又は全部として用いることができる。
【0120】
感光性樹脂組成物は、上記式(1)で示される基を含有するアルカリ可溶性樹脂(A)を含むため、高い屈折率を有する樹脂硬化膜が得られる。
【0121】
また、感光性樹脂組成物は、目的に応じて現像性を調整することができ、屈折率とのバランスを加味して所望の範囲にコントロールすることができる。このことから、樹脂硬化膜の屈折率と感光性樹脂組成物の現像性を両立した材料が得られる。
【0122】
感光性樹脂組成物は、カラーフィルターの材料として好適に用いることができる。
【0123】
これらのことから、感光性樹脂組成物は、例えば、カラーフィルターの画素、ブラックマトリックス、カラーフィルター保護膜、フォトスペーサー、液晶配向用突起、マイクロレンズ、タッチパネル用絶縁膜などの画像表示素子の部材を形成するための材料として極めて有用である。
【0124】
(樹脂硬化膜)
本発明の一実施形態の樹脂硬化膜(本実施形態の樹脂硬化膜ということがある)は、感光性樹脂組成物の硬化物からなる。
【0125】
樹脂硬化膜は、例えば、基材上に感光性樹脂組成物を塗布し、溶剤(D)を揮発させて除去して塗布膜を形成し、塗布膜を露光して光硬化させた後、ベーキング処理を行う方法により製造できる。
【0126】
所定のパターン形状を有する樹脂硬化膜を形成する場合には、例えば、以下に示す方法を用いることができる。すなわち、基材上に感光性樹脂組成物を塗布し、溶剤(D)を揮発させて除去し、塗布膜を形成する。次に、所定のパターン形状を有するフォトマスクを介して、塗布膜を露光して露光部分を光硬化させる。次いで、塗布膜の未露光部分をアルカリ水溶液で現像する。その後、現像した塗布膜に対してベーキング処理を行うことにより、所定のパターン形状を有する樹脂硬化膜を形成する。
【0127】
樹脂硬化膜を製造する際における、感光性樹脂組成物の塗布方法、塗布膜の露光方法、及び現像方法としては、公知の方法を用いることができる。
【0128】
樹脂硬化膜を製造する際に行うベーキング処理の条件は、感光性樹脂組成物の組成、塗布膜の膜厚、基材の材質などに応じて適宜決定できる。ベーキング処理は、例えば、70℃~250℃の温度で行うことができる。ベーキング処理の温度は、好ましくは75℃以上であり、より好ましくは80℃以上である。ベーキング処理の温度が250℃以下であると、耐熱性の低い材料が耐えられる条件であり、感光性樹脂組成物の変色を抑えることができるため好ましい。
【0129】
樹脂硬化膜を製造する際に行うベーキング処理は、例えば、10分~4時間行うことができ、好ましくは20分~2時間であり、感光性樹脂組成物の組成、ベーキング処理の温度、塗布膜の膜厚などに応じて適宜決定できる。
【0130】
樹脂硬化膜は、感光性樹脂組成物の硬化物からなる。このため、樹脂硬化膜は、低い温度でベーキング処理する方法を用いて製造でき、しかも耐溶剤性に優れる。
【0131】
(カラーフィルター)
本発明の一実施形態のカラーフィルターは、感光性樹脂組成物の硬化物からなる着色パターンを備える。カラーフィルターは、アルカリ可溶性樹脂(A)及び反応性希釈剤(B)の合計100質量%に対して、アルカリ可溶性樹脂(A)を10~99質量%、反応性希釈剤(B)を1~90質量%、アルカリ可溶性樹脂(A)及び反応性希釈剤(B)の合計100質量部に対して、
光重合開始剤(C)を0.1~30質量部、着色剤(E)を3~80質量部、及び溶剤(D)を除く成分の合計100質量部に対して、溶剤(D)を30~1,000質量部含有する感光性樹脂組成物の硬化物からなる着色パターンを有することが好ましい。
【0132】
カラーフィルターは、例えば、基板と、その上に形成されるRGBの画素と、それぞれの画素の境界に形成されるブラックマトリックスと、画素及びブラックマトリックスの上に形成される保護膜とを含むものであってもよい。
【0133】
カラーフィルターにおいて、画素及びブラックマトリックスは、上記の感光性樹脂組成物の硬化物からなる着色パターンである。カラーフィルターにおいて、画素及びブラックマトリックスの材料以外の構成は、公知のものを採用できる。
【0134】
カラーフィルターに用いられる基板としては、特に限定されるものではなく、ガラス基板、シリコン基板、ポリカーボネート基板、ポリエステル基板、ポリアミド基板、ポリアミドイミド基板、ポリイミド基板、アルミニウム基板、プリント配線基板、アレイ基板などを用途に応じて適宜用いることができる。
【0135】
<カラーフィルターの製造方法>
次に、カラーフィルターの例示的な製造方法について説明する。まず、基板上に着色パターンを形成する。具体的には、基板上に、各画素の境界に形成されるブラックマトリックスとなる着色パターン、及びRGBの各画素となる着色パターンを、以下に示す方法により、順次形成する。
【0136】
着色パターンは、フォトリソグラフィ法により形成できる。具体的には、感光性樹脂組成物を基板上に塗布して塗布膜を形成する。その後、所定のパターン形状を有するフォトマスクを介して、塗布膜を露光して露光部分を光硬化させる。次いで、塗布膜の未露光部分をアルカリ水溶液で現像する。その後、現像した塗布膜に対してベーキング処理を行うことにより、所定のパターン形状を有する着色パターンを形成できる。
【0137】
感光性樹脂組成物の塗布方法は、特に限定されないが、スクリーン印刷法、ロールコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、スピンコート法など公知の方法を用いることができる。
【0138】
なお、基板上に感光性樹脂組成物を塗布した後、必要に応じて、循環式オーブン、赤外線ヒーター、ホットプレートなどの加熱手段を用いて基板を加熱することにより、塗布膜中に含まれる溶剤(D)を揮発させて除去してもよい。溶剤(D)を除去するために基板を加熱する条件は、特に限定されるものではなく、基板の材質及び感光性樹脂組成物の組成、塗布膜の膜厚などに応じて適宜設定すればよい。基板の加熱は、例えば、50℃~120℃の温度で30秒~30分間行うことができる。
【0139】
次いで、このようにして形成された塗布膜に、例えば、紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を、ネガ型のフォトマスクを介して照射し、部分的に露光し、露光部分を光硬化させる。塗布膜に照射する活性エネルギー線量は、感光性樹脂組成物の組成などに応じて適宜選択すればよく、例えば、30~2000mJ/cm2とすることができる。露光に用いる光源としては、特に限定されないが、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプなどを用いることができる。
【0140】
塗布膜の現像に用いられるアルカリ水溶液としては、特に限定されないが、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ化合物の水溶液;エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン化合物の水溶液;テトラメチルアンモニウムの硫酸塩、塩酸塩又はp-トルエンスルホン酸塩等の第四級アンモニウム塩の水溶液;3-メチル-4-アミノ-N,N-ジエチルアニリン、3-メチル-4-アミノ-N-エチル-N-β-ヒドロキシエチルアニリン、3-メチル-4-アミノ-N-エチル-N-β-メタンスルホンアミドエチルアニリン、3-メチル-4-アミノ-N-エチル-N-β-メトキシエチルアニリン、及びこれらの硫酸塩、塩酸塩又はp-トルエンスルホン酸塩等のアニリン化合物及びその塩の水溶液;p-フェニレンジアミン化合物及びその塩の水溶液などを用いることができる。なお、アルカリ水溶液には、必要に応じて消泡剤、及び界面活性剤等の添加剤を添加してもよい。
【0141】
上記のアルカリ水溶液を用いて塗布膜を現像した後、塗布膜を水洗して乾燥させることが好ましい。
【0142】
カラーフィルターを製造する際に行うベーキング処理の条件は、感光性樹脂組成物の組成、塗布膜の膜厚、基板の材質などに応じて適宜決定できる。ベーキング処理の温度は、例えば、70℃~210℃とすることができる。ベーキング温度が70℃以上であると、良好な硬化性が得られ、優れた耐溶剤性を有する硬化物が得られる。ベーキング処理の温度は、好ましくは75℃以上であり、より好ましくは80℃以上である。ベーキング処理の温度が210℃以下であると、カラーフィルターの材料として、耐熱性の低い基板などの耐熱性の低い材料を使用できるため好ましい。
【0143】
カラーフィルターを製造する際に行うベーキング処理は、例えば、10分~4時間行うことができ、好ましくは20分~2時間であり、感光性樹脂組成物の組成、ベーキング処理の温度、塗布膜の膜厚などに応じて適宜決定できる。
【0144】
感光性樹脂組成物は、良好な光硬化性及び低温硬化性を有する。このため、一実施形態の感光性樹脂組成物を用いて着色パターンを形成する場合、従来の感光性樹脂組成物を用いて着色パターンを形成する場合とベーキング処理の温度を同等にした場合、ベーキング処理の時間を短縮でき、効率よくカラーフィルターを形成できる。
【0145】
上述した着色パターンの製造方法を用いて、RGBの各画素となる着色パターン、及び各画素の境界に形成されるブラックマトリックスとなる着色パターンを形成した後、着色パターン(RGBの各画素及びブラックマトリックス)上に保護膜を形成する。
【0146】
保護膜の製造方法は、特に限定されず、一実施形態の感光性樹脂組成物を用いて形成しても良いし、公知の材料及び公知の方法を用いて形成してもよい。
【0147】
以上の工程により、カラーフィルターが得られる。
【0148】
ここでは、光重合開始剤(C)を含有する感光性樹脂組成物を使用し、感光性樹脂組成物を光硬化させる方法を用いて着色パターンを製造する場合を例に挙げて説明したが、例えば、感光性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤(C)の代わりに、硬化促進剤及び公知のエポキシ樹脂を含有する感光性樹脂組成物を使用し、基板上にインクジェット法により塗布した後、加熱する方法を用いて、アルカリ可溶性樹脂(A)を含む感光性樹脂組成物の硬化物からなる着色パターンを形成してもよい。
【0149】
(画像表示素子)
本発明の一実施形態の画像表示素子は、カラーフィルターを具備する。画像表示素子において、カラーフィルター以外の構成としては、公知のものを採用できる。画像表示素子の具体例としては、例えば、液晶表示素子、有機EL表示素子、CCD素子及びCMOS素子等の固体撮像素子などが挙げられる。
【0150】
画像表示素子におけるカラーフィルター以外の構成は、公知の方法により製造できる。例えば、画像表示素子として、液晶表示素子を製造する場合、以下に示す方法を用いて製造できる。まず、基板上に上述した方法を用いてカラーフィルターを形成する。その後、カラーフィルターを有する基板上に、電極、スペーサー等を順次形成する。次に、別の基板上に電極等を形成し、カラーフィルターを有する基板と対向配置させて張り合わせる。その後、対向する基板間に所定量の液晶を注入し、封止する。
【0151】
画像表示素子は、優れた耐溶剤性を有するカラーフィルターを具備しているため、色変化が少ない。
【実施例0152】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0153】
アルカリ可溶性樹脂(A)の合成例を以下に示す。
【0154】
[原料合成例]
攪拌装置、コンデンサー、温度計、冷却器及びガス導入管を備えたフラスコに、グリシジルメタクリレート462.0g、2-メルカプトベンゾチアゾール(2-MBT)538.0g、および4-メトキシフェノール(MEHQ)1.0gを仕込み、空気雰囲気下にて、反応温度80℃にて5時間反応を行い、本実施形態に係るモノマー(ma-1)として2-ヒドロキシ-3-(2-ベンゾチアゾリルチオ)プロピルメタクリレート(GMA-2MBT)を生成させた。
【0155】
【0156】
[合成例1]
攪拌装置、コンデンサー、温度計、冷却器及びガス導入管を備えたフラスコに、340.5gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エポキシ樹脂としてEpiclon N-660(DIC株式会社製)を195.9g(エポキシ基の総モル数として100モル)、上記式(2)で示される化合物として2-メルカプトベンゾチアゾールを144.6g(エポキシ樹脂のエポキシ基の総モル数100モルに対して95モル)、触媒として1.0gのトリフェニルホスフィンを仕込み、空気雰囲気下にて、120℃にて5時間反応させた。次に、多塩基酸無水物として1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物59.5g(エポキシ樹脂のエポキシ基の総モル数100モルに対して43モル)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを59.5gを加え、115℃で2時間にわたり反応を続け側鎖にカルボキシ基を導入した。次に、反応溶液に、固形分が40.0%となるように200.0gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、アルカリ可溶性樹脂(A-4)の溶液として試料No.P1を得た。
エポキシ樹脂のエポキシ基の総モル数100モルとして換算した際の各原料の配合割合と、アルカリ可溶性樹脂(A-4)の重量平均分子量、分子量分布、式(1)で示される基の当量数、酸価、屈折率を表1に示した。
【0157】
[合成例2]
攪拌装置、コンデンサー、温度計、冷却器及びガス導入管を備えたフラスコに、340.5gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エポキシ樹脂としてEpiclon N-660(DIC株式会社製)を207.1g(エポキシ基の総モル数として100モル)、上記式(2)で示される化合物として2-メルカプトベンゾチアゾールを112.6g(エポキシ樹脂のエポキシ基の総モル数100モルに対して70モル)、触媒として1.0gのトリフェニルホスフィンを仕込み、空気雰囲気下にて、120℃にて5時間反応させた。次に、アクリル酸を17.3g(エポキシ樹脂のエポキシ基の総モル数100モルに対して25モル)、4-メトキシフェノール(MEHQ)1.0gを上記の溶液中に投入し、120℃である時間にわたり反応を続けた。酸価が1KOHmg/g以下になったところで、
次に、多塩基酸無水物として1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物63.0g(エポキシ樹脂のエポキシ基の総モル数100モルに対して43モル)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを59.5g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)80.3gを加え、115℃で2時間にわたり反応を続け側鎖にカルボキシ基を導入した。次に、反応溶液に、固形分が40.0%となるように200.0gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、アルカリ可溶性樹脂(A-4)の溶液として試料No.P2を得た。
エポキシ樹脂のエポキシ基の総モル数100モルとして換算した際の各原料の配合割合と、アルカリ可溶性樹脂(A-4)の重量平均分子量、分子量分布、式(1)で示される基の当量数、酸価、屈折率を表1に示した。
【0158】
[合成例3]
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、575.3gのプロピレングリコールモノメチルエーテルを入れた。その後、窒素ガスで置換しながら撹拌し、120℃に昇温した。次に、モノマー(ma-2)としてアクリル酸を31.1g(20モル%)、モノマー(ma-3)としてグリシジルメタクリレートを245.5g(80モル%)からなるモノマー混合物に、重合開始剤として33.2gのt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(モノマー(ma-2)と(ma-3)との合計100質量部に対して12質量部)を添加したものを滴下ロートから1時間にわたり前記フラスコ中に滴下した。滴下終了後、78℃で4時間攪拌して共重合反応を行い、共重合体(P)を得た。
次に、前記フラスコ内をドライエアーに置換した後、上記式(2)で示される化合物として2-メルカプトベンゾチアゾールを90.2g(モノマー(ma-2)と(ma-3)との合計100モルに対して25モル)を加え、共重合体(P)への付加反応を60℃で3時間攪拌して行った。その後、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル24.50gを固形分が40.0%となるように添加し、アルカリ可溶性樹脂(A-3)の溶液として試料No.P3を得た。
モノマー(ma-2)と(ma-3)との合計を100モル%として換算した際の各モノマーの配合割合と、アルカリ可溶性樹脂(A-3)の重量平均分子量、分子量分布、式(1)で示される基の当量数、酸価、屈折率を表1に示した。
【0159】
[合成例4、合成例5]
上記式(2)で示される化合物として2-メルカプトベンゾチアゾールを、モノマー(ma-2)と(ma-3)との合計100モルに対してそれぞれ40モルおよび60モルを加えた以外は、合成例3と同様な方法で、アルカリ可溶性樹脂(A-3)の溶液として試料No.P4およびNo.P5を得た。また、合成例3と同様に評価し、その結果を表2に示す。
【0160】
[合成例6]
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、507.9gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを入れた。その後、窒素ガスで置換しながら撹拌し、120℃に昇温した。次に、モノマー(ma-1)として前記原料合成例で合成した(GMA-2MBT)233.4g(60%)、モノマー(ma-4)として1-ナフタレンメチルアクリレートを53.4g(20モル%)、モノマー(ma-3)としてグリシジルメタクリレートを35.7g(20モル%)からなるモノマー混合物に、重合開始剤として16.1gのt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(モノマー(ma-4)と(ma-3)と(ma-2)との合計100質量部に対して10質量部)を添加したものを滴下ロートから前記フラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃で2時間攪拌して共重合反応を行い、共重合体(P)を得た。
次に、前記フラスコ内をドライエアーに置換した後、アクリル酸を13.6g(モノマー(ma-4)と(ma-3)と(ma-2)との合計100モルに対して15モル)、触媒として1.0gのトリフェニルホスフィン(モノマー(ma-4)と(ma-3)と(ma-2)とアクリル酸との合計100質量部に対して0.3質量部)及び重合禁止剤として1.0gのハイドロキノンモノメチルエーテル(モノマー(ma-4)と(ma-3)と(ma-2)とアクリル酸との合計100質量部に対して0.3質量部)を加え、共重合体(P)への付加反応を120℃で5時間攪拌して行った。次に、多塩基酸無水物として1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物47.8g(モノマー(ma-4)と(ma-3)と(ma-2)との合計100モルに対して25モル)を加え、共重合体(P)への付加反応を120℃で1時間攪拌して行った。その後、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを固形分が40.0%となるように添加し、アルカリ可溶性樹脂(A-3)の溶液として試料No.P6を得た。
モノマー(ma-2)と(ma-3)と(ma-4)との合計を100モル%として換算した際の各モノマーの配合割合と、アルカリ可溶性樹脂(A-2)の重量平均分子量、分子量分布、式(1)で示される基の当量数、酸価、屈折率を表1に示した。
【0161】
[合成例7]
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル(PGME)454.6gを加え、窒素置換しながら攪拌し、78℃に昇温した。
次いで、モノマー(ma-1)として前記原料合成例で合成した(GMA-2MBT)330.6g(70モル%)、およびモノマー(ma-2)としてアクリル酸33.0g(30モル%)からなるモノマー混合物に、重合開始剤として36.4gの2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル(重合開始剤、日油社製、V-601)、およびプロピレングリコール1-モノメチルエーテル(PGME)145.4gを添加したものを、滴下ロートから1時間にわたって前記フラスコ中に滴下した。滴下終了後、98℃でさらに4時間攪拌して共重合反応を行った。その後、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを固形分が40.0%となるように添加し、アルカリ可溶性樹脂(A-1)の溶液として試料No.P7を得た。
モノマー(ma-1)と(ma-2)との合計を100モル%として換算した際の各モノマーの配合割合と、アルカリ可溶性樹脂(A-1)の重量平均分子量、分子量分布、式(1)で示される基の当量数、酸価、屈折率を表1に示した。
【0162】
[合成例8]
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)413.4gを加え、窒素置換しながら攪拌し、78℃に昇温した。
次いで、モノマー(ma-1)として前記原料合成例で合成した(GMA-2MBT)233.4g(60モル%)、モノマー(ma-2)としてアクリル酸20.0g(20モル%)、およびモノマー(ma-4)として4-ヒドロキシフェニルメタクリレートからなるモノマー混合物に、重合開始剤として33.1gの2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル(重合開始剤、日油社製、V-601)、およびプロピレングリコール1-モノメチルエーテル(PGME)132.3gを添加したものを、滴下ロートから1時間にわたって前記フラスコ中に滴下した。滴下終了後、98℃でさらに4時間攪拌して共重合反応を行った。その後、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを固形分が40.0%となるように添加し、アルカリ可溶性樹脂(A-1)の溶液として試料No.P8を得た。
モノマー(ma-1)と(ma-2)との合計を100モル%として換算した際の各モノマーの配合割合と、アルカリ可溶性樹脂(A-1)の重量平均分子量、分子量分布、式(1)で示される基の当量数、酸価、屈折率を表1に示した。
【0163】
[比較合成例1]
前記原料合成例と同様な方法で、(GMA-2MBT)を合成した。次に、反応溶液に、固形分が40.0%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、比較合成例1の溶液として試料No.cP1を得た。
比較合成例1の試料No.cP1として、その分子量、式(1)で示される基の当量数、酸価、屈折率を表1に示した。
【0164】
[比較合成例2]
攪拌装置、コンデンサー、温度計、冷却器及びガス導入管を備えたフラスコに、400.0gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エポキシ樹脂としてEpiclon N-660(DIC株式会社製)を230.2g(エポキシ基の総モル数として100モル)、上記式(2)で示される化合物として2-メルカプトベンゾチアゾールを169.8g(エポキシ樹脂のエポキシ基の総モル数100モルに対して95モル)、触媒として1.2gのトリフェニルホスフィンを仕込み、空気雰囲気下にて、120℃にて5時間反応させた。次に、反応溶液に、固形分が40.0%となるようにのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを200g加え、比較合成例2の樹脂溶液として試料No.cP2を得た。
エポキシ樹脂のエポキシ基の総モル数100モルとして換算した際の各原料の配合割合と、比較合成例2の樹脂の重量平均分子量、分子量分布、式(1)で示される基の当量数、酸価、屈折率を表1に示した。
【0165】
[比較合成例3]
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル(PGME)454.6gを加え、窒素置換しながら攪拌し、78℃に昇温した。
次いで、モノマー(ma-1)としてGMA-2MBT354.5g(90モル%)、およびモノマー(ma-2)としてアクリル酸9.2g(10モル%)からなるモノマー混合物に、重合開始剤として36.3gの2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル(重合開始剤、日油社製、V-601)、およびプロピレングリコール1-モノメチルエーテル(PGME)145.5gを添加したものを、滴下ロートから1時間にわたって前記フラスコ中に滴下した。滴下終了後、98℃でさらに4時間攪拌して共重合反応を行った比較合成例3の樹脂の溶液として試料No.cP3を得た。
モノマー(ma-1)と(ma-2)との合計を100モル%として換算した際の各モノマーの配合割合と、比較合成例3の樹脂の重量平均分子量、分子量分布、式(1)で示される基の当量数、酸価、屈折率を表1に示した。
【0166】
【0167】
表1において、それぞれの符号の意味は以下の通りである。
GMA:メタクリル酸グリシジル
GMA-2MBT:2-ヒドロキシ-3-(2-ベンゾチアゾリルチオ)プロピルメタクリレート
Epiclon N-660:エポキシ樹脂
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
PQMA:4-ヒドロキシフェニルメタクリレート
NMT-A:1-ナフタレンメチルアクリレート
2MBT:2-メルカプトベンゾチアゾール
THPA:1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物
SA:無水コハク酸
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0168】
【0169】
感光性樹脂組成物の調製例を以下に示す。
(実施例1~8、比較例1~3)
樹脂(A)として、合成例1~8、比較合成例1~3で得られた試料P1~P8,cP1~cP3と、表3に示す(B)、(C)、(D)成分とを、表3に示す割合で混合し、実施例1~8、比較例1~3の感光性樹脂組成物R1~R8、cR1~cR3をそれぞれ調製した。
【0170】
なお、表3における感光性樹脂組成物中の樹脂(A)の配合量には、樹脂(A)を合成する際に用いた溶剤は含まれない。また、表3における(D)溶剤の配合量は、感光性樹脂組成物中の樹脂(A)を合成する際に用いた溶剤と、感光性樹脂組成物を調製する際に追加で添加した溶剤との合計量である。
【0171】
【0172】
(感光性樹脂組成物の評価)
実施例1~8、比較例1~3で調製した感光性樹脂組成物R1~R8、cR1~cR3について、以下に示す方法により評価した。その結果を表4、表5に示す。
【0173】
<屈折率の測定法>
屈折率とは、屈折計を用いて測定した共重合体(A)の屈折率を意味する。本発明の共重合体(A)および溶剤(D)を含有する樹脂組成物(試料)の屈折率を下記条件にて測定し、次いで溶剤(D)の屈折率を下記条件にて測定する。次いで試料中に含まれる共重合体(A)の含有率(固形分)をJIS K6901 5.11に従って測定し、下記式を用いて試料中に含まれる共重合体(A)単独の屈折率を算出する。
測定器:J-357 Automatic Refractometer(Rudolph Research Analytical社)
測定波長:589nm
測定温度:25℃
共重合体(A)単独の屈折率=(試料の屈折率-溶剤(D)の屈折率)÷固形分×100+溶剤(D)の屈折率
【0174】
<固形分の測定法>
下記の合成例で得られた試料を130℃で2時間加熱した時の加熱残分を測定した。
【0175】
<安定性の評価>
粘度は、E形粘度計(東機産業製)により、液温25℃、回転数10rpm、1°34’×R24のローターを用いて測定した。
各試験体を10gずつ20mlのガラス容器に計り取って密閉し、12℃に保った恒温器測定の中に3ヶ月間静置して保存する保存試験を行った。
保存試験後の各試験体について、再び上記の方法により重量平均分子量(Mw)と25℃での粘度とを測定した。
保存試験前と後の重量平均分子量(Mw)、および保存試験前と後の25℃での粘度を用いて、下記式(I)、(II)により、重量平均分子量の増加率と25℃での粘度の増加率とをそれぞれ求め、以下に示す基準より評価した。その結果を表4、表5に示す。
【0176】
重量平均分子量の増加率(%)=((保存試験前の重量平均分子量-保存試験後の重量平均分子量)/保存試験前の重量平均分子量)×100 (I)
【0177】
粘度の増加率(%)=((保存試験前の粘度-保存試験後の粘度)/保存試験前の粘度)×100 (II)
【0178】
安定性は以下の基準より評価した。その結果を表4または表5に示す。
【0179】
評価基準:
◎:分子量の増加率と粘度の増加率の両方とも5%未満。
○:分子量の増加率と粘度の増加率の両方とも10%未満。
△:分子量の増加率と粘度の増加率の一方または両方が10%以上、20%未満。
【0180】
<感光性樹脂組成物によるパターン形成(現像無し)>
各感光性樹脂組成物を、5cm角ガラス基板(無アルカリガラス基板)上に、最終の硬化塗膜の平均厚さが2.0μmとなるようにスピンコートした後、100℃で3分間加熱することで溶剤を揮発させた。次に、塗膜全面を露光(露光量200mJ/cm2)し、光硬化させた後、さらに230℃で30分間ベーキングすることで樹脂硬化膜であるレジストを得た。
【0181】
<透過率の評価>
分光光度計UV-1650PC(株式会社島津製作所製)にて測定した。
【0182】
評価基準:
○:98%以上。
×:98%未満。
【0183】
<細線密着性、残渣の評価>
露光後の厚さが2.5μmとなるようにスピンコート法により、実施例1~9、比較例1~3の感光性樹脂組成物を、それぞれ5cm角のガラス基板(無アルカリガラス基板)上に塗布した(塗布工程)。感光性樹脂組成物を塗布したガラス基板を、100℃で3分間加熱することにより溶剤を揮発させて、塗布膜を乾燥させた(プリベーク工程)。
次に、超高圧水銀ランプを用いて200mJ/cm2の光を、乾燥させた塗布膜の表面に、フォトマスクを介して照射した(露光工程)。露光工程は、フォトマスクを塗布膜から100μm離間させた位置に設置して行った。フォトマスクとしては、幅3~100μmのラインアンドスペースパターンを有するものを用いた。次に、温度23℃で、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に10s~180s浸漬して現像し未露光部を除去した(現像工程)。現像工程後の塗布膜を有するガラス基板を、100℃の乾燥機中に30分間静置することにより、塗布膜を熱硬化させて(ポストベーク工程)、パターンを得た。
このようにして得られたパターンを(株)日立ハイテクノロジーズ製電子顕微鏡S-3400を用いて観察し、現像できた最小ライン幅(最小現像寸法)及び現像できたパターン間における未露光部の残渣の有無を評価した。残渣の有無については、以下の基準より評価した。その結果を表4または表5に示す。
【0184】
評価基準:
○:現像できたパターン間の未露光部に残渣無し。
×:現像できたパターン間の未露光部に残渣あり。
【0185】
<総合判定>
実施例1~9、比較例1~3の感光性樹脂組成物およびその硬化物からなる樹脂硬化膜について、以下に示す基準より評価した。その結果を表4または表5に示す。
【0186】
評価基準:
○:以下の項目を全て満たす。
(1)樹脂の屈折率(589nm)1.55以上。
(2)樹脂の分子量の増加率と粘度の増加率の両方とも10%未満。
(3)透過率が98%以上。
(4)現像性での最小現像寸法が30μm以下、かつ未露光部に残渣無し。
×:上記○の項目のうちいずれか1以上を満たさない、また、一箇所×がある。
【0187】
【0188】
【0189】
(考察)
表4と5の結果から、合成例1~8で得られたアルカリ可溶性樹脂(A)を用いた、実施例1~8は、高い屈折率と透過率を有する樹脂硬化膜が得られ、安定性が良好な感光性樹脂組成物を調製することができた。また、比較合成例1~3で得られたアルカリ可溶性樹脂を用いた比較例1~3より、現像性が良好な感光性樹脂組成物を調製することができた。
【0190】
実施例1~2は、本実施形態に係るアルカリ可溶性樹脂(A4)を用いた。主鎖の屈折率は高く、複屈折率は0に近い可能性がある。
実施例3~5は、本実施形態に係るアルカリ可溶性樹脂(A3)を用いた。樹脂中にエポキシ基が残存し熱硬化性能が付与されている。合成し易い。また、第三成分と共重合することもできる。
実施例6は、本実施形態に係るアルカリ可溶性樹脂(A2)を用いた。高屈折率モノマーとしてGMA-2MBTを用いて共重合し樹脂中に直接導入できるため、未反応の2MBTが発生することなく使い易い。また、二重結合の導入が可能であるため、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの反応性希釈剤(B)との相溶性が改善し、現像性が良くなった。
実施例7~8は、本実施形態に係るアルカリ可溶性樹脂(A1)を用いた。高屈折率モノマーとしてGMA-2MBTを用いて共重合し樹脂中に直接導入できるため、未反応の2MBTが発生することなく使い易い。また、アクリル酸を共重合することでカルボキシ基が導入され、付加反応を必要としないため、合成が容易である。未反応の低分子成分も発生しにくく、現像残差が大幅に低減できる。
【0191】
比較例1と2は、上記式(1)で示される基を有しても、固形分酸価が0.0KOHmg/gであるため、現像性が悪く、総合判定が×であった。
比較例3は、上記式(1)で示される基を有しても、固形分酸価が20KOHmg/g未満と低いため、現像性が悪く、総合判定が×であった。