(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098825
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】摩擦材組成物、摩擦材及び摩擦部材
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20250625BHJP
F16D 69/02 20060101ALI20250625BHJP
【FI】
C09K3/14 520C
C09K3/14 520M
C09K3/14 520H
C09K3/14 520J
C09K3/14 520G
F16D69/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215214
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 健司
(72)【発明者】
【氏名】池田 武彦
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA01
3J058AA41
3J058BA34
3J058CA02
3J058CA42
3J058GA07
3J058GA19
3J058GA73
3J058GA78
3J058GA92
(57)【要約】
【課題】フェード現象を抑制可能な摩擦材を形成可能な摩擦材組成物の提供。
【解決手段】セルロース繊維を含む繊維基材と、無機充填材と、を含み、アラミド繊維の含有率が、前記繊維基材全量に対して3質量%以下である摩擦材組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維を含む繊維基材と、無機充填材と、を含み、アラミド繊維の含有率が、前記繊維基材全量に対して3質量%以下である摩擦材組成物。
【請求項2】
前記セルロース繊維の含有率が、前記摩擦材組成物全量に対して1質量%以上である請求項1に記載の摩擦材組成物。
【請求項3】
前記アラミド繊維の含有率が、前記繊維基材全量に対して2質量%未満である請求項1に記載の摩擦材組成物。
【請求項4】
前記セルロース繊維の繊維長は、2000μm未満である請求項1に記載の摩擦材組成物。
【請求項5】
前記セルロース繊維の含有率が、前記摩擦材組成物全量に対して4質量%以上である請求項1に記載の摩擦材組成物。
【請求項6】
前記無機充填材は、ジルコニアを含む請求項1に記載の摩擦材組成物。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の摩擦材組成物を用いて形成される摩擦材。
【請求項8】
請求項7に記載の摩擦材を含む摩擦部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、摩擦材組成物、摩擦材及び摩擦部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、鉄道車両、各種産業用機械等には、その制動のためディスクブレーキパッド、ブレーキライニング等の摩擦材が使用されている。摩擦材は、ディスクローター、ブレーキドラム等の対面材と摩擦することにより、制動の役割を果たしている。
【0003】
例えば、摩擦特性及び振動特性が両立した摩擦材を提供するため、繊維基材、摩擦調整材及び結合材を含む摩擦材であって、銅、銅合金及び銅化合物から選ばれるうち少なくとも一種の銅成分の含有量が銅元素換算で5質量%以下であり、弾性黒鉛を2~7質量%、クロマイトを3~10質量%、スチール繊維を3~15質量%含む、摩擦材が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、高温制動におけるブレーキ振動が少なく、かつ低温摩耗の少ない摩擦材組成物を提供するため、結合材、有機充填材、無機充填材および繊維基材を含み、摩擦材組成物中に元素としての銅を含まない、または銅の含有量が0.5質量%以下であり、繊維長が2500μm以下のスチール繊維を2~5質量%含有し、層状結晶構造のチタン酸塩を含有することを特徴とする摩擦材組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、高温制動におけるブレーキ振動を抑制できる摩擦材組成物を提供するため、結合材、有機充填材、無機充填材および繊維基材を含み、摩擦材組成物中に元素としての銅を含まない、または銅の含有量が0.5質量%以下であり、繊維長が2500μm以下のスチール繊維を2~5質量%含有することを特徴とする摩擦材組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
また、高温制動におけるブレーキ振動を抑制できる摩擦材を提供するため、有機摩擦調整材としてカシューダストを1~4重量%、無機摩擦調整材として白雲母を7~12重量%、無機摩擦調整材としてアルミニウム粒子を0.5~5重量%含むことを特徴とする摩擦材組成物から成型された摩擦材が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-093935号公報
【特許文献2】特開2016-121244号公報
【特許文献3】特開2019-214731号公報
【特許文献4】特開2021-017521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~4に記載の摩擦材組成物及び摩擦材では、繊維基材等としてアラミド繊維が使用されている。アラミド繊維を多く含む摩擦材では、フェードと呼ばれる摩擦係数の低下が発生する場合がある。また、アラミド繊維は、石油由来の繊維であり、近年価格の上昇、枯渇等の問題が生じており、さらに、カーボンニュートラル化の一環として使用量を削減することが望ましい。
【0006】
本開示は上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、本開示の一形態は、フェード現象を抑制可能な摩擦材を形成可能な摩擦材組成物、並びにこの摩擦材組成物を用いた摩擦材及び摩擦部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> セルロース繊維を含む繊維基材と、無機充填材と、を含み、アラミド繊維の含有率が、前記繊維基材全量に対して3質量%以下である摩擦材組成物。
<2> 前記セルロース繊維の含有率が、前記摩擦材組成物全量に対して1質量%以上である<1>に記載の摩擦材組成物。
<3> 前記アラミド繊維の含有率が、前記繊維基材全量に対して2質量%未満である<1>又は<2>に記載の摩擦材組成物。
<4> 前記セルロース繊維の繊維長は、2000μm未満である<1>~<3>のいずれか1つに記載の摩擦材組成物。
<5> 前記セルロース繊維の含有率が、前記摩擦材組成物全量に対して4質量%以上である<1>~<4>のいずれか1つに記載の摩擦材組成物。
<6> 前記無機充填材は、ジルコニアを含む<1>~<5>のいずれか1つに記載の摩擦材組成物。
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載の摩擦材組成物を用いて形成される摩擦材。
<8> <7>に記載の摩擦材を含む摩擦部材。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一形態によれば、フェード現象を抑制可能な摩擦材を形成可能な摩擦材組成物、並びにこの摩擦材組成物を用いた摩擦材及び摩擦部材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0010】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において、各成分に該当する粒子には、複数種の粒子が含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
粒子の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定された粒度分布の体積分布から求めた50%(メディアン)径(D50)をいう。平均粒子径は、例えば、LA-920((株)堀場製作所製)で測定することができる。
【0011】
[摩擦材組成物]
本開示の摩擦材組成物は、セルロース繊維を含む繊維基材と、無機充填材と、を含み、アラミド繊維の含有率が、前記繊維基材全量に対して3質量%以下である。本開示の摩擦材組成物は、上記成分以外のその他の成分を含んでもよい。
【0012】
本開示の摩擦材組成物は、セルロース繊維を含む繊維基材を含み、アラミド繊維の含有率が、前記繊維基材全量に対して3質量%以下である。アラミド繊維の代替としてセルロース繊維を含み、アラミド繊維の使用量が削減されている。これにより、フェード現象を抑制可能な摩擦材を形成可能な摩擦材組成物が提供される。
【0013】
さらに、本開示の摩擦材組成物では、石油由来の繊維であるアラミド繊維の使用量が削減されるため、カーボンニュートラル化に貢献可能である。
【0014】
(繊維基材)
本開示の摩擦材組成物は、セルロース繊維を含む繊維基材を含む。
繊維基材は、摩擦材において補強作用を奏するために含まれる。
繊維基材は、セルロース繊維以外の繊維(以下、「その他の繊維」とも称する。)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
繊維基材は、1種又は2種以上のセルロース繊維を含んでいてもよく、1種又は2種以上のセルロース繊維以外の繊維を含んでいてもよい。
【0015】
セルロース繊維としては、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、パルプ粉砕品が挙げられる。再生セルロース繊維とは、木材パルプ、綿等に含まれている天然セルロースを溶剤等を用いて化学的に溶解させ、繊維素を抽出して紡績し、再度、繊維としたものであり、公知のものを使用できる。
【0016】
再生セルロース繊維としては、レーヨン繊維、リヨセル繊維、キュプラ繊維、ポリノジック繊維等が挙げられる。
【0017】
パルプ粉砕品とは、クラフトパルプを粉砕したもので、化学処理にて紡糸化していないものであり、公知のものを使用できる。また、古紙パルプを粉砕したものも使用できる。
【0018】
セルロース繊維の繊維長は、特に限定されず、5000μm以下であってもよく、分散の観点から、2000μm未満であってもよく、1000μm以下であってもよい。
セルロース繊維の繊維長の下限は特に限定されず、500μm以上であってもよい。
【0019】
セルロース繊維の繊維径は、特に限定されず、5μm~100μmであってもよく、10μm~50μmであってもよく、15μm~30μmであってもよい。
【0020】
セルロース繊維の繊維長は、セルロース繊維の長さの平均値を示した数平均繊維長のことをいう。セルロース繊維の繊維長は、セルロース繊維を無作為に50個選択し、電子顕微鏡で繊維長を測定したときの算術平均をいう。
セルロース繊維の繊維径は、セルロース繊維の直径の平均値を示した数平均繊維径のことをいう。セルロース繊維の繊維径は、セルロース繊維を無作為に50個選択し、電子顕微鏡で繊維径を測定したときの算術平均をいう。
【0021】
セルロース繊維が再生セルロース繊維である場合、再生セルロース製造時における紡糸原液の濃度の調整、紡糸条件等を調整することで、セルロース繊維の繊維長又は繊維径を調節することができる。
【0022】
セルロース繊維の含有率は、フェード抑制の観点から、摩擦材組成物全量に対して1質量%以上であることが好ましい。摩擦材組成物の成形性(例えば、タブレット成形性)の観点から、4質量%以上であることが好ましい。
セルロース繊維の含有率は、摩擦材組成物全量に対し、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。
【0023】
その他の繊維としては、無機繊維、金属繊維、セルロース繊維以外の有機繊維、炭素系繊維等が挙げられる。
【0024】
無機繊維としては、セラミック繊維、生分解性セラミック繊維、鉱物繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、シリケート繊維、ウォラストナイト等が挙げられる。
【0025】
なお、ここでいう炭素系繊維としては、耐炎化繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維、活性炭繊維等を用いることができる。
【0026】
また、ここでいう鉱物繊維とは、スラグウール等の高炉スラグ、バサルトファイバー等の玄武岩、その他の天然岩石などを主成分として溶融紡糸した人造無機繊維をいう。鉱物繊維としては、Al元素を含む天然鉱物由来の繊維であることがより好ましい。具体的には、SiO2、Al2O3、CaO、MgO、FeO、Na2O等が挙げられ、好ましくはこれらのうちAl元素を含むものを、鉱物繊維として好ましく用いることができる。
【0027】
鉱物繊維は、生体溶解性であることが好ましい。ここでいう生体溶解性の鉱物繊維とは、人体内に取り込まれた場合でも所定の時間内に一部分解され体外に排出される特徴を有する鉱物繊維である。具体的には、化学組成としてアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の総含有率(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びバリウムの酸化物の総含有率)が18質量%以上で、且つ呼吸による短期バイオ永続試験で、20μm以上の繊維の質量半減期が40日以内か、腹膜内試験で過度の発癌性の証拠がないか、又は長期呼吸試験で関連の病原性及び腫瘍発生がないことを満たす繊維を示す(EU指令97/69/ECのNota Q(発癌性適用除外))。このような生体溶解性鉱物繊維としては、SiO2-Al2O3-CaO-MgO-FeO-Na2O系繊維等が挙げられ、SiO2、Al2O3、CaO、MgO、FeO、Na2O等を任意の組み合わせで含有する繊維が挙げられる。市販品としてはLAPINUS FIBERS B.V製のRoxulシリーズ等が挙げられる。「Roxul」には、SiO2、Al2O3、CaO、MgO、FeO、Na2O等が含まれる。
【0028】
金属繊維としては、耐クラック性及び耐摩耗性の向上のため、銅又は銅合金の繊維を用いることができる。
銅又は銅合金の繊維としては、銅繊維、黄銅繊維、青銅繊維等を用いることができる。
【0029】
また、金属繊維として、銅及び銅合金以外のその他の金属繊維を用いてもよい。銅及び銅合金以外のその他の金属繊維は、摩擦係数の向上及び耐クラック性の観点から含有させてもよい。
【0030】
銅及び銅合金以外のその他の金属繊維としては、アルミニウム、鉄、亜鉛、錫、チタン、ニッケル、マグネシウム、シリコーン等の金属単体又は合金形態の繊維、鋳鉄繊維等の金属を主成分とする繊維などが挙げられる。
【0031】
有機繊維としては、アラミド繊維、アクリル繊維、架橋構造を有してもよいフェノール樹脂繊維等が挙げられる。
【0032】
本開示の摩擦材組成物は、繊維基材としてアラミド繊維を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
本開示の摩擦材組成物では、アラミド繊維の含有率は、繊維基材全量に対し、3質量%以下であればよく、フェード現象を抑制可能な摩擦材を好適に形成可能な観点から、2質量%未満であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
【0033】
繊維基材の含有率は、摩擦材組成物全量に対し、5質量%~40質量%であることが好ましく、5質量%~30質量%であることがより好ましく、6質量%~20質量%であることがさらに好ましい。
【0034】
繊維基材におけるセルロース繊維の含有率は、繊維基材全量に対し、10質量%~100質量%であってもよく、15質量%~80質量%であってもよく、20質量%~60質量%であってもよい。
【0035】
(無機充填材)
本開示の摩擦材組成物は、無機充填材を含む。
無機充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
無機充填材としては、黒鉛、ジルコニア(二酸化ジルコニウム)、金属硫化物、マイカ、チタン酸塩、コークス、水酸化カルシウム(消石灰)、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ドロマイト、酸化鉄、バーミキュライト、硫酸カルシウム、タルク、クレー、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、ムライト、クロマイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、シリカ、酸化鉄、ガーネット、α-アルミナ、γ-アルミナなどのアルミナ、炭化珪素等が挙げられる。
【0037】
黒鉛としては、石油ピッチ系、石炭ピッチ系等の人造黒鉛、天然黒鉛などが挙げられる。
【0038】
金属硫化物としては、三硫化アンチモン、硫化錫、二硫化錫、二硫化モリブデン、硫化鉄、二硫化鉄、硫化ビスマス、硫化亜鉛、二硫化タングステン等が挙げられる。
【0039】
チタン酸塩としては、チタン酸カリウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
【0040】
無機充填材は、黒鉛、ジルコニア、金属硫化物、チタン酸塩、硫酸バリウム、水酸化カルシウム及びアルミナからなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0041】
無機充填材の含有率は、摩擦材組成物全量に対し、30質量%~85質量%であってもよく、50質量%~80質量%であってもよく、60質量%~80質量%であってもよい。
【0042】
無機充填材は、ジルコニアを含んでいてもよい。
ジルコニアの含有率は、摩擦材組成物全量に対し、40質量%以下が好ましく、10質量%~35質量%がより好ましく、15質量%~30質量%がさらに好ましい。
ジルコニアとセルロース繊維との質量比(ジルコニア:セルロース繊維)は、25:1~25:15であってもよく、25:2~25:10であってもよい。
ジルコニアの平均粒子径は、1μm~10μmが好ましく、1μm~5μmがより好ましい。
【0043】
無機充填材は、チタン酸塩(好ましくは、チタン酸カリウム)を含んでいてもよい。
チタン酸塩(好ましくは、チタン酸カリウム)の含有率は、摩擦材組成物全量に対し、40質量%以下が好ましく、10質量%~35質量%がより好ましく、15質量%~30質量%がさらに好ましい。
チタン酸塩(好ましくは、チタン酸カリウム)とセルロース繊維との質量比(チタン酸塩:セルロース繊維)は、26:1~26:15であってもよく、26:2~26:10であってもよい。
【0044】
無機充填材は、硫酸バリウムを含んでいてもよい。
硫酸バリウムの含有率は、摩擦材組成物全量に対し、20質量%以下が好ましく、5質量%~15質量%がより好ましく、5質量%~12質量%がさらに好ましい。
硫酸バリウムとセルロース繊維との質量比(硫酸バリウム:セルロース繊維)は、10:0.5~10:15であってもよく、10:1~10:10であってもよい。
【0045】
(有機充填材)
本開示の摩擦材組成物は、有機充填材を含んでもよい。
有機充填材としては、フリクションダスト、カシューダスト等が挙げられる。
有機充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
有機充填材の含有率は、摩擦材組成物全量に対し、4質量%~20質量%であってもよく、5質量%~15質量%であってもよく、6質量%~10質量%であってもよい。
【0047】
(結合材)
本開示の摩擦材組成物は、結合材を含んでもよい。
結合材は、摩擦材組成物に含まれる成分を結合して一体化し、所定の形状と強度を与えるものである。本開示の摩擦材組成物に含まれる結合材としては特に制限はなく、摩擦材の結合材として用いられる公知の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0048】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂(レゾール型フェノール樹脂及びノボラック型フェノール樹脂)、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。さらには、アクリル変性フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂、カシュー変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂、アルキルベンゼン変性フェノール樹脂等の各種変性フェノール樹脂なども挙げられる。これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。特に、良好な耐熱性、成形性及び摩擦係数を与えることから、フェノール樹脂、アクリル変性フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂及びアルキルベンゼン変性フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0049】
結合材の含有率は、摩擦材組成物全量に対し、4質量%~20質量%が好ましく、5質量%~15質量%がより好ましく、6質量%~10質量%がさらに好ましい。結合材の含有率を摩擦材組成物全量に対して4質量%~20質量%の範囲とすることで、摩擦材の強度低下をより抑制できる。
【0050】
(その他の材料)
本開示の摩擦材組成物は、上述の各成分以外のその他の材料を、必要に応じて含有してもよい。
その他の材料としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系ポリマー、ゴム粉末などが挙げられる。
その他の材料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
ゴム粉末を構成するゴム成分としては、タイヤゴム、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR),アクリルゴム、イソプレンゴム、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム等が挙げられる。ゴム粉末は、タイヤゴムで構成されるタイヤ粉であってもよい。
【0052】
本開示の摩擦材組成物の形状は特に限定されず、粉末状、タブレット状等であってもよい。
【0053】
[摩擦材]
本開示の摩擦材は、本開示の摩擦材組成物を用いて形成される。本開示の摩擦材は、自動車等に用いられるディスクブレーキパッド、ブレーキライニング等の摩擦材として使用することができる。
【0054】
本開示の摩擦材は、本開示の摩擦材組成物を一般に使用されている方法で成形して製造することができる。好ましくは、加熱加圧成形して製造される。詳細には、本開示の摩擦材組成物をレーディゲミキサー、加圧ニーダー、アイリッヒミキサー等の混合機を用いて混合し、この混合物を成形金型にて予備成形し、得られた予備成形物を成形温度140℃~160℃、成形圧力20MPa~50MPaの条件で4分~10分の間加熱して成形し、得られた成形物を180℃~250℃で2時間~10時間熱処理することで得られる。また、必要に応じて塗装、スコーチ処理、研磨処理等を行う。
【0055】
[摩擦部材]
本開示の摩擦部材は、本開示の摩擦材を含む。本開示の摩擦部材においては、本開示の摩擦材が摩擦部材における摩擦面を構成することが好ましい。
本開示の摩擦部材としては、例えば、下記の構成が挙げられる。
(1)摩擦材のみの構成
(2)裏金と、該裏金の上に設けられる摩擦面となる本開示の摩擦材とを有する構成
(3)上記(2)の構成において、裏金と摩擦材との間に、裏金の摩擦材に対する接着効果を高めるための表面改質を目的としたプライマー層、及び裏金と摩擦材との接着を目的とした接着層をさらに介在させた構成
【実施例0056】
以下に、本開示を実施例によりさらに詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例によって何ら制限を受けるものではない。
【0057】
[ディスクブレーキパッドの作製]
表1に示す配合比率(質量%)に従って材料を配合し、実施例及び比較例の摩擦材組成物を得た。なお表1の各成分の配合量の単位は、摩擦材組成物中の質量%である。また、表1において「-」は該当する成分を含有しないことを意味する。使用したセルロース1、セルロース2の詳細は以下の通りである。
-セルロース1-
繊維長:900μm、繊維径:20μm、かさ密度:20~40g/L
-セルロース2-
繊維長:2200μm、繊維径:35μm、かさ密度:25~50g/L
【0058】
この摩擦材組成物をレーディゲミキサー(株式会社マツボー製、商品名:レーディゲミキサーM20)で混合し、この混合物を成形プレス(王子機械株式会社製)で予備成形し、得られた予備成形物を成形プレス(三起精工株式会社製)を用いて成形温度150℃、成形圧力20MPa~40MPaの条件で5分間、鉄鋼製の裏金と共に加熱加圧成形し、得られた成形品を200℃~300℃で熱処理し、ロータリー研磨機を用いて研磨し、スコーチ処理を行って、ディスクブレーキパッド(摩擦材の厚さ11mm、摩擦材投影面積52cm2)を得た。
【0059】
一般性能試験は、JASO C406に準拠して実施した。具体的には、1/5 スケールテスター(慣性3.0kg・m2)と各実施例及び各比較例にて作製したディスクブレーキパッドから切り出した18mm×44mmのテストピースを用い、フェード抑制の指標である1’stFade試験の平均摩擦係数μの最小値(Min.min.μ)を求めた。表1中のJASO性能上摩耗は、試験終了後のパッド平均摩耗(mm)を意味する。表1中のフェード抑制は数値が高いほど、フェード現象が抑制されていることを意味する。
【0060】
【0061】
表1の評価結果から明らかなように、実施例の摩擦材組成物を用いて形成されたブレーキパッドは、比較例の摩擦材組成物を用いて形成されたブレーキパッドに比較して、フェード現象が抑制可能であった。