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特開2025-98853ズームレンズ、投写型表示装置、及び撮像装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098853
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】ズームレンズ、投写型表示装置、及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 15/20 20060101AFI20250625BHJP
   G02B 13/16 20060101ALI20250625BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20250625BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20250625BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20250625BHJP
   G02B 13/18 20060101ALN20250625BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/16
G03B21/00 D
G03B21/14 D
H04N5/74 A
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215257
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古林 琢
【テーマコード(参考)】
2H087
2K203
5C058
【Fターム(参考)】
2H087KA02
2H087KA03
2H087KA06
2H087KA07
2H087LA27
2H087MA12
2H087MA18
2H087NA02
2H087PA15
2H087PA17
2H087PA18
2H087PA19
2H087PB20
2H087QA03
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA19
2H087QA22
2H087QA26
2H087QA32
2H087QA33
2H087QA41
2H087QA45
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087SA43
2H087SA46
2H087SA50
2H087SA52
2H087SA55
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA72
2H087SA76
2H087SB01
2H087SB12
2H087SB23
2H087SB31
2H087SB37
2H087SB42
2K203FA03
2K203FA23
2K203FA25
2K203FA34
2K203FA62
2K203GC03
2K203GC05
2K203GC17
2K203GC20
2K203HA02
2K203HA67
2K203HA68
2K203HB17
2K203HB22
2K203HB25
2K203MA01
5C058BA35
5C058EA02
5C058EA12
(57)【要約】
【課題】中間像を形成し、高倍率を有しながら、良好な光学性能を保持するズームレンズ、このズームレンズを備えた投写型表示装置、及びこのズームレンズを備えた撮像装置を提供する。
【解決手段】ズームレンズは、拡大側から縮小側へ順に、第1光学系と、第2光学系とからなる。第2光学系は縮小側結像面と共役な位置に中間像を形成し、第1光学系は中間像を拡大側結像面に再結像させる。第2光学系の最も拡大側のレンズは、拡大側に凸面を向けた正レンズである。第2光学系は、最も拡大側から縮小側へ順に連続して、変倍の際にそれぞれ移動する第1移動レンズ群と、第2移動レンズ群と、第3移動レンズ群とを含む。ズームレンズ全体の中で、変倍の際に移動するレンズ群は、第1~第3移動レンズ群のみである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系と、第2光学系とからなるズームレンズであって、
前記第2光学系は縮小側結像面と共役な位置に中間像を形成し、前記第1光学系は前記中間像を拡大側結像面に再結像させ、
前記第2光学系の最も拡大側のレンズは、拡大側に凸面を向けた正レンズであり、
変倍の際に隣り合う群との光軸方向の間隔が変化する群を1つのレンズ群とした場合、
前記第2光学系は、最も拡大側から縮小側へ光路に沿って順に連続して、変倍の際に移動する正の屈折力を有する第1移動レンズ群と、変倍の際に移動する第2移動レンズ群と、変倍の際に移動する正の屈折力を有する第3移動レンズ群とを含み、
前記ズームレンズ全体の中で、変倍の際に移動するレンズ群は、前記第1移動レンズ群と、前記第2移動レンズ群と、前記第3移動レンズ群とのみである
ズームレンズ。
【請求項2】
前記第2光学系は、最も縮小側に、変倍の際に前記縮小側結像面に対して固定された固定レンズ群を含む
請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記固定レンズ群は、正の屈折力を有する
請求項2に記載のズームレンズ。
【請求項4】
縮小側がテレセントリックに構成されている
請求項2に記載のズームレンズ。
【請求項5】
第2移動レンズ群は、負の屈折力を有する
請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項6】
広角端における前記ズームレンズの焦点距離をfw、
前記第1光学系の焦点距離をfr1とした場合、
0.8<fr1/|fw|<5 (1)
で表される条件式(1)を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項7】
前記第1光学系は、正レンズと、負レンズと、正レンズとが順に接合された接合レンズを含む
請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項8】
広角端における前記第1光学系の拡大側から2番目のレンズの拡大側の面の有効径は、広角端における前記第1光学系の最も縮小側のレンズの拡大側の面の有効径よりも小さい
請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項9】
前記第2移動レンズ群は、1枚の負レンズと、1枚の正レンズとからなる
請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項10】
前記第1移動レンズ群の焦点距離をf1、
前記第2移動レンズ群の焦点距離をf2、
前記第3移動レンズ群の焦点距離をf3とした場合、
0<|f1/f2|<0.75 (2)
0<|f3/f2|<0.75 (3)
で表される条件式(2)及び(3)を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項11】
0<|f1/f2|<0.5 (2-2)
0<|f3/f2|<0.5 (3-2)
で表される条件式(2-2)及び(3-2)を満足する請求項10に記載のズームレンズ。
【請求項12】
前記第1移動レンズ群の焦点距離をf1、
前記第3移動レンズ群の焦点距離をf3とした場合、
0.5<f1/f3<2 (4)
で表される条件式(4)を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項13】
望遠端における前記第1移動レンズ群は、広角端における前記第1移動レンズ群よりも拡大側に位置し、
望遠端における前記第2移動レンズ群は、広角端における前記第2移動レンズ群よりも拡大側に位置し、
望遠端における前記第3移動レンズ群は、広角端における前記第3移動レンズ群よりも拡大側に位置する
請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項14】
広角端から望遠端への変倍の際に、前記第1移動レンズ群、前記第2移動レンズ群、及び前記第3移動レンズ群は、それぞれ、常に拡大側へ移動する
請求項13に記載のズームレンズ。
【請求項15】
第1光学系内に、光路を折り曲げる第1光路折り曲げ部材が配置されている
請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項16】
前記第1光学系より縮小側に、光路を折り曲げる第2光路折り曲げ部材が配置されている
請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項17】
第1光学系内に、光路を折り曲げる第1光路折り曲げ部材が配置され、
前記第1光学系より縮小側に、光路を折り曲げる第2光路折り曲げ部材が配置されている
請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項18】
前記第1光学系は、正の屈折力を有し、変倍の際に前記縮小側結像面に対して固定され、
前記第2光学系は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、前記第1移動レンズ群と、前記第2移動レンズ群と、前記第3移動レンズ群と、変倍の際に前記縮小側結像面に対して固定された固定レンズ群と、からなる
請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項19】
請求項1から請求項18の何れか1項に記載のズームレンズを備えた投写型表示装置。
【請求項20】
請求項1から請求項18の何れか1項に記載のズームレンズを備えた撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、ズームレンズ、投写型表示装置、及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投写型表示装置又は撮像装置に適用可能なズームレンズとして下記特許文献1及び特許文献2に記載の結像光学系が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-052385号公報
【特許文献2】特開2021-026087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中間像を形成するズームレンズにおいて、高倍率を有しながら、良好な光学性能を保持することが求められている。これらの要求レベルは、年々高まっている。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みなされたものであり、中間像を形成するズームレンズにおいて、高倍率を有しながら、良好な光学性能を保持するズームレンズ、このズームレンズを備えた投写型表示装置、及びこのズームレンズを備えた撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系と、第2光学系とからなるズームレンズであって、第2光学系は縮小側結像面と共役な位置に中間像を形成し、第1光学系は中間像を拡大側結像面に再結像させ、第2光学系の最も拡大側のレンズは、拡大側に凸面を向けた正レンズであり、変倍の際に隣り合う群との光軸方向の間隔が変化する群を1つのレンズ群とした場合、第2光学系は、最も拡大側から縮小側へ光路に沿って順に連続して、変倍の際に移動する正の屈折力を有する第1移動レンズ群と、変倍の際に移動する第2移動レンズ群と、変倍の際に移動する正の屈折力を有する第3移動レンズ群とを含み、ズームレンズ全体の中で、変倍の際に移動するレンズ群は、第1移動レンズ群と、第2移動レンズ群と、第3移動レンズ群とのみである。
【0007】
上記態様のズームレンズにおいて、第2光学系は、最も縮小側に、変倍の際に縮小側結像面に対して固定された固定レンズ群を含むことが好ましい。
【0008】
上記態様のズームレンズにおいて、固定レンズ群は、正の屈折力を有することが好ましい。
【0009】
上記態様のズームレンズにおいて、縮小側がテレセントリックに構成されていることが好ましい。
【0010】
上記態様のズームレンズにおいて、第2移動レンズ群は、負の屈折力を有することが好ましい。
【0011】
広角端におけるズームレンズの焦点距離をfw、第1光学系の焦点距離をfr1とした場合、上記態様のズームレンズは、
0.8<fr1/|fw|<5 (1)
で表される条件式(1)を満足することが好ましい。
【0012】
上記態様のズームレンズにおいて、第1光学系は、正レンズと、負レンズと、正レンズとが順に接合された接合レンズを含むことが好ましい。
【0013】
上記態様のズームレンズにおいて、広角端における第1光学系の拡大側から2番目のレンズの拡大側の面の有効径は、広角端における第1光学系の最も縮小側のレンズの拡大側の面の有効径よりも小さいことが好ましい。
【0014】
上記態様のズームレンズにおいて、第2移動レンズ群は、1枚の負レンズと、1枚の正レンズとからなることが好ましい。
【0015】
第1移動レンズ群の焦点距離をf1、第2移動レンズ群の焦点距離をf2、第3移動レンズ群の焦点距離をf3とした場合、上記態様のズームレンズは、
0<|f1/f2|<0.75 (2)
0<|f3/f2|<0.75 (3)
で表される条件式(2)及び(3)を満足することが好ましく、
0<|f1/f2|<0.5 (2-2)
0<|f3/f2|<0.5 (3-2)
で表される条件式(2-2)及び(3-2)を満足することがより好ましい。
【0016】
第1移動レンズ群の焦点距離をf1、第3移動レンズ群の焦点距離をf3とした場合、上記態様のズームレンズは、
0.5<f1/f3<2 (4)
で表される条件式(4)を満足することが好ましい。
【0017】
上記態様のズームレンズにおいて、望遠端における第1移動レンズ群は、広角端における第1移動レンズ群よりも拡大側に位置し、望遠端における第2移動レンズ群は、広角端における第2移動レンズ群よりも拡大側に位置し、望遠端における第3移動レンズ群は、広角端における第3移動レンズ群よりも拡大側に位置することが好ましい。
【0018】
上記態様のズームレンズにおいて、広角端から望遠端への変倍の際に、第1移動レンズ群、第2移動レンズ群、及び第3移動レンズ群は、それぞれ、常に拡大側へ移動することが好ましい。
【0019】
上記態様のズームレンズにおいて、第1光学系内に、光路を折り曲げる第1光路折り曲げ部材が配置されていることが好ましい。
【0020】
上記態様のズームレンズにおいて、第1光学系より縮小側に、光路を折り曲げる第2光路折り曲げ部材が配置されていることが好ましい。
【0021】
上記態様のズームレンズにおいて、第1光学系内に、光路を折り曲げる第1光路折り曲げ部材が配置され、第1光学系より縮小側に、光路を折り曲げる第2光路折り曲げ部材が配置されていることが好ましい。
【0022】
上記態様のズームレンズにおいて、第1光学系は、正の屈折力を有し、変倍の際に縮小側結像面に対して固定され、第2光学系は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1移動レンズ群と、第2移動レンズ群と、第3移動レンズ群と、変倍の際に縮小側結像面に対して固定された固定レンズ群と、からなることが好ましい。
【0023】
本開示の別の態様は、上記態様のズームレンズを備える投写型表示装置である。
【0024】
本開示のさらに別の態様は、上記態様のズームレンズを備える撮像装置である。
【0025】
なお、本明細書の「~からなり」、「~からなる」は、挙げられた構成要素以外に、実質的に屈折力を有さないレンズ、並びに、絞り、マスク、フィルタ、カバーガラス、平面ミラー、及びプリズム等のレンズ以外の光学要素、並びに、レンズフランジ、レンズバレル、撮像素子、及び手振れ補正機構等の機構部分、等が含まれていてもよいことを意図する。
【0026】
本明細書の「正の屈折力を有する~群」及び「~群は正の屈折力を有する」は、群全体として正の屈折力を有することを意味する。同様に、「負の屈折力を有する~群」及び「~群は負の屈折力を有する」は、群全体として負の屈折力を有することを意味する。「~レンズ群」は、複数のレンズからなる構成に限らず、1枚のみのレンズからなる構成としてもよい。
【0027】
上述したレンズの枚数は、構成要素となるレンズの枚数であり、例えば、材質の異なる複数の単レンズが接合された接合レンズにおけるレンズの枚数は、この接合レンズを構成する単レンズの枚数で表すこととする。ただし、複合非球面レンズ(レンズ(例えば球面レンズ)と、そのレンズ上に形成された非球面形状の膜とが一体的に構成されて、全体として1つの非球面レンズとして機能するレンズ)は、接合レンズとは見なさず、1枚のレンズとして扱う。非球面を含むレンズに関する屈折力の符号及び面形状は、特に断りが無い限り、近軸領域のものを用いる。
【0028】
条件式で用いている「焦点距離」は、近軸焦点距離である。条件式で用いている値は、d線を基準とした場合の値である。本明細書に記載の「d線」、「C線」、及び「F線」は輝線であり、d線の波長は587.56nm(ナノメートル)、C線の波長は656.27nm(ナノメートル)、F線の波長は486.13nm(ナノメートル)として扱う。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、中間像を形成するズームレンズにおいて、高倍率を有しながら、良好な光学性能を保持するズームレンズ、このズームレンズを備えた投写型表示装置、及びこのズームレンズを備えた撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例1のズームレンズに対応し、一実施形態に係るズームレンズの構成と光束を示す断面図である。
図2】実施例1のズームレンズの各変倍状態における構成と光束を示す断面図である。
図3】実施例1のズームレンズの第1変形例の構成と光束を示す断面図である。
図4】実施例1のズームレンズの第2変形例の構成と光束を示す断面図である。
図5】実施例1のズームレンズの第3変形例の構成と光束を示す断面図である。
図6】実施例1のズームレンズの各収差図である。
図7】実施例2のズームレンズの構成と光束を示す断面図である。
図8】実施例2のズームレンズの変形例の構成と光束を示す断面図である。
図9】実施例2のズームレンズの各収差図である。
図10】実施例3のズームレンズの構成と光束を示す断面図である。
図11】実施例3のズームレンズの変形例の構成と光束を示す断面図である。
図12】実施例3のズームレンズの各収差図である。
図13】実施例4のズームレンズの構成と光束を示す断面図である。
図14】実施例4のズームレンズの変形例の構成と光束を示す断面図である。
図15】実施例4のズームレンズの各収差図である。
図16】実施例5のズームレンズの構成と光束を示す断面図である。
図17】実施例5のズームレンズの変形例の構成と光束を示す断面図である。
図18】実施例5のズームレンズの各収差図である。
図19】実施例6のズームレンズの構成と光束を示す断面図である。
図20】実施例6のズームレンズの変形例の構成と光束を示す断面図である。
図21】実施例6のズームレンズの各収差図である。
図22】一実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
図23】別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
図24】さらに別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。
図25】一実施形態に係る撮像装置の正面側の斜視図である。
図26図25に示す撮像装置の背面側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態について説明する。
【0032】
図1に、本開示の一実施形態に係るズームレンズの広角端における構成及び光束の断面図を示す。図1では、光束として、軸上光束Ka、及び最大画角の光束Kbを示す。図2に、このズームレンズの各変倍状態における構成及び光束の断面図を示す。図2では、「広角端」と付した上段に広角端状態を示し、「中間」と付した中段に中間焦点距離状態を示し、「望遠端」と付した下段に望遠端状態を示す。図1及び図2に示す例は後述の実施例1のズームレンズに対応している。図1及び図2では、左側が拡大側、右側が縮小側である。以下では主に図1を参照しながら説明する。
【0033】
本開示のズームレンズは、投写型表示装置に搭載されてスクリーンに投写する像を形成する投写光学系とすることができ、また、撮像装置に搭載されて物体の像を形成する撮像光学系とすることもできる。以下では、ズームレンズが投写光学系の用途で使用される場合を想定して説明する。また、以下では、冗長な説明を避けるため「本開示のズームレンズ」を単に「ズームレンズ」と記すことがある。
【0034】
図1では、ズームレンズが投写型表示装置に搭載されることを想定して、ズームレンズの縮小側に光学部材PP、及びライトバルブの画像表示面Simを配置した例を示す。光学部材PPは、フィルタ、カバーガラス、及び色合成プリズム等を想定した部材である。光学部材PPは屈折力を有しない部材であり、光学部材PPを省略した構成も可能である。ライトバルブは光学像を出力するものであり、この光学像は画像表示面Simに画像として表示される。
【0035】
投写型表示装置においては、画像表示面Simで画像情報を与えられた光束が光学部材PPを介してズームレンズに入射され、ズームレンズにより不図示のスクリーンに投写される。この場合、画像表示面Simが縮小側結像面に対応し、スクリーンが拡大側結像面に対応する。なお、本明細書において「スクリーン」は、ズームレンズが形成する投写像が投写される対象物を意味する。スクリーンとしては、専用のスクリーンの他、部屋の壁面、床面、天井、及び建物の外壁等でもよい。
【0036】
また、本明細書の説明において、「拡大側」は光路上でのスクリーン側を意味し、「縮小側」は光路上での画像表示面Sim側を意味する。本明細書では、「拡大側」及び「縮小側」は、光路に沿って決められるものであり、この点は折り曲げられた光路を形成するズームレンズの場合も同様である。「最も拡大側の~」は、光路上における並び順として最も拡大側という意味であり、距離的にスクリーンに最も近いということを意味するものではない。以下では、説明が冗長になるのを避けるため、「拡大側から縮小側へ光路に沿って順に」を「拡大側から縮小側へ順に」と記すことがある。
【0037】
本開示のズームレンズは、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系U1と、第2光学系U2とからなる。本開示のズームレンズは、第2光学系U2が縮小側結像面と共役な位置に中間像MIを形成し、第1光学系U1が中間像MIを拡大側結像面に再結像させるように構成されている。以下では、ズームレンズを構成する光学系のうち、中間像MIより拡大側の光学系を第1光学系U1とし、中間像MIより縮小側の光学系を第2光学系U2とする。
【0038】
投写型表示装置においては、画像表示面Simに表示される画像の中間像MIを第2光学系U2が形成し、この中間像MIを第1光学系がスクリーンに投写して投写像を形成する。このように、本開示のズームレンズが中間像MIを持つ構成とすることによって、広角の投写光学系を実現しながらレンズ系のサイズを抑えることができる。図1では、中間像MIのうち、光軸Zより下側の部分のみを概略的に点線で示している。図1の中間像MIは、光軸方向の位置を示しており、正確な形状を示すものではない。
【0039】
第2光学系U2の最も拡大側のレンズは、拡大側に凸面を向けた正レンズである。第2光学系U2の最も拡大側のレンズは、すなわち、中間像MIの縮小側に隣接するレンズである。このレンズを拡大側に凸面を向けた正レンズとすることによって、中間像MIを挟む2つのレンズ面の間隔を長くしても、ズームレンズの小径化に有利となる。
【0040】
第2光学系U2は、最も拡大側から縮小側へ光路に沿って順に連続して、変倍の際に移動する正の屈折力を有する第1移動レンズ群と、変倍の際に移動する第2移動レンズ群と、変倍の際に移動する正の屈折力を有する第3移動レンズ群とを含む。第2光学系U2が、変倍の際に移動するレンズ群を3つ含むことによって、高いズーム倍率を得ることに有利となる。第2光学系U2が中間像MIを形成するために、第1移動レンズ群及び第3移動レンズ群の屈折力の符号を正としている。
【0041】
ズームレンズ全体の中で、変倍の際に移動するレンズ群は、第1移動レンズ群と、第2移動レンズ群と、第3移動レンズ群とのみである。ズームレンズ全体において、変倍の際に移動するレンズ群を3つのみとすることによって、変倍機構の複雑化を避けることができる。また、変倍の際に移動する3つのレンズ群を光路に沿って順に連続して配置することによって、光学全長の短縮化に有利となる。
【0042】
なお、本明細書においては、変倍の際に隣り合う群との光軸方向の間隔が変化する群を1つのレンズ群としている。すなわち、本明細書における「レンズ群」は、ズームレンズの構成部分であって、変倍の際に変化する空気間隔によって分けられた、少なくとも1枚のレンズを含む部分である。変倍の際には、各レンズ群単位で移動又は固定され、かつ、各レンズ群内のレンズの相互間隔は変化しない。なお、「レンズ群」は、屈折力を有しないレンズ以外の構成要素、例えば、絞り、マスク、フィルタ、カバーガラス、平面ミラー、及びプリズム等を含んでもよい。
【0043】
一例として、図1のズームレンズは、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、正の屈折力を有する第1光学系U1と、第2光学系U2とからなる。第1光学系U1は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL1~L13からなる。第2光学系U2は、拡大側から縮小側へ順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4とからなる。
【0044】
変倍の際に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3とはそれぞれ、隣接する群との間隔を変化させて光軸Zに沿って移動する。変倍の際に、第1光学系U1と、第4レンズ群G4とはそれぞれ、縮小側結像面に対して固定される。図1では、変倍の際に移動するレンズ群の下に、広角端から望遠端までの変倍の際の各レンズ群の概略的な移動軌跡を実線の矢印で示す。
【0045】
一例として、図1の各レンズ群は以下のように構成されている。第1レンズ群G1は、レンズL21の1枚のレンズからなる。第2レンズ群G2は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL22~L23の2枚のレンズと、開口絞りStとからなる。第3レンズ群G3は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL24~L29の6枚のレンズからなる。第4レンズ群G4は、レンズL30の1枚のレンズからなる。
【0046】
図1のズームレンズは、合焦の際に光軸Zに沿って移動する群としてフォーカス群Gfを含む。一例として、図1の例のフォーカス群Gfは、レンズL4~L5の2枚のレンズからなる。図1において、レンズL4~L5の下の符号のGf及び水平方向の両矢印は、レンズL4~L5がフォーカス群Gfであることを示す。
【0047】
第2光学系U2は、最も縮小側に、変倍の際に縮小側結像面に対して固定された固定レンズ群を含むことが好ましい。例えば図1の例のように、第2光学系U2は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1移動レンズ群と、第2移動レンズ群と、第3移動レンズ群と、固定レンズ群と、からなるように構成してもよい。最も縮小側のレンズ群を変倍の際に固定とすることによって、高いズーム倍率を保ちながら、縮小側のテレセントリック性の確保が容易となる。
【0048】
第2光学系U2に含まれる固定レンズ群は、正の屈折力を有することが好ましい。このようにした場合は、固定レンズ群よりも拡大側に配置された第3移動レンズ群の大径化の抑制が容易となる。
【0049】
第1光学系U1は、正の屈折力を有し、変倍の際に縮小側結像面に対して固定されるように構成してもよい。このようにした場合は、レンズ系の小型化及び変倍機構の簡易化に有利となる。
【0050】
本開示のズームレンズは、縮小側がテレセントリックに構成されていることが好ましい。このようにした場合は、画像表示素子に対して投写用光学系を光軸に垂直な方向にシフトさせることによりスクリーン上での投写像の位置を調整可能にした機能、いわゆるレンズシフト機能を実現するときに、シフト量の確保に有利となる。厳密に縮小側がテレセントリックに構成されている光学系では、光学系の最も縮小側の面から縮小側結像面に向かう主光線は光軸Zに平行となる。
【0051】
但し、本開示の技術における「縮小側がテレセントリック」は、上記主光線の光軸Zに対する角度が0度のものに限定されず、本開示の技術が属する技術分野で実用上許容される誤差を含む。誤差は例えば、上記主光線の光軸Zに対する角度が-3度以上かつ+3度以下の範囲としてもよい。なお、開口絞りを含まない系では、拡大側から縮小側へ向かう方向に光束を見た場合に、縮小側結像面である画像表示面Simの任意の点に集光する光束の断面において上側の最大光線と下側の最大光線との二等分角線を主光線の代用としてテレセントリック性を判断してもよい。
【0052】
第2移動レンズ群は、負の屈折力を有することが好ましい。このようにした場合は、変倍に伴う諸収差の変動の抑制に有利となる。
【0053】
第2移動レンズ群は、1枚の負レンズと、1枚の正レンズとからなることが好ましい。このようにした場合は、像面湾曲及び色収差の発生を抑制することに有利となる。
【0054】
第1光学系U1は、正レンズと、負レンズと、正レンズとが順に接合された接合レンズを含むことが好ましい。このようにした場合は、色収差の補正に有利となる。
【0055】
広角端における第1光学系U1の拡大側から2番目のレンズの拡大側の面の有効径は、広角端における第1光学系U1の最も縮小側のレンズの拡大側の面の有効径よりも小さいことが好ましい。一般に、中間像を形成するズームレンズにおいて広角化を実現しようとすると、拡大側のレンズの大径化を招きやすいが、上記の構成とした場合は、拡大側のレンズの大径化を抑制できるので、軽量化に有利となる。ズームレンズを軽量化することによって、例えば、ズームレンズを、レンズシフト機能を有する投写型表示装置に搭載する場合に、シフト機構にかかる負担を小さくできる。
【0056】
なお、本明細書においては、レンズ面に拡大側から入射し、縮小側に射出される光線のうち、最も外側を通る光線とそのレンズ面との交点から光軸Zまでの距離の2倍を、そのレンズ面の「有効径」とする。ここでいう「外側」とは、光軸Zを中心にした径方向外側、すなわち、光軸Zから離れる側である。
【0057】
本開示のズームレンズにおいて、望遠端における第1移動レンズ群は、広角端における第1移動レンズ群よりも拡大側に位置することが好ましい。同様に、望遠端における第2移動レンズ群は、広角端における第2移動レンズ群よりも拡大側に位置することが好ましい。同様に、望遠端における第3移動レンズ群は、広角端における第3移動レンズ群よりも拡大側に位置することが好ましい。このようにした場合は、駆動機構を簡素化することに有利となる。
【0058】
また、本開示のズームレンズにおいて、広角端から望遠端への変倍の際に、第1移動レンズ群、第2移動レンズ群、及び第3移動レンズ群は、それぞれ、常に拡大側へ移動することがより好ましい。このようにした場合は、駆動機構を簡素化することにより有利となる。
【0059】
本開示のズームレンズにおいては、第1光学系U1内に、光路を折り曲げる第1光路折り曲げ部材が配置されているように構成してもよい。光路を折り曲げることによって、コンパクトな構成が可能となるため、小型化に有利となる。光路を1回折り曲げる構成のズームレンズを投写型表示装置に搭載する場合、折り曲げ部よりも縮小側の部分を装置本体の筐体に収容し、折り曲げ部よりも拡大側の部分を筐体から突出した突出部に収容することが考えられる。この場合に、拡大側の第1光学系U1内に光路折り曲げ部材を配置することによって、最も拡大側のレンズから折り曲げ部までの長さを短縮化できるので、突出部の小型化に有利となる。また、折り曲げ部を回転させることによって、任意の方向に最も拡大側のレンズを位置させることができるため、様々な方向に投写することが可能となる。第1光路折り曲げ部材としては例えば、反射面を有するプリズム、及びミラー等を用いることができる。
【0060】
図1のズームレンズの第1変形例として、図3に、第1光路折り曲げ部材を有するズームレンズの例を示す。図3のズームレンズは、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系U1rと、第2光学系U2とからなる。図3のズームレンズは、第1光学系U1rの内部にミラーR1を配置して、ミラーR1で光路を折り曲げた点が図1のズームレンズと異なり、その他のレンズの構成は図1の例と同じである。ミラーR1が、本開示の第1光路折り曲げ部材に対応する。図3では広角端における構成を示し、図面の煩雑化を避けるためレンズの符号の図示を一部省略している。
【0061】
本開示のズームレンズにおいては、第1光学系U1より縮小側に、光路を折り曲げる第2光路折り曲げ部材が配置されているように構成してもよい。光路を折り曲げることによって、コンパクトな構成が可能となるため、小型化に有利となる。中間像MIを持つ光学系は全長が長くなりがちだが、第1光学系U1より縮小側で光路を折り曲げることによって、光学系が1方向に長くなることを抑制できる。また、折り曲げ部を回転させることによって、任意の方向に最も拡大側のレンズを位置させることができるため、様々な方向に投写することが可能となる。第2光路折り曲げ部材としては例えば、反射面を有するプリズム、及びミラー等を用いることができる。
【0062】
図1のズームレンズの第2変形例として、図4に、第2光路折り曲げ部材を有するズームレンズの例を示す。図4のズームレンズは、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系U1と、第2光学系U2rとからなる。図4のズームレンズは、第2光学系U2rの最も拡大側にミラーR2を配置して、ミラーR2で光路を折り曲げた点が図1のズームレンズと異なり、その他のレンズの構成は図1の例と同じである。ミラーR2が、本開示の第2光路折り曲げ部材に対応する。図4では広角端における構成を示し、図面の煩雑化を避けるためレンズの符号の図示を一部省略している。
【0063】
本開示のズームレンズにおいては、第1光学系U1内に光路を折り曲げる第1光路折り曲げ部材が配置され、かつ、第1光学系U1より縮小側に光路を折り曲げる第2光路折り曲げ部材が配置されているように構成してもよい。光路を2回折り曲げることによって、よりコンパクトな構成が可能となるため、小型化により有利となる。光路を2回折り曲げる構成のズームレンズを投写型表示装置に搭載する場合、2つの折り曲げ部のそれぞれを回転させることによって、任意の方向に最も拡大側のレンズを位置させることができるため、様々な方向に投写することが可能となる。
【0064】
図1のズームレンズの第3変形例として、図5に、2つの光路折り曲げ部材を有し、光路を2回折り曲げたズームレンズの例を示す。図5のズームレンズは、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系U1rと、第2光学系U2rとからなる。図5の第1光学系U1rは、図3の第1光学系U1rと同じであり、図5の第2光学系U2rは、図4の第2光学系U2rと同じである。ミラーR1が、本開示の第1光路折り曲げ部材に対応し、ミラーR2が、本開示の第2光路折り曲げ部材に対応する。図5では広角端における構成を示し、図面の煩雑化を避けるためレンズの符号の図示を一部省略している。
【0065】
光路折り曲げ部材の光路を折り曲げる角度は、任意に設定可能であるが、例えば90度にしてもよい。折り曲げる角度を90度とすることによって、生産しやすい構造にすることができる。なお、この「90度」は、本開示の技術が属する技術分野で実用上許容される誤差を含む。誤差は例えば±5度としてもよい。
【0066】
次に、本開示のズームレンズの条件式に関する好ましい構成について述べる。なお、以下の条件式に関する説明では、冗長な説明を避けるため、定義が同じものには同じ記号を用いて記号の重複説明を省略する。
【0067】
広角端におけるズームレンズの焦点距離をfw、第1光学系U1の焦点距離をfr1とした場合、ズームレンズは下記条件式(1)を満足することが好ましい。なお、fwは、投写距離が0.97m(メートル)の状態における値とする。投写距離は、拡大側結像面から最も拡大側のレンズ面までの光軸上の距離である。条件式(1)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、第1光学系U1の屈折力が強くなり過ぎないため、諸収差の補正に有利となる。条件式(1)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、第1光学系U1の屈折力が弱くなり過ぎないため、広角化に有利となる。より良好な特性を得るためには、ズームレンズは、下記条件式(1-1)を満足することがより好ましく、下記条件式(1-2)を満足することがさらにより好ましい。
0.8<fr1/|fw|<5 (1)
1<fr1/|fw|<3 (1-1)
1.5<fr1/|fw|<2.5 (1-2)
【0068】
第1移動レンズ群の焦点距離をf1、第2移動レンズ群の焦点距離をf2とした場合、ズームレンズは下記条件式(2)を満足することが好ましい。条件式(2)の下限については、|f1/f2|は絶対値であるため、0<|f1/f2|である。条件式(2)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、第2移動レンズ群の屈折力が強くなり過ぎず、第1移動レンズ群と第2移動レンズ群の屈折力のバランスを良好に保つことができるため、諸収差の発生を抑制するのに有利となる。より良好な特性を得るためには、ズームレンズは、下記条件式(2-1)を満足することがより好ましく、下記条件式(2-2)を満足することがさらにより好ましい。
0<|f1/f2|<0.75 (2)
0<|f1/f2|<0.6 (2-1)
0<|f1/f2|<0.5 (2-2)
【0069】
第3移動レンズ群の焦点距離をf3とした場合、ズームレンズは下記条件式(3)を満足することが好ましい。条件式(3)の下限については、|f3/f2|は絶対値であるため、0<|f3/f2|である。条件式(3)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、第2移動レンズ群の屈折力が強くなり過ぎず、第2移動レンズ群と第3移動レンズ群の屈折力のバランスを良好に保つことができるため、諸収差の発生を抑制するのに有利となる。より良好な特性を得るためには、ズームレンズは、下記条件式(3-1)を満足することがより好ましく、下記条件式(3-2)を満足することがさらにより好ましい。
0<|f3/f2|<0.75 (3)
0<|f3/f2|<0.6 (3-1)
0<|f3/f2|<0.5 (3-2)
【0070】
ズームレンズは下記条件式(4)を満足することが好ましい。条件式(4)の対応値が下限値以下とならないようにすることによって、第1移動レンズ群の屈折力が強くなり過ぎないため、変倍に伴う諸収差の発生を抑制するのに有利となる。条件式(4)の対応値が上限値以上とならないようにすることによって、第3移動レンズ群の屈折力が強くなり過ぎないため、変倍に伴う諸収差の発生を抑制するのに有利となる。より良好な特性を得るためには、ズームレンズは、下記条件式(4-1)を満足することがより好ましく、下記条件式(4-2)を満足することがさらにより好ましい。
0.5<f1/f3<2 (4)
0.6<f1/f3<1.67 (4-1)
0.7<f1/f3<1.43 (4-2)
【0071】
条件式に関する構成も含め上述した好ましい構成及び可能な構成は、任意の組合せが可能であり、要求される仕様に応じて適宜選択的に採用されることが好ましい。
【0072】
次に、本開示のズームレンズの実施例及び変形例について図面を参照して説明する。なお、各実施例及び変形例の断面図に付された参照符号は、参照符号の桁数の増大に伴う説明及び図面の煩雑化を避けるため、実施例及び変形例ごとに独立して用いている。したがって、異なる実施例及び変形例の図面において共通の参照符号が付されていても、必ずしも共通の構成ではない。
【0073】
[実施例1]
実施例1のズームレンズの構成と光束の断面図は図1及び図2に示しており、その図示方法と構成は上述したとおりであるので、ここでは重複説明を一部省略する。
【0074】
実施例1のズームレンズは、拡大側から縮小側へ順に、正の屈折力を有する第1光学系U1と、第2光学系U2とからなる。第1光学系U1は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL1~L13からなる。第2光学系U2は、拡大側から縮小側へ順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4とからなる。第1レンズ群G1は、レンズL21からなる。第2レンズ群G2は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL22~L23と、開口絞りStとからなる。第3レンズ群G3は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL24~L29からなる。第4レンズ群G4は、レンズL30からなる。
【0075】
変倍の際に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3とはそれぞれ、隣接する群との間隔を変化させて光軸Zに沿って移動する。変倍の際に、第1光学系U1と、第4レンズ群G4とはそれぞれ、縮小側結像面に対して固定される。フォーカス群Gfは、レンズL4~L5からなる。
【0076】
実施例1のズームレンズについて、基本レンズデータを表1A及び表1Bに、諸元及び可変面間隔を表2に、非球面係数を表3に示す。ここでは、1つの表の長大化を避けるため基本レンズデータを表1A及び表1Bの2つの表に分けて示している。表1Aには第1光学系U1を示し、表1Bには第2光学系U2及び光学部材PPを示す。
【0077】
基本レンズデータの表は以下のように記載されている。「Sn」の列には最も拡大側の面を第1面とし縮小側に向かうに従い1つずつ番号を増加させた場合の面番号を示す。「R」の列には各面の曲率半径を示す。「D」の列には各面とその縮小側に隣接する面との光軸上の面間隔を示す。「Nd」の列には各構成要素のd線に対する屈折率を示す。「νd」の列には各構成要素のd線基準のアッベ数を示す。「ED」の列には、直径での有効径を示す。EDは、第1光学系U1の拡大側から2番目のレンズの拡大側の面、及び第1光学系U1の最も縮小側のレンズの拡大側の面のみ示しており、表1Bでは列の記載を省略している。
【0078】
基本レンズデータの表では、拡大側に凸形状を向けた面の曲率半径の符号を正、縮小側に凸形状を向けた面の曲率半径の符号を負としている。開口絞りStに相当する面の面番号の欄に面番号と(St)という語句を記載している。表1BのDの列の最下欄の値は表中の最も縮小側の面と画像表示面Simとの間隔である。基本レンズデータの表では、変倍の際の可変面間隔についてはDD[ ]という記号を用い、[ ]の中にこの間隔の拡大側の面番号を付してDの列に記入している。
【0079】
表2に、ズーム倍率Zr、焦点距離の絶対値|f|、FナンバーFNo.、最大全画角2ω、及び可変面間隔をd線基準で示す。2ωの欄の[°]は単位が度であることを示す。表1及び表2に示す値は、投写距離を0.97m(メートル)にした状態の値である。表2では、「広角端」の列に広角端における各値を示し、「中間」の列に中間焦点距離状態における各値を示し、「望遠端」の列に望遠端における各値を示す。
【0080】
基本レンズデータでは、非球面の面番号には*印を付しており、非球面の曲率半径の欄には近軸曲率半径の値を記載している。表3において、Snの行には非球面の面番号を示し、KA及びAm(m=3、4、5、・・・、20)の行には各非球面についての非球面係数の数値を示す。表3の非球面係数の数値の「E±n」(n:整数)は「×10±n」を意味する。KA及びAmは下式で表される非球面式における非球面係数である。
Zd=C×h/{1+(1-KA×C×h1/2}+ΣAm×h
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸Zに垂直な平面に下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸Zからレンズ面までの距離)
C:近軸曲率半径の逆数
KA、Am:非球面係数
であり、非球面式のΣはmに関する総和を意味する。
【0081】
各表のデータにおいて、角度の単位としては度を用い、長さの単位としてはmm(ミリメートル)を用いているが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても使用可能なため他の適当な単位を用いることもできる。また、以下に示す各表では所定の桁でまるめた数値を記載している。
【0082】
【表1A】
【0083】
【表1B】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
図6に、投写距離が0.97m(メートル)の状態における実施例1のズームレンズの各収差図を示す。図6では左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差、及び倍率色収差を示す。図6では、「広角端」と付した上段に広角端における各収差図を示し、「中間」と付した中段に中間焦点距離状態における各収差図を示し、「望遠端」と付した下段に望遠端における各収差図を示す。球面収差図では、d線、C線、及びF線に関する収差をそれぞれ実線、長破線、及び短破線で示す。非点収差図では、サジタル方向のd線に関する収差を実線で示し、タンジェンシャル方向のd線に関する収差を短破線で示す。歪曲収差図ではd線に関する収差を実線で示す。倍率色収差図では、C線、及びF線に関する収差をそれぞれ長破線、及び短破線で示す。球面収差図では「FNo.=」の後にFナンバーの値を示す。その他の収差図では「ω=」の後に最大半画角の値を示す。
【0087】
図3図4、及び図5にそれぞれ、実施例1のズームレンズの第1変形例、第2変形例、及び第3変形例の構成の断面図を示す。図3図5の例の構成は上述したとおりであるので、ここでは重複説明を省略する。
【0088】
上記の実施例1及び変形例に関する各データの記号、意味、記載方法、及び図示方法は、特に断りが無い限り以下の実施例においても基本的に同様であるので、以下では重複説明を省略する。
【0089】
[実施例2]
実施例2のズームレンズの広角端における構成と光束の断面図を図7に示す。実施例2のズームレンズは、拡大側から縮小側へ順に、正の屈折力を有する第1光学系U1と、第2光学系U2とからなる。第1光学系U1は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL1~L12からなる。第2光学系U2は、拡大側から縮小側へ順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4とからなる。第1レンズ群G1は、レンズL21からなる。第2レンズ群G2は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL22~L23と、開口絞りStとからなる。第3レンズ群G3は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL24~L29からなる。第4レンズ群G4は、レンズL30からなる。
【0090】
変倍の際に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3とはそれぞれ、隣接する群との間隔を変化させて光軸Zに沿って移動する。変倍の際に、第1光学系U1と、第4レンズ群G4とはそれぞれ、縮小側結像面に対して固定される。フォーカス群Gfは、レンズL4~L5からなる。
【0091】
実施例2のズームレンズについて、基本レンズデータを表4A及び表4Bに、諸元及び可変面間隔を表5に、非球面係数を表6に、各収差図を図9に示す。基本レンズデータ、諸元及び各収差図は、投写距離が0.97m(メートル)の状態におけるものである。
【0092】
【表4A】
【0093】
【表4B】
【0094】
【表5】
【0095】
【表6】
【0096】
図8に、実施例2の変形例であるズームレンズの広角端における構成と光束を示す。図8のズームレンズは、2つの光路折り曲げ部材を有し、光路を2回折り曲げている。図8のズームレンズは、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系U1rと、第2光学系U2rとからなる。図8の第1光学系U1rは、第1光学系U1rの内部にミラーR1を配置して、ミラーR1で光路を折り曲げた点が実施例2の第1光学系U1と異なる。図8の第2光学系U2rは、第2光学系U2rの最も拡大側にミラーR2を配置して、ミラーR2で光路を折り曲げた点が実施例2の第2光学系U2と異なる。図8のズームレンズのその他の構成は、実施例2のズームレンズと同様である。
【0097】
[実施例3]
実施例3のズームレンズの広角端における構成と光束の断面図を図10に示す。実施例3のズームレンズは、拡大側から縮小側へ順に、正の屈折力を有する第1光学系U1と、第2光学系U2とからなる。第1光学系U1は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL1~L13からなる。第2光学系U2は、拡大側から縮小側へ順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4とからなる。第1レンズ群G1は、レンズL21からなる。第2レンズ群G2は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL22~L23と、開口絞りStとからなる。第3レンズ群G3は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL24~L29からなる。第4レンズ群G4は、レンズL30からなる。
【0098】
変倍の際に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3とはそれぞれ、隣接する群との間隔を変化させて光軸Zに沿って移動する。変倍の際に、第1光学系U1と、第4レンズ群G4とはそれぞれ、縮小側結像面に対して固定される。フォーカス群Gfは、レンズL4~L5からなる。
【0099】
実施例3のズームレンズについて、基本レンズデータを表7A及び表7Bに、諸元及び可変面間隔を表8に、非球面係数を表9に、各収差図を図12に示す。基本レンズデータ、諸元及び各収差図は、投写距離が0.97m(メートル)の状態におけるものである。
【0100】
【表7A】
【0101】
【表7B】
【0102】
【表8】
【0103】
【表9】
【0104】
図11に、実施例3の変形例であるズームレンズの広角端における構成と光束を示す。図11のズームレンズは、2つの光路折り曲げ部材を有し、光路を2回折り曲げている。図11のズームレンズは、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系U1rと、第2光学系U2rとからなる。図11の第1光学系U1rは、第1光学系U1rの内部にミラーR1を配置して、ミラーR1で光路を折り曲げた点が実施例3の第1光学系U1と異なる。図11の第2光学系U2rは、第2光学系U2rの最も拡大側にミラーR2を配置して、ミラーR2で光路を折り曲げた点が実施例3の第2光学系U2と異なる。図11のズームレンズのその他の構成は、実施例3のズームレンズと同様である。
【0105】
[実施例4]
実施例4のズームレンズの広角端における構成と光束の断面図を図13に示す。実施例4のズームレンズは、拡大側から縮小側へ順に、正の屈折力を有する第1光学系U1と、第2光学系U2とからなる。第1光学系U1は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL1~L13からなる。第2光学系U2は、拡大側から縮小側へ順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4とからなる。第1レンズ群G1は、レンズL21からなる。第2レンズ群G2は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL22~L23と、開口絞りStとからなる。第3レンズ群G3は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL24~L29からなる。第4レンズ群G4は、レンズL30からなる。
【0106】
変倍の際に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3とはそれぞれ、隣接する群との間隔を変化させて光軸Zに沿って移動する。変倍の際に、第1光学系U1と、第4レンズ群G4とはそれぞれ、縮小側結像面に対して固定される。フォーカス群Gfは、レンズL4~L5からなる。
【0107】
実施例4のズームレンズについて、基本レンズデータを表10A及び表10Bに、諸元及び可変面間隔を表11に、非球面係数を表12に、各収差図を図15に示す。基本レンズデータ、諸元及び各収差図は、投写距離が0.97m(メートル)の状態におけるものである。
【0108】
【表10A】
【0109】
【表10B】
【0110】
【表11】
【0111】
【表12】
【0112】
図14に、実施例4の変形例であるズームレンズの広角端における構成と光束を示す。図14のズームレンズは、2つの光路折り曲げ部材を有し、光路を2回折り曲げている。図14のズームレンズは、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系U1rと、第2光学系U2rとからなる。図14の第1光学系U1rは、第1光学系U1rの内部にミラーR1を配置して、ミラーR1で光路を折り曲げた点が実施例4の第1光学系U1と異なる。図14の第2光学系U2rは、第2光学系U2rの最も拡大側にミラーR2を配置して、ミラーR2で光路を折り曲げた点が実施例4の第2光学系U2と異なる。図14のズームレンズのその他の構成は、実施例4のズームレンズと同様である。
【0113】
[実施例5]
実施例5のズームレンズの広角端における構成と光束の断面図を図16に示す。実施例5のズームレンズは、拡大側から縮小側へ順に、正の屈折力を有する第1光学系U1と、第2光学系U2とからなる。第1光学系U1は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL1~L13からなる。第2光学系U2は、拡大側から縮小側へ順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4とからなる。第1レンズ群G1は、レンズL21からなる。第2レンズ群G2は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL22~L23と、開口絞りStとからなる。第3レンズ群G3は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL24~L29からなる。第4レンズ群G4は、レンズL30からなる。
【0114】
変倍の際に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3とはそれぞれ、隣接する群との間隔を変化させて光軸Zに沿って移動する。変倍の際に、第1光学系U1と、第4レンズ群G4とはそれぞれ、縮小側結像面に対して固定される。フォーカス群Gfは、レンズL4~L5からなる。
【0115】
実施例5のズームレンズについて、基本レンズデータを表13A及び表13Bに、諸元及び可変面間隔を表14に、非球面係数を表15に、各収差図を図18に示す。基本レンズデータ、諸元及び各収差図は、投写距離が0.97m(メートル)の状態におけるものである。
【0116】
【表13A】
【0117】
【表13B】
【0118】
【表14】
【0119】
【表15】
【0120】
図17に、実施例5の変形例であるズームレンズの広角端における構成と光束を示す。図17のズームレンズは、2つの光路折り曲げ部材を有し、光路を2回折り曲げている。図17のズームレンズは、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系U1rと、第2光学系U2rとからなる。図17の第1光学系U1rは、第1光学系U1rの内部にミラーR1を配置して、ミラーR1で光路を折り曲げた点が実施例5の第1光学系U1と異なる。図17の第2光学系U2rは、第2光学系U2rの最も拡大側にミラーR2を配置して、ミラーR2で光路を折り曲げた点が実施例5の第2光学系U2と異なる。図17のズームレンズのその他の構成は、実施例5のズームレンズと同様である。
【0121】
[実施例6]
実施例6のズームレンズの広角端における構成と光束の断面図を図19に示す。実施例6のズームレンズは、拡大側から縮小側へ順に、正の屈折力を有する第1光学系U1と、第2光学系U2とからなる。第1光学系U1は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL1~L14からなる。第2光学系U2は、拡大側から縮小側へ順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4とからなる。第1レンズ群G1は、レンズL21からなる。第2レンズ群G2は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL22~L23と、開口絞りStとからなる。第3レンズ群G3は、拡大側から縮小側へ順に、レンズL24~L30からなる。第4レンズ群G4は、レンズL31からなる。
【0122】
変倍の際に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3とはそれぞれ、隣接する群との間隔を変化させて光軸Zに沿って移動する。変倍の際に、第1光学系U1と、第4レンズ群G4とはそれぞれ、縮小側結像面に対して固定される。フォーカス群Gfは、レンズL4~L5からなる。
【0123】
実施例6のズームレンズについて、基本レンズデータを表16A及び表16Bに、諸元及び可変面間隔を表17に、非球面係数を表18に、各収差図を図21に示す。基本レンズデータ、諸元及び各収差図は、投写距離が0.97m(メートル)の状態におけるものである。
【0124】
【表16A】
【0125】
【表16B】
【0126】
【表17】
【0127】
【表18】
【0128】
図20に、実施例6の変形例であるズームレンズの広角端における構成と光束を示す。図20のズームレンズは、2つの光路折り曲げ部材を有し、光路を2回折り曲げている。図20のズームレンズは、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系U1rと、第2光学系U2rとからなる。図20の第1光学系U1rは、第1光学系U1rの内部にミラーR1を配置して、ミラーR1で光路を折り曲げた点が実施例6の第1光学系U1と異なる。図20の第2光学系U2rは、第2光学系U2rの最も拡大側にミラーR2を配置して、ミラーR2で光路を折り曲げた点が実施例6の第2光学系U2と異なる。図20のズームレンズのその他の構成は、実施例6のズームレンズと同様である。
【0129】
上記では、実施例2~実施例6については、変形例として光路を2回折り曲げた例を示した。しかし、実施例2~実施例6についても、光路折り曲げ部材として、第1光路折り曲げ部材のみを有する構成の変形例、及び第2光路折り曲げ部材のみを有する構成の変形例が可能である。
【0130】
表19に実施例1~6のズームレンズの条件式(1)~(4)の対応値を示す。表19に示す実施例の対応値を条件式の上限又は下限として用いて、条件式の好ましい範囲を設定してもよい。
【0131】
【表19】
【0132】
実施例1~6のズームレンズは、ズーム倍率が1.2倍以上あり、高い倍率を有している。実施例1~6のズームレンズは、広角端における全画角が105度以上あり、広い画角を有している。また、実施例1~6のズームレンズは、変倍の際の収差変動が抑制され、各収差が良好に補正されて高い光学性能を実現している。
【0133】
次に、本開示の実施形態に係る投写型表示装置について説明する。図22は、本開示の一実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。図22に示す投写型表示装置100は、本開示の実施形態に係るズームレンズ10と、光源15と、各色光に対応し光学像を出力するライトバルブとしての透過型表示素子11a~11cとを有する。また、投写型表示装置100は、色分解のためのダイクロイックミラー12、13と、色合成のためのクロスダイクロイックプリズム14と、コンデンサレンズ16a~16cと、光路を偏向するための全反射ミラー18a~18cとを有する。なお、図22では、ズームレンズ10は概略的に図示している。また、光源15とダイクロイックミラー12の間にはインテグレーターが配されているが、図22ではその図示を省略している。
【0134】
光源15からの白色光は、ダイクロイックミラー12、13で3つの色光光束(青色光、緑色光、及び赤色光)に分解された後、それぞれコンデンサレンズ16a~16cを経て各色光光束にそれぞれ対応する透過型表示素子11a~11cに入射して変調され、クロスダイクロイックプリズム14により色合成された後、ズームレンズ10に入射する。ズームレンズ10は、透過型表示素子11a~11cにより変調された変調光に基づく光学像をスクリーン105上に投写する。
【0135】
図23は、本開示の別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。図23に示す投写型表示装置200は、本開示の実施形態に係るズームレンズ210と、光源215と、各色光に対応し光学像を出力するライトバルブとしてのDMD(Digital Micromirror Device:登録商標)素子21a~21cとを有する。また、投写型表示装置200は、色分解及び色合成のためのTIR(Total Internal Reflection)プリズム24a~24cと、照明光と投写光を分離する偏光分離プリズム25とを有する。なお、図23ではズームレンズ210を概略的に図示している。また、光源215と偏光分離プリズム25の間にはインテグレーターが配されているが、図23ではその図示を省略している。
【0136】
光源215からの白色光は、偏光分離プリズム25内部の反射面で反射された後、TIRプリズム24a~24cにより3つの色光光束(青色光、緑色光、及び赤色光)に分解される。分解後の各色光光束はそれぞれ対応するDMD素子21a~21cに入射して変調され、再びTIRプリズム24a~24cを逆向きに進行して色合成された後、偏光分離プリズム25を透過して、ズームレンズ210に入射する。ズームレンズ210は、DMD素子21a~21cにより変調された変調光に基づく光学像をスクリーン205上に投写する。
【0137】
図24は、本開示のさらに別の実施形態に係る投写型表示装置の概略構成図である。図24に示す投写型表示装置300は、本開示の実施形態に係るズームレンズ310と、光源315と、各色光に対応し光学像を出力するライトバルブとしての反射型表示素子31a~31cとを有する。また、投写型表示装置300は、色分離のためのダイクロイックミラー32、33と、色合成のためのクロスダイクロイックプリズム34と、光路偏向のための全反射ミラー38と、偏光分離プリズム35a~35cとを有する。なお、図24では、ズームレンズ310は概略的に図示している。また、光源315とダイクロイックミラー32の間にはインテグレーターが配されているが、図24ではその図示を省略している。
【0138】
光源315からの白色光はダイクロイックミラー32、33により3つの色光光束(青色光、緑色光、及び赤色光)に分解される。分解後の各色光光束はそれぞれ偏光分離プリズム35a~35cを経て、各色光光束それぞれに対応する反射型表示素子31a~31cに入射して変調され、クロスダイクロイックプリズム34により色合成された後、ズームレンズ310に入射する。ズームレンズ310は、反射型表示素子31a~31cにより変調された変調光に基づく光学像をスクリーン305上に投写する。
【0139】
図25及び図26は、本開示の一実施形態に係る撮像装置であるカメラ400の外観図である。図25は、カメラ400を正面側から見た斜視図を示し、図26は、カメラ400を背面側から見た斜視図を示す。カメラ400は、交換レンズ48が取り外し自在に装着され、かつミラーレスタイプの一眼形式のデジタルカメラである。交換レンズ48は、本開示の実施形態に係るズームレンズ49を鏡筒内に収納したものである。
【0140】
カメラ400はカメラボディ41を備え、カメラボディ41の上面にはシャッターボタン42及び電源ボタン43が設けられている。また、カメラボディ41の背面には、操作部44、操作部45、及び表示部46が設けられている。表示部46は、撮像された画像及び撮像される前の画角内にある画像を表示する。
【0141】
カメラボディ41の前面中央部には、撮影対象からの光が入射する撮影開口が設けられ、その撮影開口に対応する位置にマウント47が設けられ、マウント47を介して交換レンズ48がカメラボディ41に装着される。
【0142】
カメラボディ41内には、撮像素子50が設けられている。撮像素子50は、交換レンズ48によって形成された被写体像に応じた撮像信号を出力する。撮像素子50としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等が用いられる。カメラボディ41内には、信号処理回路(不図示)、及び記録媒体(不図示)等が設けられている。信号処理回路は、撮像素子50から出力された撮像信号を処理して画像を生成する。記録媒体は、生成された画像を記録するためのものである。カメラ400では、シャッターボタン42を押すことにより静止画又は動画の撮影が可能であり、この撮影で得られた画像データが上記記録媒体に記録される。
【0143】
以上、実施形態及び実施例を挙げて本開示の技術を説明したが、本開示の技術は上記実施形態及び実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、及び非球面係数等は、上記各実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得る。
【0144】
また、本開示の技術に係る投写型表示装置も、上記構成のものに限定されず、例えば、光束分離又は光束合成に用いられる光学部材、及びライトバルブは、種々の態様の変更が可能である。ライトバルブは、光源からの光を画像表示素子により空間変調して、画像データに基づく光学像として出力する態様に限定されず、自発光型の画像表示素子から出力された光自体を、画像データに基づく光学像として出力する態様であってもよい。自発光型の画像表示素子としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)又はOLED(Organic Light Emitting Diode)等の発光素子が2次元配列された画像表示素子が挙げられる。
【0145】
また、本開示の技術に係る撮像装置も、上記構成のものに限定されず、例えば、ミラーレスタイプ以外のカメラ、フィルムカメラ、ビデオカメラ、セキュリティカメラ、及び映画撮影用カメラ等、種々の態様とすることができる。
【0146】
以上の実施形態及び実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
[付記1]
拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、第1光学系と、第2光学系とからなるズームレンズであって、
前記第2光学系は縮小側結像面と共役な位置に中間像を形成し、前記第1光学系は前記中間像を拡大側結像面に再結像させ、
前記第2光学系の最も拡大側のレンズは、拡大側に凸面を向けた正レンズであり、
変倍の際に隣り合う群との光軸方向の間隔が変化する群を1つのレンズ群とした場合、
前記第2光学系は、最も拡大側から縮小側へ光路に沿って順に連続して、変倍の際に移動する正の屈折力を有する第1移動レンズ群と、変倍の際に移動する第2移動レンズ群と、変倍の際に移動する正の屈折力を有する第3移動レンズ群とを含み、
前記ズームレンズ全体の中で、変倍の際に移動するレンズ群は、前記第1移動レンズ群と、前記第2移動レンズ群と、前記第3移動レンズ群とのみである
ズームレンズ。
[付記2]
前記第2光学系は、最も縮小側に、変倍の際に前記縮小側結像面に対して固定された固定レンズ群を含む
付記1に記載のズームレンズ。
[付記3]
前記固定レンズ群は、正の屈折力を有する
付記2に記載のズームレンズ。
[付記4]
縮小側がテレセントリックに構成されている
付記2又は付記3に記載のズームレンズ。
[付記5]
第2移動レンズ群は、負の屈折力を有する
付記1から付記4の何れか1つに記載のズームレンズ。
[付記6]
広角端における前記ズームレンズの焦点距離をfw、
前記第1光学系の焦点距離をfr1とした場合、
0.8<fr1/|fw|<5 (1)
で表される条件式(1)を満足する付記1から付記5の何れか1つに記載のズームレンズ。
[付記7]
前記第1光学系は、正レンズと、負レンズと、正レンズとが順に接合された接合レンズを含む
付記1から付記6の何れか1つに記載のズームレンズ。
[付記8]
広角端における前記第1光学系の拡大側から2番目のレンズの拡大側の面の有効径は、広角端における前記第1光学系の最も縮小側のレンズの拡大側の面の有効径よりも小さい
付記1から付記7の何れか1つに記載のズームレンズ。
[付記9]
前記第2移動レンズ群は、1枚の負レンズと、1枚の正レンズとからなる
付記1から付記8の何れか1つに記載のズームレンズ。
[付記10]
前記第1移動レンズ群の焦点距離をf1、
前記第2移動レンズ群の焦点距離をf2、
前記第3移動レンズ群の焦点距離をf3とした場合、
0<|f1/f2|<0.75 (2)
0<|f3/f2|<0.75 (3)
で表される条件式(2)及び(3)を満足する付記1から付記9の何れか1つに記載のズームレンズ。
[付記11]
0<|f1/f2|<0.5 (2-2)
0<|f3/f2|<0.5 (3-2)
で表される条件式(2-2)及び(3-2)を満足する付記10に記載のズームレンズ。
[付記12]
前記第1移動レンズ群の焦点距離をf1、
前記第3移動レンズ群の焦点距離をf3とした場合、
0.5<f1/f3<2 (4)
で表される条件式(4)を満足する付記1から付記11の何れか1つに記載のズームレンズ。
[付記13]
望遠端における前記第1移動レンズ群は、広角端における前記第1移動レンズ群よりも拡大側に位置し、
望遠端における前記第2移動レンズ群は、広角端における前記第2移動レンズ群よりも拡大側に位置し、
望遠端における前記第3移動レンズ群は、広角端における前記第3移動レンズ群よりも拡大側に位置する
付記1から付記12の何れか1つに記載のズームレンズ。
[付記14]
広角端から望遠端への変倍の際に、前記第1移動レンズ群、前記第2移動レンズ群、及び前記第3移動レンズ群は、それぞれ、常に拡大側へ移動する
付記13に記載のズームレンズ。
[付記15]
第1光学系内に、光路を折り曲げる第1光路折り曲げ部材が配置されている
付記1から付記14の何れか1つに記載のズームレンズ。
[付記16]
前記第1光学系より縮小側に、光路を折り曲げる第2光路折り曲げ部材が配置されている
付記1から付記14の何れか1つに記載のズームレンズ。
[付記17]
第1光学系内に、光路を折り曲げる第1光路折り曲げ部材が配置され、
前記第1光学系より縮小側に、光路を折り曲げる第2光路折り曲げ部材が配置されている
付記1から付記14の何れか1つに記載のズームレンズ。
[付記18]
前記第1光学系は、正の屈折力を有し、変倍の際に前記縮小側結像面に対して固定され、
前記第2光学系は、拡大側から縮小側へ光路に沿って順に、前記第1移動レンズ群と、前記第2移動レンズ群と、前記第3移動レンズ群と、変倍の際に前記縮小側結像面に対して固定された固定レンズ群と、からなる
付記1から付記17の何れか1つに記載のズームレンズ。
[付記19]
付記1から付記18の何れか1つに記載のズームレンズを備えた投写型表示装置。
[付記20]
付記1から付記18の何れか1つに記載のズームレンズを備えた撮像装置。
【符号の説明】
【0147】
10 ズームレンズ
11a~11c 透過型表示素子
12 ダイクロイックミラー
13 ダイクロイックミラー
14 クロスダイクロイックプリズム
15 光源
16a~16c コンデンサレンズ
18a~18c 全反射ミラー
21a~21c DMD素子
24a~24c TIRプリズム
25 偏光分離プリズム
31a~31c 反射型表示素子
32 ダイクロイックミラー
33 ダイクロイックミラー
34 クロスダイクロイックプリズム
35a~35c 偏光分離プリズム
38 全反射ミラー
41 カメラボディ
42 シャッターボタン
43 電源ボタン
44 操作部
45 操作部
46 表示部
47 マウント
48 交換レンズ
49 ズームレンズ
50 撮像素子
100 投写型表示装置
105 スクリーン
200 投写型表示装置
205 スクリーン
210 ズームレンズ
215 光源
300 投写型表示装置
305 スクリーン
310 ズームレンズ
315 光源
400 カメラ
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
Gf フォーカス群
Ka 軸上光束
Kb 最大画角の光束
L1~L31 レンズ
PP 光学部材
R1、R2 ミラー
Sim 画像表示面
St 開口絞り
U1、U1r 第1光学系
U2、U2r 第2光学系
Z 光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26