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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025098902
(43)【公開日】2025-07-02
(54)【発明の名称】オカラ含有液状食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/00 20250101AFI20250625BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20250625BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20250625BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20250625BHJP
【FI】
A23L11/00 Z
A23L29/256
A23L29/269
A23L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215321
(22)【出願日】2023-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】307016180
【氏名又は名称】地方独立行政法人鳥取県産業技術センター
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100111707
【弁理士】
【氏名又は名称】相川 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】杉本 優子
(72)【発明者】
【氏名】木村 伸一
(72)【発明者】
【氏名】美藤 麻里子
(72)【発明者】
【氏名】武仲 能子
【テーマコード(参考)】
4B020
4B036
4B041
【Fターム(参考)】
4B020LB27
4B020LC04
4B020LG07
4B020LK06
4B020LP08
4B036LE02
4B036LF01
4B036LF04
4B036LH11
4B036LH26
4B036LH29
4B036LK01
4B036LP05
4B041LC03
4B041LD01
4B041LH10
4B041LH16
4B041LK24
4B041LP03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】独特の触感を備えるオカラを用いた新しい食品を提供する。
【解決手段】1~15重量%の35メッシュ以上のオカラ(又は大豆粉末)と、0.1~1重量%のκカラギーナン、λカラギーナン、キサンタンガム、ジェランガムからなる群より選択される少なくとも1種又は2種以上と、及び水と、を含む液状食品。さらに、ザラつき感を備える液状食品を製造する方法、およびザラつき感を評価する方法も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~15重量%の35メッシュ以上のオカラ(又は大豆粉末)と、
0.1~1重量%のκカラギーナン、λカラギーナン、キサンタンガム、ジェランガムからなる群より選択される少なくとも1種又は2種以上と、及び
水と、を含む液状食品。
【請求項2】
前記群は、κカラギーナン及び/又はλカラギーナンからなることを特徴とする請求項1に記載の液状食品。
【請求項3】
当該液状食品は、所定環境下で、せん断速度を変化させながら行う粘度測定において、せん断速度に対する粘度の変化が所定の特徴を有することを特徴とする請求項1に記載の液状食品。
【請求項4】
高炭水化物含有食品において、高炭水化物成分の代わりにオカラ(又は大豆粉末)を使用する低炭水化物含有食品であることを特徴とする請求項1に記載の液状食品。
【請求項5】
ザラつき感を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の液状食品。
【請求項6】
更に、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の少なくとも1つ又は2つ以上を加えることのできる成分を含む請求項5に記載の液状食品。
【請求項7】
ベジタリアン対応可能なことを特徴とする請求項5に記載の液状食品。
【請求項8】
ビーガン対応可能なことを特徴とする請求項5に記載の液状食品。
【請求項9】
グルテンフリーであることを特徴とする請求項5に記載の液状食品。
【請求項10】
請求項5に記載の液状食品を製造する方法であって、
水若しくは水を含有する液状成分に、1~15重量%の微粉砕オカラ(又は大豆粉末)の35メッシュ以上のものを投入するステップと、
0.1~1重量%のκカラギーナン、λカラギーナン、キサンタンガム、ジェランガムからなる群より選択される少なくとも1種又は2種以上を更に投入するステップと、を含む方法。
【請求項11】
甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の少なくとも1つ又は2つ以上を加えるステップを含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記群は、κカラギーナン及び/又はλカラギーナンからなることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
請求項5に記載のザラつき感を評価する方法であって、
円すい-平板形回転粘度計を用いて、所定温度でせん断速度を変化させながら測定された粘度において、
せん断速度の増加と共に粘度が低下する基調の両対数グラフをプロットするステップと、
低せん断速度から、粘度のせん断速度依存性を直線に近似するステップと、
直線近似に使用される次のより高いせん断速度のプロットと、近似により得られた直線との距離を算出するステップと、
を含むザラつき感の評価方法。
【請求項14】
前記距離が、近似により得られた直線において最初の低せん断速度から最後に直線近似のために使用されるプロットのせん断速度までの長さ算出するステップを含む請求項13に記載の評価方法。
【請求項15】
前記距離と、前記長さを比較するステップを含む請求項14に記載の評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オカラ含有液状食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な食品製造業から出てくる加工残滓は、まだ食品としての利用価値の可能性があるにもかかわらず、その利用法が開発されていないということだけで、多くが産業廃棄物として莫大な費用を投じて処理されている。つまり、加工残滓の食品としての活用法を見い出すことができれば、資源の有効理由が促進されるだけではなく、処理費用低減という絶大なる効果が期待される。
【0003】
例えば、オカラは、豆腐製造の副産物としてよく知られているが、我が国で年間100万トン程度も生成され、その多くが産業廃棄物として処理されているとされる。これまでも、その有効活用が種々模索されてきたが、未だ、十分とは言えない。オカラは、大豆の風味や、たんぱく質、食物繊維(特に、不溶性食物繊維)などが豊富で、マグネシウム、カルシウム、ビタミンB2などの栄養素が多く含まれるとされ、安価で栄養満点の優良な健康食品として注目されている。しかし、水分が多いため、腐敗し易い上に、食品としての応用範囲が狭い。特に、食物繊維が多く、ザラついた食感であるため、食品としての利用が普及していないと考えられる。一方、平均粒径400μm以下の微細オカラと豆乳とを組み合わせることにより、オカラを含んでいても、ザラつきがなく、滑らかな食感が得られるとともに、乳成分などの動物性成分を含まずに、ボディ感を向上でき、コクのある風味を有するとされるオカラ含有組成物が開示されている(例えば、特許文献1)。即ち、オカラの平均粒径を小さくすると、ザラつき感が減少することが示唆されている。
【0004】
そのため、単細胞化工程を含まずに、少ない工程で青臭さと、ざらざらした食感のない、オカラ入りの豆腐を製造する方法や製造装置が提案されている(例えば、特許文献2)。また、大豆の栄養成分を摂取することができ、かつ、325メッシュを全通しない粒度の大豆粉末を使用してもザラツキをほとんど感じないゲル食品が提案されている(例えば、特許文献3)。このゲル食品においては、大豆粉末、寒天及びκ型カラギーナンから選ばれる1種又は2種、ローカストビーンガム及びキサンタンガム、並びに水を混合し、90℃以上に達温させた後、冷却して得られるものである。このように主に大豆粉末やオカラを含む食品において、ザラつき感がないことが目的とされてきた。
【0005】
一方、粉チーズのようなザラつき感を有した乳化状ソースであって、製造後保存されたり加熱されたりしても前記ザラついた食感が損なわれ難い乳化状ソースが提案されている(特許文献4)。これは、粉チーズ様のザラつき感を有した乳化状ソースであって、大豆たん白及びオクテニルコハク酸化処理澱粉が配合され、乳化状ソースのpHが3~5であり、大豆たん白凝集物が略均一に分散している乳化状ソースである。このように、食感については、その食品の種類等により、異なるものが望まれることもある。
【0006】
ところで、ビシソワーズ(ジャガイモの冷製スープ)やお汁粉(小豆の漉し餡を用いたもの)においては、ザラつき感が、それぞれの食品の特徴である。つまり、食感として、制御されたザラつき感が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-113873号公報
【特許文献2】特開2017-112884号公報
【特許文献3】特開2015-61518号公報
【特許文献4】特開2011-4688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述するように、食品の種類によっては、異なる食感が好まれる。特に、ザラつき感については、オカラや大豆粉末の粒径を小さくすることにより、ザラつきをなくす試みがなされてきた。一方、大豆たん白凝集物が略均一に分散したものがザラつき感を生じさせると考えられているが、それは、大豆たん白が酸により変性して凝集したものであるとされる。そして、ビシソワーズやお汁粉においては、ジャガイモ由来のザラつき感や小豆の漉し餡由来のザラつき感が望まれている。そして、ジャガイモや小豆の少なくとも一部をオカラで代替することができるならば、オカラの食品としての応用範囲が広がることが期待される。しかるに、本発明者の知る限りにおいて、これまで、そのような代替が論じられてきたことはなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、オカラにおけるザラつき感生成能を利用することにより、オカラの食品としての応用範囲を広げることができる。例えば、オカラ又は大豆粉末の粒径及びその他の添加成分を適宜選択することにより、独特なザラつき感を特徴とする、非オカラ含有食品へのオカラの追加、添加、又は代替(何れも部分的な場合を含む)を可能とすることができる。
【0010】
より具体的には、以下のものを含んでよい。
(1)1~15重量%の35メッシュ以上のオカラ(又は大豆粉末)と、0.1~0.5重量%のκカラギーナン、λカラギーナン、キサンタンガム、ジェランガムからなる群より選択される少なくとも1種又は2種以上と、及び 水と、を含む液状食品。
ここで、重量%は、オカラの乾燥オカラ相当分の重量パーセントを意味してよい。35メッシュ以上とは、35メッシュ又はそれより大きな番手のメッシュをパスするもののことを言う。例えば、35メッシュであれば、約500μm以下の粒がろ過される(パスする)と考えられる。100メッシュであれば、約149μm以下の粒がろ過される(パスする)と考えられる。オカラの大きさは20メッシュ以上が好ましく、25メッシュ以上が好ましく、30メッシュ以上が好ましい。また、40メッシュ以上であってもよく、45メッシュ以上であってもよく、50メッシュ以上であってもよく、60メッシュ以上であってもよく、70メッシュ以上であってもよく、80メッシュ以上であってもよく、100メッシュ以上であってもよく、140メッシュ以上であってもよく、170メッシュ以上であってもよく、200メッシュ以上であってもよく、270メッシュ以上であってもよく、325メッシュ以上であってもよい。工業的には、メッシュの数が大きくなると生産性が低下するおそれもあるので、400メッシュ程度のものでもよい。κカラギーナン、λカラギーナン、キサンタンガム、ジェランガムからなる群より選択される少なくとも1種又は2種以上は、0.01重量%以上であってもよく、0.05重量%以上であってもよく、0.07重量%以上であってもよい。また、κカラギーナン、λカラギーナン、キサンタンガム、ジェランガムからなる群より選択される少なくとも1種又は2種以上は、3重量%以下であってもよく、2重量%以下であってもよく、1.5重量%以下であってもよく、1.0重量%以下であってもよい。
(2)前記群は、κカラギーナン及び/又はλカラギーナンからなることを特徴とする上記(1)に記載の液状食品。
(3)当該液状食品は、所定環境下で、せん断速度を変化させながら行う粘度測定において、せん断速度に対する粘度の変化が所定の特徴を有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の液状食品。
(4)高炭水化物含有食品において、高炭水化物成分の代わりにオカラ(又は大豆粉末)を使用する低炭水化物含有食品であることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の液状食品。
(5)ザラつき感を備えることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載の液状食品。
(6)更に、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の少なくとも1つ又は2つ以上を加えることのできる成分を含む上記(1)から(5)のいずれかに記載の液状食品。
(7)ベジタリアン対応可能なことを特徴とする上記(1)から(6)のいずれかに記載の液状食品。
(8)ビーガン対応可能なことを特徴とする上記(1)から(7)のいずれかに記載の液状食品。
(9)グルテンフリーであることを特徴とする上記(1)から(8)のいずれかに記載の液状食品。
(10)上記(1)から(9)のいずれかに記載の液状食品を製造する方法であって、水若しくは水を含有する液状成分に、35メッシュ以上のオカラを投入するステップと、0.1~0.5重量%のκカラギーナン、λカラギーナン、キサンタンガム、ジェランガムからなる群より選択される少なくとも1種又は2種以上を更に投入するステップと、を含む方法。
オカラの添加量、オカラの通過するメッシュの数、κカラギーナン、λカラギーナン、キサンタンガム、ジェランガムからなる群より選択される少なくとも1種又は2種以上の量については、上記(1)における記載と同様である。
(11)甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の少なくとも1つ又は2つ以上を加えるステップを含む上記(10)に記載の方法。
(12)前記群は、κカラギーナン及び/又はλカラギーナンからなることを特徴とする上記(10)又は(11)に記載の方法。
(13)上述するいずれかのザラつき感を評価する方法であって、円すい-平板形回転粘度計を用いて、所定温度でせん断速度を変化させながら測定された粘度において、せん断速度の増加と共に粘度が低下する基調の両対数グラフをプロットするステップと、低せん断速度から、粘度のせん断速度依存性を直線に近似するステップと、直線近似に使用される次のより高いせん断速度のプロットと、近似により得られた直線との距離を算出するステップと、を含むザラつき感の評価方法。
(14)前記距離が、近似により得られた直線において最初の低せん断速度から最後に直線近似のために使用されるプロットのせん断速度までの長さ算出するステップを含む上述する何れかの評価方法。
(15)前記距離と、前記長さを比較するステップを含む上述する何れかの評価方法。
【0011】
ここで、液状食品とは、流動性のある食品を意味してもよい。例えば、穴あきスプーンですくった場合、流動成分の滴下が認められるようなものを含んでもよい。液状食品は、スープを含んでよく、汁粉を含んでよい。スープは、ホワイトソースベースのスープ風や、ジャガイモ冷製スープ様のスープを含んでよい。汁粉は、おから汁粉や大豆汁粉を含んでよい。35メッシュ以上とは、以下の対応表により、粒子径に読み替えることができる。
【表1】
カラギーナンは、硫酸基のついているガラクトースからなると言える。特に、κカラギーナンは、構造と構造が交互に並んだガラクトース基2つに1つの硫酸基がついている。ιカラギーナンは、構造のみのガラクトース基2つに3つの硫酸基がついている。λカラギーナンは、構造と構造が交互に並んだガラクトース基2つに3つの硫酸基がついている。キサンタンガム(xanthan gum)は多糖類の1つであり、トウモロコシなどの澱粉を細菌Xanthomonas campestrisにより発酵させて作られる。分子量は約200万もしくは1,300万から5,000万であり、グルコース2分子、マンノース2分子、グルクロン酸の繰り返し単位からなる。キサンタンガムにはカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩も含まれ、水と混合すると粘性が出る。ジェランガム(gellan gum)は、複合多糖類(ヘテロ多糖)に分類される多糖類(ポリサッカライド)であり、繰り返し単位を持ったポリマーの1種である。直鎖状をしており、4つの糖分子の繰り返しの構造を持つが、その構成は、グルコース、グルクロン酸、グルコースとL-ラムノースの反復ユニットで構成される。ジェランガムにはネイティブ型ジェランガム(HAジェランガム)及び脱アシル型ジェランガム(LAジェランガム)がある。真正細菌の1種のPseudomonas elodeaによって合成される水溶性の多糖類として知られ、水溶性を示す。容易にゲル化もする性質を持つ。
【0012】
粘度測定は、例えば、JISZ8803にまとめられているが、円すい-平板形回転粘度計を用いて行ってもよい。例えば、JIS K 7117-2(粘度測定方法)に準じてもよい。例えば、特に規定がなければ、所定温度として温度23℃やせん断速度0.1s-1を基準とすることもできる。好ましくは温度一定の条件で、せん断速度を変化させることができるものが好ましい。例えば、せん断速度0.1s-1から1000s-1迄を測定できるものであってもよい。
【0013】
高炭水化物含有食品は、炭水化物を多く含む食品或いは炭水化物成分が他の成分と比べて比較的多い食品を含んでもよい。また、炭水化物成分が多く含まれる食材が含まれる食品を意味してもよい。例えば、小豆、ささげ、いんげんまめ、べにばないんげん(花豆)、えんどう、そらまめ、ひよこまめ、レンズまめ等を含む豆類を含んでもよい。また、ジャガイモなどのようなイモ類を含んでもよい。一方、大豆及び落花生は、脂質を多く含む豆類とされてもよい。特に、大豆は、タンパク質も30%以上と非常に多く含んでおり、タンパク質を多く含む食材としてもよい。例えば、小豆の代わりに大豆(又はオカラ)を用いてもよい。また、ジャガイモの代わりに大豆(又はオカラ)を用いてもよい。
【0014】
甘味を加え得る成分は、ショ糖、ブドウ糖、果糖などを含んでもよい。塩味を加え得る成分は、塩化ナトリウム、塩化カリウムを含んでもよい。塩味をナトリウムイオンによって感じ、陰イオンが塩化物イオンのとき一番強く感じるともされている。酸味成分は、有機酸である酢酸やクエン酸、乳酸などを含んでもよい。酢酸は酢に、クエン酸はレモンや梅干に多く含まれる。苦味成分は、アルカロイド類のカフェイン、テオブロミン、ニコチン、カテキン、テルペノイドのフムロン類、リモニン、ククルビタシン、フラバノン配糖体のナリンジン、苦味アミノ酸、苦味ペプチド、胆汁酸、無機塩類のカルシウム塩、マグネシウム塩などを含んでもよい。また、茶などに含まれるカテキン、コーヒーなどに含まれるクロロゲン酸なども含んでもよい。デナトニウムを含んでもよい。うま味成分は、グルタミン酸、アスパラギン酸、イノシン酸、グアニル酸、キサンチル酸、コハク酸、及びそれらの塩類などを含んでもよい。
【0015】
ベジタリアンは、肉、魚介類および、それらの副生成物(含有食品)を食べない人のことを意味してもよい。植物性食品・卵を食べるオボベジタリアン、植物性食品・乳製品を食べるラクトベジタリアンなどさまざまなタイプを含んでもよい。ビーガンは、完全菜食主義の人のことを意味してもよい。肉や魚のみならず、卵や乳製品といった動物由来の食材も食べない人を意味してもよい。料理用の油も植物性のものに限ってもよい。グルテンフリーとは、グルテンを一定レベルで含まないという意味で、一般にはグルテンを含む食品を摂取しない(及び/又は摂取出来ない)食生活のことをいってもよい。グルテン(gluten)は、小麦や大麦・ライ麦などに含まれるたんぱく質の一種であってもよく、小麦の場合、グルテニンとグリアジンという2種類のたんぱく質が絡み合ってできたものを含んでもよい。
【0016】
直線に近似する方法としては、例えば、最小二乗法を含んでもよい。例えば、粘度をηとし、せん断速度をDとして、定数a及びbを用いれば、

log(η)=a・log(D)+b

により表されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の実施例において、所望の食感が得られるオカラの新たな食品としての応用範囲が広がることが期待される。また、大豆は、炭水化物が比較的少なく、タンパク質が多く含まれるので、健康食品の食材としても期待される。そのため、嗜好食品に含まれる炭水化物が多い別の食材の代替として用いることができると、健康食品として取り扱われることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実験例1及び実験例2の試料のせん断速度に対する粘度の変化を示す図である。
図2】実験例1から実験例4の試料のせん断速度に対する粘度の変化を示す図である。
図3】実験例1及び実験例7の試料のせん断速度に対する粘度の変化を示す図である。
図4】せん断速度に対して粘度を測定した結果を両対数グラフで示す模式図である。
図5】せん断速度に対して粘度を測定した結果を両対数グラフで示す模式図である。
図6】せん断速度に対して粘度を測定した結果を両対数グラフで示す模式図である。
図7】カッパ(κ)カラギーナンの構造式を模式的に示す図である。
図8】イオタ(ι)カラギーナンの構造式を模式的に示す図である。
図9】ラムダ(λ)カラギーナンの構造式を模式的に示す図である。
図10】キサンタンガムの構造式を模式的に示す図である。
図11】ジェランガムの構造式を模式的に示す図である。
図12】グァーガムの構造式を模式的に示す図である。
図13】実験例1のオカラ水溶液のオカラ粒子の顕微鏡観察を示す図である。
図14】実験例2のオカラ水溶液のオカラ粒子の顕微鏡観察を示す図である。
図15】実験例7のオカラ水溶液のオカラ粒子の顕微鏡観察を示す図である。
図16】実験例1、実験例2、及び実験例4について、行った官能試験結果を示す図である。
図17】実験例1、実験例2、及び実験例3について、行った官能試験結果を示す図である。
図18】実験例1、実験例2、及び実験例7について、行った官能試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。しかしながら、これらによって本発明は何ら制限されるものではない。
【実施例0020】
(粉砕オカラの準備)
市販の大豆に温水(95~100℃)を加え、摩砕機ですりつぶし、遠心分離機で豆乳とオカラに分離する。得られたオカラは、ミキサー、ミル、グラインダー、又はマスコロイダーで水分を含んだ状態で粉砕され、500μmのメッシュ(35メッシュ)を通ったものを使用することができる。更に水を加え或いは乾燥させて、80~85重量%の水分量になるよう調整することができる(今回は、マルサンアイ鳥取株式会社にここまでの準備を依頼した)。また、市販の乾燥オカラを用いる場合は、ミキサー、ミル、又はグラインダーで水を加えて或いは乾燥したままの状態で粉砕し、500μmのメッシュを通ったものに水を加え或いは乾燥させて、80~85重量%の水分量になるよう調整することができる。例えば、100gの乾燥オカラ(一般社団法人 日本乾燥おから協会の基準によると、水分は9%以下)に水分を少しずつ撹拌しながら加え、次に、粉砕処理を行い、500μmのメッシュ(35メッシュ)を通ったものに通算して全部で400mLとなる水を加えることができる。このとき、乾燥オカラ100gと水400gからなるため水分量は約80重量%(水分量を9%とすると、82重量%)となる。このようにして、粉砕オカラを準備することができる。ここで、粉砕オカラの水分量は、少なくとも50重量%以上が好ましく、60重量%以上が好ましく、70重量%以上が好ましい。また、水分量は95重量%以下が好ましく、90重量%以下が好ましく、88重量%以下が好ましい。
【0021】
(オカラ水溶液の準備)
上述で得られた粉砕オカラ100gに対し、水300mLを少量ずつ添加しながら、ダマが出来ないように混和し、オカラ水溶液を調整した。この結果、オカラ水溶液中には乾燥オカラ相当で、約3.75から5重量%のオカラが存在することになる。(例えば、100×0.2/(100+300)=0.05)このようなオカラ水溶液中の乾燥オカラ相当分は、1.25重量%以上が好ましく、2.5重量%以上が好ましく、3重量%以上が好ましい。このようなオカラ水溶液中の乾燥オカラ相当分は、12.5重量%以下が好ましく、10重量%以下が好ましく、7.5重量%以下が好ましい。このようなオカラ水溶液は、以降に述べる種々の食品に原料として用いることができる。また、料理の素材としても流通させてもよい。
【0022】
(増粘剤処理)
市販のκカラギーナン(商品名:カッパタイプカラギーナン。ユニテックフーズ株式会社製。)、ιカラギーナン(商品名:イオタタイプカラギーナン。ユニテックフーズ株式会社製。)、λカラギーナン(商品名:ラムダタイプカラギーナン。ユニテックフーズ株式会社製。)を増粘剤として準備した。それらの化学式は、図7から図9に示す。また、市販のキサンタンガム(商品名:キサンタンガムスタンダード(粉末)。ユニテックフーズ株式会社製。)及び市販のジェランガム(商品名:HAジェランガム。ユニテックフーズ株式会社製。)を増粘剤として準備した。それらの化学式は、図10及び図11に示す。また、市販のグアーガム(商品名:グアーガム。ユニテックフーズ株式会社製。)を比較の増粘剤として準備した。この化学式は、図12に示す。上述のようにして準備したオカラ水溶液に、0.1重量%となるようにκカラギーナンをそれぞれ添加し、よく撹拌し増粘処理液とした。また、オカラ水溶液に、0.1重量%となるようにιカラギーナンを添加し、よく撹拌し増粘処理液とした。更に、オカラ水溶液に、0.1重量%となるようにλカラギーナンを添加し、よく撹拌し増粘処理液とした。そして、比較のため、オカラ水溶液に、0.1重量%となるようにグアーガムをそれぞれ添加し、よく撹拌し増粘処理液とした。これらの試料を表2にまとめる。
【0023】
【表2】
【0024】
(粘度測定)
上述のように準備したそれぞれの試料(実験例1から実験例7)について、粘度測定を行った。粘度測定には、アントンパール・ジャパン社製の円錐平板型回転粘度計(商品名:モジュラーコンパクトレオメータ MCR92)を用いた(JIS Z 8803及びISO 3219(JIS K 7117-2)参照)。測定温度は、25℃で一定とし、せん断速度を0.1(1/sec)から500(1/sec)に上昇させ、それぞれのせん断速度で、粘度(mPa・s)を測定した。このとき用いたのが、直径20mmのパラレルプレートで、距離を0.65mmに設定した。
【0025】
(粘度測定結果)
図1に実験例1及び実験例2の試料につき、測定した粘度を両対数グラフで示す。増粘剤を添加していない実験例1においては(一番下のプロット)、せん断速度の増加と共に粘度が直線的に低下することが分かる。一般に非ニュートン流動と言われるものであるが、例えば液体高分子など分子鎖の絡み合いが妨げになり外力と流れの速さの関係(粘度)に影響し、外力を強くするほど分子鎖の絡み合いが切れる頻度が高まり、外力に対する流れの速さの度合いが高くなると考えられている。また、流体中に含有する粒子が大量に分散している濃厚分散系では粒子間の相互作用により、さまざまな強度で二次結合が起こり高次構造が形成され、流動することにより高次構造が破壊されるのでせん断速度の増加とともに粘度は低下するとも言われている。また、κカラギーナン濃度の低いものについても同様な特性が得られた。
【0026】
一方、0.1重量%のκカラギーナン濃度の実験例2は、せん断速度が10sec-1あたりで、粘度の低下が止まっていた。これは、このようなせん断速度において、含まれるオカラ粒子と増粘剤との相互作用等により、二次的結合が起こり高次構造が作られることが要因ではないかと考えられる。即ち、主に不溶性の食物繊維からなると考えられるオカラ粒子の見かけの大きさが大きくなった可能性がある。
【0027】
図2は、実験例1から実験例4の試料につき、測定した粘度を両対数グラフで示す。実験例1及び実験例3においては、せん断速度の増加と共に粘度が直線的に低下することが分かる。一方、実験例2及び実験例4においては、せん断速度が10sec-1あたりで、粘度の低下が止まっていた。これは、このようなせん断速度において、含まれるオカラ粒子と増粘剤との相互作用等により、二次的結合が起こり高次構造が作られることが要因ではないかと考えられる。即ち、主に不溶性の食物繊維からなると考えられるオカラ粒子の見かけの大きさが大きくなった可能性がある。即ち、増粘剤として、ιカラギーナンを用いた場合は、他のカラギーナンと異なり、二次的結合が起こらず、オカラ粒子の見かけの大きさは変わらなかったのではないかと考えられる。
【0028】
図示しないが、キサンタンガム及びジェランガムを用いた実験例5及び実験例6においても、図1及び図2のκカラギーナン等を用いたものと同様にせん断速度が10sec-1あたりで、粘度の低下が止まっていた。
【0029】
図3に、実験例1及び実験例7の試料につき、測定した粘度を両対数グラフで示す。これらの試料においては、せん断速度の増加と共に粘度が直線的に低下することが分かる。即ち、増粘剤として、グアーガムを用いた場合は、二次的結合が起こらず、オカラ粒子の見かけの大きさは変わらなかったのではないかと考えられる。
【0030】
図4は、粘度をせん断速度に対して測定した結果を両対数グラフで示す模式図である。図中、点1から9並びにaからcは、それぞれのせん断速度において得られた粘度のプロットである。近似曲線Sは、プロットされた点1から9を用いて最小二乗法で得た直線である。例えば、粘度をηとし、せん断速度をDとして、定数a及びbを用いれば、

log(η)=a・log(D)+b

により表される。点aは、明らかに直線Sより上にずれている。このとき、点a(D, η)と直線S(log(η)-a・log(D)-b=0)との距離Lは、次のように表すことができる。
【数1】
また、点1(D, η)から点n(D, η)(nは自然数)迄のせん断速度Dに対応する直線S上の線分の長さLL通算は、次のように表すことができる。
【数2】
この比をとれば、規格化した基準ズレを表すことができる。短い線分では、数値がばらつきやすいので、例えば、5点以上、10点以上のように数点以上(或いは、所定の範囲の全測定点のうち1割以上、2割以上、又は3割以上)の測定点を使用して近似直線に対して、検討してもよい。また、線分の長さLLは、直近の測定点3点による2区間(せん断速度の対数基準)の粘度の対数の変化量とすることができる。このとき変化量の絶対値が0になると、比が無限大となるので調整が必要である。例えば、L/LL通算>所定の値(例えば、0.05)となる条件で、粘度の低下傾向が変化したと考えることもできる。また、L/LL>所定の値(例えば、0.2)となる条件で、粘度の低下が止まったと考えることもできる。これら所定の値は、条件により適宜選択することができるが、近似直線から、明らかに離れるようになった場合を目視で確認し、選択してもよい。具体的なデータについてこれを当てはめると、図5及び図6のようになる。これは、プロット間隔をほぼ一定にすると成り立ちやすいと考えられる。図5は、実測値〇と、一次式の近似値_をプロットしたものである。近似値は順次一次式を更新するため、必ずしも一直線には並ばないことがわかる。一方、実測値は、せん断速度の対数が、0.8あたりから近似の一次式からズレていることがわかる。図6は、このズレを上記2種類のL/LLで表現したものである。〇印は、直近の測定点3点による2区間を基準にしたもので、▲印は、通算の近似直線を基準にしたものである。〇は、大きく変化しているが、▲は僅かながら変化している。いずれも同じように0.8あたりから大きくなってきていることが分かる。このような変化をするものを対象とすることができる。
【0031】
(相互作用に関して)
図7から図12は、各種の増粘剤の構造式を模式的に表したものである。カラギーナンは紅藻類から抽出される多糖類で、D-ガラクトースがα-1,3結合又はβ-1,4結合を交互に繰り返した構造をしている。硫酸基の数とアンヒドロ結合の有無により、カッパ・イオタ・ラムダの3タイプに分けられ、それぞれ溶解性やゲル化性、ゲル化に最適なイオン、ゲルの性質が異なる。κカラギーナンは、ガラクトース基2つに1つの硫酸基がついており、ιカラギーナンは、ガラクトース基2つに2つの硫酸基がついており、λカラギーナンは、ガラクトース基2つに3つの硫酸基がついている。κカラギーナンやιカラギーナンでは、70℃以上の加熱溶解が必要であり、溶媒の中にカリウムやカルシウムを含んでいる場合は冷水で溶けない。λカラギーナンは、どのような溶媒であっても低温度で溶解する。κカラギーナンは、冷却、カリウムイオンによってゲル形成する。寒天のような硬くハリがあってモロいゲルが形成され、離水が多くなる。ローカストビーンガムを併用することにより、弾力性のあるゲルになり、離水が少なくなる。ιカラギーナンは、カルシウムイオンによってゲル形成する。弾力性のあるゲルになり、離水が少なくなる。λカラギーナンは、ゲル化はしない。乳タンパクがあると増粘するため中性乳製品やスープなどの増粘剤として利用されている。また、pH6以上で耐熱性があり、塩があると増粘し易い。κカラギーナン及びιカラギーナンは、タンパクと反応する特徴があり、例えば、プリンやカスタード、アイスクリームでは乳タンパクと反応するとされている。
【0032】
キサンタンガム(xanthan gum)は多糖類の1つであり、トウモロコシなどの澱粉を細菌Xanthomonas campestrisにより発酵させて作られる。分子量は約200万若しくは1,300万から5,000万とされている。グルコース2分子、マンノース2分子、グルクロン酸の繰り返し単位からなる。グルコースの主鎖にマンノース、グルクロン酸からなる側鎖がついた構造を持っており、主鎖が短く、側鎖が長い。キサンタンガムにはカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩も含まれる。水と混合すると粘性が出ることから、増粘剤、増粘安定剤として幅広い用途で用いられている。キサンタンガムは、例えば、煮物の汁にとろみをつけてあん状にする際、片栗粉を使用すると、熱や時間等の条件によってだれやすくなってしまうので、片栗粉の代用としてキサンタンガムを使うことで、とろみを持続させることができる。キサンタンガムは、耐熱性が高く、冷凍解凍にも耐性がある。キサンタンガムは、温水及び冷水にも可溶である。キサンタンガムは、少ない添加量で高い粘度を持ち、低濃度、低シェア(回転数)で比較的高粘度であり、擬塑性流動である。擬塑性流動とは、力を加えると粘度が低くなり、力を加えないで置いておいた状態では粘度が高くなる性質のことをいう。
【0033】
ジェランガムは、発酵によって得られる天然の多糖類(ポリサッカライド)で、水草から採取された微生物スフィンゴモナス・エロディア(Sphingomonas elodea)がブドウ糖などを栄養源として菌体外に蓄積した多糖類を、分離・精製して生産したものである。このジェランガムは、高アシル基含有のHAジェランガム、アシル基を除去したLAジェランガムの2種類がある。ジェランガムは、図11に示すような4つの糖分子の、繰り返し単位からなる多糖類である。ジェランガムは直鎖状のヘテロ多糖類で、主鎖に2個のグルコース、1個のグルクロン酸、1個のラムノースの4糖が結合した構成となっている。HAジェランガムでは、2個のアセチル基を置換する置換基として、アセテート及びグリセレートが存在する。この2個の置換基は、同一のグルコース残留物中にあり、繰り返し単位あたり平均1個のグリセレートが存在し、繰り返し単位の一つ置きに1個のアセテートが存在する。また、LAジェランガムは光散乱及び固有粘度測定によると分子量が約50万といわれている。ジェランガムを水に分散させた後、LAジェランガムの場合は90℃以上、HAジェランガムの場合は85℃以上の温度で加熱溶解する。ジェランガムの溶解時には溶液内のカチオン類の影響を受ける。例えば、LAジェランガムではカチオン類存在下の溶液に溶解させる場合、クエン酸ナトリウムなどのキレート剤を添付するか、より高温での加熱溶解をすることになる。一方、HAジェランガムの場合、カチオン類の影響はLAジェランガムに比べて少なく、高い濃度のカチオン類はゲル化温度が上昇する傾向にある。HAジェランガムはゼラチンのように軟らかくて弾力性の強いゲルを、LAジェランガムは寒天のように硬くてもろいゲルとなる。LAジェランガムのゲル化機構はカチオンの存在により強固なゲルを形成する。LAジェランガムを加熱することで水和させるとランダムコイル状となり、冷却することで二重螺旋を形成する。更に冷却すると1価のカチオン存在下ではカルボキシル基の電荷が中和され二重螺旋同士が水素結合により会合し、2価のカチオン存在下ではカルボキシル基間をイオン的に架橋し二重螺旋同士が会合してゲル化が起こる。
【0034】
グァーガムは、図12に示すような繰り返しの単位からなる多糖類であり、主鎖がマンノース、側鎖はガラクトースで構成されており、ガラクトマンナンと呼ばれる電荷を持たない水溶性高分子に分類される。ガラクトースとマンノースは1:2の比率で均一に存在し、この比率が1:3のものをタラガム、1:4のものをローカストビーンガムといい、総じてガラクトマンナンと呼ばれる。グァーガムの分子量は20~30万といわれているが、分解された低分子タイプの製品も販売されている。グアーガムは1%水溶液で非常に粘度が高く、その水溶液はシュードプラスチック性および糸引き性を示す。シュードプラスチック性とは、加える力を強くすることで粘度が低下する特性のことで、たとえばシュードプラスチック性を有するマヨネーズは、保管している状態(力が加わっていない状態)では液が動かず、チューブを押す(力を加える)と粘度が低下して液が絞り出される。また口に入れると咀嚼による力が加えられるので、口の中では粘度を感じにくくなる。冷水で溶解し、粘稠な溶液となるが、加熱により溶解が促進される。溶液はずり応力の増加に伴い見掛けの粘度が減少する擬塑性流動(シュードプラスチック性)を示す。1%溶液の粘度が3000~5000mPa・sのものが多い。他の多糖類との相互作用があり、例えば、キサンタンガムと併用すると、相乗効果により高粘度を呈する。グァーガムとキサンタンガムの混合比率が4:1のとき粘度が最大となる。
【0035】
(オカラ粒子の観察)
実験例1のオカラ水溶液及び実験例2のκカラギーナン処理オカラ水溶液及び実験例7のグアーガム処理オカラ水溶液について、トリパンブルー染色により、オカラ粒子の顕微鏡観察を行った。それぞれの顕微鏡観察結果を図13から図15に示す。増粘剤処理のないおから水溶液(実験例1)と比して、0.1%κカラギーナン処理を行ったおから水溶液(実験例2)では、青く染め出される固形物が増加していることが分かる。0.1%κカラギーナン処理ではザラ感が増強されることから、これらの固形物がザラ感に影響を及ぼしているのではないかと考えられる。また、0.1%グアーガム処理オカラ水溶液(実験例7)では、大型の固形物は見られなかった。
【0036】
(官能試験)
κカラギーナン、ιカラギーナン、及びλカラギーナン処理を行ったオカラ水溶液(それぞれ、実験例2から実験例4)について、官能試験を行った。比較のため、未処理の試料(実験例1)についても同様に官能試験を行った。κカラギーナン及びλカラギーナン処理をしたもの(実験例2及び実験例4)について、ザラつき感について22人の試験官による官能試験を行った。図16にその結果を示す。κカラギーナン処理したものはもったりとしたシチュー状の形状となりザラ感が増強される傾向が見られた。未処理の試料(実験例1)及びκカラギーナン処理(実験例2)については、実験例2の方がザラつき感が強いとされた。この結果は、図2等における粘度低下が止まるところの有無と対応する。即ち、粘度低下が止まるところが有る場合は、ザラつき感があると評価され、無い場合は、ザラつき感がないと評価されたと考えることができる。これは、一般にザラつき感は、大きなオカラ粒子の有無と関係しているとされることから、粘度低下が止まるところが有る場合には増粘剤等との相互作用によりオカラ粒子の二次的結合が起こり高次構造が作られたためではないかと考えられる。また、κカラギーナン処理とλカラギーナン処理(実験例2と実験例4)では、実験例4がよりザラつき感が高いと感じられた。図2では、何れもほぼ同様な粘度低下が止まるところを有しているので、粘度測定だけでは判別が難しいのかもしれない。或いは、λカラギーナンでは相互作用により二次的結合が起こりより大きな高次構造が作られたためかもしれない。λカラギーナン処理(実験例4)及び未処理の試料(実験例1)については、実験例4の方がザラつき感が強いとされた。これも、図2等における粘度低下が止まるところの有無と対応する。
【0037】
図17は、未処理の試料(実験例1)、κカラギーナン処理試料(実験例2)、及びιカラギーナン処理試料(実験例3)について、ザラつき感について22人の試験官による官能試験結果を示す。未処理の試料(実験例1)及びκカラギーナン処理(実験例2)については、実験例2の方がザラつき感が強いとされた。κカラギーナン処理とιカラギーナン処理(実験例2と実験例3)では、実験例2がよりザラつき感が高いと感じられた。更に、ιカラギーナン処理(実験例3)及び未処理の試料(実験例1)については、いずれもザラつき感が変わらないとされた。ιカラギーナン処理(実験例3)では、ふわふわと柔らかいムース状の形状となり、そのザラつき感は実験例1と差が無いということであった。この結果は、図2等における粘度低下が止まるところの有無と対応する。
【0038】
図18は、未処理の試料(実験例1)、κカラギーナン処理試料(実験例2)、及びグァーガム処理試料(実験例7)について、ザラつき感について22人の試験官による官能試験結果を示す。未処理の試料(実験例1)及びグァーガム処理(実験例7)については、いずれも同数の方がザラつき感が強いとされ、評価がわかれた。κカラギーナン処理(実験例2)とグァーガム処理(実験例7)では、実験例2がよりザラつき感が高いと感じられた。更に、κカラギーナン処理試料(実験例2)及び未処理の試料(実験例1)については、実験例2がよりザラつき感が高いと感じられた。この結果は、図2等における粘度低下が止まるところの有無と対応する。
【0039】
(ホワイトソースベースのスープ風)
オカラパウダー(粉末)又は大豆パウダーは、ほとんど味や香りはないため、さまざまな料理において、食材の代替品として用いることができる。また、生のオカラと違って乾燥した粉末状になっているため、保存性が高い。ここでは、上述した粉砕オカラを100g、スーパー等で市販される玉ねぎを100g、更に、市販の豆乳(商品名:毎日おいしい無添加豆乳。マルサンアイ鳥取株式会社製。)300gを準備し、これらをIWATANI社製クラッシュミルサーに投入し、約5分間粉砕を行った。得られた混合物は、一般的なザル(13mm程度)で濾した混合物を次の工程に使用した。この時、損失は実質的になかったので、乾燥オカラ相当で、約3から4重量%を含有する混合物が得られた。(例えば、100×0.15/500=0.03。100×0.2/500=0.05。)混合物の液体を70℃以上に加熱してからκカラギーナン(商品名:カッパタイプカラギーナン。ユニテックフーズ社製。)を0.5g(0.1重量%相当)添加した。そして、粘性が出るまで、ヘラ等で混ぜた(約5分)。これに、まだ熱いままで余熱を利用して、コンソメ(商品名:コンソメ顆粒。味の素社製。)を8g添加し、塩(商品名:食卓塩。公益財団法人塩事業センター製。)を0.1g添加して混合した。乾燥オカラ相当で、約2.949から3.9324重量%を含有する混合物が得られた。(例えば、100×0.15/508.6=0.02949。100×0.2/508.6=0.039324。)市販のオカラは、白色をしているため、製造したスープは、ホワイトソースベースのスープに見えた。このスープを官能評価したところ、ザラつき感があることを確認した。ホワイトソースでは、小麦粉を使用するため、小麦粉由来のグルテンを含むが、このスープは、小麦粉の代わりにオカラを使用するため、グルテンフリーとなっている。また、バターや牛乳を使用しないため、動物性の食材を含まないため、ベジタリアンやビーガン向きの食品となっている。このようなスープにおいて、乾燥オカラ相当で、約0.5重量%以上が好ましく、約1重量%以上が好ましく、約1.5重量%以上が好ましく、約2重量%以上が好ましく、約2.5重量%以上が好ましい。また、乾燥オカラ相当で、約15重量%以下が好ましく、約10重量%以下が好ましく、約8重量%以下が好ましく、約5重量%以下が好ましい。
【0040】
(ジャガイモ冷製スープ様のスープ)
上述した粉砕オカラを100g、スーパー等で市販される玉ねぎ、セロリ、ネギ等香味野菜を約50g、及び水約300gをIWATANI社製クラッシュミルサーに投入し、約5分間粉砕・混合を行った。このとき、乾燥オカラ相当のおからが約3.3から4.44重量%を含有する混合物であった。(例えば、100×0.15/450=0.0333。100×0.2/450=0.0444。)この混合物を3つに分け、κカラギーナン(商品名:カッパタイプカラギーナン。ユニテックフーズ社製。)、λカラギーナン(商品名:カッパタイプカラギーナン。ユニテックフーズ社製。)、(カッパー、ラムダ)、キサンタンガム(商品名:キサンタンガムスタンダード(粉末)。ユニテックフーズ株式会社製。)、及びジェランガム(商品名:商品名HAジェランガム。ユニテックフーズ株式会社製。)をそれぞれ約0.4g添加し、混合した。コンソメ(商品名:コンソメ顆粒。味の素社製。)を適量添加し、塩(商品名:食卓塩。公益財団法人塩事業センター製。)を適量添加して混合した。市販のオカラ(粉末)は、白色をしているため、製造したスープは、白色を呈していて、ジャガイモ冷製スープ様のスープに見えた。このスープを官能評価したところ、いずれの増粘剤を用いたものもザラつき感があることを確認した。ここでは、ジャガイモの代わりにオカラを使用するため、炭水化物が少なく、ローカーボ食品といえる。このようなスープにおいて、乾燥オカラ相当で、約0.5重量%以上が好ましく、約1重量%以上が好ましく、約1.5重量%以上が好ましく、約2重量%以上が好ましく、約2.5重量%以上が好ましい。また、乾燥オカラ相当で、約15重量%以下が好ましく、約10重量%以下が好ましく、約8重量%以下が好ましく、約5重量%以下が好ましい。
【0041】
(おから汁粉)
上述した粉砕オカラを100g及び水約300gをIWATANI社製クラッシュミルサーに投入し、約5分間粉砕・混合を行った。このとき、乾燥オカラ相当のおからが約3.75から5重量%を含有する混合物であった。(例えば、100×0.15/400=0.0375。100×0.2/400=0.05。)この混合物を3つに分け、κカラギーナン(商品名:カッパタイプカラギーナン。ユニテックフーズ社製。)、λカラギーナン(商品名:カッパタイプカラギーナン。ユニテックフーズ社製。)、(カッパー、ラムダ)、キサンタンガム(商品名:キサンタンガムスタンダード(粉末)。ユニテックフーズ株式会社製。)、及びジェランガム(商品名:商品名HAジェランガム。ユニテックフーズ株式会社製。)をそれぞれ約0.4g添加し、混合した。市販の砂糖を適量添加し、色付けのためにきな粉(商品名:きな粉。イオントップバリュ株式会社製。)を入れてキツネ色にした。餡子の色にするならカカオ色素を用いることもできる。更に、餅、白玉、タピオカ等を添加してもよいが、この実験例では、これらは添加されなかった。この汁粉を官能評価したところ、いずれの増粘剤を用いたものも、汁粉における小豆のザラつき感と同様なザラつき感があることを確認した。ここでは、小豆の代わりにオカラを使用するため、炭水化物が少なく、また、タンパク質が多いので、健康食品といえる。尚、このときの乾燥オカラ相当のオカラの含有率は実質的に変化しない。このような汁粉において、乾燥オカラ相当で、約0.5重量%以上が好ましく、約1重量%以上が好ましく、約1.5重量%以上が好ましく、約2重量%以上が好ましく、約2.5重量%以上が好ましい。また、乾燥オカラ相当で、約15重量%以下が好ましく、約10重量%以下が好ましく、約8重量%以下が好ましい。
【0042】
(大豆汁粉)
上述した粉砕オカラを100g及び豆乳(商品名:毎日おいしい無添加豆乳。マルサンアイ鳥取株式会社製。)300gを容器に入れ、これらが一体となるまで、木べらやゴムベラを使って混合した。混合物の液体を70℃以上に加熱してからκカラギーナン(商品名:カッパタイプカラギーナン。ユニテックフーズ社製。)を0.4g(0.1重量%相当)添加した。そして、粘性が出るまで、ヘラ等で混ぜた(約5分)。これに、まだ熱いままで余熱を利用して、砂糖(商品名:上白糖。DM三井製糖株式会社製。)50g及びきな粉(商品名:きな粉。イオントップバリュ株式会社製。)20gを添加し、攪拌した。更に、色付けのためにきなこを適量添加して混合した。このとき、乾燥オカラ相当のおからが約3.1888から4.2517重量%を含有するものであった。(例えば、100×0.15/(100+300+0.4+50+20)=0.031888。100×0.2/(100+300+0.4+50+20)=0.042517。)更に、餅、白玉、タピオカ等を添加してもよいが、ここでは、白玉粉(商品名:白玉粉。イオントップバリュ株式会社製。)を水で練り形成し茹でて、冷水に取り冷やした白玉を数個添加した。この大豆汁粉を官能評価したところ、いずれの増粘剤を用いたものも、汁粉における小豆のザラつき感と同様なザラつき感があることを確認した。ここでは、小豆の代わりにオカラを使用するため、炭水化物が少なく、また、タンパク質が多いので、健康食品といえる。このような汁粉において、乾燥オカラ相当で、約0.5重量%以上が好ましく、約1重量%以上が好ましく、約1.5重量%以上が好ましく、約2重量%以上が好ましく、約2.5重量%以上が好ましい。また、乾燥オカラ相当で、約15重量%以下が好ましく、約10重量%以下が好ましく、約8重量%以下が好ましく、約5重量%以下が好ましい。
【符号の説明】
【0043】
1 2 3 4 5 6 7 8 9 a b c プロット
S 近似直線
L 点と直線の距離

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図17
図18