(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099229
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物及び成形品並びにそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20250626BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20250626BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20250626BHJP
C08K 3/18 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/04
C08K3/36
C08K3/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215725
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】笠谷 幸平
(72)【発明者】
【氏名】出口 由希
(72)【発明者】
【氏名】永野 繁明
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002AA012
4J002AA021
4J002AA022
4J002BD151
4J002CB001
4J002CF041
4J002CF061
4J002CF071
4J002CF072
4J002CF181
4J002CH071
4J002CH091
4J002CL001
4J002CM041
4J002CN021
4J002CN022
4J002CN031
4J002DE286
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002FD206
4J002GC00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GP00
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】樹脂廃棄物を効率よく再利用でき、かつ、加工時の発生ガスが抑制されて加工性に優れる樹脂組成物及び成形品並びにそれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物(A)と、樹脂廃棄物(B)と、ガス吸着剤(C)とを必須成分として配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、前記熱可塑性樹脂がエンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックであり、前記樹脂廃棄物(B)の配合量が樹脂組成物(A)100質量部に対して0.1~100質量部であり、前記ガス吸着剤(C)が、活性炭、シリカ、ゼオライト及びハイドロタルサイトからなる群から選ばれる少なくとも1種である、熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物(A)と、樹脂廃棄物(B)と、ガス吸着剤(C)とを必須成分として配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂がエンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックであり、
前記樹脂廃棄物(B)の配合量が樹脂組成物(A)100質量部に対して0.1~100質量部であり、
前記ガス吸着剤(C)が、活性炭、シリカ、ゼオライト及びハイドロタルサイトからなる群から選ばれる少なくとも1種である、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂がポリアリーレンスルフィド樹脂である、請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂廃棄物(B)がシュレッダーダストである、請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂廃棄物(B)の樹脂含有量が50~100質量部である、請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ガス吸着剤(C)の比表面積が50m2/g以上である、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ガス吸着剤(C)の配合量が樹脂組成物(A)100質量部に対して0.1~50質量部である、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
320℃で60分間加熱した際の重量減少率が1.0wt%以下である、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1又は2記載の樹脂組成物を溶融成形してなる成形品。
【請求項9】
少なくとも熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物(A)と、樹脂廃棄物(B)と、ガス吸着剤(C)とを必須成分として配合し、前記熱可塑性樹脂の軟化流動温度以上で溶融混練する工程を有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂がエンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックであり、
前記樹脂廃棄物(B)の配合量が前記樹脂組成物(A)100質量部に対して0.1~100質量部であり、
前記ガス吸着剤(C)が、活性炭、シリカ、ゼオライト及びハイドロタルサイトからなる群から選ばれる少なくとも1種である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂がポリアリーレンスルフィド樹脂である、請求項9記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂廃棄物(B)がシュレッダーダストである、請求項9又は10記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
前記樹脂廃棄物(B)の樹脂含有量が50~100質量部である、請求項9又は10記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項9又は10記載の製造方法で熱可塑性樹脂組成物を製造する工程、得られた熱可塑性樹脂組成物を溶融成形する工程を有する、成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物及び熱可塑性樹脂成形品並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な社会の実現に向けて、各種材料の再資源化に関する技術開発が加速している。中でも、自動車や家電から回収された産業廃棄物は、多量に排出されるため効率的な再利用が求められている。通常このような産業廃棄物は複数の材料から構成されており、そのまま新たな製品の原料として用いることは困難である。そこで、回収された産業廃棄物は一般的に部品ごとに解体後、破砕されて磁力選別により鉄系金属を分別し、樹脂廃棄物(いわゆるシュレッダーダストや混合残渣)として埋め立て処理されるのが一般的である。
【0003】
このような樹脂廃棄物は可能な限り樹脂材料として再利用することが好ましい。例えば、特許文献1には、異種の廃プラスチックを含む溶融混練用廃プラスチック混合物及びそれを溶融成形してなる成形物が開示されている。しかしながら、このような樹脂廃棄物単体でマテリアルリサイクルすると、樹脂の劣化に起因して得られる成形品が機械的強度に乏しくなるため、一般的にはバージン材料と混合して用いる。中でも、バージン材料としてエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックといった加工温度の高い材料を用いた場合には、低融点成分の分解ガスが多量に発生し、加工性や物性に悪影響を及ぼすことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、樹脂廃棄物を再利用でき、かつ、加工時の発生ガスが抑制されて加工性に優れる樹脂組成物及び成形品並びにそれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本開示は、少なくとも熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物(A)と、樹脂廃棄物(B)と、ガス吸着剤(C)とを必須成分として配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂がエンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックであり、
前記樹脂廃棄物(B)の配合量が樹脂組成物(A)100質量部に対して0.1~100質量部であり、
前記ガス吸着剤(C)が、活性炭、シリカ、ゼオライト及びハイドロタルサイトからなる群から選ばれる少なくとも1種である、熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0008】
また、本開示は、上記記載の樹脂組成物を溶融成形してなる成形品に関する。
【0009】
また、本開示は、少なくとも熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物(A)と、樹脂廃棄物(B)と、ガス吸着剤(C)とを必須成分として配合し、前記熱可塑性樹脂の軟化流動温度以上で溶融混練する工程を有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂がエンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックであり、
前記樹脂廃棄物(B)の配合量が前記樹脂組成物(A)100質量部に対して0.1~100質量部であり、
前記ガス吸着剤(C)が、活性炭、シリカ、ゼオライト及びハイドロタルサイトからなる群から選ばれる少なくとも1種である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
【0010】
また、本開示は、上記記載の製造方法で熱可塑性樹脂組成物を製造する工程、得られた熱可塑性樹脂組成物を溶融成形する工程を有する成形品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂廃棄物を再利用でき、かつ、加工時の発生ガスが抑制されて加工性に優れる樹脂組成物及び成形品並びにそれらの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はここで説明する一実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。また、特定のパラメータについて、複数の上限値及び下限値が記載されている場合、これらの上限値及び下限値の内、任意の上限値と下限値とを組合せて好適な数値範囲とすることができる。
【0013】
本実施形態に係るPAS樹脂組成物は、少なくとも熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物(A)と、樹脂廃棄物(B)と、ガス吸着剤(C)とを必須成分として配合してなる熱可塑性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂がエンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックであり、
前記樹脂廃棄物(B)の配合量が樹脂組成物(A)100質量部に対して0.1~100質量部であり、
前記ガス吸着剤(C)が、活性炭、シリカ、ゼオライト及びハイドロタルサイトからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。以下、説明する。
【0014】
<少なくとも熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物(A)>
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、必須成分として少なくとも熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物(A)(以下、単に樹脂組成物(A)ということがある)を配合してなる。
本実施形態で用いる樹脂組成物(A)に含まれる熱可塑性樹脂は、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックであればよく、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、PAS樹脂)、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、及び液晶性ポリエステル樹脂が好ましく、耐薬品性、耐熱性、及び機械的特性の観点から、PAS樹脂がより好ましく、さらにPAS樹脂の中でも特に、ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、PPS樹脂)が好ましい。
【0015】
PAS樹脂は、芳香族環と硫黄原子とが結合した構造を繰り返し単位とする樹脂構造を有するものであり、具体的には、下記一般式(1)
【0016】
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~4の範囲のアルキル基、ニトロ基、アミノ基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基を表す。)で表される構造部位と、必要に応じてさらに下記一般式(2)
【0017】
【化2】
で表される3官能性の構造部位と、を繰り返し単位とする樹脂である。式(2)で表される3官能性の構造部位は、他の構造部位との合計モル数に対して0.001~3モル%の範囲が好ましく、特に0.01~1モル%の範囲であることが好ましい。
【0018】
ここで、前記一般式(1)で表される構造部位は、特に該式中のR1及びR2は、前記PAS樹脂の機械的強度の点から水素原子であることが好ましく、その場合、下記式(3)で表されるパラ位で結合するもの、及び下記式(4)で表されるメタ位で結合するものが挙げられる。
【0019】
【化3】
これらの中でも、特に繰り返し単位中の芳香族環に対する硫黄原子の結合は前記一般式(3)で表されるパラ位で結合した構造であることが前記PAS樹脂の耐熱性の面で好ましい。
【0020】
また、前記PAS樹脂は、前記一般式(1)や(2)で表される構造部位のみならず、下記の構造式(5)~(8)
【0021】
【化4】
で表される構造部位を、前記一般式(1)と一般式(2)で表される構造部位との合計の30モル%以下で含んでいてもよい。特に本開示では上記一般式(5)~(8)で表される構造部位は10モル%以下であることが、PAS樹脂の耐熱性、機械的強度の点から好ましい。前記PAS樹脂中に、上記一般式(5)~(8)で表される構造部位を含む場合、それらの結合様式としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体の何れであってもよい。
【0022】
また、前記PAS樹脂は、その分子構造中に、ナフチルスルフィド結合などを有していてもよいが、他の構造部位との合計モル数に対して、3モル%以下が好ましく、特に1モル%以下であることが好ましい。
【0023】
また、PAS樹脂の物性は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されないが、以下の通りである。
【0024】
(溶融粘度)
本実施形態に用いるPAS樹脂の溶融粘度は、加工性及び靭性のバランスが良好となることから、300℃で測定した溶融粘度(V6)が、200Pa・s以下の範囲である。また、好ましくは2Pa・s以上の範囲であり、より好ましくは30Pa・s以上の範囲である。そして、好ましくは180Pa・s以下の範囲、より好ましくは160Pa・s以下の範囲である。ただし、溶融粘度(V6)の測定は、PAS樹脂を島津製作所製フローテスター、CFT-500Dを用いて行い、300℃、荷重:1.96×106Pa、L/D=10(mm)/1(mm)にて、6分間保持した後に測定した溶融粘度の測定値とする。
【0025】
(製造方法)
前記PAS樹脂の製造方法としては特に限定されないが、例えば(製造法1)硫黄と炭酸ソーダの存在下でジハロゲノ芳香族化合物を、必要ならばポリハロゲノ芳香族化合物ないしその他の共重合成分を加えて、重合させる方法、(製造法2)極性溶媒中でスルフィド化剤等の存在下にジハロゲノ芳香族化合物を、必要ならばポリハロゲノ芳香族化合物ないしその他の共重合成分を加えて、重合させる方法、(製造法3)p-クロルチオフェノールを、必要ならばその他の共重合成分を加えて、自己縮合させる方法、(製造法4)ジヨード芳香族化合物と単体硫黄を、カルボキシル基やアミノ基等の官能基を有していてもよい重合禁止剤の存在下、減圧させながら溶融重合させる方法、等が挙げられる。これらの方法のなかでも、(製造法2)の方法が汎用的であり好ましい。反応の際に、重合度を調節するためにカルボン酸やスルホン酸のアルカリ金属塩や、水酸化アルカリを添加しても良い。上記(製造法2)方法のなかでも、加熱した有機極性溶媒とジハロゲノ芳香族化合物とを含む混合物に含水スルフィド化剤を水が反応混合物から除去され得る速度で導入し、有機極性溶媒中でジハロゲノ芳香族化合物とスルフィド化剤とを、必要に応じてポリハロゲノ芳香族化合物と加え、反応させること、及び反応系内の水分量を該有機極性溶媒1モルに対して0.02~0.5モルの範囲にコントロールすることによりPAS樹脂を製造する方法(特開平07-228699号公報参照。)や、固形のアルカリ金属硫化物及び非プロトン性極性有機溶媒の存在下でジハロゲノ芳香族化合物と必要ならばポリハロゲノ芳香族化合物ないしその他の共重合成分を加え、アルカリ金属水硫化物及び有機酸アルカリ金属塩を、硫黄源1モルに対して0.01~0.9モルの範囲の有機酸アルカリ金属塩及び反応系内の水分量を非プロトン性極性有機溶媒1モルに対して0.02モル以下の範囲にコントロールしながら反応させる方法(WO2010/058713号パンフレット参照。)で得られるものが特に好ましい。ジハロゲノ芳香族化合物の具体的な例としては、p-ジハロベンゼン、m-ジハロベンゼン、o-ジハロベンゼン、2,5-ジハロトルエン、1,4-ジハロナフタレン、1-メトキシ-2,5-ジハロベンゼン、4,4’-ジハロビフェニル、3,5-ジハロ安息香酸、2,4-ジハロ安息香酸、2,5-ジハロニトロベンゼン、2,4-ジハロニトロベンゼン、2,4-ジハロアニソール、p,p’-ジハロジフェニルエーテル、4,4’-ジハロベンゾフェノン、4,4’-ジハロジフェニルスルホン、4,4’-ジハロジフェニルスルホキシド、4,4’-ジハロジフェニルスルフィド、及び、上記各化合物の芳香環に炭素原子数1~18の範囲のアルキル基を有する化合物が挙げられ、ポリハロゲノ芳香族化合物としては1,2,3-トリハロベンゼン、1,2,4-トリハロベンゼン、1,3,5-トリハロベンゼン、1,2,3,5-テトラハロベンゼン、1,2,4,5-テトラハロベンゼン、1,4,6-トリハロナフタレンなどが挙げられる。また、上記各化合物中に含まれるハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子であることが望ましい。
【0026】
重合工程により得られたPAS樹脂を含む反応混合物の後処理方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、(後処理1)重合反応終了後、先ず反応混合物をそのまま、あるいは酸または塩基を加えた後、減圧下または常圧下で溶媒を留去し、次いで溶媒留去後の固形物を水、反応溶媒(又は低分子ポリマーに対して同等の溶解度を有する有機溶媒)、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、更に中和、水洗、濾過及び乾燥する方法、或いは、(後処理2)重合反応終了後、反応混合物に水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素などの溶媒(使用した重合溶媒に可溶であり、かつ少なくともPASに対しては貧溶媒である溶媒)を沈降剤として添加して、PASや無機塩等の固体状生成物を沈降させ、これらを濾別、洗浄、乾燥する方法、或いは、(後処理3)重合反応終了後、反応混合物に反応溶媒(又は低分子ポリマーに対して同等の溶解度を有する有機溶媒)を加えて撹拌した後、濾過して低分子量重合体を除いた後、水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、その後中和、水洗、濾過及び乾燥をする方法、(後処理4)重合反応終了後、反応混合物に水を加えて水洗浄、濾過、必要に応じて水洗浄の時に酸を加えて酸処理し、乾燥をする方法、(後処理5)重合反応終了後、反応混合物を濾過し、必要に応じ、反応溶媒で1回または2回以上洗浄し、更に水洗浄、濾過及び乾燥する方法、等が挙げられる。これらの方法のなかでも、(後処理4)の方法が、PAS樹脂の分子末端にカルボキシル基を有するPAS樹脂を得られるため好ましい。
【0027】
尚、上記(後処理1)~(後処理5)に例示したような後処理方法において、PAS樹脂の乾燥は真空中で行なってもよいし、空気中あるいは窒素のような不活性ガス雰囲気中で行なってもよい。
【0028】
本実施形態における前記樹脂組成物(A)の配合量は特に限定されないが、熱可塑性樹脂の量が、得られる樹脂組成物100質量部において、好ましくは20~90質量部、より好ましくは40~70質量部となるように樹脂組成物(A)の配合量を調整することが好ましい。かかる範囲において、樹脂組成物が良好な加工性を有しつつ、かつ、成形品の耐薬品性や靭性等に優れるため好ましい。
【0029】
また、本実施形態に用いる樹脂組成物(A)は、新たに重合した熱可塑性樹脂(バージン材の熱可塑性樹脂)を配合した樹脂組成物を用いることもできるし、樹脂組成物や成形品から回収した熱可塑性樹脂を配合した樹脂組成物を用いることもできる。その他、回収した樹脂組成物や成形品を機械的に粉砕したものを用いることもでき、具体的には、成形品を製造する際に発生するスプルー又はランナーや、規格外の成形品として回収したものや、一度製品として使用した成形品等を粉砕したもの等が挙げられる。
【0030】
本実施形態に用いる樹脂組成物(A)は、少なくとも上記の熱可塑性樹脂を必須成分とするが、その他に任意成分として、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、発泡剤、難燃剤、難燃助剤、防錆剤、及び離型剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、充填剤、カップリング剤等の公知慣用の添加剤を必要に応じて配合してもよい。
【0031】
<樹脂廃棄物(B)>
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、必須成分として樹脂廃棄物(B)を配合してなる。
【0032】
本開示における樹脂廃棄物とは、樹脂を主成分とする産業廃棄物であり、例えば、消費・利用済みの樹脂製品や、製品製造で発生した樹脂組成物または樹脂成形品の破片、不良品、ロス分などが挙げられる。本実施形態に適用できる樹脂廃棄物(B)は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の他に、木材、金属、ガラス、ゴム、紙、繊維、充填材、添加剤、水分、砂等を含んでいても良いが、加工性の観点から樹脂成分の含有量が30~100質量部であることが好ましく、50~100質量部であることがより好ましい。
【0033】
本実施形態に適用できる樹脂廃棄物(B)は粉砕品であることが混合性や加工性の観点から好ましく、例えば長径が0.3~7mmであることが好ましく、1~5mmであることがより好ましい。樹脂廃棄物(B)は粉砕後、長径が上記の範囲となるように篩分して用いることができる。また、樹脂廃棄物(B)としてシュレッダーダストが好ましく、特に自動車破砕残さ(Automobile Shredder Residue)を用いることが好ましい。
【0034】
本実施形態において樹脂廃棄物(B)の配合量は、前記樹脂組成物(A)100質量部に対して、好ましくは0.1~100質量部、より好ましくは10~75質量部、さらに好ましくは10~45質量部である。かかる範囲において、リサイクル効率及び加工性に優れるため好ましい。
【0035】
<ガス吸着剤(C)>
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、必須成分としてガス吸着剤(C)を配合してなる。
【0036】
本開示におけるガス吸着剤(C)は、活性炭、シリカ、ゼオライト及びハイドロタルサイトからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、溶融加工中に発生するガス(例えば、樹脂廃棄物(B)由来の分解ガス等)を吸着し、樹脂組成物の製造時や成形品の製造時の加熱溶融工程で発生するガスを抑制するものである。
【0037】
前記ガス吸着剤(C)としてシリカを用いる場合、例えば、シリカゲルやメソポーラスシリカ(平均細孔径が2~50nmのメソポアサイズの多孔質シリカ)等を挙げることができる。前記ガス吸着剤(C)としてゼオライトを用いる場合、天然または合成品の何れのゼオライトも使用可能であり、組み合わせて用いることもできる。天然ゼオライトとしては、例えば、ホウふっ石、ワイラカイト、ソーダふっ石、メソふっ石、トムソンふっ石、ゴナルドふっ石、スコレふっ石、エジングトふっ石、ギスモンふっ石、ダクふっ石、モルデンふっ石、ニガワラふっ石、エリオナイト、アシュクロフティン、キふっ石、クリノプチロライト、タバふっ石、ハクふっ石、ダキアルドふっ石、カイジュウジふっ石、ジュウジふっ石、グメリンふっ石、リョウふっ石、フォージャサイト等を挙げることができる。合成ゼオライトとしては、例えば、A型、X型、Y型、L型、ベータ型、モルデナイト、チャバサイト、フェリエライト、MCM-22等を挙げることができる。前記ガス吸着剤(C)としてハイドロタルサイトを用いる場合、ハイドロタルサイト構造を有する化合物であれば天然または合成品の何れのハイドロタルサイト類化合物も使用可能であり、組み合わせて用いることもできる。また、前記ハイドロタルサイト類化合物は、その結晶構造、結晶粒子等に制限されることなく使用することができる。ハイドロタルサイト類化合物は、2価の金属イオンと3価の金属イオンの水酸化物を層状結晶構造として有し、該層状結晶構造の層間に陰イオンを含む構造を有する無機化合物、或いは、その焼成物である。かかるハイドロタルサイト類化合物を構成する2価の金属イオンは、例えば、Mg2
+、Mn2
+、Fe2
+、Co2
+、Ni2
+、Cu2
+、及びZn2
+が挙げられ、3価の金属イオンはAl3
+、Fe3
+、Cr3
+、Co3
+、及びIn3
+が挙げられる。また、陰イオンは、OH-、F-、Cl-、Br-、NO3
-、CO3
-、SO4
2-、Fe(CN)6
3-及びCH3COO-、モリブテン酸イオン、ポリモリブテン酸イオン、バナジウム酸イオン、ポリバナジウム酸イオンが挙げられる。
【0038】
本実施形態においてガス吸着剤(C)の配合量は、前記樹脂組成物(A)100質量部に対して、好ましくは0.1~40質量部、より好ましくは1~30質量部、さらに好ましくは5~10質量部である。かかる範囲において、ガス吸着性及び成形性に優れるため好ましい。また、前記樹脂廃棄物(B)100質量部に対して、好ましくは1~500質量部、より好ましくは5~300質量部、さらに好ましくは10~200質量部である。
【0039】
ガス吸着剤(C)は、ガス吸着能力の観点から、多孔質であることが好ましく、例えば、比表面積が50m2/g以上であることが好ましく、100m2/g以上であることがより好ましく、250m2/g以上であることがさらに好ましく、500m2/g以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、2000m2/g以下であると安定性に優れる。
【0040】
更に、本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、上記の必須成分に加えて、さらに用途に応じて、エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチック以外の樹脂、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、液晶ポリマー、熱可塑性エラストマー等の合成樹脂のバージン材(以下、単に合成樹脂という)を任意成分として配合することができる。本発明において前記合成樹脂は必須成分ではないが、配合する場合、その配合の割合は本発明の効果を損ねなければ特に限定されるものではなく、また、それぞれの目的に応じて異なり、一概に規定することはできないが、本実施形態に係る樹脂組成物中に配合する合成樹脂の割合として、例えば前記熱可塑性樹脂100質量部に対し5~15質量部程度が挙げられる。
【0041】
また本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、その他にも着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、発泡剤、難燃剤、難燃助剤、防錆剤、及び離型剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、充填剤、カップリング剤等の公知慣用の添加剤を必要に応じ、任意成分として配合してもよい。これらの添加剤は必須成分ではなく、例えば、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上の範囲であり、そして、好ましくは1000質量部以下、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下の範囲で、本発明の効果を損なわないよう目的や用途に応じて適宜調整して用い
【0042】
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、少なくとも熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物(A)と、樹脂廃棄物(B)と、ガス吸着剤(C)とを必須成分として配合し、熱可塑性樹脂が加熱により軟化流動した状態になる温度(結晶性樹脂の場合には融点、ないし、非結晶性樹脂の場合にはガラス転移点であってよい。以下、単に「軟化流動温度」と称する)以上の温度範囲で溶融混錬する工程を有する。以下、詳述する。
【0043】
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、上記必須成分を配合し、熱可塑性樹脂軟化流動温度以上の温度範囲で溶融混練する工程を有する。より詳しくは、本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、各必須成分、及び、必要に応じてその他の任意成分を配合してなる。本発明に用いる樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定されないが、必須成分と必要に応じて任意成分を配合して、溶融混練する方法、より詳しくは、必要に応じてタンブラーまたはヘンシェルミキサー等で均一に乾式混合し、次いで、二軸押出機に投入して溶融混練する方法が挙げられる
【0044】
溶融混練は、樹脂温度が熱可塑性樹脂の軟化流動温度以上となる温度範囲、好ましくは該軟化流動温度+10℃以上となる温度範囲、より好ましくは該軟化流動温度+10℃以上、さらに好ましくは該軟化流動温度+20℃以上から、好ましくは該軟化流動温度+100℃以下、より好ましくは該軟化流動温度+50℃以下までの範囲の温度に加熱して行うことができる。
【0045】
前記溶融混練機としては分散性や生産性の観点から二軸混練押出機が好ましく、例えば、樹脂成分の吐出量5~500(kg/hr)の範囲と、スクリュー回転数50~500(rpm)の範囲とを適宜調整しながら溶融混練することが好ましく、それらの比率(吐出量/スクリュー回転数)が0.02~5(kg/hr/rpm)の範囲となる条件下に溶融混練することがさらに好ましい。また、溶融混練機への各成分の添加、混合は同時に行ってもよいし、分割して行っても良い。例えば、前記成分のうち、繊維状充填剤を添加する場合は、前記二軸混練押出機のサイドフィーダーから該押出機内に投入することが分散性の観点から好ましい。かかるサイドフィーダーの位置は、前記二軸混練押出機のスクリュー全長に対する、該押出機樹脂投入部(トップフィーダー)から該サイドフィーダーまでの距離の比率が、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。また、かかる比率は0.9以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましい。
【0046】
このように溶融混練して得られる本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、前記必須成分と、必要に応じて加える任意成分及びそれらの由来成分を含む溶融混合物である。このため、本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂が連続相を形成し、他の必須成分や任意成分が分散されたモルフォロジーを有する。
【0047】
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、該溶融混練後に、公知の方法、例えば、溶融状態の樹脂組成物をストランド状に押出成形した後、ペレット、チップ、顆粒、粉末などの形態に加工してから、必要に応じて100~150℃の温度範囲で予備乾燥を施すことが好ましい。
【0048】
<樹脂成形品、樹脂成形品の製造方法>
本実施形態に係る成形品は上記の熱可塑性樹脂組成物を溶融成形してなる。また、本実施形態に係る成形品の製造方法は、上記の方法で製造した熱可塑性樹脂組成物を溶融成形する工程を有する。このため、本実施形態に係る成形品は、熱可塑性樹脂が連続相を形成し、他の必須成分や任意成分が分散されたモルフォロジーを有する。熱可塑性樹脂組成物が、かかるモルフォロジーを有することにより、熱伝導性及び機械的強度に優れた成形品が得られる。
【0049】
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、圧縮成形、コンポジット、シート、パイプなどの押出成形、引抜成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種成形に供することが可能であるが、特に離形性にも優れるため射出成形用途に適している。射出成形にて成形する場合、各種成形条件は特に限定されず、通常一般的な方法にて成形することができる。例えば、射出成形機内で、樹脂温度が熱可塑性樹脂の軟化流動温度以上の温度範囲、好ましくは該軟化流動温度+10℃以上の温度範囲、より好ましくは軟化流動温度+10℃~軟化流動温度+100℃の温度範囲、さらに好ましくは軟化流動温度+20~軟化流動温度+50℃の温度範囲で前記熱可塑性樹脂組成物を溶融する工程を経た後、樹脂吐出口よりを金型内に注入して成形すればよい。その際、金型温度も公知の温度範囲、例えば、室温(23℃)~300℃、好ましくは130~190℃に設定すればよい。
【0050】
本実施形態に係る成形品の製造方法は、前記成形品にアニール処理する工程を有してもよい。アニール処理は、成形品の用途あるいは形状等により最適な条件が選ばれるが、アニール温度は熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上の温度範囲、好ましくは該ガラス転移温度+10℃以上の温度範囲であり、より好ましくは該ガラス転移温度+30℃以上の温度範囲である。一方、260℃以下の範囲であることが好ましく、240℃以下の範囲であることがより好ましい。アニール時間は特に限定されないが、0.5時間以上の範囲であることが好ましく、1時間以上の範囲であることがより好ましい。一方、10時間以下の範囲であることが好ましく、8時間以下の範囲であることがより好ましい。かかる範囲において、得られる成形品のひずみが低減し、かつ、樹脂の結晶性が向上するだけでなく、熱伝導率、機械的強度及びがさらに向上するため好ましい。アニール処理は空気中で行ってもよいが、窒素ガス等の不活性ガス中で行うことが好ましい。
【0051】
本実施形態に係る成形品は、前記熱可塑性樹脂組成物を溶融成形してなる成形品を再利用して得られた再成形品を含む。具体的には、例えば、成形品を製造する際に発生するスプルー又はランナーや、規格外の成形品として回収したものや、一度製品として使用した成形品を、必要に応じて洗浄してから、粉砕して再度熱可塑性樹脂の軟化流動温度以上の温度で溶融成形して得られた成形品を含む。再利用する際には、粉砕した成形品を前記熱可塑性樹脂組成物と混合して用いることが、機械的強度の観点から好ましい。成形品を粉砕する際の大きさは特に限定されないが、混合性や加工性の観点から、混合する前記熱可塑性樹脂組成物と同程度の大きさであることが好ましい。また、その混合割合は、熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して成形品の粉砕品が50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましい。かかる範囲において、本開示の熱可塑性樹脂組成物が呈する効果を損ねずに、リサイクル性を向上させることができる。
【0052】
<用途>
本発明の樹脂組成物及び樹脂成形品は、低ガス性及び成形性に優れることを特徴としたものであるから、車載部品用途や電気電子部品用途、水廻り用途などの各種部品に好適である。具体的には、例えば、箱型の電気・電子部品集積モジュール用保護・支持部材・複数の個別半導体またはモジュール、センサ、LEDランプ、コネクタ、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサ、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナ、スピーカ、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、端子台、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダ、パラボラアンテナ、コンピュータ関連部品等に代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤ、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザディスク・コンパクトディスク・DVDディスク・ブルーレイディスク等の音声・映像機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライタ部品、ワードプロセッサ部品、あるいは給湯機や風呂の湯量、温度センサなどの水回り機器部品等に代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピュータ関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライタ、タイプライタなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクタ、ブラシホルダー、スリップリング、ICレギュレータ、ライトディマ用ポテンシオメーターベース、リレーブロック、インヒビタースイッチ、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディ、キャブレタースペーサ、排気ガスセンサ、冷却水センサ、油温センサ、ブレーキパットウェアーセンサ、スロットルポジションセンサ、クランクシャフトポジションセンサ、温度センサ、エアーフローメータ、ブレーキパッド摩耗センサ、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダ、ウォーターポンプインペラ、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュータ、スタータースイッチ、イグニッションコイル及びそのボビン、モーターインシュレータ、モーターロータ、モーターコア、スターターリレ、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクタ、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターロータ、ランプソケット、ランプリフレクタ、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルタ、点火装置ケース、バンパー等の自動車・車両関連部品が挙げられ、その他各種用途にも適用可能である。
【実施例0053】
以下、実施例、比較例を用いて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下、特に断りが無い場合「%」や「部」は質量基準とする。
【0054】
<実施例1~10及び比較例1~12>
表1に記載する組成成分及び配合量にしたがい、各材料を配合した。その後、株式会社日本製鋼所製ベント付2軸押出機「TEX-30α(製品名)」にこれら配合材料を投入し、樹脂成分吐出量30kg/hr、スクリュー回転数200rpm、設定樹脂温度310℃で溶融混練して樹脂組成物のペレットを得た。ガラス繊維及びポリアミド繊維はサイドフィーダー(S/T比0.5)から投入し、それ以外の材料はタンブラーで予め均一に混合しトップフィーダーから投入した。得られた樹脂組成物のペレットを140℃ギヤオーブンで2時間乾燥した後、下記の試験を行った。
【0055】
<評価>
【0056】
(1)重量減少率(発生ガス量)の測定
樹脂組成物のペレット試料を精密天秤にて4.00gアルミ製シャーレに秤量した。150℃に設定された乾燥機内に試料を1時間静置した後、シャーレを取出して、室温まで放冷してから秤量した。次いで、同シャーレを、温度320℃に設定された乾燥機内に1時間静置した後、シャーレを取出して、室温まで放冷してから秤量した。次式より各試料の重量減少率を算出した。結果を表1、2に示す。
重量減少率〔wt%〕=(150℃加熱後の秤量値〔g〕-320℃加熱後の秤量値〔g〕)/150℃加熱後の秤量値〔g〕×100
【0057】
(2)成形性評価
樹脂組成物のペレット試料をそれぞれ射出成形する際の成形性を評価した。シリンダー温度310℃に設定した住友重機製射出成形機(SE-75D-HP)に供給し、金型温度140℃に温調したISO Type-Aダンベル片成形用金型を用いて射出成形を行い、15秒以上保持して固化させた後、金型を開いた際のダンベル片の金型への張り付き有無を確認した。なお、ウェルド部を含まない試験片となるよう1点ゲートから樹脂を射出して作製したものとした。射出成形は20回実施し、以下の基準に従って評価を行った。評価結果を表1、2に示す。
〇:金型に張り付かず、連続して成形が行える
△:金型に1~10回張り付き、連続して成形ができない
×:金型に10~20回張り付き、連続して成形ができない
【0058】
【0059】
【0060】
なお、表1及び2中の配合成分の配合比率は下記のものを用いた。
・少なくとも熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物
A-1:ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のバージン材、DIC株式会社製 「DIC.PPS Z-230 BLACK」
A-2:芳香族ポリアミド樹脂組成物のバージン材、デュポン株式会社製 「Zytel HTN51g35EFBK083」
A-3:ポリブチレンテレフタラート樹脂組成物のバージン材、東レ株式会社製 「トレコン 8207X01」
・樹脂廃棄物
B-1:ECU筐体廃材を機械粉砕してから篩分した平均粒径5mmのペレット。組成:ポリブチレンテレフタラート78wt%、ポリアリーレンスルフィド23wt%
・ガス吸着剤
C-1:活性炭 大阪ガスケミカル株式会社製 「白鷺A」
C-2:メソポーラスシリカ 太陽化学株式会社製 「TMPS-4R」
C-3:ゼオライトCa-A型 日本化学工業株式会社製 「Zeostar CA-100P」
C-4:ゼオライトCa-X型 東ソー株式会社製 「F-9」
C-5:ハイドロタルサイト 協和化学工業株式会社製 「DHT-4A-2」
c-6:炭酸リチウム 日本化学工業株式会社製
c-7:炭酸亜鉛 純正化学株式会社製
c-8:リン酸亜鉛 純正化学株式会社
c-9:水酸化亜鉛 純正化学株式会社
c-10:有機ホスファイト ADEKA株式会社製 「アデカスタブPEP-36」