(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099230
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】水性ウレタン樹脂組成物、コーティング剤及び物品
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20250626BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20250626BHJP
C09D 175/12 20060101ALI20250626BHJP
C09D 175/06 20060101ALI20250626BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20250626BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20250626BHJP
C08G 18/38 20060101ALI20250626BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
C08G18/00 C
C09D5/00 Z
C09D175/12
C09D175/06
C08G18/08 009
C08G18/44
C08G18/38 019
C08G18/65 005
C08G18/38 093
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215726
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】三上 莉桜
(72)【発明者】
【氏名】片上 保之
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4J034BA06
4J034BA07
4J034BA08
4J034CA02
4J034CA04
4J034CA11
4J034CA13
4J034CA15
4J034CA16
4J034CA17
4J034CA32
4J034CA36
4J034CB03
4J034CB07
4J034CB08
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC26
4J034CC29
4J034CC34
4J034CC45
4J034CC52
4J034CC61
4J034CC65
4J034CD01
4J034CD15
4J034CE03
4J034DA01
4J034DB01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF02
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG08
4J034DG12
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA18
4J034HB05
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC69
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA02
4J034JA14
4J034JA25
4J034JA30
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KE02
4J034LA16
4J034LA36
4J034QB10
4J034QB12
4J034QB17
4J034QC05
4J034RA07
4J034RA08
4J038DG041
4J038DG261
4J038DG271
4J038GA09
4J038GA15
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038MA08
4J038NA03
4J038NA04
4J038NA26
4J038PB05
4J038PB09
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】優れた配合安定性、耐食性、及び耐薬品性(耐アルカリ性)を有する塗膜を形成可能な水性ウレタン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】カチオン性ウレタン樹脂(A)と、水性媒体(B)とを含有する水性ウレタン樹脂組成物であって、前記カチオン性ウレタン樹脂(A)が、一分子中に、一般式(1)で表される構造単位を有するものであり、前記カチオン性ウレタン樹脂(A)が、ポリオール化合物(a1)、ポリイソシアネート化合物(a2)、及びノニオン性基含有化合物(a3)を必須原料とするものであり、前記ポリオール化合物(a1)が、3級アミノ基含有ポリオール化合物を含有するものであり、前記ノニオン性基含有化合物(a3)が、イソシアネート基と反応し得る官能基を1つ有する化合物であることを特徴とする水性ウレタン樹脂組成物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性ウレタン樹脂(A)と、
水性媒体(B)とを含有する水性ウレタン樹脂組成物であって、
前記カチオン性ウレタン樹脂(A)が、一分子中に、下記一般式(1)で表される構造単位を有するものであり、
前記カチオン性ウレタン樹脂(A)が、ポリオール化合物(a1)、ポリイソシアネート化合物(a2)、及びノニオン性基含有化合物(a3)を必須原料とするものであり、
前記ポリオール化合物(a1)が、3級アミノ基含有ポリオール化合物を含有するものであり、
前記ノニオン性基含有化合物(a3)が、イソシアネート基と反応し得る官能基を1つ有する化合物であることを特徴とする水性ウレタン樹脂組成物。
【化1】
〔式(1)中、R
1は、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン基、2価フェノール化合物の残基、又はポリオキシアルキレン基を表すものであり、R
2及びR
3は、それぞれ独立して脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキル基を表すものであり、R
4は、それぞれ独立して水素原子又は4級化反応により導入された4級化剤の残基を表すものであり、X
-はアニオン性の対イオンを表すものである。〕
【請求項2】
前記ポリイソシアネート化合物(a2)が、脂環式ポリイソシアネート化合物、及び/又は脂肪族ポリイソシアネート化合物である請求項1記載の水性ウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ノニオン性基含有化合物(a3)の含有率が、前記必須原料中に0.1~10質量%の範囲である請求項1記載の水性ウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される構造単位に含まれるカチオン性アミノ基の含有量が、前記カチオン性ウレタン樹脂(A)中に0.03~0.5当量/kgの範囲である請求項1記載の水性ウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記カチオン性ウレタン樹脂(A)が、炭酸エステルと脂肪族ジオールとのエステル化反応物であるポリオールに由来する構造単位を有するものである請求項1記載の水性ウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記カチオン性ウレタン樹脂(A)が、さらに、下記一般式(2)で表される構造単位を有するものである請求項1記載の水性ウレタン樹脂組成物。
【化2】
〔式(2)中、R
5は、水素原子、アルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる一価の有機残基を表すものであり、R
6は、ハロゲン原子、アルコキシル基、アシロキシ基、フェノキシ基、イミノオキシ基又はアルケニルオキシ基からなる群より選ばれる官能基を表すものであり、また、nは、0、1又は2なる整数を表すものである。〕
【請求項7】
前記カチオン性ウレタン樹脂(A)が、さらに、下記一般式(3)で表される化合物と前記ポリイソシアネート化合物(a2)が有するイソシアネート基とを反応させて得られる構造単位を有するものである請求項1記載の水性ウレタン樹脂組成物。
【化3】
〔式(3)中、R
5は、水素原子、アルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる一価の有機残基を表すものであり、R
6は、ハロゲン原子、アルコキシル基、アシロキシ基、フェノキシ基、イミノオキシ基又はアルケニルオキシ基からなる群より選ばれる官能基を表すものであり、nは、0、1又は2なる整数を表すものであり、Yは、アミノ基を少なくとも1個以上含有する有機残基を表すものである。〕
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項記載の水性ウレタン樹脂組成物を含有することを特徴とするコーティング剤。
【請求項9】
請求項8項記載のコーティング剤の塗膜を有することを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ウレタン樹脂組成物、コーティング剤及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ウレタン樹脂組成物は、一般に、基材に対して良好な密着性を有し、柔軟な塗膜を
形成できることから、コーティング剤や接着剤をはじめとする様々な用途で使用されてい
る。
【0003】
中でもカチオン性ウレタン樹脂水分散体は、そのイオン性を利用した高機能樹脂としてインクジェット処理剤や金属表面処理剤等に好適に使用されている。当該カチオン性ウレタン樹脂水分散体の特徴の1つとして無機剤との混和性の高さがあり、この特徴が耐水性、耐薬品性、耐食性向上を目的に無機防錆剤を多量に配合する金属表面処理剤用途に適している。
【0004】
前記カチオン性ウレタン樹脂水分散体としては、分子内に、特定の構造単位(A)を含有するカチオン性ウレタン樹脂(B)が水系媒体中に分散してなり、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(B)中における前記構造単位(A)に含まれるカチオン性アミノ基の含有量が0.005~1.5当量/kgであるカチオン性ウレタン樹脂水分散体が知られている(例えば、特許文献1。)が、配合安定性、耐食性、及び耐薬品性(耐アルカリ性)において、昨今ますます高まる要求性能を満足するものではなかった。
【0005】
そこで、より一層優れた配合安定性、耐食性、及び耐薬品性(耐アルカリ性)を有する材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、優れた配合安定性、耐食性、及び耐薬品性(耐アルカリ性)を有する塗膜を形成可能な水性ウレタン樹脂組成物、前記水性ウレタン樹脂組成物を含有するコーティング剤、及び前記コーティング剤の塗膜を有する物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定のカチオン性ウレタン樹脂と、水性媒体とを含有する水性ウレタン樹脂組成物を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、カチオン性ウレタン樹脂(A)と、水性媒体(B)とを含有する水性ウレタン樹脂組成物であって、前記カチオン性ウレタン樹脂(A)が、一分子中に、下記一般式(1)で表される構造単位を有するものであり、前記カチオン性ウレタン樹脂(A)が、ポリオール化合物(a1)、ポリイソシアネート化合物(a2)、及びノニオン性基含有化合物(a3)を必須原料とするものであり、前記ポリオール化合物(a1)が、3級アミノ基含有ポリオール化合物を含有するものであり、前記ノニオン性基含有化合物(a3)が、イソシアネート基と反応し得る官能基を1つ有する化合物であることを特徴とする水性ウレタン樹脂組成物、前記水性ウレタン樹脂組成物を含有するコーティング剤、及び前記コーティング剤の塗膜を有する物品に関するものである。
【0010】
【0011】
〔式(1)中、R1は、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン基、2価フェノール化合物の残基、又はポリオキシアルキレン基を表すものであり、R2及びR3は、それぞれ独立して脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキル基を表すものであり、R4は、それぞれ独立して水素原子又は4級化反応により導入された4級化剤の残基を表すものであり、X-はアニオン性の対イオンを表すものである。〕
【発明の効果】
【0012】
本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、優れた配合安定性を有し、その塗膜は、優れた耐食性、耐薬品性、及び(耐アルカリ性)を有することから、コーティング剤として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、カチオン性ウレタン樹脂(A)と水性媒体(B)とを含むものであることを特徴とする。
【0014】
前記カチオン性ウレタン樹脂(A)としては、下記一般式(1)で表される構造単位を有するものを必須として用いる。
【0015】
【0016】
〔式(1)中、R1は、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン基、2価フェノール化合物の残基、又はポリオキシアルキレン基を表すものであり、R2及びR3は、それぞれ独立して脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキル基を表すものであり、R4は、それぞれ独立して水素原子又は4級化反応により導入された4級化剤の残基を表すものであり、X-はアニオン性の対イオンを表すものである。〕
【0017】
上記一般式(1)で表される構造単位に含まれるカチオン性アミノ基の含有量は、耐食性、及び耐薬品性に優れた塗膜を形成可能な水性ウレタン樹脂組成物が得られることから、前記カチオン性ウレタン樹脂(A)中に0.03~0.5当量/kgの範囲が好ましく、0.03~0.25の範囲がより好ましい。
【0018】
また、前記カチオン性ウレタン樹脂(A)としては、ポリオール化合物(a1)、ポリイソシアネート化合物(a2)、及びノニオン性基含有化合物(a3)を必須原料とするものを用いる。
【0019】
前記ポリオール化合物(a1)としては、3級アミノ基含有ポリオール化合物を必須として用いる。
【0020】
前記3級アミノ基含有ポリオール化合物としては、例えば、下記一般式(4)で示される1分子中にエポキシ基を2つ有する化合物と2級アミン化合物とを反応させて得られる化合物等が挙げられる。
【0021】
【0022】
〔式(4)中、R7は、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン基、2価フェノール化合物の残基、又はポリオキシアルキレン基を表す。〕
【0023】
前記R7が、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン基であるものとしては、例えば、エタンジオール-1,2-ジグリシジルエーテル、プロパンジオール-1,2-ジグリシジルエーテル、プロパンジオール-1,3-ジグリシジルエーテル、ブタンジオール-1,4-ジグリシジルエーテル、ペンタンジオール-1,5-ジグリシジルエーテル、3-メチル-ペンタンジオール-1,5-ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール-ジグリシジルエーテル、ヘキサンジオール-1,6-ジグリシジルエーテル、ポリブタジエン-ジグリシジルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジグリシジルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールジグリシジルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン(水素添加ビスフェノールA)のジグリシジルエーテル、水素添加ジヒドロキシジフェニルメタンの異性体混合物の(水素添加ビスフェノールF)のジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0024】
前記R7が、2価フェノール化合物の残基であるものとしては、例えば、レゾルシノール-ジグリシジルエーテル、ハイドロキノン-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン(ビスフェノールA)のジグリシジルエーテル、ジヒドロキシジフェニルメタンの異性体混合物(ビスフェノールF)のジグリシジルエーテル、4,4-ジヒドロキシ-3-3’-ジメチルジフェニルプロパンのジグリシジルエーテル、4,4-ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサンのジグリシジルエーテル、4,4-ジヒドロキシジフェニルのジグリシジルエーテル、4,4-ジヒドロキシジベンゾフェノンのジグリシジルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-エタンのジグリシジルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-イソブタンのジグリシジルエーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3-第3ブチルフェニル)-2,2-プロパンのジグリシジルエーテル、ビス(2-ヒドロキシナフチル)メタンのジグリシジルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)のジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0025】
前記R7が、ポリオキシアルキレン基であるものとしては、例えば、ジエチレングリコール-ジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコール-ジグリシジルエーテル等が挙げられる。また、オキシアルキレンの繰り返し単位数が3~60のポリオキシアルキレングリコール-ジグリシジルエーテルも用いることができる。前記オキシアルキレンの繰り返し単位数が3~60のポリオキシアルキレングリコール-ジグリシジルエーテルとしては、ポリオキシエチレングリコール-ジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコール-ジグリシジルエーテル、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体のジグリシジルエーテル、ポリオキシテトラエチレングリコール-ジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、優れた耐食性及び耐薬品性に優れた塗膜を形成可能な水性ウレタン樹脂組成物が得られることから、前記R7が、ポリオキシアルキレン基であるポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、特に、ポリオキシエチレングリコール-ジグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコール-ジグリシジルエーテル、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体のジグリシジルエーテルが好ましい。
【0027】
前記R7が、ポリオキシアルキレン基であるポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテルのエポキシ当量は、優れた耐食性及び耐薬品性に優れた塗膜を形成可能な水性ウレタン樹脂組成物が得られることから、1000g/当量以下が好ましく、500g/当量以下がより好ましく、300g/当量以下がさらに好ましい。
【0028】
前記2級アミン化合物としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-tert-ブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、ジ-n-ペプチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジイソオクチルアミン、ジノニルアミン、ジイソノニルアミン、ジ-n-デシルアミン、ジ-n-ウンデシルアミン、ジ-n-ドデシルアミン、ジ-n-ペンタデシルアミン、ジ-n-オクタデシルアミン、ジ-n-ノナデシルアミン、ジ-n-エイコシルアミン等が挙げられる。これらの2級アミン化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、反応制御の容易さの点から、分岐状又は直鎖状の脂肪族2級アミン化合物が好ましい。
【0029】
前記3級アミノ基含有ポリオール化合物として、上記一般式(4)で示される1分子中にエポキシ基を2つ有する化合物と2級アミン化合物との反応は、特に制限されないが、例えば、一般式(4)で示される1分子中にエポキシ基を2つ有する化合物が有するエポキシ基1当量に対して、2級アミン化合物が有するNH基が1当量となるように配合し、無触媒で、常温下又は加熱下で開環付加反応させることで得る方法等が挙げられる。
【0030】
また、前記3級アミノ基含有ポリオール化合物は、前記3級アミノ基含有ポリオール化合物が有する3級アミノ基の一部又は全てを、酸で中和、又は4級化剤で4級化することにより、前記3級アミノ基含有ポリオール化合物と、前記ポリイソシアネート化合物(a2)とが反応して得られるカチオン性ウレタン樹脂(A)に水分散性を付与することができる。
【0031】
前記酸中和における酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、マロン酸、アジピン酸などの有機酸類や、スルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸類、及び、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、硼酸、亜リン酸、フッ酸等の無機酸等が挙げられる。これらの酸は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0032】
前記4級化剤としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸類、メチルクロライド、エチルクロライド、ベンジルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、ベンジルブロマイド、メチルヨーダイド、エチルヨーダイド、ベンジルヨーダイドなどのハロゲン化アルキル類、メタンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸メチル等のアルキル又はアリールスルホン酸メチル類、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のエポキシ類などが挙げられる。これらの4級化剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0033】
前記酸及び前記4級化剤の使用量は、本発明のカチオン性ウレタン樹脂水分散体の優れた保存安定性を発現させるために、3級アミノ基1当量に対して、0.1~3当量の範囲が好ましく、0.3~2当量の範囲がより好ましい。
【0034】
前記ポリオール化合物(a1)としては、必要に応じて、前記3級アミノ基含有ポリオール化合物以外のポリオール化合物(以下、「その他のポリオール化合物」と略記する。)を用いることもできる。
【0035】
前記その他のポリオール化合物としては、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。これらのポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0036】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステル及び/又はホスゲンと、ジオール化合物とを反応させて得られるポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0037】
前記炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。これらの炭酸エステルは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0038】
前記ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,8-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、及び1,12-ドデカンジオール等の脂肪族ジオール化合物;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール化合物などが挙げられる。これらのジオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0039】
前記ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、優れた耐食性及び耐薬品性に優れた塗膜を形成可能な水性ウレタン樹脂組成物が得られることから、200~10,000の範囲が好ましく、300~5,000の範囲がより好ましい。なお、本発明において、ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定された値を示す。
【0040】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとをエステル化反応させて得られたもの等が挙げられる。
【0041】
前記多価カルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸又はそのエステル化物、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、イタコン酸、セバシン酸、クロレンド酸、1,2,4-ブタン-トリカルボン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル化物などが挙げられる。これらの多価カルボン酸又はそのエステル化物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0042】
前記多価アルコールとしては、例えば、ベンゼンジメタノール、トルエンジメタノール、キシレンジメタノール等の芳香族ジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロピレンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ポリオールなどが挙げられる。これらの多価アルコールは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0043】
前記ポリエステルポリオールを製造する際のエステル化反応においては、エステル化反応を促進する目的で、エステル化触媒を用いることが好ましい。前記エステル化触媒としては、例えば、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ハフニウム、ゲルマニウム等の金属;チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、オクタン酸錫、2-エチルヘキサンスズ、アセチルアセトナート亜鉛、4塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウムテトラヒドロフラン錯体、4塩化ハフニウム、4塩化ハフニウムテトラヒドロフラン錯体、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム等の金属化合物などが挙げられる。これらのエステル化触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0044】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール等が挙げられる。これらのポリエーテルポリオールは単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0045】
前記その他のポリオール化合物の数平均分子量は、優れた配合安定性を有し、耐食性、及び耐薬品性に優れた塗膜を形成可能な水性ウレタン樹脂組成物が得られることから、200~10,000の範囲が好ましく、300~5,000の範囲がより好ましい。
【0046】
前記その他のポリオール化合物の含有量は、前記ポリオール化合物(a1)中に30~80質量%の範囲が好ましい。
【0047】
前記ポリオール化合物(a1)の含有量としては、優れた配合安定性を有し、耐食性、及び耐薬品性に優れた塗膜を形成可能な水性ウレタン樹脂組成物が得られることから、前記ウレタン樹脂(A)の原料中に30~80質量%の範囲が好ましく、40~70質量%の範囲がより好ましい。
【0048】
前記ポリイソシアネート化合物(a2)としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジメチルビフェニルジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物などが挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、優れた耐食性及び耐薬品性に優れた塗膜を形成可能な水性ウレタン樹脂組成物が得られることから、脂環式ポリイソシアネート化合物、脂肪族ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0049】
前記ポリイソシアネート化合物(a2)の含有量としては、優れた耐食性及び耐薬品性に優れた塗膜を形成可能な水性ウレタン樹脂組成物が得られることから、前記ウレタン樹脂(A)の原料中に20~60質量%の範囲が好ましく、25~50質量%の範囲がより好ましい。
【0050】
前記ノニオン性基含有化合物(a3)としては、イソシアネート基と反応し得る官能基を1つ有する化合物を必須として用いる。
【0051】
前記官能基としては、例えば、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基等が挙げられる。
【0052】
前記ノニオン性基含有化合物(a3)としては、例えば、数平均分子量300~20,000のポリオキシエチレン又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンーポリオキシブチレン共重合体、ポリオキシエチレンーポリオキシアルキレン共重合体のモノアルキルエーテルや、メトキシポリエチレングリコールアミン等が挙げられる。これらのノニオン性基含有化合物(a3)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。これらの中でも、優れた配合安定性を有し、耐食性、耐薬品性及び耐候性に優れた塗膜を形成可能な水性ウレタン樹脂組成物が得られることから、ポリオキシエチレンモノメチルエーテルが好ましい。
【0053】
前記ノニオン性基含有化合物(a3)の含有量としては、優れた配合安定性を有し、耐食性、及び耐薬品性に優れた塗膜を形成可能な水性ウレタン樹脂組成物が得られることから、前記ウレタン樹脂(A)の原料中に0.1~10質量%の範囲が好ましく、1~8質量%の範囲がより好ましい。
【0054】
前記カチオン性ウレタン樹脂(A)としては、下記一般式(2)で表される構造単位を樹脂骨格に導入したものを用いることもできる。
【0055】
【0056】
〔式(2)中、R5は、水素原子、アルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる一価の有機残基を表すものであり、R6は、ハロゲン原子、アルコキシル基、アシロキシ基、フェノキシ基、イミノオキシ基又はアルケニルオキシ基からなる群より選ばれる官能基を表すものであり、また、nは、0、1又は2の整数を表すものである。〕
【0057】
前記一般式(2)で表される構造単位を前記カチオン性ウレタン樹脂(A)に導入するための化合物としては、下記一般式(3)表される化合物を用いることが好ましい。
【0058】
【0059】
〔式(3)中、R5は、水素原子、アルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる一価の有機残基を表すものであり、R6は、ハロゲン原子、アルコキシル基、アシロキシ基、フェノキシ基、イミノオキシ基又はアルケニルオキシ基からなる群より選ばれる官能基を表すものであり、nは、0、1又は2の整数を表すものであり、Yは、アミノ基を少なくとも1個以上含有する有機残基を表すものである。)
【0060】
前記一般式(3)で示される化合物としては、例えば、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシアミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-ヒドロキシルエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-ヒドロキシルエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシランまたはγ-(N,N-ジ-2-ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシランまたはγ-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトフェニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0061】
カチオン性ウレタン樹脂(A)を製造する際には、種々の機械的特性や熱特性等の物性を有するポリウレタン樹脂の設計を行う目的で、ポリアミンを鎖伸長剤として使用してもよい。
【0062】
かかる鎖伸長剤として使用可能なポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン等の1個の1級アミノ基と1個の2級アミノ基を含有するジアミン類;
【0063】
ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類;ヒドラジン、N,N’-ジメチルヒドラジン、1,6-ヘキサメチレンビスヒドラジン等のヒドラジン類;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類;β-セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3-セミカルバジッド-プロピル-カルバジン酸エステル、セミカルバジッド-3-セミカルバジドメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン等のセミカルバジド類を使用することができる。
【0064】
カチオン性ウレタン樹脂(A)を製造する際には、前記ポリアミンの他に、ポリウレタン樹脂の種々の機械的特性や熱特性等の物性を調整する目的で、その他の活性水素原子含有の鎖伸長剤を使用することもできる。
【0065】
前記その他の活性水素含有の鎖伸長剤として使用することができるものは、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類、及び水が挙げられ、本発明のカチオン性ウレタン樹脂水分散体の保存安定性を低下させない範囲内においてこれらを単独もしくは併用しても構わない。
【0066】
前記水性媒体(B)としては、例えば、イオン交換水、蒸留水等が挙げられる。これらの水性媒体は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0067】
前記カチオン性ウレタン樹脂(A)と前記水性媒体(B)との質量割合[(A)/(B)]は、優れた造膜性、耐熱性及び耐湿熱性を有する塗膜を形成可能な水性ウレタン樹脂組成物が得られることから、10/90~80/20の範囲が好ましく、20/80~60/40の範囲がより好ましい。
【0068】
本発明の水性ウレタン樹脂組成物の製造方法としては、特に制限されず、どのような方法で製造してもよい。例えば、次のような方法(方法1、方法2)が挙げられる。
【0069】
前記方法1としては、ポリオール化合物(a1)とポリイソシアネート化合物(a2)とノニオン性基含有化合物(a3)、及び、必要に応じてシラン化合物、ポリアミンとを一括、又は分割して仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることによりカチオン性ウレタン樹脂(A)を製造し、前記ウレタン樹脂(A)中の3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水を投入して水分散させて得る方法が挙げられる。
【0070】
前記方法2としては、ポリオール化合物(a1)とポリイソシアネート化合物(a2)、及び、必要に応じてシラン化合物とを一括、又は分割して仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることにより末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造した後、前記ウレタンプレポリマー中の3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水を投入して水分散させて、その後にノニオン性基含有化合物(a3)、及び必要に応じてポリアミンを反応させて得る方法等が挙げられる。
【0071】
かかる反応において、反応温度は、好ましくは20~120℃の範囲であり、より好ましくは20~90℃の範囲である。
【0072】
前記シラン化合物としては、上述の「一般式(3)で示される化合物」として例示したものと同様のものを用いることができる。
【0073】
なお、前記カチオン性ウレタン樹脂(A)は、無溶剤条件下で製造することもできるが、反応制御を容易にする目的で、又は粘度低下による撹拌負荷の低減や均一に反応させる目的で、有機溶剤下で製造することもできる。
【0074】
前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等の酢酸エステル化合物;アセトニトリル等のニトリル化合物;n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素化合物;四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタン等の塩素化炭化水素化合物;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド化合物などが挙げられる。なお、前記有機溶剤は、必要により、反応の途中又は反応終了後に、例えば、減圧加熱などの方法により除去することが好ましい。
【0075】
前記カチオン性ウレタン樹脂(A)は、無触媒下で製造することもできるが、公知の触媒、例えば、オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫ジフタレート、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジアセチルアセテート、ジブチル錫ジバーサテート等の錫化合物、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等のチタネート化合物、その他、3級アミン類、4級アンモニウム塩等を用いることもできる。
【0076】
本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、必要に応じて、その他の添加剤を含有することもできる。
【0077】
前記その他の添加剤としては、例えば、界面活性剤、乳化剤、増粘剤、充填剤、難燃剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤等が挙げられる。これらの添加剤は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0078】
前記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリエチレン・ポリプロピレン共重合体等のノニオン性界面活性剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0079】
前記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリエチレン・ポリプロピレン共重合体等のノニオン性乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン性乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン性乳化剤などが挙げられる。これらの乳化剤は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0080】
前記増粘剤としては、例えば、会合型や酸系増粘剤等が挙げられる。
【0081】
前記充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ等が挙げられる。
【0082】
前記難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤等が挙げられる。
【0083】
前記レベリング剤としては、例えば、シリコン系レベリング剤等が挙げられる。
【0084】
前記ブロッキング防止剤としては、例えば、アクリル系、セルロールエステル等が挙げられる。
【0085】
本発明のコーティング剤としては、前記水性ウレタン樹脂組成物を含有するものを用いる。
【0086】
前記コーティング剤を塗布し塗膜を形成可能な基材としては、例えば、ガラス基材、金属基材、プラスチック基材、紙、木材基材、繊維質基材等が挙げられる。また、ウレタンフォーム等の多孔体構造の基材も使用することもできる。
【0087】
プラスチック基材としては、例えば、ポリカーボネート基材、ポリエステル基材、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン基材、ポリアクリル基材、ポリスチレン基材、ポリウレタン基材、エポキシ樹脂基材、ポリ塩化ビニル基材及びポリアミド基材を使用することができる。
【0088】
前記金属基材としては、例えば、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム-亜鉛合金鋼板等のめっき鋼板や、鉄板、アルミ板、アルミ合金板、電磁鋼板、銅板、ステンレス鋼板等を使用することができる。
【0089】
前記基材は前記材質からなる平面状のものであっても曲部を有するものであってもよく、また、不織布のような繊維からなる基材であってもよい。
【0090】
本発明のコーティング剤は、例えば、それを前記基材表面に直接、または、予めプライマー層等が設けられた基材の表面に、塗布し、次いで乾燥させることによって、塗膜を形成することができる。
【0091】
また、離型紙上に前記コーティング剤を塗布し、次いで乾燥、硬化させることによって離型紙の表面に塗膜を形成し、さらに前記塗膜上に接着剤もしくは粘着剤を塗布したものを、不織布のような繊維からなる基材に貼り合わせ、離型紙を剥離することによって、所望の基材の表面に、前記コーティング剤を用いて形成される塗膜を積層することができる。
【0092】
前記コーティング剤を前記基材上に塗布する方法としては、例えば、スプレー法、カーテンコーター法、フローコーター法、ロールコーター法、刷毛塗り法、浸漬法等が挙げられる。
【0093】
本発明のコーティング剤を用いて形成可能な塗膜の厚さは、基材の使用される用途等に応じて適宜調整可能であるが、通常0.1μm~100μm程度であることが好ましい。
【0094】
本発明の物品としては、前記コーティング剤の塗膜を有するものが挙げられ、具体的には、家電用鋼板、建築部材用鋼板、強化プラスチック用ガラス繊維等が挙げられる。
【実施例0095】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下に挙げた実施例に限定されるものではない。
【0096】
(合成例1:3級アミノ基含有ポリオール(1)の合成)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、ポリプロピレングリコール-ジグリシジルエーテル(エポキシ当量201g/当量)590質量部を仕込んだ後、フラスコ内を窒素置換した。次いで、前記フラスコ内の温度が70℃になるまでオイルバスを用いて加熱した後、滴下装置を使用してジ-n-ブチルアミン380質量部を30分間で滴下し、滴下終了後、90℃で10時間反応させた。反応終了後、赤外分光光度計(FT/IR-460Plus、日本分光株式会社製)を用いて、反応生成物のエポキシ基に起因する842cm-1付近の吸収ピークが消失していることを確認し、3級アミノ基含有ポリオール(1)(アミン当量339g/当量、水酸基当量339g/当量)を調製した。
【0097】
(合成例2:3級アミノ基含有ポリオール(2)の合成)
ポリプロピレングリコール-ジグリシジルエーテル(エポキシ当量201g/当量)の代わりに、ポリエチレングリコール-ジグリシジルエーテル(エポキシ当量185g/当量)543質量部を使用する以外は、合成例1と同様の方法で、3級アミノ基含有ポリオール(2)(アミン当量315g/当量、水酸基当量315g/当量)を調製した。
【0098】
(実施例1:水性ウレタン樹脂組成物(1)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ETERNACOLL UH-200」〔UBE株式会社製、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量〕を477質量部、ネオペンチルグリコ-ルと1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量)を230質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。
脱水後、70℃に冷却し、酢酸エチル546質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4-H-MDI)190質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(1)を70質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(水酸基当量2000g/当量)を45質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「KBE-903」〔信越化学工業株式会社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン〕32質量部を添加して、1時間反応させることにより、末端イソシアネ-ト基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にヒドラジン水和物11質量部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。次いで、酢酸エチルを1274質量部、酢酸を13質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2383質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが4.3である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(1)を調製した。なお、pHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製、M-12)を用い、25℃の環境下で測定した値である。以下、同様の方法で、pHを測定した。
【0099】
(実施例2:水性ウレタン樹脂組成物(2)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ETERNACOLL UH-200」〔UBE株式会社製、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量〕を515質量部、ネオペンチルグリコ-ルと1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量)を249質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。
脱水後、70℃に冷却し、酢酸エチル546質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、トリレンジイソシアネート136質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、合成例2で得られた3級アミノ基含有ポリオール(2)を63質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(水酸基当量2000g/当量)を46質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「KBE-903」〔信越化学工業株式会社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン〕35質量部を添加して、1時間反応させることにより、末端イソシアネ-ト基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にヒドラジン水和物12質量部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。次いで、酢酸エチルを1274質量部、酢酸を13質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2381質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが4.1である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(2)を調製した。
【0100】
(実施例3:水性ウレタン樹脂組成物(3)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ETERNACOLL UH-200」〔UBE株式会社製、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量〕を448質量部、ネオペンチルグリコ-ルと1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量)を216質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。
脱水後、70℃に冷却し、酢酸エチル549質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4-H-MDI)179質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(1)を116質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(水酸基当量4000g/当量)を59質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「KBE-903」〔信越化学工業株式会社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン〕30質量部を添加して、1時間反応させることにより、末端イソシアネ-ト基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にヒドラジン水和物6質量部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。次いで、酢酸エチルを1282質量部、酢酸を22質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2373質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが4.3である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(3)を調製した。
【0101】
(実施例4:水性ウレタン樹脂組成物(4)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ETERNACOLL UH-200」〔UBE株式会社製、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量〕を488質量部、ネオペンチルグリコ-ルと1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量)を236質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。
脱水後、70℃に冷却し、酢酸エチル544質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4-H-MDI)195質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(1)を54質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(水酸基当量550g/当量)を38質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「KBE-903」〔信越化学工業株式会社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン〕33質量部を添加して、1時間反応させることにより、末端イソシアネ-ト基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にヒドラジン水和物11質量部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。次いで、酢酸エチルを1269質量部、酢酸を10質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2384質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが4.2である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(4)を調製した。
【0102】
(実施例5:水性ウレタン樹脂組成物(5)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ETERNACOLL UH-200」〔UBE株式会社製、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量〕を458質量部、ネオペンチルグリコ-ルと1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量)を221質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。脱水後、70℃に冷却し、酢酸エチル543質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4-H-MDI)183質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(1)を36質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(水酸基当量2000g/当量)を116質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「KBE-903」〔信越化学工業株式会社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン〕31質量部を添加して、1時間反応させることにより、末端イソシアネ-ト基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にヒドラジン水和物12質量部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。次いで、酢酸エチルを1267質量部、酢酸を7質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2392質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが4.0である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(5)を調製した。
【0103】
(実施例6:水性ウレタン樹脂組成物(6)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ETERNACOLL UH-200」〔UBE株式会社製、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量〕を475質量部、ネオペンチルグリコ-ルと1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量)を229質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。
脱水後、70℃に冷却し、酢酸エチル545質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4-H-MDI)189質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(1)を58質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「KBE-903」〔信越化学工業株式会社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン〕32質量部を添加して、1時間反応させることにより、末端イソシアネ-ト基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。次いで、酢酸エチルを1273質量部、酢酸11質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2387質量部を添加することにより、水分散体を調製した。水分散後、メトキシポリエチレングリコールアミン(アミン価2000g/当量)、ヒドラジン水和物11質量部を加え、55℃で1時間反応させた。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが4.0である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(6)を調製した。
【0104】
(実施例7:水性ウレタン樹脂組成物(7)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ETERNACOLL UH-100」〔UBE株式会社製、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量493g/当量〕を370質量部、ネオペンチルグリコ-ルと1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量)を179質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。脱水後、70℃に冷却し、酢酸エチル555質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4-H-MDI)246質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(1)を185質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(水酸基当量2000g/当量)を27質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「KBE-903」〔信越化学工業株式会社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン〕41質量部を添加して、1時間反応させることにより、末端イソシアネ-ト基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にヒドラジン水和物6質量部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。次いで、酢酸エチルを1296質量部、酢酸を34質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2349質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが4.1である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(7)を調製した。
【0105】
(実施例8:水性ウレタン樹脂組成物(8)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ETERNACOLL UH-200」〔UBE株式会社製、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量〕を490質量部、ネオペンチルグリコ-ルと1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量)を236質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。脱水後、70℃に冷却し、酢酸エチル541質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4-H-MDI)195質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(1)を8質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(水酸基当量2000g/当量)を79質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「KBE-903」〔信越化学工業株式会社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン〕33質量部を添加して、1時間反応させることにより、末端イソシアネ-ト基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にヒドラジン水和物16質量部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。次いで、酢酸エチルを1263質量部、酢酸を1質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2396質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが4.1である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(8)を調製した。
【0106】
(実施例9:水性ウレタン樹脂組成物(9)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ETERNACOLL UH-200」〔UBE株式会社製、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量〕を507質量部、ネオペンチルグリコ-ルと1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量)を245質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。脱水後、70℃に冷却し、酢酸エチル545質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、イソホロンジイソシアネート129質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート32質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(1)を57質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(水酸基当量1000g/当量)を39質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「KBE-903」〔信越化学工業株式会社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン〕34質量部を添加して、1時間反応させることにより、末端イソシアネ-ト基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にヒドラジン水和物13質量部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。次いで、酢酸エチルを1271質量部、酢酸を11質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2382質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが4.2である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(9)を調製した。
【0107】
(実施例10:水性ウレタン樹脂組成物(10)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「PTMG-2000」〔三菱化学株式会社製、ポリテトラメチレングリコール、水酸基当量1000g/当量〕を709質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。脱水後、70℃に冷却し、酢酸エチル539質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4-H-MDI)186質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(1)を57質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(水酸基当量2000g/当量)を40質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「KBE-903」〔信越化学工業株式会社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン〕31質量部を添加して、1時間反応させることにより、末端イソシアネ-ト基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にヒドラジン水和物12質量部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。次いで、酢酸エチルを1257質量部、ジメチル硫酸を21質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2401質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが5.9である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(10)を調製した。
【0108】
(実施例11:水性ウレタン樹脂組成物(11)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ETERNACOLL UH-200」〔UBE株式会社製、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量〕を672質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。脱水後、70℃に冷却し、酢酸エチル539質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4-H-MDI)178質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(1)を55質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(水酸基当量2000g/当量)を92質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「KBE-903」〔信越化学工業株式会社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン〕30質量部を添加して、1時間反応させることにより、末端イソシアネ-ト基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にヒドラジン水和物10質量部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。次いで、酢酸エチルを1257質量部、89質量%オルトリン酸水溶液を18質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2403質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが3.1である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(11)を調製した。
【0109】
(実施例12:水性ウレタン樹脂組成物(12)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「DURANOL T-4692」〔旭化成株式会社製、1,6-ヘキサンジオールと1,4-ブタンジオールとエチレンカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量1000/当量〕を707質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。脱水後、70℃に冷却し、酢酸エチル537質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4-H-MDI)185質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(1)を78質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(水酸基当量2000g/当量)を8質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「KBE-903」〔信越化学工業株式会社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン〕31質量部を添加して、1時間反応させることにより、末端イソシアネ-ト基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にアミノエチルエタノールアミン16質量部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。次いで、酢酸エチルを1253質量部、89質量%オルトリン酸水溶液を25質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2415質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが3.2である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(12)を調製した。
【0110】
(実施例13:水性ウレタン樹脂組成物(13)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ETERNACOLL UH-200」〔UBE株式会社製、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量〕を461質量部、ネオペンチルグリコ-ルと1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量)を223質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。脱水後、70℃に冷却し、メチルエチルケトン210質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4-H-MDI)184質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(1)を63質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(水酸基当量1000g/当量)を37質量部、メチルエチルケトンを473質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「KBE-903」〔信越化学工業株式会社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン〕31質量部を添加して、1時間反応させることにより、末端イソシアネ-ト基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にイソホロンジアミン28質量部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。次いで、メチルエチルケトンを368質量部、イソプロパノールを525質量部、ジメチル硫酸を23質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2624質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが5.8である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(13)を調製した。
【0111】
(実施例14:水性ウレタン樹脂組成物(14)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ETERNACOLL UH-200」〔UBE株式会社製、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量〕を494質量部、ネオペンチルグリコ-ルと1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量)を238質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。
脱水後、70℃に冷却し、酢酸エチル547質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4-H-MDI)197質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(1)を66質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(水酸基当量2000g/当量)を47質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却することにより、末端イソシアネ-ト基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にヒドラジン水和物16質量部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。次いで、酢酸エチルを1275質量部、酢酸を12質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2377質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが4.2である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(14)を調製した。
【0112】
(実施例15:水性ウレタン樹脂組成物(15)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ETERNACOLL UH-200」〔UBE株式会社製、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量〕を364質量部、ネオペンチルグリコ-ルと1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量)を176質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。脱水後、70℃に冷却し、ポリプロピレングリコール(水酸基当量500g/当量)を155質量部、酢酸エチル541質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4-H-MDI)227質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(1)を54質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(水酸基当量2000g/当量)を49質量部、酢酸エチルを541質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「KBE-903」〔信越化学工業株式会社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン〕24質量部を添加して、1時間反応させた。反応終了後、赤外分光光度計(FT/IR-460Plus、日本分光株式会社製)を用いて、反応生成物のイソシアネート基に起因する2280cm-1付近の吸収ピークが消失していることを確認した。次いで、酢酸エチルを1263質量部、酢酸を10質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2394質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが4.1である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(15)を調製した。
【0113】
(実施例16:水性ウレタン樹脂組成物(16)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ETERNACOLL UH-200」〔UBE株式会社製、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量〕を403質量部、ネオペンチルグリコ-ルと1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量)を195質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。
脱水後、70℃に冷却し、ポリプロピレングリコール(水酸基当量500g/当量)を172質量部、酢酸エチル541質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、トリレンジイソシアネート167質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、合成例2で得られた3級アミノ基含有ポリオール(2)を49質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(水酸基当量2000g/当量)を36質量部、酢酸エチルを541質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「KBE-903」〔信越化学工業株式会社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン〕27質量部を添加して、1時間反応させた。反応終了後、赤外分光光度計(FT/IR-460Plus、日本分光株式会社製)を用いて、反応生成物のイソシアネート基に起因する2280cm-1付近の吸収ピークが消失していることを確認した。次いで、酢酸エチルを1262質量部、酢酸を10質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2392質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが4.3である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(16)を調製した。
【0114】
(比較例1:水性ウレタン樹脂組成物(R1)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ETERNACOLL UH-200」〔UBE株式会社製、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量〕を509質量部、ネオペンチルグリコ-ルと1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量)を245質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。
脱水後、70℃に冷却し、酢酸エチル548質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4-H-MDI)203質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、N-メチル-ジエタノールアミンを15質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(水酸基当量2000g/当量)を39質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「KBE-903」〔信越化学工業株式会社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン〕34質量部を添加して、1時間反応させることにより、末端イソシアネ-ト基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にヒドラジン水和物10質量部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。次いで、酢酸エチルを1278量部、酢酸を16質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2378質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが4.2である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(R1)を調製した。
【0115】
(比較例2:水性ウレタン樹脂組成物(R2)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ETERNACOLL UH-200」〔UBE株式会社製、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量〕を526質量部、ネオペンチルグリコ-ルと1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量)を254質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。脱水後、70℃に冷却し、酢酸エチル540質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、トリレンジイソシアネート139質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、N-メチル-ジエタノールアミンを13質量部、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(水酸基当量4000g/当量)を49質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「KBE-903」〔信越化学工業株式会社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン〕35質量部を添加して、1時間反応させることにより、末端イソシアネ-ト基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にヒドラジン水和物13質量部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。次いで、酢酸エチルを1259量部、ジメチル硫酸を27質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2403量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが6.5である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(R2)を調製した。
【0116】
(比較例3:水性ウレタン樹脂組成物(R3)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ETERNACOLL UH-200」〔UBE株式会社製、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量〕を463質量部、ネオペンチルグリコ-ルと1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量)を223質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。脱水後、70℃に冷却し、酢酸エチル546質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4-H-MDI)184質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(1)を84質量部、「Ymer N120」(Perstorp社製、ポリオキシエチレン基を含有したジオール、水酸基価500g/当量)を63質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「KBE-903」〔信越化学工業株式会社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン〕31質量部を添加して、1時間反応させることにより、末端イソシアネ-ト基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にヒドラジン水和物6質量部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。次いで、酢酸エチルを1274量部、酢酸を16質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2383質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが4.3である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(R3)を調製した。
【0117】
(比較例4:水性ウレタン樹脂組成物(R4)の調製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、「ETERNACOLL UH-200」〔UBE株式会社製、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、水酸基当量986g/当量〕を488質量部、ネオペンチルグリコ-ルと1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量)を236質量部加え、減圧度0.095MPaにて120~130℃で脱水を行った。
脱水後、70℃に冷却し、酢酸エチル547質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(4,4-H-MDI)195質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。反応終了後、合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(1)を93質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、「KBE-903」〔信越化学工業株式会社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン〕33質量部を添加して、1時間反応させることにより、末端イソシアネ-ト基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にヒドラジン水和物10質量部を加え、鎖伸長反応を1時間行った。次いで、酢酸エチルを1275量部、酢酸を17質量部添加して、55℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水2371質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が35質量%で、pHが4.3である、水性ポリウレタン樹脂水分散体(R4)を調製した。
【0118】
上記の実施例及び比較例で得られた水性ウレタン樹脂組成物(1)~(16)、及び(R1)~(R4)を用いて、下記の評価を行った。
【0119】
[耐水性の評価方法]
A4サイズのガラス板に、高さ1mmの外枠を有するポリプロピレンフィルムを貼付し、該ポリプロピレンフィルム上に、水性ウレタン樹脂組成物を6g/100cm2となるように流し込み、25℃で1日乾燥させることにより。厚さ約200μmからなる皮膜を作製した。ついで、前記ポリプロピレンフィルムから皮膜を剥離し、縦3.0cm、横3.0cmに裁断したものを試験片とした。
【0120】
次いで、前記試験片を40℃の温水に24時間浸漬した後、その寸法を測定した。浸漬前後の試験片の寸法を用いて、下記数式(1)に従って計算することにより、試験片の面積膨潤率を算出した。また、浸漬後の試験片を108℃の条件下で1時間乾燥させたのち、該試験片の質量を測定した。浸漬前後の試験片の質量を用いて、下記数式(2)に従って計算することにより、試験片の溶出率を算出した。
【0121】
数式(1)
面積膨潤率(%)=(L1×L2/9.0cm2)×100-100
L1:浸漬後の試験片の縦の長さ(cm)
L2:浸漬後の試験片の横の長さ(cm)
【0122】
数式(2)
溶出率(質量%)=〔(W4-W5)/W4〕×100
W4:浸漬前の試験片の質量(g)
W5:浸漬後、107℃で1時間乾燥処理した試験片の質量(g)
【0123】
[配合安定性の評価方法]
得られた水性ウレタン樹脂組成物の不揮発分が5質量%となるようにイオン交換水を用いて希釈したものに、カチオン性ウレタン樹脂の不揮発分100質量部に対してKBE-903を80質量部、KBM-403を40質量部、チタンジイソプロポキシドビス(アセチルアセトナート)をバナジウム(III)アセチルアセトナートを3質量部、10質量%オルトリン酸水溶液を200質量部、10質量%酢酸水溶液を250質量部添加し、均一に混合することとによって金属用コーティング剤を得た。製造直後の沈殿及び凝集物の有無、並びに、3ヶ月放置後(140mlのガラス製サンプル瓶内に、前記金属用コーティング剤を100ml入れ、密栓したものを40℃の環境下に3ヶ月放置)の沈殿及び凝集物の有無を以下の評価基準に従い評価した。
【0124】
A:沈殿、凝集物はなかった。
B:一部が凝集し、ゲル化した。
C:全体がゲル化した。
【0125】
[耐食性、耐アルカリ性の評価用試験版の作製]
金属基材としては、下記に示す2種類を使用した。
金属基材(1):1.70mm×150mm×0.8mmの、亜鉛45質量%及びアルミニウム55質量%含有の溶融めっき鋼板(「GL」と省略。)、日本テストパネル株式会社製。
金属基材(2):2.1.70mm×150mm×0.8mmの電気亜鉛めっき鋼板(「EG」と省略。)、日本テストパネル株式会社製。
【0126】
前記金属基材(1)及び(2)を55℃のアルカリ脱脂剤に5分間浸漬処理し脱脂を行い、次いで金属基材表面を水で洗浄した。その後、該表面をイオン交換水で洗浄し、107℃で15分間乾燥した。
【0127】
前記金属基材(1)及び(2)それぞれの片面に、前記金属用コーティング剤を膜厚5μm(0.05g/100cm2)となるようにバーコーターを用いて塗布し、180℃で20秒間焼き付けを行うことにより試験板(1)及び(2)を作製した。
【0128】
[耐食性の評価方法]
各試験板の表面に形成された前記金属用コーティング剤からなる被膜上に、JIS Z2371に記載されている塩水噴霧試験方法に準じて、雰囲気温度35℃で、5%NaCl水溶液を試験板に吹き付け、240時間後の白錆発生率を測定し、以下の評価基準で評価した。尚、金属用コーティング剤末塗工部(端面部、裏面部)はテープシールを行った。
【0129】
A:白錆の発生はなかった。
B:白錆発生率が、5%未満であった。
C:白錆発生率が、5%以上、20%未満であった。
D:白錆発生率が、20%以上であった。
【0130】
[耐アルカリ性の評価方法]
各試験板の表面に形成された前記金属用コーティング剤からなる被膜上に、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を0.5ml滴下し、1時間放置した。放置後、前記酢酸の付着した部分の被膜の外観を以下の評価基準で評価した。
【0131】
A:滴下部分の変化はなかった。
B:被膜が黒色変化した、又は溶解した面積が前被膜面積の10%未満であった。
C:被膜が黒色変化した、又は溶解した面積が前被膜面積の10%以上30%未満であった。
D:被膜が黒色変化した、又は溶解した面積が前被膜面積の30%以上であった。
【0132】
上記の実施例及び比較例で得られた水性ウレタン樹脂樹脂組成物(1)~(16)、及び(R1)~(R4)の評価結果を表1に示す。
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
上記表1及び2の評価結果より、本発明の水性ウレタン樹脂組成物は、優れた配合安定性、耐食性、及び耐薬品性(耐アルカリ性)を有する塗膜を形成可能なことが確認できた。
【0137】
一方、表3に示した比較例1及び2は、一般式(1)で表される構造単位を有しないカチオン性ウレタン樹脂を含有する水性ウレタン樹脂組成物の例であるが、配合安定性が不十分であり、得られた塗膜の耐食性及び耐アルカリ性も著しく不十分であった。
【0138】
比較例3は、ノニオン性基含有化合物が、イソシアネート基と反応し得る官能基を2つ以上有する化合物を用いたカチオン性ウレタン樹脂を含有する水性ウレタン樹脂組成物の例であるが、40℃環境下で3ヶ月静置した際の配合安定性が不十分であり、得られた塗膜の耐食性及び耐アルカリ性も著しく不十分であった。
【0139】
比較例4は、ノニオン性基含有化合物(a3)を有しないカチオン性ウレタン樹脂を含有する水性ウレタン樹脂組成物の例であるが、得られた塗膜の耐食性及び耐アルカリ性は著しく不十分であった。