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特開2025-99232硬化性樹脂組成物、繊維強化成形材料、成形品、ポリオール及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099232
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、繊維強化成形材料、成形品、ポリオール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20250626BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20250626BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20250626BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20250626BHJP
   C07C 269/04 20060101ALI20250626BHJP
   C07C 271/22 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
C08F290/06
C08G18/67
C08G18/32 006
C08J5/24 CEY
C08J5/24 CFF
C07C269/04
C07C271/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215728
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】安村 隆志
(72)【発明者】
【氏名】新地 智昭
【テーマコード(参考)】
4F072
4H006
4J034
4J127
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB08
4F072AB09
4F072AB10
4F072AB22
4F072AB28
4F072AB31
4F072AD09
4F072AD43
4F072AE02
4F072AF24
4F072AG03
4F072AG17
4F072AH04
4F072AH44
4F072AJ04
4F072AJ22
4F072AK05
4F072AK14
4F072AL02
4F072AL17
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC48
4H006AC56
4H006RA16
4H006RB04
4J034CA04
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC06
4J034CC09
4J034FA02
4J034FB01
4J034FD01
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HB06
4J034HB07
4J034HB08
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034JA01
4J034MA01
4J034QB12
4J034RA05
4J034RA10
4J034RA11
4J034RA12
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC151
4J127BD481
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BF141
4J127BF14X
4J127BF551
4J127BF55X
4J127BF631
4J127BF63Y
4J127BG051
4J127BG05Y
4J127BG171
4J127BG17Y
4J127BG181
4J127BG18X
4J127BG231
4J127BG23X
4J127BG271
4J127BG27Y
4J127BG281
4J127BG28Y
4J127CB151
4J127CC021
4J127DA64
(57)【要約】
【課題】 アミノ酸を少なくとも一つの原料として用いた硬化性樹脂組成物、繊維強化成形材料及び成形品を提供することである。さらには、アミノ酸を少なくとも一つの原料として用いたポリオール化合物及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】 本発明の硬化性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)、(メタ)アクリレートモノマー(B)及び重合開始剤(C)を含有する硬化性樹脂組成物であって、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、ポリイソシアネート(a1)と、アミノ酸骨格を有するポリオール(a2)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)との反応物であり、前記アミノ酸骨格を有するポリオール(a2)が、アミノ酸と環状カーボネート化合物との反応物であることを特徴とする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)、(メタ)アクリレートモノマー(B)及び重合開始剤(C)を含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、ポリイソシアネート(a1)と、アミノ酸骨格を有するポリオール(a2)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)との反応物であり、
前記アミノ酸骨格を有するポリオール(a2)が、アミノ酸と環状カーボネート化合物との反応物であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記アミノ酸が、疎水性側鎖を有するアミノ酸、側鎖にカルボキシル基を有し、前記側鎖のカルボキシル基に保護基を有するアミノ酸、側鎖にアミノ基を有し、前記側鎖のアミノ基に保護基を有するアミノ酸、側鎖にアルコール性ヒドロキシ基を有し、前記アルコール性ヒドロキシ基のヒドロキシ基に保護基を有するアミノ酸、及び側鎖にフェノール性ヒドロキシ基を有し、前記フェノール性ヒドロキシ基のヒドロキシ基に保護基を有するアミノ酸の群から選択される1種以上のアミノ酸である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アミノ酸が、前記疎水性側鎖を有するアミノ酸であり、
前記疎水性側鎖を有するアミノ酸が、側鎖にアルキル基又は芳香族骨格を有するα-アミノ酸である請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記環状カーボネート化合物が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセリンカーボネートの群から選択される1種以上のカーボネート化合物である請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物と強化繊維(D)とを含有することを特徴とする繊維強化成形材料。
【請求項6】
請求項5に記載の繊維強化成形材料を用いたことを特徴とする成形品。
【請求項7】
アミノ酸骨格を有し、アミノ酸と環状カーボネート化合物との反応物であることを特徴とするポリオール。
【請求項8】
アミノ酸と環状カーボネート化合物とを混合し、無溶剤下で温度100~150℃で酸価が1KOHmg/g以下になるまで加熱することにより、アミノ酸骨格を有するポリオールを得る、ポリオールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、繊維強化成形材料、成形品、ポリオール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂等を含む硬化性樹脂組成物と、ガラス繊維、炭素繊維等の強化繊維とを含有する繊維強化成形材料が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような繊維強化成形材料は、軽量でありながら耐熱性、機械強度、耐久性に優れる特徴が注目され、自動車部材、住宅設備部材等の構造用部材、スポーツ部材、OA機器等の筐体等、様々な用途での利用が拡大している。
【0003】
近年、持続可能な社会を構築する観点から、石油由来原料の使用量の削減、非石油プロセス経由の化学原料への転換等が求められている。そこで、発酵生産技術が確立され且つ供給能力に優れるアミノ酸を、前記硬化性樹脂組成物の一原料として用いることが望まれる。
【0004】
例えば、非特許文献1には、L-フェニルアラニン及びエチレンカーボネートから誘導されたω-ヒドロキシカルボン酸を得る技術が開示されている。しかしながら、前記ω-ヒドロキシカルボン酸を上述のウレタン(メタ)アクリレート樹脂等を含む硬化性樹脂組成物の一原料として用いるには、前記ω-ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基を変性する工程がさらに必要となるという不都合がある。また、非特許文献1に開示の方法は、試薬を大量に使用すること、収率が17%と低いこと、大量の廃棄物が発生すること等から、工業化に適していないという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
国際公開第2021/131564号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nobuhiro Kihara et al., "Polycondensation of ω-Hydroxy Carboxylic Acid Derived from L-Phenylalanine and Ethylene Carbonate", Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry, Volume 34, Issue 9 p. 1819-1822 (1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、アミノ酸を少なくとも一つの原料として用いた硬化性樹脂組成物、繊維強化成形材料及び成形品を提供することである。さらには、アミノ酸を少なくとも一つの原料として用いたポリオール化合物及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)、(メタ)アクリレートモノマー(B)及び重合開始剤(C)を含有する硬化性樹脂組成物であって、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、ポリイソシアネート(a1)と、アミノ酸骨格を有するポリオール(a2)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)との反応物であり、前記アミノ酸骨格を有するポリオール(a2)が、アミノ酸と環状カーボネート化合物との反応物であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る繊維強化成形材料は、上述の硬化性樹脂組成物と強化繊維とを含有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る成形品は、上述の繊維強化成形材料を用いたことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るポリオールは、アミノ酸骨格を有し、アミノ酸と環状カーボネート化合物との反応物であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るポリオールの製造方法は、アミノ酸と環状カーボネート化合物とを混合し、無溶剤下で温度100~150℃で酸価が1KOHmg/g以下になるまで加熱することにより、アミノ酸骨格を有するポリオールを得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アミノ酸を少なくとも一つの原料として用いた硬化性樹脂組成物、繊維強化成形材料及び成形品を提供できる。また、本発明によれば、アミノ酸を少なくとも一つの原料として用いたポリオール及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)、(メタ)アクリレートモノマー(B)及び重合開始剤(C)を含有する硬化性樹脂組成物であって、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、ポリイソシアネート(a1)と、アミノ酸骨格を有するポリオール(a2)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)との反応物であり、前記アミノ酸骨格を有するポリオール(a2)が、アミノ酸と環状カーボネート化合物との反応物であることを特徴とする。前記硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物であってもよく、光硬化性樹脂組成物であってもよいが、厚さを自由に制御できる成形品を得られること、硬化度がより高い成形品を得られること等から、熱硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
【0015】
前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)は、ポリイソシアネート(a1)と、前記アミノ酸骨格を有するポリオール(a2)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)との反応物である。
【0016】
前記ポリイソシアネート(a1)は、成形品の耐熱性がより向上することから、環状骨格を有するポリイソシアネートを含むことが好ましい。これらのポリイソシアネート(a1)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0017】
前記ポリイソシアネート(a1)は、例えば、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートのヌレート変性体、ビュレット変性体、ウレタンイミン変性体、ジエチレングリコールやジプロピレングリコール等の数平均分子量1,000以下のポリオールで変性したポリオール変性体、トリレンジイソシアネート(TDI)、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート変性体、ビュレット変性体、アダクト体、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。 これらの中でも、成形品の耐熱性がより向上することから、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が好ましい。なお、これらのポリイソシアネート(a1)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0018】
前記アミノ酸骨格を有するポリオール(a2)は、アミノ酸と環状カーボネート化合物との反応物である。
【0019】
アミノ酸は、カルボキシル基及びアミノ基の両方を有すると共に、側鎖をさらに有する有機化合物である。前記側鎖にカルボキシル基、アミノ基、アルキル基、ヒドロキシ基、アミド基、イミノ基、芳香族骨格等を有するアミノ酸等、種々のアミノ酸が挙げられる。前記アミノ酸は、α-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸のいずれでもよく、α-アミノ酸は、L体及びD体のいずれであってもよい。アミノ酸は、天然アミノ酸に限定されず、天然アミノ酸の側鎖に種々の基が導入されたアミノ酸誘導体であってもよい。
【0020】
前記アミノ酸としては、疎水性側鎖を有するアミノ酸、側鎖にカルボキシル基を有し、前記側鎖のカルボキシル基に保護基を有するアミノ酸、側鎖にアミノ基を有し、前記側鎖のアミノ基に保護基を有するアミノ酸、側鎖にアルコール性ヒドロキシ基を有し、前記アルコール性ヒドロキシ基のヒドロキシ基に保護基を有するアミノ酸、及び側鎖にフェノール性ヒドロキシ基を有し、前記フェノール性ヒドロキシ基のヒドロキシ基に保護基を有するアミノ酸の群から選択される1種以上のアミノ酸であることが好ましい。これらのアミノ酸を原料として用いた硬化性樹脂組成物は、これら以外のアミノ酸を一原料として用いた硬化性樹脂組成物と比較して、より優れた強度を備える成形品を得ることができる。
【0021】
前記疎水性側鎖を有するアミノ酸のうち、α-アミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ノルバリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン等が挙げられる。β-アミノ酸として、β-アラニン等が挙げられる。γ-アミノ酸としては、γ-アミノ酪酸(4-アミノブタン酸)等が挙げられる。
【0022】
前記側鎖にカルボキシル基を有し、前記側鎖のカルボキシル基に保護基を有するアミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸の側鎖のカルボキシル基に保護基を有するものが挙げられる。前記保護基としては、特に限定されず、例えば、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~11のアラルキル基等を挙げることができる。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェナシル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、中でも、保護基として、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。炭素数1~4のアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。また、α-カルボキシル基に前記保護基を有するアスパラギン酸をβ-アミノ酸、同様な保護基有するグルタミン酸をγ-アミノ酸として用いてもよい。
【0023】
前記側鎖にアミノ基を有し、前記側鎖のアミノ基に保護基を有するアミノ酸としては、例えば、リジン、オルニチンの側鎖のアミノ基に保護基を有するものが挙げられる。前記保護基としては、特に限定されず、アシル基、ウレタン型保護基等が挙げらる。アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタニル基などが挙げられる。ウレタン型保護基としては、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基 、ベンジルオキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基等が挙げられる。中でも、保護基として、アセチル基、プロピオニル基、ブタニル基等のアシル基がより好ましい。
【0024】
前記側鎖にアルコール性ヒドロキシ基を有し、前記アルコール性ヒドロキシ基に保護基を有するアミノ酸としては、例えば、セリン、スレオニン、ヒドロキシプロリンのアルコール性ヒドロキシ基のヒドロキシ基に保護基を有するものが挙げられる。前記保護基としては、特に限定されず、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アラルキル基等が挙げられる。アシル基としては、例えば、アセチル基、イソブチロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、4-トルオイル基等の炭素数1~8のアシル基が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基等が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、4-モノメトキシベンジル基等の炭素数7~21のアラルキル基が挙げられる。その他、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、ベンジルオキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基等の保護基が挙げられる。
【0025】
前記側鎖にフェノール性ヒドロキシ基を有し、前記フェノール性ヒドロキシ基に保護基を有するアミノ酸としては、例えば、チロシン、ドーパのフェノール性ヒドロキシ基のヒドロキシ基に保護基を有するものが挙げられる。前記保護基としては、特に限定されず、アルキル基、アラルキル基等が挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、4-モノメトキシベンジル基等の炭素数7~21のアラルキル基が挙げられる。
【0026】
上述したアミノ酸の中でも、特に、前記疎水性側鎖を有するアミノ酸がより好ましい。前記疎水性側鎖を有するα-アミノ酸としては、アラニン、バリン、ノルバリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン等が好ましい。前記疎水性側鎖を有するβ-アミノ酸であるβ-アラニンや、前記疎水性側鎖を有するγ-アミノ酸であるγ-アミノ酪酸が好ましい。そして、成形品に高強度が要求される場合には、前記疎水性側鎖が短鎖であることが特に好ましく、アラニン、バリン、ノルバリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸が挙げられる。側鎖にアルキル基又は芳香族骨格を有するα-アミノ酸がさらに好ましく、アラニン、バリン、ノルバリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニンが挙げられる。
【0027】
前記環状カーボネート化合物として、分子中に環状カーボネート基を1つのみ有するものが好ましく、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセリンカーボネートの群から選択される1種以上のカーボネートであることが好ましい。このような環状カーボネート化合物とアミノ酸とを反応させて得られたポリオール化合物(a2)を含有する硬化性樹脂組成物は、これら以外の環状カーボネート化合物を用いて得られたポリオール(a2)を含有する場合と比較して、アミノ酸骨格をより多く含有することができるため、より強度に優れた成形品を得ることができる。
【0028】
前記アミノ酸骨格を有するポリオール(a2)は、アミノ酸と環状カーボネート化合物との反応物であるが、例えば、加熱混合することにより得ることができる。前記加熱混合を行うときに、有機溶剤を用いてもよいが、加熱混合の後に脱溶剤工程が必要になることから、無溶剤下で行うことが好ましい。
【0029】
具体的には、常温にて反応容器にアミノ酸と環状カーボネート化合物を入れる。このとき、必要に応じて触媒を追加してもよい。徐々に加熱し、温度100~150℃に昇温させる。このとき、加熱に伴い炭酸ガスが発生するため、例えば、一旦、温度120℃で保持した後、ガスの発生が低下した後に、所定の反応温度まで昇温してもよい。内容物が透明になるまで加熱を保持し、内容物が透明になった後に内容物の酸価を測定する。酸価が1KOHmg/g以下になったら、加熱を停止し、温度60℃まで冷却し、内容物を取り出す。
【0030】
アミノ酸と環状カーボネート化合物とを加熱することにより反応が生じ、アミノ酸骨格を有するポリオール(2)が形成される。反応機構は明らかではないが、以下の反応が生じていると考えられる。
【0031】
例えば、L-バリンとエチレンカーボネートとを加熱した場合について説明する。
(1)L-バリンのα-アミノ基にエチレンカーボネートが付加することにより、N-(2-ヒドロキシエトキシ)カルボニル-L-バリンが生成する。
(2)前記生成物が系内に溶けると共に、残存するL-バリンのα-カルボキシル基とエチレンカーボネートとが反応し、二酸化炭素を生成しながらエステル化反応が生じることにより、結果として、N-(2-ヒドロキシエトキシ)カルボニル-L-バリン(2-ヒドロキシエチルエステル)、すなわち、アミノ酸骨格を有するポリオール(2)が生成する。
【0032】
【化1】
【0033】
アミノ酸に対する環状カーボネート化合物の配合比(モル比)は、1.9~2.4であることが好ましく、2.0~2.3であることがより好ましい。前記モル比が1.9未満であると、酸価が1KOHmg/g以下になるまでに長時間を要し、一方、前記モル比が2.3を超えると、未反応の環状カーボネート化合物が残存し、成形品としたときに強度物性が低下するおそれがある。取り出した内容物中に未反応の環状カーボネート化合物が残存するのを防ぐために、前記酸価の確認後に、減圧処理によって未反応の環状カーボネート化合物を除去してもよい。
【0034】
前記触媒として、エポキシ樹脂用の触媒等が利用できる。具体的には、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、テトラブチルホスホニウムブロミド等の第4級ホスホニウム塩、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第4級アンモニウム塩、炭酸カリウム、等の炭酸塩類、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン等の三級アミン、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジアセテート等の錫化合物、オクチル酸亜鉛等の亜鉛化合物、テトラブチルチタネート等のチタン化合物、酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物である。中でも少量で反応を促進できる第4級ホスホニウムが好ましい。
【0035】
前記加熱の際に、内容物の着色防止のために、反応容器内に、窒素ガス、アルゴンガス、キセノンガス等の不活性ガスをフローするのが好ましい。
【0036】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、強度物性のバランスから、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、これらのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a4)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0037】
また、必要に応じて、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の原料として、
前記アミノ酸骨格を有するポリオール(a2)以外のその他のポリオールを併用することができる。その他のポリオールとしては、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアルキレンポリオール等を使用することができる。
【0038】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の原料となる、イソシアネート化合物のイソシアネート基(NCO)と、アミノ酸骨格を有するポリオール(a2)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)のヒドロキシ基(OH)とのモル比(NCO/OH)は、耐熱性、強度物性のバランスから、0.7~1.3が好ましく、0.8~1.1がより好ましく、0.8~1.0がさらに好ましい。
【0039】
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)としては、バイオマス由来の化合物の使用が望ましいが、種類が限定されるため特に限定しない。用途物性に応じて適宜選択される。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、イソソルバイドのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、フランジメタノールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物等、またグリセリン(メタ)アクリレート化合物、例えばグリセリン(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジグリセリントリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、これらのエチレンオキサイド変性物及びプロピレンオキサイド変性物等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0040】
これらの中でも、使用時の揮発性及び危険物の取り扱い上、成形体の機械強度及び耐熱性から、分子量150~400の(メタ)アクリレートが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フランジメタノールジ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0041】
また、(削除プリプレグ)樹脂組成物、及び成形材料の取り扱い性、成形品の品質、生産性とのバランスがより向上することから、前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)と前記(メタ)アクリレートモノマー(B)との合計中の前記(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量(以下、「含有量(B)」と略記する。)は、5~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましい。
【0042】
前記重合開始剤(C)としては、特に限定されないが、有機過酸化物が好ましく、例えば、ジアシルパーオキサイド化合物、パーオキシエステル化合物、ハイドロパーオキサイド化合物、ケトンパーオキサイド化合物、アルキルパーエステル化合物、パーカーボネート化合物、パーオキシケタール等が挙げられ、成形条件に応じて適宜選択できる。なお、これらの重合開始剤(C)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0043】
また、これらの中でも、成形時間を短縮する目的で10時間半減期を得るための温度が60℃以上110℃以下の重合開始剤を使用するのが好ましい。70℃以上105℃以下であれば繊維強化成形材料の常温でのライフが長く、また加熱により短時間(5分以内)で硬化ができるため好ましく、本発明の繊維強化成形材料に使用することで硬化性と成形性がより優れる。このような重合開始剤としては、例えば、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシジエチルアセテート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジーtert-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、t-アミルパーオキシトリメチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシイソノナエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、n-ブチル4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレート等が挙げられる。成形条件に応じて、最適な有機過酸化物を選定、使用する。
【0044】
用いる樹脂の種類、作製する成形品形状によっては、前記重合開始剤(C)として、光重合開始剤を併用してもよい。光重合開始剤は、光照射によりラジカルを発生する重合開始剤であり、特に制限なく公知の光重合開始剤を使用することができる。前記光重合開始剤として、入手が容易であることから、アルキルフェノン系ラジカル開始剤、ベンゾフェノン系ラジカル開始剤、ベンゾイン系ラジカル開始剤、アシルホスフィンオキサイド系ラジカル開始剤などが好ましい。有機過酸化物を使用せず、光重合開始剤のみでも良く、適宜選択できる。
【0045】
前記重合開始剤(C)の添加量としては、硬化特性と保存安定性が共に優れることから、前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)と前記(メタ)アクリレートモノマー(B)との合計100質量部に対し、0.5~5質量部の範囲が好ましい。
【0046】
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)、上記(メタ)アクリレートモノマー(B)、上記重合開始剤(C)以外の成分を含有することができる。例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、重合禁止剤、硬化促進剤、充填剤、低収縮剤、離型剤、増粘剤、減粘剤、顔料、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤、抗菌剤、紫外線安定剤、補強材等を含有することができる。
【0047】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、ビスマレイミド樹脂等が挙げられる。また、これらの熱硬化性樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0048】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイソプレン樹脂およびこれらを共重合等により変性させたものが挙げられる。これらの中でも、脆さの改善効果が高いことから、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。また、これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、熱可塑樹脂は、粒子状で添加して用いることも、溶融して混合して用いることもできる。粒子状の熱可塑性樹脂を用いる場合は、繊維への分散性の観点から、粒子系は30μm以下が好ましく、5~20μmがより好ましい。
【0049】
前記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、p-t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、トルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、ナフトキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、ナフテン酸銅、塩化銅等が挙げられる。これらの重合禁止剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0050】
前記硬化促進剤としては、例えば、ナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルト、オクテン酸バナジル、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等の金属石鹸類、バナジルアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート化合物が挙げられる。またアミン類として、N,N-ジメチルアミノ-p-ベンズアルデヒド、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N-エチル-m-トルイジン、トリエタノールアミン、m-トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニルモルホリン、ピペリジン、ジエタノールアニリン等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0051】
前記充填剤としては、無機化合物、有機化合物があり、成形品の強度、弾性率、衝撃強度、疲労耐久性等の物性を調整するために使用できる。
【0052】
前記無機化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、タルク、カオリン、クレー、セライト、アスベスト、バーライト、バライタ、シリカ、ケイ砂、ドロマイト石灰石、石こう、アルミニウム微粉、中空バルーン、アルミナ、ガラス粉、水酸化アルミニウム、寒水石、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、二酸化モリブデン、鉄粉等が挙げられる。
【0053】
前記有機化合物としては、セルロース、キチン等の天然多糖類粉末や、合成樹脂粉末等があり、合成樹脂粉末としては、硬質樹脂、軟質ゴム、エラストマーまたは重合体(共重合体)などから構成される有機物の粉体やコアシェル型などの多層構造を有する粒子を使用できる。具体的には、アクリル粒子、ポリアミド粒子、ブタジエンゴムおよび/またはアクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム等からなる粒子、ポリイミド樹脂粉末、フッ素樹脂粉末、フェノール樹脂粉末などが挙げられる。これらの充填剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0054】
前記離型剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナバワックスなどが挙げられる。好ましくは、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナバワックス等が挙げられる。これらの離型剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0055】
前記増粘剤としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム等の金属酸化物や金属水酸化物など、アクリル樹脂系微粒子などが挙げられ、本実施形態の繊維強化成形材料の取り扱い性によって適宜選択できる。これらの増粘剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0056】
本発明の実施形態に係る繊維強化成形材料は、上述の硬化性樹脂組成物と強化繊維(D)とを含有することを特徴とする。前記繊維強化成形材料は、プリプレグであることが好ましい。
【0057】
前記強化繊維(D)としては、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、金属繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、テトロン繊維、セルロース繊維等の有機繊維などが挙げられるが、より高強度、高弾性の成形品が得られることから、炭素繊維又はガラス繊維、バサルト繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。これらの強化繊維(D)は単独で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0058】
前記炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系などの各種のものが使用できるが、これらの中でも、容易に高強度の炭素繊維が得られることから、ポリアクリロニトリル系のものが好ましい。
【0059】
前記強化繊維(D)の形状としては特に制限はなく、強化繊維フィラメントを収束させた強化繊維トウや、強化繊維トウを一方向に引き揃えた一方向材、製織した織物又は短く裁断した強化繊維、または、短く裁断した強化繊維からなる不織布や紙等が挙げられるが、強化繊維として一方向材を用い、積層させ成形することで高い機械物性が得られるため好ましい。
【0060】
短く裁断した強化繊維を用いる場合は、成形時の金型内流動性、成形品の外観がより向上することから、2.5~50mmにカットした炭素繊維を用いることが好ましい。
【0061】
織物の場合は、平織、綾織、朱子織、若しくはノン・クリンプト・ファブリックに代表される、繊維束を一方向に引き揃えたシートや角度を変えて積層したようなシートをほぐれないようにステッチしたステッチングシート等が挙げられる。
【0062】
強化繊維の目付け(繊維1m当たりの重さ)としては特に制限されるものではないが、10g/m~650g/m2が好ましい。10g/m以上の目付けになると繊維幅のムラが少なく機械物性が良好になるので好ましい。650g/m以下の目付けであれば樹脂の含浸が良好になるので好ましい。この目付けは、更には50~500g/mがより好ましく、50~300g/mが特に好ましい。
【0063】
本実施形態の繊維強化成形材料中の前記強化繊維(D)の含有率は、得られる成形品の機械強度がより向上することから、20~85質量%の範囲が好ましく、40~80質量%の範囲がより好ましい。
【0064】
本実施形態の繊維強化成形材料は、例えば、プラネタリーミキサー、ニーダー等の公知の混合機を用いて、前記ポリイソシアネート(a1)、前記アミノ酸骨格を有するポリオール(a2)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)と、(メタ)アクリレートモノマー(B)と、重合開始剤(C)とを混合した樹脂溶液を、前記強化繊維(D)に含浸させることにより得られる。
【0065】
具体的には、まず、プラネタリーミキサー、ニーダー等の公知の混合機を用いて、
ポリイソシアネート(a1)と、アミノ酸骨格を有するポリオール(a2)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)と、(メタ)アクリレートモノマー(B)と、重合開始剤(C)とを混合した組成物を調製する。離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「離型PETフィルム」と略記する。)の上面に、混合直後の前記組成物を塗布し、前記組成物を強化繊維(D)に含浸させた後、その上面に他の離型PETフィルムをかぶせて挟み込み、圧延機によって圧延し、シートを得る工程1と、得られたシートを常温~50℃で静置し、前記ポリイソシアネート(a1)の有するイソシアネート基と、前記アミノ酸骨格を有するポリオール(a2)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)が有するヒドロキシ基とを反応させる(ウレタン化反応)ことにより、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を生成する工程2とにより、本実施形態の繊維強化成形材料を得ることができる。前記工程1において、強化繊維(D)への含浸性を害しない範囲で、ポリイソシアネート(a1)、アミノ酸骨格を有するポリオール(a2)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a3)を、あらかじめ一部反応させた樹脂溶液を用いてもよい。
【0066】
本実施形態の繊維強化成形材料の厚みは、0.02~1.0mmであることが好ましい。0.02mm以上の厚みになると積層するための取り扱いが容易となるので好ましく、1mm以下の厚みであれば樹脂の含浸が良好になるので好ましい。更には0.05~0.5mmがより好ましい。
【0067】
上記で得られた繊維強化成形材料から成形品を得る方法としては、例えば、繊維強化成形材料から前記離型PETフィルムから剥離し、繊維強化成形材料を8~30枚積層した後、予め110℃~160℃に加熱した金型に投入し、圧縮成形機にて型締めを行い、繊維強化成形材料を賦型させ、0.1~10MPaの成形圧力を保持することによって、繊維強化成形材料を硬化させ、その後成形品を取り出し成形品を得る方法が用いられる。このとき、シェアエッジを有する金型内で金型温度130℃~160℃にて、成形品の厚さ1mm当たり1~3分間という規定の時間、1~8MPaの成形圧力を保持し、加熱圧縮成形する製造方法が好ましい。
【0068】
本実施形態の繊維強化成形材料から得られる成形品は、曲げ強度、層間せん断強度等に優れることから、自動車部材、鉄道車両部材、航空宇宙機部材、船舶部材、住宅設備部材、スポーツ部材、軽車両部材、建築土木部材、OA機器等の筐体等に好適に用いることができる。
【実施例0069】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。
【0070】
(合成例1:アミノ酸骨格を有するポリオール(a2-1)の製造)
温度計、窒素導入管、撹拌機を設けた0.5Lのフラスコに、L-バリン117gと、エチレンカーボネート185gと、テトラブチルホスホニウムブロミド0.3gとを入れ、加熱することにより室温から80℃まで昇温し、それらが溶解したのを確認した後、攪拌を開始した。発泡に注意しながら温度120℃まで昇温した後、2時間保持した。その後、温度130℃まで昇温した後、24時間保持した。フラスコ内の内容物が透明になり固体物が無いことを確認した後、酸価を測定したところ0KOHmg/gであった。その後、温度60℃まで冷却し、内容物を取り出した。得られた化合物は、常温液状で、水酸基価が561mgKOH/gであった。収率は、理論収量に対し86%であった。前記収率から、上記非特許文献1に記載の製造方法と比較して、廃棄物量が少ないことは明らかである。
【0071】
(合成例2:アミノ酸骨格を有するポリオール(a2-2)の製造)
前記0.5Lのフラスコに、L-フェニルアラニン165gと、エチレンカーボネート185gと、テトラブチルホスホニウムブロミド0.35gとを入れ、
加熱することにより室温から80℃まで昇温し、それらが溶解したのを確認した後、攪拌を開始した。発泡に注意しながら温度120℃まで昇温した後、2時間保持した。その後、温度130℃まで昇温した後、18時間保持した。フラスコ内の内容物が透明になり固体物が無いことを確認した後、酸価を測定したところ0.5KOHmg/gであった。その後、温度60℃まで冷却し、内容物を取り出した。得られた化合物は、常温液状で、水酸基価が426mgKOH/gであった。収率は、理論収量に対し91%であった。
【0072】
(合成例3:アミノ酸骨格を有するポリオール(a2-3)の製造)
前記0.5Lのフラスコに、L-ロイシン131gと、エチレンカーボネート185gと、テトラブチルホスホニウムブロミド0.32gとを
加熱することにより室温から80℃まで昇温し、それらが溶解したのを確認した後、攪拌を開始した。発泡に注意しながら温度120℃まで昇温した後、2時間保持した。その後、温度130℃まで昇温した後、21時間保持した。フラスコ内の内容物が透明になり固体物が無いことを確認した後、酸価を測定したところ0.8KOHmg/gであった。その後、温度60℃まで冷却し、内容物を取り出した。得られた化合物は、常温液状で、水酸基価が510mgKOH/gであった。収率は、理論収量に対し85%であった。
【0073】
(合成例4:アミノ酸骨格を有するポリオール(a2-4)の製造)
前記0.5Lのフラスコに、4-アミノブタン酸103gと、エチレンカーボネート185gと、テトラブチルホスホニウムブロミド0.29gとを加熱することにより室温から80℃まで昇温し、それらが溶解したのを確認した後、攪拌を開始した。発泡に注意しながら温度120℃まで昇温した後、2時間保持した。その後、温度130℃まで昇温した後、6時間保持した。フラスコ内の内容物が透明になり固体物が無いことを確認した後、酸価を測定したところ0KOHmg/gであった。その後、温度60℃まで冷却し、内容物を取り出した。得られた化合物は、常温液状で、水酸基価が561mgKOH/gであった。収率は、理論収量に対し90%であった。
【0074】
(実施例1:樹脂組成物及びプリプレグ(1)の製造と評価)
合成例1で得られたアミノ酸骨格を有するポリオール(a2-1)(L-バリンとエチレンカーボネートとの反応物、水酸基当量100)20質量部と、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(a3-1)26質量部と、(メタ)アクリレートモノマー(B-1)(イソボルニルメタクリレート)15質量部と、パラベンゾキノン0.04質量部、重合開始剤(C-1)(化薬アクゾ株式会社製「トリゴノックス122-C80」、有機過酸化物)1質量部とを混合した後、ポリイソシアネート(a1-1)(2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート)50質量部を混合し、樹脂組成物(X-1)を調製した。
【0075】
得られた樹脂組成物(X-1)を離型PETフィルムの片面に塗布した後、当該樹脂組成物(X-1)の上に炭素繊維(D-1)(三菱レーヨン株式会社製、「TRK979PQRW」)を置き、炭素繊維含有量が60質量%となるように含浸させた後、さらに、その上面に他の離型PETフィルムをかぶせて挟み込み、その後、温度45℃にて24時間加温した後、室温にて3日間静置して保管し、繊維強化成形材料としてのプリプレグ(1)を得た。得られたプリプレグ(1)の厚さは0.25mmであった。
【0076】
[成形品の作製]
得られたプリプレグ(1)を、幅298mm×長さ218mmで切断した後、前記離型PETフィルムから剥離し、繊維の向きが同一方向となるように8枚重ね合わせて積層体を得た。得られた積層体を、離型剤を1回塗布した平面板金型の中央に充填し、圧縮成形機で圧力4MPa、上型140℃、下型135℃、成形時間3分の条件で圧縮成形した。型を開いた後、直径100mmのゴム製吸盤を使用し、金型へのエアブローによって脱型し、清掃作業を行った後、重さ5kgのステンレス板の間に挟み、冷却した。以上により、幅300mm×長さ220mm×厚さ2mmの平面板状の成形品(1)を得た。なお離型剤には、ダイフリーGW-251(ダイキン製)を蒸留水で10倍希釈したものを用いた。
【0077】
[曲げ強度の評価]
得られた成形品(1)から、幅15mm、長さ100mmの試験片を切り出し、JIS K7074に従い、曲げ強度を測定し、下記の基準に従い評価した。
〇:1300MPa以上
△:1200MPa以上、1300MPa未満
×:1200MPa未満
[層間せん断強度の評価]
得られた成形品(1)から、幅10mm、長さ22mmの試験片を切り出し、この試験片について、JIS K7078に従い、層間せん断強度を測定し、下記の基準に従い評価した。
〇:80MPa以上
△:70MPa以上、80MPa未満
×:70MPa未満
[耐熱性の評価]
得られた成形品(1)から、幅10mm、長さ55mmの試験片に切り出し、TAインスツルメント社製の「RSA-G2」を用い、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/分、3点曲げモードで10~200℃の温度範囲で動的粘弾性を測定した。貯蔵弾性率E’において、ガラス領域の近似直線と転移領域の接線との交点をガラス転移温度(Tg)とし、下記の基準に従い耐熱性を評価した。
○:100℃以上
△:90℃以上、100℃未満
×:90℃未満
【0078】
(実施例2:樹脂組成物及びプリプレグ(2)の製造と評価)
本実施例では、前記アミノ酸骨格を有するポリオール(a2-1)20質量部に代えて、合成例2で得られたアミノ酸骨格を有するポリオール(a2-2)26質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物(X-2)を調製した。そして、得られた樹脂組成物(X-2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、プリプレグ(2)及び成形品(2)を作製し、上記評価を行った。
【0079】
(実施例3:樹脂組成物及びプリプレグ(3)の製造と評価)
本実施例では、前記アミノ酸骨格を有するポリオール(a2-1)20質量部に代えて、合成例3で得られたアミノ酸骨格を有するポリオール(a2-3)22質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物(X-3)を調製した。そして、得られた樹脂組成物(X-3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、プリプレグ(3)及び成形品(3)を作製し、上記評価を行った。
【0080】
(実施例4:樹脂組成物及びプリプレグ(4)の製造と評価)
本実施例では、前記アミノ酸骨格を有するポリオール(a2-1)20質量部に代えて、合成例4で得られたアミノ酸骨格を有するポリオール(a2-4)20質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物(X-4)を調製した。そして、得られた樹脂組成物(X-4)を用いた以外は、実施例1と同様にして、プリプレグ(4)及び成形品(4)を作製し、上記評価を行った。
【0081】
(比較例1:樹脂組成物(R1)及びプリプレグ(RX1)の作製と評価)
本比較例では、アミノ酸骨格を有するポリオール(a2-1)~(a2-4)に代えて、アミノ酸骨格を有しないポリオール(ar-1)(日本乳化剤株式会社「BA-3U」、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、水酸基当量178)を用いる。前記アミノ酸骨格を有しないポリオール(ar-1)26質量部と、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(a3-1)20質量部とを予め80℃で混合し、常温まで冷却した溶液に、エチレン性不飽和単量体(B-1)15質量部と、パラベンゾキノン0.03質量部と、重合開始剤(C-1)1.0質量部とを混合した後、ポリイソシアネート(a1-1)38質量部を混合することにより、樹脂組成物(RX-1)を調製した。そして、得られた樹脂組成物(RX-1)を用いた以外は、実施例1と同様にして、プリプレグ(R1)及び成形品(R1)を作製し、上記評価を行った。
【0082】
得られた成形品(1)~(4)及び(R1)に関する上記評価結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
実施例1~4の成形品(1)~(4)は、いずれも、アミノ酸を少なくとも一つの原料として用いた硬化性樹脂組成物と強化繊維とを含有したプリプレグを用いて作製された成形品である。表1に示すように、実施例1~4の成形品(1)~(4)は、耐熱性に優れる上に、比較例1の成形品(RX-1)と比較して、曲げ強度及び層間せん断強度に優れる。さらに、実施例1~3の成形品(3)は、実施例4の成形品(4)に比べて、層間せん断強度により優れる。