(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099250
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】変性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 8/14 20060101AFI20250626BHJP
C08F 220/12 20060101ALI20250626BHJP
C08F 210/02 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
C08F8/14
C08F220/12
C08F210/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215763
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】上田 紘平
(72)【発明者】
【氏名】石渡 康司
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AA02Q
4J100AL03P
4J100AL05P
4J100CA04
4J100HA13
4J100HC09
4J100HE03
4J100HE32
(57)【要約】
【課題】安定的に短時間で変性樹脂を製造する方法を提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂(2)と分子量2000以下の側鎖変性材料(1)とから変性樹脂を得る、変性樹脂の製造方法であって、下記工程A~Cを含む、方法。
工程A:反応器に、側鎖変性材料(1)を供給する工程
工程B:工程Aの後、側鎖変性材料(1)が流動できる状態において、前記反応器に熱可塑性樹脂(2)を供給する工程
工程C:工程Bの後、熱可塑性樹脂(2)の側鎖を側鎖変性材料(1)により変性する工程
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(2)と分子量2000以下の側鎖変性材料(1)とから変性樹脂を得る、変性樹脂の製造方法であって、
下記工程A~Cを含む、方法。
工程A:反応器に、側鎖変性材料(1)を供給する工程
工程B:工程Aの後、側鎖変性材料(1)が流動できる状態において、前記反応器に熱可塑性樹脂(2)を供給する工程
工程C:工程Bの後、熱可塑性樹脂(2)の側鎖を側鎖変性材料(1)により変性する工程
【請求項2】
工程Cは、減圧下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程Cは、工程Cで生成される反応副生物を排出する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
側鎖変性材料(1)及び熱可塑性樹脂(2)の充填率が前記反応器の公称容積の80%以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
側鎖変性材料(1)及び熱可塑性樹脂(2)の合計供給量は、前記反応器に供給される成分の全質量に対して、90質量%以上である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
側鎖変性材料(1)及び熱可塑性樹脂(2)の合計供給量100質量部に対して、側鎖変性材料(1)の供給量は30質量部以上70質量部以下であり、熱可塑性樹脂(2)の供給量は30質量部以上70質量部以下である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程Cの後、前記反応器内の成分を、前記反応器の底から排出する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
工程Cが、熱可塑性樹脂(2)と側鎖変性材料(1)とを180℃以下の温度で反応させる工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記反応器が、撹拌機を備え、
前記撹拌機は大型翼である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
熱可塑性樹脂(2)は、側鎖にエステル結合を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
熱可塑性樹脂(2)が、エチレンに由来する構成単位を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
側鎖変性材料(1)は、分子中にヒドロキシ基を1つ有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
工程Cの前記変性が、エステル交換反応により行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項14】
前記変性樹脂が、下記式(1)で示される構成単位(B)を含む重合体である、請求項1又は2に記載の方法。
【化1】
(式(1)中、
Rは、水素原子又はメチル基を表し、
L
1は、単結合、―CO―O―、―O―CO―、又は―O―を表し、
L
2は、単結合、―CH
2―、―CH
2―CH
2―、―CH
2―CH
2―CH
2―、―CH
2―CH(OH)―CH
2―、又は―CH
2―CH(CH
2OH)―を表し、
L
3は、単結合、―CO―O―、―O―CO―、―O―、―CO―NH―、―NH―CO―、―CO―NH―CO―、―NH―CO―NH―、―NH―、又は―N(CH
3)―を表し、
L
6は炭素数14以上30以下のアルキル基を表し、
L
1、L
2、及びL
3の化学構造の説明における横書きの化学式の各々は、その左側が式(1)の上側、その右側が式(1)の下側に対応する。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重合体及びその原料等は、様々な方法により製造されている(例えば、特許文献1~3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/241432号
【特許文献2】特表2015-512895号公報
【特許文献3】特表2015-514698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、熱可塑性樹脂と変性材料とから変性樹脂を製造する方法において、製造効率の更なる向上が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、安定的に短時間で変性樹脂を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]熱可塑性樹脂(2)と分子量2000以下の側鎖変性材料(1)とから変性樹脂を得る、変性樹脂の製造方法であって、下記工程A~Cを含む、方法。
工程A:反応器に、側鎖変性材料(1)を供給する工程
工程B:工程Aの後、側鎖変性材料(1)が流動できる状態において、前記反応器に熱可塑性樹脂(2)を供給する工程
工程C:工程Bの後、熱可塑性樹脂(2)の側鎖を側鎖変性材料(1)により変性する工程
[2]工程Cは、減圧下で行われる、[1]に記載の方法。
[3]工程Cは、工程Cで生成される反応副生物を排出する工程を含む、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]側鎖変性材料(1)及び熱可塑性樹脂(2)の充填率が前記反応器の公称容積の80%以下である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5]側鎖変性材料(1)及び熱可塑性樹脂(2)の合計供給量は、前記反応器に供給される成分の全質量に対して、90質量%以上である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6]側鎖変性材料(1)及び熱可塑性樹脂(2)の合計供給量100質量部に対して、側鎖変性材料(1)の供給量は30質量部以上70質量部以下であり、熱可塑性樹脂(2)の供給量は30質量部以上70質量部以下である、[5]に記載の方法。
[7]工程Cの後、前記反応器内の成分を、前記反応器の底から排出する、[1]~[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8]工程Cが、熱可塑性樹脂(2)と側鎖変性材料(1)とを180℃以下の温度で反応させる工程を含む、[1]~[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9]前記反応器が、撹拌機を備え、前記撹拌機は大型翼である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10]熱可塑性樹脂(2)は、側鎖にエステル結合を有する、[1]~[9]のいずれか一項に記載の方法。
[11]熱可塑性樹脂(2)が、エチレンに由来する構成単位を有する、[1]~[10]のいずれか一項に記載の方法。
[12]側鎖変性材料(1)は、分子中にヒドロキシ基を1つ有する、[1]~[11]いずれか一項に記載の方法。
[13]工程Cの前記変性が、エステル交換反応により行われる、[1]~[12]のいずれか一項に記載の方法。
[14]前記変性樹脂が、下記式(1)で示される構成単位(B)を含む重合体である、[1]~[13]のいずれか一項に記載の方法。
【化1】
(式(1)中、
Rは、水素原子又はメチル基を表し、
L
1は、単結合、―CO―O―、―O―CO―、又は―O―を表し、
L
2は、単結合、―CH
2―、―CH
2―CH
2―、―CH
2―CH
2―CH
2―、―CH
2―CH(OH)―CH
2―、又は―CH
2―CH(CH
2OH)―を表し、
L
3は、単結合、―CO―O―、―O―CO―、―O―、―CO―NH―、―NH―CO―、―CO―NH―CO―、―NH―CO―NH―、―NH―、又は―N(CH
3)―を表し、
L
6は炭素数14以上30以下のアルキル基を表し、
L
1、L
2、及びL
3の化学構造の説明における横書きの化学式の各々は、その左側が式(1)の上側、その右側が式(1)の下側に対応する。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安定的に短時間で変性樹脂を製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例及び比較例で用いた製造設備を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
本明細書中、以下で例示する材料は、特に断らない限り、条件に該当する範囲で、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。各成分の含有量は、各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、当該複数の物質の合計量を意味する。
【0012】
(変性樹脂の製造方法)
本実施形態の変性樹脂の製造方法は、熱可塑性樹脂(2)と分子量2000以下の側鎖変性材料(1)とから変性樹脂を得る、変性樹脂の製造方法である。
【0013】
この方法は、下記工程A~Cを含む。
工程A:反応器に、側鎖変性材料(1)を供給する工程
工程B:工程Aの後、側鎖変性材料(1)が流動できる状態において、前記反応器に熱可塑性樹脂(2)を供給する工程
工程C:工程Bの後、熱可塑性樹脂(2)の側鎖を側鎖変性材料(1)により変性する工程
【0014】
この方法は、反応器で実施されるものであって、バッチ式、連続式のいずれであってもよく、本明細書の実施例及び比較例によって制限を受けるものではない。一般的に、より反応率を高める場合には好ましくはバッチ式であるが、連続重合反応器内の滞留時間分布を容器の連結様式や撹拌翼を適切に設計及び設置することで調整し、反応率の低下を抑えながら生産性のバランスを取ることもできる。
【0015】
[熱可塑性樹脂(2)]
熱可塑性樹脂(2)としては、例えば、ポリエチレン(PE)、エチレン系共重合体、ポリプロピレン(PP)、プロピレン系共重合体、塩化ビニル単独重合体(PVC)、ポリスチレン単独重合体(PS)、環状オレフィン共重合体(COC)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリル酸メチル(PMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などに代表される加熱により軟化し可塑性を有する樹脂が挙げられる。
【0016】
熱可塑性樹脂(2)は、得られる変性樹脂の成形加工性及び形状保持性の観点から、例えば、エチレンに由来する構成単位(A)を有していてもよい。構成単位(A)は、エチレンを重合することにより得られる構成単位である。構成単位(A)は、重合体中で分岐構造を形成していてもよい。
【0017】
熱可塑性樹脂(2)は、一例において、下記式(2)で示される構成単位(C)を有する重合体であり得る。
【化2】
【0018】
式(2)中、
Rは、水素原子又はメチル基を表し、
L1は、単結合、―CO―O―、―O―CO―、又は―O―を表し、
L4は、炭素原子数1以上8以下のアルキレン基を表し、
L5は、水素原子、エポキシ基、―CH(OH)―CH2OH、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、又は炭素原子数1以上4以下のアルキルアミノ基を表す。なお、L1の横書きの化学式の各々は、その左側が式(2)の上側、その右側が式(2)の下側に対応する。]
【0019】
熱可塑性樹脂(2)は、側鎖変性反応を制御しやすいという観点から、例えば、側鎖にエステル結合を有していてもよい。
【0020】
側鎖にエステル結合を有する熱可塑性樹脂(2)としては、例えば、上記式(2)で示される構成単位(C)を有し、式(2)中、L1が―CO―O―である重合体が挙げられる。
【0021】
式(2)において、L4としての炭素原子数1以上8以下のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、1-メチルエチレン基、n-ブチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、2,2-ジメチルエチレン基、n-ペンチレン基、n-へキシレン基、n-ヘプタレン基、n-オクチレン基、及び2-エチル-n-へキシレン基が挙げられる。
【0022】
式(2)において、L5としての炭素原子数1以上4以下のアルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、及びジエチルアミノ基が挙げられる。
【0023】
構成単位(C)としては、例えば、プロピレンに由来する構成単位、ブテンに由来する構成単位、1-ペンテンに由来する構成単位、1-ヘキセンに由来する構成単位、1-ヘプテンに由来する構成単位、1-オクテンに由来する構成単位、アクリル酸に由来する構成単位、メタクリル酸に由来する構成単位、ビニルアルコールに由来する構成単位、メチルアクリレートに由来する構成単位、エチルアクリレートに由来する構成単位、n-プロピルアクリレートに由来する構成単位、イソプロピルアクリレートに由来する構成単位、n-ブチルアクリレートに由来する構成単位、イソブチルアクリレートに由来する構成単位、sec-ブチルアクリレートに由来する構成単位、tert-ブチルアクリレートに由来する構成単位、メチルメタクリレートに由来する構成単位、エチルメタクリレートに由来する構成単位、n-プロピルメタクリレートに由来する構成単位、イソプロピルメタクリレートに由来する構成単位、n-ブチルメタクリレートに由来する構成単位、イソブチルメタクリレートに由来する構成単位、sec-ブチルメタクリレートに由来する構成単位、tert-ブチルメタクリレートに由来する構成単位、ビニルホルメートに由来する構成単位、ビニルアセテートに由来する構成単位、ビニルプロピオネートに由来する構成単位、ビニル(n-ブチレート)に由来する構成単位、ビニル(イソブチレート)に由来する構成単位、メチルビニルエーテルに由来する構成単位、エチルビニルエーテルに由来する構成単位、n-プロピルビニルエーテルに由来する構成単位、イソプロピルビニルエーテルに由来する構成単位、n-ブチルビニルエーテルに由来する構成単位、イソブチルビニルエーテルに由来する構成単位、sec-ブチルビニルエーテルに由来する構成単位、tert-ブチルビニルエーテルに由来する構成単位、グリシジルアクリレートに由来する構成単位、グリシジルメタクリレートに由来する構成単位、2,3-ジヒドロキシプロピルアクリレートに由来する構成単位、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレートに由来する構成単位、3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリレートに由来する構成単位、及び3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートに由来する構成単位が挙げられる。
【0024】
熱可塑性樹脂(2)は、2種類以上の前記構成単位(C)を有していてもよく、例えば、メチルアクリレートに由来する構成単位と、エチルアクリレートに由来する構成単位と、グリシジルメタクリレートに由来する構成単位とを有する重合体であってもよい。
【0025】
熱可塑性樹脂(2)の具体例は、アクリル酸重合体、メタクリル酸重合体、ビニルアルコール重合体、メチルアクリレート重合体、エチルアクリレート重合体、n-プロピルアクリレート重合体、n-ブチルアクリレート重合体、メチルメタクリレート重合体、エチルメタクリレート重合体、n-プロピルメタクリレート重合体、n-ブチルメタクリレート重合体、ビニルホルメート重合体、ビニルアセテート重合体、ビニルプロピオネート重合体、ビニル(n-ブチレート)重合体、メチルビニルエーテル重合体、エチルビニルエーテル重合体、n-プロピルビニルエーテル重合体、n-ブチルビニルエーテル重合体、無水マレイン酸重合体、グリシジルアクリレート重合体、グリシジルメタクリレート重合体、3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート重合体、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-n-プロピルアクリレート共重合体、エチレン-n-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-エチルメタクリレート共重合体、エチレン-n-プロピルメタクリレート共重合体、エチレン-n-ブチルメタクリレート共重合体、エチレン-ビニルホルメート共重合体、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-ビニルプロピオネート共重合体、エチレン-ビニル(n-ブチレート)共重合体、エチレン-メチルビニルエーテル共重合体、エチレン-エチルビニルエーテル共重合体、エチレン-n-プロピルビニルエーテル共重合体、エチレン-n-ブチルビニルエーテル共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-グリシジルアクリレート共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン-3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート共重合体、及びエチレン-3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート共重合体を含む。
熱可塑性樹脂(2)は、好ましくはエチレン系共重合体である。エチレン系共重合体としては、例えば、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン-カルボン酸ビニル共重合体、及びエチレン-アルキルビニルエーテル共重合体が挙げられる。
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体としては、例えば、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、及びエチレン-無水マレイン酸共重合体が挙げられる。
【0026】
熱可塑性樹脂(2)は、好ましくは、前記構成単位(A)と前記構成単位(C)の合計数100%に対して、前記構成単位(A)の数が0%以上99%以下であり、前記構成単位(C)の合計数が1%以上100%以下である重合体であり、より好ましくは、前記構成単位(A)の数が70%以上99%以下であり、前記構成単位(C)の合計数が1%以上30%以下である重合体である。
【0027】
JIS K7210に準拠して温度190℃、荷重21Nで測定される熱可塑性樹脂(2)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1g/10分以上500g/10分以下であり、より好ましくは1g/10分以上300g/10分以下であり、更に好ましくは5g/10分以上100g/10分以下である。
【0028】
[側鎖変性材料(1)]
側鎖変性材料(1)としては、例えば、分子量2000以下のアルコール、アミン、アルキルハライド、カルボン酸、カルボン酸アミド、カルボン酸ハライド、カルバミン酸、アルキル尿素、及びイソシアネートが挙げられる。
【0029】
側鎖変性材料(1)は、一例において、炭素原子数14以上30以下のアルキル基を有するアルコール、炭素原子数14以上30以下のアルキル基を有するアミン、炭素原子数14以上30以下のアルキル基を有するアルキルハライド、炭素原子数14以上30以下のアルキル基を有するカルボン酸、炭素原子数14以上30以下のアルキル基を有するカルボン酸アミド、炭素原子数14以上30以下のアルキル基を有するカルボン酸ハライド、炭素原子数14以上30以下のアルキル基を有するカルバミン酸、炭素原子数14以上30以下のアルキル基を有するアルキル尿素、及び炭素原子数14以上30以下のアルキル基を有するイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、「化合物(α)」ともいう)であり得る。
【0030】
アルキル基は、例えば、直鎖アルキル基であってもよく、分岐アルキル基であってもよい。
【0031】
前記炭素原子数14以上30以下の直鎖アルキル基を有するアルコールとしては、例えば、n-テトラデシルアルコール、n-ペンタデシルアルコール、n-ヘキサデシルアルコール、n-ヘプタデシルアルコール、n-オクタデシルアルコール、n-ノナデシルアルコール、n-エイコシルアルコール、n-ヘンエイコシルアルコール、n-ドコシルアルコール、n-トリコシルアルコール、n-テトラコシルアルコール、n-ペンタコシルアルコール、n-ヘキサコシルアルコール、n-ヘプタコシルアルコール、n-オクタコシルアルコール、n-ノナコシルアルコール、及びn-トリアコンチルアルコールが挙げられる。
【0032】
前記炭素原子数14以上30以下の分岐アルキル基を有するアルコールとしては、例えば、イソテトラデシルアルコール、イソペンタデシルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、イソヘプタデシルアルコール、イソオクタデシルアルコール、イソノナデシルアルコール、イソエイコシルアルコール、イソヘンエイコシルアルコール、イソドコシルアルコール、イソトリコシルアルコール、イソテトラコシルアルコール、イソペンタコシルアルコール、イソヘキサコシルアルコール、イソヘプタコシルアルコール、イソオクタコシルアルコール、イソノナコシルアルコール、及びイソトリアコンチルアルコールが挙げられる。
【0033】
前記炭素原子数14以上30以下の直鎖アルキル基を有するアミンとしては、例えば、n-テトラデシルアミン、n-ペンタデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-ヘプタデシルアミン、n-オクタデシルアミン、n-ノナデシルアミン、n-エイコシルアミン、n-ヘンエイコシルアミン、n-ドコシルアミン、n-トリコシルアミン、n-テトラコシルアミン、n-ペンタコシルアミン、n-ヘキサコシルアミン、n-ヘプタコシルアミン、n-オクタコシルアミン、n-ノナコシルアミン、及びn-トリアコンチルアミンが挙げられる。
【0034】
前記炭素原子数14以上30以下の分岐アルキル基を有するアミンとしては、例えば、イソテトラデシルアミン、イソペンタデシルアミン、イソヘキサデシルアミン、イソヘプタデシルアミン、イソオクタデシルアミン、イソノナデシルアミン、イソエイコシルアミン、イソヘンエイコシルアミン、イソドコシルアミン、イソトリコシルアミン、イソテトラコシルアミン、イソペンタコシルアミン、イソヘキサコシルアミン、イソヘプタコシルアミン、イソオクタコシルアミン、イソノナコシルアミン、及びイソトリアコンチルアミンが挙げられる。
【0035】
前記炭素原子数14以上30以下の直鎖アルキル基を有するアルキルハライドとしては、例えば、n-テトラデシルヨージド、n-ペンタデシルヨージド、n-ヘキサデシルヨージド、n-ヘプタデシルヨージド、n-オクタデシルヨージド、n-ノナデシルヨージド、n-エイコシルヨージド、n-ヘンエイコシルヨージド、n-ドコシルヨージド、n-トリコシルヨージド、n-テトラコシルヨージド、n-ペンタコシルヨージド、n-ヘキサコシルヨージド、n-ヘプタコシルヨージド、n-オクタコシルヨージド、n-ノナコシルヨージド、及びn-トリアコンチルヨージドが挙げられる。
【0036】
前記炭素原子数14以上30以下の分岐アルキル基を有するアルキルハライドとしては、例えば、イソテトラデシルヨージド、イソペンタデシルヨージド、イソヘキサデシルヨージド、イソヘプタデシルヨージド、イソオクタデシルヨージド、イソノナデシルヨージド、イソエイコシルヨージド、イソヘンエイコシルヨージド、イソドコシルヨージド、イソトリコシルヨージド、イソテトラコシルヨージド、イソペンタコシルヨージド、イソヘキサコシルヨージド、イソヘプタコシルヨージド、イソオクタコシルヨージド、イソノナコシルヨージド、及びイソトリアコンチルヨージドが挙げられる。
【0037】
前記炭素原子数14以上30以下の直鎖アルキル基を有するカルボン酸としては、例えば、n-テトラデカン酸、n-ペンタデカン酸、n-ヘキサデカン酸、n-ヘプタデカン酸、n-オクタデカン酸、n-ノナデカン酸、n-エイコサン酸、n-ヘンエイコサン酸、n-ドコサン酸、n-トリコサン酸、n-テトラコサン酸、n-ペンタコサン酸、n-ヘキサコサン酸、n-ヘプタコサン酸、n-オクタコサン酸、n-ノナコサン酸、及びn-トリアコンタン酸が挙げられる。
【0038】
前記炭素原子数14以上30以下の分岐アルキル基を有するカルボン酸としては、例えば、イソテトラデカン酸、イソペンタデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソヘプタデカン酸、イソオクタデカン酸、イソノナデカン酸、イソエイコサン酸、イソヘンエイコサン酸、イソドコサン酸、イソトリコサン酸、イソテトラコサン酸、イソペンタコサン酸、イソヘキサコサン酸、イソヘプタコサン酸、イソオクタコサン酸、イソノナコサン酸、及びイソトリアコンタン酸が挙げられる。
【0039】
前記炭素原子数14以上30以下の直鎖アルキル基を有するカルボン酸アミドとしては、例えば、n-テトラデカン酸アミド、n-ペンタデカン酸アミド、n-ヘキサデカン酸アミド、n-ヘプタデカン酸アミド、n-オクタデカン酸アミド、n-ノナデカン酸アミド、n-エイコサン酸アミド、n-ヘンエイコサン酸アミド、n-ドコサン酸アミド、n-トリコサン酸アミド、n-テトラコサン酸アミド、n-ペンタコサン酸アミド、n-ヘキサコサン酸アミド、n-ヘプタコサン酸アミド、n-オクタコサン酸アミド、n-ノナコサン酸アミド、及びn-トリアコンタン酸アミドが挙げられる。
【0040】
前記炭素原子数14以上30以下の分岐アルキル基を有するカルボン酸アミドとしては、例えば、イソテトラデカン酸アミド、イソペンタデカン酸アミド、イソヘキサデカン酸アミド、イソヘプタデカン酸アミド、イソオクタデカン酸アミド、イソノナデカン酸アミド、イソエイコサン酸アミド、イソヘンエイコサン酸アミド、イソドコサン酸アミド、イソトリコサン酸アミド、イソテトラコサン酸アミド、イソペンタコサン酸アミド、イソヘキサコサン酸アミド、イソヘプタコサン酸アミド、イソオクタコサン酸アミド、イソノナコサン酸アミド、及びイソトリアコンタン酸アミドが挙げられる。
【0041】
前記炭素原子数14以上30以下の直鎖アルキル基を有するカルボン酸ハライドとしては、例えば、n-テトラデカン酸クロリド、n-ペンタデカン酸クロリド、n-ヘキサデカン酸クロリド、n-ヘプタデカン酸クロリド、n-オクタデカン酸クロリド、n-ノナデカン酸クロリド、n-エイコサン酸クロリド、n-ヘンエイコサン酸クロリド、n-ドコサン酸クロリド、n-トリコサン酸クロリド、n-テトラコサン酸クロリド、n-ペンタコサン酸クロリド、n-ヘキサコサン酸クロリド、n-ヘプタコサン酸クロリド、n-オクタコサン酸クロリド、n-ノナコサン酸クロリド、及びn-トリアコンタン酸クロリドが挙げられる。
【0042】
前記炭素原子数14以上30以下の分岐アルキル基を有するカルボン酸ハライドとしては、例えば、イソテトラデカン酸クロリド、イソペンタデカン酸クロリド、イソヘキサデカン酸クロリド、イソヘプタデカン酸クロリド、イソオクタデカン酸クロリド、イソノナデカン酸クロリド、イソエイコサン酸クロリド、イソヘンエイコサン酸クロリド、イソドコサン酸クロリド、イソトリコサン酸クロリド、イソテトラコサン酸クロリド、イソペンタコサン酸クロリド、イソヘキサコサン酸クロリド、イソヘプタコサン酸クロリド、イソオクタコサン酸クロリド、イソノナコサン酸クロリド、及びイソトリアコンタン酸クロリドが挙げられる。
【0043】
前記炭素原子数14以上30以下の直鎖アルキル基を有するカルバミン酸としては、例えば、n-テトラデシルカルバミン酸、n-ペンタデシルカルバミン酸、n-ヘキサデシルカルバミン酸、n-ヘプタデシルカルバミン酸、n-オクタデシルカルバミン酸、n-ノナデシルカルバミン酸、n-エイコシルカルバミン酸、n-ヘンエイコシルカルバミン酸、n-ドコシルカルバミン酸、n-トリコシルカルバミン酸、n-テトラコシルカルバミン酸、n-ペンタコシルカルバミン酸、n-ヘキサコシルカルバミン酸、n-ヘプタコシルカルバミン酸、n-オクタコシルカルバミン酸、n-ノナコシルカルバミン酸、及びn-トリアコンチルカルバミン酸が挙げられる。
【0044】
前記炭素原子数14以上30以下の分岐アルキル基を有するカルバミン酸としては、例えば、イソテトラデシルカルバミン酸、イソペンタデシルカルバミン酸、イソヘキサデシルカルバミン酸、イソヘプタデシルカルバミン酸、イソオクタデシルカルバミン酸、イソノナデシルカルバミン酸、イソエイコシルカルバミン酸、イソヘンエイコシルカルバミン酸、イソドコシルカルバミン酸、イソトリコシルカルバミン酸、イソテトラコシルカルバミン酸、イソペンタコシルカルバミン酸、イソヘキサコシルカルバミン酸、イソヘプタコシルカルバミン酸、イソオクタコシルカルバミン酸、イソノナコシルカルバミン酸、及びイソトリアコンチルカルバミン酸が挙げられる。
【0045】
前記炭素原子数14以上30以下の直鎖アルキル基を有するアルキル尿素としては、例えば、n-テトラデシル尿素、n-ペンタデシル尿素、n-ヘキサデシル尿素、n-ヘプタデシル尿素、n-オクタデシル尿素、n-ノナデシル尿素、n-エイコシル尿素、n-ヘンエイコシル尿素、n-ドコシル尿素、n-トリコシル尿素、n-テトラコシル尿素、n-ペンタコシル尿素、n-ヘキサコシル尿素、n-ヘプタコシル尿素、n-オクタコシル尿素、n-ノナコシル尿素、及びn-トリアコンチル尿素が挙げられる。
【0046】
前記炭素原子数14以上30以下の分岐アルキル基を有するアルキル尿素としては、例えば、イソテトラデシル尿素、イソペンタデシル尿素、イソヘキサデシル尿素、イソヘプタデシル尿素、イソオクタデシル尿素、イソノナデシル尿素、イソエイコシル尿素、イソヘンエイコシル尿素、イソドコシル尿素、イソトリコシル尿素、イソテトラコシル尿素、イソペンタコシル尿素、イソヘキサコシル尿素、イソヘプタコシル尿素、イソオクタコシル尿素、イソノナコシル尿素、及びイソトリアコンチル尿素が挙げられる。
【0047】
前記炭素原子数14以上30以下の直鎖アルキル基を有するイソシアネートとしては、例えば、n-テトラデシルイソシアネート、n-ペンタデシルイソシアネート、n-ヘキサデシルイソシアネート、n-ヘプタデシルイソシアネート、n-オクタデシルイソシアネート、n-ノナデシルイソシアネート、n-エイコシルイソシアネート、n-ヘンエイコシルイソシアネート、n-ドコシルイソシアネート、n-トリコシルイソシアネート、n-テトラコシルイソシアネート、n-ペンタコシルイソシアネート、n-ヘキサコシルイソシアネート、n-ヘプタコシルイソシアネート、n-オクタコシルイソシアネート、n-ノナコシルイソシアネート、及びn-トリアコンチルイソシアネートが挙げられる。
【0048】
前記炭素原子数14以上30以下の分岐アルキル基を有するイソシアネートとしては、例えば、イソテトラデシルイソシアネート、イソペンタデシルイソシアネート、イソヘキサデシルイソシアネート、イソヘプタデシルイソシアネート、イソオクタデシルイソシアネート、イソノナデシルイソシアネート、イソエイコシルイソシアネート、イソヘンエイコシルイソシアネート、イソドコシルイソシアネート、イソトリコシルイソシアネート、イソテトラコシルイソシアネート、イソペンタコシルイソシアネート、イソヘキサコシルイソシアネート、イソヘプタコシルイソシアネート、イソオクタコシルイソシアネート、イソノナコシルイソシアネート、及びイソトリアコンチルイソシアネートが挙げられる。
【0049】
側鎖変性材料(1)は、工業的に取り扱いやすく、側鎖変性材料として用いやすい物質が多いという観点から、分子中にヒドロキシ基を1つ有していてもよい。
【0050】
分子中にヒドロキシ基を1つ有する側鎖変性材料(1)としては、例えば、n-テトラデシルアルコール、n-ペンタデシルアルコール、n-ヘキサデシルアルコール、n-ヘプタデシルアルコール、n-オクタデシルアルコール、n-ノナデシルアルコール、n-エイコシルアルコール、n-ヘンエイコシルアルコール、n-ドコシルアルコール、n-トリコシルアルコール、n-テトラコシルアルコール、n-ペンタコシルアルコール、n-ヘキサコシルアルコール、n-ヘプタコシルアルコール、n-オクタコシルアルコール、n-ノナコシルアルコール、n-トリアコンチルアルコール、イソテトラデシルアルコール、イソペンタデシルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、イソヘプタデシルアルコール、イソオクタデシルアルコール、イソノナデシルアルコール、イソエイコシルアルコール、イソヘンエイコシルアルコール、イソドコシルアルコール、イソトリコシルアルコール、イソテトラコシルアルコール、イソペンタコシルアルコール、イソヘキサコシルアルコール、イソヘプタコシルアルコール、イソオクタコシルアルコール、イソノナコシルアルコール、イソトリアコンチルアルコール等の1価のアルコールが挙げられる。
【0051】
[工程A]
工程Aでは、側鎖変性材料(1)を反応器に供給する。
【0052】
反応器は、内部で熱可塑性樹脂(2)の側鎖を側鎖変性材料(1)により変性する反応器である。反応器は、例えば、槽型反応器(反応釜等)であることができる。
【0053】
反応器の公称容積は、例えば、0.1m3以上50m3以下であってもよく、0.5m3以上30m3以下であってもよく、1.0m3以上20m3以下であってもよい。
【0054】
反応器は、撹拌翼を備えることが好ましい。
【0055】
撹拌翼としては、リボン翼、アンカー翼及び広幅翼などの大型翼、並びにパドル翼、タービン翼、プロペラ翼及びファウドラ―翼などの小型翼が挙げられる。
【0056】
撹拌翼は、高粘度領域への対応が可能という観点から、例えば、大型翼であることができる。また、幅広い粘度領域に対応できるという観点から、広幅翼であることができる。広幅翼としては、例えば、神鋼環境ソリューション社製撹拌翼「フルゾーン」(商品名))、佐竹化学機械工業社製「Super-Mix MR203」及び「Super-Mix MR205」、綜研テクニックス社製「Hi-Fミキサー」(いずれも商品名)、並びに住友重機械プロセス機器社製「MAXBLEND」(商品名)が挙げられる。
【0057】
側鎖変性材料(1)は、固体状又は流動できる状態(例えば、液状)で供給することができる。
【0058】
流動できる状態の側鎖変性材料(1)は、例えば、溶融状態又は溶媒に溶解した状態の側鎖変性材料(1)であり得る。溶融状態又は溶媒に溶解した状態とは、液体の中に一部溶け残った固体が存在し、液体中で溶け残った固体が撹拌可能である状態も含む。
【0059】
固体状の側鎖変性材料(1)を供給する場合には、工程Bの前に、反応器内の側鎖変性材料(1)を例えば加熱して流動できる状態とすることができる。
【0060】
[工程B]
工程Bでは、側鎖変性材料(1)が流動できる状態において、前記反応器に熱可塑性樹脂(2)を供給する。
【0061】
側鎖変性材料(1)及び熱可塑性樹脂(2)の合計供給量は、生産性向上の観点から、反応器に供給される成分の全質量に対して、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることが更に好ましい。側鎖変性材料(1)及び熱可塑性樹脂(2)の合計供給量は、反応器に供給される成分の全質量に対して、例えば、100質量%以下、99.8質量%以下、又は99.6質量%以下であってもよい。
【0062】
側鎖変性材料(1)の供給量は、側鎖変性材料(1)及び熱可塑性樹脂(2)の合計供給量100質量部に対して、例えば、30質量部以上70質量部以下であってもよく、35質量部以上60質量部以下であってもよく、40質量部以上65質量部以下であってもよく、40質量部以上55質量部以下であってもよく、45質量部以上60質量部以下であってもよい。
【0063】
熱可塑性樹脂(2)の供給量は、側鎖変性材料(1)及び熱可塑性樹脂(2)の合計供給量100質量部に対して、例えば、30質量部以上70質量部以下であってもよく、35質量部以上60質量部以下であってもよく、40質量部以上65質量部以下であってもよく、40質量部以上55質量部以下であってもよく、45質量部以上60質量部以下であってもよい。
【0064】
好ましくは、側鎖変性材料(1)及び熱可塑性樹脂(2)の合計供給量100質量部に対して、側鎖変性材料(1)の供給量は30質量部以上70質量部以下であり、熱可塑性樹脂(2)の供給量は30質量部以上70質量部以下である。
【0065】
熱可塑性樹脂(2)100質量部に対する側鎖変性材料(1)の供給量は、例えば、42質量部以上234質量部以下であってもよく、53質量部以上150質量部以下であってもよく、66質量部以上123質量部以下であってもよい。
【0066】
側鎖変性材料(1)及び熱可塑性樹脂(2)の充填率は、液面制御による運転安定性の観点から、前記反応器の公称容積の80%以下であることが好ましい。この充填率は、前記反応器の公称容積の90%以下であってもよく、70%以下であってもよく、65%以下であってもよい。この充填率は、生産性の観点から、前記反応器の公称容積の30%以上、40%以上、又は50%以上であってもよい。
【0067】
バッチ式の場合、上記充填率は、下記の式により計算できる。
(原料の充填率)[%]=100×(原料の合計体積)[m3]/(反応器の公称容積)[m3]
[式中、原料は側鎖変性材料(1)及び熱可塑性樹脂(2)であり、原料の合計体積[m3]は側鎖変性材料(1)の体積[m3]と熱可塑性樹脂(2)の体積[m3]とを足し合わせた値である。各原料の体積[m3]は、各原料の使用量[kg]を20℃から25℃の範囲における密度[kg/m3]で割ることで算出する。]
連続式の場合、上記充填率は、下記の式により計算できる。
(原料の充填率)[%]=100×(反応器に存在する原料の合計体積)[m3])/(反応器の公称容積)[m3]
【0068】
熱可塑性樹脂(2)は、例えば、固体状で供給してもよく、流動できる状態(例えば、液状)で供給してもよい。
【0069】
固体状の熱可塑性樹脂(2)を供給する場合には、供給後に反応器を加熱して熱可塑性樹脂(2)を溶融又は溶解させることが好ましい。
【0070】
[工程C]
工程Cでは、熱可塑性樹脂(2)の側鎖を側鎖変性材料(1)により変性する。上記変性は、例えば、付加反応、置換反応、酸化還元反応などにより行われることができる。変性は、反応熱が小さく、反応が制御しやすい観点から、置換反応の一種であるエステル交換反応により行われることが好ましい。
【0071】
工程Cは、減圧下で行うことが好ましい。発泡を伴う場合、例えば、徐々に減圧することもできる。工程Cにおいて反応器内の圧力は、例えば、500Torr以下、200Torr以下又は100Torr以下であってもよい。この圧力は、平衡反応を促進する観点から、例えば、10Torr以下であってもよい。この圧力は、例えば、3Torr以上、1Torr以上又は0.5Torr以上であってもよい。
【0072】
工程Cの温度は、例えば、40℃以上250℃以下であってもよく、100℃以上200℃以下あってもよく、130℃以上180℃以下あってもよい。
【0073】
工程Cは、熱可塑性樹脂(2)と側鎖変性材料(1)とを180℃以下の温度で反応させる工程を含むことが好ましい。
【0074】
工程Cは、溶媒存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、トルエン、及びキシレンが挙げられる。
【0075】
工程Cは、反応を促進する観点から、工程Cで生成される反応副生物を排出する工程を含んでいてもよい。この工程は、例えば、反応器から減圧留去した反応副生物を反応系外に排出する工程であることができる。
【0076】
工程Cは、触媒の存在下で行ってもよい。
【0077】
触媒としては、例えば、アルカリ金属塩、4族金属錯体が挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、及びリチウムメトキシド、ナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドが挙げられる。4族金属錯体としては、例えば、オルトチタン酸テトラ(イソプロピル)、オルトチタン酸テトラ(n-ブチル)、及びオルトチタン酸テトラオクタデシルが挙げられる。
【0078】
触媒の添加量は、熱可塑性樹脂(2)と側鎖変性材料(1)との合計量100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上50質量部以下であってもよく、0.01質量部以上5質量部以下であってもよい。
【0079】
工程Cの後、前記反応器内の成分は、例えば、前記反応器の底から排出する。
【0080】
工程Cの後、反応器内の成分を抜き出す前に、添加剤(酸化防止剤、反応停止剤等)、他の機能性材料成分(低分子蓄熱材料等)などを反応器に供給することもできる。
【0081】
[変性樹脂]
【0082】
変性樹脂は、一例において、下記式(1)で示される構成単位(B)を含む重合体であり得る。
【0083】
【0084】
式(1)中、
Rは、水素原子又はメチル基を表し、
L1は、単結合、―CO―O―、―O―CO―、又は―O―を表し、
L2は、単結合、―CH2―、―CH2―CH2―、―CH2―CH2―CH2―、―CH2―CH(OH)―CH2―、又は―CH2―CH(CH2OH)―を表し、
L3は、単結合、―CO―O―、―O―CO―、―O―、―CO―NH―、―NH―CO―、―CO―NH―CO―、―NH―CO―NH―、―NH―、又は―N(CH3)―を表し、
L6は炭素数14以上30以下のアルキル基を表し、
L1、L2、及びL3の化学構造の説明における横書きの化学式の各々は、その左側が式(1)の上側、その右側が式(1)の下側に対応する。
【0085】
構成単位(B)を含む重合体は、例えば、構造単位(C)を有する重合体の側鎖(-L1-L4-L5)を変性することにより製造できる。
【0086】
式(1)において、L6としての炭素原子数14以上30以下のアルキル基としては、炭素原子数14以上30以下の直鎖アルキル基、及び炭素原子数14以上30以下の分岐アルキル基が挙げられる。L6は、好ましくは、炭素原子数14以上30以下の直鎖アルキル基であり、より好ましくは炭素原子数14以上24以下の直鎖アルキル基であり、更に好ましくは炭素原子数16以上22以下の直鎖アルキル基である。
【0087】
前記炭素原子数14以上30以下の直鎖アルキル基としては、例えばn-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコシル基、n-ヘンエイコシル基、n-ドコシル基、n-トリコシル基、n-テトラコシル基、n-ペンタコシル基、n-ヘキサコシル基、n-ヘプタコシル基、n-オクタコシル基、n-ノナコシル基、及びn-トリアコンチル基が挙げられる。
【0088】
前記炭素原子数14以上30以下の分岐アルキル基としては、例えばイソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソノナデシル基、イソエイコシル基、イソヘンエイコシル基、イソドコシル基、イソトリコシル基、イソテトラコシル基、イソペンタコシル基、イソヘキサコシル基、イソヘプタコシル基、イソオクタコシル基、イソノナコシル基、及びイソトリアコンチル基が挙げられる。
【0089】
前記構成単位(B)としては、例えば、n-ヘキサデセンに由来する構成単位、n-オクタデセンに由来する構成単位、n-エイコセンに由来する構成単位、n-ドコセンに由来する構成単位、n-テトラコセンに由来する構成単位、n-ヘキサコセンに由来する構成単位、n-オクタコセンに由来する構成単位、n-トリアコンテンに由来する構成単位、n-ドトリアコンテンに由来する構成単位、n-テトラデシルアクリレートに由来する構成単位、n-ペンタデシルアクリレートに由来する構成単位、n-ヘキサデシルアクリレートに由来する構成単位、n-ヘプタデシルアクリレートに由来する構成単位、n-オクタデシルアクリレートに由来する構成単位、n-ノナデシルアクリレートに由来する構成単位、n-エイコシルアクリレートに由来する構成単位、n-ヘンエイコシルアクリレートに由来する構成単位、n-ドコシルアクリレートに由来する構成単位、n-トリコシルアクリレートに由来する構成単位、n-テトラコシルアクリレートに由来する構成単位、n-ペンタコシルアクリレートに由来する構成単位、n-ヘキサコシルアクリレートに由来する構成単位、n-ヘプタコシルアクリレートに由来する構成単位、n-オクタコシルアクリレートに由来する構成単位、n-ノナコシルアクリレートに由来する構成単位、n-トリアコンチルアクリレートに由来する構成単位、n-テトラデシルメタクリレートに由来する構成単位、n-ペンタデシルメタクリレートに由来する構成単位、n-ヘキサデシルメタクリレートに由来する構成単位、n-ヘプタデシルメタクリレートに由来する構成単位、n-オクタデシルメタクリレートに由来する構成単位、n-ノナデシルメタクリレートに由来する構成単位、n-エイコシルメタクリレートに由来する構成単位、n-ヘンエイコシルメタクリレートに由来する構成単位、n-ドコシルメタクリレートに由来する構成単位、n-トリコシルメタクリレートに由来する構成単位、n-テトラコシルメタクリレートに由来する構成単位、n-ペンタコシルメタクリレートに由来する構成単位、n-ヘキサコシルメタクリレートに由来する構成単位、n-ヘプタコシルメタクリレートに由来する構成単位、n-オクタコシルメタクリレートに由来する構成単位、n-ノナコシルメタクリレートに由来する構成単位、n-トリアコンチルメタクリレートに由来する構成単位、n-ビニルテトラデシレートに由来する構成単位、n-ビニルヘキサデシレートに由来する構成単位、n-ビニルオクタデシレートに由来する構成単位、n-ビニルエイコシレートに由来する構成単位、n-ビニルドコシレートに由来する構成単位、n-テトラデシルビニルエーテルに由来する構成単位、n-ヘキサデシルビニルエーテルに由来する構成単位、n-オクタデシルビニルエーテルに由来する構成単位、n-エイコシルビニルエーテルに由来する構成単位、及びn-ドコシルビニルエーテルに由来する構成単位が挙げられる。
【0090】
変性樹脂は、2種類以上の前記構成単位(B)を有していてもよく、例えば、n-エイコシルアクリレートに由来する構成単位と、n-オクタデシルアクリレートに由来する構成単位とを有する重合体であってもよい。
【0091】
変性樹脂は、成形加工性及び成形体としたときの形状保持性の観点から、エチレンに由来する構成単位(A)を有する重合体であることが好ましい。
【0092】
変性樹脂は、好ましくは、式(1)で示される構成単位(B)と、エチレンに由来する構成単位(A)とを有する重合体である。
【0093】
変性樹脂は、上記式(2)で示される構成単位(C)を有していてもよい。
【0094】
変性樹脂は、2種類以上の前記構成単位(C)を有していてもよく、例えば、メチルアクリレートに由来する構成単位と、エチルアクリレートに由来する構成単位と、グリシジルメタクリレートに由来する構成単位とを有する重合体であってもよい。
【0095】
変性樹脂は、好ましくは、式(1)で示される構成単位(B)を有する重合体である。
【0096】
式(1)で示される構成単位(B)を有する重合体としては、例えば、
前記構成単位(B)からなる重合体、
前記構成単位(B)と前記構成単位(A)とを有する重合体、
前記構成単位(B)と前記構成単位(C)とを有する重合体、及び
前記構成単位(B)と前記構成単位(A)と前記構成単位(C)とを有する重合体、が挙げられる。
【0097】
前記構成単位(B)からなる重合体としては、例えば、
Rが水素原子であり、L1、L2、及びL3が単結合であり、L6が炭素原子数14以上30以下のアルキル基である式(1)で示される構成単位(B)からなる重合体、並びに、
Rが水素原子又はメチル基であり、L1が-CO-O-であり、L2及びL3が単結合であり、L6が炭素原子数14以上30以下のアルキル基である式(1)で示される構成単位(B)からなる重合体、が挙げられる。
【0098】
前記構成単位(B)と前記構成単位(A)とを有する重合体としては、例えば、
Rが水素原子であり、L1、L2、及びL3が単結合であり、L6が炭素原子数14以上30以下のアルキル基である式(1)で示される構成単位(B)と、前記構成単位(A)とを有し、該重合体に含まれる全ての構成単位の合計数100%に対して、前記構成単位(A)と前記構成単位(B)の合計数が90%以上である重合体、並びに
Rが水素原子又はメチル基であり、L1が-CO-O-であり、L2及びL3が単結合であり、L6が炭素原子数14以上30以下のアルキル基である式(1)で示される構成単位(B)と、構成単位(A)とを有し、さらに前記構成単位(C)を有してもよい重合体であって、該重合体に含まれる全ての構成単位の合計数100%に対して、前記構成単位(A)と前記構成単位(B)の合計数が90%以上である重合体が挙げられる。
【0099】
変性樹脂は、ΔHを大きくするという観点から、前記構成単位(B)と前記構成単位(A)の合計数100%に対して、前記構成単位(B)の数が50%より多く80%以下である重合体であってもよい。
【0100】
変性樹脂は、成形加工性の観点から、前記構成単位(B)と前記構成単位(A)の合計数100%に対して、前記構成単位(B)の数が10%以上50%以下である重合体であってもよい。
【0101】
前記構成単位(B)と前記構成単位(C)とを有する重合体としては、例えば、
Rが水素原子又はメチル基であり、L1が-CO-O-であり、L2及びL3が単結合であり、L6が炭素原子数14以上30以下のアルキル基である式(1)で示される構成単位(B)と、Rが水素原子又はメチル基であり、L1が-CO-O-であり、L4がメチレン基であり、L5が水素原子である式(2)で示される構成単位(C)とを有する重合体が挙げられる。この場合、該重合体に含まれる前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数100%に対して、前記構成単位(B)の数が80%以上である重合体が好ましい。
【0102】
上記変性樹脂において、前記構成単位(A)と前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数100%に対して、前記構成単位(A)の数は、例えば0%以上99%以下であり、前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数は、例えば1%以上100%以下であり、前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数100%に対して、前記構成単位(B)の数は、例えば1%以上100%以下であり、前記構成単位(C)の数は、例えば0%以上99%以下であることができる。
【0103】
上記変性樹脂において、前記構成単位(A)の数は、成形体としたときの形状保持性の観点から、前記構成単位(A)と前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数100%に対して、好ましくは70%以上99%以下であり、より好ましくは80%以上97.5%以下であり、さらに好ましくは83%以上92.5%以下である。上記変性樹脂において、前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数は、成形体としたときの形状保持性の観点から、前記構成単位(A)と前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数100%に対して、好ましくは1%以上30%以下であり、より好ましくは2.5%以上20%以下であり、さらに好ましくは7.5%以上17%以下である。
【0104】
上記変性樹脂において、前記構成単位(B)の数は、前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数100%に対して、例えば1%以上100%以下であることができる。この数は、蓄熱性能の観点から、例えば、60%以上100%以下であってもよく、80%以上100%以下であってもよい。
【0105】
上記変性樹脂において、前記構成単位(C)の数は、前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数100%に対して、例えば0%以上99%以下であることができる。この数は、蓄熱性能の観点から、例えば、0%以上40%以下であってもよく、0%以上20%以下であってもよい。
【0106】
前記構成単位(A)の数、前記構成単位(B)の数、及び前記構成単位(C)の数は、周知の方法により測定された13C核磁気共鳴スペクトル(以下、13C-NMRスペクトル)又は1H核磁気共鳴スペクトル(以下、1H-NMRスペクトル)の各構成単位に帰属されるシグナルの積分値から求めることができる。
【0107】
変性樹脂が、上記式(2)で示される構成単位(C)を有し、エチレンに由来する構成単位(A)を有してもよい重合体と、少なくとも1種の化合物(α)とを反応させる方法により製造されたものである場合は、前記構成単位(A)の数、前記構成単位(B)の数、及び前記構成単位(C)の数は、例えば以下の方法により求められる。
【0108】
熱可塑性樹脂(2)がエチレンに由来する構成単位(A)を含む場合は、まず、熱可塑性樹脂(2)に含まれる前記構成単位(A)及び前記構成単位(C)の数を求める。13C-NMRスペクトルから求める場合は、例えば該スペクトルから前記構成単位(A)及び前記構成単位(C)のダイアッド(AA、AC、CC)の数を求め、下式に代入することにより、前記構成単位(A)及び前記構成単位(C)の数を求める。なお、AAは、構成単位(A)-構成単位(A)ダイアッド、ACは、構成単位(A)-構成単位(C)ダイアッド、CCは、構成単位(C)-構成単位(C)ダイアッドである。
【0109】
構成単位(A)の数=100-構成単位(C)の数
構成単位(C)の数=100×(AC/2+CC)/(AA+AC+CC)
熱可塑性樹脂(2)に含まれる前記構成単位(C)と、上記化合物(α)とが反応することにより、変性樹脂における前記構成単位(B)が形成されるので、前記反応による前記構成単位(C)の転化率を以下の方法により求める。
【0110】
熱可塑性樹脂(2)の前記構成単位(C)の側鎖に含まれる特定の炭素に帰属されるシグナルの積分値(以下、積分値Y)と、変性樹脂の構成単位(B)の側鎖に含まれる特定の炭素に帰属されるシグナルの積分値(以下、積分値Z)を下式に代入し転化率を求める。
【0111】
転化率=Z/(Y+Z)
熱可塑性樹脂(2)と化合物(α)との反応では、熱可塑性樹脂(2)に含まれる前記構成単位(A)は変化しないため、変性樹脂に含まれる構成単位(A)の数と熱可塑性樹脂(2)に含まれる前記構成単位(A)の数は同じとする。変性樹脂に含まれる構成単位(B)の数は、熱可塑性樹脂(2)に含まれる構成単位(C)の数と前記転化率の積として求められる。変性樹脂に含まれる構成単位(C)の数は、熱可塑性樹脂(2)に含まれる構成単位(C)の数と変性樹脂に含まれる構成単位(B)の数の差として求められる。
【0112】
以上説明した本実施形態の方法は、熱可塑性樹脂(2)と分子量2000以下の側鎖変性材料(1)とから変性樹脂を得る、変性樹脂の製造方法であって、下記工程A~Cを含む。このような方法によれば、安定的に短時間で変性樹脂を製造できる。
工程A:反応器に、側鎖変性材料(1)を供給する工程
工程B:工程Aの後、側鎖変性材料(1)が流動できる状態において、前記反応器に熱可塑性樹脂(2)を供給する工程
工程C:工程Bの後、熱可塑性樹脂(2)の側鎖を側鎖変性材料(1)により変性する工程
【0113】
上記方法において、工程Cは、減圧下で行われることができる。これにより、変性樹脂の製造時間を更に短縮し得る。
【0114】
上記方法において、工程Cは、工程Cで生成される反応副生物を排出する工程を含むことができる。これにより、運転安定性が更に向上し、変性樹脂の製造時間を更に短縮し得る。
【0115】
上記方法において、側鎖変性材料(1)及び熱可塑性樹脂(2)の充填率は、前記反応器の公称容積の80%以下であることができる。これにより、運転安定性が更に向上し、変性樹脂の製造時間を更に短縮し得る。
【0116】
上記方法において、側鎖変性材料(1)及び熱可塑性樹脂(2)の合計供給量は、前記反応器に供給される成分の全質量に対して、90質量%以上であることができる。これにより、生産性が更に向上し得る。
【0117】
上記方法において、側鎖変性材料(1)及び熱可塑性樹脂(2)の合計供給量100質量部に対して、側鎖変性材料(1)の供給量は30質量部以上70質量部以下であり、熱可塑性樹脂(2)の供給量は30質量部以上70質量部以下であることができる。これにより、変性樹脂の製造時間を更に短縮し得る。
【0118】
上記方法において、工程Cの後、前記反応器内の成分は、前記反応器の底から排出することが好ましい。これにより、得られた変性樹脂を効率的に回収できる。
【0119】
上記方法において、工程Cは、熱可塑性樹脂(2)と側鎖変性材料(1)とを180℃以下の温度で反応させる工程を含むことができる。これにより、熱可塑性樹脂(2)の劣化や側鎖変性材料(1)の反応器外への飛散を抑制しつつ、変性樹脂の製造時間を更に短縮し得る。
【0120】
上記方法において、前記反応器は、撹拌機を備え、前記撹拌機は大型翼であることできる。これにより、運転安定性が更に向上する。
【0121】
上記方法において、熱可塑性樹脂(2)は、側鎖にエステル結合を有することができる。これにより、側鎖変性を制御しやすく、変性樹脂を容易に製造し得る。
【0122】
上記方法において、熱可塑性樹脂(2)は、エチレンに由来する構成単位を有することができる。これにより、成形加工性及び成形体としたときの形状保持性に優れる変性樹脂を容易に製造し得る。
【0123】
上記方法において、側鎖変性材料(1)は、分子中にヒドロキシ基を1つ有することができる。これにより、工業的に取り扱いやすい変性樹脂を容易に製造し得る。
【0124】
上記方法において、工程Cの前記変性は、エステル交換反応により行われることができる。これにより、側鎖変性を制御しやすく、変性樹脂を容易に製造し得る。
【0125】
上記方法において、前記変性樹脂は、下記式(1)で示される構成単位(B)を含む重合体であることができる。このような変性樹脂は、蓄熱性能に優れる。
【化4】
(式(1)中、
Rは、水素原子又はメチル基を表し、
L
1は、単結合、―CO―O―、―O―CO―、又は―O―を表し、
L
2は、単結合、―CH
2―、―CH
2―CH
2―、―CH
2―CH
2―CH
2―、―CH
2―CH(OH)―CH
2―、又は―CH
2―CH(CH
2OH)―を表し、
L
3は、単結合、―CO―O―、―O―CO―、―O―、―CO―NH―、―NH―CO―、―CO―NH―CO―、―NH―CO―NH―、―NH―、又は―N(CH
3)―を表し、
L
6は炭素数14以上30以下のアルキル基を表し、
L
1、L
2、及びL
3の化学構造の説明における横書きの化学式の各々は、その左側が式(1)の上側、その右側が式(1)の下側に対応する。)
【実施例0126】
以下、実施例及び比較例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0127】
[I]熱可塑性樹脂(2)(エチレン-メチルアクリレート共重合体)に含まれるエチレンに由来する構成単位(A)、及びメチルアクリレートに由来する構成単位(C)の量(数[%]及び質量[質量%])
核磁気共鳴分光器(NMR)を用い、以下に示す測定条件にて核磁気共鳴スペクトル(以下、NMRスペクトル)を測定した。
【0128】
<炭素核磁気共鳴(13C-NMR)測定条件>
装置:ブルカー・バイオスピン(株)製 AVANCE III 600HD
測定プローブ:10mmクライオプローブ
測定溶媒:1,2-ジクロロベンゼン/1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2=85/15(容積比)の混合液
試料濃度:100mg/mL
測定温度:135℃
測定方法:プロトンデカップリング法
積算回数:256回
パルス幅:45度
パルス繰り返し時間:4秒
測定基準:テトラメチルシラン
【0129】
測定結果から、a1、b1、c1、d1、及びe1の範囲の積分値を求め、下記式から構成単位(A)及び構成単位(C)のダイアッド(AA、AC、CC)の数を算出した。
a1:29.0-31.0ppm
b1:32.5-33.2ppm
c1:42.0-42.3ppm
d1:43.5-44.5ppm
e1:45.5-46.5ppm
AA=a1/4+b1/2
AC=e1
CC=c1+d1
ここで、AAは、構成単位(A)-構成単位(A)ダイアッド、ACは、構成単位(A)-構成単位(C)ダイアッド、CCは、構成単位(C)-構成単位(C)ダイアッドである。
【0130】
次いで、下記式から、構成単位(A)及び構成単位(C)の量(数[%]及び質量[質量%])を求めた。
構成単位(A)の数=100-構成単位(C)の数
構成単位(C)の数=100×(AC/2+CC)/(AA+AC+CC)
構成単位(A)の質量%=(構成単位(A)の数×構成単位(A)の分子量)/(構成単位(A)の数×構成単位(A)の分子量+構成単位(C)の数×構成単位(C)の分子量)
構成単位(C)の質量%=(構成単位(C)の数×構成単位(C)の分子量)/(構成単位(A)の数×構成単位(A)の分子量+構成単位(C)の数×構成単位(C)の分子量)
【0131】
[II]変性樹脂に含まれるエチレンに由来する構成単位(A)、式(1)で示される構成単位(B)、及びメチルアクリレートに由来する構成単位(C)の量(数[%]及び質量[質量%])
<メチルアクリレートに由来する構成単位(C)の、式(1)で示される構成単位(B)への転化率XB>(単位:%)
熱可塑性樹脂(2)に含まれる構成単位(C)と、化合物(α)とが反応することにより、変性樹脂の構成単位(B)が形成されるため、以下の方法により構成単位(C)の構成単位(B)への転化率XBを求めた。
【0132】
上記の炭素核磁気共鳴(13C-NMR)測定条件と同様の条件で、変性樹脂のNMRスペクトルを測定し、測定結果から、構成単位(C)の側鎖に含まれる特定の炭素に帰属されるシグナル(範囲f1)の積分値と、構成単位(B)の側鎖に含まれる特定の炭素に帰属されるシグナル(範囲g1)の積分値を求め、下記式から転化率XBを算出した。
f1:50.5-51.2ppm
g1:63.9-64.8ppm
転化率(XB)=100×g1/(f1+g1)
【0133】
<変性樹脂に含まれるエチレンに由来する構成単位(A)、式(1)で示される構成単位(B)、及びメチルアクリレートに由来する構成単位(C)の量(数[%]及び質量[質量%])>
熱可塑性樹脂(2)と化合物(α)との反応では、熱可塑性樹脂(2)に含まれる構成単位(A)は変化しないため、変性樹脂に含まれる構成単位(A)の数と熱可塑性樹脂(2)に含まれる構成単位(A)の数は同じとした。
変性樹脂に含まれる構成単位(B)の数は、熱可塑性樹脂(2)に含まれる構成単位(C)の数と転化率XBの積として求めた。
変性樹脂に含まれる構成単位(C)の数は、熱可塑性樹脂(2)に含まれる構成単位(C)の数と変性樹脂に含まれる構成単位(B)の数の差として求めた。
【0134】
変性樹脂に含まれる構成単位(A)、構成単位(B)、及び構成単位(C)の含有量(質量%)は、それぞれ、以下の式より算出した。
構成単位(A)の質量%=(構成単位(A)の数×構成単位(A)の分子量)/(構成単位(A)の数×構成単位(A)の分子量+構成単位(B)の数×構成単位(B)の分子量+構成単位(C)の数×構成単位(C)の分子量)
構成単位(B)の質量%=(構成単位(B)の数×構成単位(B)の分子量)/(構成単位(A)の数×構成単位(A)の分子量+構成単位(B)の数×構成単位(B)の分子量+構成単位(C)の数×構成単位(C)の分子量)
構成単位(C)の質量%=(構成単位(C)の数×構成単位(C)の分子量)/(構成単位(A)の数×構成単位(A)の分子量+構成単位(B)の数×構成単位(B)の分子量+構成単位(C)の数×構成単位(C)の分子量)
【0135】
[III]未反応のC14~30のアルキル基を有する化合物(側鎖変性材料(1))の含有量(質量%)
実施例及び比較例において得られる生成物は、変性樹脂と未反応のC14~30のアルキル基を有する化合物との混合物である。生成物中に含まれる未反応のC14~30のアルキル基を有する化合物の含有量はガスクロマトグラフィー(GC)を用いて以下の方法により測定した。該未反応の化合物の含有量は、変性樹脂と未反応の化合物の合計の質量を100質量%としたときの値である。
【0136】
[GC測定条件]
装置:島津製作所製 GC-2030
カラム:DB-1(30m、0.25mmφ、1.0μm)
カラム温度:60℃で5分保持した後、25℃/分で280℃へ昇温し、280℃で10分保持した後、10℃/分で300℃まで昇温する。
気化室/検出器温度:300℃/300℃(FID)
キャリアガス:ヘリウム
圧力:150kPa
全流量:107.6mL/分
カラム流量:2.05mL/分
パージ流量:3.0mL/分
線速度:42.8cm/秒
注入方式/スプリット比:スプリット注入/1:50
注入量:1μL
【0137】
(1)検量線作成
[内部標準液の作製]
40gのアニソールに、1,4-ジオキサンを0.2g及びオクタデカンを0.2g加え、溶解させ内部標準液を作製した。なお、1-ヘキサデカノール及び1-オクタデカノールの内部標準物質として、オクタデカンを用いた。
[検量線用標準液の作製]
標準液調製用の溶液(1)~(4)を以下の手順で作製した。測定対象物(1-ヘキサデカノール及び1-オクタデカノール)各0.1gと1,2-ジクロロベンゼン9.8gとを混合して、溶液(4)を作製した。溶液(4)を、1,2-ジクロロベンゼンにて、8倍、4倍又は2倍に希釈して、溶液(1)~(3)をそれぞれ作製した。その後、標準液調製用の各溶液0.1gと内部標準液0.5gと1,2-ジクロロベンゼン16gとを混合して、検量線用標準液を4水準作製した。
【0138】
[GC測定]
検量線作成用の標準溶液を、前項のGC測定条件で測定し、縦軸を測定対象物と内部標準物質とのGC面積比、横軸を測定対象物と内部標準物質との質量比とした検量線を作成し、該検量線の傾きaを求めた。
【0139】
(2)試料(生成物)中の測定対象物(未反応のC14~30のアルキル基を有する化合物)の含有量測定
[溶液調製]
16gの1,2-ジクロロベンゼンに、試料0.1g及び内部標準液0.5gを加え、80℃にて試料を完全に溶解させ、試料溶液を得た。
【0140】
[GC測定]
試料溶液を前項のGC測定条件で測定し、試料中の測定対象物の含量PSを下式に従って求めた。
PS:試料中の測定対象物の含量(質量%)
WS:試料の質量(mg)
WIS:内部標準物質(IS)の質量(mg)
AS:測定対象物のピーク面積カウント数
AIS:内部標準物質(IS)のピーク面積カウント数
a:測定対象物の検量線の傾き
【数1】
【0141】
[IV]原料の充填率
原料の充填率[%]は下式で算出した。原料とは側鎖変性材料(1)及び熱可塑性樹脂(2)であり、原料の合計体積[m3]は側鎖変性材料(1)の体積[m3]と熱可塑性樹脂(2)の体積[m3]とを足し合わせた値である。各原料の体積[m3]は、各原料の使用量[kg]を20℃から25℃の範囲における密度[kg/m3]で割ることで算出した。
(原料の充填率)[%]=100×(原料の合計体積)[m3]/(反応釜の公称容積)[m3]
【0142】
<熱可塑性樹脂(2)>
下記エチレン―メチルアクリレート共重合体は、例えば、オートクレーブ式反応器にて、反応温度195℃、反応圧力160MPaで、ラジカル重合開始剤としてtert-ブチルパーオキシピバレートを用いて、エチレンとメチルアクリレートとを共重合して、エチレン-メチルアクリレート共重合体にて製造される。
A-1:エチレン―メチルアクリレート共重合体[住友化学株式会社製]
メチルアクリレート含量 36.7質量%,15.9mol%
MFR 34g/10分 (190℃、2.16kgf)
密度 968kg/m3
A-2:エチレン―メチルアクリレート共重合体[住友化学株式会社製]
メチルアクリレート含量 31.4質量%,13.0mol%
MFR 38g/10分(190℃、2.16kgf)
密度 データなし(充填率の計算にはA-1の密度968kg/m3を用いた)
【0143】
<側鎖変性材料(1)>
B-1:1-ヘキサデカノール[GODREJ製]
密度 818 kg/m3
B-2:1-オクタデカノール[GODREJ製]
密度 812 kg/m3
【0144】
<触媒>
C-1:オルトチタン酸テトライソプロピル[日本曹達株式会社製]
C-2:オルトチタン酸テトラオクタデシル[マツモトファインケミカル株式会社製]
【0145】
<触媒供給配管の洗浄溶媒>
D-1:2-プロパノール[富士フィルム和光純薬株式会社製]
【0146】
<変性樹脂(蓄熱重合体)の製造>
実施例1:
図1に示す製造設備100を用いて下記手順で熱可塑性樹脂(2)の側鎖変性を行った。
【0147】
製造設備100は、公称容積が1.25m3でありマックスブレンド翼(住友重機械プロセス機器社製、商品名:MAXBLEND)を備えた反応釜10、真空ポンプ3、及び反応釜10と真空ポンプ3との間に反応副生物の冷却トラップ2を有し、反応釜10、冷却トラップ2及び真空ポンプ3が、側鎖変性材料の融点以上の温度に加温した配管で接続されている。
【0148】
[手順]
窒素置換した反応釜内にB-1を109kg、B-2を225kg投入し、ジャケット温度175℃以下、最低圧力2Torrの条件で撹拌しながらB-1及びB-2の溶融及び乾燥を行い、0.5時間後に目視でB-1及びB-2が溶融していることを確認した。続いて、窒素で大気圧に復圧し、B-1及びB-2が溶融している状態において、A-1を358kg投入した後、ジャケット温度175℃以下、最低圧力0.6Torrの条件で撹拌しながらサンプル温度が130℃以上になるまで、原料の溶融混合及び乾燥を行った。混合1時間後の時点で原料は完全溶融しており、原料温度は134℃であった。実質の原料混合時間は、B-1及びB-2の溶解に0.5時間、その後のA-1との混合に1時間であり、合計1.5時間であった。
【0149】
続いて、窒素で大気圧に復圧し、C-1を2.13kg圧入した後、触媒供給配管中のC-1残量の洗浄のため脱水したD-1を0.72kg圧入した。その後、内温が145℃以上150℃以下となるようにジャケット温度や撹拌翼の回転数を調整し、GC測定によるB-1とB-2との合計量が1.5質量%未満となるまで減圧反応を行った。減圧反応開始時点のサンプル温度は134℃、反応中の最高温度は149℃であった。圧力は発泡による液面上昇に注意しながら徐々に減圧し、反応中の最低圧力は0.8Torrであった。減圧反応4時間でB-1とB-2との合計量が1.1質量%であることを確認した。なお、減圧反応2時間目のタイミングで、反応副生物の冷却トラップ2に溜まった物質を配管L21から系外に排出する操作を実施した。
【0150】
続いて、反応釜内を窒素で大気圧よりも高圧状態とし、反応釜の下部よりベール形状でサンプルの抜き出しを行った。得られたエチレン-オクタデシルアクリレート-ヘキサデシルアクリレート-メチルアクリレートの構成単位数は下記のとおりであった。
構成単位(A):84.1mol%
構成単位(B):13.2mol%
構成単位(C):2.7mol%
【0151】
連続して2バッチ目の生産実施したところ、減圧反応4時間目でB-1とB-2の合計量は1.2質量%となり、1バッチ目と同等の減圧反応時間となった。
【0152】
実施例2:
実施例1と同様の設備を用い、下記手順で側鎖変性を実施した。
【0153】
[手順]
窒素置換した反応釜内にB-1を108kg、B-2を224kg投入し、ジャケット温度175℃以下、最低圧力3Torrの条件で撹拌しながらB-1及びB-2の溶融及び乾燥を行い、0.9時間後に目視でB-1及びB-2が溶融していることを確認した。続いて、窒素で大気圧に復圧し、B-1及びB-2が溶融している状態において、A-1を359kg投入した後、ジャケット温度175℃以下、最低圧力3Torrの条件で撹拌しながらサンプル温度が130℃以上になるまで、原料の溶融混合及び乾燥を行った。混合1.5時間後の時点で原料は完全溶融しており、原料温度は130℃であった。実質の原料混合時間は、B-1及びB-2の溶解に0.9時間、その後のA-1との混合に1.5時間であり、合計2.4時間であった。
【0154】
続いて、窒素で大気圧に復圧し、C-1を2.12kg圧入した後、触媒供給配管中のC-1残量の洗浄のため脱水したD-1を0.72kg圧入した。その後、内温が145℃以上150℃以下となるようにジャケット温度や撹拌翼の回転数を調整し、GC測定によるB-1とB-2との合計量が1.5質量%未満となるまで減圧反応を行った。減圧反応開始時点のサンプル温度は133℃、反応中の最高温度は150℃であった。圧力は発泡による液面上昇に注意しながら徐々に減圧し、反応中の最低圧力は3Torrであった。減圧反応4時間でB-1とB-2との合計量が0.9質量%であることを確認した。なお、減圧反応2時間目のタイミングで、反応副生物の冷却トラップ2に溜まった物質を系外へ排出する操作を実施せずに減圧反応を継続した。溜まった物質は低圧力で沸騰し、真空ポンプ3側へ排出されるが、その際に冷却トラップ2に存在していた微量のB-1及びB-2も同伴し、真空ポンプ3のストレーナーや真空ポンプ3内部に固着し、減圧反応時の圧力低下を阻害した。
【0155】
続いて、反応釜内を窒素で大気圧よりも高圧状態とし、反応釜の下部よりベール状で製品の抜き出しを行った。得られたエチレン-オクタデシルアクリレート-ヘキサデシルアクリレート-メチルアクリレートの構成単位数は下記のとおりであった。
構成単位(A):84.1mol%
構成単位(B):13.1mol%
構成単位(C):2.8mol%
【0156】
連続して2バッチ目の生産実施したところ、減圧反応中に圧力が下がらない状態(圧力調整不良)となった。減圧反応4時間目でB-1とB-2との合計量は2.2質量%となり、1バッチ目に比べ反応が遅延した。
【0157】
実施例3:
実施例1と同様の設備を用い、下記手順で側鎖変性を実施した。
【0158】
[手順]
窒素置換した反応釜内にB-1を418kg投入し、ジャケット温度175℃以下、最低圧力2Torrの条件で撹拌しながらB-1の溶融及び乾燥を行い、0.5時間後に目視でB-1が溶融していることを確認した。続いて、窒素で大気圧に復圧し、B-1が溶融している状態において、A-1を483kg投入した後、ジャケット温度175℃以下、最低圧力2Torrの条件で撹拌しながらサンプル温度が130℃以上になるまで、原料の溶融混合及び乾燥を行った。混合2時間後の時点で原料は完全溶融しており、原料温度は132℃であった。実質の原料混合時間は、B-1の溶解に0.5時間、その後のA-1との混合に2時間であり、合計2.5時間であった。
【0159】
続いて、窒素で大気圧に復圧し、C-1を所定量の2.88kgを圧入しようとしたところ、1.98kgを圧入した時点で発泡による液面上昇が発生し、減圧が困難な状況になった。触媒供給配管中のC-1残量の洗浄のため脱水したD-1を0.96kg圧入した後、加圧状態から常圧状態になるまで4.5時間を要した。常圧状態になった後、C-1を追加で0.90kg、D-1を0.50kg圧入し、減圧反応を開始した。内温が145℃以上150℃以下となるようにジャケット温度や撹拌翼の回転数を調整し、GC測定によるB-1の量が1.5質量%未満となるまで減圧反応を行った。減圧反応開始時点のサンプル温度は136℃、反応中の最高温度は150℃であった。圧力は発泡による液面上昇に注意しながら徐々に減圧し、反応中の最低圧力は0.6Torrであった。減圧反応9.5時間でB-1の量が1.0質量%であることを確認した。触媒投入から反応終了までの所要時間は、合計で14時間であった。
【0160】
続いて、反応釜内を窒素で大気圧よりも高圧状態とし、反応釜の下部よりベール状で製品の抜き出しを行った。得られたエチレン-ヘキサデシルアクリレート-メチルアクリレートの構成単位数は下記のとおりであった。
構成単位(A):84.1mol%
構成単位(B):13.2mol%
構成単位(C):2.7mol%
【0161】
比較例1:
実施例1と同様の設備を用い、下記手順で側鎖変性を実施した。
【0162】
[手順]
窒素置換した反応釜内にA-2を243kg、B-1を179kg連続で投入し、ジャケット温度175℃以下、最低圧力1Torrの条件で撹拌しながらサンプル温度が130℃以上になるまで、原料の溶融混合及び乾燥を行った。A-2及びB-1の投入後、約1時間は撹拌負荷が大きく撹拌困難な状態であった。原料投入7時間後の時点で原料は完全溶融しており、原料温度は130℃であった。続いて、窒素で大気圧に復圧し、反応釜上部よりC-2を1.01kg投入し減圧反応を開始した。内温が135℃前後となるようにジャケット温度や撹拌翼の回転数を調整し、GC測定によるB-1の量が1.5質量%未満となるまで減圧反応を行った。減圧反応8時間目にC-2を1.01kg追加添加した。減圧反応開始時点のサンプル温度は130℃、反応中の最高温度は136℃であった。圧力は発泡による液面上昇に注意しながら徐々に減圧し、反応中の最低圧力は3Torrであった。減圧反応12時間でB-1の量が1.0質量%であることを確認した。
【0163】
実施例及び比較例の条件及び結果のまとめを表1に示す。
【0164】
【0165】
表中、「(1)→(2)」との記載は、側鎖変性材料(1)を流動できる状態にした後に、熱可塑性樹脂(2)を加えたことを示す。「(1)+(2)」は、流動できる状態にする操作をせずに、側鎖変性材料(1)と熱可塑性樹脂(2)とを混合したことを示す。
【0166】
実施例に係る方法は、比較例に係る方法と比較して、安定的に短時間で変性樹脂を製造することができることがわかる。