(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099523
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20250626BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20250626BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20250626BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/013
C08L63/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216233
(22)【出願日】2023-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 貴大
(72)【発明者】
【氏名】山浦 格
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CD001
4J002CD041
4J002CD051
4J002CD061
4J002DE076
4J002DE096
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE236
4J002DF016
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DK006
4J002DL006
4J002FD016
4J002GJ02
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】溶融時の流動特性に優れる樹脂組成物及び樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂成分及び無機粒子を含み、130℃、せん断速度10S
-1で測定したときの粘度V
10を130℃、せん断速度1S
-1で測定したときの粘度V
1で除して得られる値V
10/V
1が0.7以上である、樹脂組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分及び無機粒子を含み、130℃、せん断速度10S-1で測定したときの粘度V10を130℃、せん断速度1S-1で測定したときの粘度V1で除して得られる値V10/V1が0.7以上である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機粒子の最大粒子径は9.0μm以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機粒子の含有率は樹脂組成物全体の70質量%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂成分はエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
常温常圧下で固体である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記無機粒子の少なくとも一部と前記樹脂成分の少なくとも一部とを含む造粒物を準備することを含む、樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物及び樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ等の素子の周囲や素子と基板との間を封止材と呼ばれる絶縁性の材料で封止してなる電子部品装置は、種々の電子機器類に使用されている。封止材としては、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂とシリカのような無機粒子とを含む樹脂組成物が広く使用されている。
封止材として樹脂組成物を用いた半導体パッケージの製造方法のひとつとして、常温で固体の樹脂組成物を加熱して溶融させ、溶融した状態の樹脂組成物を金型内に注入して硬化させる方法(トランスファー成形法)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トランスファー成形法で半導体パッケージを製造する場合、樹脂組成物が注入される金型内部の構造に起因して樹脂組成物に加わるせん断速度にばらつきが生じる場合がある。
封止材として使用される樹脂組成物は一般にせん断速度に対する依存性を示し、せん断速度の上昇に伴って粘度が低下する傾向にある。粘度変化のせん断速度に対する依存性が大きい樹脂組成物を金型内部に注入すると、樹脂組成物の流動状態にばらつきが生じやすい。金型内部における樹脂組成物の流動状態のばらつきは、樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の外観異常(フローマーク)の原因となるおそれがある。
かかる状況に鑑み、本開示は、溶融時の流動特性に優れる樹脂組成物及び樹脂組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>樹脂成分及び無機粒子を含み、130℃、せん断速度10S-1で測定したときの粘度V10を130℃、せん断速度1S-1で測定したときの粘度V1で除して得られる値V10/V1が0.7以上である、樹脂組成物。
<2>前記無機粒子の最大粒子径は9.0μm以下である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記無機粒子の含有率は樹脂組成物全体の70質量%以上である、<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記樹脂成分はエポキシ樹脂を含む、<1>~<3>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<5>常温常圧下で固体である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<6><1>~<5>のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
前記無機粒子の少なくとも一部と前記樹脂成分の少なくとも一部とを含む造粒物を準備することを含む、樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、溶融時の流動特性に優れる樹脂組成物及び樹脂組成物の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例で得られた樹脂組成物の130℃での粘度測定結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0009】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において、固形、固体、液状、及び液体とは、特に断らない限り、常温常圧下(例えば、25℃、大気圧下)での性状をいう。
【0010】
<樹脂組成物>
本開示の樹脂組成物は、樹脂成分及び無機粒子を含み、130℃、せん断速度10S-1で測定したときの粘度V10を130℃、せん断速度1S-1で測定したときの粘度V1で除して得られる値V10/V1が0.7以上である。
【0011】
V10/V1は、樹脂組成物の粘度変化のせん断速度に対する依存性の度合いを示し、V10/V1が大きいほど、せん断速度の上昇に伴う樹脂組成物の粘度の低下の度合いが小さい(すなわち、樹脂組成物の粘度変化のせん断速度に対する依存性が小さい)。
本開示の樹脂組成物はV10/V1が0.7以上である。このため、本開示の樹脂組成物は金型内に注入した際の流動状態のばらつきが小さく、優れた流動特性を示す。
【0012】
樹脂組成物のV10/V1は、0.75以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上であることが更に好ましい。
樹脂組成物のV10/V1の上限値は特に制限されず、例えば、1.1以下、又は1.05以下であってもよい。
【0013】
樹脂組成物は、ダイラタンシー(せん断速度が上昇すると粘度が上昇する現象)を発現するものであっても、ダイラタンシーを発現しないものであってもよい。
樹脂組成物はせん断速度が上昇すると粘度が低下する傾向を一般的に示すが、ダイラタンシーの発現がせん断速度の上昇に伴う粘度の低下の抑制に寄与する場合がある。
樹脂組成物がダイラタンシーを発現する場合、せん断速度10S-1から100S-1の範囲内においてダイラタンシーを発現してもよい。
【0014】
樹脂組成物の130℃におけるV10及びV1の値は特に制限されず、樹脂組成物の用途等に応じて選択できる。
例えば、樹脂組成物の130℃におけるV10及びV1の値はそれぞれ独立に2000Pa・s以下、1500Pa・s以下、又は1000Pa・s以下であってもよい。
例えば、樹脂組成物の130℃におけるV10及びV1の値はそれぞれ独立に10Pa・s以上、20Pa・s以上、又は50Pa・s以上であってもよい。
【0015】
本開示において、樹脂組成物の130℃における粘度は回転型レオメーターを用いて測定される。
【0016】
以下、本開示の樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
樹脂組成物に含まれる樹脂成分の種類は特に制限されず、樹脂組成物の用途等に応じて選択できる。
例えば、樹脂組成物を電子部品装置の封止材として使用する場合は、樹脂組成物は樹脂成分として熱硬化性樹脂と硬化剤とを含んでもよい。
【0017】
(熱硬化性樹脂)
樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂の種類は特に制限されない。熱硬化性樹脂として具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。本開示では、エポキシ基を含有するアクリル樹脂等の、熱可塑性と熱硬化性の両方の性質を示すものは「熱硬化性樹脂」に含めるものとする。熱硬化性樹脂は、固体であっても液体であってもよく、固体であることが好ましい。熱硬化性樹脂は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂として具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものであるノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等);上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂;上記フェノール化合物及びナフトール化合物と、アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものである共重合型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のジグリシジルエーテルであるジフェニルメタン型エポキシ樹脂;アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン系フェノール化合物のジグリシジルエーテルであるスチルベン型エポキシ樹脂;ビスフェノールS等のジグリシジルエーテルである硫黄原子含有型エポキシ樹脂;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸化合物のグリシジルエステルであるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アニリン、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したものであるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール化合物の共縮合樹脂をエポキシ化したものであるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;分子内のオレフィン結合をエポキシ化したものであるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるパラキシリレン変性エポキシ樹脂;メタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるメタキシリレン変性エポキシ樹脂;テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるテルペン変性エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルである多環芳香環変性エポキシ樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるナフタレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるアラルキル型エポキシ樹脂;などが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、エポキシ樹脂のエポキシ当量(分子量/エポキシ基数)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性及び電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、100g/eq~1000g/eqであることが好ましく、150g/eq~500g/eqであることがより好ましい。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236:2009に準じた方法で測定される値とする。
【0020】
熱硬化性樹脂が25℃で固体である場合、熱硬化性樹脂の融点又は軟化点は特に制限されない。耐ブロッキング性の観点からは、熱硬化性樹脂の融点又は軟化点は、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。混練による樹脂組成物の増粘を抑制する観点からは、熱硬化性樹脂の融点又は軟化点は、150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることがさらに好ましい。
【0021】
熱硬化性樹脂の含有率は、強度、流動性、耐熱性、成形性等の観点から、樹脂組成物の全質量に対して0.5質量%~50質量%であることが好ましく、2質量%~30質量%であることがより好ましく、2質量%~20質量%であることがさらに好ましい。
【0022】
(硬化剤)
樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と併用する硬化剤を含有してもよい。エポキシ樹脂と併用する硬化剤としては、フェノール硬化剤、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。耐熱性向上の観点からは、硬化剤は、フェノール硬化剤(エポキシ基と反応する官能基としてフェノール性水酸基を含有する硬化剤)が好ましい。硬化剤は、常温常圧下(例えば、25℃、大気圧下)で固体であっても液体であってもよく、固体であることが好ましい。
【0023】
フェノール硬化剤として具体的には、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の多価フェノール化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル等と、から合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジシクロペンタジエンと、から共重合により合成されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂及びジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂;これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂などが挙げられる。フェノール硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量、アミン硬化剤の場合は活性水素当量)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、硬化剤の官能基当量は70g/eq~1000g/eqであることが好ましく、80g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
【0025】
フェノール硬化剤の場合における水酸基当量は、JIS K0070:1992に準拠して測定された水酸基価に基づいて算出された値をいう。また、アミン硬化剤の場合における活性水素当量は、JIS K7237:1995に準拠して測定されたアミン価に基づいて算出された値をいう。
【0026】
硬化剤が固体である場合、その軟化点又は融点は、特に制限されない。硬化剤の軟化点又は融点は、例えば樹脂組成物を封止材用途で用いる場合の成形性と耐リフロー性の観点からは、40℃~180℃であることが好ましく、樹脂組成物の製造時における取扱い性の観点からは、50℃~130℃であることがより好ましい。
【0027】
硬化剤の融点又は軟化点は、エポキシ樹脂の融点又は軟化点と同様にして測定される値とする。
【0028】
熱硬化性樹脂と硬化剤の当量比、すなわち熱硬化性樹脂中の官能基数に対する硬化剤中の官能基数の比(硬化剤中の官能基数/熱硬化性樹脂中の官能基数)は、特に制限されない。それぞれの未反応分を少なく抑える関連からは、熱硬化性樹脂と硬化剤の当量比は0.5~2.0の範囲に設定されることが好ましく、0.6~1.3の範囲に設定されることがより好ましい。成形性の観点からは、熱硬化性樹脂と硬化剤の当量比は0.8~1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0029】
(無機粒子)
樹脂組成物に含まれる無機粒子の材質は特に制限されない。無機粒子の材質として具体的には、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の無機材料が挙げられる。難燃効果を有する無機粒子を用いてもよい。難燃効果を有する無機粒子としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などが挙げられる。無機粒子の中でも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカ等のシリカが好ましく、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。
樹脂組成物に含まれる無機粒子は、1種のみでも2種以上であってもよい。
【0030】
樹脂組成物に含まれる無機粒子の最大粒子径は9.0μm以下であることが好ましい。
無機粒子の最大粒子径が9.0μm以下であると、高せん断速度(例えば、10s-1以上)での粘度の低下が抑制され、V10/V1の値が大きくなる傾向にある。
無機粒子の最大粒子径は9.0μm以下であれば特に制限されず、例えば、8.0μm以下、7.0μm以下、6.0μm以下、5.0μm以下、5.0μm未満、4.5μm以下、4.0μm以下、又は3.5μm以下であってもよい。
【0031】
無機粒子の体積平均粒子径は、特に制限されない。
高せん断速度での粘度の低下を抑制する観点からは、無機粒子の体積平均粒子径は4.0μm以下であることが好ましく、3.5μm以下であることがより好ましく、3.0μm以下であることがさらに好ましい。
無機粒子の凝集を抑制する観点からは、無機粒子の体積平均粒子径は0.1μm以上であることが好ましく、0.15μm以上であることがより好ましく、0.2μm以上であることがさらに好ましい。
無機粒子の体積平均粒子径は、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置により測定された体積基準の粒度分布において、小径側からの累積が50%となるときの粒子径(D50)として測定することができる。
【0032】
無機粒子のBET法による比表面積は、特に制限されない。
高せん断速度での粘度の低下を抑制する観点からは、無機粒子のBET法による比表面積は0.1m2/g以上であることが好ましく、0.5m2/g以上であることがより好ましく、1.0m2/g以上であることがさらに好ましい。
無機粒子の凝集を抑制する観点からは、無機粒子のBET法による比表面積は50m2/g以下であることが好ましく、30m2/g以下であることがより好ましく、20m2/g以下であることがさらに好ましい。
【0033】
BET法による無機粒子の比表面積は、JIS Z 8830:2013に準じて無機粒子の窒素吸着能から測定することができる。
【0034】
無機粒子の画像解析法による比表面積は、特に制限されない。
高せん断速度での粘度の低下を抑制する観点からは、無機粒子の画像解析法による比表面積は0.1m2/g以上であることが好ましく、0.5m2/g以上であることがより好ましく、1.0m2/g以上であることがさらに好ましい。
無機粒子の凝集を抑制する観点からは、無機粒子の画像解析法による比表面積は50m2/g以下であることが好ましく、30m2/g以下であることがより好ましく、20m2/g以下であることがさらに好ましい。
【0035】
画像解析法による無機粒子の比表面積は、電子顕微鏡等を用いて無機粒子の画像を取得し、得られた画像中の粒子が球状であると仮定して計算することができる。
【0036】
無機粒子の形状は特に制限されず、充填性及び金型の摩耗抑制の点からは、球形が好ましい。
【0037】
無機粒子の含有率は特に制限されない。樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数、熱伝導率、弾性率等の特性をより向上させる観点からは、無機粒子の含有率は樹脂組成物全体の30体積%以上であることが好ましく、40体積%以上であることがより好ましく、50体積%以上であることがさらに好ましく、60体積%以上であることが特に好ましく、65体積%以上であることが極めて好ましい。
樹脂組成物の流動性の向上、粘度の低下等の観点からは、無機粒子の含有率は樹脂組成物全体の95体積%以下であることが好ましく、90体積%以下であることが好ましく、85体積%以下であることがより好ましい。
【0038】
樹脂組成物の硬化物中の無機粒子の含有率は、次のようにして測定することができる。まず、硬化物の総質量を測定し、該硬化物を400℃で2時間、次いで700℃で3時間焼成し、樹脂成分等を蒸発させ、残存した無機粒子の質量を測定する。得られた各質量及びそれぞれの比重から体積を算出し、硬化物の総体積に対する無機粒子の体積の割合を得て、無機粒子の含有率とする。
【0039】
(硬化促進剤)
樹脂組成物は、硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤として具体的には、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)等のジアザビシクロアルケン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等の環状アミジン化合物;前記環状アミジン化合物の誘導体;前記環状アミジン化合物又はその誘導体のフェノールノボラック塩;これらの化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;DBUのテトラフェニルボレート塩、DBNのテトラフェニルボレート塩、2-エチル-4-メチルイミダゾールのテトラフェニルボレート塩、N-メチルモルホリンのテトラフェニルボレート塩等の環状アミジニウム化合物;ピリジン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物;前記三級アミン化合物の誘導体;酢酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、リン酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、酢酸テトラエチルアンモニウム、安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム等のアンモニウム塩化合物;エチルホスフィン、フェニルホスフィン等の一級ホスフィン、ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の二級ホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p-トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の三級ホスフィンなどの、有機ホスフィン;前記有機ホスフィンと有機ボロン類との錯体等のホスフィン化合物;前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン、アントラキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と4-ブロモフェノール、3-ブロモフェノール、2-ブロモフェノール、4-クロロフェノール、3-クロロフェノール、2-クロロフェノール、4-ヨウ化フェノール、3-ヨウ化フェノール、2-ヨウ化フェノール、4-ブロモ-2-メチルフェノール、4-ブロモ-3-メチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジメチルフェノール、4-ブロモ-3,5-ジメチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジ-t-ブチルフェノール、4-クロロ-1-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトール、6-ブロモ-2-ナフトール、4-ブロモ-4’-ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる、分子内分極を有する化合物;テトラフェニルホスホニウム等のテトラ置換ホスホニウム、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート等のテトラ置換ホスホニウムのテトラフェニルボレート塩、テトラ置換ホスホニウムとフェノール化合物との塩などの、テトラ置換ホスホニウム化合物;ホスホベタイン化合物;ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物などが挙げられる。硬化促進剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合に特に好適な硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンとキノン化合物との付加物等が挙げられる。
【0041】
硬化促進剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.1質量部以上であると、短時間で良好に硬化する傾向にある。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して30質量部以下であると、硬化速度が速すぎず良好な成形品が得られる傾向にある。
【0042】
(添加剤)
樹脂組成物は、上述の成分に加えて、カップリング剤、イオン交換体、離型剤、難燃剤、着色剤、応力緩和剤等の各種添加剤を含有してもよい。樹脂組成物は、以下に例示する添加剤以外にも必要に応じて当技術分野で一般的に用いられる各種添加剤を含有してもよい。
【0043】
(カップリング剤)
樹脂組成物は、樹脂成分と無機粒子との接着性を高めるために、カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤としては、シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤が挙げられる。
【0044】
シラン系化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン及び、メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0045】
チタン系化合物としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等が挙げられる。
【0046】
樹脂組成物がカップリング剤を含む場合、カップリング剤の量は、無機粒子100質量部に対して0.05質量部~30質量部であることが好ましく、0.1質量部~20質量部であることがより好ましい。
【0047】
(イオン交換体)
樹脂組成物は、イオン交換体を含有してもよい。特に、樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、封止される素子を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、イオン交換体を含有することが好ましい。イオン交換体は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハイドロタルサイト化合物、並びにマグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の含水酸化物等が挙げられる。イオン交換体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、下記一般式(A)で表されるハイドロタルサイトが好ましい。
【0048】
Mg(1-X)AlX(OH)2(CO3)X/2・mH2O ……(A)
(0<X≦0.5、mは正の数)
【0049】
樹脂組成物がイオン交換体を含有する場合、その含有量は、ハロゲンイオン等のイオンを捕捉するのに十分な量であれば特に制限はない。例えば、樹脂成分100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~10質量部であることがより好ましい。
【0050】
(離型剤)
樹脂組成物は、成形時における金型との良好な離型性を得る観点から、離型剤を含有してもよい。離型剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスなどが挙げられる。離型剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
樹脂組成物が離型剤を含有する場合、その量は樹脂成分100質量部に対して0.01質量部~10質量部が好ましく、0.1質量部~5質量部がより好ましい。離型剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.01質量部以上であると、離型性が十分に得られる傾向にある。10質量部以下であると、より良好な接着性及び硬化性が得られる傾向にある。
【0052】
(難燃剤)
樹脂組成物は、難燃剤を含有してもよい。難燃剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む有機又は無機の化合物、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
樹脂組成物が難燃剤を含有する場合、その量は、所望の難燃効果を得るのに十分な量であれば特に制限されない。例えば、樹脂成分100質量部に対して1質量部~30質量部であることが好ましく、2質量部~20質量部であることがより好ましい。
【0054】
(着色剤)
樹脂組成物は、着色剤を含有してもよい。着色剤としてはカーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を挙げることができる。着色剤の含有量は目的等に応じて適宜選択できる。着色剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
(応力緩和剤)
樹脂組成物は、応力緩和剤を含有してもよい。応力緩和剤を含有することにより、樹脂組成物を封止材用途で使用する場合のパッケージの反り変形及びパッケージクラックの発生を低減させることができる。応力緩和剤としては、一般に使用されている公知の応力緩和剤(可とう剤)が挙げられる。具体的には、シリコーン系、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマー、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンパウダー等のゴム粒子、メタクリル酸メチル-スチレン-ブタジエン共重合体(MBS)、メタクリル酸メチル-シリコーン共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル共重合体等のコア-シェル構造を有するゴム粒子などが挙げられる。応力緩和剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
樹脂組成物は、常温常圧下(例えば、25℃、大気圧下)において固体であっても液状であってもよく、固体であることが好ましい。樹脂組成物が固体である場合の形状は特に制限されず、粉状、粒状、タブレット状等が挙げられる。
【0057】
<樹脂組成物の用途>
本開示の方法で製造される樹脂組成物は、種々の用途に用いることができる。樹脂組成物の好適な用途としては、電子部品装置の封止材が挙げられる。
【0058】
電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ、有機基板等の支持部材と、支持部材の上に搭載された素子(半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子など)と、素子の周囲を封止する封止材と、を含むものが挙げられる。
【0059】
樹脂組成物を用いて電子部品装置を封止する方法としては、低圧トランスファー成形法、インジェクション成形法、圧縮成形法等が挙げられる。
【0060】
<樹脂組成物の製造方法>
本開示の樹脂組成物の製造方法は、上述した本開示の樹脂組成物の製造方法であって、前記無機粒子の少なくとも一部と前記樹脂成分の少なくとも一部とを含む造粒物を準備することを含む。
【0061】
本開示において「無機粒子及び樹脂成分を含む造粒物」とは、少なくとも無機粒子及び樹脂成分を含む材料を粒状化したものをいう。
本開示の方法によれば、V10/V1の値が0.7以上である樹脂組成物を効果的に製造することができる。
この理由としては、例えば、無機粒子を樹脂成分とともに造粒物の状態とすることで無機粒子同士の相互作用による凝集が抑制されることが考えられる。
【0062】
本開示の方法は、樹脂組成物の製造に使用される無機粒子の粒子径が小さい(例えば、最大粒子径が9.0μm以下である)場合に特に好適である。
後述する実施例に示すように、樹脂組成物に含まれる無機粒子の粒子径を小さくすると、低せん断速度(例えば、10S-1以下)で測定したときの粘度)が上昇する傾向にある。本開示の方法で製造される樹脂組成物は、無機粒子の粒子径が小さくても低せん断速度での粘度が低く維持される。
【0063】
本開示の方法において、造粒物の準備に使用する樹脂成分は、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の全体であっても一部であってもよい。
たとえば、樹脂組成物が樹脂成分として熱硬化性樹脂と硬化剤とを含む場合、無機粒子と熱硬化性樹脂とを含む造粒物と、無機粒子と硬化剤とを含む造粒物とをそれぞれ準備してもよく、無機粒子及び樹脂成分を含む造粒物として無機粒子と熱硬化性樹脂とを含む造粒物と、無機粒子と硬化剤とを含む造粒物のいずれかのみを準備してもよい。
【0064】
本開示の方法において、造粒物の準備に使用する無機粒子は、樹脂組成物に含まれる無機粒子の全体であっても一部であってもよい。
無機粒子の凝集を抑制する観点からは、造粒物の準備に用いる樹脂成分は無機粒子と逆の帯電性を有していることが好ましい。例えば、無機粒子の表面がプラスに帯電している場合はフェノール性水酸基のようなアニオン性官能基を持つ樹脂成分を用いることが好ましく、無機粒子の表面がマイナスに帯電している場合はアミノ基のようなカチオン性官能基を持つ樹脂成分を用いることが好ましい。
【0065】
造粒物の粒子径は特に制限されず、他の材料と混合する際の作業性等を考慮して選択できる。
造粒物の粒子径は、例えば、10μm~10000μmの範囲から選択でき、100μm~5000μmの範囲であることが好ましく、500μm~3000μmの範囲であることがより好ましい。
造粒物の粒子形状は特に制限されず、球状、柱状、鱗片状、針状等であってよい。
【0066】
無機粒子及び樹脂成分を含む造粒物を準備する方法は特に制限されず、公知の手法で実施できる。例えば、少なくとも無機粒子と樹脂成分とを含む混合物を粉砕機、押出機等を用いて粒状化して造粒物を得ることができる。必要に応じ、混合物の調製の際に溶剤を用いてもよい。
樹脂組成物の製造に用いる造粒物は自ら作製してもよく、既製品として入手してもよい。
無機粒子及び樹脂成分を含む造粒物は、無機粒子及び樹脂成分以外の成分を含んでいてもよい。
【0067】
本開示の方法では、無機粒子及び樹脂成分を含む造粒物をその他の原料と混合して樹脂組成物を製造してもよい。
造粒物とその他の原料を混合する方法は特に制限されず、公知の手法で実施できる。
【0068】
本開示の方法は、混練押出機を使用して樹脂組成物を製造する場合であって、樹脂組成物の製造に使用する無機粒子の粒子径が小さい場合に特に好適である。
すなわち、造粒物の状態になっていない無機粒子を混練押出機のフィーダーから投入する場合、無機粒子の粒子径が小さすぎると混練作業の効率低下、混練不良などの原因になりやすい。本開示の方法では、無機粒子をあらかじめ造粒物の状態にしてから混練押出機に投入する。このため、無機粒子の粒子径が小さい(例えば、最大粒子径が9.0μm以下である)場合であっても混練押出機を使用して均一な樹脂組成物を効率よく製造することができる。
【実施例0069】
以下、上述した実施形態を実施例により具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
(1)樹脂組成物の調製
表1に示す材料(質量部)を押出混練機に投入して、混練物を得た。得られた混練物を粉砕して、粒子径が1000μmの樹脂組成物を得た。
実施例1で使用するエポキシ樹脂2、硬化剤1、無機粒子4及び無機粒子5は、下記の方法により得られる造粒物の状態である。
【0071】
(造粒物の調製)
3Lセパラブルフラスコに造粒物の原料を投入して撹拌羽を挿入し、200rpm(回転/分)で2時間撹拌して、ワニス状の混合物を得た。次いで、140℃、2時間の真空乾燥を行って混合物の残溶剤率が1質量%未満となるまで溶剤を除去して固形物を得た。得られた固形物を粉砕して、平均粒子径が1000μmの造粒物を作製した。
【0072】
(2)樹脂組成物の物性評価
(溶融粘度)
樹脂組成物を加熱して溶融させ、高化式フローテスターを用いて175℃における溶融粘度(ηFT)を測定した。結果を表1に示す
【0073】
(ゲルタイム)
樹脂組成物の試料0.5gを175℃に熱した熱板上に乗せ、治具を用いて20回転/分~25回転/分の回転速度で、試料を2.0cm~2.5cmの円状に広げた。試料を熱板に乗せてから、試料の粘性がなくなり、ゲル状態となって熱板から剥がれるようになるまでの時間(秒)をゲルタイム(GT)として計測した。
樹脂組成物の175℃におけるゲルタイムは、30秒~90秒であることが好ましく、40秒~60秒であることがより好ましい。
【0074】
(粘度)
樹脂組成物の130℃における粘度を、せん断速度を変化させながらNETZSCH製回転型レオメーターを使用して測定した。せん断速度10S
-1で測定したときの粘度V
10、せん断速度1S
-1で測定したときの粘度V
1、及びこれらから算出したV
10/V
1の値を表1に示す。
あわせて、実施例1及び比較例2で得られた樹脂組成物の130℃での粘度測定結果のグラフを
図1に示す。
【0075】
表1に記載の材料の詳細は、下記の通りである。
・エポキシ樹脂1:YX-4000(商品名、三菱ケミカル株式会社、エポキシ当量180g/eq~192g/eq、融点105℃のビフェニル型エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂2:NC-3000(商品名、日本化薬株式会社、エポキシ当量265g/eq~285g/eq、軟化点53℃~63℃のアラルキル型エポキシ樹脂)
・硬化剤1:MEHC-7851SS(商品名、明和化成株式会社、水酸基当量205g/eqのビフェニレンアラルキル型フェノール樹脂、軟化点60℃~70℃)
・硬化剤2:HP-850N(商品名、株式会社レゾナック、水酸基当量108のフェノールノボラック樹脂)
【0076】
・硬化促進剤:リン系硬化促進剤
・カップリング剤1:KBM-573(商品名、信越化学工業株式会社、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)
・カップリング剤2:KBM-503(商品名、信越化学工業株式会社、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)
・離型剤:モンタン酸エステル
・着色剤:カーボンブラック
【0077】
・無機粒子1:最大粒子径20.0μm以下、体積平均粒子径11μmの球状シリカ粒子
・無機粒子2:最大粒子径10.0μm以下、体積平均粒子径4μmの球状シリカ粒子
・無機粒子3:最大粒子径9.0μm以下、体積平均粒子径2.3μmの球状シリカ粒子
・無機粒子4:最大粒子径5.0μm以下、体積平均粒子径1.5μmの球状シリカ粒子
・無機粒子5:最大粒子径5.0μm以下、体積平均粒子径0.3μmの球状シリカ粒子
・無機粒子6:最大粒子径5.0μm以下、体積平均粒子径0.6μmの球状シリカ粒子
【0078】
【0079】
表1に示すように、実施例1~4で得られた樹脂組成物は130℃、せん断速度10S-1で測定したときの粘度V10を130℃、せん断速度1S-1で測定したときの粘度V1で除して得られるV10/V1が0.7以上であり、優れた流動特性を示した。
実施例1~4で得られた樹脂組成物のV10/V1が比較例1、2で得られた樹脂組成物のV10/V1よりも大きい理由としては、例えば、実施例1~4の樹脂組成物に含まれる無機粒子の最大粒子径が比較例1、2の樹脂組成物に含まれる無機粒子の最大粒子径よりも小さいことが高せん断速度での粘度の低下の抑制に寄与したことが考えられる。