(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025099627
(43)【公開日】2025-07-03
(54)【発明の名称】フィルタ回路およびプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20250626BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20250626BHJP
H01P 1/202 20060101ALI20250626BHJP
H01P 1/20 20060101ALN20250626BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H01L21/302 101B
H05H1/46 M
H01P1/202
H01P1/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216426
(22)【出願日】2023-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 太郎
(72)【発明者】
【氏名】長田 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 崇登
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
5J006
【Fターム(参考)】
2G084CC04
2G084CC05
2G084CC09
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD23
2G084DD38
2G084DD55
2G084FF15
5F004BA08
5F004BA09
5F004BA20
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB14
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004CA03
5F004CA04
5J006HA01
5J006HD01
5J006JA03
5J006LA21
5J006NA07
(57)【要約】
【課題】簡易でコンパクトな高周波フィルタを実現することができるフィルタ回路およびプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】フィルタ回路は、筐体と、突出部と、給電ラインと、を有する。筐体は、導体で形成され、外側導体および内側導体で形成される入力ポートおよび出力ポートを備え、入力ポートおよび出力ポートの外側導体とともにグランド電位となるように構成される。突出部は、導体で形成され、筐体に接続されるとともに、筐体内に螺旋状に突出するように構成される。給電ラインは、筐体内に設けられるとともに、筐体から絶縁される。また、給電ラインは、入力ポートの内側導体である入力側導体と、出力ポートの内側導体である出力側導体と、入力側導体および出力側導体と接続され、突出部と同軸の螺旋状に形成されるアンテナと、を備えるように構成される。突出部およびアンテナは、チョーク構造を形成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体で形成され、外側導体および内側導体で形成される入力ポートおよび出力ポートを備え、前記入力ポートおよび前記出力ポートの前記外側導体とともにグランド電位となるように構成される筐体と、
導体で形成され、前記筐体に接続されるとともに、前記筐体内に螺旋状に突出するように構成される突出部と、
前記筐体内に設けられるとともに、前記筐体から絶縁される給電ラインと、を有し、
前記給電ラインは、
前記入力ポートの前記内側導体である入力側導体と、
前記出力ポートの前記内側導体である出力側導体と、
前記入力側導体および前記出力側導体と接続され、前記突出部と同軸の螺旋状に形成されるアンテナと、を備えるように構成され、
前記突出部および前記アンテナは、チョーク構造を形成する、
フィルタ回路。
【請求項2】
さらに、前記筐体と前記給電ラインとの間には、誘電体を有するように構成される、
請求項1に記載のフィルタ回路。
【請求項3】
前記入力ポートおよび前記出力ポートは、同軸構造である、
請求項1または2に記載のフィルタ回路。
【請求項4】
前記チョーク構造は、複数のフィンで構成され、
前記複数のフィンは、前記突出部の基部に接続される第1のフィンと、前記アンテナの基部に接続される第2のフィンとが交互に配置される、
請求項1または2に記載のフィルタ回路。
【請求項5】
前記複数のフィンは、螺旋状に形成された前記第1のフィンおよび前記第2のフィンの2枚のフィンである、
請求項4に記載のフィルタ回路。
【請求項6】
前記アンテナの基部の外周側の面から中心の面までの、前記筐体および前記突出部と前記アンテナとの間の空間は、遮断対象の電磁波の1/4波長の長さに基づく前記チョーク構造を形成する、
請求項1または2に記載のフィルタ回路。
【請求項7】
前記突出部および前記アンテナは、遮断対象の電磁波の波長に基づいて、前記螺旋状の巻数を調整する、
請求項1または2に記載のフィルタ回路。
【請求項8】
前記突出部および前記アンテナは、それぞれの前記巻数が異なるように、一方の前記巻数を調整する、
請求項7に記載のフィルタ回路。
【請求項9】
前記突出部の基部と、前記アンテナの基部との距離を調整可能な駆動機構を、さらに有する、
請求項1または2に記載のフィルタ回路。
【請求項10】
プラズマ処理装置であって、
前記プラズマ処理装置は、
処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、2種類以上の周波数が印加される電極と、
フィルタ回路と、を含み、
前記フィルタ回路は、
導体で形成され、外側導体および内側導体で形成される入力ポートおよび出力ポートを備え、前記入力ポートおよび前記出力ポートの前記外側導体とともにグランド電位となるように構成される筐体と、
導体で形成され、前記筐体に接続されるとともに、前記筐体内に螺旋状に突出するように構成される突出部と、
前記筐体内に設けられるとともに、前記筐体から絶縁される給電ラインと、を有し、
前記給電ラインは、
前記入力ポートの前記内側導体である入力側導体と、
前記出力ポートの前記内側導体である出力側導体と、
前記入力側導体および前記出力側導体と接続され、前記突出部と同軸の螺旋状に形成されるアンテナと、を備えるように構成され、
前記突出部および前記アンテナは、チョーク構造を形成する、
プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルタ回路およびプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているプラズマ処理装置は、プラズマ処理が行われる処理容器と、処理容器内で板状の導電性ベースの上にスペースを介して配置され、被処理基板を載置して保持する載置台と、載置台に設けられる高周波電極と、高周波電極に一定周波数の高周波を印加するための高周波給電部と、載置台に設けられる発熱体と、発熱体を処理容器の外に配置されるヒータ電源に電気的に接続するためのヒータ給電ラインと、発熱体を介してヒータ給電ラインに入ってくる高周波のノイズを減衰させ、または阻止するためのコイルと、このコイルを収容するケーシングとを有するフィルタユニットとを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、簡易でコンパクトな高周波フィルタを実現することができるフィルタ回路およびプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によるフィルタ回路は、筐体と、突出部と、給電ラインと、を有する。筐体は、導体で形成され、外側導体および内側導体で形成される入力ポートおよび出力ポートを備え、入力ポートおよび出力ポートの外側導体とともにグランド電位となるように構成される。突出部は、導体で形成され、筐体に接続されるとともに、筐体内に螺旋状に突出するように構成される。給電ラインは、筐体内に設けられるとともに、筐体から絶縁される。また、給電ラインは、入力ポートの内側導体である入力側導体と、出力ポートの内側導体である出力側導体と、入力側導体および出力側導体と接続され、突出部と同軸の螺旋状に形成されるアンテナと、を備えるように構成される。突出部およびアンテナは、チョーク構造を形成する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、簡易でコンパクトな高周波フィルタを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るプラズマ処理装置の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るフィルタ回路の一例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るフィルタ回路における電界分布のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係るフィルタ回路の周波数特性の一例を示すグラフである。
【
図7】
図7は、螺旋の巻き角による共振周波数の調整の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、螺旋の巻き角の共振周波数依存性の一例を示すグラフである。
【
図9】
図9は、螺旋の巻き角による共振周波数の変化の一例を示すグラフである。
【
図10】
図10は、変形例1に係るフィルタ回路の一例を示す断面図である。
【
図11】
図11は、変形例1に係るフィルタ回路の周波数特性の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示するフィルタ回路およびプラズマ処理装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0009】
プラズマ処理装置では、処理対象の基板を支持する基板支持部に設けた静電チャックやヒータに対して、処理容器の外側に配置された電源がそれぞれ接続されている。基板支持部は、プラズマを生成するための下部電極を構成するので、プラズマ生成用の高周波が静電チャックやヒータへの給電ラインに影響することがある。このため、これらの給電ラインには、コイルとコンデンサで構成された高周波フィルタが挿入されている。しかしながら、コイルとコンデンサで構成された高周波フィルタは、構造が複雑になるとともに、寸法が大きくなる。そこで、簡易でコンパクトな高周波フィルタを実現することが期待されている。
【0010】
[プラズマ処理システムの構成]
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係るプラズマ処理装置の構成の一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1および制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30、排気システム40、直流電源45およびフィルタ回路50を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11およびガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10aおよび基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間10sからガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13および基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0011】
基板支持部11は、本体部111およびリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0012】
一実施形態において、本体部111は、基台1110および静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャックまたは環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。静電電極1111bは、フィルタ回路50を介して、直流電源45に接続されている。静電電極1111bに直流電源45からの電圧が印加されると、静電チャック1111と基板Wとの間で静電引力が発生する。発生した静電引力により、基板Wは静電チャック1111に引き付けられ、当該静電チャック1111によって保持される。
【0013】
また、後述するRF(Radio Frequency)電源31および/またはDC(Direct Current)電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極が、セラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号および/またはDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0014】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112および基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1または複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0015】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、および複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも1つの上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1または複数の開口部に取り付けられる1または複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0016】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21および少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラまたは圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調またはパルス化する1またはそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0017】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極および/または少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1またはそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0018】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31aおよび第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極および/または少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~300MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1または複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極および/または少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0019】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1または複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号およびバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0020】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32aおよび第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号(バイアスDC信号)は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0021】
種々の実施形態において、第1および第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極および/または少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形またはこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32aおよび波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32bおよび波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1または複数の正極性電圧パルスと1または複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1および第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0022】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁および真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプまたはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0023】
フィルタ回路50は、プラズマ処理空間10sにおいてプラズマが生成された際に、直流電源45へのプラズマ生成用またはバイアス用の高周波電力の影響を除去する。フィルタ回路50は、直流電源45から静電電極1111bに印加される直流を通過させ、静電電極1111bから逆方向に流入する高周波電力を遮断させる。
【0024】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部または全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2および通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0025】
[フィルタ回路50の構造]
次に、
図2から
図4を用いてフィルタ回路50の詳細について説明する。
図2は、本実施形態に係るフィルタ回路の一例を示す斜視図である。
図3は、
図2のA-A断面の一例を示す断面図である。
図2および
図3に示すように、フィルタ回路50は、筐体51を有する。筐体51は、アルミニウムや銅等の導体で形成される。また、筐体51は、入力ポート52と、出力ポート55とを備える。本実施形態では、高周波電力を遮断するので、高周波電力の流れ方向を基準として、静電電極1111bに接続される側を入力ポート52とし、直流電源45に接続される側を出力ポート55として説明する。なお、入力ポート52と出力ポート55とは、接続先を入れ替えても構わない。
【0026】
入力ポート52および出力ポート55は、それぞれ外側導体53,56、および、内側導体54,57で形成される。つまり、入力ポート52および出力ポート55は、同軸構造である。筐体51は、外側導体53,56と導通しており、入力ポート52に接続される同軸ケーブルやフィルタ回路50が設置されるフレーム等を介して、接地されたプラズマ処理チャンバ10とともにグランド電位となる。筐体51は、円筒形状であり、円筒の側面60には入力ポート52が形成される。なお、筐体51は、断面が四角の筒形状であってもよい。また、筐体51は、入力ポート52が形成された側の円筒の端部に出力ポート55が形成され、他方の端部58は円筒を閉じるように円盤状に形成される。さらに、端部58には、アルミニウムや銅等の導体で形成され、筐体51内に突出するように設けられた中央突出部59と、中央突出部59を略中心とした螺旋状のフィン67とが接続される。中央突出部59は、例えば円柱形状である。また、フィン67は、突出部の一例であるとともに、突出部の基部(端部58)に接続される第1のフィンの一例である。
【0027】
筐体51の内部には、中央突出部59を略中心として、フィン67と同軸の螺旋状に形成されるアンテナ65が設けられる。アンテナ65は、アルミニウムや銅等の導体で形成され、アンテナ65の基部62に形成された螺旋状のフィンが、A-A断面においてフィン67と交互に入り組むように形成される。すなわち、アンテナ65は、遮断したい周波数の電磁波から見て筒形状のマルチポールアンテナと等価となる。言い換えると、アンテナ65は、遮断したい周波数において電磁波を放射しないアンテナ(同軸挿入マルチポールアンテナ)である。なお、アンテナ65の先端部65a、および、フィン67の先端部67aは、過度に尖った形状となると電界が集中するので、アンテナ65およびフィン67は、ある程度の厚みがあることが好ましい。また、アンテナ65とフィン67との間隔は、狭いほど後述する周波数特性が良くなる。なお、アンテナ65は、第2のフィンの一例である。
【0028】
基部62は、円盤状であり、その中心部は、出力ポート55側にオフセットするように凸状となっている。基部62の側面63には、内側導体54が接続される。基部62の上面64には、内側導体57が接続される。すなわち、入力ポート52の内側導体(入力側導体)54と、出力ポート55の内側導体(出力側導体)57と、基部62を含むアンテナ65とによって、筐体51から絶縁される給電ライン61が形成される。つまり、フィルタ回路50では、内側導体54と、アンテナ65と、内側導体57とによって形成される給電ライン61が直角の配置となっている。なお、給電ライン61は、直流電源45から静電電極1111bに直流を給電するための経路である。また、上面64の内側導体57との接続部は、
図3に示すように、さらに凸状となっていてもよい。
【0029】
図4は、
図3のB-B断面の一例を示す断面図である。
図4に示すように、フィルタ回路50は、筐体51の内部において、中央突出部59を略中心として、アンテナ65と、フィン67とが同軸の螺旋状に形成されている。つまり、アンテナ65と、フィン67とは、B-B断面において同軸の渦巻き状に形成されている。なお、
図4では、B-B断面からアンテナ65の先端部65aとの間に後述する誘電体66があるものとして、アンテナ65を破線で表している。
図4の例では、アンテナ65は、巻数が6回の螺旋状であり、フィン67は、巻数が5回の螺旋状である。なお、螺旋の巻数は、これに限定されない。また、アンテナ65およびフィン67は、同じ共振周波数であれば、螺旋の巻数が多いほど小型化できる。アンテナ65とフィン67とは、例えば、螺旋の内周側および外周側の各端部がそれぞれ180度ずれた位置となるように配置される。なお、内周側の各端部のずれの角度は、後述する高調波の共振周波数に関係し、高調波の共振周波数により角度は変更される。また、アンテナ65の外周側の端部の位置は、入力ポート52の方向と同一でなくても構わない。
【0030】
筐体51と給電ライン61との間には、誘電体66を有する。つまり、中央突出部59とアンテナ65およびフィン67との間、アンテナ65とフィン67との間、アンテナ65およびフィン67と円筒の側面60との間、ならびに、アンテナ65の先端部65aから端部58との間は、誘電体66が充填された状態である。なお、アンテナ65とフィン67との間は、螺旋状であるため、シート状の誘電体66を挟むように構成することで、容易に誘電体66が充填された状態を形成することができる。同様に、入力ポート52の外側導体53と内側導体54との間、および、出力ポート55の外側導体56と内側導体57との間にも、誘電体66が充填された状態である。誘電体66は、例えば、PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)等を用いることができる。なお、中央突出部59の付近に位置するアンテナ65の一部について、
図3に示すA-A断面では誘電体66内に浮いた状態に見えるが、実際には基部62に接続されているものとする。また、フィン67についても、浮いた状態ではなく端部58に接続されているものとする。
【0031】
また、アンテナ65において、アンテナ65の基部62の外周側の面65bから中心である面65cまでの、筐体51、フィン67および中央突出部59と、アンテナ65との間の空間は、遮断対象の電磁波の1/4波長の長さに基づくチョーク構造を形成する。ここで、
図3のA-A断面において、面65bから先端部65aに対向する内面58aを経由してアンテナ65とフィン67との間で複数回折り返す面65cまでの経路が、伝送経路長W1となる。つまり、伝送経路長W1は、遮断対象の電磁波の1/4波長の長さに基づくチョーク構造、いわゆるλ/4チョークを形成する。すなわち、遮断対象の電磁波は伝送経路長W1を往復するので、アンテナ65は、伝送経路長W1の2倍の半波長アンテナとなる。なお、電磁波は、リング状の面65b全体から放射されていると捉えることができる。また、
図3では、アンテナ65の螺旋の間にフィン67が無い部分があるが、伝送経路長W1は、便宜上フィン67があるものとして表している。なお、アンテナ65の螺旋の間にフィン67が無い部分が円周方向の大部分を占める場合は、当該部分のアンテナ65の先端部65a間を結ぶ経路が伝送経路長W1に含まれると考えてもよい。
【0032】
ここで、螺旋状のアンテナ65およびフィン67の高さhは、電磁波チョークとして機能するために、遮断波長λcよりも十分に短いことが求められる。螺旋状のアンテナ65およびフィン67に伝搬し得る電磁波モードは、TE01モードであるので、遮断波長λcは、下記の式(1)となる。また、フィルタ回路50に入力される電磁波の実効波長をλinとすると、電磁波チョークが機能する条件は、下記の式(2)となる。
【0033】
λc = 2h ・・・(1)
λin>>λc ・・・(2)
【0034】
例えば、遮断対象の電磁波である高周波電力の周波数、つまり入力される電磁波を220MHzとし、誘電体66に比誘電率=2.1のPTFEを用いた場合を考える。このとき、誘電体66内での実効波長は、λin=941mmとなる。例えば、フィルタ回路50において、高さh=16mmとした場合は、遮断波長λc=32mmとなり、上記の式(2)が成立し、電磁波チョークとして機能することがわかる。なお、螺旋に沿う経路について導波路と見ることもできるが、電磁波がカットオフとなり、螺旋に沿う経路では、電磁波は伝送されない。また、電磁波チョークが機能すれば、螺旋状のアンテナ65およびフィン67の枚数は限定されず、アンテナ65側のフィンおよび端部58側(フィン67側)のフィンは、それぞれ複数のフィンで構成されてもよい。
【0035】
[シミュレーション結果]
次に、
図5および
図6を用いてフィルタ回路50の電界分布のシミュレーション結果について説明する。
図5は、本実施形態に係るフィルタ回路における電界分布のシミュレーション結果の一例を示す図である。
図5に示すシミュレーション結果70は、入力ポート52から220MHz、1000Wの高周波電力を入力した場合における電界分布を示している。シミュレーション結果70では、面65bから面65cまでの伝送経路長W1において、アンテナ65とフィン67との間の空間は、電界強度が高くなる。また、アンテナ65およびフィン67と側面60との間の空間、および、アンテナ65およびフィン67と中央突出部59との間の空間は、アンテナ65とフィン67との間の空間よりも相対的に電界強度が低くなる。さらに、出力ポート55近傍では、電界強度がほぼゼロになっている。すなわち、筐体51内のアンテナ65とフィン67とによって、進行波から180度位相がずれた反射波が発生し、進行波と反射波が打ち消し合うことで、出力ポート55からの220MHzの高周波電力の出力は0Wとなる。なお、中央突出部59の付近に位置するアンテナ65の一部について、
図5の断面(
図3のA-A断面相当)では浮いた状態に見えるが、実際には基部62に接続されているものとする。また、フィン67についても、浮いた状態ではなく端部58に接続されているものとする。
【0036】
図6は、本実施形態に係るフィルタ回路の周波数特性の一例を示すグラフである。
図6に示すグラフ75は、フィルタ回路50の周波数特性をSパラメータのS
21で表したものである。なお、
図6では、グラフの縦軸がS
21(挿入損失)を表すので、マイナス側ほど減衰量が大きくなる。グラフ75に示すように、フィルタ回路50の減衰量は、220MHzで最大となり、挿入損失は、-72dBとなる。また、170MHz~270MHzの範囲76での挿入損失は、-30dB以下となる。つまり、フィルタ回路50は、220MHzを中心周波数としたバンドストップフィルタを形成する。このように、本実施形態では、螺旋状のフィンによるマルチポールアンテナを用いた立体回路で遮断したい周波数の高周波を共振させる。このため、例えばVHF(Very High Frequency)帯の1000Wといった高出力の高周波電力に対する簡易でコンパクトな高周波フィルタを実現することができる。また、給電ライン61は、筐体51から絶縁されているので、直流電源45の出力を地絡することなく静電電極1111bに印加することができる。さらに、本実施形態では、範囲76に示す周波数範囲において、FM変調等を用いて周波数を可変する電磁波(シングルピーク波形)や、マルチトーンとして生成された複数の周波数の電磁波(ブロードバンド波形)についても遮断することができる。
【0037】
[螺旋の巻数の調整]
続いて、
図7から
図9を用いてアンテナ65およびフィン67の螺旋の巻数による共振周波数の調整について説明する。
図7は、螺旋の巻き角による共振周波数の調整の一例を示す図である。
図7に示すように、アンテナ65は、螺旋の外周側の端部65dから内周側の端部65eまで螺旋の巻数が6回である。フィン67は、螺旋の外周側の端部67bから内周側の端部67cまで螺旋の巻数が5回である。なお、フィン67は、アンテナ65と同様に螺旋の巻数が6回であってもよい。この場合、フィルタ回路50の各部の寸法を調整することで、共振周波数を220MHzに設定できる。
【0038】
ここで、アンテナ65の内周側の端部65eと、フィン67の内周側の端部67cとの中央突出部59を略中心とした円周方向の角度のずれに着目する。例えば、
図7において、中央突出部59と端部65eとを結ぶ線を基準として0度とし、時計回りの方向に端部67cの角度θを変更していくものとする。また、端部67cの角度θが180度の位置を初期の角度θ1とする。なお、角度θは、螺旋の巻き角とも表す。フィルタ回路50では、端部67cの角度θを変更することで、フィルタ回路50の共振周波数(基本周波数)、および、高調波の共振周波数を変更する。つまり、フィルタ回路50では、端部65eと端部67cとの円周方向の長さの差で、共振周波数(基本周波数)、および、高調波の共振周波数が決定される。なお、端部67cの角度θを変更することは、アンテナ65とフィン67との巻数が異なるように、一方の巻数を調整するともいえる。つまり、巻数は、角度θに対応する小数点以下の値も含む。また、端部67cの角度θは、構造的に変更される。なお、外周側の端部65dおよび端部67bは、内周側の端部65eおよび端部67cに合わせて位置を変更すると、基準とするフィルタ回路50の共振周波数もずれてしまうので、外周側の端部65dおよび端部67bの位置は、固定する方が好ましい。
【0039】
図8は、螺旋の巻き角の共振周波数依存性の一例を示すグラフである。
図8に示すように、グラフ77は、フィルタ回路50の基本周波数と角度θとの関係を示す。グラフ78は、第3次高調波近傍の周波数におけるフィルタ回路50の共振周波数と角度θとの関係を示す。角度θが初期の角度θ1(180度)である場合、グラフ77,78より、基本周波数は220MHz、第3次高調波近傍における共振周波数は675MHzとなっている。端部67cの角度θを、角度θ1に角度θ2を時計回りに足す方向に変化させると、角度θが315度の位置79において、基本周波数は217MHz、第3次高調波近傍における共振周波数は660MHzとなる。
【0040】
図9は、螺旋の巻き角による共振周波数の変化の一例を示すグラフである。
図9に示すグラフ80,82は、それぞれ角度θ1(180度)および調整後の角度θ(315度)におけるフィルタ回路50の周波数特性をSパラメータのS
21で表したものである。また、
図9には、遮断対象の電磁波の基本周波数(220MHz)の第3次高調波(660MHz)を第3次高調波81として示している。グラフ80では、フィルタ回路50の挿入損失が220MHzで-67dB、660MHzで-23dB、675MHzで-46dBとなっている。この場合、遮断対象の電磁波の第3次高調波81(660MHz)では、挿入損失が-30dB以下となっておらず、減衰量が十分ではない。一方、グラフ82では、フィルタ回路50の挿入損失が220MHzで-68dB、660MHzで-46dBとなっている。この場合、遮断対象の電磁波の第3次高調波81(660MHz)において、挿入損失が-30dB以下となっており、減衰量が十分確保されている。すなわち、フィルタ回路50では、端部67cの角度θを180度から315度に調整することで、遮断対象の電磁波の基本周波数(220MHz)と、第3次高調波(660MHz)との両方を同時に減衰させて遮断することができる。なお、フィルタ回路50は、同様に、奇数倍の第N次高調波も減衰させて遮断することができる。
【0041】
[変形例]
次に、出力ポート55の位置を変更した変形例1について説明する。
図10は、変形例1に係るフィルタ回路の一例を示す断面図である。
図10に示すフィルタ回路90は、出力ポート55aの位置を入力ポート52と対向する筐体51aの円筒の側面60としたものである。なお、フィルタ回路90において、フィルタ回路50と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成および動作の説明については省略する。出力ポート55aは、外側導体56aおよび内側導体57aで形成される。なお、筐体51aでは、入力ポート52および出力ポート55aが形成された側の円筒の端部は閉じられている。当該円筒の端部は、
図2において出力ポート55が形成されている面に相当する。外側導体56aは、筐体51aと導通している。内側導体57aは、基部62の側面64aに接続される。側面64aは、入力ポート52の内側導体54が基部62に接続される側面63aと対向する位置である。つまり、フィルタ回路90では、内側導体54と、アンテナ65と、内側導体57aとによって形成される給電ライン61aが直線状の配置となっている。なお、中央突出部59の付近に位置するアンテナ65の一部について、
図10の断面では誘電体66内に浮いた状態に見えるが、実際には基部62に接続されているものとする。また、フィン67についても、浮いた状態ではなく端部58に接続されているものとする。
【0042】
図11は、変形例1に係るフィルタ回路の周波数特性の一例を示すグラフである。
図11に示すグラフ91は、フィルタ回路90の周波数特性をSパラメータのS
21で表したものである。なお、
図11では、
図6と同様にグラフの縦軸がS
21(挿入損失)を表すので、マイナス側ほど減衰量が大きくなる。グラフ91に示すように、フィルタ回路90の減衰量は、220MHzで最大となり、挿入損失は、-68dBとなる。また、170MHz~270MHzの範囲92での挿入損失は、-30dB以下となる。このように、変形例1においても、螺旋状のフィンによるマルチポールアンテナを用いた立体回路で遮断したい周波数の高周波を共振させる。このため、例えばVHF帯の1000Wといった高出力の高周波電力に対する簡易でコンパクトな高周波フィルタを実現することができる。また、給電ライン61aは、筐体51aから絶縁されているので、直流電源45の出力を地絡することなく静電電極1111bに印加することができる。
【0043】
なお、上記した実施形態では、中央突出部59およびフィン67が固定されている場合を説明したが、これに限定されない。例えば、フィン67をアンテナ65に挿抜可能なように形成されてもよい。この場合、フィン67は、図示しない駆動機構により駆動され、高さhを可変することができる。駆動機構としては、ステッピングモータとリードスクリューとの組み合わせ等を用いることができる。フィン67が挿抜されて高さhが変更されると、フィルタ回路50で遮断される周波数を変更することができる。
【0044】
以上、本実施形態によれば、フィルタ回路50,90は、筐体51,51aと、突出部(フィン67)と、給電ライン61,61aと、を有する。筐体51,51aは、導体で形成され、外側導体53,56および内側導体54,57で形成される入力ポート52および出力ポート55を備え、入力ポート52および出力ポート55の外側導体53,56とともにグランド電位となるように構成される。突出部は、導体で形成され、筐体51,51aに接続されるとともに、筐体51,51a内に螺旋状に突出するように構成される。給電ライン61,61aは、筐体51,51a内に設けられるとともに、筐体51,51aから絶縁される。また、給電ライン61,61aは、入力ポート52の内側導体54である入力側導体と、出力ポート55の内側導体57である出力側導体と、入力側導体および出力側導体と接続され、突出部と同軸の螺旋状に形成されるアンテナ65と、を備えるように構成される。突出部およびアンテナ65は、チョーク構造を形成する。その結果、簡易でコンパクトな高周波フィルタを実現することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、フィルタ回路50,90は、さらに、筐体51,51aと給電ライン61,61aとの間には、誘電体66を有するように構成される。その結果、フィルタ回路50,90を小型化することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、入力ポート52および出力ポート55は、同軸構造である。その結果、高出力の高周波電力に対するフィルタ回路を形成できる。
【0047】
また、本実施形態によれば、チョーク構造は、複数のフィンで構成される。また、複数のフィンは、突出部の基部(端部58)に接続される第1のフィン(フィン67)と、アンテナ65の基部62に接続される第2のフィンとが交互に配置される。その結果、チョーク構造を容易に形成することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、複数のフィンは、螺旋状に形成された第1のフィンおよび第2のフィンの2枚のフィンである。その結果、チョーク構造をより容易に形成することができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、アンテナ65の基部62の外周側の面65bから中心の面65cまでの、筐体51,51aおよび突出部とアンテナ65との間の空間は、遮断対象の電磁波の1/4波長の長さに基づくチョーク構造を形成する。その結果、遮断対象の周波数において高周波電力を遮断することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、突出部およびアンテナ65は、遮断対象の電磁波の波長に基づいて、螺旋状の巻数を調整する。その結果、遮断対象の周波数において高周波電力を遮断することができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、突出部およびアンテナ65は、それぞれの巻数が異なるように、一方の巻数を調整する。その結果、遮断対象の周波数と奇数倍の高調波とにおいて、高周波電力を遮断することができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、突出部の基部と、アンテナ65の基部62との距離を調整可能な駆動機構を、さらに有する。その結果、フィルタ回路50,90で遮断される周波数を変更することができる。
【0053】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0054】
また、上記した実施形態では、伝送経路長W1を遮断対象の電磁波の1/4波長としたが、これに限定されない。例えば、進行波と反射波とが打ち消し合う伝送経路長となるように、アンテナ65とフィン67の寸法および巻数を設定するようにしてもよい。
【0055】
また、上記した実施形態では、フィルタ回路50,90を静電チャック1111内部の静電電極1111bに接続したが、これに限定されない。例えば、基板支持部11内に設けた図示しないヒータに接続してもよい。
【0056】
また、上記した実施形態では、プラズマ源として容量結合型プラズマを用いて基板Wに対してエッチング等の処理を行うプラズマ処理装置1を例に説明したが、開示の技術はこれに限られない。プラズマを用いて基板Wに対して処理を行う装置であれば、プラズマ源は容量結合プラズマに限られず、例えば、誘導結合プラズマ、マイクロ波プラズマ、マグネトロンプラズマ等、任意のプラズマ源を用いることができる。
【0057】
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
(1)
導体で形成され、外側導体および内側導体で形成される入力ポートおよび出力ポートを備え、前記入力ポートおよび前記出力ポートの前記外側導体とともにグランド電位となるように構成される筐体と、
導体で形成され、前記筐体に接続されるとともに、前記筐体内に螺旋状に突出するように構成される突出部と、
前記筐体内に設けられるとともに、前記筐体から絶縁される給電ラインと、を有し、
前記給電ラインは、
前記入力ポートの前記内側導体である入力側導体と、
前記出力ポートの前記内側導体である出力側導体と、
前記入力側導体および前記出力側導体と接続され、前記突出部と同軸の螺旋状に形成されるアンテナと、を備えるように構成され、
前記突出部および前記アンテナは、チョーク構造を形成する、
フィルタ回路。
(2)
さらに、前記筐体と前記給電ラインとの間には、誘電体を有するように構成される、
前記(1)に記載のフィルタ回路。
(3)
前記入力ポートおよび前記出力ポートは、同軸構造である、
前記(1)または(2)に記載のフィルタ回路。
(4)
前記チョーク構造は、複数のフィンで構成され、
前記複数のフィンは、前記突出部の基部に接続される第1のフィンと、前記アンテナの基部に接続される第2のフィンとが交互に配置される、
前記(1)~(3)のいずれか1つに記載のフィルタ回路。
(5)
前記複数のフィンは、螺旋状に形成された前記第1のフィンおよび前記第2のフィンの2枚のフィンである、
前記(4)に記載のフィルタ回路。
(6)
前記アンテナの基部の外周側の面から中心の面までの、前記筐体および前記突出部と前記アンテナとの間の空間は、遮断対象の電磁波の1/4波長の長さに基づく前記チョーク構造を形成する、
前記(1)~(5)のいずれか1つに記載のフィルタ回路。
(7)
前記突出部および前記アンテナは、遮断対象の電磁波の波長に基づいて、前記螺旋状の巻数を調整する、
前記(1)~(6)のいずれか1つに記載のフィルタ回路。
(8)
前記突出部および前記アンテナは、それぞれの前記巻数が異なるように、一方の前記巻数を調整する、
前記(7)に記載のフィルタ回路。
(9)
前記突出部の基部と、前記アンテナの基部との距離を調整可能な駆動機構を、さらに有する、
前記(1)~(8)のいずれか1つに記載のフィルタ回路。
(10)
プラズマ処理装置であって、
前記プラズマ処理装置は、
処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、2種類以上の周波数が印加される電極と、
フィルタ回路と、を含み、
前記フィルタ回路は、
導体で形成され、外側導体および内側導体で形成される入力ポートおよび出力ポートを備え、前記入力ポートおよび前記出力ポートの前記外側導体とともにグランド電位となるように構成される筐体と、
導体で形成され、前記筐体に接続されるとともに、前記筐体内に螺旋状に突出するように構成される突出部と、
前記筐体内に設けられるとともに、前記筐体から絶縁される給電ラインと、を有し、
前記給電ラインは、
前記入力ポートの前記内側導体である入力側導体と、
前記出力ポートの前記内側導体である出力側導体と、
前記入力側導体および前記出力側導体と接続され、前記突出部と同軸の螺旋状に形成されるアンテナと、を備えるように構成され、
前記突出部および前記アンテナは、チョーク構造を形成する、
プラズマ処理装置。
【符号の説明】
【0058】
1 プラズマ処理装置
10 プラズマ処理チャンバ
11 基板支持部
45 直流電源
50,90 フィルタ回路
51,51a 筐体
52 入力ポート
53,56,56a 外側導体
54,57,57a 内側導体
55,55a 出力ポート
58 端部
59 中央突出部
61,61a 給電ライン
62 基部
65 アンテナ
65b,65c 面
66 誘電体
67 フィン