(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】食品の製造方法及び食品の照り付与用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 35/00 20160101AFI20220104BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20220104BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20220104BHJP
A23D 9/007 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
A23L35/00
A23L5/10 Z
A23D9/00 506
A23D9/007
(21)【出願番号】P 2017166511
(22)【出願日】2017-08-31
【審査請求日】2020-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】大島 優奈
(72)【発明者】
【氏名】田中 利佳
(72)【発明者】
【氏名】小薗 伸介
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-043306(JP,A)
【文献】特開2016-101138(JP,A)
【文献】特開平10-313782(JP,A)
【文献】特開2016-067253(JP,A)
【文献】特開平08-154602(JP,A)
【文献】特開平10-179096(JP,A)
【文献】特開2016-096730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 35/00
A23L 5/10
A23D 9/00-9/007
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラタン、ドリア、ラザニア、とろみのついた中華食品、及び炒め物から選ばれる食品の製造方法であって、
食用油脂及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有する油脂組成物を、前記食品の表面へ添加する
添加工程
及び、
前記グラタン、ドリア及びラザニアから選ばれる食品の焼成前原料を容器に入れ焼成する焼成工程、または、前記とろみのついた中華食品、及び炒め物から選ばれる食品を容器へ盛り付ける盛り付け工程、のいずれか一工程を含み、
前記添加工程は、前記焼成工程または前記盛り付け工程の後に行い、
前記油脂組成物の水の含有量が1質量%未満である、
前記製造方法(ただし、前記油脂組成物を炒め油としてのみ使用する場合を除く)。
【請求項2】
前記ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量が、前記油脂組成物中0.05質量%以上7質量%以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記食用油脂の上昇融点が10℃以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記食用油脂が前記油脂組成物中80質量%以上である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記油脂組成物を前記食品の水平投影面積100cm
2あたり、0.5g以上8g以下添加する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
グラタン、ドリア、ラザニア、とろみのついた中華食品、及び炒め物から選ばれる食品の表面に、食用油脂及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有する油脂組成物を添加することを特徴とする、食品に照りを付与する方法
であって、
前記油脂組成物の添加は、
前記グラタン、ドリア、及びラザニアから選ばれる食品の焼成前原料を容器に入れ焼成する焼成工程、または、前記とろみのついた中華食品、及び炒め物から選ばれる食品を容器へ盛り付ける盛り付け工程、のいずれか一工程の後に行う、前記方法。
【請求項7】
食用油脂及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有することを特徴とする、グラタン、ドリア、ラザニア、とろみのついた中華食品、及び炒め物から選ばれる食品の照り付与用油脂組成物
であって、
前記グラタン、ドリア、及びラザニアから選ばれる食品の焼成前原料を容器に入れ焼成する焼成工程後の食品、または、前記とろみのついた中華食品、及び炒め物から選ばれる食品を容器へ盛り付ける盛り付け工程後の食品の照り付与用油脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用油脂と特定の乳化剤を含む油脂組成物を添加することにより、照りを付与された食品の製造方法、並びに食用油脂と特定の乳化剤を含む食品の照り付与用油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、共働き世帯や単身世帯の増加に伴い、コンビニエンスストアやスーパーマーケットの調理済み食品へのニーズが高まっている。消費者が陳列された調理済み食品を選択する場合には、見た目に美味しそうであることが重要な要素の一つである。中でもグラタンやドリアのようなチーズをのせて焼成する食品や、とろみのついた中華食品、油で調理した炒め物等の加熱料理済食品においては、表面に照りがないと美味しそうに見えないという問題があった。
【0003】
従来技術として、食用油脂に特定の乳化剤を添加した油脂組成物を使い、麺にツヤを出す試みがなされている。特許文献1(特開2008-043306号公報)は、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを食用油脂に配合した麺用ツヤ出し剤である。当該特許文献には、茹でた麺類において、水分移行を抑制することで効果を発揮することが開示されている。一方、茹で麺以外の食品への照りの付与効果については開示されていない。
【0004】
特許文献2(WO2010/074257号公報)には、食用油脂にHLBが5以下である乳化剤を0.1~3重量%添加してなる、使用量を低減しても美味しい炒め物を作ることができ、かつ、揚げ調理、マヨネーズの調製などの生食にも使用可能な汎用性を有する油脂組成物が開示されている。調理前に添加する炒め油については調理後のつやについても評価しているが、炒め調理後に添加し照りを付与することは記載されていない。さらに、後述のように、本発明品は炒め油として使用した場合には、照りの付与効果は十分ではなかった。
【0005】
特許文献3(特開2016-002051号公報)はポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよび風味油を含有するドレッシングである。サラダ等の野菜において食感と風味油の風味維持の効果を発揮するが、食品の外観の向上効果については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-043306号公報
【文献】WO2010/074257号公報
【文献】特開2016-002051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、特にグラタンやドリア、ラザニア、とろみのついた中華食品や炒め物が、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどに陳列された場合、表面に照りが充分でなく、消費者の購買意欲を高められないという問題があるが、その解決手段は示されていなかった。
そこで、本発明は、上記の問題に対し、食用油脂及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有する油脂組成物を食品の表面に添加することにより、食品に照りを付与でき、美味しそうな外観を呈する食品の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、食品に照りを付与できる食品の照り付与用油脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、食用油脂及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有する油脂組成物を、グラタン、ドリア、ラザニア、とろみのついた中華食品、及び炒め物から選ばれる食品の表面に添加することで、食品に照りを付与できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、グラタン、ドリア、ラザニア、とろみのついた中華食品、及び炒め物から選ばれる食品の製造方法であって、食用油脂及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有する油脂組成物を前記食品の表面へ添加する工程を含む、前記製造方法(ただし、前記油脂組成物を炒め油としてのみ使用する場合を除く)である。
【0010】
前記ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルが前記油脂組成物中0.05質量%以上7質量%以下であることが好ましい。
【0011】
前記食用油脂の上昇融点が10℃以下であることが好ましい。
【0012】
前記食用油脂は、前記油脂組成物中80質量%以上であることが好ましい。
【0013】
前記油脂組成物の水の含有量は、1質量%未満であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、グラタン、ドリア、ラザニア、とろみのついた中華食品、及び炒め物から選ばれる食品の表面に、食用油脂及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有する油脂組成物を添加することを特徴とする、食品に照りを付与する方法である。
【0015】
また、本発明は、食用油脂及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有することを特徴とする、グラタン、ドリア、ラザニア、とろみのついた中華食品、及び炒め物から選ばれる食品の照り付与用油脂組成物である。
【発明の効果】
【0016】
食用油脂及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを所定量含有した油脂組成物をグラタン、ドリア、ラザニア、とろみのついた中華食品、及び炒め物から選ばれる食品の表面に添加することにより、食品に照りを付与できる。ここで、照りとは、表面の光沢のことである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態における食品の製造方法とは、
グラタン、ドリア、ラザニア、とろみのついた中華食品、及び炒め物から選ばれる食品の製造方法であって、
食用油脂及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有する油脂組成物を、前記食品の表面へ添加する工程を含む、
前記製造方法(ただし、前記油脂組成物を炒め油としてのみ使用する場合を除く)である。
本発明の製造方法で製造された食品には、好ましい照りが付与され、美味しそうな外観にすることができる。
【0018】
本発明において用いられる食用油脂としては、特に限定されないが、例えば、
菜種油、大豆油、米油(米ぬか油とも呼ばれる)、コーン油、オリーブ油、綿実油、ヒマワリ油、ごま油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サフラワー油、落花生油、カポック油、月見草油、カカオ脂、シア脂、サル脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明では、これらの中から選ばれた一種又は二種以上を用いることができるが、菜種油、大豆油、米油、コーン油、オリーブ油、綿実油、ハイオレイックヒマワリ油、ごま油及びパーム分別油から選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましく、菜種油、大豆油、米油、コーン油、オリーブ油、ごま油及びパーム分別油から選ばれる一種又は二種以上を含むことがより好ましく、菜種油、大豆油、コーン油、オリーブ油、及びごま油から選ばれる1種又は2種以上を含むことがさらに好ましく、菜種油、コーン油、オリーブ油及びごま油から選ばれる一種又は二種以上であることがさらにより好ましい。
【0019】
本発明において用いられる食用油脂として、風味油を用いることもできる。 ここで言う風味油とは、ラー油などに代表される唐辛子油、ねぎ油、ガーリックオイル、バジルオイル等である。また、バターフレーバーオイル等の、香料を添加した油脂も風味油として使用することができる。これらの風味油と風味油以外の食用油脂を混合してもよく、二種以上の風味油を混合してもよい。
【0020】
また、本発明における油脂組成物に含まれる食用油脂は、使用される食品の輸送および陳列される温度、例えば冷蔵ならば0℃超10℃以下、で液状のものが好適である。ゆえに食用油脂の上昇融点は、10℃以下であることが好ましく、5℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることがさらに好ましい。なお、上昇融点は、基準油脂分析試験法2.2.4.2-1996に則り測定することができる。
【0021】
また、本発明における油脂組成物中の食用油脂の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、93質量%以上がさらに好ましく、95質量%が最も好ましい。特に上限はないが、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル及び食用油脂の合計の含有量が100質量%以下となるように食用油脂を含む。また、本発明における油脂組成物に含まれる水の含有量は、好ましくは1質量%未満である。
【0022】
本発明で用いられるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、例えばひまし油を原料とした縮合リシノレイン酸とポリグリセリンとのエステル化によって得ることができ、PGPRと略称されることもある。本発明では、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルのグリセリンの平均重合度については特に制限されることなく用いることができるが、好ましくは2以上8以下である。
【0023】
本発明の油脂組成物中の前記ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量は、食品に照りを付与する観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.25質量%以上がさらに好ましく、0.6質量%以上がさらにより好ましく、0.8質量%以上が最も好ましい。また、本発明の油脂組成物中の前記ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量は、食品の風味の観点から、7質量%以下が好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
【0024】
本発明における食品とは、照りを付与することで美味しそうな外観にすることができるという観点から、ホワイトソースまたはブラウンソースと、チーズをかけて加熱調理するグラタン、ドリア、ラザニア;麻婆豆腐、エビチリソースや八宝菜、あんかけ焼きそば、あんかけ炒飯、中華飯、天津飯等のとろみのついた中華食品;肉野菜炒め、野菜炒め、青菜炒め等の炒め物であり、好ましくは、グラタン、ドリア、ラザニア、麻婆豆腐、エビチリソース、八宝菜、あんかけ焼きそば、あんかけ炒飯、及び炒め物であり、より好ましくは、グラタン、ドリア、ラザニア、麻婆豆腐、八宝菜、及び炒め物である。
【0025】
本発明の油脂組成物の食品への添加方法は特に限定されるものではないが、噴霧、塗布、滴下などが挙げられる。
【0026】
本発明における油脂組成物の食品への添加量は、食品の水平投影面積100cm2あたり、0.5g以上8g以下、好ましくは1g以上6g以下である。ここで言う食品の水平投影面積とは、容器に盛りつけられた調理済み食品を真上から見た時に、凸凹や斜面の部分があっても、その食品の表面が水平だとみなして測った面積のことである。
【0027】
本発明の食品の製造方法は、本発明の油脂組成物を前記食品の表面へ添加する添加工程を含むが、さらに以下の工程を含んでも良い。
グラタン、ドリア、ラザニアから選ばれる食品の焼成前原料を容器に入れチーズ等をのせオーブン等で焼成する焼成工程、または、とろみのついた中華食品、及び炒め物から選ばれる食品を容器へ盛り付ける盛り付け工程、のいずれか一工程;
前記食品を常温、冷蔵、および冷凍の一または二以上で保存する保存工程;
電子レンジで再加熱する再加熱工程
このうち、前記添加工程は、前記焼成工程または前記盛り付け工程の後におこなうことが好ましい。また、本発明の食品への照り付与効果をより一層高める観点から、前記添加工程の後には食品を混ぜ合わせないことが好ましい。
【0028】
本発明の製造方法で得られたグラタン、ドリア、ラザニア、とろみのついた中華食品、及び炒め物から選ばれる食品は、好ましい照りが付与され、美味しそうな外観にすることができる。
また、本発明の照り付与用油脂組成物は、グラタン、ドリア、ラザニア、とろみのついた中華食品、及び炒め物から選ばれる食品の表面に添加することで、これらの食品に好ましい照りを付与し、美味しそうな外観にすることができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。しかし、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0030】
食用油脂として以下のものを使用した(いずれも上昇融点は0℃以下である)。
菜種油(AJINOMOTOさらさらキャノーラ油、株式会社J-オイルミルズ社製)
コーン油(AJINOMOTOコーン油、株式会社J-オイルミルズ社製)
ごま油(純正ごま油、株式会社J-オイルミルズ社製)
ラー油(純正ごま辣油、岩井の胡麻油株式会社製、油脂としてはごま油を使用)
オリーブ油(AJINOMOTOオリーブ油エキストラバージン、株式会社J-オイルミルズ社製)
【0031】
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(「PGPR」ともいう)として以下のものを使用した。
CRS-75、阪本薬品工業株式会社製
CR-ED、阪本薬品工業株式会社製
CR-310、阪本薬品工業株式会社製、グリセリンの平均重合度4
ポエムPR-100、理研ビタミン株式会社製
ポエムPR-300、理研ビタミン株式会社製
サンソフト818SK、太陽化学株式会社製、グリセリンの平均重合度6
【0032】
また、以下のものを使用した。
レシチン(製品名:レシチンCL、株式会社J-オイルミルズ社製)
ジグリセリンモノオレート(製品名:ポエムDO-100V、理研ビタミン株式会社製)
【0033】
実験例1(PGPRの配合量の評価)
ご飯100gを耐熱容器に入れ、市販の缶入りグラタンソース100gをかけた。その上にチーズを20gトッピングし、電気オーブンで230℃、5分焼成してドリアを作製した。焼成後、ショックフリーザーにてドリアの表面温度が4℃になるまで冷却し、冷却後のドリア表面に、表1の油脂組成物(いずれも、水の含有量は1質量%未満)をドリアの水平投影面積100cm2あたり2.3gとなるよう、スポイトにて添加した。また、油脂組成物を添加しないものを比較例1-1とした。ドリアは冷蔵3日後に、以下の方法で照りを評価した後、電子レンジの温めモードにて温めて喫食した。
照りは冷蔵前および冷蔵3日後に、5名の専門パネルが、非常に照りが良いものを5点とし、照りが無いものを1点とした5段階で評価し、平均値を算出した後、以下に示す4段階評価とした。
<照り評価>
4超 5以下 :◎
3超 4以下 :〇
2超 3以下 :△
1以上 2以下 :×
【0034】
【0035】
油脂組成物中のPGPRが0.1質量%以上10質量%以下の範囲では、冷蔵前および冷蔵3日後も照りがあった。特に0.3質量%以上10質量%以下であると良好であり、0.8質量%以上10質量%以下であるとさらに良好であった。ただし、PGPR10質量%では、食したときにやや収斂味を感じた。従って、油脂組成物中のPGPRは、0.8質量%以上5質量%以下であることが、好ましいことがわかった。一方、比較例1-1のように油脂組成物を添加しなかった場合は冷蔵前および冷蔵3日後とも照りがなく、比較例1-2のように菜種油のみ添加した場合も照りがなかった。
また、いずれの場合でも電子レンジで温めた前後で照りに変化はなかった。
【0036】
実験例2(食用油脂の種類の評価)
実験例1における表1の油脂組成物に変えて表2の油脂組成物(いずれも、水の含有量は1質量%未満)を用いた以外、同じ操作で照りを評価した。
【0037】
【0038】
油脂組成物中の菜種油をコーン油に変えた場合でも、同じように効果が得られることがわかった。
特許文献1の実施例2と実施例8の結果(段落0019、表4)では、食用油脂として菜種油とコーン油を用いているが、コーン油において、「ツヤ」の効果が低いことが開示されている。しかしながら、本発明の場合、菜種油とコーン油において、「照り」の効果は同等であることから、特許文献1における効果のメカニズムと本発明における効果のメカニズムが明らかに異なることが理解できる。
【0039】
実験例3(食用油脂の種類および常温での評価)
実験例1における表1の油脂組成物に変えて表3の油脂組成物(いずれも、水の含有量は1質量%未満)を用い、常温2日後に照りを評価した以外、同じ操作で照りを評価した。
【表3】
【0040】
油脂組成物中の菜種油をオリーブ油に変えた場合でも、同じように効果が得られることがわかった。
また、油脂組成物を添加後、常温2日後でも、同じように効果が得られることがわかった。
【0041】
実験例4(PGPRの種類の評価)
実験例1における表1の油脂組成物にかえて表4の油脂組成物(いずれも、水の含有量は1質量%未満)を用いた以外、同じ操作で照りを評価した。
【0042】
【0043】
使用したPGPRはいずれも、同じように効果が得られることがわかった。
【0044】
実験例5(青菜の塩炒めでの評価)
充分に熱した中華鍋に菜種油3.7gを入れ、ざく切りにした小松菜370gを炒め、塩にて調味し、青菜の塩炒め281.8gを作製した。小鉢に140g盛りつけ、表4の油脂組成物(水の含有量は1質量%未満)を青菜の塩炒めの水平投影面積100cm2あたり3gとなるよう、スポイトにて添加した。
照りは冷蔵前および冷蔵3日後に、5名の専門パネルが、非常に照りが良いものを5点とし、照りが無いものを1点とした5段階で評価し、平均値を算出した後、以下に示す4段階評価とした。
<照り評価>
4超 5以下 :◎
3超 4以下 :〇
2超 3以下 :△
1以上 2以下 :×
【0045】
【0046】
本発明の油脂組成物を青菜の塩炒めに使用しても、本発明の効果が得られることがわかった。
【0047】
実験例6(八宝菜での評価)
充分に熱した中華鍋に菜種油5gを入れ、おろしにんにく1.5g、おろし生姜1.5g、豚ロース肉75g、白菜300g、人参40g、水煮たけのこ150g、白ネギ55gを炒めた。ある程度火が通ったら、きくらげ20g、ピーマン75gを加えてさらに炒め、塩2g、中華調味料10gで調味し、水200mlを入れて煮立たせた。片栗粉8gを分量外の水で溶いて加え、とろみをつけ、ゆでうずら卵40gをトッピングし、八宝菜800gを作製した。小鉢に150g盛りつけ、表5の油脂組成物(水の含有量は1質量%未満)を八宝菜の水平投影面積100cm2あたり4.2gとなるよう、スポイトにて添加した。
照りは冷蔵前および冷蔵3日後に、5名の専門パネルが、非常に照りが良いものを5点とし、照りが無いものを1点とした5段階で評価し、平均値を算出した後、以下に示す4段階評価とした。
<照り評価>
4超 5以下 :◎
3超 4以下 :〇
2超 3以下 :△
1以上 2以下 :×
【0048】
【0049】
本発明の油脂組成物を八宝菜に使用しても、本発明の効果が得られることがわかった。また、食用油脂としてごま油を使用しても、本発明の効果が得られることがわかった。
【0050】
実験例7(麻婆豆腐での評価)
充分に熱した中華鍋に菜種油5gを入れ、豚ひき肉200g、みじん切りにした白ネギ100gを炒めた。次に、水切りした豆腐370g、水200ml、中華調味料8gを加え、煮立たせた。片栗粉15gを分量外の水で溶いて加え、とろみをつけ、麻婆豆腐730gを作製した。小鉢に150g盛りつけ、表6の油脂組成物(水の含有量は1質量%未満)を麻婆豆腐の水平投影面積100cm2あたり4.2gとなるよう、スポイトにて添加した。
照りは冷蔵前および冷蔵3日後に、5名の専門パネルが、非常に照りが良いものを5点とし、照りが無いものを1点とした5段階で評価し、平均値を算出した後、以下に示す4段階評価とした。
<照り評価>
4超 5以下 :◎
3超 4以下 :〇
2超 3以下 :△
1以上 2以下 :×
【0051】
【0052】
本発明の油脂組成物を麻婆豆腐に使用しても、本発明の効果が得られることがわかった。また、食用油脂としてラー油を使用しても、本発明の効果が得られることがわかった。
【0053】
実験例8(野菜炒めでの評価)
充分に熱した中華鍋に実施例1-4の油脂組成物を炒め油として5.3g入れ、キャベツ200g、もやし200g、ピーマン80g、人参50gを炒めた。火が通ったら、塩8gで調味し、野菜炒め413gを作製した。小鉢に150g盛りつけ、表7の油脂組成物(水の含有量は1質量%未満)を野菜炒めの水平投影面積100cm2あたり4.2gとなるよう、スポイトにて添加した。また、油脂組成物を添加しないものを比較例8-1とした。
照りは冷蔵前および冷蔵1日後に、5名の専門パネルが、非常に照りが良いものを5点とし、照りが無いものを1点とした5段階で評価し、平均値を算出した後、以下に示す4段階評価とした。
<照り評価>
4超 5以下 :◎
3超 4以下 :〇
2超 3以下 :△
1以上 2以下 :×
【0054】
【0055】
本発明の油脂組成物を野菜炒めに使用しても、本発明の効果が得られることがわかった。また、本発明の油脂組成物を野菜炒めの炒め油として使用し、盛り付け後に本発明の油脂組成物を添加しても本発明の効果が得られることがわかった。
一方、本発明の油脂組成物を炒め油としてのみ使用した場合、野菜炒めに照りはなかった。また、本発明の油脂組成物を野菜炒めに炒め油として使用した後に、菜種油を添加しても照りはなかった。
【0056】
実験例9(乳化剤の種類の評価)
冷凍の調理済みドリアを電子レンジの解凍モードで解凍した後、表9の油脂組成物(水の含有量は1質量%未満)をドリアの水平投影面積100cm
2あたり1.3g刷毛で塗り、冷蔵にて2日後まで保管し、照りを評価した。
その結果、実施例9-1の本発明品では、非常に照りがあったのに対し、油脂組成物中の乳化剤をジグリセリンモノオレートに変えた比較例9-1や、レシチンとジグリセリンモノオレートの2種を加えるように変えた比較例9-2では、冷蔵前および冷蔵2日後とも、あまり照りはなかった。
【表9】