(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】積層体、ブリスター容器、及びプレススルーパッケージ
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20220104BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220104BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220104BHJP
B65D 75/32 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B32B27/30 D
B32B27/32 C
B65D65/40 D
B65D75/32
(21)【出願番号】P 2017053664
(22)【出願日】2017-03-17
【審査請求日】2020-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【氏名又は名称】貞廣 知行
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】岡本 大
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 甲介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 豊明
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-522741(JP,A)
【文献】特表2004-501799(JP,A)
【文献】特表2008-507597(JP,A)
【文献】特開2014-028508(JP,A)
【文献】特開2012-135980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 1/00- 1/48、65/00-79/02
B65D 81/18-81/30、81/38、85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、中間層、フッ素系樹脂層をこの順で有する積層体であって、
前記積層体の全光線透過率が85%以上であると共に、前記積層体のヘイズ値が35%以下であ
り、
前記中間層が、ポリエチレン樹脂と、変性ポリエチレン樹脂とを含み、
前記変性ポリエチレン樹脂は、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリエチレン樹脂であって、前記ポリエチレン樹脂中に酸官能基を有するものである積層体。
【請求項2】
基材層、中間層、フッ素系樹脂層をこの順で有する積層体であって、
前記積層体の全光線透過率が85%以上であると共に、前記積層体のヘイズ値が35%以下であり、
前記中間層が、ポリエチレン樹脂と、エラストマー成分と、エポキシ基を有する成分とを含み、
前記エポキシ基を有する成分は、エポキシ化ポリブタジエンである積層体。
【請求項3】
前記フッ素系樹脂層の前記中間層とは反対の面上に、第2の中間層、第2の基材層をさらにこの順で有する請求項1
又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記フッ素系樹脂層がポリクロロ三フッ化エチレンからなる請求項1
から3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記積層体の水蒸気透過率が0.5g/m2/24時間以下である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の積層体を含むブリスター容器。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の積層体を含むプレススルーパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、ブリスター容器、及びプレススルーパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
バリア性の高いフィルム積層体は、食品や医薬品等の包装材料に使用されている。医薬品分野において、錠剤やカプセルの個包装にはプレススルーパッケージ(以下、「PTP」と記載することがある)が用いられる。
内容物の劣化抑制のためPTPの形成材料である樹脂フィルムには、水蒸気に対するバリア性が求められる。例えば特許文献1~2には、水蒸気に対するバリア性を向上させるため、フッ素系樹脂フィルムを積層した積層体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-28508号公報
【文献】特開2012-135980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、バリア性の高いフッ素系の樹脂を用いて水蒸気に対するバリア性の高い積層体を製造しようと検討を行った。その結果、フッ素系樹脂フィルムを用いた積層体は水蒸気に対するバリア性が高いものの、積層体にしたときに視認性が低下しやすいという問題があることが分かった。一般的にPTPの形成材料である樹脂フィルムには、良好な視認性が求められる。
なお、本明細書において、視認性とは全光線透過率(光透過率)またはヘイズ値によって規定されるものである。この定義において、「視認性が低下する」とは、「全光線透過率が低下する」または「ヘイズ値が上昇する」ことを意味する。
【0005】
そこで発明者らは、更に誠意検討を行い、水蒸気透過率が低く、視認性が良好な積層体を発明するに至った。また、本発明は該積層体を用いたブリスター容器、及びプレススルーパッケージを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、基材層、中間層、フッ素系樹脂層をこの順で有する積層体であって、積層体の全光線透過率が85%以上であると共に、積層体のヘイズ値が35%以下である積層体を提供する。
【0007】
本発明の一態様においては、フッ素系樹脂層の中間層とは反対の面上に、第2の中間層、第2の基材層をさらにこの順で有する構成としてもよい。
【0008】
本発明の一態様においては、フッ素系樹脂層がポリクロロ三フッ化エチレンからなる構成としてもよい。
【0009】
本発明の一態様においては、中間層が、ポリエチレン樹脂と、変性ポリエチレン樹脂とを含む構成としてもよい。
【0010】
本発明の一態様においては、中間層が、ポリエチレン樹脂と、エラストマー成分と、エポキシ基を有する成分とを含む構成としてもよい。
【0011】
本発明の一態様においては、積層体の水蒸気透過率が0.5g/m2/24時間以下である構成としてもよい。
【0012】
本発明の一態様は、上記の積層体を含むブリスター容器を提供する。
【0013】
本発明の一態様は、上記の積層体を含むプレススルーパッケージを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、水蒸気透過率が低く、視認性が良好な積層体、該積層体を用いたブリスター容器、及びプレススルーパッケージが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1および
図2を参照しながら、本発明の実施形態に係る積層体、該積層体を用いたブリスター容器、及びプレススルーパッケージについて説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0017】
<積層体>
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る積層体について、
図1を参照して説明する。
図1は、第1実施形態の積層体の概略断面図である。
図1に示すように、本実施形態の積層体1は、基材層12、中間層10、フッ素系樹脂層11がこの順で積層されている。中間層10は接着剤層として機能し、中間層10を介して基材層12とフッ素系樹脂層11とが積層されている。
本実施形態の積層体1は、基材層12、中間層10、フッ素系樹脂層11の3層構造である。3層構造の積層体は、複雑な工程を経ずに製造でき、また、積層体の各膜の均一性がより向上するため好ましい。
以下、本発明を構成する各層について説明する。
【0018】
(基材層)
第1実施形態において、基材層12を形成する材料は、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、又はビニル系樹脂のいずれかである。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂などが挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。
ビニル系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。
本実施形態においては、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0019】
本実施形態においては、上記のいずれかの樹脂材料を基材層12に用いることにより、例えば絞り成形により成形する際の成形性が良好となる。
【0020】
第1実施形態において、基材層12の厚みは特に限定されず、一例を挙げると、下限値は50μm以上、80μm以上、100μm以上が挙げられる。また上限値は、250μm以下、220μm以下、200μm以下が挙げられる。
上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0021】
第1実施形態において、基材層12の厚みが上記下限値以上であると、積層体1の水蒸気透過率を低くすることができ、例えば医薬品用のプレススルーパッケージに用いた際に、高い防湿性を発揮し、水蒸気に起因する内容物の劣化を防止できる。
本実施形態においては、基材層12の厚みが上記上限値以下であると、積層体1の視認性が良好となりやすい。また、生産コストを削減できる。
【0022】
第1実施形態においては、厚みが上記上限値以下である基材層12を選択することで、積層体1の全光線透過率を所望の値に制御することができる。また、厚みが上記上限値以下である基材層12を選択することで、積層体1のヘイズ値を所望の値に制御することができる。
【0023】
(中間層)
本実施形態において、中間層はポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂とを含むか、ポリエチレン系樹脂と、エラストマー成分と、エポキシ基を含む樹脂組成物を含むかのいずれかであることが好ましい。
【0024】
本明細書においては、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂とを含む中間層を「中間層(1)」と称することがある。また、ポリエチレン系樹脂と、エラストマー成分と、エポキシ基を含む樹脂組成物を含む中間層を「中間層(2)」と称することがある。
【0025】
「中間層(1)」
中間層(1)に含まれるポリエチレン樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられ、直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましい。
【0026】
中間層(1)に含まれる変性ポリエチレン樹脂は、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリエチレン樹脂であって、ポリエチレン樹脂中に、カルボキシ基や無水カルボン酸基等の酸官能基を有するものである。本実施形態においては、ポリエチレン樹脂を酸変性して得られたものが好ましい。
酸変性方法としては、有機過酸化物や脂肪族アゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で、ポリエチレン樹脂と酸官能基含有モノマーとを溶融混練するグラフト変性が挙げられる。
【0027】
変性前のポリエチレン樹脂材料は、原料モノマーとしてエチレンを含むものであれば限定されず、公知のポリエチレン樹脂が適宜用いられる。具体的には、ポリエチレン樹脂として上述した例の他、;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体等のエチレン・α-オレフィン共重合体;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合樹脂等が挙げられる。
【0028】
酸官能基含有モノマーは、エチレン性二重結合と、カルボキシ基又はカルボン酸無水物基とを同一分子内に持つ化合物であって、各種の不飽和モノカルボン酸、ジカルボン酸、又はジカルボン酸の酸無水物が挙げられる。
カルボキシ基を有する酸官能基含有モノマー(カルボキシ基含有モノマー)としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、テトラヒドロフタル酸、エンド-ビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸(エンディック酸)などのα,β-不飽和カルボン酸モノマーが挙げられる。
カルボン酸無水物基を有する酸官能基含有モノマー(カルボン酸無水物基含有モノマー)としては、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水エンディック酸などの不飽和ジカルボン酸無水物モノマーが挙げられる。
これらの酸官能基含有モノマーは、中間層を構成する成分において1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
なかでも酸官能基含有モノマーとしては、酸無水物基を有する酸官能基含有モノマーが好ましく、カルボン酸無水物基含有モノマーがより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
酸変性に用いた酸官能基含有モノマーの一部が未反応である場合は、未反応の酸官能基含有モノマーによる接着力の低下を防ぐため、予め未反応の酸官能基含有モノマーを除去したものを用いることが好ましい。
【0030】
中間層(1)に含まれる変性ポリエチレン樹脂は無水マレイン酸変性ポリエチレンであることが好ましい。
【0031】
中間層(1)においては、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂の合計を質量100%としたとき、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂の合計量に対するポリエチレン樹脂の割合の下限値は、10%以上が好ましく、20%以上がさらに好ましい。また、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂の合計量に対するポリエチレン樹脂の割合の上限値は、70%以下が好ましく、60%以下がさらに好ましい。例えば、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂との混合比は、[ポリエチレン樹脂]:[変性ポリエチレン樹脂]=20:80~60:40を取ることができる。
【0032】
中間層にポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂との混合材料を用いることにより、フッ素系樹脂層と基材層との間の密着性が向上する。このため層間剥離が生じにくい積層体を提供できる。
【0033】
「中間層(2)」
中間層(2)は、ポリエチレン系樹脂と、エラストマー成分と、エポキシ基を有する成分とを含む樹脂組成物を含む。
【0034】
中間層(2)に含まれるポリエチレン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂および変性ポリエチレン系樹脂の混合物に含まれるポリエチレン系樹脂と同様である。上記樹脂組成物に含まれるポリエチレン系樹脂は、バイオマスポリエチレン、石油由来のポリエチレン、両者の混合物のいずれでもよい。
【0035】
中間層(2)に含まれるポリエチレン系樹脂においては、上記樹脂組成物中のポリエチレン系樹脂はメタロセン系触媒により重合されたポリエチレンが好ましい。なかでも、メタロセン系触媒により重合されたC4-LLDPE、C6-LLDPE、C8-LLDPE等のエチレン-αオレフィン共重合体、長鎖分岐ポリエチレン等が好適な例である。
メタセロン系触媒により重合されたポリエチレン系樹脂は、分子量分布が狭い傾向にある。このため接着阻害要因となりうる低分子量成分が少なく、接着剤として用いた場合に高い接着性が得られると考えられる。
【0036】
上記樹脂組成物中のポリエチレン系樹脂の密度は、0.890g/cm3以上0.940g/cm3以下が好ましく、0.910cm3以上0.930g/cm3以下がより好ましい。
【0037】
上記樹脂組成物中のポリエチレン系樹脂の含有量は、55質量部以上90質量部以下であり、60質量部以上80質量部以下が好ましい。
ポリエチレン系樹脂の含有量が上記上限値以下であると、後述のエラストマー成分との粘着性を発揮し、接着性が高くなる。
【0038】
中間層(2)に含まれるエラストマー成分としては、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー等が挙げられる。但し、エラストマー成分は後述するエポキシ基を有する成分を除く。
なかでも、スチレン系エラストマーが好ましく、例えば、ポリスチレン等からなるハードセグメントと、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等からなるソフトセグメントとを有するブロック共重合体が挙げられる。スチレン系エラストマーに使用可能なスチレン系重合体としては、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-エチレン共重合体等の芳香族オレフィン-脂肪族オレフィンの共重合体が挙げられる。
【0039】
スチレン系エラストマーはスチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SBS)に水素添加して完全に分子内の不飽和結合を開環させたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)であることが好ましい。
またそのスチレン含有率は8質量%以上24質量%以下であることが好ましく、10質量%以上20質量%以下がより好ましい。
スチレン含有率が上記上限値以下であると、樹脂の硬化を抑制でき、接着性の低下を抑制できる。
【0040】
中間層(2)に含まれるエラストマー成分の具体的な例としては、JSR株式会社のダイナロン、旭化成ケミカルズ株式会社のタフテックHシリーズ、クレイトンポリマー株式会社のクレイトンGポリマーなどが挙げられる。
【0041】
中間層(2)において、エラストマー成分の含有量は、10質量部以上45質量部以下であり、20質量部以上40質量部以下が好ましい。
エラストマー成分の含有量が上記上限値以下であると、接着剤層を形成したときの引張強度の低下を抑制し、接着強度の低下を防止できる。
【0042】
上記ポリエチレン系樹脂と上記エラストマー成分との合計は100質量部とする。
【0043】
中間層(2)に含まれるエポキシ基を有する成分は、エポキシ基およびビニル基を有する成分が好ましい。エポキシ基およびビニル基を有する成分は、1,2‐ビニル構造を有する成分が好ましく、ブタジエンを部分的にエポキシ化した、エポキシ化ポリブタジエンが好ましい。1,2-ポリブタジエンを部分的にエポキシ化したものが特に好ましい。
【0044】
エポキシ基を有する成分の具体的な例としては、日本曹達株式会社の液状ポリブタジエンJP-100,JP-200や株式会社アデカのアデカサイザーBF-1000などが挙げられる。
【0045】
エポキシ基を有する成分の数平均分子量は500以上4,000以下であることが好ましい。
エポキシ基を有する成分の数平均分子量が上記上限値以下であると、常温で固形状態となることによる粘着性の低下を抑制でき、接着性の低下を防止できる。
本実施形態において数平均分子量は、GPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィー)によって測定されるポリスチレン換算の値とする。
【0046】
中間層(2)においては、上記ポリエチレン系樹脂および上記エラストマー成分の総量100質量部に対する、エポキシ基を有する成分の含有量が0.1質量部以上1.5質量部以下であり、0.5質量部以上1.0質量部以下が好ましい。
エポキシ基を有する成分の含有量が上記上限値以下であると、接着阻害の要因となる樹脂組成物中の低分子成分を低減できる。
【0047】
中間層(2)において、上記エラストマー成分と、エポキシ基を有する成分とは共通する繰り返し単位を有し、互いに相溶する。エラストマー成分とエポキシ基を有する成分とは、スチレン系エラストマー同士、アクリル系エラストマー同士の組み合わせが好ましい。
【0048】
中間層(2)の樹脂組成物は、ポリエチレン系樹脂、エラストマー成分およびエポキシ基を有する成分を、それぞれ特定の配合比で混合したことを特徴とする。本実施形態の樹脂組成物は、エポキシ基を有する成分中のエポキシ基がフッ素系樹脂のフッ素成分と相溶し、フッ素系樹脂との接着性に優れる。エポキシ基を有すると、金属材料との接着も可能となる。
【0049】
中間層(2)においては、ポリエチレン系樹脂、エラストマー成分およびエポキシ基を有する成分を、それぞれ特定の配合比で混合したことにより、ポリエチレン系樹脂が「海」、エラストマー成分が「島」に相当する、いわゆる海島構造を形成する。さらに、エラストマー成分にエポキシ基を有する成分が相溶することにより、エポキシ基を有する成分を樹脂組成物中に均一に分散させることができる。これにより、エポキシ基が、ポリエチレン系樹脂とエラストマー成分とで保護され、水分によるエポキシ基の開環を抑制できると推察される。
【0050】
第1実施形態において、中間層10の厚みは、5μm以上50μm以下であり、10μm以上30μm以下であることが好ましい。
中間層10の厚みが上記下限値以上であることにより、密着性を向上させ、層間剥離を防止できる。また、中間層10の厚みが上記上限値以下であることにより、厚膜化に起因する視認性の低下を防止できる。
【0051】
厚みが上記上限値以下である中間層10を選択することで、積層体1の全光線透過率を所望の値に制御することができる。また、厚みが上記上限値以下である中間層10を選択することで、積層体1のヘイズ値を所望の値に制御することができる。
【0052】
通常、基材層12と中間層10との間もしくは中間層10とフッ素系樹脂層11との間に、密着性不良の部分があると、その部分が散乱源となって、積層体1の透過光が散乱する。この透過光が散乱することで、積層体1のヘイズ値が上昇すると考えられる。すなわち、積層体1の視認性が低下すると考えられる。
上述した構成の中間層10を用いることで、中間層10の密着性不良を抑制することができる。したがって、本実施形態においては、この中間層10の密着性不良に起因した、視認性の低下を抑制することができる。
【0053】
以上のような材料を用いて中間層10を形成することで、基材層12と中間層10もしくは中間層10とフッ素系樹脂層11での層間剥離が生じにくい積層体を提供できる。また、中間層10の密着性不良を抑制することで、これに起因した、視認性の低下を抑制することができる。
【0054】
(フッ素系樹脂層)
フッ素系樹脂層11に用いられるフッ素系樹脂材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(EPA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、及びこれらの1種又は2種以上の混合物などを用いることができ、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)が好ましい。
【0055】
フッ素系樹脂層11の厚みは、第1実施形態であっても、後述の第2実施形態であっても下限値は5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。また、上限値は、300μm以下が好ましく、200μm以下が好ましい。さらに好ましくは50μm以下であり、45μm以下がとりわけ好ましい。
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0056】
フッ素系樹脂層11の厚みが上記下限値以上であると、積層体1の水蒸気透過率を低くすることができ、例えば医薬品用のプレススルーパッケージに用いた際に、高い防湿性を発揮し、水蒸気に起因する内容物の劣化を防止できる。
フッ素系樹脂層11の厚みが上記上限値以下であると、積層体1の視認性が良好となりやすい。また、生産コストを削減できる。
【0057】
厚みが上記上限値以下であるフッ素系樹脂層11を選択することで、積層体1の全光線透過率を所望の値に制御することができる。また、厚みが上記上限値以下であるフッ素系樹脂層11を選択することで、積層体1のヘイズ値を所望の値に制御することができる。
【0058】
このような構成の基材層12、中間層10、フッ素系樹脂層11の3層構造からなる積層体1は、視認性が良好である。本実施形態の積層体1において、全光線透過率が85%以上であると共に、ヘイズ値が35%以下である。積層体1の全光線透過率およびヘイズ値が上記値であることにより、例えば絞り成形により製造される成形品の視認性が良好となりやすい。
【0059】
第1実施形態であっても、後述の第2実施形態であっても、積層体1の全光線透過率は好ましくは88%以上、より好ましくは90%以上である。また、本実施形態の積層体1において、ヘイズ値が好ましくは25%以下、より好ましくは15%以下である。
本実施形態において、全光線透過率およびヘイズ値の好適な範囲は、任意に組み合わせることができる。
【0060】
本明細書において、積層体1の全光線透過率は、JIS K7105、「プラスチックの光学的特性試験方法」に基づいて測定される値である。
本明細書において、積層体1のヘイズ値は、JIS K7136、「プラスチック-透明材料のヘーズの求め方」に基づいて測定される値である。
【0061】
通常、界面を挟んで隣り合う二つの層の屈折率差が小さいほど、界面での反射や散乱が生じにくく、全光線透過率が高くなりやすい。本実施形態において、基材層12と中間層10もしくは中間層10とフッ素系樹脂層11の屈折率差が0.1程度と小さくなるように構成されている。このような構成の中間層10を選択することで良好な視認性を実現できる。すなわち、このような構成の中間層10を選択することで、積層体1の全光線透過率を85%以上とすることができる。また、積層体1のヘイズ値を35%以下とすることができる。
【0062】
さらに、本実施形態の積層体1は、黄色度指数(YI)が、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である。黄色度指数(YI)は低いほど好ましい。
本明細書において、積層体1の黄色度指数(YI)は、JIS K 7105:1981、「『光線透過率及び全光線反射率の測定法B』による求め方」に基づいて測定される値である。
【0063】
第1実施形態の積層体は、前記基材層の原料となる樹脂と、前記中間層の原料となる樹脂と、前記フッ素系樹脂層の原料となる樹脂と、を同時に溶融押出成形することにより製造することが好ましい。
【0064】
以上のような構成によれば、水蒸気透過率が低く、視認性が良好な積層体を提供できる。
【0065】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る積層体について、
図2を参照して説明する。
図2は、第2実施形態の積層体の概略断面図である。
図2に示す本実施形態の積層体2は、基材層12、中間層10、フッ素系樹脂層11、第2の中間層13、第2の基材層14がこの順で積層されている。
5層構成の積層体は、積層体の強度が高まるため好ましい。また、5層構成の積層体は、積層構成両面側で対称となることにより、カールが生じにくくなるため好ましい。
本実施形態における、基材層、中間層、フッ素系樹脂層を構成する各材料については、前記第1実施形態において説明した各材料と同様である。
【0066】
第2実施形態において、基材層を構成する材料と第2の基材層と構成する材料とは、同一であってもよく異なっていてもよいが、同一の樹脂材料からなることが好ましい。
基材層に対する第2の基材層の厚みが、0.5倍~1.1倍であることが好ましく、0.9倍~1.1倍であることがより好ましく、0.95倍~1.05倍であることが特に好ましい。
【0067】
第2実施形態において、中間層を構成する材料と第2の中間層と構成する材料とは、同一であってもよく異なっていてもよいが、同一の樹脂材料からなることが好ましい。
基材層に対する第2の基材層の厚みが、0.9倍~1.1倍であることがより好ましく、0.95倍~1.05倍であることが特に好ましい。
【0068】
第2実施形態において、基材層12の厚みは特に限定されない。一例を挙げると、基材層12の厚みの下限値は、20μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、40μm以上であってもよい。また、基材層12の厚みの上限値は、120μm以下であってもよく、110μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。
上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0069】
第2実施形態において、中間層10の厚みの下限値は、5μm以上であり、10μm以上であることが好ましい。また、中間層10の厚みの上限値は、50μm以下であり、30μm以下であることが好ましい。
上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0070】
また、第2実施形態の積層体は、前記基材層の原料となる樹脂と、前記中間層の原料となる樹脂と、前記フッ素系樹脂層の原料となる樹脂と、前記第2の中間層の原料となる樹脂と、前記第2の基材層の原料となる樹脂と、を同時に溶融押出成形することにより製造することが好ましい。
【0071】
上述した積層体は、第1実施形態と第2実施形態とのいずれの実施形態においても総膜厚が300μm以下であることが好ましく、290μm以下であることがより好ましい。
【0072】
また、積層体の水蒸気透過率は、第1実施形態と第2実施形態とのいずれにおいても0.5g/m2/24時間以下であることが好ましく、0.4g/m2/24時間以下がより好ましく、0.3g/m2/24時間以下が特に好ましい。
【0073】
なお、第1実施形態に記載したポリエチレン系樹脂と、エラストマー成分と、エポキシ基を有する成分とを含む樹脂組成物は、第2実施形態の積層体における中間層10、と第2の中間層13とのいずれか一方またはその両方にも適用することが可能である。例えば、中間層10がポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂との組成物から形成され、第2の中間層13が上記樹脂組成物から形成されてもよい。また、中間層10が上記樹脂組成物から形成され、第2の中間層13がポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂との組成物から形成されてもよい。5層構成の積層体は、積層構成両面側で対称となることにより、カールが生じにくくなることが分かっている。そのため、中間層10および第2の中間層13が同一の構成材料を含むことがより好ましい。
【0074】
以上のような構成によれば、第1実施形態と同様に、水蒸気透過率が低く、視認性が良好な積層体を提供できる。
【0075】
<ブリスター容器、プレススルーパッケージ>
本発明の実施形態に係るブリスター容器、プレススルーパッケージは、前記本発明の第1又は第2実施形態の積層体を深絞り成形することによって製造される。
前記本発明の第1実施形態の積層体1を用いる場合、フッ素系樹脂層11が外側となるように成形する。
本発明の実施形態に係るプレススルーパッケージは、例えば錠剤やカプセル剤の個包装に用いられる。プレススルーパッケージやブリスター容器用に有用である。
前記本発明の積層体は、水蒸気透過率が低いため、錠剤やカプセル等の内容物の劣化を防止できる。
【0076】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0078】
<3層構成の積層体>
[実施例1~4、比較例1]
基材層、中間層、フッ素系樹脂層をこの順で有する3層構成の積層体を製造した。表1に示す各層の原料となる樹脂をそれぞれ別々に加熱溶融したものを、同時多層押出成形が可能な押出機を用いて同時多層製膜を行って製膜し、基材層、中間層、フッ素系樹脂層をこの順で有する3層構成の積層体を得た。
【0079】
【0080】
表1中、各記号は以下の材料を意味する。[ ]内の数値は各層の厚みである。
・PET;ポリエチレンテレフタレート樹脂。三菱化学(株)製NOVAPEXI4を使用。
・PCTFE;ポリクロロ三フッ化エチレン樹脂。ダイキン工業(株)製DF0050-C1を使用。
・中間層1~4;下記表2に示す中間層1~4。表2中、各材料の比率は質量比(%)である。
【0081】
【0082】
表2の材料は、下記の市販品を用いた。
・エラストマー:Kraton G1657M(スチレン含有率13質量%、ρ=0.90g/cm3、メルトマスフローレイト=22g/10分(230℃、5kgf)、クレイトン(株)製)
・エポキシ化ポリブタジエン:エポキシ化1,2-ポリブタジエン、ρ=0.99g/min、Mn=1,000、(株)アデカ製
【0083】
<評価1>
実施例1~4、比較例1の各積層体について、以下の各試験を行った。
【0084】
[水蒸気透過率測定]
上述の<3層構成の積層体>に従って得られた積層体について、JIS K7129:2008(A法)に準じて、水蒸気透過度計(LYSSY社製、製品名「L80-5000」を使用し、セル温度40℃、相対湿度差90%RHの条件下にて測定した。水蒸気透過率は、24時間に透過した面積1平方メートル当たりの水蒸気のグラム数[g/(m2・24h)]で表す。
【0085】
[全光線透過率測定]
上述の<3層構成の積層体>に従って得られた積層体について、JIS K7105、「プラスチックの光学的特性試験方法」に準じて、ヘイズメーター(Haze Meter、NDH2000)を用い、温度23℃、相対湿度50%の条件下にて測定した。
【0086】
[ヘイズ値測定]
上述の<3層構成の積層体>に従って得られた積層体について、JIS K7136、「プラスチック-透明材料のヘーズの求め方」に準じて、ヘイズメーター(Haze Meter、NDH2000)を用い、温度23℃、相対湿度50%の条件下にて測定した。
【0087】
[視認性]
上述の[全光線透過率測定]および[ヘイズ値測定]の結果に基づいて、以下の基準で評価した。なお、本実施例において、◎、〇および△は良品とし、×は不良品と判断した。
◎:全光線透過率が90%以上であり、ヘイズ値が20%未満のもの。
〇:全光線透過率が85%以上であり、ヘイズ値が35%以下のもの。
△:全光線透過率が85%未満である、または、ヘイズ値が35%を超えるもの。
×:全光線透過率が85%未満であり、ヘイズ値が35%を超えるもの。
【0088】
【0089】
上記結果に示した通り、本発明を適用した実施例1~4の積層体は、水蒸気透過率が低く、視認性にも優れていた。比較例1は、水蒸気透過率は実施例と同等であったものの、基材層と中間層もしくは中間層とフッ素樹脂層の中間層での密着性不良に起因して、視認性が低かったと思われる。
【0090】
<5層構成の積層体>
[実施例5~8、比較例2]
基材層、中間層、フッ素系樹脂層、第2の中間層、第2の基材層をこの順で有する5層構成の積層体を製造した。表4に示す各層の原料となる樹脂をそれぞれ別々に加熱溶融したものを、同時多層押出成形が可能な押出機を用いて同時多層製膜を行って製膜し、基材層、中間層、フッ素系樹脂層、第2の中間層、第2の基材層をこの順で有する5層構成の積層体を得た。
【0091】
【0092】
表4中、各記号は以下の材料を意味する。[ ]内の数値は各層の厚みである。
・PET;ポリエチレンテレフタレート樹脂。三菱化学(株)製NOVAPEXI4を使用。
・PCTFE;ポリクロロ三フッ化エチレン樹脂。ダイキン工業(株)製DF0050-C1を使用。
・ECTFE;クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体。
・中間層1~4;上記表2に示す中間層1~4。
【0093】
<評価2>
実施例5~8、比較例2の各積層体について、<評価1>と同様の方法により、[水蒸気透過率]、[全光線透過率測定]、[ヘイズ値測定][視認性]について評価した。その結果を表5に記載する。
【0094】
【0095】
上記結果に示した通り、本発明を適用した実施例5~8の積層体は、水蒸気透過率が低く、視認性にも優れていた。比較例2は、水蒸気透過率は実施例と同等であったものの、基材層と中間層もしくは中間層とフッ素樹脂層の中間層での密着性不良に起因して、視認性が低かったものと思われる。
【符号の説明】
【0096】
1,2…積層体、10…中間層、11…フッ素系樹脂層、12…基材層、13…第2の中間層、14…第2の基材層