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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】硬さ試験機及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/42 20060101AFI20220104BHJP
   G06T 7/174 20170101ALI20220104BHJP
【FI】
G01N3/42 F
G06T7/174
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017209201
(22)【出願日】2017-10-30
(65)【公開番号】P2019082364
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】定廣 眞一
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-210893(JP,A)
【文献】特開2005-172663(JP,A)
【文献】特開2013-104864(JP,A)
【文献】特開2016-121980(JP,A)
【文献】特開2005-184787(JP,A)
【文献】特開平08-201260(JP,A)
【文献】特開2014-190890(JP,A)
【文献】特開2008-190900(JP,A)
【文献】特開2014-126417(JP,A)
【文献】米国特許第04627096(US,A)
【文献】中国特許出願公開第104422629(CN,A)
【文献】特開2018-165638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00 - 3/62 、
G06T 7/00 - 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機において、
くぼみが形成される前及びくぼみが形成された後の試料の表面の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段により取得された画像に基づいてくぼみ領域を抽出する、互いに異なる手法の複数のくぼみ領域抽出手段と、
前記複数のくぼみ領域抽出手段により抽出されたくぼみ領域が、予め設定された基準くぼみ条件と合致するか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により合致すると判断されたくぼみ領域に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出手段と、を備え、
前記画像取得手段は、くぼみが形成される前の試料の表面の画像を背景画像として取得すると共に、くぼみが形成された後の試料の表面の画像を測定画像として取得し、
前記複数のくぼみ領域抽出手段は、
前記背景画像と前記測定画像との差分画像に基づいてくぼみ領域を抽出する第1のくぼみ領域抽出手段と、
前記背景画像を複数のブロックに分割して当該分割したブロックごとに輝度情報のヒストグラムを作成し、前記測定画像を前記複数のブロックに分割して当該分割した各ブロック内の画素ごとに、当該画素が含まれるブロックと対応する前記背景画像内のブロックにおいて作成されたヒストグラムを参照して当該画素の背景画像らしさを判定し、その判定結果に基づいてくぼみ領域を抽出する第2のくぼみ領域抽出手段と、
前記測定画像を予め定められた複数の縮尺率のうち選択された縮尺率で縮小して縮小画像を生成し、前記縮小画像に対してパターンマッチング処理を行ってくぼみ領域を抽出する第3のくぼみ領域抽出手段と、
を含み、
前記判断手段は、前記複数のくぼみ領域抽出手段のいずれかによりくぼみ領域が抽出されると、前記基準くぼみ条件と合致するか否かを判断し、合致しない場合に他のくぼみ領域抽出手段により抽出されたくぼみ領域に対して前記基準くぼみ条件と合致するか否かを判断することを特徴とする硬さ試験機。
【請求項2】
前記複数のくぼみ領域抽出手段には、くぼみ領域抽出処理を実行する実行順位が予め設定されていることを特徴とする請求項1に記載の硬さ試験機。
【請求項3】
前記実行順位は、予め、所定の硬度を有する標準試験片を用いて各くぼみ領域抽出手段によりくぼみ領域を抽出した結果に基づく、抽出精度が高いものが先となる順番であることを特徴とする請求項2に記載の硬さ試験機。
【請求項4】
前記画像取得手段により取得されたくぼみが形成される前の画像に基づいて、前記複数のくぼみ領域抽出手段のうち、試料に対応したくぼみ領域抽出手段を選択する選択手段を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の硬さ試験機。
【請求項5】
試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機のコンピュータを、
くぼみが形成される前及びくぼみが形成された後の試料の表面の画像を取得する画像取得手段、
前記画像取得手段により取得された画像に基づいてくぼみ領域を抽出する、互いに異なる手法の複数のくぼみ領域抽出手段、
前記複数のくぼみ領域抽出手段により抽出されたくぼみ領域が、予め設定された基準くぼみ条件と合致するか否かを判断する判断手段、
前記判断手段により合致すると判断されたくぼみ領域に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出手段、
として機能させ
前記画像取得手段は、くぼみが形成される前の試料の表面の画像を背景画像として取得すると共に、くぼみが形成された後の試料の表面の画像を測定画像として取得し、
前記複数のくぼみ領域抽出手段は、
前記背景画像と前記測定画像との差分画像に基づいてくぼみ領域を抽出する第1のくぼみ領域抽出手段と、
前記背景画像を複数のブロックに分割して当該分割したブロックごとに輝度情報のヒストグラムを作成し、前記測定画像を前記複数のブロックに分割して当該分割した各ブロック内の画素ごとに、当該画素が含まれるブロックと対応する前記背景画像内のブロックにおいて作成されたヒストグラムを参照して当該画素の背景画像らしさを判定し、その判定
結果に基づいてくぼみ領域を抽出する第2のくぼみ領域抽出手段と、
前記測定画像を予め定められた複数の縮尺率のうち選択された縮尺率で縮小して縮小画像を生成し、前記縮小画像に対してパターンマッチング処理を行ってくぼみ領域を抽出する第3のくぼみ領域抽出手段と、
を含み、
前記判断手段は、前記複数のくぼみ領域抽出手段のいずれかによりくぼみ領域が抽出されると、前記基準くぼみ条件と合致するか否かを判断し、合致しない場合に他のくぼみ領域抽出手段により抽出されたくぼみ領域に対して前記基準くぼみ条件と合致するか否かを判断するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬さ試験機及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の試験力で圧子を試料(ワーク)に押し付けて形成したくぼみの寸法に基づいて試料の硬さを計測する硬さ試験機が知られている。
例えば、ビッカース硬さ試験機は、正四角錐の圧子を試料の表面に押し込んで形成したくぼみの対角線長さを計測し、この計測したくぼみの対角線長さに基づいて、硬さを算出している。
【0003】
上記の硬さ試験機においては、試料にくぼみを形成する前(打刻前)に試料の表面を撮像して背景画像を取得し、試料にくぼみを形成した後(打刻後)に試料の表面を撮像して得られた測定画像から背景画像を差し引いて差分画像を取得する処理(背景差分処理)を行うことで、くぼみ領域を抽出し易くして、くぼみの頂点位置を測定する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-210893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の技術は、輝度情報をそのまま利用しているため、例えば、食刻(エッチング)を施した試料や切削痕が多く残る試料などの、測定される画像が複雑な輝度分布を成している試料に対しては、単純に画像の差分を取るだけでは、くぼみ領域の抽出が正確にできないことがある。
【0006】
本発明は、測定画像からくぼみ領域を精度よく抽出して測定結果の精度を向上させることが可能な硬さ試験機及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の硬さ試験機は、
試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機において、
くぼみが形成される前及びくぼみが形成された後の試料の表面の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段により取得された画像に基づいてくぼみ領域を抽出する、互いに異なる手法の複数のくぼみ領域抽出手段と、
前記複数のくぼみ領域抽出手段により抽出されたくぼみ領域が、予め設定された基準くぼみ条件と合致するか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により合致すると判断されたくぼみ領域に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出手段と、を備え、
前記画像取得手段は、くぼみが形成される前の試料の表面の画像を背景画像として取得すると共に、くぼみが形成された後の試料の表面の画像を測定画像として取得し、
前記複数のくぼみ領域抽出手段は、
前記背景画像と前記測定画像との差分画像に基づいてくぼみ領域を抽出する第1のくぼみ領域抽出手段と、
前記背景画像を複数のブロックに分割して当該分割したブロックごとに輝度情報のヒストグラムを作成し、前記測定画像を前記複数のブロックに分割して当該分割した各ブロック内の画素ごとに、当該画素が含まれるブロックと対応する前記背景画像内のブロックにおいて作成されたヒストグラムを参照して当該画素の背景画像らしさを判定し、その判定結果に基づいてくぼみ領域を抽出する第2のくぼみ領域抽出手段と、
前記測定画像を予め定められた複数の縮尺率のうち選択された縮尺率で縮小して縮小画像を生成し、前記縮小画像に対してパターンマッチング処理を行ってくぼみ領域を抽出する第3のくぼみ領域抽出手段と、
を含み、
前記判断手段は、前記複数のくぼみ領域抽出手段のいずれかによりくぼみ領域が抽出されると、前記基準くぼみ条件と合致するか否かを判断し、合致しない場合に他のくぼみ領域抽出手段により抽出されたくぼみ領域に対して前記基準くぼみ条件と合致するか否かを判断することを特徴とする。
【0008】
また、本発明のプログラムは、
試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機のコンピュータを、
くぼみが形成される前及びくぼみが形成された後の試料の表面の画像を取得する画像取得手段、
前記画像取得手段により取得された画像に基づいてくぼみ領域を抽出する、互いに異なる手法の複数のくぼみ領域抽出手段、
前記複数のくぼみ領域抽出手段により抽出されたくぼみ領域が、予め設定された基準くぼみ条件と合致するか否かを判断する判断手段、
前記判断手段により合致すると判断されたくぼみ領域に基づいて、前記試料の硬さを算出する硬さ算出手段、
として機能させ
前記画像取得手段は、くぼみが形成される前の試料の表面の画像を背景画像として取得すると共に、くぼみが形成された後の試料の表面の画像を測定画像として取得し、
前記複数のくぼみ領域抽出手段は、
前記背景画像と前記測定画像との差分画像に基づいてくぼみ領域を抽出する第1のくぼみ領域抽出手段と、
前記背景画像を複数のブロックに分割して当該分割したブロックごとに輝度情報のヒストグラムを作成し、前記測定画像を前記複数のブロックに分割して当該分割した各ブロック内の画素ごとに、当該画素が含まれるブロックと対応する前記背景画像内のブロックにおいて作成されたヒストグラムを参照して当該画素の背景画像らしさを判定し、その判定結果に基づいてくぼみ領域を抽出する第2のくぼみ領域抽出手段と、
前記測定画像を予め定められた複数の縮尺率のうち選択された縮尺率で縮小して縮小画像を生成し、前記縮小画像に対してパターンマッチング処理を行ってくぼみ領域を抽出する第3のくぼみ領域抽出手段と、
を含み、
前記判断手段は、前記複数のくぼみ領域抽出手段のいずれかによりくぼみ領域が抽出されると、前記基準くぼみ条件と合致するか否かを判断し、合致しない場合に他のくぼみ領域抽出手段により抽出されたくぼみ領域に対して前記基準くぼみ条件と合致するか否かを判断するためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測定画像からくぼみ領域を精度よく抽出して測定結果の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る硬さ試験機の全体構成を示す斜視図である。
図2】本発明に係る硬さ試験機の試験機本体を示す模式図である。
図3】本発明に係る硬さ試験機の硬さ測定部を示す模式図である。
図4】本発明に係る硬さ試験機の制御構造を示すブロック図である。
図5】本発明に係る硬さ試験機の動作を示すフローチャートである。
図6】第1のくぼみ領域抽出処理を示すフローチャートである。
図7】(a)は背景画像の一例を示す図であり、(b)は測定画像の一例を示す図であり、(c)は差分画像の一例を示す図である。
図8】第2のくぼみ領域抽出処理を示すフローチャートである。
図9】(a)は背景画像の一例を示す図であり、(b)は背景画像を複数のブロックに分割した様子の一例を示す図である。
図10】(a)は測定画像の一例を示すであり、(b)は測定画像を複数のブロックに分割した様子の一例を示す図である。
図11】測定画像から抽出されたくぼみ領域を含む抽出画像の一例を示す図である。
図12】第3のくぼみ領域抽出処理を示すフローチャートである。
図13】(a)は測定画像を45°回転させた一例を示す図であり、(b)は縮小画像の一例を示す図である。
図14】走査用モデルの一例を示す図である。
図15】縮小画像周辺のマッチング処理を行わない領域を示す図である。
図16図14の走査用モデルを5つの領域に区分けした一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、図1におけるX方向を左右方向とし、Y方向を前後方向とし、Z方向を上下方向とする。また、X-Y面を水平面とする。
【0012】
[1.構成の説明]
図1は、本実施の形態における硬さ試験機100の全体構成を示す斜視図である。
硬さ試験機100は、例えば、圧子14a(図3参照)の平面形状が矩形状に形成されたビッカース硬さ試験機である。図1に示すように、硬さ試験機100は、例えば、試験機本体10と、制御部6と、操作部7と、モニター8と、を備えて構成されている。
【0013】
図2は、硬さ試験機100の試験機本体10を示す模式図である。
図2に示すように、試験機本体10は、例えば、試料Sの硬さ測定を行う硬さ測定部1と、試料Sを載置する試料台2と、試料台2を移動させるXYステージ3と、試料Sの表面に焦点を合わせるためのAFステージ4と、試料台2(XYステージ3、AFステージ4)を昇降する昇降機構部5と、を備えて構成されている。
【0014】
図3は、試験機本体10の硬さ測定部1を示す模式図である。
図3に示すように、硬さ測定部1は、例えば、試料Sの表面を照明する照明装置11と、試料Sの表面を撮像するCCDカメラ12と、圧子14aを備える圧子軸14と対物レンズ15を備え、回転することにより圧子軸14と対物レンズ15との切り替えが可能なターレット16と、を備えて構成されている。
【0015】
照明装置11は、光を照射することにより試料Sの表面を照明するものである。照明装置11から照射される光は、レンズ1a、ハーフミラー1d、ミラー1e、及び対物レンズ15を介して試料Sの表面に到達する。
【0016】
CCDカメラ12は、試料Sの表面から対物レンズ15、ミラー1e、ハーフミラー1d、ミラー1g、及びレンズ1hを介して入力された反射光に基づき、試料Sの表面や圧子14aにより試料Sの表面に形成されるくぼみを撮像して画像データを取得する。そして、CCDカメラ12は、複数フレームの画像データを同時に蓄積、格納可能なフレームグラバー17を介して、取得した画像データを制御部6に出力する。
すなわち、CCDカメラ12は、CPU61とともに画像取得手段として機能する。
【0017】
圧子軸14は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動される負荷機構部(図示省略)により試料台2に載置された試料Sに向けて移動され、先端部に備えた圧子14aを試料Sの表面に所定の試験力で押し付ける。本実施形態では、圧子14aとして、ビッカース用の四角錐圧子(対面角が136±0.5°)を使用する。
【0018】
対物レンズ15は、それぞれ異なる倍率からなる集光レンズであって、ターレット16の下面に複数保持されている。対物レンズ15は、ターレット16の回転により試料Sの上方に配置されることで、照明装置11から照射される光を一様に試料Sの表面に照射させる。
【0019】
ターレット16は、下面に圧子軸14と複数の対物レンズ15を取り付け可能に構成される。ターレット16は、Z軸方向を中心に回転することにより、圧子軸14及び複数の対物レンズ15の中のいずれか一つを試料Sの上方に配置可能なように構成されている。
すなわち、圧子軸14を試料Sの上方に配置することで試料Sの表面にくぼみを形成することができ、対物レンズ15を試料Sの上方に配置することで形成されたくぼみを観察することができるようになっている。
【0020】
図2に戻って、試料台2は、上面に載置される試料Sを、試料固定部2aで固定する。
XYステージ3は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動する駆動機構部(図示省略)により駆動され、試料台2を圧子14aの移動方向(Z方向)に垂直な方向(X,Y方向)に移動させる。
AFステージ4は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動され、CCDカメラ12が撮像した画像データに基づき試料台2を微細に昇降させることで、試料Sの表面に焦点を合わせる。
昇降機構部5は、制御部6が出力する制御信号に応じて駆動され、試料台2(XYステージ3、AFステージ4)をZ方向に移動させることで、試料台2と対物レンズ15との間の相対距離を変化させる。
【0021】
図1に戻って、操作部7は、例えば、キーボード71と、マウス72と、を備えて構成され、硬さ試験を行う際のユーザによる入力操作を受け付ける。操作部7は、ユーザによる所定の入力操作を受け付けると、その入力操作に応じた所定の操作信号を生成して、制御部6へと出力する。
具体的には、操作部7は、ユーザが、くぼみの合焦位置を決定する条件を選択する操作を受け付ける。
また、操作部7は、ユーザが、試料台2(昇降機構部5及びAFステージ4)の移動する範囲(試料台2と対物レンズ15との間の相対距離の範囲)を指定する操作を受け付ける。
また、操作部7は、ユーザが、硬さ試験機100による硬さ試験を実施する際の試験条件値を入力する操作を受け付ける。入力された試験条件値は、制御部6に送信される。ここで、試験条件値とは、例えば、試料Sの材質、圧子14aにより試料Sに負荷される試験力(N)、対物レンズ15の倍率、等の値である。
また、操作部7は、ユーザが、くぼみの合焦位置の決定を手動で行う手動モード又は自動で行う自動モードのいずれかを選択する操作や、ユーザが、硬さ試験を実施する際の試験位置をプログラミングする操作などを受け付ける。
【0022】
モニター8は、例えば、LCDなどの表示装置により構成されている。モニター8は、操作部7において入力された硬さ試験の設定条件、硬さ試験の結果、及びCCDカメラ12が撮像した試料Sの表面や試料Sの表面に形成されるくぼみの画像等を表示する。
【0023】
図4は、硬さ試験機100の制御構造を示すブロック図である。
図4に示すように、制御部6は、例えば、画像取得手段、くぼみ領域抽出手段、判断手段、硬さ算出手段及び選択手段としてのCPU61と、RAM62と、記憶部63と、を備えて構成され、記憶部63に記憶された所定のプログラムが実行されることにより、所定の硬さ試験を行うための動作制御等を行う機能を有する。
【0024】
CPU61は、記憶部63に格納された処理プログラム等を読み出して、RAM62に展開して実行することにより、硬さ試験機100全体の制御を行う。
RAM62は、CPU61により実行された処理プログラム等をRAM62内のプログラム格納領域に展開するとともに、入力データや上記処理プログラムが実行される際に生じる処理結果等をデータ格納領域に格納する。
記憶部63は、例えば、プログラムやデータ等を記憶する記録媒体(図示省略)を有しており、この記録媒体は、半導体メモリ等で構成されている。
また、記憶部63は、CPU61が硬さ試験機100全体を制御する機能を実現させるための各種データ、各種処理プログラム、これらプログラムの実行により処理されたデータ等を記憶する。
具体的には、記憶部63は、硬さ試験機100で実行可能な複数のくぼみ領域抽出処理の、実行される順番(実行順位)を予め記憶する。また、記憶部63は、複数のくぼみ領域抽出処理の各々の実行に際して必要な、各種データを記憶する。また、記憶部63は、例えば、画像取得プログラム、くぼみ形成プログラム、第1のくぼみ領域抽出プログラム、第2のくぼみ領域抽出プログラム、第3のくぼみ領域抽出プログラム、くぼみ頂点抽出プログラム、くぼみ対角線長さ計測プログラム、硬さ算出プログラム、表示制御プログラム等を格納している。
【0025】
[2.動作の説明]
次に、本実施の形態に係る硬さ試験機100の動作について説明する。
本実施の形態に係る硬さ試験機100は、互いに異なる手法でくぼみ領域を抽出する複数のくぼみ領域抽出処理を実行可能である。
この複数のくぼみ領域抽出処理は、実行される順番(実行順位)が予め設定されており、当該実行順位に従って複数のくぼみ領域抽出手段のいずれかによりくぼみ領域が抽出されるたびに、予め設定された基準くぼみ条件と合致するか否かが判断されることで、正確なくぼみ領域が抽出されたか否かが判定されている。
そして、正確なくぼみ領域が抽出されると、その抽出されたくぼみ領域に基づいて、試料Sの硬さが算出される。
実行順位は、予め硬さの値が分かっている標準試験片に対して各くぼみ領域抽出処理を適用した結果、精度よくくぼみ領域を抽出できたもの(即ち、くぼみ領域の抽出精度が高いもの)から先に実行されるように、予め決定されている。また、複数のくぼみ領域抽出処理で有意差が無い場合は、処理時間が短い順などとされる。
ここで、一般に、精度の高い処理は、画像ノイズに対し脆弱なことが多く、逆に、画像ノイズに対しロバスト性の高い処理は、精度上見劣りすることが多い傾向がある。本実施の形態では、精度の高い処理から順に実行することで、ノイズの少ない画像に対しては精度の高い処理でくぼみ領域を抽出することができ、ノイズの多い画像に対しては、これに対してロバスト性の高い処理にてくぼみ領域を抽出することができるので、結果として、様々な試料Sに対してできるだけ高精度なくぼみ領域の抽出が可能となって、硬さ測定ができることとなる。
なお、実行順位は、ユーザ操作により任意に設定変更することも可能である。
【0026】
図5は、上記した硬さ試験機100の動作を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートの処理は、例えば、CPU61が、ユーザによる操作部7を介した硬さ試験の開始操作を検出したことを契機として開始される。
【0027】
まず、CPU61は、試料Sの表面の画像(背景画像)を取得する(ステップS1)。
具体的には、まず、CPU61は、ターレット16を回転させて対物レンズ15を試料Sに対向する所定の位置に配置させる。次いで、CPU61は、対物レンズ15を介してCCDカメラ12により撮像された画像に基づいて昇降機構部5及びAFステージ4を昇降させ、試料Sの表面に対する焦点合わせを行う。そして、CPU61は、CCDカメラ12により試料Sの表面を撮像させ、CCDカメラ12から出力された試料Sの表面の画像を取得する。そして、CPU61は、取得した試料Sの表面の画像をモニター8に表示させる。
【0028】
次に、CPU61は、圧子14aにより試料Sの表面にくぼみを形成させる(ステップS2)。
具体的には、まず、CPU61は、ターレット16を回転させて、対物レンズ15の代わりに圧子軸14を試料Sに対向する所定の位置に配置させる。そして、CPU61は、負荷機構部(図示省略)を駆動することにより圧子軸14を下降させ、圧子軸14の先端部に備えられた圧子14aにより試料Sの表面にくぼみを形成させる。
【0029】
次に、CPU61は、ステップS2でくぼみを形成させた試料Sの表面の画像(測定画像)を取得する(ステップS3)。
【0030】
次に、CPU61は、記憶部63内に格納された第1のくぼみ領域抽出プログラムを実行することにより、実行順序が一番目のくぼみ領域抽出処理(第1のくぼみ領域抽出処理)を実行する(ステップS4)。
【0031】
図6は、第1のくぼみ領域抽出処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、まず、CPU61は、ステップS3で取得した測定画像の画像データを2値化する(ステップS41)。
具体的には、CPU61は、白黒濃淡画像である原画像(測定画像)の画像データを白と黒の2階調に変換する。即ち、CPU61は、例えば、各画素の輝度値(明るさ)が所定の閾値を上回っていれば白、下回っていれば黒に置き換える。これにより、測定画像の画像データは、2値化の黒部分が原画像に対してより黒く、2値化の白部分が原画像に対してより白く表示されることとなる。例えば、測定画像におけるくぼみの領域は、背景画素に比べて輝度値が低く、黒画素で表示されることとなる。なお、ステップS41で2値化された画像データは、記憶部63に記憶される。
【0032】
次に、CPU61は、ステップS41で2値化された画像データのコピーデータを生成し、当該2値化画像のコピーデータを用いて2値化画像データの縮小処理及び膨張処理を行う(ステップS42)。
ここで、縮小処理とは、2値化画像データの黒画素と白画素との境界において、黒画素を1画素分細くする処理のことであり、黒画素による孤立点や突起を取り除くことができるので、試料Sの表面の傷等によるノイズを除去することができる。
また、膨張処理とは、2値化画像データの黒画素と白画素との境界において、黒画素を1画素分厚くする処理のことであり、白画素による小さな溝や穴を取り除くことができるので、抽出領域の輪郭を滑らかにすることができる。
【0033】
次に、CPU61は、ステップS42で縮小処理及び膨張処理が行われた画像データの距離変換を行う(ステップS43)。
ここで、距離変換とは、2値化画像データ中の各画素に対して、それぞれの画素の位置から白画素(背景画素)の位置までの最短の距離を、各画素の距離値とする処理のことである。
【0034】
次に、CPU61は、ステップS43で距離変換が行われた画像データを利用して、圧子14aの形状に応じた閉領域の抽出処理を行う(ステップS44)。
具体的には、CPU61は、距離変換後の画像データを走査して閉領域をチェイン符号化するとともに、閉領域の面積や所定の判断基準量等を計算してくぼみの領域であるとみなすことのできるチェイン符号列のみを記憶部63に記憶させる。
ここで、チェイン符号化とは、線分の延長方向を8方向のコード(チェインコード)で表現することで符号化する技術のことである。
また、所定の判断基準量とは、閉領域が抽出対象の形状を成しているか否かを判定するために、領域のコンパクトさ(=(周囲長×周囲長)÷面積)やチェインコード変化率(=チェインコードが変わった回数÷チェインコード数)等を組み合わせることにより得られる判断基準のことである。
従って、極端に小さいと判定された閉領域や、抽出対象の形状(圧子14aの形状)を成していないと判定された閉領域については、記憶部63に記憶されることなく無視されることとなる。
【0035】
次に、CPU61は、ステップS44で行われた抽出処理により閉領域が抽出されたか否かを判断する(ステップS45)。
具体的には、CPU61は、記憶部63に一又は複数の閉領域が記憶されたか否かにより、閉領域が抽出されたか否かを判断する。
なお、上記ステップS41~ステップS44のような処理は、試料Sの表面が鏡面である場合などに適したものである。即ち、試料Sの表面が鏡面である場合などに、閉領域が抽出される(記憶部63に一又は複数の閉領域が記憶される)こととなる。
【0036】
そして、閉領域が抽出されたと判断した場合(ステップS45:YES)、CPU61は、後述のステップS47に移行する。
【0037】
一方、閉領域が抽出されていないと判断した場合(ステップS45:NO)は、CPU61は、測定画像の画像データから背景画像の画像データを減算して差分画像の画像データを得る(ステップS46)。
図7(a)は、背景画像G11の一例を示す図であり、図7(b)は、測定画像G12の一例を示す図であり、図7(c)は、差分画像G13の一例を示す図である。
図7(a)(b)の例では、試料Sの表面が鏡面ではなく、試料Sの表面にはくぼみとは関係のない傷が付いている。
したがって、測定画像G12の画像データから背景画像G11の画像データを減算することにより、測定画像G12における傷などのデータが除去されるため、差分画像G13においては、図7(c)に示すように、傷などが除去されたくぼみ領域のみが現れるものとなる。
【0038】
なお、差分画像の作成方法は上記したものに限られず、例えば、画像値差分絶対値をネガポジ反転する手法や、パワースペクトルの差分から行う手法などを用いることもできる。
ここで、画像値差分絶対値をネガポジ反転する手法とは、上記したように単純に2つの画像データの減算を行うと画像取得時のノイズの影響から、画像値がマイナスの値になることがあり、処理上、不都合が生じるおそれがあることを考慮してなされるものである。
具体的に、くぼみ領域では画像値の差が大きいことから、減算結果の絶対値を取って、その値の大きい所をくぼみ領域とみなした画像を作成する。こうして得られた画像は、くぼみ領域の画像値が他に比べて大きい値となり、通常の画像と逆(通常は、くぼみ領域の画像値が周りに比べて小さい値)になるので、画像値を反転(ネガポジ反転)して、後続の処理に流用する。
また、パワースペクトルの差分から行う手法とは、背景画像のフーリエ変換をF(u,v)、測定画像のフーリエ変換をG(u,v)とし、そのパワースペクトルの差分絶対値||G(u,v)|-|F(u,v)||を求め、これをフーリエ逆変換して、差分画像を求める方法である。なお、位相は測定画像の値を用いればよい。かかる手法によれば、画像値の差分を直接求める方法より、ターレットの回転誤差を軽減することができる。
【0039】
次に、CPU61は、ステップS44で行われた抽出処理により閉領域が抽出された場合には、抽出された閉領域の輪郭に基づいて、また、閉領域が抽出されなかった場合には、ステップS46で得た差分画像を用いて、試料Sの表面に形成されたくぼみの寸法を計測するためのくぼみ計測用の頂点を抽出する(ステップS47)。なお、くぼみ計測用の頂点を抽出する処理については、従来公知の技術を用いることができる。
【0040】
次に、CPU61は、ステップS47で抽出したくぼみ計測用の頂点の座標値を参照してくぼみの対角線長さを計測する(ステップS48)。
【0041】
図5に戻って、CPU61は、上述した第1のくぼみ領域抽出処理により、くぼみが検出できたか否かを判断する(ステップS5)。
具体的には、CPU61は、上述した第1のくぼみ領域抽出処理により算出したくぼみの対角線長さに基づいたくぼみの条件(形状及びサイズなど)と、使用した圧子や試験力等に基づいて予め設定された基準くぼみ条件(形状及びサイズなど)とを比較して、上述した第1のくぼみ領域抽出処理により算出したくぼみの条件が、基準くぼみ条件と合致すると判断された場合、くぼみが検出できたと判断する。
【0042】
本実施の形態においては、以上のような第1のくぼみ領域抽出処理では、比較的傷などの少ない試料Sのくぼみ領域を抽出することができる。
また、図示は省略するが、元々がほぼ鏡面であって、くぼみが形成されることによりしわがつく試料Sなどに対しても、この第1のくぼみ領域抽出処理によりくぼみ領域を抽出することができる。
【0043】
そして、くぼみが検出できたと判断した場合(ステップS5:YES)、CPU61は、後述のステップS11に移行する。
【0044】
一方、くぼみが検出できなかったと判断した場合(ステップS5:NO)、CPU61は、記憶部63内に格納された第2のくぼみ領域抽出プログラムを実行することにより、実行順位が二番目のくぼみ領域抽出処理(第2のくぼみ領域抽出処理)を実行する(ステップS6)。
【0045】
図8は、第2のくぼみ領域抽出処理を示すフローチャートである。
図8に示すように、まず、CPU61は、ステップS1で取得した背景画像を複数のブロックに分割する(ステップS61)。
図9(a)に、背景画像G21の一例を示し、図9(b)に、背景画像G21を複数のブロックB1に分割した様子の一例を示す。図9(b)に示す例では、背景画像G21が6×6=36のブロックB1に分割されている。
【0046】
次に、CPU61は、ステップSS61で分割したブロックごとに輝度情報のヒストグラムを作成する(ステップS62)。
ここで、ヒストグラムは、領域内の各輝度値(階調値)の個数(出現頻度)を示すものである。例えば、CPU61は、ステップS61で分割したブロックごとに、RGBをそれぞれ64階調に分割し、64*64*64の3次元のヒストグラムを作成する。
【0047】
次に、CPU61は、ステップS3で取得した測定画像を複数のブロックに分割する(ステップS63)。ステップS63において、CPU61は、背景画像と同様の分割形式で測定画像を分割する。
図10(a)に、測定画像G22の一例を示し、図10(b)に、測定画像G22を複数のブロックB1に分割した様子の一例を示す。図10(b)に示す例では、図9(b)に示す背景画像G21と同様、測定画像G22が6×6=36のブロックB1に分割されている。
【0048】
次に、CPU61は、ステップS63で分割した各ブロックB1内の画素ごとに、当該画素が含まれるブロックB1と対応する背景画像G21内のブロックB1において作成されたヒストグラムを参照して、当該画素の背景画像らしさを判定する(ステップS64)。
例えば、CPU61は、判定対象の画素の輝度値において、ヒストグラムの度数が大きい場合、背景画像らしさの値が高くなるように判定し、ヒストグラムの度数が小さい場合、背景画像らしさの値が低くなるように判定する。ステップS64において、背景画像らしさは、例えば、確率的に判定され、0(0%)から1.0(100%)の間の値として出力される。
【0049】
次に、CPU61は、ステップS64の判定結果に基づいて、各画素が背景画像であるかくぼみ画像であるかを判定し、くぼみ領域を抽出する(ステップS65)。
例えば、CPU61は、所定の閾値を用いて、背景画像らしさが閾値以上である場合は、背景画像であると見做すようにし、背景画像らしさが閾値未満である場合は、くぼみ画像であると見做すようにする。図11に、ステップS65で抽出されたくぼみ領域を含む抽出画像G23の一例を示す。
【0050】
次に、CPU61は、ステップS65で抽出したくぼみ領域に基づいて、試料Sの表面に形成されたくぼみの寸法を計測するためのくぼみ計測用の頂点を抽出する(ステップS66)。なお、くぼみ計測用の頂点を抽出する処理については、従来公知の技術を用いることができる。
【0051】
次に、CPU61は、ステップS65で抽出したくぼみ計測用の頂点の座標値を参照してくぼみの対角線長さを計測する(ステップS67)。
【0052】
図5に戻って、CPU61は、上述した第2のくぼみ領域抽出処理により、くぼみが検出できたか否かを判断する(ステップS7)。
具体的には、CPU61は、上述した第2のくぼみ領域抽出処理により算出したくぼみの対角線長さに基づいたくぼみの条件(形状及びサイズなど)と、使用した圧子や試験力等に基づいて予め設定された基準くぼみ条件(形状及びサイズなど)とを比較して、上述した第2のくぼみ領域抽出処理により算出したくぼみの条件が、基準くぼみ条件と合致すると判断された場合、くぼみが検出できたと判断する。
【0053】
本実施の形態においては、以上のような第2のくぼみ領域抽出処理では、傷などの多い試料Sについてもくぼみ領域を抽出することができる。
また、測定画像の撮像時にCCDカメラ12(撮像領域)の位置ずれが生じた場合であっても、この第2のくぼみ領域抽出処理によりくぼみ領域を抽出することができる。
【0054】
そして、くぼみが検出できたと判断した場合(ステップS7:YES)、CPU61は、後述のステップS11に移行する。
【0055】
一方、くぼみが検出できなかったと判断した場合(ステップS7:NO)、CPU61は、記憶部63内に格納された第3のくぼみ領域抽出プログラムを実行することにより、実行順位が三番目のくぼみ領域抽出処理(第3のくぼみ領域抽出処理)を実行する(ステップS8)。
【0056】
図12は、第3のくぼみ領域抽出処理を示すフローチャートである。
図12に示すように、まず、CPU61は、ステップS2で取得した測定画像を、45°回転させる(ステップS81)。
【0057】
次に、CPU61は、全ての縮尺率でパターンマッチング処理が終了したか否かを判定する(ステップS82)。
具体的には、CPU61は、ステップS81で45°回転させた測定画像を、記憶部63に予め記憶された全ての縮尺率で縮小した全ての縮尺画像に対して、パターンマッチング処理(ステップS84参照)が終了したか否かを判定する。
【0058】
そして、全ての縮尺率でパターンマッチング処理が終了したと判定した場合(ステップS82:YES)は、ステップS87へと移行する。
【0059】
一方、少なくとも一つの縮尺率でパターンマッチング処理が終了していないと判定した場合(ステップS82:NO)は、CPU61は、ステップS81で45°回転させた測定画像を、記憶部63に記憶された複数の縮尺率のうち選択された縮尺率で縮小して縮小画像を生成する(ステップS83)。
図13(a)に、ステップS81で45°回転させた測定画像G31の一例を示し、図13(b)に、ステップS83で生成された縮小画像G32の一例を示す。なお、ステップS83で生成される縮小画像G32は、未だパターンマッチング処理が終了していない縮尺率で縮小された画像である。
【0060】
次に、CPU61は、ステップS83で生成された縮小画像G32に対してパターンマッチング処理を行う(ステップS84)。
パターンマッチング処理としては、例えば、正規化相関法を用いることができる。
以下、正規化相関法を用いたパターンマッチング処理を説明する。
【0061】
本実施の形態では、図14に示す走査用モデル200を利用して、パターンマッチング処理を行う。走査用モデル200は、矩形状に形成され、X方向に28画素、Y方向に30画素の840画素で構成されている。走査用モデル200は、略中央部に配置され、圧子14aに対応する既知のくぼみ形状を45°回転させたものに対応する黒領域201と、当該黒領域201の周囲を覆う白領域202と、左端部の中央部に配置された灰色領域203と、を備えている。なお、灰色領域203は、マッチング処理に使用しない領域である。
黒領域201は、行方向、列方向ともに20画素の400画素で構成されている。灰色領域203は、行方向に20画素、列方向に2画素の40画素で構成されている。白領域202は、全領域から黒領域201と灰色領域203を除いた400画素で構成されている。即ち、黒領域201と白領域202とは同一の画素数で構成されている。従って、黒領域201を構成する各画素を-1、白領域202を構成する各画素を1でカウントすると、走査用モデル200で使用する画素の和が0となるようになっている。
【0062】
本実施の形態では、ステップS83で生成された縮小画像G32に対して、走査用モデル200を利用してラスタ走査することにより、マッチング処理を行う。但し、図15に示すように、縮小画像G32の周囲の画像が形成されていない領域G33に関しては、マッチング処理は行われない。
具体的には、まず、走査用モデル200を、図16に示すように、R1~R5の5つの領域に区分けする。領域Cは、黒領域201に割り当てられ、残りの領域A、B、D、Eは、白領域202に割り当てられている。ここで、各領域R1~R5の輝度値の合計をそれぞれA~E、各領域R1~R5の輝度値の二乗の合計をそれぞれA2~E2、1(黒画素)又は-1(白画素)の画素数をN、A~Eの合計をKとすると、相関度mは、数式1で算出することができる。
m=(A+B+D+E-C)/sqrt(N)/sqrt(A2+B2+C2+D2+E2-K*K/N) …(1)
そして、縮小画像G32の全ての領域で相関度mを算出すると、当該パターンマッチング処理を終了する。
【0063】
次に、CPU61は、ステップS84のパターンマッチング処理により算出された最大相関度が、所定の閾値以上であるか否かを判断する(ステップS85)。
なお、所定の閾値は、くぼみ領域との相関性を認め得る値であれば、いかなる値であってもよい。
【0064】
そして、最大相関度が閾値以上であると判断した場合(ステップS85:YES)、CPU61は、ステップS83で生成された縮小画像G32内にくぼみ領域が含まれると判定し、最大相関度を示す座標値及び当該縮小画像G32の縮尺率を取得し(ステップS86)、これに基づいてくぼみ領域を抽出する(ステップS88)。
【0065】
一方、最大相関度が閾値未満であると判定した場合(ステップS85:NO)は、ステップS82へと移行する。
【0066】
また、全ての縮尺率でパターンマッチング処理が終了したと判定した場合(ステップS82:YES)、CPU61は、全ての縮尺率で行われたパターンマッチング処理により算出された全ての相関度のうち最大の相関度を含む縮小画像G32にくぼみ領域が含まれると判定し、最大相関度を示す座標値及び当該縮小画像G32の縮尺率を取得し(ステップS87)、これに基づいてくぼみ領域を抽出する(ステップS88)。
【0067】
次に、CPU61は、ステップS88で抽出したくぼみ領域に基づいて、試料Sの表面に形成されたくぼみの寸法を計測するためのくぼみ計測用の頂点を抽出する(ステップS89)。なお、くぼみ計測用の頂点を抽出する処理については、従来公知の技術を用いることができる。
【0068】
次に、CPU61は、ステップS89で抽出したくぼみ計測用の頂点の座標値を参照してくぼみの対角線長さを計測する(ステップS90)。
【0069】
図5に戻って、CPU61は、上述した第3のくぼみ領域抽出処理により、くぼみが検出できたか否かを判断する(ステップS9)。
具体的には、CPU61は、上述した第3のくぼみ領域抽出処理により算出したくぼみの対角線長さに基づいたくぼみの条件(形状及びサイズなど)と、使用した圧子や試験力等に基づいて予め設定された基準くぼみ条件(形状及びサイズなど)とを比較して、上述した第3のくぼみ領域抽出処理により算出したくぼみの条件が、基準くぼみ条件と合致すると判断された場合、くぼみが検出できたと判断する。
【0070】
本実施の形態においては、以上のような第3のくぼみ領域抽出処理では、傷などが多く、且つ、くぼみ形成後にくぼみ周辺にしわができた試料Sについても、くぼみ領域を正確に抽出することができる。
また、超硬試料でくぼみが深く入らず、画像値変化が明瞭でない場合や、くぼみを打つことで試験片にひびが入った場合などにも、くぼみ領域を抽出することができる。
【0071】
そして、くぼみが検出できなかったと判断した場合(ステップS9:NO)、CPU61は、モニター8を制御して、エラーを出力し(ステップS10)、本処理を終了する。
【0072】
一方、くぼみが検出できたと判断した場合(ステップS9:YES)、CPU61は、計測された対角線長さに基づいて試料Sの硬さを算出し(ステップS11)、モニター8を制御して、ステップS11で算出した試料Sの硬さを表示させ、本処理を終了する。
【0073】
[3.効果]
以上のように、本実施の形態によれば、試料Sの表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料Sの硬さを測定する硬さ試験機100において、CPU61は、CCDカメラ12によりくぼみが形成される前及びくぼみが形成された後の試料Sの表面の画像を取得し、取得された画像に基づいてくぼみ領域を抽出する、互いに異なる手法の複数のくぼみ領域抽出処理を実行可能であって、複数のくぼみ領域抽出処理により抽出されたくぼみ領域が、予め設定された基準くぼみ領域と合致するか否かを判断する判断し、合致すると判断されたくぼみ領域に基づいて、試料の硬さSを算出する。
このため、表面の状態やくぼみ形成時の挙動の異なる様々な試料Sに対して、くぼみ領域の抽出を精度よくできることとなる。
よって、測定画像からくぼみ領域を精度よく抽出して、測定結果の精度を向上させることができる。
【0074】
また、本実施の形態によれば、複数のくぼみ領域抽出処理は、実行順位が予め設定されており、CPU61は、実行順位に従って複数のくぼみ領域抽出処理のいずれかによりくぼみ領域が抽出されるたびに、基準くぼみ条件と合致するか否かを判断する。
このため、予め設定された順番に従って複数のくぼみ領域抽出処理が実行される。
【0075】
また、本実施の形態によれば、実行順位は、予め、所定の硬度を有する標準試験片を用いて各くぼみ領域抽出手段によりくぼみ領域を抽出した結果に基づく、抽出精度が高いものが先となる順番である。
一般に、精度の高い処理は画像ノイズに対し脆弱で、画像ノイズに対しロバスト性の高い処理は精度上見劣りすることが多い。そこで、精度の高い処理から順に実行することで、ノイズの少ない画像に対しては精度の高い処理でくぼみ領域を抽出することができ、ノイズの多い画像に対しては、これに対してロバスト性の高い処理にてくぼみ領域を抽出することができることとなる。
このため、様々な試料Sに対してくぼみ領域の抽出が可能であって、かつ、くぼみ領域の抽出精度をできるだけ高めることができる。
【0076】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0077】
例えば、上記実施の形態においては、3つの異なる手法のくぼみ領域抽出処理を採用しているが、くぼみ領域抽出処理は、2つでも良いし、4つ以上であっても良い。
また、くぼみ領域抽出処理は、上記実施の形態に記載した手法に限られず、くぼみ領域を抽出できるものであればどのようなものであっても適用可能である。
【0078】
また、上記実施の形態においては、くぼみが検出できるまで、3つのくぼみ領域抽出処理を順番に実行する処理を例示して説明したが、例えば、硬さ試験の初期段階でその試料に適したくぼみ領域抽出処理が選択され、その選択されたくぼみ領域抽出処理により、最初にくぼみ領域抽出が行われることとしても良い。
具体的には、例えば、試料の表面画像と、くぼみ領域抽出処理の種類と、が対応づけられて予め記憶されており、試料の背景画像を取得した段階で、くぼみ領域抽出処理の種類が選択される構成とすることができる。
或いは、試料の材質名と、くぼみ領域抽出処理の種類と、が対応づけられて予め記憶されており、ユーザが、試料をセットする段階で材質名を選択することで、くぼみ領域抽出処理の種類が選択される構成であっても良い。
そして、上記のようにしてくぼみ領域抽出処理が選択されると、そのくぼみ領域抽出処理から、それ以降の実行順位の処理が、くぼみ領域が抽出されるまで順番に実行されていくこととしても良い。
【0079】
また、上記実施の形態はビッカース硬さ試験法によるものであるが、本発明による硬度測定装置はこれに限定されることはなく、ヌープ硬さ試験法、ブリネル硬さ試験機、その他、これら硬さ試験法と等価の圧子押し込み方式の硬さ試験法に同様に適用されるものである。
【符号の説明】
【0080】
100 硬さ試験機
1 硬さ測定部
10 試験機本体
11 照明装置
12 CCDカメラ(画像取得手段)
14 圧子軸
14a 圧子
15 対物レンズ
16 ターレット
17 フレームグラバー
2 試料台
2a 試料固定部
3 XYステージ
4 AFステージ
5 昇降機構部
6 制御部
61 CPU(画像取得手段、くぼみ領域抽出手段、判断手段、硬さ算出手段、選択手段)
62 RAM
63 記憶部
7 操作部
8 モニター
S 試料
G11、G21 背景画像
G12、G22、G31 測定画像
G13 差分画像
G23 抽出画像
G32 縮小画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16