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特許6990207加熱分解式排ガス除害装置及び逆流防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-07
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】加熱分解式排ガス除害装置及び逆流防止方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 7/06 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
F23G7/06 101E
F23G7/06 N
F23G7/06 101A
F23G7/06 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019054764
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020153631
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2020-04-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 和信
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 信昭
(72)【発明者】
【氏名】関田 誠
(72)【発明者】
【氏名】新岡 正継
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-190684(JP,A)
【文献】特開2006-275307(JP,A)
【文献】特開2017-125667(JP,A)
【文献】特表2018-523567(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0207581(US,A1)
【文献】特開2018-031570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧で運転される装置から真空ポンプを介して排出される排ガスを高温で処理する加熱分解式排ガス除害装置において、軸心が水平方向になるように配置された前記加熱分解式排ガス除害装置内の燃焼室で処理された後の高温の排ガスを冷却水中に導入して冷却する水封式冷却手段を備えるとともに、前記真空ポンプの異常停止時に、前記真空ポンプから加熱分解式排ガス除害装置に至る排ガス経路内に、前記真空ポンプの上流側の真空破壊を行うための緊急パージガスを導入する緊急パージガス導入経路を設け、当該緊急パージガス導入経路に、前記真空ポンプの停止後1秒以内に200L/min以上の緊急パージガスを導入する緊急パージガス供給源を接続したことを特徴とする加熱分解式排ガス除害装置。
【請求項2】
前記緊急パージガスは、窒素ガスであることを特徴とする請求項1記載の加熱分解式排ガス除害装置。
【請求項3】
低圧で運転される装置から真空ポンプを介して排出される排ガスを高温で処理する加熱分解式排ガス除害装置から前記低圧で運転される装置に向かって加熱処理後の高温の処理ガスが逆流することを防止する加熱分解式排ガス除害装置における逆流防止方法であって、軸心が水平方向になるように配置された前記加熱分解式排ガス除害装置内の燃焼室で処理された後の高温の排ガスを冷却水中に導入して冷却する水封式冷却手段を備えるとともに、前記真空ポンプの異常停止時に、前記真空ポンプから加熱分解式排ガス除害装置に至る排ガス経路内に、前記真空ポンプの上流側の真空破壊を行うための緊急パージガスを異常停止後1秒以内に200L/min以上導入することを特徴とする加熱分解式排ガス除害装置における逆流防止方法。
【請求項4】
前記緊急パージガスは、窒素ガスであることを特徴とする請求項3記載の加熱分解式排ガス除害装置における逆流防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱分解式排ガス除害装置及び逆流防止方法に関し、詳しくは、半導体、液晶、太陽光発電パネルなどの製造装置から排出される有害成分を除害処理するための加熱分解式排ガス除害装置及び加熱分解式排ガス除害装置から 製造装置への逆流を防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体,液晶,太陽光発電パネル,LEDなどの産業において、種々のプロセスガスを使用して低圧状態で電子デバイスを製造しているが,これら電子デバイス製造装置から真空ポンプによって排出されるガスには可燃性ガスや毒性ガスといった有害成分が含まれているため、通常、これらの排ガスは、除害装置で安定化、無害化したのちに大気放出される。また、現在では電子デバイス製造装置の大型化によるガス使用量の増加により、これらの排ガス除害装置には燃焼式、ヒーター式等の加熱分解式が主流となっている。このため、各種形式、構造の加熱分解式排ガス除害装置が提案されている(例えば、特許文献1~7参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-110926号公報
【文献】特開平10-169959号公報
【文献】特開平11-270831号公報
【文献】特開2001-82723号公報
【文献】特開2004-28472号公報
【文献】特開2013-40749号公報
【文献】特開2017-223215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、半導体製造装置の保守作業の時間短縮のため、排気配管内の生成物防止の観点から、排気ポンプと排ガス処理装置との間の配管を極力短くしようとする試みがある。しかし、配管を短くすると、真空ポンプに異常が発生した際に、排ガス除害装置内のガスが真空ポンプを通って低圧状態の電子デバイス製造装置内に逆流するおそれが大きくなり、電子デバイス製造装置にとっての汚染物質、例えば水分が製造装置内に侵入して汚染され、大きな問題となることがあった。
【0005】
また、真空ポンプの下流側で反応性の高い成分同士が激しく反応して爆発するようなことを防止するため、真空ポンプの下流側に希釈ガス導入経路を設け、連続的に希釈ガス、例えば窒素ガスなどの不活性ガスを導入して各成分を希釈することが行われている。
【0006】
しかし、希釈ガスを連続的に導入するためにはガスコストが多大になるだけでなく、排ガス除害装置で処理するガス量が多くなるために排ガス除害装置やガス冷却装置の大型化を招き、イニシャルコスト及びランニングコストが高くなるという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、真空ポンプが異常停止しても、電子デバイス製造装置のような低圧装置内に汚染物質が逆流することを防止できる加熱分解式排ガス除害装置及び逆流防止方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の加熱分解式排ガス除害装置は、低圧で運転される装置から真空ポンプを介して排出される排ガスを高温で処理する加熱分解式排ガス除害装置において、軸心が水平方向になるように配置された前記加熱分解式排ガス除害装置内の燃焼室で処理された後の高温の排ガスを冷却水中に導入して冷却する水封式冷却手段を備えるとともに、前記真空ポンプの異常停止時に、前記真空ポンプから加熱分解式排ガス除害装置に至る排ガス経路内に、前記真空ポンプの上流側の真空破壊を行うための緊急パージガスを導入する緊急パージガス導入経路を設け、当該緊急パージガス導入経路に、前記真空ポンプの停止後1秒以内に200L/min以上の緊急パージガスを導入する緊急パージガス供給源を接続したことを特徴とし、特に、前記緊急パージガスが、窒素ガスであることを特徴としている。
【0009】
一方、本発明の加熱分解式排ガス除害装置における逆流防止方法は、低圧で運転される装置から真空ポンプを介して排出される排ガスを高温で処理する加熱分解式排ガス除害装置から前記低圧で運転される装置に向かって加熱処理後の高温の処理ガスが逆流することを防止する加熱分解式排ガス除害装置における逆流防止方法であって、軸心が水平方向になるように配置された前記加熱分解式排ガス除害装置内の燃焼室で処理された後の高温の排ガスを冷却水中に導入して冷却する水封式冷却手段を備えるとともに、前記真空ポンプの異常停止時に、前記真空ポンプから加熱分解式排ガス除害装置に至る排ガス経路内に、前記真空ポンプの上流側の真空破壊を行うための緊急パージガスを異常停止後1秒以内に200L/min以上導入することを特徴とし、特に、前記緊急パージガスが、窒素ガスであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、真空ポンプに異常が発生して停止したとき、真空ポンプから加熱分解式排ガス除害装置に至る排ガス経路内に緊急パージガスを導入することにより、真空ポンプの上流側の真空破壊を行うので、水封式冷却手段の冷却水が真空ポンプの上流側に流入することがなくなり、低圧で運転される装置を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明方法を適用した本発明の加熱分解式排ガス除害装置の一形態例を示す概略図である。
図2】実験での真空ポンプ作動開始時の排ガス経路内及び燃焼室内の圧力変化を測定した結果を示す図である。
図3】実験での真空ポンプ停止後の排ガス経路内の圧力変化を測定した結果を示す図である。
図4】実験での真空ポンプ停止後10秒間の排ガス経路内の圧力変化を測定した結果を示す図である。
図5】実験での真空ポンプ停止後の燃焼室入口部及び排ガス経路内の温度変化を測定した結果を示す図である。
図6】実験で排ガス経路内に窒素ガスを導入したときの排ガス経路内及び燃焼室内の圧力変化の測定結果の一例を示す図である。
図7】実験で排ガス経路内に窒素ガスを導入したときの燃焼室入口部の温度と、窒素ガスの導入量及び導入タイミングとの関係を示す図である。
図8】実験で排ガス経路内に窒素ガスを導入したときの排ガス経路内の圧力最大値と、窒素ガスの導入量及び導入タイミングとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明方法を適用した本発明の加熱分解式排ガス除害装置の一形態例を示す概略図である。本形態例に示す加熱分解式排ガス除害装置11は、加熱分解式排ガス除害装置11で処理した高温の処理ガスを冷却する冷却手段として、前記処理ガスを冷却水中に導入して冷却する水封式冷却手段12を備えている。
【0013】
低圧で運転される装置、例えば電子デバイス製造装置13のチャンバー13aからドライ式の真空ポンプ14を介して排出される排ガスは、加熱分解式排ガス除害装置11に導入される。この加熱分解式排ガス除害装置11の燃焼室11aでは、例えば、可燃性ガス経路11bから供給される水素やメタンガス、プロパンガスなどの可燃性ガスと、支燃性ガス経路11cから供給される酸素や空気などの支燃性ガスとが燃焼反応を行って高温の雰囲気が形成され、例えば有害なシランが無害な酸化珪素と水とになる。
【0014】
加熱処理によって発生した高温の処理ガスは、先端15aが冷却水W中に挿入された高温ガス導入管15を通り、全量が冷却水槽16内に貯留された冷却水W中に導入され、冷却水Wとの直接的な接触によって冷却される。冷却された処理ガスは、充填材17aの上方にスプレーノズル17bを設けたスクラバ17に導入され、前記酸化珪素などの固形物を分離除去してからガス排出部を通して大気中に排出される。
【0015】
このような加熱分解式排ガス除害装置11において、前記真空ポンプ14に異常が発生して緊急停止した場合は、低圧で運転される電子デバイス製造装置13のチャンバー13a内が大気圧近くになるまで排気系のガスが逆流する。このとき、前記水封式冷却手段12を備えた加熱分解式排ガス除害装置11では、冷却水槽16内の冷却水Wがガスの逆流に伴って吸い上げられ、チャンバー13a内に冷却水あるいは水蒸気といった汚染物質が侵入するおそれがある。
【0016】
このため、本形態例に示す加熱分解式排ガス除害装置11では、真空ポンプ14から加熱分解式排ガス除害装置11に至る排ガス経路18に、緊急パージガス供給源19からの緊急パージガスを導入するための緊急パージガス導入用の分岐経路20を設けている。緊急パージガスは、真空ポンプ14が停止した際に供給されるもので、電子デバイス製造装置13のチャンバー13a内に流入しても悪影響を与えないガス、例えば、電子デバイス製造装置13で用いられるガスと同種のガス、具体的には、窒素ガスやアルゴンガスが最適である。
【0017】
このように構成することにより、真空ポンプ14が停止したときに、直ちに緊急パージガス供給源19からの緊急パージガスを排ガス経路18内に導入し、この緊急パージガスを真空ポンプ14を介してチャンバー13a内に導入して真空破壊を行い、加熱分解式排ガス除害装置11からチャンバー13aへのガスの逆流を防止し、特に、水封式冷却手段12の冷却水Wが吸い上げられて逆流し、チャンバー13a内が冷却水Wや水蒸気によって汚染されることを確実に防止できる。
【0018】
また、本形態例に示す加熱分解式排ガス除害装置11では、真空ポンプ14が異常停止したときにだけ緊急パージガスを導入するので、連続的に希釈ガスを導入する装置に比べてガス使用量の低減を図ることができる。さらに、緊急パージガスの導入によって緊急時に対応できるので、電子デバイスを製造装置13の真空ポンプ14から加熱分解式排ガス除害装置11に至る経路18を短くすることが可能となり、電子デバイスを製造するための装置全体の小型化を図ることができる。
【0019】
特に、排ガス経路18に緊急パージガスを導入することにより、加熱分解式排ガス除害装置11の燃焼室11aでの燃焼処理で汚染物質が生成したとしても、生成した汚染物質が逆流して真空ポンプ14の上流側に流入することを確実に防止できる。
【0020】
次に本発明の有効性を確認するための実験を行った結果を説明する。実験には、実際に使用されている電子デバイス製造装置13及び加熱分解式排ガス除害装置11を模擬した実験装置を使用した。この実験装置は、基本的に前記形態例に示した構成を有しており、電子デバイス製造装置13のチャンバー13aには、例えば実際のCVD装置のチャンバーを模擬した容量84Lの真空タンクを使用した。
【0021】
真空ポンプ14の排気速度は1660L/minであり、加熱分解式排ガス除害装置11の処理能力は50L/minである。また、真空ポンプ14と加熱分解式排ガス除害装置11における燃焼室11aとの間は、外径19.01mm、肉厚1.25mm、長さ500mm、容積44cmの直線状の配管からなる排ガス経路18にて接続し、この排ガス経路18における真空ポンプ14から300mmの位置に、緊急パージガス導入用の分岐経路20を接続した。さらに、図1に破線で示すように、燃焼室11aの入口部に入口温度計21を、分岐経路20の分岐部に配管内温度計22を、燃焼室11aに燃焼室圧力計23を、分岐経路20に配管内圧力計24を、それぞれ設けて実験データを収集した。また、緊急パージガスには、窒素ガスを使用した。
【0022】
まず、真空ポンプ14を作動させるとともに、燃焼室11aにメタンガスと酸素ガスとを供給して燃焼させ、通常の運転状態とした。このときの排ガス経路18内の圧力変化Aと、燃焼室11a内の圧力変化Bとをそれぞれ測定した。その結果を図2に示す。この結果から、排気開始直後の初期排気時(約80秒程度まで)を除くと、排ガス経路18内の圧力変動幅は0.3kPa以下、燃焼室11a内の圧力変動幅は0.1kPa以下で安定した状態になっていることがわかる。また、排ガス経路18内の温度は、45~50℃で略一定となっていた。
【0023】
チャンバー13a(真空容器)内が所定の真空状態に達してチャンバー13a内の圧力を0.4Pa以下に保持した状態で、真空ポンプ14を停止し、緊急パージガス(窒素ガス)を導入しないときの排ガス経路18内の圧力変化(排気系の真空破壊時圧力変化)を測定した。その結果を図3に示す。この結果から、真空ポンプ停止時の排ガス経路18内の排気圧力は-1kPaであるが、真空ポンプ停止後、10秒以内に排ガス経路18内の圧力は、一旦、-10kPa付近まで低下し、その後、-4kPa付近まで回復後、60秒経過するまでこの圧力を維持してから、徐々に圧力は回復し、80秒経過後、初期の排気圧力―1kPaに達することがわかった。
【0024】
この圧力変化は、真空ポンプ停止後、減圧された上流側の真空タンクとの圧力差によって冷却水槽16内の冷却水Wが高温ガス導入管15中に吸い上げられるためであり、その後、冷却水Wの水面が高温ガス導入管15の先端15aから離れると、高温ガス導入管15内へ大気が吸引される状態になるためである。
【0025】
したがって、この系では、真空ポンプ停止時には、まず水槽の冷却水が逆流し、水槽内の冷却水の水面が所定量低下した時点で大気を吸引する。このため、真空ポンプ停止後の排ガス経路18内への冷却水の逆流を防止することが重要となる。
【0026】
そこで、真空ポンプ停止後の10秒間の排ガス経路18内の圧力変化を詳細に検討すると、図4に示すように、真空ポンプ停止後、2秒間は圧力が一定であり、その後圧力変化が大きくなっていることから、真空ポンプ停止後2秒以内に排ガス経路18内に窒素ガスを導入することにより、排ガス経路18内への逆流を防止できることがわかる。
【0027】
また、図5に示すように、燃焼室11aの入口部の温度変化Aと、排ガス経路18内の温度変化Bとを見ると、燃焼室11aの入口部では、真空ポンプ停止後10秒過ぎに最高500℃まで温度が上昇したことから、燃焼室11a内の高温のガスが入口部に逆流していることがわかる。
【0028】
これらの予備実験の結果から、高温ガスの逆流及び冷却水の吸引を確実に防止できるように、緊急パージガスの窒素ガスを排ガス経路18内に導入するタイミングを、真空ポンプ停止から0.1秒後、1秒後及び2秒後の3段階に設定するとともに、導入時の窒素ガスの流量を、150L/min,170L/min,250L/min及び338L/minの4段階に設定し、各設定を組み合わせて燃焼室11aの入口部の温度、排ガス経路18内の温度、燃焼室11a内の圧力及び排ガス経路18内の圧力をそれぞれ測定した。各測定結果を図6乃至図8に示す。
【0029】
まず、排ガス経路18への窒素ガスの導入と燃焼室11a内の圧力との関係は、図6に示すように、排ガス経路18内の圧力Aは、いずれの設定においても、窒素ガスの導入によって一時的に上昇するが、燃焼室11a内の圧力Bは変化せず、窒素ガスの導入が燃焼室11aの運転状態に悪影響を及ぼさないことが確認できた。
【0030】
図7は、排ガス経路18内の圧力が最大値を示したときの燃焼室11aの入口部の温度と、窒素ガスの導入量及び導入タイミングとの関係を示している。この結果から、窒素ガスの導入量が200L/min未満では、いずれの場合も燃焼室11aの入口部の温度が高くなり、高温ガスの逆流を十分に防止できていないことがわかる。一方、窒素ガスの導入量が200L/min以上では、燃焼室11aの入口部の温度上昇を抑えることができるが、真空ポンプ停止から導入開始までに2秒を経過すると、高温ガスの一部が逆流して入口部の温度が上昇していることがわかる。
【0031】
また、図8は、排ガス経路18内の圧力最大値と、窒素ガスの導入量及び導入タイミングとの関係を示している。この結果から、導入開始時間が短い0.1秒後の場合は、ガス導入量の増加とともに圧力は上昇するが、導入開始時間が1秒後で導入量が200L/min未満では、燃焼室11aからのガスの逆流によって圧力が高くなる傾向にあり、導入開始時間が2秒後になると、排ガス経路18内に流入した逆流ガスの影響で窒素ガスの初期導入量が減少して圧力上昇が抑えられる傾向となっていることがわかる。
【0032】
これらの結果から、使用した実験装置では、真空ポンプ停止後1秒以内に200L/min以上の窒素ガスを導入することにより、排気系のガスが真空ポンプを超えて上流側に逆流することを防止できることが確認できた。これにより、真空ポンプから燃焼室入口までの配管を短くすることが可能となり、装置全体の小型化が図れるとともに、窒素ガス(緊急パージガス)の使用量も必要最小限とすることができ、ランニングコストの低減も図ることができる
【0033】
なお、緊急パージガスの導入状態の設定は、真空ポンプ上流側の機器の規模や真空ポンプの能力、真空ポンプと燃焼室を接続する配管の容積や分岐経路の位置などの機器の条件に応じて最適な状態に設定することができる。
【符号の説明】
【0034】
11…加熱分解式排ガス除害装置、11a…燃焼室、11b…可燃性ガス経路、11c…支燃性ガス経路、12…水封式冷却手段、13…電子デバイス製造装置、14…真空ポンプ、15…高温ガス導入管、16…冷却水槽、17…スクラバ、17a…充填材、17b…スプレーノズル、18…排ガス経路、19…緊急パージガス供給源、20…分岐経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8