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特許6990582レーザシステム内の利得エレメントを隔離するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】レーザシステム内の利得エレメントを隔離するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20220104BHJP
   G02F 1/33 20060101ALI20220104BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220104BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20220104BHJP
   H01S 3/23 20060101ALI20220104BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
H01S3/10 Z
G02F1/33
G03F7/20 503
G03F7/20 521
H01S3/00 A
H01S3/23
H05G2/00 K
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017522949
(86)(22)【出願日】2015-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-03-01
(86)【国際出願番号】 US2015059573
(87)【国際公開番号】W WO2016089549
(87)【国際公開日】2016-06-09
【審査請求日】2018-10-30
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-05
(31)【優先権主張番号】14/562,237
(32)【優先日】2014-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】タオ,イエジョン
(72)【発明者】
【氏名】ロキツキー,ロスティスラブ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ダニエル ジョン ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ゴリック,ダニエル ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】カッツ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート,ジョン トム
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】吉野 三寛
【審判官】加々美 一恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-546172(JP,A)
【文献】特開昭63-227093(JP,A)
【文献】国際公開第2013/180885(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路上でパルスレーザ光を生成するためのレーザシードモジュールと、
前記光路に沿って位置決めされた第1の利得エレメントと、
前記第1の利得エレメントの後に前記光路に沿って位置決めされた第2の利得エレメントと、
前記第1の利得エレメントと前記第2の利得エレメントとの間に前記光路に沿って位置決めされ、前記第2の利得エレメントを通って前記光路に沿って反射して戻る光をそらすように構成された隔離ステージであって、前記隔離ステージが、
第1の期間について光が前記光路に沿って誘導される第1の状態と光が前記光路に沿って誘導されない第2の状態との間を遷移するように構成された第1の音響光学変調器(AOM)と、
第2の期間について光が前記光路に沿って誘導される第1の状態と光が前記光路に沿って誘導されない第2の状態との間を遷移するように構成された第2のAOMであって、前記第2のAOMの遷移が前記第1のAOMの遷移後のある時間に発生する第2のAOMと、
前記第1のAOMと前記第2のAOMとの間に位置決めされ、前記AOMの前記第1の期間及び前記第2の期間に基づいて決定された時間の間、前記第1のAOMと前記第2のAOMとの間の光の送出を遅延させるように構成された遅延素子であって、前記第2のAOMを通過し、前記光路に沿って反射して戻る光が前記第1のAOMを通過して前記レーザシードモジュールに戻らないようになっており、光学コンポーネントを含むビーム折り返し光学配置を有する遅延素子と、
を含む、隔離ステージと、
を含む、システム。
【請求項2】
前記第1の期間及び前記第2の期間が更にレーザビームの幅に基づくものである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記遅延が更にビーム結像の発生に基づくものである、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
ビーム結像が発生した場合、前記レーザビームの第1の部分が前記第2のAOMによってそらされ、前記レーザビームの残りの部分が前記第1のAOMによってそらされるように前記遅延が更に決定される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2の利得エレメントを越えて位置決めされた1つ以上の他のエレメントを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記1つ以上の他のエレメントが極端紫外(EUV)プラズマチャンバを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つ以上の他のエレメントが電力増幅器を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1の利得エレメント及び前記第2の利得エレメントが前置増幅器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2の利得エレメントを越えて前記光路に沿って位置決めされた第2の隔離ステージを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の利得エレメントと前記シードレーザとの間に前記光路に沿って位置決めされた第2の隔離ステージを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記隔離ステージが、反射光をそらすことにより前記第1の利得エレメント内の自動レーザ発振を防止するように更に構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1のAOM及び前記第2のAOMがクロスファイア状態である、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記遅延が前記レーザビームの前記幅に基づいて更に決定される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
光路上でレーザ光を生成することと、
前記レーザ光から発生したレーザパルスを前記光路に沿って位置決めされた第1の利得エレメントを通って通過させることと、
前記第1の利得エレメントの後に前記光路に沿って位置決めされ、隔離ステージを越えて位置する任意のエレメントから前記光路に沿って反射して戻る光をそらすように構成された隔離ステージを通って前記レーザパルスを通過させることであって、当該隔離ステージが、
第1の期間について光が前記光路に沿って誘導される第1の状態と光が前記光路に沿って誘導されない第2の状態との間を遷移するように構成された第1の音響光学変調器(AOM)と、
第2の期間について光が前記光路に沿って誘導される第1の状態と光が前記光路に沿って誘導されない第2の状態との間を遷移するように構成された第2のAOMであって、前記第2のAOMの遷移が前記第1のAOMの遷移後のある時間に発生する第2のAOMと、
前記第1のAOMと前記第2のAOMとの間に位置決めされ、前記AOMの前記第1の期間及び前記第2の期間に基づいて決定された時間の間、前記第1のAOMと前記第2のAOMとの間の光の送出を遅延させるように構成された遅延素子であって、前記第2のAOMを通過し、前記光路に沿って反射して戻る光が前記第1のAOMを通過して前記レーザシードモジュールに戻らないようになっており、光学コンポーネントを含むビーム折り返し光学配置を有する遅延素子と、
を含むことと、
前記隔離ステージの後に前記光路に沿って位置決めされた第2の利得エレメントを通って前記レーザパルスを通過させることと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01] 本出願は、一般に、レーザ生成プラズマ(LPP)極端紫外(EUV)光源に関し、より具体的には、このような光源内の利得エレメント(gain element)を通るフィードバックを防止するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
[02] 半導体業界は、ますます寸法が小さくなる集積回路を印刷できるリソグラフィ技術を開発し続けている。極端紫外(「EUV」)光(時には軟X線ともいう)は一般に6~50ナノメートル(nm)の波長を有する電磁放射であると定義される。EUVリソグラフィは現在一般に、5~7nmの範囲内の波長のEUV光を含むものと見なされ、シリコンウェーハなどの基板に極めて小さいフィーチャ、例えば10nm未満のフィーチャを生成するために使用される。商業的に有用であるために、これらのシステムは信頼性が高く、費用対効果の大きいスループット及び妥当なプロセス許容範囲を提供するものであることが望ましい。
【0003】
[03] EUV光を生成するための方法は、EUV範囲内に1つ以上の輝線を含み、例えばキセノン、リチウム、スズ、インジウム、アンチモン、テルル、アルミニウムなどの1つ以上の元素を有する材料をプラズマ状態に変換することを含むが、必ずしもこれに限定されない。しばしばレーザ生成プラズマ(「LPP」)と呼ばれるこのような方法の1つでは、所望のライン放出元素を有する材料の小滴、流れ、又はクラスタなどのターゲット材料を照射箇所においてレーザビームで照射することにより、必要なプラズマを生成することができる。ライン放出元素は、純粋形式又は所望の温度で液体である合金などの合金形式である場合もあれば、液体などの他の材料で混合又は分散される場合もある。
【0004】
[04] いくつかの従来技術のLPPシステムでは、それぞれの小滴からプラズマを形成するために小滴流内の小滴が別個のレーザパルスによって照射される。代替的に、それぞれの小滴が2つ以上の光パルスによって順次照らされる、いくつかの従来技術のシステムが開示されている。場合によっては、それぞれの小滴は、ターゲット材料を加熱、膨張、ガス化、蒸発、及び/又はイオン化するため、及び/又は弱いプラズマを発生するために、いわゆる「前パルス(pre-pulse)」に曝され、続いて強いプラズマを発生し、前パルスの影響を受けた材料のほとんど又はすべてをプラズマに変換し、それによりEUV光放出を生成するために、いわゆる「主パルス(main pulse)」に曝される可能性がある。2つ以上の前パルスを使用することができ、2つ以上の主パルスを使用することができること、並びに前パルスと主パルスの機能がある程度重なる可能性があることは認識されるであろう。
【0005】
[05] LPPシステム内のEUV出力パワーは一般に、ターゲット材料を照射するドライブレーザパワーでスケーリングされるので、場合によっては、比較的低出力の発振器又は「シードレーザ(seed laser)」と、シードレーザからのパルスを増幅するための1つ以上の増幅器とを含む配置を使用することが望ましいと見なされる可能性もある。大きい増幅器を使用すると、依然としてLPPプロセスで使用される比較的高出力のパルスを提供しながらシードレーザを使用することができる。
【0006】
[06] しかしながら、レーザパルスによる小滴の照射は、その結果、反射が発生し、従って利得エレメントを通ってシードレーザに向かって光が伝搬して戻ることになる可能性がある。これは、順方向レーザパルスの不要な変調並びに前置増幅器における利得の剥奪を引き起こす可能性がある。更に、シードレーザは高感度の光学部品を含む可能性があり、シードレーザからのパルスはすでに増幅されているので、この逆伝搬光は比較的脆弱なシードレーザを損傷するのに十分大きい強度のものになる可能性がある。
【0007】
[07] 例えば、場合によっては、増幅器(複数も可)は100000(即ち、105)程度の信号利得を有する可能性がある。このような場合、例えば逆伝搬光の約93~99パーセントを阻止できる偏光弁別光アイソレータなどの従来技術の典型的な保護装置は、シードレーザを損傷から保護するのに不十分である可能性がある。
【0008】
[08] 従って、利得エレメントを隔離し、このようなEUV光源内のシードレーザを保護するための改良されたシステム及び方法を有することが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
[09] 本明細書に記載されているように、AOMは、1対のAOM間に時間遅延を追加することにより一連の前置増幅器間の隔離を提供するために使用される。
【0010】
[010] いくつかの実施形態によるシステムは、光路上でレーザ光を生成するためのレーザシードモジュール(laser seed module)と、光路に沿って位置決めされた第1の利得エレメントと、第1の利得エレメントの後に光路に沿って位置決めされた第2の利得エレメントと、第1の利得エレメントと第2の利得エレメントとの間に光路に沿って位置決めされ、第2の利得エレメントから光路に沿って反射して戻る光をそらすように構成された隔離ステージ(isolation stage)であって、当該隔離ステージが、第1の期間について光が光路に沿って誘導される第1の状態と光が光路に沿って誘導されない第2の状態との間を遷移するように構成された第1の音響光学変調器(acoustic-optical modulator)(AOM)と、ある期間について光が光路に沿って誘導される第1と光が光路に沿って誘導されない第2の状態との間を遷移するように構成された第2のAOMであって、第2のAOMの遷移がある時間遅延後に発生する第2のAOMと、第1のAOMと第2のAOMとの間に位置決めされ、両方の第1の状態と両方の第2の状態との間を遷移するための期間及び第1のAOMと第2のAOMがどちらも第1の状態に残存する所定の期間に基づいて選択された時間の間、第1のAOMと第2のAOMとの間のレーザビームの送出を遅延させるように構成された遅延素子(delay device)とを含む、隔離ステージとを含む。
【0011】
[011] いくつかの実施形態による方法は、光路上でレーザ光を生成することと、レーザ光から発生したレーザパルスを光路に沿って位置決めされた第1の利得エレメントを通って通過させることと、第1の利得エレメントと第2の利得エレメントとの間に光路に沿って位置決めされ、第2の利得エレメントから光路に沿って反射して戻る光をそらすように構成された隔離ステージを通ってレーザパルスを通過させることであって、当該隔離ステージが、ある期間について光が光路に沿って誘導される第1の状態と光が光路に沿って誘導されない第2の状態との間を遷移するように構成された第1の音響光学変調器(AOM)と、当該期間について光が光路に沿って誘導される第1の状態と光が光路に沿って誘導されない第2の状態との間を遷移するように構成された第2のAOMであって、当該遷移がある時間遅延後に発生する第2のAOMと、第1のAOMと第2のAOMとの間に位置決めされ、両方の第1の状態と両方の第2の状態との間を遷移するための期間及び第1のAOMと第2のAOMがどちらも第1の状態に残存する期間に基づいて選択された時間の間、第1のAOMと第2のAOMとの間のレーザビームの送出を遅延させるように構成された遅延素子とを含むことと、第1の利得エレメントの後に光路に沿って位置決めされた第2の利得エレメントを通ってレーザパルスを通過させることとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】[012]LPP EUVシステムの一実施形態のコンポーネントのいくつかを示す図である。
図2】[013]LPP EUVシステム内で使用可能なシードレーザモジュール(seed laser module)の一実施形態のコンポーネントのいくつかを示す図である。
図3】[014]シードレーザモジュールを使用するパルス発生システム(pulse generation system)の一実施形態の簡略ブロック図である。
図4A】[015]音響光学変調器の一実施形態の簡略ブロック図である。
図4B】[015]音響光学変調器の一実施形態の簡略ブロック図である。
図4C】[015]音響光学変調器の一実施形態の簡略ブロック図である。
図4D】[015]音響光学変調器の一実施形態の簡略ブロック図である。
図4E】[015]音響光学変調器の一実施形態の簡略ブロック図である。
図5A】[016]隔離ステージの一実施形態の簡略ブロック図である。
図5B】[016]隔離ステージの一実施形態の簡略ブロック図である。
図6】[017]一実施形態において光が隔離ステージによってどのようにそらされるかを描写する簡略タイミング図である。
図7】[018]反射光をそらす方法の一実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[019] LPP EUV発生システムでは、シードレーザは典型的に、ターゲット材料を照射する前に様々なエレメントによって整形、増幅、その他の修正が行われたシードパルスを発生する。シードレーザは脆弱である可能性があり、光はターゲット材料から反射され、シードレーザに戻る可能性がある。逆経路に沿って、反射光は、シードパルスを修正した同じエレメントに加えられ、そのエレメントによって増幅され、修正される可能性がある。従って、音響光学変調器(AOM)は両方の方向に移動する光をそらすか又は通過させるためのスイッチとして一般に使用される。
【0014】
[020] AOMを使用する場合の難題の1つは、ブラッグAOMでは開状態(光路に沿って光を偏向する)から閉状態(光路から光をそらす)に遷移するためにある期間(例えば1マイクロ秒)を必要とすることである。この時間は、反射光がAOMを通過できるシードパルスの長さより著しく長くなり、潜在的に他のエレメントを損傷する可能性がある。
【0015】
[021] LPP EUVシステム内のシードレーザ並びにその他のエレメントを保護するために、特定のエレメント間に隔離ステージが位置決めされる。隔離ステージは、2つのAOM間に位置決めされた遅延線を含む。AOMは、それぞれ、シードレーザによって発生された順方向伝搬パルスが光路に沿って通過し、その他の時間では反射光を光路からそらすことができるように時間設定される。第1のAOMが光路上にパルスを偏向すると、第2は反射光をそらし、逆の場合も同様である。遅延線は、一方のAOMが所望の状態に遷移する間にもう一方のAOMを通過した光を遅延させるために使用される。
【0016】
[022] 図1はLPP EUV光源10の一実施形態のコンポーネントのいくつかを示す簡略概略図である。図1に示されているように、EUV光源10は、レーザパルスのビームを発生し、1つ以上の光路に沿ってレーザ源12からチャンバ14内にビームを送り出し、照射領域16で小滴などのそれぞれのターゲットを照らすためのレーザ源12を含む。図1に示されているEUV光源10内のレーザ源12として使用するのに適している可能性のあるレーザ配置の例については以下により詳細に説明する。
【0017】
[023] 同じく図1に示されているように、EUV光源10は、例えばターゲット材料の小滴をチャンバ14の内部の照射領域16に送り出すターゲット材料デリバリシステム26も含むことができ、その照射領域で小滴は1つ以上のレーザパルスと相互作用して、最終的にプラズマを生成し、EUV放出を発生することになる。様々なターゲット材料デリバリシステムが従来技術で提示されており、それぞれの相対的な利点は当業者にとって明らかになるであろう。
【0018】
[024] 上記のように、ターゲット材料は、スズ、リチウム、キセノン、又はこれらの組み合わせを含む材料を含むことができるが、必ずしもこれに限定されないEUV放出元素である。ターゲット材料は液体小滴の形である場合もあれば、代替的に液体小滴内に含有される固体粒子である場合もある。例えば、スズ元素は、純粋スズとして、SnBr4、SnBr2、SnH4などのスズ化合物として、スズ-ガリウム合金、スズ-インジウム合金、又はスズ-インジウム-ガリウム合金などのスズ合金として、或いはこれらの組み合わせとして、ターゲット材料として提示することができる。使用される材料次第で、ターゲット材料は、室温又は室温付近(例えば、スズ合金又はSnBr4)、室温より高い温度(例えば、純粋スズ)、或いは室温より低い温度(例えば、SnH4)を含む様々な温度で照射領域16に提示することができる。場合によっては、これらの化合物は、SnBr4など、比較的揮発性である場合もある。スズ以外のEUV放出元素の同様の合金及び化合物並びにこのような材料及び上記のものの相対的な利点は当業者にとって明らかになるであろう。
【0019】
[025] 図1に戻ると、EUV光源10は長球面(即ち、その長軸の周りを回転させた楕円)の形の反射面を有する近垂直入射集光鏡などの光学素子18も含むことができ、光学素子18が照射領域16内又はその付近の第1の焦点といわゆる中間領域20の第2の焦点とを有し、EUV光をEUV光源10から出力し、集積回路リソグラフィツール(図示せず)などのEUV光を使用する装置に入力できるようになっている。図1に示されているように、光学素子18は、レーザ源12によって発生されたレーザ光パルスが通過して照射領域16に到達できるようにするためのアパーチャを備えて形成される。
【0020】
[026] 光学素子18は、EUV光を使用する装置にその後送り出すために、EUV光を集め、それを中間領域20に誘導するための適切な表面を備えていなければならない。例えば、光学素子18は、モリブデンとシリコンの交互の層、場合によっては、1つ以上の高温拡散バリア層、平滑化層、キャッピング層、及び/又はエッチングストップ層による段階的多層コーティングを有する可能性もある。
【0021】
[027] 長球面ミラー以外の光学素子を光学素子18として使用できることは当業者によって認識されるであろう。例えば、光学素子18は代替的に、その長軸の周りを回転させたパラボラである場合もあれば、環状の断面を有するビームを中間位置まで送り出すように構成される場合もある。その他の実施形態では、光学素子18は、本明細書に記載されているもの以外の又は本明細書に記載されているものに加えてコーティング及び層を使用する場合もある。当業者であれば、特定の状況において光学素子18のために適切な形状及び組成を選択できるであろう。
【0022】
[028] 図1に示されているように、EUV光源10は、照射箇所のフォーカルスポットにレーザビームを集束させるための1つ以上の光学素子を含む集束ユニット(focusing unit)22を含むことができる。EUV光源10は、レーザ源12と集束ユニット22との間に、レーザビームの拡大、方向操作、及び/又は整形、及び/又はレーザパルスの整形のために、1つ以上の光学素子を有するビーム調節ユニット(beam conditioning unit)24も含むことができる。様々な集束ユニット及びビーム調節ユニットが当技術分野で知られており、当業者によって適切に選択することができる。
【0023】
[029] 上記のように、場合によっては、LPP EUVシステムは1つ以上のシードレーザを使用してレーザパルスを発生し、次にそのレーザパルスは、EUV放出を生成するプラズマを形成するために照射箇所16でターゲット材料を照射するレーザビームになるように増幅することができる。図2は、LPP EUVシステム内でレーザ光源の一部として使用可能なシードレーザモジュール30の一実施形態の簡略概略図である。
【0024】
[030] 図2に示されているように、シードレーザモジュール30は、前パルスシードレーザ32と主パルスシードレーザ34という2つのシードレーザを含む。当業者であれば、2つのシードレーザを含むこのような実施形態が使用される場合、ターゲット材料はまず前パルスシードレーザ32からの1つ以上のパルスによって照射され、次に主パルスシードレーザ34からの1つ以上のパルスによって照射されることを認識するであろう。
【0025】
[031] シードレーザモジュール30は、コンポーネントを直線に配置するのではなく、「折り返し」配置を有するものとして示されている。実際には、このような配置はモジュールのサイズを制限するために典型的なものである。これを達成するために、前パルスシードレーザ32及び主パルスシードレーザ34によって生成されたビームは複数の光学コンポーネント36によって所望の光路上に誘導される。所望の特定の構成次第で、光学コンポーネント36は、レンズ、フィルタ、プリズム、ミラーなどの素子、又はビームを所望の方向に誘導するために使用可能な任意のその他の素子にすることができる。場合によっては、光学コンポーネント36は、通過ビームの偏光を変更することなど、その他の機能も実行することができる。
【0026】
[032] 図2の実施形態では、それぞれのシードレーザからのビームはまず電気光学変調器(electro-optic modulator)38(EOM)を通過する。EOM38は、シードレーザによって発生されたパルスを、より短い持続時間とより速い立ち下がり時間を有するパルスにトリミングするためのパルス整形ユニットとしてシードレーザとともに使用される。より短いパルス持続時間及び比較的速い立ち下がり時間は、パルスとターゲットとの相互作用時間が短くなり、パルスの不必要な部分が増幅器利得を枯渇させないので、EUV出力及び光源効率を増すことができる。2つの別個のパルス整形ユニット(EOM38)が示されているが、代替的に共通のパルス整形ユニットを使用して前パルスシードと主パルスシードの両方をトリミングすることもできる。
【0027】
[033] 次にシードレーザからのビームは、音響光学変調器(AOM)40及び42とビーム遅延素子41とを含む隔離ステージを通過する。以下に説明するように、AOM40及び42は「スイッチ」又は「シャッタ」として働き、これらはターゲット材料からのレーザパルスの反射をシードレーザに到達しないようにそらすように動作し、上記のように、シードレーザは典型的に高感度の光学部品を含み、従って、AOM40及び42は反射がシードレーザエレメントに対する損傷を引き起こすのを防止する。遅延素子41は当技術分野で知られているものなどであり、遅延素子48においてより明確に分かるように、遅延素子41は、ミラー、プリズムなどの光学コンポーネントを含むビーム折り返し光学配置を有し、このユニットを通過する光が光学遅延距離ddelayを移動するようになっており、毎秒約3×108メートルという推定光速を使用すると、1メートルのビーム遅延ごとに光路上の光について約3.33nsの追加の移動時間が加えられる。遅延素子41及び隔離ステージに関する追加の詳細については、特に図3の第1の隔離ステージ33に関して、以下により詳細に述べる。ここに示されている実施形態では、それぞれのシードレーザからのビームは2つのAOMを通過する。更に、本明細書の他の箇所に述べられているように、隔離ステージはシードレーザモジュール30内の他の箇所に位置決めされる場合もある。
【0028】
[034] AOM42を通過した後、2つのビームはビームコンバイナ(beam combiner)44によって「結合」される。それぞれのシードレーザからのパルスは異なる時間に発生されるので、これは実際には、2つの一時的に分離されたビームが更に処理し使用するために共通光路46上に置かれることを意味する。
【0029】
[035] 共通光路上に置かれた後、一方のシードレーザからのビーム(この場合も一度に1つのみが存在することになる)はビーム折り返し光学配置を有するもう1つのビーム遅延素子48を通過する。次に、ビームは、少なくとも1つの前置増幅器50を通り、その後ビームエクスパンダ52を通って誘導される。これに続いて、ビームは薄膜偏光子54を通過し、次に光学コンポーネント56によって前方に誘導され、この場合も光学コンポーネント56は、ビームをLPP EUVシステム内の次のステージに誘導する素子であり、他の機能も実行することができる。光学コンポーネント56からのビームは、以下に例証するように1つ以上の光増幅器及びその他のコンポーネントに進む。
【0030】
[036] 前パルスシードレーザと主パルスシードレーザの両方として使用するのに適した様々な波長可変シードレーザは当技術分野で知られている。例えば、一実施形態では、シードレーザは、準気圧、例えば0.05~0.2気圧のCO2を含み、高周波放電によって汲み上げられた密封充填ガスを有するCO2レーザにすることができる。いくつかの実施形態では、格子を使用してシードレーザの光共振器を画定するのを支援する場合があり、この格子は選択された回転ラインに合わせてシードレーザを調整するために回転させることができる。
【0031】
[037] 図3はシードパルス発生システム60の一実施形態の簡略ブロック図である。シードレーザモジュール30のように、シードパルス発生システム60は、シードパルスを発生し、シードパルスを整形し、シードパルスを増幅する。しかしながら、シードパルス発生システム60は、図2のシードレーザモジュール30の1つの前置増幅器50の代わりに2つの前置増幅器74及び84を含む。第2の前置増幅器を追加し、第2の前置増幅器によって追加の利得が提供されることにより、シードパルス発生システム60を越えて位置決めされた電力増幅器が自動レーザ発振(self-lase)し、順方向レーザパルスの変調を誘発し、シードパルス発生システム60内の前置増幅器74及び84の利得を剥奪する可能性が高くなる。結果として行われる電力増幅器内の自動レーザ発振は、数マイクロ秒続く長い持続時間を有するパルスとして観察されている。第2の前置増幅器を追加したことによるこのような影響を減ずるために、図3のシードパルス発生システム60は、反射光がシードレーザ並びに第2の前置増幅器に到達するのを防止するために図2のシードレーザモジュール30のエレメント間に位置決めされた追加の隔離ステージを含む。当業者にとって明らかになるように、シードパルス発生システム60の隔離ステージは、図2のシードレーザモジュール30に追加するか又はその内部に実現することができる。
【0032】
[038] 図3では、シードレーザ62が単一ユニットとして描写されているが、これは図2の前パルスシードレーザ32及び主パルスシードレーザ34に関して記載されているようにビームを生成するものである。この場合も当業者によって理解されるように、シードパルス発生システム60は2つ以上のシードレーザ62を含むことができる。EOM64は、上記の図2のEOM38に関して記載されているようにパルスを整形するものである。
【0033】
[039] 第1の隔離ステージ66はEOM64と第1の前置増幅器74との間に位置決めされる。第1の隔離ステージ66は第1のAOM68と遅延素子70と第2のAOM72とを含み、遅延素子70はこの場合もビーム折り返し光学配置を有する。第1の隔離ステージ66は、図2のAOM40及び42並びに遅延線41のように、シードレーザ62に到達しないようにターゲット材料からのレーザパルスの反射をそらすように動作する。本明細書で更に詳述するように、隔離ステージ66は、第1の前置増幅器74を通過した増幅パルスからの隔離を改善することができる。
【0034】
[040] シードレーザ62によって発生されたシードパルスを増幅するために、シードパルスは、図2に示されているように1つだけの前置増幅器ではなく、2つ以上の前置増幅器を通過する。2つ以上の前置増幅器を使用することにより、シードパルスは段階的に増幅することができ、これはいくつかの利点を有する。より小さい単独利得を有する別個の増幅器を使用することにより、光学素子の自動レーザ発振が防止される。複数の前置増幅器とともに隔離ステージを使用することによるもう1つの利点は、反射光の99%がそらされた後に依然として反射光の1%でもシードレーザ62を損傷するのに十分強力であるほど利得が高くなる前に、増幅中に反射光をそらすことができることである。
【0035】
[041] 第1の前置増幅器74に続いて、第1のAOM78と遅延素子80と第2のAOM82とを含む第2の隔離ステージ76が配置される。第2の隔離ステージ76は、LPP EUVシステム内の第1の隔離ステージ以外の部分で発生した反射光をそらすことができる。第2の前置増幅器84は照射箇所に移動するパルスのために第2の隔離ステージ76に続いているので、第2の隔離ステージ76に到達する反射光のすべてが第2の前置増幅器84によってすでに増幅されたものになる。
【0036】
[042] 描写されていないが、LPP EUV発生システムの更なるエレメントにビームを誘導する前に、更なる隔離ステージが第2の前置増幅器84に続いてもよい。このような更なる隔離ステージは、反射光が第2の前置増幅器84によって増幅される前にLPP EUVシステム内の更なるコンポーネントに届かないように反射光をそらすことができる。
【0037】
[043] 図4A図4Eは、図2のシードパルス発生システム30及び図3のシードパルス発生システム60内に描写されているものなどのAOM90の一実施形態の簡略ブロック図である。AOM90は、当業者が精通することになるブラッグAOMにすることができ、その動作中の5つの時点について描写されている。図2のAOM40及び42に関連して上述したように、AOM90は、その現在の状態次第で光を偏向するか又はそらすための「スイッチ」又は「シャッタ」として動作する。AOM90は、AOM90を通過する光を回折させ、その光の周波数を偏移するために、材料内の音波によってその材料の光学特性の変化を引き起こすという音響光学効果を使用する。
【0038】
[044] 当技術分野で知られているように、AOM90は典型的に、AOMの一端に取り付けられた圧電変換器(PZT)によって活動化される。電力(典型的に高周波(RF)電力)は振動電気信号としてPZTに印加され、それによりPZTが振動し、AOM内で音波92が作成される。いかなる電力も印加されない場合、その結果、音波92は全く存在せず、光はAOMを通って直接送出され、電力が印加される場合、音波は存在し、AOMは「偏向モード」で動作し、そのモードでは入射光ビームはビーム経路上に偏向され、周波数偏移される。偏向モードでPZTに印加されたRF電力の振幅は、光をビーム経路上に偏向するのに十分なものである。当業者にとって明らかであるように、振幅は偏向を遂行するのに十分な度数だけ光を誘導するだけでよい。所望のスイッチング速度により、電力は典型的にプロセッサ又はコントローラの指示でPZTに印加される。
【0039】
[045] 図4A図4Eに描写されているように、音波92はAOM90の端から端まで移動する。音波92は、電力がPZTに印加される期間T並びに速度Vに基づく長さを有する。AOM90は、ビームアパーチャ94でパルスを遮断するように光路上に位置決めされる。ビームアパーチャ94は、直径「d」を有する円として同図に描写されているが、必ずしもAOM90の物理的特徴ではない。パルスが通過できるようにするために音波92がビームアパーチャ94に重なる時間量T(最小音響パケットサイズという)は、以下の式によりビーム径とパルス持続時間から計算することができる。
T=D/V+dT
ここで、Dはビーム径であり、上記のようにVは音波がAOM90を通って伝搬する速度であり(AOMの場合は一定)、dTは光パルス持続時間である(同じくAOMの場合は一定)。ビーム径が4ミリメートルである場合、音響パケットの速度は毎秒5500メートルであり、光パルス持続時間は200ナノ秒であり、その結果得られる最小音響パケットサイズは927ナノ秒である。
【0040】
[046] 図4Aに示されているように開始されると、音波90はAOM90の端から端まで一方向に伝搬する。音波90がAOM90のビームアパーチャ94に重なると(図4Cに示されている通り)、ビームは他のエレメントに進むために光路上に偏向される。音波92がビームアパーチャ94に重ならない場合、シード発生システム60内でいずれかの方向から発生した光は光路に従わないように通過する。このため、いかなる音波もビームアパーチャ94に存在しない場合、反射光は、図4A及び図4Eに示されているようにシードレーザ32に到達する可能性が低い。
【0041】
[047] 図4B及び図4Dに示されているように音波92がビームアパーチャ94に部分的に重なる場合、音波92を有する部分に当たる光の一部分は光路上に偏向され、残りの部分はAOM90を通過する。従って、チャンバからシードパルス発生器に向かって移動する反射光の一部分は、音波92がビームアパーチャ94に重なる部分を通過し、光路上に誘導される可能性がある。反射光の残りの部分は、音波が全く存在しない光路に従うのを防止される。事例によっては、ビームの偏向された部分は、偏向された時にビームの一部分の形状を保持する「ビーム結像」として知られる現象を呈する。ビーム結像は、ビームアパーチャ94の中心からのビームのシフトとして観察され、非円形、卵形、又は半円形の形状を有する可能性がある。
【0042】
[048] 図5A及び図5Bは、隔離ステージ66及び76などの隔離ステージの一実施形態の簡略ブロック図である。図5では、隔離状態は、AOM106及び112と遅延素子110とからなるものとして示されている。図5A及び図5Bは、シードパルス及び反射光がそれぞれ隔離ステージを通過する時のAOMの相対的な状態を一緒に描写している。上記のように、音波92がビームアパーチャ94に重なる場合、光は光路104として描写されている光路上に偏向される。音波92がビームアパーチャ94に重ならない場合、光は光路104から離れるように誘導される。当技術分野で知られているように、光は音波92が存在しない時にAOMを通過するが、単純にするため、図5は光路104を直線として描写している。
【0043】
[049] 図5Aに示されているように、動作時に、AOM106の端から端まで一方向108に伝搬する音波92がビームアパーチャ94に到達する時に、シードレーザ62によって発生されたパルス102が第1のAOM106に到達する。パルス102は光路104に沿って遅延素子110に進む。パルス102がAOM106を通過すると、遅延素子110の直後に位置決めされた第2のAOM112は、隔離ステージを越えて発生した反射光が遅延素子110に入り、シードレーザ62に戻るのを防止するような状態になる。
【0044】
[050] パルス102が遅延素子110を通って移動する間、第1のAOM106及び第2のAOM112内の音波92は伝搬し続ける。第2のAOM112では、音波92が第1のAOM106内で発生された後に音波92が発生され、所定の時間量だけ遅延されるようになっている。音波が発生された時間同士の遅延と、遅延素子110によって光路内にもたらされた遅延の量は、パルス102が第2のAOM112に到達する時に音波92がビームアパーチャ94にあり、光路104に沿って更に進むように偏向されるように調整される。
【0045】
[051] 第2のAOM112がパルス102を光路104上に偏向している間、第1のAOM106は、光が光路104に従うのを防止するという反対の状態にある。従って、図5Bで分かるように、第2のAOM112が順方向パルスを光路104上に部分的に又は完全に誘導している間に反射光114が第2のAOM112を通過する場合、第1のAOM106内の音波92がビームアパーチャ94から外に伝搬する間に反射光114は遅延素子110を通って進む。音波92が第1のAOM106上のビームアパーチャ94から出た後、反射光114は光路104上でシードレーザに戻るのを防止される。
【0046】
[052] 図6は、反射光が隔離ステージ(例えば、隔離ステージ66及び76)によってどのようにそらされるかを描写するタイミング図600である。タイミング図600は、使用可能なタイミングパターンの一実施形態を描写している。以下に提供する説明に基づいて、当業者は、反射光がシードモジュールに到達するのを防止するための代替タイミングパターンを生成し実現することができるであろう。
【0047】
[053] グラフ130及び140に描写されているように、RF電力は第1のAOM106に提供され、音波がビームアパーチャ94を覆うのに必要な時間(TRISEと表示)と光パルス持続時間(TPと表示)との合計に等しい時間の間、オンのままになる。ある時間遅延(TDELAYと表示)後、グラフ150及び160では、第1のAOM106に関して記載されているようにRF電力が第2のAOM112に提供される。
【0048】
[054] 「TP」と表示されている時間同士の遅延は遅延素子110によってもたらされた遅延である。遅延素子110は、例えば、少なくとも300ナノ秒の遅延を提供する可能性がある。AOMのタイミング及び遅延線によってもたらされた遅延の量は、ビームの直径、AOM内の音波伝搬の方向、及びビーム結像の存在に応じて変動する。遅延は、種々の実施形態について様々なやり方で計算することができる。以下の実施形態例は、必要な量の遅延を決定する方法を例証するためのガイドとして提供されている。
【0049】
[055] ビームの直径は、音波がビームアパーチャ94を閉塞するのに必要な時間TRISEの量に影響を及ぼす。1/e2として定義されたサイズを有するガウスビームの場合、TRISEは、その幅を横断するための時間として概算することができる。当業者にとって明らかであるように、2.7ミリメートルのビームの場合、TRISEは610ナノ秒であり、6.5ミリメートルのビームの場合、TRISEは1470ナノ秒である。
【0050】
[056] 図5に関して述べたように、AOM内の音波が同じ方向に伝搬する場合、隔離ステージ内のAOM間に位置決めされた遅延素子によって提供されるはずの遅延の最小量は以下のように計算することができる。
TDELAY>TRISE+TP/2
ここで、TDELAYは遅延素子110によって提供される遅延であり、TRISEは音波がAOM内のビームアパーチャを閉塞するのに必要な時間であり、TPは光パルス持続時間である。遅延は、少なくとも、AOMが種々の時間に開放できるようにするための計算された時間であり、それぞれのゲートが開放する時間同士の時間差は、反射光が隔離ステージに届いた時に組み合わせた2つのAOMが完全に又は実質的に閉鎖されることを保証するのに十分な長さである。本発明に基づいて当業者にとって明らかになるように、時間遅延の上限は、遅延素子110の長さ、ボリューム、及び損失を含むがこれらに限定されない遅延素子110の特性によって拘束される。
【0051】
[057] AOM内のそれぞれの音波が相反する方向に伝搬する事例では、AOM同士はクロスファイア状態であると言われる。AOMのクロスファイア状態は、第1のAOMの一端と第2のAOMの反対端で音波を開始することによって達成される。AOM同士がクロスファイア状態になると両方の音波は正反対の方向に伝搬するので、隔離ステージ内のAOM間の遅延素子位置によって提供される遅延の最小量は小さくなり、以下のように計算することができる。
TDELAY>(TRISE+TP)/2
【0052】
[058] 事例によっては、ダイアグラム170によって描写されるように、ビーム結像が観察される可能性がある。上記で説明したように、ビーム結像は、音波がAOMのビームアパーチャに部分的に重なる時に発生する可能性がある。図6に描写されているように、ビーム結像現象は、遅延素子によってもたらされる遅延の量を低減するために活用することもでき、反射光の第1の部分が第2のAOM112でそらされ、反射光の残りの部分が第1のAOM106によってそらされるようにすることができる。反射光の一部分をそらすためにはAOMを部分的に閉鎖するだけでよいので、遅延素子110によってもたらされる遅延は、上記のクロスファイア状態のAOMについて使用したものと同じ式により短縮することができる。
【0053】
[059] 図7は、隔離ステージを使用して反射光をそらす方法200の一実施形態のフローチャートである。方法200の動作は、本明細書に記載されているように重なり合う時点同士の間に実行することができる。
【0054】
[060] 動作202では、レーザパルスは任意選択で第1の利得エレメントを通過する。第1の利得エレメントは図3の前置増幅器74などの前置増幅器にすることができる。
【0055】
[061] 次に、動作204では、第1のAOM(図5の第1のAOM106など)はレーザパルスを光路(例えば、図5の光路104)上に通過させるように遷移する。上述したように、第1のAOMは、ビームアパーチャ(例えば、図5のビームアパーチャ94)に重なるようにAOMの端から端まで伝搬する音波を作成することにより遷移する。
【0056】
[062] 次に、動作206では、レーザパルスは遅延素子(例えば、図5の遅延素子110)を通過する。遅延素子は隔離ステージ内の第1のAOMと第2のAOMとの間の移動時間の量を増加する。
【0057】
[063] 次に、動作208では、第2のAOM(例えば、図5の第2のAOM112)はレーザパルスを任意選択の第2の利得エレメント(例えば、図3の前置増幅器84)への光路(例えば、光路104)上に通過させるように遷移する。第2のAOMは、音波が伝搬してAOM内のビームアパーチャを過ぎる時に同様に遷移する。
【0058】
[064] 次に、動作210では、第1のAOMは第2のAOM及び遅延素子を通過した反射光をそらすように遷移する。第1のAOMは、音波が伝搬してAOM内のビームアパーチャを過ぎる時に遷移する。実際には、動作210は好ましくは動作204に続いて行われ、動作206及び208に重なる。
【0059】
[065] 次に、動作212では、第2のAOMはLPP EUVシステム内の更なるコンポーネントから反射光をそらすように遷移する。動作時に、動作212は好ましくは動作208に続いて行われ、動作210に重なる。
【0060】
[066] 本明細書に記載されている隔離ステージは、光路に沿って反対方向に移動している反射光が隔離ステージの上流の敏感で脆弱なコンポーネントに到達するのを防止しながら、パルスがシードパルス発生システム内の光路を移動できるようにするものである。隔離ステージはシステム内の2つのAOM間に遅延をもたらす。この遅延は、AOMをクロスファイア状態にすることによるか又はビーム結像という現象が観察された時に短縮することができる。
【0061】
[067] 開示されている方法及び装置はいくつかの実施形態に関連して上記で説明されている。その他の実施形態は、本発明を考慮すると当業者にとって明らかになるであろう。記載されている方法及び装置の特定の態様は、上記の実施形態に記載されているもの以外の構成を使用して又は上記のもの以外の要素とともに容易に実現することができる。例えば、おそらく本明細書に記載されているものより複雑な異なるアルゴリズム及び/又は論理回路、並びにおそらく異なるタイプのドライブレーザ及び/又はフォーカスレンズを使用することができる。
【0062】
[068] 本明細書で使用する「光学コンポーネント」という用語及びその派生語は、入射光を反射及び/又は送出及び/又は操作する1つ以上のコンポーネントを含むが、必ずしもこれらに限定されず、1つ以上のレンズ、ウィンドウ、フィルタ、ウェッジ、プリズム、グリズム、格子、伝送ファイバ、エタロン、拡散器、ホモジナイザ、検出器及びその他の計器コンポーネント、アパーチャ、アキシコン、並びに多層膜反射鏡、近垂直入射ミラー、斜入射ミラー、鏡面反射体、拡散反射面、及びこれらの組み合わせを含むミラーを含むが、必ずしもこれらに限定されないことに留意されたい。その上、他の指定がない限り、本明細書で使用する「光学部品」、「光学コンポーネント」、又はそれらの派生語はいずれも、単独で動作するコンポーネント、或いはEUV出力光波長、照射レーザ波長、メトロロジーに適した波長、又は何らかのその他の波長などの1つ以上の特定の波長範囲内で有利に動作するコンポーネントに限定されるものではない。
【0063】
[069] 本明細書で留意されているように、様々な変形例が可能である。場合によっては、図2に示されている2つのシードレーザではなく、単一のシードレーザを使用することができる。共通の隔離ステージが2つのシードレーザを保護する場合もあれば、2つのシードレーザのいずれか一方又は両方が保護のためにそれぞれ独自の隔離ステージを有する場合もある。隔離ステージは、前置増幅器84の後など、シード発生システム60内の他の場所に位置決めすることもできる。事例によっては単一のブラッグAOMを使用することができ、所望であれば、単一のシードレーザを保護するために2つ以上のブラッグAOMを使用することもできる。その他のタイプのAOMも使用することができる。
【0064】
[070] 記載されている方法及び装置は、プロセス、装置、又はシステムとしてを含む、多数のやり方で実現できることも認識しなければならない。本明細書に記載されている方法は、このような方法を実行するようプロセッサに指示するプログラム命令によって実現することができ、このような命令は、ハードディスクドライブ、フロッピーディスク、コンパクトディスク(CD)又はデジタル多目的ディスク(DVD)などの光ディスク、フラッシュメモリなどのコンピュータ可読記憶媒体上に、或いはコンピュータネットワークを介して記録され、プログラム命令は光又は電子通信リンクにより送信される。このようなプログラム命令は、プロセッサ又はコントローラにより実行される場合もあれば、固定論理素子に組み込まれる場合もある。本明細書に記載されている方法のステップの順番は変更することができ、依然として本発明の範囲内であることに留意しなければならない。
【0065】
[071] 諸実施形態に関する上記その他の変形例は、特許請求の範囲のみによって限定される本発明によって包含されるものである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6
図7