(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-08
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】位置決め装置、リソグラフィ装置、バランス・マストルクを補償する方法及び装置製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20220104BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
G03F9/00 H
H01L21/68 K
(21)【出願番号】P 2020536848
(86)(22)【出願日】2018-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2018082983
(87)【国際公開番号】W WO2019134776
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-08-18
(32)【優先日】2018-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】サイモンズ、ウィルヘルムス、フランシスカス、ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ブラークスマ、デイヴ
(72)【発明者】
【氏名】バトラー、ハンス
(72)【発明者】
【氏名】コックス、ヘンドリクス、ヘルマン、マリー
(72)【発明者】
【氏名】レーナース、レネ ヴィルヘルムス アントニウス ヒューベルトゥス
(72)【発明者】
【氏名】リボレル、ステファン、クリスティアン、クインタス
(72)【発明者】
【氏名】ファン ダウンホーフェン、マルティヌス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイクマンス、モーリス、ヴィレム、ヨーゼフ、エティエンヌ
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-260339(JP,A)
【文献】特開2004-134745(JP,A)
【文献】特開2010-141321(JP,A)
【文献】特表2015-535613(JP,A)
【文献】特開2012-134485(JP,A)
【文献】特開2007-273633(JP,A)
【文献】特開2001-345256(JP,A)
【文献】特開2010-251623(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0088703(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0069316(US,A1)
【文献】特開2001-304332(JP,A)
【文献】特開2008-51330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 9/00
H01L 21/68
B23Q 1/00-1/76
F16F 15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決めシステムであって、
可動体に作動力を加えるように構成された第1のアクチュエータであって、前記第1のアクチュエータは、当該第1のアクチュエータによって発生された前記作動力に起因する反力を吸収するように構成されたバランス・マスに結合され、前記作動力は、前記可動体を加速させ、前記反力は前記バランス・マスに反対方向へ加速させ、前記可動体の加速による力と、前記バランス・マスの反対方向の加速による力がバランス・マストルクをもたらす第1のアクチュエータと、
前記バランス・マスをフレーム上に支持するように構成されたバランス・マスサポートであって、支持位置で前記フレームと係合するバランス・マスサポートと、
トルク補償器とを含み、
前記トルク補償器は、前記バランス・マストルクを補償するための補償力を出力するように構成され、
前記トルク補償器は、前記支持位置において前記フレームに前記補償力を加えるように構成される、位置決めシステム。
【請求項2】
前記バランス・マスサポートは、第1のバランス・マスサポートと、第2のバランス・マスサポートとを含み、前記第1のバランス・マスサポート及び前記第2のバランス・マスサポートは、前記バランス・マスの両側に配置され、
前記第1のバランス・マスサポートは第1の支持位置で前記フレームに係合し、前記第2のバランス・マスサポートは第2の支持位置で前記フレームに係合し、前記補償器は第1の支持位置で前記フレームに第1の補償力を及ぼすように構成された第1の補償器アクチュエータと、第2の支持位置で前記フレームに第2の補償力を及ぼすように構成された第2の補償器アクチュエータとを含み、
前記第1の補償器アクチュエータ及び前記第2の補償器アクチュエータは、第1の回転方向におけるバランス・マストルクを補償するように協働するように構成される、請求項1に記載の位置決めシステム。
【請求項3】
前記バランス・マスサポートは、第3のバランス・マスサポート及び第4のバランス・マスサポートとを備え、前記第3のバランス・マスサポート及び前記第4のバランス・マスサポートは、前記バランス・マスの両側に配置され、
前記第3のバランス・マスサポートは第3の支持位置で前記フレームに係合し、前記第4のバランス・マスサポートは第4の支持位置で前記フレームに係合し、前記補償器は第3の支持位置で前記フレームに第3の補償力を及ぼすように構成された第3の補償器アクチュエータと、第4の支持位置で前記フレームに第4の補償力を及ぼすように構成された第4の補償器アクチュエータとを備え、
前記第3の補償器アクチュエータ及び前記第4の補償器アクチュエータは、第2の回転方向におけるバランス・マストルクを補償するように協働するように構成される、請求項2に記載の位置決めシステム。
【請求項4】
前記トルク補償器は、可動補償器マスを移動させるように構成されたリニアモータを備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の位置決めシステム。
【請求項5】
前記トルク補償器は、前記トルク補償器の可動マスの位置を決定するように構成されたマス位置検出器をさらに備える、請求項4に記載の位置決めシステム。
【請求項6】
前記トルク補償器は、前記フレームに対する前記可動体の位置及び/又は加速度に基づく補償器制御信号を生成又は受信するように構成され、前記補償器制御信号に基づいて前記補償力を生成するように構成されたコントローラをさらに備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の位置決めシステム。
【請求項7】
前記トルク補償器は、前記可動体の第1の方向の加速度を測定し、前記測定された前記フレームの加速度に基づいて加速度信号を生成するように構成された加速度センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記加速度信号を受信し、それを前記補償器制御信号を生成するための入力として使用するように構成される、請求項6に記載の位置決めシステム。
【請求項8】
前記トルク補償器の前記コントローラは、前記可動体の所望の位置及び/又は加速度に関するデータを含むデータ記憶装置を備え、前記補償器制御信号は、前記データに少なくとも部分的に基づく、請求項6又は7に記載の位置決めシステム。
【請求項9】
請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の位置決め装置を含むリソグラフィ装置
。
【請求項10】
前記可動体は、基板サポート、レチクルマスクユニット又はレチクルステージである、請求項
9に記載のリソグラフィ装置。
【請求項11】
前記リソグラフィ装置は真空チャンバを備え、前記可動体および前記バランス・マスは前記真空チャンバの内部に配置され、
前記トルク補償器は、補償器アクチュエータを含み、前記補償器アクチュエータは、前記真空チャンバの外側に配置される、請求項
9又は
10に記載のリソグラフィ装置。
【請求項12】
位置決めシステムにおけるバランス・マストルクを補償する方法であって、
可動体に作動力を作用させ、前記作動力に起因する反力をバランス・マスにより吸収し、反対側に向けて前記可動体の加速、及び前記バランス・マスの加速を発生させ、前記可動体の加速に起因する力と、前記バランス・マスの加速に起因する力とをバランス・マストルクとすることによりバランス・マストルクを発生させ、前記バランス・マストルクはバランス・マスサポートを介して支持位置でフレームに及ぼされ、
前記支持位置でフレームに補償力を加えるトルク補償器によって前記フレームに及ぼされるバランス・マストルクを補償する、方法。
【請求項13】
パターニングデバイスから基板上にパターンを転写することを含むデバイス製造方法であって、請求項
9乃至
11のいずれか1項に記載のリソグラフィ装置を使用するステップを含むデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決めデバイス、リソグラフィ装置、バランス・マストルクを補償する方法、及びデバイスを製造する方法に関する。
関連技術の説明
【0002】
リソグラフィ装置は、基板に、通常は基板のターゲット部分に所望のパターンを適用する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用することができる。そのような場合、マスク又はレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層上に形成される回路パターンを生成することができる。このパターンは、基板(例えば、シリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば、1つ又はいくつかのダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は、典型的には、基板上に提供された放射感応性材料(レジスト)の層への画像化による。一般に、単一の基板は、連続的にパターン化される隣接するターゲット部分のネットワークを含む。従来のリソグラフィ装置には、パターン全体を一度にターゲット部分に露光することによって各ターゲット部分を照射するいわゆるステッパと、パターンを、放射ビームを通して所定の方向(「スキャン」方向)にスキャンして、各ターゲット部分を照射しながら、基板をこの方向に平行又は非平行に同期してスキャンするスキャナとが含まれる。パターンを基板にインプリントすることにより、パターン化デバイスから基板にパターンを転写することも可能である。
【0003】
リソグラフィ装置では、例えばフォーカスと位置の面で、基板上のパターンの所望の品質を得るために、いくつかの部品を非常に正確に配置する必要がある。これらの部品のほとんどは、リソグラフィ装置のベースフレームに直接又は間接的に接続される。基板上のパターンの所望の品質を達成するために、ベースフレームが非常に安定しており、ベースフレームの変形は可能な限り小さく保たれることが望ましい。
【0004】
ベースフレームに機械的な力を及ぼすリソグラフィ装置の要素の一例は、ウエハステージのバランス・マスである。一般的に使用される設計では、ウエハステージは平面モータによって駆動され、ウエハステージの加速を提供する。この作動から生じる反力は、バランス・マスによって吸収され、バランス・マスは、反力によって反対方向に加速される。バランス・マスは、バランス・マスサポートによってベースフレームに接続される。
【0005】
ウエハステージの重心とバランス・マスの重心の間の距離により、ウエハステージの加速力とバランス・マスの加速力は、バランス・マスサポートにより、ベースフレームに伝達されるトルクとなる。
【0006】
同様の状況が、例えば、レチクルステージ又はレチクルマスクユニットのようなリソグラフィ装置の異なる部分でも発生する。
【発明の概要】
【0007】
可動体の加速力と、リソグラフィ装置のフレーム上の前記可動体に関連するバランス・マスの加速力との組み合わせによって引き起こされるトルクの影響を低減する位置決めデバイスを提供することが望ましい。
【0008】
本発明の実施形態によれば、
可動体に作動力を加えるように構成された第1のアクチュエータであって、前記第1のアクチュエータは、当該第1のアクチュエータによって発生された前記作動力に起因する反力を吸収するように構成されたバランス・マスに結合され、前記作動力は、前記可動体を加速させ、前記反力は前記バランス・マスに反対方向へ加速させ、前記可動体の加速による力と、前記バランス・マスの反対方向の加速による力がバランス・マストルクをもたらす第1のアクチュエータと、
前記バランス・マスをフレーム上に支持するように構成されたバランス・マスサポートであって、支持位置で前記フレームと係合するバランス・マスサポートと、
トルク補償器とを含み、
前記トルク補償器は、前記バランス・マストルクを補償するための補償力を出力するように構成され、
前記トルク補償器は、前記支持位置において前記フレームに前記補償力を加えるように構成される、位置決め装置が提供される。
【0009】
本発明の他の実施形態によれば、
可動体に作動力を加えるように構成された第1のアクチュエータであって、前記第1のアクチュエータは、当該第1のアクチュエータによって発生された前記作動力に起因する反力を吸収するように構成されたバランス・マスに結合され、前記作動力は、前記可動体の加速を提供し、前記反力は、前記バランス・マスの反対方向への加速を提供し、前記可動体の加速度による力と、前記バランス・マスの反対方向の加速による力がバランス・マストルクをもたらす第1のアクチュエータと、
前記バランス・マスをフレーム上に支持するように構成されたバランス・マスサポートであって、支持位置で前記フレームと係合するバランス・マスサポートと、
トルク補償器とを含み、
前記トルク補償器は、前記バランス・マストルクを補償するための補償力を出力するように構成され、
前記トルク補償器は、補償位置において前記フレームに前記補償力を加えるように構成され、前記補償位置は、前記支持位置から離れており、前記補償位置は前記フレームの一部を通して前記支持位置に接続され、前記フレームの一部は前記バランス・マスサポートよりも固い、位置決め装置が提供される。
【0010】
本発明の他の実施形態によれば、本発明による位置決め装置を備えたリソグラフィ装置が提供される。
【0011】
本発明の他の実施形態によれば、位置決めシステムにおけるバランス・マストルクを補償する方法であって、
可動体に作動力を作用させ、前記作動力に起因する反力をバランス・マスにより吸収し、反対側に向けて前記可動体の加速、及び前記バランス・マスの加速を発生させ、前記可動体の加速に起因する力と、前記バランス・マスの加速に起因する力とをバランス・マストルクとすることによりバランス・マストルクを発生させ、前記バランス・マストルクはバランス・マスサポートを介して支持位置でフレームに及ぼされ、
前記支持位置でフレームに補償力を加えるトルク補償器によって前記フレームに及ぼされるバランス・マストルクを補償する、方法が提供される。
【0012】
本発明の他の実施形態によれば、ポジショナシステムにおけるバランス・マストルクを補償する方法であって、
可動体に作動力を作用させ、前記作動力に起因する反力をバランス・マスにより吸収し、反対側に向けて前記可動体の加速、及び前記バランス・マスの加速を発生させ、前記可動体の加速に起因する力と、前記バランス・マスの加速に起因する力とをバランス・マストルクとすることによりバランス・マストルクを発生させ、前記バランス・マストルクはバランス・マスサポートを介して支持位置でフレームに及ぼされ、
補償位置において補償力を加えるトルク補償器によって前記フレームに及ぼされるバランス・マストルクを補償し、前記補償位置は、前記支持位置から離れており、前記補償位置は前記フレームの一部を通して前記支持位置に接続され、前記フレームの一部は前記バランス・マスサポートよりも固い、方法が提供される。
【0013】
本発明の他の実施形態によれば、パターニングデバイスから基板上にパターンを転写することを含むデバイス製造方法であって、本発明のリソグラフィ装置を使用するステップを含むデバイス製造方法が提供される。
【0014】
次に、本発明の例示としての実施形態を、対応する参照記号が対応する部分を示す添付の概略図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を示す。
【
図2】リソグラフィ装置で使用される位置決めデバイスの可能な実施形態を概略的に示す図である。
【
図3】本発明による位置決めシステム1の可能な実施形態を概略的に示す。
【
図6】
図3の実施形態の上面図の変形を概略的に示す。
【
図7】
図3の実施形態の上面図のさらなる変形を概略的に示す。
【
図8】本発明による位置決めシステムのさらなる実施形態を上面図で概略的に示す。
【
図9】本発明による位置決めシステムのさらなる実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、放射ビームB(例えば、放射ビームB)を調整するように構成された照明システム(照明器)IFと、UV放射又は任意の他の適切な放射)、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構成され、パターニングデバイスを以下に従って正確に位置決めするように構成された第1の位置決めデバイスPMに接続されたマスク支持構造(例えばマスクテーブル)MTとを含む。装置はまた、基板(例えば、レジストコーティングされたウエハ)Wを保持するように構成され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成される第2の位置決め装置PWに接続される基板テーブル(例えば、ウエハテーブル)WT又は「基板サポート」を含む。装置はさらに、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに与えられたパターンを基板Wのターゲット部分C(たとえば1つ又は複数のダイを含む)に投影するように構成された投影システム(たとえば屈折投影レンズシステム)PSを含む。
【0017】
イルミネータシステムILは、放射を方向付け、成形、又は制御するために、屈折、反射、磁気、電磁気、静電又は他のタイプの光学コンポーネント、又はそれらの任意の組み合わせなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含み得る。
【0018】
マスク支持構造MTは、パターニングデバイスMAを支持する、すなわち、パターニングデバイスMAの重量を支える。それは、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計、及び例えばパターニングデバイスが真空環境に保持されているかどうかなどの他の条件に依存する方法で、パターニングデバイスMAを保持する。マスク支持構造は、パターニングデバイスを保持するために、機械的、真空、静電又は他のクランプ技術を使用することができる。マスク支持構造MTは、例えば、必要に応じて固定又は可動式にされるフレーム又はテーブルとすることができる。マスク支持構造は、例えば投影システムに対して、パターニングデバイスが確実に所望の位置にあるようにすることができる。本明細書における「レチクル」又は「マスク」という用語の使用はすべて、より一般的な「パターニングデバイス」という用語の同義語と見なすことができる。
【0019】
本明細書で使用される「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分にパターンを作成するために放射ビームに断面のパターンを与えるために使用できる任意のデバイスを指すと広く解釈されるべきである。放射ビームに付与されたパターンは、例えば、パターンが位相シフト機能又はいわゆるアシスト機能を含む場合、基板のターゲット部分の所望のパターンに正確に対応しない場合があることに留意すべきである。一般に、放射ビームに付与されたパターンは、集積回路などのターゲット部分に作成されるデバイスの特定の機能層に対応する。
【0020】
パターニングデバイスMAは、透過性又は反射性であり得る。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルが含まる。マスクはリソグラフィでよく知られており、バイナリ、交互位相シフト、減衰位相シフトなどのマスクタイプや、さまざまなハイブリッドマスクタイプが含まれる。プログラマブルミラーアレイの例では、小さなミラーのマトリックス配置を採用し、小さなミラーのそれぞれを個別に傾けて、入射する放射ビームを異なる方向に反射させることができる。傾斜したミラーは、ミラーマトリックスによって反射される放射ビームにパターンを与える。
【0021】
本明細書で使用される「投影システム」という用語は、使用される露光放射線又は液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に適切な、屈折、反射、反射屈折、磁気、電磁気及び静電光学システム、又はそれらの任意の組み合わせを含む任意のタイプの投影システムを包含すると広く解釈されるべきである。本明細書における「投影レンズ」という用語の使用はすべて、より一般的な「投影システム」という用語の同義語と見なすことができる。
【0022】
ここで示しているように、装置は透過タイプである(例えば透過マスクを使用する)。
あるいは、装置は、反射型(例えば、上記で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイを使用するか、又は反射マスクを使用する)であってもよい。
【0023】
リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブル又は「基板サポート」(及び/又は2つ以上のマスクテーブル又は「マスクサポート」)を有するタイプのものとすることができる。そのような「多段」機械では、追加のテーブル又はサポートを並行して使用するか、1つ以上の他のテーブル又はサポートを露光に使用しながら、準備ステップを1つ以上のテーブル又はサポートで実行できる。少なくとも1つの基板テーブルWTに加えて、リソグラフィ装置は、測定を実行するように構成されているが基板Wを保持するようには構成されていない測定テーブルを備えることができる。測定テーブルは、センサを保持し、放射ビームBの強度、投影システムPSの収差、又は放射ビームBの均一性などの投影システムPSの特性を測定するように構成することができる。測定テーブルは、リソグラフィ装置の少なくとも一部、例えば投影システムPSの最後のレンズ要素の近くの部分をクリーニングするクリーニングデバイスを保持するように構成されてもよい。
【0024】
リソグラフィ装置は、基板の少なくとも一部が比較的高い屈折率を有する液体で覆われるタイプ、例えば水が投影システムと基板の間の空間を満たすものでもよい。液浸液が、例えば、パターニングデバイスMAと投影システムPSの間など、リソグラフィ装置の他の空間に適用することもできる。液浸技術を使用して、投影システムの開口数を増やすことができる。本明細書で使用する「液浸」という用語は、基板などの構造を液体に浸さなければならないことを意味するのではなく、露光中に液体が投影システムと基板の間にあることを意味するに過ぎない。
【0025】
図1を参照すると、イルミネータILは、放射源SOから放射ビームを受け取る。放射源SO及びリソグラフィ装置は、例えば、放射源がエキシマレーザである場合、独立した存在であってもよい。そのような場合、放射源SOはリソグラフィ装置の一部を形成するとは見なされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエキスパンダーを含むビーム送出システムBDの助けを借りて、放射源SOからイルミネータILに渡される。他の場合では、例えば放射源SOが水銀ランプである場合、放射源SOはリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及びイルミネータILは、必要であればビーム送出システムBDとともに、放射システムと呼ばれることがある。
【0026】
イルミネータILは、放射ビームの角強度分布を調整するように構成されたアジャスタADを含むことができる。一般に、イルミネータの瞳面内の強度分布の少なくとも外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、s-outer及びs-innerと呼ばれる)を調整することができる。さらに、イルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの様々な他のコンポーネントを含むことができる。イルミネータILは、放射ビームを調整して、その断面に所望の均一性及び強度分布を持たせるために使用することができる。
【0027】
放射ビームBは、マスク支持構造MT上に保持されているパターニングデバイスMAに入射し、パターニングデバイスによってパターン形成される。パターニングデバイスMAを通過した後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSは、放射ビームBを基板Wのターゲット部分Cに集束させる。第2の位置決め装置PW及び位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダー又は静電容量センサ)、基板テーブルWTを正確に移動させられ、放射ビームBの経路に異なるターゲット部分Cを位置決めできる。同様に、第1の位置決め装置PM及び別の位置センサ(
図1には明示的に示されていない)を使用して、例えばマスクライブラリからの機械的回収後、又はスキャン中にパターニングデバイスMAを放射ビームBの経路上に正確に位置決めすることができる。一般に、マスク支持構造MTの移動は、第1の位置決め装置PMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)を利用して実現することができる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第2の位置決め装置PWの一部を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを使用して実現することができる。ステッパの場合、(スキャナとは対照的に)マスク支持構造MTは、ショートストロークアクチュエータのみに接続されてもよく、又は固定されてもよい。
パターニングデバイスMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示の基板アライメントマークP1、P2は専用ターゲット部分を占めるが、それらはターゲット部分Cの間のスペースに配置されてもよい。このような専用ターゲット部分はスクライブレーンアライメントマークとして知られている。同様に、パターニングデバイスMA上に2つ以上のダイが提供される状況では、マスクアライメントマークM1、M2は、ダイの間に配置されてもよい。
【0028】
図示の装置は、以下のモードの少なくとも1つで使用することができる:
1.ステップモードでは、マスク支持構造MT及び基板テーブルWTは本質的に静止したままであるが、放射ビームBに与えられたパターン全体が一度にターゲット部分Cに投影される(すなわち、単一の静的露光)。次に、基板テーブルWTは、X及び/又はY方向にシフトされ、その結果、異なるターゲット部分Cを露光することができる。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、1回の静的露光で撮像されるターゲット部分Cのサイズが制限される。
2.スキャンモードでは、放射ビームに与えられたパターンがターゲット部分Cに投影される間、マスク支持構造MT及び基板テーブルWT又は「基板サポート」が同期してスキャンされる(すなわち、単一動的露光)。マスク支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの(縮小)拡大率及び像反転特性によって決定することができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一の動的露光におけるターゲット部分の幅(非スキャン方向)が制限されるが、スキャン動作の長さによって、ターゲット部分Cの(スキャン方向の)高さが決まる。3.別のモードでは、マスク支持構造MTは、プログラマブルパターニングデバイスを保持して本質的に静止状態に保たれ、基板テーブルWTは、放射ビームBに与えられたパターンがターゲット部分Cに投影される間に移動又はスキャンされる。この動作モードでは、一般的にパルス放射源が使用され、プログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTの各移動後、又はスキャン中の連続する放射パルス間に、必要に応じて更新される。この動作モードは、上で言及したタイプのプログラム可能ミラー・アレイなどのプログラム可能パターン化デバイスを利用するマスクレス・リソグラフィに容易に適用できる。
【0029】
上述のモードの使用の組み合わせ及び/若しくは変形、又は完全に異なるモードを使用することもできる。
【0030】
図2は、リソグラフィ装置で使用されるような位置決めシステム1の可能な実施形態を概略的に示す。
図2は、第2の位置決め装置PWの例である。
【0031】
図2は、その上に基板W、例えばウエハが載置される基板サポートWTを備える。基板サポートWTは、この例ではフレーム5によって囲まれている真空チャンバ6内に配置されている。
【0032】
位置決めシステム1は、第1のアクチュエータ4をさらに備える。この例では、第1のアクチュエータは、トランスレータ4aとステータ4bを含む平面モータである。トランスレータ4aは、基板サポートWTに取り付けられている。
【0033】
位置決めシステム1は、バランス・マス10をさらに備える。第1のアクチュエータ4のステータ4bは、バランス・マス10に取り付けられている。バランス・マス10は、バランス・マスサポート12によってフレーム5上に支持されている。
図2の実施形態では、バランス・マスサポート12は、第1のバランス・マス支持装置12a及び第2のバランス・マス支持装置12bを備える。第1及び/又は第2のバランス・マス支持装置12a、12bは、例えば、板ばねであるか、又はそれを含む。
【0034】
バランス・マスサポート12は、支持位置でフレーム5と係合する。バランス・マスサポート12及びフレーム5の設計に応じて、単一の支持位置又は複数の支持位置があり得る。
図2に示す例では、2つの支持位置20a、20bがある。
【0035】
基板テーブルWTは可動体である。第1のアクチュエータ4は、基板サポートWT及びバランス・マス10を互いに対して、及びフレーム5に対して移動させることができる。第1のアクチュエータ4は、基板サポートWTに力及び作動力を及ぼすように構成され、これにより、基板サポートWTの加速がもたらされる。この作動力は、基板サポートWTの加速をもたらす。基板サポートWTのこの加速から、力3はFwt=mwt×awtの大きさで生じ、ここで、Fwtは結果として生じる力3であり、mwtは基板サポートの質量であり、awtは基板サポートWTの加速度である。
【0036】
第1のアクチュエータ4は、バランス・マス10に結合されている。
図2の例では、この結合は、第1のアクチュエータ4のステータ4bをバランス・マス10に取り付けることによって達成される。バランス・マス10は、基板サポートWTに及ぼされる作動力から生じる反力を吸収するように構成される。これは、基板サポートWTの加速の方向と反対の方向に、バランス・マス10の加速をもたらす。バランス・マス10のこの加速から、力13はF
bm=m
bm×a
bmの大きさになり、F
bmは結果として生じる力13、m
bmはバランス・マス10の質量、a
bmはバランス・マス10の加速度
である。力13の大きさは力3の大きさに等しいが、反対方向に向けられる。
【0037】
基板サポートWTは重心2を有し、バランス・マスは重心11を有する。
図2から明らかなように、基板サポートWTの重心2とバランス・マス10の重心11との間には距離Zがある。これにより、バランス・マストルクは力3と力13の組み合わせから生じる。このバランス・マストルクは、F
wt×Zに等しい大きさを有し、F
wtは力3の大きさであり、Zは、基板サポートWTの重心2とバランス・マス10の重心11との間の距離である。
【0038】
バランス・マストルクは、バランス・マスサポート12によってフレーム5に伝達される。
図2の実施形態では、バランス・マストルクは、第1の支持位置20aでフレームに加えられる力15a、及び第2の支持位置20bでフレームに加えられる力15bの形でフレームに加えられる。
【0039】
図2では、示される位置決めシステム1は、第2の位置決め装置PWの例である。しかしながら、例えば、第1の位置決め装置PMを
図2に従って構成してもよい。その場合、第1のアクチュエータによって作動されるのは基板サポートWTではなく、パターニングデバイスMAである。
【0040】
図3は、本発明による位置決めシステム1の可能な実施形態を概略的に示す。この実施形態は、
図2に示すように、位置決めシステム1のすべての要素を含み、同じように機能する。
【0041】
図4は、
図3の位置決めシステム1の第1の支持位置の近くのより詳細な状況に示す。
【0042】
図2の位置決めシステム1と
図3の位置決めシステム1の主な違いは、
図3の位置決めシステム1がトルク補償器を含むことである。トルク補償器は、バランス・マストルクを補償するためにフレームに補償力を及ぼすように構成される。補償力は、支持位置でフレームに加えられる。これは、バランス・マストルクの効果的な補償を可能にし、フレーム5の有利な動的挙動を可能にする。
【0043】
図3の実施形態では、トルク補償器は、第1の補償器アクチュエータ25a及び第2の補償器アクチュエータ25bを備える。第1の補償器アクチュエータ25aは、第1の支持位置20aで第1の補償力16a(
図4を参照)を及ぼす。第1の補償力16aは、力15aと同じ大きさを有する。第1の補償力16aは、力15aと反対の方向に向けられる。これにより、第1の補償力16aは力15aを打ち消す。第2の補償器アクチュエータ25bは、第2の支持位置20bで第2の補償力を及ぼす。第2の補償力は、力15bと同じ大きさである。第2の補償力は、力15bと反対の方向に向けられる。これにより、第2の補償力は力15bを打ち消す。
【0044】
図3及び
図4の実施形態では、第1の補償器アクチュエータ25aは、可動マス26a及びリニアモータ27aを備える。リニアモータ27aは、力15aを打ち消すための補償力16aを生成するために可動マス26aを動かすように構成される。第1の補償器アクチュエータ25aは、第1の補償力16aが第1の支持位置20a(
図4の斜線領域によって示される)でフレーム5に加えられるように配置される。任意選択で、第1バランス・マス支持装置12aは、真空チャンバ6の内側のフレーム5の表面上の第1の支持位置20aでフレームと係合し、第1の補償器アクチュエータ25aは、真空チャンバ6の外側のフレーム5の表面上の第1の支持位置20aでフレーム5と係合する。
【0045】
図3及び
図4の実施形態では、第2の補償器アクチュエータ25bは、可動マス26b及びリニアモータ27bを備える。リニアモータ27bは、力15bを打ち消すための補償力を生成するために可動マス26bを動かすように構成される。第2の補償器アクチュエータ25bは、第2の補償力が第2の支持位置20bでフレーム5に加えられるように配置される。任意選択で、第2のバランス・マス支持装置12bは、真空チャンバ6の内側のフレーム5の表面上の第2の支持位置20bでフレームと係合し、第2の補償器アクチュエータ25bは、真空チャンバ6の外側のフレーム5の表面上の第2の支持位置20bでフレーム5と係合する。
【0046】
リニアモータ27a、27bは、例えば、可動磁石LIMMSリニアモータ及び/又はコアレス鉄LIMMSリニアモータのようなLIMMSリニアモータのようなリニア誘導モータである。リニア誘導モータの反力は、フレーム5に力を及ぼすことなく可動マス26a、26bを動かす。
【0047】
任意選択的に、第1の補償器アクチュエータ25aは、マス位置検出器28aを備える。マス位置検出器28aは、第1の補償器アクチュエータ25a内の可動マス26aの位置を検出するように構成される。マス位置検出器28aは、例えばエンコーダであるか、又はそれを含む。必要に応じて、さらに、第1の補償器アクチュエータ25a内の可動範囲26aがその運動範囲のほぼ中央を移動するように維持できるように、低帯域幅フィードバックコントローラが提供される。
【0048】
任意選択的に、同様に、第2の補償器アクチュエータ25bは、マス位置検出器28bを備える。マス位置検出器28bは、第2の補償器アクチュエータ25b内の可動マス26bの位置を検出するように構成される。マス位置検出器28bは、例えばエンコーダであるか、又はそれを含む。必要に応じて、さらに、低帯域幅フィードバックコントローラが提供され、それにより、可動マス26bは、第2の補償器アクチュエータ内のその運動範囲のほぼ中央を移動するように維持され得る。
【0049】
図3の実施形態では、トルク補償器は、第1の補償器アクチュエータ及び第2の補償器アクチュエータを備える。しかしながら、実施形態ごとに、トルク補償器に存在する補償器アクチュエータの数は異なり得る。好ましくは、補償器アクチュエータは、各支持位置に設けられる。
【0050】
【0051】
図5は、基板サポートWT、バランス・マス10及びフレーム5を示す。基板サポートWT及びバランス・マスは、真空チャンバ6内に配置される。バランス・マスサポートは、第1の支持位置20aでフレーム5と係合する第1のバランス・マス支持装置12aを備える。バランス・マスサポートはさらに、第2の支持位置20bでフレーム5と係合する第2のバランス・マス支持装置12bを備える。第1のバランス・マス支持装置12a及び第2のバランス・マス支持装置12bは、バランス・マス10の両側に配置されている。
【0052】
この実施形態では、トルク補償器は、第1の補償器アクチュエータ25a及び第2の補償器アクチュエータ25bを備える。第1の補償器アクチュエータ25aは、第1の支持位置20aで第1の補償力を及ぼすように配置される。第2の補償器アクチュエータ25bは、それが第2の支持位置20bで第2の補償力を及ぼすように配置される。
【0053】
方向A1における基板サポートWTの加速は、軸R1の周りのバランス・マストルクをもたらす。この平衡質量トルクは、補償器アクチュエータ25a、25bによって提供される補償力によって打ち消される。
【0054】
図6は、
図3の実施形態の変形の上面図を概略的に示す。
【0055】
図6は、基板サポートWT、バランス・マス10及びフレーム5を示す。基板サポートWT及びバランス・マスは、真空チャンバ6内に配置される。
【0056】
図6の変形として、バランス・マスサポートは、それぞれの第1の支持位置20a1、20a2でフレーム5と係合する2つの第1のバランス・マス支持デバイス12a1、12a2を備える。バランス・マスサポートは、それぞれの第2の支持位置20b1、20b2でフレーム5と係合する2つの第2のバランス・マス支持装置12b1、12b2をさらに備える。
【0057】
この実施形態では、トルク補償器は、2つの第1の補償器アクチュエータ25a1、25a2及び2つの第2の補償器アクチュエータ25b1、25b2を備える。第1の補償器アクチュエータ25a1、25a2は、それぞれの第1の補償力がそれぞれの第1の支持位置20a1、20a2に加えられるように配置される。第2の補償器アクチュエータ25b1、25b2は、それぞれの第2の補償力がそれぞれの第2の支持位置20b1、20b2に加えられるように配置される。
【0058】
方向A1における基板サポートWTの加速は、軸R1の周りのバランス・マストルクをもたらす。このバランス・マストルクは、補償器アクチュエータ25al,25a2,25bl,25b2によって提供される補償力によって打ち消される。この構成では、代替的又は追加的に、補償器アクチュエータ25al、25a2、25bl、25b2は、軸R2の周りのバランス・マストルクを相殺することもできる。
【0059】
図7は、
図3の実施形態のさらなる変形の上面図を概略的に示す。
【0060】
図7は、基板サポートWT、バランス・マス10及びフレーム5を示す。基板サポートWT及びバランス・マスは、真空チャンバ6内に配置される。バランス・マスサポートは、第1の支持位置20aでフレーム5と係合する第1のバランス・マス支持装置12aを備える。バランス・マスサポートはさらに、第2の支持位置20bでフレーム5と係合する第2のバランス・マス支持装置12bを備える。
【0061】
さらに、バランス・マスサポートは、第3のバランス・マス支持装置32a及び第4のバランス・マス支持装置32bを備える。第3バランス・マス支持装置32a及び第4バランス・マス支持装置32bは、バランス・マス10の両側に配置されるが、第1及び第2バランス・マス支持装置12a、12bが配置される側とは異なる側に配置される。第3のバランス・マス支持装置32aは、第3の支持位置30aでフレーム5と係合する。第4のバランス・マス支持装置32bは、第4の支持位置30bでフレーム5と係合する。
【0062】
この実施形態では、トルク補償器は、第1の補償器アクチュエータ25a、第2の補償器アクチュエータ25b、第3の補償器アクチュエータ35a及び第4の補償器アクチュエータ35bを備える。第1の補償器アクチュエータ25aは、第1の支持位置20aで第1の補償力を及ぼすように配置される。第2の補償器アクチュエータ25bは、それが第2の支持位置20bで第2の補償力を及ぼすように配置される。第3の補償器アクチュエータ35aは、それが第3の支持位置30aで第3の補償力を及ぼすように配置される。第4の補償器アクチュエータ35bは、第4の支持位置30bで第4の補償力を及ぼすように配置される。
【0063】
方向A1における基板サポートWTの加速は、軸R1の周りのバランス・マストルクをもたらす。この平衡質量トルクは、第1及び第2の補償器アクチュエータ25a、25bによって提供される補償力によって打ち消される。
【0064】
方向A2における基板サポートWTの加速は、軸R2の周りのバランス・マストルクをもたらす。このバランス・マストルクは、第3及び第4の補償器アクチュエータ35a、35bによって提供される補償力によって打ち消される。
【0065】
図8は、本発明による位置決めシステム1のさらなる実施形態の上面図を概略的に示す。
【0066】
この実施形態では、トルク補償器は、フレーム5の支持位置に補償力が加えられるように配置されず、支持位置から離れた補償位置に配置される。補償位置は、バランス・マスサポートよりも剛性のあるフレーム5の部分41a,41bによって支持位置に接続される。好ましくは、フレームのこの部分41a、41bは、バランス・マス支持体よりも著しく例えば少なくとも10倍剛性が高い。剛性フレーム部分41a、41bは、例えば、真空チャンバ6の壁の一部、真空チャンバ6の壁の補強部分、又は真空チャンバ6の壁に配置される必要な剛性のコネクタ片である。それぞれの支持位置20a、20bとそれぞれの補償位置40a、40bとの間に延在するフレーム部分41a、41bの剛性により、トルク補償器が直接サポート位置で補償力を発揮する場合と同様の効果を得ることができる。
図8の実施形態は、例えば、トルク補償器が支持位置で直接補償力を発揮するようにトルク補償器を配置するために利用可能な十分な空間がない場合に使用されてもよい。
【0067】
図8は、基板サポートWT、バランス・マス10及びフレーム5を示す。基板サポートWT及びバランス・マスは、真空チャンバ6内に配置される。バランス・マスサポートは、第1の支持位置20aでフレーム5と係合する第1のバランス・マス支持装置12aを備える。バランス・マスサポートはさらに、第2の支持位置20bでフレーム5と係合する第2のバランス・マス支持装置12bを備える。第1のバランス・マス支持装置12a及び第2のバランス・マス支持装置12bは、バランス・マス10の両側に配置されている。
【0068】
この実施形態では、トルク補償器は、第1の補償器アクチュエータ25a及び第2の補償器アクチュエータ25bを備える。第1の補償器アクチュエータ25aは、第1の補償器位置40aで第1の補償力を及ぼすように配置される。第2の補償器アクチュエータ25bは、第2の補償位置40bで第2の補償力を及ぼすように配置される。
【0069】
方向A1における基板サポートWTの加速は、軸R1の周りのバランス・マストルクをもたらす。この平衡質量トルクは、補償器アクチュエータ25a、25bによって提供される補償力によって打ち消される。互いに対する補償器アクチュエータ25a、25bの位置、及び/又は互いに対する支持位置20a、20bの位置がフレーム5に追加のトルクを導入する場合、この追加のトルクは、オプションである補償力を決定するときにも考慮されるので、補償器アクチュエータ25a、25bもこの追加のトルクを補償する。
【0070】
図8の実施形態は、図に示すように、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。
【0071】
図9は、本発明によるポジショナシステムのさらなる実施形態を概略的に示す。
【0072】
この実施形態では、トルク補償器は、バランス・マス10に対する可動体WTの位置及び/又は加速度に基づく補償器制御信号を生成又は受信し、前記補償器制御信号に基づいて補償力を生成するように構成されたコントローラ50をさらに備える。コントローラ50は、トルク補償器専用の別個の存在とすることができ、又はポジショナシステムの全体の制御システムに、又はリソグラフィ装置の全体の制御システム(ポジショナシステムがリソグラフィ装置で使用される場合)に統合することができる。
【0073】
可動体WT及びバランス・マス10の加速は、時間とともに変化する。フレーム5に有効な補償力を及ぼすことができるようにするために、可動体WT及びバランス・マス10の加速度の変動が、トルク補償器によって及ぼされる1つ又は複数の補償力の変動をもたらすことが望ましい。これはさまざまな方法で実現できる。
【0074】
例えば、フィードフォワード制御ループを使用できる。これは、例えば、トルク補償器のコントローラ50に、可動体WTの位置及び/又は加速度に関するデータを含むデータ記憶装置51を提供することによって達成することができる。このデータは、好ましくは、時間内の可動体WTの位置及び/又は加速度の変動に関する。データは、例えば、時間の経過に伴う可動体WTの所望の位置及び/又は加速度、時間の経過に伴う可動体WTの予想される位置及び/又は加速度、時間の経過に伴う可動体WTの計算された位置及び/又は加速度に関する。及び/又は可動体WTの測定された位置及び/又は加速度の経時的変化に関する。補償器制御信号は、少なくとも部分的に前記データに基づく。
【0075】
任意選択的に、代替として、又は追加として、フィードバックループが使用されてもよい。その場合、トルク補償器は、第1の方向のフレーム5の加速度を測定し、フレーム5の測定された加速度に基づいて加速度信号53を生成するように構成される加速度センサ52をさらに備える。任意選択的に、加速度センサ52は、支持位置20a、20bに、又はその近くに取り付けられる。次に、コントローラ50は、前記加速度信号53を受け取り、それを補償器制御信号を生成するための入力として使用するように構成される。フレームの残りの加速度を測定し、この加速度を補償するために追加の補償力を提供すると、補償の品質が向上し、フレーム5の安定性がさらに向上する。
【0076】
図2~9によるポジショナシステムの異なる実施形態の特徴は、互いに組み合わせることができる。例えば、データ記憶装置及び/又は加速度センサ52を備えたコントローラ50は、他のすべての実施形態と組み合わせて使用することができる。
【0077】
図2~9に示されるようなポジショナシステムは、例えば、ウェーハステージポジショナとして、リソグラフィ装置で使用することができる。あるいは、
図2~9に示されるポジショナシステムは、例えばレチクルステージ又はレチクルマスクユニット用のポジショナーとして、リソグラフィ装置の他の位置で使用することができる。あるいは、それらは、フレームの変形の正確な位置決め又は制限が望まれる、リソグラフィ装置以外の生産機械で使用することができる。
【0078】
図2~9のいずれかによるポジショナシステムがリソグラフィ装置で使用される場合、可動体は、例えば、基板サポートWT、レチクルマスクユニット又はレチクルステージである。
【0079】
図2~9のいずれかによるポジショナシステムが、真空チャンバ6を備えるリソグラフィ装置で使用され、トルク補償器が補償器アクチュエータ25を備える場合、任意選択的に可動体及びバランス・マス10が前記内部に配置され、補償器アクチュエータ25は、真空チャンバ6の外側に配置されている。
【0080】
本明細書では、ICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特定の言及がなされ得るが、本明細書に記載されるリソグラフィ装置は、集積光学システムの製造、磁区メモリ、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド用のガイダンス及び検出パターンなどの他の用途を有し得ることが理解されるべきである。当業者は、そのような代替用途の文脈において、本明細書における「ウエハ」又は「ダイ」という用語の使用はそれぞれ、より一般的な「基板」又は「ターゲット部分」という用語の同義語と見なすことができることを理解するであろう。本明細書で言及される基板は、露光の前又は後に、例えばトラック(通常、レジストの層を基板に塗布し、露光されたレジストを現像するツール)、メトトロジーツール及び/又は検査ツールで処理することができる。適用可能な場合、本明細書の開示は、そのような及び他の基板処理ツールに適用されてもよい。さらに、例えば、多層ICを作成するために、基板は2回以上処理されてもよいので、本明細書で使用される基板という用語は、既に複数の処理された層を含む基板を指すこともある。
【0081】
光学リソグラフィの文脈での本発明の実施形態の使用について具体的に言及してきたが、本発明は、例えばインプリントリソグラフィなどの他の用途で使用されてもよく、文脈が許せば、光学リソグラフィに限定されないことを理解すべきである。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイスのトポグラフィが、基板上に作成されるパターンを定義する。パターニングデバイスのトポグラフィは、基板に供給されたレジストの層に押し付けられ、その後、電磁放射、熱、圧力、又はそれらの組み合わせを加えることによってレジストが硬化される。レジストが硬化した後、パターニングデバイスがレジストから取り除かれて、そこにパターンが残る。
【0082】
本明細書で使用される「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外線(UV)放射(例えば、波長が約365、248、193、157又は126nm)及び極端紫外(EUV)放射(例えば、5~20nmの範囲の波長を持つ)、及びイオンビームや電子ビームなどの粒子ビームを含む様々な電磁ビームを指す。
【0083】
「レンズ」という用語は、文脈が許せば、屈折、反射、磁気、電磁気、及び静電光学コンポーネントを含む、さまざまなタイプの光学コンポーネントのいずれか、又はその組み合わせを指すことがある。
【0084】
以上、本発明の特定の実施形態について説明したが、本発明は、説明した以外の方法で実施できることを理解すべきである。例えば、本発明は、上記で開示された方法を説明する機械可読命令の1つ以上のシーケンスを含むコンピュータプログラム、又はデータ記憶媒体(例えば、このようなコンピュータプログラムが格納されている半導体メモリ、磁気又は光ディスク)の形態をとってもよい。
【0085】
上記の説明は、限定ではなく例示を意図したものである。したがって、以下に述べる特許請求の範囲から逸脱することなく、説明した本発明に変更を加えることができることが当業者には明らかであろう。