(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220104BHJP
B24B 37/30 20120101ALI20220104BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20220104BHJP
B23Q 15/16 20060101ALI20220104BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
H01L21/304 622R
B24B37/30 E
B24B49/10
B23Q15/16
H01L21/304 622K
H01L21/02 Z
(21)【出願番号】P 2017071573
(22)【出願日】2017-03-31
【審査請求日】2020-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】並木 計介
(72)【発明者】
【氏名】福島 誠
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-194509(JP,A)
【文献】特開2008-310404(JP,A)
【文献】特表2009-542449(JP,A)
【文献】特開2014-223684(JP,A)
【文献】国際公開第2000/045993(WO,A1)
【文献】特開2014-011432(JP,A)
【文献】特開2015-051501(JP,A)
【文献】特開2001-009712(JP,A)
【文献】特開2016-207862(JP,A)
【文献】特開2013-052483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/30
B24B 49/10
B23Q 15/16
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を研磨する研磨パッドと、前記基板を保持して前記研磨パッドに押しつけるための基板保持部と、制御装置とを備えた基板処理装置に用いられ、前記基板保持部に取り付けられて前記基板の研磨面とは反対側の面を保持する弾性膜であって、
前記弾性膜の物理量を計測するとともに、前記物理量を記憶する記憶部及び通信部を備える少なくとも1つのセンサを備えており、
前記記憶部には前記センサの識別情報が記憶されており、
前記基板処理装置の制御装置は、前記センサから読み出された前記識別情報に基づいて、前記弾性膜が取り付けられた前記基板処理装置の駆動の可否を決定するように構成されている、弾性膜。
【請求項2】
基板を研磨する研磨パッドと、前記基板を保持して前記研磨パッドに押しつけるための基板保持部と、制御装置とを備えた基板処理装置に用いられ、前記基板保持部に取り付けられて前記基板の外周を支持するリテーナリングであって、
前記リテーナリングの物理量を測定するとともに、前記物理量を記憶する記憶部及び通信部を備える複数のセンサを備えており、
前記記憶部には前記センサの識別情報が記憶されており、
前記基板処理装置の制御装置は、前記センサから読み出された前記識別情報に基づいて、前記リテーナリングが取り付けられた前記基板処理装置の駆動の可否を決定するように構成されている、リテーナリング。
【請求項3】
基板を研磨する研磨パッドと、前記基板を保持して前記研磨パッドに押しつけるための基板保持部とを備えた基板処理装置であって、
前記基板処理装置において使用され、前記基板保持部に取り付けられて前記基板の研磨面とは反対側の面を保持する
とともに、前記基板保持部との間に圧力室を形成する弾性膜と、
前記弾性膜に取り付けられ、前記弾性膜の歪み量を計測するとともに、前記歪み量を記憶する記憶部及び通信部を備える少なくとも1つの歪みセンサと、
前記弾性膜の近傍に設けられ、前記弾性膜に取り付けられた前記歪みセンサとの間で情報の読み書きを行う検出器と、
前記検出器と接続され、前記歪みセンサから読み出された前記弾性膜の歪み量に基づき、基板処理装置における処理条件を設定する制御装置と、
前記基板が保持された前記弾性膜の側壁に対して気体又は液体を噴射することで、研磨済みの前記基板を前記弾性膜から剥離させるための噴射部を備えており、
前記制御装置は、前記噴射部からの気体又は液体が、前記弾性膜と前記基板との境界に噴射されるように、前記弾性膜の歪み情報に基づき前記圧力室内の圧力を調整することを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
前記記憶部には前記歪みセンサの識別情報が記憶されており、前記制御装置は、前記歪みセンサから読み出された前記識別情報に基づいて、前記弾性膜が取り付けられた前記基板処理装置の駆動の可否を決定することを特徴とする、請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記基板処理装置に異常が発生したときに、前記基板の処理条件に関する情報を前記歪みセンサ内の記憶部に記録することを特徴とする、請求項3又は4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記弾性膜と前記基板保持部との間に少なくとも一つの圧力室が形成されており、
前記制御装置は、前記歪みセンサで計測された前記弾性膜の歪み情報に基づき、前記圧力室内の圧力を調整することを特徴とする、請求項3記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記噴射部は、前記気体又は液体の噴射角度が調整可能とされており、
前記弾性膜と前記基板との境界部分を撮像する撮像部と、
前記
撮像部で得られた画像より、前記境界部分の位置を検出する画像処理部と、
前記画像処理部で検出された前記境界部分の位置に基づき、前記噴射部による噴射角度を決定して、前記噴射角度を調節する噴射角度調節部とを備えたことを特徴とする、請求項3記載の基板処理装置。
【請求項8】
基板を研磨する研磨パッドと、前記基板を保持して前記研磨パッドに押しつけるための基板保持部とを備えた基板研磨装置であって、
前記基板の外周を支持するリテーナリングと、
前記リテーナリングに取り付けられ、前記リテーナリングの歪み量を測定するとともに、前記歪み量を記憶する記憶部及び通信部を備える複数の歪みセンサと、
前記リテーナリングの近傍に設けられ、前記リテーナリングに取り付けられた前記複数の歪みセンサとの間で情報の読み書きを行う検出器と、
前記検出器と接続され、前記複数の歪みセンサから読み出された前記リテーナリングの歪み量に基づき、基板処理装置における処理条件を設定する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記複数の歪みセンサで検出された歪み量のばらつきが所定値以内であるかを検出することを特徴とする、基板処理装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記複数の歪みセンサで検出された歪み量の分布に応じて、前記基板の処理条件を変更することを特徴とする、請求項8に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ等の基板の表面を処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ等の基板を研磨する基板研磨装置や、基板表面を洗浄する基板洗浄装置といった基板処理装置においては、研磨パッド等の消耗品が用いられている。これら消耗品の種類や特性に関する情報を記録したRFタグを、消耗品に取り付けておき、装置の使用時にこれら情報を読み取るようにした研磨装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2には、研磨パッド等の消耗品を装置から取り外すときにRFタグのメモリ情報を消去して情報の漏洩を防止するとともに、異常監視部により異常の発生が検出された場合には異常情報をRFタグに書き込むようにした研磨装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-219645号公報
【文献】特開2008-310404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体デバイスの高集積化・高密度化に伴い、回路の配線がますます微細化し、多層配線の層数も増加しており、製造工程における半導体デバイス表面の平坦化がますます重要になっている。基盤処理装置に用いられる消耗品は、基板処理を繰り返すことで摩耗や変形しやすく、それにより研磨圧力等の基板処理条件が変動してしまうと、研磨処理後の基板の膜厚に揺らぎが生じたり、場合によっては研磨不良等のトラブルが発生するおそれがある。よって、基板処理の条件を一定とするためには、基板処理に用いられる消耗品の状況をより正確に検出することが望ましい。
【0006】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、基板処理に用いられる消耗品の状況をより正確に検出することで、基板処理の条件を一定とすることが可能な基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、基板を処理する基板処理装置であって、前記基板処理装置において使用される消耗品と、前記消耗品に取り付けられ、前記消耗品の物理量を測定するとともに、前記物理量を記憶する記憶部及び通信部を備える少なくとも1つのセンサと、前記消耗品の近傍に設けられ、前記消耗品に取り付けられた前記センサとの間で情報の読み書きを行う検出器と、前記検出器と接続され、前記センサから読み出された前記消耗品の物理量に基づき、基板処理装置における処理条件を設定する制御装置とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる基板処理装置において、前記記憶部には前記センサの識別情報が記憶されており、前記制御装置は、前記センサから読み出された前記識別情報に基づいて、前記消耗品が取り付けられた前記基板処理装置の駆動の可否を決定する要にすることが好ましい。また、前記基板処理装置に異常が発生したときに、前記基板の処理条件に関する情報を前記センサ内の記憶部に記録するようにすることが好ましい。
【0009】
本発明の一実施形態に係る基板処理装置は、前記基板を研磨する研磨パッドと、前記基板を保持して前記研磨パッドに押しつけるための基板保持部とを備えた基板研磨装置であって、前記消耗品は、前記基板保持部に取り付けられて前記基板の研磨面とは反対側の面を保持する弾性膜であり、前記センサは前記弾性膜の歪みを計測する歪みセンサであり、前記制御装置は、前記歪みセンサで計測された前記弾性膜の歪み情報に基づき、基板処理装置における処理条件を設定することができる。
【0010】
上記の基板研磨装置において、前記弾性膜と前記基板保持部との間に少なくとも一つの圧力室が形成されており、前記制御装置は、前記歪みセンサで計測された前記弾性膜の歪み情報に基づき、前記圧力室内の圧力を調整することが好ましい。弾性膜の製造ばらつきや原料ロットの物性ばらつきにより、同じ内圧で加圧しても弾性膜が同じように膨らまず、基板に加わる圧力が弾性膜の個体によって変わってしまうことがあるところ、上記のように圧力を調整することで、このばらつきをキャンセルすることができる。
【0011】
上記の基板研磨装置において、前記基板が保持された前記弾性膜の側壁に対して気体又は液体を噴射することで、研磨済みの前記基板を前記弾性膜から剥離させるための噴射部を備えており、前記制御装置は、前記噴射部からの気体又は液体が、前記弾性膜と前記基板との境界に噴射されるように、前記弾性膜の歪み情報に基づき前記圧力室内の圧力を調整することが好ましい。これにより、気体又は液体を効果的に前記弾性膜と前記基板との境界に噴射することができる。
【0012】
また、前記噴射部は、前記気体又は液体の噴射角度が調整可能とされており、前記弾性膜と前記基板との境界部分を撮像する撮像部と、前記撮像手段で得られた画像より、前記境界部分の位置を検出する画像処理部と、前記画像処理部で検出された前記境界部分の位置に基づき、前記噴射部による噴射角度を決定して、前記噴射角度を調節する噴射角度調節部とを備えることが好ましい。
【0013】
本発明の一実施形態に係る基板処理装置は、前記基板を研磨する研磨パッドと、前記基板を保持して前記研磨パッドに押しつけるための基板保持部とを備えた基板研磨装置であって、前記消耗品は、前記基板の外周を支持するリテーナリングであり、前記センサは前記リテーナリングの歪みを計測する複数の歪みセンサであり、前記制御装置は、前記複数の歪みセンサで検出された歪み量のばらつきが所定値以内であるかを検出することが好ましい。
【0014】
基板研磨装置の使用初期、あるいはリテーナリングを交換した直後は、リテーナリングの接地面の形状が研磨パッドの研磨面に倣っておらず、リテーナリングの研磨面への当たり方にばらつきが生じ、リテーナリングの位置によってリテーナリングの垂直方向にかかる圧縮力にもばらつきが生じる。このため、リテーナリングに設けられた複数の歪みセンサで検出される歪み量にもばらつきが生じるが、リテーナリングのブレークインが完了すると、リテーナリング接地面の形状がパッドの研磨面に倣うことから、これら複数の歪みセンサで検出される歪み量のばらつきが小さくなる。これにより、リテーナリングのブレークインが完了したことを効果的に検出することができる。
【0015】
本発明の一実施形態に係る基板処理装置は、前記基板を研磨する研磨パッドと、前記基板を保持して前記研磨パッドに押しつけるための基板保持部とを備えた基板研磨装置であって、前記消耗品は、前記基板の外周を支持するリテーナリングであり、前記センサは前記リテーナリングの歪みを計測する複数の歪みセンサであり、前記制御装置は、前記複数の歪みセンサで検出された歪み量の分布に応じて、前記基板の処理条件を変更することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板処理装置において使用される消耗品の物理量を測定するセンサを当該消耗品に取り付けるとともに、当該センサから読み出された消耗品の物理量に基づき、基板処理装置における処理条件を設定するようにしたから、基板処理に用いられる消耗品の状況をより正確に検出でき、基板処理の条件を一定とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す平面図である。
【
図2】研磨ユニットの一実施形態を概略的に示す斜視図である。
【
図3】研磨ユニットの構成の概要を示す正面図である。
【
図6】消耗品の照合処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】基板研磨中のデータ書き込み処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】装置の異常発生時におけるデータ書き込み処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】研磨処理が終了したウェハに対してガスを噴射することでトップリングから離脱させる様子を示す説明図である。
【
図10】研磨処理が終了したウェハに対してガスを噴射することでトップリングから離脱させる様子の別の例を示す説明図である。
【
図12】センサの配置の別の一例を示す説明図である。
【
図13】センサの配置の別の一例を示す説明図である。
【
図14】リテーナリングにセンサを取り付けた実施形態を示す説明図である。
【
図15】
図14の例において、リテーナリングのブレークイン(慣らし運転)の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る基板処理装置について、図面を参照して説明する。なお、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0019】
図1は、基板処理装置の全体構成を示す平面図である。基板処理装置10は、ロード/アンロード部12、研磨部13と、洗浄部14とに区画されており、これらは矩形状のハウジング11の内部に設けられている。また、基板処理装置10は、基板搬送、研磨、洗浄等の処理の動作制御を行う制御装置15を有している。
【0020】
ロード/アンロード部12は、複数のフロントロード部20と、走行機構21と、2台の搬送ロボット22を備えている。フロントロード部20には、多数の基板(基板)をストックする基板カセットが載置される。搬送ロボット22は、上下に2つのハンドを備えており、走行機構21上を移動することで、フロントロード部20内の基板カセットから基板Wを取り出して研磨部13へ送るとともに、洗浄部14から送られる処理済みの基板を基板カセットに戻す動作を行う。
【0021】
研磨部13は、基板の研磨(平坦化処理)を行う領域であり、複数の研磨ユニット13A~13Dが設けられ、基板処理装置の長手方向に沿って配列されている。個々の研磨ユニットは、研磨テーブル上の基板Wを研磨パッドに押圧しながら研磨するためのトップリングと、研磨パッドに研磨液やドレッシング液を供給する研磨液供給ノズルと、研磨パッドの研磨面のドレッシングを行うドレッサと、液体と気体の混合流体または霧状の液体を研磨面に噴射して研磨面に残留する研磨屑や砥粒を洗い流すアトマイザを備えている。
【0022】
研磨部13と洗浄部14との間には、基板Wを搬送する搬送機構として、第1,第2リニアトランスポータ16,17が設けられている。第1リニアトランスポータ16は、ロード/アンロード部12から基板Wを受け取る第1位置、研磨ユニット13A,13Bとの間で基板Wの受け渡しを行う第2,第3位置、第2リニアトランスポータ17へ基板Wを受け渡すための第4位置との間で移動自在とされている。
【0023】
第2リニアトランスポータ17は、第1リニアトランスポータ16から基板Wを受け取るための第5位置、研磨ユニット13C,13Dとの間で基板Wの受け渡しを行う第6,第7位置との間で移動自在とされている。これらトランスポータ16,17の間には、基板Wを洗浄部14へ送るためのスイングトランスポータ23が備えられている。
【0024】
洗浄部14は、第1基板洗浄装置30、第2基板洗浄装置31、基板乾燥装置32と、これら装置間で基板の受け渡しを行うための搬送ロボット33,34を備えている。研磨ユニットで研磨処理が施された基板Wは、第1基板洗浄装置30で洗浄(一次洗浄)され、次いで第2基板洗浄装置31で更に洗浄(仕上げ洗浄)される。洗浄後の基板は、第2基板洗浄装置31から基板乾燥装置32に搬入されてスピン乾燥が施される。乾燥後の基板Wは、ロード/アンロード部12に戻される。
【0025】
図2は研磨ユニットの構成を概略的に示す斜視図であり、
図3は研磨ユニットの構成を概略的に示す側面図である。研磨ユニット40は、ウェハ(基板)Wを保持して回転させるトップリング(基板保持装置)41と、研磨パッド42を指示する研磨テーブル43と、研磨パッド42にスラリー(研磨液)を供給する研磨液供給ノズル45と、ウェハWの膜厚に応じて変化する信号を取得する膜厚センサ47とを備えている。
【0026】
トップリング41は、その下面に真空吸着によりウェハWを保持できるように構成されている。トップリング41と研磨テーブル43は、矢印で示す方向に回転し、この状態でトップリング41は、ウェハWを研磨パッド42の上側の研磨面42aに押しつける。研磨液供給ノズル45から研磨パッド42上に供給される研磨液の存在下で、ウェハWは研磨パッド42に摺接されて研磨される。
【0027】
膜厚センサ47は、例えば光学式センサや渦電流センサが用いられ、研磨テーブル43の内部に設置されている。ウェハWの研磨中、膜厚センサ47は研磨テーブル43とともに回転し、ウェハWの表面を横切る際に膜厚に応じた膜厚信号を取得する。膜厚センサ47からの膜厚信号は制御装置15に送信され、膜厚装置15は膜厚信号で示されるウェハWの膜厚が設定値に達したときに、ウェハWの研磨を終了する。
【0028】
図3において、トップリング41は、ウェハWを研磨面42aに対して押圧するヘッド本体48と、ウェハWの外周部を支持してウェハWがトップリング41から飛び出すのを防止するリテーナリング49とを備えている。トップリング41は、トップリングシャフト51に接続されており、トップリングシャフト51の上端には、ロータリージョイント55が取り付けられている。トップリングシャフト51は、上下動機構57によりヘッドアーム56に対して上下動するように構成されており、ヘッドアーム26に対してトップリング51の全体を昇降させ位置決めするようになっている。
【0029】
トップリングシャフト51およびトップリング41を上下動させる上下動機構67は、軸受66を介してトップリングシャフト51を回転可能に支持するブリッジ68と、ブリッジ68に取り付けられたボールねじ72と、支柱70により支持された支持台69と、支持台69上に設けられたサーボモータ78とを備えている。サーボモータ78を支持する支持台69は、支柱70を介してヘッドアーム56に固定されている。
【0030】
ボールねじ72は、サーボモータ78に連結されたねじ軸72aと、このねじ軸42aが螺合するナット72bとを備えている。トップリングシャフト51は、ブリッジ68と一体となって上下動するようになっている。したがって、サーボモータ78を駆動すると、ボールねじ78を介してブリッジ68が上下動し、これによりトップリングシャフト51およびトップリング41が上下動する。
【0031】
トップリングシャフト51はキー(図示せず)を介して回転筒52に連結されている。この回転筒52はその外周部にタイミングプーリ54を備えている。ヘッドアーム56にはヘッドモータ58が固定されており、上記タイミングプーリ54は、タイミングベルト59を介してヘッドモータ58に設けられたタイミングプーリ60に接続されている。ヘッドモータ58を回転駆動することによってタイミングプーリ60、タイミングベルト59、およびタイミングプーリ54を介して回転筒52およびトップリングシャフト51が一体に回転し、トップリング11が回転する。ヘッドアーム56は、フレーム(図示せず)に回転可能に支持されたアームシャフト61によって支持されている。研磨装置を構成するヘッドモータ58、サーボモータ78をはじめとする装置内の各部品は、制御装置15によってその動作が制御されている。
【0032】
ヘッドアーム56はアームシャフト61を中心として旋回可能に構成されており、下面にウェハWを保持したトップリング41は、ヘッドアーム56の旋回によりウェハWの受取位置から研磨テーブル52の上方の研磨位置に移動される。トップリング41および研磨テーブル42をそれぞれ回転させ、研磨液供給ノズル45から研磨パッド42上に研磨液を供給する。この状態で、トップリング41を所定の位置(高さ)まで下降させ、この所定の位置でウェハWを研磨パッド42の研磨面42aに押圧することで、ウェハWは研磨面42aに摺接されてその表面が研磨される。
【0033】
図4において、トップリング41を構成するトップリング本体48およびリテーナリング49は、トップリングシャフト51の回転により一体に回転するように構成されている。トップリングの下側には、ウェハWの裏面に当接する弾性膜(メンブレン)80が取り付けられており、弾性膜80の下面が基板保持面を構成する。弾性膜80は、鉛直方向に延びる環状の隔壁80aを有しており、これにより弾性膜80とトップリング本体48との間に圧力室81が形成される。
【0034】
この圧力室81には、バルブ82を介して流体供給源83に接続されており、この流体供給源83から加圧流体(ガス)が供給されるようになっている。また、バルブ82には、制御装置15が接続されており、これにより圧力室81内の圧力を調整することができ、圧力室82内に負圧を形成することも可能となっている。また、圧力室81は大気開放機構(図示せず)に接続されており、圧力室81を大気開放することも可能である。
【0035】
弾性膜80は、内側の圧力室81に対応する位置に通孔(図示せず)を有しており、この通孔に負圧を形成することにより、弾性膜80の基板保持面上でウェハWを保持できるようになっている。弾性膜80は、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコーンゴムといった、強度および耐久性に優れたゴム材によって形成されている。
【0036】
リテーナリング49は、トップリング本体48及び弾性膜55を囲むように配置されている。このリテーナリング49は、研磨パッド42の研磨面42aに接触するリング状の部材であり、トップリング本体48に保持されるウェハWの外周縁を囲むように配置されており、研磨中のウェハWがトップリング41から飛び出さないようにウェハWの外周縁を支持している。
【0037】
リテーナリング49の上面には、図示しない環状のリテーナリング押圧機構に連結されており、リテーナリング49の上面の全体に均一な下向きの荷重を与える。これによりリテーナリング49の下面を研磨パッド42の研磨面42aに対して押圧する。
【0038】
弾性膜80には、通信機能を備えたセンサ85及び86が設けられている。一方のセンサ85は、ウェハWと接する部分の近傍に設けられており、他方のセンサ86は弾性膜80の側壁80aに取り付けられている。本実施形態において、センサ85は弾性膜80の内部に埋め込まれるようにして設けられているが、ウェハWに接触しない限り、配置する位置に特段の限定はなく、例えば、弾性膜80のウェハWと接触する側の反対面(
図4の上方の面)に配置しても良い。
【0039】
図5に示すように、センサ85,86は、検出部87、メモリ88と通信部89とを備える。検出部87は、例えば歪みセンサであり、センサにかかる歪み量を検出して、歪み情報として出力する。なお、本発明において、センサは歪みセンサに限られることはなく、例えば温度センサ、加速度センサ、傾斜センサを用いることができる。
【0040】
メモリ88には、所定のデータが予め記憶された読出し専用領域88aと、読み出し/書き込み可能な書込み可能領域88bとが設けられており、読出し専用領域88aには、消耗品である弾性膜80のパーツナンバー(部品ID)、シリアルナンバー、使用期限、出荷検査データ、製造データといった情報が保存されている。ここで、出荷検査データには、弾性膜のゴム物性検査データ、外形寸法データ、膨らみ測定データが含まれており、製造データには、プレス圧力、プレス温度、プレス時間、二次加硫温度、二次加硫時間といった加工条件のデータが含まれる。
【0041】
また、書込み可能領域88bには、検出部87で検出された歪み情報のデータ、及びウェハ処理データが記録される。ここで、ウェハ処理データには、消耗品である弾性膜80が交換された後の基板処理装置の使用開始日、最終使用日、積算ウェハ処理枚数、積算処理時間の情報が含まれる。
【0042】
通信部89は、例えば無線通信モジュールであり、基板処理装置10に設けられた検出器90,91(
図4参照)との間で、読出し専用領域88a及び書込み可能領域88bに記憶されたデータの読出し処理を行う。検出器90,91は、通信部89との間で無線通信が可能な通信モジュールであり、対応するセンサ85,86の近傍に位置する読取位置と、トップリング41の移動領域から退避する待機位置との間で移動可能とされており、基板処理装置10による基板処理が行われていないタイミングで読取位置に移動して、センサ85,86との間でデータの送受信を行う。
【0043】
制御装置15は、検出器90、91と有線または無線により直接に接続されており、センサ85、86から読み出された各種データを記憶するメモリ93と、センサ85、86から読み出された出荷検査データ、製造データに基づき、基板処理の条件(レシピやマシン定数)を設定する条件設定部94が設けられている。また、制御装置15のメモリ93には、検出器90,91、条件設定部94を含む、基板処理装置10の各構成要素の動作を制御するためのプログラムが記憶されており、基板処理装置10の動作時に読み出されることで、基板処理装置10の動作を制御する。なお、制御装置15と検出器90,91とを、インターネットや他の通信装置を介して接続するようにしても良い。
【0044】
また、センサ85,86が取り付けられた弾性膜80を基板処理装置10に取り付けたとき、あるいは、基板研磨処理が行われていない所定のタイミングで、当該センサ85,86のゼロ点調整が行われる。制御装置15は、例えば、弾性膜80に負荷(圧力)をかけていない状態、あるいは所定の圧力をかけた状態でのセンサ85,86からの出力を検出し、そのときのセンサ出力をゼロ点として設定することができる。
【0045】
図6は、センサ85,86が取り付けられた弾性膜80を、基板処理装置10に取り付けたときの照合処理の手順を示すフローチャートである。基板処理装置10の制御装置15では、装置本体に消耗品である弾性膜80が修理・交換等により取り付けられたことを検出すると(ステップS10)、検出器90,91の双方またはいずれかを駆動して、対応するセンサ85,86に記憶された部品ID(パーツナンバー)を読み出す(ステップS11)。
【0046】
制御装置15では、読み出された部品IDが、予め基板処理装置10内のメモリ93に記憶されている部品IDと一致しているかどうかを判定する(ステップS12)。そして、読み出された部品IDが、メモリ93に記憶されている部品IDのいずれにも一致しない場合(例えば、基板処理装置10に適合しない弾性膜が誤ってセットされた場合、非正規品がセットされた場合)には、制御装置15は、基板処理装置10にインターロックをかけ、当該弾性膜を用いた研磨ユニット40にて基板研磨処理を行うことができないようにする(ステップS13)。
【0047】
一方、読み出された部品IDが、メモリ93に記憶されている部品IDのいずれかと一致する場合には、制御装置15は、メモリ88に記憶されている弾性膜80の出荷検査データや製造データを読み出して、制御装置15内のメモリ93に保存する(ステップS14)。そして、制御装置15は、メモリ88から読み出された各種データに基づき、基板研磨のレシピや装置のマシン定数を設定する(ステップS15)。その後、制御装置15は、研磨ユニットを駆動してウェハWに対する研磨処理を開始する(ステップS16)。
【0048】
図7は、基板研磨処理の動作を示すフローチャートである。基板研磨処理が開始されると(ステップS20)、センサ85,86は、研磨中の所定時間毎に、弾性膜80に生じている歪み量を検出し(ステップS21)、歪み量データとしてメモリ88の書込み領域88bに記録する(ステップS22)。そして、制御装置15は、基板の研磨処理が終了したかどうかを判定し(ステップS23)、研磨処理が終了した場合には、検出器90,91を駆動して、弾性膜80のメモリ88に記憶された歪み量データを読み出し、制御装置15内のメモリ93に保存する(ステップS24)。
【0049】
制御装置15は、読み出された歪み量データに基づき、次のウェハWを研磨処理する際に適用される研磨レシピを設定する(ステップS25)。例えば、読み出された歪み量データから、弾性膜80の伸び量を算出し、弾性膜80のセット時に読み出されていたゴム物性検査データ、外形寸法データ、膨らみ測定データを用いて補正することで、研磨レシピの設定を行うことができる。その後、制御装置15は、研磨ユニットを駆動してウェハWに対する研磨処理を開始する(ステップS26)。
【0050】
図7のフローチャートでは、歪み量データから次のウェハWの研磨時に用いられる研磨レシピの設定を行うようにしているが、本発明はこれに限られることはなく、例えば、歪み量が設定値から変動した場合に、歪み量を当該設定値に近づけるようにバルブ82の開き量を調整して、圧力室81内の圧力を調整するようにしても良い。また、センサ85,86のメモリ88内に記録された歪み量データは、制御装置15に読み出される際に消去しても良く、これによりメモリ88内のデータ容量を抑えることができる。
【0051】
図8は、基板処理装置10に、研磨性能不良(例えば、研磨レート異常、研磨プロファイル異常、ウェハ上のパターンの段差性能異常)、ウェハのスリップアウト、ウェハ割れといったトラブルが発生した場合の処理手順を示すフローチャートである。
【0052】
制御装置15は、研磨ユニットに何らかのトラブルが発生したことを検出すると(ステップS30)、現在実行中の研磨処理を直ちに終了して、基板処理装置の動作を停止する(ステップS31)。次に、制御装置15は、検出器90,91を駆動して、制御装置15内のメモリから、各種情報(例えば、装置本体でカウントしたウェハ処理枚数、処理時間、使用開始/終了日、マシン定数やレシピの情報)を、装置内のメモリ93から読み出して(ステップS32)、これを弾性膜80に取り付けられたセンサ85,86内のメモリ88に書き込む(ステップS33)。
【0053】
その後、トップリング41のロックが解除されて、弾性膜80をトップリング41から取り外される。取り外された弾性膜80は、図示しないオフラインリーダーにセットされて、弾性膜80に取り付けられたセンサ85,86内のメモリ88より、ステップS33で書き込まれた各種情報及びメモリ88内に記録されていた、基板研磨処理中の歪み量データが読み出される(ステップS34)。これにより、読み出された各種情報及び歪み量データを解析することで、故障原因の診断を行うことができる(ステップS35)。なお、故障原因の診断の際に、取り出された弾性膜80のゴム物性、外形寸法、膨らみの検査を行うようにしても良い。
【0054】
上記実施形態では、消耗品である弾性膜の取り付け時、基板研磨時及びトラブル発生時におけるセンサ85,86の動作について説明したが、本発明はこれに限られることはなく、例えば
図9に示すように、研磨処理後のウェハWを弾性膜から離脱する際にも適用することができる。
【0055】
図9において、トップリング41の近傍には、制御装置15に接続されるガス噴射部100が配置されている。研磨処理直後のウェハWは弾性膜80に吸着されているため、そのままではウェハWを弾性膜80から離脱させることができない。そこで、ガス噴射部100は、研磨処理が終了した後の所定タイミングで、ウェハWと弾性膜80との接合部の近傍(弾性膜の側壁部分近傍の膨らんだ部分)に向けて、例えば不揮発性ガスを噴射する。これにより、研磨処理が終了したウェハWを弾性膜80から離脱させることができる。なお、ガスに代えて、液体(純水)を噴射するようにしても良い。
【0056】
ここで、弾性膜80の膨らみ部分の位置(図中上下方向の位置)は、常に一定ではなく、弾性膜の製造条件、ゴム物性検査データ、外見寸法データ、基板処理枚数や処理時間、圧力室81の圧力等に応じて変動する。そして、ガス噴射部100からのガスが、弾性膜80と基板との境界からずれた位置に噴射されてしまう場合、研磨処理が終了したウェハWを弾性膜80から容易に離脱させることができなくなる。
【0057】
そこで、研磨処理終了後、ウェハWを弾性膜から離脱する際に、センサ85,86にて歪み量を検出するとともに制御装置15においてこれらセンサで検出された歪み量が設定値に達したときに、バルブ82を駆動して流体供給源83からの流体供給をストップする。これにより、研磨処理終了後、ウェハWを弾性膜から離脱する際に、圧力室81の圧力が一定となり、弾性膜80の膨らみ部分の位置が一定となるため、ガス噴射部100からのガスを弾性膜80とウェハWとの境界に確実に当てることができる。
【0058】
図10は、研磨処理後のウェハWを弾性膜から離脱させる構成の別の例を示したものである。
図10において、トップリング41の近傍には、制御装置15に接続されるガス噴射部140と撮像部141が配置されている。ガス噴射部140は、その噴射角度が調整可能とされており、撮像部141は、ウェハWと弾性膜との境界部分を撮像する。撮像で得られた画像は、制御装置15内の画像処理部142に送られる。画像処理部142では、撮像部141で撮像された画像に基づき、ウェハWと弾性膜との境界部分の位置(図中、ウェハWが弾性膜から離脱する方向の位置)を検出する。噴射角度調整部143は、画像処理部142において得られたウェハWと弾性膜との境界部分の位置の情報と、ガス噴射部140の設置位置情報に基づき、ガス噴射部140によるガスの噴射角度を決定し、ガス噴射部140の噴射角度を調整する。これにより、ガス噴射部140からのガスを弾性膜80とウェハWとの境界に確実に当てることができる。
【0059】
上記実施形態では、弾性膜80のウェハWと平行な面内に1つのセンサ85を配置した例について説明したが、本発明はこれに限られることはなく、複数のセンサを配置して、弾性膜の複数箇所における歪み量を検出するようにしても良い。これにより、研磨処理終了後、ウェハWを弾性膜から離脱する際に、ウェハに実際にかかっている圧力をより正確に測定することができる。
【0060】
さらに、
図11に示すように、トップリング41との間に複数の圧力室101a~101dを形成する弾性膜102を設け、複数のセンサ103a~103dを、各圧力室に対応する位置に設けるようにしてもよい。これにより、各センサ103a~103dにおいて検出される歪み量が一定になるように、流体供給源83に接続されたバルブ104a~104dを制御することで、各圧力室101a~101dの内圧が均一になるように調整することができる。
【0061】
本発明に適用される弾性膜の形状には特段の限定はなく、例えば、
図12に示すような、上下方向に2段の圧力室111,112を備えた弾性膜110に対応して、複数のセンサ113~117を配置するようにしても良い。また、
図13に示すように、弾性膜120の周方向に沿って、複数のセンサ121~124を配置しても良い。これにより、弾性膜の伸びの分布を正確に検出することができる。
【0062】
上記実施形態では、弾性膜にセンサを設ける例について説明したが、本発明はこれに限られることはなく、
図14に示すように、例えばリテーナリングにセンサを配置するようにしても良い。
図14において、リテーナリング130には、3つのセンサ131~133が埋め込まれており、これらセンサ131~133は前述した実施例で用いられたものと同様に、研磨処理中に受ける歪み量を検出するとともに、検出器91を介して、制御装置15との間で各種情報を送受信する。
【0063】
ここで、リテーナリング130を交換した直後に研磨処理を行おうとすると、
図15(a)に示すように、リテーナリング130の内側の端部のみが研磨パッド42に過度に押しつけられてしまい、リテーナリング130が受ける圧縮力に分布が生じてしまうため、ウェハWの側面を適切に支持することができない。このため、従来では、所定枚数(例えば25枚~30枚)のダミーウェハを用いてテスト研磨を行った後に、正式なウェハWを用いた研磨処理を行うようにしていた(ブレークイン処理)。
【0064】
これに対し、本実施形態に係るリテーナリング130には複数のセンサ131~133が埋め込まれているため、ダミーウェハを用いた研磨処理を行う際に、これら複数のセンサ131~133で検出される歪み量をモニターすることができる。そして、
図15(b)で示すように、これらセンサ131~133からの歪み量(図中の矢印)のずれが所定値以内になったときに、ダミーウェハによるテスト研磨を終了することで、リテーナリングの材質や研磨条件の違いにかかわらず、ブレークイン処理を確実に行うことができる。
【0065】
上記の実施形態では、リテーナリング130に設けられた複数の歪みセンサを用いてブレークイン処理を制御するようにしているが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、複数の歪みセンサの歪み情報のばらつきに応じて、弾性膜内の圧力等の基板処理条件を適宜変更するようにしても良い。
【0066】
また、制御装置において、弾性膜ないしリテーナリング等の消耗品の種類、交換時期及び歪み測定回数の情報を取得しておき、これら情報に基づいて、基板処理装置のメンテナンスの日時(あるいはメンテナンスまでの時間)を算出し、表示出力するようにしても良い。これにより、オペレータにおいて、装置のメンテナンスのタイミングを適切に把握することができる。
【0067】
さらに、制御装置において、上記算出されたメンテナンスの日時に近づいたとき(例えば数日前)に、弾性膜やリテーナリング等の消耗品を自動で発注するように構成しても良く、これにより、メンテナンス時に消耗品を確実に準備することができる。なお、制御装置に対して、メンテナンスの日時の算出ないし消耗品の発注を行わせるプログラムは、予め制御装置のメモリに記憶しておいても良いし、インターネット等を介して後からインストール可能としても良い。
【0068】
また、制御装置に通信機能を設け、ネットワークを介して外部のサーバと接続可能に構成し、装置の稼働状況、歪みデータ、研磨環境情報といった各種情報を当該外部サーバに送信するようにしても良い。さらに、当該外部サーバにおいて、基板処理装置の制御パターンを規格化しておき、制御装置から受信する各種データに基づき、研磨圧力等の研磨条件を調整しつつ自動運転するように構成しても良い。さらに、ネットワークを介して他の基板処理と接続可能に構成し、装置の稼働状況、歪みデータ、研磨環境情報といった各種情報を共有するようにしても良い。
【0069】
また、制御装置とネットワーク接続された外部サーバにおいて、基板処理装置から送られてくる各種情報、他の基板処理装置からの各種情報に基づいて、基板処理装置やこれに用いられる消耗品の異常検知、寿命の予測及び判断を行うようにしてもよく、またこれら異常検知や寿命についての表示を行うようにしても良い。さらに、外部サーバにおいて、基板処理装置の性能安定化のための制御を行うことも可能である。
【0070】
また、制御装置ないし外部サーバにおいて、センサから送られてくる歪データその他の出力データについて、特徴量抽出による自動学習と制御パターンの自動規格化を行い、異常、寿命の予測、判断、及び表示を行うようにしても良い。さらに、通信、機器インターフェース等において例えばフォーマット等の規格化を行い、装置・機器相互の情報通信に用いて装置・機器の管理を行うようにしても良い。
【0071】
上記実施形態では、いずれも、歪みセンサを用いて消耗品の伸び分布を測定しているが、センサの種類に限定はなく、例えば温度センサを用いて温度分布を測定してもよく、あるいは感圧センサを用いて圧力分布を測定してもよい。さらに、複数種類のセンサを組み合わせて使用しても良い。
【0072】
上記実施形態では、ウェハWの研磨を行う基板研磨装置を例にして説明したが、本発明はこれに限られることはなく、例えば、研磨処理後の基板を洗浄する基板洗浄装置で消耗品として用いられるスポンジ(洗浄部材)にも、等しく適用することができる。
【0073】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0074】
10 基板処理装置
15 制御装置
40 研磨ユニット
41 トップリング
48 ヘッド本体
49,130 リテーナリング
80、102,110,120 弾性膜
85,86,103a~103d、113~117,121~124,131~133 センサ
90,91 検出器
W ウェハ