IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

特許6991004システム、給水装置の管理方法、および、管理装置
<>
  • 特許-システム、給水装置の管理方法、および、管理装置 図1
  • 特許-システム、給水装置の管理方法、および、管理装置 図2
  • 特許-システム、給水装置の管理方法、および、管理装置 図3
  • 特許-システム、給水装置の管理方法、および、管理装置 図4
  • 特許-システム、給水装置の管理方法、および、管理装置 図4A
  • 特許-システム、給水装置の管理方法、および、管理装置 図5
  • 特許-システム、給水装置の管理方法、および、管理装置 図6
  • 特許-システム、給水装置の管理方法、および、管理装置 図7
  • 特許-システム、給水装置の管理方法、および、管理装置 図8
  • 特許-システム、給水装置の管理方法、および、管理装置 図9
  • 特許-システム、給水装置の管理方法、および、管理装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】システム、給水装置の管理方法、および、管理装置
(51)【国際特許分類】
   E03B 5/00 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
E03B5/00 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2017128861
(22)【出願日】2017-06-30
(65)【公開番号】P2019011609
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2020-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】原田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】金田 一宏
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-052532(JP,A)
【文献】特開2011-017348(JP,A)
【文献】特開2006-219988(JP,A)
【文献】特開2007-192056(JP,A)
【文献】特開2016-217073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に給水するための給水装置と、前記給水装置の各種情報を管理するための管理装置と、を備えるシステムであって、
前記給水装置は、当該給水装置に関する運転関連情報を記憶する記憶部を有するとともに、外部端末に対して前記運転関連情報を送信可能に構成されており、
前記管理装置は、ユーザー前記給水装置に関する問い合わせをしたことに起因して、前記問い合わせを特定するための特定情報を作成して外部出力し前記外部出力を通じて前記外部端末または前記ユーザーへ前記特定情報が通知され、前記管理装置は、前記外部端末から前記特定情報と前記運転関連情報とを受信したときに、前記給水装置の情報を管理するための管理用メモリに前記運転関連情報を記憶する、
システム。
【請求項2】
前記管理装置は、問い合わせをした前記ユーザーに関する情報と、問い合わせの対象である前記給水装置に関する情報との少なくとも一方を、前記特定情報に関連付けて前記管理用メモリに記憶する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記給水装置は、前記運転関連情報の少なくとも一部を表示できるように構成されている表示部を備えており、
前記表示部は、
通常の表示モードである第1表示モードと、
前記第1表示モードから切り替えられる第2表示モードと、
を有し、
前記給水装置は、前記外部端末に対して送信する前記運転関連情報に、前記第2表示モードで表示する第2情報の一部を含める、
請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記管理装置は、前記特定情報を作成してから所定時間が経過すると当該特定情報を無効とする、
請求項1から3の何れか1つに記載のシステム。
【請求項5】
前記特定情報は、3桁から8桁の識別記号からなる、
請求項1から4の何れか1つに記載のシステム。
【請求項6】
前記管理装置は、前記管理用メモリに記憶された前記運転関連情報に基づいて前記給水装置をメンテナンスするためのメンテナンス情報を作成する、
請求項1から5の何れか1つに記載のシステム。
【請求項7】
前記給水装置は、前記給水装置と前記管理装置との少なくとも一方と通信するために前記外部端末が利用可能な通信用プログラムに関する情報を記録した情報記録部材を備えている、
請求項1から6の何れか1つに記載のシステム。
【請求項8】
前記給水装置は、前記給水装置における各種設定情報を変更可能な設定部を更に備え、
前記各種設定情報には、前記外部端末との通信を制限するための通信制限情報が含まれており、
前記給水装置は、前記管理装置へ送信するために前記運転関連情報の送信を前記外部端末から要請されたときには、前記通信制限情報による前記外部端末との通信の制限にかかわらず前記外部端末へ前記運転関連情報を送信する、
請求項1から7の何れか1つに記載のシステム。
【請求項9】
前記給水装置は、前記給水装置における各種設定情報を変更可能な設定部を更に備え、
前記各種設定情報には、前記外部端末との通信を制限するための通信制限情報が含まれており、
前記給水装置は、前記管理装置へ送信するために前記運転関連情報の送信を前記外部端末から要請されたときに、前記通信制限情報により前記外部端末との通信が制限されているときには、前記通信制限情報により通信が制限されていることを含む情報を前記外部端末へ送信する、
請求項1から7の何れか1つに記載のシステム。
【請求項10】
前記給水装置は、上流側に受水槽が接続された受水槽方式で使用されており、
前記運転関連情報には、前記受水槽の水位が所定の渇水状態であることを示す情報が含まれる、
請求項1から9の何れか1つに記載のシステム。
【請求項11】
前記給水装置は、上流側に水道本管が接続された直結給水方式で使用されており、
前記運転関連情報には、前記水道本管からの流入圧力が所定の低圧状態であることを示す情報が含まれる、
請求項1から9の何れか1つに記載のシステム。
【請求項12】
前記給水装置は、近距離無線通信によって前記運転関連情報を前記外部端末に送信する、
請求項1から11の何れか1つに記載のシステム。
【請求項13】
建物に給水するための給水装置と、前記給水装置の各種情報を管理するための管理装置と、を備えるシステムにおける給水装置の管理方法であって、
前記給水装置に関する運転関連情報を前記給水装置が外部端末に対して送信するステッ
プと、
ユーザー前記給水装置に関する問い合わせをしたことに起因して、前記問い合わせを特定するための特定情報を前記管理装置が作成して外部出力するステップであって、前記外部出力を通じて前記外部端末または前記ユーザーへ前記特定情報が通知される、ステップと、
前記管理装置が、前記外部端末から前記特定情報と前記運転関連情報とを受信したときに、前記給水装置の情報を管理するための管理用メモリに前記運転関連情報を記憶するステップと、
を含む給水装置の管理方法。
【請求項14】
給水装置を管理するための管理装置であって、
ユーザー前記給水装置に関する問い合わせをしたことに起因して、前記問い合わせを特定するための特定情報を作成して外部出力し前記外部出力を通じて外部端末または前記ユーザーへ前記特定情報が通知され、
前記外部端末から前記特定情報と前記給水装置に関する運転関連情報とを受信したときに、前記給水装置の情報を管理するための管理用メモリに前記運転関連情報を記憶する、
管理装置。
【請求項15】
管理装置において給水装置を管理するための管理方法であって、
ユーザー前記給水装置に関する問い合わせをしたことに起因して、前記問い合わせを特定するための特定情報を作成して外部出力するステップであって、前記外部出力を通じて外部端末または前記ユーザーへ前記特定情報が通知される、ステップと、
前記外部端末から前記特定情報と前記給水装置に関する運転関連情報とを受信したときに、前記給水装置の情報を管理するための管理用メモリに前記運転関連情報を記憶するステップと、
を含む給水装置の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム、給水装置の管理方法、および、管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給水装置は、一般に建物等の屋内または建物のすぐ傍に設置され、建物等の給水対象に水道水を供給するために広く使用されている。給水装置としては、近年、携帯機器などの外部端末にて操作することができるものが提案されている。携帯端末にて給水装置を操作することにより、給水装置の運転パネルを簡略化することができるとともに、携帯端末の操作部を利用して給水装置に不慣れなユーザーでも容易に給水装置を操作することができる。
【0003】
こうした給水装置のメンテナンスにおいて、従来、作業者は紙媒体の作業指示書または報告書を使用していた。しかしながら、紙媒体は、ポンプのメンテナンス作業時に濡れてしまい、紙面がにじんだり紙が破損したりして取り扱いにくいという問題があった。
【0004】
こうした実情に対して、装置に関わる情報を記憶するためのメモリ、および、このメモリと外部機器との間の情報入出力用の入出力インタフェースからなるICタグを備えた給水装置が提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1では、こうした構成により、装置から外部機器に装置に関わる情報を送信することができ、故障および修理に際して間違いのない適切な対応が可能となり信頼性の向上が図れる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-192056
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
携帯機器などの外部端末を用いて給水装置のICタグから装置に関する情報を入手する場合、外部端末の操作者がメンテナンス作業者に限らず建物等の管理人であったり住居人であったりする場合が考えられる。こうした管理人または住居人は、給水装置の運転に関する情報を見ても故障部位またはメンテナンス部位を判断できない場合があり、装置の設計寿命に対する影響等がない場合であっても過敏に反応してしまう場合がある。こうした場合には、製造会社または管理拠点などへの問い合わせが多くなったり、給水装置のメンテナンスが過多となって、給水装置のランニングコストの増加を招いてしまう。
【0007】
このため、給水装置の運転に関する情報は、管理拠点等の管理装置に送信されて管理され、管理拠点において修理またはメンテナンスする部位が判断されることが好ましい。しかし、給水装置は機械室またはポンプ室などの電気的なノイズが多い環境に設置されることがあり、給水装置から管理装置へ直接に遠距離通信を行うことが難しい場合もある。これに対して、給水装置から外部端末へ一旦情報を送信し、外部端末から管理装置へと情報を送信することが考えられる。しかし、こうした場合にも、管理装置に過度に頻繁にデータが送信されてしまうと、管理装置での負担が大きくなってしまう。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、適切なメンテナンスを容易に行うことができるとともに、ユーザーおよび管理拠点における負担を小さくすることができるシステム、給水装置の管理方法、および、管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(形態1)形態1によれば、建物に給水するための給水装置と、給水装置の各種情報を管理するための管理装置と、を備えるシステムが提案される。かかるシステムの給水装置は、給水装置に関する運転関連情報を記憶する記憶部を有するとともに、外部端末に対して運転関連情報を送信可能に構成されている。また、システムの管理装置は、ユーザーからの給水装置に関する問い合わせを特定するための特定情報を作成し、外部端末から特定情報と運転関連情報とを受信したときに、給水装置の情報を管理するための管理用メモリに運転関連情報を記憶する。形態1によれば、給水装置から外部端末に対して運転関連情報が送信され、外部端末から特定情報と運転関連情報とが管理装置に送信されることにより、運転管理情報が管理用メモリに記憶される。つまり、管理装置は外部装置から特定情報が受信されないときには運転管理情報を管理用メモリに記憶しないので、管理装置に過度にデータが記憶されることを防止でき、管理装置の負担を小さくすることができる。そして、管理装置は、記憶したデータに基づいて給水装置のメンテナンス情報を作成するなど、給水装置を管理することができるので、給水装置の適切なメンテナンスを容易に行うことができる。
【0010】
(形態2)形態2によれば、形態1のシステムにおいて、管理装置は、問い合わせをしたユーザーに関する情報と、問い合わせの対象である給水装置に関する情報との少なくとも一方を、特定情報に関連付けて管理用メモリに記憶する。
【0011】
(形態3)形態3によれば、形態1または2のシステムにおいて、給水装置は、運転関連情報の少なくとも一部を表示できるように構成されている表示部を更に備えている。そして、表示部は、通常の表示モードである第1表示モードと、第1表示モードから切り替えられる第2表示モードと、を有する。そして、給水装置が外部端末に対して送信する運転関連情報に、第2表示モードで表示する第2情報の一部を含める。これにより、ユーザーによる運転パネルの操作が困難でも、運転関連情報に第2情報を含めることで、管理装置は第2情報に含まれる情報を取得することができる。
【0012】
(形態4)形態4によれば、形態1から3の何れか1つのシステムにおいて、管理装置は、特定情報を作成してから所定時間が経過すると当該特定情報を無効とする。形態3によれば、特定情報の信頼性を向上できるとともに、特定情報を簡易な情報とすることができる。
【0013】
(形態5)形態5によれば、形態1から4の何れか1つのシステムにおいて、特定情報は、3桁から8桁の識別記号からなる。ここで、識別記号は、数字、文字、記号の少なくとも1つを含む。形態5によれば、特定情報が簡易なため、特定情報の伝達、および、外部端末を操作するユーザーの便利性が向上する。
【0014】
(形態6)形態6によれば、形態1から5の何れか1つのシステムにおいて、管理装置は、管理用メモリに記憶された運転関連情報に基づいて給水装置をメンテナンスするためのメンテナンス情報を作成する。形態5によれば、管理装置が作成したメンテナンス情報に基づいて、給水装置をメンテナンスすることができる。
【0015】
(形態7)形態7によれば、形態1から6の何れか1つのシステムにおいて、給水装置は、給水装置と管理装置との少なくとも一方と通信するために外部端末が利用可能な通信用プログラムに関する情報を記録した情報記録部材を備えている。これにより、ユーザーは外部端末が利用可能な通信用プログラムを簡単に入手することができる。
【0016】
(形態8)形態8によれば、形態1から7の何れか1つのシステムにおいて、給水装置は、給水装置における各種設定情報を変更可能な設定部を更に備え、各種設定情報には、外
部端末との通信を制限するための通信制限情報が含まれている。そして、給水装置は、管理装置へ送信するために運転関連情報の送信を外部端末から要請されたときには、通信制限情報による外部端末との通信の制限にかかわらず外部端末へ運転関連情報を送信する。
【0017】
(形態9)形態9によれば、形態1から7の何れか1つのシステムにおいて、給水装置は、給水装置における各種設定情報を変更可能な設定部を更に備え、各種設定情報には、外部端末との通信を制限するための通信制限情報が含まれている。そして、給水装置は、管理装置へ送信するために運転関連情報の送信を外部端末から要請されたときに、通信制限情報により外部端末との通信が制限されているときには、通信制限情報により通信が制限されていることを含む情報を外部端末へ送信する。
【0018】
(形態10)形態10によれば、形態1から9の何れか1つのシステムにおいて、給水装置は、上流側に受水槽が接続された受水槽式で使用されており、運転関連情報には、受水槽の水位が所定の渇水状態であることを示す情報が含まれる。
【0019】
(形態11)形態11によれば、形態1から9の何れか1つのシステムにおいて、給水装置は、上流側に水道本管が接続された直結給水方式で使用されており、運転関連情報には、水道本管からの流入圧力が所定の低圧状態であることを示す情報が含まれる。
【0020】
(形態12)形態12によれば、形態1から11の何れか1つのシステムにおいて、給水装置は、近距離無線通信によって運転関連情報を外部端末に送信する。形態12によれば、給水装置から外部端末への運転関連情報の送信を容易に行うことができる。
【0021】
(形態13)形態13によれば、建物に給水するための給水装置と、給水装置の各種情報を管理するための管理装置と、を備えるシステムにおける給水装置の管理方法が提案される。かかる管理方法は、給水装置に関する運転関連情報を前記給水装置が外部端末に対して送信するステップと、ユーザーからの給水装置に関する問い合わせを特定するための特定情報を前記管理装置が作成するステップと、管理装置が、外部端末から前記特定情報と前記運転関連情報とを受信したときに、給水装置の情報を管理するための管理用メモリに前記運転関連情報を記憶するステップと、を含む。形態13によれば、上記したシステムと同様の効果を奏することができる。
【0022】
(形態14)形態14によれば、給水装置を管理するための管理装置であって、ユーザーからの給水装置に関する問い合わせを特定するための特定情報を作成し、外部端末から特定情報と給水装置に関する運転関連情報とを受信したときに、給水装置の情報を管理するための管理用メモリに運転関連情報を記憶する。形態14によれば、上記したシステムと同様の効果を奏することができる。
【0023】
(形態15)形態15によれば、管理装置において給水装置を管理するための管理方法が提案される。かかる管理方法は、ユーザーからの給水装置に関する問い合わせを特定するための特定情報を作成するステップと、外部端末から特定情報と給水装置に関する運転関連情報とを受信したときに、給水装置の情報を管理するための管理用メモリに運転関連情報を記憶するステップと、を含む。形態15によれば、上記したシステムと同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係るシステムと外部端末との一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る給水装置と外部端末との一例を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る給水装置と外部端末との一例を示す正面図ある。
図4】本発明の実施形態に係る給水装置と外部端末との一例を示す左側面図である。
図4A】表示部における表示モードの一例を示す状態還移図である。
図5】実施形態のシステムの機能の一例を説明するためのブロック構成図である。
図6】実施形態に係る給水装置の管理方法の一例を説明するための図である。
図7】変形例の制御部および外部表示器を示す図である。
図8】変形例に係るシステムの一例を示す図である。
図9】システムの給水装置にて構成される給水設備の一例を示す略式図である。
図10】システムの給水装置にて構成される給水設備の別の一例を示す略式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では同一または相当する構成要素には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係るシステムと外部端末との一例を示す図である。図示するように、システム100は、建物に水を給水するための給水装置10と、給水装置10における各種情報を管理するための管理装置90と、を備えている。本実施形態の管理装置90は、給水装置10とは別の場所に設置されており、一例として複数の給水装置を管理する管理拠点に設けられる。給水装置10と管理装置90とは、外部表示器(外部端末)80を介してデータのやりとりを行うことができるように構成されている。外部表示器80としては、例えばスマートフォン、携帯電話、パソコン、タブレット等の汎用端末機器、または遠方監視器などの専用端末機器が採用される。給水装置は、ネットワーク環境が整っていない地下のポンプ室等に設置される場合がある。給水装置10が直接通信を行うことができない環境下に設置されても、外部表示器80を介して、給水装置10と管理装置90の間でデータのやりとりを行うことができる。
【0027】
図2図4は本発明の実施形態に係る給水装置と外部端末との一例を示す模式図であり、図2は平面図、図3は正面図、図4は左側面図である。図示するように給水装置10では、ベース20の上に、2台のポンプ30A,30Bと、これらポンプ30A,30Bの中間に配置される圧力タンク50とが載置されている。また、給水装置10は、ポンプ30A,30Bの吐出側に接続される吐出配管40と、圧力タンク50の上部に設置される制御盤60とを具備して構成されている。以下各構成部品について説明する。
【0028】
この給水装置10は、オフィスビルや集合住宅などの建物への給水に使用される給水装置である。給水装置10の吸込口35A,35Bは、その上流に不図示の水道本管または受水槽といった水供給源が接続されている。給水装置10の吐出し口である吐出集合管43は、その下流に、不図示の配水管が接続されて建物の内部に配置された給水器具(例えば蛇口)に接続されている。給水装置10は、水供給源の水を加圧し建物の各給水器具に供給するためのポンプ装置である。
【0029】
給水装置10の建物への給水方式としては、水道本管の水を一旦受水槽に貯留し、受水槽の水を給水対象へポンプにて増圧する受水槽方式、及び、水道本管の本管圧を利用しポンプにて増圧することにより給水対象へ水を供給する直結給水方式などがある。また、給水対象への給水方式としては、ポンプにて増圧した水を直接圧送する直送式、または、ポンプにて増圧した水を屋上のタンクに一旦貯留し、自然流下にて給水を行う高置水槽方式等がある。
【0030】
ベース20は、ポンプ30A,30B等の各機器をその上に取り付けて基礎に固定するための台であって、略矩形の平板状で、長手方向の両側辺は下方向に折り曲げられた後に外方向に折り曲げられることで、L字状の固定辺23,23を構成している。
【0031】
給水装置10は、ポンプ30A,30Bを駆動するモータ33A,33Bを備えている
。ポンプ30A,30Bは、吸込口35A,35Bが設けられ、またポンプ30A,30Bの上面には吐出し口37A,37Bが設けられている。なお、直結給水方式の場合には、吸込口35A,35Bが水道本管から分岐した供給管に逆流防止装置(不図示)を介して接続され、供給管には、水道本管の圧力を検出する図示しない圧力センサが設けられる。以下、供給管に設けられる水道本管の圧力を計測する圧力センサにより検出される圧力値を「流入圧力」という。
【0032】
吐出配管40は略T字状の配管であり、小水量を検知する流量検知器の一種であるフロースイッチ49A,49B、及びチェッキ弁(逆止弁)47A,47Bを介して、両ポンプ30A,30Bの吐出し口37A,37Bに、接続されている。また吐出配管40の中央には吐出集合管43が設けられている。これによって、両ポンプ30A,30Bは、並列運転を行う。またチェッキ弁47A,47Bによって、ポンプ30A,30Bが停止したときに吐出配管40内の水がポンプ30A,30B側に逆流しない。また吐出配管40の中央の下部にはこの吐出配管40を圧力タンク50に連結する連結配管45が取り付けられ、さらに吐出配管40には配管内圧力を検出する圧力センサ48が取り付けられている。そして圧力タンク50とチェッキ弁47A,47Bの効果によって、ポンプ30A,30Bが停止した後の吐出配管40内の圧力は、水が使用されない限り一定圧力に保持される。以下、圧力センサ48により検出される圧力値を「吐出し圧力」という。
【0033】
なお、本実施例ではポンプ30A,30Bとポンプ2台の構成だが、ポンプ台数は1台もしくは3台以上の複数台の構成としてもよい。
【0034】
制御盤60は、ケース61を備え、そのケース61内に、不図示の電源端子、ポンプ毎の漏電遮断器、ノイズフィルタ、誘導雷サージ吸収素子、およびリアクトル等を収容し、更には、ポンプの運転制御を行う各種電気回路からなる制御部65を収容して構成されている。この制御部65は、外部表示器(外部端末)80と有線または無線により通信する通信部73、運転パネル79等を備えている。
【0035】
給水装置10を屋外にて使用する場合、上述した機器を外的環境から保護するためのカバー62を設置するとよい。カバー62は、カバー62内の機器(特に、ポンプ30A,30B,モータ33A,33B,制御盤60)を雨や直射日光等の外部環境から保護する。なお、本実施形態では、カバー62は、ステンレス鋼などの耐腐食性のある金属から構成されているが、FRP等の複合材やプラスチックなどの有機高分子材にて構成されてもよい。図4に示すように、カバー62の側面の何れかには、供給管または給水管をカバー62内に配管するための孔62aが形成されているとよい。カバー62は、通信部73もしくは運転パネル79と対向する位置に、給水装置10にカバー62をかけた状態で給水装置10の状態を確認できる窓部63を備えるとよい。例えば、ユーザーが外部表示器80にて給水装置の状態を確認するのであれば、窓部63は通信部73と外部端末間の通信信号が通過できる構造とし、例えば、樹脂等で形成されるとよい。ユーザーが運転パネル79にて給水装置の状態を確認するのであれば、窓部63は運転パネル79の表示が視認できる構造とするとよい。例えば、窓部63は透明の部材で形成される、もしくは着脱式としたりヒンジにて開閉できるとよい。
【0036】
図5は、実施形態のシステム100の機能の一例を説明するためのブロック構成図である。まず、システム100における給水装置10について説明する。図示するように、給水装置10の制御部65は、制御用メモリ(記憶部)66と、演算部69と、I/O部(入力部および出力部)70と、運転パネル79と、通信部73と、を備えている。運転パネル79は、設定部71及び表示部72を備えている。なお、制御部65は、CPU、メモリ等を備え、ソフトウェアを用いて所定の機能を実現するマイクロコンピュータとして構成されてもよいし、専用の演算処理を行うハードウェア回路として構成されてもよい。
【0037】
図4のように制御部65は通信部73と別々の基板としてもよい。その場合は、制御部65と通信部73はシリアル通信や信号線等の有線もしくは無線通信にて接続される。制御部65と通信部73とを別々の基板とした場合は、給水装置10から離れた場所(例えば、管理人室等)に設置し、制御部65とシリアル通信や信号線等で接続された機器内に通信部73を構成してもよい。
【0038】
設定部71は、外部操作により、給水を行うのに必要な各種設定値(設定情報)を設定するのに使用される(設定入力)。具体的には、設定部71は不図示の操作ボタンやタッチパネル等を備え、設定部71において設定された各種設定値は、制御用メモリ66に記憶される。一例として、ユーザーは、設定部71を介して、停止圧力、始動圧力、及び、その他制御に必要な情報を設定情報として入力(設定入力)し、設置現場にて設定情報を変更できるようになっている。
【0039】
また、設定情報には、外部表示器(外部端末)80による設定情報の変更を制限する変更制限情報が含まれてもよい。変更制限情報によって設定情報の変更が禁止されているときには、外部表示器80から設定情報を変更することができない。この場合には、設定部71を通じて変更制限情報を変更することで、外部表示器80による設定情報の変更(設定入力)が許容される。これにより、例えば、メンテナンス作業中に、第三者が外部表示器80により設定情報を変更することを防止することができる。また、給水装置10は、マンションやビルの道路に面した外壁面に設置されることもあり、第三者が外部表示器80を用いて不正なアクセスすることが懸念される。これら不正アクセスが確認された場合に、制御部65は、変更制限情報を変更することによって、外部表示器80による設定情報の変更を禁止するとよい。そうすれば、外部表示器80にて設定入力ができなくなり、第三者における不正アクセス等を防止することができる。更に、設定情報には、外部表示器80による通信を制限または禁止する通信制限情報が含まれてもよい。そうすれば、外部表示器80にて給水装置10の各種情報を閲覧することもできなくなるため、不正アクセスへのセキュリティがより向上することとなる。なお、通信制限情報並びに変更制限情報は、情報の内容ごとに設定できるものとしてもよい。
【0040】
表示部72は、ユーザーインターフェースとして機能し、制御用メモリ66又は通信用メモリ67に格納されている設定値等の各種データや、現在のポンプ30A,30Bの運転状況(運転情報)、例えばポンプ30A,30Bのそれぞれの運転または停止、運転周波数、電流、流入圧力、吐出し圧力、モータ部33A,33Bを駆動するインバータのトリップ、吸入圧力低下警報、及び、受水槽警報等を表示する。
【0041】
本実施形態では、表示部72として、7セグメントLED及び表示灯などの簡易な表示器を採用することができる。ただし、表示部72は、こうした例に限定されず、ドットマトリクス方式による液晶表示器などであってもよい。また、外部表示器80として、タッチ入力方式または押圧ボタン方式を用いた液晶画面での高機能表示器を採用することができる。この場合、表示部72には簡易な情報を表示でき、外部表示器80には大きな情報量の情報を表示できる。こうした構成により、外部表示器80に、制御部65によるポンプ30A,30Bの運転状況に関した情報など(例えば、目標圧SV、現在圧PV、ポンプ30A,30Bの運転・停止、及び、ポンプ30A,30Bの回転速度など)を同一画面上に表示することによって、給水装置に不慣れなユーザーも誤解することなく、給水装置10の状態を認識したり、設定変更を行うことができる。また、給水装置10は、機械室またはポンプ室などの電気的なノイズの多い環境に設置されることがある。こうした場合に備えて、表示部72として、液晶表示やタッチパネルよりも電気的ノイズに強い7セグメントLEDや表示灯、機械的な押圧ボタンなどにて構成された表示器が使用されてもよい。これにより、外部環境から発生される電気的なノイズによって外部表示器80の液
晶表示やタッチパネル操作に異常が発生した場合でも、表示部72により給水装置10の運転に必要な最低限度の表示および操作を行うことができる。したがって、給水装置10を電気的ノイズの多い環境下にも設置することができる。
【0042】
表示部72における表示モードを示す状態還移図を図4Aに示す。表示部72として、7セグメントLED及び表示灯などの簡易な表示器を採用した場合、表示部72は、複数の表示モードを備え、表示モードを切り替えながら各種データを表示する。本実施形態では、一例として、表示モード1(第1表示モード)と表示モード2(第2表示モード)を備え、以下、表示モード1にて表示する情報を第1情報と称し、表示モード2にて表示する情報を第2情報と称する。表示モード1は、通常表示されているモードである。表示モード2は、表示モード1から何らかの操作によって切り替えられるモードであり、操作者が意図的に特定の情報(第2情報)を表示する。具体的には、まず、電源起動後の給水装置10は、表示モード1にて表示を行う。その後、設定部71に備えられた不図示のモード切替えボタン(例えば、機能ボタンや設定ボタン等)を押下するなどのユーザーやメンテナンス員等の操作者の操作によって、表示モード1と表示モード2とが切り替わる。更に、表示モード1にて一定時間操作がなされないと、表示モード1が継続され、表示モード2にて一定時間操作がなされないと、自動的に表示モード1へ切り替わる。このようにして、表示部72は、通常の表示モードである表示モード1と、表示モード1から切り替えられる表示モード2と有する。特に、カバー62付きの給水装置10では、運転パネル79の操作を行うためには、カバー62全体もしくはその一部を取り外す必要がある。よって、メンテナンス等でカバー62を取り外すとき以外は、表示モード1の表示が継続される。本実施形態では、第1情報には、後述する運転情報の少なくとも1つが含まれ、第2情報には、少なくとも設定情報や履歴情報運転情報が含まれる。第1情報には、運転情報のうち複数の情報が含まれるとよい。例えば、吐出し圧力とポンプ30A,30Bの回転速度とが同時に視認可能なように表示されてもよい。また、表示モード1では、給水装置10の異常または警報が発生した際には、該当する異常・警報情報を優先的に表示するとよい。
【0043】
さらに、外部表示器80として、スマートフォン、携帯電話、パソコン、又は、タブレットなどの汎用端末機器を採用した場合には、これらの機器に、外部表示器80として作用するための専用のアプリケーションソフトウエアをインストールさせてもよい。この場合には、専用のアプリケーションソフトウエアをユーザーのレベル又は目的に沿って複数用意してもよい。また、外部表示器80にも上述した表示モード1と表示モード2を備えるとよい。
【0044】
なお、制御部65に運転パネル79または表示部72が設けられずに、外部表示器80のみが設けられてもよい。この場合、上述した運転パネル79の機能は外部表示器80にて全て実施可能とする。給水装置10には表示器自体を設ける必要がなくなるので、給水装置10全体のコストを更に下げることが可能である。
【0045】
制御用メモリ66には、給水装置10を制御するための制御プログラム、給水装置10の装置情報、故障履歴、運転履歴、及び、設定部71を通じて入力された設定情報等が格納されている。ここで、ポンプの出力は、モータ部33A,33Bの容量やモータ部33A,33Bを駆動するためのインバータの容量等にて代用してもよい。また、故障発生時には故障履歴、定期的に給水装置10の運転履歴等の情報も制御用メモリ66に記憶される。
【0046】
制御用メモリ66としては、ROM、HDD、EEPROM、FeRAM、及び、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリが使用される。制御用メモリ66には、各種データ、例えば演算部69における演算結果のデータ(運転時間、積算値
等)、圧力値(流入圧力、吐出し圧力)、設定部71を通じて入力された設定情報、及びI/O部70を通じて入力される、またはI/O部70を通じて出力されるデータ等が格納される。
【0047】
本実施形態の給水装置10では、給水装置10の運転に関する情報(運転関連情報)が制御用メモリ66に記憶される。運転関連情報は、運転情報、履歴情報並びに設定情報を含む。運転情報の一例としては、給水装置10の異常および警報情報、ポンプ30A,30Bの運転・停止、吐出し圧力、流入圧力(受水槽方式の場合は受水槽水位)、ポンプ30A,30B(モータ部33A,33B)の電流値、ポンプ30A,30Bの流量、ポンプ30A,30Bの回転速度(周波数)、および、ポンプ30A,30Bの温度のうち少なくとも1つが挙げられる。履歴情報の一例として、ポンプ30A,30Bの積算運転時間、ポンプ30A,30Bの積算運転回数、給水装置の故障履歴、設定値の変更履歴、メンテナンス履歴のうち少なくとも1つが挙げられる。設定情報の一例として、設定圧PA、各種故障を判断するための閾値、装置情報、のうち少なくとも1つが挙げられる。運転情報および履歴情報は、時刻と共に記憶されていることが好ましい。なお、これらの情報は、制御用メモリ66が不揮発性記憶領域を有する場合にはその不揮発性記憶領域に記憶されてもよい。
【0048】
更に、制御用メモリ66は、図5に示すように第1記憶部66aと第2記憶部66bとをそれぞれ備えていてもよい。そして、第1記憶部66aには、上述した表示モード1にて表示される各種情報(第1情報)が記憶され、第2記憶部66bには、表示モード2にて表示される各種情報(第2情報)が記憶されてもよい。
【0049】
I/O部70としては、ポート等が使用される。I/O部70は、圧力センサ48の入力信号、及び、フロースイッチ49A,49Bの信号等を受け入れて演算部69に送る。演算部69としては、CPUが使用される。演算部69は、制御用メモリ66に格納されているプログラム及び各種データ、並びにI/O部70から入力される信号に基づいて、ポンプ30A,30Bを運転するための各種データの設定、及び、演算等を行う。演算部69からの出力は、I/O部70に入力される。
【0050】
また、I/O部70とポンプ30A,30Bを駆動するインバータとは、RS422,232C,485等の通信手段により互いに接続される。I/O部70からポンプ30A,30Bへは、各種設定値や周波数指令値、発停信号(運転・停止信号)などの制御信号がインバータへ送られ、ポンプ30A,30BからI/O部70へは、実際の周波数値や電流値等の運転状況(運転情報)がインバータから逐次送られる。
【0051】
なお、I/O部70とポンプ30A,30Bを駆動するインバータとの間で送受信される制御信号としては、アナログ信号および/またはデジタル信号を用いることができる。例えば、回転周波数等にはアナログ信号を用い、運転停止指令等にはデジタル信号を用いることができる。また、30A,30Bの可変速制御を行わない場合、インバータがなくてもよい。
【0052】
通信部73は、有線通信または無線通信によって外部表示器80と通信可能なように構成されている。無線通信としては、例えば近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)の技術を利用することができる。また、Bluetooth(登録商標)およびWi-Fiなど、任意の方式の無線通信を利用することができる。ただし、NFCは、制御部65と外部表示器80とを近づけるだけで通信を完了させることができる点で有利である。また、有線通信としては、例えば制御部65にUSB(Universal Serial Bus)のような外部接続端子が設けられ、ここに外部表示器80が接続されることによって通信がなされてもよいし、RS422,232C,485等のシリアル通信を用いてもよい
【0053】
制御部65による給水装置10の給水制御の一例について説明する。ポンプ30A,30Bが停止している状態で吐出し圧力が所定の始動圧力にまで低下すると、制御部65はポンプ30A,30Bの少なくとも一方を始動させる。具体的には、制御部65はポンプ30A,30Bの駆動を開始するようにモータ部33A,33B(インバータを備える場合にはインバータ)に指令を出す。ポンプ30A,30Bの運転中は、設定された圧力(設定圧)により推定末端圧力一定制御または目標圧力一定制御などの制御が行われる。具体的には推定末端圧力一定制御の場合は、ポンプ30A,30Bの回転数と目標圧力制御カーブとを用いてポンプ30A,30Bの吐出し圧力に対する目標圧(SV)を設定し、目標圧力一定制御の場合は、設定圧を目標圧(SV)とする。また、吐出し圧力を現在圧(PV)とする。そして、SVとPVの偏差にてPID演算を行いポンプ30A,30Bの指令回転数が設定される。なお、直結給水にて推定末端圧力一定制御を行う場合、流入圧力に基づいて目標圧力制御カーブを補正してもよい。具体的には目標圧力制御カーブを流入圧力だけ加算し、目標圧(SV)を算出する。また、制御部65は、本実施形態のようにポンプが複数台ある場合は、同時に起動可能なポンプ台数(ポンプ並列運転台数)にて水量に応じたポンプの台数制御も行われる。
【0054】
ポンプ30A,30Bの運転中に建物での水の使用が少なくなると、フロースイッチ49A,49Bは、過少水量を検出し、その検出信号を制御部65に送る。制御部65は、この検出信号を受けるとポンプ30A,30Bに指令を出してポンプ30A,30Bを所定回転数で運転させる。そして、制御部65は、吐出し圧力が所定の運転停止圧力に達することにより圧力タンク50に蓄圧したと判断すると、ポンプ30A,30Bを停止(小水量停止)させる。ポンプ30A,30Bが小水量停止した後に、再び建物内で水が使用されると吐出し圧力が始動圧力以下まで低下しポンプ30A,30Bが始動する。なお、本実施形態のようにポンプが複数台ある場合には、始動するポンプ30A,30Bをローテーションさせ、ポンプ30A,30B内に水が滞留するのを防ぐことが好ましい。また、小水量を検知する方法としては、フロースイッチ49A,49Bを用いずに、モータ部33A,33Bの電流値による低負荷や締切圧力等その他の手段を用いてもよい。
【0055】
次に、システム100における管理装置90について説明する。管理装置90は、図5に示すように、演算部92と、操作表示部93と、通信部94と、管理用メモリ96を有する記憶部95と、を備えている。なお、管理装置90は、CPU、メモリ等を備え、ソフトウェアを用いて所定の機能を実現するマイクロコンピュータとして構成されてもよいし、専用の演算処理を行うハードウェア回路として構成されてもよい。また、管理装置90は、単一の装置によって構成されるものに限定されず、一例として互いに離隔して設けられた複数の装置によって構成されてもよい。
【0056】
演算部92は、記憶部95に格納されているプログラム及び各種データ等に基づいて、給水装置10を管理するための各種データ(例えば特定情報)の設定、及び、演算等を行う。操作表示部93は、ユーザーインターフェースとして機能し、記憶部95に格納されている各種データを表示することができる。
【0057】
通信部94は、有線通信または無線通信によって外部表示器80と通信可能なように構成されている。本実施形態の管理装置90は、複数の給水装置を管理する管理拠点に設置されて、公衆回線等のネットワークを介して外部表示器80と通信する。ただし、通信部94は、給水装置10の通信部73と同様に、無線通信として近距離無線通信、Bluetooth(登録商標)およびWi-Fiなど、任意の方式の無線通信を利用してもよい。
【0058】
記憶部95には、管理装置90を制御するための制御プログラムが記憶されている。また、記憶部95には、複数の給水装置の装置情報、給水装置の機種ごとのメンテナンス情報、ならびに、管理している給水装置ごとの運転関連情報、故障履歴、及びメンテナンス履歴などが格納される管理用データが記憶されている。記憶部95としては、ROM、HDD、EEPROM、FeRAM、及び、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリが使用される。記憶部95には、各種データ、例えば演算部92における演算結果のデータ(異常情報、メンテナンス情報)、及び通信部94を通じて入力される、または通信部94を通じて出力されるデータ等が格納される。
【0059】
続いて、本実施形態のシステム100における給水装置10の管理方法について説明する。図6は、給水装置10の管理方法の一例を説明するための図である。図6では、システム100としての給水装置10と管理装置90とのそれぞれの制御を示しているとともに、外部表示器(外部端末)80の制御についても併せて示している。
【0060】
まず、前提として、システム100における給水装置10の制御部65は、給水装置10の運転に伴って運転関連情報を制御用メモリ66に記憶する(SW00)。この給水装置10による運転関連情報の記憶は、給水装置10が運転されている間実行される。上記したように、運転関連情報としては、設定情報(設定値)の変更履歴、給水装置10の異常情報、ポンプ30A,30Bの運転・停止、ポンプ30A,30Bの積算運転時間、ポンプ30A,30Bの積算運転回数、ポンプ30A,30Bの吐出し圧力、ポンプ30A,30Bの流入圧力(受水槽方式の場合は受水槽水位)、ポンプ30A,30B(モータ部33A,33B)の電流値、ポンプ30A,30Bの流量、ポンプ30A,30Bの回転数(周波数)、および、ポンプ30A,30Bの温度のうち少なくとも1つが含まれる。
【0061】
いま、給水装置10に異常または警報等が生じた場合を考える。このときには、給水装置10の異常または警報等に気付いた水の使用者または、その知らせを受けた建物の管理者(以下、水の使用者や建物の管理者等をユーザーと記す)などが管理拠点に対して問い合わせをする。図6に示す例では、外部表示器80から管理装置90に対して問い合わせがなされている(SE01)。このときには、一例として外部表示器80にインストールされた専用のアプリケーションAP1を通じて問い合わせがなされてもよい。また、外部表示器80から管理装置90に対して電子メールなどが送信されることにより問い合わせがなされてもよい。ただし、管理装置90への問い合わせは、管理装置90に直接に通信がなされるものに限定されず、オペレータまたは中継装置などを介して行われてもよい。一例として、外部表示器80から管理拠点のオペレータに電話回線を通じて問い合わせがなされ、問い合わせを受けたオペレータが管理装置90に問い合わせ情報を入力することにより、管理装置90への問い合わせがなされてもよい。また、管理装置90への問い合わせは、外部表示器80からなされるものに限定されず、別の外部端末または固定電話などからなされてもよい。
【0062】
管理装置90は、ユーザーから給水装置10について問い合わせがなされると、この問い合わせを特定するための特定情報を作成する(SM02)。この特定情報は、ユーザーからの問い合わせ毎に割り振られる情報であり、管理装置90は、他の問い合わせ(給水装置)に対して割り振った特定情報と重複しないように、特定情報を作成する。なお、管理装置90は、ランダムに特定情報を作成するものとしてもよいし、問い合わせされた順番または問い合わせした外部表示器80の端末情報等に基づいて所定の規則に従って特定情報を作成するものとしてもよい。管理装置90は作成した特定情報を管理用メモリ96に記憶する。具体的には、管理装置90は、管理用メモリ96のエリア内で有効な他の特定情報に上書きしないアドレスに記憶する。このときには、管理装置90は、問い合わせがなされた時刻とともに特定情報を記憶部95に記憶することが好ましい。また、管理装
置90は、問い合わせをしたユーザーに関する情報(氏名または電話番号など)と、問い合わせの対象である給水装置に関する情報(住所など)との少なくとも一方を、客先情報として特定情報に関連付けて管理用メモリ96に記憶することが好ましい。
【0063】
本実施形態では、管理装置90は4桁の数字を特定情報として作成する。また、作成された特定情報は、所定時間(有効時間T1)にわたって有効であり、管理装置90が特定情報を作成してから所定時間が経過すると無効になるものとしている。具体的には、管理装置90は、特定情報を作成したら計時を開始し、その計時値が有効時間T1以上となった特定情報を管理用メモリ96から消去して無効とする。このように特定情報を、4桁の数字を用いて簡易な情報とすることにより、管理装置90またはオペレータから外部表示器80への特定情報の伝達が容易となるとともに、外部表示器80のユーザーによる記憶および利用が容易となる。また、特定情報に有効時間T1を設けることにより、他の問い合わせと特定情報が重複することを防止することができるとともに、特定情報として、4桁の数字を用いた簡易な情報を採用することができる。管理用メモリ96は、記憶できる特定情報の数が制限されている。有効時間T1が経過した特定情報は、管理用メモリ96より消去することで、管理用メモリ96を有効に活用できる。さらに、特定情報に有効時間T1を設けることにより、特定情報に対する信頼性を向上することができる。このとき、管理装置90は、有効時間T1が経過してから所定期間(例えば数日など)が経過するまでは、その特定情報を他の問い合わせに対しても割り振らないものとしてもよい。なお、管理装置90は、特定情報を問い合わせがなされた時刻等とともに管理用メモリ96に記憶することにより、問い合わせに対して1対1に対応する情報(ユニーク情報)として管理することができる。ここで、特定情報の有効時間T1としては、例えば数時間、1日、2日、または、数日などとすることができる。ただし、特定情報は、有効時間T1がないものとしてもよく、有効時間T1に代えてまたは加えて、有効回数(例えば、数回)が設けられていてもよい。つまり、外部表示器80から特定情報を用いた通信が有効回数なされた場合、特定情報が無効になるものとしてもよい。また、特定情報は、4桁の数字に限定されるものではなく、3桁から8桁の情報としてもよいし、1桁、2桁、または9桁以上の情報としてもよい。さらに、特定情報は、数字に代えて又は加えて、文字または記号などを用いてもよい。なお、給水装置は、異常や警報によって断水するので、その多くの場合で24時間以内の迅速な復旧が行われる。そのため、例えば、数日といった有効時間T1を設けることができる。
【0064】
管理装置90が特定情報を作成すると、続いて、問い合わせをした者に対して管理装置90から特定情報が通知される。図6に示す例では、管理装置90から外部表示器80に対して特定情報が通知されている(SM03)。このときには、一例としてアプリケーションAP1を通じて特定情報の通知がなされてもよい。また、管理装置90から外部表示器80に対して電子メールなどが送信されることにより特定情報の通知がなされてもよい。ただし、管理装置90からの特定情報の通知は、管理装置90からの直接の通信によってなされるものに限定されず、オペレータまたは中継装置などを介して行われてもよい。つまり、管理装置90は操作表示部93に特定情報を表示するものとし、管理装置90を操作するオペレータから給水装置10のユーザーに特定情報が通知されてもよい。また、管理装置90への問い合わせに使用された手段と、特定情報を通知するための手段とは異なるものであってもよい。上記したように本実施形態では、特定情報が4桁の数字を用いた簡易な情報とされているので、管理装置90からの特定情報の通知を容易に行うことができる。
【0065】
続いて、給水装置10のユーザーは、外部表示器80を用いて給水装置10に対して運転関連情報の送信を要請する(SE04)。一例として外部表示器80にインストールされた専用のアプリケーションAP2を通じて外部表示器80から給水装置10へ要請がなされればよい。このとき、外部表示器80から給水装置10へ特定情報を書き込んでもよ
い。
【0066】
外部表示器80から要請を受けると、給水装置10は、外部表示器80へ運転関連情報を送信する(SW05)。このとき、特に給水装置10が近距離無線通信できるように構成されていると、外部表示器80を給水装置10の通信部73に近づけるだけでSE04,SW05を行うことができ、処理を簡易なものとすることができる
【0067】
給水装置10から外部表示器80へ送られる運転関連情報の少なくとも一部には、上述した第1情報と第2情報が含まれる。給水装置10は、カバー62によって運転パネル79の操作が困難な場合がある。ユーザーによる運転パネル79の操作が困難でも、給水装置10が運転関連情報に第2情報を含めることで、管理装置90は第2情報に含まれる情報を取得することができる。ここで、第2情報の少なくとも一部は、外部表示器80にて表示されないものとしてもよい。これにより、外部表示器80を操作するユーザーが運転関連情報に対して過敏に反応してしまうことを防止できる。ここで、一例として、第2情報を履歴情報並びに設定情報とした場合、第2情報のうち、設定変更履歴、ポンプ30A,30Bの積算運転時間、および、ポンプ30A,30Bの積算運転回数については、外部表示器80にて表示されないものとしてもよいし、設定情報のうち、各種故障を判断するための閾値については、外部表示器80にて表示されないものとしてもよい。なお、運転関連情報は、少なくとも一部の情報が外部表示器80において単に表示されないものとしてもよいし、暗号化などが施されていてもよい。
【0068】
給水装置10から運転関連情報を受信すると、外部表示器80は、受信した運転関連情報を、管理装置90から通知された特定情報とともに、管理装置90へ送信する(SE06)。このときには、外部表示器80にインストールされた専用のアプリケーションAP3を通じてデータの送信がなされてもよいし、電子メール等を通じてデータの送信がなされてもよい。管理装置90は、運転関連情報と特定情報とを受信すると、受信した運転関連情報を記憶部95(管理用メモリ96)に記憶する(SM07)。一方、管理装置90は、運転関連情報を受信しても、特定情報が送信されていない場合および送信された特定情報が適正でない場合には、運転関連情報を管理用メモリ96に記憶しない。なお、管理装置90は、特定情報を外部表示器80との適正な通信を確立するための情報として利用してもよい。また、管理装置90は、運転関連情報が特定情報と共に適正に受信されたときには、外部表示器80に対して運転関連情報を受信したことを通知するものとしてもよい。
【0069】
外部表示器80は、電波状況などの要因によって管理装置90へ運転関連情報を正常に送信できないときには、管理装置90との通信が確立するまで自動で定期的に管理装置90との接続確認を行うものとしてもよい。
【0070】
そして、管理拠点では、管理装置90が外部表示器80から受信した運転関連情報に基づいて、給水装置10の異常またはメンテナンスについて検討される。図6に示す例では、管理装置90が運転関連情報に基づいて、給水装置10のメンテナンス情報を作成している(SM08)。管理装置90によるメンテナンス情報の作成は、管理装置90にあらかじめ設定されている処理プログラムに基づいてなされればよい。管理装置90は、メンテナンス情報として、給水装置10の異常部位を特定したり、交換部品を特定したりしてもよい。ただし、給水装置10の異常またはメンテナンスについての検討は、管理装置90によってなされるものに限定されず、管理装置90に記憶された運転関連情報に基づいてオペレータまたは作業者等によってなされてもよい。
【0071】
管理拠点において給水装置10の異常またはメンテナンスについて検討されると、管理拠点から給水装置10のユーザー、または作業員に対してメンテナンス情報が通知される
ことが好ましい。一例として、管理装置90から外部表示器80へメンテナンス情報が電子メールにて送信される。作業員に対してメンテナンス情報を知らせるときには、管理用メモリ96に記憶された給水装置10の運転関連情報とともにメンテナンス情報が送信されてもよい。
【0072】
以上説明した本実施形態のシステム100によれば、システム100の管理装置90がユーザーからの給水装置10に関する問い合わせを特定するための特定情報を作成する。そして、管理装置90が外部表示器(外部端末)80から特定情報と給水装置10の運転関連情報とを受信したときに、運転関連情報を管理用メモリ96に記憶する。これにより、管理装置90に過度にデータが記憶されることを防止でき、管理装置90の負担を小さくすることができる。また、外部表示器80を操作するユーザー等は、例えば電話口において給水装置10の説明を細かくしなくてもよく、給水装置10の正確な情報を管理装置90へ送信することができる。そして、管理拠点において、管理装置90の管理用メモリ96に記憶された給水装置10の運転関連情報に基づいて給水装置10のメンテナンス情報を作成することができる。これにより、作業者等は、予め必要な準備をして給水装置10が設置された現場に向かうことができる。
【0073】
ここで、また、外部端末が利用可能な通信用プログラムである上述したアプリケーションAP1、アプリケーションAP2、アプリケーションAP3の機能のうち複数の機能を備えたアプリケーションAPを用いてもよい。その際には、アプリケーションAPには、その表示機能としてのメニュー画面を備え、メニュー画面でアプリケーションAP1、アプリケーションAP2、アプリケーションAP3のそれぞれの機能を選択できるものとしてもよい。
【0074】
給水装置10は、アプリケーションAPに関する情報を記録した情報記録部材64を備えていてもよい。そして、外部表示器80は、情報記録部材64を用いてアプリケーションAPを入手してもよい。情報記録部材64は一例として二次元コードであり、アプリケーションAP等をダウンロードできるウエブサイトヘのURL(Uniform Resource Locators)が記憶されているとよい。情報記録部材64は、給水装置10自体または装置の周辺の所定位置に取り付けられていることが好ましい。ここで、一例として、図4に示されるように、情報記録部材64がカバー62に取り付けられていることで、カバー62を取り外すことなく情報記録部材64にアクセスすることができる。このように給水装置10が情報記録部材64を備えていることにより、外部表示器80においてアプリケーションAPを容易に取得することができ、ユーザーの便宜を図ることができる。アプリケーションAP1、アプリケーションAP2、アプリケーションAP3がそれぞれのアプリケーションとして構成されている場合は、情報記録部材64は、それぞれのアプリケーションに関する情報を記録していてもよい。
【0075】
(変形例1)
図7は、変形例の制御部および外部表示器を示す図である。この変形例では、通信部73が、制御部側アンテナ部76、集積回路77、及び、記憶部78を備えている。記憶部78は、通信用の揮発性メモリ(不図示)並びに不揮発性メモリ(不図示)を含んでいる。集積回路77は、制御部側アンテナ部76、記憶部78に電気的に接続されている。なお、図7に示す制御部65Aは表示部72を備えていないが、表示部72を備えてもよい。また、変形例の制御部65Aは、ポンプ30A,30B等の給水装置10の他の構成と一体に設けられていてもよいし、給水装置10のデータを中継するための装置として給水装置10の他の構成から離れて設けられてもよい。
【0076】
変形例の外部表示器80は、電波を送受信する表示器側アンテナ部81と、表示部82と、バッテリー83と、データリーダー84と、を備えている。この外部表示器80では
、表示器側アンテナ部81で受信したデータがデータリーダー84で読み取られる。そして、データリーダー84で読み取られたデータ(例えば、目標圧SV、現在圧PV、ポンプ30A,30Bの周波数など)が表示部82で表示される。また、外部表示器80より給水装置10の各種設定値を変更することも可能とする。バッテリー83は、表示器側アンテナ部81、データリーダー84、および表示部82に電力を供給する。
【0077】
外部表示器80として、例えばスマートフォン、携帯電話、パソコン、タブレット等の汎用端末機器を用いてもよく、遠隔監視器などの専用の端末機器を用いてもよい。特に、スマートフォンなどの汎用端末機器を外部表示器として使用すれば、専用の表示器を制作するコストが削減できるので、給水装置のコストを下げることができる。また、複数のユーザーが個々の汎用端末機器に給水装置10の状態を表示させたり、設定を変更したりすることができるので、ユーザーのレベル又は目的に沿った操作を提供することが可能である。たとえば、マンションまたはビルの管理人のような給水装置に関する専門知識のないユーザーに対して、ポンプ30A,30Bの制御に関する情報などを分かり易く知らせることができる給水装置を安価に提供することができる。
【0078】
外部表示器80は、近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)の技術によって制御部65Aと接続される。より具体的には、外部表示器80を制御部65Aに近づけた状態で、表示器側アンテナ部81が電波を発生すると、その電波を制御部側アンテナ部76が受け取り、制御部側アンテナ部76は電波を電力に変換する。この電力は集積回路77および記憶部78に供給されてこれら集積回路77および記憶部78を駆動する。外部表示器80が記憶部78のデータを読取る場合、集積回路77は、電波に含まれる通信データに基づいて、記憶部78に記憶されているデータを読み取り、制御部側アンテナ部76にデータを送る。制御部側アンテナ部76は、データとともに電波を表示器側アンテナ部81に送信する。データリーダー84は、表示器側アンテナ部81が受信したデータを読み取り、そのデータを表示部82に表示させる。また、外部表示器80が記憶部78のデータを変更する場合、集積回路77は、電波に含まれる通信データに基づいて、記憶部78のデータを変更し、制御部側アンテナ部76にデータ変更が実行されたことを意味するデータを送る。制御部側アンテナ部76は、データとともに電波を表示器側アンテナ部81に送信する。データリーダー84は、表示器側アンテナ部81が受信したデータを読み取り、データ変更が実行されたことを表示部82に表示させる。
【0079】
外部表示器80は、表示を消去するためのクリアボタン86と、データをリセットするためのリセットボタン(不図示)を備えていてもよい。ユーザーがクリアボタン86を押すと、表示部82の表示が消去される。また、リセットボタンを押すと、リセット信号が制御部65Aに送信され、リセット信号を受信した制御部65Aは、メンテナンス情報などのデータをリセットする。本実施形態のクリアボタン86は、表示部82の画面上に現れる仮想的なボタンであるが、クリアボタン86は表示部82の外に設けられた機械的なボタンであってもよい。なお、実施形態および変形例の制御部65,65Aにクリアボタン、リセットボタンを設けてもよい。
【0080】
変形例では、制御部65Aの記憶部78に記憶されているデータは、無線通信により制御部65Aから外部表示器80に送られる。変形例によれば、給水装置10の電源が入っていない場合でも、制御部側アンテナ部76は外部表示器80から発せられる電波から電力を発生し、集積回路77および記憶部78を駆動することができる。したがって、給水装置10の電源が遮断されている場合などであっても、給水装置10から外部表示器80に運転関連情報等を受信することができる。そして、外部表示器80から管理装置90へ運転関連情報等が送信されることにより、管理装置90において給水装置10のメンテナンス情報等を作成することができる。
【0081】
NFCは、数cmの近距離にて相互通信する技術である。変形例の制御部65Aを給水装置10の他の構成と一体に設けられている場合、外部表示器80にて各種情報を表示または変更するときには、ユーザー及びメンテナンス員は、相互通信可能な距離まで外部表示器80を制御部65Aに近づけることになる。このことは、外部表示器80を操作するときは、ユーザーおよびメンテナンス員は給水装置10の近くにいることを意味する。このため、例えば消耗品の交換作業中にリセットボタンが押されてポンプが起動するといった誤操作に起因した給水装置10の予期しない動作を防止することに繋がる。また、複数の給水装置10が設置された現場では、表示したい給水装置10の近距離で相互通信が可能となる為、意図しない別の給水装置の状態を表示または設定変更してしまうという誤表示または誤操作を防止することができる。
【0082】
(実施例2)
図8にシステム101を示す。システム101は、給水装置10A、給水装置10B並びに給水装置10A、10Bの各種情報を管理するための管理装置90、を備える。給水装置10Aは給水設備110Aに用いられており、現場Aに設置されている。給水装置10Bは、給水設備110Bに用いられており、現場Bに設置されている。現場A、現場B並びに管理装置90は、それぞれ異なる場所に設置されている。システム101において、外部表示器80A、80Bと管理装置90とは、インターネットなどの汎用的なネットワーク網(ネットワークNw)を介して通信される。管理装置90は、ネットワークNwを介して行われる通信では、管理装置90が備えるデータベースへの書き込みのみを許可する。一例としては、アプリケーションAPを用いた書き込みのみが可能である。また、管理装置90では、IDとパスワード等によりアクセス権が管理されており、アクセス権を保有する人員(本実施例ではオペレータや作業員等)のみがデータベース上の情報を参照することができる。
【0083】
図9は、システム101の給水装置10Aにて構成される給水設備110Aの略式図である。給水装置10Aは、上記した給水装置10と基本的に同一の構成を備えており、受水槽160に貯留された水をポンプ30A,30Bにて増圧して給水対象である給水器具172へ供給する受水槽方式で使用されている。ここで、給水装置10Aにおける警報の一例として、渇水警報並びに満水警報を説明する。給水装置10AのI/O部70は、水位センサ162からの水位情報を入力する。水位センサ162は、複数の電極棒162a~162eを備えており、受水槽160の水位を検出する。複数の電極棒162a~162eは、長い方から順に、コモン電極棒162a、次からは、低い水位を検出できる順に、渇水警報のための電極棒162b、市水流入弁163を開放するための電極棒162c、市水流入弁163を閉止するための電極棒162d、満水警報のための電極棒162eとなっている。そして、制御部65は、水位が電極棒162cの検出範囲より低くなると水道本管170に接続される市水流入弁163を開く信号を出力し、水位が電極棒162dの検出範囲に至ると市水流入弁163を閉じる信号を出力することで、受水槽160内の水位を一定に保つ。また、制御部65は、水位が電極棒162bの検出範囲より低くなると渇水警報を表示部72に出力するとともにポンプ30A、30Bを停止し、水位が電極棒162eの検出範囲より上に至ると満水警報を表示部72に出力し、ポンプ30A、30Bが運転中ならば運転を継続する。
【0084】
給水装置10Aの表示部72は、受水槽の水位が所定の渇水状態である渇水警報発生時に、表示モード1にて渇水警報を表示し、表示モード2にて水位情報、各種設定値並びに故障履歴等を表示する。
【0085】
図10はシステム101の給水装置10Bにて構成される給水設備110Bの略式図である。給水装置10Bは、上記した給水装置10と基本的に同一の構成を備えており、水道本管170の本管圧を利用しポンプ30A、30Bにて増圧することにより給水対象で
ある給水器具172へ水を供給する直結給水方式で使用されている。ここで、給水装置10Aにおける異常の一例として、流入圧力が所定の低圧状態である流入圧低下異常について説明する。給水装置10BのI/O部70は、水道本管170の圧力を検出する流入圧センサ171からの信号を受信する。制御ユニット70は、流入圧力である水道本管170の圧力が一定以下(例えば7mAq以下)を一定時間(例えば30秒)以上継続したと判断したら、流入圧低下異常の異常を表示部72に出力するとともにポンプ30A、30Bを停止する。更に、制御部65は、水道本管170の圧力が一定以上(例えば10mAq以上)を一定時間(例えば10秒)以上継続したと判断したら、流入圧低下異常の異常を解除し、表示部72への出力も解除する。なお、流入圧センサ171は給水装置10B内に備えられてもよい。
【0086】
給水装置10Bの表示部72は、流入圧低下異常発生時に、表示モード1にて流入圧低下異常を表示し、表示モード2にて、流入圧センサの入力値、流入圧低下の閾値、検出時間等の各種設定値並びに故障履歴を表示するとよい。
【0087】
給水装置10Aおよび10Bにおいて、カバー62が取り付けられている場合は、ユーザーAは設定部71のボタン操作ができないので、表示部72は表示モード1の状態である。この場合、給水装置10Aおよび10Bは、外部表示器80Aおよび80Bが窓部63を介して通信部73に近づけられることで近距離無線通信ができるように構成されているとよい。
【0088】
いま、給水装置10Aに渇水警報が生じた場合を考える。本実施形態では、図6に沿って説明を行うが、一部の動作は、外部表示器80Aに代わってもしくは加えてユーザーAが実施する。渇水警報が生じると、ポンプ30A、30Bの停止に伴って断水となる。断水に気が付いたユーザーAから管理拠点のオペレータに対して電話にて問い合わせがなされる(SE01)。このときには、問い合わせを受けた管理拠点のオペレータが、問い合わせの対象である給水装置10Aに関する情報である現場Aの住所や、ユーザーAに関する情報である氏名、電話番号などの客先情報(客先情報A1)を操作表示部93より入力して、管理用メモリ96に記憶する。客先情報A1は、作業員が現場Aへ行くために必要な最低限の情報である。
【0089】
次に、管理装置90は、ユーザーAからの給水装置10Aに関する問い合わせを特定するための特定情報(特定情報A1)を作成する(SM02)。管理装置90は作成した特定情報A1を記憶部95の管理用メモリ96に記憶する。このとき、管理装置90には客先情報A1と特定情報A1を関連付けて記憶する。
【0090】
次に、管理装置90を操作するオペレータからユーザーAに対して特定情報A1が通知される(SM03)。本実施形態では、特定情報A1が4桁の数字などの簡易な情報とされているので、オペレータとユーザーAとの通信手段が電話であっても、ユーザーAは特定情報A1を正しく認識することができる。
【0091】
続いて、ユーザーAは外部表示器80Aを用いて給水装置10Aに対して運転関連情報の送信を要請する(SE04)。一例として、外部表示器80Aにインストールされた専用のアプリケーションAPを通じて外部表示器80Aから給水装置10Aへ要請がなされればよい。アプリケーションAPには、ユーザーAが特定情報A1を入力し一時的に記憶する機能を有するとよい。具体的には、ユーザーAが特定情報A1を入力した後に、給水装置10Aに対して運転関連情報の送信を要請するとよい。
【0092】
外部表示器80Aから要請を受けると、給水装置10Aは、外部表示器80Aへ運転関連情報A1を送信する(SW05)。外部表示器80Aへ送信する運転関連情報A1には
、第1情報の渇水警報を含む。更に、運転関連情報A1には、第2情報の水位情報、各種設定値並びに故障履歴等の少なくともひとつを含む。ここで、SW05の場合は、給水装置10Bは、緊急事態であると判断して、通信制限情報にて外部表示器80Aによる通信を禁止しているか否かに関わらず、外部表示器80Aへ運転関連情報を送信するとよい。その場合、外部表示器80Aもしくは運転パネル73の少なくとも一方で、通信制限情報にて外部表示器80Aによる通信を禁止していることを示す表示を行うとよい。
【0093】
なお、SW05の場合に限らず、給水装置10Bは、緊急事態であると判断したら、通信制限情報にて外部表示器80Aによる通信を禁止しているか否かに関わらず、外部表示器80Aとの通信を許可してもよい。緊急事態の例としては、給水装置10Bで警報または異常を発報している間や、外部表示器80Aから特殊なデータを書き込まれた際、又は、運転パネル79にて一定期間のみ通信制限情報を解除する設定がなされた場合等が考えられる。給水装置10Bは、緊急事態である判断したら、通信制限情報にて外部表示器80Aとの通信を禁止しているか否かに関わらず、外部表示器80Aと通信を行ってもよい。
【0094】
外部表示器80Aは、受信した運転関連情報A1を、SE04にて入力された特定情報A1とともに、専用のアプリケーションAPにて管理装置90へ送信する(SE06)。ここで、外部表示器80Aは、第1情報(渇水警報)を表示してもよい。更に、第2情報の少なくともひとつは表示を行わず、管理装置90へ送信するのみとするとよい。
【0095】
管理装置90は、運転関連情報A1と特定情報A1とを受信すると、運転関連情報A1と特定情報A1とを関連付けて、記憶部95(管理用メモリ96)に記憶する(SM07)。
【0096】
ここで、SE01にて特定情報A1と客先情報A1は関連付けられており、SM07では、特定情報A1と運転関連情報A1とが関連付けられている。よって、管理装置90は、特定情報A1に基づいて、運転関連情報A1と客先情報A1とが確認できる給水装置10Aのメンテナンス情報を作成することができる(SM08)。本実施形態のSW05では運転関連情報A1には、第1情報の渇水警報を含み、更には、第2情報の水位情報、各種設定値並びに故障履歴等のすくなくともひとつを含む。これにより、特定情報A1を作成した問い合わせの要因が給水装置10Aの渇水警報である旨を示すメンテナンス情報が作成される。更に、メンテナンス情報の一例として、第2情報の水位情報によれば、渇水が発生した原因が電極(特に電極棒162b)の不良かどうかの判断ができる。
【0097】
なお、上述した例では、SW05にて、給水装置10Aは、緊急事態であると判断して、通信制限情報にて外部表示器80Aによる通信を禁止しているか否かに関わらず外部表示器80Aへ運転関連情報A1を送信するとした。しかしながら、通信制限情報にて外部表示器80Aとの通信を禁止している場合は、外部表示器80Aとの通信を禁止している旨を伝える信号を外部表示器80Aへ送信してもよい。その場合、外部表示器80Aもしくは運転パネル73との少なくとも一方で、通信制限情報にて外部表示器80による通信を禁止していることを示す表示を行うとよい。そうすれば、ユーザーAが必要に応じて通信制限情報を変更し、外部表示器80Aとの通信を行うことができる。
【0098】
給水装置10Bにて、流入圧低下異常が生じた場合も、同様に、図6に沿って説明を行うが、一部の動作は、外部表示器80Bに代わってもしくは加えてユーザーBが実施する。まず、SE01にて、給水装置10Bの断水に気が付いたユーザーBより電話で問い合わせがなされ、SM02にて管理用メモリ96に客先情報B1と、給水装置10Bに関する問い合わせを特定するための特定情報B1とを関連付けて記憶する。客先情報B1は、問い合わせをしたユーザーBに関する情報および問い合わせの対象である給水装置10B
に関する情報である。次に、SM03にて特定情報B1をユーザーBに通知する。ユーザーBは、SE04、SW05にて、給水装置10Bの運転関連情報B1を外部表示器80Bに取得する。ここで、SW05における運転関連情報B1には、第1情報の流入圧低下異常を含む。更に、第2情報の流入圧センサの入力値、流入圧低下の閾値、検出時間等の各種設定値並びに故障履歴の少なくともひとつを含む。次に、SE06にて、外部表示器80Bは、運転関連情報B1を、特定情報B1とともに、管理装置90へ送信する。更に、SM07では、管理装置90は、特定情報B1と運転関連情報B1を関連付けて、管理用メモリ96に記憶する。
【0099】
管理装置90は、SM08にて、運転関連情報B1と客先情報B1とが関連付けられた給水装置10Bのメンテナンス情報を作成する。本実施形態のSW05では、運転関連情報B1に、第1情報の流入圧低下異常を含み、更には、第2情報の流入圧センサ171の入力値、流入圧低下の閾値、検出時間等の各種設定値並びに故障履歴の少なくともひとつを含む。これにより、特定情報B1を作成した問い合わせの要因が、給水装置10Bの流入圧低下異常である旨を示すメンテナンス情報が作成される。更に、メンテナンス情報の一例として、第2情報の流入圧センサ171の入力値によれば、流入圧低下異常が発生した原因が流入圧センサ171の不良であるか否かの判断ができる。
【0100】
SM08で作成されたメンテナンス情報は、作業員に通知される。具体的には、管理装置90へのアクセス権をもつ作業員が、管理用メモリ96を参照するとよい。また、管理装置90へのアクセス権をもたない作業員に対しては、パスワード付きの電子メールやFAXなど機密性の確保された通知方法にて通知されるとよい。作業員は通知されたメンテナンス情報によって、必要な部品等を持って迅速に警報または異常現場へ向かうことができる。本実施形態では、ユーザーからの問い合わせに対して、客先情報A1または客先情報B1はオペレータの手入力により管理用メモリ96に格納され、その後のネットワークNwを介した各種情報のやりとりは特定情報A1、特定情報B1を用いて行われる。このように、客先情報A1、客先情報B1を取り扱うことで、客先情報の情報漏えいに対するセキュリティが強化されている。
【0101】
更に、SM08で作成されたメンテナンス情報は、管理装置90に保存されるとよい。そうすれば、特定情報A1または特定情報B1の有効期限T1が切れて特定情報A1並びに特定情報B1が失われていても、メンテナンス情報に記載された客先情報A1または客先情報B1(例えば、住所など)により、過去の問い合わせ時に収集した運転関連情報A1並びに運転関連情報B1を確認することができる。特に、給水装置は、新設で設置された住所から他の住所に移転されることはない。よって、住所などの客先情報により、過去の問い合わせ時に収集したメンテナンス情報を検索できる。
【0102】
また、SE04,SW05、SE06にて各種データを正確に送ることができるので、ユーザーが警報内容や給水装置の型式、給水方式等を認識する必要はない。特に、SE01の段階では、断水しておりユーザーは混乱していることが予想される。そこで、システム101では、SE01の段階では客先情報のみを取得し、その後、運転関連情報を通信で取得することで、正確な情報を得ることができる。また、給水装置10が近距離無線通信できるように構成されていると、ユーザーは、外部表示器80を、窓部63を介して通信部73に近づけるだけでSE04,SW05を行うことができ、給水装置の操作に不慣れなユーザーでも処理を実施することができる。
【0103】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、
または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0104】
10…給水装置
30A,30B…ポンプ
40…吐出配管
45…連結配管
48…圧力センサ
50…圧力タンク
60…制御盤
61…ケース
62…カバー
63…窓部
64…情報記録部材
65,65A…制御部
66…制御用メモリ
67…通信用メモリ
69…演算部
70…I/O部
71…設定部
72…表示部
73…通信部
76…制御部側アンテナ部
77…集積回路
78…記憶部
79…運転パネル
80…外部表示器
81…表示器側アンテナ部
82…表示部
83…バッテリー
84…データリーダー
90…管理装置
92…演算部
93…操作表示部
94…通信部
95…記憶部
96…管理用メモリ
100…システム
160…受水槽
162…水位センサ
162a~162e…電極棒
163…市水流入弁
170…水道本管
171…流入圧センサ
172…給水器具
図1
図2
図3
図4
図4A
図5
図6
図7
図8
図9
図10