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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】フォトポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   G03H 1/02 20060101AFI20220104BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20220104BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20220104BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20220104BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
G03H1/02
C08F20/10
C08F265/06
C08L33/14
C08F2/44 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019554955
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 KR2018015466
(87)【国際公開番号】W WO2019117540
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2019-10-07
(31)【優先権主張番号】10-2017-0169489
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0156150
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソクフン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】スヨン・クワク
(72)【発明者】
【氏名】ホン・キム
(72)【発明者】
【氏名】セ・ヒョン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンレ・チャン
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-026116(JP,A)
【文献】特開2004-017320(JP,A)
【文献】特開2002-337464(JP,A)
【文献】特表2004-527782(JP,A)
【文献】特開2005-115264(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101712744(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03H 1/00 - 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体およびシラン架橋剤を含む高分子マトリックスまたはその前駆体;
光反応性単量体;および
光開始剤;を含み、
前記シラン架橋剤に対する29Si固体状態(Solid State)のNMR分析の結果、シロキサン官能基のうち下記一般式1の官能基の比率が95モル%以上である、
フォトポリマー組成物:
【化1】
前記一般式1において、R~Rはそれぞれ水素または有機官能基である。
【請求項2】
前記シラン架橋剤に対する29Si固体状態(Solid State)のNMR分析の結果、下記一般式1~4の官能基のうち一般式1の官能基比が90モル%以上である、請求項1に記載のフォトポリマー組成物:
【化2】
前記一般式1において、R~Rはそれぞれ水素または有機官能基であり、
【化3】
前記一般式2において、R21~R22はそれぞれ水素または有機官能基であり、R23~R24はそれぞれ水素、有機官能基またはヒドロキシ基であり、
【化4】
前記一般式3においてR31水素または有機官能基であり、R32~R35はそれぞれ水素、有機官能基またはヒドロキシ基であり、
【化5】
前記一般式4において、R41~R46はそれぞれ水素、有機官能基またはヒドロキシ基である。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレート系(共)重合体のうち前記シラン系官能基の当量が300g/当量~2000g/当量である、請求項1または2に記載のフォトポリマー組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート系(共)重合体100重量部に対し、前記シラン架橋剤含有量が10重量部~90重量部である、請求項1から3のいずれか一項に記載のフォトポリマー組成物。
【請求項5】
前記シラン架橋剤は、重量平均分子量が100~2000の線状のポリエーテル主鎖および前記主鎖の末端または分枝鎖で結合したシラン系官能基を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のフォトポリマー組成物。
【請求項6】
前記主鎖の末端または分枝鎖で結合したシラン系官能基とポリエーテル主鎖の結合は、ウレタン結合を媒介とする、請求項5に記載のフォトポリマー組成物。
【請求項7】
前記シラン架橋剤に含まれたシラン系官能基の当量が200g/当量~1000g/当量である、請求項1から6のいずれか一項に記載のフォトポリマー組成物。
【請求項8】
前記光反応性単量体は、多官能(メタ)アクリレート単量体または単官能(メタ)アクリレート単量体を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のフォトポリマー組成物。
【請求項9】
前記光反応性単量体の屈折率が1.5以上である、請求項1から8のいずれか一項に記載のフォトポリマー組成物。
【請求項10】
前記高分子マトリックスまたはその前駆体1重量%~80重量%;
前記光反応性単量体1重量%~80重量%;および
光開始剤0.1重量%~20重量%;を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のフォトポリマー組成物。
【請求項11】
前記フォトポリマー組成物は、フッ素系化合物をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のフォトポリマー組成物。
【請求項12】
前記フッ素系化合物は、エーテル基、エステル基およびアミド基からなる群より選ばれた1種以上の官能基および2以上のジフルオロメチレン基を含む、請求項11に記載のフォトポリマー組成物。
【請求項13】
前記フッ素系化合物は、屈折率が1.45未満である、請求項11または12に記載のフォトポリマー組成物。
【請求項14】
前記高分子マトリックスの屈折率が1.46~1.53である、請求項1から13のいずれか一項に記載のフォトポリマー組成物。
【請求項15】
前記フォトポリマー組成物は、光感応染料、またはその他添加剤をさらに含む、 請求項1から14のいずれか一項に記載のフォトポリマー組成物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載のフォトポリマー組成物から製造されたホログラム記録媒体。
【請求項17】
請求項16に記載のホログラム記録媒体を含む光学素子。
【請求項18】
可干渉性レーザによって請求項1から15のいずれか一項に記載のフォトポリマー組成物に含まれる光反応性単量体を選択的に重合させる段階を含む、ホログラフィック記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は、2017年12月11日付韓国特許出願第10-2017-0169489号および2018年12月6日付韓国特許出願第10-2018-0156150号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれている。
【0002】
本発明は、フォトポリマー組成物、ホログラム記録媒体、光学素子およびホログラフィック記録方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ホログラム(hologram)記録メディアは、露光過程により前記メディア内のホログラフィック記録層内屈折率を変化させることによって情報を記録し、このように記録されたメディア内の屈折率の変化を判読して情報を再生する。
【0004】
フォトポリマー(感光性樹脂、photopolymer)を用いる場合、低分子単量体の光重合によって光干渉パターンをホログラムとして容易に保存できるため、光学レンズ、鏡、偏向鏡、フィルタ、拡散スクリーン、回折部材、導光体、導波管、映写スクリーンおよび/またはマスクの機能を有するホログラフィック光学素子、光メモリシステムの媒質と光拡散板、光波長分割器、反射型、透過型カラーフィルタなど多様な分野に用いることができる。
【0005】
通常ホログラム製造用フォトポリマー組成物は、高分子バインダー、単量体および光開始剤を含み、このような組成物から製造された感光性フィルムに対してレーザ干渉光を照射して局部的な単量体の光重合を誘導する。
【0006】
このような光重合過程で単量体が相対的に多く存在する部分では屈折率が高くなり、高分子バインダーが相対的に多く存在する部分では屈折率が相対的に低くなり、屈折率変調が生じ、このような屈折率変調によって回折格子が生成される。屈折率変調値nは、フォトポリマー層の厚さと回折効率(DE)に影響を受け、角度選択性は厚さが薄いほど広くなる。
【0007】
最近では高い回折効率と安定してホログラムを維持できる材料の開発に対する要求とともに、薄い厚さを持ちながらも屈折率変調値が大きいフォトポリマー層の製造のための多様な試みが行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、薄い厚さの範囲でもより高い屈折率変調値を実現できるフォトポリマー層をより効率的でかつ容易に提供できるフォトポリマー組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、薄い厚さの範囲でもより高い屈折率変調値を実現できるフォトポリマー層を含むホログラム記録媒体を提供する。
【0010】
また、本発明は、ホログラム記録媒体を含む光学素子を提供する。
【0011】
また、本発明は、可干渉性のレーザによって前記フォトポリマー組成物に含まれた光反応性単量体を選択的に重合させる段階を含む、ホログラフィック記録方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書では、シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体およびシラン架橋剤を含む高分子マトリックスまたはその前駆体;光反応性単量体;および光開始剤;を含み、前記シラン架橋剤に対する29Si固体状態(Solid State)のNMR分析結果、シロキサン官能基のうち下記一般式1の官能基の比率が90モル%以上であるフォトポリマー組成物が提供される。
【0013】
【化1】
【0014】
前記一般式1において、R~Rはそれぞれ水素または有機官能基である。
【0015】
また、本明細書では、前記フォトポリマー組成物から製造されたホログラム記録媒体が提供される。
【0016】
また、本明細書では、前記ホログラム記録媒体を含む光学素子が提供される。
【0017】
また、本明細書では、可干渉性のレーザによって前記フォトポリマー組成物に含まれた光反応性単量体を選択的に重合させる段階を含むホログラフィック記録方法が提供される。
【0018】
以下、発明の具体的な実施例によるフォトポリマー組成物、ホログラム記録媒体、光学素子、およびホログラフィック記録方法についてより詳細に説明する。
【0019】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、メタクリレートまたはアクリレートを意味する。
【0020】
本明細書において、(共)重合体は、単独重合体または共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を含む)を意味する。
【0021】
また、本明細書において、ホログラム(hologram)は、露光過程により全体可視範囲および近紫外線範囲(300~800nm)で光学的情報が記録された記録メディアを意味し、例えばイン-ライン(ガボール(Gabor))ホログラム、オフアクシス(off-axis)ホログラム、完全アパーチャ(full-aperture)以前のホログラム、白色光透過ホログラム(「虹ホログラム」)、デニシュク(Denisyuk)ホログラム、オフアクシス反射ホログラム、エッジ-リテラチュア(edge-literature)ホログラムまたはホログラフィステレオグラム(stereogram)等の視覚的ホログラム(visual hologram)をすべて含む。
【0022】
本明細書において、アルキル基は直鎖または分枝鎖であり得、炭素数は特に限定されないが1~40であることが好ましい。一実施例によれば、前記アルキル基の炭素数は1~20である。他の一つの実施例によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。他の一つの実施例によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書において、アルキレン基はアルカン(alkane)に由来した2価の官能基であり、例えば、直鎖状、分枝状または環状として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などであり得る。
【0024】
発明の一実施例によれば、シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体およびシラン架橋剤を含む高分子マトリックスまたはその前駆体;光反応性単量体;および光開始剤;を含み、前記シラン架橋剤に対する29Si固体状態(Solid State)のNMR分析結果、シロキサン官能基のうち下記一般式1の官能基の比率が90モル%以上であるフォトポリマー組成物が提供されることができる。
【0025】
【化2】
【0026】
前記一般式1において、R~Rはそれぞれ水素または有機官能基である。
【0027】
本発明者らは、シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体およびシラン架橋剤を含む高分子マトリックスまたはその前駆体を含むフォトポリマー組成物から形成されるホログラムがより薄い厚さの範囲でも以前に知られているホログラムに比べて大きく向上した屈折率変調値および優れた温度、湿度に対する耐久性を実現できる点を実験により確認して発明を完成した。
【0028】
29Si固体状態(Solid State)のNMR分析結果、シロキサン官能基のうち下記一般式1の官能基の比率が90モル%以上であるシラン架橋剤とシラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体を含む高分子マトリックスまたはその前駆体を用いることによって、前記フォトポリマー組成物からコーティングフィルムやホログラムを製造時に架橋密度が最適化され、従来のマトリックスに比べて温度と湿度に対して優れた耐久性を確保することができる。のみならず、上述した架橋密度の最適化により、高い屈折率を有する光反応性単量体と低い屈折率を有する成分間の流動性(mobility)を高めることによって屈折率変調を最大化させて記録特性を向上させることができる。
【0029】
特に、シラン系官能基を含む変性(メタ)アクリレート系(共)重合体と末端のシラン系官能基を含むシラン架橋剤間にはゾルゲル反応によりシロキサン結合を媒介する架橋構造を容易に導入することができ、このようなシロキサン結合により温度と湿度に対して優れた耐久性を確保することができる。
【0030】
また、本発明では高分子マトリックスまたはその前駆体の成分としてフッ素系化合物またはホスフェート系化合物などをさらに含み得、前記フッ素系化合物やホスフェート系化合物は、光反応性単量体に比べて低い屈折率を有しており、高分子マトリックスの屈折率を低くしてフォトポリマー組成物の屈折率変調を最大化させることができる。
【0031】
さらに、前記ホスフェート系化合物は、可塑剤の役割を果たし、前記高分子マトリックスのガラス転移温度を低くして光反応性単量体と低屈折成分の流動性(mobility)を高め、フォトポリマー組成物の成形性の向上にも寄与する。
【0032】
前記シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体およびシラン架橋剤を含む高分子マトリックスまたはその前駆体は、前記フォトポリマー組成物およびこれから製造されたフィルムなどの最終製品の支持体の役割を果たし得、前記フォトポリマー組成物から形成されたホログラムでは屈折率が相異する部分として屈折率変調を高める役割を果し得る。
【0033】
前述したように、前記高分子マトリックスは、シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体およびシラン架橋剤を含み得る。これにより、前記高分子マトリックスの前駆体は、前記高分子マトリックスを形成する単量体またはオリゴマーを含み、具体的には前記シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体、またはその単量体または前記単量体のオリゴマー、そしてシラン架橋剤、またはその単量体または前記単量体のオリゴマーを含み得る。
【0034】
前記高分子マトリックス上で上述したシラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体とシラン架橋剤は、それぞれ別の成分として存在し得、また、これらが互いに反応して形成される複合体の形態としても存在し得る。
【0035】
前記(メタ)アクリレート系(共)重合体でシラン系官能基が分枝鎖に位置し得る。前記シラン系官能基は、シラン官能基またはアルコキシシラン官能基を含み得、好ましくはアルコキシシラン官能基としてトリメトキシシラン基を用い得る。
【0036】
前記シラン系官能基は、前記シラン架橋剤に含まれたシラン系官能基とゾルゲル反応によりシロキサン結合を形成して前記(メタ)アクリレート系(共)重合体とシラン架橋剤を架橋させ得る。
【0037】
一方、前記シラン架橋剤に対する29Si固体状態(Solid State)のNMR分析結果、シロキサン官能基のうち下記一般式1の官能基の比率が90モル%以上、または95モル%以上、好ましくは99モル%以上であり得、前記比率の上限は大きく限定されるものではないが、100モル%または99.9モル%であり得る。
【0038】
前記29Si固体状態(Solid State)のNMR分析は、通常知られている装備および方法、例えばBruker AVANCEIII 300MHz装備などを用いて7mm MAS probeを用いてstatic conditionで測定し得、測定した結果から積分値計算により上述した範囲のモル%を確認し得る。
【0039】
前記29Si固体状態(Solid State)のNMR分析結果、シロキサン官能基のうち下記一般式1の官能基の比率が90モル%以上であるシラン架橋剤は、前記実施形態のフォトポリマー組成物からホログラム記録媒体の製造時に前記高分子マトリックスの内部に線状の架橋構造がより多く形成されるようにする。これにより、前記製造されるホログラム記録媒体がより高い記録特性を得ることができ、相対的に高い屈折率変調値(△n)と高い回折効率と低いレーザ損失量(Iloss)を実現することができ、さらに常温以上の温度および相対的に高い湿度に露出しても回折効率が大きく変わらない特性を実現することができる。
【0040】
より具体的には、前記シラン架橋剤に対する29Si固体状態(Solid State)のNMR分析結果、下記一般式1~4の官能基のうち一般式1の官能基比が90モル%以上、または95モル%以上、好ましくは99モル%以上であり得る。
【0041】
【化3】
【0042】
前記一般式1において、R~Rはそれぞれ水素または有機官能基である。
【0043】
【化4】
【0044】
前記一般式2において、R21~R22はそれぞれ水素または有機官能基であり、R23~R24はそれぞれ水素、有機官能基またはヒドロキシ基である。
【0045】
【化5】
【0046】
前記一般式3においてR31~R35はそれぞれ水素または有機官能基であり、R32~R35はそれぞれ水素、有機官能基またはヒドロキシ基である。
【0047】
【化6】
【0048】
前記一般式4において、R41~R46はそれぞれ水素、有機官能基またはヒドロキシ基である。
【0049】
前記一般式1~4において、R~R、R21~R24、R31~R35、R41~R46は、それぞれ有機官能基である場合に29Si固体状態(Solid State)のNMR分析時Siの結合構造の区分に大きい影響を及ぼさない。そのため、これに該当する有機官能基の例は大きく限定されない。
【0050】
より具体的には、R~Rは、それぞれ水素または炭素数1~20のアルキル基であり得る。また、R21~R22は、それぞれ水素または炭素数1~20のアルキル基であり得、R23~R24は、それぞれ水素または炭素数1~20のアルキル基であるか、またはヒドロキシ基または炭素数1~20のアルコキシ基であり得る。また、R31は、それぞれ水素または炭素数1~20のアルキル基であり、R32~R35は、それぞれ水素または炭素数1~20のアルキル基であるか、またはヒドロキシ基または炭素数1~20のアルコキシ基であり得る。また、R41~R46は、それぞれ水素または炭素数1~20のアルキル基であるか、またはヒドロキシ基または炭素数1~20のアルコキシ基であり得る。
【0051】
前記シラン架橋剤は、分子当たり平均1個以上のシラン系官能基を有する化合物またはその混合物であり得、前記1以上のシラン系官能基を含む化合物であり得る。前記シラン系官能基は、シラン官能基またはアルコキシシラン官能基を含み得、好ましくはアルコキシシラン官能基としてトリエトキシシラン基を用い得る。前記シラン系官能基は、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体に含まれたシラン系官能基とゾルゲル反応によりシロキサン結合を形成して前記(メタ)アクリレート系(共)重合体とシラン架橋剤を架橋させ得る。
【0052】
この時、前記シラン架橋剤は、前記シラン系官能基の当量が200g/当量~1000g/当量であり得る。これにより、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体とシラン架橋剤との間の架橋密度が最適化され、従来のマトリックスに比べて温度と湿度に対して優れた耐久性を確保することができる。のみならず、上述した架橋密度の最適化により、高い屈折率を有する光反応性単量体と低い屈折率を有する成分間の流動性(mobility)を高めることによって屈折率変調を最大化させて記録特性を向上させることができる。
【0053】
前記シラン架橋剤に含まれた前記シラン系官能基の当量が1000g/当量以上で過度に増加すると、マトリックスの架橋密度の低下によって記録後の回折格子境界面が崩れ、緩い架橋密度および低いガラス転移点温度によって単量体および可塑剤の成分が表面に溶出され、ヘイズを発生させ得る。
【0054】
前記シラン架橋剤に含まれた前記シラン系官能基の当量が200g/当量未満で過度に減少すると、架橋密度が過度に高くなり、モノマーと可塑剤成分の流動性を阻害し、それによって記録特性が顕著に低くなる問題が生じ得る。
【0055】
より具体的には、前記シラン架橋剤は、重量平均分子量が100~2000、または300~1000、または300~700である線状のポリエーテル主鎖および前記主鎖の末端または分枝鎖により結合したシラン系官能基を含み得る。
【0056】
前記重量平均分子量が100~2000である線状のポリエーテル主鎖は、下記化学式3で表される繰り返し単位を含み得る。
【0057】
[化学式3]
-(RO)-R
【0058】
前記化学式3において、Rは炭素数1~10のアルキレン基であり、nは1以上、または1~50、または5~20、または8~10の整数である。
【0059】
前記シラン架橋剤が柔軟なポリエーテルポリオールを主鎖として導入することによってマトリックスのガラス転移温度および架橋密度調節により成分の流動性を向上させることができる。
【0060】
一方、前記シラン系官能基とポリエーテル主鎖との結合は、ウレタン結合を媒介とし得る。具体的には、前記シラン系官能基とポリエーテル主鎖は、ウレタン結合により相互間結合を形成でき、より具体的には前記シラン系官能基に含まれたけい素原子がウレタン結合の窒素原子と直接または炭素数1~10のアルキレン基を媒介として結合し、前記ポリエーテル主鎖に含まれたR官能基がウレタン結合の酸素原子と直接結合し得る。
【0061】
このように前記シラン系官能基とポリエーテル主鎖がウレタン結合を媒介として結合することは、前記シラン架橋剤がシラン系官能基を含むイソシアネート化合物と重量平均分子量が100~2000である線状のポリエーテルポリオール化合物間の反応により製造された反応生成物であるからである。
【0062】
より具体的には、前記イソシアネート化合物は、脂肪族、脂環式、芳香族または芳香脂肪族のモノ-イソシアネートジ-イソシアネート、トリ-イソシアネートまたはポリ-イソシアネート;またはウレタン、尿素、カルボジイミド、アシル尿素、イソシアヌレート、アロファネート、ビュレット、オキサジアジントリオン、ウレトジオンまたはイミノオキサジアジンジオン構造を持つジ-イソシアネートまたはトリイソシアネートオリゴ-イソシアネートまたはポリ-イソシアネート;を含み得る。
【0063】
前記シラン系官能基を含むイソシアネート化合物の具体的な例としては、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0064】
また、前記ポリエーテルポリオールは、例えばスチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリンの多重添加生成物とこれらの混合添加生成物およびグラフト生成物、そして多価アルコールまたはこれらの混合物の縮合によって収得されるポリエーテルポリオールおよび多価アルコール、アミンおよびアミノアルコールのアルコキシ化によって収得されるものである。
【0065】
前記ポリエーテルポリオールの具体的な例としては、1.5~6のOH官能度および200~18000g/モル間の数平均分子量、好ましくは1.8~4.0のOH官能度および600~8000g/モルの数平均分子量、特に好ましくは1.9~3.1のOH官能度および650~4500g/モルの数平均分子量を有するランダムまたはブロック共重合体形態のポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)およびこれらの組み合わせ、またはポリ(テトラヒドロフラン)およびこれらの混合物である。
【0066】
このように、前記シラン系官能基とポリエーテル主鎖がウレタン結合を媒介として結合する場合、より容易にシラン架橋剤を合成し得る。
【0067】
前記シラン架橋剤の重量平均分子量(GPC測定)は、1000~5,000,000であり得る。重量平均分子量は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(単位:g/mol)を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られている分析装置と示差屈折率検出器(Refractive Index Detector)等の検出器および分析用カラムを用い得、通常適用される温度条件、溶媒、流速(flow rate)を適用することができる。前記測定条件の具体的な例として、30℃の温度、クロロホルム溶媒(Chloroform)および1mL/minの流速が挙げられる。
【0068】
一方、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体は、シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート繰り返し単位および(メタ)アクリレート繰り返し単位を含み得る。
【0069】
シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート繰り返し単位の例としては、下記化学式1で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0070】
【化7】
【0071】
前記化学式1において、R~Rは、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基であり、Rは、水素または炭素数1~10のアルキル基であり、Rは、炭素数1~10のアルキレン基である。
【0072】
好ましくは前記化学式1において、R~Rは、それぞれ独立して炭素数1のメチル基であり、Rは、炭素数1のメチル基であり、Rは、炭素数3のプロピレン基である3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503)由来の繰り返し単位またはR~Rは、それぞれ独立して炭素数1のメチル基であり、Rは水素であり、Rは、炭素数3のプロピレン基である3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-5103)由来の繰り返し単位であり得る。
【0073】
また、前記(メタ)アクリレート繰り返し単位の例としては、下記化学式2で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0074】
【化8】
【0075】
前記化学式2において、Rは、炭素数1~20のアルキル基であり、Rは、水素または炭素数1~10のアルキル基であり、好ましくは前記化学式2において、Rは、炭素数4のブチル基であり、Rは水素である、ブチルアクリレート由来の繰り返し単位であり得る。
【0076】
前記化学式2の繰り返し単位:前記化学式1の繰り返し単位間のモル比は、0.5:1~14:1であり得る。前記化学式1の繰り返し単位モル比が過度に減少すると、マトリックスの架橋密度が過度に低くなり、支持体としての役割をすることができないため、記録後の記録特性の減少が発生し得、前記化学式1の繰り返し単位モル比が過度に増加すると、マトリックスの架橋密度が過度に高くなり各成分の流動性が劣ることによって屈折率変調値の減少が発生し得る。
【0077】
前記(メタ)アクリレート系(共)重合体の重量平均分子量(GPC測定)は、100,000~5,000,000、または300,000~900,000であり得る。重量平均分子量は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(単位:g/mol)を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られている分析装置と示差屈折率検出器(Refractive Index Detector)等の検出器および分析用カラムを用い得、通常適用される温度条件、溶媒、流速を適用することができる。前記測定条件の具体的な例として、30℃の温度、クロロホルム溶媒(Chloroform)および1mL/minの流速が挙げられる。
【0078】
一方、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体は、前記シラン系官能基の当量が300g/当量~2000g/当量、または500g/当量~2000g/当量、または550g/当量~1800g/当量、または580g/当量~1600g/当量、または586g/当量~1562g/当量であり得る。
【0079】
前記シラン系官能基当量とは、シラン系官能基1個に対する当量(g/当量)であり、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体の重量平均分子量を1分子当たりシラン系官能基の数で割った値である。前記当量値が小さいほど官能基の密度が高く、前記当量値が大きいほど官能基密度が小さい。
【0080】
これにより、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体とシラン架橋剤との間の架橋密度が最適化され、従来のマトリックスに比べて温度と湿度に対して優れた耐久性を確保することができる。のみならず、上述した架橋密度最適化により、高い屈折率を有する光反応性単量体と低い屈折率を有する成分との間の流動性(mobility)を高めることによって屈折率変調を最大化させて記録特性を向上させることができる。
【0081】
前記(メタ)アクリレート系(共)重合体に含まれた前記シラン系官能基の当量が300g/当量未満で過度に減少すると、マトリックスの架橋密度が過度に高くなり、成分の流動性を阻害し、それによって記録特性の減少が発生し得る。また、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体に含まれた前記シラン系官能基の当量が2000g/当量超で過度に増加すると、架橋密度が過度に低いため支持体としての役割ができなくなり、記録後に生成された回折格子の境界面が崩れ、屈折率変調値が時間が経過とともに減少し得る。
【0082】
一方、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体100重量部に対し、前記シラン架橋剤含有量が10重量部~90重量部、または20重量部~70重量部、または22重量部~65重量部であり得る。
【0083】
前記反応生成物において、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体100重量部に対し、前記シラン架橋剤含有量が過度に減少すると、マトリックスの硬化速度が顕著に遅くなり、支持体としての機能を失い、記録後の回折格子境界面が簡単に崩れ得、前記反応生成物において、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体100重量部に対し、前記シラン架橋剤含有量が過度に増加すると、マトリックスの硬化速度は速くなるが、反応性シラン基含有量の過度な増加により他の成分との相容性の問題が発生し、ヘイズが発生する。
【0084】
また、前記反応生成物のモジュラス(貯藏弾性率)が0.01MPa~5MPaであり得る。前記モジュラス測定方法の具体的な例として、TA InstrumentsのDHR(discovery hybrid rheometer)装備を用いて常温(20℃~25℃)で1Hzの周波数(frequency)で貯蔵弾性率(G’)値を測定し得る。
【0085】
また、前記反応生成物のガラス転移温度が-40℃~10℃であり得る。前記ガラス転移温度測定方法の具体的な例として、DMA(dynamic mechanical analysis)測定装備を用いて歪み 0.1%、周波数 1Hz、昇温速度5℃/minの設定条件で-80℃~30℃領域で光重合組成物がコートされたフィルムの位相角(損失弾性率)変化を測定する方法が挙げられる。
【0086】
一方、前記光反応性単量体は、多官能(メタ)アクリレート単量体または単官能(メタ)アクリレート単量体を含み得る。
【0087】
前述したように、前記フォトポリマー組成物の光重合過程で単量体が重合され、ポリマーが相対的に多く存在する部分では屈折率が高くなり、高分子バインダーが相対的に多く存在する部分では屈折率が相対的に低くなり、屈折率変調が生じ、このような屈折率変調によって回折格子が生成される。
【0088】
具体的には、前記光反応性単量体の一例としては(メタ)アクリレート系α、β-不飽和カルボン酸誘導体、例えば(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルまたは(メタ)アクリル酸などや、またはビニル基(vinyl)またはチオール基(thiol)を含む化合物が挙げられる。
【0089】
前記光反応性単量体の一例として屈折率が1.5以上、または1.53以上、または1.5~1.7である多官能(メタ)アクリレート単量体が挙げられ、このような屈折率が1.5以上、または1.53以上、または1.5~1.7である多官能(メタ)アクリレート単量体は、ハロゲン原子(臭素,ヨウ素など)、硫黄(S)、リン(P)、または芳香族環(aromatic ring)を含み得る。
【0090】
前記屈折率が1.5以上である多官能(メタ)アクリレート単量体のより具体的な例としては、ビスフェノールA変性ジアクリレート系、フルオレンアクリレート系(HR6022等-Miwon社)、ビスフェノールフルオレンエポキシアクリレート系(HR6100、HR6060、HR6042等-Miwon社)、ハロゲン化エポキシアクリレート系(HR1139、HR3362等-Miwon社)などが挙げられる。
【0091】
前記光反応性単量体の他の一例として単官能(メタ)アクリレート単量体が挙げられる。前記単官能(メタ)アクリレート単量体は、分子の内部にエーテル結合およびフルオレン官能基を含み得、このような単官能(メタ)アクリレート単量体の具体的な例としては、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールエチレンオキシド(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-(フェニルチオ)エチル(メタ)アクリレート、またはビフェニルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0092】
一方、前記光反応性単量体としては、50g/mol~1000g/mol、または200g/mol~600g/molの重量平均分子量を有し得る。前記重量平均分子量は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0093】
一方、前記実施形態のフォトポリマー組成物は、光開始剤を含む。前記光開始剤は、光または化学放射線によって活性化する化合物であり、前記光反応性単量体など光反応性官能基を含有した化合物の重合を開始する。
【0094】
前記光開始剤としては通常知られている光開始剤を大きい制限なしに用いられるが、その具体的な例としては光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、または光アニオン重合開始剤が挙げられる。
【0095】
前記光ラジカル重合開始剤の具体的な例としては、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N-アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン、アルミネート錯体、有機過酸化物、N-アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体、アミン誘導体などが挙げられる。より具体的には、前記光ラジカル重合開始剤としては、1,3-ジ(t-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4”-テトラキス(t-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3-フェニル-5-イソオキサゾロン、2-メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5-トリフェニル)イミダゾール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(製品名:Irgacure 651/製造メーカー:BASF)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(製品名:Irgacure 184/製造メーカー:BASF)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1(製品名:Irgacure 369/製造メーカー:BASF)、およびビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロル-1-イル)-フェニル)チタン(製品名:Irgacure 784製造メーカー:BASF)、Ebecryl P-115(製造メーカー:SK entis)などが挙げられる。
【0096】
前記光カチオン重合開始剤としては、ジアゾニウム塩(diazonium salt)、スルホニウム塩(sulfonium salt)、またはヨードニウム塩(iodonium salt)が挙げられ、例えばスルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル-4-ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸-p-ニトロベンジルエステル、シラノール-アルミニウム錯体、(η6-ベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)などが挙げられる。また、ベンゾイントシレート、2,5-ジニトロベンジルトシレート、N-トシルフタル酸イミドなども挙げられる。前記光カチオン重合開始剤のより具体的な例としては、Cyracure UVI-6970、Cyracure UVI-6974およびCyracure UVI-6990(製造メーカー:Dow Chemical Co.in USA)やIrgacure 264およびIrgacure 250(製造メーカー:BASF)またはCIT-1682(製造メーカー:Nippon Soda)等の市販製品が挙げられる。
【0097】
前記光アニオン重合開始剤としては、ボレート塩(Borate salt)が挙げられ、例えばブチリルコリンブチルトリフェニルボレート(BUTYRYL CHOLINE BUTYLTRIPHENYLBORATE)などが挙げられる。前記光アニオン重合開始剤のより具体的な例としては、Borate V(製造メーカー:Spectra group)等の市販製品が挙げられる。
【0098】
また、前記実施形態のフォトポリマー組成物は、一分子(タイプI)または二分子(タイプII)開始剤を用いることもできる。前記フリーラジカル光重合のための(タイプI)システムは、例えば3次アミンと組合わせた芳香族ケトン化合物、例えばベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラー(Michler’s)ケトン)、アントロンおよびハロゲン化ベンゾフェノンまたは前記タイプの混合物である。前記二分子(タイプII)開始剤としてはベンゾインおよびその誘導体、ベンジルケタール、アシルホスフィンオキシド、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、フェニルグリオキシルエステル、カンファーキノン、α-アミノアルキルフェノン、α,α-ジアルコキシアセトフェノン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)およびα-ヒドロキシアルキルフェノンなどが挙げられる。
【0099】
前記実施形態のフォトポリマー組成物は、前記高分子マトリックスまたはその前駆体1重量%~80重量%;前記光反応性単量体1重量%~80重量%;および光開始剤0.1重量%~20重量%;を含み得る。後述するように、前記フォトポリマー組成物が有機溶媒をさらに含む場合、上述した成分の含有量はこれら成分の総和(有機溶媒を除いた成分の総和)を基準とする。
【0100】
前記フォトポリマー組成物は、フッ素系化合物をさらに含み得る。前記フッ素系化合物は、反応性が殆どない安定性を有し、低屈折特性を有するので、前記フォトポリマー組成物内に添加時高分子マトリックスの屈折率をより低くすることができ、モノマーとの屈折率変調を最大化させることができる。
【0101】
前記フッ素系化合物は、エーテル基、エステル基およびアミド基からなる群より選ばれた1種以上の官能基および2以上のジフルオロメチレン基を含み得る。より具体的には、前記フッ素系化合物は、2個のジフルオロメチレン基間の直接結合またはエーテル結合を含む中心官能基の両末端にエーテル基を含む官能基が結合した下記化学式4の構造を有し得る。
【0102】
【化9】
【0103】
前記化学式4において、R11およびR12はそれぞれ独立してジフルオロメチレン基であり、R13およびR16はそれぞれ独立してメチレン基であり、R14およびR15はそれぞれ独立してジフルオロメチレン基であり、R17およびR18はそれぞれ独立してポリアルキレンオキシド基であり、mは1以上、または1~10、または1~3の整数である。
【0104】
好ましくは前記化学式4において、R11およびR12はそれぞれ独立してジフルオロメチレン基であり、R13およびR16はそれぞれ独立してメチレン基であり、R14およびR15はそれぞれ独立してジフルオロメチレン基であり、R17およびR18はそれぞれ独立して2-メトキシエトキシメトキシ基であり、mは2の整数である。
【0105】
前記フッ素系化合物は、屈折率が1.45未満、または1.3以上1.45未満であり得る。前述したように光反応性単量体が1.5以上の屈折率を有するので、前記フッ素系化合物は、光反応性単量体より低い屈折率により、高分子マトリックスの屈折率をより低くすることができ、モノマーとの屈折率変調を最大化させることができる。
【0106】
具体的には、前記フッ素系化合物含有量は、光反応性単量体100重量部に対し、30重量部~150重量部、または50重量部~110重量部であり得、前記高分子マトリックスの屈折率が1.46~1.53であり得る。
【0107】
前記フッ素系化合物含有量は、光反応性単量体100重量部に対して過度に減少すると、低屈折成分の不足により記録後の屈折率変調値が低くなり、前記フッ素系化合物含有量が光反応性単量体100重量部に対して過度に増加すると、その他成分との相容性の問題によりヘイズが発生するか一部フッ素系化合物がコーティング層の表面に溶出される問題が発生し得る。
【0108】
前記フッ素系化合物は、重量平均分子量(GPC測定)が300以上、または300~1000であり得る。重量平均分子量測定の具体的な方法は、上述したとおりである。
【0109】
一方、前記フォトポリマー組成物は、光感応染料をさらに含み得る。前記光感応染料は、前記光開始剤を増感させる増感色素の役割をするが、より具体的には前記光感応染料は、光重合体組成物に照射した光によって刺激され、モノマーおよび架橋モノマーの重合を開始する開始剤の役割もともにすることができる。前記フォトポリマー組成物は、光感応染料0.01重量%~30重量%、または0.05重量%~20重量%含み得る。
【0110】
前記光感応染料の例は大きく限定されず、通常知られている多様な化合物を用いることができる。前記光感応染料の具体的な例としては、セラミドニン(ceramidonin)のスルホニウム誘導体(sulfonium derivative)、ニューメチレンブルー(new methylene blue)、チオエリスロシントリエチルアンモニウム(thioerythrosine triethylammonium)、6-アセチルアミノ-2-メチルセラミドニン(6-acetylamino-2-methylceramidonin)、エオシン(eosin)、エリスロシン(erythrosine)、ローズベンガル(rose bengal)、チオニン(thionine)、ベイシックイエロー(baseic yellow)、ピナシアノールクロリド(Pinacyanol chloride)、ローダミン6G(rhodamine 6G)、ガロシアニン(gallocyanine)、エチルバイオレット(ethyl violet)、ビクトリアブルーR(Victoria blue R)、セレスティンブルー(Celestine blue)、キナルジンレッド(QuinaldineRed)、クリスタルバイオレット(crystal violet)、ブリリアントグリーン(Brilliant Green)、アストラゾンオレンジG(Astrazon orange G)、ダローレッド(darrow red)、ピロニンY(pyronin Y)、ベイシックレッド29(basic red 29)、ピリリウムI(pyrylium iodide)、サフラニンO(Safranin O)、シアニン、メチレンブルー、アズールA(Azure A)、またはこれらの2以上の組み合わせが挙げられる。
【0111】
前記フォトポリマー組成物は、有機溶媒をさらに含み得る。前記有機溶媒の非制限的な例としてはケトン類、アルコール類、アセテート類およびエーテル類、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0112】
このような有機溶媒の具体的な例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンまたはイソブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、またはt-ブタノールなどのアルコール類;エチルアセテート、i-プロピルアセテート、またはポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート類;テトラヒドロフランまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0113】
前記有機溶媒は、前記フォトポリマー組成物に含まれる各成分を混合する時に添加されるか各成分が有機溶媒に分散または混合された状態で添加されながら前記フォトポリマー組成物に含まれ得る。前記フォトポリマー組成物のうち有機溶媒の含有量が過度に小さいと、前記フォトポリマー組成物の流れ性が低下して最終的に製造されるフィルムに縞が生じるなど不良が発生し得る。また、前記有機溶媒の過量添加時、固形分含有量が低くなり、コーティングおよび成膜が十分でないためフィルムの物性や表面の特性が低下し得、乾燥および硬化過程で不良が発生し得る。これにより、前記フォトポリマー組成物は、含まれる成分の全体固形分の濃度が1重量%~70重量%、または2重量%~50重量%になるように有機溶媒を含み得る。
【0114】
前記フォトポリマー組成物は、その他の添加剤、触媒などをさらに含み得る。例えば、前記フォトポリマー組成物は、前記高分子マトリックスや光反応性単量体の重合を促進するために通常知られている触媒を含み得る。前記触媒の例としては、スズオクタノエート、亜鉛オクタノエート、ジブチルスズジラウレート、ジメチルビス[(1-オキソネオデシル)オキシ]スタンナン、ジメチルスズジカルボキシレート、ジルコニウムビス(エチルヘキサノエート)、ジルコニウムアセチルアセトネート、p-トルエンスルホン酸(p-toluenesulfonic acid)または3級アミン、例えば1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデカン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-メチル-2H-ピリミド(1,2-a)ピリミジンなどが挙げられる。
【0115】
前記その他の添加剤の例としては、消泡剤またはホスフェート系可塑剤が挙げられ、前記消泡剤としてはシリコーン系反応性添加剤を用い得、その例としてTego Rad 2500が挙げられる。前記可塑剤の例としてはトリブチルホスフェートのようなホスフェート化合物が挙げられ、前記可塑剤は上述したフッ素系化合物と共に1:5~5:1の重量比率で添加され得る。前記可塑剤は、屈折率が1.5未満であり、分子量が700以下であり得る。
【0116】
前記フォトポリマー組成物は、ホログラム記録用途に用いることができる。
【0117】
一方、発明の他の実施形態によれば、フォトポリマー組成物から製造されたホログラム記録媒体が提供されることができる。
【0118】
前述したように、前記一実施形態のフォトポリマー組成物を用いると、より薄い厚さを有しながらも従来に知られているホログラムに比べて大きく向上した屈折率変調値および高い回折効率を実現できるホログラムが提供されることができる。
【0119】
前記ホログラム記録媒体は、5μm~30μmの厚さでも0.020以上または0.021以上、0.022以上または0.023以上、または0.020~0.035、または0.027~0.030の屈折率変調値(n)を実現することができる。
【0120】
また、前記ホログラム記録媒体は、5μm~30μmの厚さで50%以上、または85%以上、または85~99%の回折効率を実現することができる。
【0121】
前記一実施形態のフォトポリマー組成物は、これに含まれるそれぞれの成分を均一に混合して20℃以上の温度で乾燥および硬化した以後に、所定の露光過程を経て全体可視範囲および近紫外線領域(300~800nm)での光学的適用のためのホログラムに製造されることができる。
【0122】
前記一実施形態のフォトポリマー組成物のうち高分子マトリックスまたはその前駆体を形成する成分をまず均質に混合し、上述したシラン架橋剤を後に触媒とともに混合してホログラムの形成過程を準備することができる。
【0123】
前記一実施形態のフォトポリマー組成物は、これに含まれるそれぞれの成分の混合には通常知られている混合器、攪拌機またはミキサーなどを格別な制限なしに用い得、前記混合過程での温度は0℃~100℃、好ましくは10℃~80℃、特に好ましくは20℃~60℃であり得る。
【0124】
一方、前記一実施形態のフォトポリマー組成物のうち高分子マトリックスまたはその前駆体を形成する成分をまず均質して混合した以後、上述したシラン架橋剤を添加する時点で前記フォトポリマー組成物は20℃以上の温度で硬化する液体配合物であり得る。
【0125】
前記硬化の温度は、前記フォトポリマーの組成により変わり、例えば30℃~180℃の温度で加熱することによって促進される。
【0126】
前記硬化時には前記フォトポリマーが所定の基板やモールドに注入されるか、コートした状態であり得る。
【0127】
一方、前記フォトポリマー組成物から製造されたホログラム記録媒体に視覚的ホログラムを記録する方法は、通常知られている方法を大きい制限なしに用いてもよく、後述する実施形態のホログラフィック記録方法で説明する方法を一つの例として採用してもよい。
【0128】
一方、発明のまた他の実施形態によれば、可干渉性のレーザによって前記フォトポリマー組成物に含まれた光反応性単量体を選択的に重合させる段階を含むホログラフィック記録方法が提供されることができる。
【0129】
前述したように、前記フォトポリマー組成物を混合および硬化する過程により視覚的ホログラムが記録されない状態の媒体を製造することができ、所定の露出過程により前記媒体上に視覚的ホログラムを記録することができる。
【0130】
前記フォトポリマー組成物を混合および硬化する過程により提供される媒体に、通常知られている条件下に公知の装置および方法を用いて視覚的ホログラムを記録することができる。
【0131】
一方、発明のまた他の実施形態によれば、ホログラム記録媒体を含む光学素子が提供されることができる。
【0132】
前記光学素子の具体的な例としては光学レンズ、鏡、偏向鏡、フィルタ、拡散スクリーン、回折部材、導光体、導波管、映写スクリーンおよび/またはマスクの機能を有するホログラフィック光学素子、光メモリシステムの媒質と光拡散板、光波長分割器、反射型、透過型カラーフィルタなどが挙げられる。
【0133】
前記ホログラム記録媒体を含む光学素子の一例としてホログラムディスプレイ装置が挙げられる。
【0134】
前記ホログラムディスプレイ装置は、光源部、入力部、光学系および表示部を含む。前記光源部は、入力部および表示部で物体の3次元映像情報の提供、記録および再生に用いられるレーザビームを照射する部分である。また、前記入力部は、表示部に記録する物体の3次元映像情報をあらかじめ入力する部分であり、例えば、電気駆動液晶SLM(electrically addressed liquid crystal SLM)に空間別光の強さと位相のような物体の3次元情報を入力でき、この時、入力ビームが用いられる。前記光学系は、ミラー、偏光器、ビームスプリッタ、ビームシャッター、レンズなどで構成され、前記光学系は、光源部から放出されるレーザビームを入力部に送る入力ビーム、表示部に送る記録ビーム、基準ビーム、消去ビーム、読み出しビームなどに分配し得る。
【0135】
前記表示部は、入力部から物体の3次元映像情報の伝達を受け、光学駆動SLM(optically addressed SLM)からなるホログラムプレートに記録し、物体の3次元映像を再生し得る。この時、入力ビームと基準ビームの干渉により物体の3次元映像情報を記録し得る。前記ホログラムプレートに記録された物体の3次元映像情報は、読み出しビームが生成する回折パターンによって3次元映像に再生し得、消去ビームは形成された回折パターンを早く除去するために用い得る。一方、前記ホログラムプレートは3次元映像を入力する位置と再生する位置との間で移動し得る。
【発明の効果】
【0136】
本発明によれば、薄い厚さの範囲でもより高い屈折率変調値を実現できるフォトポリマー層をより効率的でかつ容易に提供できるフォトポリマー組成物、薄い厚さの範囲でもより高い屈折率変調値を実現できるホログラム記録媒体、光学素子、およびホログラフィック記録方法が提供されることができる。
【発明を実施するための形態】
【0137】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容は下記の実施例によって限定されない。
【0138】
[製造例]
[製造例1:シラン系官能基が分枝鎖に位置した(メタ)アクリレート系(共)重合体の製造方法]
2Lジャケット反応器にブチルアクリレート154g、KBM-503(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)46gを入れ、エチルアセテート800gで希釈した。約60~70℃に反応温度を設定し、30分~1時間程度攪拌を行った。n-ドデシルメルカプタン0.02gをさらに入れ、30分程度さらに攪拌を行った。以後、重合開始剤であるAIBN 0.06gを入れ、反応温度で4時間以上重合を行い残留アクリレート含有量が1%未満になるまで維持し、シラン系官能基が分枝鎖に位置した(メタ)アクリレート系(共)重合体(重量平均分子量約500,000~600,000,Si-(OR)当量1019g/当量)を製造した。
【0139】
[製造例2:シラン系官能基が分枝鎖に位置した(メタ)アクリレート系(共)重合体の製造方法]
2Lジャケット反応器にブチルアクリレート180g、KBM-503(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)120gを入れ、エチルアセテート700gで希釈した。60~70℃に反応温度を設定し、30分~1時間程度攪拌を行った。n-ドデシルメルカプタン0.03gをさらに入れ、30分程度さらに攪拌を行った。以後、重合開始剤であるAIBN 0.09gを入れ、反応温度で4時間以上重合を行い残留アクリレート含有量が1%未満になるまで維持し、シラン系官能基が分枝鎖に位置した(メタ)アクリレート系(共)重合体(重量平均分子量約500,000~600,000,Si-(OR)当量586g/当量)を製造した。
【0140】
[製造例3:シラン系官能基が分枝鎖に位置した(メタ)アクリレート系(共)重合体の製造方法]
2Lジャケット反応器にブチルアクリレート255g、KBM-503(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)45gを入れ、エチルアセテート700gで希釈した。60~70℃に反応温度を設定し、30分~1時間程度攪拌を行った。n-ドデシルメルカプタン0.03gをさらに入れ、30分程度さらに攪拌を行った。以後、重合開始剤であるAIBN 0.09gを入れ、反応温度で4時間以上重合を行い残留アクリレート含有量が1%未満になるまで維持し、シラン系官能基が分枝鎖に位置した(メタ)アクリレート系(共)重合体(重量平均分子量約500,000~600,000,Si-(OR)当量1562g/当量)を製造した。
【0141】
[製造例4:上述したシラン架橋剤の製造方法]
1000mlフラスコにKBE-9007(3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)19.79g、PEG-400 12.80gとDBTDL 0.57gを入れ、テトラヒドロフラン300gで希釈した。TLCで反応物がすべて消耗したことが確認されるまで常温で攪拌した後、減圧して反応溶媒をすべて除去した。
【0142】
ジクロロメタン:メチルアルコール=30:1の展開液条件下でカラムクロマトグラフィーにより純度95%以上の液状生成物28gを91%の収率で分離して上述したシラン架橋剤を得た。
【0143】
この時、前記シラン架橋剤に対する29Si固体状態(Solid State)のNMR分析は、Bruker AVANCEIII 300 MHz装備を7mm MAS probeを用いてstatic conditionで測定し、積分値計算によりシロキサン官能基のうち下記一般式1~4の官能基のうち一般式1の官能基比が約95モル%であることを確認した(一般式1~4の官能基に対する説明は上述したとおりである)。
【0144】
【化10】
【0145】
[製造例5:非反応性低屈折物質の製造方法]
1000mlフラスコに2,2’-((オキシビス(1,1,2,2-テトラフルオロエタン-2,1-ジイル))ビス(オキシ))ビス(2,2-ジフルオロエタン-1-オール)20.51gを入れた後、テトラヒドロフラン500gに溶かして0℃で攪拌しながら水素化ナトリウム(鉱油中60%分散体)4.40gを数回にかけて注意深く添加した。0℃で20分攪拌した後、2-メトキシエトキシメチルクロリド 12.50mlをゆっくり滴下した。H NMRで反応物がすべて消耗したことが確認されると、減圧して反応溶媒をすべて除去した。ジクロロメタン300gで3回抽出して有機層を集めた後硫酸マグネシウムでフィルタした後減圧してジクロロメタンをすべて除去して純度95%以上の液状生成物29gを98%の収率で収得した。
【0146】
[実施例および比較例:フォトポリマー組成物の製造]
下記表1または表2に記載されたように、前記製造例1~3で得たシラン重合体、光反応性単量体(高屈折アクリレート、屈折率1.600、HR6022[味元])、製造例5の非反応性低屈折物質、トリブチルホスフェート(Tributyl phosphate[TBP]、分子量266.31、屈折率1.424、シグマアルドリッチ社製)、safranin O(染料、シグマアルドリッチ社製)、Ebecryl P-115(SK entis)、Borate V(Spectra group)、Irgacure 250(BASF)、シリコーン系反応性添加剤(Tego Rad 2500)およびメチルイソブチルケトン(MIBK)を光を遮断した状態で混合し、Pasteミキサーで約10分間攪拌して透明なコート液を収得した。
【0147】
前記コート液に前記製造例4の上述したシラン架橋剤または網状構造のシラン架橋剤(Sibond H-5)を添加して5~10分間さらに攪拌した。以後、前記コート液に触媒であるDBTDL 0.02gを入れて約1分間攪拌した後、meyer barを用いて80μm厚さのTAC基材に6μm厚さでコートし、40℃で1時間乾燥させた。
【0148】
そして、約25℃および50RH%の相対湿度の恒温恒湿条件の暗室でサンプルを24時間以上放置した。
【0149】
[実験例:ホログラフィックの記録]
(1)前記実施におよび比較例それぞれで製造されたフォトポリマーコーティング面をslideガラスにラミネートし、記録時レーザがガラス面を先に通過するように固定した。
【0150】
(2)回折効率(η)の測定
二つの干渉光(参照光および物体光)の干渉によりホログラフィックを記録し、透過型記録は二つのビームをサンプルの同一面に入射した。二つのビームの入射角に応じて回折効率は変わり、二つのビームの入射角が同一の場合non-slantedとなる。non-slanted記録は、二つのビームの入射角が法線を基準に同一であるため、回折格子はフィルムに垂直に生成される。
【0151】
532nm波長のレーザを用いて透過型non-slanted方式で記録(2θ=45°)し、下記一般式1において、回折効率(η)を計算した。
【0152】
【数1】
【0153】
前記一般式1において、ηは回折効率であり、Pは記録後サンプルの回折されたビームの出力量(mW/cm)であり、Pは記録したサンプルの透過したビームの出力量(mW/cm)である。
【0154】
(3)屈折率変調値(n)の測定
透過型ホログラムのLossless Dielectric gratingは、下記一般式2から屈折率変調値(△n)を計算することができる。
【0155】
【数2】
【0156】
前記一般式2において、dはフォトポリマー層の厚さであり、△nは屈折率変調値であり、η(DE)は回折効率であり、λは記録波長である。
【0157】
(4)レーザ損失量(Iloss)の測定
下記一般式3からレーザ損失量(Iloss)を計算することができる。
【0158】
[一般式3]
loss=1-{(P+P)/I
【0159】
前記一般式3において、Pは記録後サンプルの回折されたビームの出力量(mW/cm)であり、Pは記録したサンプルの透過したビームの出力量(mW/cm)であり、Iは記録光の強度である。
【0160】
【表1】
【0161】
【表2】
【0162】
前記表1および表2に示すように、製造例1~3で製造した重合体とともに前記一般式1の官能基の比率が90モル%以上であるシラン架橋剤(製造例4)を用いて架橋度を調節した高分子マトリックスを用いた実施例のフォトポリマー組成物は0.020以上の屈折率変調値(△n)を有することが確認された。
【0163】
これに対し、比較例の組成物によって提供されるフォトポリマーコーティングフィルムは、実施例に比べて相対的に低い回折効率を有し、レーザ損失量(Iloss)も相対的に高く示された。