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特許6991322ポリカーボネート樹脂組成物およびこれを含む光学成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-09
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物およびこれを含む光学成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20220203BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20220203BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20220203BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K5/103
C08K5/18
G02B1/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020518505
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 KR2019004713
(87)【国際公開番号】W WO2019221408
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-03-30
(31)【優先権主張番号】10-2018-0055589
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ビョンキュ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ヨンウク
(72)【発明者】
【氏名】ファン、テヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ムホ
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/137364(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/103159(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08K 3/00-13/08
G02B 1/00-1/08
G02B 3/00-3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM D1238に準拠したメルトフローレート(MFR、Melt flow rate)が5乃至15g/10minであるポリカーボネート樹脂;ペンタエリトリトールテトラステアレート(Pentaerythritol tetrastearate);黒色染料;および青色染料;を含み、
ASTM D1003に準拠した410nmでの透過率が7%以下であり、
下記一般式1で表される黄変指数変化値(ΔYI)が0.5以下であり
前記ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、ペンタエリトリトールテトラステアレート0.05乃至5重量部、黒色染料1.0*10 -4 乃至1.0*10 -1 重量部および青色染料1.0*10 -4 乃至1.0*10 -1 重量部を含むポリカーボネート樹脂組成物。
[一般式1]
ΔYI=YI(340℃)-YI(285℃)
(ASTM D1925に準拠してHunter Lab装備を用い、透過条件350~1050nmで黄変指数を測定した。285℃から340℃に20分間昇温しながら、285℃および340℃で黄変指数を測定した。YI(285℃)は285℃で測定した黄変指数、YI(340℃)は340℃で測定した黄変指数である。
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂は、下記化学式1で表される繰り返し単位を含む、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【化3】
(前記化学式1中、aは1以上の整数である。)
【請求項3】
前記ポリカーボネート樹脂は、重量平均分子量が10,000g/mol乃至50,000g/molである、請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
前記黒色染料は、C.I.ピグメントブラック32である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
前記青色染料は、下記化学式2で表される化合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【化4】
【請求項6】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、帯電防止剤、核剤、難燃剤、滑剤、衝撃補強剤、紫外線吸収剤および蛍光増白剤からなる群より1つ以上選択される添加剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を含む、光学成形品。
【請求項8】
前記光学成形品がレンズであることを特徴とする、請求項7に記載の光学成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2018年5月15日付韓国特許出願第10-2018-0055589号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、熱安定性および光学特性に優れたポリカーボネート樹脂組成物およびこれを含む光学成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリカーボネートは、優れた衝撃強度、数値的安定性、耐熱性および透明性などの物性により電気電子製品の外装材、自動車部品、建築素材、光学部品などの多様な分野に適用されている。
【0004】
このようなポリカーボネートは、最近、応用分野が拡大することに伴い、ポリカーボネート固有の物性は維持しながらも、熱安定性および光学特性が向上した新規なポリカーボネートの開発が要求されている。
【0005】
特に、光学用製品に適用される場合、高温の条件を経ても製品の変形なしに目的とする程度の光学特性(優れた遮蔽率または透過率)を維持することが鍵であるため、熱安定性と光学特性を同時に改善するための技術開発が必要である。
【0006】
これによって、互いに異なる構造の芳香族ジオールを共重合して構造が異なる単位体をポリカーボネートの主鎖に導入したり、追加添加剤を用いて所望する物性を得ようとする研究が試みられている。しかし、大部分の技術が生産単価が高く、耐薬品性や耐熱性などが増加すれば反対に光学特性が低下し、光学特性が向上すれば耐薬品性や耐熱性などが低下するなどの限界がある。
【0007】
また、適用される製品群により、ポリカーボネートが有する透明度を調節する必要があり、例えば、光学製品(例えば、レンズ)などに適用時、使用目的により特定の波長領域での透過率を低下させる必要があった。
【0008】
そこで、ポリカーボネートの適用製品により目的とする光学特性(優れた遮蔽率または透過率)を満足しながらも、優れた耐熱性を有する新規なポリカーボネートに対する研究開発が依然として必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、特定の添加剤と2種組み合わせの染料を導入することによって、耐熱性に優れ、優れた光学特性を有するポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【0010】
また、本発明の目的は、前記ポリカーボネート樹脂組成物から製造された光学成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、ASTM D1238に準拠したメルトフローレート(MFR、Melt flow rate)が5乃至15g/10minであるポリカーボネート樹脂;ペンタエリトリトールテトラステアレート(Pentaerythritol tetrastearate);黒色染料;および青色染料;を含み、ASTM D1003に準拠した410nmでの透過率が7%以下であり、後述する一般式1で表される黄変指数変化値が0.5以下である、ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【0012】
また、本発明によれば、前記ポリカーボネート樹脂組成物を含む光学成形品を提供する。
【0013】
以下、発明の具体的な実施形態に係るコポリカーボネート、その製造方法およびこれを含む成形品についてより詳細に説明する。
【0014】
それに先立ち、本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するための目的であり、本発明を限定することを意図しない。
【0015】
本明細書で使用される単数の形態は、文句がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。
【0016】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0017】
そして、本明細書で「第1」および「第2」のように序数を含む用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使用され、前記序数により限定されない。例えば、本発明の権利範囲内で第1構成要素は第2構成要素と命名されてもよく、類似するように第2構成要素は第1構成要素と命名されてもよい。
【0018】
ポリカーボネート樹脂の場合、適用される製品群により、ポリカーボネートが有する透明度を調節する必要があり、例えば、光学製品(例えば、レンズ)などに適用時、使用目的により特定の波長領域での透過率を低下させる必要があった。しかし、単に遮蔽率を高めるための目的で添加剤を用いる場合、高温の条件下で耐熱性が顕著に低下して、製造工程中に高分子変形や変色などが発生する問題があった。
【0019】
そこで、本発明者らは、特定の添加剤と所定波長に吸収率が優れた2種の染料を組み合わせて用いることによって、特定の波長領域での低い透過率および高温条件での低い黄変指数変化を実現し、これによって、耐熱性に優れ、特定の波長領域で高い遮蔽率を有するポリカーボネート樹脂組成物を開発した。
【0020】
前述した本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いて製品を製造する場合、製造工程中に高温の射出成形条件でも高分子の変性や色の変化程度が顕著に小さい。また、製品が実際使用されて高温の環境下でも変形なしに優れた物性を示すことができる。特に、レンズとして使用される場合、特定の可視光線領域(410nm)で優れた遮蔽率を示すことができ、一般用、産業用、スポーツ用、特殊用などの広範囲な範囲に適用可能であるため、好ましい。
【0021】
本発明の一実施例によるポリカーボネート樹脂組成物は、ASTM D1003に準拠した410nmでの透過率が7%以下を満足する。前記範囲の透過率と後述する黄変指数変化値を同時に満足することによって、製品に適用時に前述した物性を全て満足することができる。
【0022】
前記410nmでの透過率が7%超過である場合、一般用、産業用、スポーツ用、特殊用などの多様な光学成形品に適用することができないという問題点がある。また、前記410nmでの透過率は、好ましくは5%以下、より好ましくは4.5%以下を満足することができ、この場合、本発明が目的とする効果が増大することができる。
【0023】
本発明の一実施例によるポリカーボネート樹脂組成物は、下記一般式1で表される黄変指数変化値が0.5以下を満足し、前記範囲の黄変指数変化値(ΔYI)および透過率を同時に満足することによって、製品に適用時に前述した物性を全て満足することができる。
【0024】
[一般式1]
ΔYI=YI(340℃)-YI(285℃)
YIは当該温度でASTM D1925に準拠して測定された黄変指数値である。
【0025】
前記範囲の黄変指数変化値(ΔYI)のパラメータは、ポリカーボネート樹脂組成物を用いて製品を製造する場合、高温の射出工程でも優れた耐熱性を示す指標を意味するものであって、285℃から340℃の高温での温度変化があっても顕著に低い黄変指数変化を示して、製品製造工程だけでなく、製品が適用されて高温の環境条件下に置かれても優れた耐熱性を示すことを意味する。
【0026】
前記黄変指数変化値が0.5超過である場合、耐熱性が低下し、透過度が低下してレンズとしての使用に適しない。また、前記黄変指数変化値は、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.1以下を満足することができ、この場合、本発明が目的とする効果が増大することができる。
【0027】
本発明の一実施例によるポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂;ペンタエリトリトールテトラステアレート(Pentaerythritol tetrastearate);黒色染料;および青色染料;を含むことによって、前述した特定のパラメータ値を満足する。以下、各成分の具体的な特性をより詳細に説明する。
【0028】
<ポリカーボネート樹脂>
本発明で使用する用語「ポリカーボネート」とは、ジフェノール系化合物、ホスゲン、炭酸エステルまたはこれらの組み合わせを反応させて製造される高分子を意味する。ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、耐衝撃性、機械的強度、透明性などに非常に優れ、コンパクトディスク、透明シート、包装材、自動車バンパー、紫外線遮断フィルム、光学レンズなどの製造に広範囲に使用されている。
【0029】
前記ジフェノール系化合物としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノール-A」ともいう)、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテルなどが挙げられる。好ましくは4,4’-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを用いることができ、この場合、前記ポリカーボネート樹脂の構造は下記化学式1のとおりである。
【0030】
【化1】
【0031】
前記化学式1でaは1以上の整数である。
【0032】
前記ポリカーボネート樹脂は、2種以上のジフェノール類から製造された共重合体の混合物でってもよい。また前記ポリカーボネートは、線状ポリカーボネート、分枝状(branched)ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート共重合体樹脂などを用いることができる。
【0033】
前記線状ポリカーボネートとしては、ビスフェノール-Aから製造されるポリカーボネートなどが挙げられる。前記分枝状ポリカーボネートとしては、トリメリット酸無水物、トリメリット酸などのような多官能性芳香族化合物をジフェノール類およびカーボネートと反応させて製造したものが挙げられる。前記多官能性芳香族化合物は、分枝状ポリカーボネート総量に対して0.05モル%乃至2モル%で含まれてもよい。前記ポリエステルカーボネート共重合体樹脂としては、二官能性カルボン酸をジフェノール類およびカーボネートと反応させて製造したものが挙げられる。前記カーボネートとしては、ジフェニルカーボネートなどのようなジアリールカーボネート、エチレンカーボネートなどを用いることができる。
【0034】
本発明によるポリカーボネート樹脂は、ASTM D1238に準拠したメルトフローレート(MFR、Melt flow rate)が5乃至15g/10minを満足する。前記範囲のメルトフローレートを有するポリカーボネート樹脂を用いる場合、前述した他の成分との組み合わせ使用により製品に適用時に優れた物性を実現することができる。
【0035】
前記メルトフローレートは、ASTM D1238に準拠して300℃で1.2kgの荷重条件で測定されたものである。
【0036】
前記メルトフローレートが5g/min未満である場合、加工性が低下して生産性低下の問題が発生することがあり、15g/min超過である場合、当該加工条件で樹脂流れが超過となり、成形製品に表面不良を発生させる問題が発生することがある。また、前記メルトフローレートは、好ましくは6乃至13g/10min、より好ましくは7乃至10g/10minを満足することができ、この場合、本発明が目的とする効果が増大することができる。
【0037】
好ましくは、前記ポリカーボネート樹脂は、重量平均分子量が10,000g/mol乃至50,000g/mol、好ましくは25,000g/mol乃至35,000g/molである。前記範囲で成形性および作業性に優れている。
【0038】
<ペンタエリトリトールテトラステアレート(Pentaerythritol tetrastearate、PETS)>
本発明によるペンタエリトリトールテトラステアレート成分は、優れた熱安定性を実現し、同時に特定の波長領域での遮蔽性を向上させるための補助的機能を果たす成分であり、後述する黒色染料および青色染料と組み合わせて使用されてその効果を極大化させることができる。
【0039】
前記ペンタエリトリトールテトラステアレートは、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.05乃至5重量部で含まれてもよく、好ましくは0.1乃至1重量部で含まれてもよい。前記含有量範囲で含まれる場合、優れた耐熱性と遮蔽性を実現することができ、耐熱および特定の波長領域で遮蔽補助効果を実現することに好ましい。一方、0.05重量部未満で含まれる場合、微量で目的とする効果を実現し難く、5重量部で含まれる場合、機械的強度が低下する問題が発生することがある。
【0040】
<染料>
本発明は、黒色染料と青色染料を組み合わせて用いることによって、特定の波長領域での遮蔽性を向上させるための成分であり、前述したPETS成分と組み合わせて使用されて遮蔽性と耐熱性の向上効果を同時に実現することができるようにする。
【0041】
前記黒色染料は、具体的にはC.I.ピグメントブラック32の化合物(ペリレンブラック)であってもよく、市販される製品としては、BASF社のBK32(ThermoPlast black x70)が用いられてもよい。
【0042】
前記黒色染料は、全波長領域で光を効果的に遮断することができ、PETS成分および青色染料と組み合わせて使用時、レンズに適用するに適した遮蔽性を実現することができるため好ましい。
【0043】
前記黒色染料は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、1.0*10-4乃至1.0*10-1重量部で含まれてもよく、好ましくは1.0*10-4乃至1.0*10-2重量部、より好ましくは1.1*10-3乃至2.0*10-3重量部で含まれてもよい。前記含有量範囲で含まれる場合、レンズに適用するに適した遮蔽性を実現することができる。一方、1.0*10-4重量部未満で含まれる場合、微量で目的とする効果を実現し難く、1.0*10-1重量部で含まれる場合、過量で透過度が低下することがある。
【0044】
前記青色染料は、具体的には下記化学式2の化合物(CAS No.81-48-1)であってもよく、市販される製品としてはLanxess社のBlue G(Macrolex Violet B Gran)が用いられてもよい。
【0045】
【化2】
【0046】
前記青色染料は、好ましくはラディッシューブルー(Reddish blue)系であってもよい。
【0047】
前記青色染料は、樹脂の黄変度を改善する役割を果たし、同時に、PETS成分および黒色染料と組み合わせて使用時、レンズに適用するに適した耐熱特性および遮蔽性を実現することができるため好ましい。また、追加的に光吸収剤などを混用時、425~450nm範囲の可視光線を効果的に制御することができる。
【0048】
前記青色染料は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、1.0*10-4乃至1.0*10-1重量部で含まれてもよく、好ましくは1.0*10-4乃至1.0*10-2重量部、より好ましくは1.5*10-3乃至2.5*10-3重量部で含まれてもよい。前記含有量範囲で含まれる場合、優れた遮蔽性を実現することができ、樹脂の黄変度を改善できるため好ましい。一方、1.0*10-4重量部未満で含まれる場合、微量で目的とする効果を実現し難く、1.0*10-1重量部で含まれる場合、YI低下および透過度減少現像で商業的に適用が不利な問題点がある。
【0049】
本発明によるポリカーボネート樹脂組成物は、前述した成分を含み、特定のパラメータ(透過率およびΔYI)を満足することによって、耐熱性と優れた光学特性(410nmでの遮蔽性)を実現することができ、これによって、製造工程中の高温の射出成形条件でも高分子の変性や色の変化程度が顕著に小さい。また、製品が実際使用されて高温の環境下でも変形なしに優れた物性を示すことができるようになる。
【0050】
また、必要に応じて前記樹脂組成物は、当業界で通常使用される酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、帯電防止剤、核剤、難燃剤、滑剤、衝撃補強剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤および放射線吸収剤からなる群より1種以上選択される添加剤をさらに含むことができる。
【0051】
<光学成形品>
また、本発明は、前記樹脂組成物を含む光学成形品を提供する。好ましくは、前記光学成形品は、レンズであり、照明用レンズや眼鏡レンズに用いるに適する。
【0052】
本発明によるポリカーボネート樹脂組成物は、耐熱性と遮蔽性に優れているため、光学成形品として有用に用いることができる。
【0053】
成形品の製造方法は、当業界で通常使用する方法で製造されてもよい。例えば、前述したポリカーボネート樹脂、ペンタエリトリトールテトラステアレート、黒色染料および青色染料と必要に応じて添加剤を混合し、これを溶融混練してペレットで製造し、 これを目的とする形態で射出成形することが好ましい。
【0054】
前記溶融混練は、当業界で通常使用される方法、例えばリボンブレンダー、ヘンシェルミキサ、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダー、多軸スクリュー押出機などを用いる方法により実施することができる。前記溶融混練の温度は、必要に応じて適切に調節することができる。
【0055】
次に、前記本発明による樹脂組成物の溶融混練物またはペレットを原料にして射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法、プレス成形法、圧空成形法、発泡成形法、熱曲げ成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法および回転成形法などの成形法を適用することができる。
【0056】
射出成形法を利用する場合、200乃至400℃の高温の条件下に置かれるようになるが、本発明による樹脂組成物は耐熱性に優れているため、前述した溶融混練工程や射出工程で高分子変性や黄変発生が殆どないため好ましい。
【0057】
成形品の大きさ、厚さなどは使用目的により適切に調節することができ、導光板の形状も使用目的により平板または曲面の形態を有することができる。
【発明の効果】
【0058】
本発明によれば、特定の添加剤と2種の染料を導入することによって、耐熱性に優れ、優れた光学特性を有するポリカーボネート樹脂組成物を提供することができる。
【0059】
また、本発明によれば、高温の条件にも優れた光学特性を示すことができるポリカーボネート樹脂組成物から製造された光学成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は発明を例示するためのものに過ぎず、発明をこれらだけに限定するのではない。
【0061】
実施例および比較例:ポリカーボネート樹脂組成物の製造
実施例1および2、比較例1乃至8
ポリカーボネート樹脂組成物100重量部を基準に下記表1に記載された含有量でそれぞれの添加剤成分を混合してポリカーボネート樹脂組成物を製造した。
【0062】
【表1】
【0063】
実験例
実施例および比較例により製造された樹脂組成物に対して、二軸押出機(L/D=36、Φ=45、バレル温度240℃)に時間当り55kg速度でペレットサンプルを製造し、製造された試片に対して、下記の方法で特性を測定した。
【0064】
(1)メルトフローレート(MFR、Melt flow rate、g/min)
ASTM D1238に準拠して、Toyoseiki Melt Indexer G-02装備を用い、300℃、1.2kg荷重条件でメルトフローレートを測定し、その結果を下記表2に記載した。
【0065】
(2)透過率(%)
ASTM D1003に準拠して、Hunter Lab装備を用い、透過条件350~1050nmで410nmでの透過率を測定し、その結果を下記表2に記載した。
【0066】
(3)黄変指数変化値(ΔYI)
ASTM D1925に準拠して、Hunter Lab装備を用い、透過条件350~1050nmで黄変指数を測定した。285℃から340℃に20分間昇温しながら、285℃および340℃で黄変指数を測定し、下記一般式1による黄変指数変化値を計算し、その結果を下記表2に記載した。
【0067】
[一般式1]
ΔYI=YI(340℃)-YI(285℃)
【0068】
【表2】
【0069】
前記表2から確認できるように、本発明による実施例の場合、特定の添加剤と2種の染料を導入することによって、耐熱性と優れた光学特性を同時に実現することができることを確認した。
【0070】
本願発明が限定した組み合わせ成分を外れる比較例の場合、高温の条件下で耐熱性が落ちて黄変度変化値が顕著に上昇したり、410nmで透過率が増加して、光学用成形品、特にレンズに使用が適しないことを確認した。